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  • 特表-冷陰極X線源の陽極の形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】冷陰極X線源の陽極の形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 9/14 20060101AFI20250212BHJP
   H01J 35/08 20060101ALI20250212BHJP
   G21K 5/08 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
H01J9/14 M
H01J35/08 C
H01J35/08 B
G21K5/08 X
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545808
(86)(22)【出願日】2023-01-31
(85)【翻訳文提出日】2024-09-17
(86)【国際出願番号】 EP2023052250
(87)【国際公開番号】W WO2023148143
(87)【国際公開日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】2200892
(32)【優先日】2022-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523395915
【氏名又は名称】タレス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロワイエ,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】ブーラ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】カプロ,ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ジョアンネ,ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】リボー,ピエール
(57)【要約】
冷陰極X線源用の陽極(A)を形成する形成方法(P)であって、電子ビームの吸収からX線を生成すべく適合された第1の材料であって前記X線源における陽極の使用時の所定温度Tで第1の熱膨張係数Ce,1(T)を有する第1の材料から目標(C)と称する素子を形成するステップと、所定温度Tで第2の熱膨張係数Ce,2(T)を有する第2の材料から目標支持部(SC)と称する素子を形成するステップと、半田材料を用いて、所定温度Tよりも高く半田材料の融点よりも高い半田付け温度で、目標と目標支持部との間に挿入する半田膜(FB)を形成するように、硬ろう付けにより目標と目標支持部とを接合するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷陰極X線源用の陽極(A)を形成する形成方法(P)であって、
A.電子ビームの吸収からX線を生成すべく適合された第1の材料であって前記X線源における前記陽極の使用時の所定温度Tで第1の熱膨張係数Ce,1(T)を有する第1の材料から目標(C)と称する素子を形成するステップと、
B.前記所定温度Tで第2の熱膨張係数Ce,2(T)を有する第2の材料から目標支持部(SC)と称する素子を形成するステップと、
C.半田材料を用いて、前記半田材料の融点よりも高い半田付け温度で、前記目標と前記目標支持部との間に挿入する半田膜(FB)を形成するように、硬ろう付けにより前記目標と前記目標支持部とを接合するステップとを含み、前記所定温度Tが前記半田材料の前記融点よりも低い形成方法。
【請求項2】
前記第1及び前記第2の材料では|Ce,1(T)-Ce,2(T)|≦4.10-6-1が成り立つ、請求項1に記載の形成方法。
【請求項3】
前記第1の材料がタングステンを主成分とし、前記第2の材料がモリブデン、銅又は銅、タングステン及びニッケルを含む合金を主成分とする、請求項1又は2に記載の形成方法。
【請求項4】
前記半田材料が、金、銀、銅、ニッケル、又はパラジウムを主成分とする、請求項3に記載の形成方法。
【請求項5】
前記第2の材料が銅、ニッケル及びタングステンの合金であり、前記半田材料が銀、銅及びパラジウムの合金、又は銀、銅及び金の合金である、請求項4に記載の形成方法。
【請求項6】
前記接合ステップが炉内で700℃~1100℃の範囲で実行される、請求項1~5のいずれか1項に記載の形成方法。
【請求項7】
前記接合ステップが真空下で実行される、請求項6に記載の形成方法。
【請求項8】
前記半田材料が銀、銅及び錫の合金であり、前記第2の材料がモリブデンであり、前記第1の材料がタングステンである、請求項7に記載の形成方法。
【請求項9】
前記接合ステップが水素雰囲気中で実行される、請求項5に記載の形成方法。
【請求項10】
前記第2の材料がモリブデンであり、前記第1の材料がタングステンであり、前記半田材料が銀、銅及びパラジウムの合金である、請求項9に記載の形成方法。
【請求項11】
前記目標支持部の周囲に厚さ150μm未満の金属層(CM)を形成すべく前記目標支持部を金属化する中間ステップB’をステップBとステップCとの間に含んでいる、請求項1~10のいずれか1項に記載の形成方法。
【請求項12】
前記金属化が銅を主成分とする、請求項11に記載の形成方法。
【請求項13】
前記目標及び前記目標支持部が各々、前記目標が前記目標支持部に嵌め込まれることを可能にすべく適合された形状を有している、請求項1~12のいずれか1項に記載の形成方法。
【請求項14】
冷陰極X線源用の陽極であって、前記陽極が請求項1~13のいずれか1項に記載の形成方法により得られ、
前記目標と、
前記目標支持部と、
前記目標と前記目標支持部とを接合可能にすべく前記目標と前記目標支持部との間に挿入する半田膜とを含んでいる陽極。
【請求項15】
-真空チャンバ(EV)と、
-前記真空チャンバ内で電子ビーム(FE)を放出すべく適合された陰極(Cat)と、
-前記電子ビームがX線放射(FX)を生成させるべく前記目標に当たるように配置されている請求項14に記載の陽極とを含むX線源(2)。
【請求項16】
前記陰極がパルス電子ビームを放出すべく適合されていて、前記目標及び前記目標支持部が各々、前記X線源内に能動熱冷却素子が一切無くても前記所定温度が800℃未満となるのに充分な大きさの体積を有している、請求項15に記載のX線源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線源の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
X線は昨今、特に医療分野における撮像、非破壊検査を行う産業分野、及び危険な物体又は物質を検出するセキュリティ分野で利用されている。
【0003】
最も一般的に使用されるX線源はX線管である。X線管は一般に真空チャンバを含んでいる。包体は金属構造と電気絶縁体とで形成されている。2個の電極が当該包体に配置されている。単極管の場合、負電位に保持された陰極電極が電子エミッタを有している。第1の電極に相対的に正の電位に保持された第2の陽極電極が目標に関連付けられている。2個の電極間の電位差により加速された電子が、目標に衝突する際に制動イオン化放射(ブレムスシュトラールング)の連続スペクトルを生成する。金属電極は一般にサイズが大きく、表面における電場を最小化するのに充分な曲率半径を有している。
【0004】
X線管の出力に応じて、X線管は、固定陽極又は熱出力を拡散すべく適合された回転陽極のいずれかを有していてよい。固定陽極管の出力は数キロワットであり、特に産業用途、セキュリティ用途、及び低出力の医療用途に用いられる。回転陽極管は100キロワットを超える場合があり、主に医療分野で持続時間が短い高線量X線を必要とする撮像に用いられる。一例として、産業用管の直径は450kVで150mm、220kVで100mm、160kVで80mmのオーダーである。表示されている電圧は2個の電極間に印加される電位差に対応する。医療用回転陽極管の場合、陽極で放散される電力に応じて直径が150~300mmの範囲で変化する。
【0005】
目標を形成する陽極は、大量の熱出力を放散しなければならない。この放熱は、熱伝導流体を循環させるか、又は大型の回転陽極を設けることにより実現できる。この放熱の必要性は従ってX線管の寸法の増大も伴う。
【0006】
静止陽極の場合、現時点で標準的に用いられている技術は、純タングステン又はタングステン-レニウム合金製の薄い挿入部で形成された部分組み立て品であり、その周囲に銅体が顕著にオーバーモールドされている。図1は、X線源用の従来技術による陽極AAの一例の写真である。この極AAは、X線放射を生起させるべく電子ビームを当てる目標を形成するタングステン挿入物Cを含んでいる。この目標Cのオーバーモールドは、電子ビームの制動により生じる熱出力を除去すべく適合された銅体BCを形成する。ここで、熱出力の除去は、銅棒の熱伝導性が優れているため、挿入物と銅棒との間の良好な熱接触により実現される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1の陽極は満足すべきものである。しかし、X線源のデューティサイクル中に蓄積された電力の放散に銅オーバーモールドを用いるとX線源の小型化は極めて困難になる。具体的には、X線源を小型化するには、電気絶縁体を用いることにより陰極と陽極との間で高レベルの電気絶縁を保証する必要がある。この機械要素は例えば真空チャンバの一部を形成する。これらのセラミックは従って、小型のX線源を形成するのに有利である。しかし、銅はセラミックに比べて熱膨張率が高いためセラミックによる組み立ては困難である。
【0008】
最後に、タングステン目標に銅をオーバーモールドするのは実行が困難である。オーバーモールド工程は、目標を含む銅を高温で溶かし、タングステンと銅の完全な接触を保証しながら冷却し、表面を機械加工して真空中で動作可能なように適切な洗浄を行う必要がある。
【0009】
本発明は、従来技術の特定の問題の克服を目的とする。この目的のため、本発明の一主題は、冷陰極X線源用の陽極を形成する形成方法であって、目標と(熱出力の除去を行う)目標支持部とを硬ろう付けするステップを含んでいる。従って、目標と支持部との組み立てが大幅に容易になり、従来技術では目標のオーバーモールドに使用できなかった材料を用いて目標支持部を含む陽極を形成することができる。目標支持部の材料の選択に応じて、当該陽極をX線源内でセラミック絶縁素子を容易に組み立てることができる。これはX線源を更に小型化できることを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的のため、本発明の一主題は冷陰極X線源用の陽極を形成する形成方法であって、
A.電子ビームの吸収からX線を生成すべく適合された第1の材料であって前記X線源における陽極の使用時の所定温度Tで第1の熱膨張係数Ce,1(T)を有する第1の材料から目標と称する素子を形成するステップと、
B.所定温度Tで第2の熱膨張係数Ce,2(T)を有する第2の材料から目標支持部と称する素子を形成するステップと、
C.半田材料を用いて、半田材料の融点よりも高い半田付け温度で、目標と目標支持部との間に挿入する半田膜を形成するように、硬ろう付けにより目標と目標支持部とを接合するステップとを含み、前記所定温度Tは半田材料の前記融点よりも低い。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、第1及び第2の材料では|Ce,1(T)-Ce,2(T)|≦XXが成り立つ。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、第1の材料はタングステンを主成分とし、第2の材料はモリブデン、銅、又は銅、タングステン及びニッケルを含む合金を主成分とする。好適には、半田材料は、金、銀、銅、ニッケル、又はパラジウムを主成分とする。更に好適には、第2の材料は銅、ニッケル及びタングステンの合金、半田材料は銀、銅、パラジウムの合金、又は銀、銅、金の合金である。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、接合ステップは700℃~1100℃の炉内で実行される。好適には、接合ステップは真空下で実行される。更に好適には、半田材料は銀、銅及び錫の合金、第2の材料はモリブデン、第1の材料はタングステンである。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、接合ステップは水素雰囲気中で実行される。好適には、第2の材料はモリブデン、第1の材料はタングステン、半田材料は銀、銅及びパラジウムの合金である。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、本方法は、ステップBとステップCとの間に、目標支持部の周囲に厚さ150μm未満の金属層を形成すべく目標支持部を金属化する中間ステップB’を含んでいる。好適には金属化は銅を主成分とする。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、目標及び目標支持部は各々目標が目標支持部に嵌め込まれるように適合された形状を有している。
【0017】
本発明の別の主題は、冷陰極X線源用の陽極であり、前記陽極は、先行請求項のいずれか1項に記載の形成方法により得られ、
a.目標と、
b.目標支持部と、
c.目標と目標支持部とを接合可能にすべく目標と目標支持部との間に挿入する半田膜とを含んでいる。
【0018】
本発明の別の主題は、X線源であり、
d.真空チャンバと、
e.真空チャンバ内で電子ビームを放出すべく適合された陰極と、
f.X線放射を生成すべく電子ビームが目標に当たるように配置された請求項11に記載の陽極とを含んでいる。
【0019】
本発明のX線源の一実施形態によれば、陰極はパルス電子ビームを放出すべく適合されていて、目標及び目標支持部は各々、X線源内に能動熱冷却素子が一切無くても前記所定温度が800℃未満となるのに充分な大きさの体積を有している。
【0020】
本発明の他の特徴、詳細及び利点は、例として与える添付図面を参照しながら以下の説明を読解すれば明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】先行技術のX線源の陽極AAの一例を示す模式図である。
図2A】本発明による冷陰極X線源用の陽極の形成方法を示す。
図2B】本発明による冷陰極X線源の陽極の模式図である。
図3A】本発明の一実施形態による冷陰極X線源用の陽極の形成方法を示す。
図3B】本発明の一実施形態による冷陰極X線源の陽極の模式図である。
図4】本発明による冷陰極X線源の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
各図面において、別途示さない限り、素子は定縮尺で描かれていない。
【0023】
図2Aに、本発明による冷陰極X線源用の陽極の形成方法Pを示す。誤解を避けるべく、ここで言う「冷陰極X線源」は電子ビームを放出して磁場効果を通過させる陰極を含むX線源を意味する。この種の陰極は、例えば国際公開第2006/063982A1号パンフレットに記載されている。冷陰極は、熱陰極すなわち熱イオン陰極の短所(導電性素子の膨張又は蒸発)が無く、電極の発光とオフ状態との間で極めて迅速に切り替え可能であり、特に、はるかに小型である。図2Aの形成方法により、冷陰極X線源での使用を意図した陽極Aを形成することができ、図2Bに模式的断面図として示す。
【0024】
本発明の形成方法は、目標Cを形成する第1のステップAを含んでいる。この目標Cは、当業者に公知の素子であり、電子ビームの吸収からX線を生成すべく適合された第1の材料で作られている。この第1の材料は、X線源における陽極の使用時の所定温度Tで、Ce,1(T)と表記された第1の熱膨張係数を有している。この目標は、最適X線生成収率が得られるようにタングステン(純又はタングステン合金)等の原子番号が高い材料で製造されていても、又はX線回折の関連で用いるX線源の場合は原子番号が低い材料で製造されていてもよい。
【0025】
本方法はまた、所定温度Tで第2の熱膨張係数Ce,2(T)を有する第2の材料から目標支持部SCと称する素子を形成するステップBを含んでいる。目標支持部の役割は、電子ビームを制動する際に目標により生成される熱エネルギーを放散させることである。また、この第2の材料は熱伝導性に優れていることが好適である。
【0026】
方法PにおけるステップA及びBの順序は交換可能であることを理解されたい。
【0027】
最後に、本発明の方法は、半田材料の融点よりも高い半田付け温度で、半田材料を用いる硬ろう付けにより目標Cを目標支持部SCに接合する最終ステップCを含んでいる。また、X線源の動作中に陽極の2個の素子の半田付けが外れるのを防止すべく、X線源における陽極の使用時の所定温度Tは、半田材料の融点よりも低い。ここでの「硬ろう付け」は、半田材料の融点が600℃超であることを意味する。従ってステップCにより目標Cと目標支持部SCとの間に挿入する半田膜FBを得ることが可能になる。
【0028】
図2Bに示すように、本発明の方法により得られる陽極は従って、目標C、目標支持部SC及び目標と目標支持部とを互いに接合可能にすべく目標と目標支持部との間に挿入される半田膜FBを含んでいる。膜FBの厚さは好適には、目標と目標支持部との正確な接合を保証すべくステップCの後で5~140μmの範囲にある。
【0029】
本発明の方法により、従来技術では銅を用いて行われていたような目標のオーバーモールドには恐らく使用できなかった第2の材料を用いて目標と目標支持部とを組み立てることができる。従って、一実施形態によれば、第2の材料は、モリブデン、又は銅、タングステン及びニッケルを含む合金を主成分とする。これらの第2の材料は目標Cのオーバーモールドには適していないが、タングステン製の目標の温度が上昇した場合に陽極が良好に熱挙動できるため有利である。更に、これらの材料は、硬ろう付けを用いてセラミックに半田付けすることができる。従って本発明の方法により、陰極の支持部と陽極の支持部の両方を形成して陽極と陰極を電気絶縁すべくセラミック製の要素を含むと共に目標支持部に半田付けされたX線源を形成することができる。このような組み立て品は、銅は大多数のセラミックに比べて銅の熱膨張が高いためセラミックに適切に半田付けできないため、図1の陽極の銅オーバーモールドBCで実現するのは困難である。
【0030】
要するに、本発明の形成方法により、先行技術のX線源よりもはるかに小型あると同時に、本発明の陽極Aに半田付けされたセラミック製の絶縁体を含むX線源を形成が可能になる。
【0031】
より一般的に、好適な一実施形態によれば、本発明の陽極を含むX線源の動作中に熱問題を回避すべく、第1及び第2の材料では|Ce,1(T)-Ce,2(T)|≦4×10-6-1が成り立つ。この特徴により、本発明の陽極を含むX線源の動作中に目標と目標支持部との半田付けが外れないことが保証される。
【0032】
MPと表記された好適な一実施形態において、接合ステップCは炉内で700℃~1100℃の範囲で行われ、当該サイクルは最短で3時間にわたり持続されてよく、少なくとも3分間は高温レベルにある。この最短持続時間は、適切な接合及び目標と目標支持部との間で均一な半田付けの膜を保証するのに必要である。一実施形態によれば、半田付けが実行される炉は、第1のフェーズの加熱により半田材料の溶融が可能になった後で起動される熱冷却素子を含んでいる。この熱冷却素子により、半田付けサイクルの合計時間を短縮することができる。
【0033】
実施形態MPの第1の変形例において、接合ステップCは真空、すなわち最低10-3mbarの高真空下の炉内で実行される。本実施形態では、陽極をX線源の他の素子と組み立てる前、及び当該陽極を超高真空下で使用する前に、陽極を脱気する追加的な後工程が不要になる。X線源を組み立てる全工程は従って実施形態MPの当該第1の変形例で簡素化される。
【0034】
代替的に、実施形態MPの第2の変形例によれば、接合ステップCは水素雰囲気中で実行される。水素雰囲気により、炉内でより均一な温度が得られるようになるため、より良好な品質の半田付け接合部が実現できるようになる。しかし、当該第2の変形例では陽極をX線源の他の素子と組み立てる前に陽極を脱気する後続のステップが必要である。この脱ガスステップは、半田、部分組み立て品の表面に閉じ込められたガスを除去することによりX線源が動作中に脱離現象が生じるのを回避するために必要である。
【0035】
好適には、半田材料は、金、銀、パラジウム、銅、又はニッケルを主成分とする。更に好適には、半田付けが真空下で実行されるならば、第2の材料がモリブデンであって第1の材料がタングステンの場合、半田材料は銀、銅及び錫の合金である。代替的に、別の実施形態によれば、半田付けが真空下で行われないならば、半田材料は好適には銀、銅、パラジウムの合金である。上述の半田材料の2種類の合金はモリブデンの低い濡れ性を補うことができる。
【0036】
代替的に、第2の材料が銅、ニッケル及びタングステンの合金であって第1の材料がタングステンである場合、半田材料は好適には銀、銅、パラジウムの合金、又は銀、銅、金の合金である。従って、半田付けは完全に濡れ、第2の材料の銅の堆積物内に拡散するため、全体的に優れた半田付けが可能になる。
【0037】
図2Bの例において、任意選択的に、目標Cは傾斜面FIを有している。この傾斜はX線源の様々な物理的パラメータ、すなわち必要とされる電子ビームの熱入射角及び焦点に関する妥協点に達することにより得られる。
【0038】
好適には、且つ図2Bに示すように、目標及び目標支持部は各々、目標を目標支持部に嵌め込むことができるように適合された形状を有している。この特徴により、本発明の方法のステップCの実行中に目標支持部と目標との組み立てが容易になる。
【0039】
図3Aに、本発明の特定の一実施形態による陽極の形成方法を示す。図3Bに、図3Aの形成方法により形成された負極の断面の模式図を示す。
【0040】
図2Aの方法と比較して、図4の方法は、目標支持部の周囲に厚さ0.15mm未満の金属層CMを形成すべく目標支持部を金属化する中間ステップB’をステップBとステップCとの間に含んでいる。このステップB’により目標支持部の濡れ性が更に向上し、目標支持部への半田材料の拡散現象が制限されるため、超高真空下でも硬ろう付けによる接合部の気密性が維持される。このステップB’は第2の材料が銅、ニッケル及びタングステンの合金である場合に特に有利である。
【0041】
図4に、
g.真空下に配置されるべく適合されたチャンバEVと、
h.真空チャンバ内で電子ビームFEを放出すべく適合された陰極Catと、
i.FXと表記するX線放射を生成すべく電子ビームが目標に当たるように配置された本発明による陽極Aを含むX線源2を模式的に示す。
【0042】
好適には、第2の材料はモリブデン、銅、又は銅、タングステン及びニッケルを含む合金であって、チャンバEVは、陽極と陰極を電気的に絶縁すべく一部又は全部がセラミック製である。従って、有利な一実施形態によれば、チャンバEVは、チャンバEVの目標支持部とセラミック部分P1、P2を互いに硬ろう付けすることにより陽極Aと共に組み立てられる。この最終的な半田付けステップは、第2の材料の選択の結果として特に容易になり、この材料の選択自体が本発明の形成方法により可能になる。更に、これら第2の材料は、温度の上昇を受けて、従来技術で使用する銅よりもセラミックへの半田付けにはるかに適した機械的挙動を示す。これにより、セラミックを事前に金属化することなく、特に気密性が高く、且つ超高真空下でのチャンバ内の動作に整合する接合部をチャンバEVと陽極との間に得ることが可能になる。
【0043】
好適には、陰極は、パルス電子ビームを放出して磁場効果を通過させるべく適合されていて、目標及び目標支持部は各々所定温度Tが800℃未満となるのに充分な大きさの体積を有している。これが意味するところは、目標及び目標支持部が、温度Tを800℃未満に維持するのに充分な面積及び体積の熱放散を示すということである。これにより、陽極の完全性が維持され、そのライフサイクル全体を通じて正しい動作が保証される。本実施形態において、X線源2は、陽極の所定温度Tを維持するためにX線源内に能動熱冷却素子を一切必要としない。
【0044】
X線源に含まれていてよい全ての素子に関する網羅的な説明は本発明の範囲外である。しかし、本発明の特定の実施形態によれば、本発明のX線源は、X線源に見出される当業者に公知の様々な素子を含んでいる。例えば、X線源2は、陰極の近傍に配置されていて電子ビームFEを目標Cに合焦できる電極(図4に示さず)を含んでいる。この種の電極はビーム集束電極として知られる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
【国際調査報告】