(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】ドリフトおよび損傷への感受性が低減されたマルチビームシステムおよびマルチビーム生成ユニット
(51)【国際特許分類】
H01J 37/147 20060101AFI20250212BHJP
H01J 37/248 20060101ALI20250212BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
H01J37/147 B
H01J37/248 Z
H01J37/28 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545879
(86)(22)【出願日】2023-01-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-31
(86)【国際出願番号】 EP2023025014
(87)【国際公開番号】W WO2023143860
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】102022201005.1
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521126944
【氏名又は名称】カール ツァイス マルティセム ゲゼルシヤフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151987
【氏名又は名称】谷口 信行
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルツ アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】リーデセル クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】レンケ ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】サロフ ヤンコ
(72)【発明者】
【氏名】ビアー ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ケルプ ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ケストナー マルクス
(72)【発明者】
【氏名】クリイ ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】シューマッハー ディーター
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101BB05
5C101BB08
5C101CC17
5C101EE03
5C101EE08
5C101EE17
5C101EE22
5C101EE48
5C101EE61
5C101EE65
5C101EE67
5C101EE68
5C101EE69
5C101GG20
5C101HH23
5C101HH39
5C101JJ02
5C101JJ10
5C101LL05
(57)【要約】
ドリフトに対する感受性が低減され、寿命が延長されたマルチビーム荷電粒子結像系のマルチビーム生成ユニットが開示される。遮蔽要素、冷却部材、または、能動マルチアパーチャ素子を動作させるための改善された方法のうちの少なくとも1つの組合せによって、X線照射および熱負荷に起因するドリフトが最小限に抑えられる。能動マルチアパーチャ素子、または、例えば電圧源ユニットを形成するマイクロ電子デバイスのアニーリング方法によって、寿命がさらに改善される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
能動マルチアパーチャ素子(306、390)と、前記能動マルチアパーチャ素子(306、390)を制御するように構成されている制御ユニット(840)とを有するマルチビームシステム(1)であって、前記能動マルチアパーチャ素子(306、390)が、
- 使用中に、前記能動マルチアパーチャ素子(306、390)を通じて第1の複数J個の一次荷電粒子ビームレット(3)を透過するように構成されている、ラスタ構成に配置されている複数J個の開口(85)と、
- 前記開口(85)の各々の周囲に配置されている少なくとも1つの電極(81)を備える複数の電極(81)であって、前記複数の電極(81)が、第1の電極グループ(83.1)および第2の電極グループ(83.2)を含む、複数の電極(81)と、
- 使用中に、複数の電圧を前記第1の電極グループ(83.1)に提供するように構成されている第1の電圧源ユニット(261.1)と、
- 使用中に、複数の電圧を前記第2の電極グループ(83.2)に提供するように構成されている第2の電圧源ユニット(261.2)と
を備え、
- 前記第1の電圧源ユニット(261.1)および前記第2の電圧源ユニット(261.2)は、前記制御ユニット(840)に接続されており、
前記制御ユニット(840)は、使用中に、前記第1の電圧源ユニット(261.1)および前記第2の電圧源ユニット(261.2)によって前記第1の電極グループ(83.1)および前記第2の電極グループ(83.2)に提供される複数の電圧を制御するように構成されており、
前記制御ユニット(840)は、使用中に、前記第1の電圧源ユニット(261.1)のドリフトを補償するようにさらに構成されている、マルチビームシステム(1)。
【請求項2】
前記制御ユニット(840)は、使用中に、前記第2の電圧源ユニット(261.2)に提供される補償制御信号によって、前記第1の電圧源ユニット(261.1)の前記ドリフトを補償するように構成されている、請求項1に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項3】
前記第1の電極グループ(83.1)および前記第2の電極グループ(83.2)は、前記ラスタ構成の異なる角度区分(273.1~273.8)に配置されている、請求項1または2に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項4】
前記第1の電極グループ(83.1)および前記第2の電極グループ(83.2)は、前記ラスタ構成の異なる放射状区分(273.1~273.5)に配置されている、請求項1または2に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項5】
前記第1の電圧源ユニット(261.1)のドリフトを監視するように構成されている、少なくとも前記第1の電圧源ユニット(261.1)に接続されている監視デバイス(835)をさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項6】
前記能動マルチアパーチャ素子(306、390)は、前記複数の開口85の各々にあるリング電極(81)を有するマイクロレンズアレイ(306.1)である、請求項1~5のいずれか1項に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項7】
前記能動マルチアパーチャ素子(306、390)は、前記複数の開口85の各々にあるK個の電極(81.1~81.K)を有する複数の多極素子(87)を備える多極アレイ(306.2)であり、各多極素子(87)の電極の数Kは、2、4、6、8または12である、請求項1~5のいずれか1項に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項8】
二次放射が前記第1の電圧源ユニット(261.1)および前記第2の電圧源ユニット(261.2)に当たらないように遮蔽するために提供されている遮蔽部材(93)をさらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項9】
前記遮蔽部材(93)は、前記能動マルチアパーチャ素子(306、390)の前記第1の電圧源ユニット(261.1)および前記第2の電圧源ユニット(261.2)と膜ゾーン(199)との間に提供され、前記複数J個の開口(85)を備える、請求項8に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項10】
前記第1の電圧源ユニット(261.1)は、前記複数J個の開口(85)の間に配置されており、前記遮蔽部材(93.4)は、前記第1の電圧源ユニット(261.1)を被覆するキャップとして形成されている、請求項8に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項11】
マルチビームシステム(1)のための一次マルチビームレット形成ユニット(305)であって、
- 使用中に、前記能動マルチアパーチャ素子(306、390)を通じて第1の複数J個の一次荷電粒子ビームレット(3)を透過するように構成されている、ラスタ構成に配置されている複数J個の開口(85)を備える能動マルチアパーチャ素子(306)と、
- 前記開口(85)の各々の周囲に配置されている少なくとも1つの電極(81)を備える複数の電極(81)と、
- 前記複数の電極(81)のうちのある電極グループ(83)に複数の電圧を提供するように構成されている少なくとも第1の電圧源ユニット(261)と、
- 少なくとも、二次放射が前記第1の電圧源ユニット(261)に当たらないように遮蔽するために提供されている遮蔽部材(93)と
を備える、一次マルチビームレット形成ユニット(305)。
【請求項12】
前記第1の電圧源ユニット(261)は、前記複数J個の開口(85)に隣接して配置されており、前記遮蔽部材(93)は、前記複数J個の開口(85)と前記第1の電圧源ユニット(261)との間に配置されている、請求項11に記載の一次マルチビームレット形成ユニット(305)。
【請求項13】
前記遮蔽部材(93)は、前記一次荷電粒子ビームレット(3)の伝播方向に平行に長尺である、請求項12に記載の一次マルチビームレット形成ユニット(305)。
【請求項14】
前記遮蔽部材(93)は、前記第1の電圧源ユニット(261)に接触して設けられている、請求項11に記載の一次マルチビームレット形成ユニット(305)。
【請求項15】
前記少なくとも第1の電圧源ユニット(261)は、前記複数J個の開口(85)の間に配置されている、請求項14に記載の一次マルチビームレット形成ユニット(305)。
【請求項16】
前記第1の電圧源ユニット(261)の熱ドリフトを低減するように構成されている冷却部材(97)をさらに備える、請求項11~15のいずれか1項に記載の一次マルチビームレット形成ユニット(305)。
【請求項17】
前記遮蔽部材(93)および/または前記冷却部材(9)は、熱シンクに接続されている、請求項16に記載の一次マルチビームレット形成ユニット(305)。
【請求項18】
前記遮蔽部材(93)は、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウムまたは銀を含む第1の材料群の材料を含んでいる、請求項11~17のいずれか1項に記載の一次マルチビームレット形成ユニット(305)。
【請求項19】
前記遮蔽部材(93)は、1mmを超える厚さDを有する、請求項18に記載の一次マルチビームレット形成ユニット(305)。
【請求項20】
前記遮蔽部材(93)は、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金または鉛を含む第2の材料群の材料を含んでいる、請求項11~17のいずれか1項に記載の一次マルチビームレット形成ユニット(305)。
【請求項21】
前記遮蔽部材(93)は、100μmを超える厚さDを有する、請求項20に記載の一次マルチビームレット形成ユニット(305)。
【請求項22】
前記遮蔽部材(93)は、接地レベルに接続されている、請求項11~21のいずれか1項に記載の一次マルチビームレット形成ユニット(305)。
【請求項23】
能動マルチアパーチャ素子(306.2、390)を、寿命を増大させて動作させる方法であって、
- 一連の検査タスクを実施し、前記能動マルチアパーチャ素子(306)の電圧ドリフトまたは結像性能を監視するステップと、
- 電圧ドリフトまたは像性能が所定の閾値を超える場合に、前記能動マルチアパーチャ素子(306)のアニーリングステップをトリガするステップと
を含む、方法。
【請求項24】
前記アニーリングステップは、電圧VGのパルスによる前記能動マルチアパーチャ素子(306)の処理、例えば250℃など、200℃を上回る温度による熱アニーリング、または低エネルギープラズマ処理のうちの少なくとも1つを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記アニーリングステップは、電圧VGのパルスによる前記能動マルチアパーチャ素子(306)の電圧源ユニット(261)の処理、または、例えば250℃など、200℃を上回る温度による熱アニーリングのうちの少なくとも1つを含む、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記電圧源ユニット(261)または前記能動マルチアパーチャ素子(306)の寿命の終わりを予測するステップをさらに含む、請求項23~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の能動マルチアパーチャ素子(306.2、390)を動作させる方法であって、
- 較正ステップにおいて、複数の多極素子(87)の複数の電極(81.1~81.K)のうちの少なくとも第1の電極グループおよび第2の電極グループ(83、83.1、83.2)に複数の電圧を提供するように構成されている、少なくとも第1の電圧源ユニットおよび第2の電圧源ユニット(261、261.3、261.4)を制御するための複数のデジタル制御信号を決定するステップと、
- 連続する検査タスクを実施するステップと、
- 前記マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の結像性能または少なくとも前記第1の電圧源ユニット(261.3)の電圧ドリフトを監視するステップと、
- 前記結像性能または前記電圧ドリフトが所定の閾値を超える場合に、電圧補正ステップをトリガするステップと、
- 少なくとも前記第2の電圧源ユニット(261.4)を制御するための補償デジタル制御信号のセットを決定するステップと、
- 前記補償デジタル制御信号を、少なくとも前記第2の電圧源ユニット(261.4)に提供するステップと
を含む、方法。
【請求項28】
前記補償デジタル制御信号のセットは、前記少なくとも第1の電圧源ユニット(261.3)の前記電圧ドリフトに従って決定される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
マルチビームシステム(1)のための能動マルチアパーチャ素子(306.2、306.3、390)であって、
- ベースプレート(271)と、
- 使用中に、複数J個の一次荷電粒子ビームレット(3)を透過するように構成されている、ラスタ構成に配置されている複数J個の開口(85)を有する内側膜ゾーン(199)と、
- 複数J個の多極素子(87)であり、配置されている各多極素子(87)が、前記複数J個の開口(85)のうちの1つの開口(85)を備えており、各多極素子(87)が、複数K個の電極(81.1~81.K)を備えており、各多極素子(87)が、前記一次荷電粒子ビームレット(3)のうちの1つに影響を及ぼすように構成されている、複数J個の多極素子(87)と、
- 複数L個の電圧源ユニット(261)であり、1つの多極素子(87)の前記K個の電極(81.1~81.K)の各々が、前記複数L個の電圧源ユニット(261)のうちの1つのみに接続されている、複数L個の電圧源ユニット(261)と
を備え、
- 前記複数L個の電圧源ユニット(261)が、前記ベースプレート(271)上に配置されている、能動マルチアパーチャ素子(306.2、306.3、390)。
【請求項30】
前記第1の複数J個の多極素子は、少なくとも第1の多極素子グループおよび第2の多極素子グループを含み、前記第1の多極素子グループの前記電極は、第1の電圧源ユニットに接続されており、前記第2の多極素子グループは、第2の電圧源ユニットに接続されている、請求項29に記載の能動マルチアパーチャ素子(306.2、306.3、390)。
【請求項31】
前記第1の多極素子グループおよび前記第2の多極素子グループは、前記ラスタ構成の異なる環状区分に配置されている、請求項30に記載の能動マルチアパーチャ素子(306.2、306.3、390)。
【請求項32】
第1の複数の多極素子の下流に配置されている第2の複数J個の多極素子をさらに備え、各多極素子は、複数K2個の電極を備えており、前記第2の複数J個の多極素子のうちの1つの多極素子の前記K2個の電極の各々は、前記複数L個の電圧源ユニットのうちの1つのみに接続されている、請求項29~31に記載の能動マルチアパーチャ素子(306.2、306.3、390)。
【請求項33】
前記第1の複数J個の多極素子のうちの1つの多極素子の前記K1個の電極の各々および前記第2の複数J個の多極素子の1つの多極素子の前記K2個の電極の各々は、同じ前記電圧源ユニットに接続されている、請求項32に記載の能動マルチアパーチャ素子(306.2、306.3、390)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マルチビーム荷電粒子結像系のマイクロレンズまたは多極素子のアレイを有するマルチビーム生成ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2005/024881号パンフレットは、検査される物体を複数の電子ビームレットによって並列走査するために複数の電子ビームレットを用いて動作する電子顕微鏡システムを開示している。マルチビーム荷電粒子顕微鏡の複数のビームレットは、マルチビーム生成ユニットにおいて生成される。複数の電子ビームレットは、一次電子ビームを、マルチビーム生成ユニット上へと方向付けることによって生成される。マルチビーム生成ユニットは、複数の開口部を有する、第1のマルチアパーチャ素子を備える。電子ビームの電子の1つの部分は、マルチアパーチャ素子に入射し、そこで吸収され、ビームの別の部分は、マルチアパーチャ素子の開口部を透過し、以て、各開口部の下流において、その断面が開口部の断面によって画定される電子ビームレットが形成される。さらに、マルチアパーチャ素子の上流および/または下流のビーム経路に提供される、適切に選択された電場が、マルチアパーチャ素子内の各開口部を、開口部を通過する電子ビームレットに対してレンズとして作用させ、結果、上記各電子ビームレットが、マルチアパーチャ素子から一定の距離をおいて存在する表面内へと集束される。電子ビームレットの焦点が形成される表面は、下流の光学系によって、検査される物体または試料の表面上に結像される(imaged)。一次電子ビームレットは、二次電子または後方散乱電子が、物体から二次電子ビームレットとして発生するのをトリガし、二次電子ビームレットは、収集されて、検出器上に結像される。二次ビームレットの各々は、別個の検出器要素へと入射し、結果、それによって検出される二次電子強度が、対応する一次ビームレットが試料に入射するロケーションにおける、試料に関係する情報を提供する。複数の一次ビームレットは、試料の表面にわたって体系的に走査され、試料の電子顕微鏡像が、走査型電子顕微鏡にとって通常そうであるように生成される。走査型電子顕微鏡の解像度は、物体に入射する一次ビームレットの焦点直径によって制限される。結果として、マルチビーム電子顕微鏡において、すべてのビームレットが、物体上に同じ小さい焦点を形成する。
【0003】
国際公開第2005/024881号パンフレットにおいて、電子の例において非常に詳細に例示されているシステムおよび方法は、一般に、荷電粒子に非常に良好に適用可能である。したがって、本発明は、複数の荷電粒子ビームによって動作し、より良好な解像度、および、複数のビームレットの各ビームレットのより狭い範囲の解像度などの、より高い結像性能を達成するために使用することができる荷電粒子ビームシステムを提案することを目的とする。
【0004】
マルチビーム荷電粒子顕微鏡は、一般的に、マイクロ光学アレイ素子と巨視的素子の両方を、荷電粒子投影系において使用する。マルチビーム生成ユニットは、荷電粒子のビームを分割し、部分的に吸収し、それに影響を及ぼすための素子を備える。結果として、所定のラスタ構成にある荷電粒子の複数のビームレットが生成される。マルチビーム生成ユニットは、第1のマルチアパーチャ素子、さらなるマルチアパーチャ素子およびマイクロ光学偏向素子または多極アレイ素子などのマイクロ光学素子を備える。
【0005】
マルチビーム生成ユニットは、複数の開口を有する第1のマルチアパーチャ素子を含んでいる。一次電子ビームレットが、第1のマルチアパーチャ素子に衝突しており、電子の一部は、開口を通過し、複数のビームレットを形成する。しかしながら、大部分は、第1のマルチアパーチャ素子の表面において吸収される。他方では、開口を通過する電子から、複数の一次荷電粒子ビームレットが形成される。このタスクのために、例えば、多極もしくはマルチスティグメータアレイまたはレンズアレイなどの、アレイ光学素子が、第1のマルチアパーチャ素子の下流に配置される。アレイ光学素子には、複数の開口が設けられており、開口の各々には、各一次電子ビームレットに個別にまたは協働して影響を及ぼすための少なくとも1つの電極またはコイルが設けられている。それらの動作中、マルチスティグメータアレイまたはレンズアレイが、アレイ光学素子の性能のドリフトを受けることが観察されている。
【0006】
アレイ光学素子の性能のドリフトには、いくつかの理由があり得る。1つの特定の理由は、アレイ光学素子のドライバのドリフトである。例えば、複数の、約100個のビームレットのマルチスティグメータアレイは、ビームレット当たり8つまたは12個の電極を有することができ、電極は合計で1000個を超え、これらは、マイクロ電子デバイスによって形成することができる、複数の電圧源ユニットによって個別に制御される必要がある。したがって、アレイ光学素子の複数の多極電極の制御アーキテクチャは、並列ないくつかのマイクロ電子デバイスを含む。マイクロ電子デバイスは、複数の電極に対する複数の所定の電圧または複数のコイルに対する所定の電流を提供する。電圧または電流のドリフトは、熱ドリフト、マイクロ電子デバイスの帯電効果、または、例えばX線放射によって生成される局所的損傷から生じる可能性がある。ドリフトは、不可逆性の損傷であり得、多極素子の電極のドライバの障害をもたらす可能性がある。
【0007】
マイクロ電子デバイスのドリフトの第1の原因は、一次電子の散乱または吸収であり得る。衝突する電子のわずかな部分が、例えば電極において、開口部内で吸収または散乱され、帯電効果および電圧の局所的変化をもたらす。
【0008】
ドリフトの第2の理由は、第1のマルチアパーチャ素子において吸収された一次電子によって生成される、二次放射であり得る。二次放射は、二次電子、および、X線またはガンマ放射線を含む電磁放射線を含む。典型的には、電圧源ユニットまたはアレイ光学素子を制御するためのマイクロ電子デバイスは、アレイ光学素子の近傍または周辺に配置され、二次放射に侵入され得、または、二次放射を吸収し得る。二次放射が、帯電効果を生成し、最終的にはマイクロ電子デバイスに対する損傷を生成することが観察されている。
【0009】
ドリフトの第3の理由は、個々のマイクロ電子デバイスを駆動する電力であり得、これは、高い熱負荷をもたらす可能性がある。
【0010】
二次放射は、吸収層または第1のマルチアパーチャ素子のバルク材料において、わずかな部分までのみ吸収される。米国特許出願公開第2019/0051494号において、追加の第2のマルチアパーチャ素子を追加することが提案されている。しかしながら、十分な暑さの第2のマルチアパーチャ素子が、第1のマルチアパーチャ素子によって生成される複数の一次荷電ビームレットのための複数の開口を有する必要がある。厚いプレートが、散乱荷電粒子の量を増大させ、第1のマルチアパーチャ素子において生成される複数の一次ビームレットの悪影響を有する。多数の一次ビームレットを有するビーム生成器の現代的な設計において、複数のマルチアパーチャ素子には、生成されるすべてのX線を十分に遮断するのに十分な厚さを与えることができない。加えて、二次放射は方向付けられず、複数の開口を含むすべての方向において生成される。したがって、X線は、第2のマルチアパーチャ素子を通過し得、依然として、第1のマルチアパーチャ素子および第2のマルチアパーチャ素子の下流の電子光学素子に対する帯電効果を引き起こし得る。さらに、マイクロ電子デバイスのドリフトも、上述した他の理由によって生成され得る。
【0011】
米国特許出願公開第2017/0133194号は、粒子ビームシステムであって、粒子源と、粒子ビームが下流に形成される複数の開口部を有する第1のマルチアパーチャプレートと、粒子ビームによって侵入される複数の開口部を有する第2のマルチアパーチャプレートと、第1のマルチアパーチャプレートおよび第2のマルチアパーチャプレートの開口部にも侵入するすべての粒子によって侵入される開口部を有するアパーチャプレートと、粒子ビームによって侵入される複数の開口部を有し、それぞれビームの双極子場または四極子場を提供する複数の場発生器を有する第3のマルチアパーチャプレートと、第2のマルチアパーチャプレート内の第2の開口部がそれぞれ粒子ビーム3に対してレンズとして作用し、場発生器に調整可能な励起を供給するように、マルチアパーチャプレートおよびアパーチャプレートに電位を供給するためのコントローラとを備える、粒子ビームシステムを開示している。コントローラ自体は、システムの真空外囲器の外側に設けられる。コントローラは、場発生器または電極に提供される調整可能電圧を生成するための電子回路に、データリンクを介して接続される。データリンクは、真空外囲器内のシールを通じて導かれる。したがって、電子回路は、真空チャンバの内側に設けられ、二次放射に対して、例えば、真空チャンバの内側で生成されるX線に対して遮蔽されない。
【0012】
したがって、本発明の目的は、帯電効果の熱ドリフトなどのドリフトの影響が低減された、マルチビーム荷電粒子システムのための改善されたビーム生成器を提供することである。本発明のさらなる目的は、マルチビーム荷電粒子システムのための改善されたビーム生成器のための、ドリフトまたは損傷の影響が低減された、改善されたドライバを提供することである。本発明のさらなる目的は、帯電効果の熱ドリフトなどのドリフトの影響が低減された、マルチビーム荷電粒子システムのための改善されたビーム生成器を動作させる改善された方法を提供することである。本発明のまたさらなる目的は、X線などの二次放射の改善された遮蔽を提供することである。
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、ドリフトに対する感受性が低減され、寿命が延長されたマルチビーム荷電粒子結像系のマルチビーム生成ユニットの改善されたアーキテクチャによって解決される。改善されたアーキテクチャによって、遮蔽要素、冷却部材、または、能動マルチアパーチャ素子を動作させるための改善された方法を含む群のうちの少なくとも1つのメンバの組合せによって、X線照射および熱負荷に起因するドリフトが最小限に抑えられる。能動マルチアパーチャ素子、または、例えば電圧源ユニットを形成するマイクロ電子デバイスのアニーリング方法によって、寿命がさらに改善される。
【0014】
本特許出願は、2022年1月31日の出願日を有する独国特許出願公開第10 2022 201 005.1号の優先権を主張し、当該特許文献の内容全体が、参照により本特許出願に組み込まれる。
【0015】
第1の実施形態において、能動マルチアパーチャ素子を動作させる改善された方法のために構成されている、複数J個の一次荷電粒子ビームレットを有する改善されたマルチビームシステムが提供される。改善されたマルチビームシステムは、少なくとも1つの能動マルチアパーチャ素子と、能動マルチアパーチャ素子を制御するように構成されている制御ユニットとを備えている。能動マルチアパーチャ素子は、ラスタ構成に配置されている複数J個の開口を備えており、開口は、使用中に、能動マルチアパーチャ素子を通じて第1の複数J個の一次荷電粒子ビームレットを透過するように構成されている。ラスタ構成は、J個の開口から成る六角形もしくは矩形のラスタとすることができ、または、開口は、一連の円形リングに配置することができる。能動マルチアパーチャ素子は、開口の各々の周囲に配置されている少なくとも1つの電極を備える複数の電極をさらに備えている。第1の実施形態によれば、複数の電極は、少なくとも第1の電極グループおよび第2の電極グループを含んでいる。改善されたマルチビームシステムは、使用中に、複数の電圧を第1の電極グループに提供するように構成されている第1の電圧源ユニットと、使用中に、複数の電圧を第2の電極グループに提供するように構成されている第2の電圧源ユニットとをさらに備えている。第1の電圧源ユニットおよび第2の電圧源ユニットは、能動マルチアパーチャ素子の一部とすることができる。第1の電圧源ユニットおよび第2の電圧源ユニットは、制御ユニットに接続されている。制御ユニットは、使用中に、第1の電圧源ユニットおよび第2の電圧源ユニットによって第1の電極グループおよび第2の電極グループに提供される複数の電圧を制御するように構成されている。制御は、例えば、像品質モニタまたは電圧ドリフトモニタを介して達成することができる。後者の例において、改善されたマルチビームシステムは、少なくとも第1の電圧源ユニットに接続されている監視デバイスをさらに備えている。監視デバイスによって、第1の電圧源ユニットのドリフトを使用中に監視することができる。
【0016】
制御ユニットは、使用中に、少なくとも第1の電圧源ユニットのドリフトを補償するようにさらに構成されている。一例において、制御ユニットは、使用中に、第2の電圧源ユニットに提供される補償制御信号によって、第1の電圧源ユニットのドリフトを補償するように構成されている。
【0017】
第1の電極グループおよび第2の電極グループは、複数J個の開口のラスタ構成の異なる角度区分に配置することができる。代替的な例において、第1の電極グループおよび第2の電極グループは、ラスタ構成の異なる放射状区分に配置することができる。
【0018】
能動マルチアパーチャ素子は、複数の開口の各々にある単一のリング電極を有するマイクロレンズアレイとすることができる。能動マルチアパーチャ素子はまた、複数の開口の各々の周囲に配置されているK個の電極を有する複数の多極素子を備える多極アレイとすることもでき、各多極素子の電極の数Kは、2、4、6、8または12である。
【0019】
第1の実施形態のさらなる例によれば、改善されたマルチビームシステムは、遮蔽部材をさらに備えている。遮蔽部材は、二次放射が第1の電圧源ユニットおよび第2の電圧源ユニットに当たらないように遮蔽するように配置および構成されている。二次放射は、X線放射または二次電子であり得、これらは、電圧源ユニットにおける帯電効果または損傷をもたらす。一例において、第1の遮蔽部材は、一次マルチビームレット形成ユニットのビーム入口側に配置されており、大きい開口を有して構成されている。粒子ビーム源からの荷電粒子ビームは、大きい開口によってフィルタリングされ、ラスタ構成の直径および形状を有するビームが生成される。それによって、一次マルチビームレット形成ユニットのマルチアパーチャプレート内で生成される二次放射が低減される。さらに、大きい開口によって、第1の遮蔽部材は、第1の遮蔽部材内で生成される二次放射が下方の一次マルチビームレット形成ユニットに侵入することができないように、高密度材料を含む十分な厚さの材料組成を有して構成することができる。
【0020】
一例において、能動マルチアパーチャ素子は、少なくとも第1の電圧源ユニットおよび第2の電圧源ユニットが配置される外側または周縁ゾーンと、複数J個の開口を有する内側または膜ゾーンとを備える。この例において、外側または周縁ゾーンと膜ゾーンとの間に、第2の遮蔽部材を設けることができる。
【0021】
さらなる例において、少なくとも第1の電圧源ユニットは、複数J個の開口の間の空間内に配置され、遮蔽部材は、第1の電圧源ユニットを被覆するキャップとして形成される。
【0022】
第1の実施形態のさらなる例によれば、マルチビームシステムの能動マルチアパーチャ素子が提供される。能動マルチアパーチャ素子は、ラスタ構成に配置されている複数J個の開口を有する内側膜ゾーンを有するベースプレートを備えている。それによって、能動マルチアパーチャ素子は、使用中に、複数J個の一次荷電粒子ビームレットを透過するように構成されている。能動マルチアパーチャ素子は、複数J個の多極素子をさらに備えており、各多極素子は、複数J個の開口のうちの1つの開口を備えており、各多極素子は、K個の電極を備えており、各多極素子は、一次荷電粒子ビームレットのうちの1つに影響を及ぼすように構成されている。
【0023】
能動マルチアパーチャ素子は、複数L個の電圧源ユニットをさらに備えており、複数L個の電圧源ユニットは、ベースプレート上に配置されている。この例によれば、1つの多極素子のK個の電極の各々は、複数L個の電圧源ユニットのうちの1つのみに接続されている。例えば、第1の複数J個の多極素子は、少なくとも第1の多極素子グループおよび第2の多極素子グループを含む。第1の多極素子グループの電極は、第1の電圧源ユニットに接続されており、第2の多極素子グループは、第2の電圧源ユニットに接続されている。第1の多極素子グループおよび第2の多極素子グループは、ラスタ構成の異なる環状もしくはリング区分内、または、ラスタ構成の種々の角度区分内に配置することができる。一例の能動マルチアパーチャ素子は、第1の複数の多極素子の下流に配置されている第2の複数J個の多極素子を含んでおり、各多極素子は、複数K2個の電極を備えており、第2の複数J個の多極素子のうちの1つの多極素子のK2個の電極の各々は、複数L個の電圧源ユニットのうちの1つのみに接続されている。さらなる例において、第1の複数J個の多極素子のうちの1つの多極素子のK1個の電極の各々および第2の複数J個の多極素子の対応する多極素子のK2個の電極の各々は、同じ電圧源ユニットに接続されている。
【0024】
第2の実施形態において、少なくとも1つの遮蔽部材または冷却部材を有する改善されたマルチビームシステムが提供される。マルチビームシステムの一次マルチビームレット形成ユニットは、能動マルチアパーチャ素子を備えている。能動マルチアパーチャ素子は、使用中に、能動マルチアパーチャ素子を通じて第1の複数J個の一次荷電粒子ビームレットを透過するように構成されている、ラスタ構成に配置されている複数J個の開口を備えている。能動マルチアパーチャ素子は、開口の各々の周囲に配置されている少なくとも1つの電極を備える複数の電極と、複数の電極のうちのある電極グループに複数の電圧を提供するように構成されている少なくとも第1の電圧源ユニットとをさらに備えている。第2の実施形態によるマルチビームシステムの一次マルチビームレット形成ユニットは、少なくとも、二次放射が第1の電圧源ユニットに当たらないように遮蔽するために提供されている遮蔽部材をさらに備えている。
【0025】
一例において、第1の遮蔽部材は、一次マルチビームレット形成ユニットのビーム入口側に配置されており、大きい開口を有して構成されている。大きい開口によって、第1の遮蔽部材は、第1の遮蔽部材内で生成される二次放射が下方の一次マルチビームレット形成ユニットに侵入することができないように、高密度材料を含む十分な厚さの材料組成を有して構成することができる。
【0026】
一例において、能動マルチアパーチャ素子は、少なくとも第1の電圧源ユニットおよび第2の電圧源ユニットが配置される外側または周縁ゾーンと、複数J個の開口を有する内側または膜ゾーンとを備える。この例において、外側または周縁ゾーンと膜ゾーンとの間に、第2の遮蔽部材を設けることができる。この例によれば、第1の電圧源ユニットは、複数J個の開口に隣接して配置され、第2の遮蔽部材は、複数J個の開口と第1の電圧源ユニットとの間に配置されている。そのような第2の遮蔽部材は、一次荷電粒子ビームレットの伝播方向に平行に長尺とすることができる。
【0027】
第2の実施形態による一次マルチビームレット形成ユニットは、第1の電圧源ユニットの熱ドリフトを低減するように構成されている冷却部材をさらに備えることができる。冷却部材は、マルチビームシステムの真空チャンバの外側の熱シンクに接続することができる。
【0028】
遮蔽部材は、第1の電圧源ユニットに接触して設けることができる。そのような例において、遮蔽部材は、冷却部材と同一とすることができる。一例において、第1の電圧源ユニットは、複数J個の開口の間に配置され、遮蔽部材は、第1の電圧源ユニットに取り付けられており、第1の電圧源ユニットを被覆するキャップまたはプレートレットとして構成することができる。
【0029】
一例によれば、遮蔽部材は、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウムまたは銀を含む第1の材料群の材料を含んでいる。そのような遮蔽部材は、好ましくは、1mmを超える厚さDを有して構成されている。それによって、80%を超える二次放射を吸収することができる。
【0030】
さらなる例によれば、遮蔽部材は、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金または鉛を含む第2の材料群の材料を含んでいる。そのような遮蔽部材には、例えば、約100μm以上などの、より小さい厚さを与えることができる。それによって、80%を超える二次放射を吸収することができる。両方の例において、遮蔽部材は、接地レベルに接続することができ、結果、遮蔽層の一切の帯電が防止される。
【0031】
本発明の第3の実施形態において、能動マルチアパーチャ素子の寿命を延長する方法が提供される。第3の実施形態によれば、マルチビームアレイ素子を動作させるそのような方法は、
a)一連の検査タスクを実施し、能動マルチアパーチャ素子の電圧ドリフトまたは結像(imaging)性能を監視するステップと、
b)電圧ドリフトまたは像性能が所定の閾値を超える場合に、能動マルチアパーチャ素子のアニーリングステップをトリガするステップとを含んでいる。
【0032】
アニーリングステップは、電圧VGのパルスによる能動マルチアパーチャ素子の電圧源ユニットの処理、または、200℃を上回る、好ましくは250°を上回る温度による熱アニーリングのうちの少なくとも1つを含む。
【0033】
アニーリングステップは、電圧VGのパルスによる能動マルチアパーチャ素子の膜ゾーンの処理、または、250℃を上回る温度による熱アニーリング、または低エネルギープラズマ処理のうちの少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0034】
二次放射によって膜ゾーンまたは電圧源ユニット内で局所的帯電効果が誘発され得る。電圧VGのパルスによって、局所的帯電効果が低減される。局所的損傷は、例えば、シリコン層と酸化ケイ素層との間の界面または膜ゾーンもしくは電圧源ユニット内の構造において、X線放射によって生成され得る。熱またはプラズマアニーリングステップによって局所的損傷のうちの少なくとも一部を修復することができる。しかしながら、アニーリングステップを繰り返しても、損傷は蓄積することになる。したがって、本方法は、さらに、二次放射の線量、アニーリングステップの回数または頻度を監視し、電圧源ユニットまたは能動マルチアパーチャ素子の寿命の終わりを予測することができる。
【0035】
第4の実施形態において、能動マルチアパーチャ素子を動作させる改善された方法が提供される。マルチビーム荷電粒子顕微鏡の能動マルチアパーチャ素子を動作させる方法は、
a)較正ステップにおいて、少なくとも第1の電圧源ユニットおよび第2の電圧源ユニットを制御するための複数のデジタル制御信号を決定するステップであって、第1の電圧源ユニットおよび第2の電圧源ユニットが、能動マルチアパーチャ素子の複数の電極のうちの少なくとも第1の電極グループおよび第2の電極グループに複数の電圧を提供するように構成されており、一例において、上記電極または複数の電極が、複数の多極素子を形成する、複数のデジタル制御信号を決定するステップと、
b)連続する検査タスクを実施するステップと、
c)マルチビーム荷電粒子顕微鏡の像品質モニタによって結像性能を監視するか、または、少なくとも第1の電圧源ユニットの電圧ドリフトを監視するステップと、
d)結像性能または電圧ドリフトが所定の閾値を超える場合に、電圧補正ステップをトリガするステップと、
e)電圧補正ステップ中に少なくとも第2の電圧源ユニットを制御するための補償デジタル制御信号のセットを決定するステップと、
f)補償デジタル制御信号を、少なくとも第2の電圧源ユニットに提供するステップとを含んでいる。
【0036】
本方法によれば、第1の電圧源ユニット内のドリフトが、補正された信号を第2の電圧源ユニットに提供することによって補償される。したがって、第1の電圧源ユニットのドリフトが、第2の電圧源ユニットによって、補正された電圧を提供することによって補償される。第4の実施形態によれば、補償デジタル制御信号のセットは、少なくとも第1の電圧源ユニットの電圧ドリフトに従って決定される。
【0037】
本発明の実施形態またはそれらの任意の組合せによって提供される解決策によれば、電圧源ユニットのドリフトは、遮蔽部材または冷却部材によって効果的に低減される。それによって、X線放射によるマルチアパーチャ素子および電圧源ユニットの損傷が、最小限に抑えられる。マルチビームシステムには、電圧モニタをさらに提供することができる。改善された動作方法、および、改善された方法を実行するように構成されているマルチビームシステムによれば、電圧源ユニットの電圧ドリフトの効果を低減することができる。これによって、能動マルチアパーチャプレートをより長く使用することができる。
【0038】
上述したアニーリング方法によって、局所的帯電および局所的欠陥を少なくとも部分的に低減または回復することができ、マルチアパーチャ素子または電圧源ユニットの寿命を延長することができる。したがって、マルチビーム荷電粒子顕微鏡のアップタイムが増大し、高価な部品の交換を含むサービスまたはメンテナンスが低減される。
【0039】
本開示および特許請求の範囲の例において、静電マイクロレンズまたは静電多極素子などの静電素子のアレイが記載されており、それに対して、少なくとも1つの電圧源ユニットによって駆動電圧が提供される。しかしながら、能動マルチアパーチャ素子はまた、電極の代わりにコイルを有する磁気力学的素子として構成することもできる。これらの等価な例において、駆動電流は、少なくとも1つの電流源ユニットによって提供され、電流源ユニットは、例えば、ASICまたは他の等価なマイクロ電子デバイスを備えていることができる。したがって、コイル、駆動電流または電流源ユニットは、電極、駆動電圧または電圧源ユニットに対する等価な手段であり、本発明は、磁気力学的アレイ素子に容易に適用することができる。
【0040】
本発明は本実施形態および例に限定されず、本実施形態および例の組合せおよび変形例も含むことを理解されたい。
【0041】
本開示の実施形態について、図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】第1の実施形態によるウェハ検査のためのマルチビーム荷電粒子システムの概略断面図である。
【
図2】改善された駆動アーキテクチャを有するマルチビーム形成ユニット305を示す図である。
【
図4】
図3の多極アレイ素子306.2の一区分を示す図である。
【
図5】代替的な多極アレイ素子306.2の一区分を示す図である。
【
図6】多極アレイ素子306.2のさらなる例の上面図である。
【
図7】遮蔽部材93を有するマルチビーム形成ユニット305を示す図である。
【
図8】多極アレイ素子390のさらなる例を示す図である。
【
図9】寿命を延長して多極アレイ素子を動作させる方法を示す図である。
【
図10】個々の電圧源ユニットの大域的電圧オフセットによって誘発されるスポット収差を示す図である。
【
図11】電圧ドリフトの影響を低減して多極アレイ素子を動作させる方法を示す図である。
【
図12】複数のリング電極を備えるマイクロレンズアレイとして形成されるマルチアパーチャ素子を示す図である。
【
図13】一次マルチビームレット形成ユニット305の熱またはプラズマアニーリングを受けている真空区画を示す図である。
【
図14】遮蔽部材93を有するマルチビーム形成ユニット305のさらなる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
下記に記載する本発明の例示的な実施形態において、機能および構造が同様の構成要素は、可能な限り、同様のまたは同一の参照符号によって指示されている。本例のマルチビームラスタユニットは、荷電粒子が正のz方向に伝播する照射ビーム経路内に記載されており、z方向は下を指している。しかしながら、マルチビームラスタユニットはまた、二次荷電粒子ビームレットが
図1の座標系において負のz方向に伝播する、結像ビーム経路内にも適用され得る。依然として、連続するマルチアパーチャ素子は、透過荷電粒子ビームまたはビームレットの伝播方向に順次配置される。ビーム入口側または上側は、透過荷電粒子ビームまたはビームレットの方向における素子の第1の表面または側であると理解され、底部側またはビーム出射側は、透過荷電粒子ビームまたはビームレットの方向における素子の最後の表面または側であると理解される。
【0044】
図1の概略表現は、本発明の実施形態によるマルチビーム荷電粒子顕微鏡システム1の基本的な特徴および機能を示す。図面内で使用されている記号は、それらのそれぞれの機能性を記号化するように選択されていることに留意されたい。図示されているシステムのタイプは、対物レンズ102の対物面101内に上面25が位置するウェハなどの物体7の表面25上に複数の一次荷電粒子ビームスポット5を生成するために複数の一次電子ビームレット3を使用するマルチビーム走査型電子顕微鏡(MSEMまたはMulti-SEM)のタイプである。単純にするために、5つの一次荷電粒子ビームレット3および5つの一次荷電粒子ビームスポット5のみが示されている。マルチビームレット荷電粒子顕微鏡システム1の特徴および機能は、電子、または、イオンおよび特にヘリウムイオンなどの他のタイプの一次荷電粒子を使用して実装することができる。顕微鏡システム1のさらなる詳細は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、2020年8月5日に出願された独国特許出願公開第102020209833.6号に与えられている。
【0045】
顕微鏡システム1は、物体照射ユニット100と、検出ユニット200と、二次荷電粒子ビーム経路11を一次荷電粒子ビーム経路13から分離するためのビームスプリッタユニット400とを備える。物体照射ユニット100は、複数の一次荷電粒子ビームレット3を生成するための荷電粒子マルチビーム生成器300を備え、ウェハ7の表面25が試料ステージ500によって位置付けられる対物面101内に複数の一次荷電粒子ビームレット3を集束させるように適合されている。
【0046】
一次ビーム生成器300は、典型的には球状に湾曲した表面である中間像面321内に、複数の一次荷電粒子ビームレットスポット311を生成する。複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の複数の焦点(311)の位置は、マルチビーム生成ユニット305の下流の物体照射ユニット(100)の素子の像面湾曲および像面傾斜を予め補償するために、マルチビーム生成ユニット(305)によって中間像面(321)内で生成および調整される。
【0047】
一次ビームレット生成器300は、例えば電子などの、一次荷電粒子の供給源301を含む。一次荷電粒子源301は、発散する一次荷電粒子ビームを放出し、これは、少なくとも1つのコリメートレンズ303によってコリメートされて、コリメートまたは平行一次荷電粒子ビーム309が形成される。コリメートレンズ303は、通常、1つもしくは複数の静電もしくは磁気レンズから、または、静電レンズと磁気レンズとの組合せによって構成されている。コリメート一次荷電粒子ビームは、一次マルチビーム形成ユニット305に入射する。マルチビーム形成ユニット305は、基本的に、コリメート一次荷電粒子ビーム309によって照射される第1のマルチアパーチャ素子またはフィルタプレート304を備える。第1のマルチアパーチャ素子またはフィルタプレート304は複数の開口を備え、複数の開口は、コリメート一次荷電粒子ビーム309が複数の開口を透過することによって生成される複数の一次荷電粒子ビームレット3を生成するためのラスタ構成にある。この例のマルチビームレット形成ユニット305は、ビーム309内の電子の動きの方向に対して、第1のマルチアパーチャまたはフィルタプレート304の下流に位置する、2つの能動マルチアパーチャ素子306.1~306.2を備える。例えば、第1の能動マルチアパーチャ素子306.1は、複数のリング電極を備えるマイクロレンズアレイの機能を有し、各リング電極は、複数の一次ビームレット3の焦点位置が中間像面321内で調整されるように、規定された電位に設定される。第2の能動マルチアパーチャ素子306.2は、多極アレイの偏向器として構成されており、例えば、複数のビームレットの各々を個別に偏向させるために、複数の開口の各々のための、例えば、2つ、4つまたは8つの静電素子を備える。いくつかの実施形態によるマルチビームレット形成ユニット305は、終端マルチアパーチャ素子(310)を有して構成されている。マルチビームレット形成ユニット305は、いくつかの例においてマルチビームレット形成ユニット305と組み合わされる、隣接する静電場レンズ307を有してさらに構成されている。任意選択の第2の場レンズ308とともに、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)が、中間像面321内にまたはそれに近接して集束される。
【0048】
中間像面321内にまたはそれに近接して、複数の荷電粒子ビームレット3の各々の伝播方向を個別に操作するために、例えば、偏向器などの、静電素子を有する複数の開口を有する、ビームステアリングマルチアパーチャ素子390として構成されているさらなる能動マルチアパーチャ素子を配置することができる。ビームステアリングマルチアパーチャ素子390の開口は、一次荷電粒子ビームレット3の焦点スポット311が湾曲した中間像面321上に位置する場合であっても、複数の一次荷電粒子ビームレット3が通過することを可能にするために、より大きい直径を有するように構成されている。一次荷電粒子源301、能動マルチアパーチャ素子306およびビームステアリングマルチアパーチャ素子390は、制御ユニット800に接続されている一次ビームレット制御モジュール830によって制御される。
【0049】
中間像面321を通過する一次荷電粒子ビームレット3の複数の焦点が、場レンズ群103および対物レンズ102によって、ウェハ7の表面25が位置付けられている像面101内に結像される。試料電圧供給源(503)によってウェハに電圧を印加することによって、対物レンズ102とウェハ表面との間に減速静電場が生成される。物体照射システム100は、複数の荷電粒子ビームレット3を荷電粒子ビームレットの伝播方向と垂直な方向に偏向させることができる、第1のビームクロスオーバ108に近接する集光マルチビームラスタスキャナ110をさらに備える。本例全体を通じた一次ビームレットの伝播方向は、正のz方向にある。対物レンズ102および集光マルチビームラスタスキャナ110は、ウェハ表面25に垂直である、マルチビーム荷電粒子システム1の光軸105に中心合わせされる。ラスタ構成に配置構成されている複数のビームスポット5を形成する複数の一次荷電粒子ビームレット3は、ウェハ表面25にわたって同期的に走査される。一例において、複数N個の一次荷電粒子3の焦点スポット5のラスタ構成は、例えば、N=91、N=100、またはN=約300のビームレットなどの、約100またはそれ以上の一次荷電粒子ビームレット3の六角形ラスタである。一次ビームスポット5は、約6μm~15μmの距離、および、例えば、3nm、2nm、またはさらに下回るものなどの、5nmを下回る直径を有する。一例において、ビームスポットサイズは、約1.5nmであり、2つの隣接するビームスポットの間の距離は、8μmである。複数の一次ビームスポット5の各々の各走査位置において、複数の二次電子がそれぞれ生成され、一次ビームスポット5と同じラスタ構成にある複数の二次電子ビームレット9が形成される。各ビームスポット5において生成される二次荷電粒子ビームレット9の強度は、対応するスポット5を照射する、衝突する一次荷電粒子ビームレット3の強度、ビームスポット5の下の物体7の材料組成およびトポロジ、ならびに、ビームスポット5における試料の充電条件に依存する。二次荷電粒子ビームレット9は、試料7と対物レンズ102との間で試料充電ユニット503によって生成される静電場によって加速される。複数の二次荷電粒子ビームレット9は、対物レンズ102とウェハ表面25との間の静電場によって加速され、対物レンズ102によって収集され、一次ビームレット3とは反対の方向において、第1の集光マルチビームラスタスキャナ110を通過する。複数の二次ビームレット9は、第1の集光マルチビームラスタスキャナ110によって走査偏向されている。複数の二次荷電粒子ビームレット9は、次いで、検出ユニット200の二次ビーム経路11に従うように、ビームスプリッタユニット400によって案内される。複数の二次電子ビームレット9は、一次荷電粒子ビームレット3とは反対の方向に進行しており、ビームスプリッタユニット400は、通常、磁場または磁場と静電場との組合せによって、二次ビーム経路11を一次ビーム経路13から分離するように構成されている。任意選択的に、追加の磁気補正素子420が、一次および二次ビーム経路内に存在する。
【0050】
顕微鏡システム1は、荷電粒子ビームの真空環境を維持するための真空チャンバ31を備えている。真空チャンバ31は、非常に概略的に示されている。真空チャンバ31の部分は、複数の一次または二次荷電粒子ビームレットの周りのビーム管によって形成することができる。荷電粒子光学系の他の機能要素は、真空チャンバ31の外側に配置することができる。
【0051】
検出ユニット200は、二次電子ビームレット9を像センサ207上に結像して、そこで、複数の二次荷電粒子像スポット15を形成する。検出器または像センサ207は、複数の検出ピクセルまたは個別の検出器を含む。複数の二次荷電粒子ビームスポット15の各々について、強度は別個に検出され、ウェハ表面25の材料組成は、高いスループットを有するウェハの大きい像パッチの高い分解能で検出される。例えば、8μmピッチを有する10×10ビームレットのラスタによって、約88μm×88μmの像パッチが、例えば2nm以下の像分解能で、集光マルチビームラスタスキャナ110による1回の像走査で生成される。像パッチは、ビームスポットサイズの半分によってサンプリングされ、したがって、各ビームレットの像ラインあたり8000ピクセルのピクセル数を有し、結果、100個のビームレットによって生成される像パッチは、6.4ギガピクセルを含む。デジタル像データは、制御ユニット800によって収集される。例えば並列処理を使用した、デジタル像データ収集および処理の詳細は、参照により本明細書に組み込まれる、独国特許出願公開第102019000470.1号および米国特許第9.536.702号明細書に記載されている。
【0052】
投影システム205は、走査および結像制御ユニット820に接続されている、少なくとも第2の集光ラスタスキャナ222をさらに備える。制御ユニット800および結像制御ユニット820は、複数の二次電子焦点スポット15の位置が像センサ207において一定に保持されるように、複数の二次電子ビームレット9の複数の焦点15の位置の残差を補償するように構成されている。
【0053】
検出ユニット200の投影システム205は、さらなる静電または磁気レンズ208、209、210と、開口214が位置する複数の二次電子ビームレット9の第2のクロスオーバ212とを備える。一例において、開口214は、結像制御ユニット820に接続されている検出器(図示せず)をさらに備える。結像制御ユニット820は、少なくとも1つの静電レンズ206および第3の偏向ユニット218にさらに接続されている。投影システム205は、制御ユニット800または結像制御ユニット820に接続されている、複数の二次電子ビームレット9の各々に個別に影響を及ぼすための開口および電極を有する少なくとも第1のマルチアパーチャ補正器220と、任意選択のさらなる能動素子216とをさらに備えることができる。
【0054】
像センサ207は、投影レンズ205によって像センサ207上へと集束される二次電子ビームレット9のラスタ配置構成に適合するパターンにある検知領域のアレイによって構成されている。これによって、像センサ207に入射する他の二次電子ビームレットから独立して、各個別の二次電子ビームレットを検出することが可能になる。像センサはまた、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1の像品質モニタとしての役割も果たすことができる。
図1に示す像センサ207は、CMOSまたはCCDセンサなどの電子感受性検出器アレイとすることができる。そのような電子感受性検出器アレイは、シンチレータ素子またはシンチレータ素子のアレイなどの、電子-光子変換ユニットを含むことができる。別の実施形態において、像センサ207は、複数の二次電子粒子像スポット15の焦点面内に配置構成されている電子-光子変換ユニットまたはシンチレータプレートとして構成することができる。この実施形態において、像センサ207は、複数の光電子増倍管またはアバランシェフォトダイオード(図示せず)などの、専用の光子検出素子上の二次荷電粒子像スポット15において電子-光子変換ユニットによって生成される光子を結像および案内するための中継光学系をさらに備えることができる。そのような像センサは、上記で引用されており、参照により組み込まれる、米国特許第9,536,702号明細書に開示されている。一例において、中継光学系は、光を分割して第1の低速光検出器および第2の高速光検出器に案内するためのビームスプリッタをさらに備える。第2の高速光検出器は、例えば、複数の一次荷電粒子ビームレット3の走査速度に従って複数の二次電子ビームレット9の像信号を分解するのに十分に速い、アバランシェフォトダイオードなどのフォトダイオードのアレイによって構成されている。第1の低速光検出器は、好ましくは、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1の像品質モニタとしての役割を果たす、高分解能センサデータ信号を提供する、CMOSまたはCCDセンサである。
【0055】
複数の一次荷電粒子ビームレット3を走査することによって像パッチを取得している間、ステージ500は、好ましくは、移動されず、像パッチの取得後、ステージ500は、取得される次の像パッチに移動される。代替的な実施態様において、ステージ500は、集光マルチビームラスタスキャナ110によって第1の方向において複数の一次荷電粒子ビームレット3を走査することによって像が取得されている間に、第2の方向に連続的に移動される。ステージ移動およびステージ位置は、レーザ干渉計、格子干渉計、共焦点マイクロレンズアレイなどのような、当該技術分野において知られているセンサによって監視および制御される。
【0056】
本発明の一実施形態によれば、複数の電気信号が作成され、デジタル像データに変換され、制御ユニット800によって処理される。像走査中、制御ユニット800は、像センサ207が、所定の時間間隔をおいて複数の適時に分解された強度信号を複数の二次電子ビームレット9から検出するのをトリガするように構成されており、複数の一次荷電粒子ビームレット3のすべての走査位置からの像パッチのデジタル像が蓄積され、ともにスティッチングされる。
【0057】
マルチビーム生成ユニット305は、例えば、両方とも参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第16/277.572号、米国特許出願公開第2019/0259575号、および2019年2月4日に出願された米国特許出願第16/266.842号において説明されている。作製誤差および散乱に非感受性であるマルチビーム生成ユニット305のさらなる詳細は、参照により本明細書に組み込まれる、2021年9月3日に出願されたPCT/EP2021/025095に開示されている。
【0058】
使用中にマルチビーム荷電粒子顕微鏡の性能を増強するために、例えば、マイクロレンズアレイ306.1の複数の個別に制御されるリング電極、または、スティグメータもしくは多極アレイ素子306.2の複数の個別に制御される電極による個別の集束補正によって、複数の荷電粒子ビームレットの各々が個別に制御される。複数の電極の電圧の個別の制御は、プログラム可能制御要素によって提供される。複数の電圧を生成および制御するための改善された制御アーキテクチャの本発明の第1の実施形態が、
図2に示されている。各々が膜ゾーン199内の平行に配置された膜および支持ゾーン197内の支持構造を有する、マルチアパーチャ素子304、306および310を備える一次マルチビームレット形成ユニット305が、支持基板の追加の機能を有するキャリアまたは支持基板271上に搭載される。この例において、一次マルチビームレット形成ユニット305は、各々が各開口85に配置されている複数の電極を備える、マイクロレンズアレイ素子306.1および多極アレイ素子306.2を含む、3つの能動マルチアパーチャ素子306を備える。さらなる能動マルチアパーチャ素子306.3は、例えば、第2の多極アレイ素子とすることができる。少なくとも2つのASIC261.1および261.2が、支持基板271上に搭載されている。例えば、ASICは、能動マルチアパーチャ素子の複数の電極の電圧源ユニットを形成する。ASICまたは電圧源ユニットは、マイクロレンズアレイ306.1のリング電極および多極アレイ素子306.2の電極のために提供されてもよい。電極は、低電圧配線接続257.1および257.2によって電圧源ユニット261に接続されている。ASICは、デジタル信号線267.1および267.2を介してデジタル信号によって制御され、低電圧供給線269.1および269.2によって電源(図示せず)から電力を受け取る。この例において、膜ゾーン199内のJ=25個のみの開口(85)、ならびに、2つのみのASIC261.1および261.2が示されている。複数J個の開口85は、より大きくすることができ、例えば、J=91、J=100以上、例えば、J=1000とすることができる。各多極素子の電極の数は、例えば、各開口において6つ、8つまたは12個の電極とすることができ、電極の総数は、500を容易に超えることができ、例えば、700超、またはさらにより多く、例えばJ=1000とすることができ、多極アレイ素子は、最大12000個の電極を有する。加えて、個々の電圧は、マイクロレンズアレイを形成する能動マルチアパーチャ素子306.1の複数J個のリング電極に提供される。したがって、ASICの数も、2よりも大幅に大きくなり得、例えば、6つ、8つまたはさらには最大約100個のASICが必要とされ得る。ASICは、例えば、アナログ電圧を電極に提供するための複数のデジタル-アナログ変換器(DAC)を形成し、各電極に1つのDACがある。一例において、複数J=91個のビームレットのマルチビームラスタユニット305は、少なくとも728個の個別のDACおよび728個の電極への728個の個別の配線接続257を必要とする。
【0059】
図2aは、第1の実施形態による一次マルチビームレット形成ユニット305の一例を通る断面を示す。一次マルチビームレット形成ユニット305は、フィルタプレート304と、異なる機能を有するいくつかの能動マルチアパーチャ素子306.1~306.3とを備える。一次マルチビームレット形成ユニット305は、終端マルチアパーチャ素子310をさらに備える。ビーム入口または上側74において、一次電子ビーム309が入射する。複数の一次電子ビームレット3は、底部側またはビーム出射側76において一次マルチビームレット形成ユニット305から出射する。マルチアパーチャ素子304、306および310の各々は、一次マルチビームレット形成ユニット305によって生成される、複数の一次電子ビームレット3のラスタ構成に配置されている複数の開口85を有する内側膜ゾーン199を備える。各マルチアパーチャ素子304、306および310は、支持ゾーン197をさらに備え、それによって、マルチアパーチャ素子は、互いに対して位置整合され、搭載される。一次マルチビームレット形成ユニット305は、少なくとも1つのマルチアパーチャ素子の支持ゾーン197が取り付けられるキャリア要素271をさらに備えている。キャリア要素上に、ASIC262.1および262.2を含む複数の電圧源ユニットが配置されている。ASICデバイス262.1および262.2などのマイクロ電子デバイスによって、能動マルチアパーチャアレイ素子の複数の電極に必要な複数の電圧が生成され、提供される。
【0060】
図2bは、一次マルチビームレット形成ユニット305の正のz方向における上面図を示す。同じ要素は、同一の参照符号によってラベル付けされている。複数の電極を個別に制御するために、電極は、配線接続257によってASICデバイス262.1および262.2などのマイクロ電子デバイスに接続されている。遮蔽および吸収層またはセンサのための追加の配線を提供することができる。高電圧は、外部コントローラによって、マルチアパーチャ素子への接続251またはASIC261への接続253を用いて提供される。高電圧接続251および253は、同軸遮蔽ケーシング255によって電気的に遮蔽することができる。電極は、例えば、10Vから最大1kVの間の、数桁の差がある駆動電圧を必要とする。例えば、マルチレンズアレイ306.1は、レンズアレイ(図示せず)のリング電極の各々に約200Vを提供するためのJ個の電圧配線を必要とする。ビーム補正および偏向のための多極アレイ306.2は、ノイズを非常に低くしておよそ数ボルトを提供するために、例えば、J×8個の電圧配線を必要とする。電圧は、アレイ制御ユニット840へのデジタルインターフェースを用いて、真空内に配置されたASIC261.1および261.2(2つのみ図示)によって提供される。アレイ制御ユニット840は、能動マルチアパーチャ素子306.1~306.3を制御するように構成されている、一次ビーム経路制御モジュール830の要素である。
【0061】
信号および電圧供給源のルーティングは、UHVフランジ(図示せず)を介して得られる。一例において、ASICまたは電圧源ユニット261.1および261.2は、ASICの各々の少なくとも代表的な電圧または電圧制御出力263.1および263.2を制御する電圧ドリフトモニタ835にさらに接続されている。電圧ドリフトモニタ835は、アレイ制御ユニット840に接続されている。アレイ制御ユニット840は、電圧制御出力263.1および263.2を評価するように構成されており、第1の電圧源ユニット261.1または第2の電圧源ユニット261.2に提供されるデジタル制御信号を計算することによって、例えば、第1の電圧源ユニットまたはASIC261.1のドリフトを補償するように構成されている。アレイ制御ユニット840は、像性能センサ860にさらに接続されており、像性能センサは、デジタル信号線267.1および267.2を介してASIC261.1および261.2に提供されるデジタル制御信号を決定するために、アレイ制御ユニット840に入力を提供する。例えば、個々のビームレットの非点収差が決定され、個々のビームレットに対応する多極素子によって非点収差を補償するために、非点収差の補正のための対応する対応するが導出される。上記で与えたアーキテクチャによって、多極アレイ素子の精密で信頼可能な制御が可能にされる。さらなる詳細は下記に説明する。
【0062】
図3は、六角形ラスタ構成に配置されている複数J個の開口85を有する多極アレイ306.2として形成されている能動マルチアパーチャ素子の一例を示す。ラスタ構成は、x-y軸に関して回転されている。それによって、磁気力学的対物レンズ102および他の磁気レンズの回転が予め補償される。複数の開口の各々において、8つの電極81が配置され、多極素子87を形成している。この例において、J=61個の多極素子87を有するJ=61個の開口のみが示されている。多極アレイ306.1は、区分境界275によって8つの区分273.1~273.8に構成されている。各区分は、電極グループ83.1~83.8を含む。区分境界は、
図4内で、開口85.59にある多極素子87の例において示されており、電極81.1~81.4および電極81.8は第3の電極グループ83.3のメンバであり、電極81.5~81.2は、第4の電極グループ83.4のメンバである。単純にするために、単一の開口および単一の多極素子87のみが示されている。一例において、区分273内の電極81は、第1の電圧源ユニット261.3に接続されている第1の電極グループを形成する。区分261.4内の電極は、電圧源ユニット261.4に接続されている第2の電極グループを形成する。したがって、区分273.4の第2の電極グループの開口85.59の電極に局所的補償電圧オフセットを印加することによって、電圧源ユニット261.3内の大域的ドリフトを補償することができる。それによって、8つの電極81.1~81.8の間の相対電圧差が維持され、多極素子87が、期待される所定の様式で動作する。
図5は、開口85.59にある各多極素子の、この例では多極素子87の電極が1つの電圧源ユニット261.3のみに帰属し、接続されるように区分が選択される、別の例を示す。この例において、電圧源ユニット261.3の大域的ドリフトは、8つの電極81.1~81.8の間の相対電圧差に影響を及ぼさず、多極素子87が、期待される所定の様式で動作する。しかしながら、電圧源ユニット261はまた、局所的電圧ドリフトも有し得、マルチコアアーキテクチャなどである、複数のマイクロ電子サブユニットによって構成され得る。他の例において、区分は角度区分として形成されない。
【0063】
図5の例によれば、マルチビームシステム(1)のマルチビームアレイ素子306.2は、使用中に、複数J個の一次荷電粒子ビームレット3を透過するように構成されている、ラスタ構成に配置されている複数J個の開口85を有する内側膜ゾーン199を備えている。マルチビームアレイ素子306.2は、複数J個の多極素子(87)をさらに備えており、各多極素子(87)は、複数J個の開口(85)のうちの1つの開口(85)を備えており、各多極素子は、複数K1個の電極(81.1~81.K)を備えており、各多極素子(87)は、一次荷電粒子ビームレット(3)のうちの1つに影響を及ぼすように構成されている。マルチビームアレイ素子306.2は、複数L個の電圧源ユニットをさらに備えており、1つの多極素子(87)のK個の電極(81.1~81.K)の各々は、複数L個の電圧源ユニット261のうちの1つのみに接続されている。一例において、複数L個の電圧源ユニット(261)は、複数J個の開口(85)のラスタ構成の周辺のベースプレート(271)上に配置される。
【0064】
環状区分273.1~273.5を有する例が、
図6に示されている。多極アレイ素子306.2の1つのタスクが、一次マルチビームレット形成ユニット305の集束能力に寄与すること、ならびに、マルチビーム荷電粒子顕微鏡システム1の像面湾曲および像面傾斜を補償することである場合に、環状区分の選択が有利である。多極素子87を異なるリング区分に割り当てることによって、対応する電極グループの対応する電圧源ユニットが、同様の電力によって駆動される。第1の区分273.1の第1の電極グループは、例えば、より強い集束能力を達成するためにより大きい電圧によって駆動され、一方、第5の区分273.5の第5の電極グループは、平均してより低い電圧によって駆動される。したがって、第5の電極グループは、例えば、第1の電極グループの第1の電圧源ユニット261.1の熱ドリフトによって受ける影響がより少ない。
【0065】
多極アレイ素子306.2の性能は、電圧源ユニット261のドリフトに対して感受性である。電圧源ユニット261は、電圧のドリフトを経時的に示し得るか、または、異なる電圧オフセットを経時的に蓄積させ得る。さらに、多極アレイ素子306.2に対して生成される不正確な電圧は、電圧源ユニット261の局所的または大域的損傷の結果であり得る。例えば、X線放射のような二次放射は、異なるオフセット電圧または損傷の1つの発生源であり得る。本発明の第2の実施形態によれば、二次放射の影響は、遮蔽部材によって低減される。一例が、
図7に示されている。
図7において、厚い吸収体または第1の遮蔽部材93.1が、フィルタプレート304の入口側74に設けられている。第1の遮蔽部材93.1は、一次ビーム309を開口85のラスタを照射するのに必要な領域に制限するように構成されている開口91を有する。一例において、開口91は、z方向に直径が増大する円錐形状を有する。それによって、開口91の内側における一次電子ビーム309の散乱が最小限に抑えられる。開口91の断面は、ラスタ構成の領域に従って、例えば、約1mm以上の直径を有する六角形形状の領域によって構成することができる。したがって、大きい開口91を有する第1の遮蔽部材93.1には、大きい厚さを与えることができる。それによって、第1の遮蔽プレート93.1の上流で生成される二次放射901.1が、電圧源ユニット261に達するのを効果的に防止することができ、電圧ドリフトまたは損傷が低減される。さらに、第1の遮蔽部材93.1において生成される二次放射901.2の透過が低減される。第1の遮蔽部材93.1は、高伝導性材料によって構成されており、接地レベルに接続されている。それによって、第1の遮蔽部材93.1の局所表面電荷を含む帯電が回避される。
【0066】
開口85のラスタに従って構成されているサイズおよび面積を有する開口91によって、一次荷電粒子ビーム309.1のビーム直径が、開口85のラスタによるサイズおよび面積を有するフィルタリング済み一次ビーム309.2に効果的に低減される。それによって、フィルタプレート304における吸収される電子の数または二次放射の生成が、最小値に低減される。第1のマルチアパーチャ素子またはフィルタプレート304は、高密度かつ高伝導性の材料から作成される吸収層を備える。吸収層は、接地レベルに接続される。フィルタリング済みビーム309.2のほとんどの一次荷電粒子が吸収され、対応する電荷は、接地レベルまで消散される。しかしながら、まだ一部の一次電子が、フィルタプレート304において散乱され、まだ一部の二次放射901.3が、フィルタプレート304において生成され得る。X線または二次電子などの二次放射901.3は、あらゆる方向に放出され得る。特に、X線は、能動マルチアパーチャ素子306の薄膜ゾーン199および支持要素197に侵入する可能性があり、電圧源ユニット261に影響を及ぼし、損傷または電荷ドリフトを引き起こす可能性がある。一例において、電圧源ユニット261のさらなる損傷またはドリフトが回避される。この例において、一次マルチビームレット形成ユニット305には、第2の遮蔽部材93.2が提供され、これは、マルチアパーチャ素子304、306および310ならびに電圧源要素261の間に配置される。それによって、マルチアパーチャ素子304、306および310内で生成される二次放射901.3が、電圧源ユニット261に達するのを効果的に防止することができ、電圧源ユニット261の電圧のドリフトまたは損傷が低減される。一例において、遮蔽部材93.2は、マルチアパーチャ素子304、306および310の周囲に配置され、マルチアパーチャ素子304、306および310を包囲する。
【0067】
一次マルチビームレット形成ユニット305は、少なくとも第1の遮蔽部材93.1第2の遮蔽部材93.2もしくは両方の組合せを有して構成することができる。
図7に示すさらなる例において、電圧源ユニット261のなおさらなる損傷またはドリフトが回避される。この例において、一次マルチビームレット形成ユニット305には、第3の遮蔽部材93.3が提供され、これは、マルチアパーチャ素子304、306および310ならびに電圧源要素261の下方に配置される。それによって、一次マルチビームレット形成ユニット305の下流の電子光学素子によって生成される二次放射901.4が、電圧源ユニット261に達するのを効果的に防止することができ、電圧源ユニット261の電圧のドリフトまたは損傷がさらに低減される。
図7において、1つの電圧源ユニット261のみが示されているが、上記で説明したように、いくつかの電圧源ユニット261.1~261.Nを、能動マルチアパーチャアレイ素子306.1~306.3の周囲に配置することができる。
【0068】
X線放射901の形態の二次放射は、空間電荷または半導体内の局所帯電効果を生成し得る。帯電効果は、経時的に蓄積し得、トランジスタなどのマイクロ電子デバイスの性能またはDACの容量に影響を及ぼし得る。したがって、帯電効果は、電圧ドリフトの発生源である。X線放射901は、さらに吸収され得、熱が生成される。電圧源ユニット261の動作温度の変化は、電圧ドリフトのさらなる発生源である。しかしながら、遮蔽部材93があっても、電圧源ユニット261の動作温度は、一般に、例えば、電極を必要な電圧に達するために充電するのに必要な電流など、その動作条件の影響を受ける。電圧源ユニット261は、真空チャンバの内側に配置されるため、熱の対流を介した冷却は可能でない。したがって、一例において、
図7の電圧源ユニット261は、冷却部材97に物理的に接続されている。冷却部材97は、真空チャンバ31(
図1参照、
図7には示さず)の外側のヒートシンクに接続することができる。それによって、電圧源ユニット261の温度を制御することができ、温度による電圧ドリフトを最小限に抑えることができる。一例において、冷却部材97および遮蔽部材93は、同一であり、単一の部材として形成される。
【0069】
遮蔽要素93の効果は、典型的には、問題の二次放射の吸収係数μによって説明される。減衰は、典型的には、ランベルト・ベールの法則によって、以下の式を用いて説明される。
I=I0exp(-μD)
式中、Dは厚さである。30keV電子照射によって生成されるX線エネルギースペクトルの吸収係数μの測定値は、例えば、アルミニウムの場合は1.1/mm、鉄の場合は14.2/mm、銅の場合は17.5/mmである。しかしながら、生成されるX線スペクトルは、電子エネルギー、および、例えばフィルタプレート304の材料組成に依存する。概して、例えば、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウムもしくは銀(元素番号42、44~47)から成る第1の群の材料、または、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金もしくは鉛(元素番号74~79および82)などの材料から成る第2の材料群などの、高密度の常磁性または反磁性材料を利用することが有利である。他方、例えば、シリコンまたはアルミニウムのような他の材料は、X線放射を遮断するのには適していない。典型的には、マルチアパーチャ素子は、シリコンまたはシリコン化合物の微細構造化によって形成される。200μmを下回る典型的な厚さのマルチアパーチャ素子304、306および310によって、二次放射の10%未満のみが各マルチアパーチャ素子内に吸収される。金による、例えば、5μm厚の厚いコーティングであっても、さらに70%を超える二次放射が透過される。したがって、厚いコーティングまたはフィルムであっても、二次放射を効果的に遮蔽するには十分でない。そのような厚いコーティングはまた、膜ゾーンの応力湾曲または変形も引き起こすことになり、したがって、可能でない。
【0070】
第2の実施形態によれば、二次照射の減衰、および、したがって、電圧源ユニットの帯電効果または損傷の防止が、遮蔽部材93.1~93.3によって達成される。例えば、約1.1mmの直径および一次ビームレット3のラスタによる面積を有する大きい開口91を有する第1の遮蔽部材93.1を、十分な厚さで、十分な吸収力および高い伝導性の材料から作成することができる。例えば、第1の材料群または第2の材料群の材料のうちの1つから作成される、厚さが約D=1mmの遮蔽部材によって、10E-5以下の比までの二次放射の十分な減衰が達成される。第2の遮蔽部材93.2は、マルチアパーチャ素子(304、306および310)と電圧源ユニット261との間に配置される。第1の材料群または第2の材料群の材料のうちの1つから作成される、厚さが約D=1mmの第2の遮蔽部材93.2によって、10E-5以下の比までの二次放射の十分な減衰が達成される。
【0071】
遮蔽部材93はまた、例えばアルミニウムまたはシリコンから作成される、例えば2mm厚の厚い支持層によって提供することもでき、これには、例えば、約200μmの厚さを有する第2の材料群の層、または、約300μmの厚さを有する第1の材料群の層を与えることができる。無論、例えば銅またはジルコニウム、またはそれらの任意の組合せなどの、より厚い他の材料も可能である。伝導性を増大させ、表面電荷を低減するために、遮蔽部材93にはまた、例えば、銅、金または鉛から作成される層によって、伝導性表面コーティングを設けることもできる。
【0072】
図8は、遮蔽部材93.4のさらなる例を示す。いくつかの用途において、個々の開口85またはマルチアパーチャ素子の間の間隔は、電圧源ユニット261のようなマイクロ電子デバイスを、直に開口の間に配置するかまたは直接的に構造化することを可能にするのに十分に大きい。
図1において、ビームステアリングマルチアパーチャ素子として構成されている多極アレイ素子390による例が与えられている。そのような素子によって、複数の一次荷電粒子ビームレットのテレセントリシティ特性を補正することができる。そのような例において、第2の材料群の材料から作成される遮蔽部材93.4は、各電圧源ユニットの真上のキャップの被覆プレートとして遮蔽部材93.4を配置することを可能にする。第2の群の材料および約100μm以上の遮蔽部材93.4の厚さによって、99%を超える抑制が達成される。
図8aは、85.1~85.8とラベル付けされている開口を含む複数の開口を有する多極アレイ390のx-y断面を示す。開口85.iの間に、マイクロ電子デバイスとして形成されている複数の小さい電圧源ユニット261.1~261.7が配置されており、これらは、対応する電圧を多極素子87の電極81に提供するためのDACとしての役割を果たす。電圧源ユニット261.iと電極81との間の複数の配線接続257が示されている。
図2のさらなる本発明の信号線267および電圧線269は示されていない。
図8bは、2つの開口85.5および85.8を有する線ABに沿った断面を示す。第3のグループの電極81.54および81.88は、接続257.34および257.38によって電圧源ユニット261.3に接続されている。電極81.58は、線257.28を介して電圧源ユニット261.2に接続されている、第2のグループの電極である。電圧源ユニット261.3は、遮蔽部材93.4によって被覆され、遮蔽部材は、約100μm以上の厚さを有する、例えば、タングステン、白金または鉛などの、第2の群の材料から作成されるキャップまたはプレートとして形成される。遮蔽部材93.4は、一次荷電粒子ビームレット3.5および3.8の入口側から電圧源ユニット261.3を被覆するように構成されている。それによって、上記のフィルタプレート304(
図7参照)からの二次放射901.3が、99%超まで吸収され、電圧源ユニット261.3の帯電の損傷が最小限に抑えられる。無論、多極アレイ390の下流で生成される二次放射901.4からの損傷を回避するために、さらなる遮蔽部材を裏側に配置することができる。
【0073】
図14は、遮蔽部材93.4のさらなる例を示す。
図14は、
図7と同様であり、その説明については
図7が参照される。
図7の例と同様に、電圧源ユニット261は、マルチアパーチャ素子304、306および310の周囲に配置される。
図14の例において、遮蔽部材93.4は、各電圧源ユニット261の真上の被覆プレートまたはキャップとして電圧源ユニット261を被覆するために提供される。各キャップは、1つまたは複数の電圧源ユニット261を被覆することができ、各キャップは、一次荷電粒子ビームレット3の間の遮蔽を提供し、キャップをキャリアまたは支持基板271に搭載するための、z方向の延在範囲を有することができる。それによって、電圧源ユニット261と遮蔽部材93.4との間の直接接触を回避することができる。
【0074】
これらの例全体を通じて、基板271は、電圧源ユニット261および少なくとも1つのマルチアパーチャプレート306を支持するための単一の支持基板として示されている。無論、例えば、マルチアパーチャプレート306が、第1の支持基板271に搭載され、電圧源ユニット261が、第1の支持基板271から機械的に分離されており、配線接続257と同様の可撓性接続によって第1の支持基板に電気的に接続されている第2の支持基板上に搭載されることも可能である。
【0075】
第2の実施形態の例によれば、二次放射によって誘発される電圧源ユニットのマイクロ電子回路の損傷または電荷蓄積が最小値まで低減される。それによって、電圧ドリフトへの大幅な寄与が低減される。本発明の第3の実施形態によれば、電荷蓄積によって誘発される電圧ドリフトのさらなる低減が提供される。二次電子放射およびX線などの二次放射の存在下でのマイクロ電子半導体構造の機能は、例えば、酸化ケイ素中の正の空間電荷の蓄積または界面における表面帯電効果を含む、帯電効果の影響を受ける。帯電効果の一部は、負電圧-VGのパルスを印加することによって低減または平衡させることができる。したがって、第3の実施形態の第1の例によれば、負電圧-VGのパルスを電圧源ユニットに印加することによって、電圧源ユニットの帯電効果を平衡させるかまたは回復する方法が提供される。しかしながら、一部の帯電効果および損傷は、電圧パルスの印加によって可逆性ではない。しかしながら、これらの帯電効果または損傷の一部は、マイクロ電子デバイスを250℃を上回る温度まで加熱することによって可逆性である。数分にわたるそのような加熱によって、電圧源ユニットの多くの帯電効果または局所的損傷を低減するか、または、完全にアニーリングすることができる。第3の実施形態の第2の例によれば、マルチアパーチャ素子304、306、310もしくは390または電圧源ユニット261は、帯電効果または損傷を低減するために、電圧パルスおよび熱アニーリングプロセスによって処理される。熱アニーリングは、抵抗加熱器、または、例えば、IRレーザ照射による外部加熱によって達成することができる。
図9は、方法を示す。第1のステップMにおいて、第1の実施形態によるマルチビーム荷電粒子顕微鏡1によって一連の検査タスクが実施される。ステップDにおいて、制御ユニットは、測定を中断し、任意選択的に、アニーリング手順のステップAを開始する。アニーリング手順を完了した後、制御ユニットは、次の検査タスクによる測定の継続をトリガする。ステップDにおける検査タスクの中断は、種々のパラメータによってトリガすることができる。第1の例によれば、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1の結像性能指標が監視される。能動マルチアパーチャ素子306の機能不全によるビーム品質の逸脱が検出された場合、アニーリング経過Aを開始するためのトリガ信号が生成される。第2の例によれば、代表的な電圧出力が、電圧ドリフトモニタ835(
図2参照)によって測定される。電圧ドリフトが所定の閾値を超える場合、アニーリング経過Aを開始するためのトリガ信号が生成される。第3の例によれば、トリガ信号は、モデルベースの制御によって生成される。経時的な推定電圧ドリフトまたは累積照射線量が計算され、経時的な推定電圧ドリフトまたは累積照射線量が所定の閾値を超えるとき、トリガ信号が生成される。ステップAによるアニーリング手順は、電圧源ユニット261に加えられる負電圧パルスまたは熱アニーリング、または両方の組合せを含むことができる。
【0076】
第3の実施形態による方法によって、電圧源ユニットの寿命を延長することができる。任意選択のステップCにおいて、アニーリングプロセスの成功が判定される。電圧源ユニットの使用期間または照射線量の増大によって、不可逆性の損傷が蓄積され、電圧源ユニットの性能を経時的に徐々に減殺する。一定の損傷レベルに達した後、繰り返しアニーリングした後であっても、マルチビーム形成ユニット305または能動マルチアパーチャ素子390を交換するための交換ステップRがトリガされ得る。
【0077】
本実施形態による多極アレイは、488個を超える電極を備えることができる(
図3参照)。ビームレットの数Jを増大させ、例えば、12個の電極を有する多極素子87によって各個々のビームレットの補正をより正確にすることによって、個々の電圧を供給される電極の数を、単一の多極アレイ306.2の1000個を優に超える数まで増大させることができる。先進的なマルチビーム荷電粒子顕微鏡においては、2つ以上の多極アレイが必要とされ得る。一例において、複数の一次ビームレットの偏向および角度補正を達成するために、2つの多極アレイが必要とされる。さらなる例においては、各ビームレットの個別の集束能力を達成するために、4つまたは5つの多極アレイが必要とされる。したがって、複数の電極について、非常に多数の個別の電圧が生成、制御、および提供されなければならない。第4の実施形態によれば、少なくとも2つの電圧源ユニットによって多極アレイまたはマイクロレンズアレイなどの能動マルチアパーチャ素子の複数の電極を動作させる方法が提供される。一例において、八重極のアレイが、例えば、例として各々が128個のDACチャネルを有するDACのアレイを形成するASICなどの、複数の電圧源ユニットを使用して制御される。ルーティング制約に起因して、一部の八重極は、2つ以上のASICによって制御される(
図3および
図4参照)。そのような例において、第1のASICの電圧オフセットまたは電圧ドリフトが、ビーム品質またはビーム偏向に影響を及ぼす。一例が、
図10に示されている。
図10は、マルチビーム荷電粒子システム1の像品質モニタによって測定され得るものとして、1つの電圧供給源の大域的電圧オフセットの影響を示す。本例において、区画83.4内の電極の電圧源ユニット261.4が、オフセットを有する。すべての電極が一定の大域的電圧オフセットを与えられるため、同じ電圧源ユニット261.4によって供給される対応する多極素子のすべての電極によるビームスポット5.nは、逸脱を一切示さない。しかしながら、少なくとも2つの異なる電圧源ユニットによって電圧を供給される、対応する多極素子による焦点スポット5.kまたは5.mは、電圧オフセットに起因する非点収差挙動および/または偏向を示す。スポット5.1...Jの偏向またはビーム形状の位置および影響から、電圧源ユニット261のオフセット電圧を決定することができる。一次電子スポット5.1...Jは、ミラーイメージング法において直接的に測定することができ、または、較正試験試料の像取得からビーム収差を決定することができる。
【0078】
図4の例によれば、第1の電極グループ81.1~81.4および81.8が、第1の電圧源ユニット261.3によって制御され、第2の電極グループ81.5~81.7が、第2の電圧源ユニット261.4によって制御される。この例において、第1の電圧源ユニット261.3の電圧オフセットが、ビーム傾斜を導入する。ビーム傾斜は、第2の電極グループの電極81.5~81.7の等価な電圧オフセットによって補償することができる。本方法は、2つの電圧源ユニットおよび2つの対応する開口グループのみに限定されない。マルチビーム形成ユニットは、6つ、8つ、10個、またはさらにはそれを超える電圧源ユニットを必要とし得る。一例が、
図8にも示されており、より少ないDACチャネルを有するより小さい電圧源ユニットが使用される。ここで、例えば、10x10個の開口のアレイによって、50個の電極グループを有する50個の電圧源ユニットが利用され得る。
【0079】
第4の実施形態による方法は、
図11により詳細に記載されている。第1のステップCMにおいて、電圧源ユニットを制御するためのデジタル制御信号が決定される。決定は、例えば、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1の較正ステップ中に実施することができ、多極アレイ306.2または390を含む能動マルチアパーチャ素子306の動作のために電圧源ユニットを制御するための最適化されたデジタル制御信号を含む、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1の最適化された制御パラメータによって、結像性能が最適化される。ステップMにおける連続する検査タスクの実施中、ステップPMにおいて性能が繰り返し監視される。性能パラメータが所定の閾値を超える場合、電圧補正ステップVCがトリガされる。第1の例において、監視ステップは、像品質モニタによって実施される。像品質モニタによって、結像性能が監視される。特に、少なくとも2つの電圧源ユニットによって電圧を供給される多極素子87に対応するビームレットについて、結像性能の低減が検出される場合、電圧補正ステップがトリガされる。第2の例において、監視ステップは、電圧ドリフトモニタ835(
図2参照)によって生成される信号を利用する。例えば、第1の電圧源ユニットによって生成される代表的な電圧が所定の閾値を超える分だけ所定の電圧から逸脱する場合、電圧補正ステップがトリガされ、例えば、第2の多極素子グループの電極の一定の電圧オフセットが決定され、生成される。所定の閾値は、例えば、1V、0.5V、またはさらにはそれ未満とすることができる。第2の電圧源ユニットを制御するための対応するデジタル制御信号は、その後、補償デジタル制御信号を達成するように修正される。それによって、第2の電圧源ユニットによって一定の電圧オフセット値を第2の電極グループのうちの必要な電極に加えることが達成される。それによって、たとえ個々の電圧源ユニットが異なる電圧ドリフトを被る場合であっても、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1の結像性能が維持される。
【0080】
図12は、使用中に複数のマイクロレンズを形成する複数のリング電極81を有する能動マルチアパーチャ素子306.1の一例を示す。この例において、リング電極は、4つの区分83.1~83.4にグループ化される。使用中に供給される電圧は、湾曲した中間像面321内での複数の一次ビームレット3の焦点位置を調整するように構成される。それによって、物体照射ユニット100の像面湾曲が補償される。電圧は、別個の電圧源ユニット261.1~261.4によって、区分の各グループまたは電極に提供される。典型的な電圧は100Vであるが、最大200Vのより大きい電圧が可能である。したがって、マイクロレンズの電圧源ユニットは、熱ドリフトにさらにより感受性である。ここで、例えば、個々の電圧源ユニット261.3が、例えば、X線放射または熱ドリフトに起因するドリフトを被る場合、区分83.3に対応する焦点311または一次荷電粒子ビームレット3は、中間像面321からの一定のオフセットを有し、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1の対物面101において焦点外である。電圧源ユニット261.3の電圧ドリフトは、電圧モニタ835または結像品質モニタのいずれかによって検出することができる。区分83.3に対応するビームレットは、結像中により低い分解能を提供し、この分解能、例えば、像品質モニタによって決定することができる。例えば、電圧源ユニット261.3の電圧ドリフトは、第4の実施形態に記載されている方法によって、修正された制御信号を電圧源ユニット261.3または電圧源ユニット261.1、261.2および261.4に提供することによって補償することができる。それによって、複数の一次ビームレットの単一のフォーカス面における集束が維持される。このフォーカス面が像面101から逸脱する場合、フォーカス面は、マルチビーム荷電粒子ビームシステム1のさらなるレンズ素子によって調整することができる。
【0081】
X線放射に起因して、電圧源ユニットまたはASIC261だけでなく、一次マルチビームレット形成ユニット305の能動マルチアパーチャ素子306も、局所的帯電効果を含む局所的損傷を蓄積し得る。マルチアパーチャ素子の膜ゾーン199は、例えば、絶縁層および二酸化ケイ素から作成される特徴を有するドープシリコンによって形成される。電極と電圧源ユニットまたはASIC261との間の相互接続は、金属層によって形成することができる。したがって、例えば、X線放射はシリコンと二酸化ケイ素との間の局所的表面間欠陥を生じさせ得、局所的帯電効果の原因となり得、これは、電極によって生成される電場、および、したがって、能動素子の性能に影響を及ぼす。欠陥または局所的帯電効果の少なくとも大部分は、熱またはプラズマアニーリングによってアニーリングすることができる。
図13は、アニーリング動作のさらなる例を示す。
図13は、
図7と同様であり、その説明については
図7が参照される。
図7に加えて、遮蔽プレート93.1および93.3は、さらに、スライド281.1および281.2を有する真空弁として動作する。
図13において、両方の弁が開位置において示されているが、両方の弁は、可動スライド281.1および281.2によって閉じることができる。それによって、一次マルチビームレット形成ユニット305の閉鎖および分離された真空区画を生成することができる。約250℃以上の必要なアニーリング温度は、例えば、照射デバイス285による赤外線照射を介して達成することができる。一例において、アニーリングは、約0.1mbarにおいて、例えば、水素プラズマまたは窒素プラズマなどの、低エネルギーガスプラズマによって達成される。プラズマは、例えば、13.56MHzの周波数および約10~20W.の低電力による、プラズマ生成器283による動作であり得る。いずれかまたは両方の方法によって、局所的欠陥を少なくとも部分的に回復することができ、マルチアパーチャ素子の寿命を延長することができる。
【0082】
本発明の実施形態によって提供される解決策によれば、電圧源ユニット261のドリフトは、遮蔽部材93によって、冷却部材97によって、または、電圧モニタ835の任意選択の適用を含む電圧源ユニット261の改善された動作方法によって、効果的に低減することができる。遮蔽部材93および冷却部材97の、能動マルチアパーチャ素子の改善された動作方法との組合せを実装することも可能である。それによって、電圧ドリフトの影響を低減することができ、X線放射によるマルチアパーチャ素子および電圧源ユニットの損傷が、最小限に抑えられる。それによって、例えば、電圧源ユニットまたは能動マルチアパーチャ素子の寿命を延長することができる。上述したアニーリング方法によって、局所的帯電および局所的欠陥を少なくとも部分的に低減または回復することができ、マルチアパーチャ素子または電圧源ユニットの寿命を延長することができる。したがって、マルチビーム荷電粒子顕微鏡のアップタイムが増大し、高価な部品の交換を含むサービスまたはメンテナンスが低減される。
【符号の説明】
【0083】
1 マルチビームレット荷電粒子顕微鏡システム
3 一次荷電粒子ビームレット、または複数の一次荷電粒子ビームレット
5 一次荷電粒子ビームスポット
7 物体または水
9 複数の二次電子ビームレットを形成する二次電子ビームレット
11 二次電子ビーム経路
13 一次ビーム経路
15 二次荷電粒子像スポット
25 ウェハ表面
31 真空チャンバ
74 ビーム入口または上側
76 底部側またはビーム出射側
81 多極電極
83 電極グループ
85 開口
87 多極素子
91 大きい開口
93 遮蔽部材
97 冷却部材
100 物体照射ユニット
101 対物面
102 対物レンズ
103 場レンズ群
105 マルチビームレット荷電粒子顕微鏡システムの光軸
108 第1のビームクロスオーバ
110 集光マルチビームラスタスキャナ
197 支持ゾーン
199 膜ゾーン
200 検出ユニット
205 投影システム
206 静電レンズ
207 像センサ
208 結像レンズ
209 結像レンズ
210 結像レンズ
212 第2のクロスオーバ
214 開口フィルタ
216 能動素子
218 第3の偏向システム
220 マルチアパーチャ補正器
222 第2の偏向システム
251 高電圧配線接続
253 接地線
255 同軸遮蔽および絶縁
257 低電圧配線接続
261 電圧源ユニット
263 電圧制御出力
267 デジタル信号線
269 低電圧供給線
271 キャリア要素
273 区分
275 区分境界
281 真空弁のスライダ
283 プラズマ生成器
285 赤外線源
300 荷電粒子マルチビームレット生成器
301 荷電粒子源
303 コリメートレンズ
304 フィルタプレート
305 一次マルチビームレット形成ユニット
306 能動マルチアパーチャ素子
307 第1の場レンズ
308 第2の場レンズ
309 一次電子ビーム
310 終端マルチアパーチャ素子
311 一次電子ビームレットスポット
321 中間像面
390 能動またはビームステアリングマルチアパーチャ素子
400 ビームスプリッタユニット
420 補正素子
500 試料ステージ
503 試料電圧供給源
800 制御ユニット
820 結像制御モジュール
830 一次ビーム経路制御モジュール
835 電圧ドリフトモニタ
840 アレイ制御ユニット
860 像性能センサ
901 二次放射
【手続補正書】
【提出日】2024-07-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
能動マルチアパーチャ素子(306、390)と、前記能動マルチアパーチャ素子(306、390)を制御するように構成されている制御ユニット(840)とを有するマルチビームシステム(1)であって、前記能動マルチアパーチャ素子(306、390)が、
- 使用中に、前記能動マルチアパーチャ素子(306、390)を通じて第1の複数J個の一次荷電粒子ビームレット(3)を透過するように構成されている、ラスタ構成に配置されている複数J個の開口(85)と、
- 前記開口(85)の各々の周囲に配置されている少なくとも1つの電極(81)を備える複数の電極(81)であって、前記複数の電極(81)が、第1の電極グループ(83.1)および第2の電極グループ(83.2)を含む、複数の電極(81)と、
- 使用中に、複数の電圧を前記第1の電極グループ(83.1)に提供するように構成されている第1の電圧源ユニット(261.1)と、
- 使用中に、複数の電圧を前記第2の電極グループ(83.2)に提供するように構成されている第2の電圧源ユニット(261.2)と
を備え、
- 前記第1の電圧源ユニット(261.1)および前記第2の電圧源ユニット(261.2)は、前記制御ユニット(840)に接続されており、
前記制御ユニット(840)は、使用中に、前記第1の電圧源ユニット(261.1)および前記第2の電圧源ユニット(261.2)によって前記第1の電極グループ(83.1)および前記第2の電極グループ(83.2)に提供される複数の電圧を制御するように構成されており、
前記制御ユニット(840)は、使用中に、前記第1の電圧源ユニット(261.1)のドリフトを補償するようにさらに構成されている、マルチビームシステム(1)。
【請求項2】
前記制御ユニット(840)は、使用中に、前記第2の電圧源ユニット(261.2)に提供される補償制御信号によって、前記第1の電圧源ユニット(261.1)の前記ドリフトを補償するように構成されている、請求項1に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項3】
前記第1の電極グループ(83.1)および前記第2の電極グループ(83.2)は、前記ラスタ構成の異なる角度区分(273.1~273.8)に配置されている、請求項1または2に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項4】
前記第1の電極グループ(83.1)および前記第2の電極グループ(83.2)は、前記ラスタ構成の異なる放射状区分(273.1~273.5)に配置されている、請求項1または2に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項5】
前記第1の電圧源ユニット(261.1)のドリフトを監視するように構成されている、少なくとも前記第1の電圧源ユニット(261.1)に接続されている監視デバイス(835)をさらに備える、請求項1
または2に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項6】
前記能動マルチアパーチャ素子(306、390)は、前記複数の開口85の各々にあるリング電極(81)を有するマイクロレンズアレイ(306.1)である、請求項1
または2に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項7】
前記能動マルチアパーチャ素子(306、390)は、前記複数の開口85の各々にあるK個の電極(81.1~81.K)を有する複数の多極素子(87)を備える多極アレイ(306.2)であり、各多極素子(87)の電極の数Kは、2、4、6、8または12である、請求項1
または2に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項8】
二次放射が前記第1の電圧源ユニット(261.1)および前記第2の電圧源ユニット(261.2)に当たらないように遮蔽するために提供されている遮蔽部材(93)をさらに備える、請求項1
または2に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項9】
前記遮蔽部材(93)は、前記能動マルチアパーチャ素子(306、390)の前記第1の電圧源ユニット(261.1)および前記第2の電圧源ユニット(261.2)と膜ゾーン(199)との間に提供され、前記複数J個の開口(85)を備える、請求項8に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項10】
前記第1の電圧源ユニット(261.1)は、前記複数J個の開口(85)の間に配置されており、前記遮蔽部材(93.4)は、前記第1の電圧源ユニット(261.1)を被覆するキャップとして形成されている、請求項8に記載のマルチビームシステム(1)。
【請求項11】
マルチビームシステム(1)のための一次マルチビームレット形成ユニット(305)であって、
- 使用中に、前記能動マルチアパーチャ素子(306、390)を通じて第1の複数J個の一次荷電粒子ビームレット(3)を透過するように構成されている、ラスタ構成に配置されている複数J個の開口(85)を備える能動マルチアパーチャ素子(306)と、
- 前記開口(85)の各々の周囲に配置されている少なくとも1つの電極(81)を備える複数の電極(81)と、
- 前記複数の電極(81)のうちのある電極グループ(83)に複数の電圧を提供するように構成されている少なくとも第1の電圧源ユニット(261)と、
- 少なくとも、二次放射が前記第1の電圧源ユニット(261)に当たらないように遮蔽するために提供されている遮蔽部材(93)と
を備える、一次マルチビームレット形成ユニット(305)。
【請求項12】
前記第1の電圧源ユニット(261)は、前記複数J個の開口(85)に隣接して配置されており、前記遮蔽部材(93)は、前記複数J個の開口(85)と前記第1の電圧源ユニット(261)との間に配置されている、請求項11に記載の一次マルチビームレット形成ユニット(305)。
【請求項13】
前記遮蔽部材(93)は、前記一次荷電粒子ビームレット(3)の伝播方向に平行に長尺である、請求項12に記載の一次マルチビームレット形成ユニット(305)。
【請求項14】
前記遮蔽部材(93)は、前記第1の電圧源ユニット(261)に接触して設けられている、請求項11に記載の一次マルチビームレット形成ユニット(305)。
【請求項15】
前記少なくとも第1の電圧源ユニット(261)は、前記複数J個の開口(85)の間に配置されている、請求項14に記載の一次マルチビームレット形成ユニット(305)。
【請求項16】
前記第1の電圧源ユニット(261)の熱ドリフトを低減するように構成されている冷却部材(97)をさらに備える、請求項11
または12に記載の一次マルチビームレット形成ユニット(305)。
【請求項17】
前記遮蔽部材(93)および/または前記冷却部材(9)は、熱シンクに接続されている、請求項16に記載の一次マルチビームレット形成ユニット(305)。
【請求項18】
前記遮蔽部材(93)は、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウムまたは銀を含む第1の材料群の材料を含んでいる、請求項11
または12に記載の一次マルチビームレット形成ユニット(305)。
【請求項19】
前記遮蔽部材(93)は、1mmを超える厚さDを有する、請求項18に記載の一次マルチビームレット形成ユニット(305)。
【請求項20】
前記遮蔽部材(93)は、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金または鉛を含む第2の材料群の材料を含んでいる、請求項11
または12に記載の一次マルチビームレット形成ユニット(305)。
【請求項21】
前記遮蔽部材(93)は、100μmを超える厚さDを有する、請求項20に記載の一次マルチビームレット形成ユニット(305)。
【請求項22】
前記遮蔽部材(93)は、接地レベルに接続されている、請求項11
または12に記載の一次マルチビームレット形成ユニット(305)。
【請求項23】
能動マルチアパーチャ素子(306.2、390)を、寿命を増大させて動作させる方法であって、
- 一連の検査タスクを実施し、前記能動マルチアパーチャ素子(306)の電圧ドリフトまたは結像性能を監視するステップと、
- 電圧ドリフトまたは像性能が所定の閾値を超える場合に、前記能動マルチアパーチャ素子(306)のアニーリングステップをトリガするステップと
を含む、方法。
【請求項24】
前記アニーリングステップは、電圧VGのパルスによる前記能動マルチアパーチャ素子(306)の処理、例えば250℃など、200℃を上回る温度による熱アニーリング、または低エネルギープラズマ処理のうちの少なくとも1つを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記アニーリングステップは、電圧VGのパルスによる前記能動マルチアパーチャ素子(306)の電圧源ユニット(261)の処理、または、例えば250℃など、200℃を上回る温度による熱アニーリングのうちの少なくとも1つを含む、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記電圧源ユニット(261)または前記能動マルチアパーチャ素子(306)の寿命の終わりを予測するステップをさらに含む、請求項23
または24に記載の方法。
【請求項27】
マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の能動マルチアパーチャ素子(306.2、390)を動作させる方法であって、
- 較正ステップにおいて、複数の多極素子(87)の複数の電極(81.1~81.K)のうちの少なくとも第1の電極グループおよび第2の電極グループ(83、83.1、83.2)に複数の電圧を提供するように構成されている、少なくとも第1の電圧源ユニットおよび第2の電圧源ユニット(261、261.3、261.4)を制御するための複数のデジタル制御信号を決定するステップと、
- 連続する検査タスクを実施するステップと、
- 前記マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の結像性能または少なくとも前記第1の電圧源ユニット(261.3)の電圧ドリフトを監視するステップと、
- 前記結像性能または前記電圧ドリフトが所定の閾値を超える場合に、電圧補正ステップをトリガするステップと、
- 少なくとも前記第2の電圧源ユニット(261.4)を制御するための補償デジタル制御信号のセットを決定するステップと、
- 前記補償デジタル制御信号を、少なくとも前記第2の電圧源ユニット(261.4)に提供するステップと
を含む、方法。
【請求項28】
前記補償デジタル制御信号のセットは、前記少なくとも第1の電圧源ユニット(261.3)の前記電圧ドリフトに従って決定される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
マルチビームシステム(1)のための能動マルチアパーチャ素子(306.2、306.3、390)であって、
- ベースプレート(271)と、
- 使用中に、複数J個の一次荷電粒子ビームレット(3)を透過するように構成されている、ラスタ構成に配置されている複数J個の開口(85)を有する内側膜ゾーン(199)と、
- 複数J個の多極素子(87)であり、配置されている各多極素子(87)が、前記複数J個の開口(85)のうちの1つの開口(85)を備えており、各多極素子(87)が、複数K個の電極(81.1~81.K)を備えており、各多極素子(87)が、前記一次荷電粒子ビームレット(3)のうちの1つに影響を及ぼすように構成されている、複数J個の多極素子(87)と、
- 複数L個の電圧源ユニット(261)であり、1つの多極素子(87)の前記K個の電極(81.1~81.K)の各々が、前記複数L個の電圧源ユニット(261)のうちの1つのみに接続されている、複数L個の電圧源ユニット(261)と
を備え、
- 前記複数L個の電圧源ユニット(261)が、前記ベースプレート(271)上に配置されている、能動マルチアパーチャ素子(306.2、306.3、390)。
【請求項30】
前記第1の複数J個の多極素子は、少なくとも第1の多極素子グループおよび第2の多極素子グループを含み、前記第1の多極素子グループの前記電極は、第1の電圧源ユニットに接続されており、前記第2の多極素子グループは、第2の電圧源ユニットに接続されている、請求項29に記載の能動マルチアパーチャ素子(306.2、306.3、390)。
【請求項31】
前記第1の多極素子グループおよび前記第2の多極素子グループは、前記ラスタ構成の異なる環状区分に配置されている、請求項30に記載の能動マルチアパーチャ素子(306.2、306.3、390)。
【請求項32】
第1の複数の多極素子の下流に配置されている第2の複数J個の多極素子をさらに備え、各多極素子は、複数K2個の電極を備えており、前記第2の複数J個の多極素子のうちの1つの多極素子の前記K2個の電極の各々は、前記複数L個の電圧源ユニットのうちの1つのみに接続されている、請求項29
または30に記載の能動マルチアパーチャ素子(306.2、306.3、390)。
【請求項33】
前記第1の複数J個の多極素子のうちの1つの多極素子の前記K1個の電極の各々および前記第2の複数J個の多極素子の1つの多極素子の前記K2個の電極の各々は、同じ前記電圧源ユニットに接続されている、請求項32に記載の能動マルチアパーチャ素子(306.2、306.3、390)。
【国際調査報告】