(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】MAS-NMRの改善
(51)【国際特許分類】
G01N 24/00 20060101AFI20250212BHJP
G01R 33/30 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
G01N24/00 570A
G01N24/00 510B
G01R33/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545892
(86)(22)【出願日】2023-02-01
(85)【翻訳文提出日】2024-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2023052410
(87)【国際公開番号】W WO2023148202
(87)【国際公開日】2023-08-10
(32)【優先日】2022-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508092576
【氏名又は名称】エーテーハー チューリヒ
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルネス,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,チュクン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ピン-フイ
(57)【要約】
ロ-タ-3を備える磁気共鳴分光計のプロ-ブヘッド2用のコイル1は、ロ-タ-3内に受容される試料を励起するために無線周波数信号を送信するように構成され、及び/又は試料によって放出される無線周波数信号を受信するように構成される。コイル1は、コイル1に沿って延在するコイル軸Cに沿って配置され、楕円形状、好ましくは球形を画定する複数のタ-ン4、4a、...を備える。磁気共鳴分光計のプロ-ブ用のプロ-ブヘッド2は、ロ-タ-3と、ロ-タ-3の回転を生じさせるように構成された回転デバイス9と、コイル1とを備える。回転デバイス9は、流体供給デバイス6及び/又は流体方向付けデバイス10を備える。流体供給デバイス6は、共通平面P内に配置された複数の流体開口7、7a、...を備える。流体方向付けデバイス10は、コイル1を備えるか、又はコイル1からなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロ-タ-(3)を備える磁気共鳴分光計のプロ-ブヘッド(2)用のコイル(1)であって、
前記コイル(1)は、前記ロ-タ-(3)内に受容された試料を励起するために少なくとも1つの無線周波数信号を送信するように構成され、及び/又は、無線周波数信号による前記試料の励起に応答して前記試料によって放出される少なくとも1つの無線周波数信号を受信するように構成され、
前記コイル(1)は、前記コイル(1)に沿って延在するコイル軸(C)に沿って配置された複数のタ-ン(4、4a、...)を備え、
前記コイル(1)の前記複数のタ-ン(4、4a、...)は、楕円形状、好ましくは球形を画定することを特徴とする、前記コイル。
【請求項2】
請求項1に記載のコイル(1)であって、
前記タ-ン(4、4a、...)の周方向(CT)に関する個々の前記タ-ン(4、4a、...)の円周は、楕円形状、好ましくは円形であり、及び/又は、
前記タ-ン(4、4a、...)の周方向(CT)に関する個々の前記タ-ン(4、4a、...)の円周は、前記コイル軸(C)に関して変化する、前記コイル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコイル(1)であって、
前記コイル(1)の連続するタ-ン(4、4a、...)の間の距離(at)及び/又は前記コイル(1)の個々の前記タ-ン(4、4a、...)のワイヤ直径(dt)は、前記コイル軸(C)に関して一定のままであるか又は変化する、前記コイル。
【請求項4】
磁気共鳴分光計のプロ-ブ用のプロ-ブヘッド(2)であって、
回転軸(R)の周りを回転するように構成されたロ-タ-(3)と、
前記回転軸(R)の周りにおいて前記ロ-タ-(3)を回転させるように構成された少なくとも1つの回転デバイス(9)と、
好ましくは請求項1~3のいずれか一項に記載の少なくとも1つのコイル(1)と、
を備え、
前記回転デバイス(9)は、前記ロ-タ-(3)に流体を供給するように構成された少なくとも1つの流体供給デバイス(6)を備え、
前記コイル(1)は、前記ロ-タ-(3)内に受容された試料を励起するために少なくとも1つの無線周波数信号を送信するように構成され、及び/又は、無線周波数信号による前記試料の励起に応答して前記試料によって放出される少なくとも1つの無線周波数信号を受信するように構成され、
前記回転デバイス(9)は、前記流体供給デバイス(6)によって供給される前記流体を前記ロ-タ-(3)に方向付けるように構成及び/又は配置された少なくとも1つの流体方向付けデバイス(10)を更に備え、
前記流体方向付けデバイス(10)は、前記コイル(1)を備えるか、又は前記コイル(1)からなることを特徴とする、前記プロ-ブヘッド。
【請求項5】
請求項4に記載のプロ-ブヘッド(2)であって、
前記流体方向付けデバイス(10)は、軸受力及び/又は前記ロ-タ-(3)を前記回転軸(R)の周りで回転させる駆動力が生成されるように構成及び/又は配置される、前記プロ-ブヘッド。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のプロ-ブヘッド(2)であって、
前記流体供給デバイス(6)は、前記ロ-タ-(3)に前記流体を供給するための少なくとも1つの流体開口(7、7a、...)、好ましくは複数の流体開口(7、7a、...)を備え、
前記複数の流体開口(7、7a、...)は、i)前記回転軸(R)の周りにおいて前記ロ-タ-(3)を回転させるように、又は、ii)少なくとも1つの共通平面(P)内、のうちの少なくとも一方に好ましくは配置される、前記プロ-ブヘッド。
【請求項7】
磁気共鳴分光計用のプロ-ブヘッド(2)であって、
回転軸(R)の周りを回転するように構成されたロ-タ-(3)と、
前記回転軸(R)の周りにおいて前記ロ-タ-(3)を回転させるように構成された少なくとも1つの回転デバイス(9)と、
好ましくは請求項1~3のいずれか一項に記載の、少なくとも1つのコイル(1)と、
を備え、
前記回転デバイス(9)は、前記ロ-タ-(3)に流体を供給するように構成された少なくとも1つの流体供給デバイス(6)を備え、
前記コイル(1)は、前記ロ-タ-(3)内に受容された試料を励起するために少なくとも1つの無線周波数信号を送信するように構成され、及び/又は、無線周波数信号による前記試料の励起に応答して前記試料によって放出される少なくとも1つの無線周波数信号を受信するように構成され、
前記流体供給デバイス(6)は、前記ロ-タ-(3)に前記流体を供給するための複数の流体開口(7、7a、...)を備え、
前記複数の流体開口(7、7a、...)は、i)前記回転軸(R)の周りにおいて前記ロ-タ-(3)を回転させるように、又は、ii)少なくとも1つの共通平面(P)内、のうちの少なくとも一方に配置されることを特徴とする、前記プロ-ブヘッド。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか一項に記載のプロ-ブヘッド(2)であって、
前記コイル(1)は、前記ロ-タ-(3)を少なくとも部分的に、特に好ましくは全体的に取り囲む、前記プロ-ブヘッド。
【請求項9】
請求項8に記載のプロ-ブヘッド(2)であって、
前記コイル(1)と前記ロ-タ-(3)との間の間隙(G)は、4ミリメ-トル以下であり、及び/又は、
前記コイル(1)と前記ロ-タ-(3)との間の間隙(G)は、50マイクロメ-トル~4ミリメ-トル、好ましくは100マイクロメ-トル~2ミリメ-トル、特に好ましくは約500マイクロメ-トルである、前記プロ-ブヘッド。
【請求項10】
請求項4~9のいずれか一項に記載のプロ-ブヘッド(2)であって、
前記ロ-タ-(3)の形状は、前記コイル(1)の前記形状に対応し、及び/又は、
前記ロ-タ-(3)は、試料を受容するように構成された試料チャンバ(5)を備え、前記コイル(1)の形状は、前記試料チャンバ(5)の形状に対応する、前記プロ-ブヘッド。
【請求項11】
請求項4~10のいずれか一項に記載のプロ-ブヘッド(2)であって、
前記流体供給デバイス(6)は、レセプタクル(8)を備え、
前記コイル(1)は、少なくとも部分的に、好ましくは全体的に前記レセプタクル(8)内に配置される、前記プロ-ブヘッド。
【請求項12】
請求項11に記載のプロ-ブヘッド(2)であって、
前記少なくとも1つの流体開口(7、7a、...)は、前記レセプタクル(8)の領域に配置され、及び/又は、
複数の前記流体開口(7、7a、...)は、前記レセプタクル(8)の周方向(CR)に沿って少なくとも部分的に、好ましくは全体的に、及び/又は、前記コイル(1)の周方向(CC)に沿って少なくとも部分的に、好ましくは全体的に配置される、前記プロ-ブヘッド。
【請求項13】
請求項4~12のいずれか一項に記載のプロ-ブヘッド(2)であって、
前記流体供給デバイス(6)は、前記プロ-ブヘッド(2)が磁気共鳴分光計に受容されるときに、前記プロ-ブヘッド(2)の調整軸(A)に対して及び/又は前記磁気共鳴分光計の静磁場(B)の方向に対して前記ロ-タ-(3)の前記回転軸(R)を調整するように構成される、前記プロ-ブヘッド。
【請求項14】
請求項13に記載のプロ-ブヘッド(2)であって、
前記コイル(1)は、前記プロ-ブヘッド(2)に対する前記流体供給デバイス(6)による調整中に静止するように構成され、及び/又は、
前記流体供給デバイス(6)は、前記プロ-ブヘッド(2)に対する調整中に移動可能に構成される、前記プロ-ブヘッド。
【請求項15】
請求項4~14のいずれか一項に記載のプロ-ブヘッド(2)であって、
前記コイル(1)は、コイル軸(C)を規定し、
前記コイル軸(C)は、i)前記プロ-ブヘッド(2)の調整軸(A)に対して垂直に、ii)前記プロ-ブヘッド(2)が磁気共鳴分光計に受容されるときに前記磁気共鳴分光計の静磁場(B)の方向に対して垂直に、及びiii)前記プロ-ブヘッド(2)の前記調整軸(A)と、前記プロ-ブヘッド(2)が前記磁気共鳴分光計に受容されるときの磁気共鳴分光計の静磁場(B)の前記方向とのうちの少なくとも一方に対して垂直に延在する平面内、のうちの少なくとも1つに延びる、前記プロ-ブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴分光計のプローブヘッド用のコイル、及び磁気共鳴分光計のプローブ用のプローブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
マジックアングルスピニング[1~3](MAS:magic angle spinning)は、生体分子及び無機固体の局所的な化学的環境を特徴付ける高分解能スペクトルを取得するために、固体核磁気共鳴(NMR:nuclear magnetic resonance)において必要である[4~17]。従来のMASは、外部磁場に対して54.74°であるマジックアングルで傾斜した軸の周りを回転する円筒状の試料容器を使用している。ソレノイドコイルは、最適なNMR感度のために円筒状ローターの周りに緊密に巻き付けられる。しかしながら、マジックアングルを設定するためには、ローター、コイル及びステータをマジックアングルに沿って方向を合わせ(oriented)なければならず、その結果、無線周波数(RF:radio frequency)電力のうち80%しか使用されていない。ステータアセンブリは、ローターを収容し、軸受及び駆動ガス流を供給する約12個の精密に機械加工された構成要素からなり、大きなプローブヘッドスペースを必要とする。高周波数でのスピン中のローターの揺動は、ローターの衝突及びステータの損傷を引き起こす可能性がある。
【0003】
2018年に、MAS NMR用の新しいプラットフォームが示されており、該プラットフォームにおいて、球状ローターが半球状ステータカップ内で回転され、単一のガス流が軸受及び駆動の両方に使用されている[18]。球状ローターは、それらの対称軸がそれらの最も高い慣性の軸と位置合わせされることに起因して、非常に優れた回転安定性及び衝突に対する耐性を示す[19]。ローターの球状の幾何学的形状及び単一のガス流は、プローブヘッドに関する空間要件を緩和する。より高いスピン周波数及びRF磁場は、より小さいローターを使用して達成されている[20、21]。しかしながら、MAS球体には、円筒状ローターと比較してNMR充填率がはるかに低いという1つの大きな欠点がある。これは、球内の試料体積が小さく、RFコイルとローターとの間の間隙が大きいためである。NMR充填率を改善する努力がなされてきた。4ターンのスプリットコイルが、ステータカップの周りに緊密に巻き付けられたダブルサドルコイルに置き換えられている[19~22]。円筒状試料チャンバが拡張され、より多くの試料が保持されている[18]。ステータカップ壁をサドルコイルに置き換える新しいステータ設計により、NMR感度は更に3倍増加している[21]。
【0004】
しかしながら、構成要素の製造に関連する高精度要件が緩和される一方で、MAS NMR実験における感度を更に改善することが一般に依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、NMR実験の感度を向上させるプローブヘッド用コイル及び磁気共鳴分光計用プローブヘッドを提供することにある。
【0006】
この目的は、請求項1に記載のコイル並びに請求項4及び7にそれぞれに記載のプローブヘッドによって達成される。
【0007】
すなわち、第1の態様において、ローターを備える磁気共鳴分光計のプローブヘッド用のコイルが提供される。コイルは、ローター内に受容されている試料を励起するために少なくとも1つの無線周波数信号を送信するように構成される。追加的又は代替的に、コイルは、無線周波数信号による試料の励起に応答して試料によって放出される少なくとも1つの無線周波数信号を受信するように構成される。すなわち、コイルは、好ましくは、無線周波数信号を送信及び受信することが可能な送受信コイル等の無線周波数コイルに対応する。コイルは、コイルに沿って延在するコイル軸に沿って配置された複数のターンを備える。コイルの複数のターンは、楕円(ellipsoid)形状、好ましくは球形を画定する。
【0008】
「楕円形状を画定する」という表現は、複数のターンを包む仮想表面が楕円の形状を有するように、コイルのターンがコイル軸に沿って配置されることとして理解される。
【0009】
コイルのターンは、異なる楕円形状が形成されるように設計及び/又は配置することができる。例えば、ターンは、球体又は偏球若しくは長球等の回転楕円体の形態の楕円形状が形成されるように設計及び/又は配置することができる。
【0010】
この目的のために、楕円形状は球体の形状を有することが特に好ましい。換言すれば、コイルの複数のターンが球形を画定することが特に好ましい。更に換言すれば、コイルは、球状コイルであることが特に好ましい。
【0011】
すなわち、コイルの形状は、現行技術において知られている円筒状ローター用の直線状ソレノイドコイルの場合のように円筒形状に対応しない。
【0012】
楕円体コイルは、ローターの回転軸にかかわらず、コイル軸をNMR分光計の外部磁場の方向に対して垂直に位置合わせすることを可能にする。したがって、外部磁場の当該方向をz軸として定義している場合、無線周波数パルスによって生成される磁場B1の全ては、z軸に対して垂直に延びるx軸及びy軸によって広がるx,y平面に沿って生成される。このように、ダイナミックアングルスピニング(DAS:dynamic-angle spinning)及び可変アングルスピニング等のNMR実験は、B1磁場を損なうことなく実行することができ、それにより感度が大幅に改善される。
【0013】
本出願を通して、スピン及び回転という表現は、互換的に使用される。例えば、スピニングローターは回転ローターに対応し、その逆も同様である。
【0014】
ターンの周方向に関するコイルの個々のターンの円周(circumference)は、好ましくは楕円形状、特に好ましくは円形である。すなわち、個々のターンは、コイルを断面で見たとき、すなわちコイル軸に対して90°の角度で平面断面として見たとき、好ましくは楕円形状を有し、特に好ましくは円形状を有する。
【0015】
さらに、ターンの周方向に関する個々のターンの円周は、好ましくは、コイル軸に関して変化する。すなわち、ターンがコイル軸から異なる距離で延在することが好ましい。更に換言すれば、より小さいターン及びより大きいターン等の異なるサイズのターンが好ましい。
【0016】
コイルの第1のターンによって提供されるコイルの始端から、コイルの最後のターンによって提供されるコイルの終端まで延在する延在方向に関して、ターンの円周は、好ましくは、次第に大きくなり、次いで次第に小さくなる。すなわち、コイルの始端の領域におけるターンの円周及びコイルの終端の領域におけるターンの円周は、好ましくは、コイルの中間領域におけるターンの円周よりも小さい。すなわち、特に好ましくは、中間領域における1つ以上のターンの円周は最大となる。
【0017】
コイルの中心を通ってコイル軸に沿って延びる軸に沿った、コイルの好ましい延在部(a preferred extension of the coil along an axis extending through a center of the coil and along the coil axis)は、好ましくは1ミリメートル~20ミリメートル、より好ましくは5ミリメートル~15ミリメートルである。
【0018】
コイルの中心を通ってコイル軸に垂直に延びる軸に沿った、コイルの好ましい延在部(a preferred extension of the coil along an axis extending through the center of the coil and perpendicularly to the coil axis)は、好ましくは1ミリメートル~20ミリメートル、より好ましくは5ミリメートル~15ミリメートルである。
【0019】
コイルが球体の形状を有する場合には、当該延在部は、コイルの直径とみなすことができる。すなわち、コイルのコイル直径は、好ましくは1ミリメートル~20ミリメートル、より好ましくは5ミリメートル~15ミリメートルである。
【0020】
すなわち、コイルの様々な延在部又はコイル直径が企図され、コイル延在部(直径)は、好ましくはローターのサイズに依存する。実際には、コイル延在部(直径)は、ローターのローター直径よりも大きいことが好ましい。コイル延在部(直径)は、特に好ましくは、ローター直径よりも0.001ミリメートル~15ミリメートル、より好ましくは0.001ミリメートル~4ミリメートル大きい。
【0021】
コイルの連続するターンの間の距離は、コイル軸に関して一定のままであってもよく、又は変化してもよい。後者の場合、一例として、コイルの連続するターンの間の距離は、コイルの中央領域においてより小さいことが好ましい。すなわち、コイルの中間領域ではターン数が多いことが好ましく、コイルの外側領域、すなわちコイルの始端及び終端の領域ではターン数が少ないことが好ましい。
【0022】
様々なターン数が企図され、ターン数は、好ましくは、ローターのサイズに依存する。好ましいターン数は、2ターン~10ターンの間である。
【0023】
さらに、異なるサイズのターンを有するコイルの場合、当該コイル直径は最大ターンによって定義されることが好ましく、すなわち、当該コイル直径はコイルの最大ターンの直径に対応することが好ましい。
【0024】
加えて、コイル、特にそのターンは、好ましくはワイヤによって形成される。ワイヤのワイヤ直径は、コイル軸に関して一定のままであってもよく、又は変化してもよい。ワイヤのワイヤ直径は、0.0001mm~2mmであることが好ましい。さらに、コイル軸に関する連続するターンの間の様々な距離が企図される。例えば、コイル軸に関する連続するターン間の好ましい距離は、0.0001ミリメートル~5ミリメートルである。
【0025】
さらに、以下でより詳細に説明するように、ローターがコイル内に少なくとも部分的に、好ましくは全体的に受容されることが更に好ましい。換言すれば、コイルは、ローターの周りに少なくとも部分的に、好ましくは全体的に巻き付けられることが好ましい。ローターの形状は、好ましくは、コイルの形状に対応する。すなわち、ローターの形状は、楕円形状であることが好ましく、球形であることが特に好ましい。また、ローターは、コイルに対して回転可能であることが好ましい。換言すれば、ローターは、コイル内で回転又はスピンすることができる。楕円体ローターが楕円体コイル内に受容されることの主な利点は、NMR充填率が大幅に改善され、したがってNMR実験における感度が大幅に改善されることである。
【0026】
別の態様において、磁気共鳴分光計のプローブ用のプローブヘッドが提供される。プローブヘッドは、回転軸の周りを回転するように構成されたローターと、回転軸の周りにおいてローターを回転させるように構成された少なくとも1つの回転デバイスと、少なくとも1つのコイルとを備える。回転デバイスは、ローターに流体を供給するように構成された少なくとも1つの流体供給デバイスを備える。コイルは、ローター内に受容された試料を励起するために少なくとも1つの無線周波数信号を送信するように構成される。追加的又は代替的に、コイルは、無線周波数信号による試料の励起に応答して試料によって放出される少なくとも1つの無線周波数信号を受信するように構成される。回転デバイスは、流体供給デバイスによって供給される流体をローターに方向付けるように構成及び/又は配置された少なくとも1つの流体方向付けデバイスを更に備え、流体方向付けデバイスは、コイルを備えるか、又はコイルからなる。
【0027】
コイルは、前述のようなコイルに対応することができる。しかしながら、現行技術において知られているような様々なタイプのコイルが同様に使用され得ることに留意されたい。例えば、コイルはサドルコイル、ヘルムホルツコイル等とすることができる。
【0028】
いずれの場合も、プローブヘッドは、コイルを備える回転デバイスを備える。換言すれば、コイルはステータの一部であり、ステータは、ローターを回転させるために使用される流体の流れを供給し、それに影響を及ぼす機構として理解される。ローターを回転させる現在の方策は、コイルと試料を含むローターとの間に配置されるステータを必要としている。これらの装置は、i)ステータカップ及び安定したスピン用の流体を供給する流体チャネルの正確な設計及び製造を必要とすること、ii)ステータの幾何学的形状のためにソレノイドコイル等のインダクタの使用を制限すること、iii)低温環境では良好に機能しないこと、及びiv)回転するローターによってより軟質のステータカップに生じる損傷のために耐久性がないこと等の欠点を有している。不正確な設計及び製造、損傷並びに低温環境における不良動作は、NMR実験の感度に悪影響を及ぼす。加えて、製造についての高精度の要求は、高いコストを伴う。これらの欠点は、本発明のプローブヘッドによって克服され、コイル内で回転又はスピンするローターの能力は、高精度要件を緩和し、より小さいローターのステータ開発をより容易にし、ここでもNMR充填率、したがって感度を大幅に改善する。
【0029】
流体方向付けデバイスは、特に好ましくは、軸受力及び/又はローターを回転軸の周りで回転させる駆動力が生成されるように構成及び/又は配置される。
【0030】
軸受力及び駆動力は、好ましくは、以下でより詳細に説明されるように、ローターとコイルとの間の間隙を通って流れる流体によって生成される。この点について、ローターの初速度は、流体供給デバイスから取得することが好ましいことに留意されたい。
【0031】
以下でより詳細に説明するように、流体供給デバイスは、好ましくは、ローターに流体を供給するための少なくとも1つの流体開口を備える。しかしながら、流体供給デバイスが、ローターに流体を供給するための2つ以上の、特に複数の流体開口を備えることも同様に企図される。さらに、2つ以上の流体開口が、好ましくは、回転軸の周りにおいてローターを回転させるように配置される。追加的又は代替的に、2つ以上の流体開口は、好ましくは、少なくとも1つ又は1つの共通平面に配置される。
【0032】
別の態様において、磁気共鳴分光計用のプローブヘッドが提供され、プローブヘッドは、回転軸の周りを回転するように構成されたローターと、回転軸の周りにおいてローターを回転させるように構成された少なくとも1つの回転デバイスと、少なくとも1つのコイルとを備える。コイルは、ローター内に受容されている試料を励起するために少なくとも1つの無線周波数信号を送信するように構成される。追加的又は代替的に、コイルは、無線周波数信号による試料の励起に応答して試料によって放出される少なくとも1つの無線周波数信号を受信するように構成される。回転デバイスは、ローターに流体を供給するように構成された少なくとも1つの流体供給デバイスを備える。流体供給デバイスは、ローターに流体を供給するための複数の流体開口を備える。複数の流体開口は、回転軸の周りにおいてローターを回転させるように配置される。追加的又は代替的に、複数の流体開口は、少なくとも1つ又は1つの共通平面内に配置される。
【0033】
流体開口が配置される1つ以上の共通平面は、好ましくは、ローターの回転軸に対して垂直に延びる。
【0034】
少なくとも1つの又は正確に1つの共通平面に複数の流体開口を設けることにより、改善された、特により高い駆動力をローターの表面に提供する全体的な流体の流れがもたらされる。より高い駆動力は、マジックアングルスピニング中の回転軸の周りにおけるローターのより高いスピン周波数又は回転周波数をもたらし、それによってNMR感度が改善される。
【0035】
特に、流体開口は、好ましくは、流体の流れが流体流に、すなわち流体開口ごとに1つの流体流に分割されるように配置及び/又は構成される。さらに、流体開口は、駆動力を合計しながら個々の流体流が互いに部分的に打ち消し合い、軸受力と駆動力との間のバランス制御をもたらすように配置及び/又は構成される。
【0036】
また、この場合、プローブヘッドは、前述のコイルに対応するコイルを備えることが好ましい。しかしながら、現行技術において知られているような様々なタイプのコイルが同様に使用され得ることに留意されたい。
【0037】
以下の説明は、上記プローブヘッドの両方に同様に適用される。実際には、とりわけ、コイルを備えるか又はコイルからなる流体方向付けデバイスを備える回転デバイスを備えるプローブヘッドは、好ましくは、共通平面に配置された複数の流体開口を含む流体供給デバイスを備え、逆もまた同様である。したがって、プローブヘッドのうちの一方に関して本明細書でなされた任意の記述は、他方のプローブヘッドにも同様に適用される。特に、本明細書に記載される全ての態様は、単一のプローブヘッド内に存在し得ることに留意されたい。簡単にするために、以下ではプローブヘッドについて言及する。
【0038】
コイルは、ローターを少なくとも部分的に、特に好ましくは全体的に取り囲む。すなわち、上述したように、ローターは、少なくとも部分的に、好ましくは全体的にコイル内に受容されることが好ましい。換言すれば、コイルは、ローターの周りに少なくとも部分的に、好ましくは全体的に巻き付けられることが好ましい。さらに、ローターは、好ましくは、コイル内に回転可能に受容され、及び/又はコイルに対して回転可能である。
【0039】
コイルとローターとの間の間隙は、好ましくは、4ミリメートル以下である。追加的又は代替的に、コイルとローターとの間の間隙は、好ましくは50マイクロメートル~4ミリメートル、より好ましくは100マイクロメートル~2ミリメートル、特に好ましくは約500マイクロメートルである。当該間隙は、コイル軸に対して垂直に延びる方向に関して、ローターの外側に面するコイルのターンの内面とローターの外側との間に形成される間隔として理解することができる。したがって、コイルは、ローターの周りに緊密に巻き付けられ、ローター内に受容されている試料とコイルとの間の距離が最小化される。それによって、NMR充填率、したがってNMR実験の感度が更に改善される。
【0040】
ローターの形状は、好ましくは、コイルの形状に対応する。追加的又は代替的に、ローターは、好ましくは、試料を受容するように構成された試料チャンバを備え、コイルの形状は、好ましくは、試料チャンバの形状に対応する。したがって、ローターは、好ましくは楕円形状、特に好ましくは球形を有する。さらに、試料チャンバは、好ましくは楕円形状、特に好ましくは球形を有する。楕円状の試料チャンバを設けることにより、試料体積が増大し、これにより、NMR充填率がここでも大幅に改善される。
【0041】
流体供給デバイスは、レセプタクルを備えることが好ましく、コイルは、少なくとも部分的に、好ましくは全体的に当該レセプタクル内に配置される。
【0042】
すなわち、流体供給デバイスは、コイルの外側に配置されることが好ましい。追加的又は代替的に、コイルは、好ましくは少なくとも部分的に、特に好ましくは全体的に流体供給デバイス内に配置される。
【0043】
レセプタクルは、特に好ましくは、流体供給デバイスを通って延在する貫通孔に対応する。換言すれば、コイルは、好ましくは、ステータカップ等に受容されない。
【0044】
ローターの安定したスピンを確実にするために、コイルが流体供給デバイスの中心領域に位置決めされることが更に好ましい。流体供給デバイスの当該中心領域は、好ましくは、流体流の幾何学的中心又は流体開口の幾何学的中心にそれぞれ対応する。流体流又は流体開口の幾何学的中心は、好ましくは、流体開口が配置される共通平面内に配置される(上記参照)。このようにして、バランスのとれた流体圧力をローターに加えることができる。
【0045】
コイルは好ましくは少なくとも部分的にローターを取り囲むため、ローターは少なくとも部分的に、好ましくは全体的に流体供給デバイス内に、特に流体供給デバイスのレセプタクル内にも受容されることが更に好ましい。したがって、ローターはコイル内に配置されることが好ましく、コイルは流体供給デバイス内に配置されることが好ましい。
【0046】
1つ以上の流体開口、特に複数の流体開口は、好ましくは、レセプタクルの領域に配置される。実際には、流体開口(複数の場合もある)は、レセプタクルに向かって、特に好ましくはレセプタクルの中に、したがってレセプタクル内に配置されているコイル及びローターに向かって面するように配置されることが好ましい。流体開口の様々な設計が企図される。例えば、流体開口は、レセプタクルを画定する流体供給デバイスの表面と同一平面に配置することができる。代替的に、流体開口は、レセプタクルを画定する流体供給デバイスの表面から突出していてもよい。
【0047】
さらに、流体開口は、レセプタクルを画定する流体供給デバイスの表面に対して、及び/又はローターの外面に対して、或る角度で配置することができる。この目的のために、流体開口の開口方向は、ローターの外面に対して接線方向であることが好ましい。
【0048】
複数の流体開口は、レセプタクルの周方向に沿って、好ましくは少なくとも部分的に、特に好ましくは全体的に配置される。追加的又は代替的に、複数の流体開口は、好ましくは、コイルの周方向に沿って少なくとも部分的に、特に好ましくは全体的に配置される。例えば、球状コイルの場合には、複数の流体開口がコイルの周囲に赤道状(equatorially)に配置されることが好ましい。
【0049】
流体開口の配置は、好ましくは、断面で見たときにローターの形状及び/又はコイルの形状と一致する。例えば、球形の断面を有する球状コイルの場合、流体供給デバイスのレセプタクルの断面は、好ましくは、円形の形状を有し、流体開口の配置もまた、好ましくは、円形である。
【0050】
好ましくは、レセプタクルの周方向及び/又はコイルの周方向は、コイル軸に対して垂直に延在する軸の周りに延びている。しかしながら、他の配置も同様に企図されることに留意されたい。特に、以下で更に言及されるように、コイル軸は、プローブヘッドが磁気共鳴分光計に受容されるときに磁気共鳴分光計の静磁場の方向に対して垂直である平面上、すなわち、NMRの分野において一般的であるように、外部磁場の方向としてのz軸をz軸として定義している場合にz軸に対して垂直に延びるx,y平面である平面上の任意の方向にあり得る。
【0051】
流体供給デバイスは、好ましくは、プローブヘッドの調整軸に対してローターの回転軸を調整するように構成される。追加的又は代替的に、流体供給デバイスは、好ましくは、プローブヘッドが磁気共鳴分光計に受容されるときに、磁気共鳴分光計の静磁場の方向に対してローターの回転軸を調整するように構成される。
【0052】
すなわち、流体供給デバイスは、ローターの回転軸をプローブヘッドの調整軸に対して、又は静磁場の方向に対して調整するように構成された調整デバイスとみなすことができる。プローブヘッドの調整軸は、好ましくは、プローブヘッドが磁気共鳴分光計に受容されるときに、磁気共鳴分光計の静磁場の方向に対して平行に延びる。したがって、流体供給デバイスは、いわゆるマジックアングルを見つけるために使用することができる。
【0053】
コイルは、好ましくは、プローブヘッドに対する流体供給デバイスによる調整中に静止するように構成される。追加的又は代替的に、流体供給デバイスは、好ましくは、プローブヘッドに対する調整中に移動可能に構成される。
【0054】
流体供給デバイスは、ローターの回転軸を非機械的に調整することが好ましい。
【0055】
実際には、ローターと流体供給デバイスとの間に物理的な接続がないことが好ましい。代わりに、ローターの回転軸は、流体開口が配置される1つ以上の共通平面に対して垂直であることが好ましく、流体供給デバイスの回転等の動きは、流体供給デバイスによって供給される流体の流れ方向を変化させ、それによって、ローターは、流体供給デバイスに対して垂直な軸で回転又はスピンするように再び方向が合わせられる(reoriented)。換言すれば、流体供給デバイスとローターとの間に機械的な調整が確立されず、流体供給デバイスが機械的に調整されることが好ましい。
【0056】
さらに、流体供給デバイスは、プローブヘッド内で移動可能に、特に枢動可能に配置されることが好ましい。流体供給デバイスによる調整中に、例えば流体供給デバイスを回転させることによって、プローブヘッドに対する流体供給デバイスの方向合わせ(orientation)も調整され、それによってローターの回転軸も調整されることが特に好ましい。
【0057】
加えて、流体方向付けデバイス、特にコイルは、流体供給デバイスによる調節中に静止したままであることが好ましい。例えば、ローターの回転軸を調整するために流体供給デバイスが回転される間、コイルは静止したままである。流体方向付けデバイス、特にコイルは、プローブヘッド内に不動に、すなわち静止して配置されることが更に好ましい。
【0058】
前述したように、コイルは好ましくはコイル軸を規定する(define)。プローブヘッドにおいて、当該コイル軸は、好ましくは、プローブヘッドの調整軸Aに対して垂直に延びる。追加的又は代替的に、当該コイル軸は、好ましくは、プローブヘッドが磁気共鳴分光計に受容されるときに磁気共鳴分光計の静磁場Bの方向に対して垂直に延びる。追加的又は代替的に、当該コイル軸は、好ましくは、プローブヘッドの調整軸Aに対して垂直に及び/又はプローブヘッドが磁気共鳴分光計に受容されるときの磁気共鳴分光計の静磁場Bの方向に対して垂直に延びる平面内に延在する。当該平面は、NMRの分野において一般的であるように、外部磁場の方向としてのz軸をz軸として定義している場合、z軸に対して垂直に延びるx軸及びy軸によって広がるx,y平面として見ることができる。
【0059】
前述したように、上記の態様の全ては、単一のプローブヘッド内に存在することができる。すなわち、好ましいプローブヘッドは、楕円体コイルによって取り囲まれた楕円体ローターを備え、当該コイルは、回転デバイスの流体方向付けデバイスの一部であるか、又はそれを提供する。回転デバイスは、好ましくは、共通平面内に配置された複数の流体開口を備える流体供給デバイスを更に備え、コイルは流体供給デバイスによって取り囲まれる。
【0060】
本発明の好ましい実施形態は、図面を参照して以下で述べられる。図面は、本発明の現在の好ましい実施形態を示すためのものであるが、それを制限するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】
図1は、回転デバイス及びローターを備えるNMRプローブヘッドの斜視図を示し、回転デバイスは、流体供給デバイス及び流体方向付けデバイスを備える。
【
図2】
図2は、
図1によるNMRプローブヘッドの側面図である。
【
図3】
図3は、
図1によるNMRプローブヘッドの流体供給デバイス及びローターの正面図である。
【
図4】
図4は、
図1によるNMRプローブヘッドの流体供給デバイス及びローターの側面図である。
【
図5a】
図5aは、球状ローターの周りに巻き付けられている球状コイルの正面図である。
【
図5b】
図5bは、
図5aによる球状ローターの周りに巻き付けられた球状コイルの高周波有限要素シミュレーションを示す図である。
【
図6a】
図6aは、現行技術において既知の円筒状ローターの周りに巻き付けられている円筒状コイルの正面図である。
【
図6b】
図6bは、
図6aによる円筒状ローターの周りに巻き付けられた円筒状コイルの高周波有限要素シミュレーションを示す図である。
【
図7a】
図7aは、NMRプローブヘッドのローターの第1の実施形態を示す図である。
【
図8a】
図8aは、NMRプローブヘッドのローターの第2の実施形態を示す図である。
【
図9a】
図9aは、NMRプローブヘッドのローターの第3の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
次に、本発明の様々な態様を、図面に関連してより詳細に説明する。
【0063】
図1~
図4は、本発明によるNMRプローブヘッド2を示しており、NMRプローブヘッド2は、回転軸Rの周りを回転するように構成されたローター3と、回転軸Rの周りにおけるローター3の回転を発生させるように構成された回転デバイス9と、ローター3内に受容された試料を励起するために無線周波数信号を送信するとともに、無線周波数信号による試料の励起に応答して試料によって放出される無線周波数信号を受信するように構成されたコイル1とを備える。回転デバイス9は、ローター3に流体を供給するように構成された流体供給デバイス6と、流体供給デバイス6によって供給される流体をローター3に方向付けるように構成及び配置された流体方向付けデバイス10とを備える。
【0064】
特に、図示の例において、プローブヘッド2は、カスタマイズされた小口径伝送線路プローブ[21]上の9.5mm球状ローター3用に設計されているが、任意の種類のプローブに後付けすることができる。さらに、以下により詳細に説明されるように、図示されたプローブヘッド2内のコイル1は、球状ローター3の周りに緊密に巻き付けられた球状ソレノイドコイルに対応する。球状ソレノイドコイル1は、RFコイルとして機能し、ローター3の位置を流体供給デバイス6の中心に維持する(
図1参照)。さらに、図示されたプローブヘッド2は、プローブ全体の電気回路を同調し整合させるために使用されるコンデンサ11を備える。これにより、正しいRF信号の効率的な送信が保証される。
【0065】
上述したように、回転デバイス9は、ローター3に流体を供給するように構成された流体供給デバイス6を備える。
図3及び
図4に最も良く見られるように、流体供給デバイス6は、流体供給デバイス6を通って延在する貫通孔の形態のレセプタクル8を備え、コイル1及びローター3は、当該レセプタクル8内に配置される。すなわち、
図1~
図4から容易に分かるように、流体供給デバイス6は、コイル1の外部に配置される。実際、図示の例において、流体供給デバイス6はリングの形状を有し、その中にコイル1及びローター3が配置される。したがって、流体供給デバイス6は、リングステータと称されることがある。加えて、図示の例において、マジックアングル調整のためにリングステータ6の回転柔軟性を維持しながら、ローター3を回転させるために使用される流体をリングステータ6内に送るために、ゴムから作製されたガス管12が使用される(
図1及び
図2、並びに以下で更に提供される追加の説明を参照)。当該流体は、スピニングガスと称されることがあるガスに相当する。
【0066】
さらに、流体供給デバイス6は、ローター3に流体を供給するための複数の流体開口7、7a、...を備え、複数の流体開口7、7a、...は、共通平面Pに配置される。特に、流体開口7、7a、...は、流体の流れが流体流に分割されるように、すなわち、ここでは6つの流体開口7、7a、...から流出する6つの流れに対応する流体開口7、7a、...ごとに1つの流体流に分割されるように配置及び構成される。流体開口7、7a、...は、レセプタクル8の領域内に配置される。実際には、流体開口7、7a、...は、それらがレセプタクル8の中に面し、コイル1とレセプタクル8内に配置されているローター3とに向かうように配置される。さらに、図示の例において、流体開口7、7a、...は、レセプタクル8を画定する流体供給デバイス6の表面13から突出している。さらに、流体開口7、7a、...は、レセプタクル8を画定する流体供給デバイス6の表面13に対して角度βで配置され、また、ローター3の外面14に対して角度γで配置される。ここで、流体開口7、7a、...は、ローター3の外面14に対して22°の角度γで配置されている。
図3において、スピニングガスの流れ方向Fが矢印で示されている。リングステータ6によってスピニングガスを異なるガス流に分割することは、現行技術[18~21]において知られている半球状ステータカップを有するステータが単一のガス流を供給することとは異なる。従来技術から既知の両方の種類のステータは、軸受力及び駆動力の個々の制御を欠いているが、本発明によるリングステータ6からローター3に向かって流れる6つのガス流は、互いに部分的に打ち消し合い、駆動力を合計することができ、軸受力と駆動力との間のバランス制御をもたらす。加えて、本発明によるコイル1内での球状ローター3のスピンは、半球形カップを有する以前のステータ設計に必須であった高精度3D印刷の要件を緩和する。安定したスピンが確立されると、球状ローター3は、リングステータ6に対して垂直な中心軸Zの周りをスピンする。球状ローター3のスピン周波数は、光ファイバを用いて測定することができる。
【0067】
さらに、図示の例において、流体供給デバイスの流体開口7、7a、...は、レセプタクル8の周方向CRに全体的に沿って、及びコイル1の周方向CCに全体的に沿って配置される。レセプタクル8の当該周方向CRとコイル1の当該周方向CCとは、それぞれ、コイル1のコイル軸Cに対して垂直に延在する軸を中心として延びており、この軸は、ここでは中心軸Zに相当している。特に、当該周方向CR、CCは、リングステータの形態の流体供給デバイス6のリング平面RP内に延びる。当該リング平面RPは、流体開口7、7a、...が配置されている共通平面に対して平行に延びている。
【0068】
流体供給デバイス6は、プローブヘッド2内に移動可能に、特に枢動可能に配置される。この目的のために、流体供給デバイス6は、流体供給デバイス6がプローブヘッド2内で枢動することを可能にする2つのロッド16に枢動可能に取り付けられる。さらに、流体供給デバイス6は、プローブヘッド2の調整軸Aに対して、及びプローブヘッド2が磁気共鳴分光計に受容されるときに磁気共鳴分光計の静磁場Bの方向に対して、ローター3の回転軸Rを調整するように構成される。
図4に示されるように、プローブヘッド2の調整軸Aは、プローブヘッド2が磁気共鳴分光計に受容されるときに磁気共鳴分光計の静磁場Bの方向に平行に延びる。したがって、流体供給デバイス6は、ローター3の回転軸Rを54.7°のいわゆるマジックアングルαに調整するために使用することができる(
図4参照)。したがって、マジックアングルαは、リングステータ6に接続されているロッド16を介して、リングステータ6の枢動又は回転等の機械的な動きによって調整することができる。マジックアングル調整中、ローター3の回転軸Rはリングステータ6の動きと同調する間にコイル1は静止したままである。
【0069】
図1及び
図5aから分かるように、本発明によるコイル1は、コイル1に沿って延在するコイル軸Cに沿って配置された複数のターン4、4a、...を備える。プローブヘッド2において、当該コイル軸Cは、プローブヘッド2の調整軸Aと、プローブヘッド2が磁気共鳴分光計に受容されるときの磁気共鳴分光計の静磁場Bの方向とに対して垂直に延びる。さらに、当該コイル軸Cは、プローブヘッド2の調整軸A及び静磁場Bの方向に対して垂直に延在する平面内に延びる。
【0070】
図1及び
図5aから更に分かるように、ローター3は、コイル1内に全体的に受容されている。換言すれば、コイル1は、ローター3の周りに全体的に巻き付けられ、ローター3の形状は、コイル1の形状に対応しており、すなわち、ローター3及びコイル1の両方は、球状である。加えて、コイル1はローター3の周りに緊密に巻き付けられ、コイル1とローターとの間の間隙Gは4ミリメートル以下である。当該間隙Gは、コイル軸Cに対して垂直に延びる方向に関して、ローター3の外面14に面するコイル1のターン4、4a、...の内面17とローター3の当該外面14との間に形成される間隔に対応する。
【0071】
冒頭に述べたように、本発明によるコイル1は、無線周波数信号を送信及び受信する目的を果たすだけでなく、流体供給デバイス6によって供給される流体をローター3に方向付けるように構成及び配置された流体方向付けデバイス10も構成している。この目的のために、コイルは、軸受力とローター3をその回転軸Rの周りに回転させる駆動力とを発生させるように構成及び配置されている。当該軸受力及び駆動力は、流体供給デバイス6によって供給され、ローター3とコイル1との間に形成された間隙Gを通って流れる流体によって生成される。
【0072】
次に、本発明によるコイル1の態様をより詳細に説明する。すなわち、
図5aから分かるように、コイル1の複数のターン4、4a、...は、楕円形状、図示の例において球形を画定する。
【0073】
図5aから更に分かるように、ターン4、4a、...の周方向CTに関するコイル1の個々のターン4、4a、...の円周は楕円形であり、図示の例において円形である。さらに、ターン4、4a、...の周方向CTに関する個々のターン4、4a、...の円周は、コイル軸Cに関して(with respect to the coil axis C)変化する。コイル1の第1のターン4によって提供されるコイル1の始端からコイル1の最後のターン4fによって提供されるコイル1の終端まで延在する延在方向Eに関して、ターン4、4a、...の円周は、次第に大きくなり、次いで次第に小さくなる。したがって、コイル1の始端の領域におけるターン4、4a、...の円周及びコイル1の終端の領域におけるターン4e、4fの円周は、コイル1の中間領域におけるターン4c、4dの円周よりも小さく、中間領域における1つ以上のターン4c、4dの円周は最大である。これは、従来技術において知られ、
図6aに示される、コイル1’の全てのターン4’、4a’、...が同じ円周を有する解決策とは対照的である。さらに、
図5aに示す本発明によるコイル1において、コイル1の連続するターン4、4a、...の間の距離は、コイル軸Cに関して一定のままである。さらに、コイル1の個々のターン4、4a、...の直径dtは、同様にコイル軸Cに関して一定のままである。
【0074】
現行技術において知られている円筒状ローター3’を有する直線状ソレノイドコイル1’と、本発明による球状ローター3を有する球状ソレノイドコイル1とのRF特性を比較するために、高周波有限要素シミュレーションを実行した。シミュレーションモデルは、直径3.9ミリメートルの球状ローター3と、7ターンの球状ソレノイドコイル1とを含んでおり(
図9a参照)、コイル軸Cに沿った磁界強度は、球状ローター3内で24.5A/m~27.5A/mである(
図5b参照)。
図6aは、比較用の標準を示しており、ここでは、30マイクロリットルの試料体積及び8ターンソレノイドコイル1’を有する直径2.2ミリメートルの市販の円筒状ローター3’である。
図6bは、コイル軸に沿った磁場強度を示しており、磁場強度は、試料中心で36A/mであり、端部で15A/mまで低下している。直線状ソレノイドコイル1’については、マジックアングルに沿った方向付け(orientation)を考慮して磁場をダウンスケールした。円筒状ローター3’と同じ試料体積を維持するために、直径3.9ミリメートルの球状ローター3が使用された。さらに、両方のシミュレーションにおけるコイル1、1’と試料との間の間隙Gは、同じ、すなわち0.6ミリメートルに保たれている。各コイル1、1’におけるターン4、4a、...、ターン4’、4a’、...の数及びワイヤ直径dtを最適化した(以下の表S1及び表S2を参照)。
【0075】
【0076】
【0077】
5mWのRF入力電力で完全に同調され整合された回路を仮定して、試料領域上の平均磁場を計算した。円筒状ローターの最大磁場は、7ミリメートルの8ターンコイル及び0.6mmのワイヤ直径で57.3A/mである(以下の表1を参照)。長さ7ミリメートル、ターン数7、ワイヤ直径0.5ミリメートルのBrukerコイルは、わずかに低い磁場を示す。同じ巻線及びワイヤ直径を有する球状ソレノイドコイルは、直線状ソレノイドコイルと同様の磁場を示す。9ターン及び0.4ミリメートルのワイヤ直径を有するコイルは、63.1A/mのより高い磁場を示すが、インピーダンスは、回路を整合させるには高すぎる。両方のコイルによって生成される平均磁場は同様であるが、均一性は球形ソレノイドコイル内がはるかに良好である(
図5b参照)。直線状ソレノイドコイルは、36A/mの強い中心磁場を示し、試料の終端では15A/mまで低下する(
図6b参照)。
【0078】
【0079】
シミュレーション結果から、同じ試料体積及び試料コイル間隔で、本発明による球状コイル1は、現行技術において知られている直線状ソレノイドコイル1’と同等のRF磁場を示すものの、より良好な均一性を有していると結論付けられる。
【0080】
さらに、
図7a~
図9bから分かるように、ローター3、3’は、試料を受容するように構成された試料チャンバ5、5’を備える。試料チャンバ5、5’は、様々な設計を有することができる。例えば、試料チャンバ5、5’は、
図7a~
図8bに示されるように円筒状とすることができ、又は楕円形状、特に、
図9a及び
図9bに示されるように球形とすることができる。
【0081】
これまでに報告されたほとんどの球状ローターは、円筒状試料チャンバを有して機械加工されている[18~21]。この設計は、厚いローター壁からの大きな慣性モーメントのために安定したスピンを提供するが、試料体積及びNMR充填率を犠牲にしている。
【0082】
図7a及び
図7bは、O’Keefe Ceramics(コロラド州ウッドランドパーク)から購入し、以前の刊行物[18、19、22]において知られている、直径2.54mmの貫通孔及び長手方向のタービン溝を有する高精度の直径9.525mmのイットリア安定化ジルコニア(ZrO
2)ボールの形態の球状ローター3’(ローターa)を示している。ローター3’は、12個の60°ノッチ溝の形態のタービン溝18を備え、貫通孔は、39マイクロリットルの試料しか保持することができない試料チャンバ5’を画定する。既知のように、ジルコニアは、衝突しにくいため、円筒状ローターに一般的に使用される材料である。しかし、球形の幾何学的形状では、最大の慣性モーメントが常にスピン軸に沿っているため、この懸念は球状ローターに対してはそれほど重要ではない[19]。したがって、より大きな試料体積を取得する機械加工の実現可能性を考慮して、ローター材料としてのサファイア/ルビーを更に調査した。サファイア/ルビーの他の利点としては、高い熱伝導率及び優れたマイクロ波透過特性が挙げられ、これらは、動的核分極(DNP:dynamic nuclear polarization)NMR実験における用途にとって重要である。より重要なことに、サファイア/ルビー中の単結晶Al
2O
3はマジックアングルオフセットに敏感であり、マジックアングルをin situで調整することができる[23]。
【0083】
図8a及び
図8bに示すローターbは、Saphirwerk AG(スイス連邦ブルック)から購入した、直径5.08mmの貫通孔を有する高精度の直径9.525mmのルビー(99%Al
2O
3+1%Cr
2O
3)球状ローター3’である。これは、赤道部上に設けられた12本の半球形溝18を更に有している。当該溝は、0.23ミリメートルの深さである。貫通孔によって形成され、2つの平坦な端部キャップを有する試料チャンバ5’は、131マイクロリットルの試料体積を画定する。
【0084】
図9a及び
図9bに示すローターcは、本発明による高精度の直径9.525mmのルビー球状ローター3であり、219マイクロリットルの体積を有する試料チャンバ5を画定するように更にくり抜かれている。特に、当該試料チャンバ5は、ここでは、5.08ミリメートルの直径を有する貫通孔と、7.5ミリメートルの追加の球状チャンバとによって形成される。すなわち、試料チャンバ5の形状は、ローター3の形状に対応している。中空試料チャンバ5は、5軸ミリング技術(DMU 50、DMG MORI)を使用して機械加工される。ここで留意すべき重要なことは、このローター3が、
図7a~
図8bに示すローターの場合のように、より容易な機械加工用のタービン溝を有さず、より堅牢なローターシェルを有することである。溝のない球状ローターは、他のローター設計と同様のスピン周波数を有することが実証されている[19]。
【0085】
全ての球状ローターのキャップは、ABS様樹脂(VisiJet M2R-CL)を使用してProjet MJP 2500(3D Systems)上に3D印刷した。
【0086】
これら3つのタイプの球状ローターにKBr粉末を充填して、
図1~
図4に示すプローブヘッドを評価した。ローターa、ローターb、及びローターc内の試料質量は、それぞれ70.6mg、270.1mg、及び405.3mgである。ローターa及びローターcは、穴の直径に一致するロッドを使用して試料を圧縮することによって充填され、一方、ローターbは、試料に絶えず力を加えながら超音波処理することによってより密に充填された。球状ソレノイドコイル1は、0.4mmのポリウレタン/ナイロン被覆銅線を用いて手で巻き付けた。3D印刷された型をコイル巻き付けガイドとして使用した。リングステータ6及び型の両方は、透明なv4樹脂を使用して、Form 3 SLA 3Dプリンタ(Formlabs Inc.、マサチューセッツ州サマーヴィル)上で3D印刷された。球状ローターが球状コイル1に装填された後、球状ローターがリングステータ6の中心にあり、リングステータ6に対して垂直な回転軸Rの周りを回転するように、コイル位置が調整される。次に、リングステータ6を機械的に回転させることによって回転軸3を最適化して、KBrスペクトルにおいて最も高い側波帯強度が取得される。
【0087】
図10a及び
図10bは、3つ全てのロータータイプの79BrのMASスペクトルを示している。全てのNMR実験は、カスタマイズされた単一共鳴、小口径伝送線路プローブ[21]を使用して、BrukerのAvance 600MHz分光計で室温で実施した。1秒のスキャン間遅延を有するブロッホ減衰パルスシーケンスを使用した。79Brスペクトルを、200W入射RF電力で14μsのπ/2パルスを使用して150.37MHzで取得した。約4kHzのスピン周波数を、2バールの圧力で窒素ガスを用いてデータ取得中に維持した。各スペクトルにおいて4回のスキャンを取得する。より高い周波数で徐々に反転するスピニングサイドバンドは、限られた周波数範囲のみを効率的に励起する長い90°パルス(14マイクロ秒)に起因することに留意されたい。最も高いNMR感度は、405.3mgのKBrを含有する本発明によるローターであるローターcで得られ、一方、最も低い感度は、70.6mgのKBrを有するローターaから得られ、
図10bに示される
図10aの中心ピークの拡大図を参照されたい。各スペクトルの信号積分の比は1:0.66:0.15であり、各ローター内の試料質量の比(1:0.67:0.17)と同様である。ジルコニア球体(ローターa)は、赤道部上で最も厚い壁を有し、大きな慣性モーメントを提供するため、最も安定したスピンが期待された。しかしながら、本発明者らは、驚くべきことに、薄い壁を有し、溝を有さない本発明によるローター(ローターc)も数時間にわたって極めて安定したスピンを示すことを見出した。ローター内のKBr粉末は、スピン中に遠心力を受け、中心に中空空間を形成することが判明した。ローター内のKBr試料の再分布は、安定したスピンについての大きな慣性モーメントを構築する。
【0088】
したがって、RFコイルとして球状ローターの周りに緊密に巻き付けられた球状コイルの有用性だけでなく、MAS用の回転デバイスの一部の有用性も実証された。この装置の1つの特有の利点は、コイル軸Cが、ローター3の回転軸Rに関係なく、外部磁場Bに対して垂直に固定されることである。生成される全てのB1磁場は、x/y軸に沿っており、ダイナミックアングルスピニング(DAS)及び可変アングルスピニング等の実験は、B1磁場を損なうことなく実行することができる。換言すれば、コイル軸Cが外部磁場Bに対して垂直に位置合わせされるため、本発明は、全てのRF電力を利用し、さらに、コイルの移動なしにマジックアングル調整を可能にする。加えて、RFコイル1内でスピンする球状ローターの能力は、ステータ製造についての高精度要件を緩和し、より小さいローターのステータ開発をより容易にする。さらに、スピニングガスを供給し、コイル1の外側にあるマジックアングルαを調整するリングステータの形態の流体供給デバイス6は、試料とコイル1との間の間隙Gを最小にする。また、NMR充填率は、試料体積の増大及び試料コイル距離の最小化によって大幅に改善されることも確認されている。特に、円筒状の試料チャンバを有する球状ローターと比較して、中空の球状ローターは、6倍高い信号積分をもたらす。加えて、高周波有限要素シミュレーションを使用した球状ローターと市販の円筒状ローターとの間のNMR感度の比較は、球状ソレノイドコイルを有する球状ローターと直線状ソレノイドコイルを有する円筒状ローターとの間で同様のB1磁場を示す。
【0089】
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【符号の説明】
【0090】
1 コイル
1’ コイル
2 プロ-ブヘッド
3 ロ-タ-
3’ ロ-タ-
4、4a、... タ-ン
4’、4a’... タ-ン
5 試料チャンバ
5’ 試料チャンバ
6 流体供給デバイス
7、7a、... 流体開口
8 レセプタクル
9 回転デバイス
10 流体方向付けデバイス
11 コンデンサ
12 管
13 面
14 面
15 光ファイバ
16 ロッド
17 面
18 溝
C コイル軸
CT 周方向
CR 周方向
CC 周方向
Z 中心軸
F 流れ方向
E 延在方向
A 調整軸
R 回転軸
B 静磁場の方向
P 平面
RP 平面
G 間隙
at 距離
dt 直径
α マジックアングル
β 角度
γ 角度
【国際調査報告】