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特表2025-505026架橋されたハイドロゲルを利用した体内注入型ハイドロゲルロッド、その製造方法及びその生医学的用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】架橋されたハイドロゲルを利用した体内注入型ハイドロゲルロッド、その製造方法及びその生医学的用途
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/52 20060101AFI20250212BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20250212BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20250212BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20250212BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20250212BHJP
   A61L 27/20 20060101ALI20250212BHJP
   A61L 27/24 20060101ALI20250212BHJP
   A61L 27/14 20060101ALI20250212BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20250212BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
A61L27/52
A61K47/42
A61K47/36
A61K47/38
A61K9/06
A61K45/00
A61K48/00
A61K35/12
A61P17/00
A61P27/02
A61L27/20
A61L27/24
A61L27/14
A61L27/54
A61L27/38 100
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547076
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(85)【翻訳文提出日】2024-08-07
(86)【国際出願番号】 KR2022017200
(87)【国際公開番号】W WO2023149619
(87)【国際公開日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】10-2022-0015609
(32)【優先日】2022-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】515131404
【氏名又は名称】アジュ ユニバーシティー インダストリー-アカデミック コーオペレイション ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】AJOU UNIVERSITY INDUSTRY-ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION
(71)【出願人】
【識別番号】504314133
【氏名又は名称】ソウル ナショナル ユニバーシティ ホスピタル
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】パク キドン
(72)【発明者】
【氏名】リ シミン
(72)【発明者】
【氏名】ウ セジュン
(72)【発明者】
【氏名】ホン ヘギョン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB16
4C076BB24
4C076CC10
4C076CC18
4C076EE30A
4C076EE31A
4C076EE36A
4C076EE37A
4C076EE38A
4C076EE41A
4C076EE42A
4C076EE43A
4C076EE47A
4C076FF70
4C076GG06
4C081AB19
4C081AB21
4C081BB06
4C081CC05
4C081CD021
4C081CD031
4C081CD041
4C081CD051
4C081CD061
4C081CD071
4C081CD081
4C081CD091
4C081CD151
4C081CD18
4C081DA12
4C084AA13
4C084AA17
4C084MA28
4C084MA58
4C084MA63
4C084NA06
4C084NA12
4C084ZA33
4C084ZA89
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087MA28
4C087MA58
4C087MA63
4C087NA06
4C087NA12
4C087ZA33
4C087ZA89
(57)【要約】
本発明は、架橋されたハイドロゲルを利用した体内注入型ハイドロゲルロッド、その製造方法及びその生医学的用途に関するものであって、本発明によれば、高分子、酵素及び過酸化水素の含量を一定の比率で調節して体内注入型ハイドロゲルロッドを製造することにより、ハイドロゲルロッドに注入された薬物の初期放出量を制御して、既存のハイドロゲル基盤の体内注入型インプラントと比較して長期間の薬効濃度以上の徐放出を示し、周辺組織への排出を大きく減少させて治療効果を高め、副作用を顕著に減少させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール誘導体が置換された高分子からなり、前記高分子の側鎖に導入されたフェノール誘導体が互いに結合されて架橋されたロッド状のハイドロゲルマトリックスと、
前記ハイドロゲルマトリックス内に搭載された薬物と、
を含む、体内注入型ハイドロゲルロッド。
【請求項2】
前記ハイドロゲルロッドは、初期放出速度を10%以下に制御して3ヶ月以上の徐放出特性を示すことを特徴とする請求項1に記載の体内注入型ハイドロゲルロッド。
【請求項3】
前記高分子は、ゼラチン、キトサン、ヘパリン、セルロース、デキストラン、デキストランサルフェート、コンドロイチンサルフェート、ケラタンサルフェート、デルマタンサルフェート、アルギン酸、コラーゲン、アルブミン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、ビトロネクチン、ヒアルロン酸、フィブリノーゲン、及び多分岐高分子からなる群から選択された1つまたは2つ以上の高分子であることを特徴とする請求項1に記載の体内注入型ハイドロゲルロッド。
【請求項4】
前記フェノール誘導体は、ヒドロキシフェニルプロピオン酸、4-ヒドロキシフェニル酢酸、チロシン、チラミン、テトロン酸チラミン、及びPEG-チラミンからなる群から選択された1つまたは2つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の体内注入型ハイドロゲルロッド。
【請求項5】
前記薬物は、眼球注入可能なタンパク質治療製剤、化学薬物、低分子治療剤、遺伝子、細胞または細胞由来物から選択された1つまたは2つ以上の薬物であることを特徴とする請求項1に記載の体内注入型ハイドロゲルロッド。
【請求項6】
前記ハイドロゲルは、高分子、酵素及び過酸化水素の濃度を調節してロッド状のハイドロゲルマトリックスを形成することを特徴とする請求項1に記載の体内注入型ハイドロゲルロッド。
【請求項7】
前記ハイドロゲルマトリックスは、架橋度が20~100%であることを特徴とする請求項1に記載の体内注入型ハイドロゲルロッド。
【請求項8】
請求項1に記載の体内注入型ハイドロゲルロッドを含む、体内注入型インプラント素材。
【請求項9】
前記インプラント素材は、眼球内、眼球外体内空間、皮下組織及びその他の臓器内部からなる群から選択された何れか1つに適用されたことを特徴とする請求項8に記載の体内注入型インプラント素材。
【請求項10】
請求項1に記載の体内注入型ハイドロゲルロッドを含む、眼球注入型インプラント素材。
【請求項11】
請求項1に記載の体内注入型ハイドロゲルロッドを含む、薬物伝達体。
【請求項12】
ロッド状のホールが備えられたモールドを製造する段階と、
フェノール誘導体が置換された高分子、薬物及び酵素を溶解させた溶解液を製造する段階と、
前記溶解液と過酸化水素とを前記モールドに備えられたホールに順次に注入した後、ハイドロゲルを架橋させる段階と、
前記架橋されたハイドロゲルを前記モールドから分離させる段階と、
前記分離されたハイドロゲルを凍結乾燥してハイドロゲルロッドを製造する段階と、を含み、
前記フェノール誘導体が置換された高分子、酵素及び過酸化水素の混合比率は、10:0.1~0.5:0.1~0.5の体積比であることを特徴とする体内注入型ハイドロゲルロッドの製造方法。
【請求項13】
前記ハイドロゲルを架橋させる段階は、酵素と過酸化水素との酵素架橋反応を通じて高分子の側鎖に導入された1つ以上のフェノール基が互いに結合されて架橋されることを特徴とする請求項12に記載の体内注入型ハイドロゲルロッドの製造方法。
【請求項14】
前記酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、ハロペルオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ、カタラーゼ、ヘムタンパク質、ペルオキシド、ペルオキシレドキシン、動物ヘム-依存的ペルオキシダーゼ、甲状腺ペルオキシダーゼ、バナジウムブロモペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼ、チロシナーゼ、及びカテコールオキシダーゼからなる群から選択された1つまたは2つ以上を含む、請求項12に記載の体内注入型ハイドロゲルロッドの製造方法。
【請求項15】
前記高分子は、ゼラチン、キトサン、ヘパリン、セルロース、デキストラン、デキストランサルフェート、コンドロイチンサルフェート、ケラタンサルフェート、デルマタンサルフェート、アルギン酸、コラーゲン、アルブミン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、ビトロネクチン、ヒアルロン酸、フィブリノーゲン、及び多分岐高分子からなる群から選択される何れか1つ以上の高分子であることを特徴とする請求項12に記載の体内注入型ハイドロゲルロッドの製造方法。
【請求項16】
前記過酸化水素の含量は、0.02~0.08wt%であることを特徴とする請求項12に記載の体内注入型ハイドロゲルロッドの製造方法。
【請求項17】
前記高分子の含量は、10~30wt%であることを特徴とする請求項12に記載の体内注入型ハイドロゲルロッドの製造方法。
【請求項18】
前記モールドから分離させる段階は、30~40℃の温度でゼラチンを溶解させることを特徴とする請求項12に記載の体内注入型ハイドロゲルロッドの製造方法。
【請求項19】
前記凍結乾燥は、-70~-85℃の温度で12~24時間行うことを特徴とする請求項12に記載の体内注入型ハイドロゲルロッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋されたハイドロゲルを利用した体内注入型ハイドロゲルロッド、その製造方法及びその生医学的用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロゲル(hydrogel)は、水相に溶解された高分子の物理化学的架橋を通じたゼリー状の物質であって、親水性に優れて水を容易に吸収するだけではなく、強度、形状などを容易に調節することができて、組織工学用支持体または薬物伝達などに使われている。また、ハイドロゲルは、優れた生体適合性と生分解性、薬物放出調節及び体内注入後、相転移を成しうる最小侵襲的の特性によって、体内薬物伝達効率が低い方式の代案として活発に研究されている。薬物伝達体として主な目的は、疾患部位で長期間薬効濃度以上の薬物を徐放出して副作用と疼痛など、不快感を引き起こしうる頻繁な注入を要しないことである。代表的に、眼科疾患のうち、習性年齢関連黄斑変性の場合、治療のためにタンパク質薬物であるVEGF拮抗剤(anti-VEGF agent)を眼球内注入しなければならないが、眼球内半減期が2週以内であり、薬効持続期間は1~2ヶ月に短い。したがって、VEGF拮抗剤の最大効果を得るためには、ほぼ毎月眼球に注射しなければならないが、これは、患者に多くの不便と副作用とを引き起こせるだけではなく、経済的にも大きな負担として作用するので、注入型ハイドロゲルが有望な眼球内タンパク質薬物伝達体として開発されている。
【0003】
しかし、注入型ハイドロゲルは、注入後、相転移になる以前に初期過量の薬物が放出されて、長期間の薬効保持が要求される疾患で薬物放出速度の調節に限界を示す。薬物放出速度を調節するためには、架橋されて相転移されたハイドロゲルを注入しなければならないが、架橋されたハイドロゲルは固体化され、一定でない形態として体内注入が不可能である。これにより、本発明者らは、架橋されたハイドロゲルを利用した長期間タンパク質薬物放出制御型の体内注入型インプラント(Hydrogel rod)を新たに開発した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、架橋されたハイドロゲルを用いてタンパク質薬物の放出制御のための体内注入型ハイドロゲルロッド、その製造方法及びその用途に関するものであって、高分子、酵素及び過酸化水素の含量を制御して徐放出特性を示す体内注入型ハイドロゲルロッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記のような目的を果たすために、本発明は、フェノール誘導体が置換された高分子からなり、前記高分子の側鎖に導入されたフェノール誘導体が互いに結合されて架橋されたロッド状のハイドロゲルマトリックス;及び前記ハイドロゲルマトリックス内に搭載された薬物;を含む体内注入型ハイドロゲルロッドを提供する。
【0006】
また、本発明は、前述した体内注入型ハイドロゲルロッドを含む体内注入型インプラント素材を提供する。
【0007】
また、本発明は、前述した体内注入型ハイドロゲルロッドを含む薬物伝達体を提供する。
【0008】
また、本発明は、ロッド状のホール(hole)が備えられたモールドを製造する段階;フェノール誘導体が置換された高分子、薬物及び酵素を溶解させた溶解液を製造する段階;前記溶解液と過酸化水素とを前記モールドに備えられたホールに順次に注入した後、ハイドロゲルを架橋させる段階;前記架橋されたハイドロゲルを前記モールドから分離させる段階;及び前記分離されたハイドロゲルを凍結乾燥してハイドロゲルロッドを製造する段階;を含み、
【0009】
前記フェノール誘導体が置換された高分子、酵素及び過酸化水素の混合比率は、10:0.1~0.5:0.1~0.5の体積比であることを特徴とする体内注入型ハイドロゲルロッドの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高分子、酵素及び過酸化水素の含量を一定の比率で調節して体内注入型ハイドロゲルロッドを製造することにより、ハイドロゲルロッドに注入された薬物の初期放出量を制御して、既存のハイドロゲル基盤の体内注入型インプラントと比較して長期間の薬効濃度以上の徐放出を示し、周辺組織への排出(elimination)を大きく減少させて副作用を顕著に減少させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明による体内注入型ハイドロゲルロッド(GPT hydrogel rod)の製造方法を示す模式図(a)であり、本発明から製造された体内注入型ハイドロゲルロッドの形状を撮影したイメージ(b)であり、本発明から製造された体内注入型ハイドロゲルロッドのインジェクタ(injector)の製作模式図(c)である。
図2】本発明による体内注入型ハイドロゲルロッドの製造条件を示す表(a)であり、本発明の体内注入型ハイドロゲルロッドの架橋度の調節による機械的強度を評価したグラフ(b)である。
図3】本発明による体内注入型ハイドロゲルロッドの時間帯別の薬物放出量グラフ(a)であり、120日までの累積放出挙動を示すグラフ(b)である。
図4】比較例の体内注入型ハイドロゲルの模式図(a)であり、実施例の体内注入型ハイドロゲルロッドの薬物放出培養(incubation)模式図(b)であり、実施例の体内注入型ハイドロゲルロッドの累積ハイドロゲルから放出された銅イオン及び生成された酸化窒素の薬物放出挙動グラフ(c)である。
図5】実施例及び比較例の体内注入型ハイドロゲルのWST-1を通じたHUVECの成長抑制を示すグラフ(a)であり、Live/Deadを通じた細胞適合性及び成長抑制を示す走査電子顕微鏡(SEM)のイメージ(b)である。
図6】本発明による体内注入型ハイドロゲルの体内薬物動態学の評価のための眼球内注入計画模式図である。
図7】実施例及び比較例の体内注入型ハイドロゲルロッドの体内組織別の薬動の結果を示すグラフ(a-c)であり、組織別の薬物濃度を示す表(d)である。
図8】本発明による体内注入型ハイドロゲルロッドの眼球内注入後、時間帯別の眼球内超音波写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をより具体的に説明するために、本発明による望ましい実施例を添付図面を参照してより詳細に説明する。しかし、本発明は、ここで説明される実施例に限定されず、他の形態としても具体化される。
【0013】
本発明者らは、架橋されたハイドロゲルを利用した長期間タンパク質薬物放出制御型の体内注入型ハイドロゲルロッド(Hydrogel rod)の製造方法のデザインと有効性の評価とを通じて本発明を完成した。
【0014】
本発明は、フェノール誘導体が置換された高分子からなり、前記高分子の側鎖に導入されたフェノール誘導体が互いに結合されて架橋されたロッド状のハイドロゲルマトリックス;及び前記ハイドロゲルマトリックス内に搭載された薬物;を含む体内注入型ハイドロゲルロッドを提供する。
【0015】
前記ハイドロゲルマトリックスは、架橋度が30~80%、40~70%または45~60%である。前記のような架橋度を有することにより、前記ハイドロゲルロッドは、初期放出速度を10%以下、7%以下、または5%以下に調節して3ヶ月または4ヶ月以上の徐放出特性を示す。
【0016】
前記ロッド状のハイドロゲルマトリックスは、直径が0.5~0.7mm、0.7~0.9mmまたは0.9~1.2mmである。
【0017】
また、前記ロッド状のハイドロゲルマトリックスは、長さが4~6mm、6~8mmまたは8~10mmである。
【0018】
前記高分子は、ゼラチン、キトサン、ヘパリン、セルロース、デキストラン、デキストランサルフェート、コンドロイチンサルフェート、ケラタンサルフェート、デルマタンサルフェート、アルギン酸、コラーゲン、アルブミン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、ビトロネクチン、ヒアルロン酸、フィブリノーゲン、及び多分岐高分子からなる群から選択された1つまたは2つ以上の高分子である。
【0019】
前記フェノール誘導体は、ヒドロキシフェニルプロピオン酸(hydroxyphenyl propionic acid)、4-ヒドロキシフェニル酢酸(4-hydroxyphenyl acetic acid)、チロシン(tyrosine)、チラミン(tyramine)、テトロン酸チラミン(tetronic tyramine)、及びPEG-チラミン(PEG-tyramine)からなる群から選択された1つまたは2つ以上である。
【0020】
前記薬物は、眼球注入可能なタンパク質治療製剤、化学薬物、低分子治療剤、遺伝子、細胞または細胞由来物から選択された1つまたは2つ以上の薬物である。具体的に、タンパク質治療製剤は、黄斑変性、糖尿病性網膜症などに使われる抗血管内皮細胞成長因子、すなわち、抗VEGF(anti-VEGF)であるラニビズマブ(ranibizumab)、アフリベルセプト(aflibercept)、ベバシズマブ(bevacizumab)、ブロルシズマブ(brolucizumab)とその他の疾患に使われるタンパク質薬物であるリツキシマブ(rituximab)、アダリムマブ(adalimumab)またはインフリキシマブ(infliximab)などからなり、化学薬物は、デキサメタゾン(dexamethasone)、トリアムシノロン(triamcinolone)、ガンシクロビル(ganciclovir)、メトトレキサート(methotrexate)またはバンコマイシン(vancomycin)などからなり、低分子治療剤は、糖(sugars)、脂質(lipids)、アミノ酸(amino acids)、脂肪酸(fatty acids)、フェノール化合物(phenolic compounds)またはアルカロイド(alkaloids)などからなり、遺伝子は、siRNA(anti-VEGF)などからなり、細胞は、RPE、photoreceptorのような網膜及び眼球内細胞、幹細胞(stem cell)などからなりうる。以下、薬物としてベバシズマブを利用した実施例を挙げて説明しているが、本発明は、このような薬物の種類に限定されず、任意の眼科及び多様な疾患のタンパク質治療製剤、化学薬物、低分子治療剤、遺伝子または細胞などを含みうる。
【0021】
前記ハイドロゲルは、高分子、酵素及び過酸化水素の濃度を調節してロッド状のハイドロゲルマトリックスを形成しうる。
【0022】
具体的に、前記フェノール誘導体が置換された高分子、酵素及び過酸化水素の混合比率は、10:0.1~0.5:0.1~0.5の体積比で混合してロッド状のハイドロゲルマトリックスを形成しうる。
【0023】
また、本発明は、前述した体内注入型ハイドロゲルロッドを含む体内注入型インプラント素材を提供する。具体的に、前記体内注入型インプラント素材は、眼球注入型インプラント素材である。
【0024】
前記インプラント素材は、眼球内、眼球外体内空間、皮下組織及びその他の臓器内部からなる群から選択された何れか1つに適用可能である。
【0025】
また、本発明は、前述した体内注入型ハイドロゲルロッドを含む薬物伝達体を提供する。
【0026】
また、本発明は、ロッド状のホールが備えられたモールドを製造する段階;フェノール誘導体が置換された高分子、薬物及び酵素を溶解させた溶解液を製造する段階;前記溶解液と過酸化水素とを前記モールドに備えられたホールに順次に注入した後、ハイドロゲルを架橋させる段階;前記架橋されたハイドロゲルを前記モールドから分離させる段階;及び前記分離されたハイドロゲルを凍結乾燥してハイドロゲルロッドを製造する段階;を含み、
【0027】
前記フェノール誘導体が置換された高分子、酵素及び過酸化水素の混合比率は、10:0.1~0.5:0.1~0.5の体積比であることを特徴とする体内注入型ハイドロゲルロッドの製造方法を提供する。
【0028】
前記モールドを製造する段階は、ゼラチン、金属及びテフロンからなる群から選択された1種のモールド内部にロッド状のホールを備えるように製造することができる。
【0029】
前記ロッド状のホールは、0.5~1.2mmの直径を有し、4~10mmの長さを有しうる。
【0030】
具体的に、前記モールドを製造する段階は、針の外部にゼラチン溶液を注いだ後、1~10℃の温度で固めてゼラチンモールドを製造することができる。
【0031】
前記針は、0.5~1.2mmの直径を有し、4~10mmの長さを有するものである。
【0032】
前記ゼラチン溶液は、5~20wt%または5~15wt%のゼラチンを含みうる。
【0033】
前記ハイドロゲルを架橋させる段階は、酵素と過酸化水素との酵素架橋反応を通じて高分子の側鎖に導入された1つ以上のフェノール基が互いに結合されて架橋される。具体的に、前記ハイドロゲルを架橋させる段階を通じてロッド状のハイドロゲルを形成しうる。
【0034】
前記高分子は、ゼラチン、キトサン、ヘパリン、セルロース、デキストラン、デキストランサルフェート、コンドロイチンサルフェート、ケラタンサルフェート、デルマタンサルフェート、アルギン酸、コラーゲン、アルブミン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、ビトロネクチン、ヒアルロン酸、フィブリノーゲン、及び多分岐高分子からなる群から選択される何れか1つ以上の高分子である。
【0035】
前記酵素は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase)、グルタチオンペルオキシダーゼ(glutathione peroxidase)、ハロペルオキシダーゼ(haloperoxidase)、ミエロペルオキシダーゼ(myeloperoxidase)、カタラーゼ(catalase)、ヘムタンパク質(hemoprotein)、ペルオキシド(peroxide)、ペルオキシレドキシン(peroxiredoxin)、動物ヘム-依存的ペルオキシダーゼ(animal heme-dependent peroxidases)、甲状腺ペルオキシダーゼ(thyroid peroxidase)、バナジウムブロモペルオキシダーゼ(vanadiumbromoperoxidase)、ラクトペルオキシダーゼ(lactoperoxidase)、チロシナーゼ(tyrosinase)、及びカテコールオキシダーゼ(catechol oxidase)からなる群から選択された1つまたは2つ以上を含む。
【0036】
前記高分子の含量は、10~30wt%または15~25wt%である。
【0037】
前記過酸化水素の含量は、0.02~0.08wt%、0.03~0.07wt%または0.035~0.06wt%である。
【0038】
前記酵素の濃度は、0.001~0.005mg/mlまたは0.002~0.004mg/mlである。
【0039】
前記のように、高分子、酵素及び過酸化水素を混合することにより、本発明によって製造された体内注入型ハイドロゲルロッドは、20~100%、30~80%、40~70%または45~60%の架橋度を示し、これにより、前記ハイドロゲルロッドは、初期放出速度を10%以下、7%以下または5%以下に調節して3ヶ月以上の徐放出特性を示す。
【0040】
前記モールドから分離させる段階は、ゼラチン、金属及びテフロンからなる群から選択された1種のモールドからロッド状のハイドロゲルを分離させることができる。
【0041】
具体的に、前記モールドから分離させる段階は、30~40℃の温度でゼラチンを溶解させて、前記ゼラチンモールドを除去してロッド状のハイドロゲルを分離させることができる。
【0042】
または、前記モールドから分離させる段階は、金属またはテフロン材のロッド状のモールドを用いてモールド内にハイドロゲルロッドを押し出して分離させることができる。
【0043】
前記凍結乾燥は、-70~-85℃の温度で12~24時間行ってハイドロゲルロッドを製造することができる。
【0044】
以下、本発明の理解を助けるために、実施例を挙げて詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明の内容を例示するものであり、本発明の範囲が、下記の実施例に限定されるものではない。本発明の実施例は、当業者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0045】
実施例及び比較例
【0046】
注入可能なGelatin-PEG-Tyramine(GPT)hydrogelのロッド(Rod)状の薬物伝達体の製造のために、温度感応性ゼラチン(gelatin)をモールド(mold)として利用した(図1の(a))。48ウェルプレート(well plate)のウェル(well)内に針(needle)を固定した後、針の外部に37℃のゼラチン溶液(10wt%)を追加した後、4℃冷蔵保管を通じて固体ゼラチンモールド(gelatin mold)を形成した。25mg/mL濃度のベバシズマブ1mLの凍結乾燥後、250μLのGPT高分子溶液で溶解させて100mg/mL濃度のベバシズマブ薬物と混合されたGPT高分子溶液を準備した。そのうち、1500μgのベバシズマブが搭載された15μLのGPT高分子溶液:HRP:Hのそれぞれ9:0.5:0.5の比率で混合されて、総16.67μLの体積でハイドロゲルロッドの製造に用いられた。針を除去した後、モールド内部にベバシズマブ薬物と混合されたGPT hydrogel溶液を追加して酵素架橋を進めた。ベバシズマブは、1500μg搭載し、GPT高分子、HRP及びHの濃度は、下記表1に示したものと同様に使用した。HRP/Hを利用した酵素架橋方式を用いてモールド内の相転移を進めた。2時間培養後に、37℃でゼラチンモールドを溶解させて架橋されたGPTハイドロゲルロッドを収得した(図1の(b))後、凍結乾燥して保管した。ハイドロゲルロッドを注入するためのインジェクタを開発するために、1mlシリンジ(syringe)のプランジャー(plunger)にHamilton syringe wireを固定して利用した。製作されたインジェクタを常用製品であるオズールデックス(ozurdex)と類似した方式で適用することができる(図1の(c))。
【0047】
【表1】
【0048】
実験例1-機械的特性
【0049】
図1に示したように、実施例と比較例1及び比較例2との組成でハイドロゲルロッドを製造した場合、比較例1及び比較例2は、高分子の濃度が低くてロッド製作時に、ポリマー鎖(polymer chain)が不足であって、凍結乾燥収得後にロッド状が保持されない一方、図1の(b)を見れば、実施例1の場合、最適の条件でハイドロゲルロッドが製作されたことを確認することができる。
【0050】
本発明の体内注入型ハイドロゲルロッドの架橋度の調節による機械的特性を確認するために、実施例1では、理論的架橋度を25、50、100%に調節するために、架橋に用いられるHの最終濃度を図2の(a)のように、0.02、0.04、0.08wt%に調節した。各条件別にGPTハイドロゲル300μLを架橋される前、レオメーターのプレートに注入後、架橋進行による時間別の機械的物性の変化をレオメーターを通じて測定した結果、図2の(b)のように、マトリックスの機械的物性が理論的な架橋度の増加によって、それぞれ0.6、8.1、15kPaに増加した。
【0051】
実験例2-ハイドロゲルロッドの架橋条件の多様化による薬物放出制御の評価
【0052】
2-1.架橋度の調節による薬物放出制御の評価
【0053】
体内注入型ハイドロゲルロッドの架橋度の調節による物性調節の評価に後続して、ベバシズマブ放出制御の評価を進めた。架橋度別に形成されたハイドロゲルロッドをDPBS(37℃、100rpm)内で培養し、120日間指定した時間帯に放出されたベバシズマブが含まれたDPBS sampleを収得して凍らせて保管した後、新たなDPBS溶液を追加した。収得されたsampleは、anti-VEGFであるベバシズマブを特異的に定量可能なELISA(Enzyme Linked Immunosorbent Assay)技法を用いて定量分析した。
【0054】
図3の(a)に示されたように、架橋度の調節が可能なH濃度0.02、0.04、0.08wt%の条件によって、120日間ハイドロゲルロッドの体外薬物放出の結果、架橋度の増加によって時間別の薬物放出量が減少する態様を示した。具体的に、ベバシズマブの薬効thresholdは、約1μg/mLと知られており(IOVS,October 2008,Vol.49,No.10)、序盤14日まで0.02wt%の条件は、threshold以上非常に過量放出され、0.08wt%の条件は、thresholdに及ばない微量が放出され、0.04wt%の条件でthreshold以上を満足する10μg/mL付近に放出され、以後、架橋度によって薬物放出量が調節された。
【0055】
図3の(b)を見れば、120日まで累積放出の結果、架橋度に比例して初期バースト放出(initial burst release)及び放出速度が減少し、0.04wt%の条件で最も適した放出態様を示した。
【0056】
2-2.実施例及び比較例の薬物放出の比較評価
【0057】
実施例のハイドロゲルロッド(Pre-crosslinked hydrogel rod)と比較例の注入型ハイドロゲル(in situ forming hydrogel)との薬物放出挙動を比較した。同じ条件の高分子(GPT 20wt%)と架橋条件(H 0.04wt%)を利用し、1500μgのベバシズマブを搭載した後、放出評価を行った。図4の(a)及び図4の(b)を見れば、比較例の注入型ハイドロゲルは、体内最小侵襲的注入環境を模写して架橋直前のウェルプレートインサート(well plate insert)を利用したDPBS(37℃、100rpm)内に注入され、ハイドロゲルロッドは、DPBS(37℃、100rpm)内に培養した。図4の(c)を見れば、30日間累積放出後、ELISAを通じた評価の結果、比較例の体内注入型ハイドロゲルは、3日まで約40%の初期過量放出以後、30日に60%以上累積放出を示した。これは、注入型ハイドロゲルの注入時に、培地(media)溶液と希釈されて目標した架橋度に及ばない架橋になり、これにより、周辺培地に薬物が迅速に拡散されることが分かる。一方、実施例のハイドロゲルロッドは、架橋されたまま用いられて、初期放出が5%以下に最小化され、30日まで約20%累積放出された。このような結果を通じてハイドロゲルロッドが初期放出抑制と長期間徐放出するという点で長所を有することが分かる。
【0058】
前記のように、比較例のロッド状ではない注入型ハイドロゲルとの比較評価を進めた結果、比較例の注入型ハイドロゲルは、最小侵襲的注入後、相転移になる物質であって、担持された薬物を初期に迅速に放出するが、本発明のハイドロゲルロッドは、最小侵襲的注入が可能であり、あらかじめ目標した程度に架橋された形態で適用が可能であって、担持された薬物が初期に迅速に放出されることを防止し、4ヶ月以上の徐放出を示すことを確認した。
【0059】
実験例3-放出された薬物の長期間薬効及び生物学的安定性の評価
【0060】
血管形成を成す細胞であるHuman Umbilical Vein Endothelial Cells(HUVECs)培養を通じて放出された薬物の長期間薬効と生物学的安定性とを評価した。HUVECs培養後、48ウェルプレートに2×10cells/wellで準備した後、細胞培養液(EBM media containing EGM supplements and 1% P/S)に1:1の比率で希釈された長期間放出されたベバシズマブ薬物サンプル及び濃度別の新鮮なベバシズマブ(fresh bevacizumab)薬物サンプルを処理して、細胞の成長抑制及び安全性を観察した。濃度別の新鮮なベバシズマブ薬物サンプル対照群は、細胞培養液に希釈された最終濃度を1、10、100μg/mLに準備した。
【0061】
図5の(a)は、WST-1 assayを通じた結果であって、薬物の濃度に比例して細胞成長が抑制されることが確認され、比較例の注入型ハイドロゲル及び実施例のハイドロゲルロッドから放出された薬物による長期間細胞成長抑制を評価した。また、図5の(b)のように、Live/Dead assayを通じて細胞の毒性がほとんどないと確認され、蛍光イメージを通じて培養液細胞群に比べて細胞成長が抑制されたことを確認した。
【0062】
これを通じて、比較例の注入型ハイドロゲルは、担持された薬物の初期40%以上の速い放出を示し、過量の放出が続き、初期に細胞の高い成長抑制を示すが、実施例のハイドロゲルロッドは、初期放出速度が制御され、4ヶ月以上徐放型を示すので、長期間の細胞成長抑制を通じて薬効を示すことが分かる。
【0063】
実験例4-動物実験及び眼球内薬物動態学の評価
【0064】
4-1.動物実験計画
【0065】
図6に示すように、New Zealand White(NZW)rabbitモデルを用いて1、4、8、14、30、60、90、120日別に両眼注入(2匹、総4眼)を進めた。ベバシズマブ薬物対照群(control)と比較例のハイドロゲル(in situ forming hydrogel)及び実施例のハイドロゲルロッドを注入した。薬効が保持されるために、薬物は、vitreous humorでretinaで濃度が保持されなければならず、同時に薬物はanterior chamber部位に排出される。評価のために、日別の動物犠牲及び眼球解体後、ELISAを通じて硝子体(vitreous)、網膜(retina)、房水(aqueous humor)組織の薬物動態学分析を進めた。
【0066】
4-2.眼球内薬物動態学の評価の結果
【0067】
日別の動物犠牲及び眼球解体後、ELISAを通じて硝子体、網膜、房水組織の薬物動態学分析を進めた。図7の(a)を見れば、硝子体で対照群、比較例のハイドロゲル(in situ forming hydrogel)、実施例のハイドロゲルロッド順に初期バースト放出が大きく減少し、対照群で最も速い排出曲線(elimination curve)を示した。比較例の注入型ハイドロゲルは、対照群に比べて約2倍初期バースト放出が減少したが、注入時に、組織液との希釈で高い放出量が保持され、30日以上持続することができない。実施例のハイドロゲルロッドは、あらかじめ架橋されたマトリックス(pre-crosslinking matrix)であって、対照群に比べて7倍、比較例のハイドロゲルに比べて3倍初期バースト放出が抑制された後、一定範囲以内の薬物を持続的に放出し、120日目に約32μg/mLの薬物濃度を保持し、これは、ベバシズマブの薬効thresholdと知られた1μg/mL以上を満たした。
【0068】
図7の(b)を見れば、網膜で同様に対照群、比較例のハイドロゲル(in situ forming hydrogel)、実施例のハイドロゲルロッド順に初期バースト放出が大きく減少し、対照群で最も速い排出曲線を示した。比較例のハイドロゲル(in situ forming hydrogel)は、対照群に比べて約4倍初期バースト放出が減少し、60日まで低い薬物濃度が保持された。実施例のハイドロゲルロッドは、対照群に比べて10倍、比較例のハイドロゲル(in situ forming hydrogel)に比べて約2倍バースト放出が減少し、120日まで徐放出されて約0.08μg/gの濃度で薬効を保持することができるということを確認した。
【0069】
図7の(c)を見れば、房水への対照群の初期過量排出が発生し、30日まで保持された。比較例のハイドロゲル(in situ forming hydrogel)は、相転移による初期バースト放出から対照群と類似した過量の排出(~80μg/mL)が表われた。実施例のハイドロゲルロッドは、あらかじめ架橋された(pre-crosslinking)ことによる初期バースト放出の最小化によって、対照群と比較例のハイドロゲル(in situ forming hydrogel)に比べて最大約80倍減少した排出になった。
【0070】
図7の(d)は、各組織別の薬物濃度の定量表を示したものである。
【0071】
前記の結果のように、比較例の注入型ハイドロゲルは、高い初期バースト放出と周辺組織に排出とを示し、長期間の薬効保持が難しいことを確認した。一方、実施例のハイドロゲルロッド注入時に、初期バースト放出を抑制し、4ヶ月間薬効濃度以上の徐放出を示し、これによる周辺組織への排出が大きく減少したということを確認した。これに基づいて過量の排出によるシステム副作用(systemic side-effects)及び薬効のための頻繁な注入による炎症など、副作用の問題を克服することができる。
【0072】
実験例5-眼球内形態安定性及び安全性の分析
【0073】
眼球内ハイドロゲルロッド注入後、日別の形態安定性及び安全性を分析するために、超音波分析を進めた。図8のように、日別のイメージ化の結果、120日までハイドロゲルロッドの形態が安定して保持され、60日から体内分解によって、サイズが減少することが確認された。120日まで体内炎症反応や副作用は発生せず、これを通じて体内安全性と形態安定性とを示すことが分かる。
【0074】
比較例のハイドロゲルは、注入後、完全な相転移以前に周辺組織液との希釈になって形態保持が難しく、相転移中に、周辺組織との癒着を通じて副作用を招く危険があるが、実施例のハイドロゲルロッドは、架橋されたロッド状に注入されて4ヶ月間安定した形態と体内安全性とを示すことを確認した。
【0075】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者において、このような具体的な記述は、単に望ましい実施形態に過ぎず、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲とそれらの等価物とによって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-08-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
図1】本発明による体内注入型ハイドロゲルロッド(GPT hydrogel rod)の製造方法を示す模式図(a)であり、本発明から製造された体内注入型ハイドロゲルロッドの形状を撮影したイメージ(b)であり、本発明から製造された体内注入型ハイドロゲルロッドのインジェクタ(injector)の製作模式図(c)である。
図2】本発明による体内注入型ハイドロゲルロッドの製造条件を示す表(a)であり、本発明の体内注入型ハイドロゲルロッドの架橋度の調節による機械的強度を評価したグラフ(b)である。
図3】本発明による体内注入型ハイドロゲルロッドの時間帯別の薬物放出量グラフ(a)であり、120日までの累積放出挙動を示すグラフ(b)である。
図4】比較例の体内注入型ハイドロゲルの模式図(a)であり、実施例の体内注入型ハイドロゲルロッドの薬物放出培養(incubation)模式図(b)であり、実施例の体内注入型ハイドロゲルロッドの累積ハイドロゲルから放出された銅イオン及び生成された酸化窒素の薬物放出挙動グラフ(c)である。
図5】実施例及び比較例の体内注入型ハイドロゲルのWST-1を通じたHUVECの成長抑制を示すグラフ(a)であり、Live/Deadを通じた細胞適合性及び成長抑制を示す蛍光顕微鏡のイメージ(b)である。
図6】本発明による体内注入型ハイドロゲルの体内薬物動態学の評価のための眼球内注入計画模式図である。
図7】実施例及び比較例の体内注入型ハイドロゲルロッドの体内組織別の薬動の結果を示すグラフ(a-c)であり、組織別の薬物濃度を示す表(d)である。
図8】本発明による体内注入型ハイドロゲルロッドの眼球内注入後、時間帯別の眼球内超音波写真である。
【国際調査報告】