(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】自然早産の予測及びモニタリングするための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20250212BHJP
【FI】
G01N33/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547469
(86)(22)【出願日】2023-02-09
(85)【翻訳文提出日】2024-10-02
(86)【国際出願番号】 EP2023053158
(87)【国際公開番号】W WO2023152203
(87)【国際公開日】2023-08-17
(32)【優先日】2022-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(71)【出願人】
【識別番号】524298930
【氏名又は名称】セアッシュユ・ドゥ・サン・テティエンヌ
【氏名又は名称原語表記】CHU DE ST ETIENNE
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(71)【出願人】
【識別番号】516247100
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・グルノーブル・アルプ
【氏名又は名称原語表記】Universite Grenoble Alpes
(71)【出願人】
【識別番号】517125546
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ジャン モネ、サン テティエンヌ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE JEAN MONNET SAINT ETIENNE
【住所又は居所原語表記】MAISON DE L’UNIVERSITE 10 RUE TREFILERIE, 42100 SAINT ETIENNE, FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】アルファイディ-ベンハロウガ,ナディア
(72)【発明者】
【氏名】ベンハロウガ,モハメド
(72)【発明者】
【氏名】シャルール,セリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】バルジャット,ティフェン
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045AA25
2G045CA26
2G045DA36
2G045FB03
2G045FB07
(57)【要約】
本発明は、200人の妊娠患者を含む前向き多施設コホート研究であり、1人当たり5回の血清サンプリングにより、本発明者らは、自然早産を予測するために、妊娠第二期及び第三期の高リスク妊婦の血漿中のタンパク質バイオマーカー濃度を調査した。本発明者らは、PROK1(Prokineticin 1)は、EG-VEGF(内分泌腺由来血管内皮細胞増殖因子)とも称され、胎盤から分泌され、妊娠37週未満のsPTB患者では、合併症のない妊婦と比較して血清中濃度が上昇することを示した。より正確には、自然早産の女性は、20週、24週、28週及び32週において、合併症のない患者よりも高い血清PROK1/EG-VEGF濃度を示した。したがって、血清PROK1/EG-VEGF濃度は、高リスク妊婦における自然早産のバイオマーカーとして考えられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然早産を有するか又は発症する被験者のリスクを評価するためのin vitro方法であって、i)被験者から得られた血液サンプル中のタンパク質PROK1マーカーのレベルを決定する工程、ii)工程i)で決定されたレベルと、基準値と、を比較する工程及びiii)工程i)で決定されたタンパク質PROK1マーカーのレベルが基準値よりも高い場合、自然早産を有するか又は発症するリスクが高いと予測すると結論付ける工程、を含む方法。
【請求項2】
自然早産が、少なくとも妊娠20週目の初期段階で検出される、請求項1に記載のin vitro方法。
【請求項3】
自然早産をモニタリングするためのin vitro方法であって、i)妊娠の第一の特定の時期に被験者から得られた血液サンプル中のタンパク質PROK1マーカーのレベルを決定する工程、ii)妊娠の第二の特定の時期に被験者から得られた血液サンプル中のタンパク質PROK1マーカーのレベルを決定する工程、iii)工程i)で決定されたレベルと、工程ii)で決定されたレベルと、を比較する工程及びiv)工程ii)で決定されたレベルが工程i)で決定されたレベルよりも高い場合、自然早産を有するか又は発症するリスクが悪化した様式で発達していると結論付ける工程、を含む方法。
【請求項4】
自然早産の処置をモニタリングするためのin vitro方法であって、i)処置前にタンパク質PROK1マーカーのレベルを決定する工程、ii)処置後に被験者から得られた血液サンプル中のタンパク質PROK1マーカーのレベルを決定する工程、iii)工程i)で決定されたレベルと、工程ii)で決定されたレベルと、を比較する工程及びiv)工程ii)で決定されたレベルが工程i)で決定されたレベルよりも低い場合、処置が効率的であると結論付ける工程、を含む方法。
【請求項5】
前記患者から得られたタンパク質PROK1マーカーのレベルが、請求項1~4記載の方法いずれかにより検出された被験者において、子宮収縮抑制薬又は膣プロゲステロン薬により自然早産を処置するための方法。
【請求項6】
被験者における自然早産を処置するための方法であって、以下:
a)被験者から血液サンプルを提供する工程;
b)タンパク質PROK1マーカーのレベルを検出する工程;
c)工程b)で決定されたレベルと、基準値と、を比較する工程及び
工程b)で決定されたレベルが基準値より高い場合、子宮収縮抑制薬又は膣プロゲステロン薬、ペッサリー及び/又は子宮頸管縫縮術の設置により、被験者を処置する工程
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、自然早産の予測及びモニタリングするための方法及びキットに関する。より具体的には、本発明は、患者の特異的血清タンパク質バイオマーカー(PROK1/Prokineticin 1)の検出による自然早産の予防のための方法に関する。このタンパク質はEG-VEGF(内分泌腺由来血管内皮細胞増殖因子)とも称される。
【0002】
発明の背景
早産は、女性保健機関(Women Health Organization)によって妊娠37週未満に起こる全ての出産として定義されている(1)。早産は、2014年の全世界における出生数の10.6%に関係している(2)。自然早産(sPTB)は、自然分娩に起因するものであり、早産の40~45%を表し、前期破水(PROM)は早産の25~30%を表す(3)。現在までに、sPTBは新生児死亡率及び罹患率の第一の原因となっている(4、5)。sPTBの危険因子は、早産の既往、黒色人種、歯周病、低い母体のボディマスインデックスである(3)。無症状の女性における自然早産(sPTB)の予測は、公衆衛生システムにとって依然として大きな課題である。短い子宮頸管長及び上昇した子宮頸部-膣胎児性フィブロネクチン濃度は、自然早産の予測因子であるが、これらのパフォーマンスは依然として非常に低い(6)。まだ臨床過程にある羊水穿刺に基づく予測リスクモデルの使用のように、効果的で安全なスクリーニングツールは、臨床診療では未だ利用可能ではない(7、8)。sPTBを示し得る女性の早期特定は、患者モニタリングの強化、子宮収縮抑制薬又は膣プロゲステロン薬の処方、ペッサリー及び/又は子宮頸管縫縮術の設置及び出生前の副腎皮質ステロイド療法の決定を可能にする。
【0003】
プロキネチシン(PROK)は分泌ペプチドであり、ヒト及び他の生物種において血管新生と炎症過程の両方を制御する能力を持つ(9-11)。PROKファミリーは、PROK1及びPROK2の2つのメンバーからなる(9)。このファミリーの標準的なメンバーであるPROK1は、内分泌腺由来血管内皮細胞増殖因子(EG-VEGF)としても知られている。EG-VEGF及びPROK2は、特異的なGタンパク質共役型レセプターであるPROKレセプター1(PROKR1)及びPROKレセプター2(PROKR2)を介して作用し、血管新生、概日リズム、嗅球の神経新生、神経細胞の生存、生殖及び炎症のような複数の生物学的機能を制御する(11)。EG-VEGF及びPROKR1は、妊娠第一期及び妊娠末期の胎盤において高発現しており、合胞体性栄養膜、細胞性栄養膜、胎児性内皮細胞、マクロファージを包含する異なる細胞型に免疫局在している(11)。いくつかの研究では、EG-VEGF及びそのレセプターが、不育症(RPL)、妊娠性絨毛性疾患(GTD)、胎盤媒介合併症(PMC)の病因に直接関与していることが報告されている(12)。これらのデータは、EG-VEGFレベルの上昇がPMCの発症に寄与又は妊娠の進行を可能にするために起こる全体的な代償メカニズムにむしろ関与することを強く示唆している。
【0004】
絨毛膜羊膜炎と分娩に関連して、本発明者のグループとJabbourのグループからの報告では、プロキネチシンファミリーのメンバー(そのレセプターを含む)の発現レベルの制御不全が、この状態の病因に関連している可能性が強く示唆されている(13-16)。しかしながら、sPTBの新たなバイオマーカーとしての有用性を検討する観点から、妊娠第二期早期からEG-VEGFレベルを決定するために、ハイリスク妊娠中の女性を対象とした前向き研究は、これまでに実施されていない。
【0005】
発明の概要
本発明の第一の目的は、初期段階で自然早産を有するか又は発症する被験者のリスクを評価するための、in vitro方法であって、i)被験者から得られた血液サンプル中のタンパク質PROK1マーカーのレベルを決定する工程、ii)工程i)で決定されたレベルと、基準値と、を比較する工程及びiii)工程i)で決定されたPROK1マーカーのレベルが基準値よりも高い場合、重症又は自然早産を有するか又は発症するリスクが高いと予測すると結論付ける工程、を含む方法に関する。
【0006】
本発明のさらなる目的は、自然早産を有するか又は発症する被験者のリスクをモニタリングするための、in vitro方法であって、i)疾患の第一の特定の時期に被験者から得られた血液サンプル中のタンパク質PROK1マーカーのレベルを決定する工程、ii)疾患の第二の特定の時期に被験者から得られた血液サンプル中のタンパク質PROK1マーカーのレベルを決定する工程、iii)工程i)で決定されたレベルと、工程ii)で決定されたレベルと、を比較する工程及びiv)工程ii)で決定されたレベルが工程i)で決定されたレベルより高い場合、自然早産を有するか又は発症するリスクが悪化したと結論付ける工程、を含む方法に関する。
【0007】
本発明のさらなる目的は、自然早産の処置をモニタリングするための、in vitro方法であって、i)処置前に被験者から得られた血液サンプル中のタンパク質PROK1マーカーのレベルを決定する工程、ii)処置後に被験者から得られた血液サンプル中のタンパク質PROK1マーカーのレベルを決定する工程、iii)工程i)で決定されたレベルと、工程ii)で決定されたレベルと、を比較する工程及びiv)工程ii)で決定されたレベルが工程i)で決定されたレベルより低い場合に、処置が効率的であると結論付ける工程、を含む方法に関する。
【0008】
発明の詳細な説明
本発明では、1人当たり5血清サンプリングによる200人の妊婦を含む前向き多施設コホート研究により、本発明者らは、自然早産を予測するために、妊娠第二期及び第三期のハイリスク妊婦の血漿中のタンパク質バイオマーカー濃度を検討した。本発明者らは、PROK1(プロキネチシン1)は、EG-VEGF(内分泌腺由来血管内皮細胞増殖因子)とも称され、胎盤から分泌され、妊娠37週未満のsPTB患者では、合併症のない妊婦と比較して血清レベルが上昇することを実証した。より正確には、自然早産の女性は、20週、24週、28週、32週の時点で、合併症のない患者よりも血清PROK1/EG-VEGF濃度が高かった。最後に、血清PROK1/EG-VEGF濃度は、無症状の妊婦において、sPTBが発症する長期間前の自然早産のバイオマーカーであると考えられる。
【0009】
発明に係る予測方法
本発明は、被験者が自然早産を有するか又は発症するリスクを評価するため、in vitro方法であって、i)被験者から得られた血液サンプル中のタンパク質PROK1マーカーのレベルを決定する工程、ii)工程i)において決定されたレベルと、基準値と、を比較する工程及びiii)工程i)で決定されたタンパク質PROK1マーカーのレベルが基準値よりも高い場合、自然早産を有するか又は発症するリスクが高いと予測されると結論付ける工程、を含む方法に関する。
【0010】
別の態様では、本発明は、被験者における自然早産を有するか又は発症することをin vitroで予測する方法であって、i)被験者から得られた血液サンプル中のタンパク質PROK1マーカーのレベルを決定する工程、ii)工程i)で決定されたレベルと、基準値と、を比較する工程、及びiii)工程i)で決定されたタンパク質PROK1マーカーのレベルが基準値よりも高い場合、重症又は自然早産を有するか又は発症することが予測されると結論付ける工程、を含む方法に関する。
【0011】
「予測」という用語は、疾患の可能性や予測される発症を予測するための医学用語である。予測スコアリングは、疾患のアウトカム予測にも使用される。
【0012】
本発明の文脈では、PROK1/EG-VEGFの高レベルは、予測マーカー及び自然早産を発症する危険因子の両方を構成する可能性がある。
【0013】
本明細書で使用される「被験者」という用語は、げっ歯類(例えば、マウス又はラット)、ネコ科動物、イヌ科動物又は霊長類などの哺乳動物を指す。好ましい実施態様では、該被験者は、ヒト被験者である。本発明に係る被験者は、健康な被験者であっても、特定の疾患に罹患している被験者であってもよい。
【0014】
特定の実施態様では、本発明の被験者は、子癇前症に罹患しておらず、及び/又は子癇前症と以前に診断されていない。
【0015】
「早産」という用語は、一般的に、女性保健機構(Women Health Organization)によって、妊娠37週未満に起こる出産として定義されている。早産は、2014年の全世界の出生数の10.6%に影響を及ぼしている。
【0016】
「自然早産」(又は「sPTB」)は、陣痛が自然に始まることに起因し、早産全体の40~45%を占め、「前期破水」(又は「PROM」)は25~30%を占める。現在までに、sPTBは、新生児死亡率及び罹患率の第一の原因であり、無症状の女性におけるsPTBを予測することは、臨床医にとって未だ大きな課題である。sPTBのための効果的で安全なスクリーニングツールは、臨床現場において未だ利用可能ではない。しかしながら、sPTBリスクの高い女性を早期に特定することで、子宮収縮抑制薬又は膣プロゲステロン薬の処方、ペッサリー及び/又は子宮頸管縫縮術の設置及び出生前の副腎皮質ステロイド療法など、妊娠中のモニタリングを強化することが可能になる。
【0017】
本明細書で使用される場合、「サンプル」又は「生物学的サンプル」という用語は、被験者のいずれかの生物学的サンプルを示し、例として、限定するものではないが、被験者から得られるホモジネート又は溶解組織のような体液及び/又は組織抽出物を含むことができる。組織抽出物は、組織生検から日常的に得られる。本発明に係る自然早産の予後予測方法に関する特定の実施態様では、生物学的サンプルは、該被験者の体液サンプル(血液など)又は組織生検(胎盤)である。
【0018】
好ましい実施態様では、液体サンプルは血液サンプルである。「血液サンプル」という用語は、被験者(例えば、バイオマーカーの集団が同定され得るかどうかを決定することが関心のある個人)から得られた全血サンプルを意味する。
【0019】
本明細書で使用する場合、「プロキネチシン1」又は「PROK1」という用語は、「内分泌腺由来血管内皮細胞増殖因子」(EG-VEGF)としても知られており、ヒトでは、OLR1遺伝子によってコードされるタンパク質である(ヒト遺伝子:Gene ID:84432/Entrez Gene:PROK1 プロキネチシン1:www.ncbi.nlm.nih.gov/gene=84432)。プロキネチシン(PROK)は、分泌ペプチドであり、ヒト及び他の生物種において血管新生及び炎症過程の両方を制御する能力を持つ(9-11)。PROK1及びPROK2は、プロキネチシン(PROK)ファミリーの2つの主要メンバーである(9)。PROK1(EG-VEGF)及びPROK2は、特異的なGタンパク質共役型レセプターであるPROKレセプター1(PROKR1)及びPROKレセプター2(PROKR2)を介して作用し、血管新生、概日リズム、嗅球の神経新生、神経細胞の生存、生殖及び炎症などの複数の生物学的機能を制御する(11)。PROK1(EG-VEGF)とPROKR1は、妊娠第一期及び妊娠終期の胎盤において高発現しており、合胞体性栄養膜、細胞性栄養膜、胎児性内皮細胞、マクロファージなどを包含する異なる細胞型に免疫局在している(11)。いくつかの研究では、EG-VEGF及びそのレセプターが、不育症(RPL)、妊娠性絨毛性疾患(GTD)、胎盤媒介合併症(PMC)の病因に直接関与していることが報告されている(12、24、25、26、27)。これらのデータは、EG-VEGFレベルの上昇がPMCの発症に寄与又は妊娠の進行を可能にするために起こる全体的な代償メカニズムにむしろ関与することを強く示唆している。
【0020】
PROK1ヒトアミノ酸配列(UniProtKB-P58294)の一例が、NCBIデータベースに提供されている:NCBI参照配列:NP_115790(プロキネチシン1前駆体)。
【0021】
野生型ヒトPROK1をコードする塩基配列の一例が、NCBIデータベースに提供されている:NCBI参照配列:NM_032414(プロキネチン1前駆体)。
【0022】
当然ながら、PROK1のバリアント配列が、本発明の文脈において(バイオマーカーとして)使用され得、それらには、機能的ホモログ、パラログ又はオルソログ、そのような配列の転写バリアントが含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
PROK1のレベルは、競合のような免疫アッセイ、免疫組織化学のような直接反応又はサンドイッチ型アッセイを含む、標準的な電気泳動及び免疫診断技術を使用して決定され得る。このようなアッセイには、ウェスタンブロット;凝集試験;ELISAなどの酵素標識及び媒介免疫アッセイ;ビオチン/アビジン型アッセイ;ラジオイムノアッセイ;免疫電気泳動;免疫沈降などが含まれるが、これらに限定されない。反応には、一般的に、蛍光、化学発光、放射性、酵素標識又は色素分子のような標識を明らかにすること又は抗原及びそれに反応した抗体又は抗体との間の複合体の形成を検出するための他の方法が含まれる。
【0024】
例えば、PROK1レベルの決定は、様々な技術及び当該技術分野で周知のいずれかの方法によって行うことができる:ELISAキット(PeproTech、France、Invitrogen(商標)Kit ELISA human EG-VEGF/PROK1)RIAキット免疫化学発光法。
【0025】
特定の実施態様では、本発明の方法は、血液サンプルを結合パートナーと接触させることを含む。
【0026】
本明細書で使用する結合パートナーとは、PROK1と選択的に相互作用できる分子を意味する。
【0027】
結合パートナーは、一般的に、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体であり、好ましくは、モノクローナル抗体である。PROK1に対するポリクローナル抗体は、例えば、ブタ、ウシ、ウマ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、及びマウスなどから選択される宿主動物に適切な抗原又はエピトープを投与することにより、既知の方法に従って産生することができる。抗体産生を増強するために、当該技術分野で既知の様々なアジュバントを使用することができる。本発明の実施に有用な抗体はポリクローナル抗体でもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。PROK1に対するモノクローナル抗体は、培養中の連続細胞株による抗体分子の産生を提供するいずれかの技術を用いて調製及び単離することができる。産生及び単離のための技術は、上記に開示されている。本発明の実施に有用な抗体は、インタクトな抗体分子のペプシン消化によって生成され得るF(ab’)2フラグメント及びF(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって生成され得るFabフラグメントを含むがこれらに限定されない、抗PROK1も含まれる。代わりに、Fab及び/又はscFv発現ライブラリーを構築して、PROK1に対する目的の特異性を有するフラグメントの迅速な同定を可能にすることができる。例えば、抗体のファージディスプレイを使用することができる。このような方法では、一本鎖Fv(scFv)又はFab断片が、適切なバクテリオファージ、例えばM13の表面上に発現される。簡単に説明すると、適切な宿主、例えばタンパク質で免疫されたマウスの脾臓細胞を除去する。VL鎖及びVH鎖のコード領域は、タンパク質に対する目的の抗体を産生する細胞から得られる。次に、これらのコード領域をファージ配列の末端に融合させる。ファージが適切な担体、例えばバクテリアに挿入されると、ファージは、抗体断片をディスプレイする。抗体のファージディスプレイは、当業者に既知の組み合わせ法によっても行うことができる。ファージによってディスプレイされた抗体断片は、イムノアッセイの一部として使用することができる。
【0028】
別の実施態様では、結合パートナーは、上記のようなアプタマーであってよい。
【0029】
抗体又はアプタマーのような本発明の結合パートナーは、検出可能な分子又は物質、例えば蛍光分子、放射活性分子又は当該技術分野で既知のその他の標識で標識されていてもよい。標識は、一般的に(直接的または間接的に)シグナルを提供するものとして当該技術分野で既知である。
【0030】
本明細書で使用される場合、結合パートナーに関して「標識された」という用語は、放射活性剤や蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリスリン(PE)、インドシアニン(Cy5))のような検出可能な物質をカップリング(すなわち物理的に連結)することによる抗体又はアプタマーの直接的な標識及び検出可能な物質との反応性によるプローブ又は抗体の間接的な標識を包含することを意図している。本発明の抗体又はアプタマーは、当該技術分野で既知のいずれかの方法によって放射活性分子で標識することができる。例えば、放射活性分子としては、I123、I124、In111、Re186、Re188のようなシンチグラフィー研究のための放射活性原子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
上述のアッセイは、一般的に、結合パートナー(すなわち抗体又はアプタマー)を固体支持体に結合させることを含む。本発明の実施に使用できる固体支持体としては、ニトロセルロース(例えば、メンブレン又はマイクロタイターウェル形態);ポリ塩化ビニル(例えば、シート又はマイクロタイターウェル);ポリスチレンラテックス(例えば、ビーズ又はマイクロタイタープレート);ポリビニリデンフルオリド;ジアゾ化紙;ナイロンメンブレン;活性化ビーズ、磁気応答性ビーズ等の基質が挙げられる。より具体的には、ELISA法を使用することができ、この場合、マイクロタイタープレートのウェルは、PROK1タンパク質に対する抗体のセットでコートされる。PROK1を含むか又はPROK1を含むと疑われる血液サンプルを、コートされたウェルに添加する。結合パートナー-PROK1複合体の形成に十分な期間インキュベートした後、プレートを洗浄して未結合の物質を除去し、標識した二次結合分子を加える。二次結合分子は、捕捉されたサンプルのマーカータンパク質と反応させ、プレートを洗浄し、二次結合分子の存在を当該技術分野で既知の方法で検出する。
【0032】
結合パートナーとして、二次結合分子は標識されてもよい。
【0033】
ラジオイムノアッセイ又はELISAなどの異なるイムノアッセイが、当該技術分野に記載されている。
【0034】
イムノアッセイに基づく方法の有無にかかわらず、PROK1タンパク質のレベルの測定には、以下:タンパク質の分子量に基づく遠心分離;質量及び電荷に基づく電気泳動;疎水性に基づくHPLC;サイズに基づくサイズ排除クロマトグラフィー;及び使用される特定の固相に対するタンパク質の親和性に基づく固相親和性によるタンパク質の分離も含まれ得る。一旦分離されると、PROK1はそのタンパク質の既知の「分離プロファイル」、例えば保持時間に基づいて同定され、標準的な技術を用いて測定される。代わりに、分離されたタンパク質は、例えば質量分析計で検出及び測定することもできる。
【0035】
好ましい実施態様では、PROK1のレベルを測定するための方法は、血液サンプルを、PROK1と選択的に相互作用することができる結合パートナーと接触させて、結合パートナー-PROK1複合体の形成を可能にする工程を含む。
【0036】
より好ましい実施態様では、本発明に係る方法は、血液サンプルのいずれかの未結合の物質を結合パートナー-PROK1複合体から分離する工程、結合パートナー-PROK1複合体を標識した二次結合分子と接触させる工程、いずれかの未結合の二次結合分子を二次結合分子-PROK1複合体から分離する工程及び二次結合分子-PROK1複合体の二次結合分子のレベルを測定する工程、をさらに含む。
【0037】
典型的には、PROK1の高レベル又は低レベルは、コントロール基準値との比較によって意図される。
【0038】
したがって、特定の実施態様では、本発明の予後方法は、前記PROK1のレベルをコントロール基準値と比較する工程を含み、ここで
・PROK1マーカーの高レベルは、自然早産を有するか又は発症する高いリスクの予測であり、
・PROK1マーカーの低レベルは、自然早産を有するか又は発症する低いリスクの予測である。
【0039】
前記コントロール基準値は、1人以上の健常被験者から採取した血液サンプル中に存在するPROK1のレベル又はコントロール集団におけるPROK1の分布に関して決定され得る。
【0040】
一つの実施態様では、本発明に係る方法は、前記PROK1のレベルと、コントロール基準値と、を比較する工程を含み、該コントロール基準値と比較したPROK1マーカーの高レベルは、自然早産を有する高いリスクの予測であり、該コントロール基準値と比較したPROK1マーカーの低レベルは、自然早産を有する低いリスクの予測である。
【0041】
コントロール基準値は、被験者のPROK1レベルを測定するために使用される方法など、様々なパラメータに依存する可能性がある。
【0042】
典型的には、実施例のセクション(
図2及び表2)に示した妊娠32週における「PROK1マーカー」の基準値について、マーカー用量のElisa技術を使用して;EG-VEGFの血清レベルが195pg/mlより優れていると、自然早産を有する又は自然早産を有するか又は発症する高いリスクがあると予測され、EG-VEGFの血清レベルが195pg/mlより低いと、自然早産を有しないか又は発症するか又は自然早産を有する低いリスクがあると予測される。
【0043】
コントロール基準値は、検査中の患者から事前に採取した血液サンプル中のPROK1レベルを決定するための技術と同様の技術を使用することにより、当業者によって容易に決定可能である。
【0044】
「基準値」は、「閾値」又は「カットオフ値」とすることができる。典型的には、「閾値」又は「カットオフ値」は、実験的、経験的、又は理論的に決定することができる。閾値は、当業者であれば認識できるように、既存の実験条件及び/又は臨床条件に基づいて任意に選択することもできる。閾値は、検査の機能及びベネフィット/リスクバランス(偽陽性及び偽陰性の臨床的結果)に従って、最適な感度及び特異性を得るために決定されなければならない。典型的には、最適な感度及び特異性(従って閾値)は、実験データに基づくROC(Receiver Operating Characteristic)曲線を使用して決定することができる(
図2参照)。好ましくは、当業者は、本発明のPROK1(タンパク質又は核酸配列(mRNA))のレベルを、定義された閾値と比較し得る。本発明の1つの実施態様では、閾値は、(本発明に係る方法に対する)応答者である1人以上の被験者に由来する血液サンプル中で決定されたPROK1タンパク質レベル(又は比、又はスコア)に由来する。本発明の1つの実施態様では、閾値は、1人以上の被験者又は非応答者である被験者に由来する血液サンプル中で決定されたPROK1タンパク質レベル(又は比、又はスコア)に由来してもよい。さらに、適切にバンクされた過去の被験者サンプルにおけるPROK1タンパク質レベル(又は比、又はスコア)のレトロスペクティブな測定は、これらの閾値を確立するために使用することができる。
【0045】
例えば、基準群におけるPROK1タンパク質(タンパク質又は核酸配列(mRNA))の発現レベルを決定した後、検査対象となる血液サンプル中で決定された発現レベルの統計処理に対してアルゴリズム解析を使用することができ、血液サンプル分類のための有意性を有する分類基準を得ることができる。ROC曲線の正式名称は、受信者動作特性曲線(receiver operator characteristic curve)であり、受信者操作特性曲線(receiver operation characteristic curve)とも称される。主に臨床生化学診断検査に使用される。ROC曲線は、真陽性率(感度)及び偽陽性率(1-特異性)の連続的変数を反映する包括的な指標である。画像合成法による感度及び特異性の関係を明らかにする。一連の異なるカットオフ値(閾値又は臨界値、診断検査の正常及び異常結果の境界値)を連続的変数として設定し、一連の感度及び特異性の値を計算する。そして、感度を縦座標、特異性を横座標として曲線を描く。曲線の下の面積(AUC)が大きいほど、診断精度が高い。ROC曲線では、座標図の左上に最も近い点が、高感度かつ高特異性の値を持つ臨界点である。ROC曲線のAUC値は1.0~0.5である。AUC>0.5の場合、AUCが1に近づくにつれて診断結果が良好になる。AUCが0.5~0.7の場合、精度は低い。AUCが0.7~0.9の場合、精度は中程度である。AUCが0.9より高い場合、精度は高い。このアルゴリズム法は、好ましくはコンピュータによって実行される。当該技術分野における既存のソフトウェア又はシステムは、MedCalc 9.2.0.1医療統計ソフト、SPSS 9.0、ROCPOWER.SAS、DESIGNROC.FOR、MULTIREADER POWER.SAS、CREATE-ROC.SAS、GB STAT VI0.0(Dynamic Microsystems社、Silver Spring、Md.USA)など、ROC曲線の作図に使用することができる。
【0046】
いくつかの実施態様では、本発明の方法は、線形判別分析(LDA)、トポロジカルデータ分析(TDA)、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン(SVM)アルゴリズム及びランダムフォレストアルゴリズム(RF)から典型的に選択される分類アルゴリズムの使用を含む。いくつかの実施態様では、本発明の方法は、分類アルゴリズムを使用して被験者応答を決定する工程を含む。本明細書で使用される場合、用語「分類アルゴリズム」は、当該技術分野において一般的な意味を有し、分類及び回帰木法並びにUS8,126,690;WO2008/156617に記載されているような、当該技術分野において周知の多変量分類を意味する。本明細書で使用する「サポートベクターマシン(SVM)」という用語は、パターン認識に有用なユニバーサルな学習機械であり、その決定境界はサポートベクターの集合及び対応する重みのセットによりパラメータ化され、複数の変数を別々に処理するのではなく、同時に処理する方法を意味する。したがって、サポートベクターマシンは、分類のための統計的ツールとして有用である。サポートベクターマシンは、n次元入力空間を高次元特徴空間に非線形にマッピングし、特徴間の最適なインターフェース(最適分割面)を提示する。サポートベクターマシンは、トレーニングフェーズ及びテスティングフェーズの2つのフェーズを含む。トレーニングフェーズでは、サポートベクターが生成され、テスティングフェーズでは、特定のルールに従って推定が実行される。一般的に、SVMは、被験者ごとにバイオマーカー測定値の1つのk次元ベクトル(k-タプルと称される)に基づいて、n人の被験者のそれぞれを2つ以上の疾患カテゴリーに分類する際に使用するためのモデルを提供する。SVMは、最初にカーネル関数を用いてk-タプルを同次元又はそれより高次元の空間に変換する。カーネル関数は、元のデータ空間で可能であったよりも、超平面を使用してカテゴリーをより良く分離できる空間にデータを投影する。カテゴリー間の識別を行う超平面を決定するために、疾患カテゴリー間の境界に最も近いサポートベクターのセットが選択される。そして、超平面は、サポートベクターと超平面の間の距離が、不正確な予測にペナルティを与えるコスト関数の範囲内で最大になるように、既知のSVM技術によって選択される。この超平面は、予測の観点からデータを最適に分離するものである(Vapnik,1998 Statistical Learning Theory.New York:Wiley)。次に、任意の新しいオブザベーションは、そのオブザベーションが超平面に対してどこに位置するかに基づいて、目的のカテゴリのいずれかに属するものとして分類される。2つ以上のカテゴリーが考慮される場合、プロセスは、すべてのカテゴリーについてペアワイズで実行され、それらの結果は、すべてのカテゴリー間を識別するルールを作成するために組み合わされる。本明細書で使用する「ランダムフォレストアルゴリズム」又は「RF」という用語は、当該技術分野における一般的な意味を有し、US8,126,690;WO2008/156617に記載されているような分類アルゴリズムを意味する。ランダムフォレストは、Leo Breiman氏(Breiman L,「Random forests,」 Machine Learning 2001,45:5-32)によって独自に開発されたアルゴリズムを使用して構築された決定木ベースの分類器である。この分類器は、多数の個々の決定木を使用し、個々の木によって決定されたクラスのモードを選択することによってクラスを決定する。個々の木は、以下:(1)トレーニングセットのケースの数がNで、分類器の変数の数がMであると仮定するアルゴリズム;(2)木のノードでの決定を決定するために使用される入力変数の数を選択するアルゴリズム;(3)トレーニングセットからN個のサンプルを置換して選択するアルゴリズム;(4)木の各ノードについて、そのノードでの決定に基づくM個の変数からm個をランダムに選択するアルゴリズム;(5)トレーニングセットのm個の変数に基づいて、ベストなスプリットを計算するアルゴリズム、を用いて構築される。いくつかの実施態様では、スコアは、コンピュータプログラムによって生成される。
【0047】
いくつかの実施態様では、本発明の方法は、a)血液サンプル中でPROK1発現(タンパク質又は核酸配列(mRNA))のレベルを定量すること;b)アルゴリズムアウトプットを得るように、定量されたPROK1タンパク質を含むデータに対して分類アルゴリズムを実施すること;c)工程b)のアルゴリズムアウトプットから、被験者が自然早産を発症する確率を決定すること;を含む。
【0048】
本発明の方法と共に使用されるアルゴリズムは、1つ以上のコンピュータプログラムを実行する1つ以上のプログラマブルプロセッサによって実行することができ、インプットデータに作用してアウトプットを生成することによって機能を実行する。アルゴリズムは、特殊用途の論理回路、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)によって実行することもでき、装置も、同様に実装することができる。コンピュータプログラムの実行に適したプロセッサには、一例として、汎用及び特殊用途マイクロプロセッサの両方、及びあらゆる種類のデジタルコンピュータのいずれか1つ以上のプロセッサが含まれる。一般的に、プロセッサは、読み取り専用メモリ又はランダムアクセスメモリ又はその両方から命令及びデータを受け取る。コンピュータの本質的な要素は、命令を実行するためのプロセッサと、命令及びデータを格納するための1つ以上のメモリ装置である。一般的に、コンピュータは、データを格納するための1つ以上のマスストレージデバイス(例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスクなど)からデータを受信するか、データを転送するか、若しくはその両方を含むか又はそれらと操作可能に接続される。さらに、コンピュータを別の装置に組み込むこともできる。コンピュータプログラム命令及びデータを格納するのに適したコンピュータ可読媒体には、あらゆる形態の不揮発性メモリ、媒体及びメモリデバイスが含まれ、例えば、半導体メモリデバイス、例えば、EPROM、EEPROM及びフラッシュメモリデバイス;磁気ディスク、例えば、内蔵ハードディスク又はリムーバブルディスク;光磁気ディスク;及びCD-ROM及びDVD-ROMディスクが含まれる。プロセッサ及びメモリは、特殊用途の論理回路によって補うこと又は組み込むことができる。ユーザとのインタラクションを提供するために、本発明の実施態様は、ユーザに情報を表示するためのディスプレイ装置、例えば、非限定的な例では、CRT(陰極線管)又はLCD(液晶ディスプレイ)モニタと、ユーザがコンピュータにインプットを提供することができるキーボード及びポインティングデバイス、例えば、マウス又はトラックボールと、を有するコンピュータ上で実施することができる。他の種類の装置も同様に、ユーザとのインタラクションを提供するために使用することができる;例えば、ユーザに提供されるフィードバックは、いずれかの形式の感覚フィードバック、例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック、又は触覚フィードバックとすることができ、ユーザからのインプットは、アコースティック、スピーチ又は触覚インプットを含む、いずれかの形式で受信することができる。したがって、いくつかの実施態様では、アルゴリズムは、バックエンドコンポーネント、例えば、データサーバとして、又はミドルウェアコンポーネント、例えば、アプリケーションサーバとして、又はフロントエンドコンポーネント、例えば、ユーザが本発明の実施態様とインタラクションすることができるグラフィカルユーザインタフェース又はウェブブラウザを有するクライアントコンピュータとして、又は1つ以上のそのようなバックエンド、ミドルウェア、又はフロントエンドコンポーネントのいずれかの組み合わせを含むコンピューティングシステムにおいて実施することができる。システムの構成要素は、デジタルデータ通信のいずれかの形式又は媒体、例えば通信ネットワークによって相互接続することができる。通信ネットワークの例には、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)及びワイドエリアネットワーク(「WAN」)、例えばインターネットが含まれる。コンピューティングシステムは、クライアントとサーバを含むことができる。クライアントとサーバは、一般的に互いに離れており、典型的には通信ネットワークを介して相互作用する。クライアントとサーバーの関係は、それぞれのコンピュータ上で実行されるコンピュータプログラムによって生じ、互いにクライアントとサーバーの関係を持つ。
【0049】
本発明の文脈における「リスク」は、自然早産への転換のように、あるイベントが特定の期間にわたって起こる確率に関するものであり、被験者の「絶対」リスク又は「相対」リスクを意味することができる。絶対リスクは、関連する時間コホートの実際の観察後の測定値を参照するか、又は関連する期間追跡された統計的に有効な過去のコホートから開発されたインデックス値を参照して測定することができる。相対リスクとは、低リスクコホートの絶対リスク又は平均集団リスクのいずれかと、比較した被験者の絶対リスクの比を意味し、臨床的リスク因子の評価方法によって異なる。オッズ比は、ある検査結果における陰性イベントに対する陽性イベントの割合であり、一般的に使用されている(オッズはp/(l-p)の式に従って計算され、pはイベントの確率、(1-p)はイベントなしの確率である)。本発明の文脈で評価されうる別の連続的測定には、自然早産までの時間、転換リスク減少比が含まれる。
【0050】
本発明の文脈における「リスク評価(risk evaluation)」又は「リスクの評価(evaluation of risk)」は、あるイベント又は疾患状態が発生する確率、オッズ又は可能性、イベントの発生率又はある疾患状態から別の疾患状態への転換、すなわち正常な状態から自然早産の状態又は自然早産を発症するリスクのある状態への転換の予測を行うことを包含する。リスク評価は、将来の臨床パラメータ、伝統的な実験室での危険因子値又は自然早産の他のインデックス、例えば末梢組織、血清又は他の体液中の細胞集団決定などの、以前に測定された集団を基準とした絶対的又は相対的な用語での予測を含むことができる。本発明の方法は、自然早産への転換リスクを連続的又はカテゴリー的に測定するために使用することができ、その結果、自然早産のリスクがあると定義された被験者のカテゴリーのリスクスペクトルを予後予測し、定義することができる。カテゴリーシナリオでは、本発明は、健常者と、自然早産のリスクが高い他の被験者コホートと、を識別するために使用することができる。他の実施態様では、本発明は、自然早産を有する者と、健常者と、の識別に役立つように使用することができる。
【0051】
本発明はさらに、自然早産の、特に妊娠の異なる段階における、予測バイオマーカーとしての血液サンプル中のPROK1の使用に関する。本発明に係る「異なる段階」とは、少なくとも妊娠20週、21週、22週、23週、24週;25週、26週;27週、28週、29週、30週、31週、32週、33週、34週;35週、36週;37週における妊娠の段階を指す。
【0052】
したがって、本発明の検出方法は、結果として、血液サンプル中からの自然早産のin vitro予測に有用である。特に、本発明の検出方法は、結果として、血液サンプル中からの初期段階(少なくとも妊娠20週)における自然早産のin vitro予測に有用である。
【0053】
モニタリング方法及び管理
本発明のさらなる目的は、自然早産をモニタリングするためのin vitro方法であって、i)疾患の第一の特定の時期に被験者から得られた血液サンプル中でタンパク質PROK1マーカーのレベルを決定する工程;ii)疾患の第二の特定の時期に被験者から得られた血液サンプル中でタンパク質PROK1マーカーのレベルを決定する工程;iii)工程i)で決定されたレベルと、工程ii)で決定されたレベルと、を比較する工程;及びiv)工程ii)で決定されたレベルが、工程i)で決定されたレベルより高い場合、自然早産に罹患又は発症するリスクが悪化した様式で発達していると結論付ける工程、を含む方法に関する。
【0054】
本発明のさらなる目的は、自然早産の処置をモニタリングするためのin vitro方法であって、i)処置前に被験者から得られた血液サンプル中でタンパク質PROK1マーカーのレベルを決定する工程;ii)処置後に被験者から得られた血液サンプル中でタンパク質PROK1マーカーのレベルを決定する工程;iii)工程i)で決定されたレベルと、工程ii)で決定されたレベルと、を比較する工程;及びiv)工程ii)で決定されたレベルが、工程i)で決定されたレベルより低い場合、処置が効率的であると結論づける工程、を含む方法に関する。
【0055】
特定の実施態様では、自然早産は初期段階(少なくとも妊娠20週)で検出される。
【0056】
減少率は、例えば、少なくとも5%、又は少なくとも10%、又は少なくとも20%、より好ましくは、少なくとも50%、さらに好ましくは、少なくとも100%である。
【0057】
特定集団の治療方法
本発明はさらに、出生前の子宮収縮抑制薬又は膣プロゲステロン薬、ペッサリー及び/又は子宮頸管縫縮術の設置を用いて自然早産を処置するための方法であって、被験者において、前記患者から得られたタンパク質PROK1マーカーのレベルが本発明の方法のいずれかによって検出された方法に関する。
【0058】
本発明の文脈において、「処置する(treating)」又は「処置(treatment)」という用語は、本明細書で使用される場合、そのような用語が適用される障害又は状態を逆転させる、緩和する、進行を抑制する、又は予防すること、又はそのような用語が適用される障害又は状態の1つ以上の症状を逆転させる、緩和する、進行を抑制する、又は予防することを意味する。
【0059】
本発明の別の目的は、被験者の自然早産を処置/予防する方法であって、以下:
a)被験者から好中球を含む血液サンプルを提供する工程;
b)タンパク質PROK1マーカーのレベルを検出する工程;
c)工程b)で決定されたレベルと、基準値と、を比較する工程;及び
工程b)で決定されたレベルが、基準値より高い場合、被験者を出生前のプロゲステロン及び/又は子宮収縮抑制治療で処置する工程、を含む方法である。
【0060】
上述のように、自然早産に対する現在の主な治療法は、出生前の子宮収縮抑制薬又は膣プロゲステロン薬、ペッサリー及び/又は子宮頸管縫縮術の設置である。
【0061】
したがって、本発明はさらに、本発明の方法の1つによって検出された、前記被験者から得られたタンパク質PROK1マーカーのレベルが、出生前の子宮収縮抑制薬又は膣プロゲステロン薬、ペッサリー及び/又は子宮頸管縫縮術の設置を用いた自然早産の処置方法に関する。
【0062】
被験者の自然早産を処置する方法であって、以下:
a)被験者から好中球を含む血液サンプルを提供する工程;
b)タンパク質PROK1マーカーのレベルを検出する工程;
c)工程b)で決定されたレベルと、基準値と、を比較する工程;及び
工程b)で決定されたレベルが基準値より高い場合、被験者を子宮収縮抑制薬又は膣プロゲステロン薬、ペッサリー及び/又は子宮頸管縫縮術の設置で処置する工程、を含む方法である。
【0063】
特定の実施態様では、自然早産は初期段階(少なくとも妊娠20週)で検出される。
【0064】
「プロゲステロン」という用語は、薬物であり、天然に存在するステロイドホルモンを意味する。プロゲステロン治療は、「プロゲストーゲン」(プロゲスターゲン、ゲスターゲン、ゲストゲンとも称され、プロゲステロンに似た作用をもたらす薬物の一種)であり、主に女性の閉経期症状及び性ホルモンレベルの低下に対するホルモン治療において、エストロゲンと組み合わせて使用される。さらに、妊娠や不妊のサポート、婦人科疾患の処置にも使用されます。プロゲステロンは、経口摂取、膣からの摂取及び筋肉又は脂肪への注射などの他の経路で摂取することができる。プロゲステロンに由来する多くの合成プロゲストーゲン又はプロゲスチンは、薬物としても使用されている(Kuhl H (2005). Climacteric.8 Suppl1:3-63)。例えば、酢酸メドロキシプロゲステロン及びノルエチステロンが含まれる。
【0065】
「子宮収縮抑制薬(tocolytics)」という用語は、「抗収縮薬」又は「陣痛抑制薬」とも称され、早産を抑制するために使用される薬剤である。したがって、子宮収縮抑制治療は、早産になりそうな場合に提供され、胎児肺の成熟を促進するグルココルチコイドを投与するために出産を十分な期間延期するが、効果が現れるまでに1~2日を要することがある。
【0066】
一般的に使用される子宮収縮抑制薬には、オキシトシン受容体アンタゴニスト(アトシバンなど)、β2アゴニスト(下記参照)、カルシウムチャネルブロッカー(ニフェジピン(プロカルディア、アダラート)など)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)(インドメタシン、スリンダックなど)、硫酸マグネシウムなどがある。これらは、子宮筋収縮を抑制することで早産を遅らせるのを助けることができ、その使用は早産に関連する胎児の罹患率及び死亡率を減少させることを目的としている(Mayer C.et al (2021),“Tocolysis”,StatPearls,Treasure Island(FL):StatPearls Publishing)。子宮収縮の抑制は、多くは部分的なものであり、子宮収縮抑制薬は、出産を遅らせるために数日間しか頼ることができない。使用する子宮収縮抑制薬によっては、妊婦又は胎児のモニタリングが必要になることがある(例えば、血圧を低下させるため、ニフェジピンを使用する場合は、血圧モニタリング;胎児の健康状態を評価するための心電図検査など)。
【0067】
子宮収縮抑制薬として使用されるβ2アゴニストの例は、サルブタモール(INN)又はアルブテロール(USAN)、フェノテロール、テルブタリン(Brethine)、リトドリン(Yutopar)、ヘキソプレナリン(Gynipral)からなるリストより選択することができる。
【0068】
特定の実施態様では、子宮収縮抑制薬は、ニフェジピンであり、最も一般的に使用される子宮収縮抑制薬の1つである。
【0069】
本発明は、以下の図及び実施例によりさらに例示される。しかしながら、これらの実施例及び図は、本発明の範囲を限定するものとしていかなる意味においても解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】無併発性及び自然早産妊婦における4つの妊娠時期の循環PROK1/EG-VEGF濃度。中央の横棒は、中央値。ボックスの下限と上限は、第1四分位点と第3四分位点である。*p<0.05 **<0.001..。
【
図2】32週目の自然早産を予測するための循環PROK1/EG-VEGF濃度のROC曲線解析。AUC:曲線下面積。
【実施例】
【0071】
方法
研究デザインと集団
本研究は、以前に記載されたAngioPred研究のデータに基づいている(17)。AngioPred研究は、2008年6月から2010年10月にかけて、サンテティエンヌ大学病院とニーム大学病院の産婦人科及びニーム大学病院の血液学研究所で実施された前向き多施設コホート研究である。本研究に含まれる患者は、20週以内に診察を受け、(PMC)の発生又は再発のリスクが高い患者であった。
【0072】
患者はすべてPMCの発生又は再発の高リスク患者であった。そのリスクは、糖尿病、慢性高血圧、肥満、母体年齢が18歳未満又は38歳を超える場合、慢性腎臓病、全身性エリテマトーデス、抗リン脂質症候群、一親等の心血管疾患又は静脈血栓塞栓症の家族歴、静脈血栓塞栓症又はPMCの既往歴のない生物学的血栓症、1回以上のPMCの既往歴又は静脈血栓塞栓症の既往歴などであった。除外基準は、双胎妊娠、胎児死亡の既往のある患者、病因が染色体、遺伝又は感染に起因するIUGR、及び組み入れ時のPMC又は静脈血栓塞栓症の存在であった。
【0073】
2008年3月、サンテティエンヌ大学病院の倫理委員会及びInstitutional Review Boardがプロトコルを承認した。本研究は、clinicaltrials.gov(識別子NCT00695942)に登録された。臨床試験は、1996年に改訂された1975年のヘルシンキ宣言に従って行われた。すべての患者は妊娠20週未満に含まれ、書面による同意を得た。
【0074】
アウトカム
主要なアウトカムは自然早産の発生であり、インタクト又は分娩前に膜の破裂を伴う自然分娩開始及び妊娠20週0日後、妊娠37週0日前に出産した数として定義した。
【0075】
血液採取
血液サンプルは、患者1人あたり合計5サンプル、妊娠20週、24週、28週、32週及び36週に、サンテティエンヌ・ニーム大学病院の採取センターで採取された。サンプルは、直ちに分析のために研究所に送られた。サンプルは遠心分離して分注し、-80℃で保存した。
【0076】
生物学的分析
各分析を、他の分析に対してブラインドマナーで行った。同一患者からの全サンプルを、同一シリーズのアッセイにグループ分けした。分析を、37℃のウォーターバスで10分間解凍し、2500gで遠心分離した後に実施した。血清EG-VEGFレベルを、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)キット(PeproTech, Neuilly-Sur-Seine, France)により、20週、24週、28週、32週及び36週に測定し、標準範囲は、16-1000pg/mLとした。アッセイの上限範囲及び下限範囲のサンプルを正確に測定できるように、2つの別々の標準曲線を構築した。
【0077】
統計分析
統計分析は、XlSTAT(登録商標)を使用して行った。定性的データは、絶対度数及び相対度数(%表示)で示した。定性的変数は、カイ二乗検定により、又は数が不十分な場合は、フィッシャーの正確検定により、比較した。定量的変数は、平均値及び標準偏差で示した。データの正規分布は、シャピロ-ウィルク検定で検定した。結果は、箱ひげ図として報告した。自然早産を予測するためのEG-VEGF血漿レベルの閾値は、95%信頼区間(95%CI)で曲線下面積を計算する受信者操作特性(ROC)曲線を通じて、各妊娠年齢において決定した(18)。全ての仮説検定は、0.05の有意水準で行い、p<0.05を有意とみなした。
【0078】
結果
臨床的特徴
2008年6月から2010年10月までの間に、連続した200人の妊婦を研究に含めた。人口統計と組み入れ基準を表1にまとめた。
【0079】
研究期間中、45人の女性がPMCを発症し、分析からは除外した。7人が自然早産を示した。全ての人口統計学的特徴及び組み入れ基準は、合併症のない女性及びsPTBを有する女性の間で同様であった。
【0080】
カテゴリー変数は、頻度(パーセンテージ)で、連続変数は、平均値(標準偏差)で報告した。略語:BMI:ボディマスインデックス、MAP:平均動脈圧、平均UARI:平均子宮動脈抵抗インデックス、VTE:静脈血栓塞栓症、PMC:胎盤媒介合併症
【0081】
血清EG-VEGF濃度及び自然早産の発生
sPTBの女性は、24週(244.1対144.3pg/mL)、28週(247.5対146.2pg/mL)及び32週(328.5対152.7pg/mL)において、合併症のない患者よりもEG-VEGF濃度が高かった(p=0.03、0.02及び<0.001)。結果は、
図1にまとめられている。
【0082】
ROC曲線を使用して、sPTBの予測に最適な感度及び特異度を示す血清EG-VEGF値の閾値を算出した。曲線下面積(AUC)は、0.9に達し、自然早産の予測に対する感度は、32週で100%であった(
図2)。
【0083】
考察
血清EG-VEGF値は、妊娠24週から早期に上昇し、自然早産の予測因子であった。循環EG-VEGF値は、自然早産の女性でより高い値を示し、32週で良好な予測能を示した。
【0084】
以前の当グループからの報告では、通常の妊娠では、循環EG-VEGF濃度は、妊娠第三期に妊娠第二期と比較して増加するが、分娩時は、分娩のない患者と比較して減少することを示した(19)。EG-VEGFは、妊娠末期までにマウス胎児膜(FM)においても発現しており、このタンパク質が分娩のメカニズムにおいて局所的な役割を果たしていることを示唆している(19)。これらのデータから、EG-VEGFは、妊娠後期の胎児膜保護を確実にするために局所的に作用するサイトカインであることを示唆した。したがって、EG-VEGFの発現低下は、そのレセプターと同様に発現レベルの突然の低下によって明らかになったように、ヒトの分娩プロセスの開始に寄与している可能性がある。
【0085】
これまで、自然早産に対するEG-VEGF値の予測能力を評価した研究はない。sPTBにおけるEG-VEGF値の増加は、妊娠に関連した病理の病因におけるこの因子の直接的な関与に関する仮定を実証するものであった。この病理における代償的な役割は、可能性が高い。したがって、EG-VEGF濃度が上昇するのは、血管新生を再活性化するためだけではなく、分娩に伴う炎症を抑制するためでもあると推測できる。微生物学的研究では、子宮内感染が早産の25~40%を占めている可能性が示唆されている(20)。重要なことは、Jabbourら(15)が、動物モデルでEG-VEGFを注入して早産誘発に関与する可能性を検証したことである。EG-VEGFは、分娩を誘発することで広く知られているグラム陰性細菌である大腸菌(E.coli)の細胞壁の成分であるリポ多糖(LPS)と比較された。LPSを注入すると、その後20時間以内に早産が誘発されたが、EG-VEGFは誘発されなかった。EG-VEGFを注入すると、胎児膜の細胞内で炎症性メディエーターであるIL-6、IL-1、腫瘍壊死因子(TNF)、CXCL2及びCXCL5のmRNA発現が増加した(21)。EG-VEGFは、ヒト子宮筋層においても同一の炎症性メディエーターを増加させた(22)。さらに、EG-VEGFで24時間処理した単球は、ケモカインCXCL1、CXCL8及びCCL4を放出し、LPSによる共刺激は、CCL18及びCCL20の産生に相乗効果をもたらした(23)。これらの所見は、EG-VEGFが早産に伴うプロセスに関与していることを強く示唆しているが、現在までのところ、その濃度の上昇が原因なのか結果なのかは分かっていない。この病理におけるEG-VEGFの上昇の意義を解明するために、さらなるin vivo研究が進行中である。
【0086】
全体として、本研究は、EG-VEGF濃度がsPTB発生の強力なバイオマーカーを構成しうることを初めて実証した。本研究の意義は、PMCのリスクが高い患者集団を前向きに募集し、20週から出産までフォローしたことである。
【0087】
EG-VEGF値及び自然早産の関連については、より大規模なコホートで調査し、その情報価値を検証し、この病理学的リスクの高い患者のルーチン評価に使用することを提案する予定である。
【0088】
【0089】
【0090】
参考文献
本出願全体を通して、様々な参考文献が、本発明が関連する技術状態を記載している。これらの文献の開示は、参照により本開示に組み込まれる。
【表3】
【国際調査報告】