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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-19
(54)【発明の名称】前立腺癌を処置する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/502 20060101AFI20250212BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250212BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20250212BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
A61K31/502
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K31/58
A61K31/573
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547679
(86)(22)【出願日】2023-02-14
(85)【翻訳文提出日】2024-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2023053555
(87)【国際公開番号】W WO2023156357
(87)【国際公開日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】63/268,026
(32)【優先日】2022-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】カン,ジンユ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC41
4C086DA10
4C086DA22
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、対象における前立腺癌を処置する方法に関する。本開示は、より具体的には、対象にオラパリブ及び酢酸アビラテロン又はその塩を投与することにより、前立腺癌、例えば、転移性去勢抵抗性前立腺癌を処置する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)を処置する方法であって、前記対象は、処置未経験であり、
前記対象に治療有効量の4-[(3-{[4-(シクロプロパン-カルボニル)ピペラジン-1-イル]カルボニル}-4-フルオロフェニル)メチル]-2H-フタラジン-1-オン(オラパリブ)、又はその塩、水和物、溶媒和物若しくはプロドラッグを投与すること;
前記対象に治療有効量の(3β)-17-(3-ピリジニル)アンドロスタ-5,16-ジエン-3-イルアセテート(酢酸アビラテロン)、又はその塩を投与すること
を含み、
無増悪生存期間は、酢酸アビラテロン単独を受けている対象よりも少なくとも約6か月長い、方法。
【請求項2】
前記対象は、事前にタキサン系化学療法を事前に受けていない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タキサン系化学療法は、ドセタキセルである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象は、事前に新規ホルモン剤化学療法を事前に受けておらず、任意選択で、前記新規ホルモン剤は、エンザルタミド又は酢酸アビラテロン若しくはその塩である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記癌は、骨及び/又はリンパ節に転移した、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記転移は、内臓性である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記癌細胞は、1つ以上の相同組換え修復(HRR)遺伝子において野生型である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記癌細胞は、1つ以上のHRR遺伝子突然変異を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記HRR遺伝子突然変異は、BRCA1、BRCA2、ATM、BRIP1、BARD1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCL、PALB2、PPP2R2A、RAD51B、RAD51C、RAD51D、及びRAD54L遺伝子突然変異から選択され、;又は前記癌細胞は、BRCA1、BRCA2、及び/若しくはATM遺伝子突然変異を含み;又は前記癌細胞は、BRCA1及び/若しくはBRCA2遺伝子突然変異を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記癌は、1つ以上のHRR遺伝子突然変異において野生型であり、前記対象は、ドセタキセルを事前に受けなかった、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
オラパリブの前記治療有効量は、1日当たり約400~800mgの範囲である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
オラパリブの前記治療有効量が、1日約600mgである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
オラパリブの前記治療有効量が、1日2回約300mgである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
酢酸アビラテロン又はその塩の前記治療有効量は、1日約500~1500mgの範囲である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
酢酸アビラテロン又はその塩の前記治療有効量は、1日約800~1200mgの範囲である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
酢酸アビラテロン又はその塩の前記治療有効量は、1日約1000mgであり、任意選択で、1日1回経口投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
プレドニゾン又はプレドニゾロンを1日約10mgの量で、任意選択で、1日2回約5mgの量で投与することをさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
無増悪生存期間は、約6~18か月長く、又は約6~14か月長く、又は約6~12か月長い、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
無増悪生存期間は、約8~18か月長く、又は約8~14か月長く、又は約8~12か月長い、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
オラパリブ及び酢酸アビラテロン又はその塩の投与前に、前記対象を前処置に基づき選択することをさらに含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
選択は、前記癌におけるHRR遺伝子突然変異の状態に基づき選択するステップを含まない、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
対象における前立腺癌の処置における使用のためのオラパリブ、又はその塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグであって、前記処置は、前記オラパリブ、又はその水和物、溶媒物、若しくはプロドラッグ、及び酢酸アビラテロン又は、又はその塩の前記対象への異時、逐次又は同時投与を含み、前記対象は、前記癌におけるHRR遺伝子突然変異について選択されていない、オラパリブ、又はその塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグ。
【請求項23】
前記対象は、酢酸アビラテロン又はその塩単独を受けている対象よりも少なくとも約6か月長い無増悪生存期間を有する、請求項22に記載の使用のためのオラパリブ。
【請求項24】
前記癌は、転移している、請求項22又は23に記載の使用のためのオラパリブ。
【請求項25】
前記転移は、骨及び/又はリンパ節への転移である、請求項24に記載の使用のためのオラパリブ。
【請求項26】
前記転移は、内臓性である、請求項24に記載の使用のためのオラパリブ。
【請求項27】
前記癌は、mCRPCである、請求項22~26のいずれか一項に記載の使用のためのオラパリブ。
【請求項28】
前記癌細胞は、1つ以上のHRR遺伝子において野生型である、請求項22~27のいずれか一項に記載の使用のためのオラパリブ。
【請求項29】
前記癌細胞は、1つ以上のHRR遺伝子突然変異を含む、請求項22~26のいずれか一項に記載の使用のためのオラパリブ。
【請求項30】
前記癌は、1つ以上のHRR遺伝子突然変異を含むmCRPCである、請求項22~26のいずれか一項に記載の使用のためのオラパリブ。
【請求項31】
前記HRR遺伝子突然変異は、BRCA1、BRCA2、ATM、BRIP1、BARD1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCL、PALB2、PPP2R2A、RAD51B、RAD51C、RAD51D、及びRAD54L遺伝子突然変異から選択され;又は前記癌細胞は、BRCA1、BRCA2、及び/若しくはATM遺伝子突然変異を含み;又は前記癌細胞は、BRCA1及び/若しくはBRCA2遺伝子突然変異を含む、請求項29又は30に記載の使用のためのオラパリブ。
【請求項32】
前記前立腺癌は、mCRPCであり、前記対象は、処置未経験である、請求項22~31のいずれか一項に記載の使用のためのオラパリブ。
【請求項33】
前記対象は、事前にタキサン系化学療法を受けておらず、任意選択で、前記タキサン系化学療法は、ドセタキセルである、請求項32に記載の使用のためのオラパリブ。
【請求項34】
前記対象は、事前に新規ホルモン剤化学療法を受けておらず、任意選択で、前記新規ホルモン剤は、酢酸アビラテロン又はその塩である、請求項22~33のいずれか一項に記載の使用のためのオラパリブ。
【請求項35】
前記対象は、タキサン系化学療法を事前に受けた、請求項22~31のいずれか一項に記載の使用のためのオラパリブ。
【請求項36】
前記対象は、新規ホルモン剤化学療法を事前に受け、任意選択で、前記新規ホルモン剤は、エンザルタミド又は酢酸アビラテロン若しくはその塩である、請求項22~31のいずれか一項に記載の使用のためのオラパリブ。
【請求項37】
前記癌は、1つ以上のHRR遺伝子突然変異において野生型であるmCRPCであり、前記対象は、ドセタキセルを事前に受けなかった、請求項22~28のいずれか一項に記載の使用のためのオラパリブ。
【請求項38】
1日当たり約400~800mgの範囲の量で投与される、請求項22~37のいずれか一項に記載の使用のためのオラパリブ。
【請求項39】
1日約600mgの量で投与される、請求項22~37のいずれか一項に記載の使用のためのオラパリブ。
【請求項40】
1日2回約300mgの量で投与される、請求項22~37のいずれか一項に記載の使用のためのオラパリブ。
【請求項41】
アビラテロンは、1日約500~1500mgの範囲の量で投与される、請求項22~40のいずれか一項に記載の使用のためのオラパリブ。
【請求項42】
アビラテロンは、1日約800~1200mgの範囲の量で投与される、請求項22~40のいずれか一項に記載の使用のためのオラパリブ。
【請求項43】
アビラテロンは、1日約1000mgの量で投与され、任意選択で、1日1回経口投与される、請求項22~40のいずれか一項に記載の使用のためのオラパリブ。
【請求項44】
プレドニゾン又はプレドニゾロンを1日約10mgの量で、任意選択で、1日2回約5mgの量で投与することをさらに含む、請求項22~43のいずれか一項に記載の使用のためのオラパリブ。
【請求項45】
無増悪生存期間は、約6~18か月長く、又は約6~14か月長く、又は約6~12か月長い、請求項23~44のいずれか一項に記載の使用のためのオラパリブ。
【請求項46】
無増悪生存期間は、約8~18か月長く、又は約8~14か月長く、又は約8~12か月長い、請求項23~44のいずれか一項に記載の使用のためのオラパリブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象における前立腺癌を処置する方法に関する。本開示は、より具体的には、対象にオラパリブ及びアビラテロンを投与することにより、前立腺癌、例えば、転移性去勢抵抗性前立腺癌を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)は、不良アウトカムを有する分子的に不均一な疾患である。mCRPCを有する患者の最大30%における腫瘍は、有害なDNA損傷修復遺伝子異常を保有する。最も一般的なこれらの変化のうち、BRCA1及びBRCA2は、十分特徴付けされた相同組換え修復(HRR)遺伝子であり、ATMは、DNA損傷を検出し、HRRを活性化させるように間接的に機能する。HRRにおける直接的又は間接的役割を有するこれらの及び他の遺伝子の機能損失変化は、より侵襲的な前立腺癌を伴う。
【0003】
処置のための分子層別化は、かなりの患者間ゲノム不均一性の証拠にかかわらず、現在、転移性前立腺癌のためのスタンダードオブケアでない。進行性前立腺癌のためのほとんどの治療方針は、アンドロゲン受容体シグナリングを標的化し;タキサン系化学療法及び放射性医薬品も承認されている。これらの薬物は過去10年でアウトカムを改善しているが、転移性前立腺癌は依然として常に致死的であり、分子層別化を含む新たな治療方針が早急に必要とされている。
【0004】
転移性前立腺癌のゲノム研究は、症例の20~25%においてDNA修復遺伝子における機能損失変化、例えば、HRR遺伝子の欠陥を含む、多数の潜在的にアクショナブルな再発性ゲノム異常を同定した。HRR遺伝子変化は、前立腺及び他の癌においてポリ(アデノシン二リン酸-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害に対する感受性を付与する。抗腫瘍活性は、HRR遺伝子変化を保有するmCRPCを有する患者においてPARP阻害剤、オラパリブについて報告されている。PARP阻害に対する応答は、PARP捕捉、DNA二本鎖分解をもたらす複製フォークの物理的閉塞及びHRRの欠陥を含む複数の機序を介して生じ得る。
【0005】
mCRPCのファーストラインセッティングにおける現在の処置オプションは、患者が初回診断後に受けた処置のタイプに応じて、主に、次世代ホルモン剤(NHA)アビラテロン及びエンザルタミド、並びにタキサン系化学療法からなる。これらの薬剤の報告された臨床活性にかかわらず、全生存期間はおよそ3年であり、5年生存率はおよそ30%である。リアルワールドセッティングにおいて、mCRPC患者のおよそ50%が1回のみの延命療法を受ける。
【0006】
したがって、前立腺癌の進行及び再発の顕著な遅延、並びに潜在的に治癒率の改善を提供する処置が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、対象における前立腺癌を処置する方法を提供する。このような方法は、対象に治療有効量の4-[(3-{[4-(シクロプロパン-カルボニル)ピペラジン-1-イル]カルボニル}-4-フルオロフェニル)メチル]-2H-フタラジン-1-オン(オラパリブ)、又はその塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグを投与すること;及び対象に治療有効量の(3β)-17-(3-ピリジニル)アンドロスタ-5,16-ジエン-3-イルアセテート(酢酸アビラテロン)又はその塩、水和物、若しくは溶媒和物を投与することを含む。
【0008】
本開示の別の態様は、対象における前立腺癌の処置における使用のためのオラパリブ、又はその塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグであって、前記処置は、前記オラパリブ、又はその塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグ、及び酢酸アビラテロン又はその塩、水和物、若しくは溶媒和物の前記対象への投与を含む、オラパリブ、又はその塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグを提供する。
【0009】
本開示の方法、使用、及び組成物のある実施形態において、無増悪生存期間は、オラパリブ、又はその塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグ、及びアビラテロン又はその塩、水和物、若しくは溶媒和物を受けている患者について、酢酸アビラテロン単独を受けている対象よりも少なくとも約6か月長い。
【0010】
本開示の方法、使用及び組成物のある実施形態において、前立腺癌は、mCRPCであり、対象は、処置未経験である。
【0011】
本開示の方法、使用、及び組成物のある実施形態において、対象は、癌における相同組換え修復(HRR)遺伝子突然変異について選択されていない。
【0012】
本発明のこれら及び他の特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲と一緒に以下の詳細な説明からより詳細に理解される。特許請求の範囲は、その引用により定義され、本詳細な説明に記載の特徴及び利点の具体的な考察により定義されないことに留意されたい。
【0013】
添付の図面は、本開示の組成物及び方法のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は、本開示の1つ以上の実施形態を説明し、詳細な説明と一緒に本開示の原理及び動作を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A図1Aは、実施例に提供される試験における患者についての試験責任医師の査定によるイメージングに基づく無増悪生存期間(PFS)のカプラン-マイヤー推定値を提供する。
図1B図1Bは、実施例に提供される試験における患者についての盲検独立中央判定によるイメージングに基づくPFSのカプラン-マイヤー推定値を提供する。
図2図2は、実施例に提供される試験における患者についての試験責任医師の査定によるイメージングに基づくPFSの事前規定されたサブグループ解析のフォレストプロットを提供する。実施された解析は、共変量として一次プーリング(primary pooling)方針において選択された層別化因子を含んだ。各サブグループ解析は、処置、因子及び処置-因子相互作用についての項を含有するコックス比例ハザードモデルを使用して実施した。ハザード比<1は、オラパリブ及び酢酸アビラテロンを受けている患者群の進行のより低いリスクを意味する。円のサイズは、事象の数に比例する。いずれかの処置群における5つ未満の事象を有するサブグループカテゴリーは、提示されるNCを有する。*ベースライン査定を有さない患者を除外する。ctDNA、循環腫瘍DNA;ECOG、Eastern Cooperative Oncology Group(米国東海岸癌臨床試験グループ);HRRm、相同組換え修復遺伝子突然変異;mHSPC、転移性ホルモン感受性前立腺癌;NC、計算不能;PSA、前立腺特異的抗原。
図3A図3Aは、実施例に提供される試験における患者についての試験責任医師の査定による全生存期間のカプラン-マイヤー推定値を提供する。この図面において、NRは、未到達を意味する。
図3B図3Bは、実施例において提供される試験における患者についての試験責任医師の査定による2回目の進行又は死亡までの時間のカプラン-マイヤー推定値を提供する。
図3C図3Cは、実施例において提供される試験における患者についての試験責任医師の査定による最初の後治療又は死亡までの時間のカプラン-マイヤー推定値を提供する。この図面において、NRは、未到達を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の方法及び材料を記載する前に、本明細書に記載の態様は具体的な実施形態に限定されず、したがって無論、変動し得ることが理解されるべきである。本明細書において使用される用語は、特定の態様を説明する目的のためのものにすぎず、本明細書において具体的に定義されない限り、限定的であることを意図するものではないことも理解されるべきである。
【0016】
本開示に関して、本明細書に記載の方法、使用、及び組成物は、当業者により所望の必要性を満たすように構成され得る。本開示は、前立腺癌の処置の改善を提供する。ある実施形態において、癌は、転移している前立腺癌である。例えば、転移は、骨及び/又はリンパ節への転移である。転移は、内臓性でもあり得る。ある実施形態において、癌は、転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)である。「転移性」状態は、骨スキャン、コンピュータ断層撮影(CT)、又は磁気共鳴イメージング(MRI)スキャン上のいずれかの少なくとも1つの転移性病変と定義される。
【0017】
本明細書において使用される場合、用語「個体」、「患者」、又は「対象」は、互換的に使用され、哺乳類を含む任意の動物、最も好ましくはヒトを指す。
【0018】
上記のとおり、本明細書に記載の本開示の方法、使用、及び組成物は、オラパリブの投与を要求する。本明細書において使用される場合、「オラパリブ」は、分子4-[(3-{[4-(シクロプロパン-カルボニル)ピペラジン-1-イル]カルボニル}-4-フルオロフェニル)メチル]-2H-フタラジン-1-オンを指す。分子オラパリブは、その塩、水和物、溶媒和物、又はプロドラッグの形態で用いられ得る。以下の構造を有する4-[(3-{[4-(シクロプロパン-カルボニル)ピペラジン-1-イル]カルボニル}-4-フルオロフェニル)メチル]-2H-フタラジン-1-オン(オラパリブ)は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2004/080976A1号パンフレットに開示されている。
【化1】
【0019】
オラパリブは、好ましくは、医薬組成物の形態で投与される。オラパリブの治療有効量は既に確立されている。例えば、ある実施形態において、オラパリブの治療有効量は、1日当たり約400~800mgの範囲である。例えば、ある実施形態において、オラパリブは、1日約600mg(例えば1日2回約300mg服用)の量で投与される。
【0020】
本明細書において使用される場合、語句「治療有効量」又は「有効量」は、研究者、獣医師、医師又は他の臨床医により組織、系、動物、個体又はヒト中で求められている生物学的又は医学的応答を誘発する活性化合物又は医薬剤の量を指す。
【0021】
本明細書に記載の本開示の方法、使用、及び組成物は、アビラテロン、又はその塩、水和物、溶媒和物、若しくはプロドラッグの投与も要求する。アビラテロンの好適なプロドラッグの一例は、酢酸アビラテロンである。本明細書において使用される場合、「酢酸アビラテロン」は、以下の構造を有する分子(3β)-17-(3-ピリジニル)アンドロスタ-5,16-ジエン-3-イルアセテート(又は[(3S,8R,9S,10R,13S,14S)-10,13-ジメチル-17-ピリジン-3-イル-2,3,4,7,8,9,11,12,14,15-デカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル]アセテート)を指す。
【化2】
分子の酢酸アビラテロンは、塩、水和物又は溶媒和物として用いられ得る。
【0022】
酢酸アビラテロンは、好ましくは、医薬組成物の形態で投与される。酢酸アビラテロンの治療有効投与量は、既に確立されている。例えば、ある実施形態において、アビラテロンの治療有効量は、1日当たり約500~1500mg、例えば、1日当たり約800~1200mgの範囲である。例えば、ある実施形態において、酢酸アビラテロンは、1日約1000mgの量で(例えば、1日1回経口)投与される。既に確立されているとおり、酢酸アビラテロンは、プレドニゾン(1日2回5mg経口)又はプレドニゾロン(1日2回5mg経口)との組み合わせで与えられる。
【0023】
オラパリブの投与は、酢酸アビラテロンの投与から異時、逐次又は同時であり得る。ある実施形態において、投与は、同時及び/又は逐次である。
【0024】
本発明者らはまた、予想外に、酢酸アビラテロンとの組み合わせのオラパリブの投与が、対象における無増悪生存期間(例えば、軟部組織病変についてはResponse Evaluation Criteria in Solid Tumors[RECIST 1.1]並びに/若しくは骨病変及び/若しくは死亡についてはProstate Cancer Working Group-3[PCWG-3]基準により評価されるイメージングに基づく若しくは放射線学的無増悪生存期間、「PFS」若しくは「rPFS」)、又は他の主たる治療指標、例えば、全生存期間(OS)、最初の後治療若しくは死亡(TFST)、2回目の進行若しくは死亡までの時間(PFS2)、客観的奏効率(ORR)、前立腺特異的抗原(PSA)奏効率及びPSA進行までの時間を、酢酸アビラテロン単独を受けている(すなわち、さらにオラパリブを受けずに酢酸アビラテロンを受けている)対象と比較して改善するために十分であることを見出した。例えば、全対象集団において、本発明者らは、無増悪生存期間が酢酸アビラテロンとの組み合わせのオラパリブを受けている対象について、酢酸アビラテロン単独を受けている対象よりも少なくとも約6か月長いことを見出した。ある実施形態において、無増悪生存期間は、約6~18か月長く、又は約6~14か月長く、又は約6~12か月長い。ある実施形態において、無増悪生存期間は、約8~18か月長く、又は約8~14か月長く、又は約8~12か月長い。
【0025】
驚くべきことに、無増悪生存期間の改善は、患者についてそのHRR遺伝子突然変異状態に関係なく(すなわち、HRRm及び非HRRmのサブグループの両方で)観察された。したがって、ある実施形態において、患者は、HRRmにより選択されない。例えば、ある実施形態において、本開示の方法は、対象を前処置に基づき選択することをさらに含み、及び/又は患者の選択は、患者を1つ以上のHRR遺伝子突然変異を含む癌細胞を有すると診断するステップを含まない。例えば、ある実施形態において、本開示の方法は、対象の癌細胞のHRRm状態を考慮せずに対象を選択することをさらに含む。
【0026】
本開示の方法、使用、及び組成物のある他の実施形態において、前立腺癌は、HRR遺伝子突然変異を含まない(例えば、病的変異又は病的変異疑いの生殖系列又は体細胞突然変異HRR遺伝子突然変異が組織分析、生殖系列、又は血漿検査結果によりいかなるサンプルタイプ中でも検出されない)(本明細書において「非HRRm」とも称される)mCRPCである。
【0027】
本開示の別の実施形態は、前立腺癌が相同組換え欠損(HRD)癌である方法、使用、及び組成物を提供する。例えば、癌がHRD陽性であるかどうかは、Myriad GeneticsのmyChoice(登録商標)HRD、myChoice(登録商標)HRD Plus、又は好適な同等のアッセイにより決定することができる。ある他の実施形態において、本開示の方法は、対象を、1つ以上のHRR遺伝子突然変異を含む癌細胞を有すると同定することをさらに含む。
【0028】
本開示の方法、使用、及び組成物のある他の実施形態において、前立腺癌は、1つ以上のHRR遺伝子突然変異(本明細書において「HRRm」とも称される)を含む。本明細書において使用される場合、HRR遺伝子突然変異としては、組織、生殖系列、及び血漿を含む分析されるサンプルの1つ以上で検出される病的変異又は病的変異疑いの生殖系列又は体細胞突然変異が挙げられる。
【0029】
ある実施形態において、癌細胞は、BRCA1、BRCA2、ATM、BRIP1、BARD1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCL、PALB2、PPP2R2A、RAD51B、RAD51C、RAD51D、及びRAD54L遺伝子突然変異から選択されるHRR遺伝子突然変異を含む。ある実施形態において、癌細胞は、BRCA1、BRCA2、及び/又はATM遺伝子突然変異を含む。ある他の実施形態において、本開示の方法、使用、及び組成物は、BRCA1、BRCA2、及び/又はATM遺伝子突然変異を含む癌細胞を有する対象を同定することをさらに含む。ある実施形態において、癌細胞は、BRCA1及び/又はBRCA2遺伝子突然変異を含む。ある実施形態において、癌細胞は、ATM遺伝子突然変異を含む。ある実施形態において、癌細胞は、BRIP1、BARD1、CDK12、CHEK1、CHEK2、FANCL、PALB2、PPP2R2A、RAD51B、RAD51C、RAD51D、及び/又はRAD54L遺伝子突然変異を含む。
【0030】
本開示の方法、使用、及び組成物のある他の実施形態において、前立腺癌は、1つ以上のHRR遺伝子突然変異を含むmCRPCである。
【0031】
以下に定義されるとおり対象が処置未経験である、ある実施形態において、無増悪生存期間は、約6~18か月長い(例えば、約6~14か月長く、又は約6~12か月長く、又は約8~18か月長く、又は少なくとも約6か月長く、又は少なくとも約8か月長い)。
【0032】
したがって、ある実施形態において、本開示の方法、使用、及び組成物は、対象が処置未経験であるファーストライン処置としても有用である。「処置未経験」対象は、本明細書において使用される場合、いかなる細胞傷害化学療法(例えば、ファーストライン白金及び/又はタキサン系化学療法若しくはドセタキセル)、並びに/又は新規ホルモン剤(NHA)化学療法(例えば、エンザルタミド若しくはアビラテロン)も、前立腺癌のための、例えば、mCRPCのためのいかなる他の全身処置(承認薬物又は実験化合物)も事前に受けておらず、完了もしていない対象である。ある他の実施形態において、処置未経験対象は、限局性前立腺癌処置段階の間に又は転移性ホルモン感受性前立腺癌(mHSPC)段階のためにドセタキセルを事前に受けた。ある他の実施形態において、処置未経験対象は、前立腺癌のために、例えば、任意の処置段階の間にアビラテロン、又はその塩、水和物、溶媒和物、若しくはエステル(例えば、酢酸アビラテロン)を事前に受けていない。
【0033】
本開示の方法、使用、及び組成物のある他の実施形態において、前立腺癌は、mCRPCであり、対象は、ドセタキセルを事前に受けていない。
【0034】
対象が限局性前立腺癌及び/又は転移性ホルモン感受性(mHSPC)病期のためのネオアジュバント/アジュバント処置の間に前化学療法(例えば、ドセタキセル)を受けたある実施形態において、無増悪生存期間は、約8~24か月長い(例えば、約8~20か月長く、又は約8~18か月長く、又は少なくとも約8か月長く、又は少なくとも約10か月長く、又は少なくとも約12か月長い)。
【0035】
したがって、本開示の方法、使用、及び組成物は、対象がファーストラインの治療を事前に受けているセカンドライン処置としても有用である。ある実施形態において、本開示の方法、使用、及び組成物は、ファーストラインの化学療法を事前に受けており、又は完了している対象の癌の進行及び再発の遅延を提供し得る。例えば、ある実施形態において、対象は、ファーストライン白金及び/又はタキサン系化学療法、例えば、ドセタキセルを事前に受けており、又は完了している。ある他の実施形態において、対象は、NHA化学療法、例えば、エンザルタミド又はアビラテロンを事前に受け、又は完了した。
【0036】
本開示の方法、使用、及び組成物のある他の実施形態において、前立腺癌は、mCRPCであり、対象は、ドセタキセルを事前に受けている。
【実施例
【0037】
本開示の方法、使用、及び組成物を以下の実施例によりさらに説明し、実施例は本開示を範囲又は主旨においてそれらに記載される具体的な手順及び化合物に限定するものと解釈されるべきではない。
【0038】
試験デザイン及び目的
エンザルタミド又はアビラテロンに対するオラパリブの有効性を、PROfound(NCT02987543)、無作為化オープンラベル多施設試験において評価した。PROfound試験は、イメージングに基づく無増悪生存期間及び全生存期間が、疾患がNHAの服用中に進行したBRCA1、BRCA2及びATM突然変異を保有するmCRPCを有する患者においてオラパリブで利益を得ることを実証した。HRR遺伝子の変化を有する全試験集団の患者における、イメージングに基づく無増悪生存期間及び全生存期間の延長に向かう傾向も観察された。
【0039】
本試験についての論拠は、PARP阻害剤をNHAと組み合わせる場合、患者がHRR遺伝子突然変異(HRRm)を有するかどうかに関係なく患者についての組み合わさった抗腫瘍効果が存在し得ることを示唆する前臨床モデルに基づく。理論により拘束されるものではないが、これは、潜在的には、PARP/アンドロゲン受容体(AR)シグナリングを同時阻害する場合にAR標的遺伝子抑制の向上をもたらす、ARシグナリングの正の同時調節におけるPARP関与に起因することが考えられる。一部の試験は、NHAが一部のHRR遺伝子の転写を阻害し;したがって、非遺伝的機構を介してHRR欠損及びPARP阻害剤に対する感受性の増加を誘導することを報告している。
【0040】
本試験のデザインは、PROpel試験(NCT03732820)として実行し、それはmCRPCを有する患者のファーストライン処置における酢酸アビラテロン及びオラパリブの二重盲検無作為化第III相試験であり、本実施例に記載した。酢酸アビラテロン及びオラパリブ又は酢酸アビラテロン及びプラセボを受けるように適格患者を無作為化した。主要目的は、試験責任医師により査定されるイメージングに基づく無増悪生存期間により査定される有効性であった。特許請求される実施形態は、PROpel試験の間に生じるデータ及び観察に基づく。
【0041】
方法
患者集団。適格患者は、≧18歳(又は韓国においては≧19歳)であり、骨スキャン、コンピュータ断層撮影、又は磁気共鳴イメージングスキャン上のいずれかの少なくとも1つの報告された転移性病変を有する組織学的又は細胞学的に確定された前立腺腺癌を有した。アンドロゲン枯渇療法(ADT)、及び4週間のウオッシュアウト期間を有する第1世代抗アンドロゲン剤(例えば、ビカルタミド、ニルタミド、及びフルタミド)を除き、mCRPCファーストラインセッティングにおける前全身処置は許容しなかった(すなわち、患者は、mCRPC段階で処置未経験であり、例えば、患者は、mCRPCセッティングにおいていかなる細胞傷害化学療法も、NHAも、他の全身処置(承認薬物又は実験化合物)も受けているべきでない)。限局性前立腺癌及び転移性ホルモン感受性(mHSPC)病期のためのネオアジュバント/アジュバント処置の間のドセタキセルは、そのような処置の間又は直後に不成功の徴候も疾患進行の徴候も生じない限り許容した。mCRPC段階前、処置の間のPSA進行/臨床的進行/放射線学的進行を伴わない第2世代抗アンドロゲン剤(アビラテロンを除く)での処置は、処置を無作為化の少なくとも12か月前に停止したことを条件として許容した。
【0042】
試験デザイン及び介入。これは、二重盲検プラセボ対照第III相試験であった。オラパリブ(1日2回300mg)又はプラセボのいずれかとの組み合わせの酢酸アビラテロン(1日1回1000mg)での処置に適格患者を無作為化した(1:1)。全ての患者は、酢酸アビラテロンラベル要件に従ってプレドニゾン又はプレドニゾロン(1日2回5mg)を受けた。無作為化を、ベースライン時の遠隔転移タイプ(骨のみ/内臓/その他)ごとに及びmHSPC病期時のドセタキセル処置ごとに層別化した(あり又はなし)。試験処置は、試験責任医師により査定される客観的なイメージングに基づく病勢進行(軟部組織病変についてはResponse Evaluation Criteria in Solid Tumors[RECIST 1.1]及び骨病変についてはProstate Cancer Working Group-3[PCWG-3]基準を使用)、許容され得ない毒性、又は同意撤回まで継続した。客観的疾患進行後、さらなる処置オプションは試験責任医師の裁量であった。患者が臨床的利益を受け続けることができ、深刻な毒性を経験しておらず、利用可能なより良好な代替処置が存在しないと試験責任医師が判断した場合、患者は試験処置を継続することができた。プラセボからの、酢酸アビラテロンとの組み合わせのオラパリブを受けるクロスオーバーは許容しなかった。
【0043】
エンドポイント。主要エンドポイントは、イメージングに基づく無増悪生存期間又は疾患進行の不存在下での任意の原因による死亡であった。潜在的な予後因子にわたる処置効果の一貫性を査定するための、盲検独立中央判定による感度解析及び試験責任医師により査定されるイメージングに基づく無増悪生存期間の探索的サブグループ解析を事前規定した。サブグループは、HRRm状態を含んだ。
【0044】
主たる副次エンドポイントは、全生存期間であった。他の副次エンドポイントは、最初の後治療又は死亡までの時間(TFST)、2回目の進行又は死亡までの時間(PFS2)及び患者により報告されるアウトカムを含んだ。さらなる探索的エンドポイントは、客観的奏効率(ORR)、前立腺特異的抗原(PSA)奏効率及びPSA進行までの時間であった。
【0045】
安全性は、身体検査所見、バイタルサイン、ECG所見及び臨床検査結果に基づく有害事象及び重篤な有害事象(Common Terminology Criteria for Adverse Events v.4.03に従う)の報告を介して査定した。
【0046】
統計解析。有効性は、解析対象集団について解析し、安全性は、任意の量の酢酸アビラテロン、オラパリブ、又はプラセボを受けた全ての患者について解析した。少なくとも1回用量のオラパリブを受けた患者を、酢酸アビラテロン及びオラパリブアームに含めた。
【0047】
イメージングに基づく無増悪生存期間の主要エンドポイントの最初の予定中間解析を本実施例において報告する。イメージングに基づく無増悪生存期間は、続いて2回目のデータカットオフ時に報告する。全生存期間は、3回目のデータカットオフを含む全ての時点で公式に検査する。
【0048】
796人の患者サンプルサイズでは、最初の中間解析は、およそ379例の進行又は死亡事象(47.6%の成熟度)が存在した場合に行うように予定し、0.014の片側アルファで94.1%の検出力を提供して試験アーム間のイメージングに基づく無増悪生存期間の統計的有意差を示し、0.68の進行又は死亡についてのハザード比を仮定した。
【0049】
多重検定手順は、2.5%の全体の片側第1種過誤率を制御した。イメージングに基づく無増悪生存期間の主要エンドポイントが統計的に有意であった場合、全生存期間は階層的に検定する。
【0050】
事象までの時間のエンドポイントについては、層別化ログランク検定を使用して両側P値を計算した。ハザード比及び95%信頼区間(CI)は、共変量としての2つの層別化変数を含むコックス比例ハザードモデルを使用して計算した。カプラン-マイヤープロットを使用して中央値を計算した。
【0051】
結果
スクリーニング及び無作為化。17か国に及ぶこの多施設試験は1103人の患者をスクリーニングし;796人の患者が適格基準を満たし、無作為化された。
【0052】
患者特徴。合計で399人の患者を酢酸アビラテロン及びオラパリブに割り付け、397人を酢酸アビラテロン及びプラセボに割り付けた。ベースライン特徴は概ね、アーム間で十分にバランスが取れていた(表1)。ctDNA検査に基づき、患者の67.3%を非HRRmサブグループに含めた。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
有効性。394人の患者がイメージングに基づく進行事象を有し、又は死亡した後に解析を行った(49.5%の成熟度、データカットオフ2021年7月30日)。試験責任医師の査定によるイメージングに基づく無増悪生存期間の中央値は、酢酸アビラテロン及びオラパリブアームについて酢酸アビラテロン及びプラセボアームよりも有意に長かった(24.8対16.6か月;ハザード比[HR]0.66;95% CI、0.54~0.81;P<0.001)(図1A)。酢酸アビラテロン及びオラパリブアームにおいて168例、酢酸アビラテロン及びプラセボアームにおいて226例の進行又は死亡事象が存在した。打ち切りデータを有する患者における疾患進行についてのフォローアップの継続期間の中央値(範囲)は、酢酸アビラテロン及びオラパリブアームにおいて19.3(0.03~30.59)か月であり、酢酸アビラテロン及びプラセボアームにおいて19.4(0.03~30.16)か月であった。
【0057】
盲検独立中央判定によるイメージングに基づく無増悪生存期間の事前規定された感度解析は、主要解析の結果と一貫性を示した(中央値27.6対16.4か月;HR、0.61;95% CI、0.49~0.74)(図1B)。酢酸アビラテロン及びオラパリブアームにおいて157例、酢酸アビラテロン及びプラセボアームにおいて218例の進行又は死亡事象が存在した。打ち切りデータを有する患者における疾患進行についてのフォローアップの継続期間の中央値(範囲)は、酢酸アビラテロン及びオラパリブアームにおいて19.3(0.03~30.59)か月であり、酢酸アビラテロン及びプラセボアームにおいて19.2(0.03~30.16)か月であった。
【0058】
イメージングに基づく無増悪生存期間の利益は、全ての事前規定されたサブグループにわたり観察された(図2)。相互作用項を有さないモデルのフィットを、含まれる全てのサブグループ相互作用を有するモデルと比較するグローバル相互作用検定は10%水準で有意でなく(P=0.41)、サブグループ間の一貫した処置効果を示した。
【0059】
全生存期間データの成熟度は28.6%であったが、全生存期間の延長に向かう傾向が存在した(HR0.86;95% CI、0.66~1.12)(図3A)。酢酸アビラテロン及びオラパリブアームにおいて107例、酢酸アビラテロン及びプラセボアームにおいて121例の死亡が存在した。打ち切りデータを有する患者における疾患進行についてのフォローアップの継続期間の中央値(範囲)は、酢酸アビラテロン及びオラパリブアームにおいて22.2(0.03~32.56)か月であり、酢酸アビラテロン及びプラセボアームにおいて21.8(0.10~30.88)か月であった。
【0060】
TFST(HR0.74;95% CI、0.61~0.90)及びPFS2(HR0.69;95% CI、0.51~0.94)は、最初のイメージングに基づく進行を超えて有効性利益を支持するものであった(図3B及び3C)。
【0061】
TFSTについては、酢酸アビラテロン及びオラパリブアームにおいて最初の後治療を受けた183人の患者、酢酸アビラテロン及びプラセボアームにおいて221人の患者が存在した。最初の後治療(放射線療法を除く)までの時間は、無作為化から、無作為化処置の中止後の最初の後抗癌治療の開始日又は任意の原因による死亡(いずれか早い方)までの時間と定義した。解析の時点で死亡したことが不明、及び後治療を有したことが不明のいずれの患者も、最初の後治療を受けなかったことが既知の最後の時点で打ち切った。
【0062】
PFS2については、酢酸アビラテロン及びオラパリブアームにおいて70例、酢酸アビラテロン及びプラセボアームにおいて94例の2回目の進行又は死亡事象が存在した。解析の時点で2回目の疾患進行事象を有さず、若しくは死亡し、又は2回以上の不来院後に2回目の進行を有し、若しくは死亡した患者は、それらの患者が生存し、2回目の疾患進行を有さないことが既知である最も遅い評価可能な査定時に打ち切った。
【0063】
ベースライン時に測定可能な疾患を有する患者のうち、ORRは、酢酸アビラテロン及びオラパリブアームにおいて58.4%(161人の患者の94人)であったのに対して、酢酸アビラテロン及びプラセボアームにおいて48.1%(160人の患者の77人)であった(オッズ比、1.60;95% CI、1.02~2.53)。
【0064】
確定PSA奏効は酢酸アビラテロン及びオラパリブアームにおいて79.3%であり、酢酸アビラテロン及びプラセボアームにおいて69.2%であった。PSA進行までの時間の中央値は、酢酸アビラテロン及びオラパリブアームにおいて、並びに酢酸アビラテロン及びプラセボアームにおいてそれぞれ12.0か月に対して未到達であった(HR0.55、95% CI 0.45~0.68)。
【0065】
患者報告アウトカム。全ての来院にわたるFACT-P(Functional Assessment of Cancer Therapy-Prostate)Total Scoreのベースラインからの最小二乗平均変化は、酢酸アビラテロン及びオラパリブアームにおいて-4.85であったのに対し、酢酸アビラテロン及びプラセボアームにおいて-4.03であり(差-0.82;95% CI、-3.56~1.92)、オラパリブを酢酸アビラテロン処置に追加した場合に健康関連クオリティーオブライフ(HRQoL)に対する損害が存在しないことを示唆した。
【0066】
安全性。データカットオフ時、曝露の総継続期間の中央値はオラパリブについて17.5か月、プラセボについて15.7か月、酢酸アビラテロン及びオラパリブアームにおける酢酸アビラテロンについて18.2か月、酢酸アビラテロン及びプラセボアームにおける酢酸アビラテロンについて15.7か月であった。
【0067】
酢酸アビラテロン及びオラパリブアームにおける3つの最も一般的な有害事象は、貧血、悪心、及び疲労であった。貧血は、最も一般的なグレード≧3の有害事象であり、酢酸アビラテロン及びオラパリブアームにおいて60人の患者(15.1%)、酢酸アビラテロン及びプラセボアームにおいて13人の患者(3.3%)において生じた。
【0068】
心血管事象(心筋梗塞、鬱血性心不全、及び虚血性脳卒中)の率は、処置アーム間で類似した。さらなる詳細については、表2参照。
【0069】
酢酸アビラテロン及びオラパリブアームにおいて肺塞栓症の26症例(患者の6.5%)、酢酸アビラテロン及びプラセボアームにおいて7症例(患者の1.8%)が存在し;酢酸アビラテロン及びオラパリブアームにおける1つの事象が致死的であったが、試験処置とは無関係とみなした(さらなる情報は補遺を参照)。肺塞栓症は、酢酸アビラテロン及びオラパリブアームにおいて8人(2.0%)の患者のオラパリブ投与中断及び6人(1.5%)の患者の酢酸アビラテロン投与中断をもたらし;処置中止をもたらした事象はなかった。深部静脈血栓症は、酢酸アビラテロン及びオラパリブアーム並びに酢酸アビラテロン及びプラセボアームにおいてそれぞれ7人(1.8%)及び3人(0.8%)の患者において生じた。
【0070】
骨髄異形成症候群又は急性骨髄性白血病の発症は報告されなかった。酢酸アビラテロン及びオラパリブアームにおいて新たな原発性癌の12例の報告(患者の3.0%)、酢酸アビラテロン及びプラセボアームにおいて10例の報告(患者の2.5%)が存在した。試験の各アームの3人(0.8%)の患者は、肺炎を有した(各アームの1人は間質性肺疾患を有した)。
【0071】
試験の酢酸アビラテロン及びオラパリブアームにおいてCOVID-19の33症例(患者の8.3%)、酢酸アビラテロン及びプラセボアームにおいて18症例(患者の4.5%)が存在し、患者の大多数はワクチン未接種であり、ブラジル、トルコ及び米国からの患者であった。グレード≧3の症例は、酢酸アビラテロン及びオラパリブアーム患者並びに酢酸アビラテロン及びプラセボ患者の17人(4.3%)及び8人(2.0%)においてそれぞれ生じた。
【0072】
【表4】
【0073】
【表5】
【0074】
考察
中間解析時、本試験は、アビラテロン及びオラパリブを使用した場合、mCRPCのためのファーストライン処置を受けている患者における酢酸アビラテロン及びプラセボとの比較によりイメージングに基づく無増悪生存期間の増加のその主要目的を満たした。イメージングに基づく無増悪生存期間の遅延は臨床的に関連しており(酢酸アビラテロン及びプラセボよりも約8~11か月長い)、この集団においてこれまで最も長く報告され、第III相ドセタキセル試験において報告された全生存期間の中央値を超過する。
【0075】
酢酸アビラテロンとプレドニゾン/プレドニゾロン及びプラセボの活性対照アームは予測のとおり機能し;
;化学療法を受けなかった進行性mCRPCを有する患者におけるCOU-AA-302試験において、酢酸アビラテロンを用いた放射線学的無増悪生存期間の中央値は、16.5か月であった(Ryan CJ et al. Lancet Oncol 2015;16:152-60)。これは本明細書に報告された16.6か月と匹敵し、酢酸アビラテロン及びオラパリブ処置の組み合わせがイメージングに基づく無増悪生存期間を現在のスタンダードオブケアを超えて有意に延長させたことを説明する。
【0076】
mHSPC病期時のドセタキセルでの前処置及び前処置なし、ベースライン時の転移のタイプ並びにHRRm状態についてのサブグループを含む、全ての事前規定されたサブグループにおけるイメージングに基づく無増悪生存期間の臨床的に有意義な改善が存在した。結果のまとめを表3に提供する。
【0077】
【表6】
【0078】
【表7】
【0079】
【表8】
【0080】
酢酸アビラテロンとの組み合わせのPARP阻害剤ベリパリブ対酢酸アビラテロンの第II相試験において、ベリパリブを酢酸アビラテロン処置に追加した場合、mCRPCを有する患者についての有効性アウトカムの有意差は見出されなかった(Hussain M et al. J Clin Oncol 2018;36:991-9)。本試験からのデータは、HRRmにより選択されない患者におけるイメージングに基づく無増悪生存期間の利益を示し、HRRm及び非HRRmサブグループにおける処置利益を支持する。
【0081】
レトロスペクティブ解析は、PFS2と全生存期間との強力な相関を実証し、全生存期間を査定することができない場合に長期臨床的利益を測定するためのPFS2の使用を支持した。本発明者らの全生存期間データは28.6%の成熟度であったが、オラパリブ及び酢酸アビラテロンについて全生存期間の改善に向かう傾向が存在し、PFS2結果は、有効性アウトカムの長期改善を支持するものであった。両方のエンドポイントについてのカプラン-マイヤー曲線は類似のパターンを示し、分離は2回目の無増悪生存期間又は死亡までの時間についてより早期に生じる。
【0082】
試験の酢酸アビラテロン及びオラパリブアームにおいてより多い有害事象、特に貧血が存在した。しかしながら、酢酸アビラテロン及びオラパリブアームについての有害事象プロファイルは、それらの公知の個々の毒性プロファイルと一貫性を示し、組み合わせ療法がいずれかの薬物の毒性を増加させることを示唆しない。mCRPCにおける酢酸アビラテロン及びオラパリブ対酢酸アビラテロン及びプラセボの第II相試験において、酢酸アビラテロン及びオラパリブアームにおいてより多い患者が心血管事象を有した。安堵できることに、本試験において、心血管事象の差は観察されず、事前に観察された不均衡が第II相試験の小さい集団サイズに起因し得たことを示唆した。試験アーム間で肺事象における数値不均衡が存在し、1つの事象は酢酸アビラテロン及びオラパリブアームにおいて致死的であったが、オラパリブ又は酢酸アビラテロン処置の中止をもたらした事象はなかった。肺事象は、mCRPCにおける他のPARP阻害剤の試験において観察された(TALAPRO-1試験において患者の6%が肺塞栓症を有した)。肺事象における類似の不均衡は、他の腫瘍タイプにおけるオラパリブ試験において観察されなかった。現在、mCRPC集団におけるこの効果の機序は不明である。
【0083】
中間解析時、酢酸アビラテロン及びオラパリブは、ファーストラインセッティングにおいて処置を受けなかった、HRRm状態に無関係に登録されたmCRPCを有する患者において酢酸アビラテロン及びプラセボよりも有意に長いイメージングに基づく無増悪生存期間をもたらした。この中間データカットにおけるTFST、PFS2、全生存期間についての好ましい傾向並びにORR及びPSA奏効の探索的エンドポイントは、全解析対象患者集団における酢酸アビラテロン及びプラセボを超える酢酸アビラテロン及びオラパリブの処置利益をさらに支持する。酢酸アビラテロン及びオラパリブアームにおいてより多い有害事象が存在したが、それらは個々の薬物について予測されたとおりであり、一般に、投与中断及び減量により管理可能であり、HRQoLに対する損害は報告されなかった。これらの結果は、mCRPCを有する患者の広いHRRm非選択集団における酢酸アビラテロンとの組み合わせのオラパリブの臨床的利益を実証する。このような組み合わさった治療効果は、ファーストラインmCRPCセッティングにおける臨床的実務を潜在的に変化させ得た。
【0084】
本明細書に記載の例及び実施形態は、説明を目的とするにすぎないこと及びそれらを考慮した種々の改変又は変更が当業者に示唆され、本出願の主旨及び範囲並びに添付の特許請求の範囲内に組み込まれるべきことが理解される。本明細書に引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
【国際調査報告】