(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-21
(54)【発明の名称】能動補償光学部品及び器具
(51)【国際特許分類】
G02C 7/06 20060101AFI20250214BHJP
G02B 3/10 20060101ALI20250214BHJP
G02B 1/08 20060101ALI20250214BHJP
G02B 1/06 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
G02C7/06
G02B3/10
G02B1/08
G02B1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024541628
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 FI2022050752
(87)【国際公開番号】W WO2023152419
(87)【国際公開日】2023-08-17
(32)【優先日】2022-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523017165
【氏名又は名称】ピクシーレイ オイ
【氏名又は名称原語表記】Pixieray Oy
【住所又は居所原語表記】Karamalmintie 2, 02630 Espoo, Finland
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】メラカリ クラウス
(72)【発明者】
【氏名】メラカリ レベッカ
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BD03
(57)【要約】
光学器具(100、300)は、視線追跡手段(102a、102b)と、能動物質(301)を有する能動光学要素(104a、104b、200)と、屈折率を生成するべく能動物質を制御する手段(106a、106b)とを備える。ユーザの視線方向に基づいて、ユーザが能動光学要素の所定の部分(202)を通して見ていることを検出すると、前記制御手段を駆動する駆動信号を生成し、能動物質を制御して規定の屈折率を生成する。ユーザの視線が所定の部分の周辺部(206)に向かって移動していることを検出すると、別の駆動信号を生成し、ゼロ屈折率と規定屈折率との間の中間屈折率を生成するように能動物質を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学器具であって、
・ 視線追跡手段と;
・ 片眼毎に提供される能動光学要素であって、少なくとも第1の基板と第2の基板の間に封入された能動物質を含み、前記第1の基板及び前記第2の基板は光学的に透明である、能動光学要素と;
・ 複数の屈折率を発生するように、前記能動光学要素内の前記能動物質を制御する制御手段と;
・ プロセッサと;
を備え、前記プロセッサは、
・ 前記視線追跡手段によって収集された視線追跡データを処理して、ユーザの目の視線方向を決定し;
・ 前記能動光学要素が装着されている眼の視線方向に基づいて、前記ユーザが前記能動光学要素の所定の部分を通して見ているか否かを検出し;
・ 前記ユーザが前記能動光学要素の前記所定の部分を通して見ていることが検出されたとき、前記制御手段を駆動する駆動信号であって前記制御手段が前記能動物質を規定屈折率を生成するように制御するための駆動信号を生成し;
・ 前記眼の視線方向の変化に基づいて、前記ユーザの視線が前記能動光学要素の前記所定の部分の周辺部に向かって移動していることを検出し;
・ 前記ユーザの視線が前記能動光学要素の前記所定の部分の周辺部に向かって移動していることが検出されたとき、前記制御手段を駆動する少なくとも1つの別の駆動信号であって前記制御手段が前記能動物質を少なくとも1つの中間屈折率を生成するように制御するための駆動信号を生成する;
ように構成され、ここで前記少なくとも1つの中間屈折率は、ゼロの屈折率と前記規定屈折率との間にある、光学機器。
【請求項2】
請求項1に記載の光学器具であって、前記プロセッサが、
・ ユーザの目の視線方向と、ユーザが現在見ている実世界シーンの深度情報の少なくとも1つに基づいて、ユーザが見ている特定の光学的深度を決定し、
・ ユーザが注視している前記特定の光学的深度に基づいて、複数の規定屈折率の中から、ユーザの特定の眼に対する規定屈折率を選択する、
ように構成される、光学機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学器具であって、前記プロセッサが、
・ 前記能動光学要素のうち、その中心がユーザの所与の眼の瞳孔中心と重なる部分を選択し、
・ 選択した部分を前記能動光学要素の前記所定の部分として識別する、
ように構成される、光学機器。
【請求項4】
前記請求項のいずれかに記載の光学器具であって、前記プロセッサが、
・ 視線追跡データを処理して、ユーザの視線の動きの速度及び/又は加速度を決定し、
・ ユーザの視線の動きの速度及び/又は加速度に基づいて、少なくとも1つの中間屈折率を生成するように、前記能動光学要素内の前記能動物質を制御する前記制御手段を駆動するための少なくとも1つの他の駆動信号を生成する、
ように構成される、光学機器。
【請求項5】
前記請求項のいずれかに記載の光学器具であって、姿勢追跡手段を更に備え、前記プロセッサは、
・ 姿勢追跡手段によって収集された姿勢追跡データを処理して、ユーザの動きの速度及び/又は加速度を決定し、
・ ユーザの動きの速度及び/又は加速度に基づいて、少なくとも1つの中間屈折率を生成するように、前記能動光学要素内の前記能動物質を制御する前記制御手段を駆動するための少なくとも1つの他の駆動信号を生成する、
ように構成される、光学機器。
【請求項6】
前記請求項のいずれかに記載の光学器具であって、片眼毎に、能動光学要素の光路上に配置される受動光学要素を備え、前記受動光学要素は固定屈折率を有し、該固定屈折率は、能動光学要素によって生成される屈折率と共に結合屈折率を生成する、光学機器。
【請求項7】
前記受動光学要素は、前記第1の基板又は前記第2の基板のいずれか1つとして実装される、請求項6に記載の光学器具。
【請求項8】
前記制御手段は、メニスカスの曲率、屈折率、前記能動物質の量の少なくとも1つを制御する、前記請求項のいずれかに記載の光学器具。
【請求項9】
前記請求項のいずれかに記載の光学器具であって、前記制御手段は、
・ 前記第1の基板上に堆積され、前記第1の基板と前記能動物質との間に配置される少なくとも1つの第1の電極と、
・ 前記第2の基板上に堆積され、前記第2の基板と前記能動物質との間に配置される少なくとも1つの第2の電極と、
を備え、ただし前記少なくとも1つの第1の電極と前記少なくとも1つの第2の電極は光学的に透明である、光学機器。
【請求項10】
前記能動物質が電気伝導性液体と電気絶縁性液体とを含み、前記能動物質を制御する際は、前記能動光学要素内の前記能動物質のメニスカスの曲率が制御され、それによって特定の屈折率が生成され、前記メニスカスは、前記導電性液体と前記電気絶縁性液体との間の液液界面である、請求項9に記載の光学器具。
【請求項11】
前記能動物質は液晶材料であり、前記能動物質を制御する際は、前記液晶材料の液晶分子のアライメントが制御され、それによって前記能動光学要素内の前記液晶材料の屈折率が調整されて、特定の屈折率が生成される、請求項9に記載の光学器具。
【請求項12】
前記能動物質は、屈折率が前記第1の基板と前記第2の基板の少なくとも一方の屈折率と一致する流体であり、前記能動物質を制御する際に、前記能動光学要素内の前記流体の量を変化させ、それによって特定の屈折率が生成される、請求項9に記載の光学器具。
【請求項13】
光学器具の製造方法であって、
・ 少なくとも第1の基板と第2の基板の間に能動物質を封入して形成された能動光学要素を用いること、但し前記第1及び第2の基板は光学的に透明である、前記用いることと;
・ 複数の屈折率を発生するように、前記能動光学要素内の前記能動物質を制御する制御手段を用いることと;
・ 視線追跡手段を使うことと;
・ プロセッサを:
・ 前記視線追跡手段によって収集された視線追跡データを処理して、ユーザの目の視線方向を決定し、
・ 前記能動光学要素が装着されている眼の視線方向に基づいて、前記ユーザが前記能動光学要素の所定の部分を通して見ているか否かを検出し、
・ 前記ユーザが前記能動光学要素の前記所定の部分を通して見ていることが検出されたとき、前記制御手段を駆動する駆動信号であって前記制御手段が前記能動物質を規定屈折率を生成するように制御するための駆動信号を生成し、
・ 前記眼の視線方向の変化に基づいて、前記ユーザの視線が前記能動光学要素の前記所定の部分の周辺部に向かって移動していることを検出し、
・ 前記ユーザの視線が前記能動光学要素の前記所定の部分の周辺部に向かって移動していることが検出されたとき、前記制御手段を駆動する少なくとも1つの別の駆動信号であって前記制御手段が前記能動物質を少なくとも1つの中間屈折率を生成するように制御するための駆動信号を生成する、
ように構成することと;
を含み、ここで前記少なくとも1つの中間屈折率は、ゼロの屈折率と前記規定屈折率との間にある、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記プロセッサを、
・ ユーザの目の視線方向と、ユーザが現在見ている実世界シーンの深度情報の少なくとも1つに基づいて、ユーザが見ている特定の光学的深度を決定し、
・ ユーザが注視している前記特定の光学的深度に基づいて、複数の規定屈折率の中から、ユーザの特定の眼に対する規定屈折率を選択する、
ように構成することを含む、方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の方法であって、前記プロセッサを、
・ 前記能動光学要素のうち、その中心がユーザの所与の眼の瞳孔中心と重なる部分を選択し、
・ 選択した部分を前記能動光学要素の前記所定の部分として識別する、
ように構成することを含む、方法。
【請求項16】
請求項13から15のいずれかに記載の方法であって、前記プロセッサを、
・ 視線追跡データを処理して、ユーザの視線の動きの速度及び/又は加速度を決定し、
・ ユーザの視線の動きの速度及び/又は加速度に基づいて、少なくとも1つの中間屈折率を生成するように、前記能動光学要素内の前記能動物質を制御する前記制御手段を駆動するための少なくとも1つの他の駆動信号を生成する、
ように構成することを含む、方法。
【請求項17】
請求項13から16のいずれかに記載の方法であって、
・ 姿勢追跡手段を採用することと;
・ 前記プロセッサを、
・ 姿勢追跡手段によって収集された姿勢追跡データを処理して、ユーザの動きの速度及び/又は加速度を決定し、
・ ユーザの動きの速度及び/又は加速度に基づいて、少なくとも1つの中間屈折率を生成するように、前記能動光学要素内の前記能動物質を制御する前記制御手段を駆動するための少なくとも1つの他の駆動信号を生成する、
ように構成することと;
を含む、方法。
【請求項18】
片眼毎に、能動光学要素の光路上に配置される受動光学要素を採用することを含み、前記受動光学要素は固定屈折率を有し、該固定屈折率は、能動光学要素によって生成される屈折率と共に結合屈折率を生成する、請求項13から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記受動光学要素は、前記第1の基板又は前記第2の基板のいずれか1つとして実装される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記制御手段は、メニスカスの曲率、屈折率、前記能動物質の量の少なくとも1つを制御する、請求項13から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
請求項13から20のいずれかに記載の方法であって、前記能動光学要素は、
・ 第1の基板上に少なくとも1つの第1の電極を堆積させ、
・ 第2の基板上に少なくとも1つの第2の電極を堆積させる、
ことによって形成され、ここで前記少なくとも1つの第1の電極は、前記第1の基板と前記能動物質との間に配置され、前記少なくとも1つの第2の電極は、前記第2の基板と前記能動物質との間に配置され、前記少なくとも1つの第1の電極と前記少なくとも1つの第2の電極は光学的に透明である、方法。
【請求項22】
前記能動物質が電気伝導性液体と電気絶縁性液体とを含み、前記能動物質を制御する際は、前記能動光学要素内の前記能動物質のメニスカスの曲率が制御され、それによって特定の屈折率が生成され、ただし前記メニスカスは、前記電気伝導性液体と前記電気絶縁性液体との間の液液界面である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記能動物質は液晶材料であり、前記能動物質を制御する際は、前記液晶材料の液晶分子のアライメントが制御され、それによって前記能動光学要素内の前記液晶材料の屈折率が調整されて、特定の屈折率が生成される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記能動物質は、屈折率が前記第1の基板と前記第2の基板の少なくとも一方の屈折率と一致する流体であり、前記能動物質を制御する際に、前記能動光学要素内の前記流体の量を変化させ、それによって特定の屈折率が生成される、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示事項(以下、本開示という)は、能動的に補償する光学器具に関する。また本開示は、そのような光学器具の製造方法に関する。
【背景】
【0002】
老眼鏡と矯正用処方レンズ(遠方視用)を組み合わせることは、簡単な光学的課題ではない。従来の光学器具のひとつにバイフォーカルレンズがある。このレンズは読書用と遠方視用の2つの別々の光学面を持つが、これら2つは混じり合うことがない。この別々の光学面の境界を越えて屈折率(optical power)が急激に変化すると、さまざまな歪みや二重像が生じる。
【0003】
別の従来の光学器具には累進レンズを組み込んだものがある。累進レンズは遠方視領域、読書領域、及び遠方視領域から読書領域へと徐々に移行する狭い回廊領域を有する。累進レンズの大きな問題は、レンズの大きな面積が移行のために無駄に使われ、歪んだ視界と貧弱な視力をユーザに与えることである。
【0004】
更に別の従来の光学器具では、電気的に制御可能な読書レンズと遠方視用レンズの組み合わせが組み込まれている。電気的に制御可能な読書レンズは遠方視用レンズよりもはるかに小さく、バイフォーカルレンズと同様に遠方視用レンズの固定部分に配置されている。このような従来技術も、バイフォーカルレンズと同様の課題を抱えている。
【0005】
このため、従来の光学器具に関連する上述の課題を克服する必要性が存在する。
【摘要】
【0006】
本開示は、改良された光学器具を提供しようとするものである。また本開示は、光学器具を製造する方法を提供しようとするものである。そして本開示は、従来の光学器具の既存の問題に対する解決策を提供しようとするものである。
【0007】
第1の捉え方によれば、本開示のある実施形態は、光学器具を提供する。この器具は、
・ 視線追跡手段と;
・ 片眼毎に提供される能動光学要素であって、少なくとも第1の基板と第2の基板の間に封入された能動物質を含み、前記第1の基板及び前記第2の基板は光学的に透明である、能動光学要素と;
・ 複数の屈折率を発生するように、前記能動光学要素内の前記能動物質を制御する制御手段と;
・ プロセッサと;
を備え、前記プロセッサは、
・ 前記視線追跡手段によって収集された視線追跡データを処理して、ユーザの目の視線方向を決定し;
・ 前記能動光学要素が装着されている眼の視線方向に基づいて、前記ユーザが前記能動光学要素の所定の部分を通して見ているか否かを検出し;
・ 前記ユーザが前記能動光学要素の前記所定の部分を通して見ていることが検出されたとき、前記制御手段を駆動する駆動信号であって前記制御手段が前記能動物質を規定屈折率を生成するように制御するための駆動信号を生成し;
・ 前記眼の視線方向の変化に基づいて、前記ユーザの視線が前記能動光学要素の前記所定の部分の周辺部に向かって移動していることを検出し;
・ 前記ユーザの視線が前記能動光学要素の前記所定の部分の周辺部に向かって移動していることが検出されたとき、前記制御手段を駆動する少なくとも1つの別の駆動信号であって前記制御手段が前記能動物質を少なくとも1つの中間屈折率を生成するように制御するための駆動信号を生成する;
ように構成され、ここで前記少なくとも1つの中間屈折率は、ゼロの屈折率と前記規定屈折率との間にある。
【0008】
第2の捉え方によれば、本開示のある実施形態は、光学器具を製造する方法を提供する。この方法は、
・ いずれも光学的に透明である少なくとも第1の基板と第2の基板の間に能動物質を封入して形成された能動光学要素を用いることと;
・ 複数の屈折率を発生するように、前記能動光学要素内の前記能動物質を制御する制御手段を用いることと;
・ 視線追跡手段を用いることと;
・ プロセッサを、
・ 前記視線追跡手段によって収集された視線追跡データを処理して、ユーザの目の視線方向を決定し、
・ 前記能動光学要素が装着されている眼の視線方向に基づいて、前記ユーザが前記能動光学要素の所定の部分を通して見ているか否かを検出し、
・ 前記ユーザが前記能動光学要素の前記所定の部分を通して見ていることが検出されたとき、前記制御手段を駆動する駆動信号であって前記制御手段が前記能動物質を所定の屈折率を生成するように制御するための駆動信号を生成し、
・ 前記眼の視線方向の変化に基づいて、前記ユーザの視線が前記能動光学要素の前記所定の部分の周辺部に向かって移動していることを検出し、
・ 前記ユーザの視線が前記能動光学要素の前記所定の部分の周辺部に向かって移動していることが検出されたとき、前記制御手段を駆動する少なくとも1つの別の駆動信号であって前記制御手段が前記能動物質を少なくとも1つの中間屈折率を生成するように制御するための駆動信号を生成する、
ように構成することと;
を含み、ここで前記少なくとも1つの中間屈折率は、ゼロの屈折率と前記所定の屈折率との間にある。
【0009】
本開示の実施形態は、従来技術における前述の問題を実質的に解消するか、又は少なくとも部分的に対処し、能動光学要素のどの部分がユーザによって使用されているかに基づいて、能動光学要素の全体において異なる屈折率を生成することを可能にし、能動光学要素によって生成される屈折率の滑らかな遷移を可能にする。
【0010】
本願に開示されるものの更なる側面や利点、特徴及び目的は、添付の特許請求の範囲と共に解釈される、添付図面及び例示的実施形態の詳細説明によって明らかにされよう。
【0011】
本開示の特徴は、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく、様々な組み合わせで組み合わせることが可能であることも理解されよう。
【0012】
上記の摘要、及び例示的な実施形態に関する以下の詳細説明は、添付の図面と併せて読むとより良く理解される。本開示を説明する目的で、本開示の例示的構成を図面に示す。ただし本開示は、本明細書に開示される特定の方法及び器具に限定されるものではない。また、図面の縮尺は正しいものではない。同様の要素は可能な限り同一の番号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以下、本開示の実施形態を、例として次の図面を参照しながら説明する。添付の図面において、下線付きの番号は、その番号が位置している場所のアイテム又はその番号に隣接するアイテムを表わすために使用される。下線無しの番号は、当該番号から延びる線によって特定されるアイテムに関連付けられる。番号に下線が無く矢印を伴って書かれている場合、その番号は矢印が示すアイテムを特定するために使用される。
【
図1】本開示の一実施形態に係る光学器具の概略図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る能動光学要素の概略図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る液晶フレネルレンズの概略図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る、複数の電極を配置可能な螺旋状フィロタクティックパターンの例を示している。
【
図6】本開示の一実施形態に係る、光学器具の製造方法のステップを示す。
【実施形態の詳細説明】
【0014】
以下の詳細説明は、本開示の実施形態及びそれらが実施され得る方法を例示する。本開示を実施するための形態をいくつか開示したが、当業者であれば、本開示を実施するための他の形態も実現可能であることを認識するであろう。
【0015】
第1の捉え方によれば、本開示のある実施形態は、光学器具を提供する。この器具は、
・ 視線追跡手段と;
・ 片眼毎に提供される能動光学要素であって、少なくとも第1の基板と第2の基板の間に封入された能動物質を含み、前記第1の基板及び前記第2の基板は光学的に透明である、能動光学要素と;
・ 複数の屈折率を発生するように、前記能動光学要素内の前記能動物質を制御する制御手段と;
・ プロセッサと;
を備え、前記プロセッサは、
・ 前記視線追跡手段によって収集された視線追跡データを処理して、ユーザの目の視線方向を決定し;
・ 前記能動光学要素が装着されている眼の視線方向に基づいて、前記ユーザが前記能動光学要素の所定の部分を通して見ているか否かを検出し;
・ 前記ユーザが前記能動光学要素の前記所定の部分を通して見ていることが検出されたとき、前記制御手段を駆動する駆動信号であって前記制御手段が前記能動物質を規定屈折率を生成するように制御するための駆動信号を生成し;
・ 前記眼の視線方向の変化に基づいて、前記ユーザの視線が前記能動光学要素の前記所定の部分の周辺部に向かって移動していることを検出し;
・ 前記ユーザの視線が前記能動光学要素の前記所定の部分の周辺部に向かって移動していることが検出されたとき、前記制御手段を駆動する少なくとも1つの別の駆動信号であって前記制御手段が前記能動物質を少なくとも1つの中間屈折率を生成するように制御するための駆動信号を生成する;
ように構成され、ここで前記少なくとも1つの中間屈折率は、ゼロの屈折率と前記規定屈折率との間にある。
【0016】
第2の捉え方によれば、本開示のある実施形態は、光学器具を製造する方法を提供する。この方法は、
・ いずれも光学的に透明である少なくとも第1の基板と第2の基板の間に能動物質を封入して形成された能動光学要素を用いることと;
・ 複数の屈折率を発生するように、前記能動光学要素内の前記能動物質を制御する制御手段を用いることと;
・ 視線追跡手段を用いることと;
・ プロセッサを、
・ 前記視線追跡手段によって収集された視線追跡データを処理して、ユーザの目の視線方向を決定し、
・ 前記能動光学要素が装着されている眼の視線方向に基づいて、前記ユーザが前記能動光学要素の所定の部分を通して見ているか否かを検出し、
・ 前記ユーザが前記能動光学要素の前記所定の部分を通して見ていることが検出されたとき、前記制御手段を駆動する駆動信号であって前記制御手段が前記能動物質を所定の屈折率を生成するように制御するための駆動信号を生成し、
・ 前記眼の視線方向の変化に基づいて、前記ユーザの視線が前記能動光学要素の前記所定の部分の周辺部に向かって移動していることを検出し、
・ 前記ユーザの視線が前記能動光学要素の前記所定の部分の周辺部に向かって移動していることが検出されたとき、前記制御手段を駆動する少なくとも1つの別の駆動信号であって前記制御手段が前記能動物質を少なくとも1つの中間屈折率を生成するように制御するための駆動信号を生成する、
ように構成することと;
を含み、ここで前記少なくとも1つの中間屈折率は、ゼロの屈折率と前記所定の屈折率との間にある。
【0017】
実施形態によれば、能動光学要素のどの部分がユーザによって使用されているか(即ち、ユーザが見ている部分)に基づいて、光学器具に様々な屈折率が生成される。能動光学要素全体の屈折率が、能動光学要素の使用されている部分に応じて調整される。ユーザが所定の部分を通して見ているとき、能動光学要素の全体は規定屈折率を生成する。ユーザの視線が所定の部分の周辺に向かって移動しているとき、能動光学要素の全体が少なくとも1つの中間的な屈折率を生成し、それによって能動光学要素によって生成される屈折率の滑らかな遷移を可能とする。この滑らかな遷移は、時間的に徐々に行われ、遷移が目立ちにくくなるという利点がある。これにより、互いに異なる屈折率を有する別々の部分が存在しないため、歪み、プリズム誤差、円筒誤差が低減される。このようにして、光学器具の屈折率は、使用される能動光学要素の部分に基づいて能動的に調整され、それによって輻輳・遠近調節が容易になり、ユーザは再現可能な形で広範囲の距離にある物体に焦点を合わせることができる。
【0018】
能動光学要素の全体で同じ屈折率が生成されるため、ユーザは読書や近くの物体をはっきりと見るための完全なカバーエリアを提供される。(なお、生成される屈折率は使用される能動光学要素の部分に依存する。)また、各時点で同じ屈折率が生成されることで、場所によって異なる屈折率を有する従来の多焦点レンズで見られた歪みが取り除かれる。
【0019】
本明細書及び図面の全体を通じて、「光学器具」という用語は、ユーザの目を覆うように装着される器具を指す。このような光学の例としては、眼鏡、サングラス、スマートグラス、ヘッドマウントディスプレイなどが挙げられる。また、これらに限定されるものではない。
【0020】
プロセッサが、少なくとも視線追跡手段及び制御手段と通信可能に結合されていることが理解されよう。プロセッサは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、又はコントローラのいずれか1つとして実装され得る。一例として、プロセッサは、ASIC(特定用途向け集積回路)チップ又はRISC(Reduced Instruction Set Computer)チップとして実装され得る。
【0021】
本開示全体を通して、「能動光学要素」という用語は、屈折率を変更することができる光学要素を表す。能動光学要素に関して、能動光学要素のどの部分がユーザによって使用されているかに基づいて、能動光学要素の屈折率を時間的に全体的に変化させるべく能動光学要素内の能動物質を制御するために、前述の制御手段が採用される。後に詳述するように、前記制御手段は、例えば電気的、圧電的、磁気的、機械的な手段であってもよく、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0022】
本開示全体を通して、「所定の部分」という用語は、読書中又は近くの物体への焦点合わせ中に使用するための能動光学要素の部分を指す。前記能動光学要素の前記所定の部分は、ユーザが光学器具を必要とする特定の目的に基づいて配置され得る。ユーザは、特定の職業上の用途のために工学器具を必要とする場合がある。一例として、電気技師や自動車技術者は、能動光学要素の上部に「所定の部分」が配置された工学器具を必要とするかもしれない。別の例として、パイロットは、コックピットの頭上パネルだけでなく計器パネルに設けられる制御機器をも見る必要があるため、能動光学要素の上部だけでなく下部にも「所定の部分」が配置された工学器具を必要とするかもしれない。
【0023】
ユーザが光学器具を必要とする特定の目的とは別に、能動光学要素の「所定の部分」はまた、ユーザに固有に配置され得る。換言すれば、「所定の部分」は、ユーザの所与の眼の瞳孔中心の位置に基づいて配置され得る。この点に関し、実施形態によっては、前記プロセッサは、
・ 前記能動光学要素のうち、その中心がユーザの所与の眼の瞳孔中心と重なる部分を選択し、
・ 選択した部分を前記能動光学要素の前記所定の部分として識別する、
ように構成される。
【0024】
この特徴による技術的効果は、光学器具をユーザに合わせてカスタマイズすることを可能とすることであり、それによってユーザに非常に快適で便利な視界を提供することである。「所定の部分」は固定された部分ではないので、同じ光学器具を複数のユーザそれぞれのためにカスタマイズすることができる。このため、本発明による光学器具の再利用性は高い。
【0025】
前記能動光学要素の前記所定の部分は、単純閉曲線として形成され得る。ここで、「単純閉曲線」という用語は、それ自体が交差せず、開始点と同じ点で終了する連結曲線を指す。六角形、八角形、円、楕円などが単純閉曲線の例である。「曲線」という名前にもかかわらず、単純閉曲線は実際には曲線である必要はない。単純閉曲線の中には、線分だけでできているものもあり、多角形として知られている。一方、曲線だけで作られる、単純な閉曲線もある。線分と曲線の両方でできている単純閉曲線もある。
【0026】
さらに実施形態によっては、前記プロセッサは、
・ 視線追跡データを処理して、ユーザの視線の動きの速度及び/又は加速度を決定し、
・ ユーザの視線の動きの速度及び/又は加速度に基づいて、少なくとも1つの中間屈折率を生成するように、前記能動光学要素内の前記能動物質を制御する前記制御手段を駆動するための少なくとも1つの他の駆動信号を生成する、
ように構成される。
【0027】
この特徴により、前記プロセッサが屈折率の遷移速度を制御することが可能となる。またこの特徴により、前記プロセッサは、少なくとも1つの中間屈折率が生成される態様を制御することも可能となる。一例として、前記速度及び/又は加速度が予め定義された閾値を超えない場合、前記少なくとも1つの中間屈折率は、多くとも3つの中間屈折率を含むこととしてもよく、前記速度及び/又は加速度が予め定義された閾値を超える場合、前記少なくとも1つの中間屈折率は、3つ以上の中間屈折率を含むこととしてもよい。このように、前記少なくとも1つの中間屈折率における中間屈折率の数は、ユーザの視線の動きの速度及び/又は加速度に応じて変化してもよい。
【0028】
実施形態によっては、前記光学器具は姿勢追跡手段を更に備え、前記プロセッサは、
・ 姿勢追跡手段によって収集された姿勢追跡データを処理して、ユーザの動きの速度及び/又は加速度を決定し、
・ ユーザの動きの速度及び/又は加速度に基づいて、少なくとも1つの中間屈折率を生成するように、前記能動光学要素内の前記能動物質を制御する前記制御手段を駆動するための少なくとも1つの他の駆動信号を生成する、
ように構成される。
【0029】
この特徴により、前記プロセッサは、屈折率の遷移速度及び/又は少なくとも1つの中間屈折率が生成される態様を制御することが可能となる。例えば、遷移速度及び/又は少なくとも1つの中間屈折率が生成される態様は、ユーザが読書中に歩いている場合と、ユーザが読書中に座っている場合とで異なってもよい。
【0030】
ここで、「姿勢追跡手段」とは、ユーザの姿勢の変化を検出するために、及び/又は当該変化に追従するために、採用される専用の装置を指す。「姿勢」という用語は、位置と向きの両方を包含する。姿勢追跡手段は、光学ベースの追跡システム(例えば、赤外線カメラ、可視光カメラなどを利用するシステム)、加速度計、ジャイロスコープ、慣性測定ユニット(IMU)、タイミング・慣性測定ユニット(TIMU)、全地球測位システム(GPS)追跡システムのうちの少なくとも1つとして実装され得る。姿勢追跡データは、画像、IMU/TIMU値、加速度計データ、ジャイロスコープデータなどの形態であってもよい。
【0031】
「ユーザの視線が所定の部分の周辺に向かって移動しているとき」という表現に関して、ユーザの視線は、任意の方向、すなわち垂直方向、水平方向、斜め方向に移動し得ることが理解されよう。例えば、ユーザの視線は上下に動きうる。別の例として、ユーザの視線は左又は右に向かって、斜め上又は斜め下に動きうる。更に別の例として、ユーザの視線は横に動く可能性がある。しかしこのような場合、視線が横に移動しても、ユーザは読書中である可能性がある。従って、ユーザの視線が横に動いているとき、少なくとも1つの中間屈折率は、任意選択的に、ユーザの視線が所定の部分の周縁部を横切ろうとするときにのみ、生成される。この点で、実施形態によっては、ユーザの視線が横に動いているとき、少なくとも1つの中間屈折率は、ユーザの視線が予め定義された時間内に周縁部を横切ると予測されるときに、任意選択的に生成される。ユーザの視線は、ユーザの視線の動きの速度及び/又は加速度に基づいて、予め定義された期間内に周縁部を横切ると予測することができる。
【0032】
本明細書及び図面の全体を通じて、用語「規定屈折率」は、読書中又は近くの対象物に焦点を合わせる際に使用するための正の屈折率を指す。これは、例えば、ユーザが老眼である場合に必要とされ得る。「規定屈折率」は、ユーザの眼に処方されたものであってもよいし、ユーザの必要性に適合するように選択されてもよい。一例として、「規定屈折率」は、ユーザに処方された読書用の屈折率に基づいて選択され得る。
【0033】
実施形態によっては、前記プロセッサは、
・ ユーザの目の視線方向と、ユーザが現在見ている実世界シーンの深度情報の少なくとも1つに基づいて、ユーザが見ている特定の光学的深度を決定し、
・ ユーザが注視している前記特定の光学的深度に基づいて、複数の規定屈折率の中から、ユーザの特定の眼に対する規定屈折率を選択する、
ように構成される。
【0034】
その結果、ユーザが近くの物体を見ているときでも、異なる光学的深度に対して異なる屈折率を生成することができる。規定屈折率は、例えば、0.75ディオプター、1ディオプター、1.5ディオプター、2ディオプターなどの離散的な屈折率とすることができる。例えばユーザは、1メートルの光学的深度で1ディオプター、0.5メートルの光学的深度で2ディオプターなどを必要とすることがある。
【0035】
本明細書及び図面の全体を通じて、「視線追跡手段」という用語は、ユーザの視線の方向を検出及び/又は追跡するために採用される特別な装置を指す。このような視線追跡は、作動中の光学器具がユーザによって装着されているときに実行される。実施形態によっては、視線追跡手段は、センサを有するコンタクトレンズ、ユーザの眼の特徴を監視するカメラ等によって実装される。そのような特徴は、ユーザの眼の瞳孔の形状、瞳孔の大きさ、ユーザの眼の表面からの少なくとも1つの光源の角膜反射、角膜反射に対する瞳孔の相対位置、ユーザの眼の角に対する瞳孔の相対位置のうちの少なくとも1つを含んでもよい。このような視線追跡手段は本願の技術分野において周知である。
【0036】
実施形態によっては、ユーザが見ている特定の光学的深度は、ユーザの眼の視線方向の収束に基づいて決定される。例えば、この特定の光学的深度は、ユーザの瞳孔間距離に基づいて、三角測量を使用することによって、決定され得る。加えて又は代替的に、特定の光学的深度は、深度情報及びユーザの所与の眼の所与の視線方向に基づいて決定することができる。これに関して、前記深度情報は、深度カメラ、飛行時間(ToF)カメラ、超音波画像センサ、レーダ、光検出及び測距(Lidar)センサのうちの少なくとも1つを使用して収集することができる。
【0037】
さらに実施形態によっては、前記プロセッサは、
・ ユーザの視線が前記能動光学要素の前記所定の部分の外周の外側にあるときを検出し、
・ ユーザの視線が前記能動光学要素の前記所定の部分の外周の外側にあることが検出されたとき、前記能動光学要素内の前記能動物質を制御する前記制御手段を駆動するための別の駆動信号であって、基本屈折率を生成するための駆動信号を生成する、
ように構成される。
【0038】
前記基本屈折率は、ユーザの必要性に応じて、屈折率ゼロであるか、負の屈折率とすることができる。一例として、ユーザが老眼のみを有し、能動光学要素の残りの部分(即ち、所定の部分の外側)を通して見ている場合、ユーザが遠くの物体を明瞭に見ることができるように、ゼロの屈折率が生成される。別の例として、ユーザが老眼と近視の両方を持ち、能動光学要素の残りの部分を通して見ている場合、遠方視を容易にするために、負の屈折率が生成される。これらの例では、ユーザが能動光学要素の残りの部分を通して見ているときに生成されるべき屈折率(負の屈折率であろうと屈折率ゼロであろうと)は、ユーザが遠くの物体をはっきりと見ることを可能にする。この屈折率は、典型的な一日の間、正の屈折率(すなわち規定屈折率)よりも頻繁に使用されることが要求されることが多い。以下、この屈折率を「基本屈折率」という。
【0039】
更に、少なくとも1つの中間屈折率は、ある実施形態では1つの中間屈折率のみからなり、他の実施形態では複数の中間屈折率からなる。実施形態によっては、規定屈折率から基本屈折率への遷移が行われているか、又は基本屈折率から規定屈折率への遷移が行われているかに応じて、複数の中間屈折率が降順又は昇順で生成される。降順又は昇順で複数の中間屈折率を生成することにより、屈折率が連続的かつ緩やかに変化することが保証される。その結果、屈折率の変化はユーザにとって目立ちにくくなる。
【0040】
本明細書及び図面の全体を通じて、「能動物質」という用語は、特定の時点において特定の屈折率を生成するように制御される物質を指す。この特定の屈折率は、ユーザによって使用される能動光学要素の部分に依存する。能動光学要素において「能動物質を制御する」とは、能動光学要素において、能動物質のメニスカスの曲率、能動物質の屈折率、能動物質の量の少なくとも1つを制御できることを意味する。
【0041】
この点に関して、実施形態によっては、前述の制御手段は、メニスカスの曲率、屈折率、能動物質の量のうちの少なくとも1つを制御するために採用される。実施形態によっては、能動物質のメニスカスの曲率を制御することにより、特定の屈折率が生成される。実施形態によっては、前記特定の屈折率は、能動物質と基板(即ち、第1の基板と第2の基板)との間に相対的な屈折率を作り出すことによって作り出される。更に他の実施形態では、前記特定の屈折率は、能動物質を除去し、能動物質を空気で置換することにより、空気と基板(即ち、第1の基板と第2の基板)との間に相対屈折率を生じさせることにより生成される。これら全ての実施形態において、前記制御手段を駆動するための所定の駆動信号は、生成されるべき特定の屈折率に基づいて生成される。本開示全体を通して、「特定の屈折率」という用語は、前記規定屈折率と、前記少なくとも1つの中間屈折率と、実施形態によっては前記基本屈折率とを包含する。
【0042】
実施形態によっては、前記制御手段は、
・ 前記第1の基板上に堆積され、前記第1の基板と前記能動物質との間に配置される少なくとも1つの第1の電極と、
・ 前記第2の基板上に堆積され、前記第2の基板と前記能動物質との間に配置される少なくとも1つの第2の電極と、
を備え、
ただし前記少なくとも1つの第1の電極と前記少なくとも1つの第2の電極は光学的に透明である。
【0043】
実施形態によっては、前記少なくとも1つの第1の電極は、前記第1の基板上に透明電極層として堆積される。このような場合、前記透明電極層は前記第1の基板の表面全体を覆い、前記透明電極層は前記第1の基板の表面と前記能動物質との間に配置される。あるいは、実施形態によっては、前記少なくとも1つの第1電極は、非連続の透明電極層として堆積される複数の第1電極を含む。前記非連続の透明電極層は、前記第1の基板上で、互いに離れて繋がっていない複数のセグメントを含む。
【0044】
実施形態によっては、前記少なくとも1つの第2の電極は、前記第2の基板上に透明電極層として堆積される。あるいは、実施形態によっては、前記少なくとも1つの第2電極は、非連続の透明電極層として堆積される複数の第2電極を含む。前記非連続の透明電極層は、前記第2の基板上で、互いに離れて繋がっていない複数のセグメントを含む。前記複数の第2電極は、前記複数の第1電極のそれぞれのものと整列されてもよい。
【0045】
このような電極層は、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)や、ZnOにアルミニウムや水素をドープしたドープ酸化亜鉛(ZnO)で作られてもよい。あるいは、このような電極層は、導電性ポリマーやグラフェンで形成されてもよい。
【0046】
更に、前記光学器具は、前述の電極に加えて、プロセッサに電力を供給するための電源を備える。電源及びプロセッサは、光学器具の任意の適切な位置に搭載されうる。一例として、前記光学器具が眼鏡として実施される場合、電源及びプロセッサは、眼鏡のフレームに搭載されてもよい。電源及び/又はプロセッサは、フレームのブリッジ又はテンプルの端部に配置されてもよい。
【0047】
特定の屈折率を生成するために、前記能動光学要素の前記能動物質は、前記少なくとも1つの第1の電極と前記少なくとも1つの第2の電極との間に電位差を発生させることによって制御される。実施形態によっては、電位差ゼロが生成されるとき(即ち、前記少なくとも1つの第1の電極と前記少なくとも1つの第2の電極の両方に同じ電圧を印加するとき)、能動光学要素は「OFF」モードにあり、能動光学要素は基本屈折率を生成する。このような実施形態において、能動光学要素は、生成されるべき特定の屈折率に応じて、前記少なくとも1つの第1の電極と前記少なくとも1つの第2の電極との間に所定の電位差が生成されるとき、前記特定の屈折率が生成される「ON」モードになる。この点に関して、前記少なくとも1つの第1の電極と前記少なくとも1つの第2の電極には、その間に様々な電位差が生成されるように、様々な電圧が供給される。
【0048】
例示として、光学器具のいくつかの異なる実装形態を紹介する。これらの実装形態のいくつかでは、(能動物質を制御するための)前記制御手段は電気的であり、他の実装形態では、前記制御手段は圧電的、磁気的、機械的、又はこれらの組み合わせである。
【0049】
第1の実装形態では、前記能動物質が電気伝導性液体と電気絶縁性液体とを含み、前記能動物質を制御する際は、前記能動光学要素内の前記能動物質のメニスカス(meniscus)の曲率が制御される。それによって特定の屈折率が生成される。この場合、メニスカスは、導電性液体と電気絶縁性液体との間の液液界面である。電気伝導性液体と電気絶縁性液体とは屈折率が異なるため、メニスカスの特定の曲率が、特定の屈折率を生成する。
【0050】
第1の実装形態は、電位差の変化により能動物質のメニスカスの曲率が変化する、エレクトロウェッティングの原理で動作する。従って、「特定の屈折率」は、少なくとも1つの第1の電極と少なくとも1つの第2の電極との間に発生する電位差の量に基づいて生成される。更に、第1の実装形態では、少なくとも1つの第1の電極と少なくとも1つの第2の電極の一方は能動物質と接触しており、少なくとも1つの第1の電極と少なくとも1つの第2の電極の他方は、その上に形成された絶縁層によって能動物質から絶縁されている。
【0051】
第2の実装形態では、前記能動物質は液晶材料であり、前記能動物質を制御する際は、液晶材料の液晶分子のアライメントが制御される。それによって能動光学要素内の液晶材料の屈折率が調整され、それによって特定の屈折率が生成される。能動光学要素内の液晶分子の配列は、少なくとも1つの第1の電極と少なくとも1つの第2の電極との間に生成される電位差の変化によって変化する。
【0052】
実施形態によっては、前記能動光学要素は、前記第1の基板と前記少なくとも1つの第1の電極との間に配置された第1の誘電体層と、前記第2の基板と前記少なくとも1つの第2の電極との間に配置された第2の誘電体層とを備える。ここで、第1の誘電体層及び第2の誘電体層は、例えば、酸化シリコン(SiOx)でできていてもよい。更に、実施形態によっては、前記能動光学要素は、前記第1の基板と前記第2の基板との間に液晶材料を封止するポリマー製の封止外縁部を更に備える。封止外縁部は、液晶材料を内部に保持するだけでなく、液晶材料を空気(主に酸素)及び埃(周囲雰囲気)から保護し、それによって能動光学要素の信頼性の高い動作を確保する。
【0053】
第2の実装形態は3つのバリエーションを有している。1つは屈折率マッチングの原理で動作する副実装形態'A'、もう1つは液晶フレネルレンズの原理で動作する副実装形態'B'、もう1つは回折フレネルレンズの原理で動作する副実装形態'C'である。
【0054】
副実装形態'A'のいくつかの例が、
図3A~3Cと関連して図示されている。第2の実装形態の副実装形態'A'において、第1の基板と第2の基板の少なくとも一方は、同心円状の複数の溝を有するフレネルレンズとして実装される。これら同心円状の溝は、第1の基板と第2の基板との間に封入された液晶材料に面している。以下、便宜上、フレネルレンズとして実装される第1の基板と第2の基板の少なくとも一方を「フレネル基板」という。同心円状の溝の形状は、屈折性でも回折性でもよい。
【0055】
副実装形態'A'では、フレネル基板の同心円状の溝は、曲率が規定屈折率、即ち、ユーザの老眼に対する正の屈折率に対応する平凸レンズの特性をエミュレートするように形成することができる。液晶材料の屈折率をフレネル基板の屈折率と一致するように調整すると、液晶材料とフレネル基板の同心円状の溝との間の界面が消失する。すると、能動光学要素は基本屈折率を発生することになるが、これはユーザの必要に応じて負の屈折率又は屈折率ゼロであってもよい。能動光学要素内の液晶材料の屈折率をフレネル基板の屈折率と異なるように(例えばフレネル基板の屈折率より低くなるように)調整すると、液晶材料とフレネル基板の同心円状の溝との間の界面が再び現れ、「規定屈折率」が生成される。能動光学要素内の液晶材料の屈折率は、規定屈折率が生成される屈折率と、フレネル基板の屈折率との間になるように調整されることが好ましい。それによって、少なくとも1つの中間屈折率が生成される。これにより、規定屈折率から基本屈折率への切り替え時、及び基本屈折率から規定屈折率への切り替え時のスムーズな移行が可能になる。
【0056】
副実装形態'A'でフレネル基板を採用する技術的利点は、液晶材料の薄い層で能動光学要素を動作させることができることである。液晶材料の層が薄いほど、液晶材料の屈折率を調整するのに必要な電位差は小さくなる。従って、能動光学要素の電力要件が大幅に低減される。
【0057】
第2の実装形態の副実装形態'B'では、能動光学要素は液晶フレネルレンズとして実施される。液晶フレネルレンズは複数の同心ゾーンを有する。これらの同心ゾーンは、対応する第2電極にそれぞれ異なる電圧を印加することにより、当該同心ゾーンにおける液晶材料の屈折率を調整することによって全体的に形成される。言い換えれば、これらの同心ゾーンは物理的な溝ではなく、液晶材料自体に異なる電圧を印加することによって形成される。これらの同心ゾーンの液晶材料の屈折率は、特定の屈折率(規定屈折率、少なくとも1つの中間屈折率、基本屈折率のいずれか1つ)を生成するように調整される。このような液晶フレネルレンズの一例が
図4と共に示されている。
【0058】
基本屈折率が負の屈折率の場合、液晶フレネルレンズの同心ゾーンは、ユーザの視線が所定の部分の周辺から外れたときに、曲率が基本屈折率に対応する平凹レンズの特性をエミュレートするように形成することができる。また、液晶フレネルレンズの同心ゾーンは、ユーザが所定の部分を通して見ているときに、曲率が規定屈折率(すなわち正の屈折率)に対応する平凸レンズの特性をエミュレートするように形成することができる。そして、ユーザの視線が所定の部分の周辺に向かって移動している場合は、同心ゾーンの液晶材料の屈折率は、少なくとも1つの中間的な屈折率を生成するように調整される。
【0059】
前記同心ゾーンを形成できるように、実装形態によっては、複数の第1電極及び/又は複数の第2電極が、螺旋状フィロタクティックパターンの形態で配置されうる。このような螺旋状フィロタクティックパターンは、ヒマワリの種がヒマワリの中でどのように配置されるかに似ている。このような螺旋状フィロタクティックパターンの一例が、
図5を用いて紹介されている。複数の第1電極及び/又は複数の第2電極を螺旋状フィロタクティックパターンの形に配置する技術的利点は、前記同心ゾーンの数と厚さを臨機応変に変更できることである。
【0060】
このように、複数の第2電極の配置や形状、また、複数の第1電極及び/又は複数の第2電極に印加する電圧によって、能動光学要素に様々な屈折率を生じさせることができる。
【0061】
第2の実装形態の副実装形態'C'では、能動光学要素は、屈折率を変化させることができる回折ゾーンのマトリックスを有する。所与の回折ゾーンにおいて、液晶材料の屈折率は、入射光ビームの位相遅れ(phase retardation)を引き起こすように調整される。能動光学要素を回折フレネルレンズとして動作させるために、回折ゾーンの液晶材料は、様々な遅延光波面(delayed light wavefront)を生成するように制御される。
【0062】
実装形態によっては、副実装形態'C'において、能動光学要素は、第1の基板及び第2の基板に加えて、少なくとも1つの他の基板を有する。このような場合、液晶材料の別個の層が、第2の基板と少なくとも1つの他の基板との間に封入される。更に、第2の基板と少なくとも1つの他の基板に、少なくとも1対の電極が堆積される。この少なくとも1対の電極は、前記少なくとも1つの第1の電極及び前記少なくとも1つの第2の電極の実装方法と同様の方法で実装することができる。対応する電極を用いて屈折率を調整できる複数の液晶材料層を有することの技術的利点は、能動光学要素を多相の空間光変調器(SLM)として機能させることを可能にすることである。
【0063】
このように、能動光学要素は、液晶フレネルレンズと回折フレネルレンズのいずれかとして実装することができる。
【0064】
更に、第3の実装形態では、前記能動物質は、屈折率が前記第1の基板と前記第2の基板の少なくとも一方の屈折率と一致する流体であり、当該能動物質を制御する際に、前記能動光学要素内の流体の量を変化させ、それによって特定の屈折率を生成する。第3の実装形態は、屈折率整合の原理で動作する。
【0065】
第3の実装形態では、前記能動光学要素は、第1の基板及び第2の基板に加えて、少なくとも1つの他の基板を有する。このような場合、流体の別個の層が、第2の基板と前記少なくとも1つの他の基板との間に封入される。第2の基板は、その凸面が第1の基板と第2の基板との間に封入された流体に面し、その曲率が第1の正の屈折率に対応する、平凸レンズとして実装され得る。一方、前記少なくとも1つの他の基板は、その凸面が第2の基板と前記少なくとも1つの他の基板との間に封入された流体に面し、その曲率が第2の正の屈折率に対応する、少なくとも1つの他の平凸レンズとして実装され得る。あるいは、第2の基板と少なくとも1つの他の基板は、同心円状の複数の溝を有するフレネルレンズとして実装することができる。これら同心円状の溝は流体に面している。その場合、フレネル基板の同心円状の溝は、前述の平凸レンズのそれぞれの特性をエミュレートするように形成される。
【0066】
隣接する一対の基板間に別々の流体層を設けることで、屈折率を段階的に変化させることができる。隣接する基板のペア(注:ペアの数は複数である)の間に流体が充填されると、流体の屈折率が隣接する基板の少なくとも一方の屈折率と一致するため、流体と基板との間の界面が消失する。すると、能動光学要素は基本屈折率を発生することになるが、これはユーザの必要に応じて負の屈折率又は屈折率ゼロであってもよい。複数の基板ペアのうちの少なくとも1つペアの間から流体が除去されると、除去された流体が空気で置き換わる。空気の屈折率は流体の屈折率よりも低いため、空気と隣接する基板の少なくとも一方の間の界面が再び現れ、それによって特定の屈折率が生じる。一例として、空気の屈折率が1であるのに対して、前記流体と、前記他の少なくとも1つの基板の屈折率は1.4であり、前記第1の基板と前記第2の基板の少なくとも一方の屈折率も1.4とすることができる。これにより、相対屈折率を0.4とすることができる。
【0067】
一例として、能動光学要素が2組の隣接基板ペアを有し、一方のペアが1.5ディオプターを、もう一方のペアが0.75ディオプターを生成できる場合、屈折率は、0ディオプター、0.75ディオプター、1.5ディオプター、2.25ディオプターに、段階的に変更できる。なお、実装形態によっては、隣接する基板のペアは2組以上あり得ることが理解されよう。
【0068】
第3の実装形態では、(能動物質を制御するための)制御手段は、流体の量を変化させるために利用される。実装形態によっては、前記制御手段は、能動光学要素と少なくとも1つの流体リザーバとを接続する少なくとも1つの流体チャネルを通じて毛細管現象によって流体を除去するために採用される、複数の毛細管を備える。
【0069】
実装形態によっては、前記制御手段は、それぞれ対応する毛細管を制御するために採用される複数のバルブを備える。これらのバルブは、アクチュエータによって制御され得る機械的バルブであってもよい。これらのアクチュエータは、例えば、電磁アクチュエータ、圧電アクチュエータ、メモリメタルアクチュエータ、電気活性ポリマー、電気泳動アクチュエータ、又は類似のものとして実装され得る。あるいは、実装形態によっては、前記制御手段は、電気を用いて少なくとも1つの流体流路内の表面エネルギーを制御するための別の技術を採用する。
【0070】
第1の基板の屈折率が第2の基板の屈折率と同じである実装形態も異なる実装形態も有り得る。能動光学要素によって生成されるべき基本屈折率は、第1の基板及び/又は第2の基板の表面の曲率に依存する。第1の基板及び/又は第2の基板は、ガラス、ポリカーボネート、プラスチック、高指数プラスチックのいずれか1つで作ることができる。当業者は、本開示の実施形態の多くの変形例、代替例、及び修正例を認識できるであろう。
【0071】
実施形態によっては、前記光学器具は、片眼毎に、能動光学要素の光路上に配置される受動光学要素を備える。この受動光学要素は固定の屈折率を有する。そして、この受動光学要素の固定屈折率は、能動光学要素によって生成される特定の屈折率と合わさって、結合屈折率を生成する。ここで、結合屈折率とは、受動光学要素の固定屈折率と能動光学要素による屈折率の和を指す。実施形態によっては、受動光学要素の中心は、ユーザの特定の眼の瞳孔中心と位置合わせされる。
【0072】
本明細書及び図面の全体を通じて、「受動光学要素」という用語は、屈折率が変更できない光学要素を指す。言い換えれば、受動光学要素の屈折率は固定である。実施形態によっては、この固定屈折率は、ユーザの特定の眼の遠方視力に規定された屈折率に対応する。前記規定屈折率は正の屈折率であるのに対し、前記固定屈折率は負の屈折率又は屈折率ゼロのいずれかであることが理解されよう。
【0073】
この受動光学要素は、前述の実施形態の少なくともいくつかに採用することができる。例えば、(エレクトロウェッティングの原理に基づく)前記第1の実装形態、前記第2の実装形態の'(屈折率整合の原理に基づく)前記副実装形態'A、前記第2の実装形態の(回折フレネルレンズの原理に基づく)前記副実装形態'C'、(屈折率整合の原理に基づく)前記第3の実装形態に、採用することができる。実施形態によっては、前記受動光学要素は、前記第1の基板又は前記第2の基板のいずれかとして実装される。
【0074】
実施形態によっては、前記能動光学要素が「OFF」に切り替えられると、該能動光学要素は屈折率を生成しない。このような実施形態では、受動光学要素の固定屈折率と能動光学要素の屈折率の組み合わせによって生成される結合屈折率を、基本屈折率を生成するために採用することができる。一例として、第1の基板と第2の基板のうち、光学器具の使用中に光がユーザの眼へと出射する基板を平凹とし、その表面を、曲率が基本屈折率に対応するようにしてもよい。前述のように、基本屈折率は、ユーザの必要性に応じてゼロや負であってもよい。従って、受動光学要素は、ユーザの近視の状態を補償するために採用され得る。しかし、ユーザが読書力のみを必要とする場合には、受動光学要素は屈折率がゼロであってもよい。
【0075】
実施形態によっては、受動光学要素は、例えば、前述のフレネル基板のような同心ゾーンを有するフレネルレンズとして実施することができる。このような場合、結合屈折率は、ユーザの老眼のための正の屈折率を生成するために採用される。
【0076】
本開示はまた、前述のような、第2の捉え方の方法に関する。前述の第1の捉え方に関して上に開示された様々な実施形態及び変形例は、本方法に準用される。
【0077】
実施形態によっては、本方法は、プロセッサを、
・ ユーザの目の視線方向と、ユーザが現在見ている実世界シーンの深度情報の少なくとも1つに基づいて、ユーザが見ている特定の光学的深度を決定し、
・ ユーザが注視している前記特定の光学的深度に基づいて、複数の規定屈折率の中から、ユーザの特定の眼に対する規定屈折率を選択する、
ように構成することを含む。
【0078】
実施形態によっては、前記方法は、前記プロセッサを、
・ 能動光学要素のうち、その中心がユーザの所与の眼の瞳孔中心と重なる部分を選択し、
・ 選択した部分を前記能動光学要素の所定の部分として識別する、
ように構成することを含む。
【0079】
更に実施形態によっては、前記方法は、前記プロセッサを、
・ 視線追跡データを処理して、ユーザの視線の動きの速度及び/又は加速度を決定し、
・ ユーザの視線の動きの速度及び/又は加速度に基づいて、少なくとも1つの中間屈折率を生成するように、前記能動光学要素内の前記能動物質を制御する前記制御手段を駆動するための少なくとも1つの他の駆動信号を生成する、
ように構成することを含む。
【0080】
更に実施形態によっては、前記方法は更に、
・ 姿勢追跡手段を採用することと;
・ 前記プロセッサを、
・ 前記姿勢追跡手段によって収集された姿勢追跡データを処理して、ユーザの動きの速度及び/又は加速度を決定し、
・ ユーザの動きの速度及び/又は加速度に基づいて、少なくとも1つの中間屈折率を生成するように、前記能動光学要素内の前記能動物質を制御する前記制御手段を駆動するための少なくとも1つの他の駆動信号を生成する、
ように構成することを含む。
【0081】
更に、実施形態によっては、前記方法は、片眼毎に、能動光学要素の光路上に配置される受動光学要素を採用することを含む。この受動光学要素は固定の屈折率を有する。そして、この受動光学要素の固定屈折率は、能動光学要素によって生成される特定の屈折率と共に結合屈折率を生成する。実施形態によっては、前記受動光学要素は、前記第1の基板又は前記第2の基板のいずれかとして実装される。
【0082】
更に、前記方法において、前記制御手段は、メニスカスの曲率、屈折率、前記能動物質の量の少なくとも1つを制御するために採用される。
【0083】
更に、実施形態によっては、前記能動光学要素は、
・ 第1の基板上に少なくとも1つの第1の電極を堆積させ、
・ 第2の基板上に少なくとも1つの第2の電極を堆積させる、
ことによって、形成される。
【0084】
ここで前記少なくとも1つの第1の電極は、前記第1の基板と前記能動物質との間に配置され、前記少なくとも1つの第2の電極は、前記第2の基板と前記能動物質との間に配置され、前記少なくとも1つの第1の電極と前記少なくとも1つの第2の電極は光学的に透明である。
【0085】
第1の実装形態では、前記能動物質が電気伝導性液体と電気絶縁性液体とを含み、前記能動物質を制御する際は、前記能動光学要素内の前記能動物質のメニスカスの曲率が制御される。それによって特定の屈折率が生成される。ここでメニスカスとは、前記電気伝導性液体と前記電気絶縁性液体との間の液体-液体界面である。
【0086】
第2の実装形態では、前記能動物質は液晶材料であり、前記能動物質を制御する際は、液晶材料の液晶分子のアライメントが制御される。それによって能動光学要素内の液晶材料の屈折率が調整され、それによって特定の屈折率が生成される。
【0087】
第3の実装形態では、前記能動物質は、屈折率が前記第1の基板と前記第2の基板の少なくとも一方の屈折率と一致する流体であり、当該能動物質を制御する際に、前記能動光学要素内の前記流体の量を変化させ、それによって特定の屈折率を生成する。
【0088】
[図面の詳細説明]
【0089】
図1は、本開示の一実施形態による光学器具100の概略図である。光学器具100は、視線追跡手段と、片眼毎に能動光学要素と、能動光学要素内の能動物質を制御する手段と、プロセッサ108とを備える。視線追跡手段は、それぞれ第1の眼用及び第2の眼用である、視線追跡手段102a及び102bとして描かれている。能動光学要素は、それぞれ第1の眼用及び第2の眼用である、能動光学要素104a及び104bとして描かれている。制御手段は、それぞれ第1の眼用及び第2の眼用の手段106a及び106bとして描かれている。プロセッサ108は、前述の第1の捉え方による処理を実行するように構成される。
【0090】
図2は、本開示の一実施形態による能動光学要素200の概略図である。能動光学要素200は、所定の部分202と残りの部分204とを有する。ユーザが所定の部分202を通して見ていることが検出されると、能動光学要素200の全体において規定屈折率が生成される。ユーザの視線が所定の部分202の周辺部206に向かって移動していることが検出されると、能動光学要素200の全体において少なくとも1つの中間屈折率が生成される。ユーザが残りの部分204を通して見ていることが検出されると、能動光学要素200の全体において基本屈折率が生成される。
【0091】
図2は単なる例示であり、本願の特許請求の範囲を不当に制限すべきではない。能動光学要素200の具体的な実装形態は、例として提供されたものであり、所定の部分202の形状、サイズ又は位置を特定のものに限定するものであると理解されるべきではなく、また、能動光学要素200を特定の形状やサイズを特定のものに限定するものであると理解されるべきではない。当業者は、本開示の実施形態の多くの変形例、代替例、及び修正例を認識できるであろう。
図2において、所定の部分202は、能動光学要素200上に物理的にマークされていないことを示すために点線で示されている。
【0092】
次に
図3A~3Cを参照すると、本開示のいくつかの実施形態に従う光学器具300の断面図が図示されている。光学器具300は、第1の基板302と第2の基板303との間に封入された能動物質301を有する能動光学要素を備える。実施形態によっては、能動光学要素は封止外縁部304を備える。能動物質301と第1の基板302との間には少なくとも1つの第1の電極305が配置され、能動物質301と第2の基板303との間には少なくとも1つの第2の電極306が配置される。
【0093】
図3Aに示すように、第1の基板302は平凸レンズとして実装されることができ、その凸面は能動物質301に面し、その曲率は、規定屈折率、すなわちユーザの老眼のための正の屈折率に対応する。あるいは、
図3B,3Cに示すように、第1の基板302は、同心円状の複数の溝を有するフレネルレンズとして実施することも可能である。これらの同心円状の溝は能動物質301に面している。この場合、フレネル基板の同心円状の溝は、前述の平凸レンズの特性をエミュレートするように形成される。
【0094】
実施形態によっては、光学器具300は、固定的な屈折率を有する受動光学要素を更に備える。受動光学要素は、第1の基板301、第2の基板303のいずれか1つとして実装することができる。
図3Cを参照すると、第2の基板303は受動光学要素として機能し、その曲率が、負の屈折率である基本屈折率に対応する平凹レンズとして実装される。
【0095】
屈折率整合の原理で動作し、能動物質301が液晶材料である実施形態では、液晶材料の屈折率を調整して、特定の屈折率を生成することができる。液晶材料の屈折率が第1の基板302の屈折率と一致すると、能動物質301と第1の基板302との間の界面が消失する。その結果、光学器具300は基本屈折率を生成する。
【0096】
屈折率整合の原理で動作し、能動物質301が屈折率が第1の基板302の屈折率と一致する流体である別の実施形態では、光学器具300は、流体が能動光学要素内に充填されているときに、基本屈折率を生成する。流体が除去され空気で置換されると、空気と第1の基板302との間の界面が再び現れ、それによって特定の屈折率が生成される。
【0097】
図3A~3Cは単なる例示であり、本願の特許請求の範囲を不当に制限すべきではない。光学器具300の特定の実施形態は、例として提供されたものであり、第1の基板、第2の基板、少なくとも1つの第1の電極及び複数の第2の電極の特定の配置に限定するものであると解釈されるべきではなく、また、第1の基板及び第2の基板の特定の曲率に限定するものであると解釈されるべきではない。当業者は、本開示の実施形態の多くの変形例、代替例、及び修正例を認識できるであろう。
【0098】
次に
図4を参照すると、本開示の実施形態による液晶フレネルレンズ400の概略が図示されている。液晶フレネルレンズ400は、フレネルレンズの特性をエミュレートするために、液晶材料の屈折率を様々に調節するための、複数の同心ゾーン402a~fを備える。
図4の下部に示す線A1-A2を横切る液晶フレネルレンズ400の断面404は、複数の同心ゾーン402a-fにおける液晶分子の配列を制御することにより、液晶材料の屈折率が調整されることを示している。
【0099】
図5は、本開示の一実施形態に係る、複数の電極を配置可能な螺旋状フィロタクティックパターンの例を示している。
【0100】
図4及び
図5は単なる例であり、本願の特許請求の範囲を不当に限定すべきではない。当業者は、本開示の実施形態の多くの変形例、代替例、及び修正例を認識できるであろう。
【0101】
図6を参照すると、本開示の実施形態による、光学装置を製造する方法のステップが図示されている。ステップ602において、少なくとも第1の基板と第2の基板との間に能動物質を封入することによって、能動光学要素が形成される。第1の基板及び第2の基板は光学的に透明である。ステップ604において、能動光学要素内の能動物質を制御する手段を用いる。ステップ606で、視線追跡手段を用いる。ステップ608では、プロセッサが、前述の第1の捉え方に従う様々な処理を実行するように構成される。
【0102】
上述のステップは単なる例示であって、代替的なステップも含むことができる。すなわち、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、1つ又は複数のステップを加えたり、1つ又は複数のステップを除いたり、1つ又は複数のステップを別の順序で実行したりすることができる。
【0103】
添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく、前述の本開示の実施形態を変更することが可能である。本開示を説明及び請求するために使用される「含む」、「備える」、「組み込む」、「有する」、「である」などの表現は、非排他的に解釈されることを意図しており、すなわち、明示的に記載されていない項目や部品、構成要素が存在することを許容する。要素が複数であることを明示しなかったとしても、当該要素が複数存在することを妨げない。本明細書で使用される「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、順序や量、重要性を示すものではなく、ある要素を他の要素と区別するために使用されているに過ぎない。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学器具であって、
・ 視線追跡手段と;
・ 片眼毎に提供される能動光学要素であって、
所定の部分及び残りの部分を有し、少なくとも第1の基板と第2の基板の間に封入された能動物質を含み、前記第1の基板及び前記第2の基板は光学的に透明である、能動光学要素と;
・ 複数の屈折率を発生するように、前記能動光学要素内の前記能動物質を制御する制御手段と;
・ プロセッサと;
を備え、
前記所定の部分は読書中や近くの物体に焦点を合わせるときに使用される前記能動光学素子の部分であり、前記プロセッサは、
・ 前記視線追跡手段によって収集された視線追跡データを処理して、ユーザの目の視線方向を決定し;
・ 前記能動光学要素が装着されている眼の視線方向に基づいて、前記ユーザが前記能動光学要素の
前記所定の部分を通して見ているか否かを検出し;
・ 前記ユーザが前記能動光学要素の前記所定の部分を通して見ていることが検出されたとき、前記制御手段を駆動する駆動信号であって前記制御手段が前記能動物質を規定屈折率を生成するように制御するための駆動信号を生成し;
・ 前記眼の視線方向の変化に基づいて、前記ユーザの視線が前記能動光学要素の前記所定の部分の周辺部に向かって移動していることを検出し;
・ 前記ユーザの視線が前記能動光学要素の前記所定の部分の周辺部に向かって移動していることが検出されたとき、前記制御手段を駆動する少なくとも1つの別の駆動信号であって前記制御手段が前記能動物質を少なくとも1つの中間屈折率を生成するように制御するための駆動信号を生成
し;
・ 前記ユーザの視線が前記能動光学素子の前記残りの部分にあることを検出し;
・ 前記ユーザの視線が前記能動光学素子の前記所定の部分の外周の外側にあることが検出されたとき、前記制御手段を駆動する他の駆動信号であって前記制御手段が前記能動物質を基本屈折率を生成するように制御するための駆動信号を生成する;ように構成され、ここで前記少なくとも1つの中間屈折率は、ゼロの屈折率と前記規定屈折率との間に
あり、前記基本屈折率はゼロか負の屈折率である、光学機器。
【請求項2】
請求項1に記載の光学器具であって、前記プロセッサが、
・ ユーザの目の視線方向と、ユーザが現在見ている実世界シーンの深度情報の少なくとも1つに基づいて、ユーザが見ている特定の光学的深度を決定し、
・ ユーザが注視している前記特定の光学的深度に基づいて、複数の規定屈折率の中から、ユーザの特定の眼に対する規定屈折率を選択する、
ように構成される、光学機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学器具であって、前記プロセッサが、
・ 前記能動光学要素のうち、その中心がユーザの所与の眼の瞳孔中心と重なる部分を選択し、
・ 選択した部分を前記能動光学要素の前記所定の部分として識別する、
ように構成される、光学機器。
【請求項4】
前記請求項のいずれかに記載の光学器具であって、前記プロセッサが、
・ 視線追跡データを処理して、ユーザの視線の動きの速度及び/又は加速度を決定し、
・ ユーザの視線の動きの速度及び/又は加速度に基づいて、少なくとも1つの中間屈折率を生成するように、前記能動光学要素内の前記能動物質を制御する前記制御手段を駆動するための少なくとも1つの他の駆動信号を生成する、
ように構成される、光学機器。
【請求項5】
前記請求項のいずれかに記載の光学器具であって、姿勢追跡手段を更に備え、前記プロセッサは、
・ 姿勢追跡手段によって収集された姿勢追跡データを処理して、ユーザの動きの速度及び/又は加速度を決定し、
・ ユーザの動きの速度及び/又は加速度に基づいて、少なくとも1つの中間屈折率を生成するように、前記能動光学要素内の前記能動物質を制御する前記制御手段を駆動するための少なくとも1つの他の駆動信号を生成する、
ように構成される、光学機器。
【請求項6】
前記請求項のいずれかに記載の光学器具であって、片眼毎に、能動光学要素の光路上に配置される受動光学要素を備え、前記受動光学要素は固定屈折率を有し、該固定屈折率は、能動光学要素によって生成される屈折率と共に結合屈折率を生成する、光学機器。
【請求項7】
前記受動光学要素は、前記第1の基板又は前記第2の基板のいずれか1つとして実装される、請求項6に記載の光学器具。
【請求項8】
前記制御手段は、メニスカスの曲率、屈折率、前記能動物質の量の少なくとも1つを制御する、前記請求項のいずれかに記載の光学器具。
【請求項9】
前記請求項のいずれかに記載の光学器具であって、前記制御手段は、
・ 前記第1の基板上に堆積され、前記第1の基板と前記能動物質との間に配置される少なくとも1つの第1の電極と、
・ 前記第2の基板上に堆積され、前記第2の基板と前記能動物質との間に配置される少なくとも1つの第2の電極と、
を備え、ただし前記少なくとも1つの第1の電極と前記少なくとも1つの第2の電極は光学的に透明である、光学機器。
【請求項10】
前記能動物質が電気伝導性液体と電気絶縁性液体とを含み、前記能動物質を制御する際は、前記能動光学要素内の前記能動物質のメニスカスの曲率が制御され、それによって特定の屈折率が生成され、前記メニスカスは、前記導電性液体と前記電気絶縁性液体との間の液液界面である、請求項9に記載の光学器具。
【請求項11】
前記能動物質は液晶材料であり、前記能動物質を制御する際は、前記液晶材料の液晶分子のアライメントが制御され、それによって前記能動光学要素内の前記液晶材料の屈折率が調整されて、特定の屈折率が生成される、請求項9に記載の光学器具。
【請求項12】
前記能動物質は、屈折率が前記第1の基板と前記第2の基板の少なくとも一方の屈折率と一致する流体であり、前記能動物質を制御する際に、前記能動光学要素内の前記流体の量を変化させ、それによって特定の屈折率が生成される、請求項9に記載の光学器具。
【請求項13】
光学器具の製造方法であって、
・ 少なくとも第1の基板と第2の基板の間に能動物質を封入して形成された能動光学要素
であって、所定の部分及び残りの部分を有し、前記所定の部分は読書中や近くの物体に焦点を合わせるときに使用される部分である、能動光学要素を用いること、但し前記第1及び第2の基板は光学的に透明である、前記用いることと;
・ 複数の屈折率を発生するように、前記能動光学要素内の前記能動物質を制御する制御手段を用いることと;
・ 視線追跡手段を使うことと;
・ プロセッサを:
・ 前記視線追跡手段によって収集された視線追跡データを処理して、ユーザの目の視線方向を決定し、
・ 前記能動光学要素が装着されている眼の視線方向に基づいて、前記ユーザが前記能動光学要素の
前記所定の部分を通して見ているか否かを検出し、
・ 前記ユーザが前記能動光学要素の前記所定の部分を通して見ていることが検出されたとき、前記制御手段を駆動する駆動信号であって前記制御手段が前記能動物質を規定屈折率を生成するように制御するための駆動信号を生成し、
・ 前記眼の視線方向の変化に基づいて、前記ユーザの視線が前記能動光学要素の前記所定の部分の周辺部に向かって移動していることを検出し、
・ 前記ユーザの視線が前記能動光学要素の前記所定の部分の周辺部に向かって移動していることが検出されたとき、前記制御手段を駆動する少なくとも1つの別の駆動信号であって前記制御手段が前記能動物質を少なくとも1つの中間屈折率を生成するように制御するための駆動信号を生成
し、
・ 前記ユーザの視線が前記能動光学素子の前記残りの部分にあることを検出し、
・ 前記ユーザの視線が前記能動光学素子の前記所定の部分の外周の外側にあることが検出されたとき、前記制御手段を駆動する他の駆動信号であって前記制御手段が前記能動物質を基本屈折率を生成するように制御するための駆動信号を生成する、
ように構成することと;
を含み、ここで前記少なくとも1つの中間屈折率は、ゼロの屈折率と前記規定屈折率との間に
あり、前記基本屈折率はゼロか負の屈折率である、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記プロセッサを、
・ ユーザの目の視線方向と、ユーザが現在見ている実世界シーンの深度情報の少なくとも1つに基づいて、ユーザが見ている特定の光学的深度を決定し、
・ ユーザが注視している前記特定の光学的深度に基づいて、複数の規定屈折率の中から、ユーザの特定の眼に対する規定屈折率を選択する、
ように構成することを含む、方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の方法であって、前記プロセッサを、
・ 前記能動光学要素のうち、その中心がユーザの所与の眼の瞳孔中心と重なる部分を選択し、
・ 選択した部分を前記能動光学要素の前記所定の部分として識別する、
ように構成することを含む、方法。
【請求項16】
請求項13から15のいずれかに記載の方法であって、前記プロセッサを、
・ 視線追跡データを処理して、ユーザの視線の動きの速度及び/又は加速度を決定し、
・ ユーザの視線の動きの速度及び/又は加速度に基づいて、少なくとも1つの中間屈折率を生成するように、前記能動光学要素内の前記能動物質を制御する前記制御手段を駆動するための少なくとも1つの他の駆動信号を生成する、
ように構成することを含む、方法。
【請求項17】
請求項13から16のいずれかに記載の方法であって、
・ 姿勢追跡手段を採用することと;
・ 前記プロセッサを、
・ 姿勢追跡手段によって収集された姿勢追跡データを処理して、ユーザの動きの速度及び/又は加速度を決定し、
・ ユーザの動きの速度及び/又は加速度に基づいて、少なくとも1つの中間屈折率を生成するように、前記能動光学要素内の前記能動物質を制御する前記制御手段を駆動するための少なくとも1つの他の駆動信号を生成する、
ように構成することと;
を含む、方法。
【請求項18】
片眼毎に、能動光学要素の光路上に配置される受動光学要素を採用することを含み、前記受動光学要素は固定屈折率を有し、該固定屈折率は、能動光学要素によって生成される屈折率と共に結合屈折率を生成する、請求項13から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記受動光学要素は、前記第1の基板又は前記第2の基板のいずれか1つとして実装される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記制御手段は、メニスカスの曲率、屈折率、前記能動物質の量の少なくとも1つを制御する、請求項13から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
請求項13から20のいずれかに記載の方法であって、前記能動光学要素は、
・ 第1の基板上に少なくとも1つの第1の電極を堆積させ、
・ 第2の基板上に少なくとも1つの第2の電極を堆積させる、
ことによって形成され、ここで前記少なくとも1つの第1の電極は、前記第1の基板と前記能動物質との間に配置され、前記少なくとも1つの第2の電極は、前記第2の基板と前記能動物質との間に配置され、前記少なくとも1つの第1の電極と前記少なくとも1つの第2の電極は光学的に透明である、方法。
【請求項22】
前記能動物質が電気伝導性液体と電気絶縁性液体とを含み、前記能動物質を制御する際は、前記能動光学要素内の前記能動物質のメニスカスの曲率が制御され、それによって特定の屈折率が生成され、ただし前記メニスカスは、前記電気伝導性液体と前記電気絶縁性液体との間の液液界面である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記能動物質は液晶材料であり、前記能動物質を制御する際は、前記液晶材料の液晶分子のアライメントが制御され、それによって前記能動光学要素内の前記液晶材料の屈折率が調整されて、特定の屈折率が生成される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記能動物質は、屈折率が前記第1の基板と前記第2の基板の少なくとも一方の屈折率と一致する流体であり、前記能動物質を制御する際に、前記能動光学要素内の前記流体の量を変化させ、それによって特定の屈折率が生成される、請求項21に記載の方法。
【国際調査報告】