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特表2025-505111シリコーン剥離コーティングエマルジョン、その調製方法、及びベーカリー紙への使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-21
(54)【発明の名称】シリコーン剥離コーティングエマルジョン、その調製方法、及びベーカリー紙への使用
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/07 20060101AFI20250214BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20250214BHJP
   C09D 183/05 20060101ALI20250214BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20250214BHJP
   C09D 129/04 20060101ALI20250214BHJP
   B05D 5/08 20060101ALI20250214BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20250214BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
C09D183/07
C09D5/02
C09D183/05
C09D4/00
C09D129/04
B05D5/08
B05D7/00 F
B05D7/24 301F
B05D7/24 302Y
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542943
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-07-18
(86)【国際出願番号】 US2022081222
(87)【国際公開番号】W WO2023146708
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】63/304,004
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【弁理士】
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァリエ、ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ドンテーヌ、キャシー
(72)【発明者】
【氏名】ウガジオ、ステファヌ
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075CA07
4D075DA03
4D075DB18
4D075DC36
4D075EA13
4D075EB43
4J038CE022
4J038DL041
4J038DL111
4J038FA062
4J038KA04
4J038KA09
4J038MA10
4J038MA14
4J038NA10
4J038PA18
4J038PC10
(57)【要約】
シリコーン剥離コーティングエマルジョンは、水相中に分散された硬化性シリコーン剥離コーティング組成物を含む。シリコーン剥離コーティングエマルジョンは、基材(紙など)上にコーティングされ湿潤堆積物を形成し、乾燥され基材上にシリコーン剥離コーティング組成物の層を形成し、硬化され基材の表面上にシリコーン剥離コーティングを形成することができる。コーティングされた基材は、ベーカリー剥離などの食品接触用途において有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン剥離コーティングエマルジョンであって、
(A)単位式(R SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2(SiO4/2の脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンであって、各Rは、独立して選択されるアルキル基であり、各Rは、独立して選択されるアルケニル基であり、添字i、f、g、h、及びjは、1分子当たりの各シロキサン単位の平均数を表し、添字i、f、g、h、及びjは、0≦i≦4であるような値を有し、fは、0~4であり、0≦g≦1400であり、0≦h≦200であり、jは、0又は1であり、但し、量(i+f)=2~4のとき、量(f+h)≧2、かつ量(i+f+g+h)は15~1400である、脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンと、
(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、(B)前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサン中のケイ素結合水素原子の、(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン中のケイ素結合アルケニル基に対するモル比(SiH:SiVi比)が1.2:1~3.0:1となるのに十分な量である、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、
(C)ヒドロシリル化反応触媒であって、(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン及び(B)前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンの合計量に基づいて、10ppm~1000ppmの白金族金属を提供するのに十分な量である、ヒドロシリル化反応触媒と、
(D)ヒドロシリル化反応抑制剤であって、(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン100重量部当たり0.02重量部~0.8重量部のヒドロシリル化反応抑制剤と、
(E)水と、
(F)緩衝液であって、(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン100重量部当たり0.4重量部~1.6重量部の緩衝液と、
(G)アルケニルオキシポリエーテルであって、(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン100重量部当たり0.05重量部~10重量部であり、(B)前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサン及び(G)前記アルケニルオキシポリエーテルの量は、(B)前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサン中のケイ素結合水素原子の(G)前記アルケニルオキシポリエーテル中のアルケニル基に対するモル比(SiH:アルケニル比)が2:1~25:1となるのに十分である、アルケニルオキシポリエーテルと、
(H)ポリビニルアルコール化合物であって、(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン100重量部当たり0~10重量部のポリビニルアルコール化合物と、
任意選択で、(I)殺生物剤と、
(J)消泡剤であって、(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン100重量部当たり0~0.3重量部の消泡剤と、
(K)単位式(R SiO1/2(R SiO2/2の非官能性ポリオルガノシロキサンであって、(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン100重量部当たり0~15重量部であり、式中、Rは、前記の通りであり、添字cは、スピンドル2~4を備えたBrookfield Viscometer DV-I Primeを用いて、20~100rpmの速度で測定する回転粘度計によって25℃で試験したときに5~60,000cStの粘度を前記非官能性ポリオルガノシロキサンに与えるのに十分な値を有する、非官能性ポリオルガノシロキサンと、を含む、シリコーン剥離コーティングエマルジョン。
【請求項2】
(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンの単位式中、i=j=h=0であり、添字f=2であり、前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンが、単位式(R SiO1/2(R SiO2/2を有するビスアルケニル末端ポリジオルガノシロキサンであり、式中、各Rはメチルであり、各Rはビニルであり、添字gは15~1200である、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項3】
(B)前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンが、単位式(R SiO1/2(RHSiO2/2を有し、式中、Rはメチルであり、3≦z≦250である、請求項1又は2に記載のエマルジョン。
【請求項4】
(C)前記ヒドロシリル化反応触媒が、アルケニル官能性ポリジアルキルシロキサンと白金との錯体を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項5】
(D)前記ヒドロシリル化反応阻害剤が、アセチレン系アルコールを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項6】
(F)前記緩衝液が、クエン酸及び水酸化ナトリウムを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項7】
(H)前記ポリビニルアルコール化合物が、出発物質(A)100重量部当たり1.5重量部~10重量部の量で存在し、前記ポリビニルアルコール化合物が、スピンドル2~4を備えたBrookfield Viscometer DV-I Primeを用いて、20~100rpmの速度及び25℃の温度で測定した5cSt~200cStの粘度を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項8】
(K)前記ポリオルガノシロキサンが存在し、α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項9】
(G)前記アルケニルオキシポリエーテルが、式:
【化1】

を有し、式中、添字aは10~16である、請求項1~8のいずれか一項に記載のエマルジョン。
【請求項10】
(B)前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサン及び(G)前記アルケニルオキシポリエーテルの量が、SiH:/アルケニル比が2:1~12:1となるのに十分である、請求項9に記載のエマルジョン。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の剥離コーティングエマルジョンを調製するためのキットであって、
(I)(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンと、(B)前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、(D)前記抑制剤と、(E)水と、(F)前記緩衝液と、(G)前記アルケニルオキシポリエーテルと、存在する場合、(H)前記ポリビニルアルコール、(I)前記殺生物剤、及び(K)前記ポリオルガノシロキサンのうちの1つ以上と、を含む、ベースエマルジョンと、
(II)(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンと、(C)前記ヒドロシリル化反応触媒と、(G)前記アルケニルオキシポリエーテルと、(E)水と、(F)前記緩衝液と、存在する場合、存在する場合、(H)前記ポリビニルアルコール化合物、(I)前記殺生物剤、及び(K)前記非官能性ポリオルガノシロキサンのうちの1つ以上と、を含む、硬化剤エマルジョンと、
任意選択で、(III)(J)前記消泡剤を含む第3の部分と、を含む、キット。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載のエマルジョンを形成する方法であって、
(1)(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンと、(B)前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、(D)前記抑制剤と、(E)水と、(F)前記緩衝液と、(G)前記アルケニルオキシポリエーテルと、存在する場合、(H)前記ポリビニルアルコール、(I)前記殺生物剤、及び(K)前記ポリオルガノシロキサンのうちの1つ以上と、を含む、出発材料を乳化し、それによってベースを形成することと、
(2)硬化剤エマルジョン1重量部当たり1~50重量部のベースを組み合わせることであって、前記硬化剤エマルジョンは、(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン、(C)前記ヒドロシリル化反応用触媒、(G)前記アルケニルオキシポリエーテル、(E)水、及び(F)前記緩衝液を含む、ことと、
任意選択で、(3)(J)前記消泡剤を組み合わせ、それによって前記シリコーン剥離コーティングエマルジョンを形成することと、
任意選択で、(4)前記シリコーン剥離コーティングエマルジョンを60重量部~900重量部の追加の水で希釈することと、を含む、方法。
【請求項13】
工程(2)、及び存在する場合工程(3)が、50℃未満の温度で行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ベーカリー紙を形成する方法であって、
(1)紙を含む基材上に、前記シリコーン剥離コーティングの硬化後に0.2~1.0g/mのコーティング重量をもたらすのに十分な量の請求項1~10のいずれか一項に記載のエマルジョンを適用することと、
(2)前記基材を乾燥させることと、
(3)前記シリコーン剥離コーティングを硬化させることと、を含む、方法。
【請求項15】
プラスチックを含む基材上での請求項11に記載のエマルジョンの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願及び連邦政府が資金提供する研究に関する声明への相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2022年1月28日出願の米国仮特許出願第63/304,004号の利益を主張する。米国仮特許出願第63/304,004号は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、シリコーン剥離コーティングエマルジョン並びにその調製及び使用に関する。より具体的には、シリコーン剥離コーティングエマルジョンは、内部に分散されたシリコーン剥離コーティング組成物を有する水性連続相を含む水性エマルジョンであり、食品接触用途のための紙を含む様々な基材上での使用に好適なシリコーン剥離コーティングを形成するために硬化可能である。
【0003】
序論
硬化性シリコーン組成物を基材上にコーティングし、硬化させて、コーティングを形成し、基材の様々な特性を改善又は変化させることができる。組成物が適用される基材は、1つ以上の材料を含むことができる。このような材料は、繊維状であってもよく、セルロース系、例えば、紙又はボール紙などの紙基材であってもよい。紙は、艶出しされていても艶出しされていなくてもよく、カレンダー処理されていてもカレンダー処理されていなくてもよい。あるいは、基材は、紙ベースの代わりに、例えば、アクリル、ポリカーボネート、若しくはポリエチレンテレフタレート材料を含むプラスチックベースであってもよく、又は基材は、紙及びプラスチックを含むラミネートであってもよい。
【0004】
硬化性シリコーン組成物は、水性、溶剤系、又は無溶剤組成物であり得る。Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)製のSYL-OFF(商標)7000Coatingなどの無溶剤組成物は、比較的高い厚さ(≧1μm)で塗布することができ、既存のコーティング機械を使用して低減された厚さでコーティングすることができないという欠点を有する。更に、無溶剤組成物の比較的高い粘度に起因して、加工中の望ましくないミスチング、及び得られるコーティングにおける表面欠陥が、特に高い生産速度で起こり得る。
【0005】
したがって、水性組成物は、十分に制御された少ない厚さの付着を必要とするような用途、及び間接的な食品規制に拘束される用途(例えば、食品接触用途)等のいくつかの用途において望ましい場合がある。食品接触用途に適したコーティングされた紙は、紙上に層を形成するための化合物又は組成物で、紙基材を処理することによって得ることができる。公知の処理は、低い表面エネルギーを有するフィルムを形成することによって非付着特性を提供することができるフッ素化化合物に基づいており、そのフィルムは化学薬品に抵抗性があり、それによって処理された紙にオイル、油、及び水をはじく性質を提供する。しかしながら、フッ素化化合物については環境や健康への懸念が生じており、食品包装業界における様々な規制によって使用を制限又は禁止する傾向がある。
【0006】
別のアプローチは、ポリビニルアルコールとクロメート-脂肪酸錯体との混合物を用いて紙基材を処理することであった。しかしながら、クロム等の重金属の使用はまた、食品包装関連用途における環境及び健康上の懸念を引き起こした。他の処理は、紙にいくらかの疎油性を付与することができるが、効果的であるためには比較的多量の材料がしばしば必要であり、紙上に厚いコーティングを形成するため、紙の折り目付け又は折り畳み時に機械的特性及び耐久性に弊害をもたらすことがある。更に、大量の材料を使用することは、費用効率が高くない可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
シリコーン剥離コーティングエマルジョンは、(A)脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンと、(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、(C)ヒドロシリル化反応触媒と、(D)ヒドロシリル化反応抑制剤と、(E)水と、(F)緩衝液と、(G)アルケニルオキシポリエーテルと、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記のシリコーン剥離コーティングエマルジョン(エマルジョン)は、任意選択で、(H)ポリビニルアルコール化合物、(I)殺生物剤、(J)消泡剤、(K)非官能性ポリオルガノシロキサン、及び(L)出発物質(H)~(K)の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される追加の出発物質を更に含んでもよい。あるいは、エマルジョンは、(A)脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン、(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、(C)ヒドロシリル化反応触媒、(D)ヒドロシリル化反応抑制剤、(E)水、(F)緩衝液、及び(G)アルケニルオキシポリエーテル、並びに任意選択で、(H)ポリビニルアルコール化合物、(I)殺生物剤、(J)消泡剤、(K)非官能性ポリオルガノシロキサン、及び(L)(H)~(K)の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される追加の出発物質から本質的になってもよい。あるいは、エマルジョンは、(A)脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン、(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、(C)ヒドロシリル化反応触媒、(D)ヒドロシリル化反応抑制剤、(E)水、(F)緩衝液、(G)アルケニルオキシポリエーテル、並びに任意選択で、(H)ポリビニルアルコール化合物、(I)殺生物剤、(J)消泡剤、(K)非官能性ポリオルガノシロキサン、及び(L)(H)~(K)の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される追加の出発物質からなってもよい。
【0009】
(A)脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン
上記エマルジョン中の出発物質(A)は、脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンである。出発物質(A)の脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンは、単位式(A-I):(R SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2(SiO4/2を有してよく、式中、各Rは、独立して選択されるアルキル基又はアリール基であり、各Rは、独立して選択されるアルケニル基であり、添字i、f、g、h、及びjは、式(A-I)中の各シロキサン単位の平均数を表し、添字iが0~4であるような値を有し、添字fが0~4であり、添字gが0~1400であり、添字hが0~200であり、添字jが0又は1であり、但し、量(i+f)=2~4のとき、量(f+h)≧2、かつ量(i+f+g+h)は15~1400である。あるいは、添字gが、0~1200であってもよい。脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンは、直鎖(j=0の場合)又は分岐鎖(j>0の場合)であってもよい。
【0010】
に好適なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル(イソプロピル及びn-プロピルを含む)、ブチル(n-ブチル、t-ブチル、sec-ブチル、及びイソブチルを含む)、ペンチル(5個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖、及び環状飽和炭化水素基を含む)、ヘキシル(6個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖、及び環状飽和炭化水素基を含む)、ヘプチル(7個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖、及び環状飽和炭化水素基を含む)、及びオクチル(8個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖、及び環状飽和炭化水素基を含む)などの1~8個の炭素原子を有し得る。Rに含まれる好適なアリール基は、6~20個の炭素原子を有してもよく、例えば、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、及びスチリルである。代替的に、アリール基は、フェニルであり得る。あるいは、各Rは、メチル又はエチルであり得る。あるいは、各Rは、メチル又はフェニルであってもよい。あるいは、各Rは、メチルであり得る。
【0011】
に好適なアルケニル基は、ビニル、アリル、及びヘキセニルである。あるいは、Rは、ビニル及びアリルからなる群から選択されてもよい。あるいは、Rは、ビニル及びヘキセニルからなる群から選択されてもよい。あるいは、各Rは、ビニルであってもよい。
【0012】
あるいは、添字j=0である場合、脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンは直鎖であってもよい。直鎖脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンは、単位式(A-II):(R SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2を含んでもよく、式中、Rは、独立して選択される上記のようなアルキル基又はアリール基であり、Rは、独立して選択される上記のようなアルケニル基であり、添字iは、0、1、又は2であり、添字fが0、1、又は2であり、添字gが0~1200であり、添字hが0~200であり、但し、量(i+f)=2のとき、量(f+h)≧2、かつ量(i+f+g+h)は15~1200である。
【0013】
あるいは、直鎖脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンは、ビス-アルケニル末端ブロックポリジアルキルシロキサン(i=0、f=2、かつh=0の場合)を含んでもよい。ビスアルケニル末端ブロックポリジアルキルシロキサンは、単位式(A-III):(R SiO1/2(R SiO2/2を有してよく、式中、各Rは、アルキル基であり、各Rは、アルケニル基であり、添字gは、15~1200である。
【0014】
あるいは、直鎖脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンは、ポリ(ジアルキル/アルキルビニル)シロキサン(g>0かつh>0の場合)を含んでもよい。ポリ(ジアルキル/アルキルビニル)シロキサンは、単位式(A-IV):(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2を有してよく、式中、各Rは、アルキル基であり、各Rは、アルケニル基であり、添字gは、0超~1200であり、かつ添字hは、2~200である。
【0015】
あるいは、出発物質(A)は、以下のような直鎖脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンを含んでもよい。
i)α,ω-ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
ii)α,ω-ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
iii)α,ω-ジメチルビニルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン、
iv)α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
v)α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン、
vi)α,ω-ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
vii)α、ω-ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、
viii)α,ω-ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)、
ix)α,ω-フェニル,メチル,ビニル-シロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
x)i)~ix)のうちの2つ以上の組み合わせを含んでもよい。
【0016】
出発物質(A)について上述の直鎖脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンを調製する方法、例えば、対応するオルガノハロシラン及びオリゴマーの加水分解及び縮合、又は環状ポリジオルガノシロキサンの平衡化は、当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許第3,284,406号、同第4,772,515号、同第5,169,920号、同第5,317,072号、及び同第6,956,087号を参照されたい。
【0017】
上記の直鎖脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサンに加えて(又はその代わりに)、出発物質(A)は、分岐脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンを含んでもよい。分岐脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンは、分岐脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンに対して0超~5モル%の四官能性単位を有してもよい。例えば、分岐脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンは、単位式(A-V):(R SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(SiO4/2を有してもよく、式中、R及びRは上記の通りであり、添字i、f、g、及びjは、2≧i≧0、4≧f≧0、995≧g≧4、j=1、(i+f)=4、かつ(i+f+g+j)>50であるような平均値を有する。あるいは、量(i+f+g+j)は、回転粘度計によって測定される(試験方法とともに以下に記載される)粘度>170mPa・sを、付与するのに十分な値を有し得る。代替的に、粘度は、>170mPa・s~1000mPa・s、代替的に>170~500mPa・s、代替的に180mPa・s~450mPa・s、代替的に190mPa・s~420mPa・sであってもよい。出発物質(A)に好適な分岐脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンは、当該技術分野において既知であり、米国特許第6,806,339号及び米国特許出願公開第2007/0289495号に開示されているものによって例示される、既知の方法によって作製され得る。
【0018】
(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン
エマルジョン中の出発物質(B)は、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンである。ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、単位式(B-I):(R SiO1/2(R HSiO1/2(R SiO2/2(RHSiO2/2を有してもよく、式中、Rは上記の通りであり、添字w、x、y、及びzは、1分子当たりの各シロキサンの平均数を表し、wが0、1、又は2であるような値を有し、添字xが0、1、又は2であり、添字yは、0~250であり、かつ添字zは、1~250であり、但し、量(w+x)=2であり、量(x+z)≧2であり、かつ量(w+x+y+z)は、10~300である。あるいは、添字wが2であってもよく、添字xが0であってもよい。あるいは、添字yが0超~250であってもよい。あるいは、(A)脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンが1分子当たり2つのケイ素結合アルケニル基を有する場合、例えば(A)がi)α,ω-ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンである場合、量(x+z)≧3である。
【0019】
あるいは、x=y=0かつw=2である場合、(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、単位式(B-II):(R SiO1/2(RHSiO2/2を有してもよく、式中、Rは上記の通りであり、zは、3~250である。
【0020】
本明細書で使用するのに好適なポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、以下のものによって例示される:
(i)α,ω-ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、
(ii)α,ω-ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、
(iii)α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、
(iv)α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、及び
(v)α-ジメチルハイドロジェンシロキシ,ω-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、
(vi)α-ジメチルハイドロジェンシロキシ,ω-トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、
(vii)α,ω-ジメチルハイドロジェンシロキシ-終端ポリジメチルシロキサン、及び
(viii)これらの2つ以上の組み合わせ。
【0021】
ポリオルガノハイドロジェンシロキサンも市販されており、例えば、Gelest,Inc.(Morrisville,Pennsylvania,USA)から入手可能なものなど、例えば、HMS-H271、HMS-071、HMS-993、HMS-301、HMS-301 R、HMS-031、HMS-991、HMS-992、HMS-993、HMS-082、HMS-151、HMS-013、HMS-053、及びHMS-HM271が挙げられる。オルガノハロシランの加水分解及び縮合など、本明細書での使用に好適な直鎖及び分岐ポリオルガノハイドロジェンシロキサンを調製する方法は、Speierの米国特許第2,823,218号、Jeramらの同第3,957,713号、及びHardmanらの同第4,329,273号に例示されているように、当該技術分野において周知である。
【0022】
出発物質(B)のポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、出発物質(B)中のケイ素結合水素原子の出発物質(A)中のアルケニル基の量に対するモル比(すなわち、SiH:SiVi比)が1.2:1~3.0:1、あるいは1.4:1~2.5:1となるのに十分な量でエマルジョン中で使用される。
【0023】
(C)ヒドロシリル化反応触媒
エマルジョン中の出発物質(C)は、ヒドロシリル化反応触媒である。この触媒は、出発物質(A)中のアルケニル基と出発物質(B)中のケイ素結合水素原子との間の反応を促進する。当該触媒は、Fe、Ni、Co、Zr、Ti、又は白金族金属から選択される金属を含んでもよい。あるいは、金属は、白金族金属を含むことができる。白金族金属は、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、及びイリジウムからなる群から選択され得る。あるいは、白金族金属は、白金であり得る。ヒドロシリル化反応触媒は、(C-I)放射線活性化触媒、すなわち照射後のヒドロシリル化反応を触媒することができる(化学線への曝露、例えば可視光又は紫外線への曝露など)、(C-II)照射以外の手段によって活性化可能なヒドロシリル化触媒、例えば、加熱などの照射なしでヒドロシリル化反応を触媒することができるヒドロシリル化触媒、又は(C-III)(C-I)と(C-II)の両方の組み合わせであり得る。
【0024】
出発物質(C-I)としての使用のための好適な放射線活性化可能な触媒は、200nm~500nmの波長を有する放射線への曝露によって活性化され得る。好適な放射線活性化ヒドロシリル化反応触媒としては、シクロペンタジエニル白金錯体(例えば、η5-シクロペンタジエニル)トリ(α-アルキル)白金(IV))、シクロペンタジエニルトリメチル白金及びトリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)、シクロオクタジエニル白金錯体(例えば、η4-1,5-シクロオクタジエンジアリール白金錯体)、並びにPt(II)-βジケトネート錯体(例えば、ビス(アセチルアセトナト)白金(II))が挙げられる。シクロペンタジエニル白金錯体の例は、当該技術分野において既知であり、例えば、Drahnakの米国特許第4,510,094号、Drahnakの同第4,600,484号、Boardmanらの同第4,916,169号、Buttsの同第6,127,446号、Buttsの同第6,451,869号、Oxmanらの同第6,376,569号、Koellnbergerの同第8,088,878号、及び中国特許第101925608(B)号に開示されている。シクロオクタジエニル白金錯体は、例えば、Boardmanらの米国特許第6,046,250号に開示されている。白金(II)β-ジケトネート触媒は、例えば、Oxmanらの欧州特許第0398701(B1)号、Ikenoの米国特許第8,642,674号、及び中国特許第10403160(2A)号に開示されている。Walkerらの米国特許出願公開第2005/0154079号、Thompsonらの同第2011/0171400(A1)号、及びIkenoの出願公開第03865638(B2)号は、各々、同様に、様々な放射線活性化ヒドロシリル化反応触媒を開示している。
【0025】
あるいは、ヒドロシリル化反応触媒は、(C-II)照射以外の手段によって活性化可能なヒドロシリル化触媒であってもよい。例えば、(C-II)は、(C-II-1)上記の白金族金属、(C-II-2)そのような金属の化合物、例えばクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)(Wilkinson触媒)、ロジウムジホスフィンキレート、例えば[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ジクロロジロジウム又は[1,2-ビス(ジエチルホスピノ)エタン]ジクロロジロジウム、塩化白金酸(Speier触媒)、塩化白金酸六水和物、二塩化白金、及び(C-II-3)化合物の錯体、(C-II-2)、アルケニル官能性ポリジアルキルシロキサンなどのアルケニル官能性オルガノポリシロキサンオリゴマー、又は(C-II-4)マトリックス若しくはコアシェル型構造中にマイクロカプセル化された白金族金属化合物であり得る。白金とアルケニル官能性オルガノポリシロキサンオリゴマーとの錯体としては、1,3-ジエチル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンと白金との錯体(Karstedt触媒)、及びテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン中のPt(0)錯体(Ashby錯体)が挙げられる。あるいは、ヒドロシリル化反応触媒は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化された上記のような(C-II-5)化合物又は錯体であってもよい。(C-II)における好適な白金含有触媒の具体例としては、六水和物形態若しくは無水形態のいずれかの塩化白金酸、及び又は、塩化白金酸をジビニルテトラメチルジシロキサンなどの脂肪族不飽和有機ケイ素化合物と反応させることを含む方法により得られる白金含有触媒、又はRoyの米国特許第6,605,734号に記載されたアルケン-白金-シリル錯体が挙げられる。アルケン-白金-シリル錯体は、例えば、0.015モルの(COD)PtClを、0.045モルのCOD及び0.0612モルのHMeSiClと混合することによって調製され得る(式中、CODは、シクロオクタジエニルを表し、Meは、メチルを表す)。他の例示的なヒドロシリル化反応触媒は、Speierの米国特許第2,823,218号、Ashbyの同第3,159,601号、Lamoreauxの同第3,220,972号、Chalkらの同第3,296,291号、Willingの同第3,419,593号、Modicの同第3,516,946号、Karstedtの同第3,814,730号、Chandraの同第3,928,629号、Leeらの同第3,989,668号、Leeらの同第4,766,176号、Leeらの同第4,784,879号、Togashiの同第5,017,654号、Chungらの同第5,036,117号、及びBrownらの同第5,175,325号、及びTogashiらの欧州特許第EP0347895(A)号に記載されており、Chevalierらの米国特許出願第2019/0367744号が、(C-II)放射線活性化可能触媒及び(C-II)放射線以外の手段によって活性化可能な触媒(例えば、熱活性化可能触媒)の両方を開示している。本明細書で使用することができる他のヒドロシリル化反応触媒は、Y.Nakajima及びS.Shimadaによる「Hydrosilylation reaction of olefins:recent advances and perspectives」、RSC Adv.、2015、5、20603-20616、並びに「Hydrosilylation,Advances in Silicon Science」、第1章、Hydrosilylation of Alkenes and Their Derivatives、B.Marciniec(ed.).DOI 10.1007/978-1-4020-8172-9 1、(著作権)Springer Science+Business Media B.V.2009(pp.2-49)において開示されている通りである。出発物質(C-II)に好適な白金ヒドロシリル化反応触媒は市販されており、例えば、SYL-OFF(商標)4000触媒及びSYL-OFF(商標)2700が、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)から入手可能である。
【0026】
出発物質(C)は、1種のヒドロシリル化反応触媒であってもよく、又は上記のヒドロシリル化反応触媒の2種以上の組合せであってもよい。例えば、出発物質(C)は、例えば、放射線への曝露及び加熱の両方がヒドロシリル化反応に使用される場合、(C-I)及び(C-II)の組み合わせであってもよい。あるいは、出発物質(C)は、シクロペンタジエニル白金錯体とPt(II)-βジケトナート錯体との組み合わせなどの、2つ以上の放射線活性化可能触媒の組み合わせであってもよい。当業者は、特定の触媒種が、本明細書に記載されるように、照射又は加熱のいずれかによって活性化され得ること、及び2つ以上の触媒の組み合わせが使用される場合、選択される触媒種が互いに異なることを認識するであろう。
【0027】
エマルジョン中の(C)ヒドロシリル化反応触媒の量は、出発物質(A)及び(B)の選択、アルケニル基とケイ素結合水素原子のそれぞれの含有量、及び組成物中の(D)ヒドロシリル化反応抑制剤の量を含む様々な要因に依存する。しかしながら、触媒の量は、SiH基及びアルケニル基のヒドロシリル化反応を触媒するのに十分であり、あるいは触媒の量は、エマルジョン中の出発物質(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、及び(G)の合計量に基づいて、少なくとも10ppm、あるいは少なくとも15ppm、あるいは少なくとも20ppm、あるいは少なくとも50ppm、及びあるいは少なくとも100ppmの質量基準での白金族金属を提供するのに十分である。同時に、触媒の量は、エマルジョン中の出発物質(A)及び(B)の合計重量に基づいて、1,000ppmまで、あるいは800ppmまで、あるいは500ppmまで、あるいは100ppmまでの質量基準での白金族金属を提供するのに十分である。
【0028】
(D)ヒドロシリル化反応抑制剤
エマルジョン中の出発物質(D)は、ヒドロシリル化反応抑制剤(抑制剤)である。抑制剤は、抑制剤を除いて同じ出発物質を含有するシリコーン剥離コーティング組成物と比較して、ヒドロシリル化反応を変えるために使用され得る。出発物質(D)は、例えば、(D1)アセチレン系アルコール、(D2)シリル化アセチレン系アルコール、(D3)エン-イン化合物、(D4)トリアゾール、(D5)ホスフィン、(D6)メルカプタン、(D7)ヒドラジン、(D8)アミン、(D9)フマル酸塩、(D10)マレイン酸塩、(D11)エーテル、(D12)一酸化炭素、(D13)アルケニル官能性シロキサンオリゴマー、及び(D14)それらの2つ以上の組み合わせであってもよい。あるいは、ヒドロシリル化反応抑制剤は、(D1)アセチレン系アルコール、(D2)シリル化アセチレン系アルコール、(D9)フマル酸塩、(D10)マレイン酸塩、(D13)それらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されてもよい。あるいは、ヒドロシリル化反応抑制剤は、(D1)アセチレン系アルコール、(D2)シリル化アセチレン系化合物、(D9)フマル酸塩、(D10)マレイン酸塩、(D13)一酸化炭素、及び(D14)それらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されてもよい。あるいは、ヒドロシリル化反応抑制剤は、アセチレン系アルコールであってもよい。
【0029】
アセチレン系アルコールは、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-ブチン-3-オール、1-プロピン-3-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3-フェニル-1-ブチン-3-オール、4-エチル-1-オクチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、及び1-エチニル-1-シクロヘキサノール、及びそれらの組み合わせによって例示される。あるいは、阻害剤は、シリル化アセチレン系化合物であってもよい。理論に束縛されるものではないが、シリル化アセチレン系化合物を添加すると、シリル化アセチレン系化合物を含有していない、又は上記したものなどの有機アセチレン系アルコール阻害剤を含有する出発材料のヒドロシリル化による反応生成物と比較して、ヒドロシリル化反応から調製される反応生成物の黄変が低減すると考えられる。シリル化アセチレン系化合物は、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリメチルシラン、((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シランメチルビニルシラン、ビス((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)ジメチルシラン、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シラン、メチル(トリス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ))シラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリエチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)メチルトリフルオロプロピルシラン、(3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オキシ)トリメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルビニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルビニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)トリメチルシラン、及びそれらの組み合わせによって例示される。本明細書における阻害剤として有用なシリル化アセチレン系化合物は、当該技術分野において既知の方法によって調製することができ、例えば、Bilgrienらの米国特許第6,677,407号は、酸受容体の存在下でクロロシランと反応させることによって上記のアセチレン系アルコールをシリル化することを開示している。
【0030】
あるいは、抑制剤は、3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン、及びそれらの組み合わせなどのエン-イン化合物であってもよい。あるいは、阻害剤は、ベンゾトリアゾールによって例示されるトリアゾールを含んでもよい。あるいは、阻害剤は、ホスフィンを含んでもよい。あるいは、阻害剤は、メルカプタンを含んでもよい。あるいは、阻害剤は、ヒドラジンを含んでもよい。あるいは、阻害剤は、アミンを含んでもよい。アミンは、テトラメチルエチレンジアミン、3-ジメチルアミノ-1-プロピン、n-メチルプロパルギルアミン、プロパルギルアミン、1-エチニルシクロヘキシルアミン、又はそれらの組み合わせによって例示される。あるいは、阻害剤は、フマラートを含んでもよい。フマラートとしては、フマル酸ジエチルなどのフマル酸ジアルキル、フマル酸ジアリルなどのフマル酸ジアルケニル、フマル酸ビス-(メトキシメチル)エチルなどのフマル酸ジアルコキシアルキルが挙げられる。あるいは、阻害剤は、マレアートを含んでもよい。マレアートとしては、マレイン酸ジエチルなどのマレイン酸ジアルキル、マレイン酸ジアリルなどのマレイン酸ジアルケニル、及びマレイン酸ビス-(メトキシメチル)エチルなどのマレイン酸ジアルコキシアルキルが挙げられる。あるいは、阻害剤は、エーテルを含んでもよい。
【0031】
あるいは、阻害剤は、一酸化炭素を含んでもよい。あるいは、阻害剤は、アルケニル官能性シロキサンオリゴマーを含んでもよく、これは、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、1,3-ジビニル-1,3-ジフェニル-1,3-ジメチルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、及びそれらの2つ以上の組み合わせによって例示されるメチルビニルシクロシロキサンなどの環状又は直鎖状であってもよい。上記の抑制剤として有用な化合物は、例えば、Sigma-Aldrich Inc.又はGelest,Inc.から市販されており、本明細書で使用するのに好適な抑制剤は、米国特許出願公開第2007/0099007号の段落[0148]~[0165]に安定剤Eとして記載されているものによって例示される。
【0032】
出発物質(D)は、1種のヒドロシリル化反応抑制剤であってもよく、又は上記のヒドロシリル化反応抑制剤の2種以上の組み合わせであってもよい。本明細書で使用される抑制剤の量は、所望の反応速度、使用される特定の抑制剤、並びに出発物質(A)及び(C)のそれぞれの選択及び量、をはじめとする様々な要因によって異なる。しかしながら、存在する場合、抑制剤の量は、出発物質(A)100重量部当たり、0超重量部、あるいは0.02重量部~0.8重量部であってもよい。
【0033】
(E)水
出発物質(E)は水であり、一般的に制限されておらず、未希釈で(担体ビヒクル/溶剤なしで)かつ/又は純粋なもの(すなわち、ミネラル及び/若しくは他の不純物なしで)が利用され得る。例えば、水は、エマルジョン中で他の出発物質と組み合わせる前に、処理されていても処理されていなくてもよい。水を精製するために使用され得るプロセスの例としては、蒸留、濾過、脱イオン化、及びそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられ、これによって、水が、脱イオン化、蒸留、及び/又は濾過され得る。あるいは、水は、未処理であり得る(例えば、水道水、すなわち、都市用水系によって提供されるか、又は更なる精製無しで使用される井戸水であり得る)。水は、エマルジョンの所望の希釈を含む様々な要因に応じて、当業者によって選択される任意の量で利用され得る。しかしながら、水の量は、エマルジョン中の全ての出発物質の合計重量に基づいて、30%~99%、又は50%~99%、又は50%~95%であってよい。
【0034】
(F)緩衝系
エマルジョンの所望のpHを維持するための緩衝系(緩衝液)は、一塩基酸又は多塩基酸及びその共役塩基を含み得る任意の好適な緩衝液であり得る。例えば、米国特許出願公開第2007/0099007号の段落[00145]~[00147]において、薬剤Fとして記載されているHCO /CO 2-及びHPO /HPO 2-を含む緩衝液を、本明細書で使用することができる。緩衝液は、NaCO及びNaHCO、並びに/又はクエン酸及びクエン酸塩、例えばクエン酸カリウム又はクエン酸ナトリウムを含んでもよい。緩衝液の量は、出発物質(A)100重量部当たり、0超、あるいは少なくとも0.2重量部、あるいは少なくとも0.4重量部であってもよい。同時に、緩衝液の量は、出発物質(A)の100部当たり、1.6重量部まで、あるいは1.5重量部まで、あるいは1.25重量部までであってもよい。
【0035】
(G)反応性オレフィン系界面活性剤
出発物質(G)はアルケニルオキシポリエーテルであり、水中でシリコーン剥離コーティング組成物を乳化するために使用され、これも反応性である。アルケニルオキシポリエーテルは、実質的に直鎖状又は直鎖状であってもよい。直鎖アルケニルオキシポリエーテルは、式(G-I):
【0036】
【化1】

を有してよく、式中、Dは、1~30個の炭素原子の二価炭化水素基であり、各Dは、独立して選択される2~10個の炭素原子の二価炭化水素基であり、添字aは≧2である。あるいは、添字aは、少なくとも2、あるいは少なくとも4、あるいは少なくとも6、あるいは少なくとも8、あるいは少なくとも10であってもよく、同時に、添字aは、最大150、あるいは最大70、あるいは最大30、あるいは最大24、あるいは最大20、あるいは最大18、あるいは最大16であってもよい。D及び/又はDの二価炭化水素基は、脂肪族不飽和を含まなくてもよい。D(Dが2個以上の炭素原子を有する場合)及び/又はDは、直鎖又は分岐鎖であってもよい。Dの二価炭化水素基の例としては、実験式-C2d-のアルカン-ジイル基が挙げられ、式中、添字dは、2~10、あるいは2~8、あるいは2~6、あるいは2~4である。Dは、実験式-C2e-を有してもよく、式中、添字eは、1~30、あるいは1~20、あるいは1~10、あるいは1~4である。D及び/又はDのアルカン-ジイル基は、直鎖状アルカン-ジイル、例えば、-CH-CH-、-CH-CH-CH-、-CH-CH-CH-CH-、若しくは-CH-CH-CH-CH-CH-CH-、又は分岐状アルカン-ジイル、例えば、
【0037】
【化2】

であり得る。あるいは、各Dは、少なくとも2個、あるいは少なくとも3個、あるいは少なくとも4個の炭素原子のアルカン-ジイル基であってもよく、一方、同時に、Dは、最大6個、あるいは最大5個、あるいは最大46個の炭素原子のアルカン-ジイル基であってもよい。あるいは、各Dは、2、3、又は4個の炭素原子を有してもよい。あるいは、各Dは、1個の炭素原子を有してもよい。あるいは、Dが1個の炭素原子を有し、Dが2個の炭素原子を有する場合、アルケニルオキシポリエーテルは、式(G-II):
【0038】
【化3】

を有してよく、式中、添字aは上記の通りである。あるいは、添字aは、少なくとも2、あるいは少なくとも4、あるいは少なくとも6、あるいは少なくとも8、あるいは少なくとも10であってもよく、同時に、添字aは、最大30、あるいは最大24、あるいは最大20、あるいは最大18、あるいは最大16であってもよい。
【0039】
好適なアルケニルオキシポリエーテルは、当該技術分野において既知であり、市販されており、例えば、両方ともBASFから、PLURIOL(商標)10Rの商品名で販売されている1分子当たり10個のエチレンオキシド単位を有するアリルオキシポリオキシエチレン(すなわち、式中、a=10の式G-II)又はPLURIOL(商標)750 Rの商品名で販売されている1分子当たり16個のエチレンオキシド単位を有するアリルオキシポリオキシエチレンなどである。他の市販のアルケニルオキシポリエーテルとしては、PLURIOL(商標)A 300 V、PLURIOL(商標)A 3090 V、PLURIOL(商標)A 5890 V、PLURIOL(商標)A1190 I、及びPLURIOL(商標)A 700 VPが挙げられ、これらもBASFから入手可能である。
【0040】
(G)アルケニルオキシポリエーテルの量は、出発物質(H)であるポリビニルアルコール化合物が存在するか否かを含む種々の因子に依存するが、(G)アルケニルオキシポリエーテルの量は、(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン中のケイ素結合水素原子の(G)アルケニルオキシポリエーテル中のアルケニル基に対するモル比(SiH:アルケニル比)が2:1~25:1、あるいは2:1~12:1となるのに十分である。
【0041】
(H)ポリビニルアルコール
エマルジョン中の出発物質(H)は、ポリビニルアルコール化合物である。ポリビニルアルコール化合物は、当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許出願公開第2007/0099007号の段落[0172]及び[0173]に開示されている。ポリビニルアルコール化合物は、ポリ酢酸ビニルの鹸化によって作製され得、そのため、ポリ酢酸ビニルの65モル%までが、本明細書で使用されるポリビニルアルコール化合物中に残存し得る。あるいは、ポリビニルアルコール化合物は、35モル%~99モル%のポリビニルアルコール(65モル%~1モル%のポリ酢酸ビニルとの平衡状態)であり得る。あるいは、ポリビニルアルコール化合物は、80%~98%加水分解され得る。ポリビニルアルコール化合物は、20℃の4%水溶液において5cPの最小粘度、あるいは最大200cStを有し得る。あるいは、ポリビニルアルコールは、15cSt~55cStの粘度を有してもよい。ポリビニルアルコール化合物の量は、存在する(G)アルケニルオキシポリエーテルの種類及び量を含む様々な要因に依存するが、ポリビニルアルコール化合物の量は、出発物質(A)100重量部当たり、0~10重量部、あるいは0~5重量部、あるいは0~3重量部であってもよい。あるいは、ポリビニルアルコール化合物は、出発物質(A)100重量部当たり1.5重量部~10重量部の量で存在してもよい。しかしながら、(G)アルケニルオキシポリエーテル及び(H)ポリビニルアルコール化合物の合計量は、出発物質(A)100重量部当たり少なくとも3.0重量部であってもよい。あるいは、(G)アルケニルオキシポリエーテルが出発物質(A)100重量部当たり3重量部未満の量で存在する場合、(H)ポリビニルアルコール化合物の出発物質(A)100重量部当たり少なくとも3重量部までの残部が存在する。
【0042】
(I)殺生物剤
出発物質(I)は、エマルジョンに添加され得る任意選択の殺生物剤である。殺生物剤は、当該技術分野において既知であり、例えば、殺生物剤は、(I1)殺真菌剤、(I2)除草剤、(I3)殺有害生物剤、(I4)抗菌剤、及びそれらの2つ以上の組み合わせによって、例示される。例示的な殺生物剤は、例えば、Brandstadtらの米国特許第9,221,041号に開示されている。殺生物剤は、任意選択である。しかしながら、使用する場合、殺生物剤は、出発物質(A)100重量部当たり1.0重量部までの量で存在してもよい。
【0043】
(J)消泡剤
エマルジョンは、任意選択で、出発物質(J)消泡剤(anti-foam)を更に含んでもよい。(J)消泡剤の量は、出発物質(A)の100重量部に対して0.3重量部までであってもよい。適切な消泡剤は、シリカ及びポリジメチルシロキサンを含有するエマルジョンによって例示される。このような消泡剤は、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)から、例えば、DOWSIL(商標)AFE-1520、DOWSIL(商標)7989、SYL-OFF(商標)EM 7989 ANTIFOAM、XIAMETER(商標)AFE-0100、XIAMETER(商標)AFE-1510、XIAMETER(商標)AFE-1520、又はXIAMETER(商標)AFE-1530の商品名で市販されている。
【0044】
(K)非官能性ポリオルガノシロキサン
エマルジョンは、任意選択で、出発物質(K)である非官能性ポリオルガノシロキサンを更に含んでもよい。本明細書で使用するとき、「非官能性オルガノポリシロキサン」は、ケイ素原子の他の原子価に結合した有機基を有する交互のケイ素原子及び酸素原子からなる主鎖を有するポリマーを意味し、このような有機基は出発物質(A)及び(B)とのヒドロシリル化反応を受けない。このような非官能性オルガノポリシロキサンは、式(R SiO1/2(R SiO2/2を有してもよく、式中、Rは上記の通りであり、添字cは、以下の参考例Bにおける試験方法に従って測定される5cSt~60,000cStの粘度を有する非官能性オルガノポリシロキサンを提供するのに十分な値を有する。非官能性オルガノポリシロキサンの例は、α,ω-トリアルキルシロキシ終端ポリジアルキルシロキサン、例えばα,ω-トリメチルシロキシ終端ポリジメチルシロキサンである。出発材料(K)は任意選択であり、出発物質(A)100重量部当たり0~15重量部の量で存在してもよい。
【0045】
追加の出発原料
1つ以上の追加の出発物質を、本明細書に記載されているエマルジョンに、添加してもよい。1つ以上の追加の出発物質は、殺菌剤(例えば、ソルビン酸)、着色剤(例えば、染料又は顔料)、充填剤(例えば、シリカ)、及び湿潤剤(例えば、プロピレングリコール又はエチレングリコールなどのグリコール)からなる群から選択されてもよい。本明細書で使用するのに好適な追加の出発物質は、米国特許出願公開第2007/0099007号の段落[0177]~[0190]及び米国特許出願公開第2002/0061365号の段落[0055]~[0056]に記載されている添加剤によって、例示される。
【0046】
製造方法
エマルジョンは、上記出発物質を、上記量で、任意の順序で、任意選択でマスターバッチと、及び任意選択でせん断下で、組み合わせることによって、調製され得る。あるいは、エマルジョンは、例えば、ローター及びステータータイプのミキサーにおいて、又は高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、コロイドミル、若しくはソノレーター(超音波ミキサー)などの増加したせん断を適用する装置において、前記出発物質を高せん断に供することによって形成され得る。エマルジョンの形成中の早期反応を回避するために、出発物質の一部を別々に乳化してもよい。例えば、出発物質(A)の全部又は一部を、出発物質(B)の非存在下で乳化させ、次いで出発物質(B)を添加してもよい。あるいは、出発物質(A)、(B)、及び(G)は、触媒の非存在下で乳化されてもよく、触媒は乳化され、別々に添加される。
【0047】
あるいは、上記のエマルジョンは、例えば、一緒に混合されて上記のエマルジョンを形成し得る2つ以上の別個の部分を有するキットの形態で提供され得る。キットは、エマルジョンの使用前(例えば、基材の表面上にエマルジョンをコーティングする前)に、出発材料(A)、(B)、及び(G)のヒドロシリル化反応を阻害し得る。典型的には、これは、(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサンを(C)ヒドロシリル化反応触媒とは別の部分に貯蔵することによって達成される。上記の剥離コーティングエマルジョンを調製するためのキットは、
(I)(A)脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンと、(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、(D)抑制剤と、(E)水と、(F)緩衝液と、(G)アルケニルオキシポリエーテルと、存在する場合、(H)ポリビニルアルコール化合物、(I)殺生物剤、及び(K)非官能性ポリオルガノシロキサンのうちの1つ以上と、を含む、ベースエマルジョンと、
(II)(A)脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンと、(C)ヒドロシリル化反応用触媒と、(G)アルケニルオキシポリエーテルと、(E)水と、(F)緩衝液と、を含む、硬化剤エマルジョンと、
任意選択で、(III)(J)消泡剤と、を含んでよい。ベースエマルジョン及び硬化剤エマルジョン(及び存在する場合、消泡剤)は、例えば、使用直前に周囲温度で混合することによって組み合わされて、上記のエマルジョンを形成してもよい。ベースエマルジョン及び硬化剤エマルジョンの相対量(ベース:硬化剤の重量比)は、50:1~1:1、あるいは35:1~1:1であってもよい。
【0048】
上記エマルジョンは、水相中に分散されたシリコーン剥離コーティング組成物(シリコーン相)を含む。上記のエマルジョンを調製する方法は、任意選択で、エマルジョンを所望の濃度のシリコーン相に希釈することを更に含んでもよい。上記の方法は、任意選択で、シリコーン剥離コーティングエマルジョンを60重量部~900重量部の追加の水で希釈することを更に含んでもよく、追加の水は、出発材料(E)として上記に記載されている通りである。
【0049】
使用方法
本発明はまた、エマルジョンを用いてコーティングされた基材を調製するプロセスも提供する。本方法は、エマルジョンを基材の表面上に配置することを含む。本方法は、コーティングされた基材を加熱すること、すなわち、50℃~120℃などの高温に曝露して、水を除去(乾燥)し、出発材料(A)、(B)、及び(G)のヒドロシリル化反応によってシリコーン剥離コーティング組成物を硬化させ、それによってコーティングされた基材を得ることを更に含む。
【0050】
エマルジョンは、任意の好適な様式で基材の表面上に配置又は分配され得る。典型的には、エマルジョンは、ウェットコーティング技術により、湿潤形態で塗布される。特定の実施形態において、エマルジョンは、i)スピンコーティング、ii)ブラシコーティング、iii)ドロップコーティング、iv)スプレーコーティング、v)ディップコーティング、vi)ロールコーティング、vii)フローコーティング、viii)スロットコーティング、ix)グラビアコーティング、x)サイズプレスコーティング、xi)フィルムプレスコーティング、xii)カーテンコーティング、又はxiii)i)~xii)のうちのいずれかの組み合わせによって塗布される。典型的には、エマルジョンを基材上に配置すると、基材上に湿ったウェット付着物がもたらされ、その後乾燥して硬化され、基材の表面上に硬化したシリコーン剥離コーティングを含むコーティングされた基材が得られる。
【0051】
基材は限定されず、いずれの基材であってもよい。基材は、付着物を乾燥及び硬化するための、一体型ホットプレート又は一体型若しくは独立型の炉にかけられてもよい。基材は、任意選択的に、連続的又は非連続的な形状、サイズ、寸法、表面粗さ、及び他の特性を有してもよい。特定の実施形態では、基材は、高温で軟化点温度を有する。
【0052】
基材は、熱硬化性及び/又は熱可塑性であってもよいプラスチックを含み得る。あるいは、基材は、食品接触用途に好適であり得る紙を含んでもよい。好適な基材の具体例としては、ポリアミド(PA);ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate、PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(polytrimethylene terephthalate、PTT)、ポリエチレンナフタレート(polyethylene naphthalate、PEN)、液晶ポリエステルなどのポリエステル;ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリプロピレン(polypropylene、PP)、ポリブチレンなどのポリオレフィン;スチレン樹脂;ポリオキシメチレン(polyoxymethylene、POM);ポリカーボネート(polycarbonate、PC);ポリメチレンメタクリレート(polymethylenemethacrylate、PMMA);ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC);ポリフェニレンスルフィド(polyphenylene sulfide、PPS);ポリフェニレンエーテル(polyphenylene ether、PPE);ポリイミド(polyimide、PI);ポリアミドイミド(polyamideimide、PAI);ポリエーテルイミド(polyetherimide、PEI);ポリスルホン(polysulfone、PSU);ポリエーテルスルホン;ポリケトン(polyketone、PK);ポリエーテルケトン(PEK);ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA);ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone、PEEK);ポリエーテルケトンケトン(polyetherketoneketone、PEKK);ポリアリレート(polyarylate、PAR);ポリエーテルニトリル(polyethernitrile、PEN);トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等のセルロース類;クラフト紙等の紙類が挙げられる。
【0053】
エマルジョン、又はウェット付着物は、典型的には、ある時間にわたり、高温で乾燥及び硬化される。この期間は、典型的には、(A)、(B)、及び(G)を含む出発物質の硬化、すなわち架橋をもたらすのに十分である。特定の実施形態では、当該時間は、0超~8時間、あるいは0超~2時間、あるいは0超~1時間、あるいは0超~30分、あるいは0超~10分、あるいは0超~2分、あるいは0超~1分、あるいは0超~30秒である。時間は、選択された高温、所望のフィルム厚さ、及び水の量を含む様々な要因に依存する。
【0054】
硬化は、典型的には、0.5~50秒、あるいは1秒~10秒の滞留時間を有する。滞留時間は、本明細書で使用するとき、(A)、(B)、(C)及び(G)を含む出発物質が高温に供される時間を指す。滞留時間は、ウェット付着物、又はその部分的に硬化した反応中間体が、典型的には硬化を開始する高温にさらされなくなった後であっても進行中の硬化がある場合があるので、硬化時間とは区別される。あるいは、コーティングした物品は、オーブン内のコンベヤーベルト上で調製してもよく、滞留時間は、オーブンの長さ(例えばメートル単位)をコンベヤーベルトのライン速度(例えば、メートル/秒)で割ることによって計算することができる。
【0055】
この時間は、硬化の反復、例えば、第1の硬化及び後硬化に細分でき、第1の硬化は、例えば1時間であり、後硬化は、例えば3時間である。高温は、このような反復において、室温を上回る任意の温度から、独立して選択されてもよく、各反復において同じであってもよい。
【0056】
フィルム及びコーティング基材の厚さ及び他の寸法に応じて、コーティング基材は、反復プロセスを介して形成することができる。例えば、第1の堆積物を形成し、第1の高温に第1の時間にわたってさらして、部分的に硬化した堆積物を得ることができる。次いで、第2の堆積物を、上述の部分的に硬化した堆積物上に配置し、第2の高温に第2の時間にわたってさらして、第2の部分的に硬化した堆積物を得ることができる。この部分的に硬化した堆積物はまた、第2の高温に第2の時間にわたってさらされる間にさらに硬化する。第3の堆積物を、第2の部分的に硬化した堆積物上に配置し、第3の高温に第3の時間にわたってさらして、第3の部分的に硬化した堆積物を得ることができる。第2の部分的に硬化した堆積物はまた、第2の高温に第2の時間にわたってさらされる間にさらに硬化する。このプロセスを、コーティングされた物品を所望どおりに構築するために、例えば1回~50回繰り返すことができる。部分的に硬化した層の複合体は、典型的には、最終後硬化、例えば、上記の高温及び時間に供される。各高温及び時間は独立して選択されてもよく、互いに同じであっても異なっていてもよい。物品が反復プロセスを介して形成されるとき、各付着物も、独立して選択されてもよく、組成物中で選択される成分及び/又はそれらの量が異なってもよい。あるいは、さらに、各反復層は、このような反復プロセスにおいて部分的に硬化されるだけというよりも、完全に硬化され得る。
【0057】
付着物は、ウェットフィルムを含み、反復プロセスは、部分的に硬化した層の硬化状態に応じて、ウェットオンウェットであってもよい。あるいは、反復プロセスは、ウェットオンドライであってもよい。基材上にエマルジョンから形成されたフィルムを備えるコーティング基材は、フィルム及び基材の相対厚さを含む様々な寸法を有してもよい。硬化されると、得られたシリコーン剥離コーティングは、その最終使用用途に応じて変化し得る厚さを有する。典型的には、シリコーン剥離コーティングは、0超~1未満μm、あるいは0超~0.9μm、あるいは0超~0.75μm、あるいは0超~0.5μm、あるいは0超~0.25μm、あるいは0超~0.2μmの厚さを有し得る。しかしながら、他の厚さ、例えば、0.05μm~0.2μmも想到される。例えば、フィルムの厚さは、0.1μm~10μm、あるいは、0.15μm~5μm、あるいは0.2μm~2μm、及びあるいは0.2μm~0.6μmであり得る。あるいは、基材がプラスチックであるか、又はフィルムを有する基材の表面がプラスチックを含むプラスチック塗装紙である場合、フィルムは、0.05~1未満μm、あるいは0.05~0.9μm、あるいは0.05~0.8μmの厚さを有し得る。あるいは、基材が紙である場合、フィルムは、0.2~1未満μm、あるいは0.2~0.9μm、あるいは0.2~0.8μm、あるいは0.2μm~0.7μm、あるいは0.2μm~0.6μm、あるいは0.2μm~0.5μm、あるいは0.2μm~0.3μmの厚さを有し得る。
【0058】
コーティングされた基材は、ベーカリー剥離紙などの食品接触用途に利用することができる。コーティングされた基材が食品接触用途に利用される場合、シリコーン剥離コーティングは、抽出物が少なく、基材への定着性が高く、吸水率が低いことが望ましい。例えば、本明細書に記載されるエマルジョンは、ベーカリー紙を形成するための方法において使用されてもよく、この方法は
(1)紙基材上に、シリコーン剥離コーティングの硬化後に0.2~1.0g/mのコーティング重量をもたらすのに十分な量の請求項1~10のいずれか一項に記載のエマルジョンをコーティングすることと、
(2)紙基材を乾燥させることと、
(3)シリコーン剥離コーティングを硬化させることと、を含む。
【実施例
【0059】
これらの例は、当業者に本発明を例示することを意図しており、請求項に記載されている発明を制限するものと解釈すべきではない。これらの例で使用した出発物質を以下の表1に記載する。
【0060】
【表1】
【0061】
DOWSIL(商標)及びSYL-OFFの商標を有する出発物質は、DSC(Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)を意味する)から市販されている。
【0062】
参考例A-NMRにより測定したVi/ヘキセニル含量及びSiH含量
NMR分光法を用いて、表1中の出発物質のビニル含量及びSiH含量を、以下のように測定した。核磁気共鳴(NMR)スペクトルを、ケイ素を含まない10mmのチューブ及びCDCl/Cr(AcAc)溶剤を使用して、NMR BRUKER AVIII(400MHz)上で得た。29Si-NMRスペクトルの化学シフトを、内部溶剤共鳴を基準とし、テトラメチルシランに対して報告する。
【0063】
参考例B-動的粘度(cSt)
表1中の出発物質の動粘度は以下のようにして測定した。動的粘度(DV)は、スピンドル2~4を備えたBrookfield Viscometer DV-I Primeを用いて、20~100rpmの速度及び25℃の温度で測定した。
【0064】
この参考例1において、ベースエマルジョンの試料を、以下の表2に示されるような出発物質及びそれらの量を組み合わせることによって調製した。各出発原料の量は、重量%で示されている。ベースエマルジョンの調製は、実験室で行った。pH緩衝水(水、クエン酸一水和物及び水酸化ナトリウムを含有)を、最初に秤量し、ブレンドした。ポリマー(A-1)、(B-1)及び(K-1)を秤量し、別々にブレンドし、界面活性剤(G)及び(H)を混合しながら添加した。次いで、緩衝水を注ぎ、5分間撹拌した。次いで、High Pressure Sonolatorを100バールで使用して、目標粒径(dv0.9が1マイクロメートル~2マイクロメートル)に達するまで、得られたプレミックスを乳化した。回収した量を、(D-1)ヒドロシリル化阻害剤及び殺生物剤パッケージ(市販されており、各ベースエマルジョンに対して同じ量で使用した)とブレンドした。
【0065】
【表2】
【0066】
この参考例2では、エマルジョン(浴/エマルジョン)の試料を、以下のように調製した。参考例1と同様にして調製したベースエマルジョンに、表1に示す触媒エマルジョン(C-1)、水及び消泡剤を配合した。重量部での量を、表3に示す。
【0067】
【表3】
【0068】
この参考例3では、ベーカリー紙基材を、0.4g/mの平均ケイ素コート重量を有する参考例2に記載のように調製したエマルジョンで、処理した。ケイ素コート重量(CW)、即時抽出物、硬化後抽出物、吸水性(コッブ)、及び定着を以下のように評価した。
【0069】
試料の標準によるケイ素元素の較正後、Oxford lab-x3500 XRF Analyzerを使用してX線蛍光によりケイ素コート重量を測定した。ブランクの基材のXRF測定を、コーティングされた紙試料の3回の測定前に実施し、g/mで表される平均ケイ素コート重量又は厚さを得た。
【0070】
紙基材の耐水性は、例えばTAPPI 441 om-04試験法に記載されているコッブ試験として知られている従来の吸収試験によって試験した。試料を45秒間水に曝露し、合計60秒後に吸収された水の量を重量で測定した。「コッブ値」は、g/mで表される吸収された水の質量を表す。コッブ値が低いほど、基材の耐水性は高い。20g/m未満のCobb値が、いくつかの顧客によって所望され、15g/m未満のCobb値が、他の顧客によって所望された。
【0071】
定着試験は、摩耗試験後の基材上に定着しているシリコーン剥離コーティングの摩擦落ち耐性の定量を提供した。コーティングされた基材のケイ素含量は、摩耗試験機による摩擦落とし前後にXRFによって測定し、最初にコーティングされた100%と比較して、摩擦落とし後に残ったSiの%として表した。摩擦落とし後に残ったSi%が高いほど、定着又は耐摩耗性は高い。
【0072】
コーティングされた紙の%でのシリコーン抽出物を、MIBKへの(20分)浸漬の前対後のそのシリコーンCWによって測定した。溶剤は、未硬化シリコーンを溶解し、損失百分率を測定する。この試験は、紙をコーティングした直後、及び室温で24時間エージングした後に実施し、即時抽出性(「IM Ext」)及び硬化後抽出性(「PC Ext」)と呼ぶ。結果を、表4において報告する。
【0073】
【表4】
【0074】
表4は、非反応性のLutensol XP100を含有する比較シリコーン剥離コーティングエマルジョン(C1、C2)が、アルケニルオキシポリエーテル(反応性界面活性剤)を含有するシリコーン剥離コーティングエマルジョン(1、2、3、4)と比較して顕著に高いレベルの即時抽出物を有するシリコーン剥離コーティングを生成したことを示した。これは、比較例C1及びC2が、実施例1、2、3、及び4よりも遅く、より不完全な硬化を有することを示した。実施例1~4は、直ちに完全に硬化したシリコーン剥離コーティングをもたらし、したがって、本発明が、新しく製造されたシリコーン処理されたベーカリー紙ロールの製造、切断、輸送及び流通用の迅速な装填を可能にすることを示す。
【0075】
更に、実施例1~4で調製したシリコーン剥離コーティングの定着性及び耐摩耗性は、比較例C1及びC2よりも改善された。比較例C1及びC2に対して、実施例1~3は大きな改善を示し、実施例4は比較的低いコーティング重量であっても改善を示した。
【0076】
吸水率は、C1及びC2と比較して実施例1~3について有益な顕著な減少を示し、実施例4では40%低いコーティング重量であっても、吸水率はC1及びC2と比較して減少した。理論に束縛されるものではないが、これにより、食品包装製造業者は、本発明のシリコーン剥離コーティングエマルジョンを使用して調製された塗装紙を使用して、冷凍食品包装、蒸気調理、及びオーブン又は電子レンジ用紙パウチ調理などの新しい食品紙包装用途へのアクセスを想定できると考えられる。
【0077】
ベーキング残渣試験によって測定された抗付着性能(低いほど良好)もまた、C1及びC2の非反応性界面活性剤を含有する比較コーティングエマルジョンと比較して、実施例1~4各々のアルケニルオキシポリエーテルを含有するシリコーン剥離コーティングエマルジョンを用いると、より低いコーティング重量であっても改善され、改善されたリサイクル性及び堆肥化可能性並びにより低いコスト及び生産改善のためにより薄いコーティング重量を促進する。
【0078】
産業上の利用可能性
解決しようとする課題:食品接触用途のための紙基材をコーティングし、それによって離型性能及び耐水性を有する紙基材、例えば、ベーカリー紙を提供するためのシリコーン剥離コーティングエマルジョンの使用は、同じ用途のためのフッ素化材料及びクロム含有材料に関連する健康上の懸念に対する魅力的な代替案として、望ましい。しかしながら、ダスト形成のような抄紙機インライン運転性の問題は、シリコーンエマルジョンの使用にとって、主要な困難性を有していた。
【0079】
解決策:本明細書に記載のシリコーン剥離コーティングエマルジョンは、食品接触用途に適した紙基材上のシリコーン剥離コーティングを調製するために、使用され得る。シリコーン剥離コーティングエマルジョンを紙基材に塗布し、乾燥して硬化させ、シリコーン剥離コーティングをその上に形成することができる(上記の実施例に示されるように、上記の定着試験方法は、試験後に基材上に高い割合のシリコーン剥離コーティングが残っていることを示す。更に、本明細書に記載のエマルジョンは、(非反応性界面活性剤を含有するシリコーン剥離コーティングエマルジョンを用いて生成されるコーティングと比較して)より低い抽出物などの他の利点を有するシリコーン剥離コーティングを生成することができ、それによって食品への移行の可能性を最小限に抑える。他の利点は、表4のデータについて上述した通りである。
【0080】
用語の定義及び使用
この出願において、全ての量、比及び百分率は、特に指示しない限り、重量に基づく。エマルジョン又は組成物中の全ての出発物質の量は、総計100重量%である。「発明の概要」及び「要約書」は、参照により本明細書に組み込まれる。冠詞「a」、「an」、及び「the」は各々、明細書の文脈によって特に指示されない限り、1つ以上を指す。単数形は、別途記載のない限り、複数形を含む。「~を含む(comprising)」、「~から本質的になる(consisting essentially of)」、及び「~からなる(consisting of)」という移行句は、Manual of Patent Examining Procedure Ninth Edition,Revision 08.2017,Last Revised January 2018のセクション§2111.03 I.、II.、及びIIIに記載されているように使用される。本明細書で使用される略語は、表11における定義を有する。範囲の開示は、その範囲自体及び範囲内に包含される任意のもの、並びに端点を含む。更に、例えば、15~400の範囲の開示は、15~137、138~265、及び266~400のサブセット、並びにその範囲に包含される任意の他のサブセットを含む。同様に、マーカッシュ群の開示は、その群全体を含み、そこに包含される任意の個別の要素及び下位群も含む。例えば、マーカッシュ群(i)α,ω-ジメチルハイドロゲンシロキシ終端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、(ii)α,ω-ジメチルハイドロゲンシロキシ終端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、(iii)α,ω-トリメチルシロキシ終端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、(iv)α,ω-トリメチルシロキシ終端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、(v)α-ジメチルハイドロゲンシロキシ-ω-トリメチルシロキシ終端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、(vi)α-ジメチルハイドロゲンシロキシ-ω-トリメチルシロキシ終端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、(vii)それらの2つ以上の組み合わせの開示は、メンバー(iii)α,ω-トリメチルシロキシ終端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン);サブグループ(iii)α,ω-トリメチルシロキシ終端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)及び(iv)α,ω-トリメチルシロキシ終端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、並びにその中に包含される任意の他の個々のメンバー及びサブグループを、個別に含む。
【0081】
本出願において使用される以下の略語は、以下の表7に記載される定義を有する。
【0082】
【表5】
【0083】
本発明の実施形態
第1の実施形態では、食品接触用途に適したベーカリー紙は、紙を含む基材と、基材の表面上にコーティングされたシリコーン剥離コーティングと、を含み、シリコーン剥離コーティングは、
(1)基材の表面上に、シリコーン剥離コーティングエマルジョンを適用することであって、シリコーン剥離コーティングエマルジョンは、
(A)単位式(R SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2(SiO4/2の脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンであって、各Rは、独立して選択されるアルキル基であり、各Rは、独立して選択されるアルケニル基であり、添字i、f、g、h、及びjは、1分子当たりの各シロキサン単位の平均数を表し、添字i、f、g、h、及びjは、0≦i≦4であるような値を有し、fは、0~4であり、0≦g≦1400であり、0≦h≦200であり、jは、0又は1であり、但し、量(i+f)=2~4のとき、量(f+h)≧2、かつ量(i+f+g+h)は15~1400である、脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンと、
(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン中のケイ素結合水素原子の、(A)脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン中のケイ素結合アルケニル基に対するモル比(SiH:SiVi比)が1.2:1~3.0:1となるのに十分な量である、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、
(C)ヒドロシリル化反応触媒であって、(A)脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン及び(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサンの合計量に基づいて、10ppm~1000ppmの白金族金属を提供するのに十分な量である、ヒドロシリル化反応触媒と、
(D)ヒドロシリル化反応抑制剤であって、(A)脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン100重量部当たり0.02重量部~0.8重量部のヒドロシリル化反応抑制剤と、
(E)水と、
(F)緩衝液であって、(A)脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン100重量部当たり0.4重量部~1.6重量部の緩衝液と、
(G)アルケニルオキシポリエーテルであって、(A)脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン100重量部当たり0.05重量部~10重量部であり、(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン及び(G)アルケニルオキシポリエーテルの量は、(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン中のケイ素結合水素原子の(G)アルケニルオキシポリエーテル中のアルケニル基に対するモル比(SiH:アルケニル比)が2:1~25:1となるのに十分である、アルケニルオキシポリエーテルと、
(H)ポリビニルアルコール化合物であって、(A)脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン100重量部当たり0~10重量部のポリビニルアルコール化合物と、
任意選択で、(I)殺生物剤と、
(J)消泡剤であって、(A)脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン100重量部当たり0~0.3重量部の消泡剤と、
(K)単位式(R SiO1/2(R SiO2/2の非官能性ポリオルガノシロキサンであって、(A)脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン100重量部当たり0~15重量部であり、式中、Rは、上記の通りであり、添字cは、回転粘度計によって25℃で試験したときに5~60,000cStの粘度を非官能性ポリオルガノシロキサンに与えるのに十分な値を有し、硬化後に0.2~1.0g/mのコーティング重量を提供してシリコーン剥離コーティングを形成するのに十分な量である、非官能性ポリオルガノシロキサンと、含む、ことと、
(2)基材を乾燥させることと、
(3)シリコーン剥離コーティングを硬化させることと、を含む、方法によって調製される。
【0084】
第2の実施形態では、第1の実施形態の方法において、(A)脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンは、単位式(R SiO1/2(R SiO2/2を有するビスアルケニル末端ポリジオルガノシロキサンであり、式中、各Rはメチルであり、各Rはビニルであり、添字gは15~1200である。
【0085】
第3の実施形態では、第1の実施形態又は第2の実施形態の方法において、(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、単位式(R SiO1/2(RHSiO2/2を有し、式中、Rはメチルであり、3≦z≦250である。
【0086】
第4の実施形態では、第1~第3の実施形態のいずれか1つの方法において、ポリビニルアルコール化合物は、出発材料(A)100重量部当たり2.5重量部~10重量部の量で存在し、ポリビニルアルコール化合物は、5cSt~200cStの粘度を有する。
【0087】
第5の実施形態では、第1~第4の実施形態のいずれか1つの方法において、アルケニルオキシポリエーテルは直鎖状である。
【0088】
第6の実施形態では、第1~第5の実施形態のいずれか1つに記載の方法において、アルケニルオキシポリエーテルは、式:
【0089】
【化4】

を有し、式中、添字aは10~16である。
【0090】
第7の実施形態では、第6の実施形態の方法において、(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン及び(G)アルケニルオキシポリエーテルの量は、SiH:アルケニル比が2:1~12:1となるのに十分である。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン剥離コーティングエマルジョンであって、
(A)単位式(R SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2(SiO4/2の脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンであって、各Rは、独立して選択されるアルキル基であり、各Rは、独立して選択されるアルケニル基であり、添字i、f、g、h、及びjは、1分子当たりの各シロキサン単位の平均数を表し、添字i、f、g、h、及びjは、0≦i≦4であるような値を有し、fは、0~4であり、0≦g≦1400であり、0≦h≦200であり、jは、0又は1であり、但し、量(i+f)=2~4のとき、量(f+h)≧2、かつ量(i+f+g+h)は15~1400である、脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンと、
(B)ポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、(B)前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサン中のケイ素結合水素原子の、(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン中のケイ素結合アルケニル基に対するモル比(SiH:SiVi比)が1.2:1~3.0:1となるのに十分な量である、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、
(C)ヒドロシリル化反応触媒であって、(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン及び(B)前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンの合計量に基づいて、10ppm~1000ppmの白金族金属を提供するのに十分な量である、ヒドロシリル化反応触媒と、
(D)ヒドロシリル化反応抑制剤であって、(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン100重量部当たり0.02重量部~0.8重量部のヒドロシリル化反応抑制剤と、
(E)水と、
(F)緩衝液であって、(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン100重量部当たり0.4重量部~1.6重量部の緩衝液と、
(G)アルケニルオキシポリエーテルであって、(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン100重量部当たり0.05重量部~10重量部であり、(B)前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサン及び(G)前記アルケニルオキシポリエーテルの量は、(B)前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサン中のケイ素結合水素原子の(G)前記アルケニルオキシポリエーテル中のアルケニル基に対するモル比(SiH:アルケニル比)が2:1~25:1となるのに十分である、アルケニルオキシポリエーテルと、
(H)ポリビニルアルコール化合物であって、(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン100重量部当たり0~10重量部のポリビニルアルコール化合物と、
任意選択で、(I)殺生物剤と、
(J)消泡剤であって、(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン100重量部当たり0~0.3重量部の消泡剤と、
(K)単位式(R SiO1/2(R SiO2/2の非官能性ポリオルガノシロキサンであって、(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン100重量部当たり0~15重量部であり、式中、Rは、前記の通りであり、添字cは、スピンドル2~4を備えたBrookfield Viscometer DV-I Primeを20~100rpmの速度で用いて回転粘度計によって25℃で試験したときに5~60,000cStの粘度を前記非官能性ポリオルガノシロキサンに与えるのに十分な値を有する、非官能性ポリオルガノシロキサンと、を含む、シリコーン剥離コーティングエマルジョン。
【請求項2】
(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンの単位式中、i=j=h=0であり、添字f=2であり、前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンが、単位式(R SiO1/2(R SiO2/2を有するビスアルケニル末端ポリジオルガノシロキサンであり、式中、各Rはメチルであり、各Rはビニルであり、添字gは15~1200である、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項3】
(B)前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンが、単位式(R SiO1/2(RHSiO2/2を有し、式中、Rはメチルであり、3≦z≦250である、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項4】
(C)前記ヒドロシリル化反応触媒が、アルケニル官能性ポリジアルキルシロキサンと白金との錯体を含む、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項5】
(D)前記ヒドロシリル化反応阻害剤が、アセチレン系アルコールを含む、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項6】
(F)前記緩衝液が、クエン酸及び水酸化ナトリウムを含む、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項7】
(H)前記ポリビニルアルコール化合物が、出発物質(A)100重量部当たり1.5重量部~10重量部の量で存在し、前記ポリビニルアルコール化合物が、スピンドル2~4を備えたBrookfield Viscometer DV-I Primeを用いて、20~100rpmの速度及び25℃の温度で測定した5cSt~200cStの粘度を有する、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項8】
(K)前記ポリオルガノシロキサンが存在し、α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンを含む、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項9】
(G)前記アルケニルオキシポリエーテルが、式:
【化1】

を有し、式中、添字aは10~16である、請求項1に記載のエマルジョン。
【請求項10】
(B)前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサン及び(G)前記アルケニルオキシポリエーテルの量が、SiH:/アルケニル比が2:1~12:1となるのに十分である、請求項9に記載のエマルジョン。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の剥離コーティングエマルジョンを調製するためのキットであって、
(I)(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンと、(B)前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、(D)前記抑制剤と、(E)水と、(F)前記緩衝液と、(G)前記アルケニルオキシポリエーテルと、存在する場合、(H)前記ポリビニルアルコール、(I)前記殺生物剤、及び(K)前記ポリオルガノシロキサンのうちの1つ以上と、を含む、ベースエマルジョンと、
(II)(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンと、(C)前記ヒドロシリル化反応触媒と、(G)前記アルケニルオキシポリエーテルと、(E)水と、(F)前記緩衝液と、存在する場合、存在する場合、(H)前記ポリビニルアルコール化合物、(I)前記殺生物剤、及び(K)前記非官能性ポリオルガノシロキサンのうちの1つ以上と、を含む、硬化剤エマルジョンと、
任意選択で、(III)(J)前記消泡剤を含む第3の部分と、を含む、キット。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載のエマルジョンを形成する方法であって、
(1)(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンと、(B)前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、(D)前記抑制剤と、(E)水と、(F)前記緩衝液と、(G)前記アルケニルオキシポリエーテルと、存在する場合、(H)前記ポリビニルアルコール、(I)前記殺生物剤、及び(K)前記ポリオルガノシロキサンのうちの1つ以上と、を含む、出発材料を乳化し、それによってベースを形成することと、
(2)硬化剤エマルジョン1重量部当たり1~50重量部のベースを組み合わせることであって、前記硬化剤エマルジョンは、(A)前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン、(C)前記ヒドロシリル化反応用触媒、(G)前記アルケニルオキシポリエーテル、(E)水、及び(F)前記緩衝液を含む、ことと、
任意選択で、(3)(J)前記消泡剤を組み合わせ、それによって前記シリコーン剥離コーティングエマルジョンを形成することと、
任意選択で、(4)前記シリコーン剥離コーティングエマルジョンを60重量部~900重量部の追加の水で希釈することと、を含む、方法。
【請求項13】
工程(2)、及び存在する場合工程(3)が、50℃未満の温度で行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ベーカリー紙を形成する方法であって、
(1)紙を含む基材上に、前記シリコーン剥離コーティングの硬化後に0.2~1.0g/mのコーティング重量をもたらすのに十分な量の請求項1~10のいずれか一項に記載のエマルジョンを適用することと、
(2)前記基材を乾燥させることと、
(3)前記シリコーン剥離コーティングを硬化させることと、を含む、方法。
【請求項15】
プラスチックを含む基材上での請求項11に記載のキットから調製されるエマルジョンの使用。
【国際調査報告】