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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-21
(54)【発明の名称】単回投与化粧品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9794 20170101AFI20250214BHJP
   A61K 8/11 20060101ALI20250214BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20250214BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20250214BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
A61K8/9794
A61K8/11
A61K8/92
A61K8/31
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545753
(86)(22)【出願日】2023-02-09
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2023053200
(87)【国際公開番号】W WO2023156286
(87)【国際公開日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】22382143.0
(32)【優先日】2022-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524284944
【氏名又は名称】バイオファクトリア ナトゥラエ エト サルス エセアー
(71)【出願人】
【識別番号】524284955
【氏名又は名称】サンス バルサ,フアン マヌエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】サンス バルサ,フアン マヌエル
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA161
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC242
4C083AC332
4C083AD391
4C083AD611
4C083BB12
4C083BB22
4C083BB24
4C083BB41
4C083CC01
4C083CC02
4C083CC03
4C083DD21
4C083DD47
4C083EE01
4C083EE03
4C083FF04
(57)【要約】
本発明は、単回投与化粧品およびその製造方法に関する。本発明の単回投与化粧品は、アロエベラ植物の柔組織の固形部分、固形部分を完全に封入するワックス特性を有するコーティング、および、コーティングと固形部分との間に位置する少なくとも1つの開封テープを有する。本発明の化粧品は、アロエベラの取り扱いおよび適用をより良くし、また添加物を使用することなくアロエベラ100%の製品の特性および安定性を保持する。この化粧品の製造方法は、アロエベラ柔組織の特性を損なわずに保持することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アロエベラ植物の柔組織の固形部分(2)、コーティング(3)、および少なくとも1つの開封テープ(4)を有することを特徴とする単回投与化粧品(1)であって、
前記コーティング(3)が、前記固形部分(2)を完全に封入し、かつ、炭化水素ワックスおよび天然ワックスからなる群から選択されるワックス特性を有する材料またはそれらの混合物で作られ、および、
前記開封テープ(4)が、不織布材で作られ、かつ、前記コーティングおよび前記固形部分の間に配置される、単回投与化粧品。
【請求項2】
前記コーティング(3)が、さらにナタマイシンを含む、請求項1に記載の単回投与化粧品。
【請求項3】
前記コーティング(3)が、少なくとも1つの合成または天然の染料をさらに含む、請求項1または2に記載の単回投与化粧品。
【請求項4】
前記化粧品(1)が、前記柔組織の固形部分(2)内に挿入された、ビタミン類、ミネラル、精油およびそれらの混合物からなる群から選択される、からなる群から選択される、少なくとも1つの美容有効成分をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の単回投与化粧品。
【請求項5】
以下の工程を含む、請求項1に記載の単回投与化粧品(1)の製造方法:
(i)アロエベラの葉の表面を洗浄および消毒すること;
(ii)前記アロエベラの葉のクチクラおよび外皮を取り除き、アロエベラの柔組織を得ること;
(iii)前記アロエベラの柔組織を切断して固形部分(2)にし、前記固形部分(2)を加工助剤の溶液に浸漬すること;
(iv)前記加工助剤の溶液を濾過により前記部分から除去すること;
(v)前記固形部分(2)の各々に、不織布材である少なくとも1つの開封テープ(4)を取り付けること;
(vi)前記工程(v)の開封テープ(4)を有する前記固形部分(2)を、炭化水素ワックスおよび天然ワックスからなる群から選択されるワックス特性を有する材料またはそれらの混合物で作られているコーティングで覆うこと;および
(vii)工程(vi)で得られた前記生成物に高圧処理を施して、前記化粧品(1)を得ることであって、ここで圧力が400MPa~600MPaである。
【請求項6】
工程(v)の前に、ビタミン類、ミネラル、精油およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの美容有効成分を前記柔組織内に挿入する追加の工程を有する、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
工程(vii)の前記高圧処理の圧力が600MPaである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
工程(vii)の前記高圧処理の時間が3~6分である、請求項5~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
工程(vii)の前記高圧処理の時間が3分である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記製造方法が、工程(vii)で得られた前記生成物をスタンドアップパウチまたは密封小袋に包装する工程(viii)をさらに含む、請求項5~9のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、化粧品に関する。特に、本発明は、アロエベラ植物の柔組織の固形部分、および、固形部分を完全に封入するワックス特性を有するコーティングを備えた単回投与化粧品に関する。
【0002】
本発明はまた、前記化粧品の製造方法に関する。
【0003】
[背景技術]
アロエベラはアオイ科の植物に属する。アロエベラは、水分を多く含む(約99~99.5%)、多肉で柔らかい植物である。固形分は0.5~1%で、脂溶性および水溶性のミネラル、ビタミン類、単純多糖類/複合多糖類、有機酸、酵素、およびフェノール化合物などの様々な有効成分から構成されている。
【0004】
ロゼット状に配列した多肉質の葉は、3つの層で構成されている。外側の層は樹皮または外皮で構成され、植物全体の重量の20~30%を占め、緑色または青緑色をしている。中央の層は柔組織と称され、フィレット、パルプ、またはゲルとしても知られ、透明であり、ゲル状で繊維質のマトリックスを有し、植物全体の重量の50~60%を占める。また、外皮と柔組織との間には、葉の内面全体を占めるアロイン管が存在し、これは、ラテックスとも称されるアシバー(acybar)が循環する縦方向に向いた管群である。
【0005】
アロエベラはその治療効果がよく知られている。アロエベラには、免疫調節作用、創傷および火傷の治癒作用、血糖降下作用、抗がん作用、胃腸保護作用、抗真菌(antigunfal)ならびに抗炎症特性を含む、多くの有益な効果が報告されている。アロエベラのこれらの有益な治療特性は、いくつかの商業的用途に採用されている。
【0006】
美容成分として、アロエベラは多くの主流のスキンケア製品および化粧品で広く使用されている。本植物は非常に肌に優しく、アレルギー、過敏症、または皮膚反応を引き起こす危険性が低く、多目的に使用できる。アロエベラは、日焼け手入れ用の製品に、ならびに、顔用、髪用、およびボディ用のケア製品によく使用されている。
【0007】
アロエベラを高い割合で含む化粧品または組成物は、アロエベラの特性の劣化を防ぐために、その他の化合物または有効成分、例えば、防腐剤または抗菌剤、および、化粧品または組成物を安定化し保存するのに役立つ他の化学製品を常に伴う。
【0008】
例えば、WO2009112558A1には、50重量%~99重量%のアロエベラゲル、アクリロイルラウリン酸コポリマーを含む乳化剤、ソルビトールポリエトキシレートのエステルからなる非イオン界面活性剤、および天然由来の油を含む、化粧品の基剤として使用される組成物が記載されている。
【0009】
特開2003-252719Aは、主にアロエベラゲルジュースから構成される化粧品に関連する。本製品はアロエベラゲルのジュース(75~83重量%)、1,3ブチレングリコール、グリセリン、およびヒアルロン酸ナトリウムを含む。有効成分は皮膚に潤いを与え、皮膚のシミおよびソバカスを防ぎ、皮膚におけるコラーゲンの再生およびスーパーオキシド分解酵素の働きを促進する。
【0010】
しかし、これらの組成物における一部のケミカルな化合物の使用は、消費者の健康に悪影響を及ぼす可能性がある。また、これらのケミカルな化合物またはその他の添加物を含まない、100%天然の化粧品への関心も高まっている。
【0011】
しかし、そのようなケミカルな化合物を使用せずに、化粧品に含まれる化合物の特性を維持することは難しい。アロエベラの場合、アロエベラの生成品を植物から直接的に採取するとアロエの全ての利点を最も豊富に得られるが、アロエベラの有効成分は時間とともに劣化し、全ての特性を保持することは困難である。
【0012】
その特性の劣化を防ぎ、純粋なアロエベラの保管寿命を延ばすために用いられる方法の1つは、EP3067060A1に記載されているように、アロエベラのゲルを凍結処理することである。
【0013】
EP3067060A1は、アロエベラ植物の天然の特性を全て含む純粋なアロエベラゲルを使用することを可能にするプロセスに関するものであり、凍結によって達成される安定化プロセスを組み込むことによって、コールドクリーム、ローション、ポマード、または軟膏を局所的に塗布することが可能になり、アロエベラの全ての典型的な使用(ただし、主にあらゆる種類の火傷を緩和するため)が達成される。ゲルは、何ら損傷も被ること無しに-19℃の低温にも耐えられるように設計された、PETまたは同様のプラスチックの容器に個別に保存される。得られる生成物は、安定剤を含まない天然アロエベラコールドゲルである。
【0014】
EP3067060A1の欠点は以下の通りである。生成物を得る方法に使用される工程、例えば、アロエベラを粉砕し、濾過することは、その天然の構造を変化させ、多糖類、ビタミン類、ミネラルなどのアロエベラの機能性分子の損失を引き起こす。さらに、この処理によって、アロエベラの植物組織に生存する内生微生物も失われてしまう。
【0015】
加えて、アロエベラゲルはゲルを安定化させる凍結処理に供される。しかし、凍結処理は一定の微生物を不活性化するが、その他の処理(加熱、照射、酸性化など)と組み合わせないかぎり、十分な効果が得られない。
【0016】
さらに、このようなプラスチック容器での保管では、温度差、光への暴露、および保管寿命に直接影響するその他の保管要因により、アロエベラゲルの劣化を防ぐことはできない。この最後の側面は、製品を低温で保管しなければならないという事実にも影響され、特別な条件が必要となるため、輸送、保管、および取り扱いに困難が生じる。
【0017】
したがって、安定剤または防腐剤などのケミカルな化合物の配合の必要性、および/または、複雑な製造工程の使用を伴うことなく、純粋なアロエベラの全ての特性を集結し、かつ、長期間安定な、アロエベラをベースにした新規の化粧品を見出す必要がある。
【0018】
[発明の概要]
従来技術の課題を考慮して、本発明の主な目的は、アロエベラ植物の柔組織の固形部分、固形部分を完全に封入するワックス特性を有するコーティング、およびコーティングと固形部分との間に位置する少なくとも1つの開封テープを有する単回投与化粧品を提供することである。
【0019】
本発明の化粧品は、添加物を使用せずに100%アロエベラ生成物の特性と安定性を保持するという技術的課題を解決する。
【0020】
従来の化粧品との主な技術的な違いは、この新規の化粧品が、その効果を薄める他の成分、防腐剤、着色料、人工香料、化粧品の品質を低下させる好ましくない物質を含まず、100%純粋な/天然の植物を直接肌に塗布するようなものであるという事実にある。
【0021】
もう一つの予想外の技術的な違いは、本発明の化粧品により、この植物に天然に生存する様々な内生微生物、例えば、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)、エルシニア・クリステンセニイ(Yersinia kristensenii)、エルウィニア・ビリンギエ(Erwinia billingiae)、ラーネラ・ビクトリアナ(Rahnella Victoriana)、パントエア・アリイ(Pantoea allii)、セルラチア・リクエファシエンス(Serratia liquefaciens)、エルシニア・ラッケリ(Yersinia ruckeri)、ラネーラ・ウールベジンゲンシス(Rahnella woolbedingensis)、レクレルシア・アデカルボキシラタ(Leclercia adecarboxylata)、セルラチア・グリメシイ(Serratia grimesii)、ラネーラ・イヌシタタ(Rahnella inusitata)およびパントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)の生存を保持することが可能になる点である。これらの内生微生物は、様々な植物組織(柔組織)に存在する天然のプロバイオティクスであり、皮膚の免疫システムおよび皮膚疾患の治療に有益な効果をもたらす。
【0022】
従来の化粧品は、ゲル状であれ、クリーム状であれ、または軟膏状であれ、供されるその製造プロセスでこれら内生微生物が生息するアロエ植物の組織が必ず破壊されるため、これら内生微生物を含み得ない。
【0023】
一方で、従来の化粧品は、上述したように、ゲル状、クリーム状、または軟膏状の形態で市販されている。このような化粧品は、使用者が塗布する際に、適量を塗布できなかったり、製品のテクスチャーが扱いにくかったりするため、使用者によるこれら化粧品の塗布が不十分な場合がある。
【0024】
本発明の化粧品は、ワックス特性を有するコーティングで覆われた植物の天然片の形態であり、アロエベラのより良好な取扱いを可能にし、かつ、その特性を保持する。さらに、本発明の化粧品は、単回投与に適した量のアロエベラ柔組織の一部を含む。
【0025】
さらに、ワックス特性を有するコーティングは、滑りやすい生成物であるため使用者にとって使用しづらいことがあるアロエベラ植物の柔組織片の操作を容易にする。
【0026】
ワックス特性を有するコーティングにはいくつかの機能がある。コーティングは、アロエベラ植物の柔組織片を脱水による劣化から保護する。さらに、コーティングは微生物に対する物理的バリアを形成し、アロエベラ植物の柔組織片の表面に微生物が付着するのを防ぎ、微生物の増殖を抑える。
【0027】
加えて、少なくとも1つの開封テープの存在により、化粧品の使用を容易にする。具体的には、開封テープはコーティングの一部を除去するのに役立ち、固形部分のある部分は被覆されておらず、別の部分は依然と被覆されている。被覆されていない固形部分は、使用者の身体の任意の部分に塗布することができる。
【0028】
第1の態様において、本発明は、アロエベラ植物の柔組織の固形部分、コーティング、および少なくとも1つの開封テープを含み、コーティングは固形部分を完全に封入し、炭化水素ワックスおよび天然ワックスからなる群から選択されるワックス特性を有する材料またはそれらの混合物で作られ、開封テープは不織布材で作られ、コーティングと固形部分との間に位置する、単回投与化粧品を指す。
【0029】
天然ワックスの例としては、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、蜜蝋、ジャパンワックス、米糠ワックス、およびヒマワリ種子ワックスが挙げられる。上記のワックスのうち、蜜蝋がより好ましい。
【0030】
炭化水素ワックスの例としては、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、セレシン、およびマイクロクリスタリンワックスが挙げられる。
【0031】
任意に、本発明の化粧品のコーティングは、生成物の真菌汚染を防ぐためにナタマイシンをさらに含む。3~20ppmの用量を使用し得る。
【0032】
任意に、本発明の化粧品のコーティングは、少なくとも1つの合成または天然の染料をさらに含む。好ましくは、染料は銅クロロフィリンである。
【0033】
本発明において、アロエベラの柔組織は、任意のアロエベラ植物、中でも、例えば、アロエ・バルバデンシス・ミラー(Aloe barbadensis Miller)、アロエ・アルボレスセンス(Aloe Arborescens)、アロエ・フェロックス(Aloe Ferox)、アロエ・ベラ(L.)バーン(Aloe vera (L.) Burn)、アロエ・オフィシナリス(Aloe officinalis)、アロエ・ブルガリス・ラマルク(Aloe Vulgaris Lamarck)から抽出することができる。好ましくは、アロエベラ植物は、アロエ・バルバデンシス・ミラーである。
【0034】
開封テープは100%の不織布材でできている。本繊維材は、フィラメントから直接製造される平らな多孔性シートである。本繊維材は、その機能にとって最良の選択となる特性、中でもその引き裂き強度とコーティングへの接着能力と、を持っている。
【0035】
別の実施形態において、本発明の単回投与化粧品は、柔組織内に挿入されたビタミン類、ミネラル、精油およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの美容有効成分をさらに含む。
【0036】
少なくとも1つの美容有効成分の柔組織内への挿入は、分子濃度勾配による単純拡散によって、または柔組織内への注入による強制拡散によって行うことができる。
【0037】
本発明の単回投与化粧品の化粧品組成物に使用される有効成分は、多種多様な目的および機能を有してもよい。一般に、このような成分は、使用者に、好ましくは使用者の皮膚または毛髪に、特に抗老化、細胞再生、抗酸化、殺菌、保湿、治癒効果などの何らかの利益を提供するか、または少なくとも提供することが期待される。
【0038】
本発明と共に使用される有効成分の量は、特定の用途に応じて広く変化し得、そのような量の全てが当業者によって決定され得る。例えば、有効成分の量は、その成分が皮膚の毛穴を通して、その上に、またはその内部に浸透する能力に応じて変化し得る。活性成分の相対的な量に影響を及ぼす可能性のある他の要因として、関与する特定の活性成分、所望される特定の利益、活性成分に対する使用者の感受性、使用者の健康状態、年齢、皮膚の状態などが挙げられる。まとめると、有効成分は、好ましくは、皮膚への所望の効果をもたらすのに十分に多い量である「安全かつ有効な量」で使用される。
【0039】
本発明の第2の態様において、本発明の第1の態様の単回投与化粧品の製造方法。本方法は、以下の工程を含む:
(i)アロエベラの葉の表面を洗浄および消毒すること;
(ii)アロエベラの葉のクチクラおよび外皮を取り除き、アロエベラの柔組織を得ること;
(iii)アロエベラの柔組織を切断して固形部分にし、固形部分を加工助剤の溶液に浸漬すること;
(iv)加工助剤の溶液を濾過により当該部分から除去すること;
(v)固形部分の各々に、不織布材である少なくとも1つの開封テープを取り付けること;
(vi)工程(v)の開封テープを有する部分を、炭化水素ワックスおよび天然ワックスからなる群から選択されるワックス特性を有する材料またはそれらの混合物で作られているもので覆うこと;および
(vii)工程(vi)で得られた生成物に高圧処理を施して化粧品を得ることであって、ここで、圧力が400MPa~600MPaである。
【0040】
本発明において、「加工助剤」とは、製造目的で間接的に添加される補助的な技術上の物質である。これらの物質は、製造プロセスの間、原料を安定に保つために製造プロセス中に化粧品に添加されるものであり、最終形態で包装される前に、適正製造基準に従って化粧品から除去される。当業者であれば、本用途で前記加工助剤を選択する方法を知っているはずである。
【0041】
別の実施形態において、本発明の第1の態様の単回投与化粧品が少なくとも1つの美容有効成分をさらに含む場合、工程(iv)の前に、挿入されるビタミン類、ミネラル、精油およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの美容有効成分を柔組織内に挿入することからなる追加の工程を有する。
【0042】
少なくとも1つの美容有効成分の柔組織内への挿入は、分子濃度勾配による単純拡散によって、または柔組織内への注入による強制拡散によって行うことができる。
【0043】
本発明の方法において、好ましくは、工程(vii)の高圧処理の時間は3~6分である。より好ましくは、工程(vii)の高圧処理の時間は3分である。
【0044】
任意で、本方法は、工程(vii)で得られた生成物をスタンドアップパウチまたは密封小袋に包装する工程(viii)を含む。
【0045】
[図面の簡単な説明]
図面について以下に説明する。これらは例示的な実施形態を示すものであり、その範囲を限定するものではない。
図1は未開封の化粧品を示す。
図2は開封中の化粧品を示す。
図3は開封された化粧品を示し、コーティングの一部が取り除かれ、塗布のために柔組織の固形部分の一部が露出している。
図4は、分析したアロエベラ形態(本発明の化粧品、すなわちアロエベラゲルおよびアロエベラクリーム)の各々について、10ヶ月保存後の、各有効化合物(アセマンナン(アロベロース)、グルコマンナン、マンノース、ならびにビタミンAおよびC)の初期濃度に対する損失率%を示している。
【0046】
[実施形態の説明]
実施例1.本発明の化粧品の製造方法
まず第一に、当業者であれば、本発明に従った工程を実施するための適切な装置および機器を把握しており、専門的な経験に基づいて適切なシステムを選択するであろうから、ここで更なる広範な詳細を説明する必要はない。
【0047】
最初に、アロエベラの葉の表面の粗い汚れを水浸漬槽に浸漬して取り除いた。その後、割合(1:3)の水および次亜塩素酸ナトリウムにアロエベラの葉を5分間浸漬することにより、アロエベラの樹皮の消毒を行った。次いで、アロエベラの葉を水槽に3分間浸漬して水洗した。
【0048】
次に、アロエベラの葉の外側の樹皮を工業用洗濯機で機械的にブラッシングし、次いで加圧水ジェットですすいだ。アロエベラの葉の上部および下部を切断刃で切りそろえ、次いで、加圧水ジェットですすいだ。
【0049】
その後、アロエベラの葉を剥皮し、葉のクチクラと外皮を取り除き、剪断刃または高圧水噴射装置を用いて部分的(約5x2.5x1.5cm)に切断した、アロエベラの柔組織片を得た。
【0050】
アロエベラ柔組織の切断部分を、沸騰水(100℃)で30~60秒間、工業的ブランチングに供した。次いで、その部分を加工助剤の溶液に浸漬し、切断部分をその後18~20時間保存した。この浸漬により、アロエベラの柔組織片は、色およびテクスチャーなどの物理的特性を失わず、保存期間中の汚染も防ぐことができた。
【0051】
この実施例では、加工助剤は、ソルビン酸塩(0.2~0.4%w/w)、安息香酸塩(0.05~0.1%w/w)、アスコルビン酸(0.1~0.2%w/w)、L-システイン(0.3~0.6%w/w)、水(99.35~98.3%w/w)およびクエン酸(最大pH3.4)を含む組成物を使用した。
【0052】
その後、穴あきメッシュを用いた10分間の重力濾過により、前工程で述べた技術上の助剤溶液を完全に除去した。技術上の助剤溶液が除去されると、その断片は互いに分離した。
【0053】
各断片に、不織布材の開封テープを断片の中央部分で断片の長さと幅に沿って貼り付けた。開封テープはいかなる手段によっても固定されておらず、単に断片の表面に手で貼られただけであった。
【0054】
その後、開封テープを有するその部分を、ワックス特性を有するコーティングで覆った。この実施例では、コーティング組成は70%~80%のエステル、10%~15%の遊離酸、および10%~20%のパラフィンであった。
【0055】
コーティングは75~100℃の温度で2~4時間、完全に溶けて液状になるまで加熱した。液状のコーティングをその部分に塗布し、次いでコールドトンネルシステム(14℃未満)を用いて冷却段階を行った。
【0056】
最後に、前工程で得られた生成物を高圧処理し、本発明の化粧品を得た。高圧処理の圧力は3分間で600MPaであった。
【0057】
得られた製品を図1に示す。使用のために、使用者は開封テープを引っ張り、コーティングを部分的に剥がし、そして柔組織の固形部分の一部を露出させる(図2および3)。次いで、使用者は柔組織の固形部分を所望の部位に塗布することができる。
【0058】
実施例2.本発明の化粧品に対するアロエベラを含有する市販品の特性の比較試験
アロエベラの有益な効果は、それに含まれる有効化合物に直接関連している。アロエベラから得られる生成物を保存し安定化させるために使用される方法は、これらの化合物の濃度に大きな影響を与える可能性があり、したがって、これらに起因するその有益な効果の強度に大きな影響を与える可能性がある。
【0059】
このため、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、異なる形態のアロエベラの4サンプルを分析した。表1に各サンプルの組成を示す。
【0060】
アロエベラの主要化合物の濃度:アセマンナン(アロベロース)、グルコマンナン、マンノース、ならびにビタミンAおよびCの各サンプルの濃度を分析した。表2に得られた結果を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
表3は、純粋なアロエベラ(サンプル1)の濃度に対する、各タイプのサンプルに含まれる各化合物の割合を示している。
【0064】
【表3】
【0065】
本発明の化粧品は、分析した各化合物の濃度がアロエベラ純粋品(サンプル1)により近いことを示している。特に、多糖類(アセマンナンおよびグルコマンナン)および単糖類マンノースの濃度は、天然物の濃度と同様であり、すなわち、これらの化合物は損なわれないままであり処理による悪影響を受けていない。ビタミンCは処理中にわずかに分解されたが、純粋なアロエベラ(サンプル1)と比較して92.7%の濃度を維持している。一方、サンプル2が示すビタミンAの濃度がやや上昇している(100%未満)のは、サンプル間の不均一性によるものかもしれないが、いずれにしても、ビタミンAは処理過程で分解されていないことを示している。
【0066】
アロエベラゲル(サンプル3)では、糖類が約10%、ビタミンCが23.5%、およびビタミンAが16%減少していることを示している。クリーム形態(サンプル4)では、純粋なアロエベラ(サンプル1)と比較して、どの化合物も15%を超える濃度にはなっていない。
【0067】
さらに、本発明の化粧品の安定性を評価し、市販品と比較して、その保管寿命ならびに経時劣化を推定した。
【0068】
サンプル2、3、および4を、温度管理されたチャンバー(20℃)に保管し、経時的に監視した。サンプルは試験開始時に分析し、その後10ヶ月まで2ヶ月ごとに定期的に分析した。上述のアロエベラの主要な化合物を、保管寿命の監視に使用した。分析方法は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるものであった。得られた結果を表4、5、および6、ならびに図4に示す。
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】
【表6】
【0072】
上記の表に示されるように、分析された化合物の初期濃度は、他の2つの製品(ゲルとクリーム)と比較して、本発明の化粧品においてより高く、そして主にアロエベラクリームと比較して、その濃度は本発明の化粧品において約10倍高かった。
【0073】
さらに、10ヶ月の保存後、本発明の製品は、分析された化合物の初期濃度と最終濃度との差が分析的不確実性よりも低い(損失率が有意ではない)ことを考慮すると、分析化合物のいずれについても有意な損失はなかった(図4参照)。
【0074】
対照的に、ゲルではビタミンA(11.7%)、ビタミンC(10.7%)、およびアロベロース(11.35%)が著しく損失を受け、同様にクリームではビタミンC(18.9%)、ビタミンA(7.88%)、およびマンノース(6.5%)が損失を受けていた。
【0075】
実施された試験の結論として、分析された化合物(アロエベラの健康増進特性をもたらす有効成分)の濃度はいずれも、ゲルよりも本発明の化粧品において高く、アロエベラクリームよりも顕著に高い(約10倍高い)。
【0076】
さらに、本発明の化粧品は、純粋なアロエベラと同じ有益な特性を維持する。さらに、本発明の化粧品は、単回投与形態で提供され、高圧処理(生成物本来の特性を維持する物理的処理)が施されているため、他の形態とは異なり、防腐剤を使用する必要がない。
【0077】
本発明の製品の別の利点は、摂取または接触によりアレルギー反応を引き起こす可能性がある防腐剤を含まないため、他の形態(ゲルおよびクリーム)よりも低アレルギー誘発性である点である。
【0078】
実施例3.本発明の化粧品のメタゲノム解析
本発明の製品のサンプルからのDNA抽出を、2種類の市販のDNA抽出キット:(1)DNeasy UltraClean Microbial kit(Qiagen社製)および(2)DNeasy PowerLyzer PowerSoil kit(Qiagen社製)を用いて行った。
【0079】
得られたDNAを、Qubit(Thermofisher)を用いて定量した。
【0080】
DNA量が最も多いサンプルで、16S rRNA遺伝子の増幅を行った。この遺伝子は全ての細菌種で保存されており、この遺伝子の遺伝子配列の違いに基づいて異なる細菌種間の系統を同定し、確立することが可能になる。
【0081】
その結果、本発明の化粧品のサンプルには以下の5属の細菌が含まれていた:パントエア(Pantoea)、エルシニア(Yersinia)、ラネーラ(Rahnella)、エルウィニア(Erwinia)およびセルラチア(Serratia)。より具体的には、存在する主要な種は、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)、エルシニア・クリステンセニイ(Yersinia kristensenii)、エルウィニア・ビリンギエ(Erwinia billingiae)、ラーネラ・ビクトリアナ(Rahnella Victoriana)、パントエア・アリイ(Pantoea allii)、セルラチア・リクエファシエンス(Serratia liquefaciens)、エルシニア・ラッケリ(Yersinia ruckeri)、ラネーラ・ウールベジンゲンシス(Rahnella woolbedingensis)、レクレルシア・アデカルボキシラタ(Leclercia adecarboxylata)、セルラチア・グリメシイ(Serratia grimesii)、ラネーラ・イヌシタタ(Rahnella inusitata)およびパントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)である。
【0082】
これらの内生微生物は、植物組織(柔組織)内に存在する天然のプロバイオティクスである。本発明の製品は、柔組織を無傷に保つことで、これらの微生物の生存を保ち、結果として皮膚に健康的な効果をもたらす。
【0083】
従来の化粧品では、ゲル、クリーム、または軟膏の形態のいずれであっても、これらの生成物を製造するために、微生物が生存するアロエ植物の組織を「切断」または「破壊」することが不可欠であるので、その製造プロセスによりこれらの微生物を生かしておくことは不可能であった。
【図面の簡単な説明】
【0084】
図1図1は未開封の化粧品を示す。
図2図2は開封中の化粧品を示す。
図3図3は開封された化粧品を示し、コーティングの一部が取り除かれ、塗布のために柔組織の固形部分の一部が露出している。
図4図4は、分析したアロエベラ形態(本発明の化粧品、すなわちアロエベラゲルおよびアロエベラクリーム)の各々について、10ヶ月保存後の、各有効化合物(アセマンナン(アロベロース)、グルコマンナン、マンノース、ならびにビタミンAおよびC)の初期濃度に対する損失率%を示している。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】