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特表2025-505161ハイブリッドグラフェンを含むリチウムイオン電池用負極
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-21
(54)【発明の名称】ハイブリッドグラフェンを含むリチウムイオン電池用負極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/54 20060101AFI20250214BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20250214BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20250214BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20250214BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20250214BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20250214BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20250214BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20250214BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20250214BHJP
【FI】
H01M4/54
H01M4/36 B
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M10/0562
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M10/052
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546028
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-08-01
(86)【国際出願番号】 KR2022014581
(87)【国際公開番号】W WO2023149611
(87)【国際公開日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】10-2022-0014662
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524188332
【氏名又は名称】ナノジェネシス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シム、チュン スプ
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL11
5H029AM12
5H029DJ09
5H050AA08
5H050BA16
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB11
5H050CB13
5H050DA09
5H050DA13
5H050EA08
5H050FA17
(57)【要約】
本発明は、グラフェン-微細粒子複合体からなる負極活物質を含み、前記グラフェン-微細粒子複合体は複数層のグラフェンが積層され任意の方向に曲げられている3次元構造を有し、前記微細粒子は前記グラフェン表面または内部に結着され、一部微細金属粒子は相互結合凝固され、前記微細粒子間の空いた空間の一部は前記グラフェン複合層が満たされて相互連結された構造であることを特徴とするリチウムイオン電池用負極に関する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の微細粒子(Micro Particle)と多層グラフェンが混合した構造を有するグラフェン複合体からなる負極活物質を含み、
前記微細粒子は金属または半導体粒子であり、前記多層グラフェン表面または内部に結着され、一部微細粒子は相互結合凝固され、
前記多層グラフェンは複数層のグラフェンが積層され任意の方向に曲げられている3次元構造を有し、
前記微細粒子は前記グラフェン表面または内部に結着され、
前記微細粒子間の空いた空間の一部は前記グラフェン複合体が満たされて相互連結された構造であることを特徴とする、ハイブリッドグラフェンを含むリチウムイオン電池用負極。
【請求項2】
前記微細粒子表面にグラフェンがコーティングされたことに特徴がある、請求項1に記載のハイブリッドグラフェンを含むリチウムイオン電池用負極。
【請求項3】
前記微細粒子表面が溶融されてグラフェンと凝固され、微細粒子とグラフェンが3次元ナノ構造を形成し接合されることに特徴がある、請求項1に記載のハイブリッドグラフェンを含むリチウムイオン電池用負極。
【請求項4】
前記グラフェン複合体は、光化学、光熱照射または熱処理工程によって生成されることに特徴がある、請求項1に記載のハイブリッドグラフェンを含むリチウムイオン電池用負極。
【請求項5】
前記微細粒子は、銀(Ag)、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC、SiCまたはSiCを含むSiC)、酸化シリコン(SiOまたはSiOを含むSiO)、シリコン複合酸化物(Si-MgSiO)、マグネシウムメタシリケート(enstatite、MgSiO)、フォルステライト(forsterite、MgSiO)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、銀合金(Ag alloy)、表面が銀(Ag)でコーティングされた銅(Cu)、および表面が銅(Cu)でコーティングされた銀(Ag)からなる群から選択される金属あるいは半導体からなるものであることを特徴とする、請求項1に記載のハイブリッドグラフェンを含むリチウムイオン電池用負極。
【請求項6】
前記グラフェン複合体は3次元多孔性グラフェン構造体であり、
前記微細粒子が相互連結されて形成されたネットワーク構造を有することを特徴とする、請求項1に記載のハイブリッドグラフェンを含むリチウムイオン電池用負極。
【請求項7】
正極集電体および正極活物質層を含む正極と、
固体電解質層と、
請求項1~6のいずれか一項に記載の負極と、を含むリチウムイオン電池。
【請求項8】
前記正極活物質層は、リチウム-ニッケル-コバルト-マンガン系複合酸化物(NCM)、リチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム系複合酸化物(NCA)、リチウム-コバルト系複合酸化物(LCO)、およびリチウム-ニッケル系複合酸化物(LNO)からなる群から選択される1種以上の正極活物質を含むことを特徴とする、請求項7に記載のリチウムイオン電池。
【請求項9】
前記固体電解質層は、Li2S-P2S5-LiI、Li2S-P2S5-LiCl、Li2S-P2S5-LiBr、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2S-SiS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-SiS2-LiCl、Li2S-SiS2-B2S3-LiI、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-B2S3、Li2S-GeS2、およびLi2S-SiS2-Li3PO4からなる群から選択される1種以上の固体電解質を含むことを特徴とする、請求項7に記載のリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用負極に関し、より詳細には、グラフェン(graphene)基盤の複合材料(hybrid graphene)を負極活物質として含む負極およびこれと関連するリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池、ニッケル-メタルハイブリッドバッテリーなど、充放電が可能な様々な二次電池があるが、その中でもリチウムイオン電池(lithium-ion battery、LIB)は、高いエネルギー密度、高い出力密度、長い充放電に耐えられる作動電圧などを理由に、スマートフォン(smart phone)、ネットブック(net book)などの携帯用モバイル装置に電源を供給する電池として使用されるだけでなく、ハイブリッド自動車(hybrid vehicle)などにエネルギーを供給するためのエネルギー供給部材など、広範囲に活用されている。
【0003】
リチウムイオン電池で正極活物質は多様に変化してその性能を向上させている。しかし、正極材で高いエネルギーを生成しても、これを保存する場所である負極材がバランス良く支えなければ、効率性は劣るしかない。特に、充電時に負極材がリチウムイオンをよく受け入れるように製作されてこそ充電時間も減らすことができる。負極活物質は、昔から黒鉛が広く使用されている。黒鉛は、炭素が規則的な形態で結合された層が多重積み重なっている層状構造である。リチウムイオンが正極から負極に移動する充電過程で、負極に到達したリチウムイオンは黒鉛層の間に保存される。
【0004】
現在、リチウムイオン電池の性能を向上させるために、既存の黒鉛負極材を代替できる新しい素材に対する研究が進められている。黒鉛は、電気伝導性が大きくないため充放電時間が長くかかり、リチウムイオンが結合できる容量が十分でないため充電容量が高くない。
【0005】
したがって、前記の問題点を解消または緩和して従来技術対比負極材の特性を向上させてリチウムイオン電池の充電容量と電池寿命を増やし、充電時間を短縮させることができる新しい負極素材の開発が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来の黒鉛を負極活物質層として含むリチウムイオン電池で黒鉛が電気伝導性が大きくないため充放電時間が長くかかり、リチウムイオンが結合できる容量が十分でないため充電容量が高くない問題点を解決することである。そのため、金属あるいは半導体粒子がグラフェンに溶融接合されて3次元ネットワークを形成するグラフェン複合材多層構造のハイブリッドグラフェンを含むリチウムイオン電池用負極およびこれを含むリチウムイオン電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては、このような問題点を克服するために、金属または半導体粒子をグラフェンマルチレイヤーと相互連結されるネットワーク構造を作り、充電および放電が繰り返されても金属または半導体粒子が安定した状態に維持できるハイブリッドグラフェン構造を提案する。既存にグラフェンと金属または半導体粒子とを混合する過程は、既に生成されたグラフェンと単純混合する過程であるため、金属または半導体粒子とグラフェンの有機的な接合力が不足している。
【0008】
本発明においては、グラフェンを製造する過程に金属または半導体微細粒子を混合して製造するため、金属または半導体微細粒子表面が溶融されてグラフェンと凝固され、微細粒子とグラフェンが3次元ナノ構造を形成し接合される。
【0009】
また、形成されたグラフェン複合体は、多層グラフェンで構成されるため、多層構造のグラフェンの表面または内部に金属または半導体微細粒子が結着され、シリコン微細粒子の間にはグラフェン複合層が満たされて相互連結された構造的特徴を有する。
【0010】
このように、金属または半導体微細粒子と多層グラフェンが混合した構造を有するグラフェン複合体からなる負極活物質疑構造は、以下のような効果を有する。
【0011】
第一、金属または半導体微細粒子の表面がグラフェンで完全にコーティングされるため、金属または半導体微細粒子とリチウムイオンと結合して発生する体積膨張を効率的に抑制する。これを通じて、過度な体積膨張および収縮過程によって発生する金属または半導体粒子の破壊と電極から分離される問題を解決することができる。
【0012】
第二、多層グラフェンレイヤーが金属または半導体の位置を固定する支持台(Scaffold)役割をする。理論的に、グラフェンは鋼鉄より200倍強い引張強度を有するため、撓み曲げても容易に破損しない。したがって、グラフェンが金属または半導体微細粒子と結合されて多層構造を形成すれば、金属または半導体微細粒子の位置が固定され、充放電による金属または半導体の形態変化にも安定した構造を維持する支持台の役割をするようになる。
【0013】
第三、グラフェンは高い電子移動性と電流密度を有するため、リチウムイオンとの電子移動を円滑にする。これを通じて、金属または半導体微細粒子と電子移動が円滑に行われて充放電速度を高め、グラフェン金属または半導体複合構造による充電および放電効率を向上させるようになる。
【0014】
前記技術的課題を達成するために、本発明は、ハイブリッドグラフェン複合体からなる負極活物質を含み、前記ハイブリッドグラフェン複合体は、複数層のグラフェンが積層され任意の方向に曲げられている3次元構造を有し、前記金属粒子は前記グラフェン表面または内部に結着され、一部微細金属粒子は相互結合凝固され、前記金属粒子間の空いた空間の一部は前記グラフェン複合層が満たされて相互連結された構造であることを特徴とするリチウムイオン電池用負極を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記微細金属粒子表面にグラフェンコーティングされたことに特徴があるリチウムイオン電池用負極を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記グラフェン-金属複合体は、光化学、光熱照射または熱処理工程によって生成されることに特徴があるリチウムイオン電池用負極を提供する。
【0017】
また、本発明である前記金属あるいは半導体粒子は、銀(Ag)、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC、SiCまたはSiCを含むSiC)、酸化シリコン(SiOまたはSiOを含むSiO)、シリコン複合酸化物(Si-MgSiO)、マグネシウムメタシリケート(enstatite、MgSiO)、フォルステライト(forsterite、MgSiO)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、銀合金(Ag alloy)、表面が銀(Ag)でコーティングされた銅(Cu)、および表面が銅(Cu)でコーティングされた銀(Ag)からなる群から選択される金属あるいは半導体からなるものであることを特徴とするリチウムイオン電池用負極を提供する。
【0018】
また、本発明である前記ハイブリッドグラフェン複合体は、前記3次元多孔性グラフェン構造体と前記金属粒子が相互連結されて形成されたネットワーク構造を有することを特徴とするリチウムイオン電池用負極を提供する。
【0019】
また、本発明は、正極集電体および正極活物質層を含む正極と、固体電解質層と、前記負極を含む全固体電池とを提供する。
【0020】
また、本発明である前記正極活物質層は、リチウム-ニッケル-コバルト-マンガン系複合酸化物(NCM)、リチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム系複合酸化物(NCA)、リチウム-コバルト系複合酸化物(LCO)、およびリチウム-ニッケル系複合酸化物(LNO)からなる群から選択される1種以上の正極活物質を含むことを特徴とする全固体電池を提供する。
【0021】
また、本発明である前記固体電解質層は、Li2S-P2S5-LiI、Li2S-P2S5-LiCl、Li2S-P2S5-LiBr、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2S-SiS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-SiS2-LiCl、Li2S-SiS2-B2S3-LiI、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-B2S3、Li2S-GeS2、およびLi2S-SiS2-Li3PO4からなる群から選択される1種以上の固体電解質を含むことを特徴とする全固体電池を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るリチウムイオン電池用負極は、光化学、光熱照射または熱処理工程方式で製造された3次元多孔性ハイブリッドグラフェン複合体を負極活物質として含むことで、安定したグラフェン複合体構造を形成し、高い電気伝導性で充放電速度および効率を顕著に改善させ、リチウムイオンが結合することができる容量を極大化させて性能および安定性を満遍なく備えたリチウムイオン電池を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1a】光熱照射工程を実施する前の銀粒子(Ag)を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真および概念図である。
図1b】光熱照射工程を実施した後の銀粒子(Ag)を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
図1c】金属粒子なしに光化学、光熱照射または熱処理で製造された多孔性グラフェン構造体(3次元ナノ多孔性グラフェン)を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
図1d】本願の実施形態において光化学、光熱照射または熱処理で製造した全固体電池負極活物質用ハイブリッドグラフェン複合体を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
図1e】本願の実施形態において前記(d)の光化学、光熱照射または熱処理反応で製造されたグラフェンが銀(Ag)微細粒子の空いた空間(b)に位置して固定された構造を示す概念図である。
図2】本発明に係る全固体電池負極活物質用ハイブリッドグラフェン複合体電極(Hybrid Graphene complex electrode、Graphene-Ag electrode)、グラフェン電極(Graphene electrode)、および金属電極(Gold electrode)それぞれに対して電気化学測定物質(PAP)の濃度による電流測定結果を示すグラフである。
図3】本発明に係る全固体電池負極活物質用ハイブリッドグラフェン複合体(Hybrid Graphene)、グラフェン(Graphene)、および金属(Metal(Au))それぞれに対して同じ濃度(10-3mM)のPAPにおける電流値を対比して示すグラフである。
図4】本発明に係る全固体電池負極用ハイブリッドグラフェン電極を利用して電気化学測定物質(PAP)の多様な濃度を測定したリアルタイムグラフである。
図5】前記本発明に係る全個体電池用負極を含む全固体電池の一例であって、正極活物質(NMC)を含む正極、硫化物系固体電解質層、および負極集電体(SUS)、および前記ハイブリッドグラフェン複合体からなる負極活物質を含む負極活物質層を含む負極を備えた全固体電池の断面模式図である。
図6】本発明のハイブリッドグラフェン複合体を含む全個体電池用負極の充電(a)と放電(b)状態の断面を示す写真である。
図7】本発明の製作されたハイブリッドグラフェン負極(左)とこれを利用して製作したコインセルバッテリー(右)に対する写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を説明するに当たり、関連した公知機能または構成に対する具体的な説明が本発明の要旨を不明確にする可能性があるものと判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0025】
本発明の概念による実施形態は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるので、特定の実施形態を図面に例示し、本明細書または出願に詳細に説明しようとする。しかし、これは本発明の概念による実施形態を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0026】
本明細書において使用した用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なって意図しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」または「有する」といった用語は、説示された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部分品、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0027】
以下、本発明を詳しく説明するようにする。
【0028】
本発明は、リチウムイオン電池用で全固体電池負極に関し、グラフェンと金属粒子の複合材料であるハイブリッドグラフェン複合体を負極活物質で構成されたことに特徴がある。
【0029】
前記ハイブリッドグラフェン複合体は、負極活物質層を構成する負極材であって、リチウムイオン電池で構成して、充電時にリチウム(Li)を吸蔵する役割を行ってから充電容量が超過した後には負極集電体と負極活物質層の界面に析出される金属リチウム層を被覆してリチウム金属層の保護層役割をすると同時に、リチウム樹枝状(dendrite)の過度な成長を抑制して固体電解質層への浸透を遮断し、リチウム樹枝状の均一な成長を誘導することで、全固体電池の短絡および容量低下を防ぎ、結果的に全固体電池の性能を向上させることができる。
【0030】
このとき、前記ハイブリッドグラフェン複合体を構成するグラフェンは、高い電子移動性によって電子供給が均一且つ円滑に行われるため、全固体電池の充放電速度および効率を増加させる役割をし、また、高いヤング係数(Young’s modulus)を有し、銀(Ag)粒子などの金属粒子とリチウム(Li)の結合による負極活物質膨張現象を効率的に支持することができる。
【0031】
一方、前記ハイブリッドグラフェン複合体を構成するグラフェンは、欠陥のない純粋なグラフェンではなく、3次元多孔性グラフェン構造体から由来したことが好ましい。
【0032】
前記ハイブリッドグラフェン複合体は、複数層のグラフェンが積層され、任意の方向に曲げられている3次元構造を有し、前記金属粒子は、光化学、光熱照射または熱処理によって前記グラフェン表面または内部に結着され、一部微細金属粒子は相互結合凝固された構造であり、
前記金属粒子間の空いた空間の一部は、前記グラフェン複合層が満たされて相互連結された構造である。
【0033】
また、前記微細金属粒子表面にグラフェンコーティングされた構造であってよい。
【0034】
欠陥のない純粋なグラフェンは、そのものでは優れている電気伝導度と高い比表面積など、優れた物性を有するが、非可逆的な自己凝集現象(selfaggregation)によって高い比表面積の長所が大きく低下される。
【0035】
一方、断層および/または複数層のグラフェンシートの間に気孔が3次元的に有機的に連結された3次元多孔性グラフェン構造体は、自己凝集現象が減少して相対的にさらに広い比表面積を有し、電子およびイオンをより速やかに拡散させるため、エネルギー転換および保存装置のような電気化学的な応用において相対的に優越な特性を示す。また、3次元多孔性グラフェン構造体は、その製造工程中に工程変数の制御を通じて気孔特性(気孔の位置およびサイズなど)の制御もまた可能であるという長所を持つ。
【0036】
さらに、3次元多孔性グラフェン構造体は、本発明に係るグラフェン-金属粒子複合体のように金属粒子などの異種素材を吸着させる化学的ドーピング(chemical doping)を通じてグラフェンの電子構造を変化させて電気的特性を調節することもできる。
【0037】
一方、3次元多孔性グラフェン構造体の製造方法は特に制限されないが、硬質鋳型(hard template)または軟質鋳型(soft template)を活用する方法を主に利用する。硬質鋳型法を使用する方法には、球状の高分子を利用した方法、金属酸化物粒子を利用する方法、またニッケルフォームのような多孔性基質を利用した方法などがあり、軟質鋳型法は、界面活性剤分子が自己組立(selfassembly)されて作られたマイセル鋳型を利用して気孔サイズが調節された物質を合成することができ、硬質鋳型法に比べて相対的に鋳型除去が容易であるという長所を持つ。
【0038】
また、高分子(polymer)コーティング層を形成した後、高分子内の炭素原子が六角形の環配列を有するように安定化反応を誘導し、高温で炭化(carbonization)させて3次元多孔性グラフェン構造体を製造することもできる。このとき、前記高分子は、ポリメチルメタクリレート(poly(methyl methacrylate)、PMMA)、ポリスチレン(polystyrene、PS)、ポリイミド(polyimide、PI)、ポリエーテルイミド(Polyetherimide、PEI)、カプトンフィルム(Kapton Film)などを具体的な例として挙げることができるが、必ずしもこれに制限されるものではなく、高温で炭化してグラフェンを形成する炭素供給源としての役割をすることができる高分子であれば、その構造、分子量、ガラス転移温度などに対する特別な制約はない。
【0039】
前記グラフェンと複合化されてハイブリッドグラフェン複合体を構成する前記金属粒子は、銀(Ag)、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC、SiCまたはSiCを含むSiC)、酸化シリコン(SiOまたはSiOを含むSiO)、シリコン複合酸化物(Si-MgSiO)、マグネシウムメタシリケート(enstatite、MgSiO)、フォルステライト(forsterite、MgSiO)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、銀合金(Ag alloy)、表面が銀(Ag)でコーティングされた銅(Cu)、および表面が銅(Cu)でコーティングされた銀(Ag)からなる群から選択される金属あるいは半導体からなる微細粒子であってよく、さらに、前記微細粒子は、前記金属または半導体のうち1種の物質からなるコア粒子および前記コア粒子と異なる物質からなるコーティング層を含む金属あるいは半導体粒子(例えば、銀がコーティングされた銅粒子、銅がコーティングされた銀粒子、酸化物コーティングされたシリコン粒子、複合酸化物コーティングされたシリコン粒子など)であってもよいが、必ずしも前述の金属粒子に制限されるものではない。
【0040】
前記金属粒子のうち銀(Ag)粒子を例に挙げると、銀(Ag)粒子はリチウム(Li)に溶けてリチウムが結晶化されるエネルギーを下げることで、リチウムが気孔を発生させ、不均一に成長せずにより均一に成長させることで、結果的にリチウムイオン電池の性能向上に寄与する。
【0041】
グラフェンと金属粒子を複合化して前記ハイブリッドグラフェン複合体を製造するための方法としては、3次元多孔性グラフェン構造体と金属粒子をボールミリング(ball-milling)などの撹拌工程を通じて均一に混合および複合化する方法も可能であるが、より好ましくは、3次元多孔性グラフェン構造体および金属粒子が均一に混合した混合物に光(light)を照射して前記混合物を焼結させ、金属粒子間の相互連結、グラフェンシート間の相互連結、および金属粒子とグラフェンシート間の相互連結が有機的に行われた3次元ネットワーク構造を有するハイブリッドグラフェン複合体を製造することができる。
【0042】
固体電解質層が含まれた全固体電池のリチウムイオン電池にも応用することができ、前記ハイブリッドグラフェン複合体からなる負極活物質を含む全固体電池は、正極集電体および正極活物質層を含む正極、固体電解質層、および負極集電体、および前記ハイブリッドグラフェン複合体からなる負極活物質を含む負極活物質層を含む負極を含んでなり得る。
【0043】
このとき、前記正極活物質層は、リチウム-ニッケル-コバルト-マンガン系複合酸化物(NCM)、リチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム系複合酸化物(NCA)、リチウム-コバルト系複合酸化物(LCO)、およびリチウム-ニッケル系複合酸化物(LNO)からなる群から選択される1種以上の正極活物質を含むことができるが、必ずしも前記正極活物質に構成物質が制限されるものではない。
【0044】
また、前記固体電解質層を構成する固体電解質の種類は特に制限されないが、硫化物系固体電解質を含むことができ、例えば、Li2S-P2S5-LiI、Li2S-P2S5-LiCl、Li2S-P2S5-LiBr、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2S-SiS2,Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-SiS2-LiCl、Li2S-SiS2-B2S3-LiI、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-B2S3、Li2S-GeS2、およびLi2S-SiS2-Li3PO4からなる群から選択される1種以上あってよい。
【0045】
以下、実施形態を挙げて本発明に対してより詳細に説明することにする。
【0046】
本明細書に係る実施形態は、様々な他の形態に変形されることができ、本明細書の範囲が下記で詳述する実施形態に限定されるものと解析されない。
【0047】
本明細書の実施形態は、当業界において平均的な知識を有する者に本明細書をより完全に説明するために提供されるものである。
【0048】
図1aは、本発明に係る固体電池用負極に含まれる負極活物質であるハイブリッドグラフェン複合体を製造するための光熱照射工程を実施する前の銀粒子(Ag)を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0049】
図1aを参照すれば、光熱照射前の銀(Ag)粒子は球状形状の粒子径は約5μmを有する。
【0050】
図1bは、光熱照射工程を実施した後の銀粒子(Ag)を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0051】
図1bを参照すれば、光熱照射を使用して銀(Ag)粒子の表面が溶融された状態で隣接粒子と結合凝固されたものと確認され、一部粒子は連結されないため空いた空間が形成されたことが分かる。
【0052】
図1cは、本発明に係るリチウムイオン電池用負極に含まれる負極活物質であるハイブリッドグラフェン複合体を製造するための光熱照射工程を実施する前の多孔性グラフェン構造体(3次元ナノ多孔性グラフェン)を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0053】
図1cを参照すれば、多層グラフェンが3次元構造で重なるか、または曲げられた構造を有することを確認することができる。
【0054】
図1dは、本願の実施形態において3次元多孔性グラフェン構造体および銀粒子(Ag)の混合物に光熱照射工程を実施して製造した本発明に係る全固体電池負極活物質用ハイブリッドグラフェン複合体を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0055】
図1dを参照すれば、本願の実施形態において、光化学、光熱照射または熱処理によって微細金属粒子は前記グラフェン複合層表面および内部に同時に結着され、同時に微細金属粒子は相互結合凝固されることができる固定された構造を示している。
【0056】
図1eは、本願の実施形態において前記dの光化学、光熱照射または熱処理で製造されたグラフェンが銀(Ag)微細粒子の空いた空間に位置して固定された構造を示す概念図である。
【0057】
図1eは、光化学、光熱照射または熱処理で製造されたグラフェンが銀(Ag)微細粒子の空いた空間に位置して固定された構造を示す概念図である。前記銀(Ag)微細粒子がグラフェン複合層内部および外部に結着されることができ、前記概念図には表示されていないが、銀(Ag)微細粒子の不規則な位置によって一部微細金属粒子は相互結合凝固されることができる。
【0058】
また、前記銀(Ag)微細金属粒子は、光化学、光熱照射または熱処理で表面にグラフェンコーティングが生成されることができる。図1eで粒子表面に網でグラフェンコーティング構造が図示されている。
【0059】
既存のグラフェンの場合、高温工程を始めとして複雑な過程が必要であるが、光化学、光熱照射または熱処理合成グラフェンは、ワンステップ工程で比較的簡単に合成することができる。
【0060】
図2は、本発明に係る全固体電池負極活物質用ハイブリッドグラフェン複合体(Graphene-Ag electrode)、グラフェン電極(Graphene electrode)、および金属電極(Gold electrode)それぞれに対して電気化学測定物質(p-Aminophenol、PAP)の濃度による電流測定結果を示すグラフである。
【0061】
それぞれの電極に対して、PAP濃度によって電流信号のサイズが次第に大きくなる。
【0062】
また、同じ濃度のPAPに対して金属電極に比べて表面積と電子流入および放出の長所があるグラフェン電極の信号がさらに大きくなり、グラフェン電極対比抵抗の小さなハイブリッドグラフェン複合体電極の信号がさらに大きく測定されることが分かる。
【0063】
図3は、本発明に係る全固体電池負極活物質用ハイブリッドグラフェン複合体(Hybrid Graphene)、グラフェン(Graphene)、および金属(Metal(Au))それぞれに対して同じ濃度(10-3mM)のPAPにおける電流値を対比して示すグラフである。
【0064】
図3を参照すれば、全固体電池負極活物質用電極のハイブリッドグラフェン電極(グラフェン金属複合体)と金属電極、グラフェン電極に対して同じ濃度のPAPに対して測定した電流信号の差を示すグラフである。同じ濃度でグラフェン金属複合体電極で測定された信号のサイズが比較電極に比べて非常に大きいということを確認することができる。したがって、本発明であるグラフェン金属複合体電極の電流信号が比較電極に比べてさらに大きい信号を発生させて、SNR(Signal to Noise Ration、信号対雑音比)が比較電極に比べてさらに大きいということが分かる。
【0065】
図4は、本発明に係る全固体電池負極用ハイブリッドグラフェン電極を利用して電気化学測定物質(PAP)の多様な濃度を測定したリアルタイムグラフである。
【0066】
図5は、前記本発明に係る全個体電池用負極を含む全固体電池の一例であって、正極活物質(NMC)を含む正極、硫化物系固体電解質層、および負極集電体(SUS)、および前記ハイブリッドグラフェン複合体からなる負極活物質を含む負極活物質層を含む負極を備えた全固体電池の断面模式図である。
【0067】
図6は、本発明のハイブリッドグラフェン複合体を含む全個体電池用負極の充電(a)と放電(b)状態の断面を示す写真である。
【0068】
既存の負極は、リチウムが不均一で気孔が発生してデンドライト(Dendrite)形態で沈積(Deposition)されることが問題であるが、銀微細金属粒子はリチウムに溶けてリチウムが結晶化されるエネルギーを下げることで、リチウムが均一に成長するようになる。また、グラフェン(Graphene)は、リチウム金属が成長して固体電解質と直接的に触れるようになることを防止して固体電解質が分解されることを防ぎ、耐久性(Durabiltiy)寿命を向上させる。
【0069】
リチウム金属が沈積(deposition)される3次元ホスト(Host)役割をし、固体電解質を保護する保護層(Protective layer)役割をして耐久性を向上させることができる。
【0070】
図7は、本発明で製作されたハイブリッドグラフェン負極(左)とこれを利用して製作したコインセルバッテリー(右)を示す。
【0071】
以上において説明した本発明は、前述の実施形態および添付の図面によって限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で様々な置き換え、変形および変更が可能であることは、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって明白であろう。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】