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特表2025-505174組み合わせられた誘導性感知および熱感知を使用する異物検出
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-21
(54)【発明の名称】組み合わせられた誘導性感知および熱感知を使用する異物検出
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/60 20160101AFI20250214BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20250214BHJP
【FI】
H02J50/60
H02J50/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546173
(86)(22)【出願日】2023-01-30
(85)【翻訳文提出日】2024-10-02
(86)【国際出願番号】 US2023061552
(87)【国際公開番号】W WO2023150484
(87)【国際公開日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】63/267,532
(32)【優先日】2022-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513307922
【氏名又は名称】ワイトリシティ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】WITRICITY CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ハンス・ピーター・ウィドマー
(72)【発明者】
【氏名】マーセル・フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ニン・リウ
(57)【要約】
誘導性ワイヤレス電力伝達システムの近くの金属異物を検出するための方法は、組み合わせられた誘導性感知および熱感知に基づく。感知システムは、誘起効果または熱的効果に基づいて物体を感知する。感知システムは、誘起効果に基づいて物体の存在下で変化する電気的特性を有する感知素子を含む。媒介感熱材料は、温度に応じて変動する特性を有し、特性が変化するにつれて感知素子の電気的特性を変化させる。ワイヤレス電力伝達システムによって生成される磁界によって異物が加熱されるとき、媒介感熱材料が異物によって加熱される。コントローラは電気的特性を測定し、測定された電気的特性の変化に基づいて物体の存在を決定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導性ワイヤレス電力伝達システムの中で異物の存在を検出するための装置であって、
誘起効果および熱的効果のうちの1つまたは複数に基づいて前記異物を感知するように構成された感知システムであって、
電気的特性を有する感知素子であって、第1の交番磁界に関係する前記誘起効果に基づいて前記異物を感知するように構成された、感知素子、および
前記感知素子に結合された媒介感熱材料であって、前記誘導性ワイヤレス電力伝達システムによって生成される第2の交番磁界に暴露された前記異物によって加熱されるときの温度に応じて変動する特性を有し、前記特性に応じて前記感知素子の前記電気的特性を変化させる、媒介感熱材料
を含む、感知システムと、
前記感知システムに結合されたコントローラであって、
前記感知素子の前記電気的特性を測定すること、および
前記媒介感熱材料を通じた前記誘起効果および前記熱的効果のうちの少なくとも1つによって引き起こされる、前記測定された電気的特性の前記変化に基づいて、前記異物の前記存在を決定すること
をするように構成される、コントローラと
を備える、装置。
【請求項2】
前記媒介感熱材料の前記特性が、抵抗率、導電率、インピーダンス、キャパシタンス、インダクタンス、透磁率、および電気誘電率のうちの1つまたは複数を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記媒介感熱材料が、前記媒介感熱材料の前記温度が373ケルビンよりも高いしきい値をパスすると前記特性を大幅に変化させるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記媒介感熱材料が、温度係数が負の(NTC)抵抗材料、温度係数が正の(PTC)抵抗材料、キュリー点が低い誘電体材料、およびキュリー点が低いフェライト材料のうちの1つまたは複数を含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記感知素子が電気導体の1つまたは複数の巻きを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記感知素子がプリント回路板上に実装される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記感知素子が前記媒介感熱材料を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記感知素子が、前記媒介感熱材料も備える層の中に埋め込まれる、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記感熱材料が、前記感知素子を備える第2の層とは異なる第1の層の中にある、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記感知システムが感知素子のアレイを備え、前記媒介感熱材料が前記アレイの少なくとも1つの感知素子に関連付けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記コントローラによって測定される前記電気的特性が、インピーダンス、トランスインピーダンス、直流(DC)抵抗値、電圧、電流、誘起電圧、インパルス応答、および別の波形の応答のうちの1つまたは複数を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記コントローラが、前記測定された電気的特性を前記誘導性ワイヤレス電力伝達システムによって生成される前記第2の交番磁界のレベルと相関させることによって前記異物の前記存在を決定するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記測定された電気的特性を前記第2の交番磁界の前記レベルと相関させることが、誘導性熱感知(ITS)、誘導性強磁性感知(IFS)、または誘導性運動感知(IMS)のうちの少なくとも1つを備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記異物からの熱からの損傷に対して前記感知システムを保護するように構成された耐熱材料をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記耐熱材料が、前記ワイヤレス電力伝達システムの筐体の少なくとも一部分を構成する、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記耐熱材料が、前記装置の外部に露出される第1の層の中にあり、前記感熱材料が、前記第1の層によって覆われる第2の層の中にある、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記耐熱材料が、473ケルビンよりも高い融点を有し、構造的完全性を失うことなく473ケルビンよりも高い前記異物が到達する温度に耐えるように構成される、請求項14に記載の装置。
【請求項18】
誘起効果および熱的効果のうちの1つまたは複数に基づいて誘導性ワイヤレス電力伝達システムの中で異物の存在を検出する方法であって、
第1の交番磁界に関係する誘起効果に基づいて、前記異物の前記存在に敏感な感知素子の電気的特性を測定するステップと、
前記誘導性ワイヤレス電力伝達システムによって第2の交番磁界が生成されている間、
前記感知素子の前記電気的特性を測定するステップ、
前記電気的特性が変化したとき、前記電気的特性が前記熱的効果に起因して変化したことを、前記感知素子に結合された媒介感熱材料の特性に前記変化が起因したことを示す方式で決定するステップであって、前記特性が、前記第2の交番磁界に暴露された前記異物によって前記媒介感熱材料が加熱されるときの温度に応じて変動する、ステップ、および
前記媒介感熱材料を通じた前記誘起効果または前記熱的効果のうちの少なくとも1つによって引き起こされる、前記測定された電気的特性の前記変化に基づいて、前記異物の前記存在を決定するステップと
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2022年2月3日に出願された米国仮出願第63/267,532号の優先権を主張する。本出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2017年6月12日に出願された米国特許出願第15/620,548号に関する。
【0002】
本出願は、一般に、ワイヤレス充電電力伝達適用例に関し、詳細には、組み合わせられた誘導性感知および熱感知を使用して異物を検出するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
誘導性ワイヤレス電力伝達(WPT:wireless power transfer)システムは、エネルギーのワイヤレス伝達の一例を提供する。誘導性WPTシステムでは、1次電力デバイス(すなわち、ワイヤレス電力送信機)が、2次電力デバイス(すなわち、ワイヤレス電力受信機)へ電力をワイヤレスに送信する。ワイヤレス電力送信機およびワイヤレス電力受信機の各々は、誘導性電力伝達構造、通常は電流移送材料(たとえば、銅リッツ線)を備える巻線の、単一コイル配置または複数コイル配置を含む。(たとえば、1次ワイヤレス電力伝達構造の)コイルを通過する交流が、交番磁界を発生させる。1次ワイヤレス電力伝達構造の近傍において2次ワイヤレス電力伝達構造が置かれると、交番磁界は、ファラデー(Faraday)の法則に従って2次ワイヤレス電力伝達構造の中に起電力(EMF:electromotive force)を誘導し、それによって、抵抗性負荷がワイヤレス電力受信機に接続されている場合にワイヤレス電力受信機に電力をワイヤレスに伝達する。電力伝達効率を改善するために、いくつかの実装形態は、共振構造(共振器)の一部であるワイヤレス電力伝達構造を使用する。共振構造は、実質的に誘導性WPTシステムの(たとえば、80kHzから90kHzまでの範囲の中の)基本動作周波数において共振を形成する、容量的に負荷がかかったインダクタを備えてよい。
【0004】
家庭と公共の両方の駐車ゾーンにおける、数キロワットの電力レベルで電気的に充電可能な車両への誘導性WPTは、人および機器の安全のために特別な保護方策を必要とすることがある。そのような方策は、電磁界暴露レベルがいくらかの限度を超える、誘導性WPTシステムの誘導性電力領域の中での、異物の検出を含んでよい。保護方策に対するこの必要性は、特に誘導性電力領域がオープンかつアクセス可能であるシステムに当てはまることがある。そのような方策は、誘導性電力領域内またはその近くに存在することがある、導電性の(金属製の)物体および生存物体(たとえば、人間、人間の手足、または動物)の検出を含んでよい。
【0005】
電気車両の誘導性ワイヤレス充電のためのいくつかの適用例では、誘導性電力領域の中に存在することがあり、かつその領域の中の高い磁界強度に起因して誘導加熱に影響されやすい場合がある、異物を検出できることが有用であり得る。80kHzから90kHzまでの範囲の中の基本周波数で動作する、電気車両充電用の誘導性WPTシステムでは、(たとえば、1次ワイヤレス電力伝達構造の上方の)誘導性電力領域の中の磁束密度は、十分な電力伝達(たとえば、3.3キロワット(kW)、7kW、11kWなど)を可能にするために、比較的高いレベル(たとえば、2ミリテスラ(mT)を上回る)に達する場合がある。したがって、磁界の中に存在する金属物体または他の物体は、渦電流損失効果に起因して望ましくない誘導加熱に遭遇する場合がある。強磁性金属物体では、追加の電流変位(表皮)およびヒステリシス損失効果に起因して、誘導加熱がなお一層激しいことがある。この理由で、誘導性WPTシステムの1次ワイヤレス電力伝達構造または2次ワイヤレス電力伝達構造によって生成される磁界によって影響を受ける金属物体または他の物体を検出するために、異物検出(FOD:foreign object detection)が実施されてよい。異物の存在が検出されると、WPTシステムは、電力を小さくしてよく、またはオフにしてよく、異物を除去することをユーザに促す警報を発行してよい。異物の除去時に、ユーザによって手作業でまたは(たとえば、物体除去検出に基づいて)WPTシステムによって自動的にのいずれかで、通常の電力伝達が再開、すなわち、開始されてよい。
【0006】
電気車両の誘導性ワイヤレス充電のためのいくつかの適用例では、電磁界暴露のレベルが(たとえば、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP:International Commission on Non-Ionizing Radiation Protection)勧告によって規定されるような)いくらかの限度を超える誘導性電力領域内またはその近くに存在することがある生存物体を検出できることも有用であり得る。この理由で、誘導性WPTシステムの1次ワイヤレス電力伝達構造または2次ワイヤレス電力伝達構造によって生成される磁界に暴露されることがある生存物体(たとえば、人間の手足、動物)または他の物体を検出するために、生存物体検出(LOD:living object detection)が実施されてよい。生存物体の存在が検出されると、WPTシステムは直ちにオフしてよく、生存物体の存在がそれ以上検出されないと、または生存物体の存在がそれ以上検出されないときに始まる時間期間の満了の後、通常の電力伝達を自動的に再開してよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第10,627,257号
【特許文献2】米国特許第9,952,266号
【特許文献3】米国特許出願第17/931,429号
【特許文献4】米国特許第9,726,518号
【特許文献5】米国特許第11,002,874号
【特許文献6】米国特許第10,122,192号
【特許文献7】米国特許第10,124,687号
【特許文献8】米国特許第9,921,045号
【特許文献9】米国特許第10,295,693号
【特許文献10】米国特許第10,302,795号
【特許文献11】米国特許第10,298,049号
【特許文献12】米国特許第11,046,193号
【特許文献13】米国特許第10,855,117号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付の特許請求の範囲内のシステム、方法、およびデバイスの様々な実装形態は各々、いくつかの態様を有し、そのうちの単一の態様だけが、本明細書で説明する望ましい属性を担当するとは限らない。添付の特許請求の範囲を限定することなく、いくつかの際立った特徴が本明細書で説明される。
【0009】
添付図面および以下の説明の中で、本明細書で説明する主題の1つまたは複数の実装形態の詳細が記載される。説明、図面、および特許請求の範囲から、他の特徴、態様、および利点が明らかになる。
【0010】
概して、一態様では、誘起効果および熱的効果のうちの1つまたは複数に基づいて異物を感知するように構成された感知システムを使用して、誘導性ワイヤレス電力伝達システムの中で異物が検出される。感知システムは、電気的特性を有する感知素子を含み、感知素子は、第1の交番磁界に関係する誘起効果に基づいて異物を感知するように構成され、感知素子に媒介感熱材料が結合される。媒介感熱材料は、誘導性ワイヤレス電力伝達システムによって生成される第2の交番磁界に暴露された異物によって加熱されるときの温度に応じて変動する特性を有し、媒介感熱材料は、その特性に応じて感知素子の電気的特性を変化させる。感知システムに結合されたコントローラは、感知素子の電気的特性を測定し、媒介感熱材料を通じた誘起効果および熱的効果のうちの少なくとも1つによって引き起こされる、測定された電気的特性の変化に基づいて、異物の存在を決定する。
【0011】
態様は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を、任意の順序または組合せで含んでよい。媒介感熱材料の特性は、抵抗率、導電率、インピーダンス、キャパシタンス、インダクタンス、透磁率、および電気誘電率のうちの1つまたは複数であってよい。媒介感熱材料は、媒介感熱材料の温度が373ケルビンよりも高いしきい値をパスすると特性を大幅に変化させるように構成されてよい。媒介感熱材料は、温度係数が負の(NTC:negative temperature coefficient)抵抗材料、温度係数が正の(PTC:positive temperature coefficient)抵抗材料、キュリー点が低い誘電体材料、およびキュリー点が低いフェライト材料のうちの1つまたは複数を含んでよい。感知素子は電気導体の1つまたは複数の巻きを含んでよい。感知素子はプリント回路板上に実装されてよい。感知素子は媒介感熱材料を含んでよい。感知素子は、媒介感熱材料も備える層の中に埋め込まれてよい。感熱材料は、感知素子を備える層とは異なる層の中にあってよい。感知システムは感知素子のアレイを含んでよく、媒介感熱材料はアレイの少なくとも1つの感知素子に関連付けられてよい。コントローラによって測定される電気的特性は、インピーダンス、トランスインピーダンス、直流(DC)抵抗値、電圧、電流、誘起電圧、インパルス応答、および別の波形の応答のうちの1つまたは複数を含んでよい。
【0012】
コントローラは、測定された電気的特性を、誘導性ワイヤレス電力伝達システムによって生成される第2の交番磁界のレベルと相関させることによって、異物の存在を決定するように構成されてよい。測定された電気的特性を第2の交番磁界のレベルと相関させることは、誘導性熱感知(ITS:inductive thermal sensing)、誘導性強磁性感知(IFS:inductive ferromagnetic sensing)、または誘導性運動感知(IMS:inductive motion sensing)のうちの少なくとも1つを含んでよい。耐熱材料は、異物からの熱からの損傷に対して感知システムを保護してよい。耐熱材料は、ワイヤレス電力伝達システムの筐体の少なくとも一部分を構成してよい。耐熱材料は、装置の外部に露出される第1の層の中にあってよく、感熱材料は、第1の層によって覆われる第2の層の中にある。耐熱材料は、473ケルビンよりも高い融点を有し、構造的完全性を失うことなく473ケルビンよりも高い異物が到達する温度に耐えるように構成されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】誘導性感知回路および容量性感知回路を含む検出回路の例示的な実装形態、非生存(たとえば、金属製)物体、ならびに生存物体を示す概略図である。
図2図1に示す検出回路の一部分を統合する地上ベースワイヤレス電力伝達構造の例示的な実装形態、ならびに図1の非生存物体および生存物体を示す概略図である。
図3】車両ベースワイヤレス電力伝達構造、および図1の検出回路の一部分を統合する図2の地上ベースワイヤレス電力伝達構造を含む、WPTシステムの一部分、ならびに図1の非生存物体および生存物体を示す垂直切断図である。
図4図1の検出回路の例示的な実装形態の一般的なブロック図である。
図5A】ワイヤレス電力伝達構造用の筐体を示す図である。
図5B】ワイヤレス電力伝達構造用の筐体を示す図である。
図5C】ワイヤレス電力伝達構造用の筐体を示す図である。
図5D】ワイヤレス電力伝達構造用の筐体を示す図である。
図5E】ワイヤレス電力伝達構造用の筐体を示す図である。
図5F】ワイヤレス電力伝達構造用の筐体を示す図である。
図6A】組み合わせられた誘導性感知システムおよび熱感知システムを示す図である。
図6B】組み合わせられた誘導性感知システムおよび熱感知システムを示す図である。
図6C】組み合わせられた誘導性感知システムおよび熱感知システムを示す図である。
図6D】組み合わせられた誘導性感知システムおよび熱感知システムを示す図である。
図7】異物検出システムにおける組み合わせられた誘導性感知および熱感知を実行するための例示的な動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上述のように、異物検出(FOD)、特に金属物体検出は、様々な適用例のために役立つことがある。所定の領域の中での検出のために、FODシステムは、所定のエリア(たとえば、地上ベースワイヤレス電力伝達構造の中に統合された、感知コイルの平面アレイ)にわたって分散された誘導性感知素子(たとえば、感知コイル)を各々が含む、複数の誘導性感知回路を含んでよい。所定の領域は、金属物体が見つけられることがあり、かつ磁束密度がいくらかの限度(たとえば、金属物体がどんな温度まで加熱されることがあるのかに基づいて決定されるしきい値)を超える、空間によって画定されてよい。検出空間と呼ばれるこの空間は、一般に、検出エリアを画定する誘導性感知素子の上方の3次元空間である。誘導性感知素子の数は、検出空間または検出エリアのフォームファクタ、および検出することが望まれる物体の最小サイズに関係してよい。小さい物体(たとえば、ペーパークリップ)を検出するように構成されるシステムの場合、感知素子の数は比較的多くてよい(たとえば、100個程度)。FODシステムは、誘導性感知素子および調整用の追加の素子を各々が含む、誘導性感知回路の各々に駆動信号を印加するための、かつ容量性感知回路の各々における電気的特性を測定するための、また(たとえば、金属製の)異物の存在を示すことがある、電気的特性の変化を検出するための、制御および測定回路構成をさらに含んでよい。その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Systems, Methods, and Apparatus for Detection of Metal Objects in a Predetermined Space」と題する米国特許第10,627,257号の中に、例示的なFODシステムが記載されている。
【0015】
同じく上述のように、生存物体検出(LOD)(たとえば、人間の手足、動物)は、様々な適用例のために役立つことがある。所定の領域の中での検出のために、LODシステムは、たとえば、WPTシステムの地上ベースワイヤレス電力伝達構造の周辺部に沿って配設された、容量性感知素子(たとえば、感知電極)を各々が含む、複数の容量性感知回路を含んでよい。所定の領域は、生存物体にとってアクセス可能であり、かつ生存物体が配置されることがあり暴露磁界強度が(たとえば、ICNIRPによって勧告されるような)いくらかの限度を超える、空間によって画定されてよい。検出空間と呼ばれるこの空間は、一般に3次元である。容量性感知素子の数は、検出空間、および検出することが望まれる生存物体の最小サイズに関係してよい。人間の手足(たとえば、手)および動物(たとえば、ネコ)を検出するように構成されるシステムの場合、感知素子の数は比較的少なくてよい(たとえば、4個程度)。LODシステムは、容量性感知素子および調整用の追加の素子を各々が含む、容量性感知回路の各々に駆動信号を印加するための、かつ容量性感知回路の各々における電気的特性を測定するための、また生存物体の存在を示すことがある、電気的特性の変化を検出するための、制御および測定回路構成をさらに含んでよい。その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Object Detection for Wireless Energy Transfer Systems」と題する米国特許第9,952,266号の中に、例示的なLODシステムが記載されている。
【0016】
ハードウェア複雑度低減およびコスト節約の側面では、可能かつ知覚可能である限り、FOD、LOD、車両検出(VD:vehicle detection)、および位置検出(PD:position detection)機能のための検出回路のハードウェア構成要素の使用を共有することが、有用であり望ましいことがある。その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Circuit for Object Detection and Vehicle Position Determination」と題する米国特許出願第17/931,429号の中に、FOD、LOD、VD、およびPD機能のために構成可能な多目的検出回路が記載されている。
【0017】
「電気車両」とはリモートシステムを表し、その一例は、充電可能なエネルギー貯蔵デバイス(たとえば、1つまたは複数の再充電可能な電気化学セルまたは別のタイプのバッテリー)から導出される電力をその運転能力の一部として含む車両である。非限定的な例として、いくつかの電気車両は、直接の運転のための、または車両のバッテリーを充電するための、従来の内燃機関を電動モータ以外に含む、ハイブリッド電気車両であってよい。他の電気車両は、すべての運転能力を電力から引き出してよい。電気車両は自動車に限定されず、オートバイ、カート、スクーターなどを含んでよい。
【0018】
「異物」とは、本来はワイヤレス電力伝達(WPT)システムに属さない物体を表す。異物は、金属物体、非生存誘電性(実質的に非導電性)物体、生存物体(たとえば、動物、人間の手足)、車両、またはそれらの組合せを含んでよい。それは、機器または人の安全のために検出される必要がある物体を表してよいが、同じく危害のない(たとえば、検出システムにおいて偽陽性検出を生じる潜在性を有し、したがって、弁別される必要がある)物体を指すことがある。
【0019】
図1は、複数の誘導性感知回路106a、106b、...106nおよび複数の容量性感知回路108a、108b、...108nを含む検出回路100の例示的な実装形態を示す。誘導性感知回路106a~106nの数および容量性感知回路108a~108nの数は各々、図示されている3個よりも少数または多数であってよい。そのような番号付き感知回路のうちの任意の1つに言及する例では、それぞれ、106iおよび108iとして参照される。図1に示すように、感知回路106a~106nの各々は、それぞれ、複数の誘導性感知素子107a~107nのうちの、対応する誘導性感知素子(たとえば、感知コイル)を含む。同様に、容量性感知回路108a~108nの各々は、それぞれ、複数の容量性感知素子109a~109nのうちの、対応する容量性感知素子(たとえば、1対の感知電極)を含む。そのような番号付き感知素子のうちの任意の1つに言及する例では、それぞれ、107iおよび109iとして参照される。
【0020】
図1はまた、非生存物体を表す異物110および112、ならびに生存物体114を示す。物体110は、WPT磁界に暴露されるときに潜在的に加熱される金属製の(実質的に導電性の)物体を表し、物体112は、実質的に非導電性でありWPT磁界に暴露されるときに加熱しない誘電性または強磁性の物体を表す。生存物体114は、誘電性かつ実質的に非導電性である人間の手足(たとえば、図1に示すような手)または動物を表してよい。
【0021】
誘導性感知素子107a~107nおよび容量性感知素子109a~109nは、誘導性感知回路106a~106nおよび容量性感知回路108a~108nの各々における1つまたは複数の電気的特性(たとえば、インピーダンス)を測定することによって、かつ測定された電気的特性の変化を検出することによって、誘導性感知素子107a~107nのうちの少なくとも1つの近傍にある異物(たとえば、物体110)および容量性感知素子109a~109nのうちの少なくとも1つの近傍にある生存物体(たとえば、物体114)の存在を感知するように構成される。感知素子はまた、同様の方法で車両の存在、識別、または位置を検出してもよい。誘導性感知回路106a~106nおよび容量性感知回路108a~108nの各々はまた、たとえば、1つまたは複数の電気的特性の測定、したがって、検出回路100の検出感度および信頼性を改善するように構成された、追加の調整回路構成(図1に示さず)を含んでよい。感知回路の各々はまた、1つまたは複数の電気的特性が測定および参照される少なくとも1つの測定ポート(図1に示さず)を規定する。
【0022】
誘導性感知素子107a~107nの各々は、例示のために「円形」コイルとして図1に示される。しかしながら、他の実装形態では、誘導性感知素子107a~107nは、別のコイルトポロジー(たとえば、「数字の8のような」トポロジー)を有する感知コイルを含んでよい。また他の実装形態では、誘導性感知素子107a~107nは、混合コイルトポロジー(たとえば、「円形」および「数字の8のような」)の感知コイルを含んでよい。さらなる実装形態では、誘導性感知素子107a~107nは、「エア」コイルと比較して物理的にもっと小型の、フェライトコアを有する感知コイル(たとえば、ソレノイドコイル、本明細書では図示せず)を含んでよい。またさらなる実装形態では、感知素子107a~107nは、異物(たとえば、物体110)もしくは車両を検出するための、または車両位置を決定するための、磁界を生成するために使用され得る他の誘導性デバイスを含んでよい。いくつかの実装形態では(本明細書では図示せず)、誘導性感知素子107a~107nの各々は、(たとえば、相互インダクタンスまたは相互インピーダンスに基づく)トランスインピーダンス測定技法と一緒に使用され得る二重さらには三重の感知コイル配置を含んでよい。いくつかの実装形態では、誘導性感知素子107a~107nは、図1に示すような2次元アレイ107などのアレイ107をなして配置される。しかしながら、他の実装形態では、誘導性感知素子107a~107nは、行もしくは列に従わないか(放射状またはインターリーブ型)、少なくとも部分的に重複しているかもしくは不規則な間隔を有するか、異なるサイズを有するか、異なる形状(円形、六角形など)を有するか、不規則な検出エリアを覆うか、またはそれらの任意の組合せを含む、他の構成をなして配置される。したがって、本明細書で使用する「アレイ」という用語は、所定のエリアにわたって配置される複数の感知素子を示す。さらに、アレイ107の誘導性感知素子の数、したがって、感知回路の数は、適用例に基づいて大きく変わることができ、そのことは、異物がその中で検出されることになる全領域、および検出回路100が検出するように構成される物体の最小サイズを含む。その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Systems, Methods, and Apparatus for Detection of Metal Objects in a Predetermined Space」と題する米国特許第9,726,518号の中に、「Foreign Object Detection Circuit Using Mutual Impedance Sensing」と題する米国特許第11,002,874号の中に、「Sense Coil Geometries with Improved Sensitivity for Metallic Object Detection in a Predetermined Space」と題する米国特許第10,122,192号の中に、また「Hybrid Foreign Object Detection (FOD) Loop Array Board」と題する米国特許第10,124,687号の中に、誘導性感知素子の例示的な実装形態および誘導性感知素子の配置が記載されている。
【0023】
容量性感知素子109a~109nの各々は、例示のために1対の感知電極として図1に示される。しかしながら、他の実装形態では、容量性感知素子109a~109nは単一の端子を設ける単一の電極を含んでよい。さらなる実装形態では、容量性感知素子109a~109nは、(たとえば、相互キャパシタンスまたは相互インピーダンスに基づく)トランスインピーダンスを測定するように構成および駆動されてよい。またさらなる実装形態では、容量性感知素子109a~109nは、異物(たとえば、物体112)、生存物体(たとえば、物体114)、もしくは車両(たとえば、車両340、図3)を検出するための、または車両のタイプもしくは車両位置を決定するための電界を、生成および検出するために使用され得る、他の容量性デバイスを含んでよい。図1では、容量性感知素子109a~109nは、誘導性感知素子107a~107nのアレイの周囲のエリアの中に配置されて図示される。しかしながら、他の実装形態では、容量性感知素子109a~109nは、他の構成をなして(たとえば、誘導性感知素子のアレイ107のエリアにわたって分散されて)配置される。その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Object Detection for Wireless Energy Transfer Systems」と題する米国特許第9,952,266号の中に、容量性感知素子(たとえば、容量性感知素子109a)の例示的な実装形態および容量性感知素子の配置が記載されている。
【0024】
図1の例を続けると、対応する感知素子107a~107nおよび109a~109nを含む、誘導性感知回路106a~106nおよび容量性感知回路108a~108nの各々は、測定回路104に動作可能に接続されている。多重化(図1に示さず)を含む測定回路104は、誘導性感知回路106a~106nおよび容量性感知回路108a~108nの各々における1つまたは複数の電気的特性を選択的かつ連続的に測定し、制御および評価回路102に出力を提供するように構成される。
【0025】
測定回路104は、(たとえば、誘導性感知回路106a~106nの各々に感知信号(たとえば、電流)を選択的かつ連続的に印加することによって)誘導性感知素子107a~107nの各々に感知周波数における交番磁界を選択的かつ連続的に生成させるように構成される。交番磁界の中に金属物体(たとえば、物体110)が存在する場合、その物体の中に渦電流が生成される。レンツ(Lentz)の法則によれば、物体の中の渦電流は、それぞれの感知素子によって生成されるような1次磁界と相互作用する別の(2次)磁界を生成し、相互結合が発現される。このことが、それぞれの誘導性感知回路106iにおける、測定回路104によって測定されるような電気的特性(たとえば、インピーダンス)の変化を引き起こしてよい。測定される電気的特性の変化はまた、それぞれの誘導性感知素子によって生成されるような交番磁界と相互作用する、比透磁率μr>1を有する実質的に非導電性であるが強磁性の物体(たとえば、物体112)によって引き起こされてよい。誘導性感知回路106iに感知信号を印加することはまた、実質的に非導電性の誘電性物体(たとえば、非生存物体112または生存物体114)と相互作用し得る交番電界をそれぞれの誘導性感知素子107iに生成させることがあり、それぞれの誘導性感知回路において測定されるような電気的特性の変化(容量性感知効果)を引き起こす。この交番電界はまた、金属製の(実質的に導電性の)物体(たとえば、物体110)と相互作用してよい。しかしながら、この効果は、磁界効果よりも桁違いに弱いと予想される。
【0026】
測定回路104は、(たとえば、容量性感知回路108a~108nの各々に感知信号(たとえば、電流)を選択的かつ連続的に印加することによって)容量性感知素子(たとえば、感知電極)109a~109nの各々に感知周波数における交番電界を選択的かつ連続的に生成させるようにさらに構成される。比誘電率εr>1を有する実質的に非導電性の誘電性物体(たとえば、生存物体114または非生存物体112)は、交番電界の中に存在する場合、電界と相互作用する。このことが、それぞれの容量性感知回路(たとえば、容量性感知回路108a)における、測定回路104によって測定されるような電気的特性(たとえば、インピーダンス)の変化を引き起こしてよい。測定される電気的特性の変化はまた、金属物体(たとえば、物体110)がまた、それぞれの容量性感知素子によって生成されるような交番電界と相互作用するので、金属物体(たとえば、物体110)によって引き起こされてよい。容量性感知回路108iに感知信号(たとえば、電流)を印加することはまた、金属物体(たとえば、物体110)と相互作用し得る交番磁界をそれぞれの容量性感知素子109iに生成させてよく、それぞれの容量性感知回路において測定されるような電気的特性の変化(誘導性感知効果)を引き起こす。しかしながら、この効果は、電界効果よりも桁違いに弱くてもよい。
【0027】
図2は、WPTシステムの一部分であるワイヤレス電力伝達構造200の例示的な実装形態を示す。ワイヤレス電力伝達構造200は、電力変換回路(図示せず)によって電流を用いて駆動されると交番磁界を生成するように構成される、WPTコイルとも呼ばれるコイル202(たとえば、リッツ線コイル)を含む。ワイヤレス電力伝達構造200はまた、1つまたは複数のフェライトタイルからなり得るとともに磁束のための低リラクタンス経路をチャネリングまたは提供するように構成されるフェライト構造204を含む。ワイヤレス電力伝達構造200は、バックプレート206をさらに含む。いくつかの実装形態では、バックプレート206は金属製であり、磁束を案内し、かつバックプレート206によって決定される境界を越えて磁界および電界が遠くに延在することを防止するか、またはその境界を越えて延在するフィールドを少なくとも減衰させるように構成された、シールドの働きをする。一例として、バックプレート206はアルミニウムから形成されてよい。さらに、図2は、図1の誘導性感知素子アレイ107および容量性感知素子アレイ109がどのようにワイヤレス電力伝達構造200の中に統合され得るのかという一例を示す。いくつかの実装形態では、ワイヤレス電力伝達構造200はまた、実質的にWPT動作周波数における共振に対してワイヤレス電力伝達構造200を同調させ、かつインピーダンスを電力変換回路(図示せず)に整合させるための、同調および整合ネットワーク(図示せず)を含む。図2はまた、図1におけるような金属物体110、非金属物体112、および生存物体114などの異物を示す。
【0028】
図2は、「地上組立体(GA:ground assembly)」、GAパッド、「ベースパッド」、または同調および整合ネットワークを統合する場合にはGA共振器と呼ばれることもある、地上ベースワイヤレス電力伝達構造を示す。地上ベースワイヤレス電力伝達構造200は、通常、車両(図2に示さず)上の対応する受信機に電力を送信するように構成され、電力変換器ならびに同調および整合ネットワークを含む、WPTシステムのグリッド側組立体の一体部分であってよい。いくつかの実装形態では、地上ベースワイヤレス電力伝達構造200は、WPTシステムの動作モードに応じて車両との間で電力を送信または受信するように構成される。送信モードでは、電力はGAから車両に伝達されるが、受信モードでは、電力は(たとえば、車両からグリッドに電力を伝達するために)必要に応じて「V2G」と呼ばれるモードで車両からGAに伝達される。電流によって励起されると、WPTコイル202はGAから車両に電力を伝達するための(たとえば、80kHzから90kHzまでの範囲の中のWPT動作周波数における)磁界を生成する。さらに、地上ベースワイヤレス電力伝達構造200が地上に、または別の上部対向面に配置され得るとき、異物は地上ベースワイヤレス電力伝達構造200の筐体の上面において静止するようになり得る。物体は、電力が伝達されている場合、高レベルの磁束密度に暴露されることがある。前に説明したように、この磁界の中に存在する金属物体または他の物体は、渦電流損失効果またはヒステリシス損失効果に起因して望ましくない誘導加熱に遭遇する場合がある。特に金属物体110が、誘導加熱に遭遇することがある。その上、ワイヤレス電力伝達構造200に接近しているときの、物体114によって図示されるような人間の手足(たとえば、手)が、磁界に暴露されることがある。したがって、両方のタイプの物体の暴露は、本明細書で説明するような保護機構を必要とすることがある。
【0029】
図3は、ワイヤレス電気車両充電に適用可能なWPTシステムの一部分300の垂直切断図を示す。この部分300は、図2に関する地上ベースワイヤレス電力伝達構造200、および車両340の底部に取り付けられた「車両組立体(VA:vehicle assembly)」とも呼ばれる車両ベースワイヤレス電力伝達構造320を含む。車両ベースワイヤレス電力伝達構造320は、電力変換器ならびに同調および整合ネットワークを含む、車両側WPTシステムの一体部分であってよい。
【0030】
地上ベースワイヤレス電力伝達構造200は、WPTコイル202、フェライト構造204、およびバックプレート206、ならびに図1および図2に示す検出回路100の一部としての誘導性感知素子107a~107n(アレイ107)および容量性感知素子109a~109n(アレイ109)を含む。
【0031】
図3は、WPTコイル202、フェライト構造204、ならびに感知素子アレイ107および109などの、地上ベースワイヤレス電力伝達構造200の他の構成要素を収容する、筐体310をさらに示す。筐体310は、カバーシェル312、および図2からのバックプレート206を含む。いくつかの実装形態では、筐体310はまた、上述のような同調およびインピーダンス整合ネットワーク、ならびに図1の検出回路100の一部としての測定回路104ならびに制御および評価回路102を収容してよい。別の実装形態では、筐体310は、追加として、電力変換回路(図示せず)の一部分または全部を収容する。筐体310は、車両がその上方で走行し得るスロープを形成するために、その縁部からその内部に向かってその外周部に沿って傾斜させられてよい。容量性感知素子109a~109nは、誘導性感知素子アレイ107によって画定される平面に対して(非平行に)傾けられてよい。たとえば、容量性感知素子は、筐体の外周部に沿って、筐体310の傾斜した表面と実質的に平行となるように配向されてよい。図3はまた、図1からの非生存物体110および112ならびに生存物体114を示す。
【0032】
車両ベースワイヤレス電力伝達構造320は、WPTコイル322、フェライト構造324、および導電性材料から作られたシールド334を含む。いくつかの実装形態では、シールド334は、車両340の底部においてフェライト構造324およびWPTコイル322が取り付けられる構造の一部分から形成されてよい。この場合、WPTコイル322およびフェライト構造324を収容する筐体330は、シールド334を収容しなくてよい。ワイヤレス電力伝達構造200の筐体310と類似のカバーシェル332および導電性バックプレート(図示せず)を筐体330が含む、他の実装形態が可能である。電力変換回路(図示せず)がWPTコイル322に電気的に接続されてよく、電力変換回路の一部分または全部も筐体330の中に収容されてよい。
【0033】
上記で説明したように、地上ベースワイヤレス電力伝達構造200は磁界を生成するが、車両ベースワイヤレス電力伝達構造320は磁界を介して電力を誘導的に受信する。V2Gをサポートする実装形態では、車両ベースワイヤレス電力伝達構造320も磁界を生成してよく、地上ベースワイヤレス電力伝達構造200が、車両ベースワイヤレス電力伝達構造によって生成される磁界を介して電力を受信してよい。
【0034】
車両ベースワイヤレス電力伝達構造320はまた、(たとえば、PDおよびVDのために)誘導性受動ビーコントランスポンダ326および容量性受動ビーコントランスポンダ328のうちの少なくとも1つを統合してよい。誘導性受動ビーコントランスポンダ326は、主に誘導性感知素子(たとえば、誘導性感知素子107a~107n)と相互作用するように構成されてよい。いくつかの実装形態では、誘導性受動ビーコントランスポンダ326は、トランスポンダコイル、検出回路100の動作(感知)周波数におけるコイルの総リアクタンスを補償するための容量性素子、および受動インピーダンス変調回路を含む(これらの要素は本明細書では図示されない)。容量性受動ビーコントランスポンダ328は、主に容量性感知素子(たとえば、容量性感知素子109a~109n)と相互作用するように構成されてよい。いくつかの実装形態では、容量性受動ビーコントランスポンダ328は、トランスポンダ電極、検出回路100の動作(感知)周波数における電極の総リアクタンスを補償するための誘導性素子、および受動インピーダンス変調回路を含む(これらの要素は本明細書では図示されない)。さらなる実装形態では(本明細書では図示せず)、受動ビーコントランスポンダ(たとえば、受動ビーコントランスポンダ326)は、検出回路100の誘導性感知素子と容量性感知素子の両方と相互作用するように構成される。
【0035】
いくつかの実装形態では(図示せず)、車両ベースワイヤレス電力伝達構造320はまた、検出回路100に対して説明されるのと同じ方法で非生存物体および生存物体(たとえば、金属物体110および生存物体114)を検出するように構成された1つまたは複数の誘導性感知素子および容量性感知素子を含む。
【0036】
図4は、検出回路100の例示的な実装形態または動作を示す一般的なブロック図である。検出回路100は、図1に関する、誘導性感知素子107a~107nを含む誘導性感知回路106a~106n、容量性感知素子109a~109nを含む容量性感知回路108a~108n、測定回路104、ならびに制御および評価回路102を含む。
【0037】
誘導性感知回路106a~106nの各々はまた、感知周波数における、誘導性感知素子の端子において提示されるような総リアクタンスを補償するための、関連する容量性素子(図示せず)を含んでよい。容量性感知回路108a~108nの各々はまた、感知周波数における、容量性感知素子の端子において提示されるような総リアクタンスを補償するための、関連する誘導性素子(図示せず)を含んでよい。誘導性感知回路および容量性感知回路のうちの少なくとも1つはまた、感知回路のインピーダンスを変換して多目的物体検出回路100の動作インピーダンス範囲と整合させるためのインピーダンス整合素子(たとえば、トランス)を含む。例示的な一実装形態では、誘導性感知回路106a~106nの各々は、追加のインピーダンス整合素子を使用せずに動作インピーダンス範囲と自然に整合される。しかしながら、容量性感知回路108a~108nは自然には整合されず、したがって、追加のインピーダンス整合素子(たとえば、トランス)が使用される。別の例示的な実装形態では、そのことは逆も同様である。さらなる例示的な実装形態では、誘導性感知回路106a~106nと容量性感知回路108a~108nの両方が追加のインピーダンス整合素子を含む。
【0038】
測定回路104は、誘導性感知回路および容量性感知回路に電気的に接続され、所定の時間多重化方式に従って誘導性感知回路および容量性感知回路の各々における1つまたは複数の電気的特性(たとえば、インピーダンス)を選択的かつ連続的に測定するように構成される。図4の中で示されるような、測定出力とも呼ばれる測定回路104の出力は、測定される1つまたは複数の電気的特性を示す。測定回路104は、ドライバ回路402、測定増幅器回路404、信号発生器回路406、および信号処理回路408をさらに含む。
【0039】
入力マルチプレクサ(入力MUX)回路を含むドライバ回路402は、誘導性感知回路106a~106nおよび容量性感知回路108a~108nに電気的に接続され、信号発生器回路406によって生成されるドライバ入力信号に基づいて誘導性感知回路106a~106nおよび容量性感知回路108a~108nの各々に感知周波数における駆動信号(たとえば、電流信号)を選択的かつ連続的に印加するように構成される。
【0040】
出力マルチプレクサ(出力MUX)回路を含む測定増幅器回路404は、誘導性感知回路106a~106nおよび容量性感知回路108a~108nに電気的に接続され、誘導性感知回路106a~106nおよび容量性感知回路108a~108nの各々における測定信号(たとえば、電圧信号)を選択的かつ連続的に増幅し、感知回路の各々における測定信号を示す測定増幅器出力信号を提供するように構成される。
【0041】
ドライバ回路402の入力部に電気的に接続された信号発生器回路406は、ドライバ入力信号を生成するように構成される。
【0042】
測定増幅器回路404の出力部に電気的に接続された信号処理回路408は、測定増幅器出力信号を受信および処理し、ドライバ入力信号および測定増幅器出力信号に基づいて誘導性感知回路および容量性感知回路の各々における1つまたは複数の電気的特性を決定するように構成される。測定増幅器出力信号を処理することは、フィルタ処理、結合、平均化などを含んでよい。フィルタ処理は、信号処理回路408の測定出力における信号対雑音比(SNR)を改善するために、信号処理回路408によって受信されるような感知信号の上に重畳される擾乱(たとえば、雑音)成分を低減することを含んでよい。
【0043】
制御および評価回路102は、測定回路104に電気的に接続され、図4の中で示されるように、それぞれ、入力MUX制御および出力MUX制御を介してドライバ回路402および測定増幅器回路404の入力MUX回路および出力MUX回路を制御するように構成される。入力および出力MUX回路制御は、所定の時間多重化方式に従って、誘導性感知回路および容量性感知回路の各々において測定されるような1つまたは複数の電気的特性(測定出力)を評価し、測定される1つまたは複数の電気的特性の変化に基づいて、異物、生存物体、または車両の存在、車両のタイプ、および車両位置のうちの少なくとも1つを決定する。制御および評価回路102は、図4の中で示されるような様々な出力を提供してよい。FOD、LOD、VD、およびPDのために構成された検出回路100では、制御および評価回路102は、対応するFOD出力、LOD出力、VD出力、およびPD出力を提供する。
【0044】
図4の中で使用される破線は、測定回路104の中の、特にドライバ回路402および測定増幅器回路404の中の、構成要素およびそれらの構成が例示的であること、ならびに駆動信号を用いて感知回路106a~106nおよび108a~108nを駆動し、感知回路106a~106nおよび108a~108nの各々における測定信号を増幅するように構成された、これらまたは他の構成要素を他の実装形態が有してよいことを強調する。さらに、いくつかの回路要素は他の要素間に接続されるように説明されるが、同じく電気的に接続されるように説明される2つの要素(たとえば、介在させられる他の要素)の中間にあり得る様々な実装形態では、他の回路要素があり得ることを諒解されたい。測定回路104の例示的な代替実装形態では(本明細書では図示せず)、ドライバ回路402と測定増幅器回路404の両方に対して共通の1つのMUX回路しかない。
【0045】
その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Systems, Methods, and Apparatus for Detection of Metal Objects in a Predetermined Space」と題する米国特許第9,726,518号の中に、「Systems, Methods, and Apparatus for Increased Foreign Object Detection Loop Array Sensitivity」と題する米国特許第9,921,045号の中に、「Systems, Methods, and Apparatus for Foreign Object Detection Loop Based on Inductive Thermal Sensing」と題する米国特許第10,295,693号の中に、「Systems, Methods, and Apparatus for Detecting Ferromagnetic Objects in a Predetermined Space」と題する米国特許第10,302,795号の中に、「Systems, Methods, and Apparatus for Detecting Metallic Objects in a Predetermined Space via Inductive Kinematic Sensing」と題する米国特許第10,298,049号の中に、「Foreign Object Detection Circuit Using Current Measurement」と題する米国特許第11,046,193号の中に、「Extended Foreign Object Detection Signal Processing」と題する米国特許第10,855,117号の中に、また「Foreign Object Detection Circuit Using Mutual Impedance Sensing」と題する米国特許第11,002,874号の中に、検出回路100の例示的な実装形態が記載されている。
【0046】
検出回路100の例示的な動作では、時分割多重化方式に従ってかつラウンドロビン方式で、誘導性感知回路106a~106nの各々および容量性感知回路108a~108nの各々に感知信号が選択的かつ連続的に印加される。誘導性感知回路を駆動するための感知信号は、その感知回路に割り振られた時間間隔(タイムスロット)の中で印加され、タイムスロットの持続時間に等しいかまたはそれよりも短い最大持続時間を有する。誘導性感知回路106a~106nおよび容量性感知回路108a~108nに割り振られるタイムスロットの合計に相当するタイムフレームは、本明細書では走査サイクルまたは反復期間とも呼ばれる。
【0047】
一態様では、走査サイクルの持続時間を短縮するために、誘導性感知回路106a~106nおよび容量性感知回路108a~108nの一部分の各々に第1の感知信号が選択的かつ連続的に印加され、第2の感知信号が並行して、誘導性感知回路および容量性感知回路の残りの部分の各々に選択的かつ連続的に印加される。2つ以上の感知信号を並行して印加することは、走査サイクルを短縮し、FODおよびLODに対して短縮された検出レイテンシを、かつ(たとえば、前に説明したような受動ビーコニング手法を使用する)PDに対して増大した位置更新レートをもたらしてよい。
【0048】
検出回路100の例示的な実装形態または動作では、並行して印加される感知信号は、同じ周波数の正弦波信号である。別の例では、並行して印加される感知信号は、正弦波信号であるが周波数が異なる。
【0049】
さらなる一例では、同じ感知回路に割り振られたタイムスロットの中で印加されるような並行した正弦波感知信号の各々は、同じ位相(たとえば、0位相)を伴って開始する。3つ以上の電流感知信号を使用するいくつかの実装形態では、同じ感知回路に割り振られたタイムスロットの中で同じ位相を伴って感知信号を開始することは、上述の米国特許第10,855,117号の中に記載されるような相互変調効果によって引き起こされる干渉を軽減する助けとなることがある。
【0050】
いくつかの実装形態では、走査サイクルのタイムスロットは、いくつかの条件(たとえば、WPTがアクティブであるのかそれとも非アクティブであるのか)に基づいて再割り振りされる。たとえば、WPTがアクティブであるとき、LODに対して検出レイテンシを短縮することが望ましい場合がある。したがって、例示的な動作では、WPTがアクティブであるとき、走査サイクルの2つ以上のタイムスロットが容量性感知回路108a~108nの各々に割り振られる。反対に、WPTが非アクティブであるとき、LOD機能は必要とされなくてよく、そのため、WPTが非アクティブであるとき、走査サイクルのタイムスロットは誘導性感知回路にしか割り振られない。別の例では、WPTが非アクティブであるとき、走査サイクルの2つ以上のタイムスロットが誘導性感知回路の各々に割り振られ、1つのタイムスロットが容量性感知回路の各々に割り振られる。この動作モードは、(たとえば、LODに対して検出回路100が正しく機能していることを監視するために)WPTが非アクティブであるとき、限定されたLOD機能を維持してよい。その上、上記で説明した走査モードのいずれにおいても同じ感知回路に割り振られるタイムスロット間の時間離間が最大化される。
【0051】
制御および評価回路102は、測定回路104(たとえば、多重化)を制御し、1つまたは複数の測定された電気的特性を示すような、測定回路104の出力(測定出力)を評価して、測定出力の変化に基づいて、異物、生存物体、または車両の存在、車両のタイプ、および車両位置のうちの少なくとも1つを決定するように構成される。
【0052】
いくつかの実装形態では、制御および評価回路102は、FOD、LOD、およびVDのために必要とされる決定機能、ならびにPDのために必要とされる位置計算機能を含んでよい。他の実装形態では、車両位置は、制御および評価回路102からの出力(たとえば、未加工データ)ならびに他の地上または車両ベースのセンサ(図示せず)によって提供される出力に基づいて、検出回路100の外部のユニット(図示せず)の中で決定される。
【0053】
制御および評価回路102の例示的な実装形態または動作では、評価は、(たとえば、複数の感知回路106a~106nおよび108a~108nのうちの、少なくとも1つの同じ感知回路に各々が関連する、連続する測定出力の系列(時系列)の比較的速い変化に)敏感な時間差分検出(TDD:time-differential detection)方式に基づく。比較的速い変化とは、感知回路の変動する周囲温度に起因する、測定される電気的特性のドリフトよりも大幅に速い変化として規定されてよい。
【0054】
TDD方式に基づくいくつかの実装形態または動作では、第1の時間において感知回路に関連する第1の測定出力と、第2の時間において同じ感知回路に関連する第2の測定出力との間の、少なくとも1つの差分がしきい値を超える場合、物体の存在が想定される。TDDを使用すると、物体は、感知素子の近傍に入るかもしくはそこから出るときに、または一般には、感知素子の近傍の中で移動するときに検出され得る。
【0055】
検出回路100のさらなる例示的な実装形態または動作では、評価は、複数の感知回路のうちの異なる感知回路に関連する測定回路104の出力の間の差分に敏感な感知回路差分検出方式に基づく。この検出方式は、空間差分検出(SDD:space-differential detection)と呼ばれることがある。SDDに基づくいくつかの実装形態または動作では、少なくとも1つの第1の感知回路に関連する第1の測定出力と、少なくとも1つの第2の感知回路に関連する第2の測定出力との間の、少なくとも1つの差分がしきい値を超える場合、物体の存在が想定される。真のSDD方式のいくつかの実装形態または動作では、差分を決定するために使用される複数の測定出力は、実質的に同じ時間を参照する。いくつかの事例では、複数の感知回路のうちの個々の感知回路が、周囲温度、機械的な衝撃、および経年変化によって少なくとも部分的に異なって影響を受けることがあるので、SDDがTDDよりも敏感でなく信頼できないことがあることが、諒解され得る。
【0056】
いくつかの態様では、TDDは、感知素子アレイの環境の中での、金属製構造の移動に敏感であり得る。そのような環境的な影響は、ワイヤレス電力伝達構造の上方に車両が駐車されるときの車両の金属製底部構造の移動を含んでよい。これらの移動は、単にTDD手法に基づく検出回路のいくつかの実装形態では、誤検出を引き起こすことがある。したがって、いくつかの態様では、そのような擾乱効果を軽減することが望ましい場合がある。
【0057】
TDDをSDDと組み合わせることは、そのような擾乱効果を効果的に弁別するための1つの手法である。組み合わせられたTDDおよびSDDのいくつかの実装形態または動作では、物体の存在は、少なくとも1つの感知回路に関連するTDD出力と、感知回路のうちの1つに各々が関連する複数のTDD出力に基づいて決定される基準値との間の、少なくとも1つの差分を評価することによって決定される。この基準値は、たとえば、平均値、中央値(50番目のパーセンタイル)、または測定出力から導出される任意の他の統計値であってよい。この特別な検出方式が、感知回路の大部分(クラスタ)において電気的特性(たとえば、インピーダンス)の変化をもたらすことがある、(たとえば、移動する車両底部からの)環境的な影響を弁別するための潜在性を有することが、諒解され得る。この特別な方式は、物体の存在を決定するために制御および評価回路102の中で使用される検出しきい値を自動的に適合させる機構と見なされてよい。より詳細には、いくつかの実装形態または動作では、制御および評価回路102は、上記で説明したように基準値を自動的に調整する。車両底部が移動しているとき、基準値(検出しきい値)は大きくなってよい。基準値を大きくすることは誤検出率を低減するが、いくらかの程度まで検出感度も低減する。したがって、車両が移動している間に所定の空間に入る物体に対して、いくぶん低い感度が受け入れられてよい。車両底部が静止するようになるとすぐに、基準値は自動的に安定し、検出回路100は、指定された誤検出率を維持するその通常の検出感度に戻ってよい。
【0058】
(本明細書の中に組み込まれる)米国特許第10,295,693号の中に記載される誘導性熱感知(ITS)とは、FOD感知周波数において誘導的に感知されることが可能であり、物体の温度の関数であり、かつ物体が加熱されると物体がない場合にシステム固有の熱ドリフトよりも大幅に速いレートで変化する、少なくとも1つの電気特性(たとえば、導電率、透磁率)によって特徴づけられるカテゴリーの金属物体を検出するための、特殊な検出方式である。このカテゴリーの物体は、以前に説明したように、十分に強い交番磁界にそれを暴露して誘導加熱を引き起こすことによって、潜在的に検出され得る。いくつかの実装形態では、この磁界は、ワイヤレス電力伝達システムによって生成されるような低周波磁界である。
【0059】
ITSによって検出可能な物体の非限定的な例は、金属皮膜箔を含むたばこの箱、ヨーグルトカップのアルミニウムカバー(蓋)、チューインガムの包み紙、金属化されたライターヘッドを有するシガレットライター、およびペーパークリップであってよい。これらの物体は、85kHzという周波数において1mTを上回る束密度を有する交番磁界に暴露される場合、(たとえば、秒単位の)急速加熱によって、また温度に応じて大幅に変化する少なくとも1つの電気の特性によって、特徴づけられてよい。
【0060】
このカテゴリーの物体がまた、加熱されると、その物体に近接した誘導性感知素子(すなわち、感知素子107a~107nのうちの1つまたは複数)の電気的特性(たとえば、インピーダンス)を変化させることがあることが、諒解され得る。このことは、FOD感知周波数において測定回路104によって、対応する誘導性感知回路(たとえば、感知回路106a~106n)において測定されるような電気的特性の変化を、したがって、測定出力の変化をもたらす。加熱する磁界に物体を暴露することは、回路の精密な較正および長期安定性の必要なく絶対的に、または上記で説明したようなTDD方式によって、物体を刺激してそれを検出可能にすることと見なされてよい。
【0061】
ITSのいくつかの実装形態または動作では、可能性のある金属物体は、物体の温度が明確に暴露ONおよびOFFサイクルに追従するが臨界レベルを超えないような方式で、磁界暴露を間欠的に適用することによって刺激される。上述のカテゴリーの物体が少なくとも1つの誘導性感知素子に近接している場合、関連する測定出力も暴露ONおよびOFFサイクルに追従する。ITSの代替の実装形態または動作では、可能性のある金属物体は、ON/OFFサイクリングを適用することによるのではなく、高い方のレベルと低い方のレベルとの間で磁界暴露を変化させることによって刺激される。
【0062】
ITSを使用する検出回路100のいくつかの実装形態では、物体の存在は、FOD感知周波数において決定されるような誘導性感知回路の電気的特性を示す測定出力の系列と、加熱(刺激)のために使用される磁界暴露のレベルを示す信号との間の相関に基づいて、制御および評価回路102によって決定される。磁界暴露レベルは、誘導性感知素子107a~107nのうちの少なくとも1つを使用して、かつ少なくとも1つの誘導性感知素子の中に誘導される電圧を測定するように同じく構成された測定増幅器回路404および信号処理回路408を用いて、感知されてよい。
【0063】
検出回路100のいくつかの例示的な実装形態または動作では、ITSはSDD方式と組み合わせられる。少なくとも1つの第1の感知回路(たとえば、誘導性感知回路106a)に関連する測定出力と磁界暴露との間の相関のレベルと、少なくとも1つの第2の感知回路(たとえば、誘導性感知回路106b)に関連する相関のレベルとの間の、少なくとも1つの差分がしきい値を超える場合、物体の存在が想定される。
【0064】
いくつかの実装形態では、同じく温度の関数である、誘導性感知素子の中に含まれる導電性材料および絶縁性材料の1つまたは複数の特性(たとえば、抵抗値、誘電率)に起因して、システム固有の熱的効果が生じることがある。低周波WPT磁界に暴露されると、1つまたは複数の特性が変化することがあり、誘導性感知素子の電気的特性を変化(たとえば、ドリフト)させる。金属物体の存在下で、物体によって生み出されるシステム外部の熱的効果に、システム固有の熱的効果が重畳し、したがって、希望されるシステム外部効果を変造またはさらには支配する。したがって、いくつかの実装形態では、検出回路100は、いかなる異物もない場合にシステム固有の熱的効果によって生み出されるような電気的特性の変化(たとえば、ドリフト)を決定することによる較正(または、学習)のプロセスを採用する。通常動作にある間、制御および評価回路102は、システム固有効果を補償(たとえば、控除)してよく、ITSに基づいて金属物体を検出するための改善された感度が得られる。
【0065】
さらなる実装形態では、システム固有の熱的効果は、1つまたは複数の特性における熱係数を小さくするように構成された特別な材料または構成要素を使用することによって低減される。
【0066】
(本明細書の中に組み込まれる)米国特許第10,302,795号の中に記載される誘導性強磁性感知(IFS)は、低周波バイアス磁界(たとえば、85kHzのWPT磁界)を印加することによって大幅に変動(変調)され得るような方式で、FOD感知周波数において誘導的に感知され得るとともにバイアス磁界の瞬時振幅の関数である少なくとも1つの電気特性(たとえば、導電率、透磁率)によって特徴づけられるカテゴリーの金属製強磁性物体を検出するための、別の特殊な検出方式である。強磁性物体では、この機能は、一般に非線形であり、負および正の磁界振幅が電気特性を等しく変化させて、整流された変調という結果になることを意味する。この整流された変調は、DC成分、バイアスフィールドの周波数の2倍(たとえば、170kHz)における基本周波数成分、および飽和の程度に応じてもっと高次の高調波を生成する。変調機能はまた、メモリ(ヒステリシス)効果および熱的効果(たとえば、キュリー温度効果)を含んでよい。
【0067】
IFSによって検出可能な物体の非限定的な例は、ペーパークリップ、ワイヤの断片、鋲、ピン、ねじ、ナット、およびワッシャなどの強磁性鋼材から作られた物体である。これらの物体は、約85kHzという周波数において1mTを上回る束密度を有する交番磁界に暴露される場合、顕著な磁気バイアス効果によって、また暴露束密度に応じて大幅に変化する少なくとも1つの電気特性によって、特徴づけられてよい。
【0068】
このカテゴリーの物体がまた、低周波磁界に暴露されると、その物体に近接した誘導性感知素子(たとえば、感知素子107a~107nのうちの1つ)の電気的特性(たとえば、インピーダンス)を変調し得ることが、諒解され得る。これは、測定回路104によってFOD感知周波数において、対応する誘導性感知回路(たとえば、感知回路106a~106nのうちの1つ)において測定されるような電気的特性の変調をもたらす。磁界に物体を暴露することは、回路の精密な較正および長期安定性の必要なく絶対的に、または上記で説明したようなTDD方式によって、物体を検出可能にするように刺激することと見なされてよい、磁気バイアスを引き起こす。
【0069】
周波数領域の中で、バイアス低周波磁界による変調は、(変調のDC成分に対応する)FOD感知周波数におけるスペクトルピークの変化の中に現れることができるが、同じくFOD感知周波数の左側および右側における変調側波帯の発生の中に現れることができる。変調側波帯は、基本波、およびFOD感知周波数から基本変調周波数のn倍のオフセット(たとえば、2×85kHz)を有するもっと高次の高調波に対応する、低い方と高い方の両方の側波帯の中に1つまたは複数のスペクトルピークを含んでよく、ただし、nは2、4、6などを含む偶数の整数である。いくつかの実装形態では、信号処理回路408は、FOD感知周波数における成分(整流された変調のDC成分)を抽出し、測定出力はDC成分を示す。他の実装形態では、信号処理回路408は、変調スペクトルの基本波成分および高調波成分のうちの1つまたは複数を抽出し、測定出力は、基本波成分および高調波成分のうちの1つまたは複数を示す。
【0070】
IFSのいくつかの実装形態または動作では、可能性のある金属物体は、暴露ONサイクルの間に物体の電気特性を変調する方式で、ただし、物体に臨界温度を超えさせないレベルおよび持続時間を用いて、(たとえば、85kHzという周波数を有する)低周波磁界を印加することによって刺激される。暴露ONサイクルは、低周波磁界の包絡線に対して実質的に長方形のパルスと見なされてよい。上述のカテゴリーの物体が少なくとも1つの誘導性感知素子に近接している場合、関連する測定出力はまた、暴露ONサイクルの持続時間(たとえば、パルス持続時間)にわたって変化する。IFSの代替の実装形態または動作では、可能性のある金属物体は、ON/OFFサイクルを適用するのではなく、高い方のレベルと低い方のレベルとの間で磁界暴露を変化させることによって刺激される。
【0071】
IFSを使用する検出回路100のいくつかの実装形態では、物体の存在は、FOD感知周波数および変調側波帯のうちの1つまたは複数において決定されるような誘導性感知回路の電気的特性を示す測定出力の系列と、変調(刺激)のために使用される磁界暴露のレベルを示す信号との間の相関に基づいて、制御および評価回路102によって決定される。磁界暴露レベルは、ITSに関して上記で説明したような方式で誘導性感知素子107a~107nのうちの少なくとも1つを使用して感知されてよい。
【0072】
制御および評価回路102のいくつかの実装形態では、物体の存在は、上記で説明したような相関に基づいて、ただし、ITSおよびIFSを一緒に使用して決定される。このことは、熱的効果と磁気バイアス効果の両方を呈する小型の強磁性物体(たとえば、ペーパークリップ)の検出を改善することがある。
【0073】
いくつかの実装形態では、磁気バイアス効果はまた、ワイヤレス電力伝達構造の中で使用されるフェライト材料の中で(たとえば、図2および図3のワイヤレス電力伝達構造200のフェライト構造204の中で)生じることがあり、低周波WPT磁界が印加されるときの誘導性感知素子の電気的特性(たとえば、インピーダンス)の変化を引き起こす。強磁性物体の存在下で、このシステム固有の磁気バイアス効果は、物体によって生み出されるシステム外部の磁気バイアス効果に重畳し、したがって、希望されるシステム外部効果を変造さらには支配する。したがって、いくつかの実装形態では、検出回路100は、いかなる異物もない場合にシステム固有のバイアス効果によって生み出されるような電気的特性の変化を決定することによる較正(または、学習)のプロセスを採用する。通常動作にある間、制御および評価回路102は、システム固有効果を補償(たとえば、控除)してよく、IFSに基づいて強磁性物体を検出するための改善された感度が得られる。
【0074】
さらなる実装形態では、システム固有の磁気バイアス効果は、低周波磁界に暴露されると磁気バイアス効果を小さくするように構成されたフェライト材料を含むフェライト構造を使用することによって低減される。
【0075】
(本明細書の中に組み込まれる)米国特許第10,298,049号の中に記載されるような誘導性運動感知(IMS)は、(たとえば、感知素子に対して物体が機械的に移動させられているとき)その相対運動によって物体を検出するための、さらに特殊な検出方式である。感知素子の近傍にある物体の相対移動は、対応する誘導性感知回路の電気的特性(たとえば、インピーダンス)の、したがって、測定回路104の測定出力の変化を生み出すことがある。
【0076】
IMSの例示的な実装形態または動作では、物体は、感知素子アレイ107に対して前後に機械的に移動させられる。このことは、物体が静止するようになり得る図3の筐体310の上面、ワイヤレス電力伝達構造200の一部分、またはその両方を移動させることによって達成されてよい。IMSのいくつかの実装形態または動作では、センチメートル範囲の中の振幅を伴って低周波(たとえば、3Hz)で感知素子に対して物体が移動させられる。他の実装形態または動作では、ミリメートル範囲さらにはサブミリメートル範囲の中の振幅を伴ってもっと高い周波数(たとえば、100Hz)で物体が移動(振動)させられる。
【0077】
IMSの別の実装形態または動作では、(本明細書の中に組み込まれる)米国特許第9,726,518号の中に記載されるように、(たとえば、物体の中に誘導される渦電流に起因して)電気力学的な力を物体に加える、時間変動する磁界を印加することによって、金属物体が移動させられる。この実装形態または動作では、物体は質量が小さい物体(たとえば、薄い金属箔)であってよく、印加される交番磁界はWPT低周波磁界(たとえば、85kHz)であってよい。IMSのさらなる実装形態または動作では、磁力を物体に加える磁界を印加することによって、強磁性金属物体(たとえば、物体110)が移動させられる。
【0078】
IMSのまた別の実装形態または動作では、重力または変形力によって、物体(たとえば、物体110)が移動させられる。一例は、金属製部分とプラスチック部分とを含む複合物体(たとえば、アルミニウムの蓋を有する、プラスチックのヨーグルトカップ)であってよい。金属製部分は、誘導的に加熱されると、プラスチックを部分的に融解または変形させることがあり、したがって、金属製部分をわずかに移動させることがある。
【0079】
IMSのいくつかの実装形態または動作では、物体の存在は、測定された電気的特性(たとえば、インピーダンス)を示す測定出力と機械的な移動を示す信号との間の相関に基づいて決定される。IMSの他の実装形態または動作では、物体の存在は、測定された電気的特性を示す測定出力と物体を移動させる磁界暴露のレベルを示す信号との間の相関に基づいて決定される。
【0080】
検出回路100のいくつかの実装形態または動作では、人または動物によってワイヤレス電力伝達構造が容易にアクセスされ得ないような地上ベースワイヤレス電力伝達構造の上方に車両が駐車されるとき、(たとえば、通常の充電プロセスを始める前の)事前充電フェーズの中で、1つまたは複数の電力相関ベース検出方式(たとえば、ITS、IFS、IMS)が採用される。そのような条件において、比較的大きい電流(たとえば、>30Arms)によってWPTコイルが励起されることを必要とする、ITS、IFS、およびIMSの使用は、安全と見なされてよく、生存物体のアクセスは、LODによってもっと容易に保護され得る。相関ベース検出方式を使用するこの手順とは、WPT(たとえば、充電)のために地上ベースワイヤレス電力伝達構造がクリアであることを検証することである。この手順は、「クリーンパッドチェック」と呼ばれることもあり、数分間続くことがある。
【0081】
他の実装形態または動作では、またWPTシステム、および車両バッテリーの管理システムによってサポートされる場合、検出回路100は、通常の電力伝達の間、電力相関ベース検出方式(たとえば、ITS、IFS、IMS)のうちの1つまたは複数を採用する。相関ベース検出方式の使用は、WPTシステムが頻繁かつ急速に電力をランプアップおよびランプダウンすることを必要とすることがある。
【0082】
媒介感熱材料を用いた物体検出
いくつかのカテゴリーの金属物体の誘導加熱に対する潜在性は、感知周波数がMHz範囲の中にある場合、上述の電力相関方式(たとえば、ITS、IFS、IMS)のうちのいずれによっても検出可能でないことがある。このカテゴリーの物体は、WPT磁界に暴露される場合、顕著な熱的効果または磁気バイアス効果も移動も呈しないことがある。このカテゴリーは、強磁性鋼材のコアを有する、銅またはニッケルでコーティングされた物体(たとえば、いくつかの硬貨)を含む。図3に示すようにワイヤレス電力伝達構造200の筐体310の上面の上で静止している検出不可能な物体は、WPT磁界に暴露されると加熱することがあり、筐体310の中に融解することがあり、筐体310のカバーシェル312が標準的な低コストプラスチックから作られている場合、回復不能な損傷を潜在的に引き起こす。
【0083】
したがって、そのような物体からワイヤレス電力伝達構造を保護するための方法および装置が望ましい。いくつかの態様では、ワイヤレス電力伝達構造は媒介感熱材料の1つまたは複数の部分を含む。異物は、物体自体の特性の変化ではなく媒介感熱材料の特性の変化に基づいて検出されてよい。感熱材料の部分は、有利なことに、熱的効果に基づいてワイヤレス電力伝達構造の近傍において異物を検出するように構成されたシステムの一部であり得る。いくつかの態様では、感熱材料は、その材料の温度に基づいて電気抵抗を変化させる材料であってよい。より一般には、感熱材料は、動作周波数(たとえば、FOD感知周波数)において測定されるようなインピーダンスを材料の温度の関数として変化させる材料であってよい。より詳細には、感熱インピーダンス材料は、抵抗率、導電率、キャパシタンス、インダクタンス、電気誘電率、透磁率、および材料の温度に基づく別の電気的特性のうちの1つまたは複数を変化させてよい。
【0084】
一態様では、感熱材料は、温度の関数としてその導電率を変化させる材料であってよい。例示的な感熱材料は、その導電率が、温度が上昇するにつれて大幅に大きくなり温度が下降するにつれて小さくなるような、顕著な負の温度係数(NTC)特性を有する導電率を有してよい。温度がしきい値(たとえば、摂氏100度(℃)、373ケルビン(K))を超えると、感熱材料の導電率は急速かつ大幅に大きくなってよい。一実装形態では、感熱材料は、温度が100℃(373K)よりも上に上昇すると大幅に大きくなる導電率を有するNTC特性を有する、ドープされたポリマー(たとえば、Celanese CorporationからのCoolPoly(登録商標)熱伝導性プラスチック)である。別の例では、感熱材料は、しきい値を下回る温度において実質的に絶縁体の働きをし、温度がしきい値を超えると導電性になる。いくつかの実装形態では、感熱材料は、(たとえば、温度が上昇するとき、結晶構造の中の相変化に起因して)顕著なNTC特性を有する、あるタイプのセラミック材料または結晶材料である。
【0085】
別の態様では、感熱材料は、その抵抗値が、温度が上昇するにつれて大幅に大きくなり温度が下降するにつれて小さくなるような、顕著な正の温度係数(PTC)特性を有する抵抗値を有してよい。一実装形態では、感熱材料は、温度がしきい値の上に上昇するとそのシート抵抗値(Ω/スクエア)が急速に大きくなる、規定された温度しきい値を有するPTCスクリーン印刷可能なインク(たとえば、Henkel CorporationからのLoctite(登録商標)PTCインク)である。
【0086】
さらなる態様では、感熱材料は、温度の関数としてその電気誘電率(たとえば、誘電定数)を変化させてよい。そのような材料の一例は、温度がしきい値(たとえば、100℃、373K)を超えると急速に変化する誘電率を有する。このしきい値は、誘電体材料のキュリー温度であってよい。一実装形態では、感熱材料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)、または低いキュリー点(たとえば、約100℃、373K)を有する類似の化学化合物を含む。
【0087】
また別の態様では、感熱材料は、温度の関数としてその透磁率を変化させてよい。そのような材料の一例は、温度がしきい値を超えると急速に変化する透磁率を有するフェライト粉末プラスチック合成物である。このしきい値は、フェライト材料のキュリー温度であってよい。一実装形態では、フェライト材料は、マンガン亜鉛(MnZn)の化学組成物、およびその酸化物成分によって制御され得る比較的低いキュリー点(たとえば、約100℃、373K)を呈する鉄酸化物(Fe2O3)または亜鉛酸化物(ZnO)のうちの少なくとも1つである。
【0088】
IFSの一態様では、感熱透磁率を有する材料の使用は、以前に図4に関して説明したようなシステム固有の磁気バイアス効果を大きくすることがある。したがって、いくつかの実装形態では、感熱材料はまた、材料固有の磁気バイアス効果を小さくするように構成される。他の実装形態では、感熱材料はまた、(たとえば、フェライト構造204と一緒に)感熱材料によって引き起こされる全体的な固有磁気バイアス効果を小さくするように構成される。いくつかの実装形態では、固有磁気バイアス効果は、フェライト粉末の粒子サイズ、異なる粒子サイズの調合比、およびフェライト粉末の化学組成物のうちの1つによって制御される。
【0089】
またさらなる態様では、感熱材料は、形状を変化させることなどによって、温度の関数として別の物理的な(非電気的な)特性を変化させてよい。この変形は、誘導性感知素子の測定される電気的特性(たとえば、インピーダンス)の変化によって、上記で説明したようなIMSを使用して、金属物体をわずかに移動させてそれを検出可能にしてよい。
【0090】
さらに、いくつかの態様は、複数の感知素子を媒介感熱材料と組み合わせる感知システムを使用して金属物体を検出するために、誘導性感知を感熱材料と組み合わせ、各感知素子は導電性構造を備える。複数の感知素子の少なくとも一部分は、金属物体の存在下で誘起効果に基づいて変化する電気的特性を有する誘導性感知素子として構成される。媒介感熱材料は、筐体(たとえば、図3の筐体310)の上面の上で静止しており、かつワイヤレス電力伝達構造によって生成される交番磁界に暴露される、金属物体によって加熱されると、上記で説明したように温度に応じて変動する特性を有する。媒介感熱材料は、特性が変化するにつれて複数の感知素子の少なくとも一部分の電気的特性を変化させ、それによって、熱的効果に基づく物体の感知を媒介する。感知素子の各々の電気的特性は、図4に関して説明したような時間多重化方式で、測定回路104によって周期的に測定されてよい。測定回路104の測定出力は、感知素子の測定される電気的特性の変化が、通常の誘起効果を通じて金属物体の、または熱的効果を通じて、磁界によって加熱されつつある物体の、存在を示すかどうかの決定を行うように構成された、制御および評価回路102によって評価および監視される。ワイヤレス電力伝達構造200の上面の上で静止している異物を検出することに関して、いくつかの態様が本明細書で説明されるが、他の実装形態では異物検出のために類似の技法が使用されてよい。
【0091】
その上、いくつかの態様は、複数の感知素子および媒介感熱材料を備える感知システムを使用して金属物体を検出するために、容量性感知を熱感知と組み合わせ、各感知素子は導電性構造を備える。複数の感知素子の少なくとも一部分は、容量性感知素子として、かつ金属物体の存在下で容量効果に基づいて変化する電気的特性を有するように、構成される。媒介感熱材料は、上記で説明したような特性を有し、特性が変化するにつれて複数の感知素子の少なくとも一部分の電気的特性を変化させ、熱的効果に基づく物体の感知を媒介する。感知素子の各々の電気的特性は、図4に関して説明したような時間多重化方式で、測定回路104によって周期的に測定されてよい。測定回路104の測定出力は、感知素子の測定される電気的特性の変化が、容量効果を通じて金属物体の、または熱的効果を通じて、磁界によって加熱されつつある物体の、存在を示すかどうかの決定を行うように構成された、制御および評価回路102によって評価および監視される。
【0092】
媒介感熱材料を使用する、組み合わせられた誘導性感知および熱感知、または組み合わせられた容量性感知および熱感知の一態様では、検出回路100は、前に説明したような磁界暴露のレベルを用いた相関に基づいていくつかの金属物体を検出するために、前に説明したようなITS方式を採用してよい。媒介感熱材料に基づくITSは間接ITS(ID-ITS)と呼ばれることがあり、ここで、物体自体の特性の変化ではなく媒介感熱材料の特性の変化に基づいて物体が検出される。
【0093】
本明細書におけるいくつかの態様では、地上ベースワイヤレス電力伝達構造の筐体は、少なくとも部分的に、材料の温度に基づいて電気的特性または非電気的特性のうちの少なくとも1つを変化させる感熱材料から構築される。このことは、構造の内側の誘導性センサまたは容量性センサが、筐体の感熱材料における熱的効果に基づいて異物を検出することを可能にする。
【0094】
別の態様では、筐体は、少なくとも部分的に、システムが異物を検出する前に異物が到達し得る温度に耐えることができる耐熱材料を含んでよく、そうした温度は、200℃(473K)と同じ程度かまたはそれを超えてもよい。耐熱材料は、たとえば、200℃(473K)を上回る、融点を有してよい。別の態様では、耐熱材料は難燃性であってよい。さらなる態様では、材料は高い自然発火温度を有してよい。たとえば、耐熱材料は、ナイロン樹脂(たとえば、DupontからのMinlon(登録商標)またはZytel(登録商標)樹脂)、パーフルオロエラストマー(たとえば、DupontからのKalrez(登録商標)製品)、重合シロキサン(たとえば、シリコーンゴム)、ガラスもしくは炭素繊維強化プラスチック、構造的合成物(たとえば、Pyromeral SystemsからのPyroSic(登録商標)、PyroKarb(商標)合成物)、焼結高温ポリマー(たとえば、EnsingerからのTECASINT(商標)などのポリイミド(PI))、またはセラミックマトリックス合成物(CMC:ceramic matrix composite)(たとえば、ガラスセラミック)などの、プラスチックのうちの1つまたは複数を含んでよい。
【0095】
機械的な側面では、筐体は、機械的な衝撃、屈曲、または圧縮応力に対して耐性がある材料を含んでよい。そのような機械抵抗は、物理的な損傷からワイヤレス電力伝達構造を保護してよい。追加として、材料は、もろくならないように弾性を有してよく、それによって、(たとえば、ワイヤレス電力伝達構造の上方で車両が走行することから)壊れることなく圧力下で材料がたわむことまたは曲がることを許容する。さらに、(たとえば、太陽照射または異物からの)熱に起因する膨らみまたは変形を回避するために、材料は熱膨張が小さくてよい。その上、材料は良好な機械加工性をもたらしてよく、または射出成形に適してよい。
【0096】
質量(重さ)の側面および本明細書で述べる他の側面では、筐体は、ポリアミド(たとえば、LANXESSからのDurethan(登録商標)プラスチック)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)(たとえば、LANXESSからのPocan(登録商標)プラスチック)、および繊維強化プラスチック合成物(たとえば、LANXESSからのTepex(登録商標)合成物)などの、質量密度(比重)が比較的小さいエンジニアリングプラスチックを含んでよい。
【0097】
熱的な側面では、筐体は、熱(たとえば、異物によって生成される熱)を放散するために、高い熱伝導率を有する材料を含んでよい。熱伝導率は、普及しているプラスチック材料の熱伝導率よりも大幅に大きくてよい。代替として、筐体は、熱伝導率が小さい材料(たとえば、シリカ、炭素-炭素合成物、繊維ガラスなど)を含んでよい。筐体はまた、長期紫外線(UV)放射暴露および化学物質(たとえば、潤滑油およびディーゼル油、ガソリン、ブレーキ液、冷却剤、溶媒など)に対して耐性がある材料を含んでよい。
【0098】
電気的な側面では、筐体は、相当な渦電流を生成しないような非導電性であり、かつワイヤレス電力電磁界に暴露されるときに相当な変位電流を生成しないような低い誘電性の分極損失を呈する、材料を含んでよい。さらに、材料は、ワイヤレス電力磁界、または異物を感知するために生成されるような磁界に、大幅に影響を及ぼさないような、非磁性または単に弱い磁性であってよい。
【0099】
商業的な側面では、筐体は、上記で規定されたような感熱材料または耐熱材料の特性を与えなくてよい従来の低コスト材料を含んでよい。そのような材料は、ポリエチレン(PE)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリオキシメチレン(POM)、および繊維強化エポキシ材料のうちの1つまたは複数を含んでよい。筐体は、熱感度、耐熱性、またはその両方をもたらす材料を、上記で説明した他の態様のうちのいずれかと組み合わせてよい。
【0100】
図5A図5Fは、ワイヤレス電力伝達構造(たとえば、図3のワイヤレス電力伝達構造200)用のそれぞれの筐体310A~310Fの例を示す。筐体310A~310Fの各々は、カバーシェル312および図2のバックプレート206を備え、地表面に搭載されたワイヤレス電力伝達構造のための好適な構造であってよい。しかしながら、それらは本出願に限定されるものとして解釈されるべきでない。いくつかの適応とともに図5A図5Fの中で開示するいくつかの概念はまた、埋込み式または地上組込み型のワイヤレス電力伝達構造(本明細書では図示せず)において使用されてよい。
【0101】
以前に図2および図3を参照しながら説明したように、筐体310A~310Fは、WPTコイル202、フェライト構造204、感知素子アレイ107および109、ならびに他の構成要素を収容する。カバーシェル312は、電力をワイヤレスに伝達するために車両ベースワイヤレス電力伝達構造に対面する、ワイヤレス電力伝達構造の一部分の上方に置かれる。たとえば、カバーシェル312は、ワイヤレス電力伝達構造が地上に置かれるとき、地上から離れて対面する(たとえば、地上から上にある)、ワイヤレス電力伝達構造の一部分の上に配置されてよい。バックプレート206は、電力をワイヤレスに伝達するために車両ベースワイヤレス電力伝達構造320に対面する、ワイヤレス電力伝達構造の部分の下方に置かれる。たとえば、ワイヤレス電力伝達パッドが地上に置かれるとき、バックプレート206は、地上に向かって対面する、ワイヤレス電力伝達構造の一部分の上に配設されてよい。バックプレート206は、金属製(たとえば、アルミニウム)であってよく、プラスチックから作られてよく、またはカバーシェル312と同じ材料から作られてもよい。カバーシェル312は、ワイヤレス電力伝達構造を覆うためのサイズおよび形状を有してよい。理解されることになるように、カバーシェル312またはバックプレート206は、任意の好適なサイズまたは形状を有してよい。
【0102】
いくつかの実装形態では、筐体の内部は、空隙を充填するための注入成形樹脂または任意の他の好適な材料を使用してポッティングされる(potted)。そのような実装形態では、カバーシェル312は、筐体の内部の中で他のプラスチック支持構造と同化させるポッティングプロセスの後、もはや分離可能な部分でなくてよい。(たとえば、特別な射出成型プロセスのために最適化された)他の実装形態では、カバーシェル312は、図3に示すような感知素子アレイ107および109、WPTコイル202、ならびにフェライト構造204などの、ワイヤレス電力伝達構造の電気的構成要素を囲む断熱材料および保護材料として働くことがある。
【0103】
カバーシェル312のために使用される材料は、前に説明したような電気特性、機械特性、化学特性、熱特性、および放射暴露特性を兼ね備えてよい。カバーシェル312は、機械的な衝撃、熱、屈曲、または圧縮応力に対して耐性があってよい。そのような機械的強度または耐熱性は、物理的な損傷からワイヤレス電力伝達構造を保護してよい。加えて、カバーシェル312は、もろくならないように弾性を有してよく、それによって、(たとえば、カバーシェル312の上方で車両が走行することから)壊れることなく圧力下でカバーシェル312がたわむことまたは曲がることを許容する。熱伝導率はまた、いくつかの態様では、高温の異物からの熱を熱伝導性材料が吸収および放散するので、異物が過剰に熱くなることを防止してよい。したがって、カバーシェル312に対する熱伝導性材料の使用は、カバーシェル312の上面の上で局所的な過熱点が発達すること、およびワイヤレス電力伝達構造の部分の、結果として生じる損傷を防止してよい。
【0104】
図5Aは、ワイヤレス電力伝達構造用の筐体310Aの例示的な実装形態を示す。この実装形態では、カバーシェル312全体が、上記で説明したようにカバーシェル312の上面の上方での異物の存在を検出し、したがって、ワイヤレス電力伝達構造を保護するように構成された、感熱材料から作られる。感熱材料は、顕著に温度に依存する電気的特性などの特性を、上記で説明したような機械特性、化学特性、熱特性、および放射暴露特性のうちの1つまたは複数とともに兼ね備えてよい。特に、感熱材料は、顕著に温度に依存する電気的特性を、耐熱性とともに兼ね備えてよい。
【0105】
図5B図5Fを参照すると、カバーシェル312は1つまたは複数のインレイを含む。インレイは、感熱材料、耐熱材料、および熱遮断材料のうちの少なくとも1つを含んでよい。いくつかの実装形態では、インレイは、製造プロセスの中でカバーシェル312とともに組み立てられる別個の部分であってよい。他の実装形態では、インレイは、カバーシェルの基材(たとえば、プラスチック)の特別かつ局所的な処理によって作成される、カバーシェル312の規定された領域であってよい。さらなる実装形態では、この領域は、形成の間に(たとえば、射出成形プロセスの中で)、所望の特性を有する1つまたは複数の材料(たとえば、感熱フェライト粉末)を局所的に基材に加えることによって作成される。
【0106】
図5Bの例では、筐体310Bは、カバーシェル312が完全に感熱材料から形成されるとは限らないことを除いて筐体310Aと類似である。代わりに、図示のように、カバーシェル312は、カバーシェル312の上面においてインレイ512を含む。インレイ512は感熱材料(感熱インレイ)から作られてよい。カバーシェルの残りの部分は非感熱材料から作られてよい。カバーシェル312のために使用される感熱材料の量を減らすことによって、FOD性能を損なうことなく筐体310Bのコストが低減されてよい。感熱インレイ512は、カバーシェル312の上面の一部分しか覆わなくてよく、または図示のように上面全体を覆ってもよい。感熱インレイ512のために使用される材料は、顕著に温度に依存する電気的特性などの特性を、前に説明したような機械特性、化学特性、熱特性、および放射暴露特性のうちの1つまたは複数とともに兼ね備えてよい。特に、そうした材料は、顕著に温度に依存する電気的特性を、耐熱性とともに兼ね備えてよい。
【0107】
図5Cは、筐体310Cのさらなる例を示す。筐体310Cは、感熱インレイ512を含むという点で筐体310Bと類似であるが、感熱インレイ512は、カバーシェル312の上面にある代わりに、カバーシェル312の中に埋め込まれる。
【0108】
図5Dは、ワイヤレス電力伝達構造用の筐体310Dのまた別の例を示す。筐体310Dは、感熱インレイ512を含むという点で筐体310Bおよび310Cと類似であるが、カバーシェル312は耐熱インレイ513をさらに含む。図5Dに示すように、耐熱インレイ513はカバーシェル312の上面にあるが、感熱インレイ512は耐熱インレイ513の下方に配設される。いくつかの実装形態では、感熱インレイ512および耐熱インレイ513は、図5Dに示すように、(物理的に接触して)隣接していてよい。耐熱インレイ513のために使用される材料は、耐熱性などの特性を、前に説明したような機械特性、化学特性、熱特性、および放射暴露特性のうちの1つまたは複数とともに兼ね備えてよい。
【0109】
耐熱インレイ513は、(たとえば、200℃、473Kよりも高い)いくらかの耐熱性および(たとえば、600℃、873Kよりも高い)高い発火温度を有する第1の材料(たとえば、プラスチック)を含む第1の層、ならびに(たとえば、600℃(873K)よりも高い)高温においてその構造を維持する第2の材料の、高度に耐熱性のメッシュ構造または組織を含む第2の層などの、複数の層を含んでよい。そのような複数の層を含めることは、第1の材料が融解し始める場合に物体がカバーシェル312の中に沈み込むことを防止する。第2の材料はガラスまたは炭素であってよい。別の例では、耐熱インレイ513は、第1の材料が融解し始める場合に物体がカバーシェル312の中に沈み込むことを防止する第1および第2の材料を含む化合物から作られる。さらなる一例では、感熱インレイ512が省かれ、カバーシェル312の残りの部分全体が感熱材料から作られる。また別の例では、耐熱インレイ513が省かれ、カバーシェル312の残りの部分全体が耐熱材料から作られる。
【0110】
図5Eの例では、筐体310Eは、図示のように上面において耐熱インレイ513を含むという点で筐体310Dと類似であるが、カバーシェル312は、断熱インレイ514の形態をなす断熱層をさらに含む。断熱インレイ514は、前に説明したような低い熱伝導率を有する材料から作られてよい。断熱インレイ514は、(たとえば、異物によって生成される)熱および結果として生じる損傷からワイヤレス伝達構造を保護してよい。たとえば、耐熱インレイ513は、高温の物体が、筐体310Eの中に収容されたワイヤレス電力伝達構造の暴露される構成要素に物理的に接触することを防止してよいが、いくつかの態様では、熱は、依然としてワイヤレス電力伝達構造のそれらの構成要素まで耐熱インレイ513を通過し、損傷を引き起こすことがある。したがって、断熱インレイ514は、異物によって生成される熱がワイヤレス電力伝達構造の筐体310Eの内部の中の暴露される構成要素に到達することを防止または軽減してよい。図5Eに示すように、断熱インレイ514は、耐熱インレイ513に隣接して(たとえば、その下方に)配設されてよい。
【0111】
別の例では、耐熱インレイ513が省かれ、カバーシェル312の残りの部分全体が耐熱材料から作られ、断熱インレイ514はカバーシェル312の中に埋め込まれる。
【0112】
断熱インレイ514と組み合わせて耐熱インレイ513を使用することは、拡張された期間(たとえば、数時間)にわたってその上面の上に静止している高温の物体によって引き起こされる損傷からカバーシェル312を十分に保護してよく、したがって、(たとえば、感熱材料を使用する)熱感知が必要とされなくてよい。
【0113】
図5Fの例では、筐体310Fは筐体310A~310Eのうちのいずれかと類似であり、感熱インレイ、耐熱インレイ、または断熱インレイ(図示せず)を含んでよい。カバーシェル312は、異物を検出するように構成された1つまたは複数の感知素子の配置516をさらに含む。いくつかの実装形態では、配置516は、図1の感知素子アレイ107および109のうちの一方または両方などの少なくとも1つの感知素子アレイを含む。配置516は、1つまたは複数の感知素子の電気的特性の変化を検出することなどによって、カバーシェル312の近くの異物を検出するように構成された、測定回路または何らかの回路に電気的に結合されてよい。
【0114】
図6A図6Dは、組み合わせられた誘導性感知および熱感知のために各々が構成された、それぞれ、感知システム600A~600Dの例示的な実装形態を示す概略図である。例示的な感知システム600A~600Dの各々は、感知素子610、および媒介感熱材料から作られ感知素子610に接触してまたはその極近傍に配設される平面感熱構造602(たとえば、シート)を含む。例示のために、図6A図6Dは、単一の感知素子610、および感熱構造602の切り抜き図しか示さない。いくつかの実装形態では、感知素子610またはその一部分は、図1に関する誘導性感知素子(たとえば、誘導性感知素子107a~107nのうちの1つ)に相当し、感熱構造602は、図5A図5Dに関するカバーシェル312またはインレイ512に相当してよい。各感知素子610は、以前に図1に関して説明したような感知回路(たとえば、感知回路106a~106nのうちの1つ)の追加の要素にインターフェースするための、それぞれ、端子1a、1b、および2a、2bを設ける、1対の感知コイル611および612からなる導電性の平面構造を含む。いくつかの構想または実装形態では、端子1a、1b、および2a、2bは、感知素子610の電気的特性が参照する基準面を規定する。しかしながら、他の構想または実装形態では、電気的特性は感知回路の全体を含み、(たとえば、図4に示すような測定回路104によって)感知回路の端子において測定される。図6A図6Dはまた、平面感熱構造602の小さい部分の横断面図(図面平面に対する垂直カット)、ならびにコイル611および612の1つの切り口の断面図を、右上において示す。
【0115】
図6Aは、感知システム600Aの例示的な実装形態を示し、ここで、感知コイル611と612の両方が、感熱構造602の底面において配設され、ガルバニックに(galvanically)感熱構造602に接触している。ガルバニックな接触は、コイル巻線の全体の導体長にわたって延在してよい。図6Bは、感知システム600Bの例示的な実装形態を示し、ここで、感知コイル611および612は、感熱構造602の異なる側部の上に、互いに対向して配設され、ガルバニックに感熱構造602に接触している。図6Cは、感知システム600Cの例示的な実装形態を示し、ここで、感知コイル611および612は、感熱構造602の中に埋め込まれ、ガルバニックに感熱構造602に接触している。図6Dは、感知システム600Dの例示的な実装形態を示し、ここで、感知コイル611および612は、感熱構造602の下方に配設されるが、感熱構造602から物理的に分離(ガルバニックに絶縁)される。
【0116】
図6A図6Dに関する一般の例では、4極ネットワークから知られているように、感知素子610の端子の間で複数の電気的特性が規定および測定され得る。より詳細には、それぞれ、感知コイル611および612に対して、端子1aと1bとの間および端子2aと2bとの間の、1ポート自己電気的特性が規定され得る。さらに、端子1aおよび2a、1bおよび2b、1aおよび2b、ならびに1bおよび2aの様々なペアの間で、1ポート相互電気的特性が規定され得る。その上、端子1a、1bと端子2a、2bとの間で2ポート相互電気的特性が規定されてよい。いくつかの実装形態では、測定される基本電気的特性は、検出回路100の動作周波数(たとえば、感知周波数)において測定されるようなインピーダンス、DCにおいて測定されるような抵抗値、電圧パルスを印加するときに測定されるような電流におけるインパルス応答、および、それぞれ、別の電圧波形または電流波形の電流応答または電圧応答のうちの、1つまたは複数である。これらの基本特性は、主に自己電気的特性と相互電気的特性の両方に適用されてよい。
【0117】
測定される電気的特性(たとえば、自己インピーダンス、相互インピーダンス)のうちの1つまたは複数の変化は、物体を示してよい。その変化は、いかなる物体もない場合に決定されるような基準値への差分として規定されてよく、異物の存在を決定するために使用されてよい。より詳細には、測定される電気的特性のうちの1つまたは複数の変化は、誘起効果および熱的効果のうちの1つまたは複数に基づいて物体の存在によって生み出されてよい。詳細には、感熱構造602と熱接触しており(たとえば、ワイヤレス電力伝達構造200によって生成されるような)強力な交番磁界によって誘導的に加熱される金属物体が、感熱構造602の特性を変化させることがある。この変化が、今度は、媒介材料の働きをする感熱構造602に隣接または近接して配設された感知素子610の測定される電気的特性のうちの1つまたは複数の変化を引き起こすことがある。
【0118】
図6A図6Cを参照する例示的な実装形態では、感熱構造602は、温度に応じて変動するDC抵抗値(たとえば、Ω/スクエア単位でのシートDC抵抗値)を有するように構成される(上記で説明した例)。この実装形態では、加熱物体によって引き起こされるDC抵抗値の局所的な変化はまた、熱的効果に基づいて、(たとえば、端子1aと2aとの間で)測定されるようなDC抵抗値の変化を引き起こすものと予想される。一方、感知素子610に近接した金属物体は、誘起効果に起因して、端子1a、1b、2a、および2bの間で測定されるような自己インピーダンスおよび相互インピーダンスの変化を引き起こすことがある。しかしながら、感熱構造602のDC抵抗値の増大はまた、感知素子610の端子1a、1b、2a、および2bの間で感知周波数(たとえば、高周波)において測定されるような、自己インピーダンスおよび相互インピーダンスの変化において明らかであり得る。
【0119】
図6A図6Cを参照する別の例示的な実装形態では、感熱構造602は、温度がしきい値を超えると大幅に大きくなるDC導電率(たとえば、ジーメンス/m/スクエア単位でのシートDC導電率)を有するように構成された、実質的に電気絶縁体である(上記で説明した例)。この実装形態では、加熱物体によって引き起こされる、導電率の局所的な増大はまた、熱的効果に基づいて、(たとえば、端子1aと2aとの間で)測定されるようなDC絶縁抵抗値の減少を引き起こすものと予想される。しかしながら、感熱構造602のDC導電率の増大はまた、感知素子610の端子1a、1b、2a、および2bの間で感知周波数(たとえば、高周波)において測定されるような自己インピーダンスおよび相互インピーダンスの変化において明らかであり得る。
【0120】
図6A図6Dのうちのいずれかを参照するさらなる例示的な実装形態では、感熱構造602は、温度に応じて変動する実数部(抵抗性)および虚数部(リアクタンス性)を有するインピーダンス(たとえば、Ω/スクエア単位でのシートインピーダンスまたは表面インピーダンス)を有するように構成される。これは、(たとえば、温度に応じて変動する透磁率または電気誘電率に起因して(上記で説明した例))シートインダクタンスまたはシートキャパシタンスを変動させる材料であってよい。この実装形態では、加熱物体によって引き起こされる、シートインピーダンスの局所的な変化はまた、熱的効果に基づいて、かつ誘起効果に加えて、端子1a、2a、1b、および2bの任意のペアの間で測定されるようなインピーダンスの変化を引き起こすことがある。感知素子610と物理的に接触していない感熱構造602を使用する図6Dの実装形態では、熱的効果と誘起効果の両方に基づくインピーダンスの変化が予想されることになることが、諒解され得る。このことは、温度に応じてシート抵抗値またはシートインピーダンスのうちのいずれかを変動させるように構成された感熱材料に当てはまることがある。
【0121】
図6A図6Dを参照するまた別の例示的な実装形態では、感知素子610は1つの感知コイル(たとえば、感知コイル611)しか備えず、誘起効果および熱的効果のうちの1つまたは複数に基づいて物体(たとえば、物体110)の存在を決定するために端子1aと1bとの間でインピーダンスが測定される。
【0122】
容量性効果および熱的効果のうちの1つまたは複数に基づく感知システムの例示的な実装形態では(本明細書では図示せず)、感知素子610は、各々が端子を設ける2つの電極を備える容量性感知素子(たとえば、容量性感知素子109a~109nのうちの1つ)によって置き換えられ、誘起効果および熱的効果のうちの1つまたは複数に基づいて物体の存在を決定するために、第1の電極の端子と第2の電極の端子との間でインピーダンスが測定される。
【0123】
図6A図6Dに示すような実装形態は、例示的かつ非限定的として解釈されるべきである。それらは、組み合わせられた誘導性感知および熱感知FODの実装形態のみを表すとは限らない。たとえば、感熱構造602が省かれてよい。代わりに、感知素子610の導電性構造が感熱材料(たとえば、感熱電気導体)を含んでよい。感熱電気導体は、前に説明したように温度がしきい値(たとえば、100℃、373K)の上方に上昇する場合、その抵抗値を大幅に大きくするように構成されてよい。感知素子は、物体から感知素子への熱流の熱抵抗値を最大化するために、図3のカバーシェル312の中に(たとえば、その上面の数ミリメートル下方に)埋め込まれてよい。
【0124】
図4を参照しながら上記で説明したように、感知システムは、コントローラ(たとえば、図4の測定回路104ならびに制御および評価回路102を備えるコントローラ)に結合されてよい。コントローラは、感知素子の電気的特性を測定し、(たとえば、図4に示される制御出力を介して)WPTシステムのワイヤレス電力伝達を制御するように構成されてよい。たとえば、いくつかの態様では、測定される電気的特性の変化が、媒介感熱構造によって媒介される誘起効果または熱的効果のいずれかによって異物の存在を示すしきい値または規定された別の基準を満たす場合、コントローラは、異物が存在することを決定し適切なアクションを取る。
【0125】
いくつかの態様では、上記で説明したように誘起効果または熱的効果のいずれかによって異物の存在が検出されると、コントローラまたはWPTシステムは1つまたは複数のアクションを取ってよい。たとえば、システムは、低電力モードに入ってよく、電力を小さくしてよく、オフにしてよく、または物体を除去することをユーザに促す警報を発行してもよい。
【0126】
さらに、いくつかの態様では、熱的効果に基づく異物(たとえば、物体110)の検出は、図4に関してITS方式に対して上記で説明したような感知素子610の測定される特性の変化を、地上ベースおよび車両ベースワイヤレス電力伝達構造(たとえば、図3の200および320)のうちの1つまたは複数によって生成されるような交番磁界のレベルと相関させることによって、もっと信頼性が高くされてよい。
【0127】
いくつかの他の態様では、異物の検出は、感知素子610の測定される電気的特性の変化を、(たとえば、車両底部に搭載されたカメラまたは地上ベースのカメラを使用する、たとえば、マイクロ波レーダー感知、赤外線感知、可視光線感知などに基づく)別の異物検出器の出力と相関させることによって、もっと信頼性が高くされてよい。
【0128】
さらなる態様では、図7は、異物を検出するために、組み合わせられた誘導性感知および熱感知を実行するための例示的な動作を示す。いくつかの態様では、動作700はコントローラによって実行されてよい。
【0129】
動作700は動作702において開始し、ここで、誘起効果および熱的効果のうちの1つまたは複数に基づいて異物を検出するように構成された、1つまたは複数の感知素子および媒介感熱材料を備える感知システムを備える、ワイヤレス電力伝達システムの中で、交番磁界が生成される。704において、1つまたは複数の感知素子の電気的特性が測定される。706において、1つまたは複数の感知素子の測定される電気的特性の変化が検出され、ここで、その変化は、媒介感熱材料によって媒介される誘起効果および熱的効果のうちの1つまたは複数によって引き起こされ、媒介感熱材料は、交番磁界に暴露された異物によって加熱されると温度に応じて特性を変動させ、それによって、1つまたは複数の感知素子の電気的特性を変化させるように構成される。最後に、708において、測定された電気的特性の検出された変化に基づいて、異物の存在が決定される。
【0130】
本明細書で使用する「決定すること」という用語は、多種多様なアクションを包含する。たとえば、「決定すること」は、計算すること、算出すること、処理すること、導出すること、調査すること、ルックアップすること(たとえば、テーブル、データベース、または別のデータ構造の中でルックアップすること)、確認することなどを含んでよい。また、「決定すること」は、受信すること(たとえば、情報を受信すること)、アクセスすること(たとえば、メモリの中のデータにアクセスすること)などを含んでよい。また、「決定すること」は、解決すること、選択すること、選ぶこと、確立することなどを含んでよい。
【0131】
本開示に関して説明される様々な例示的な動作、論理ブロック、モジュール、および回路は、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)もしくは他のプログラマブル論理デバイス(PLD)、個別ゲートもしくはトランジスタ論理、個別ハードウェア構成要素、または本明細書で説明する機能を実行するように設計されたそれらの任意の組合せを用いて実施または実行されてよい。汎用プロセッサはマイクロプロセッサであってよいが、代替として、プロセッサは、任意の市販のプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、またはステートマシンであってよい。プロセッサはまた、コンピューティングデバイスの組合せ(たとえば、DSPとマイクロプロセッサとの組合せ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと連携した1つもしくは複数のマイクロプロセッサ、または任意の他のそのような構成)として実装されてよい。
【0132】
上記で例示した精密な構成および構成要素に特許請求の範囲が限定されないことを理解されたい。特許請求の範囲から逸脱することなく、上記で説明した方法および装置の構成、動作、および詳細において様々な修正、変更、および変形が加えられてよい。
【符号の説明】
【0133】
100 検出回路
102 制御および評価回路
104 測定回路
106 誘導性感知回路
107 誘導性感知素子、誘導性感知素子アレイ
108 容量性感知回路
109 容量性感知素子、容量性感知素子アレイ
110 物体、金属物体、異物
112 物体、非生存物体、異物
114 物体、生存物体
200 ワイヤレス電力伝達構造
202 WPTコイル
204 フェライト構造
206 バックプレート
300 WPTシステムの一部分
310 筐体
312 カバーシェル
320 車両ベースワイヤレス電力伝達構造
322 WPTコイル
324 フェライト構造
326 誘導性受動ビーコントランスポンダ
328 容量性受動ビーコントランスポンダ
330 筐体
332 カバーシェル
334 シールド
340 車両
402 ドライバ回路
404 測定増幅器回路
406 信号発生器回路
408 信号処理回路
512 感熱インレイ
513 耐熱インレイ
514 断熱インレイ
516 配置
600 感知システム
602 感熱構造
610 感知素子
611 感知コイル
612 感知コイル
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
【国際調査報告】