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2025-505190異種の導電材を含むリチウム-硫黄電池用正極及びそれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-21
(54)【発明の名称】異種の導電材を含むリチウム-硫黄電池用正極及びそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/1397 20100101AFI20250214BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20250214BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20250214BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20250214BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
H01M4/1397
H01M4/136
H01M4/62 Z
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/36 C
H01M4/36 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546322
(86)(22)【出願日】2023-03-24
(85)【翻訳文提出日】2024-08-05
(86)【国際出願番号】 KR2023003982
(87)【国際公開番号】W WO2023182867
(87)【国際公開日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】10-2022-0036689
(32)【優先日】2022-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ボン-ス・キム
(72)【発明者】
【氏名】イル-ト・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミョン-ジュン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ジ-フン・アン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA08
5H050BA16
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA02
5H050DA10
5H050DA18
5H050EA08
5H050EA10
5H050FA13
5H050FA16
5H050FA17
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA07
(57)【要約】
本発明は、リチウム-硫黄電池用の正極に関し、前記正極は、正極活物質として多孔性炭素材料及び硫黄(S)を含む硫黄-炭素複合体を含み、平均粒度5μm以下の繊維状の第1導電材及び2つ以上のCNT一次粒子が凝集した二次粒子を含む第2導電材を含む。本発明による新規な導電材の組合せによって電池の出力特性が改善され、容量が高くなる効果を奏する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質、導電材及びバインダー材料を含み、
前記正極活物質が、多孔性炭素材料及び硫黄(S)を含む硫黄-炭素複合体を含み、
前記導電材は第1導電材及び第2導電材を含み、
前記第1導電材は、平均粒度5μm以下の繊維状であり、
前記第2導電材は、2つ以上のCNT一次粒子が凝集した二次粒子を含み、前記第2導電材は、平均粒度10μm~70μmの大きさであり、
前記正極活物質、導電材及びバインダー材料は、それぞれ80wt%~97wt%、2wt%~10wt%、2wt%~10wt%の範囲で含まれる、リチウム-硫黄電池の正極材料組成物。
【請求項2】
前記第1導電材はCNTを含み、前記CNTは平均層数が1~20である、請求項1に記載の正極材料組成物。
【請求項3】
前記第1導電材はCNTを含み、前記正極活物質、バインダー材料及び導電材の総重量100wt%に対して前記第1導電材が0.1wt%~0.5wt%含まれる、請求項2に記載の正極材料組成物。
【請求項4】
前記第1導電材は炭素繊維を含み、前記炭素繊維は直径が100nm~2μmである、請求項1に記載の正極材料組成物。
【請求項5】
前記第2導電材であるCNTは、平均層数が1~20であり、CNT一次粒子の平均直径が0.4nm~100nmである、請求項1に記載の正極材料組成物。
【請求項6】
前記正極活物質、バインダー材料及び導電材の総重量100wt%に対して、第1導電材0.1wt%~5wt%及び第2導電材1wt%~5wt%を含む、請求項1に記載の正極材料組成物。
【請求項7】
前記多孔性炭素材料は、一次粒子のBET比表面積が100m/g~3,000m/gである、請求項1に記載の正極材料組成物。
【請求項8】
前記多孔性炭素材料が、活性炭、カーボンナノチューブ(CNT)及びグラフェンからなる群より選択された一種以上を含む、請求項1に記載の正極材料組成物。
【請求項9】
前記CNTは、平均層数が1~20である、請求項8に記載の正極材料組成物。
【請求項10】
正極活物質100wt%に対して硫黄-炭素複合体を70wt%以上含む、請求項1に記載の正極材料組成物。
【請求項11】
前記硫黄-炭素複合体100wt%に対して硫黄が70wt%以上含まれる、請求項10に記載の正極材料組成物。
【請求項12】
前記硫黄-炭素複合体は、硫黄と炭素材料が単に混合されて複合化している状態、コアシェル構造のコーティング形態を有する状態および炭素材料の内部気孔に硫黄が充填されている状態のいずれか一つ以上の状態を有する、請求項1に記載の正極材料組成物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の正極材料組成物を含む、電気化学素子用の正極。
【請求項14】
請求項13に記載の電気化学素子用の正極を含むリチウム二次電池。
【請求項15】
請求項1に記載の正極材料組成物と第2溶媒とを混合し、
第1導電材は、平均粒度が5μm以下の状態に調節されて投入され、
第2導電材は、粉末状で投入され、CNT一次粒子が2つ以上凝集した二次粒子を含み、前記二次粒子を含む前記第2導電材は、平均粒度が10μm~70μmである、正極形成用スラリーの製造方法。
【請求項16】
前記第2溶媒は、水及び有機溶媒より選択された一種以上を含む、請求項15に記載の正極形成用スラリーの製造方法。
【請求項17】
前記第1導電材がCNTを含む場合、前記CNTは、第1溶媒と混合して混合溶液の形態で前記スラリーに投入される、請求項15に記載の正極形成用スラリーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力及び容量などの電池性能が改善されたリチウム-硫黄電池に関する。
【0002】
本出願は、2022年3月24日出願の韓国特許出願第10-2022-0036689号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
リチウム-硫黄電池の正極は、電子伝導性の確保のために正極材料100wt%に対して0~10wt%の含量範囲で導電材を含み、通常、カーボンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラックのような活性炭素材や炭素繊維あるいはカーボンナノチューブ(Carbon Nanotube;CNT)などが導電材として使用されている。
【0004】
そのうち、CNTまたは炭素繊維を使用する場合、通常、繊維の筋が完全に分散するように先分散して使用されるか、または炭素繊維が絡み合った粉末粒子のままで使用され得る。しかし、このような分散状態を制御して導電材の性能改善を最適化する技術は未だに提案されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、リチウム-硫黄電池用の正極において出力と容量特性が改善され得る新規な導電材成分及び含量の組合せを提供することを目的とする。また、本発明は、前記新規な導電材の組合せを含むリチウム-硫黄電池用の正極及び前記正極を含むリチウム二次電池を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面は、リチウム-硫黄電池の正極材料組成物に関し、前記組成物は、正極活物質、導電材及びバインダー材料を含み、前記正極活物質は、多孔性炭素材料及び硫黄(S)を含む硫黄-炭素複合体を含み、前記導電材は第1導電材及び第2導電材を含み、前記第1導電材は、平均粒度5μm以下の繊維状であり、前記第2導電材は、二つ以上のCNT一次粒子が凝集した二次粒子を含み、前記第2導電材は、平均粒度10μm~70μmの大きさを示し、
前記正極活物質、導電材及びバインダー材料は、それぞれ80wt%~97wt%、2wt%~10wt%、2wt%~10wt%の範囲で含まれる。
【0007】
本発明の第2側面によれば、前記第1側面において、前記第1導電材はCNTを含み、前記CNTは平均層数が1~20である。
【0008】
本発明の第3側面は、前記第2側面において、前記第1導電材はCNTを含み、正極活物質、バインダー材料及び導電材の総重量100wt%に対して0.1%~0.5%含まれる。
【0009】
本発明の第4側面によれば、前記第1側面から第3側面のいずれか一側面において、前記第1導電材は炭素繊維を含み、前記炭素繊維は直径が100nm~2μmである。
【0010】
本発明の第5側面によれば、前記第1側面から第4側面のいずれか一側面において、前記第2導電材であるCNTは、平均層数が1~20であり、CNT一次粒子の平均直径が0.4nm~100nmである。
【0011】
本発明の第6側面によれば、前記第1側面から第5側面のいずれか一側面において、前記正極活物質、バインダー材料及び導電材の総重量100wt%に対して、第1導電材0.1wt%~5wt%及び第2導電材1wt%~5wt%を含む。
【0012】
本発明の第7側面によれば、前記第1側面から第6側面のいずれか一側面において、前記多孔性炭素材料は、一次粒子のBET比表面積が100m/g~3,000m/gである。
【0013】
本発明の第8側面によれば、前記第1側面から第7側面のいずれか一側面において、前記多孔性炭素材料は、活性炭、カーボンナノチューブ(CNT)及びグラフェンからなる群より選択された一種以上を含む。
【0014】
本発明の第9側面によれば、前記第1側面から第8側面のいずれか一側面において、前記CNTは、平均層数が1~20である。
【0015】
本発明の第10側面によれば、前記第1側面から第9側面のいずれか一側面において、正極活物質100wt%に対して硫黄-炭素複合体を70wt%以上含む。
【0016】
本発明の第11側面によれば、前記第1側面から第10側面のいずれか一側面において、前記硫黄-炭素複合体100wt%に対して硫黄が70wt%以上含まれる。
【0017】
本発明の第12側面によれば、前記第1側面から第11側面のいずれか一側面において、前記硫黄炭素複合体は、硫黄と炭素材料が単に混合されて複合化している状態、コアシェル構造のコーティング形態を有する状態および炭素材料の内部気孔に硫黄が充填されている状態のいずれか一つ以上の状態を有する。
【0018】
なお、本発明の第13側面は、電気化学素子用の正極に関し、前記正極は第1から第12側面のいずれか一側面による正極材料組成物を含む。
【0019】
また、本発明の第14側面は、前記電気化学素子用の正極を含むリチウム二次電池に関する。
【0020】
また、本発明は、正極形成用スラリーの製造方法に関する。本発明の第15側面は、前記方法に関し、前記方法は、前記第1側面から第12側面のいずれか一側面による正極材料組成物と第2溶媒を混合し、第1導電材は、平均粒度が5μm以下の状態に調節されて投入され、第2導電材は粉末状で投入され、CNT一次粒子が二つ以上凝集した二次粒子を含み、前記二次粒子を含む第2導電材は平均粒度が10μm~70μmである。
【0021】
本発明の第16側面によれば、前記第15側面において、前記第2溶媒は、水及び有機溶媒より選択された一種以上を含む。
【0022】
本発明の第17側面によれば、前記第15側面または第16側面において、前記第1導電材がCNTを含む場合、前記CNTは、第1溶媒と混合して混合溶液の形態で前記スラリーに投入される。
【発明の効果】
【0023】
リチウム-硫黄二次電池において、本発明による新規な導電材の組合せを含むことで電池の出力特性が改善され、容量が高くなる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例1、2による電池の出力及び容量特性を示す。
図2】比較例1、3、4による電極の比抵抗の測定結果を示す。
図3】比較例1、6、7、8による電極の比抵抗の測定結果を示す。
図4a】比較例1~4による電池の放電特性の測定結果を示す。
図4b】比較例1~4による電池の放電特性の測定結果を示す。
図5】比較例1、5、6による電池の放電特性の測定結果を示す。
図6】比較例1、9、10による電池の放電特性の測定結果を示す。
図7】実施例1及び比較例1、11による電池の放電特性結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らが発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応じた意味及び概念で解釈されねばならない。
【0026】
明細書の全体において、ある部分が、ある構成要素を「含む」とするとき、特に明記しない限り、他の構成要素を除くことではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0027】
本明細書の全体にかけて使われる用語、「約」、「実質的に」などは、言及された意味に、固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値またはその数値に近接した意味として使われ、本願の理解を助けるために正確または絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に用いることを防止するために使われる。
【0028】
本明細書の全体において、「A及び/またはB」の記載は、「AもしくはB、またはこれら全部」を意味する。
【0029】
本発明において「比表面積」とは、BET法によって測定したものであって、具体的には、BEL Japan社のBELSORP-mini IIを用いて液体窒素温度(77K)における窒素ガスの吸着量から算出され得る。
【0030】
本明細書で使用される用語「ポリスルフィド」とは、「ポリスルフィドイオン(S 2-、x=8、6、4、2)」及び「リチウムポリスルフィド(LiまたはLiS 、x=8、6、4、2)」を共に含む概念である。
【0031】
本明細書で使用される用語「複合体(composite)」とは、二つ以上の材料が組み合わせられて物理的・化学的に相異なる相(phase)を形成し、より有効な機能を発現する物質を意味する。
【0032】
本明細書で使用される用語「気孔度(porosity)」とは、ある構造体において全体積に対して気孔が占める体積の割合を意味し、その単位としては「%」を使用し、空隙率、多孔度などの用語と互換して使用し得る。
【0033】
本発明において「粒径D50」とは、粒子の体積累積粒度分布の50%を基準にしたときの粒子の大きさを意味する。前記粒径D50はレーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定され得る。例えば、粒子を分散媒中に分散させた後、市販のレーザー回折粒度測定装置(例えば、Microtrac MT 3000)に導入して約28kHzの超音波を出力60Wで照射した後、体積累積粒度分布グラフを得た後、体積累積量の50%にあたる粒子の大きさを求めることで測定され得る。
【0034】
本発明において「繊維の厚さ」とは、繊維状の炭素素材を走査電子顕微鏡(SEM)で観察したとき、平均的な繊維の厚さを意味し、レーザー回折法で測定した粒子の大きさの分布を示す際、複数のピークが観察される場合、最も小さいピークが位置する粒子の大きさから繊維の厚さを推定することも可能である。
【0035】
なお、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜のために任意に示しており、本発明が必ずしもこのような図示に限定されることではない。図面において、複数の層及び領域を明確に示すために厚さを拡大して示した。そして、図面において、説明の便宜のために、一部の層及び領域の厚さを誇張して示した。
【0036】
また、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特に明記しない限り、他の構成要素を除外することなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0037】
本発明は、リチウム-硫黄電池用の正極材料組成物に関する。本発明の一実施様態において、前記正極材料組成物は、正極活物質、導電材及びバインダー材料を含む。前記正極材料組成物において、前記正極活物質、導電材及びバインダー材料の総重量を基準にして正極活物質は80wt%~97wt%、導電材は2wt%~10wt%、バインダーは2wt%~10wt%の割合で含まれ得る。一方、前記正極材料組成物は、必要な場合、溶媒をさらに含んでもよく、前記溶媒は後述するように第1溶媒及び第2溶媒のいずれか一つ以上をさらに含み得る。
【0038】
次に、前記各成分についてより詳細に説明する。
【0039】
正極活物質
本発明による正極活物質は、硫黄-炭素複合体を含む。望ましくは、前記正極活物質は、正極活物質100wt%に対して硫黄-炭素複合体を80wt%以上、望ましくは90wt%以上含み、より望ましくは、前記正極活物質は硫黄-炭素複合体のみからなり得る。また、前記硫黄-炭素複合体100重量%に対して硫黄の含量は70重量%以上であることが望ましい。
【0040】
本発明の一実施様態において、前記硫黄-炭素複合体は、前記硫黄と炭素材が単に混合されて複合化するか、またはコアシェル構造のコーティング形態あるいは担持形態であり得る。前記コアシェル構造のコーティング形態は、硫黄または炭素材のいずれか一つが他の物質をコーティングしたものであって、一例で炭素材料の表面を硫黄で囲むか、またはその反対になり得る。また、担持形態は、炭素材の内部、特に、内部気孔に硫黄が充填された形態であり得る。前記硫黄-炭素複合体の形態は、前記提示した硫黄系化合物と炭素材料の含量比を満たすものであれば、如何なる形態でも使用可能であり、本発明に限定されない。一方、本発明において、正極活物質の総重量に対して硫黄の含量は70重量%以上含まれることが望ましい。
【0041】
前記硫黄は、単独では電気伝導性がないため、炭素材料と複合化して使われる。炭素材料については後述する記載を参照する。本発明の一実施様態において、前記硫黄は、無機硫黄(S)、Li(n≧1)、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール(2,5-dimercapto-1,3,4-thiadiazole)、1,3,5-トリチオシアヌル酸(1,3,5-trithiocyanuric acid)などのようなジスルフィド化合物、有機化合物及び炭素-硫黄ポリマー((C、x=2.5~50、n≧2)からなる群より選択される一種以上であり得る。望ましくは、無機硫黄(S)を含み得る。
【0042】
リチウム-硫黄電池は、二次電池の中でも高い放電容量及び理論エネルギー密度を有するだけでなく、正極活物質に使用される硫黄は、埋蔵量が豊かで価格が安いため、電池の製造単価を低くすることができ、環境に優しいという長所から次世代二次電池として脚光を浴びている。
【0043】
リチウム-硫黄電池において、正極活物質である硫黄は不導体であるため、低い電気伝導度を補うために伝導性物質である炭素材料と複合化した硫黄-炭素複合体が通常使用されている。
【0044】
前記硫黄-炭素複合体は、多孔性の炭素材料及び硫黄を含む。本発明の一実施様態において、前記硫黄-炭素複合体は、前記多孔性炭素材料の気孔に硫黄が担持されている形態であり得る。
【0045】
前記炭素材料は、表面及び内部に一定でない複数の気孔を含む多孔性構造を有するものであって、硫黄が均一であり、安定的に固定化可能な骨格を提供する担持体の役割を果たし、硫黄の低い電気伝導度を補って電気化学反応が円滑になるようにする。特に、硫黄-炭素複合体において、硫黄の担持体の役割を果たす炭素材料が、BET比表面積が広く、適切な粒径D50サイズを有する場合、硫黄の担持量が高いながらも不可逆容量が低く、エネルギー密度を高めて電気化学的反応時における硫黄の利用率を高めることができる。
【0046】
本発明の一実施様態において、前記炭素材料のBET比表面積は、最小100m/g以上であり、最大3,000m/gであり得る。これと共に、または独立的に、前記炭素材料は一次粒子の粒径D50が1μm~50μmであり得る。
【0047】
前記炭素材料のBET比表面積と粒径D50が前記範囲を満たすことで炭素材料の内部及び外部表面に硫黄を均一に分散させる一方、不可逆容量を低めて硫黄の電気化学的反応性を増大させ得る。また、炭素材料が使用されることで硫黄-炭素複合体の電気化学的反応性、安定性及び電気伝導性が改善され、これによってリチウム-硫黄電池の容量及び寿命特性が向上するのみならず、充放電時における硫黄の損失または体積変化が発生しても最適の充放電性能を示す。
【0048】
前記一次粒子の粒径D50が50μmを超過する場合、物質移動に対する制限によって粒子内部へのリチウムイオンの移動が難しいため、炭素中心に位置した硫黄を効率的に使用しにくい。一次粒子の粒径D50が1μm未満である場合、電極スラリーの製作過程で多くの溶媒を必要とするため固形分の増加が難しく、十分な粒子間の気孔が確保されず、出力が減少するという問題がある。
【0049】
本発明の硫黄-炭素複合体において、硫黄の担持体に用いられる炭素材料は通常、多様な炭素材質の前駆体を炭化させることで製造され得る。
【0050】
一方、本発明の一実施様態において、前記炭素材料の気孔は、最長径を基準にして直径が0.5nm~200nmの範囲を有し得る。前記炭素材料は、各々球状、棒状、針状、板状、管状またはバルク形であって、リチウム-硫黄電池に通常使用可能なものであれば、特に制限されない。
【0051】
前記炭素材料は、多孔性及び導電性の炭素系物質であって、当業界で通常使用されるものであれば、いずれも可能である。例えば、グラファイト(graphite);グラフェン(graphene);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)などのカーボンナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)、活性炭繊維(ACF)などの炭素繊維;天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛などの黒鉛;カーボンナノリボン;カーボンナノベルト、カーボンナノロッド及び活性炭(activated carbon)からなる群より選択された一種以上を含み得る。
【0052】
本発明による硫黄-炭素複合体において、前記硫黄は、前記炭素材料の気孔内部及び外部の表面の少なくともいずれか一表面に位置し、この際、前記炭素材の内部及び外部の全表面の100%未満、望ましくは1%~95%、より望ましくは60%~90%の領域に存在し得る。前記硫黄が炭素材の表面に前記範囲内で存在するとき、電子伝達面積及び電解液の濡れ性の面で最大の効果を奏し得る。具体的には、前記範囲領域で硫黄が炭素材の表面に薄く均一に含浸するため、充放電過程で電子伝達接触面積を増加させることができる。もし、前記硫黄が炭素材料の全表面の100%の領域に位置する場合、前記炭素材が完全に硫黄で覆われ、電解液の濡れ性が劣り、電極内に含まれる導電材との接触性が低下して電子が伝達されにくく、反応に参与できなくなる。
【0053】
また、本発明の一実施様態において、前記硫黄-炭素複合体は、以下のような製造方法によって得られる。
【0054】
本発明による硫黄-炭素複合体の製造方法は特に限定されず、当業界において通常知られているものであって、(S1)炭素材料と硫黄を混合する段階の後、(S2)複合化する段階からなる複合化方法によって製造され得る。
【0055】
前記(S1)段階の混合は、硫黄と炭素材料との混合度を高めるためのものであって、当業界で通常使用される撹拌装置を用いて行い得る。この際、混合時間及び速度も、原料の含量及び条件に応じて選択的に調節され得る。
【0056】
前記(S2)段階の複合化方法は、本発明において特に限定されず、当業界で通常使用される方法が用いられ得る。一例で、乾式複合化またはスプレーコーティングなどのような湿式複合化など、当業界で通常使用される方法を用い得る。一例で、混合後に得られた硫黄と炭素材料の混合物を熱処理して溶融した硫黄が炭素材料の内部及び外表面に均一にコーティングされるようにする方法を用い得る。一方、本発明の一実施様態において、前記熱処理する前に前記硫黄と炭素材料の混合物をボールミル粉砕などの方法で粉砕する工程が行われる。本発明の一実施様態において、前記熱処理は120℃~160℃の温度条件で約20分~24時間行われ、オーブンなどの加熱装置が適用され得る。
【0057】
前述した製造方法によって製造された硫黄-炭素複合体は、比表面積が高く、硫黄の担持量が高く、硫黄の利用率が改善される構造を有することから、硫黄の電気化学的反応性が改善されるのみならず、電解液の接近性及び接触性を向上させることによって、リチウム-硫黄電池の容量及び寿命特性を向上させることができる。
【0058】
導電材
本発明による正極材料組成物は導電材を含み、前記導電材は第1導電材及び第2導電材を含む。
【0059】
前記第1導電材は繊維状または針状のものであって、PSD(particle size distribution;粒度分布)分析による平均粒度が5μm以下である。前記PSDは、粒度分布測定装置を用いて測定し得る。例えば、前記第1導電材を市販のレーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、Microtrac S3500)に導入して粒子がレーザービームを通過するときの粒子サイズによる回折パターン差を測定して粒度分布を算出し得る。
【0060】
本発明の一実施様態において、前記平均粒度はPSD分析のうち、乾式分析または湿式分析によって確認される数値であり得る。乾式分析は、例えば、大気中に分析対象粒子を撒いて粒度を分析する方法であり、湿式分析は、分析対象粒子を溶媒(例えば、水)に分散させて粒度を分析する方法である。一方、前記第1導電材の平均粒度は、正極材料組成物、正極形成用スラリー及びこれらより得られた正極においても維持され得る。
【0061】
前記第1導電材は、カーボンナノチューブ及び炭素繊維からなる群より選択された一種以上を含み得る。本発明の一実施様態において、前記炭素繊維は、繊維直径が100nm~2μmであり得る。前記カーボンナノチューブは平均層数が1~20であり、前記カーボンナノチューブは一次粒子(カーボンナノチューブの一本)の平均直径(直径)は0.4nm~100nmであり得る。ここで、前記炭素繊維及びカーボンナノチューブ一次粒子の直径は、透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)または走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)を用いて測定し得る。
【0062】
前記カーボンナノチューブ一次粒子の平均直径は、TEMまたはSEMで観察したカーボンナノチューブイメージにおいて、複数の一次粒子の直径を平均して計算し得る。この際、観察される一次粒子の数は、例えば、10個~50個であり得るが、これに限定されるものではない。
【0063】
前記炭素繊維の直径が100nm~2μmであることは、TEMまたはSEMで観察した炭素繊維イメージから任意に選択した複数の炭素繊維の直径が前記範囲のものであることを意味し得る。例えば、TEMで炭素繊維のイメージを撮影し、前記イメージから10個~50個の炭素繊維を任意に選択して直径を測定したとき、測定された直径が全て100nm~2μmである場合、炭素繊維の直径が100nm~2μmであると看做され得る。但し、直径の測定に選択される炭素繊維の数は10個~50個に制限されるものではない。
【0064】
前述のように前記第1導電材がカーボンナノチューブ及び炭素繊維からなる群より選択される一種以上を含む場合、これを含む正極材料組成物を含む電池は、比抵抗が低くなり、容量改善の効果を奏することができる。
【0065】
一方、前記第1導電材にCNTが含まれる場合、前記CNTの含量は、正極活物質、バインダー材料及び導電材の総重量100wt%に対して0.1wt%~0.5wt%の範囲で含まれることが望ましい。前記範囲に及ばない場合、導電経路の連結効果が少なくて出力改善の効果が示されず、それより多い場合はCNTが膜を形成して気孔を遮るため、円滑な電池反応を阻んで出力が減少する。
【0066】
一方、前記第1導電材に炭素繊維が含まれる場合、前記炭素繊維の含量は正極活物質、バインダー材料及び導電材の総重量100wt%に対して1wt%~10wt%の範囲で含まれることが望ましい。前記範囲に及ばない場合、導電経路の連結効果が少なくて出力改善の効果が示されず、それより多い場合には炭素繊維が膜を形成して気孔を遮るため、円滑な電池反応を阻んで出力が減少する。
【0067】
なお、本発明の一実施様態において、前記第1導電材は、平均粒度5μm以下を維持し、正極材料組成物中における分散性を高めるために水または適切な有機溶媒(NMP,アセトン(Acetone))などの第1溶媒に分散させて混合溶液を製造し、このような混合溶液の形態で正極材料組成物に投入し得る。特に、CNTは、気相合成された状態で分散していない二次粒子として存在し、分散を行うとしても分散程度が十分でない場合、凝集して二次粒子化しやすく、平均粒度が5μmを超過する巨大粒子化し得る。そこで、前述した混合溶液を製造する場合、CNTの平均粒度が5μm以下に制御され得る。一方、第1導電材としてCNTではなく炭素繊維を使用する場合には、溶媒に先に分散させなくても正極組成物の混合溶液(スラリー)の製造時に炭素繊維が充分に分散して5μm以下の平均粒度を有し得る。そのため、前記第1導電材は必ずしも混合溶液の形態で添加されなくてもよい。
【0068】
一方、本発明の一実施様態において、前記第2導電材はPSD測定結果による平均粒度が10μm~70μmのものである。前記第2導電材は、CNTを含み得る。前記CNTは、平均層数が1~20であり、一次粒子の平均直径が0.4nm~100nmであり得る。前記第2導電材は、平均粒度が10μm~70μmのものであり、一次粒子が二つ以上凝集して形成された二次粒子を含む。前記第2導電材は、前記平均粒度の二次粒子を含む状態で前記正極材料組成物に投入され、正極材料組成物中でも前記平均粒度を維持するものであって、第1導電材とは異なり、正極材料組成物に投入される前に混合溶液を製造し先分散する工程が適用されないことが望ましい。
【0069】
一方、本発明の具体的な一実施様態において、前記正極活物質、バインダー材料及び導電材の総重量100wt%に対して第1導電材が0.1wt%~5wt%、第2導電材が1wt%~5wt%の範囲で含まれ得る。
【0070】
バインダー材料
前記バインダー材料は、正極活物質粒子同士の付着及び正極活物質と正極集電体との接着力を向上させる役割を果たすものであって、具体的な例としては、ポリビニルリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、でん粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM rubber)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などが挙げられ、これらの一種単独または二種以上の混合物が使用され得る。
【0071】
その他の正極材
本発明の一実施様態において、前記正極活物質は、前記硫黄-炭素複合体のみから構成され得る。一方、本発明の一実施様態において、前記正極活物質は、前記硫黄-炭素複合体の他に、遷移金属元素、IIIA族元素、IVA族元素、これら元素の硫黄化合物及びこれら元素と硫黄の合金より選択される一つ以上の添加剤をさらに含み得る。
【0072】
本発明の具体的な一実施様態において、前記正極活物質層は、下記化学式1で示されるリチウム遷移金属複合酸化物をさらに含み得る。
【0073】
[化学式1]
LiNiCo
前記化学式1において、Mは、Mn、Alまたはこれらの組合せであり、望ましくは、MnまたはMn及びAlであり得る。
【0074】
前記Mは、Zr、W、Y、Ba、Ca、Ti、Mg、Ta及びNbからなる群より選択される一種以上であり、望ましくは、Zr、Y、Mg及びTiからなる群より選択された一種以上であり、より望ましくは、Zr、Yまたはこれらの組合せであり得る。M元素は必須に含まれるものではないが、適切な量で含まれる場合、焼成時の粒子成長を促進するか、または結晶構造の安定性を向上させる役割を果たし得る。
【0075】
一方、前記正極材料組成物を用いて下記のように正極スラリー及び正極を製造し得る。
【0076】
前記正極スラリーは、前述した正極材料組成物と第2溶媒を混合して製造され得る。前記正極スラリー中の固形分の含量は、20wt%~50wt%の範囲であり得る。前記正極スラリー中の固形分は前記第2溶媒を含まず、もし第1導電材が混合溶液の状態で先分散して投入される場合、先分散溶液の第1溶媒も除いた残りの成分のみを意味する。
【0077】
前記第1導電材は平均粒度が5μm以下の状態に調節され、前記スラリー中に投入される。一方、前記第2導電材は、CNT二次粒子が含まれた粉末状で投入され、前記二次粒子は平均粒度が10μm~70μmである。
【0078】
本発明の一実施様態において、前記第2溶媒は、水及び有機溶媒(NMPまたはアセトン)から選択された一種以上を含み得る。
【0079】
一方、前述したように、前記第1導電材がCNTを含む場合、前記CNTは、第1溶媒と混合して平均粒度が5μm以下になるように先分散し、このような混合溶液の形態で前記スラリーに投入され得る。
【0080】
このように正極スラリーが準備されると、それを正極集電体用の金属薄膜の少なくとも一面に塗布して乾燥して正極を製造し得る。前記正極の製造において、スラリー塗布、乾燥、加圧による厚さ及び気孔度の調節についての具体的な工程内容は、本発明が属する技術分野における公知技術を代わりにし得る。
【0081】
例えば、第2溶媒を準備し、前述した正極材料組成物を投入して正極スラリーを準備し得る。一方、本発明の一実施様態において、前記正極材料組成物のうちバインダー材料が先に第2溶媒に投入されてバインダー溶液を製造し、その後、順次に残りの材料が投入され得る。前記正極スラリーを製造するための第2溶媒としては、正極材料組成物を均一に分散でき、蒸発しやすいものを使用することが望ましい。代表的には、アセトニトリル、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、水、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。
【0082】
このように製造されたスラリーを集電体に塗布して乾燥して正極を形成する。前記スラリーは、スラリー粘度及び形成しようとする正極の厚さに応じて適切な厚さで集電体にコーティングし得る。
【0083】
前記塗布は、当業界における公知の方法によって行われ得る。例えば、前記正極活物質スラリーを前記正極集電体の一側上面に分配した後、ドクターブレード(doctor blade)などを用いて均一に分散させて行い得る。その他にも、ダイカスト(die casting)、コンマコーティング(comma coating)、スクリーンプリンティング(screen printing)などの方法によって行い得る。
【0084】
前記乾燥は特に制限されないが、50℃~200℃の温度下で1日以内で行われ得る。前記乾燥は、オーブンのような装置を用いてもよく、真空条件で行われ得る。
【0085】
本発明のさらに他の側面は、前記硫黄-炭素複合体を含む正極に関する。前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも一面に形成された正極活物質層と、を含み、前記正極活物質層は、正極活物質、導電材及びバインダー材料を含む。前記正極活物質層は、前述した正極材料組成物に由来したものであって、正極成分の具体的な内容は前述した内容を代わりにする。一方、本願発明の一実施様態において、前記正極活物質層は、前述したように、正極活物質、導電材及びバインダー材料を含み得、正極活物質、導電材及びバインダー材料の総重量を基準にして正極活物質が80wt%~97wt%、導電材が2wt%~10wt%、バインダーが2wt%~10wt%の割合で含まれ得る。また、前記正極活物質の総重量に対して硫黄-炭素複合体は70wt%以上含まれ、前記硫黄-炭素複合体の総重量に対して硫黄の含量が70wt%以上含まれ得る。本発明の具体的な一実施様態において、前記正極活物質の総重量に対して硫黄の含量は70wt%以上含まれることが望ましい。
【0086】
一方、前記正極集電体としては、当該技術分野で使用される多様な正極集電体が使用され得る。例えば、前記正極集電体としては、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用され得る。前記正極集電体は、通常3μm~500μmの厚さを有し、前記正極集電体の表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることも可能である。前記正極集電体は、例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で使用され得る。
【0087】
また、本発明は、前述した硫黄-炭素複合体を含む正極を含む電極組立体及び電解液を含むリチウム-硫黄電池を提供する。前記電極組立体は、正極、負極及び前記正極と負極との間に介在された分離膜を含む。
【0088】
前記電極組立体は、例えば、分離膜が負極と正極との間に介在した状態で積層され、スタック型またはスタック/フォールディング型の構造体を形成するか、または巻き取られてゼリーロール構造体を形成し得る。また、ゼリーロール構造体を形成したとき、負極と正極との接触を防止するために外側に分離膜がさらに配置され得る。
【0089】
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも一面に形成された負極活物質層と、を含み、前記負極活物質層は、負極活物質、導電材及びバインダーを含む。
【0090】
次に、前記負極についてより詳しく説明する。
【0091】
前記負極は、長いシート状の負極集電体の一面または両面に負極活物質が形成された構造からなり、前記負極活物質層は、負極活物質、導電材及びバインダーを含み得る。
【0092】
具体的には、前記負極は、長いシート状の負極集電体の一面または両面に、負極活物質、導電材及びバインダーをジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide;DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)、水などのような溶媒に分散させて製造された負極スラリーを塗布し、乾燥工程によって負極スラリーの溶媒を除去した後、圧延する方法で製造され得る。一方、前記負極スラリーの塗布時に負極集電体の一部領域、例えば、負極集電体の一端部に負極スラリーを塗布しない方法で非塗布部を含む負極を製造し得る。
【0093】
前記負極活物質は、リチウム(Li)を可逆的に挿入(intercalation)または脱離(deintercalation)可能な物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成できる物質、リチウム金属、リチウム合金などを含み得る。
【0094】
本発明の一実施様態において、負極活物質としてリチウム金属及び/またはリチウム合金を負極に使用する場合は、これらの金属材料を薄膜化した金属薄膜を負極として使用可能であり、この場合、別の集電体を含まなくてもよい。前記薄膜化した負極は、厚さ30μm~200μmの厚さを有し得る。なお、本発明の一実施様態において、前記負極は100μm以下の補強材を前記金属薄膜に貼り合わせるか、または内部に挿入したものであり得る。前記補強材は、多孔性であり得る。一方、前記補強材は、伝導性または非伝導性であり得る。
【0095】
前記リチウムイオンを可逆的に挿入または脱離可能な物質は、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの混合物であり得る。具体的には、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛炭素繊維、非晶質炭素、ソフトカーボン(soft carbon)、ハードカーボン(hard carbon)などが挙げられるが、これらに限定されない。前記リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物が形成可能な物質は、例えば、酸化スズ、窒化チタンまたはシリコン系化合物であり得る。前記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)とナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)及びスズ(Sn)からなる群より選択される金属の合金であり得る。望ましくは、前記負極活物質は、リチウム金属であり、具体的には、リチウム金属薄膜またはリチウム金属粉末の形態であり得る。前記シリコン負極活物質は、Si、Si-Me合金(ここで、Meは、Al、Sn、Mg、Cu、Fe、Pb、Zn、Mn、Cr、Ti及びNiからなる群より選択される一種以上)、SiO(ここで、0<y<2)、Si-C複合体またはこれらの組合せであってもよく、望ましくは、SiO(ここで、0<y<2)であり得る。シリコン系負極活物質は、高い理論容量を有するため、シリコン系負極活物質を含む場合、容量特性を向上させることができる。
【0096】
前記負極集電体としては、当該技術分野で通常使用される負極集電体が使用され得る。例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に、炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用され得る。前記負極集電体は、通常3μm~500μmの厚さを有し、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させ得る。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で使用され得る。
【0097】
前記導電材は、負極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学的変化を誘発することなく、導電性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブなどの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうち一種単独でまたは二種以上の混合物が使用され得る。前記導電材は、通常、負極活物質層の総重量に対して1wt%~30wt%、望ましくは1wt%~20wt%、より望ましくは1wt%~10wt%含まれ得る。
【0098】
前記バインダーは、負極活物質粒子同士の付着及び負極活物質と負極集電体との接着力を向上させる役割を果たす。具体的な例としては、ポリビニルリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、でん粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM rubber)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などが挙げられ、これらのうち一種単独でまたは二種以上の混合物が使用され得る。前記バインダーは、負極活物質層の総重量に対して1wt%~30wt%、望ましくは1wt%~20wt%、より望ましくは1wt%~10wt%で含まれ得る。
【0099】
一方、前記電極組立体は分離膜をさらに含み、前記分離膜は、負極と正極との間に介在される方式で電極組立体内に配置される。前記分離膜は、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供することで、リチウム二次電池においてセパレーターとして通常使用されるものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記分離膜としては、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子から製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの二層以上の積層構造体が使用され得る。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラスファイバー、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用され得る。また、耐熱性または機械的強度を確保するために、セラミック成分または高分子物質が含まれてコーティングされた分離膜が使用され得る。
【0100】
本発明のさらに他の側面は、前記電極組立体を含む電気化学素子に関する。前記電気化学素子は、電池ケースに電極組立体と電解液が共に収納されているものであって、前記電池ケースとしては、パウチ型や金属缶型などの本技術分野で通常使用されるものであれば、特に制限なく適切なものが選択され得る。
【0101】
本発明で使用される電解質としては、リチウム二次電池に使用可能な多様な電解質、例えば、有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが使用可能であり、その種類は特に限定されない。
【0102】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒及びリチウム塩を含み得る。
【0103】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンを移動可能にする媒質の役割を果たし得るものであれば、特に制限なく使用され得る。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate;DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate;DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate;MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate;EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate;EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(Rは、C2~C20の直鎖、分岐鎖または環状の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含み得る。)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソラン(1,3-dioxolane)などのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが使用され得る。
【0104】
一方、本発明の一実施様態において、前記電解液の非水溶媒としては、電池の充放電性能を高めるという面でエーテル系溶媒を含むことが望ましい。このようなエーテル系溶媒としては、線状エーテル(例えば、メトキシエタン、エトキシエタン、1,2-ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン)と、環状エーテル(例えば、1,3-ジオキソランまたはテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン(tetrahydropyran)など)と、線状エーテル化合物(例えば、1,2-ジメトキシエタンなど)、低粘度のフッ化エーテル、例えば、(1H,1H,2’H,3H-デカフルオロジプロピルエーテル(1H,1H,2’H,3H-Decafluorodipropyl ether)、ジフルオロメチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(Difluoromethyl 2,2,2-trifluoroethyl ether)、1,2,2,2-テトラフルオロエチルトリフルオロメチルエーテル(1,2,2,2-Tetrafluoroethyl trifluoromethyl ether)、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル(1,1,2,3,3,3-Hexafluoropropyl difluoromethyl ether)、1H,1H,2’H,3H-デカフルオロジプロピルエーテル(1H,1H,2’H,3H-Decafluorodipropyl ether)、ペンタフルオロエチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(Pentafluoroethyl 2,2,2-trifluoroethyl ether)、1H,2H,2’H-パーフルオロジプロピルエーテル(1H,1H,2’H-Perfluorodipropyl ether))が挙げられ、これらのうち一種以上の混合物が非水溶媒として含まれ得る。
【0105】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池で使用されるリチウムイオンを提供できる化合物であれば、特に制限なく使用され得る。具体的には、前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLiB(C、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、Lithium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide)、LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、Lithium bis(fluorosulfonyl)imide)などが使用され得る。前記リチウム塩の濃度は0.1M~5.0M、望ましくは0.1M~3.0Mの範囲内で使用され得る。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するため、優秀な電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動可能になる。
【0106】
前記電解質には、前記電解質の構成成分の他にも、電池の寿命特性向上、電池の容量減少抑制、電池の放電容量向上などを目的として添加剤をさらに含み得る。例えば、前記添加剤としては、ジフルオロエチレンカーボネートなどのようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどを単独でまたは混合して使用し得るが、これらに限定されない。前記添加剤は、電解質の総重量に対して0.1wt%~10wt%、望ましくは0.1wt%~5wt%で含まれ得る。
【0107】
前記リチウム-硫黄電池の形状は特に制限されず、円筒状、積層型、コイン型などの多様な形状であり得る。
【0108】
また、本発明は、前記リチウム-硫黄電池を単位電池として含む電池モジュールを提供する。前記電池モジュールは、高温安定性、長いサイクル特性及び高い容量特性などが求められる中・大型デバイスの電源に使用され得る。
【0109】
前記中大型デバイスの例としては、電気モーターによって動力を受けて動くパワーツール(power tool);電気自動車(electric vehicle;EV)、ハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle;HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(plug-in hybrid electric vehicle;PHEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(Escooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート(electric golf cart);電力システムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
以下、本発明の理解を助けるために望ましい実施例を挙げて説明するが、下記の実施例は、本発明の例示であるだけであり、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変形及び修正が可能であることは当業者にとって明白であり、かかる変形及び修正が添付の特許請求の範囲に含まれることは勿論である
【0111】
製造例
[硫黄-炭素複合体の製造]
CNT(平均層数6)粒子と硫黄を均一に混合し、155℃のオーブンで30分間硫黄-炭素複合体を製造した。前記硫黄-炭素複合体100wt%における硫黄の含量は75wt%であった。
【0112】
[正極の製造]
実施例1
前記製造された硫黄-炭素複合体と、第1導電材としてVGCFと、第2導電材としてCNT粒子(平均層数9)と、バインダーとしてPAA(Poly acrylic acid;ポリアクリル酸)と、を重量比で92.0:2.5:2.5:3.0の割合で水に入れて正極製造用スラリーを製造した。前記スラリー中の固形分の濃度は25wt%であった。前記VGCFの平均粒度は5μmであった。前記第2導電材であるCNTは、粒子が凝集した凝集体を含むものであって、平均粒度が35μmであり、粉末状態で前記正極用スラリーに投入された。20μm厚さのアルミニウム集電体の両面に前記製造された正極スラリー組成物を250μm厚さで塗布し、50℃で12時間乾燥し、ロールプレス(roll press)機で圧着して全厚200μmの正極を製造した。
【0113】
実施例2
前記製造された硫黄-炭素複合体と、第1導電材としてCNT(平均層数2)と、第2導電材としてCNT(平均層数9)と、バインダーとしてPAAと、を重量比で94.3:0.2:2.5:3.0の割合で水に入れて正極製造用スラリーを製造した。前記スラリー中の固形分の濃度は25wt%であった。前記第1導電材であるCNTは、水に分散された混合溶液状態で前記スラリーに投入された。前記混合溶液において水:CNT:分散剤は、重量比で99:0.3:0.7であった。また、前記混合溶液中のCNTの平均粒度は1μmであった。前記第2導電材であるCNTは、粒子が凝集した凝集体を含むものであって、平均粒度が35μmであり、粉末状態で前記正極用スラリーに投入された。20μm厚さのアルミニウム集電体の両面に前記製造された正極スラリー組成物を250μm厚さで塗布し、50℃で12時間乾燥してロールプレス機で圧着して厚さ200μmの正極を製造した。
【0114】
比較例1
前記製造された硫黄-炭素複合体と、バインダーとしてPAAと、を重量比で97:3の割合で水に入れて正極製造用スラリーを製造した。前記スラリー中の固形分の濃度は25wt%であった。20μm厚さのアルミニウム集電体の両面に前記製造された正極スラリー組成物を250μm厚さで塗布し、50℃で12時間乾燥してロールプレス機で圧着して厚さ200μmの正極を製造した。
【0115】
比較例2
前記製造された硫黄-炭素複合体と、導電材としてVGCFと、バインダーとしてPAAと、を重量比で94.5:2.5:3.0の割合で水に入れて正極製造用スラリーを製造した。前記スラリー中の固形分の濃度は25wt%であった。前記VGCFの平均粒度は5μmであった。20μm厚さのアルミニウム集電体の両面に前記製造された正極スラリー組成物を250μm厚さで塗布し、50℃で12時間乾燥してロールプレス機で圧着して厚さ200μmの正極を製造した。
【0116】
比較例3
前記製造された硫黄-炭素複合体と、導電材としてVGCFと、バインダーとしてPAAと、を重量比で92.0:5.0:3.0の割合で水に入れて正極製造用スラリーを製造した。前記スラリー中の固形分の濃度は25wt%であった。前記VGCFの平均粒度は5μmであった。20μm厚さのアルミニウム集電体の両面に前記製造された正極スラリー組成物を250μm厚さで塗布し、50℃で12時間乾燥してロールプレス機で圧着して厚さ200μmの正極を製造した。
【0117】
比較例4
前記製造された硫黄-炭素複合体と、導電材としてVGCFと、バインダーとしてPAAと、を重量比で87.0:10.0:3.0の割合で水に入れて正極製造用スラリーを製造した。前記スラリー中の固形分の濃度は25wt%であった。前記VGCFの平均粒度は5μmであった。20μm厚さのアルミニウム集電体の両面に前記製造された正極スラリー組成物を250μm厚さで塗布し、50℃で12時間乾燥してロールプレス機で圧着して厚さ200μmの正極を製造した。
【0118】
比較例5
前記製造された硫黄-炭素複合体と、導電材としてCNT(平均層数2)と、バインダーとしてPAAと、を重量比で96.75:0.25:3.0の割合で水に入れて正極製造用スラリーを製造した。前記スラリー中の固形分の濃度は25wt%であった。前記CNTは、水に分散した混合溶液の状態で前記スラリーに投入された。前記混合溶液において水:CNT:分散剤は、重量比で99:0.3:0.7であった。また、前記混合溶液中のCNTの平均粒度は、約1μmであった。20μm厚さのアルミニウム集電体上に前記製造された正極スラリー組成物を350μm厚さで塗布し、50℃で12時間乾燥してロールプレス機で圧着して厚さ200μmの正極を製造した。
【0119】
比較例6
前記製造された硫黄-炭素複合体と、導電材としてCNT(平均層数2)と、バインダーでPAAと、を重量比で96.5:0.5:3.0の割合で水に入れて正極製造用スラリーを製造した。前記スラリー中の固形分の濃度は25wt%であった。前記CNTは、水に分散した混合溶液の状態で前記スラリーに投入された。前記混合溶液において水:CNT:分散剤は重量比で99:0.3:0.7であった。また、前記混合溶液中のCNTの平均粒度は、約1μmであった。20μm厚さのアルミニウム集電体上に前記製造された正極スラリー組成物を350μm厚さで塗布し、50℃で12時間乾燥してロールプレス機で圧着して厚さ200μmの正極を製造した。
【0120】
比較例7
前記製造された硫黄-炭素複合体と、導電材としてCNT(平均層数2)と、バインダーとしてPAAと、を重量比で96.0:1.0:3.0の割合で水に入れて正極製造用スラリーを製造した。前記スラリー中の固形分の濃度は25wt%であった。前記CNTは、水に分散した混合溶液の状態で前記スラリーに投入された。前記混合溶液において水:CNT:分散剤は、重量比で99:0.3:0.7であった。また、前記混合溶液中のCNTの平均粒度は、約1μmであった。20μm厚さのアルミニウム集電体上に前記製造された正極スラリー組成物を350μm厚さで塗布し、50℃で12時間乾燥してロールプレス機で圧着して厚さ200μmの正極を製造した。
【0121】
比較例8
前記製造された硫黄-炭素複合体と、導電材としてCNT(平均層数2)と、バインダーとしてPAAと、を重量比で94.0:3.0:3.0の割合で水に入れて正極製造用スラリーを製造した。前記スラリー中の固形分の濃度は25wt%であった。前記CNTは、水に分散した混合溶液状態で前記スラリーに投入された。前記混合溶液において水:CNT:分散剤は、重量比で99:0.3:0.7であった。また、前記混合溶液中のCNTの平均粒度は、約1μmであった。20μm厚さのアルミニウム集電体上に前記製造された正極スラリー組成物を350μm厚さで塗布し、50℃で12時間乾燥してロールプレス機で圧着して厚さ200μmの正極を製造した。
【0122】
比較例9
前記製造された硫黄-炭素複合体と、導電材としてCNT(平均層数9)と、バインダーとしてPAAと、を重量比で94.5:2.5:3.0の割合で水に入れて正極製造用スラリーを製造した。前記スラリー中の固形分の濃度は25wt%であった。前記CNTは、粒子が凝集した凝集体を含むものであって、平均粒度が35μmであり、粉末状態で前記正極用スラリーに投入された。20μm厚さのアルミニウム集電体の両面に前記製造された正極スラリー組成物を250μm厚さで塗布し、50℃で12時間乾燥してロールプレス機で圧着して厚さ200μmの正極を製造した。
【0123】
比較例10
前記製造された硫黄-炭素複合体と、導電材としてCNT(平均層数9)と、バインダーとしてPAAと、を重量比で92.0:5.0:3.0の割合で水に入れて正極製造用スラリーを製造した。前記スラリー中の固形分の濃度は25wt%であった。前記CNTは、粒子が凝集した凝集体を含むものであって、平均粒度が35μmであり、粉末状態で前記正極用スラリーに投入された。20μm厚さのアルミニウム集電体の両面に前記製造された正極スラリー組成物を250μm厚さで塗布し、50℃で12時間乾燥してロールプレス機で圧着して厚さ200μmの正極を製造した。
【0124】
比較例11
前記製造された硫黄-炭素複合体と、第1導電材としてVGCFと、第2導電材としてケッチェンブラックと、バインダーとしてPAAと、を重量比で92.0:2.5:2.5:3.0の割合で水に入れて正極製造用スラリーを製造した。前記スラリー中の固形分の濃度は25wt%であった。前記VGCFの平均粒度は5μmであった。前記第2導電材であるケッチェンブラックは、粒子が凝集した凝集体を含むものであって、平均粒度が35μmであり、粉末状態で前記正極用スラリーに投入された。20μm厚さのアルミニウム集電体の両面に前記製造された正極スラリー組成物を250μm厚さで塗布し、50℃で12時間乾燥してロールプレス機で圧着して全厚200μmの正極を製造した。
【0125】
[電池の製造]
前記正極と共に、負極として35μm厚さのリチウム金属薄膜を使用し、電解質として2-メチルフランとジメトキシエタンを33:77の体積比で混合した有機溶媒に、0.6M濃度のリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)と、3wt%の硝酸リチウム(LiNO)と、を溶解した混合液を使用した。
【0126】
具体的には、前記製造された正極と負極を対向するように位置させ、その間に分離膜として厚さ20μm、気孔度45%のポリエチレンを介在させた後、前記製造された電解質を注入してリチウム-硫黄電池を製造した。前記電池において正極及び負極は、各々7枚が積層されて構成された。
【0127】
[評価]
図1を参照すると、実施例1及び実施例2のように本願発明による第1導電材及び第2導電材を使用する場合、放電初期/後期の出力と容量が全て改善される効果を確認することができる。
【0128】
一方、図2及び図3から分かるように、比較例2及び比較例3のように、VCGFのみを導電材として使用するか、または比較例4及び比較例5のように分散したCNTのみを使用する場合、添加量に応じて比抵抗が低くなる改善効果を奏することを確認することができた。したがって、図4a及び図4bの比較例2のように、VGCFのみを2.5%使用した場合、出力が改善される。しかし、比較例4のように、VGCFが5%を超過して10%含まれる場合には、5%を使用する場合に比べてさらなる出力改善効果がほとんどないことが分かる。
【0129】
また、図5のように分散したCNTを使用した場合は、比較例5のように0.25%を使用した場合、初期/後期の出力が改善されるが、比較例6のように0.5%を使用した場合は、中期/後期の出力がかえって減少する。また、図6のように分散しないCNT粒子を使用した場合には、後期の容量改善と出力改善の効果が得られるが、初期出力の改善効果がない。
【0130】
一方、図7のように、CNTを使用していない比較例1の場合、及び第2導電材としてケッチェンブラックを使用した比較例11の場合には、実施例1に比べて比抵抗及び容量の改善効果がほとんどないことが分かる。
【0131】
実験例1.粒径サイズの測定方法
粒度分析機(モデル:Bluewave、製造社:Microtrac)を利用して乾式方式としてD50となる粒径を測定した。炭素材料が凝集によって2次粒子化されている場合には、電子走査顕微鏡(モデル SEM、製造社:JEOL)を用いて一次粒子の粒径を観察、測定した。
【0132】
実験例2.放電特性の測定
各実施例及び比較例の電池に対して25℃でCCモードで0.2Cで1.8Vになるまで放電し、0.2C定電流で2.5Vまで充電して放電容量を測定/比較した。放電容量は、硫黄含量を基準にして測定した(mAh/g(S))。
【0133】
実験例3.電極比抵抗の測定
Hioki社のRM2610装置を使用して電極の比抵抗を測定した。具体的には、製造された電極に前記装置のマルチ電極アレイを接触させた後、比抵抗を測定し、前記装置に現われた結果から電極層の比抵抗値を得た。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
【国際調査報告】