(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-21
(54)【発明の名称】動電型スピーカドライバのための磁石アセンブリ、それを備える動電型スピーカドライバ、および関連する動電型スピーカ
(51)【国際特許分類】
H04R 9/02 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
H04R9/02 102A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546395
(86)(22)【出願日】2023-01-10
(85)【翻訳文提出日】2024-10-01
(86)【国際出願番号】 IB2023050196
(87)【国際公開番号】W WO2023148563
(87)【国際公開日】2023-08-10
(32)【優先日】2022-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】524292042
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・デュ・マン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リオネル・カンバーレイン
(72)【発明者】
【氏名】アントナン・ノヴァク
(72)【発明者】
【氏名】ピエリック・ロットン
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・ポレ
(72)【発明者】
【氏名】エティエンヌ・ガヴィオ
【テーマコード(参考)】
5D012
【Fターム(参考)】
5D012BB03
5D012FA02
(57)【要約】
本発明は、動電型スピーカドライバのための磁石アセンブリ(2)に関し、第1の外側対の、第1の厚さを有する、軸方向磁化、永久リング磁石(3a、3b)および第2の内側対の、第1の厚さより小さい第2の厚さを有する、軸方向磁化、永久リング磁石(4a、4b)を備え、第2の内側磁石(4b)に面する第1の内側磁石(4a)の面が第2の外側磁石(3b)に面する第1の外側磁石(3a)の面に対して既定のオフセット距離(Δy)だけオフセットされ、かつ第1の内側磁石(4a)に面する第2の内側磁石(4b)の面が第1の外側磁石(3a)に面する第2の外側磁石(3b)の面に対して既定のオフセット距離(Δy)だけオフセットされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動電型スピーカドライバのための磁石アセンブリ(2;2’)であって、第1の外側対の磁石および第2の内側対の磁石を備え、
前記第1の外側対の磁石が第1の外側の軸方向磁化永久リング磁石(3a)および第2の外側の軸方向磁化永久リング磁石(3b)を備え、前記第1および第2の外側永久リング磁石(3a、3b)が互いに面して軸方向に配置され、互いから離間されかつ同じ第1の厚さを有し、
前記第2の内側対の磁石が第1の内側の軸方向磁化永久リング磁石(4a)および第2の内側の軸方向磁化永久リング磁石(4b)を備え、前記第1および第2の内側永久リング磁石(4a、4b)が互いに面して軸方向に配置され、互いから離間されかつ同じ第2の厚さを有し、前記第1および第2の内側永久リング磁石(4a、4b)ならびに前記第1および第2の外側永久リング磁石(3a、3b)が同軸であり、言い換えれば、同じ中心対称軸を有し、前記第1の外側対の磁石と前記第2の内側対の磁石との間にエアギャップが形成されるように前記第1の内側永久磁石(4a)が前記第1の外側永久磁石(3a)の内側に配置されかつ前記第2の内側永久磁石(4b)が前記第2の外側永久磁石(3b)の内側に配置され、
前記第1の内側永久磁石(4a)のNS磁場方向が前記第1の外側永久磁石(3a)のNS磁場方向と逆であり、前記第1の内側永久磁石(4a)の前記NS磁場方向が前記第2の内側永久磁石(4b)のNS磁場方向と逆であり、かつ前記第1の外側永久磁石(3a)の前記NS磁場方向が前記第2の外側永久磁石(3b)のNS磁場方向と逆である、磁石アセンブリ(2;2’)において、
前記第2の厚さが前記第1の厚さより小さいこと、および
前記第2の内側永久磁石(4b)に面している前記第1の内側永久磁石(4a)の面が前記第2の外側永久磁石(3b)に面する前記第1の外側永久磁石(3a)の面に対して既定の非ゼロオフセット距離(Δy)だけオフセットされ、かつ前記第1の内側永久磁石(4a)に面している前記第2の内側永久磁石(4b)の面が前記第1の外側永久磁石(3a)に面している前記第2の外側永久磁石(3b)の面に対して前記既定のオフセット距離(Δy)だけオフセットされることを特徴とする、動電型スピーカドライバのための磁石アセンブリ(2;2’)。
【請求項2】
前記第1および第2の外側永久磁石(3a、3b)が、空気およびポリマーのような非金属材料の中からの少なくとも1つによって分離されることを特徴とする、請求項1に記載の動電型スピーカドライバのための磁石アセンブリ(2;2’)。
【請求項3】
前記第1および第2の内側永久磁石(4a、4b)が、空気およびポリマーのような非金属材料の中からの少なくとも1つによって分離されることを特徴とする、請求項1または2に記載の動電型スピーカドライバのための磁石アセンブリ(2;2’)。
【請求項4】
前記第1および第2の外側永久磁石(3a、3b)の各々が、重畳されかつ同じ内径、同じ外径、同じNS磁場方向および異なる厚さを有する、2つの軸方向磁化永久リング副磁石(31a、32a;31b、32b)から構成されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の動電型スピーカドライバのための磁石アセンブリ(2’)。
【請求項5】
前記第1および第2の外側永久磁石(3a、3b)の各々に関して、前記第1および第2の外側永久磁石(3a、3b)の他方に面する前記永久副磁石(32a、32b)が、前記既定のオフセット距離(Δy)に等しい厚さを有することを特徴とする、請求項4に記載の動電型スピーカドライバのための磁石アセンブリ(2’)。
【請求項6】
前記第1の厚さの前記第2の厚さに対する比が1と5との間であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の動電型スピーカドライバのための磁石アセンブリ(2;2’)。
【請求項7】
前記既定のオフセット距離(Δy)が前記第1の厚さの2%と50%との間であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の動電型スピーカドライバのための磁石アセンブリ(2;2’)。
【請求項8】
前記第1の外側対の磁石と前記第2の内側対の磁石との間の前記エアギャップが0.5mmと6mmとの間の間隔を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の動電型スピーカドライバのための磁石アセンブリ(2;2’)。
【請求項9】
前記第1および第2の対の磁石の前記永久磁石(3a、3b、4a、4b)が、ネオジム、鉄、ホウ素、コバルト、ニッケル、および、酸化鉄、サマリウム、亜鉛およびアルミニウムの中からの少なくとも1つを備える強磁性セラミック、の中からの少なくとも1つから作られることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の動電型スピーカドライバのための磁石アセンブリ(2;2’)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の磁石アセンブリ(2;2’)、および、前記磁石アセンブリ(2;2’)の前記エアギャップへ部分的に挿入されかつその上で前記磁石アセンブリ(2;2’)の前記エアギャップに配置されるコイル(8)が巻回される円筒コイル支持体を備える可動要素(7)を備える、動電型スピーカドライバ(5)。
【請求項11】
前記可動要素(7)がポリイミドフィルムから作られることを特徴とする、請求項10に記載の動電型スピーカドライバ(5)。
【請求項12】
請求項10または11に記載の動電型スピーカドライバ(5)および前記ドライバ(5)の前記可動要素(7)に接続される振動板(11)が配置されるフレーム(15)を備える動電型スピーカ(14)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動電型スピーカの分野に関し、特に、動電型スピーカドライバのための磁石アセンブリ、上記磁石アセンブリを備える動電型スピーカドライバ、および上記ドライバを備える動電型スピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の動電型スピーカドライバは、永久磁石アセンブリによって発生される磁場内の、ほとんどの場合、可動要素に配置される巻線から成る、電磁アクチュエータを備えており、永久磁場の構成が、永久磁石アセンブリのNおよびS極間のいわゆる放射対称を呈する。巻線に振幅および周波数変調電流が流れると、可聴周波数で誘導される機械的変位が、音響放射体としても知られている、放出面として作用する振動板を用いて音場へ変換される。動電型スピーカの音質は、帯域幅全体(例えば、16Hzから20,000Hzまで)にわたって可能な限り不変でなければならない、周波数応答曲線に、ならびに最小高調波歪および相互変調の存在によって示される、システムの直線性に依存する。
【0003】
動電型スピーカが全ての周波数を等しく支持すれば、有用な倍音を構成する、楽器の音色の再現は、演繹的に、確実にすることができるようである。しかしながら、良質楽器の音響シグネチャを表す、音のアタックトランジェントを十分に再現する必要性を考慮すれば、現実は、より複雑である。トランジェントに対するスピーカの応答は、「忠実度」の必須条件であり、スピーカが一連のパルスを受けるときに振動板の「ドラッギング」を検出することによってテストできる。可動要素の慣性および自己誘導による力が、この欠陥に関与する。
【0004】
音響、光学および電気測定が、理想的な動電型スピーカのようなものはないこと、ならびに各設計が帯域幅制限、様々な共振ピークおよび慣性の点で欠点を呈することを明らかにする。原則として、幾つかのスピーカの連結により、これらの欠点の多くが克服されるのを可能にするが、他方では、これらの欠点の蓄積作用は、時に良質な音楽再生には受け入れられないことがある。
【0005】
加えて、既存の動電型スピーカは、一般に平凡な電気音響効率を有しており、値は0.5%から5%の範囲である。例として、部屋では、約150mWを送出するピアノのフォルティッシモの再現を保証するために約100WRMSで音を出す必要がある。
【0006】
可動要素の変位の裏にある有用な駆動力は、i(t)で表される電流が流れる巻線の各長さ要素との、Bで表される誘導磁場の相互作用から生じる。局所的に、誘導磁場内で変位中の電荷キャリアに印加される基本的な力F(単位ニュートン)はローレンツ力と称され、磁場およびキャリア速度によって定められる平面に垂直な方向に及ぼされる。上記現象に従う素電荷担持量内の評価は次式に至る:
【0007】
【0008】
全ては、lと記される、巻線の未巻回長が均一な誘導磁場に曝されるかのようであり、動電型スピーカの駆動部(「ドライバ」とも呼ばれる)の、力係数と呼ばれる量Bl=B.l(単位N/AまたはT.m)を定めることを可能にする。
【0009】
この強度変調力は可動要素に作用しており、その機械的挙動は3つの成分によって規定される:慣性力、すなわち可動部の質量(Mm)掛ける課される加速度の積、fmと記される定数(単位N/(m/s)またはkg/s)(fmは、ほとんどの場合、機械抵抗の観点からRmと記される)を介して変位速度に比例すると一般に考えられる、減衰力、およびkmと記される剛性(単位N/m)が割り当てられるサスペンション機構に関連する復元力。軸x上で案内される並進に対して、そのような理想化動電型スピーカの挙動方程式は次のように書かれる:
【0010】
【0011】
任意の減衰振動子のこの一般的説明は、多くの物理システムに見ることができる。
【0012】
方程式[2]は、全てのその一般性において、右辺によって記述されるシステムの発振制御要求をその左辺に提示する。この意味で、ローレンツ力の印加は、電話の集約的開発によって動機付けされる、スピーカの本発明の独創性を歴史的に明白に示す(管増幅器(電子管として知られている、熱電子真空管)はまだ開発されておらず、電気的インピーダンスの観念はまだ当業者に不明であった)。
【0013】
理想的には、電流がどうであれ、力係数Bl=B.lは、動作中の可動要素の位置がどうであれ、不変のままであるべきである。
【0014】
そのため、スピーカの品質の着想を得るために、Blをxの関数としてプロットすることが有用であり、後者のパラメータは、スピーカの縦方向に従う振動板の変位を表す。理想的には、要求信号の最適再生のために動作範囲全体にわたって平坦なプロットを有することが重要であろう。技術現状に係る動電型スピーカに対して、このプロットの表現は近似ガウスの形態をとり、多数の開発がこの挙動を改善しようと試みた(が成功は非常に相対的)。従来のスピーカにおける可動要素の一般的なレイアウトは、永久磁石アセンブリの固定部へのコイルの近接を示す。そのような構成は、可動要素が、特に高周波数で作動されると固定導電部内の渦電流の発生を引き起こす。
【0015】
加えて、従来の動電型スピーカの一般的な構成は、駆動部に対して、磁場の放射構成を達成するために一般にその中心に鉄鋼材料を含む磁気アセンブリの実装を要する。これらの材料は比較的安価であるが、しかしながら、それらは、可動要素の通電巻線の変位から生じる渦電流を鑑みて高周波信号の劣化に至る。これを補償するために、様々な発明者が、放射磁力線を確立するのに適切な「モノリシック」構成を実直に尊重しつつ、種々の材料を実装しようと試みた。比較的効率的であるが、放射状に成形される界磁アセンブリは、製造するのが技術的に困難であり、したがって一般に非常に高価である。
【0016】
欧州特許出願EP3634013A1は、電気機械変換器のための磁石システムを記載しており、磁石システムは、第1の外側対の軸方向磁化永久リング磁石および第1の対の永久磁石に対して逆極性の第2の内側対の軸方向磁化永久リング磁石を備え、第1の対の永久磁石と第2の対の永久磁石との間に形成されるエアギャップにボイスコイルが配置される。しかしながら、第1および第2の対の永久磁石の厚さが同一であり、この既存の磁石システムは、定磁場が得られるのを可能にせず、これは動電型スピーカドライバの可動要素のストローク全体にわたって観察でき、したがって駆動部の力係数がボイスコイルの有用ストローク全体にわたって線形化されるのを可能にしない。実際、この既存の磁石システムでは、可動要素のストロークと関連付けられる空間における磁場の進化は非常に歪められる。更には、EP3634013A1において、上下磁石間に2つの固体要素が存在し、これらの固体要素は、導電率値が非常に高い金属または合金である。しかしながら、これらの金属要素の存在は渦電流を発生させ(可動要素の移動中に(電流が流れる)コイルの付近に配置される任意の導体塊内に発生される)、高周波信号への劣化作用に至る。
【0017】
米国特許出願公開第2018/132041A1号に記載されている磁石システムも同じ欠点を呈する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】欧州特許出願EP3634013A1
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/132041A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、動電型スピーカドライバのための磁石アセンブリを提供することによって、先行技術の欠点を解決することを意図しており、上記磁石アセンブリは、第1の外側対の軸方向磁化永久リング磁石および第2の内側対の軸方向磁化永久リング磁石を備え、第2の内側対の永久磁石の厚さが第1の外側対の永久磁石の厚さより小さく、かつ第2の内側対の各永久磁石が第1の外側対の関連する永久磁石内で既定の非ゼロオフセット距離だけオフセットされ、これにより電気および機械損失が低い磁場補償動電型リングスピーカを可能にし、そのため従来のスピーカよりはるかに少ない損失および非線形歪みを含む良質な音再生が得られるのを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、したがって、その目的として動電型スピーカドライバのための磁石アセンブリを有しており、第1の外側対の磁石および第2の内側対の磁石を備え、第1の外側対の磁石が第1の外側の軸方向磁化永久リング磁石および第2の外側の軸方向磁化永久リング磁石を備え、上記第1および第2の外側永久リング磁石が互いに面して軸方向に配置され、互いから離間されかつ同じ第1の厚さを有し、第2の内側対の磁石が第1の内側の軸方向磁化永久リング磁石および第2の内側の軸方向磁化永久リング磁石を備え、上記第1および第2の内側永久リング磁石が互いに面して軸方向に配置され、互いから離間されかつ同じ第2の厚さを有し、第1および第2の内側永久リング磁石ならびに第1および第2の外側永久リング磁石が同軸であり、言い換えれば同じ中心対称軸を有し、第1の外側対の磁石と第2の内側対の磁石との間にエアギャップが形成されるように第1の内側永久磁石が第1の外側永久磁石の内側に配置されかつ第2の内側永久磁石が第2の外側永久磁石の内側に配置され、第1の内側永久磁石のNS磁場の方向が第1の外側永久磁石のNS磁場の方向と逆であり、第1の内側永久磁石のNS磁場の方向が第2の内側永久磁石のNS磁場の方向と逆であり、かつ第1の外側永久磁石のNS磁場の方向が第2の外側永久磁石のNS磁場の方向と逆である、上記磁石アセンブリにおいて、第2の厚さが第1の厚さより小さいこと、および第2の内側永久磁石に面している第1の内側永久磁石の面が第2の外側永久磁石に面している第1の外側永久磁石の面に対して既定の非ゼロオフセット距離だけオフセットされ、かつ第1の内側永久磁石に面している第2の内側永久磁石の面が第1の外側永久磁石に面している第2の外側永久磁石の面に対して既定のオフセット距離だけオフセットされることを特徴とする。
【0021】
磁石アセンブリを形成する4つの永久磁石の各々は、リングの形態の各永久磁石が中心対称軸を有するように、リングの形態である。そのため、永久リング磁石が同軸であるとすれば、それらは同じ中心対称軸を有する。
【0022】
軸方向磁化永久リング磁石によって、リングの中心対称軸に対して軸方向磁束磁場を呈するリングの形態の永久磁石を意味すると理解される。永久リング磁石は、そのためその厚さ(言い換えれば、高さ)に対して磁化され、永久リング磁石のN極は、リングの端に位置する2つの円形面の一方に見られ、永久リング磁石のS極は、リングの端に位置する2つの円形面の他方に見られる。
【0023】
各リング(言い換えれば、永久リング磁石)は以下の寸法によって画成される:その外径、その内径およびその厚さ。リングの横断面は、そのためその厚さ掛けるその外径とその内径との間の差によって画定される。永久リング磁石の厚さによって、その下円形面とその上円形面との間の距離、言い換えれば、その中心対称軸に従うリングの高さを意味すると理解される。
【0024】
そのため、本発明に係る磁石アセンブリは、軸方向磁束磁場を呈する永久リング磁石の固有の配置を有しており、磁場補償機能を保証するために、第2の対の軸方向磁化永久磁石が、同じ中心対称軸を保ちかつ第1の対の磁石に対して逆の極性で第1の対の軸方向磁化永久磁石内に挿入される。
【0025】
実際、第2の内側対の永久磁石の平面と第1の外側対のそれぞれの永久磁石の平面との間の既定のオフセット距離(Δy≠0と記される)は、磁石アセンブリのエアギャップにおける磁場の径方向成分の実質的に一定値を得ることを可能にする。本発明の磁石アセンブリは、そのため磁石アセンブリのエアギャップ内のスピーカコイルの有用ストロークに沿った任意の点における物理量力係数(B.l)の実質的に一定値が得られるのを可能にする。第1の外側対の永久磁石に対する第2の内側対の永久磁石のオフセットは、そのため磁石アセンブリにおける磁場強度パターン非線形性のいわゆる補償(整流)機能が導入されるのを可能にする。
【0026】
本発明において、異なる軸方向磁化リング磁石の対による結合は、そのため、中で動電型スピーカのコイルが(リング磁石の平面に垂直な、yと記される方向に)移動できる、磁場が可能な限り一定の利用可能な領域を空間的に得ることを可能にする。コイル巻線が固定展開長さを有するので、これは力係数Blの所望の不変性に結びつく。
【0027】
本発明の磁石アセンブリは、そのため、軸方向磁化永久リング磁石の妥当な配置によって得られる、最適補償磁場構成を要する、少しも鉄のない動電型スピーカドライバに使用できる。
【0028】
本発明の特定の特徴によれば、第1および第2の外側永久磁石は、空気およびポリマーのような非金属材料の中から少なくとも1つによって分離される。
【0029】
そのため、外側永久磁石間の金属材料または合金(およびしたがって導電材料)の欠如は、最小エネルギー損失を保証するように、渦電流の発生が最小化されるのを可能にする。
【0030】
本発明の特定の特徴によれば、第1および第2の内側永久磁石は、空気およびポリマーのような非金属材料の中から少なくとも1つによって分離される。
【0031】
そのため、内側永久磁石間の金属材料または合金の欠如は、最小エネルギー損失を保証するように、渦電流の発生が最小化されるのを可能にする。
【0032】
実際には、同じ対の磁石を分離するために、スピーカキャビネットに磁石を機械的に装着するのに適切な任意の種類のポリマー、例えば、機械加工ポリ塩化ビニル(PVC)を使用できる。分離片が、本発明の範囲から逸脱することなく、3次元(3D)印刷によっても作られ得ることが留意されるべきである。
【0033】
本発明の特定の特徴によれば、第1および第2の外側永久磁石の各々は、重畳されかつ同じ内径、同じ外径、同じNS磁気方向を有しかつ異なる厚さである2つの軸方向磁化永久リング副磁石から構成される。
【0034】
そのため、第1の外側対の永久磁石のこの固有の構成は、方向yにより大きな範囲にわたって、言い換えれば、エアギャップにおけるコイルのより大きなストロークにわたって磁石アセンブリのエアギャップにおける磁場の径方向成分の実質的に一定値を得ることを可能にする。
【0035】
本発明の1つの特定の特徴によれば、第1および第2の外側永久磁石の各々に関して、第1および第2の外側永久磁石の他方に面する永久副磁石は、既定のオフセット距離に等しい厚さを有する。
【0036】
本発明の1つの特定の特徴によれば、第1の厚さの第2の厚さに対する比は1と5との間である。
【0037】
本発明の1つの特定の特徴によれば、既定のオフセット距離は第1の厚さの2%と50%との間である。
【0038】
全ての場合に、第2の厚さは、第1の厚さ引く既定のオフセット距離以下でなければならないことに留意されたい。
【0039】
本発明の特定の特徴によれば、第1の外側対の磁石と第2の内側対の磁石との間のエアギャップは0.5mmと6mmとの間の間隔を有する。
【0040】
本発明の目的は、そのため、可能な限り均一であるが、この場を発生させる対のリング磁石の要素の各々からの有意な距離にある磁場内でコイルの変位を進めることである。この距離および鉄鋼材料の欠如は、渦電流と関連付けられるエネルギー損失が最小に保たれることを保証する。
【0041】
本発明において、エアギャップ間隔は、そのため現状標準技術に対して増大され、そのため可動要素のコイルの起こり得る横変位(例えば、残留非線形性によりデフォルト)を見込み、そのため動電型スピーカの一時的な故障動作中の可動要素と永久磁石との間のスナッギングのいかなるリスクも回避する。
【0042】
本発明の特定の特徴によれば、第1および第2の対の磁石の永久磁石は、ネオジム、鉄、ホウ素、コバルト、ニッケル、および、酸化鉄、サマリウム、亜鉛およびアルミニウムの中からの少なくとも1つを備える強磁性セラミック、の中からの少なくとも1つの材料から作られる。
【0043】
本発明は、その目的として上記したような磁石アセンブリおよび磁石アセンブリのエアギャップへ部分的に挿入され、かつ磁石アセンブリのエアギャップに配置されるコイルが巻回される円筒コイル支持体を備える可動要素を備える動電型スピーカドライバも有する。
【0044】
そのため、可動要素によって保持されるコイルへの振幅および周波数変調電流の注入は、磁石アセンブリのエアギャップへの、可動要素およびしたがってコイルの変位を引き起こし、そこにおいて発生される磁場の径方向成分は実質的に一定であり(言い換えれば、力係数B.lがコイルの有用ストローク全体にわたって実質的に不変であり)、従来のスピーカよりはるかに少ない損失および非線形歪みを含む高品質音再生を可能にする。
【0045】
本発明に係るドライバは、(従前の方法で)電圧駆動できるが、(電圧/電流変換器型の電子調整器によって課される駆動体制のための)電流制御モードに従うのにも特に適切である。
【0046】
本発明の1つの特定の特徴によれば、可動要素は、(Kapton(登録商標)のような)ポリイミドフィルムから作られる。
【0047】
本発明は、加えて、その目的として上記したような動電型スピーカドライバ、およびドライバの可動要素に接続される振動板が配置されるシャーシを備える動電型スピーカを有する。
【0048】
そのため、可聴周波数で誘導される可動要素の機械的変位は、放出面(音響放射体としても知られている)として作用する振動板を用いて音場へ変換される。
【0049】
本発明の目的をより良好に例示するために、添付の図面を参照しつつ、好適な実施形態が、限定としてでなく例示として、下記されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】軸方向磁化永久リング磁石の横断面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る部分切断磁石アセンブリの斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る磁石アセンブリの横断面図である。
【
図4】オフセット距離の異なる値に対する軸yに沿った第1の実施形態の磁石アセンブリの磁場の径方向成分の種々の曲線を表す。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る動電型スピーカドライバの横断面図である。
【
図6】1.7mmの最適オフセット距離値に対する軸yに沿った第1の実施形態のドライバの磁場の径方向成分を表す曲線例である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る磁石アセンブリの横断面図である。
【
図8】1.5mmの最適オフセット距離値に対する軸yに沿った第2の実施形態のドライバの磁場の径方向成分を表す曲線例である。
【
図9】本発明に係るドライバの可動要素の斜視図である。
【
図10】本発明に係る動電型スピーカの分解立体図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1を参照すると、軸方向磁化永久リング磁石1が表されることが見て取れる。
【0052】
軸方向磁化永久リング磁石1は、軸方向磁束磁場を発生させるように上下に配置されるN磁極(N)1aおよびS磁極(S)1bを備えており、
図1における点線が、この軸方向磁化永久磁石1と関連付けられる磁場強度パターンを表す。
【0053】
永久リング磁石1は、そのためリングの形態であり、その中心対称軸に対して軸方向磁束磁場を呈する。永久リング磁石1は、そのためその厚さ(言い換えれば、その中心対称軸に沿ったその高さ)に対して磁化され、そのN磁極(N)は、その2つの端面の一方に見られ、そのS磁極(S)は、その2つの端面の他方に見られる。
図2および
図3を参照すると、本発明の第1の実施形態に従って磁石アセンブリ2が表されることが見て取れる。
【0054】
磁石アセンブリ2は、第1の外側の軸方向磁化永久リング磁石3aおよび第2の外側の軸方向磁化永久リング磁石3bを備える第1の外側対の磁石を備えており、第1および第2の外側永久磁石3aおよび3bは、同一でありかつ互いに面して軸方向に配置されかつ距離bだけ互いから離間され、第1および第2の外側永久磁石3aおよび3bは同じ第1の厚さを有する。
【0055】
磁石アセンブリ2は、第1の内側の軸方向磁化永久リング磁石4aおよび第2の内側の軸方向磁化永久リング磁石4bを備える第2の内側対の磁石を更に備えており、第1および第2の内側永久磁石4aおよび4bは、同一でありかつ互いに面して軸方向に配置されかつ距離b+2Δyだけ互いから離間され、第1および第2の内側永久磁石4aおよび4bは、第1および第2の外側永久磁石3aおよび3bの第1の厚さより小さい、同じ第2の厚さを有する。
【0056】
第1および第2の内側永久磁石4aおよび4bならびに第1および第2の外側永久磁石3aおよび3bは同軸である。
【0057】
第1の内側永久磁石4aは第1の外側永久磁石3aの内側に配置され、第2の内側永久磁石4bは第2の外側永久磁石3bの内側に配置され、その結果第1の外側対の磁石と第2の内側対の磁石との間にエアギャップeが形成される。
【0058】
第1の内側永久磁石4aの磁極性(言い換えれば、NS磁場方向)は第1の外側永久磁石3aの磁極性と逆であり、第1の内側永久磁石4aの磁極性は第2の内側永久磁石4bの磁極性と逆であり、かつ第1の外側永久磁石3aの磁極性は第2の外側永久磁石3bの磁極性と逆である。
【0059】
図2および
図3において、第1および第2の外側永久磁石3aおよび3bのN磁極は互いに面しており、第1および第2の内側永久磁石4aおよび4bのS磁極は互いに面している。しかしながら、本発明の範囲から逸脱することなく、逆配置も想定され得、第1および第2の外側永久磁石3aおよび3bのS磁極が互いに面し、第1および第2の内側永久磁石4aおよび4bのN磁極が互いに面する。
【0060】
第2の内側永久磁石4bに面している第1の内側永久磁石4aの面は、第2の外側永久磁石3bに面している第1の外側永久磁石3aの面に対して既定の非ゼロオフセット距離Δyだけオフセットされる。
【0061】
同様に、第1の内側永久磁石4aに面している第2の内側永久磁石4bの面は、第1の外側永久磁石3aに面している第2の外側永久磁石3bの面に対して既定のオフセット距離Δyだけオフセットされる。
【0062】
磁石アセンブリ2は、そのため軸方向磁束磁場を呈する永久リング磁石3a、3b、4aおよび4bの固有の配置を有しており、第2の対の軸方向磁化永久磁石4a、4bが、同じ中心対称軸を保ちかつ第1の対の磁石3a、3bに対して逆の極性で第1の対の軸方向磁化永久磁石3a、3b内に挿入される。
【0063】
第2の内側対の永久磁石4a、4bの平面と第1の外側対のそれぞれの永久磁石3a、3bの平面との間の既定のオフセット距離Δyは、磁石アセンブリ2のエアギャップeにおける磁場の径方向成分Bxの実質的に一定値が得られるのを可能にする。第1の外側対の永久磁石に対する第2の内側対の永久磁石4a、4bのオフセットは、そのため磁石アセンブリ2における磁場強度パターンの非線形性に対するいわゆる補償(整流)機能が導入されるのを可能にする。
【0064】
図2および
図3に表される具体的な実施形態によれば、第1の外側対の磁石のリング磁石3aおよび3bは、例として、矩形横断面、30mmの外径、25mmの内径、4mmの厚さ、6mmの内面間の距離b、およびNd-Fe-B(ネオジム-鉄-ホウ素)型の材料を有する。
【0065】
更には、
図2および
図3に表される具体的な実施形態によれば、第2の内側対の磁石のリング磁石4aおよび4bは、例として、矩形の横断面、17mmの外径、10.25mmの内径、2.45mmの厚さ、6mm+2Δyの内面間の距離b+2Δy、およびNd-Fe-B型の材料を有する。
【0066】
外側磁石3aおよび3bの第1の厚さの内側磁石4aおよび4bの第2の厚さに対する比が、本発明から逸脱することなく、1と5との間でもあり得ることが留意されるべきである。
【0067】
既定のオフセット距離Δyは、外側磁石3aおよび3bの第1の厚さの2%と50%との間であり得るが、内側磁石4aおよび4bの第2の厚さは、第1の厚さ引く既定のオフセット距離Δy以下でなければならない。
【0068】
図2および
図3に表される具体的な実施形態において、エアギャップeは、そのため4mmの間隔を有する。しかしながら、エアギャップeは、本発明の範囲から逸脱することなく、0.5mmと6mmとの間の間隔を有することもあり得る。
【0069】
加えて、永久磁石3a、3b、4aおよび4bは、本発明の範囲から逸脱することなく、ネオジム、鉄、ホウ素、コバルト、ニッケル、および、酸化鉄、サマリウム、亜鉛およびアルミニウムの中からの少なくとも1つを備える強磁性セラミック、の中からの少なくとも1つからも作られ得る。
【0070】
図4を参照すると、軸x(
図2および
図3に表される)上のx=4mmに位置付けられる、オフセット距離Δyの異なる値に対して、軸y(
図2および
図3に表される)に沿って磁石アセンブリ2によって発生される磁場の測定された径方向成分Bxの種々の曲線が描かれることが見て取れる。
【0071】
図2および
図3に表されるように、軸yのゼロ点は、磁石アセンブリ2の第1の外側磁石3aの上面に定められる。プローブが次いで上から下に(x=4mmで、ここでx=0mmは第1の対の磁石3a、3bの左外側面に対応する)、磁石アセンブリ2の第2の外側磁石3bの下面によって定められるy
maxまで変位される。
図4は、次いでプローブの軌道中に収集される磁場の径方向成分Bxの値を提示しており、横座標に配置される軸y上で左から右に読み取ることによって翻訳される。
【0072】
連続ステップで測られるΔyのオフセット距離が一組の測定に至り、その種々の値が
図4に表される。
【0073】
オフセットなし(Δy=0)では、一定の力係数を得ることができないことが見て取れる。
【0074】
Δy=0に加えて、Δyの3つの値が
図4に表される(Δy=1.7mm、3.4mmおよび5.1mm)。磁場の最良の形態は、Δy=1.7mmに関して観察され、使用可能なストロークが約5mm(yが約10mmと約15mmとの間であるとき)で、そのためこのストロークにわたって一定の力係数を保証する。
【0075】
本発明に係る磁石アセンブリ2は、そのため磁場強度パターンが得られるのを可能にしており、その線は、積Bxlの相対的不変性に関して、後者が動電型スピーカの可動要素の準静的位置の関数として観察されるときに理想化される。
【0076】
図5を参照すると、本発明の第1の実施形態に係る磁石アセンブリ2を備える動電型スピーカドライバ5を表すことが見て取れる。
【0077】
第1および第2の外側永久磁石3aおよび3bは、ポリマーのような非金属材料のリング6によって分離される。
【0078】
リング6が、本発明の範囲から逸脱することなく、空気によって置き換えられることもあり得ることが留意されるべきである。
【0079】
図5に表されないが、第1および第2の内側永久磁石4aおよび4bも非金属材料のリングによってまたは空気によって分離される。
【0080】
外側永久磁石3aおよび3b間のならびに内側永久磁石4aおよび4b間の金属材料または合金の欠如は、最小エネルギー損失を保証するように、渦電流の発生を最小化する。
【0081】
実際には、同じ対の磁石を分離するために、スピーカ筺体に磁石を機械的に装着するのに適切な任意の種類のポリマー、例えば、機械加工ポリ塩化ビニル(PVC)を使用できる。
【0082】
本発明の磁石アセンブリ2は、そのため鉄のない動電型スピーカドライバ5が補償最適磁場構成を伴って使用されるのを可能にする。
【0083】
動電型スピーカドライバ5は、磁石アセンブリ2、および磁石アセンブリ2のエアギャップへ挿入されかつ磁石アセンブリ2のエアギャップに配置されるコイル8が巻回される円筒支持体型可動要素7を備える。
【0084】
磁石アセンブリ2によって発生される磁場Bは、軸xに係る径方向成分Bxおよび軸yに係る軸方向成分Byを有する。
【0085】
動電型スピーカドライバ5のこの一般的な表現は、コイル8が軸yに従って移動し、磁石アセンブリ2によって発生される磁場Bの径方向成分Bxに曝され、磁場Bが磁石アセンブリ2の中心の方へ、言い換えれば、コイル8の方へ向けられるのを図示する。
【0086】
可動要素7によって保持されるコイル8へ振幅および周波数変調電流iが注入される。
【0087】
マクスウェルの法則を適用することで、可動要素7の変位を駆動するローレンツ力Fの方向が決定されるのを可能にする。
【0088】
コイル8への電流iの注入は、そのため磁石アセンブリ2のエアギャップにおける軸yに従う可動要素7、およびそのためコイル8の変位を引き起こし、そこにおいて磁場Bの発生された径方向成分Bxは実質的に一定であり(言い換えれば、力係数B.lが磁石アセンブリ2のエアギャップ内のコイル8の有用ストロークのいかなる点でも実質的に一定であり)、従来のスピーカよりはるかに少ない損失および非線形歪みを含む良質な音再生を可能にする。
【0089】
本発明に係るドライバ5は、(従前の方法で)電圧駆動できるが、(電圧/電流変換器型の電子調整器によって課される駆動体制のための)電流制御モードに従うのにも特に適切である。
【0090】
磁石アセンブリ2のエアギャップ間隔eが現状技術に対して増大されて、可動要素7のコイル8の起こり得る横変位(例えば、残留非線形性による)が可能であり、そのためドライバ5の一時的な故障動作中の可動要素7と永久磁石3a、3b、4a、4bとの間のスナッギングのいかなるリスクも回避する。
【0091】
本発明に係るドライバ5は、そのため可能な限り均一であるが、この磁場Bを発生させる永久磁石3a、3b、4a、4bの各々から有意な距離にある磁場B内で軸yに従うコイル8の変位を可能にする。大きなエアギャップ間隔eおよび鉄鋼材料の欠如は、渦電流と関連付けられる最小エネルギー損失を保証して、これらの後者が最小に保たれる。
【0092】
図6を参照すると、最適オフセット距離値Δy=1.7mmに対して軸yに沿って測定された第1の実施形態のドライバ5の磁場Bの径方向成分Bxが表されることが見て取れる。
【0093】
最適オフセット距離値Δyが最初に第1の実施形態に係る磁石アセンブリ2に対して実験的に探される。この最適値が、本発明の範囲から逸脱することなく、自動的に探されることもあり得ることが留意されるべきである。
図4に例示されるように、最適値Δy=1.7mmが見つかる。
【0094】
図6は、Δy=1.7mmであるときの軸y(x=4mmに位置する)に沿った磁石アセンブリ2によって発生される磁場Bの径方向成分Bxの測定を表す。
【0095】
径方向成分Bxが実質的に一定である(したがって力係数B.lが実質的に一定である)可動要素7によって保持されるコイル8の動作行程D1がほぼ5mmであり、エアギャップにおけるコイル8の一定の力係数での有用な行程がほぼ5mmであるということが明らかである。
【0096】
図7を参照すると、本発明の第2の実施形態に係る磁石アセンブリ2’が表されることが見て取れる。
【0097】
図7における第2の実施形態に係る磁石アセンブリ2’は、
図3における第1の実施形態に係る磁石アセンブリ2と同一であるが、例外としては、第1の外側永久磁石3aが、重畳されかつ同じ内径、同じ外径、同じ磁極性および異なる厚さを有する2つの軸方向磁化永久リング副磁石31aおよび32aから構成されること、ならびに第2の外側永久磁石3bが、重畳されかつ同じ内径、同じ外径、同じ磁極性および異なる厚さを有する2つの軸方向磁化永久リング副磁石31bおよび32bから構成されることである。
【0098】
第1の外側永久磁石3aの永久副磁石32aは、第2の外側永久磁石3bに面して配置され、第2の外側永久磁石3bの永久副磁石32bは、第1の外側永久磁石3aに面して配置される。
【0099】
永久副磁石31aおよび31bは同じ厚さを有し、永久副磁石32aおよび32bも同じ厚さを有する。
【0100】
図7において、永久副磁石32aおよび32bの厚さは既定のオフセット距離Δyに等しい。
【0101】
しかしながら、永久副磁石32aおよび32bは、本発明の範囲から逸脱することなく、異なる厚さでもあり得る。
【0102】
図8を参照すると、Δy=1.5mmであるときに軸y(x=4mmに位置する)に沿って測定された第2の実施形態に係る磁石アセンブリ2’によって発生される磁場Bの径方向成分Bxを表すことが見て取れる。
【0103】
測定中に選ばれるオフセット距離値がΔy=1.5mmであるとすれば、副磁石32aおよび32bの厚さが1.5mmであること、ならびに副磁石31aおよび31bの厚さが2.5mmであることになる。
【0104】
第2の実施形態に係る磁石アセンブリ2’に関しては、径方向成分Bxが実質的に一定である(したがって力係数B.lが実質的に一定である)コイル8の動作行程D2がほぼ6mmであり、エアギャップにおけるコイル8の一定の力係数での有用な行程がほぼ6mmであり、装置の全体寸法を考慮して、現状技術の観点から有意であるということが明白である。
【0105】
図9を参照すると、ドライバ5の可動要素7を表すことが見て取れる。
【0106】
円筒支持体型の可動要素7は、その周りに巻回されるコイル8を保持する。
【0107】
可動要素7の一端が振動板11に接続され、これが次いで、振動板材料から切り出された多数のフレキシブルアーム10を用いて方形フレーム9に接続される。
【0108】
可動要素7は、そのため「ピストン」と通例称される。
【0109】
可動要素7および振動板11は、例えば、Kapton(登録商標)のようなポリイミドフィルムから作ることができる。
【0110】
フレーム9は、例えば、エポキシガラスから作ることができる。
【0111】
可動要素7の開口部を閉じるドーム12が、端において振動板11に接続される。
【0112】
フレーム9は、コイル8に電力を供給することを可能にする電気トラック13も含む。
【0113】
可動要素7の構造は、装置を駆動する役割を果たす電源の観点から最小エネルギー損失をもたらすように最適化される。
【0114】
図10を参照すると、本発明に係る動電型スピーカ14が表されることが見て取れる。
【0115】
動電型スピーカ14は、ドライバ5(言い換えれば、磁石アセンブリ2または2’およびコイル8を保持する可動要素7)、振動板11ならびにフレーム9が装着される、第1のハウジング部15aおよび第2のハウジング部15bから構成される、シャーシ15を備える。
【0116】
第1の外側永久磁石3aが第2のハウジング部15bの内側に装着される一方で、第2の外側永久磁石3bならびに第1および第2の内側永久磁石4aおよび4bは第1のハウジング部15aの内側に装着される。
【0117】
第1および第2の内側永久磁石4aおよび4bを適切な距離b+2Δyだけ離間させるように、第1の内側永久磁石4aの上、第2の内側永久磁石4bの下、ならびに第1および第2の内側永久磁石4aおよび4bの間に非金属材料(例えば、ポリマー)のディスクまたはリング16が配置される。
【0118】
第1および第2のハウジング部15aおよび15bは、2つのハウジング部15aおよび15bが、第1の外側永久磁石3aを第2の外側永久磁石3bから距離bに置くように互いに対して配置されたときにねじ止めによって共に取り付けられるのを可能にするように、第1および第2のハウジング部15aおよび15bの縁に孔17を有する。
【0119】
図10に表される実施形態において、第1および第2のハウジング部15a、15bが組み立てられると、空気が第1および第2の外側永久磁石3aおよび3bを分離する。しかしながら、第1および第2の外側永久磁石3aおよび3bは、本発明の範囲から逸脱することなく、非金属材料のリング6によって(
図5に表されるように)分離されることもあり得る。
【0120】
一旦2つのハウジング部15aおよび15bが組み立てられる(そのため磁石アセンブリ2が
図3に表されるように配置される)と、次いで可動要素7が、フレーム9が第2のハウジング部15bの上面と当接するまで、第2のハウジング部15bの上面を用いて磁石アセンブリ2のエアギャップへ挿入される。フレーム9は次いで、フレーム9の四隅に形成される孔18を用いて第2のハウジング部15bにねじ止めすることによって取り付けられる。
【0121】
コイル8は、そのため磁石アセンブリ2の2つの内側永久磁石4aおよび4b間のエアギャップに、言い換えれば、磁石アセンブリ2の定力係数領域に位置する。
【0122】
フレーム9の電気トラック13を用いたコイル8への振幅および周波数変調電流の注入は、可動要素7の、およびしたがって振動板11の変位を引き起こす(変位はフレーム9に接続されるフレキシブルアーム10を用いて可能にされる)。
【0123】
振動板11は、次いで放出面(または音発生面または音響放射体)として作用し、可聴周波数で誘導される、可動要素7の機械的変位が音場へ変換されるのを可能にする。
【0124】
図9および
図10に表されるドライバ5が詳細にはピストン型であるが、別の実施形態において、コイル8は、本発明の範囲から逸脱することなく、振動板11の後面に直接取り付けられることもあり得る。更には、振動板11の周囲全体が、本発明の範囲から逸脱することなく、フレーム9に接続されることもあり得る(言い換えれば、フレキシブルアーム10の欠如)。
【0125】
二系統の動電型スピーカ14のプロトタイプが作成および特性化された:
- 17mmの音発生面直径を呈する系統1:
●外側永久磁石3aおよび3b: 外径30mm、内径25mm、厚さ4mm、
●内側永久磁石4aおよび4b:外径17mm、内径10.25mm、厚さ2.45mm、
●Δy=1.7mm、ならびに
- 40mmの音発生面のための直径を呈する系統2:
●外側永久磁石3aおよび3b:外径60mm、内径45mm、厚さ8.03mm、
●内側永久磁石4aおよび4b:外径39mm、内径31mm、厚さ6.4mm、
●Δy=3mm.
以下のtable 1(表1)に、様々なプロトタイプのために使用されるコイル8の特性を要約する。
【0126】
【0127】
スピーカNo.1およびNo.4が系統1(17mm音発生面直径)に属する一方で、スピーカNo.2、No.3およびNo.5は系統2(40mm音発生面直径)に属する。
【0128】
系統1スピーカNo.1およびNo.4に関して、それらは全て共通して、それらのフレーム9のサイズ(25×25mm2)の他に、およそR=9Ωの全体電気抵抗を呈する50巻きの銅線(直径0.07mm)のコイル8を有する。第1の型の構造は、それらの振動Kapton(登録商標)振動板11がエポキシガラスフレーム9にわたって張られて開発される。それらの共振固有周波数が振動板モードのそれらであることになる。Kapton(登録商標)厚さは、それぞれ25μm、50μmおよび125μmである。対照的に、第2の型の構造(125μm厚Kapton(登録商標)ポリイミドフィルム上に開発)によれば、ピストン部は、フレーム9に接続される4つのフレキシブルアーム10を用いて適所に保たれる。振動板共振モードは、ピストン構造により消滅する傾向がある。ピストンは、厚紙またはKapton(登録商標)ポリイミドから作ることができる。
【0129】
系統2のスピーカNo.2、No.3およびNo.5に関して、それらは全て共通して、それらのフレーム9のサイズ(60×60mm2)および電気抵抗がTable 1(表1)中の情報に従う25巻きの銅線のコイル8を有する。1つのバージョンは、厚さが25μmのKapton(登録商標)振動板を備え、別のバージョンは、厚さが125μmのKapton(登録商標)ピストンを備え、別のバージョンは、厚さが125μmのKapton(登録商標)上に厚紙ピストンを備え、別のバージョンは、厚さが200μmの炭素繊維材料上にフォームおよび炭素から構成されるピストンを備える。
【0130】
インピーダンス係数の周波数進化に関して、プロトタイプの各々に対して、高周波数値を特徴付ける不変性に留意することに注目すべきである。この特性は、散逸渦電流の欠如を明白に示す。事実、プロトタイプは最小の散逸を有する。
【0131】
インピーダンス測定の処理は、散逸部(皮相抵抗Re)および蓄積エネルギー部(皮相インダクタンスLe)の解離へのアクセスを可能にする。
【0132】
そのため、従来の技術現状のスピーカの場合、高周波数で渦電流が現れ、これらの渦電流により、ReおよびLeが周波数とともに変動することが知られている。
【0133】
対照的に、本発明のプロトタイプは、渦電流の欠如によって特徴付けられ、ReおよびLeは周波数とともに変動しない。
【0134】
動電型スピーカ14を設計するとき、動電型スピーカ14を寸法設定するために考慮されるべきパラメータは、音発生面(または振動板11)の面積および変位の振幅であり、動電型スピーカ14によって発生される音レベルが直接依存している。放射源からの球状放射を前提として、音響出力は、次の通り、音レベルLdBおよび放射源からの距離lsourceに関連がある:
【0135】
【0136】
この関係は、遠方場において、言い換えれば、測定距離lsourceが放射源の放出面の半径rより大きい場合に有効である。上記方程式に従って、10cmで80dB SPLの所望の音レベルを考慮して、スピーカ14は、12.6μWの音響パワーを発生させなければならない。ピストンの単一面によって生み出される音響パワーは、次の通りにその表面積および変位に関連がある:
【0137】
【0138】
量ρairは空気の密度(20℃で1.2kg/m3)であり、cは空気中の音の速さ(20℃で343m/s)であり、fは音発生面の振動周波数であり、Sはその表面積であり、xはその有効変位である。この方程式は、ピストンが点源のように機能する場合に有効なだけである。
【0139】
上記方程式において空気密度および音速のための値を置き換え、かつ有効変位xの代わりにピーク変位xmaxを代用することによって、以下を得る:
Pacoustique=0,27f4d4xmax
2
【0140】
この方程式は、変位される空気の量に作用するための2自由度を示す:放出面の直径dおよびその変位振幅xmax。
【0141】
所与のピストンストローク(xmax)に対して、低動作周波数fcがある:
- 17mm音発生面スピーカ(系統1):
【0142】
【0143】
- 40mm音発生面スピーカ(系統2):
【0144】
【0145】
そのため磁場が一定である領域におけるピストンの変位が大きいほど、ますますスピーカ14は低周波数応答を呈するようである。
【0146】
記載した特定の実施形態が例示的かつ非限定的であること、および本発明から逸脱することなく変更がなされ得ることが理解される。
【符号の説明】
【0147】
1 軸方向磁化永久リング磁石
1a N磁極
1b S磁極
2、2’ 磁石アセンブリ
3a 第1の外側の軸方向磁化永久リング磁石
3b 第2の外側の軸方向磁化永久リング磁石
4a 第1の内側の軸方向磁化永久リング磁石
4b 第2の内側の軸方向磁化永久リング磁石
5 動電型スピーカドライバ
6 非金属材料のリング
7 可動要素
8 コイル
9 フレーム
10 フレキシブルアーム
11 振動板
12 ドーム
13 電気トラック
14 動電型スピーカ
15 シャーシ
15a 第1のハウジング部
15b 第2のハウジング部
16 非金属材料のディスクまたはリング
17、18 孔
31a、31b、32a、32b 軸方向磁化永久リング副磁石
b 距離
B 磁場
Bx 径方向成分
By 軸方向成分
D1、D2 動作行程
e エアギャップ間隔
i 振幅および周波数変調電流
Δy オフセット距離
【国際調査報告】