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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-21
(54)【発明の名称】バニリンを回収および精製する方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 7/22 20060101AFI20250214BHJP
   C12N 1/16 20060101ALN20250214BHJP
【FI】
C12P7/22
C12N1/16 G
C12N1/16 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546416
(86)(22)【出願日】2023-02-14
(85)【翻訳文提出日】2024-09-24
(86)【国際出願番号】 US2023062578
(87)【国際公開番号】W WO2023159017
(87)【国際公開日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】63/310,395
(32)【優先日】2022-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524095775
【氏名又は名称】ダンスター フェルメント エージー
【氏名又は名称原語表記】DANSTAR FERMENT AG
(71)【出願人】
【識別番号】519139538
【氏名又は名称】インターナショナル・フレーバー・アンド・フレグランス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107870
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100098121
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 世津子
(72)【発明者】
【氏名】フランコビッチ, オリバー
(72)【発明者】
【氏名】モータト, マリアンジェラ
(72)【発明者】
【氏名】ロブマイヤー, ゲルハルト マイケル
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AC26
4B064CA06
4B064CC15
4B064CC30
4B064CD06
4B064CE06
4B064CE11
4B064CE15
4B064CE20
4B064DA10
4B064DA18
4B064DA20
4B065AA72X
4B065AC14
4B065AC15
4B065BD15
4B065BD18
4B065BD27
4B065BD44
4B065CA05
4B065CA51
4B065CA54
(57)【要約】
本開示は、微生物発酵ブロスからバニリンを回収および精製する方法であって、発酵ブロスが、バニリン複合体を生成および分泌することのできる微生物細胞により微生物発酵中に生成されたバニリン複合体、例えばバニリングルコシドを含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物発酵ブロスからバニリンを回収および精製する方法であって、前記発酵ブロスが、バニリン複合体を生成および分泌することのできる微生物細胞により微生物発酵中に生成されたバニリン複合体を含み、前記方法が、
実質的に微生物細胞を含まない液体が残るように前記発酵ブロスから前記微生物細胞を分離および除去し、その後、前記液体に含まれるバニリン複合体をバニリンおよび対応する複合パートナーへと変換する工程(I)(a)、または
前記発酵ブロスに含まれるバニリン複合体をバニリンおよび対応する複合パートナーへと変換し、その後、実質的に微生物細胞を含まない液体が残るように前記発酵ブロスから前記微生物細胞を分離および除去する工程(I)(b)、
その後、
工程(I)(a)もしくは(I)(b)で得られた液体に水と混合できる極性有機溶媒を添加する工程(II)(a)であって、工程(I)(a)で得られた液体が、任意選択で、前記極性有機溶媒の添加前もしくは添加後のいずれかにろ過される、工程(II)(a)、
工程(II)(a)で生成されたバニリン溶液を、
(i)陽イオン交換吸着剤およびその後の弱塩基性陰イオン交換吸着剤、もしくは
(ii)弱塩基性陰イオン交換吸着剤およびその後の陽イオン交換吸着剤
のいずれかで処理する工程(II)(b)、および
任意選択で、得られた溶液を吸着剤で脱色する工程(II)(c)、または
工程(I)(a)もしくは(I)(b)で得られた液体を非イオン性吸着剤で処理する工程(II’)(a)であって、工程(I)(a)で得られた液体が、任意選択で、前記非イオン性吸着剤による処理の前にまずろ過され、工程(II’)(a)で用いられる非イオン性吸着剤が、バニリンを吸着することができ、前記処理が、バニリンを前記非イオン性吸着剤に結合させる条件下での前記バニリンの吸着工程(i)および前記結合したバニリンの溶液への脱着工程(ii)を含む、工程(II’)(a)、
得られたバニリン溶液を、
(i)陽イオン交換吸着剤、
(ii)弱塩基性陰イオン交換吸着剤、もしくは
(iii)いずれかの順序での陽イオン交換吸着剤および弱塩基性陰イオン交換吸着剤の両方
のいずれかで処理する工程(II’)(b)、および
任意選択で、得られた溶液を吸着剤で脱色する工程(II’)(c)のいずれか、ならびに
得られた溶液から前記バニリンを結晶化する工程(III)を含む、方法。
【請求項2】
前記バニリン複合体がバニリングルコシドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微生物細胞が真菌細胞である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記真菌細胞が酵母細胞である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(I)(a)または(I)(b)における前記バニリン複合体のバニリンおよび前記対応する複合パートナーへの変換が、化学的変換または酵素的変換のいずれかにより行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(II)(a)で用いられる前記極性有機溶媒が、アルコール、または異なるアルコールの混合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(II)(b)で用いられる前記陽イオン交換吸着剤が、強酸性陽イオン交換吸着剤である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(II)(b)で用いられる前記弱塩基性陰イオン交換吸着剤が、弱塩基性陰イオン交換樹脂である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(II)(b)で用いられる前記弱塩基性陰イオン交換吸着剤が、使用前にアセテート型に変換される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が工程(II)(b)(i)を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(II)(c)で用いられる前記吸着剤が、炭素である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(II’)(a)で用いられる前記非イオン性吸着剤が、非イオン性樹脂である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(II’)(a)(ii)における前記結合したバニリンの溶液への脱着が、溶離液として有機溶媒、異なる有機溶媒の混合物、水と有機溶媒の混合物、または水と異なる有機溶媒の混合物を用いて行われる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(II’)(b)で用いられる前記陽イオン交換吸着剤が、強酸性陽イオン交換吸着剤である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程(II’)(b)で用いられる前記弱塩基性陰イオン交換吸着剤が、弱塩基性陰イオン交換樹脂である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程(II’)(b)で用いられる前記弱塩基性陰イオン交換吸着剤が、使用前にアセテート型に変換される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が工程(II’)(b)(iii)を含み、前記工程において、前記バニリン溶液が、陽イオン交換吸着剤により処理され、その後、弱塩基性陰イオン交換吸着剤により処理される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
工程(II’)(c)で用いられる前記吸着剤が、炭素である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
強塩基性陰イオン交換吸着剤による精製工程を含まない、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
7未満のpHで起こる、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
バニリンの結晶化が、約3.5~5.5のpHで行われる、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年2月15日に出願された米国仮出願第63/310,395号の優先権および利益を主張し、その内容は、法律により認められる程度までその全体が本明細書において援用される。
【0002】
分野
本開示は、微生物発酵ブロスからバニリンを回収および精製する方法であって、発酵ブロスが、バニリン複合体を生成および分泌することのできる微生物細胞により微生物発酵中に生成されたバニリン複合体、例えばバニリングルコシドを含む、方法に関する。
【背景技術】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
【課題を解決するための手段】
【0005】
【発明を実施するための形態】
【0006】
1)第1の実施形態において、本開示は、微生物発酵ブロスからバニリンを回収および精製する方法であって、発酵ブロスが、バニリン複合体を生成および分泌することのできる微生物細胞により微生物発酵中に生成されたバニリン複合体を含み、その方法が、
実質的に微生物細胞を含まない液体が残るように発酵ブロスから微生物細胞を分離および除去し、その後、液体に含まれるバニリン複合体をバニリンおよび対応する複合パートナーへと変換する工程(I)(a)、または
発酵ブロスに含まれるバニリン複合体をバニリンおよび対応する複合パートナーへと変換し、その後、実質的に微生物細胞を含まない液体が残るように発酵ブロスから微生物細胞を分離および除去する工程(I)(b)、
その後、
工程(I)(a)もしくは(I)(b)で得られた液体に水と混合できる極性有機溶媒を添加する工程(II)(a)であって、工程(I)(a)で得られた液体が、好ましくは、極性有機溶媒の添加前もしくは添加後のいずれかにろ過される、工程(II)(a)、
工程(II)(a)で生成されたバニリン溶液を、
(i)陽イオン交換吸着剤およびその後の弱塩基性陰イオン交換吸着剤、もしくは
(ii)弱塩基性陰イオン交換吸着剤およびその後の陽イオン交換吸着剤のいずれかで処理する工程(II)(b)、および
任意選択で、得られた溶液を吸着剤で脱色する工程(II)(c)、または
工程(I)(a)もしくは(I)(b)で得られた液体を非イオン性吸着剤で処理する工程(II’)(a)であって、工程(I)(a)で得られた液体が、好ましくは、非イオン性吸着剤による処理の前にまずろ過され、工程(II’)(a)で用いられる非イオン性吸着剤が、バニリンを吸着することができ、処理が、バニリンを非イオン性吸着剤に結合させる条件下でのバニリンの吸着工程(i)および結合したバニリンの溶液への脱着工程(ii)を含む、工程(II’)(a)、
得られたバニリン溶液を、
(i)陽イオン交換吸着剤、
(ii)弱塩基性陰イオン交換吸着剤、もしくは
(iii)いずれかの順序での陽イオン交換吸着剤および弱塩基性陰イオン交換吸着剤の両方のいずれかで処理する工程(II’)(b)、および
任意選択で、得られた溶液を吸着剤で脱色する工程(II’)(c)のいずれか、ならびに
得られた溶液からバニリンを結晶化する工程(III)を含む、方法に関する。
【0007】
本明細書で用いられる場合、「微生物細胞」により、好ましくはバクテリア、真菌、および特に酵母から選択される、原核細胞または真核細胞が意味される。
【0008】
用語「バニリン」は、化学名4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒドを有する化合物を言う。
【0009】
用語「バニリン複合体」は、更なる分子実体(本明細書中、「複合パートナー」と呼ばれる)に共有結合したバニリンを言い、複合パートナーは、そのような分子実体を含むバニリン複合体の形態での微生物細胞による生成および分泌に適切なあらゆる分子実体であることができ、複合パートナーは、バニリン複合体のバニリンおよび対応する複合パートナーへの変換によりバニリンから分離することができる。複合パートナーは、糖、例えば多糖、二糖、または単糖、好ましくは単糖、例えば極めて好ましくはD-グルコースを含むが、これらに限定されない。極めて好ましい実施形態において、用語「バニリン複合体」は、従って、「バニリングルコシド」を言う。
【0010】
用語「バニリングルコシド」は、化合物「バニリン 4-O-β-D-グルコシド」を言い、これは「バニリン β-D-グルコシド」とも呼ばれる。
【0011】
本発明による有用な微生物細胞は、発酵培地にバニリン複合体、例えば特にバニリングルコシドを生成および分泌することのできる原核細胞または真核細胞、例えば特にバニリン複合体、例えば特にバニリングルコシドを生成および分泌することができるように遺伝子操作された細胞であることができる。そのような遺伝子操作された微生物細胞は、例えば、WO2004/111254、Hansenら、Appl.Environ.Microbiol.75(9):2765~2774(2009)、WO2013/022881、WO2015/009558、およびWO2021/022216に記載されている。
【0012】
実質的に微生物細胞を含まない液体が残るような工程(I)(a)または(I)(b)における発酵ブロスからの微生物細胞の分離および除去は、あらゆる適切な分離技術により行うことができる。一般的に、これは遠心分離およびその後のろ過によるか、または膜分離法により達成されるであろう。適切な膜分離技術は、精密ろ過、限外ろ過、ナノろ過、またはそれらの組み合わせのいずれかであり、一方で遠心分離後のろ過に適切な技術は、加圧ろ過および真空ろ過を含む。加圧ろ過が用いられる場合、これはあらゆる適切な装置、例えばキャンドルフィルターまたはフィルタープレスを用いて行うことができる。好ましくは、ろ過は、ろ過助剤の添加により行われる。ろ過助剤は、ろ過される懸濁液に添加されても(例えば0.1~5%w/w)、液体が通過する必要のあるプレコートとしてフィルターに置かれてもいずれでもよい。ろ過効率を改善する固体粒子からなるあらゆる物質を用いることができる。好ましくは、ろ過材料は、セルロース、パーライト、または珪藻土をベースとする。
膜分離法の場合、好ましくは、限外ろ過が用いられる。バイオマス分離は、1~100kDa、好ましくは1~10kDaの範囲の名目上の分子量カットオフ(MWCO)を有する膜を用いた限外ろ過により行うことができる。これらの様々な膜を通って用いられる流動速度および/または収率は、同様であることができる。しかしながら、より多くの不純物を取り除くことから、より小さい分子量カットオフが好ましいことがある。他方で、より細かい限外ろ過装置は、より頻繁に清掃を必要とし、プロセスの停止を必要とするため、清掃のための頻繁な停止によりプロセスの経済的意味を損なうことなく、許容できる純度を得るために、最適な分子量カットオフの選択においてバランスが取られる。好ましくは、複合フッ素ポリマー膜、例えばAlfa LavalのETNA01PP(1kDa MWCO)またはETNA10PP(10kDa MWCO)が用いられる。透析ろ過は、濃縮ブロス(保持液)の体積に対して1~2以上、好ましくは1.6倍の脱塩水の体積で行うことができる。
【0013】
工程(I)(a)または(I)(b)におけるバニリン複合体のバニリンおよび対応する複合パートナーへの変換は、化学的変換(例えば加水分解)または酵素的変換のいずれか、好ましくは適切な酵素を適切な条件下で用いた酵素的変換により行うことができる。そのような酵素、例えば、バニリングルコシドのバニリンおよびグルコースへの変換を触媒することのできるβ-グルコシダーゼが当該分野で知られている。好ましい実施形態において、バニリングルコシドのバニリンおよびグルコースへの変換は、約3.0~6.5、好ましくは4.5~5.5のpH、および約30~60℃、好ましくは50~55℃の温度で、好ましくは20~48時間、バニリングルコシド1g当たり約10酵素単位(u)/gの活性を有する0.002~0.1gのβ-グルコシダーゼ(バニリングルコシドに対して約20~1’000u/kgに対応する)、好ましくは0.03~0.07g/g(バニリングルコシドに対して約300~700u/kgに対応する)を用いて行われる。
【0014】
任意選択で、工程(I)(a)におけるバニリン複合体のバニリンおよび対応する複合パートナーへの変換前に、液体が濃縮される。液体は、2以上の体積濃縮係数(VCF)で濃縮することができる。好ましくは、濃縮は、逆浸透またはワイパー式薄膜蒸発器により行われる。
濃縮は、約10~50℃の温度での逆浸透、または約50~80℃、好ましくは約60~65℃での蒸発により行うことができる。25℃、16bargで2000ppmのNaClについて測定した98%以上の排除を有する、ポリプロピレン上の薄膜複合ポリマーからなる薄膜複合膜を用いることができる(例えばAlfa Laval RO98pHt)。別法として、25℃、9bargで2000ppmのNaClについて測定した98%以上の排除を有する、ポリエステル上の薄膜複合ポリマーからなるAlfa Laval RO99膜を用いることができる(例えばAlfa Laval RO99)。
【0015】
工程(II)(a)で用いられる適切な極性有機溶媒は、水と混合でき、バニリンの溶解度を高め、工程(II)(b)で用いられるイオン交換吸着剤と共に用いられるのに相性の良い、有機溶媒、または異なる有機溶媒の混合物である。好ましい実施形態において、極性有機溶媒は、好ましくは直鎖型もしくは分岐型の1~6個の炭素原子を含む、アルコール、または異なるアルコールの混合物、例えば不飽和もしくは特に飽和の第1級アルコール、例えばエタノールおよびプロパノール、例えば2-プロパノールである。特に好ましい実施形態において、極性有機溶媒はエタノールまたは2-プロパノールであり、最も好ましくはエタノールである。工程(I)(a)または(I)(b)からの液体に添加される極性有機溶媒の量は、好ましくは、得られる溶液の全体積に対して少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、または70%v/vの極性有機溶媒となるようなものである。極めて好ましくは、極性有機溶媒は、得られる溶液の約20~50%v/v、特に約20~40%v/v、最も好ましくは約20%v/vを構成する。
【0016】
温度に関して用いられるのでない限り、数値「X」の前に置かれる用語「約」は、好ましくは、本出願において、XマイナスXの10%からXプラスXの10%に広がる区間を言う。温度についての特別な場合には、温度「Y」の前に置かれる用語「約」は、好ましくは、本出願において、温度Yマイナス5℃からYプラス5℃に広がる区間を言う。
【0017】
工程(II)(a)または(II’)(a)によるろ過は、あらゆる適切なろ過技術、例えば加圧ろ過または真空ろ過により行うことができる。好ましくは、ろ過は、ろ過助剤の添加により行われる。ろ過助剤は、ろ過される懸濁液に添加されても(例えば0.1~1%w/w)、液体が通過する必要のあるプレコートとしてフィルターに置かれてもいずれでもよい。ろ過効率を改善する固体粒子からなるあらゆる物質を用いることができる。好ましくは、ろ過材料は、セルロース、パーライト、または珪藻土をベースとする。
【0018】
あらゆる適切な陽イオン交換吸着剤を工程(II)(b)または(II’)(b)において用いることができる。それは弱酸または強酸の陽イオン交換吸着剤であることができる。好ましくは、用いられる吸着剤は樹脂である。陽イオン交換吸着剤は、好ましくは、強酸性陽イオン交換吸着剤、例えば特に強酸性陽イオン交換樹脂であり、好ましくはH型である。好ましくはマクロ多孔性樹脂が用いられる。例えば、マクロ多孔性のポリスチレン系樹脂およびポリスチレン系ゲル樹脂、例えばジビニルベンゼンで架橋された官能基としてスルホン酸を有するマクロ多孔性ポリスチレン樹脂を用いることができる。
【0019】
あらゆる適切な弱塩基性陰イオン交換吸着剤を工程(II)(b)または(II’)(b)において用いることができる。好ましくは、弱塩基性陰イオン交換吸着剤は、弱塩基性陰イオン交換樹脂、例えば特に弱塩基性陰イオン交換マクロ多孔性樹脂である、特に、ポリスチレンまたはポリアクリル酸エステルフレームのいずれか、および官能基として第1級~第3級アミノ基を有する弱塩基性陰イオン交換マクロ多孔性樹脂を用いることができる。マクロ多孔性のポリスチレン系樹脂が好ましいが、ポリスチレン系ゲル樹脂もまた用いることができる。例えば、官能基として第3級アミンを有するジビニルベンゼンで架橋されたポリアクリルを有するゲル型樹脂が適切である。極めて好ましい実施形態において、弱塩基性陰イオン交換吸着剤、例えば特に弱塩基性陰イオン交換樹脂は、使用前にAc型(アセテート型)に変換される。そうするために、5%の酢酸の溶液で処理し、脱塩水で洗浄し、供給溶媒で予め調整することができる。
【0020】
あらゆる適切な非イオン性(中性)吸着剤を工程(II’)(a)において用いることができる。好ましくは、非イオン性吸着剤は、非イオン性樹脂、特にマクロ多孔性非イオン性樹脂、特に疎水性樹脂である。ポリスチレン系、ポリフェノール系、またはポリメタクリル系非イオン性樹脂を用いることができる。例えば、官能基を有さないマクロ多孔性ポリジビニルベンゼン樹脂が適切である。
【0021】
工程(II’)(a)(i)におけるバニリンを非イオン性吸着剤に結合させる条件下でのバニリンの吸着は、好ましくは4BV/h以下の流量で、非イオン性吸着剤を含むカラムに溶液をポンプで送ることにより行うことができる。
【0022】
工程(II’)(a)(ii)における結合したバニリンの溶液への脱着は、好ましくは4BV/h以下の流量で、非イオン性吸着剤を含むカラムに例えば2~4BV、好ましくは3BVの溶離液をポンプで送ることにより行うことができる。そのような溶離液が水単独と比べてバニリンの溶解度を高め、工程(II’)(a)で用いられる非イオン性吸着剤と共に用いられるのに相性が良いのであれば、脱着に適切な溶離液は、有機溶媒、異なる有機溶媒の混合物、水と有機溶媒の混合物、または水と異なる有機溶媒の混合物である。好ましい実施形態において、有機溶媒は、好ましくは直鎖型もしくは分岐型の1~6個の炭素原子を含む、アルコール、または異なるアルコールの混合物、例えば不飽和もしくは特に飽和の第1級アルコール、例えばエタノールおよびプロパノール、例えば2-プロパノールである。特に好ましい実施形態において、有機溶媒はエタノールまたは2-プロパノールであり、最も好ましくはエタノールである。有機溶媒の量は、好ましくは、溶離液の全体積に対して少なくとも約40%、50%、60%、または70%v/vである。極めて好ましくは、有機溶媒は、溶離液の全体積の約50~90%v/v、特に約70~80%v/v、最も好ましくは約80%v/vを構成する。極めて好ましい実施形態において、溶離液は、50~90%v/v、特に約70~80%v/v、最も好ましくは約80%v/vのエタノールの濃度を有する水性エタノールである。
【0023】
溶液を脱色するための任意の工程(II)(c)または(II’)(c)で用いられる吸着剤は、炭素、特に活性炭、好ましくは粒状活性炭であることができる。溶液は、例えば、4BV/h以下の流量および約15~25℃の温度で炭素カラムにポンプで送ることができる。炭素必要量は、バニリンのkg当たり、好ましくは約0.05~2kg、より好ましくは約0.3~1kg、最も好ましくは約0.5kgの炭素である。
【0024】
工程(III)の結晶化を行う前に、バニリン溶液は、ろ過によりポリッシュして、吸着剤のあらゆる痕跡を除去することができる。そのようなろ過は、好ましくは1μm以下の細孔径を有する適切なフィルターを用いて行うことができる。
【0025】
工程(III)の結晶化は、例えば、減圧下、例えば0.1~0.4bargおよび約50~55℃の温度での蒸発により、例えば、約10~60%、好ましくは約25~35%の全乾燥物質となるまでのバニリン溶液の濃縮により行うことができる。バニリンの結晶化は、好ましくは、約3.5~5.5、好ましくは約4~5.5のpHで行われる。
蒸発の終わりに、バニリン溶液は、結晶化を開始するために例えば約25~35℃まで冷却することができる。結晶化が生じない場合、純粋なバニリンによるシーディングを行うことができる。蒸発による濃縮後にバニリン溶液に約7%v/v以下の有機溶媒が存在する場合、これは通常、例えば約25~35℃への濃縮溶液の冷却後に自発的な結晶化をもたらすものであり、シーディングを回避することができる。
【0026】
本開示は、以下の更なる実施形態を提供する。
【0027】
2)1つの実施形態において、本開示は、バニリン複合体がバニリングルコシドである、実施形態1)に記載の方法に関する。
【0028】
3)別の実施形態において、本開示は、微生物細胞が真菌細胞である、実施形態1)または2)に記載の方法に関する。
【0029】
4)別の実施形態において、本開示は、真菌細胞が酵母細胞である、実施形態3)に記載の方法に関する。
【0030】
5)別の実施形態において、本開示は、酵母細胞がSaccharomyces cerevisiaeから選択される、実施形態4)に記載の方法に関する。
【0031】
6)別の実施形態において、本開示は、実質的に微生物細胞を含まない液体が残るような工程(I)(a)または(I)(b)における発酵ブロスからの微生物細胞の分離および除去が、遠心分離およびその後のろ過によるか、または膜分離法により行われる、実施形態1)~5)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0032】
7)別の実施形態において、本開示は、微生物細胞の分離および除去が、遠心分離およびその後のろ過により行われる、実施形態6)に記載の方法に関する。
【0033】
8)別の実施形態において、本開示は、微生物細胞の分離および除去が限外ろ過により行われる、実施形態6)に記載の方法に関する。
【0034】
9)別の実施形態において、本開示は、工程(I)(a)または(I)(b)におけるバニリン複合体のバニリンおよび対応する複合パートナーへの変換が、化学的変換(例えば加水分解)または酵素的変換のいずれかにより行われる、実施形態1)~8)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0035】
10)別の実施形態において、本開示は、バニリン複合体のバニリンおよび対応する複合パートナーへの変換が酵素的変換により行われる、実施形態9)に記載の方法に関する。
【0036】
11)別の実施形態において、本開示は、バニリン複合体がバニリングルコシドであり、酵素的変換が、酵素としてβ-グルコシダーゼを用いることにより行われる、実施形態10)に記載の方法に関する。
【0037】
12)別の実施形態において、本開示は、方法が工程(I)(a)を含む、実施形態1)~11)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0038】
13)別の実施形態において、本開示は、工程(I)(a)におけるバニリングルコシド複合体のバニリンおよび対応する複合パートナーへの変換前に、液体が、好ましくは2以上の体積濃縮係数で濃縮される、実施形態1)~12)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0039】
14)別の実施形態において、本開示は、工程(I)(a)で得られた液体が、工程(II)(a)において極性有機溶媒の添加前または添加後のいずれかにろ過される、実施形態1)~13)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0040】
15)別の実施形態において、本開示は、工程(I)(a)で得られた液体が、工程(II’)(a)において非イオン性吸着剤による処理の前にまずろ過される、実施形態1)~13)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0041】
16)別の実施形態において、本開示は、方法が工程(I)(b)を含む、実施形態1)~11)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0042】
17)別の実施形態において、本開示は、方法が、工程(II)(a)および(II)(b)、ならびに任意選択で工程(II)(c)を含む、実施形態1)~14)および16)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0043】
18)別の実施形態において、本開示は、工程(II)(a)で用いられる極性有機溶媒が、好ましくは直鎖型もしくは分岐型の1~6個の炭素原子を含む、アルコール、または異なるアルコールの混合物である、実施形態1)~14)および16)~17)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0044】
19)別の実施形態において、本開示は、アルコールが、エタノールまたはプロパノール(特に2-プロパノール)、好ましくはエタノールである、実施形態18)に記載の方法に関する。
【0045】
20)別の実施形態において、本開示は、工程(II)(b)で用いられる陽イオン交換吸着剤が、強酸性陽イオン交換吸着剤、特に強酸性陽イオン交換樹脂、好ましくはH型および好ましくはマクロ多孔性樹脂である、実施形態1)~14)および16)~19)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0046】
21)別の実施形態において、本開示は、工程(II)(b)で用いられる弱塩基性陰イオン交換吸着剤が、弱塩基性陰イオン交換樹脂、特に弱塩基性陰イオン交換マクロ多孔性樹脂である、実施形態1)~14)および16)~20)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0047】
22)別の実施形態において、本開示は、工程(II)(b)で用いられる弱塩基性陰イオン交換吸着剤が、使用前にアセテート型に変換される、実施形態1)~14)および16)~21)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0048】
23)別の実施形態において、本開示は、方法が工程(II)(b)(i)を含む、実施形態1)~14)および16)~22)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0049】
24)別の実施形態において、本開示は、方法が工程(II)(b)(ii)を含む、実施形態1)~14)および16)~22)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0050】
25)別の実施形態において、本開示は、工程(II)(c)が方法の一部である、実施形態1)~14)および16)~24)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0051】
26)別の実施形態において、本開示は、工程(II)(c)で用いられる吸着剤が、炭素、特に活性炭、好ましくは粒状活性炭である、実施形態25)に記載の方法に関する。
【0052】
27)別の実施形態において、本開示は、方法が、工程(II’)(a)および(II’)(b)、ならびに任意選択で工程(II’)(c)を含む、実施形態1)~13)および15)~16)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0053】
28)別の実施形態において、本開示は、工程(II’)(a)で用いられる非イオン性吸着剤が、非イオン性樹脂、特にマクロ多孔性非イオン性樹脂、好ましくは疎水性樹脂である、実施形態27)に記載の方法に関する。
【0054】
29)別の実施形態において、本開示は、工程(II’)(a)(ii)における結合したバニリンの溶液への脱着が、溶離液として有機溶媒、異なる有機溶媒の混合物、水と有機溶媒の混合物、または水と異なる有機溶媒の混合物を用いて行われる、実施形態27)または28)に記載の方法に関する。
【0055】
30)別の実施形態において、本開示は、溶離液が、好ましくは直鎖型もしくは分岐型の1~6個の炭素原子を含む、アルコール、または異なるアルコールの混合物である、実施形態29)に記載の方法に関する。
【0056】
31)別の実施形態において、本開示は、アルコールが、エタノールまたはプロパノール(特に2-プロパノール)、好ましくはエタノールである、実施形態30)に記載の方法に関する。
【0057】
32)別の実施形態において、本開示は、工程(II’)(b)で用いられる陽イオン交換吸着剤が、強酸性陽イオン交換吸着剤、特に強酸性陽イオン交換樹脂、好ましくはH型および好ましくはマクロ多孔性樹脂である、実施形態27)~31)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0058】
33)別の実施形態において、本開示は、工程(II’)(b)で用いられる弱塩基性陰イオン交換吸着剤が、弱塩基性陰イオン交換樹脂、特に弱塩基性陰イオン交換マクロ多孔性樹脂である、実施形態27)~32)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0059】
34)別の実施形態において、本開示は、工程(II’)(b)で用いられる弱塩基性陰イオン交換吸着剤が、使用前にアセテート型に変換される、実施形態27)~33)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0060】
35)別の実施形態において、本開示は、方法が工程(II’)(b)(i)を含む、実施形態27)~32)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0061】
36)別の実施形態において、本開示は、方法が工程(II’)(b)(ii)を含む、実施形態27)~31)および33)~34)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0062】
37)別の実施形態において、本開示は、方法が工程(II’)(b)(iii)を含む、実施形態27)~34)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0063】
38)別の実施形態において、本開示は、工程(II’)(b)(iii)において、バニリン溶液が、陽イオン交換吸着剤により処理され、その後、弱塩基性陰イオン交換吸着剤により処理される、実施形態37)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0064】
39)別の実施形態において、本開示は、工程(II’)(c)が方法の一部である、実施形態27)~38)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0065】
40)別の実施形態において、本開示は、工程(II’)(c)で用いられる吸着剤が、炭素、特に活性炭、好ましくは粒状活性炭である、実施形態39)に記載の方法に関する。
【0066】
41)別の実施形態において、本開示は、方法が、強塩基性陰イオン交換吸着剤による精製工程を含まない、実施形態1)~40)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0067】
42)別の実施形態において、本開示は、方法が7未満、好ましくは6未満のpHで起こる、実施形態1)~41)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0068】
43)別の実施形態において、本開示は、工程(III)の結晶化を行う前に、バニリン溶液がろ過によりポリッシュされて、吸着剤のあらゆる痕跡を除去する、実施形態1)~42)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0069】
44)別の実施形態において、本開示は、工程(III)の結晶化が、得られたバニリン溶液の濃縮を含む、実施形態1)~43)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0070】
45)別の実施形態において、本開示は、バニリンの結晶化が、約3.5~5.5、好ましくは約4~5.5のpHで行われる、実施形態1)~44)のいずれか1つに記載の方法に関する。
【実施例
【0071】
本明細書で用いられる略号
BV ベッドボリューム(複数可)
DSP 下流プロセス
GC ガスクロマトグラフィー
h 時間(複数可)
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
UF 限外ろ過
VAN バニリン
v/v 体積/体積
w/w 重量/重量
【0072】
実施例1
下流プロセスA
A型の完全な下流プロセスを分析するために、バニリングルコシドを生成および分泌することのできるバニリングルコシド生成酵母株により製造された発酵ブロスを用いた。本実施例および以下の実施例で用いられるバニリングルコシド生成酵母株は、バニリングルコシドの生成および分泌を可能にする例えばHansenら、Appl.Environ.Microbiol.75(9):2765~2774(2009)に記載された新たな合成経路を含むように設計された、Saccharomyces cerevisiae株である。本実施例および以下の実施例で用いられる発酵ブロスは、10g/Lを超える濃度でバニリングルコシドを含んでいた。
発酵ブロスを遠心分離し、得られた上澄みをろ過助剤としてDal-Cin Alfatex 101を添加することによりろ過した。得られた4160mLのろ過溶液は、バニリングルコシドを含み、pH4.86を有していた。バニリングルコシド1g当たり、Biocatalysts Beta Glucosidase G016L(β-グルコシダーゼ活性:10u/g、生物学的起源:Trichoderma longibrachiatum、酵素濃度:約6.3%)からの0.46gのβ-グルコシダーゼ溶液を溶液に添加し、溶液を50℃で48時間撹拌した。形成したスラリーをろ過助剤としてDal-Cin Alfatex 101を添加することによりろ過し、エタノールで希釈して水中20%v/vのエタノールとした。実験室スケールのカラム2本:300mLの強酸性陽イオン交換Purolite C150SH樹脂(HSO 5%で再生および活性化)で充填した実験室スケールのカラム、およびその後の300mLの弱塩基性陰イオン交換Purolite A845S樹脂(酢酸5%で処理)で充填した実験室スケールのカラムを順次接続した。次いで、pH5.04および7.28μS/cmの伝導率を有する水性エタノール20%v/v溶液中のバニリン3090mLを、強酸性陽イオン交換樹脂から始まる2本のカラムを通して、4.8BV/hの流量で上昇流方向にポンプ送液した。その後、樹脂を水性エタノール20%v/vで洗浄した。以下の画分を収集および分析した。
【0073】
【表1】
【0074】
バニリンのg当たり1.75gの化学的粒状活性炭Chemviron Acticarbone BGEを、前の工程で得られた混ぜ合わせた主要3画分に添加した。褐色溶液を室温で3時間撹拌し、次いで、ろ過し、炭素処理後に黄色溶液を得た。炭素を撹拌下、室温で1時間、600mLのエタノールで洗浄した。それぞれの溶液の試料をろ過および分析した。炭素処理のバニリン収率は81.89%であった。
活性炭により処理された溶液および洗浄画分を混ぜ合わせ、0.45μmのNylonフィルターでろ過し、その後、750mLまで55℃の水浴中でロータリーエバポレーターにより真空下で濃縮した。濃縮物を室温まで冷却し、結晶化が生じた。室温で一晩スラリーを撹拌後、形成した固体を真空ろ過により分離し、300mLの予め冷却した脱塩水で洗浄し、3時間、真空下、45℃で乾燥させた。GCによる97.49%w/wの純度およびHPLCによる97.45%w/wの純度を有するオフホワイト色から黄色のバニリンを得た。
【0075】
実施例2
活性炭処理を含まない、下流プロセスA、異なるpH値での結晶化
バニリングルコシド生成酵母株により製造された、バニリングルコシドを含むpH4.75の3465mLの発酵ブロスを以下の実験に用いた。発酵ブロスを遠心分離し、得られた上澄みをろ過助剤としてのDal-Cin Alfatex 101によりろ過した。pH4.83を有する2Lの得られた溶液をバニリングルコシドの酵素的加水分解に用いた。バニリングルコシド1g当たり、Biocatalysts Beta Glucosidase G016L(β-グルコシダーゼ活性:10u/g、生物学的起源:Trichoderma longibrachiatum、酵素濃度:約6.3%)からの0.26gのβ-グルコシダーゼ溶液を溶液に添加し、溶液を50℃で48時間撹拌した。形成したスラリーをろ過助剤としてDal-Cin Alfatex 101を添加することによりろ過し、エタノールで希釈して水中50%v/vのエタノールとした。実験室スケールのカラム2本:200mLの強酸性陽イオン交換樹脂Dowex 50 WX4 200~400メッシュ(HSOで再生および活性化)で満たした実験室スケールのカラム、およびその後の200mLの弱塩基性陰イオン交換樹脂DuPont Amberlite FPA 53(酢酸5%で処理)で満たした実験室スケールのカラムを順次接続した。次いで、前の工程で得られた3.15Lのバニリン溶液を、強酸性陽イオン交換樹脂から始まる2本のカラムを通して、4BV/hの流量で上昇流方向にポンプ送液した。その後、樹脂を水性エタノール50%v/vで洗浄した。以下の3画分を収集および分析した。
【0076】
【表2】
【0077】
異なるpH値でのバニリンの結晶化を分析するために、pH3.83の第1の画分を用いた。
a)「画分1」の500mLのpHを、NaOH30%でpH3.83から5.06に調整した。pH調整中、溶液の色は変化しなかった。次いで、溶液を55℃の水浴中でロータリーエバポレーターにより真空下で濃縮し、その中に黒色油のスポットを観察した。室温への冷却後、黒色のスポットが完全に溶解するまで、純粋エタノールを添加した。次いで、30.34mgの98%以上の純度のバニリン粉末によりシーディングを行い、溶液を24時間、4℃に維持した。その後、形成した固体を真空ろ過により母液から分離し、10mLの予め冷却した水で洗浄し、3時間、真空下、45℃で乾燥させた。結晶化、ろ過、湿った固体の洗浄、および乾燥のバニリン収率は88.47%であった。HPLCによる98.62%w/wの純度を有する褐色結晶性バニリンを得た。
【0078】
b)「画分1」の500mLのpHを、NaOH30%でpH3.83から7.20に調整した。pH調整中、溶液の色は黄色からオレンジ色に変化した。溶液を55℃の水浴中でロータリーエバポレーターにより真空下で濃縮し、その中に黒色油のスポットを観察した。室温への冷却後、黒色のスポットが完全に溶解するまで、純粋エタノールを添加した。次いで、34.02mgの98%以上の純度のバニリンによりシーディングを行い、溶液を3日間、4℃に維持した。形成した固体を真空ろ過により母液から分離し、10mLの予め冷却した水で洗浄し、3時間、真空下、45℃で乾燥させた。結晶化、ろ過、湿った固体の洗浄、および乾燥のバニリン収率は73.15%であった。HPLCによる99.14%w/wの純度を有する暗黄色バニリンを得た。
【0079】
c)「画分1」の500mLのpHを、NaOH30%でpH3.83から8.57に調整した。pH調整中、溶液の色は暗赤色になり、その後、暗褐色に変化した。溶液を55℃の水浴中でロータリーエバポレーターにより真空下で濃縮し、室温への冷却後、一晩4℃に維持した。形成した固体を真空ろ過により母液から分離し、10mLの予め冷却した水で洗浄し、3時間、真空下、45℃で乾燥させた。結晶化、ろ過、湿った固体の洗浄、および乾燥のバニリン収率は57.60%であった。HPLCによる97.39%w/wの純度を有する暗褐色バニリンを得た。
【0080】
実施例3
溶媒として2-プロパノールを用いることによる、下流プロセスA
バニリングルコシド生成酵母株により製造された、バニリングルコシドを含むpH4.96の17.7Lの発酵ブロスを以下の実験に用いた。発酵ブロスをUF 1kDa Alfa Laval ETNA01PP膜を有するAlfa Laval TestUnit M20により限外ろ過し、透析ろ過し、Alfa Laval RO98pHt膜による逆浸透により4.90Lまで濃縮した。
バニリングルコシド1g当たり、Biocatalysts Beta Glucosidase G016L(β-グルコシダーゼ活性:10u/g、生物学的起源:Trichoderma longibrachiatum、酵素濃度:約6.3%)からの0.27gのβ-グルコシダーゼ溶液を4900mLの濃縮バニリングルコシド溶液(pH5.23)に添加し、溶液を50℃で120時間撹拌した。
形成したスラリーをろ過助剤としてのDal-Cin Alfatex 101の存在下でろ過し、2-プロパノールで希釈して40% 2-プロパノールv/vの最終濃度とした。得られた溶液はpH5.80を有していた。実験室スケールのカラム2本:300mLの強酸性陽イオン交換樹脂Purolite C150SH(HSO 5%で活性化および再生)で充填した実験室スケールのカラム、およびその後の300mLの弱塩基性陰イオン交換樹脂Purolite A845S(酢酸5%で処理)で充填した実験室スケールのカラムを順次接続した。次いで、水性2-プロパノール40%v/v溶液中のバニリン900mLを、強酸性陽イオン交換樹脂から始まる2本のカラムを通して、4BV/hの流量で上昇流方向にポンプ送液した。
その後、樹脂を水性2-プロパノール40%v/vで洗浄した。4画分を収集および分析した。
【0081】
【表3】
【0082】
前の工程で得られた主要3画分および洗浄画分を混ぜ合わせた。化学的粒状活性炭Chemviron Acticarbone BGE(0.59kg BGE/1kg VAN)を得られた溶液に添加し、バッチ中、室温で3時間撹拌した。溶液の重大な色の悪化は観察されなかった。次いで、炭素をろ過し、室温で1時間、撹拌下で133mLの水中40%v/v2-プロパノールによりバッチ中で洗浄した。炭素処理後の主要溶液を炭素洗浄画分と混ぜ合わせ、0.45μmのNylonフィルターでろ過し、90mLまで55℃の水浴中でロータリーエバポレーターにより真空下で濃縮した。濃縮物を連続的に撹拌しながら室温まで冷却し、次いで、一晩4℃に維持した。40.99mgの99%の純度のバニリンを添加することによりシーディングを行い、すぐに結晶化が生じた。形成した固体を真空ろ過により母液から分離し、40mLの予め冷却した脱塩水で洗浄し、3時間、真空下、45℃で乾燥させた。HPLCによる92.75%w/wの純度およびGCによる96.18%w/wの純度を有する黄色バニリンを得た。
【0083】
実施例4
活性炭処理を含まない、下流プロセスA
バニリングルコシド生成酵母株により製造された、バニリングルコシドを含むpH4.75の3465mLの発酵ブロスを以下の実験に用いた。発酵ブロスを遠心分離し、得られた上澄みをろ過助剤としてのDal-Cin Alfatex 101によりろ過した。
バニリングルコシド1g当たり、Biocatalysts Beta Glucosidase G016L(β-グルコシダーゼ活性:10u/g、生物学的起源:Trichoderma longibrachiatum、酵素濃度:約6.3%)からの0.26gのβ-グルコシダーゼ溶液を2Lのろ過した上澄み(pH4.83)に添加し、溶液を50℃で48時間撹拌した。形成したスラリーをろ過助剤としてDal-Cin Alfatex 101を添加することによりろ過し、エタノールで希釈して水中50%v/vのエタノールとした。
実験室スケールのカラムを200mLの強酸性陽イオン交換樹脂Dowex 50 WX4 200~400メッシュ(HSOで活性化)で充填し、200mLのエタノールによるろ過溶液を、1.5BV/hの流量にて上昇流方向にそのカラムを通してポンプ送液した。その後、樹脂を水性エタノール50%v/vで洗浄し、異なる3画分を収集し、分析した。
【0084】
【表4】
【0085】
実験室スケールのカラムを200mLの弱塩基性陰イオン交換樹脂DuPont Amberlite FPA 53(5%酢酸で処理)で充填し、前の工程で得られた3画分を、主要画分から開始して別々に、7.2BV/hの流量にて上昇流方向に樹脂カラムを通してポンプ送液した。その後、樹脂を水性エタノール50%v/vで洗浄し、異なる4画分を収集および分析した。
【0086】
【表5】
【0087】
前の工程で得られた全画分を混ぜ合わせることにより得られた溶液を0.22μmのPTFEフィルターにポンプで送り、800mLの透明ろ液を、52mLまで55℃の水浴中でロータリーエバポレーターにより真空下で濃縮した。濃縮物を室温まで冷却し、24mgの98%以上の純度のバニリンによりシーディングを行った。すぐに結晶化が生じ、溶液を一晩4℃に維持した。形成した固体を真空ろ過により母液から分離し、10mLの予め冷却した脱塩水で洗浄し、3時間、真空下、45℃で乾燥させた。HPLCによる96.5%w/wの純度およびGCによる98.5%w/wの純度を有する黄色バニリンを得た。
【0088】
実施例5
強酸性陽イオン交換樹脂および弱塩基性陰イオン交換樹脂による処理後の強塩基性陰イオン交換樹脂への/強塩基性陰イオン交換樹脂からのバニリンの吸着および放出
バニリングルコシド生成酵母株により製造された、バニリングルコシドを含むpH5.01の9.58Lの発酵ブロスを以下の実験に用いた。ブロスをUF 1kDa Alfa Laval ETNA01PP膜を有するAlfa Laval TestUnit M20により限外ろ過し、透析ろ過し、Alfa Laval RO98pHt膜による逆浸透により濃縮した。
得られた4950mLの濃縮バニリングルコシド溶液は5.03のpHを有していた。バニリングルコシド1g当たり、Biocatalysts Beta Glucosidase G016L(β-グルコシダーゼ活性:10u/g、生物学的起源:Trichoderma longibrachiatum、酵素濃度:約6.3%)からの0.26gのβ-グルコシダーゼ溶液を溶液に添加し、溶液を50℃で48時間撹拌した。形成したスラリーをろ過助剤としてDal-Cin Alfatex 101を添加することによりろ過し、その後、エタノールで希釈して20%エタノールv/vの最終濃度とした。得られた溶液のpHは5.34であった。
実験室スケールのカラム2本:300mLの強酸性陽イオン交換樹脂Purolite C150SH(HSO 5%で活性化および再生)で充填した350mLの実験室スケールのカラム、およびその後の300mLの弱塩基性陰イオン交換樹脂Purolite A845S(酢酸5%で処理)で充填した350mLの実験室スケールのカラムを順次接続し、1.17Lのエタノールによる透明ろ液を、強酸性陽イオン交換樹脂から開始して、4BV/hの流量にて上昇流方向に、2本の樹脂カラムを通してポンプ送液した。その後、両方の樹脂カラムを水性エタノール20%v/vで洗浄した。異なる5画分を収集および分析した。
【0089】
【表6】
【0090】
45mLの強塩基性陰イオン交換樹脂DuPont Amberlite FPA 42(NaOH 5%で活性化および脱塩水で洗浄)で充填した実験室スケールのカラムに、225mLの上記の画分全てを混ぜ合わせることにより得られた溶液を供給した。混ぜ合わせた溶液を4BV/hの流量でカラムを通してポンプ送液した後、5画分を収集し、その後、樹脂を脱塩水で洗浄した後、3洗浄画分を収集および分析した。
【0091】
【表7】
【0092】
その後、樹脂カラムを通して4BV/hの流量で5%酢酸を含む水性エタノール70%v/vをポンプ送液することによりバニリンを放出させた。バニリン放出の間の5画分を収集および分析した。
【0093】
【表8】
【0094】
強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着したバニリンの67.86%を、5%酢酸を含む水性エタノール70%v/vによる溶離によって放出させたが、Amberlite FPA42により結合したバニリン全体は、供給溶液により供給された総量の13.60%のみであった。従って、強塩基性陰イオン交換樹脂による精製のバニリン収率全体は9.22%であった。強塩基性陰イオン交換樹脂の適用によりもたらされる低効率のために、結晶化を行うことなく本実施例の精製プロセスを中断した。
【0095】
実施例6
下流プロセスB
バニリングルコシド生成酵母株により製造された、バニリングルコシドを含むpH4.96の17.7Lの発酵ブロスを以下の実験に用いた。ブロスをUF 1kDa Alfa Laval ETNA01PP膜を有するAlfa Laval TestUnit M20により限外ろ過し、透析ろ過し、Alfa Laval RO98pHt膜による逆浸透により4.90Lまで濃縮した。
バニリングルコシド1g当たり、Biocatalysts Beta Glucosidase G016L(β-グルコシダーゼ活性:10u/g、生物学的起源:Trichoderma longibrachiatum、酵素濃度:約6.3%)からの0.27gのβ-グルコシダーゼ溶液を4900mLの濃縮バニリングルコシド溶液(pH5.23)に添加し、溶液を50℃で120時間撹拌した。850mLの形成したスラリーをろ過助剤としてDal-Cin Alfatex 101を添加することによりろ過した。バニリンを含む透明ろ液を、4BV/hの流量で非イオン性樹脂Purolite Purosorb PAD400(脱塩水で予め調整)で充填した200mLのカラムを通して下降流方向にポンプ送液した。500mLの5画分(それぞれ2.5BV)を収集した(850mLが供給物に、1650mLが洗浄物に対応)。供給物を投入後、淡黄色の色合いを有する水が樹脂カラムから出てくるまで、樹脂を8BVの脱塩水で洗浄して着色不純物を除去した。その後、4BV/hの流量での上昇流方向への水性80%v/vエタノールによる溶離によってバニリンを樹脂から放出させた。8画分で1.672Lの溶離液を収集した。バニリンはすぐに脱着し、脱着物は褐色を有していたが、より希釈された脱着物は黄色であった。
非イオン性樹脂Purolite Purosorb PAD400からの脱着画分を、H型の強酸性陽イオン交換樹脂Dowex 50Wx4(BV=200mL)を通してポンプ送液したが、ここでは樹脂カラムを脱塩水で十分に予め洗浄し、水中80%v/vエタノールで予め調整した。脱着画分を、4BV/hの流量にて下降流方向に次々に樹脂カラムにポンプ送液し、最初のものから開始して最後のもので終了した。終わりに、水中80%v/vエタノールを、カラムを通してポンプ送液し、樹脂を洗浄した。合計で200mLの8画分を収集した。
強酸性陽イオン交換樹脂の後に収集された画分を、5%酢酸で予め処理し、脱塩水で洗浄し、水中80%v/vエタノールで予め調整した、弱塩基性陰イオン交換樹脂DuPont Amberlite FPA53(BV=200mL)で充填したカラムを通してポンプ送液した。画分を、4BV/hの流量にて下降流方向に次々に樹脂カラムにポンプで送り、前の工程の最初の画分から開始して最後のもので終了した。次いで、水中80%v/vエタノールをカラムにポンプで送って樹脂を洗浄した。合計で200mLの8画分を収集した。
収集された全画分を炭素処理のために混ぜ合わせ、粒状活性炭Chemviron Acticarbone BGE(比 0.59kg BGE/kg VAN)を50mLのカラムに投入し、樹脂処理からの混ぜ合わせた画分のオレンジ色溶液を、20時間、8BV/hの流量にて下降流方向に炭素カラムに再循環させた。炭素処理により、溶液の色がオレンジ色から黄色に変化した。炭素カラムを5BVの水中80%v/vエタノール(5×50mL)で洗浄した。炭素で処理された主要な画分および炭素洗浄画分を混ぜ合わせた。
得られた溶液を0.48μmのPTFEフィルターでろ過して残った炭素粒子を除去し、フィルターを40mLの水中80%v/vエタノールで洗浄し、pH4.94および15μS/cmの伝導率を有する合計で1740mLの体積を得た。
透明ろ液を、55℃の水浴中でロータリーエバポレーターにより真空下(220mbarから80mbarまで)で濃縮した。残った黄色濃縮物に4mLのエタノール96%を添加して結晶化を開始させた。20mgの純粋なバニリンによりシーディングを行った。溶液を冷却し、約35℃で結晶化が生じてバニリン結晶を形成した。スラリーを室温で16時間撹拌し、その後、4℃で4時間維持し、結晶を熟成させた。
バニリン結晶をブフナー漏斗でろ取し、予め冷却した脱塩水(100mL)で洗浄し、真空下(10mbar、50℃)で16時間乾燥させた。HPLCによる99.44%w/wの純度およびGCによる99.28%w/wの純度を有する淡黄色の結晶性バニリンを得た。
【0096】
実施例7
強酸性陽イオン交換樹脂を使用しない、下流プロセスB
バニリングルコシド生成酵母株により製造された、バニリングルコシドを含むpH4.96の17.7Lの発酵ブロスを以下の実験に用いた。ブロスをUF 1kDa Alfa Laval ETNA01PP膜を有するAlfa Laval TestUnit M20により限外ろ過し、次いで、透析ろ過し、Alfa Laval RO98pHt膜による逆浸透により4.90Lまで濃縮した。
バニリングルコシド1g当たり、Biocatalysts Beta Glucosidase G016L(β-グルコシダーゼ活性:10u/g、生物学的起源:Trichoderma longibrachiatum、酵素濃度:約6.3%)からの0.27gのβ-グルコシダーゼ溶液を4900mLの濃縮バニリングルコシド溶液(pH5.23)に添加し、溶液を50℃で120時間撹拌した。形成したスラリーをろ過助剤としてのDal-Cin Filtex 7(25g)の存在下で加圧フィルターによりろ過した。
800mLの透明ろ液を供給物として用い、ろ過助剤のケークを洗浄するために用いられる200mLの水を、供給および以下の工程における非イオン性樹脂の洗浄のためにも用いた。非イオン性樹脂Purolite Purosorb PAD400で充填した200mLのカラムを水で洗浄した。供給物を下降流方向にカラムにポンプで送り(ろ液、800mL)、その後、4BV/hの流量で洗浄供給物をポンプ送液した(200mL、ろ過助剤を洗浄するために調製)。200mL(1BV)の画分を収集し、溶離水が淡黄色の色合いを有するまで、樹脂を更に7BVの水で洗浄して色および不純物を除去した。その後、80%v/v水性エタノールによる溶離によってバニリンを樹脂から放出させた。
非イオン性樹脂Purolite Purosorb PAD400からの脱着物を、5%酢酸で予め処理し、脱塩水で洗浄し、水中80%v/vエタノールで予め調整した、弱塩基性陰イオン交換樹脂DuPont Amberlite FPA53(BV=200mL)に供給した。画分を、4BV/hの流量にて下降流方向に次々にポンプで送り、前の工程の最初の画分から開始して最後のもので終了した。その後、水中80%v/vエタノールを、4BV/hの流量にて上昇流方向で樹脂カラムにポンプ送液した。合計で200mLの9画分を収集した。
弱塩基性陰イオン交換樹脂からの最初の5画分を炭素処理のために混ぜ合わせた。粒状活性炭Chemviron Acticarbone BGE(比 0.58kg BGE/kg VAN)を50mLのカラムに投入し、混ぜ合わせた画分の赤色溶液を、20時間、8BV/hの流量にて下降流方向に炭素カラムに再循環させた。溶液の色が赤色からオレンジ色に変化した。炭素カラムを5BVの水中80%v/vエタノール(5×50mL)で洗浄した。
炭素処理後の主要な画分を炭素洗浄5画分と共にプールし、合わせた溶液を0.48μmのPTFEフィルターでろ過して残った炭素粒子を除去した。フィルターを35mLの水中80%v/vエタノールで洗浄し、pH5.42および52μS/cmの伝導率を有する合計で1285mLの溶液の体積を得た。
前の工程で得られた1285mLの溶液を、55℃の水浴中でロータリーエバポレーターにより真空下(220mbarから80mbarまで)で濃縮した。残った黄色濃縮物に4mLの水中エタノール96%v/vを添加してバニリンの結晶化を開始させた。20mgの純粋なバニリンを添加することによりシーディングを行った。溶液を冷却し、約35℃で結晶化が生じてバニリン結晶を形成した。スラリーを室温で16時間撹拌し、その後、4℃で4時間維持し、結晶を熟成させた。バニリン結晶をブフナー漏斗でろ取し、予め冷却した脱塩水(100mL)で洗浄し、真空オーブン(10mbar、50℃)で16時間乾燥させた。HPLCによる98.54%w/wの純度およびGCによる98.12%w/wの純度を有する淡黄色の結晶性バニリンを得た。
本実施例7の精製プロセスにより得られた、即ち強酸性陽イオン交換樹脂処理を含まないバニリンの風味は、強酸性陽イオン交換樹脂による工程を含む実施例6で得られたバニリンと比較して、異臭が強く、強くクリーミーであった。実施例6で得られたバニリンの風味は、わずかにクリーミーな雰囲気のあるより強烈なバニラであった。望ましい風味はより強烈なバニラであり、従って、実施例6で得られたバニリンの風味が好ましい。
【0097】
実施例8
溶媒として2-プロパノールを用いることによる、下流プロセスB
バニリングルコシド生成酵母株により製造された、バニリングルコシドを含むpH4.96の17.7Lの発酵ブロスを以下の実験に用いた。ブロスをUF 1kDa Alfa Laval ETNA01PP膜を有するAlfa Laval TestUnit M20により限外ろ過し、次いで、透析ろ過し、Alfa Laval RO98pHt膜による逆浸透により4.90Lまで濃縮した。
バニリングルコシド1g当たり、Biocatalysts Beta Glucosidase G016L(β-グルコシダーゼ活性:10u/g、生物学的起源:Trichoderma longibrachiatum、酵素濃度:約6.3%)からの0.27gのβ-グルコシダーゼ溶液を4900mLの濃縮バニリングルコシド溶液(pH5.23)に添加し、溶液を50℃で120時間撹拌した。得られたスラリーをろ過助剤としてのDal-Cin Alfatex 101によりろ過し、その後、エタノールで希釈して20%エタノールv/vの最終濃度とした。
650mLのろ過されたバニリン溶液を、500mLの非イオン性樹脂Purolite Purosorb PAD 400で充填した実験室スケールのカラムに4BV/hの流量で上昇流方向にポンプ送液した。その後、樹脂を脱塩水で洗浄した。
樹脂カラムに4BV/hの流量で下降流方向に水性80%v/v2-プロパノールをポンプで送ることにより、バニリンを樹脂から放出させ、500mLの6画分を収集した。
非イオン性樹脂Purolite Purosorb PAD 400から収集された最初の3放出画分を、200mLの強酸性陽イオン交換樹脂Purolite C150SH(HSO 5%で活性化、脱塩水で洗浄、および水中80%v/v2-プロパノールで予め調整)で充填したカラムに4BV/hの流量で上昇流方向にポンプ送液した。その後、樹脂を水性2-プロパノール80%v/vで洗浄した。10画分を収集および分析した。
【0098】
【表9】
【0099】
前の工程で強酸性陽イオン交換樹脂から収集された最初の8画分を、酢酸5%で予め処理し、脱塩水で洗浄し、水中80%v/v2-プロパノールで予め調整した、200mLの弱塩基性陰イオン交換樹脂Purolite A845Sで充填したカラムに4BV/hの流量で下降流方向にポンプ送液した。その後、樹脂を水性2-プロパノール80%v/vで洗浄した。10画分を収集および分析した。
【0100】
【表10】
【0101】
前の工程で弱塩基性陰イオン交換樹脂から収集された10画分を合わせ、得られた暗赤色溶液を、室温で3日間、8BV/hの流量で再循環ループにおいて50mLの化学的粒状活性炭Chemviron Acticarbone BGE(比 0.59kg BGE/kg VAN)で充填したカラムに下降流方向にポンプ送液した。炭素処理後の溶液はオレンジ色であった。炭素を5BVの水中80%v/v2-プロパノールで洗浄した。それぞれの溶液の試料をろ過し、分析した。脱色された主要バニリン溶液および洗浄画分を混ぜ合わせ、0.45μmのNylonフィルターでろ過した。
ろ過および脱色された溶液を、118mLまで55℃の水浴中でロータリーエバポレーターにより真空下で濃縮し、次いで、連続的に撹拌しながら室温まで冷却した。4mLのエタノール100%を濃縮物に添加して濃縮中に溶液中に形成された褐色油を可溶化し、29.21mgのバニリン(純度99%)を添加することによりシーディングを行った。溶液を一晩4℃に維持した。形成した固体を真空ろ過により母液から分離し、100mLの予め冷却した脱塩水で洗浄し、3時間、真空下、45℃で乾燥させた。HPLCによる97.77%w/wの純度およびGCによる99.70%w/wの純度を有する暗黄色バニリンを得た。
【0102】
実施例9
強酸性陽イオン交換樹脂による処理の前に弱塩基性陰イオン交換樹脂の処理が存在する、下流プロセスB
バニリングルコシドを含む発酵ブロスをUF 10kDa Alfa Laval ETNA10PP膜により限外ろ過および透析ろ過し、次いで、Alfa Laval RO99膜による逆浸透により濃縮した。得られた濃縮物におけるバニリングルコシドを、Biocatalysts Beta Glucosidase G016L(β-グルコシダーゼ活性:10u/g、生物学的起源:Trichoderma longibrachiatum、酵素濃度:約6.3%)からのβ-グルコシダーゼ溶液により、55℃で30時間、バニリングルコシドのkg当たり0.45kgの酵素溶液を適用して、加水分解した。得られた懸濁液をろ過助剤Dal-Cin Cellulose M09の存在下、フィルタープレスでろ過して、5.04のpHを有する透明褐色バニリン含有ろ液を得た。1Lのこのろ過したバニリン溶液を、500mLの非イオン性樹脂Purolite Purosorb PAD 400で充填したカラムに4BV/hの流量で下降流方向にポンプ送液した。その後、樹脂を3BVの脱塩水で洗浄し、樹脂カラムに4BV/hの流量で上昇流方向に水性80%v/vエタノールをポンプで送ることによりバニリンを樹脂から放出させた。4BVを収集し、混ぜ合わせた。
前の工程で得られた1Lの脱着物を、酢酸5%で前処理し、脱塩水で洗浄し、水中80%v/vエタノールで予め調整した、200mLの弱塩基性陰イオン交換樹脂Purolite A845Sで充填したカラムに4BV/hの流量で下降流方向にポンプ送液した。その後、樹脂を水性エタノール80%v/vで洗浄した。7画分を収集および分析した。
【0103】
【表11】
【0104】
前の工程で得られた7画分を、200mLの強酸性陽イオン交換樹脂Purolite C150SH(HSO 5%で活性化、水で洗浄、および水中80%v/vエタノールで予め調整)で充填したカラムに4BV/hの流量で下降流方向にポンプ送液した。その後、樹脂を水性エタノール80%v/vで洗浄した。7画分を収集および分析した。
【0105】
【表12】
【0106】
強酸性陽イオン交換樹脂から収集された7画分を混ぜ合わせ、得られた暗赤色溶液を、室温で一晩、8BV/hの流量でChemviron Acticarbone BGE(比 0.48kg BGE/kg VAN)からの化学的粒状活性炭で充填したカラムに下降流方向に再循環させた。炭素処理の終わりに溶液は黄色であった。次いで、炭素を4BVの80%エタノールで洗浄した。脱色されたバニリン溶液および洗浄画分を混ぜ合わせ、0.45μmのNylonフィルターでろ過し、分析した。
前の工程で得られたろ過および脱色された溶液を、135mLまで55℃の水浴中でロータリーエバポレーターにより真空下で濃縮し、連続的に撹拌しながら室温まで冷却した。4mLのエタノール99.9%をこの溶液に添加して濃縮中に溶液中に形成された褐色油を可溶化した。その後、35mgの98%以上の純度のバニリンを添加することによりシーディングを行った。得られたスラリーを一晩室温で撹拌し、その後、固体を真空ろ過により母液から分離し、100mLの予め冷却した脱塩水で洗浄し、一晩、真空下、50℃で乾燥させた。GCによる99.60%w/wの純度を有する黄色バニリンを得た。
【0107】
実施例10
弱塩基性陰イオン交換樹脂を使用せず、活性炭処理を含まない、下流プロセスB
バニリングルコシドを含む発酵ブロスをUF 10kDa Alfa Laval ETNA10PP膜により限外ろ過および透析ろ過し、次いで、Alfa Laval RO99膜による逆浸透により濃縮した。得られた濃縮物におけるバニリングルコシドを、Biocatalysts Beta Glucosidase G016L(β-グルコシダーゼ活性:10u/g、生物学的起源:Trichoderma longibrachiatum、酵素濃度:約6.3%)からのβ-グルコシダーゼ溶液により、55℃で30時間、バニリングルコシドのkg当たり0.45kgの酵素溶液を適用して、加水分解した。得られた懸濁液をろ過助剤Dal-Cin Cellulose M09の存在下、フィルタープレスでろ過して、5.04のpHを有する透明褐色バニリン含有ろ液を得た。1Lのこのろ過したバニリン溶液を、500mLの非イオン性樹脂Purolite Purosorb PAD 400で充填したカラムに4BV/hの流量で下降流方向にポンプ送液した。その後、樹脂を3BVの脱塩水で洗浄した。樹脂カラムに4BV/hの流量で上昇流方向に水性80%v/vエタノールをポンプで送ることによりバニリンを樹脂から放出させた。4BVを収集および分析した。
非イオン性樹脂Purolite Purosorb PAD 400への/からの吸着および放出の後に前の工程で得られた700mLの脱着物を、4BV/hの流量で、200mLの強酸性陽イオン交換樹脂Purolite C150SH(HSO 5%で活性化)で満たし、水で洗浄し、水中80%v/vエタノールで予め調整したカラムに下降流方向にポンプ送液した。その後、樹脂を水性エタノール80%v/vで洗浄した。5画分を収集および分析した。
【0108】
【表13】
【0109】
前の工程で強酸性陽イオン交換樹脂から収集された5画分を混ぜ合わせた。得られた溶液を55℃の水浴中でロータリーエバポレーターにより真空下で濃縮し、連続的に撹拌しながら室温まで冷却した。4mLのエタノール99.9%をこの溶液に添加して濃縮中に溶液中に形成された褐色油を可溶化し、その後、35.84mgの98%以上の純度のバニリンを添加することによりシーディングを行った。得られたスラリーを一晩室温で撹拌し、その後、固体を真空ろ過により母液から分離し、100mLの予め冷却した脱塩水で洗浄し、一晩、真空下、50℃で乾燥させた。GCによる94.10%w/wの純度を有する褐色バニリンを得た。
【0110】
実施例11
活性炭処理を含まない、下流プロセスB
バニリングルコシドを含む発酵ブロスをUF 10kDa Alfa Laval ETNA10PP膜により限外ろ過および透析ろ過し、次いで、Alfa Laval RO99膜による逆浸透により濃縮した。得られた濃縮物におけるバニリングルコシドを、Biocatalysts Beta Glucosidase G016L(β-グルコシダーゼ活性:10u/g、生物学的起源:Trichoderma longibrachiatum、酵素濃度:約6.3%)からのβ-グルコシダーゼ溶液により、55℃で30時間、バニリングルコシドのkg当たり0.45kgの酵素溶液を適用して、加水分解した。得られた懸濁液をろ過助剤Dal-Cin Cellulose M09の存在下、フィルタープレスでろ過して、5.04のpHを有する透明褐色バニリン含有ろ液を得た。1Lのこのろ過したバニリン溶液を、500mLの非イオン性樹脂Purolite Purosorb PAD 400で充填したカラムに4BV/hの流量で下降流方向にポンプ送液した。その後、樹脂を3BVの脱塩水で洗浄し、樹脂カラムに4BV/hの流量で上昇流方向に水性80%v/vエタノールをポンプで送ることによりバニリンを樹脂から放出させた。4BVを収集および分析した。
前の工程で得られた1Lの脱着物を、2つの200mLの樹脂カラムに順次4BV/hの流量で下降流方向にポンプ送液した:強酸性陽イオン交換樹脂Purolite C150SH(HSO 5%で活性化)で充填した第1のカラム、およびその後の弱塩基性陰イオン交換樹脂Purolite A845S(酢酸5%で前処理)で充填したカラム。その後、カラムを水性エタノール80%v/vで洗浄した。7BVの単一の画分を収集および分析した。
【0111】
【表14】
【0112】
前の工程で得られた溶液を、115mLまで55℃の水浴中でロータリーエバポレーターにより真空下で濃縮し、連続的に撹拌しながら室温まで冷却した。4mLのエタノール99.9%を溶液に添加して濃縮中に形成された褐色油を可溶化し、溶液を一晩室温で撹拌した。その後、形成した固体を真空ろ過により母液から分離し、100mLの予め冷却した脱塩水で洗浄し、一晩、真空下、50℃で乾燥させた。GCによる97.10%w/wの純度を有する黄色バニリンを得た。
【0113】
実施例12
弱塩基性陰イオン交換樹脂を使用しない、下流プロセスB
バニリングルコシドを含む発酵ブロスをUF 10kDa Alfa Laval ETNA10PP膜により限外ろ過および透析ろ過し、次いで、Alfa Laval RO99膜による逆浸透により濃縮した。得られた濃縮物におけるバニリングルコシドを、Biocatalysts Beta Glucosidase G016L(β-グルコシダーゼ活性:10u/g、生物学的起源:Trichoderma longibrachiatum、酵素濃度:約6.3%)からのβ-グルコシダーゼ溶液により、55℃で30時間、バニリングルコシドのkg当たり0.45kgの酵素溶液を適用して、加水分解した。得られた懸濁液をろ過助剤Dal-Cin Cellulose M09の存在下、フィルタープレスでろ過して、5.04のpHを有する透明褐色バニリン含有ろ液を得た。1Lのこのろ過したバニリン溶液を、500mLの非イオン性樹脂Purolite Purosorb PAD 400で充填したカラムに4BV/hの流量で下降流方向にポンプ送液した。その後、樹脂を3BVの脱塩水で洗浄し、樹脂カラムに4BV/hの流量で上昇流方向に水性80%v/vエタノールをポンプで送ることによりバニリンを樹脂から放出させた。4BVを収集および分析した。
非イオン性樹脂Purolite Purosorb PAD 400への/からの吸着および放出の後に得られた700mLの脱着物を、200mLの強酸性陽イオン交換樹脂Purolite C150SH(HSO 5%で活性化)で満たし、水で洗浄し、水中80%v/vエタノールで予め調整したカラムに4BV/hの流量で下降流方向にポンプ送液した。その後、樹脂カラムを水性エタノール80%v/vで洗浄した。1Lの1画分を収集および分析した。
【0114】
【表15】
【0115】
強酸性陽イオン交換樹脂の後に収集された画分を、室温で一晩、8BV/hの流量で粒状活性炭Chemviron Acticarbone BGE(比 0.53kg BGE/kg VAN)で充填したカラムに下降流方向で再循環させた。炭素処理後に溶液はオレンジ色であった。炭素を4BVの水中80%v/vエタノールで洗浄し、主要溶液を洗浄画分と合わせて0.45μmのNylonフィルターでろ過した。
透明ろ液を、240mLまで55℃の水浴中でロータリーエバポレーターにより真空下で濃縮し、連続的に撹拌しながら室温まで冷却した。4mLのエタノール99.9%をこの溶液に添加して濃縮中に溶液中に形成された褐色油を可溶化し、得られた溶液を一晩室温で撹拌してスラリーを形成した。固体を真空ろ過により母液から分離し、100mLの予め冷却した脱塩水で洗浄し、一晩、真空下、50℃で乾燥させた。GCによる95.90%w/wの純度を有する黄色バニリンを得た。
【0116】
実施例13
下流プロセスC
C型の完全な下流プロセスを分析するために、バニリングルコシド生成酵母株により製造された、バニリングルコシドを含む11.56Lの発酵ブロスを用いた。バニリングルコシド1g当たり、Biocatalysts Beta Glucosidase G016L(β-グルコシダーゼ活性:10u/g、生物学的起源:Trichoderma longibrachiatum、酵素濃度:約6.3%)からの0.57gのβ-グルコシダーゼ溶液を発酵ブロスに添加し、55℃で48時間撹拌した。
pH5.03のブロスをUF 10kDa ETNA10PP膜を有するAlfa Laval TestUnit M20で限外ろ過および透析ろ過した。2.5Lの透過物を、4BV/hの流量にて上昇流方向で非イオン性樹脂Purolite Purosorb PAD 400(500mL)にポンプ送液した。樹脂カラムを3BVの脱塩水で洗浄し、樹脂カラムに2.5BVの水中80%v/vエタノール、その後に約600mLの水をポンプで送ることによりバニリンを脱着させた。500mLの4脱着画分を収集した。
2つのカラムを順次接続した:200mLの強酸性陽イオン交換樹脂Purolite C150SH H型で充填したカラム、およびその後の200mLの弱塩基性陰イオン交換樹脂DuPont Amberlite FPA53(酢酸5%で前処理)で充填したカラム。前の工程からの脱着物の4画分を混ぜ合わせ、強酸性陽イオン交換樹脂から開始して2つのカラムに順次、上昇流方向にポンプ送液した。4画分を収集および分析した。
【0117】
【表16】
【0118】
4画分全てを合わせて溶液を得たが、この溶液は、16時間、粒状活性炭Chemviron Acticarbone BGE(比 0.50kg BGE/kg VAN)で充填したカラムに4BV/hの流量で下降流方向にポンプ送液した。炭素処理により、溶液の色が黄褐色から黄色に変化した。その後、炭素を3BVの水中80%エタノールで洗浄し、炭素で処理された主要溶液を洗浄画分と混ぜ合わせ、その後、0.48μmのPTFEフィルターでろ過を行った。
透明ろ液(pH4.50)を1Lの反応器中で真空下(300~150mbar)、60℃で濃縮して280mLの二相性エマルション(油状褐色バニリンと水)を得た。エマルションは20℃まで冷却することによりすぐにスラリーに変化し、16時間撹拌し、その後、更に10~15℃まで冷却し、その後、真空ろ過により母液から固体を分離した。湿った固体を200mLの予め冷却した脱塩水で洗浄し、48時間、真空下(10mbar)、45℃で乾燥させた。GCによる99.0%w/wの純度を有する黄色バニリンを得た。
【0119】
本明細書の上記に記載された実施例1~4および6~13のプロセスのバニリン収率全体は40~90%の範囲内であった。
【国際調査報告】