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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-21
(54)【発明の名称】粒子分析
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/0205 20240101AFI20250214BHJP
   G01N 15/0227 20240101ALI20250214BHJP
【FI】
G01N15/0205
G01N15/0227 110
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546440
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(85)【翻訳文提出日】2024-10-02
(86)【国際出願番号】 IB2022051023
(87)【国際公開番号】W WO2023148528
(87)【国際公開日】2023-08-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518101646
【氏名又は名称】マルバーン パナリティカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】エルサイエド,ヤフヤ
(72)【発明者】
【氏名】ロジャーズ,イアン
(72)【発明者】
【氏名】シャドボルト,マーク
(57)【要約】
粒子特性評価装置(100、200)が開示される。粒子特性評価装置(100、200)は、希釈液に懸濁した粒子を含むサンプル(104、204)を保持するためのサンプルセル(106、206)と、サンプル(104、204)を光ビーム(108、208)で照射することによって、光ビーム(108、208)と粒子との相互作用から散乱光を生成するように構成された光源(101、201)と、散乱光を検出し、希釈液中の粒子の拡散係数を表す散乱データを出力するように構成された光検出器(103、203)と、散乱データから粒子の特性を判定するように構成されたプロセッサ(105、205)と、サンプルセル(106、206)の壁(116、216)と熱伝導接触し、サンプル(104、204)から5mm未満の距離にある温度センサ(107、207)と、を含む。プロセッサ(105、205)は、温度センサ(107、207)の出力を用いて粒子の特性を判定するように構成されており、プロセッサ(105、205)によって判定された粒子の特性は、温度センサ(107、207)からの出力に応答する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子特性評価装置であって、
希釈液に懸濁した粒子を含むサンプルを保持するためのサンプルセルと、
前記サンプルを光ビームで照射することによって、前記光ビームと前記粒子との相互作用から散乱光を生成するように構成された光源と、
前記散乱光を検出し、前記希釈液中の前記粒子の拡散係数を表す散乱データを出力するように構成された光検出器と、
前記散乱データから前記粒子の特性を判定するように構成されたプロセッサと、
前記サンプルセルの壁と熱伝導接触し、前記サンプルから5mm未満の距離にある温度センサと、
を含み、
前記プロセッサは、前記温度センサの出力を用いて前記粒子の特性を判定するように構成されており、前記プロセッサによって判定された前記粒子の特性は、前記温度センサからの出力に応答する、
粒子特性評価装置。
【請求項2】
前記サンプルセルは、前記サンプルセルの壁を規定する光学部品を含み、前記温度センサは、前記光学部品に規定された凹部または貫通穴内に配置される、
請求項1に記載の粒子特性評価装置。
【請求項3】
前記凹部または前記貫通穴内に配置され、前記温度センサおよび前記光学部品と接触する熱伝導性ポッティングコンパウンドをさらに含む、
請求項2に記載の粒子特性評価装置。
【請求項4】
前記光学部品は、前記光ビームを前記サンプル内に屈折させるように構成された光学プリズムを含む、
請求項2または3に記載の粒子特性評価装置。
【請求項5】
前記壁は、前記サンプルと接触する内面を含み、
(ii)前記光学プリズムは、前記光ビームが前記プリズムに入射する第1表面と、前記サンプルと接触する第2表面とを含み、前記第1表面は、前記第2表面に対して10度と80度との間の角度にあり、
および/または、
(i)前記光学プリズムは、前記サンプル内の前記光ビームが前記第2表面に対して10度未満の角度になるように、前記光ビームを前記サンプル内に屈折させるように構成可能である、
請求項4に記載の粒子特性評価装置。
【請求項6】
前記光検出器は、検出光路に沿って散乱光を受光するように構成されており、散乱領域が前記検出光路と前記照射光ビームとの交差点によって規定され、前記温度センサは、前記散乱領域から20mm未満の距離にあり、選択的に前記散乱領域から少なくとも5mmの距離にある、
請求項1~5のいずれか1項に記載の粒子特性評価装置。
【請求項7】
前記光検出器は、検出光路に沿って散乱光を受光するように構成されており、前記温度センサは、前記検出光路から少なくとも5mmのオフセットで配置される、
請求項1~6のいずれか1項に記載の粒子特性評価装置。
【請求項8】
前記サンプルセルの前記壁は、ケイ酸ガラスを含むか、またはケイ酸ガラスから構成されている、
請求項1~7のいずれか1項に記載の粒子特性評価装置。
【請求項9】
前記サンプルセルの前記壁は、波長500nmで少なくとも1.5の屈折率nを有する透明材料で構成されている、
請求項1~8のいずれか1項に記載の粒子特性評価装置。
【請求項10】
ナノ粒子追跡分析(nanoparticle tracking analysis、NTA)または動的光散乱法(dynamic light scattering、DLS)を実行するように構成されている、
請求項1~9のいずれか1項に記載の粒子特性評価装置。
【請求項11】
前記サンプルセルから少なくとも10mm離れ、前記サンプルセルの領域内の周囲温度を測定するように構成された周囲温度センサをさらに含む、
請求項1~10のいずれか1項に記載の粒子特性評価装置。
【請求項12】
(i)前記プロセッサは、空気温度を受信し、前記温度センサの出力と前記周囲温度との両方に応じてサンプル温度を判定するように構成されており、
および/または、
(ii)前記装置は、前記サンプルの温度を制御するように動作可能な温度調節器を含み、前記装置は周囲温度補正モードで動作可能であり、前記周囲温度補正モードでは、前記温度調節器は、前記サンプルの温度を前記周囲温度センサによって測定された温度に一致させるように用いられる、
請求項11に記載の粒子特性評価装置。
【請求項13】
表面を有する光学部品と、
前記表面と伝導的に結合し、前記表面から5mm以内に配置された温度センサと、
を含む、
装置。
【請求項14】
希釈液に懸濁した粒子を含むサンプルを光ビームで照射し、前記光ビームと前記粒子との相互作用によって散乱光を生成することと、
光検出器によって前記散乱光を検出し、前記希釈液中の前記粒子の拡散係数を表す散乱データを生成することと、
前記散乱データから前記粒子の特性を判定するように前記散乱データを処理することと、
前記サンプルを含むサンプルセルの壁と熱伝導接触する温度センサを用いて前記サンプルの温度を測定し、前記温度センサが前記サンプルから5mm未満の距離にあることと、
を含み、
前記散乱データを処理することは、前記温度センサの出力を用いて前記粒子の特性を判定し、判定された前記粒子の特性は、前記温度センサからの出力に応答する、
粒子特性評価方法。
【請求項15】
(i)周囲空気温度の測定値を受信し、前記温度センサの出力と前記周囲温度との両方に応じてサンプル温度を判定すること、
および/または、
(ii)前記サンプルの温度を周囲空気温度に一致させるように動作可能な温度調節器を用いること、
をさらに含む、
請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学粒子分析の方法、および、光学粒子分析のための機器に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ナノ粒子追跡分析(nanoparticle tracking analysis、NTA)を実行するための機器および方法に関し、より一般的には、粒子温度に敏感な光学粒子分析の任意の方法に関連する。
【0003】
ナノ粒子追跡分析は、液体中のナノ粒子を直接的にかつリアルタイムで視覚化および分析するための、比較的最近開発された方法である(例えば、国際公開第WO2003/093801号を参照)。NTAは、分散液中に懸濁した粒子を照射する光源(例えば、レーザ)と、粒子から散乱した光を検出するために光学検出器を使用する。粒子が小さすぎて直接画像化できない場合でも、散乱光を検出するように配置されたカメラなどによって、粒子から散乱した光を容易に検出できる。
【0004】
各粒子からの散乱を追跡し、ナノ粒子のブラウン運動を解析することができる。粒子サイズは、その動きから推測できる。粒子からの散乱の明るさによって、粒子の不均一な混合物が分離可能になる。NTAは、粒子濃度の推定や粒度分布の推定にも使用可能である。NTAによって取得された粒度分布プロファイル(particle size distribution profile)は、直に数の分布/周波数の分布である。
【0005】
NTAはすでに当業者に認められた技術用語である。NTAを使用して収集されたデータを参照する科学論文やプレゼンテーションの数が900を超えた。また、この用語は、例えば、米国試験材料協会(American Society for Testing and Materials International、ASTMインターナショナル)、米国環境保護庁(Environmental Protection Agency、EPA)、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration、FDA)、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health、NIH)によって使用されている。
【0006】
NTAによる個別のナノ粒子のサイズ分けは、適切な光源(例えば、レーザ)によって照射されるときに、液体中に懸濁したミクロン粒子およびサブミクロン粒子が示すブラウン運動への分析に基づくものである。これらの粒子によって散乱される光は、顕微鏡配置(microscopical arrangement)によって検出され、当該顕微鏡配置によって、光の一部が、ビデオカメラで画像化される粒子で散乱される。
【0007】
既知の時間間隔(例えば、通常は1秒あたり30フレームというカメラのフレームレートの逆数)で任意の粒子が移動する平均距離は、ストークス・アインシュタインの関係式(Stokes-Einstein equation)に沿って粒子サイズに関連する。この関係式では、周囲の液体の温度と粘度が既知数である。ストークス・アインシュタインの関係式は以下の通りである。
【0008】
【数1】
【0009】
ここで、Dは分散剤中の粒子の拡散係数であり、kはボルツマン定数であり、Tは絶対温度であり、ηは分散剤の動粘度であり、rは粒子の流体力学的半径である。
【0010】
ナノ追跡分析では、ストークス・アインシュタインの関係式を次のように書き直すことができる。
【0011】
【数2】
【0012】
ここで、〈x,y〉は連続するフレーム間の平均二乗変位であり、tはフレーム時間である。
【0013】
ブラウン運動は粒子の質量、粒子密度、および粒子の光学特性に実質的に依存しないため、NTA(関連技術の動的光散乱法(dynamic light scattering、DLS)と同様に)は絶対的な手法であり、これらの粒子特性に依存しないという利点があり、使用時にキャリブレーションを必要としないという利点がある。懸濁液内で粒子を個別に(かつ同時に)調べるため、高解像度の粒度分布プロファイルを生成することができる。
【0014】
動的光散乱法(DLS)は、光子相関法(photon correlation spectroscopy、PCS)とも呼ばれ、ブラウン粒子の動きを検出して粒子の特性を判定するもう1つの技術である。DLSにおいて、光源は、希釈液中に懸濁した粒子を含むサンプルを照射するように使用される。粒子によって散乱された光が検出される。散乱光の強度は、照射された粒子のブラウン運動により、時間とともに変化する。自己相関関数は、散乱強度の時間履歴から判定可能である。散乱ベクトル(通常はqで表される)が分かれば、自己相関関数から拡散係数Dが判定可能である。例えば、単分散ナノ粒子(monodisperse nanoparticles)の希薄溶液の場合、正規化された自己相関関数g(1)(t)は、以下の数式に従って散乱ベクトルqおよび拡散係数に関連することが示されている。
【0015】
【数3】
【0016】
拡散係数は、ストークス・アインシュタインの関係式を介して粒子サイズに関連付けることができる。
【0017】
ストークス・アインシュタインの関係式を介して粒子の特性を決定するためにブラウン粒子運動の特性評価に依存する技術は、温度に敏感である。一般的には、NTAおよびDLSの装置は温度制御システムを含み、温度制御システムは、温度が粒子の特性評価に誤差をもたらさないように、サンプルが特定かつ既知の温度を有することを確保する。
【0018】
温度制御の精度向上の技術がかなり進んでいるが、まだ改善の余地がある。粒子の特性評価において温度関連の誤差を最小限に抑えることが望ましい。
【発明の概要】
【0019】
第1の態様に基づいて、粒子特性評価装置が提供される。
当該粒子特性評価装置は、
希釈液に懸濁した粒子を含むサンプルを保持するためのサンプルセルと、
サンプルを光ビームで照射することによって、光ビームと粒子との相互作用から散乱光を生成するように構成された光源と、
散乱光を検出し、散乱データを出力するように構成された光検出器と、
散乱データから粒子の特性を判定するように構成されたプロセッサと、
サンプルセルの壁と熱伝導接触し、サンプルから5mm未満の距離にある温度センサと、
を含み、
プロセッサは、温度センサの出力を用いて粒子の特性を判定するように構成されており、プロセッサによって判定された粒子の特性は、温度センサからの出力に応答する。
【0020】
温度センサは、サンプルから3mm未満の距離に配置され得る。
【0021】
散乱データは、希釈液中の粒子の拡散係数を表してもよい。散乱データは、散乱強度の時間履歴、または、個別の粒子が追跡可能な一連の画像を含んでもよい。
【0022】
サンプルセルは、サンプルセルの壁を規定する光学部品を含み、温度センサは、光学部品に規定された凹部または貫通穴内に配置される。
【0023】
粒子特性評価装置は、凹部または貫通穴内に配置されて温度センサおよび光学部品と接触する熱伝導性ポッティングコンパウンドをさらに含んでもよい。
【0024】
当該穴は、超音波ドリル加工(ultrasonic drilling)によって形成され得る。
【0025】
光学部品は、金属コーティング領域を含む表面を含んでもよい。金属コーティング領域は、散乱光を反射するように構成され得る。表面は、非コーティング領域を含んでもよい。光ビームは、非コーティング領域を通って光学部品から出射してサンプルに入射するように構成され得る。光ビームが非コーティング領域を通って光学部品から出射する出射位置は、金属コーティング領域から5mm以内であってもよい。
【0026】
光学部品は、光ビームが表面に対して10度以下、または5度以下の角度(例えば、表面に平行する角度)になるように、光ビームを屈折させるように構成され得る。
【0027】
光学部品は、光ビームをサンプル内に屈折させるように構成された光学プリズムを含む。
【0028】
光学プリズムは、光ビームがプリズムに入射する第1表面(角度のある表面)を含んでもよい。壁は、サンプルと接触する第2表面(内面)を含んでもよい。光学プリズムは、サンプルにおいて光ビームが第2表面(内面)に対して20度未満の角度になるように、光ビームをサンプルに屈折させるように構成され得る。第1表面は、内側表面に対して10度と80度との間の角度(または50度と70度との間の角度)にあってもよい。
【0029】
第2表面(内面)は、前述した表面(すなわち、非コーティング領域や金属コーティング領域などを含む表面)であってもよい。
【0030】
光検出器は、検出光路に沿って散乱光を受光するように構成されている。光検出器は、任意の適切なレンズおよび検出器の配置を含んでもよい。光検出器は、表面の平面(例えば、第2表面(内面)、および/または、表面の金属コーティング領域)に対して、垂直または高角度でファーフィールド(far field、遠方場とも呼ばれる)に配置され得る。
【0031】
散乱領域は検出光路と照射光ビームとの交差点によって規定される。温度センサは散乱領域から20mm未満の距離にあってもよい。温度センサは散乱領域から15mm未満の距離にあってもよい。温度センサは散乱領域から少なくとも5mm(または少なくとも10mm)の距離にあってもよい。温度センサは検出光路から少なくとも5mm(または少なくとも10mm)のオフセットに位置してもよい。
【0032】
サンプルセルの壁は透明であってもよい。
【0033】
サンプルセルの壁は、ケイ酸ガラス(例えば、BK7もしくは他のホウケイ酸クラウンガラス(borosilicate crown glass))を含んでもよく、または、ケイ酸ガラスから構成され得る。
【0034】
サンプルセルの壁は、波長500nmで少なくとも1.5の屈折率nを有する材料で構成され得る。
【0035】
粒子特性評価装置は、ナノ粒子追跡分析(nanoparticle tracking analysis、NTA)または動的光散乱法(dynamic light scattering、DLS)を実行するように構成され得る。
【0036】
粒子特性評価装置は周囲温度センサをさらに含んでもよく、周囲温度センサは、サンプルセルから少なくとも10mm離れ、サンプルセルの領域内の周囲温度を測定するように構成され得る。
【0037】
プロセッサは、空気温度を受信し、温度センサの出力と周囲温度との両方に応じてサンプル温度を判定するように構成され得る。
【0038】
装置は、サンプルの温度を制御するように動作可能な温度調節器を含んでもよい。装置は周囲温度補正モードで動作可能であり、周囲温度補正モードでは、温度調節器は、サンプルの温度を周囲温度センサによって測定された温度に一致させるように用いられる。
【0039】
第2の態様に基づいて、装置が提供される。
当該装置は、
表面を有する光学部品と、
表面と伝導的に結合し、表面から5mm以内に配置された温度センサと、
を含む。
【0040】
温度センサは、表面から3mm以内に配置され得る。
【0041】
光学部品は、粒子特性評価装置に使用可能である。
当該粒子特性評価装置は、
透明な光学部品を通る光ビームでサンプルを照射するように構成された光源であって、サンプルは、希釈液に懸濁した粒子を含み、透明な光学部品と接触する、光源と、
光ビームと粒子との相互作用を原因とする散乱光を検出し、希釈液中の粒子の拡散係数を表す散乱データを出力するように構成された光検出器と、
散乱データから粒子の特性を判定するように構成されたプロセッサと、
を含む。
【0042】
光学部品は、プリズムであってもよい。プリズムは第1表面を有してもよい。(温度センサが5mm以内に配置された)表面は第2表面であってもよい。
【0043】
第2表面は、金属コーティング領域を含んでもよい。金属コーティング領域は光学的に不透明であってもよい。表面は、非コーティング領域を含んでもよい。光ビームは、非コーティング領域を通って光学部品から出射してサンプルに入射するように構成され得る。光ビームが非コーティング領域を通って光学部品から出射する出射位置は、金属コーティング領域から5mm以内であってもよい。
【0044】
光学部品は、光ビームが表面に対して10度以下、または5度以下の角度(例えば、表面に平行する角度)になるように、光ビームを屈折させるように構成され得る。
【0045】
第2表面は、平坦で、サンプルセルの内面を形成するように構成され得る。
【0046】
光学部品は凹部または貫通穴をさらに含んでもよく、温度センサは凹部または貫通穴内に配置され得る。
【0047】
光学部品は、熱伝導性ポッティングコンパウンドをさらに含んでもよく、熱伝導性ポッティングコンパウンドは、第2表面から温度センサへの熱接触を改善するように凹部または貫通穴内に配置される。
【0048】
当該穴は、超音波ドリル加工によって形成され得る。
【0049】
光学部品は、第2表面から水に出射する光ビームが第2表面に対して10度以下の角度になるように、第1表面に対して垂直にプリズムに入射する光ビームを屈折させるように構成され得る。
【0050】
第2表面は、第1表面に対して10度と80度との間の角度(または50度と70度との間の角度)にあってもよい。
【0051】
光学部品は、ケイ酸ガラス(例えば、BK7もしくは他のホウケイ酸クラウンガラス)を含んでもよい。
【0052】
光学部品は、波長500nmで少なくとも1.5の屈折率nを有する材料で構成され得る。
【0053】
光学部品は、第1の態様に基づく装置におけるサンプルセルの壁として使用可能である。
【0054】
第3の態様に基づいて、粒子特性評価方法が提供される。
粒子特性評価方法は、
希釈液に懸濁した粒子を含むサンプルを光ビームで照射し、光ビームと粒子との相互作用によって散乱光を生成することと、
光検出器によって散乱光を検出し、散乱データを生成することと、
散乱データから粒子の特性を判定するように散乱データを処理することと、
サンプルを含むサンプルセルの壁と熱伝導接触する温度センサを用いてサンプルの温度を測定し、温度センサがサンプルから5mm未満の距離にあることと、
を含み、
散乱データを処理することは、温度センサの出力を用いて粒子の特性を判定し、判定された粒子の特性は、温度センサからの出力に応答する。
【0055】
方法は、周囲空気温度の測定値を受信し、温度センサの出力と周囲温度との両方に応じてサンプル温度を判定することをさらに含んでもよい。
【0056】
散乱データは、散乱光のビデオを含んでもよい。
【0057】
散乱データは、希釈液中の粒子の拡散係数を表してもよい。
【0058】
方法は、サンプルの温度を周囲空気温度に一致させるように動作可能な温度調節器を用いることをさらに含んでもよい。
【0059】
第4の態様に基づいて、サブミクロン粒子(sub-micron particulates)の光学検出および/または光学分析のための方法が提供される。
方法は、
(i)焦点の絞った光ビームで光学部品を照射することであって、光学部品の1つの表面の一部が膜にコーティングされており、当該膜が光学的に不透明な金属を含み、表面のもう一部がコーティングされていないによって、表面がコーティング部分および隣接の非コーティング部分を有し、焦点の絞った光ビームは、コーティング表面の非コーティング部分の位置で光学部品に入射し、入射位置が表面の金属膜のコーティング部分に隣接するか、または金属膜のコーティング部分から5mm以内にあってコーティング部分と一致しておらず、焦点の絞った光ビームは、光ビームの少なくとも一部が、金属膜の表面の上で、かつ、金属膜の表面と平行するかまたは5度未満の角度となるように伝播するように光学部品に入射することと、
(ii)金属膜の上を伝播する光ビームによって照射された領域に粒子が入るように、サブミクロンサイズの粒子または粒子の集団を含むサンプルを基板の表面に配置することと、
(iii)金属膜の平面に対して垂直または高角度でファーフィールドに配置された適切なレンズおよび検出器によって、粒子が光ビームと相互作用することで、個別に散乱される光放射、または、粒子から放射される光放射を検出することと、
を含む。
【0060】
光学部品は、温度センサをさらに含み、温度センサは、サンプルセルの壁と熱伝導接触し、サンプルから5mm未満の距離にある。
【0061】
第5の態様に基づいて、第4の態様の方法を実行するための機器が提供される。
当該機器は、基板と、照射手段と、検出器とを含む。基板の1つの表面の一部は、光学的に不透明な金属を含む膜にコーティングされており、表面のもう一部はコーティングされていない。これにより、表面がコーティング部分および隣接の非コーティング部分を有する。照射手段は焦点の絞った光ビームで当該表面を照射する。照射手段は光照射の光源を含む。光ビームは、コーティング表面の非コーティング部分の位置で基板に入射する。入射位置が表面の金属膜のコーティング部分に隣接するか、または金属膜のコーティング部分から5mm以内にあってコーティング部分と一致していない。光ビームが、金属膜の表面の上で、かつ、金属膜の表面と平行するかまたは5度未満の角度となるように伝播する。検出器は、ファーフィールドに配置され、粒子が光ビームと相互作用することで散乱される光放射、または、粒子から放射される光放射を検出する。
【0062】
各態様の特徴(選択的な特徴を含む)は、任意の他の態様の特徴と組み合わせ可能である。第1の態様、第2の態様または第5の態様で言及した特徴は、第3の態様に基づく方法にも使用可能である。第1の態様または第2の態様で言及した特徴(選択的な特徴を含む)は、第4の態様に基づく方法にも使用可能である。
【0063】
実施例は、例示のみのために、図面を参照しながら説明される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】装置がナノ粒子追跡分析評価装置であり、温度センサがプリズム内の貫通穴に設けられた実施例を示す図
図2】装置がナノ粒子追跡分析評価装置であり、温度センサがサンプルと接触する薄膜センサを含む実施例を示す図
図3】装置が動的光散乱法評価装置であり、温度センサがサンプルセル内の凹部に設けられた実施例を示す図
図4】装置が動的光散乱法評価装置であり、温度センサがサンプルセルのベースと接触するヒートスプレッダに設けられた実施例を示す図
図5】いくつかの実施例で達成できる精度を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1を参照すると、1つの実施例に基づくNTA装置100は概略的に示されている。装置100は、光源101と、サンプルセル106と、光検出システム102と、プロセッサ105とを含む。
【0066】
光源101は、光ビーム108を生成し、光ビーム108は、サンプルセル106の一部を形成するプリズム110によって、サンプル104に屈折される。光ビーム108は、サンプル104の粒子との相互作用によって散乱光を生成する。粒子からの散乱光は、光検出システム102によって検出され、光検出システム102は一般的には撮像カメラを有する従来の顕微鏡である。光検出システム102の光検出器103は、図1に概略的に示されている(実際の縮尺ではない)。
【0067】
粒子は、光検出システム102によって撮像される各連続フレームにおいて追跡され、粒子の拡散係数は、本発明の背景技術で説明したようにプロセッサ105によって判定される。プリズム110は貫通孔または凹部を含み、貫通孔または凹部の中に、温度センサ107がサンプル104に近接して配置される。プリズム110がサンプルと直接的に接触しており、かつ、プリズムの熱伝導率が比較的高い(例えば、温度センサ107とサンプル104との間の温度勾配およびその後の温度差を最小化するのに十分な高さ)ため、温度センサ107は、サンプル104の温度に対して比較的正確な測定を提供する。
【0068】
追跡される各粒子に対して、プロセッサ105は拡散係数を推定する。拡散係数から、ストークス・アインシュタインの関係式(個別の粒子ベース、または、平均もしくは集団ベースのいずれか)を使用して、粒子の流体力学的半径を判定することができる。ストークス・アインシュタインの関係式では、サンプルの温度が既知数である必要がある。温度センサ107は、サンプル温度に対して比較的正確な測定を提供し、プロセッサ105は、この比較的正確な測定を用いて、粒子サイズに対して比較的正確な推定値を判定する。また、プロセッサ105は、粒子濃度の推定を提供するために、粒子の数をカウントするように構成され得る。プロセッサ105は、例えば、各粒子サイズの濃度に基づいて粒度分布を判定してもよい。
【0069】
一般的な従来技術のNTA装置において、ストークス・アインシュタインの関係式で使用される温度は、通常、サンプルなし(off-sample)で測定されるものである。サンプル量が少ないことによる問題点に加えて、サンプルの汚染に対する懸念から、通常、センサをサンプルに接触させない。一般的な従来技術のNTA装置において、サンプルの温度は、周囲温度から推測されるか、または、温度調節器(例えば、熱電温度コントローラ)上の温度センサ、もしくは温度調節器に近い温度センサから推測される。このようにサンプルの温度を判定する手法は、一般的には誤差に関わる。
【0070】
プリズムを使用しない従来技術システムにおいて、通常、温度センサをサンプルから1cmまたは2cmよりも近づけることが困難である。このような状況では、通常、温度センサとサンプルとの間に複数の材料と界面が存在するため、熱流による温度オフセットへの補正が困難になり、異なる装置間において潜在的な変動が生じる。対照的に、本実施例における温度センサは、サンプルに非常に近くに配置され、温度センサとサンプルとの間には単一の材料がある。温度センサとサンプルとの間のプリズムの領域のサーマルマスは、熱遅延(thermal lag)がほとんどないほど十分に低く、通常、温度の定常状態オフセットが比較的低いほどに、プリズム材料の熱伝導率が高い。
【0071】
プリズムをサンプルセル106の一部として使用することによって、光散乱用の細いビームの形成が可能となり、また、サンプル104に近い位置からサンプル104の温度を高精度に測定できるように、埋め込みセンサの使用も可能になる。
【0072】
プリズム110を使用して光を液体のサンプル104に直接的に屈折させることによるさらなる利点は、光がそれにより薄いシートのようにサンプルに向けられることである。光検出システムの撮像領域とサンプル中の照射光ビームとの交差点によって、粒子の検出される散乱領域が定義される。細い光ビームによって、コンパクトな設計が可能となり、サンプルをサンプルセルに導入するためのマイクロ流体工学の使用を可能となり、サンプル量を節約することができる。
【0073】
光源101は、レーザ(例えば、可視波長、または380nm~700nmの範囲の波長を有するレーザ)であってもよい。光ビーム108は、第1表面111上のプリズム110に入射する。光ビーム108は、第1表面111に対して垂直であってもよい。光ビーム108は、プリズム110の第2表面(上面)112から出射し、(プリズムとサンプルを含む希釈剤との間の屈折率の差によって)屈折する。仮に光が第1表面111に垂直する場合、第1表面111と第2表面112との間の角度は、光ビームが非常に浅い角度、通常は5度未満で第2表面から出射するように選択され得る。その結果、光ビームが第2表面をかすめるか、または第2表面と実質的に平行になる。希釈剤は、例えば、水と仮定してもよく、(仮に光ビームが第1表面に対して垂直に入射する場合において)第1表面111と第2表面112との間の適切な角度は、プリズムの屈折率に基づいて選択され得る。プリズム110は、少なくとも1.4、または少なくとも1.5の屈折率を有してもよい。プリズム110は、BK7などのケイ酸ガラスを含んでもよい。
【0074】
プリズム110の貫通孔または凹部は、任意の適切な技術を用いて形成され得る。例えば、穴または凹部は、レーザ加工されてもよく、または超音波で穿孔されてもよい。出願人は、超音波ドリル加工で貫通孔を形成することが、プリズム110において光ビーム108が通過する部分に損傷をもたらさないため、特に適切な手法であることを発見した。
【0075】
この実施例では、温度センサ107は、プリズム110の第2表面112から約3mmにあり、よって、サンプル104からも約3mmにある。プリズム110における穴または凹部の形成によっては、光を散乱させ得る微小亀裂および欠陥を生じさせる可能性がある。そのため、温度センサ107は、光検出システム102および照射光ビーム108の視野から十分に離れて配置され、(照射光ビームの散乱、または粒子からの散乱光の散乱による)光学ノイズに影響を受けないことが望ましい。また、温度センサは、温度センサ107によって測定された温度が散乱領域におけるサンプルの温度を表すほど、散乱領域に十分近づくべきである。
【0076】
この例では、温度センサ107は、検出光路(この場合では、顕微鏡の視野)と照射光ビームとの交差点によって定義される散乱領域から15mm以内の位置に配置される。また、温度センサ107は、検出光路109の軸心から少なくとも10mmずれて位置付けられている。同様に、温度センサ107は、照射光ビーム108から少なくとも10mm離して配置される。
【0077】
温度センサ107は、任意の適切な装置であってもよい。例えば、事前に校正されたサーミスタ(例えば、負係数のサーミスタ)が使用可能である。このようなセンサは、容易に入手することができ、正確で、小型で低コストである。
【0078】
プリズム110の上面は、散乱光を反射する金属コーティング領域と、照射光ビーム108がプリズム110から出射してサンプル104に入射する非金属コーティング領域とを含む。照射光ビーム108は、金属コーティング領域に近い位置、例えば、金属コーティング領域の5mm以内または2mm以内の位置でプリズム110から出射する。照射光ビーム108は、サンプルに屈折されて、金属コーティング領域のすぐ上のサンプルの領域を、上面112の金属コーティング領域に実質的に平行なビームで照射する。金属コーティング領域は、散乱を光検出システム102に反射し、粒子からの散乱を検出することの容易さを向上させる。
【0079】
照射光ビーム108は、光源101とプリズム110との間に配置された少なくとも1つの光整形(light shaping)光学部品121によって整形されてもよい。光整形光学部品121はレンズ素子として図1に概略的に示されているが、光整形光学部品121は、光源101からの光ビーム108を整形してサンプルセル106に導くために、屈折光学素子とミラーとの組み合わせを含んでもよい。
【0080】
サンプル104中の照射光ビーム108は、上面112の金属コーティング領域に隣接する光のシートを形成してもよい。光ビーム108は、直線偏光で、コリメートで、対称的で、薄いものであってもよい。
【0081】
この光検出システム102は、光検出レンズ123と光検出器103とを含むものとして、図1に概略的に示されている。すでに説明したように、NTAに適した一般的な光検出システムは、撮像カメラを有する、実質的に標準的な顕微鏡を含んでもよい。例えば、長作動距離対物レンズは、従来の微細光路(microscopic optical train)および撮像センサ(例えば、CCD、CMOSなど)とともに使用可能である。
【0082】
サンプルセル106はカバーシート113を含み、粒子からの散乱光はカバーシート113を通じて光検出システム102に到達する。カバーシートは、ガラス(例えば、ケイ酸ガラスまたはホウケイ酸ガラス)を含んでもよい。プリズム110とカバーシート113とともに、サンプル104を保持するサンプルセル106を規定する。サンプルセル106は、フローセルの一部を含んでもよく、入口114および出口115を有する。カバーシート113は、さらなる流路を規定するプラスチック要素によって保持されてもよく、当該更なる流路はサンプルを入口114および出口115と連通させる。
【0083】
プリズム110は温度調節器120に取り付けられており、温度調節器120は、(例えば、プロセッサ105からの制御信号に応答して)サンプル104の温度を制御する。温度調整器120は、ヒートシンク117、熱電素子118、およびサーマルスプレッダ119を含む。この熱電素子118は、熱電効果を利用して加熱または冷却をするように動作可能である。ヒートシンク117は、ペルチェ素子118によって発生する熱を遮断し、サーマルスプレッダ119は、熱電素子118への熱流および熱電素子118からの熱流がプリズム110に均一に与えられることを確保する。サーマルスプレッダ119は、アルミニウム、または高い熱伝導率を有する任意の他の材料を含んでもよい。サーマルペースト(thermal paste、放熱グリスとも呼ばれる)は、温度調節器120の部品間、および温度調節器120とプリズム110との間に適用され得る。
【0084】
周囲温度センサ128は、サンプルセル106の領域内の周囲温度を測定するために提供される。
【0085】
いくつかの状況において、サンプル104の所望の温度は、サンプルセル106の上の周囲温度と異なる可能性がある。このような状況において、温度調節器120が周囲温度と関係なく所望の温度を維持するためにサンプルと熱電デバイス118との間に熱流を起こす可能性があるため、サンプル104と温度センサ107との間に温度勾配が存在し得る。サンプルと周囲の空気との間の温度差が大きいほど、温度勾配が大きくなる傾向がある。この温度勾配によって、温度センサ107によって報告された温度と、サンプル104の温度との間に誤差が生じる可能性がある。誤差を補正するために、周囲温度センサ128は、サンプルセル106の領域内の周囲空気温度を測定するように配置され得る。周囲温度は、温度センサ107によって測定された見かけのサンプル温度に対する誤差を補正するために、プロセッサ105によって使用可能である。例えば、プロセッサ105は、対照表を使用して、または、補正をモデル化する数学関数を使用して誤差を補正してもよい。追加的にまたは代替的に、周囲温度は、サンプルの温度を周囲空気の温度と一致させるように設定して熱流を最小限に抑えるのに使用可能である。
【0086】
機器100は、2つのモード、すなわち、(i)周囲温度補正モード、(ii)温度制御モードで動作可能であり得る。周囲温度補正モードにおいて、温度調節器120は、サンプル104の温度を、周囲温度センサ128によって測定される温度と同じ温度に維持するように設定される。これによって、サンプル104と周囲環境との間の任意の熱流が最小限に抑えられ、その結果、温度センサ107によって測定された温度と、サンプル104の真の温度との間に誤差をもたらす任意の温度勾配が、最小限に抑えられる。温度制御モードにおいて、温度調節器120は、サンプル104に対して任意の所望の温度を設定することに使用可能であり、プロセッサは、温度誤差を上述のように補正してもよい。
【0087】
以下の表1は、100nmのラテックス粒子を測定するときのサンプル温度の誤差をもたらす、粒子サイズの計算された誤差を示している。
【0088】
【表1】
【0089】
低い温度では温度の誤差が占める割合が高いため、温度の誤差による影響は低い温度で大きくなる。充填システムに対して一般的な設計目標である<6%と比較すると、大きな温度誤差に対する粒子サイズの誤差は顕著になる可能性がある。
【0090】
図5は、いくつかの実施例で達成できる精度を示すグラフを示している。これらの結果を得るために、較正された正確なセンサはサンプルに接触するように配置され、温度センサ107によって測定された温度の誤差が記録された。温度誤差は、十分に制御されており、(サンプル温度と周囲温度との間の)温度オフセットが-10℃から50℃の範囲で、大体0.3℃である。。
【0091】
図2は代替的な実施例を示しており、図2においては、温度センサ107が薄膜センサであってプリズム110の第2表面に配置されてサンプル104と接触することを除いて、図1と同様である。図1に関して開示されるすべての特徴は、温度センサ107の仕様に関連するものを除き、図2にも適用可能である。
【0092】
薄膜温度センサ107は、例えば、抵抗器にパターン化された白金層を含み、白金抵抗温度計を形成してもよい。化学的に不活性で薄い(<5pm)パッシベーション層(例えば、窒化ケイ素、酸化ケイ素など)は、サンプルとの相互作用を減らすように、白金抵抗温度計の上に配置され得る。
【0093】
この配置によれば、温度センサ107がサンプル104と接触しているため、図1に示されている配置よりもさらに正確に測定可能である。ただし、プリズム上に薄膜センサを作成することは、容易に入手可能な校正済みの温度センサを使用することよりも複雑で費用がかかる場合がある。
【0094】
本発明は、特にNTA機器に好適であるが、DLS機器にも適用可能である。図3は、光源201、光検出器203、サンプルセル206、プロセッサ205および温度センサ207を含むDLS装置200を概略的に示している。
【0095】
光源201は、レーザまたは発光ダイオードを含んでもよく、(サンプルセル内の特定の位置を選択するように移動可能な)集光レンズ(focusing lens)222を介して、照射光ビーム208でサンプルセル206内のサンプル204を照射する。照射用光ファイバー(illumination optical fibe)233およびファイバー結合レンズ(fiber coupling lens)223(例えば、屈折率分布型レンズ(graded refractive index lens、GRINレンズ))は、光源と集光レンズ222との間に配置可能である。サンプル204は、希釈剤に懸濁された粒子を含み、照射光ビーム208は、サンプルの粒子との相互作用によって散乱光を生成する。後方散乱光は、検出光路209を介して光検出器203によって検出され、検出光路209は、集光レンズ222、結合レンズ223、および検出光ファイバー233を介して光検出器203に到達する。
【0096】
DLSについてより複雑な検出配置も可能である(例えば、多角度DLS(Multi-Angle Dynamic Light Scattering、MADLS)では、異なる角度で複数の検出光路が使用される)。
【0097】
また、光検出器201は、アバランシェフォトダイオードなどのフォトンカウンティング検出器であってもよい。背景技術ですでに説明したように、検出器201からの出力は、強度加重粒子平均サイズ(Zaverage、Z平均)、多分散性、および/または粒子サイズ分布などの粒子特性の判定のために、プロセッサ205によって処理可能である。このような処理は、散乱強度の時間履歴から自己相関関数を判定することと、自己相関関数から拡散係数を判定することと、そして、ストークス・アインシュタインの関係式(入力としてのサンプルの温度を必要とする)を用いて粒子サイズを判定することとを含んでもよい。
【0098】
温度がDLSによって取得される測定値に対する影響を考慮して、装置はサンプル温度を制御するための温度制御構成を含んでもよい。NTAに関してすでに説明した、温度測定に対する問題点は、DLSにも同様に存在する。DLS温度補償の分野において、NTAを参照して説明したものと同様に、温度センサは一般的にはサンプルから比較的大きな距離に配置されるため、正確なサンプル温度測定が困難である。
【0099】
図3の装置における温度センサ207は、サンプルセル206のベース壁216内の凹部または貫通孔内に、サンプルから3mm未満の距離で配置される。この手法は、図 2にも適用される手法と同様である。温度センサ207とサンプルセル206との間の熱伝導性ポッティング材料を使用することによって、温度センサ207とサンプルセル206との間の良好な熱接触が確保可能である。サンプルセル206は、修正された標準キュベット(例えば、断面が1cm×1cmであるキュベット)を含む。温度センサ207は、サンプルセル206の壁面における接続部を含んでもよく、接続部はサンプルセルホルダー内の接点と接続する。サンプルセルホルダー内の接点は、プロセッサ205と通信していてもよい。サンプルセル206をサンプルセルホルダーに挿入すると、その結果、温度センサ207がプロセッサ205に自動的に接続され得る。
【0100】
いくつかの実施例において、温度センサ207は、サンプルセル206のベース壁216に規定された凹部に配置されていなくてもよい。代わりに、温度センサ207は、熱伝導性エポキシによってベース壁206に接着されてもよい。サンプルセル206がサンプルセルホルダーに配置された場合、表面実装タイプのデバイスが使用可能であり、温度センサ上の固定接点と接触させるためにポゴピンが使用可能である。
【0101】
図1を参照して説明したように、サンプルセル206の近くの周囲温度を測定する周囲温度センサ228が設置可能である。プロセッサ205は、NTAを参照して説明したものと同じ補正手法(温度の補正や、周囲補正モード)を実行してもよい。DLS装置は、図3に示されていない温度調節器(例えば、熱電温度調節器)を含んでもよく、温度調節器は図1を参照して説明したものと同様に動作してもよい。
【0102】
図4は、温度検出配置を除いて、図3に示されているものと同様の代替的なDLS装置200を示している。図4では、温度センサ207がサンプルセル206のベース壁216に埋め込まれたり貼り付けられたりする代わりに、温度センサ207がヒートスプレッダに埋め込まれており、当該ヒートスプレッダは、サンプルセル206がサンプルセルホルダーに収納されるときにサンプルセル206のベース壁216に熱接触して配置されるいる。サンプルセル206をヒートスプレッダに向かわせて良好な熱接触をなすように、アクチュエータ230または弾性要素(例えば、スプリング)が配置可能である。このようにして、サンプルセル206は、比較的薄いの壁を有する単純なキュベットにとどまることができ、温度センサ207は、サンプル204と近接した位置(例えば、サンプル204から3mmまたは5mmよりも近く)に配置可能である。温度センサ207は、ヒートスプレッダの材料(例えば、1.5mmのアルミニウム)およびサンプルセルのベース壁(サンプルセルはガラスで構成され厚さがlmm以内であってもよい)を介して、サンプル204への低い熱伝導経路を有してもよい。
【0103】
具体的な例示が記載されているが、これらの実施例は限定的なものではなく、本発明の範囲は、添付する特許請求の範囲を参照して決定されるべきものであることが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】