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特表2025-505215吸い口用フィルター要素、喫煙製品またはHNB製品に使用する吸い口、およびシガレットフィルター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-21
(54)【発明の名称】吸い口用フィルター要素、喫煙製品またはHNB製品に使用する吸い口、およびシガレットフィルター
(51)【国際特許分類】
   A24D 3/10 20060101AFI20250214BHJP
   A24D 3/04 20060101ALI20250214BHJP
   A24F 40/42 20200101ALI20250214BHJP
【FI】
A24D3/10
A24D3/04
A24F40/42
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024547094
(86)(22)【出願日】2023-02-01
(85)【翻訳文提出日】2024-08-06
(86)【国際出願番号】 EP2023052412
(87)【国際公開番号】W WO2023151997
(87)【国際公開日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】102022102862.3
(32)【優先日】2022-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524295939
【氏名又は名称】チェルディア インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】エッカルト シュッツ
(72)【発明者】
【氏名】ウーベ シェッフナー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン モーザー
【テーマコード(参考)】
4B045
4B162
【Fターム(参考)】
4B045BA08
4B045BB03
4B045BB07
4B045BC02
4B045BC06
4B162AA03
4B162AA05
4B162AB01
4B162AB12
4B162AC06
4B162AC14
(57)【要約】
【課題】特にいわゆるスリムまたはウルトラスリムシガレットについて、低減されたフィルタリング性能および増大された冷却にもかかわらず、十分なフィルター硬さを示すフィルター要素を特定する。
【解決手段】喫煙製品又はHNB製品で用いるための吸い口のためのフィルター要素であって、フィルター要素は、トウ材料からできているフィルター本体を有し、トウ材料は、架橋されかつ捲縮されたセルロースアセテートフィラメントの複数のモノフィラメントによって形成されており、セルロースアセテートフィラメントは、特に多葉形又は多角形の、好ましくはY形状の、断面形状を呈し: - トウ材料のセルロースアセテートフィラメントは、均一なフィラメント力価を示し、これは、特には事前規定され又は規定可能であり、10デニール(11.1dtex)以下かつ5デニール(5.5dtex)以上の範囲であり;- 前記トウ材料は、10000デニール(11.1kdtex)以下かつt5000デニール(5555.5dtex)以上の範囲の総力価を有し;かつ - トウ材料のセルロースアセテートフィラメントの比繊維重量は、1mmのフィルター要素長あたり2.5mg以下であり、かつ1mmのフィルター要素長あたり1.0mg以上である、フィルター要素。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙製品又はHNB製品で用いるための吸い口のためのフィルター要素であって、
前記フィルター要素は、トウ材料からできているフィルター本体を有し、前記トウ材料は、架橋されかつ捲縮されたセルロースアセテートフィラメントの複数のモノフィラメントによって形成されており、前記セルロースアセテートフィラメントは、特に、多葉形又は多角形の、好ましくはY形状の、断面形状を呈し:
- 前記トウ材料の前記セルロースアセテートフィラメントは、均一なフィラメント力価を示し、これは、特には事前規定され又は規定可能であり、10デニール(11.1dtex)以下かつ5デニール(5.5dtex)以上の範囲であり、
- 前記トウ材料は、10000デニール(11.1kdtex)以下かつ5000デニール(5555.5dtex)以上の範囲の総力価を有し;かつ
- 前記トウ材料の前記セルロースアセテートフィラメントの比繊維重量は、フィルター要素長さmmあたり2.5mg以下であり、かつフィルター要素長さmmあたり1.0mg以上である、
フィルター要素。
【請求項2】
前記均一な総力価の変動係数が、最大で0.1であり、好ましくは最大で0.05~最大で0.005である、請求項1に記載のフィルター要素。
【請求項3】
前記均一なフィラメント力価の変動係数が、最大で0.1であり、好ましくは、最大で0.05~最大で0.01である、請求項1又は2に記載のフィルター要素。
【請求項4】
前記フィルター本体が、特にはフィルターロッドとして実施されており、好ましくは、約6mm~約4mmの直径を有し、特には、約5.5mm~約5.0mmの直径を有し、好ましくは、約5.35mmの直径を有し、
前記フィルター本体の少なくとも一部が、紙又は紙様材料でラッピングされている、
請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルター要素。
【請求項5】
300gの質量及び12mmの直径を有する円筒状の試験片の面端部を前記フィルター本体の上に前記フィルター本体軸に対して垂直に載せたときに、前記紙又は紙様のラッピングを有する前記フィルター本体が、0.90mm未満の、特には0.85mm未満の圧縮深さを有する、請求項4に記載のフィルター要素。
【請求項6】
300gの質量及び12mmの直径を有する円筒状の試験片の面端部を前記フィルター本体の上に前記フィルター本体軸に対して垂直に載せたときに、前記紙又は紙様のラッピングを有しない前記フィルター本体が、0.90mm未満の、特には0.85mm未満の圧縮深さを有する、請求項4に記載のフィルター要素。
【請求項7】
前記トウ材料のモノフィラメントの前記セルロースアセテートフィラメントの少なくとも一部が、少なくとも部分的に、中空のかつ/又は管状のセルロースアセテートフィラメントとして形成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のフィルター要素。
【請求項8】
前記フィルター本体の硬さが、少なくとも80%のフィルトロナ硬さに達し、好ましくは少なくとも約86%のフィルトロナ硬さに達する、請求項1~7のいずれか一項に記載のフィルター要素。
【請求項9】
前記フィルター本体が、可塑剤を含有し、約2%~約15%の可塑剤含有量、好ましくは約4%~約10%の可塑剤含有量を有し、前記可塑剤が、特には、トリアセチン、トリエチレングリコールジアセテート及び/又はクエン酸エチルエステルを含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載のフィルター要素。
【請求項10】
前記フィルター本体の前記トウ材料が、残留ちぢれ(RS)及び密度(ρ)を示し、残留ちぢれと密度の関係値Aが、下記:
【数1】
で少なくとも0.016mg/mmである、請求項1~9のいずれか一項に記載のフィルター要素。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項、特には請求項10に記載のフィルター要素であって、
前記フィルター本体のトウ材料の前記残留ちぢれ(RS)が、3.0の値を超えず、前記前記フィルター本体のトウ材料の前記残留ちぢれ(RS)が、好ましくは、約1.5~約2.75であり、特には1.9~2.5である、フィルター要素。
【請求項12】
前記トウ材料の前記セルロースアセテートフィラメントが、少なくとも2.6N/kdenの引張強度を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載のフィルター要素。
【請求項13】
喫煙製品又はHNB製品で用いる吸い口であって、請求項1~12のいずれか一項に記載のフィルター要素を有する、吸い口。
【請求項14】
請求項13に記載の吸い口であって、
特にカプセル形状又はカプセル状の風味放出要素が、前記フィルター要素中にさらに組み込まれている、吸い口。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載のフィルター要素を有する、シガレットフィルター又はシガレットフィルター要素。
【請求項16】
特にはカプセル形状又はカプセル状の風味放出要素が、前記フィルター要素にさらに組み込まれている、請求項15に記載のシガレットフィルター又はシガレットフィルター要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喫煙製品又はHNB製品と共に使用するための吸い口用のフィルター要素、並びに喫煙製品用の吸い口又はシガレットフィルター又はHNB製品用の吸い口におけるそのようなフィルター要素の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の意味の範囲内における喫煙製品は、伝統的なタバコ製品、特にシガレットに関し、また、パイプ製品およびマリファナ製品、ならびにいわゆる加熱式非燃焼(HNB)製品、ベイピング製品、およびいわゆるハイブリッド製品にも関する。
【0003】
用途に応じて、喫煙製品を使用するための吸い口は、異なる機能を有する。例えば、吸い口は、一方ではタバコの煙の流れから有害成分、例えば凝縮物質、特にタール、並びに煙の流れに同伴される粒子状物質を引き出すフィルター装置として機能することができる。このフィルタリング機能は、特に、従来のタバコ用途で使用される。対応する吸い口は、それによって、シガレットまたはシガリロの一体的部分として形成されることができ、そのようにして、シガレット/シガリロ上における「支持体」を形成することができる。
【0004】
別のタイプの吸い口の例は、使用後に取り外すことができる交換可能なフィルター要素などの、交換可能なデバイスに関する。そのような吸い口は、適切なホルダ、例えば、シガレットホルダまたはパイプ吸い口に収容される。
【0005】
シガレットの一体的部分として形成される1つの吸い口は、シガレットフィルターである。シガレットフィルターは、シガレットの煙中の凝縮物およびガスなどの有害物質の割合を低減することを意図している。加えて、フィルターは、喫煙者の大部分にとって、煙をよりまろやかにするか、またはより嗜好性を高める。従来のフィルターシガレットでは、フィルターがフィルターラップ紙に包囲され、いわゆるチッピング紙を介してタバコロッドに接続され、ほとんどの工業的に製造されたシガレットは、フィルターを備えている。
【0006】
特に喫煙者の呼吸器系に到達する前にタバコ煙中の物質を低下させるために、すでに使用されている多数のタイプのフィルター材料がある。しかし、大量の有害物質を除去することに加えて、満足のいくフィルターは、フィルターを通る空気または煙の通過を望ましくない形で妨げることなく、したがってフィルターに対する過度の吸引を必要とすることなく、効果的である必要もある。しかしながら、また、タバコ煙フィルターを使用する場合、フィルター材料は、それ自体の風味を加えることによってタバコ煙の味を変えてはならない。
【0007】
本発明は上述の従来のタバコ用途のためのフィルター材料に関するだけでなく、特には、喫煙製品に使用される吸い口のためのフィルター材料および/またはフィルター要素にも関し、これらのフィルター要素は特に、単にフィルタリング機能以外の他の機能を有する。
【0008】
したがって、喫煙製品のための吸い口を形成するために必要な材料は、煙の物理的特性(温度、流れプロファイルなど)および化学組成に適合させる必要があり、特に適合可能である必要がある。従来のシガレットフィルター及びHNB製品の両方は特に、吸い口材料の適切な選択および構成によってそれぞれ調整または満たされる必要があるいくつかの目標パラメータを有する。これは、特に、以下のターゲットパラメータに関し、これらについては下記で簡単に論じる:
・吸引抵抗性
・フィルタリング性能
・フィルターロッド硬さ/フィルトロナ硬さ
・視覚的外観
【0009】
フィルターロッド硬さは、シガレットフィルターの重要な目標基準である。これは、通常、いわゆるフィルトロナ硬さとして示される。フィトロナ硬さは、直径12mmの円筒ロッドの扁平状前端を、300gの負荷で水平に配置されたフィルターロッドに垂直に押し付けることによって決定される。最初の接触で先に決定された初期直径に対する圧縮直径の比が、フィルトロナ硬さ百分率をもたらす。
【0010】
強調すると、フィルトロナ硬さは、フィルターでのみ測定されるが、元となる(原料)フィルター材料では測定されない。フィルトロナ硬さは、全てのシガレットフィルター上に噴霧されたトリアセチンによって特に影響を受ける。
【0011】
フィルトロナ硬さの最小限度は、約88%であり、市場要件に合わせて設定される。したがって、シガレットフィルターのフィルトロナ硬さは、好ましくは約88%~95%、特に約90%~93%に設定することができる。
【0012】
従来のシガレットフィルターでは、フィルトロナ硬さは、所与のフィルター直径に対する単位体積当たりの繊維重量によって本質的に決定される。特に、フィラメント力価は、フィルトロナ硬さにわずかな影響しか及ぼさない。
【0013】
時には、より強いフィルターラップ紙またはより強いチッピング紙を用いて、より高いフィルトロナ硬さを達成することもできる。チッピング紙は、複数のフィルター要素を一緒に結合させる紙であるか、またはフィルター要素をタバコロッドに結合する紙である。しかしながら、より強力なフィルターラップ用紙またはより強力なチッピング紙を使用することによってフィルトロナ硬さを増加させることは、このアプローチではより高いコストが予想され得るので、経済的な欠点を有する。
【0014】
フィルトロナ硬さには、喫煙中にフィルター硬さが低下する、いわゆる「ホットコラプス(高温崩壊)」が伴う。これは、特に、従来のシガレットにおいて、終わりの方の吸煙の1つの間に水分の存在下でフィルターが加熱されるときに、起こり得る。この望ましくない効果は、HNB生成物でも生じ得る。
【0015】
喫煙製品の使用中における可能な限り一定かつ高いフィルトロナ硬さに加えて、吸い口材料は、また、所定のまたは規定可能なフィルタリング性能(ろ過性能)を示す必要がある。凝縮物またはタールとも呼ばれる凝縮物質(液滴、粒子)に関するフィルタリング性能は、従来のタバコ製品及びHNB製品に関して興味深く、なぜならば、凝縮物質が不健康な影響を有する複数の物質を含有するからである。
【0016】
従来の製品では、ろ過性能は(タバコブレンド、通気性などの他の影響因子とともに)、シガレットの「送達」(主流煙内の煙構成成分のレベル)を調節するように選択される。多くの市場では、法的規制が「送達」の上限を規定している。法律上の制限よりも下において、消費者の好みに「送達」を適合させることができる。
【0017】
HNB製品では、エアロゾルが、従来の製品の場合よりもはるかに少ない、負の健康的影響を有する凝縮物を含む。しかしながら、風味物質およびニコチンなどのより望ましい材料が同様に凝縮物中に存在するので、ここでの目的は、ゼロまで低下させることなく、可能な限り最低限の、フィルタリング性能を選択することである。
【0018】
「吸引抵抗性」の目標パラメータに関して注目すべきことは、消費者がタバコ製品を使用するとき、ある範囲の吸引抵抗性を好むことである。従来のシガレットでは、フィルターは(「送達」を調整することに加えて)、シガレットの吸引抵抗を調整する働きをする。
【0019】
しかしながら、HNB製品では、HBN装置の他の構成要素、特にタバコの加熱された部分および装置が、すでに吸引抵抗性に対する高い寄与を提供しているので、口側フィルタ(吸い口)によってもたらされる吸引抵抗は可能な限り低くなる傾向を有する必要がある。低いフィルター(吸い口)吸引抵抗性は、HBN装置の他の構成要素に関してある程度の自由度をもたらし、これは望ましい。
【0020】
しかし、吸引抵抗性およびフィルタリング性能は、密接に関連している。両方とも、複数の方法で低減することができるが、これは他のパラメータにしばしば負の影響を及ぼす。
【0021】
例えば、フィルターの長さを短くすることによって、吸引抵抗性及びフィルタリング性能を低減することができる。しかし、フィルター長がフィルター径よりも小さくなると、加工性が問題となる。より短いフィルターは、また、より短い冷却部をもたらし、これは、熱バランスに関して問題である。それに代えて又はそれに加えて、吸引抵抗性及びフィルタリング性能は、体積含有量及び/又は総力価当たりのフィルター材料中の繊維重量を減少させることによって減少させることができる。しかしながら、これは、フィルトロナ硬さを低下させるという欠点を有し、最小硬さをもはや達成することができなくなる可能性がある。
【0022】
これに代えて、またはこれに加えて、フィラメント力価を増加させることによって、吸引抵抗性およびフィルタリング性能を低減することができる。一定のフィルター直径および容積単位当たりの固定された繊維重量において、フィルタリング性能および吸引抵抗性は、フィラメント力価の増加とともに減少し、これは、従来の製品と比較してHNB製品の場合に望ましい。上述のように、フィルトロナ硬度はフィラメント力価にわずかにしか依存しないので、硬度も悪影響を受けない。
【0023】
「視覚的外観」の目標パラメータに関して注目すべきことは、口側に平坦で白色の断面積を有する吸い口を消費者が好むことである。しかしながら、口側でチューブへと成形された製品もある。
【0024】
セルロースアセテートフィラメントから通常構成される従来のシガレットフィルターは、煙中の成分の最適なフィルタリング(ろ過)を確実にするが、これらのフィルター材料は、他の用途において、特にHNB製品または電子シガレットの場合に、限定された程度にしか使用できないことが多く、なぜならば、これらの用途では、フィルター材料またはそれぞれの吸い口材料が他の機能を担う必要があるからである。
【0025】
HNB製品及び従来の喫煙製品は、一般に、使用者が高温で吸入エアロゾルを摂取するという欠点を有する。これは、利用者にとって不快なことがある。特に、HNB製品では、吸い口材料は、可能な限り低いフィルタリング性能でエアロゾルを冷却するという課題を有する。
【0026】
しかし、従来のシガレット、特にいわゆるスリムまたはウルトラスリムシガレット、すなわち、例えば5.0mm~6.5mmの小径シガレットの場合にも、フィルター/吸い口材料は、キングサイズシガレット用のフィルター材料と比較して、低減されたフィルタリング性能、増加した冷却特性および改善された触覚特性(堅いが、握ったときに硬すぎない)を提供する必要がある。当然のことながら、燃焼中の煙/風味は、キングサイズのシガレットよりも少ない。風味をさらに減少させないように、低いフィルタリング性能が求められている。フィルター材料の量だけをその限界まで減らすと、フィルター硬さは最終的に不満足になる。
【0027】
同じ繊維密度で、スリムまたはウルトラスリムシガレット用のフィルターはまた、キングサイズフィルタよりも大幅に高い吸引抵抗性を有し、これは、一般に望ましくない。
【0028】
HNB製品、及びスリム又はウルトラスリムシガレットの両方について、タールのような凝縮性成分に関して所望の低減されたフィルタリング性能並びに十分なフィルター硬さを達成するために、総力価を維持しながらフィラメント力価を増加させることが提案されている。しかし、このアプローチには様々な欠点がある。
【0029】
セルロース-2,5-アセテートは、今日、フィルター要素、シガレットフィルターのためのフィルターロッドをそれぞれ製造するために広く使用されている。喫煙と健康の観点から、それは、特定の保持現象に関して、明らかに優れた特性を有する。セルロースアセテートから作られたフィルターは、有害なニトロソアミンおよびフェノールを、凝集物およびニコチンよりもはるかに効率的に濾過する。さらに、喫煙者は、セルロースアセテートフィルタ要素と組み合わされたタバコブレンド煙の味を最も味がよいと評価する。セルロース-2,5-アセテ-トから作製されたフィルター要素が過小評価されないことのさらなる利点は、フィルターの切断表面の視覚的均一性に見出すことができる。
【0030】
しかしながら、その顕著な市場支配にもかかわらず、セルロース-2,5-アセテートフィルター要素は、いくつかの重大な欠点を有する:すなわち、フィルターロッドが、構造的物理的規定により、明確に規定された吸引抵抗性およびフィルタリング性能を有する。
【0031】
通常のセルロース-2,5-アセテートフィルター要素の粒子ろ過またはさらには凝縮物保持も、フィラメント力価(繊維の繊度)、フィルター直径、吸引抵抗性およびフィルター長さの関数である。
【0032】
7. 8mmの通常のフィルター直径および21~25mmのフィルター長さを想定すると、ウルトラライトシガレットを設計する際に必要とされるように、フィルター要素の製造中に50%を大幅に超えるフィルター性能が必要とされる場合に、問題となる。
【0033】
同じことが、スリム又はウルトラスリムシガレット用のフィルター要素にも、類似的に当てはまる。フィルター要素内の煙は繊維方向と平行に流れるので、このようなフィルター要素はフィラメント力価を著しく減少させることによってのみ得ることができ、これは同時に、吸引抵抗性の著しい増加をもたらし、総力価は変化しない。
【0034】
したがって、総力価およびフィラメント力価は同等に低減する必要があり、その結果、フィルター要素の硬さは、特に喫煙中に、劇的に低下する。この現象は、当業者によって「ホットコラプス(高温崩壊)」と呼ばれ、一般に望ましくないと考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
本発明は、特に、いわゆるスリムまたはウルトラスリムシガレット、すなわち、例えば5.0mm~6.5mmの小径シガレットについて、フィルター要素を特定するという課題に基づいており、フィルター要素は、低減されたフィルタリング性能および増大された冷却にもかかわらず、十分なフィルター硬さを示す。フィルター要素はさらに、調整可能でありかつ特にキングサイズフィルタと比較して低減された吸引抵抗性を実現可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明は、独立請求項1の特徴を有するフィルター要素を用いてこの課題を解決し、本発明のフィルター要素の有利なさらなる発展形態は、従属請求項で特定される。
【発明を実施するための形態】
【0037】
したがって、本発明は特に、喫煙製品またはHNB製品と共に使用するための吸い口用のフィルター要素であって、トウ材料から作製されたフィルター本体を有するフィルター要素に関する。トウ材料は、架橋および捲縮された酢酸セルロースフィラメント(セルロースアセテートフィラメント)の複数のモノフィラメントによって形成され、セルロースアセテートフィラメントは、特に、多葉形または多角形の、好ましくはY字形の断面形状を呈する。
【0038】
本発明によるフィルター要素は、特に、トウ材料のセルロースアセテートフィラメントに関して選択される特定のフィラメント力価を特徴とする。フィラメント力価は、好ましくは10デニール以下かつ5デニール以上の範囲にある。
【0039】
さらに、比較的低い総力価が、本発明のフィルター要素のトウ材料に関して選択され、好ましくは、10000デニール以下かつ5000デニール以上の範囲の総力価である。
【0040】
驚くべきことに、ここでは、10デニール以下の比較的低いフィラメント力価および10000デニール以下の比較的低い総力価にもかかわらず、トウ材料のセルロースフィラメントの比繊維重量、すなわち、いわゆる比アセテート重量に関して、フィルター要素長さ1mm当たり2.5mg以下の比較的低い値が選択された場合に、スリムまたはウルトラスリムタイプのシガレットの場合でさえ、全く望ましくないホットコラプス現象を効果的に防止することができることが見出された。
【0041】
比較的低いフィラメント力価、比較的低い総力価、およびセルロースアセテートフィラメントの比較的低い比繊維重量(アセテート重量)に関する仕様を用いることによって、吸引抵抗を著しく増大させることなく、スリム又はウルトラスリムタイプのシガレットの工学において必要とされるフィルター性能を達成するフィルター要素を実現することができる。これらのパラメータは、フィルター要素で達成可能な性能および用途の範囲を著しく増加させることを可能にする。
【0042】
特に、トウ材料のセルロースアセテートフィラメントは、少なくとも部分的に三葉形状、すなわち3つの腕部を有する星形の断面形状を呈する。そのような断面形状は、セルロースアセテートフィラメントが可能な限り最大の比表面積を有することによって高いろ過能力を可能にするために、よく適しており、これは、例えば、従来のシガレットの場合のように、原材料の経済的使用と共に所望されうる。
【0043】
これに代えて、例えば円形断面の極めて微細なフィラメントの束を用いて所望の大きな比表面積を得ることが可能である。しかしながら、セルロースアセテートフィラメントについては、他の断面形状、例えば、多葉形、多角形、またはX字形の断面形状も考えられる。
【0044】
本発明のフィルター要素のトウ材料は、連続スタッファーボックス捲縮処理されたセルロースアセテートフィラメントから形成される。約30%のセルロース-2,5-アセテートのアセトン溶液を紡糸口に通し、紡糸室でアセトンを蒸発させ、複数のセルロースアセテートフィラメント(5000~10,000)をストリップへと集め、スタッファーボックス中で捲縮(クリンプ処理)する。
【0045】
その後、生成物を乾燥させ、貯蔵容器に充填し、最後に300~600kgの重量のベールへと圧縮する。
【0046】
フィルタートウのベールがフィルターまたはシガレット製造業者に輸送された後、フィルタートウはベールから取り出され、フィルターロッド装置上においてフィルターロッドに加工される。それによって、フィルタートウは、フィラメントを結合するのに役立つ添加剤を備えた延伸装置内で延伸され、三次元ロービングを形成した後、入口漏斗を介して形成ユニットに導入され、そこで、それはクロス軸方向に圧縮され、紙に巻かれ、フィルター要素の最終長さに切断される。
【0047】
フィラメントを結合するために適用される添加剤は通常、例えばグリセロールトリアセテート(トリアセチン)などのセルロースアセテートのための高沸点溶媒であり、例えば、これは、適用された後、短時間にわたり、フィラメントの表面を可溶化する。2つのフィラメントが接触すると、過剰な添加剤が繊維表面に移動するとともにその後いくらかの時間を経て永久的な結合点が生じ、液滴であったセルロース-2,5-アセテートが、添加剤中で固化する。上述の硬化剤の移動により、1時間未満の貯蔵期間後に、機械的に強力な、充填密度の低い三次元的に架橋されたフィルターロッドが得られ、これは、その硬さのために、現代のシガレット機械で、困難なく高速で処理することができる。
【0048】
本発明によるフィルター要素のトウ材料に関して、比較的低いフィラメント力価、比較的低い総力価、およびフィルター要素長さ1mmあたり2.5mg以下のアセテート重量を選択することは、凝縮性成分に関して所望のフィルタリング性能を達成するが、低い総力価を維持しながら十分なフィルター硬度をなおも有するフィルター要素を実現することを可能にする。
【0049】
本発明のフィルター要素の実施形態によれば、トウ材料のモノフィラメントのセルロースアセテートフィラメントは、中空および/または管状のセルロースアセテートフィラメントとして少なくとも部分的に形成される。
【0050】
中空/管状のセルロースアセテートフィラメントによって特に理解されるものは、好ましくは、断面で見たときに1つ以上の連続した空洞を示す円筒形フィラメントである。
【0051】
そのような中空繊維は、少なくとも部分的にマルチルーメン中空繊維(多内腔型の中空繊維)として設計されてよい。「中実」セルロースアセテートフィラメントと比較して、シングルルーメン(単内腔型)またはマルチルーメン(多内腔型)の管状のセルロースアセテートフィラメントは、ねじれに対して比較的大幅に耐性があり、それによって、増加した材料圧縮なく、特に高いフィルトロナ硬さを実現できる。
【0052】
本発明のフィルター要素は、少なくとも部分的に中空のセルロースアセテートフィラメントとして形成されているセルロースアセテートフィラメントに少なくとも部分的に基づいてよいフィルター本体を含むので、低い吸引抵抗性および低いフィルタリング性能を実現でき、なぜならば、中空のセルロースアセテートフィラメントとして少なくとも部分的に形成されるフィルター要素のフィラメントは、全繊維体積に対して小さい外表面積を有するからである。
【0053】
これに関連して、驚くべきことに、フィラメントが部分的に中空のセルロースアセテートフィラメントとして形成されていることに起因して、本フィルター要素によって、特に高いフィルトロナ硬さが達成され得ることが見出された。
【0054】
実際、中空セルロースアセテートフィラメント(中空繊維)から少なくとも部分的に形成されるフィルター要素は、比較的低い単位体積当たりの繊維重量で、所望の最小限のフィルトロナ硬さを達成することが明らかになった。
【0055】
本発明のフィルター要素は、セルロースアセテートフィラメントをベースとするので、本発明のフィルター要素は、例えばシガレットのタバコロッドに関して、均一で、白色で、滑らかな口側前端を形成するように設計され、選択的なフェノールろ過効果をさらに実現することができる。
【0056】
1つには、セルロースアセテートフィラメントをベースとするフィルター要素を使用することにより、喫煙および健康の観点から特定の保持現象に関して明らかに優れた特性を示す、特にはシガレット用の、フィルターロッドを製造することが可能になる。
【0057】
セルロースアセテートから作られたフィルターは、有害なニトロソアミンおよびフェノールを、凝集物およびニコチンよりもはるかに効率的にろ過する。さらに、喫煙者は、セルロースアセテート製のフィルターロッドと組み合わされた、例えば「アメリカブレンド」、「ドイツブレンド」および「バージニア」などの、今日の慣用的なタバコブレンドの味を、最も味がよいと評価する。セルロースアセテートフィルタロッドが過小評価されないことのさらなる利点は、フィルターの切断表面の視覚的均一性に見出すことができる。
【0058】
実施形態に従ってフィラー材料として機能する中空セルロースアセテートフィラメントから少なくとも部分的に形成される本発明のフィルター要素によって、本発明の材料から作製されるフィルターロッドは、広範囲の様々な吸引抵抗性およびフィルタリング性能を有し得る。
【0059】
特に、中空セルロースアセテートフィラメントから少なくとも部分的になるフィルター材料は、改善された熱冷却効果を示すことが示された。フィラー材料としての中空セルロースアセテートフィラメントの使用は、依然として、非常に低いフィルタリング効果、すなわち、除去されるべき浮遊物質およびガスに対する保持効果を達成することができたと確認された。
【0060】
この効果は、中空のセルロースアセテートフィラメントが、ガス/空気中に潜在的に浮遊する物質がほんのわずかしか保持されないような様式で、表面積または清浄されるガス若しくは空気の流量を変化させることによって、達成されると推測される。別の理由は、中空セルロースアセテートフィラメントの使用が、異なる、特に有利なフィルター材料表面構造を達成することができることであり得る。
【0061】
本発明のフィルター要素は、さらに、加熱された粒子含有ガス(特にエアロゾル)の、特には可変な、冷却を可能にするという利点を有し、それにより、喫煙製品またはHNB製品の利用者によって取り込まれるガス、エアロゾルまたは水蒸気の温度を選択的に低下させることができるようになっている。フィルターおよび/またはフィラー材料中の中空セルロースアセテートフィラメントの割合を変化させることによって、所望の冷却効果を、用途に特に適合させることができる。
【0062】
本発明のフィルター要素において、流れは、本質的に、中空のセルロースアセテートフィラメント(中空繊維)の周りにあり、中空のセルロースアセテートフィラメントを通って流れることは少ないことに留意することがさらに重要である。幾何学的考察から、繊維間距離が、中空繊維のルーメン(中空部分)よりも大幅に大きいことが明らかである。この場合、エアロゾル(実質的に空気)の粘度は、得られるべき最小の抵抗の経路(すなわち、フィラメント間の流れであって、各個々のフィラメントを通らない経路)を生じる。
【0063】
言い換えれば、本発明のフィルター要素の実施形態では、トウ材料中の中空セルロースアセテートフィラメントを通る流れがないので、実効的なろ過表面は、決して最大化されない。
【0064】
したがって、特に、中空のセルロースアセテートフィラメントは、設定された目標パラメータに関して本発明のフィルターおよび/またはフィラー材料の性能に影響を及ぼすことなく、中空のセルロースアセテートフィラメントのルーメン(内腔)を閉鎖するよじれを有することができる。
【0065】
この文脈において特に注目すべきことは、中空繊維として実現される中空セルロースアセテートフィラメントが連続的に中空である必要はなく、むしろよじれによって部分的に閉鎖されていてもよい点である。それらは、理想的な円形から逸脱してもよい。
【0066】
本発明の実施形態は、トウ材料の中空セルロースアセテートフィラメントが一方では支持材料として、他方では冷却材料として機能することを提供する。中空のセルロースアセテートフィラメントが同時に支持材料として機能することによって、特にコンパクトなフィルター要素を実現することができ、それによって、喫煙製品の寸法を増大させる必要がない。
【0067】
本明細書で使用するとき、用語「フィルトロナ硬さ」は、フィルトロナ(Filtrona)原理に従って決定されるフィルター硬さを指す。この原理の下で、フィルター硬さは、直径12mmの円筒ロッドの扁平状前端を、300gの負荷で、水平に配置されたフィルターロッド上に垂直に押圧することによって決定される。最初の接触で先に決定された初期直径に対する圧縮直径の比が、フィルトロナ硬さ百分率をもたらす。
【0068】
フィルター要素、又はフィルターロッドの硬さは、それぞれ、特にシガレットフィルターにとって重要な目標基準である。これは、典型的にはいわゆるフィルトロナ硬さとして示される。強調されるべきこととして、フィルトロナ硬さはフィルター要素でのみ測定されるが、その元となる(原料)フィルター材料、したがってトウ材料では、測定されない。フィルター要素のフィルトロナ硬さは、フィルター要素上に噴霧され得る又は噴霧されるトリアセチンの量によって特に影響される。
【0069】
フィルトロナ硬度の最小限度は約88%であり、市場要件に合わせて設定される。したがって、フィルター要素のフィルトロナ硬さは、好ましくは約88%~95%、特に約90%~93%に設定することができる。
【0070】
本発明のフィルター要素の好ましい実施形態は、特にフィルターロッドとして、好ましくは約6mm~約4mmの直径、特に約5.5mm~約5.0mmの直径、好ましくは約5.35mmの直径を有するフィルター本体を提供し、フィルター本体の少なくとも一部は、紙または紙様の材料で包まれる。
【0071】
フィルター要素のフィルトロナ硬さは、この実施形態では、85%超、特に90%超であることが好ましい。
【0072】
フィルトロナ硬さは、特には、所与のフィルター要素直径に対するアセテート重量によって決定され、トウ材料のセルロースアセテートフィラメントのフィラメント力価は、フィルトロナ硬さにわずかな影響しか及ぼさない。
【0073】
本発明のフィルター要素の構成では、フィルター本体が、フィルター要素長1mmあたり最大2.5mgに達するアセテート重量を有するように提供される。
【0074】
フィルター要素のフィルトロナ硬さは、より強力なフィルターラップ紙またはより強力なチッピング紙によっても達成することができる。
【0075】
チッピング紙は、それによって複数のフィルター要素が一緒に結合されるか、または、それによってフィルター要素がタバコロッドに結合される、紙である。しかしながら、より強力なフィルターラップ紙またはより強力なチッピング紙を使用することによってフィルター要素のフィルトロナ硬さを増加させることは、このアプローチではより高いコストが予想され得るので、経済的な欠点を有する。
【0076】
フィルター要素のフィルトロナ硬さには、いわゆる「ホットコラプス(高温崩壊)」が関係し、フィルター要素が使用されるにつれて、すなわち、喫煙またはHNB製品と共にフィルター要素が使用されるにつれて、フィルター硬さが低下する。この現象は、特に、伝統的なシガレットにおいて、終わりの方の吸煙のうちの1つの間にフィルター要素が水分の存在下で加熱されるときに起こり得るが、この望ましくない効果は、HNB製品でも起こり得る。
【0077】
この文脈において、「ホットコラプス」現象に起因してフィルトロナ硬さが低下する程度は、記載された低いフィラメント力価、記載された低い総力価および低いアセテート重量を有するトウ材料が本発明のフィルター要素の基材として使用される場合に、著しく低減され得ることが示されている。
【0078】
本発明のフィルター要素のフィルター本体のトウ材料は、好ましくは0.3m/g~0.025m/gの範囲、特に0.15m/g未満の質量比表面積を有する。したがって、本発明のフィルター要素の吸引抵抗性およびフィルタリング性能は、フィルター要素の長さにおける低減なく、低減できる。したがって、対応して長い冷却部を可能にする比較的長いフィルター要素を実現でき、このことは、特にフィルター要素がHNB製品と共に使用される場合に、熱バランスに関して有利である。
【0079】
それに加えて、特に0.15m/g未満の値でのトウ材料の質量比表面積の本発明の仕様は、体積分率当たりのフィルター要素中の繊維重量を減少させることなく、および/またはトウ材料の総力価を減少させることなく、フィルター要素の吸引抵抗性およびフィルタリング性能を減少させることを可能にする。これは、体積分率当たりのフィルター要素材料中の繊維重量の低下に起因するかつ/または総力価の低下に起因するフィルター要素のフィルトロナ硬さの低下がない、という利点を有する。
【0080】
本発明のフィルター要素を製造するためのベース製品として機能するトウ材料のセルロースアセテートフィラメントは、特にセルロース-2,5-アセテート、セルロースブチレート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートおよび/またはセルロースプロピオネートフィラメントである。セルロースアセテートフィラメントは、好ましくは約1.5~3.0、好ましくは約2.2~2.6の置換度を有する。
【0081】
例えば、セルロースアセテート繊維の可塑化に好ましく使用されかつ繊維に適用される可塑剤は、以下の群の中から選択することができる:グリセロールエステル(特にグリセロールトリアセテート)、エチレンおよびプロピレンのカーボネート、クエン酸エステル(特にクエン酸アセチル、クエン酸トリエチル)、グリコースエステルまたはジエチレングリコールジベンゾエート。
【0082】
この技術分野の当業者は、使用される可塑剤および/または水溶性結合剤の量に精通している。一般に、約1~14重量%の可塑剤および/または結合剤含有量が存在するが、特別な場合には、可塑剤含有量は、この範囲を容易に超えることができる。
【0083】
セルロースアセテートフィラメントの表面上に好ましくは存在する水溶性結合剤は、特に、トウ材料のモノフィラメントまたはトウ材料に適用される高沸点溶媒であってよく、例えば、ポリアルキレンオキシド、水溶性エステルまたはエーテル、デンプン、デンプン誘導体、p-ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、p-ポリビニルアセテートおよび/または多糖類、水溶性ポリアミドおよびポリアクリレートである。
【0084】
この場合に特に認識されるのは、フィルター本体のトウ材料の残留ちぢれ(RS)及びフィルター本体の密度(ρ)も、フィルター要素の性能に大きな影響を及ぼすことであった。したがって、残留ちぢれに関連する密度値Aは、下記に関して、好ましくは、少なくとも0.016mg/mmである:
【数1】
【0085】
フィルター本体のトウ材料の残留ちぢれ(RS)は、特に3.0の値を超えるべきではなく、特に2.75の値を超えるべきではなく、トウ材料の残留ちぢれ(RS)は、好ましくは、約1. 5~約2.75、特には1.9~2.5である。
【0086】
残留ちぢれは、最終的な捲縮セルロースアセテートフィラメントの長さとフィルター要素の長さとの比として理解される。残留ちぢれは、所与のフィルター要素を特徴づける特徴である。
【0087】
驚くべきことに、同一のアセテート重量下での、フィルター本体トウ材料の比較的低い総力価は、必要なフィルター硬さを維持するために、より高い残留ちぢれ値を必要とすることが、見出された。
【0088】
本発明のさらなる態様は、喫煙製品またはHNB製品と共に使用される吸い口用のフィルター要素を製造するためのトウ材料を特定することに関し、トウ材料は、トウ材料から製造されるフィルター要素の効果に対して最適化され、特にフィルタリング性能およびフィルター硬さに関して可能な限り最も一貫した性能を示す。
【0089】
これに関連して、トウ材料のセルロースアセテートフィラメントが、特には事前規定され(所定の)又は規定可能な、均一なフィラメント力価を示すことも特に重要であることが確認された。事前規定されるまたは規定可能なこの均一なフィラメント力価は、特に、5~10デニールの範囲内である。
【0090】
トウ材料から作製されたフィルター要素の一貫した性能、特にフィルタリング性能およびフィルター硬さに関して一貫した性能を達成するために、均一なフィラメント力価の変動係数は、最大0.1、好ましくは最大0.05~最大0.01であるべきである。
【0091】
均一なフィラメント力価の変動係数は、偏差係数とも呼ばれ、統計的パラメータであり、分散とは対照的に、分布の相対的尺度を特徴付け、すなわち、統計変数または確率変数の測定単位に依存しない。
【0092】
換言すれば、トウ材料の製造中に保証されるのは、紡糸機のそれぞれ使用される紡糸口によって製造される個々のフィラメントが、均一なフィラメント力価を示すことである。
【0093】
これは、実際には、各紡糸口を、それ自身の、特には周波数制御された、紡糸ポンプに割り当て、それによって、紡糸機の各紡糸口に、紡糸流体(アセトン中の約30%セルロース-2,5-アセテートの溶液)が、単位時間当たりに各紡糸口から均一なノズル圧力および均一な量の紡糸流体が送達されうるような様式で供給されることを保証することによって、実現できる。
【0094】
容易に実現可能であるがそれにもかかわらず効果的であるこのアプローチは、特には事前規定されるかまたは規定可能である、均一なフィラメント力価を実現することを可能にする。
【0095】
これに代えて、またはこれに加えて、セルロースアセテートフィラメントから形成されるトウ材料のモノフィラメントが、均一な総力価を示すことが好ましく、これは、特には事前規定されまたは規定可能であり、少なくとも5000デニール及び最大で10,000デニールであり、均一な総力価の変動係数は、好ましくは最大で0.1、特には最大で0.05~最大で0.005である。変動係数は、特には、トウの長さにわたる複数の測定によって決定される。
【0096】
容易に実施されるこの手段は、本発明のフィルター要素の製造中の品質の変動を効果的に防止することができ、品質の変動は、特にはスリム及びウルトラスリムタイプのフィルター市場では受け入れられず、したがってフィルター要素の製造中に生産性の損失を伴う。
【0097】
したがって、本発明に関連する利点は多い。特に、フィルター本体のトウ材料が比較的低い総力価および比較的低いフィラメント力価を有する場合であっても、高温崩壊現象の発生が効果的に防止される、スリム及びウルトラスリムタイプのフィルター要素を実現することが可能である。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0097
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0097】
したがって、本発明に関連する利点は多い。特に、フィルター本体のトウ材料が比較的低い総力価および比較的低いフィラメント力価を有する場合であっても、高温崩壊現象の発生が効果的に防止される、スリム及びウルトラスリムタイプのフィルター要素を実現することが可能である。
本開示に係る発明は、下記の態様を含む:
<態様1>
喫煙製品又はHNB製品で用いるための吸い口のためのフィルター要素であって、
前記フィルター要素は、トウ材料からできているフィルター本体を有し、前記トウ材料は、架橋されかつ捲縮されたセルロースアセテートフィラメントの複数のモノフィラメントによって形成されており、前記セルロースアセテートフィラメントは、特に、多葉形又は多角形の、好ましくはY形状の、断面形状を呈し:
- 前記トウ材料の前記セルロースアセテートフィラメントは、均一なフィラメント力価を示し、これは、特には事前規定され又は規定可能であり、10デニール(11.1dtex)以下かつ5デニール(5.5dtex)以上の範囲であり、
- 前記トウ材料は、10000デニール(11.1kdtex)以下かつ5000デニール(5555.5dtex)以上の範囲の総力価を有し;かつ
- 前記トウ材料の前記セルロースアセテートフィラメントの比繊維重量は、フィルター要素長さmmあたり2.5mg以下であり、かつフィルター要素長さmmあたり1.0mg以上である、
フィルター要素。
<態様2>
前記均一な総力価の変動係数が、最大で0.1であり、好ましくは最大で0.05~最大で0.005である、態様1に記載のフィルター要素。
<態様3>
前記均一なフィラメント力価の変動係数が、最大で0.1であり、好ましくは、最大で0.05~最大で0.01である、態様1又は2に記載のフィルター要素。
<態様4>
前記フィルター本体が、特にはフィルターロッドとして実施されており、好ましくは、約6mm~約4mmの直径を有し、特には、約5.5mm~約5.0mmの直径を有し、好ましくは、約5.35mmの直径を有し、
前記フィルター本体の少なくとも一部が、紙又は紙様材料でラッピングされている、
態様1~3のいずれか一項に記載のフィルター要素。
<態様5>
300gの質量及び12mmの直径を有する円筒状の試験片の面端部を前記フィルター本体の上に前記フィルター本体軸に対して垂直に載せたときに、前記紙又は紙様のラッピングを有する前記フィルター本体が、0.90mm未満の、特には0.85mm未満の圧縮深さを有する、態様4に記載のフィルター要素。
<態様6>
300gの質量及び12mmの直径を有する円筒状の試験片の面端部を前記フィルター本体の上に前記フィルター本体軸に対して垂直に載せたときに、前記紙又は紙様のラッピングを有しない前記フィルター本体が、0.90mm未満の、特には0.85mm未満の圧縮深さを有する、態様4に記載のフィルター要素。
<態様7>
前記トウ材料のモノフィラメントの前記セルロースアセテートフィラメントの少なくとも一部が、少なくとも部分的に、中空のかつ/又は管状のセルロースアセテートフィラメントとして形成されている、態様1~6のいずれか一項に記載のフィルター要素。
<態様8>
前記フィルター本体の硬さが、少なくとも80%のフィルトロナ硬さに達し、好ましくは少なくとも約86%のフィルトロナ硬さに達する、態様1~7のいずれか一項に記載のフィルター要素。
<態様9>
前記フィルター本体が、可塑剤を含有し、約2%~約15%の可塑剤含有量、好ましくは約4%~約10%の可塑剤含有量を有し、前記可塑剤が、特には、トリアセチン、トリエチレングリコールジアセテート及び/又はクエン酸エチルエステルを含む、
態様1~8のいずれか一項に記載のフィルター要素。
<態様10>
前記フィルター本体の前記トウ材料が、残留ちぢれ(RS)及び密度(ρ)を示し、残留ちぢれと密度の関係値Aが、下記:
【数1】
で少なくとも0.016mg /mm である、態様1~9のいずれか一項に記載のフィルター要素。
<態様11>
態様1~10のいずれか一項、特には態様10に記載のフィルター要素であって、
前記フィルター本体のトウ材料の前記残留ちぢれ(RS)が、3.0の値を超えず、前記前記フィルター本体のトウ材料の前記残留ちぢれ(RS)が、好ましくは、約1.5~約2.75であり、特には1.9~2.5である、フィルター要素。
<態様12>
前記トウ材料の前記セルロースアセテートフィラメントが、少なくとも2.6N/kdenの引張強度を有する、態様1~11のいずれか一項に記載のフィルター要素。
<態様13>
喫煙製品又はHNB製品で用いる吸い口であって、態様1~12のいずれか一項に記載のフィルター要素を有する、吸い口。
<態様14>
態様13に記載の吸い口であって、
特にカプセル形状又はカプセル状の風味放出要素が、前記フィルター要素中にさらに組み込まれている、吸い口。
<態様15>
態様1~12のいずれか一項に記載のフィルター要素を有する、シガレットフィルター又はシガレットフィルター要素。
<態様16>
特にはカプセル形状又はカプセル状の風味放出要素が、前記フィルター要素にさらに組み込まれている、態様15に記載のシガレットフィルター又はシガレットフィルター要素。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙製品又はHNB製品で用いるための吸い口のためのフィルター要素であって、
前記フィルター要素は、トウ材料からできているフィルター本体を有し、前記トウ材料は、架橋されかつ捲縮されたセルロースアセテートフィラメントの複数のモノフィラメントによって形成されており、前記セルロースアセテートフィラメントは、特に、多葉形又は多角形の、好ましくはY形状の、断面形状を呈し:
- 前記トウ材料の前記セルロースアセテートフィラメントは、均一なフィラメント力価を示し、これは、特には事前規定され又は規定可能であり、10デニール(11.1dtex)以下かつ5デニール(5.5dtex)以上の範囲であり、
- 前記トウ材料は、10000デニール(11.1kdtex)以下かつ5000デニール(5555.5dtex)以上の範囲の総力価を有し;かつ
- 前記トウ材料の前記セルロースアセテートフィラメントの比繊維重量は、フィルター要素長さmmあたり2.5mg以下であり、かつフィルター要素長さmmあたり1.0mg以上である、
フィルター要素。
【請求項2】
前記均一な総力価の変動係数が、最大で0.1であり、好ましくは最大で0.05~最大で0.005である、請求項1に記載のフィルター要素。
【請求項3】
前記均一なフィラメント力価の変動係数が、最大で0.1であり、好ましくは、最大で0.05~最大で0.01である、請求項1又は2に記載のフィルター要素。
【請求項4】
前記フィルター本体が、特にはフィルターロッドとして実施されており、好ましくは、約6mm~約4mmの直径を有し、特には、約5.5mm~約5.0mmの直径を有し、好ましくは、約5.35mmの直径を有し、
前記フィルター本体の少なくとも一部が、紙又は紙様材料でラッピングされている、
請求項1又は2に記載のフィルター要素。
【請求項5】
300gの質量及び12mmの直径を有する円筒状の試験片の面端部を前記フィルター本体の上に前記フィルター本体軸に対して垂直に載せたときに、前記紙又は紙様のラッピングを有する前記フィルター本体が、0.90mm未満の、特には0.85mm未満の圧縮深さを有する、請求項4に記載のフィルター要素。
【請求項6】
300gの質量及び12mmの直径を有する円筒状の試験片の面端部を前記フィルター本体の上に前記フィルター本体軸に対して垂直に載せたときに、前記紙又は紙様のラッピングを有しない前記フィルター本体が、0.90mm未満の、特には0.85mm未満の圧縮深さを有する、請求項4に記載のフィルター要素。
【請求項7】
前記トウ材料のモノフィラメントの前記セルロースアセテートフィラメントの少なくとも一部が、少なくとも部分的に、中空のかつ/又は管状のセルロースアセテートフィラメントとして形成されている、請求項1又は2に記載のフィルター要素。
【請求項8】
前記フィルター本体の硬さが、少なくとも80%のフィルトロナ硬さに達し、好ましくは少なくとも約86%のフィルトロナ硬さに達する、請求項1又は2に記載のフィルター要素。
【請求項9】
前記フィルター本体が、可塑剤を含有し、約2%~約15%の可塑剤含有量、好ましくは約4%~約10%の可塑剤含有量を有し、前記可塑剤が、特には、トリアセチン、トリエチレングリコールジアセテート及び/又はクエン酸エチルエステルを含む、
請求項1又は2に記載のフィルター要素。
【請求項10】
前記フィルター本体の前記トウ材料が、残留ちぢれ(RS)及び密度(ρ)を示し、残留ちぢれと密度の関係値Aが、下記:
【数1】
で少なくとも0.016mg/mmである、請求項1又は2に記載のフィルター要素。
【請求項11】
請求項1又は2に記載のフィルター要素であって、
前記フィルター本体のトウ材料の前記残留ちぢれ(RS)が、3.0の値を超えず、前記前記フィルター本体のトウ材料の前記残留ちぢれ(RS)が、好ましくは、約1.5~約2.75であり、特には1.9~2.5である、フィルター要素。
【請求項12】
前記トウ材料の前記セルロースアセテートフィラメントが、少なくとも2.6N/kdenの引張強度を有する、請求項1又は2に記載のフィルター要素。
【請求項13】
喫煙製品又はHNB製品で用いる吸い口であって、請求項1又は2に記載のフィルター要素を有する、吸い口。
【請求項14】
請求項13に記載の吸い口であって、
特にカプセル形状又はカプセル状の風味放出要素が、前記フィルター要素中にさらに組み込まれている、吸い口。
【請求項15】
請求項1又は2に記載のフィルター要素を有する、シガレットフィルター又はシガレットフィルター要素。
【請求項16】
特にはカプセル形状又はカプセル状の風味放出要素が、前記フィルター要素にさらに組み込まれている、請求項15に記載のシガレットフィルター又はシガレットフィルター要素。
【国際調査報告】