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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-21
(54)【発明の名称】透過性測定デバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 13/04 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
G01N13/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547107
(86)(22)【出願日】2023-02-07
(85)【翻訳文提出日】2024-09-04
(86)【国際出願番号】 EP2023053024
(87)【国際公開番号】W WO2023152143
(87)【国際公開日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】2201116
(32)【優先日】2022-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・カシュー
(72)【発明者】
【氏名】オレリアン・バンコー
(72)【発明者】
【氏名】松永 行子
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・ジャラベール
(57)【要約】
流体に対する浸透性物質の透過性を測定するデバイスであって、特定容積の空気空洞(4)と、・ある量の流体を含有するよう構成された支持体(2)および・浸透性物質(3)を含む物質モジュールとを含み、空気空洞(4)と該支持体(2)とは浸透性物質(3)の特定の厚さHがある量の流体と空気空洞との間にあるように配置され、空気空洞(4)の壁が浸透性物質から形成され、経時的に空洞(4)内の圧力PCを測定する手段(10)と、空洞内で浸透性物質を通る流動を誘発するため、ある量の流体に圧力PBをかけるよう構成された流体圧力を制御するための手段(11)と、デジタル手段であり、・ある量の流体と空洞(4)との間の圧力勾配▽P=(PB-PC)/Hを判定し、・空洞内の気圧の時間に関連した導関数に基づいて浸透性物質を通る流体の流量dPC/dtを判定し、・流量および圧力勾配▽Pに基づいて浸透性物質の透過性を判定するよう構成されているデジタル手段とをさらに含むデバイス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体に対する浸透性物質の透過性を測定するためのデバイス(1)であって、
- 特定の容積の空気空洞(4)と、
- 物質モジュールであり、
・ ある量の流体を含有するように構成されている支持体(2)、および
・ 前記浸透性物質(3)
を含む、物質モジュールと
を含み、
ここで、前記空気空洞(4)と前記支持体(2)とは、前記浸透性物質(3)の特定の厚さHが前記ある量の流体と前記空気空洞との間に配置されるように配置されており、前記空気空洞(4)の壁が前記浸透性物質によって部分的に形成されており、
- 時間の関数としての、前記空気空洞(4)内の圧力PCを測定するための手段(10)と、
- 前記浸透性物質を通って前記空気空洞内へ流体流を生じさせるために、前記ある量の流体へ流圧PBをかけるように構成されている、前記ある量の流体の圧力を制御するための手段(11)と、
- デジタル手段であり、
・ 前記ある量の流体と前記空気空洞との間の圧力勾配、▽P = (PB-PC)/Hを判定し、
・ 前記空洞内の空気の圧力の経時的ドリフトから、前記浸透性物質を通る流体の流量、dPC/dtを判定し、かつ
・ 前記流量および前記圧力勾配、▽P、から、前記浸透性物質の前記透過性を判定する
ように構成されている、デジタル手段と
をさらに含む、デバイス(1)。
【請求項2】
前記デジタル手段は、時間の関数としての、前記ある量の流体と前記空気空洞(4)との間の前記圧力勾配、▽P、から、前記浸透性物質の弾性係数を決定するようにさらに構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス(1)。
【請求項3】
前記圧力を測定するための前記手段(10)は、前記空気空洞(4)に接続されている遠隔圧力センサ(10)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のデバイス(1)。
【請求項4】
前記ある量の流体は、前記浸透性物質を貫通するマイクロチャネル(8)内に部分的に含有されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項5】
前記支持体(2)はポリジメチルシロキサン、PDMS、から作製されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項6】
前記空気空洞(4)は3D印刷によって製造されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項7】
前記浸透性物質(3)は前記支持体(2)に接着されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項8】
前記浸透性物質(3)は前記支持体(2)上に取外し可能に配設されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項9】
流体に対して浸透性がある物質(3)の透過性を測定する方法(100)であって、前記浸透性物質(3)の所定の厚さHが所定の容積の空気空洞(4)とある量の流体との間に配置されており、前記空気空洞(4)の壁が前記浸透性物質(3)によって部分的に形成されており、前記方法(100)は、
- 前記浸透性物質(3)を通って前記空気空洞(4)内へ流動を生じさせるために、前記ある量の流体へ圧力PBをかけるステップ(110)と、
- 時間の関数としての、前記空気空洞(4)内の圧力PCを測定するステップ(120)と、
- 前記ある量の流体と前記空気空洞(4)との間の圧力勾配、▽P = (PB-PC)/Hを判定するステップ(130)と、
- 前記空洞(4)内の空気の圧力の経時的ドリフトから、前記浸透性物質(3)を通る流体の流量、dPC/dtを判定するステップ(140)と、かつ
- 前記流量および前記圧力勾配▽Pから、前記浸透性物質(3)の前記透過性を判定するステップ(150)と
を含む、方法。
【請求項10】
前記方法は、時間の関数としての、前記ある量の流体と前記空気空洞(4)との間の前記圧力勾配、▽P、から、前記浸透性物質の弾性係数を決定するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法(100)。
【請求項11】
前記空気空洞(4)内の前記圧力を測定する前記ステップ(120)は、前記空気空洞(4)に接続されている遠隔圧力センサ(10)によって実施されることを特徴とする、請求項9または10に記載の方法(100)。
【請求項12】
前記空気空洞(4)内の前記圧力を測定する前記ステップ(120)は、前記圧力、PB、の印加(110)を用いて、一定の間隔で実施され、かつPB/Hと0との間の圧力勾配値▽Pの範囲の全体に亘って、前記流体流量の変化に追従することを可能にすることを特徴とする、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項13】
前記方法は、- 物質支持体(2)、前記空気空洞(4)、および前記浸透性物質(3)を設けるステップであり、前記支持体(2)はある量の流体を含有するように構成されている、設けるステップと、
- 前記支持体(2)に前記浸透性物質(3)を付けるステップと、
- 前記物質上に前記空気空洞(4)を配設するステップと、
- 前記空気空洞(4)内の前記圧力を測定するための手段(10)を設けるステップと、
- 前記ある量の流体の前記圧力を制御するための手段(11)を設けるステップと
を含む、先行する準備段階(105)をさらに含むことを特徴とする、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体に対して浸透性がある物質の透過性を測定するためのデバイスに関する。また、本発明は、そのようなデバイスを使用する方法に関する。
【0002】
本発明の分野は、非限定的に、媒体および物質の特性を明らかにする分野である。
【背景技術】
【0003】
生物学では、細胞組織などの物質の透過性は交換機構に関して重要な数量である。これは組織の基質が流体に対して浸透性があり、静水圧が、リンパ系に向かう血圧によって維持されているためである。透過性は、流動に対する障壁を形成する(内皮または上皮と呼ばれる)界面細胞組織によって制御されている。流動に対するより強い抵抗が、より低い透過係数によって表される。
【0004】
流体に対する媒体または物質の透過性を知るために、この媒体または物質の両側での圧力差の影響下で流体を通過させる、この媒体または物質の能力を判定することが必要である。透過性測定器具が「浸透計」と呼ばれる。生物学的物質、例えば体内組織、の文脈において、透過性は物質の機械的性質と結びつけて考えられ、ポロメカニクスが次いで述べられる。
【0005】
媒体または物質の透過性を判定することが、この物質を通る流体の流量およびこの流動の方向に沿った圧力勾配を測定することを必要とする。
【0006】
細胞基質の間質流の特性を明らかにするためのツールにおいて、これら2つの数量が同時に知られることはめったにない。
【0007】
例えば「Transport of Molecules in the Tumour Interstitium: A review」、Cancer Res 47: 3039および「Measurement of interstitial fluid pressure: Comparison of Methods」、Annals Biomed Engineering 14: 139の記事において、細胞組織の透過性を測定する方法が要約されている。
【0008】
また、細胞培地または細胞壁を通る液体の流動を測定する、詳細には、流動の速度を証明する蛍光トレーサの移動動態を追跡する方法が知られている。
【0009】
最後に、経上皮電気抵抗(TEER: transepithelial electrical resistance)を測定するものなどの電気的方法が、壁の特性を明らかにするために使用されることが可能であり、圧力ゼロでイオン流を測定することを可能にする。
【0010】
これら2つの手法は、巨大分子またはイオンに対する透過性をこのように測定する。流体に対する透過性の特性を明らかにする場合、詳細には、身体の標的区域内で刺されるニードルに対応するかつオフセット用圧力センサを備え付けられている「ウィックインニードル」の方法などの、組織内の局所の圧力を測定する方法が存在する。他の場合には、流体流の測定が流量計によって行われる。しかし、言及された方法およびツールは、単一の測定手段を使用して、媒体または物質を通る流量と圧力勾配の両方を直接測定することを可能にしない。
【0011】
物質分野、詳細には建築において、透過性を測定するために、他のツールが知られている。例えば、流体に対するコンクリートの透過性は、例えばJ.P. Ollivier、M. Massat、「Permeability and microstructure of concrete: a review of modelling」、Cement and Concrete Research、Volume 22、1992年、503~514頁において記載されているように、ブレイン透過性メータ(Blaine permeability meter)によって判定され得る。該ブレイン透過性メータは、低速センサに連結されている圧力センサを用いて、そのような測定を可能にする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「Transport of Molecules in the Tumour Interstitium: A review」、Cancer Res 47: 3039
【非特許文献2】「Measurement of interstitial fluid pressure: Comparison of Methods」、Annals Biomed Engineering 14: 139
【非特許文献3】J.P. Ollivier、M. Massat、「Permeability and microstructure of concrete: a review of modelling」、Cement and Concrete Research、Volume 22、1992年、503~514頁
【非特許文献4】Rosti他、「The Breakdown of Darcy's Law in a Soft Porous Material」、Soft Matter 16. 939~944頁(2020年)(実線)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、これらの欠点を克服し得る、浸透性物質の透過性を測定するためのデバイスおよび方法を提案することである。
【0014】
本発明の1つの目的が、浸透性物質の透過性を判定するためのデバイスおよび方法を提案して、該浸透性物質を通る流体の圧力勾配および流量を直接測定することを可能にすることである。
【0015】
本発明の別の目的が、その使用が様々な種類の物質を容易に測定することおよび1回だけの測定で実験条件のスキャンに適合されることを可能にする、浸透性物質の透過性を判定するためのデバイスおよび方法を提案することである。
【0016】
本発明のさらに別の目的が、その実施が自動化され得る、浸透性物質の透過性を判定するためのデバイスおよび方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
これらの目的の少なくとも1つが、流体に対して浸透性がある物質の透過性を測定するためのデバイスを用いて達成され、該デバイスは、
- 特定の容積の空気空洞と、
- 物質モジュールであり、
・ ある量の流体を含有する/搬送するように構成されている支持体、および
・ 浸透性物質
を含む、物質モジュールと
を含み、
ここで、該空気空洞と該支持体とは、該浸透性物質の特定の厚さHが該ある量の流体と空気空洞との間に配置されるように配置されており、空気空洞の壁が浸透性物質によって部分的に形成されており、
- 時間の関数としての、空気空洞内の圧力PCを測定するための手段と、
- 浸透性物質を通って空気空洞内へ流体流を生じさせるために、流圧PBをかけるように構成されている、ある量の流体の該圧力を制御するための手段と、
- デジタル手段であり、
・ ある量の流体と空気空洞との間の圧力勾配、▽P = (PB-PC)/Hを判定し、
・ 空洞内の空気の圧力の経時的ドリフトから、浸透性物質を通る流体の流量、dPC/dtを判定し、かつ
・ 流量および圧力勾配▽Pから、浸透性物質の透過性を判定する
ように構成されている、デジタル手段と
をさらに含む、
デバイス。
【0018】
本発明による測定デバイスは浸透計、すなわち透過性を測定するための器具であると考えられる。デバイスの応答はコンデンサの応答であると考えられる。これは、ある量の流体への圧力の印加が永続的な体制で行われないことを意味する。したがって、該ある量の流体への一度だけの圧力印加で、圧力勾配の関数としての、透過性の反応曲線を得ることが可能である。
【0019】
本発明によるデバイスは、浸透性物質を通る流体の流量およびこの物質にかけられる圧力勾配を直接測定することを可能にすることが有利である。測定される物質の透過性はこれら2つの数量からすぐに推定される。
【0020】
本発明によるデバイスは、非常に簡単で実施しやすい圧力センサの統合をさらに可能にする。市販の標準的なセンサが該デバイス内で使用され得る。
【0021】
実際、圧力センサは空気空洞からある距離の所にずらされている可能性がある。一例によれば、圧力センサは、既知の容積の管を用いて、空気空洞に接続され得る。
【0022】
したがって、単一の圧力コントローラなどの同じ圧力制御手段は、複数の物質モジュール/空気空洞組立体に使用され得る。
【0023】
本発明によるデバイスは細胞インキュベーション条件に適合し、例えば、詳細には臓器オンチップを製造するために、組織工学の状況において、インキュベータ内で、本発明によるデバイスを用いて測定を行うことが可能である。測定および圧力制御は遠隔で行われる。
【0024】
本発明によるデバイスは臓器オンチップの設計に容易に適応する。
【0025】
さらに、本発明によるデバイスは、複数の異なる種類の浸透性物質で使用され得る。例えば、障壁層の有無に関わらず、細胞組織の全種類、または高分子膜もしくはポリマーコンクリートなどの他の浸透性物質が、本発明によるデバイスを用いて測定され得る。
【0026】
流体は液体または気体、例えば水または空気、である可能性がある。
【0027】
一実施形態によれば、デジタル手段は、時間の関数としての、ある量の流体と空気空洞との間の圧力勾配から、浸透性物質の弾性係数を決定するようにさらに構成され得る。
【0028】
工学では、物質が、そのヤング率、または弾性係数、およびそのポワソン比によって特徴付けられ得る。
【0029】
時間の関数としての空洞内の圧力の測定から、圧力応答の差別化された動態(differentiated kinetics)を用いて、物質の機械的特性および流体力学的特性の両方にアクセスすることが可能である。物質に静水圧がかけられた場合、該物質は変形に晒され、物質の透過性に因り、空気空洞内の圧力の増大に関与する。これら2つの機構は非常に異なる時間スケールを有し、圧力勾配が分析されることを可能にする。
【0030】
変形の大きさは、物質の弾性が高くなるにつれて低下するヤング率に対応して増大する。ポワソン比は、静水圧の印加方向に対して垂直に、物質の収縮の特性を明らかにすることを可能にし、この収縮は物質の構造的再構成に因るものである。所定のヤング率では、ポワソン比は変形応答動態の最初に影響を及ぼす。
【0031】
有利な実施形態によれば、ある量の流体は浸透性物質を貫通するマイクロチャネル内に部分的に含有され得る。
【0032】
支持体は、ある量の流体が中に含有され運搬される、チャネルおよびリザーバのシステムも含み得る。このシステムはマイクロチャネルと流体連通している。
【0033】
実施の一例によれば、支持体は、詳細にはポリジメチルシロキサン(PDMS)系の、シリコーンから作製され得る。
【0034】
PDMSは有利な特性を有する。それは、特に化学的に無害で、無毒で、透明である。
【0035】
浸透性物質層を通る選択的流動測定を行うことができるように、界面における不浸透性を保証するために、物質/支持体界面に間隙が存在しない必要がある。この目的のために、物質モジュールを実施するために、2つの物質間の封止接合が設けられる。
【0036】
第1の実施例によれば、浸透性物質は支持体に永続的に接着され得る。
【0037】
永続的接着が、浸透性物質がコラーゲンである場合に特に適合される。該コラーゲンは、実際、非常に柔らかく壊れやすく、支持体への接着は損傷を与えない固定手段を代表する。
【0038】
別の実施例によれば、浸透性物質は、物質/支持体界面で、絶縁継手を用いて支持体にクランプすることによって保持され得る。
【0039】
同発明の別の態様によれば、流体に対して浸透性がある物質の透過性を測定する方法であって、浸透性物質の所定の厚さHが所定の容積の空気空洞とある量の流体との間に配置されており、該空気空洞の壁が浸透性物質によって部分的に形成されており、該方法は、次の:
- 浸透性物質を通って空気空洞へ流動を生じさせるために、該ある量の流体へ圧力PBをかけるステップと、
- 時間の関数としての、空気空洞内の圧力PCを測定するステップと、
- ある量の流体と空気空洞との間の圧力勾配、▽P = (PB-PC)/Hを判定するステップと、
- 空洞内の空気の圧力の経時的ドリフトから、浸透性物質を通る流体の流量、dPC/dtを判定するステップと、かつ
- 該流量および該圧力勾配▽Pから、浸透性物質の透過性を判定するステップと
を含む、方法、が提案されている。
【0040】
本発明による方法は、浸透性物質の透過性、すなわち圧力勾配の影響下で自体が流体によって通過されることを可能にする能力、を判定することを可能にする。
【0041】
本発明による方法は、浸透性物質を通る流体の流量およびこの物質の両側の圧力の差を直接測定することを可能にする。測定される物質の透過性はこれら2つの数量からすぐに推定され得る。
【0042】
一実施形態によれば、本方法は、時間の関数としての、ある量の流体と空気空洞(4)との間の圧力勾配、▽Pから、浸透性物質の弾性係数を決定するステップをさらに含み得る。
【0043】
空洞内の圧力を測定するステップが、空気空洞に接続されている遠隔圧力センサによって実施され得ることが有利である。
【0044】
あるいは、空気空洞内の圧力を測定するステップが、該空洞のすぐ近くにある圧力センサによって実施され得る。
【0045】
一実施形態によれば、空洞内の圧力を測定するステップが、ある量の流体への圧力(PB)の印加の開始から、規則的な間隔で実施され得る。
【0046】
空洞内の圧力測定の頻度は浸透性物質の障壁に従って適応され得る。
【0047】
一実施形態によれば、本発明による方法は事前準備段階をさらに含み得る。該準備段階は次の:
- 物質支持体、空気空洞、および浸透性物質を設けるステップであり、該支持体はある量の流体を含有する/搬送するように構成されている、設けるステップと、
- 支持体に浸透性物質を付けるステップと、
- 物質上に空気空洞を配設するステップと、
- 空気空洞内の圧力を測定するための手段を設けるステップと、
- ある量の流体の圧力を制御するための手段を設けるステップと
を含み得る。
【0048】
この準備段階は、透過性が測定されることが望まれている物質と共に、本発明による測定デバイスを使用することを可能にする。支持体および浸透性物質を含む新しい物質モジュールが、各新しい測定ごとに準備されなければならない。これは、浸透性物質層を通る選択的流動測定を行うことができるように、界面における透過性を保証することができることが必要であるためである。この目的のために、2つの物質間の封止継手が、物質モジュールを準備するために設けられる。
【0049】
この目的のために、前の測定の支持体は、測定される新しい浸透性物質を上に配設することによって、再使用され得る。これは、詳細には、例えばクランプすることによって、支持体に取外し可能に固定され得る頑丈な物質に関して示されている。
【0050】
あるいは、物質が、例えば接着によって、支持体に永続的に固定されなければならない場合、測定される各新しい浸透性物質ごとに新しい支持体が使用されなければならない。
【0051】
空気空洞を備えた接続部品はいくつかの異なる物質モジュールで再使用されることが可能であり、この部品は互いに交換可能に物質モジュールに固定される。
【0052】
他の利点および特徴が、全く制限的でない例の詳細な説明の検討から、かつ添付の図面から、出現するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明の状況で使用され得る測定デバイスの非限定的例示的実施形態の分解概略図である。
図2図1の測定デバイスの部分概略横断面図である。
図3】本発明の一実施形態のデバイスにおいて実施される、マイクロチャネルが貫通する浸透性物質層の、横断面部分概略図である。
図4】本発明の状況で使用され得る測定デバイスの別の非制限的例示的実施形態の概略分解図である。
図5】本発明による測定方法の非限定的例示的実施形態の概略図である。
図6】本発明を用いて得られる流量測定の例の図である。
図7】本発明を用いて得られる圧力測定の例の図である。
図8】本発明を用いて得られる圧力測定の別の例の図である。
図9】本発明を用いて得られる圧力測定のさらに別の例の図である。
図10】本発明を用いて得られる、様々な浸透性物質に関する、圧力測定のさらに別の例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
当然、以下に説明される実施形態は全く限定的でない。詳細には、特徴のこの選択が技術的優位性を与えるのに、または先行技術に対して本発明を差別化するのに十分である場合、説明されるその他の特徴から分離された、以下に説明される特徴の選択のみを含む、本発明の変形形態を想像することが可能であろう。この選択は、構造細部のない、または構造細部の一部のみを有する(この一部だけで技術的優位性を与えるのに、もしくは先行技術に対して本発明を差別化するのに十分である場合)、少なくとも1つの好ましくは機能的な特徴を含む。
【0055】
詳細には、ある技術的レベルでのこの組合せに反対するものがなければ、変形形態の全ておよび説明されている実施形態の全ては互いに組合せられ得る。
【0056】
図において、いくつかの図に共通する要素は同じ参照符号を保持している可能性がある。
【0057】
本発明の状況において使用され得る測定デバイスの実施形態が、図1図2、および図4を参照して、以下に説明される。図1は測定デバイスの例の半分解概略図である。図2は、図1の測定デバイスの部分横断面図である。図4は測定デバイスの別の例の概略図である。
【0058】
図1および図2の実施形態において示されているデバイス1は、浸透性物質層3および空気空洞4が配置されている支持体2を含む。支持体2および浸透性物質層3を含む組立体は物質モジュールであると考えられる。浸透性物質層3は、該層の底面の端から端まで、支持体2内に設けられているその位置に接着されている。
【0059】
支持体2はポリジメチルシロキサン(PDMS)から作製されていることが好ましい。当然、他の物質、詳細にはポリマーが、支持体2に使用され得る。
【0060】
デバイス1は、空気を含有する空洞4をさらに含む。図1および図2に示されているこの例では、空気空洞4は接続部品5内に作り出されている。該接続部品5は3D印刷部品、または機械加工部品であり得る。該空気空洞4は所定の容積を有する。空気空洞4の壁の1つが浸透性物質層3によって形成されている。
【0061】
図1および図2に示されているデバイス1の例示的実施では、支持体2は、ある量の液体を含有し、浸透性物質層3へ運搬するためのチャネルシステムを含む。該チャネルシステムは、マイクロチャネル8および空気空洞4と流体連通している2つの横チャネル7a、7bを含む。
【0062】
マイクロチャネル8は、浸透性物質を貫通して針を通すことによって作り出される。コラーゲンの場合、針は、コラーゲンがゲルフォーム状態にある間に挿入される。該ゲルは、次に、交差結合され、コラーゲンゲルが固体になると、針は除去され、流体用の通路を作り出すことを可能にする。
【0063】
針が除去された後、チャネル8が、空気空洞4に隣接した面と反対の面に近接して、浸透性物質層3を貫通して残っている。したがって、浸透性物質層3のかなりの厚さが、定められた空気空洞4とマイクロチャネル8内の流体との間に配置されている。それが、浸透性物質の透過性を判定するために考慮されている、マイクロチャネル8と空気空洞との間の層3の厚さHである。
【0064】
液体は例えば水である。
【0065】
接続部品5は、圧力PBがそれを介してある量の流体にかけられ得る第2の空洞9を含む。図1および図2に示されている例示的実施では、制御空洞と呼ばれるこの空洞9は、環形状を有し、空気空洞4の周囲に配置されている。
【0066】
制御空洞9内の圧力を制御するために、デバイス1は、圧力コントローラ11などの圧力制御手段を含む。
【0067】
本発明によるデバイス1は圧力測定手段も含む。それらは、詳細には、空気空洞4内の圧力PCを測定するために使用される。該圧力測定手段には遠隔圧力センサ10が含まれる。該圧力センサ10は、較正容積を有する管(図示せず)を用いて、空気空洞4に接続され得る。該管の該容積は、次いで、空気空洞4の容積に加えられる。
【0068】
圧力コントローラ11および圧力センサ10は、Labview(ナショナルインスツルメント(National Instruments)社の登録商標)タイプの適合されたソフトウェアによって接続されて、圧力制御および圧力測定の取得を実施し得る。
【0069】
デバイスは、浸透性物質3の透過性を判定するためのデジタル手段も含む。これらのデジタル手段には、少なくとも1つのコンピュータ、中央ユニットもしくは演算器、マイクロプロセッサ、および/または適合されたソフトウェア手段が含まれる。
【0070】
したがって、デバイス1が浸透性物質3の透過性を測定するために使用される場合、制御手段によって圧力PBがある量の流体にかけられ、制御空洞9内の圧力PBを制御する。図3は、マイクロチャネル8が通過する浸透性物質層3の部分横断面を示し、物質層3の底面はその支持体(図示せず)に固定されている。制御空洞内の圧力PBが高められた場合、チャネルシステムおよびマイクロチャネル8内に位置する流体流が浸透性物質3を通り抜けて、空気空洞4へ渡る。流体流はその流速(q)によって特徴付けられ得る。空気空洞4内の空気容量は、次いで、減少し、空気の圧力PCは上昇する。空気空洞4内の圧力の変化および流体の流量を測定することによって、浸透性物質3の透過性は判定され得る。
【0071】
本発明によるデバイスの別の実施形態が図4に示されている。デバイス1は、浸透性物質層3および空気空洞4が配置されている支持体2も含む。該浸透性物質層3は該支持体2上に接着されても配置されてもいない。物質3は支持部品2aの穿孔部6にあるこれらの横縁部によって懸架されている。物質3は、穿孔部6内のその縁部上にクランプされている膜の形であることが好ましい。したがって、物質3の底面および上面は自由に動く。支持部品2aは、液体が物質3を通って空気空洞4へ流動することができるように、支持体2内に配置されている。圧力センサ10は空気空洞4を閉鎖している。支持部品2aは取外し可能であり、デバイス1内に他の物質を配置することを容易にする。
【0072】
空洞内の空気圧の変化を引き起こし得る温度の変化を回避するために、デバイスは、保護ハウジング、例えばプラスチックハウジング、を設けられることが可能である。これは、デバイス内の温度の安定性および均一性を保証することを可能にする。
【0073】
図1図2、および図4に示されている実施形態によるデバイス1は、以下に説明される判定方法のステップを実施するために使用され得る。
【0074】
図5は、本発明による、浸透性物質の透過性を判定する方法の非限定的例示的実施形態の概略図である。
【0075】
図5に示されている方法100は、透過性が判定される浸透性物質層が空気空洞とある量の流体との間に配置される準備ステップ105を含む。物質層は既知の厚さHを有する。この目的のために、浸透性物質層は、空気空洞が該層の一方の側にかつ流体が他方の側に直接配置されるように、支持体内に配置される。この位置決めは、図1および図2を参照して前述されているように、物質モジュールおよび接続部品5によって実施され得る。次に、空気空洞内の圧力を測定するための、かつ流体にかけられる圧力を制御するための手段が、前述されているように設けられ得る。
【0076】
この準備ステップ105は、必要な物質を備えた測定デバイスを配置することを可能にする。デバイス1は図1および図2を参照して説明されている通りである可能性がある。空気空洞を有する接続部品5は、他の物質モジュールで再使用され得る。該接続部品5は物質モジュールに互いに交換可能に固定されている。従来のゴム製突起部などのシールがこの組立てを実施するために使用され得る。浸透性物質がコラーゲンまたはこの種の別の壊れやすい物質である場合、コラーゲンは支持体に接着されなければならないので、物質モジュールは浸透性物質の各新しい測定ごとに新たに用意されなければならない。他の浸透性物質は支持体から除去されることが可能であり、したがって、支持体は再使用されることが可能である。
【0077】
方法100は、ある量の流体に圧力PBをかけるステップ110を含む。制御空洞9内の圧力は、詳細には、該圧力が所定の値まで上昇するように制御され得る。したがって、浸透性物質層3内のマイクロチャネル8内の圧力PBは上昇し、かつ流体が浸透性物質を通過し、空気空洞4内に溜まる。
【0078】
流体が液体である場合、空気空洞4内の空気量は減少し、その結果、空洞4内の空気の圧力は、浸透性物質層を通る流動の関数として上昇する。
【0079】
流体が気体である場合、空洞内に既に存在する空気および(やはり空気である可能性がある)気体の成分分子の数が空洞内で増加し、したがってその中の圧力が上昇する。
【0080】
測定するステップ120では、空気空洞4内の圧力PCは時間の関数として測定される。
【0081】
空気空洞内の圧力PCの測定から、ある量の流体と空気空洞との間の圧力勾配はステップ130において判定され得る。この圧力勾配は次のように表される:
【0082】
【数1】
【0083】
同時に、浸透性物質を通り抜ける流体の流量は、方法のステップ140において、空洞内の空気圧PCの経時的ドリフト、dPC/dから判定され得る。
【0084】
時間間隔dtの間に物質を通過する流体量はqSdtに等しく、Sは浸透性物質内のマイクロチャネルの表面積、qは流体の流速である。空気の圧縮率係数は、定温tにおいて、次のように定義され得る:
【0085】
【数2】
【0086】
低レイノルズ数を有する一方向流動の場合、透過性係数κはダーシーの法則で定義される。
【0087】
【数3】
【0088】
μは流体の粘性係数、dP/dx = (PB-PC)/Hは圧力勾配。係数μは流体の粘性を特徴付ける(例えば、水では0.001Pa.s)。このことから次のように推定される。
【0089】
【数4】
【0090】
空洞内の圧力PCの経時的ドリフトは次いで次のように表される。
【0091】
【数5】
【0092】
因数βは周囲温度での空気圧縮率であり、VCは空気空洞の容積である。この容積VCは、測定することが期待される流体流量に応じて調整され得る。この実施形態では、かつ入力圧力PMをかけることによって、簡易化された1次元モデルを用いて、物質の機械的変形を空洞内の圧力の変化と統合することが可能である。
【0093】
【数6】
【0094】
ここで、τ = μH2/κMおよびλnは方程式αλntan(λn) = 1の根、α = βVCM/SHである。Mは、該1次元モデルの弾性係数と定義される。
【0095】
方法100のステップ150において、浸透性物質の透過性κは、方程式「数5」から判定される。
【0096】
ヒドロゲルの場合、透過性はおよそ10-12m2から10-20m2までである。
【0097】
「数4」の表示では、パラメータHおよびSは物質の幾何学的因子である。これらの因子は、浸透性物質を備えた測定デバイスの幾何学的形状が複雑である場合、数値流動シミュレーションによって修正され得る。
【0098】
以下に、本発明による方法およびデバイスの実施例を説明する。
【0099】
第1の例によれば、コラーゲンの透過性を、新田ゼラチン株式会社(Nitta Gelatin)によって提供されているタイプIPおよびIAのコラーゲンに関して判定し、それらタイプは酸性媒体においてそれぞれ酵素的に(ペプシン)または化学的に抽出される、豚の腱のゼラチンに相当する。
【0100】
空気空洞を、45cmの長さおよび3mmの直径、すなわち3.6mLの全容積の管に接続する。空洞内の圧力を制御するために、振幅1000Paおよび10回反復される500秒の期間の三角波信号を管内で加える。サンプリング速度は500msである。
【0101】
図6は、タイプIP(12で参照される測定点)およびタイプIA(13で参照される測定点)のコラーゲンに関して、コラーゲンマトリックスにかけられる圧力差の関数としてのコラーゲンの流量qの測定を示す。空気空洞内の圧力の上昇または降下による応答のヒステリシスが2つのグラフに関して観察され得る。データを、図表内に示されている各点ごとに5秒に亘って平均化する。
【0102】
流量を得るために、空気空洞内での単位時間当たりの圧力の変化に空洞の容積および大気圧での空気の圧縮係数を乗じる。該流量を、リアルタイムの直接測定によって分かる、管と空気空洞との間にかけられる圧力差の関数として示す。
【0103】
図6の図表において、Rosti他、「The Breakdown of Darcy's Law in a Soft Porous Material」、Soft Matter 16. 939~944頁(2020年)(実線)に記載されている4次多項式に、反応q(ΔP)が適合される。浸透流Qは圧力差ΔPの4次多項式の関数である。
【0104】
【数7】
【0105】
Dは物質の細孔の直径、
【0106】
【数8】
【0107】
はその多孔性であり、
【0108】
【数9】
【0109】
ここで、Gはコラーゲンの剛性率である。
【0110】
測定された剛性率は、コラーゲンIAおよびIPそれぞれに関して、2982Paおよび4433Paである。
【0111】
第2の例によれば、内皮組織の細胞壁の特性が示される。
【0112】
この例では、前述されているコラーゲンマイクロチャネルを、5分間に2回、mL当たり1000万個の細胞の濃度のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の溶液で覆う。該細胞を、次に、インキュベータ内で、37℃および5%のCO2で、1日から3日間、インキュベートする。
【0113】
図7は、HUVEC細胞を有する(15で参照される測定点)または有さない(14で参照される測定点)マイクロチャネル内での100Paの圧力の印加後、空気空洞内の圧力応答PC(t)の測定を示す。細胞壁の流体力学的抵抗の測定を、空気空洞内の圧力の時間応答PC(t)を次の方程式に適合させることによって行う。
【0114】
【数10】
【0115】
τは、浸透性物質の透過性および流体の粘性によって決まる時定数である。適合を、図7の図表に実線で示す。曲線14および15への適合は、「数6」の方程式に基づいて、該モデル内の物質の弾性を統合することによって改善され得る。
【0116】
細胞壁を有さないコラーゲンの場合のより迅速な圧力応答が図7に観察される。これは、細胞壁が流体流を減少させるためであり、それは空気空洞内の圧力のより遅い上昇を引き起こす。
【0117】
第3の例によれば、繊維芽細胞を装填されている可能性があるかまたは装填されていない可能性があるコラーゲンマトリックスの応答が測定される。
【0118】
使用されるコラーゲンの濃度は2.4mg/mL、1.9mg/mL、および1.4mg/mLである。繊維芽細胞を有する測定では、繊維芽細胞の濃度は、30μlのコラーゲンの全体積に対して2.4mg/mLの濃度まで希釈されたコラーゲンのμl当たり40細胞である。成熟の5日後、コラーゲンおよび細胞を、30分間、4%の容量のパラホルムアルデヒド(PFA)で固定し、次いで、脱イオン水で5回すすぐ。
【0119】
空気空洞内の圧力の測定を、100Paでの空気空洞の加圧後に行う。圧力を、次に、コラーゲンマイクロチャネル内で解除する。該空洞から管へ進む流動が次いで観察され、その結果として、空洞内の圧力の低下が観察される。
【0120】
図8は、繊維芽細胞を有する2.4mg/mL(グラフ16)、繊維芽細胞を有さない2.4mg/mL(グラフ17)、1.9mg/mL(グラフ18)、および1.4mg/mL(グラフ19)のコラーゲン濃度に関する空気空洞内の放圧の測定を示す。空気空洞内の放圧の動態が、コラーゲン濃度、およびマトリックス内の繊維芽細胞の存在に左右されるようである。
【0121】
第4の例によれば、静水圧力下のコラーゲン層または膜の機械的反応の特性が示される。
【0122】
この特性評価を、コラーゲンが変形を被る可能性がある測定デバイスを用いて実施する。それを、例えば、物質層がその横縁部によって懸架されている、図4に示されているデバイス内で実施する。この場合、浸透性物質は流動が加えられる方向に自由に変形する。
【0123】
図9は、100Paの圧力操作の適用後、コラーゲン層を使用する、空気空洞内の標準化圧力応答を示す。コラーゲンゲルを、第3の例の場合と同じ方法に従って製造する。
【0124】
t = 0時に、図7に示されている曲線と異なり、標準化圧力は0より大きいことが分かる。この突然の上昇は、コラーゲン層が、それが静水圧に晒された場合に座屈することによってすぐに変形することに因る。この機械的変形は、空気空洞4内の容積を減少させる。座屈不安定が物質の弾性係数によって判定されるので、急上昇が、この弾性係数にアクセスすることを可能にする。次に、圧力場は物質内に伝播し、それは、いずれも浸透流に因る、(ポワソン比によって決定される)空洞内の物質の最上界面の形状の修正および該物質を通る液体の移動をもたらす。これは、空洞4の容積のより遅い減少をもたらす。したがって、空洞内の圧力は物質の変形と透過性の両方により上昇する。これら2つの機構は非常に異なる時間スケールを有する。
【0125】
図10は、COMSOL社によるCOMSOLソフトウェアを用いてシミュレーションされたモデル物質に関する、空洞内の圧力応答の短時間での上昇を示し、物質の特性、詳細にはポワソン比およびヤング率が変化する。図示の3つの異なるヤング率では、弾性係数が小さくなると、換言すれば座屈変形が大きくなると、第1の圧力操作の振幅が大きくなることが知られている。さらに、ポワソン比を測定することが可能であり、それは、その値が0.1、0.25、または0.4に等しいかどうかに応じて、弾性係数の全てに関して異なる曲線を作り出す。この差異は、静水圧の影響下でのコラーゲンの最上層の外形の変化によって説明される。
【0126】
詳細には、0.4のポワソン比の場合、初期変形と続く動態との間に突然遷移が観察される。ポワソン比が小さくなると、ますます多くの「軟化」動態が観察される。より小さいポワソン比によって特徴付けられる、物質の構造的再構成が、次いで、より高いポワソン比と同じ変形を達成するために必要な時間の増加を引き起こす。
【0127】
当然、本発明は、今しがた説明した実施例に限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく、これらの実施例に対して、多数のアレンジが行われる可能性がある。
【符号の説明】
【0128】
1 デバイス
2 支持体
2a 支持部品
3 浸透性物質層、浸透性物質
4 空気空洞
5 接続部品
6 (支持部品の)穿孔部
7a、7b 横チャネル
8 マイクロチャネル
9 第2の空洞、制御空洞
10 遠隔圧力センサ、圧力を測定するための手段
11 圧力コントローラ、圧力を制御するための手段
14、15 曲線
16、17、18、19 グラフ
100 方法
110 (圧力PBの)印加
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-10-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体に対する浸透性物質の透過性を測定するためのデバイス(1)であって、
- 特定の容積の空気空洞(4)と、
- 物質モジュールであり、
・ ある量の流体を含有するように構成されている支持体(2)、および
・ 前記浸透性物質(3)
を含む、物質モジュールと
を含み、
ここで、前記空気空洞(4)と前記支持体(2)とは、前記浸透性物質(3)の特定の厚さHが前記ある量の流体と前記空気空洞との間に配置されるように配置されており、前記空気空洞(4)の壁が前記浸透性物質によって部分的に形成されており、
- 時間の関数としての、前記空気空洞(4)内の圧力PCを測定するための手段(10)と、
- 前記浸透性物質を通って前記空気空洞内へ流体流を生じさせるために、前記ある量の流体へ流圧PBをかけるように構成されている、前記ある量の流体の圧力を制御するための手段(11)と、
- デジタル手段であり、
・ 前記ある量の流体と前記空気空洞との間の圧力勾配、▽P = (PB-PC)/Hを判定し、
・ 前記空洞内の空気の圧力の経時的ドリフトから、前記浸透性物質を通る流体の流量、dPC/dtを判定し、かつ
・ 前記流量および前記圧力勾配、▽P、から、前記浸透性物質の前記透過性を判定する
ように構成されている、デジタル手段と
をさらに含む、デバイス(1)。
【請求項2】
前記デジタル手段は、時間の関数としての、前記ある量の流体と前記空気空洞(4)との間の前記圧力勾配、▽P、から、前記浸透性物質の弾性係数を決定するようにさらに構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス(1)。
【請求項3】
前記圧力を測定するための前記手段(10)は、前記空気空洞(4)に接続されている遠隔圧力センサ(10)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のデバイス(1)。
【請求項4】
前記ある量の流体は、前記浸透性物質を貫通するマイクロチャネル(8)内に部分的に含有されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のデバイス(1)。
【請求項5】
前記支持体(2)はポリジメチルシロキサン、PDMS、から作製されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のデバイス(1)。
【請求項6】
前記空気空洞(4)は3D印刷によって製造されることを特徴とする、請求項1または2に記載のデバイス(1)。
【請求項7】
前記浸透性物質(3)は前記支持体(2)に接着されることを特徴とする、請求項1または2に記載のデバイス(1)。
【請求項8】
前記浸透性物質(3)は前記支持体(2)上に取外し可能に配設されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のデバイス(1)。
【請求項9】
流体に対して浸透性がある物質(3)の透過性を測定する方法(100)であって、前記浸透性物質(3)の所定の厚さHが所定の容積の空気空洞(4)とある量の流体との間に配置されており、前記空気空洞(4)の壁が前記浸透性物質(3)によって部分的に形成されており、前記方法(100)は、
- 前記浸透性物質(3)を通って前記空気空洞(4)内へ流動を生じさせるために、前記ある量の流体へ圧力PBをかけるステップ(110)と、
- 時間の関数としての、前記空気空洞(4)内の圧力PCを測定するステップ(120)と、
- 前記ある量の流体と前記空気空洞(4)との間の圧力勾配、▽P = (PB-PC)/Hを判定するステップ(130)と、
- 前記空洞(4)内の空気の圧力の経時的ドリフトから、前記浸透性物質(3)を通る流体の流量、dPC/dtを判定するステップ(140)と、かつ
- 前記流量および前記圧力勾配▽Pから、前記浸透性物質(3)の前記透過性を判定するステップ(150)と
を含む、方法。
【請求項10】
前記方法は、時間の関数としての、前記ある量の流体と前記空気空洞(4)との間の前記圧力勾配、▽P、から、前記浸透性物質の弾性係数を決定するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法(100)。
【請求項11】
前記空気空洞(4)内の前記圧力を測定する前記ステップ(120)は、前記空気空洞(4)に接続されている遠隔圧力センサ(10)によって実施されることを特徴とする、請求項9または10に記載の方法(100)。
【請求項12】
前記空気空洞(4)内の前記圧力を測定する前記ステップ(120)は、前記圧力、PB、の印加(110)を用いて、一定の間隔で実施され、かつPB/Hと0との間の圧力勾配値▽Pの範囲の全体に亘って、前記流体流量の変化に追従することを可能にすることを特徴とする、請求項9または10に記載の方法(100)。
【請求項13】
前記方法は、
- 物質支持体(2)、前記空気空洞(4)、および前記浸透性物質(3)を設けるステップであり、前記支持体(2)はある量の流体を含有するように構成されている、設けるステップと、
- 前記支持体(2)に前記浸透性物質(3)を付けるステップと、
- 前記物質上に前記空気空洞(4)を配設するステップと、
- 前記空気空洞(4)内の前記圧力を測定するための手段(10)を設けるステップと、
- 前記ある量の流体の前記圧力を制御するための手段(11)を設けるステップと
を含む、先行する準備段階(105)をさらに含むことを特徴とする、請求項9または10に記載の方法(100)。
【国際調査報告】