(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-21
(54)【発明の名称】抗生物質化合物、製剤および使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 7/62 20060101AFI20250214BHJP
C12P 21/06 20060101ALI20250214BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20250214BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20250214BHJP
【FI】
C07K7/62
C12P21/06
A61K38/12
A61P31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547475
(86)(22)【出願日】2023-02-13
(85)【翻訳文提出日】2024-10-03
(86)【国際出願番号】 NL2023050065
(87)【国際公開番号】W WO2023153932
(87)【国際公開日】2023-08-17
(32)【優先日】2022-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522096097
【氏名又は名称】ウニフェルシテイト・ライデン
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITEIT LEIDEN
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】マルティン,ナタニエル イー
(72)【発明者】
【氏名】スリンガーラント,ヤコ
【テーマコード(参考)】
4B064
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG37
4B064CB01
4B064DA01
4C084AA02
4C084AA06
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA17
4C084BA28
4C084CA59
4C084DA43
4C084NA14
4C084ZB351
4C084ZB352
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA15
4H045CA11
4H045DA83
4H045EA29
4H045FA20
(57)【要約】
抗生物質化合物
式(I):
[式中、
R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、水素、場合によりヒドロキシル スルフヒドリル(suflhydryl)、アルキルチオールエーテル;β-カルボキシルまたはγ-カルボキシル、芳香族またはヘテロ芳香族置換基によれって置換されていてよい分枝鎖または直鎖C
1-C
4アルキルを示し;
R
1は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいベンジル部分を示し;R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;R
3は、-NH
2または-N(H)-COCH
2NH
2を示し;R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し;R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素または場合により置換されていてよいアルキル部分を示し;各Xは、独立して、C、S、OまたはNを示す]
の修飾されたポリミキシン化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグが提供される。そのような化合物を含む組成物;ならびに、医薬として使用するためのそのような化合物または製剤、細菌感染の処置に使用するためのそのような化合物または製剤も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中、
R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、任意の官能基が保護されている、天然または非天然α-アミノ酸の側鎖を示し、好ましくは、ここで、R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、水素、場合によりヒドロキシル、スルフヒドリル(suflhydryl)、アルキルチオールエーテル、カルボキシル、特にβ-カルボキシルまたはγ-カルボキシル、芳香族またはヘテロ芳香族置換基、特にベンジル、グアニジウムまたはイミダゾリウム、および/またはアミノ基、好ましくはε-NH
3
+によって置換されていてよい分枝鎖または直鎖C
1-C
4アルキルを示し;
R
1は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいベンジル部分を示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
3は、-NH
2または-N(H)-COCH
2NH
2を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し;
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素または場合により置換されていてよいアルキル部分を示し;
各Xは、独立して、C、S、OまたはNを示す]
の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項2】
式(Ia):
【化2】
[式中、
R
1は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいベンジル部分を示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
3は、-NH
2または-N(H)-COCH
2NH
2を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し;
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素または場合により置換されていてよいアルキル部分を示す]
の、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項3】
式(II):
【化3】
[式中、
R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、任意の官能基が保護されている、天然または非天然α-アミノ酸の側鎖を示し、好ましくは、ここで、R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、水素、場合によりヒドロキシル、スルフヒドリル(suflhydryl)、アルキルチオールエーテル、カルボキシル、特にβ-カルボキシルまたはγ-カルボキシル、芳香族またはヘテロ芳香族置換基、特にベンジル、グアニジウムまたはイミダゾリウム、および/またはアミノ基、好ましくはε-NH
3
+によって置換されていてよい分枝鎖または直鎖C
1-C
4アルキルを示し;
R
1は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいベンジル部分を示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
3は、-NH
2または-N(H)-COCH
2NH
2を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し;
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素または場合により置換されていてよいアルキル部分を示す]
の、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項4】
式(IIa):
【化4】
[式中、
R
1は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいベンジル部分を示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
3は、-NH
2または-N(H)-COCH
2NH
2を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し;
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素または場合により置換されていてよいアルキル部分を示す]
の、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項5】
式(III):
【化5】
[式中、
R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、任意の官能基が保護されている、天然または非天然α-アミノ酸の側鎖を示し、好ましくは、ここで、R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、水素、場合によりヒドロキシル、スルフヒドリル(suflhydryl)、アルキルチオールエーテル、カルボキシル、特にβ-カルボキシルまたはγ-カルボキシル、芳香族またはヘテロ芳香族置換基、特にベンジル、グアニジウムまたはイミダゾリウム、および/またはアミノ基、好ましくはε-NH
3
+によって置換されていてよい分枝鎖または直鎖C
1-C
4アルキルを示し;
R
1は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいベンジル部分を示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
3は、-NH
2または-N(H)-COCH
2NH
2を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し;
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素または場合により置換されていてよいアルキル部分を示す]
の、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項6】
式(IIIa):
【化6】
[式中、
R
1は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいベンジル部分を示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
3は、-NH
2または-N(H)-COCH
2NH
2を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し;
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素または場合により置換されていてよいアルキル部分を示す]
の、請求項1、2または5のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項7】
式(IIb):
【化7】
[式中、
R
1は、最多で20個までの炭素原子を有する場合により置換されていてよい直鎖または分枝鎖アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアルキレン部分;場合によりアリールまたはヘテロアリール部分によって置換されていてよいものを示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、2-アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
3は、-NH
2または-N(H)-COCH
2NH
2を示し;R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分または場合により置換されていてよいアリール部分または場合により置換されていてよいアリールアルキル部分を示す]の、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項8】
式(IV):
【化8】
[式中、
R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、任意の官能基が保護されている、天然または非天然α-アミノ酸の側鎖を示し、好ましくは、ここで、R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、水素、場合によりヒドロキシル、スルフヒドリル(suflhydryl)、アルキルチオールエーテル、カルボキシル、特にβ-カルボキシルまたはγ-カルボキシル、芳香族またはヘテロ芳香族置換基、特にベンジル、グアニジウムまたはイミダゾリウム、および/またはアミノ基、好ましくはε-NH
3
+置換されていてよい分枝鎖または直鎖C
1-C
4アルキルを示し;
R
1は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいベンジル部分を示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
3は、-NH
2または-N(H)-COCH
2NH
2を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し;
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素または場合により置換されていてよいアルキル部分を示す]
の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項9】
式(V):
【化9】
[式中、
R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、任意の官能基が保護されている、天然または非天然α-アミノ酸の側鎖を示し、好ましくは、ここで、R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、水素、場合によりヒドロキシル、スルフヒドリル(suflhydryl)、アルキルチオールエーテル、カルボキシル、特にβ-カルボキシルまたはγ-カルボキシル、芳香族またはヘテロ芳香族置換基、特にベンジル、グアニジウムまたはイミダゾリウム、および/またはアミノ基、好ましくはε-NH
3
+によって置換されていてよい分枝鎖または直鎖C
1-C
4アルキルを示し;
R
1は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいベンジル部分を示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示す]
の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項10】
式(VI):
【化10】
[式中、
R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、任意の官能基が保護されている、天然または非天然α-アミノ酸の側鎖を示し、好ましくは、ここで、R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、水素、場合によりヒドロキシル、スルフヒドリル(suflhydryl)、アルキルチオールエーテル、カルボキシル、特にβ-カルボキシルまたはγ-カルボキシル、芳香族またはヘテロ芳香族置換基、特にベンジル、グアニジウムまたはイミダゾリウム、および/またはアミノ基、好ましくはε-NH
3
+置換されていてよい分枝鎖または直鎖C
1-C
4アルキルを示し;
R
1は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいベンジル部分を示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示す]
の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項11】
R
1が、C
1-C
10アルキル部分、C
2-C
10の好ましくは一不飽和アルケニル部分または場合により置換されていてよいベンジル部分を示す、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
R
4が、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキル部分、好ましくは、5、6または7個の炭素原子を含む脂環式部分を示し、ここで、該部分は、好ましくは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルからなる群から選択される、単環式、架橋式または多環式環を示す、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグ。
【請求項13】
R
4が、場合により置換されていてよいアリールアルキル部分、場合により置換されていてよいアリール部分、ビフェニル部分を示す、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
(*)が、指定された炭素原子における立体化学を示し、ここで、それぞれは、独立してLまたはDであり得る、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
医薬として使用するための、請求項1~14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
細菌感染の処置に使用するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
細菌感染が、グラム陰性細菌、好ましくは多耐性グラム陰性細菌株、より好ましくはN.メニンギチディス(N. meningitidis)、E.コリ(E. coli)、サルモネラ・タイピー(Salmonella typhi)、ボルデテラ・パーツシス(Bordetella pertussis)、シュードモナス・エアルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、E.コリ(E. coli)、K.ニューモニアエ(K. Pneumoniae)、A.バウマニ(A. Baumanni)および/またはP.エアルギノーサ(P. Aeruginosa)による感染である、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の化合物および薬学的に許容できる担体を含む、抗細菌性組成物。
【請求項19】
患者において細菌感染を処置する方法であって、有効量の請求項1~17のいずれか一項に記載の化合物または請求項18に記載の組成物を該患者に投与することを含む、方法。
【請求項20】
請求項1~17のいずれか一項に記載の化合物を調製する方法であって、
a)ポリミキシンから、脂肪酸テールに最も近い位置にある環外アミノ酸と中間の環外アミノ酸との間の結合を破壊することができる酵素による酵素消化によって側鎖を除去して、遊離のN末端アミン基を有する側鎖を含むポリミキシンノナペプチド大環状環を得ること;
b)前記環のアミノ官能基を保護し、N末端アミンを保護しないままにして、保護されたアミン基および遊離のN末端アミン基を含むポリミキシンノナペプチド大環状環を得ること;
c)遊離のN末端アミン基を化合物とカップリングさせて、保護されたアミン基を含むカップリングされたポリミキシンノナペプチド大環状環を得ること;および
d)保護基を除去し、それぞれ得られた式(I)、式(Ia)、式(II)、式(IIa)、式(IIb)、式(III)、式(IIIa)、式(IV)、式(V)または式(VI)の化合物を単離すること、
を含む、方法。
【請求項21】
請求項1~17のいずれか一項に記載の化合物を調製する方法であって、
a)ポリミキシンのアミノ官能基を保護してN-保護ポリミキシンを得ること;
b)N-保護ポリミキシンから、環状ヘプタペプチドに最も近い位置にある環外のアミノ酸と該環状ヘプタペプチドとの間の結合を破壊することができる酵素による酵素消化によって完全な側鎖を除去して、単一の遊離アミノ基を有するN-保護ポリミキシン七量体大環状環を得ること;
e)前記遊離アミノ基を脂質化トリペプチドまたはN末端アミドまたはカルバメート結合ビルディングブロックとカップリングさせて、保護されたアミン基を含むカップリングされたポリミキシンペプチド大環状環を得ること、および
c)保護基を除去し、それぞれ得られた式(I)、式(Ia)、式(II)、式(IIa)、式(IIb)、式(III)、式(IIIa)、式(IV)、式(V)または(VI)の化合物を単離すること、
を含む、方法。
【請求項22】
前記ポリミキシンが、ポリミキシンBまたはポリミキシンEである、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記酵素が、加水分解性酵素、好ましくはタンパク分解性酵素、より好ましくはフィシンである、請求項20または22に記載の方法。
【請求項24】
前記酵素が、加水分解性酵素、好ましくはタンパク分解性酵素、より好ましくはsavinaseまたはスブチリシンである、請求項21または22に記載の方法。
【請求項25】
前記結合が、ペプチド結合である、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリミキシンノナペプチド大環状環が4個の保護されたアミン基および遊離のN末端アミン基を含み、前記カップリングされたポリミキシンノナペプチド大環状環が4個または5個の保護されたアミン基を含む、請求項20、22、23または25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記カップリングされたポリミキシンペプチド大環状環が、カップリングされたポリミキシンノナペプチドまたはポリミキシンデカペプチドである、請求項21、22、24または25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記N-保護ポリミキシン七量体大環状環がトリ-N-保護のものであり、前記カップリングされたポリミキシンペプチド大環状環が3個、4個または5個、好ましくは4個または5個の保護されたアミン基を含む、請求項21、22、24、25または27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
工程cが、遊離のN末端アミン基をジスルフィド含有化合物とカップリングさせて、4個または5個の保護されたアミン基を含むジスルフィドカップリングポリミキシンノナペプチド大環状環を得ることを含む、請求項20、22、23、25または26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記工程cが、遊離アミノ基をジスルフィド脂質化トリペプチドまたはN末端アミドまたはカルバメート結合ビルディングブロックとカップリングさせて、3個、4個または5個、好ましくは4個または5個の保護されたアミン基を含むジスルフィド-カップリングポリミキシンノナペプチド大環状環を得ることを含む、請求項21、22、24、25、27または28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記保護基が、tert-ブチルオキシカルボニル(BOC)保護基である、請求項20~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記脂質化トリペプチドビルディングブロック、好ましくはジスルフィド脂質化トリペプチドビルディングブロックが、固相ペプチド合成を用いて調製される、請求項21、22、24、25、27、28または30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記ジスルフィド脂質化N末端アミドまたはカルバメート結合ビルディングブロックが、式(VIIa)または式(VIIb):
【化11】
の構造を有する、請求項20~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記ジスルフィド含有化合物が、BXXIIIまたはBXXIV:
【化12】
[式中、
Rは、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し、好ましくは、ここで、Rは、場合により置換されていてよいアルキル部分または場合により置換されていてよいアリール部分である]
の構造を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記ジスルフィド脂質化N末端アミドまたはカルバメート結合ビルディングブロックが、BXXVまたはBXXVI:
【化13】
[式中、
Rは、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し、好ましくは、ここで、Rは、場合により置換されていてよいアルキル部分または場合により置換されていてよいアリール部分であり;
R’は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示す]
の構造を有する、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な抗生物質化合物、特に新規な種類のポリミキシン類に関する。該化合物はグラム陰性細菌に対して活性を有する。本発明はまた、前記新規な抗生物質化合物を製造する方法を提供する。本発明はさらに、新規な抗生物質化合物を含む製剤に関する。また、細菌感染を処置するためにそのような抗生物質化合物およびそのような製剤を使用する方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
世界的に、多剤耐性菌の出現が増加している一方で、開発中の新規な抗生物質のパイプラインはほぼ枯渇している。この問題は、グラム陰性種を標的とする新しい抗生物質が不足している場合に最も顕著である。
【0003】
ポリミキシン類は、臨床的に確立された種類の抗生物質であり、1960年から市販されている。処置が困難なグラム陰性病原体にのみ作用するのがほとんどである。他の多くの抗生物質に対する耐性が増加し続けており、グラム陰性細菌は現在の抗生物質では本質的に処置が困難であるため、ポリミキシン類は臨床医にとって最後の手段となっている。臨床的に使用されるポリミキシンのファミリーメンバーは、ポリミキシンBおよびその近縁アナログであるポリミキシンE(コリスチンとしても知られている)である。
【0004】
構造的には、ポリミキシン類は、ペプチドのC末端および4位の2,4-ジアミノ酪酸(Dab)残基の側鎖によって環が閉じられた大環状ヘプタペプチドと、N末端で脂肪酸テールによりアシル化された環外トリペプチドを含む。ポリミキシンBとコリスチンの違いは、6位のアミノ酸残基がポリミキシンBではD-Pheであり、コリスチンではD-Leuであることのみである。他の両親媒性陽イオン性抗細菌性膜活性化合物と同様に、ポリミキシン類は哺乳動物膜よりも細菌膜を選択的に標的とする。
【0005】
ポリミキシン類には強力な抗菌活性があるにもかかわらず、重大な欠点がある。その臨床応用は、十分に立証された腎毒性のために用量が制限されており、この影響により、感染の処置におけるそれらの広範な使用が歴史的に制限されてきた(例えば、Akajagbor, D. S. et al.;. Higher Incidence of Acute Kidney Injury With Intravenous Colistimethate Sodium Compared With Polymyxin B in Critically Ill Patients at a Tertiary Care Medical Center. Clin. Infect. Dis. 2013, 57 (9), 1300-1303; and P., Z. A.; L., N. R. Nephrotoxicity of Polymyxins: Is There Any Difference between Colistimethate and Polymyxin B? Antimicrob. Agents Chemother. 2017, 61 (3), e02319-16を参照のこと)。
【0006】
腎不全は、抗菌処置を中止する一般的な理由である。ポリミキシン類の毒性作用は、主として腎尿細管細胞に蓄積する傾向によって動かされる。しかしながら、MDRグラム陰性病原体の増加により、ポリミキシン療法の使用は増加しつつある(例えば、Evans, M. E. et al.; Polymyxin B Sulfate and コリスチン: Old Antibiotics for Emerging Multiresistant Gram-Negative Bacteria. Ann. Pharmacother. 1999, 33 (9), 960-967を参照のこと)。それゆえ、より安全なバリアントに対する需要が高まっている。
【0007】
ポリミキシン類の治療域を拡大する方法として、これまでは、好ましくは毒性を増加させずに抗菌活性を高めるか、あるいは、好ましくは抗菌活性を失うことなく毒性を低下させる、といった2つの方法が注目されていた。
【0008】
より活性の高い、あるいは毒性の低いポリミキシン類似体を評価するために、いくつかのアプローチが検討されてきた。その結果、急性毒性は低いが腎毒性は高い類似体がいくつか見いだされた。しかし、ポリミキシン毒性の分子的基盤は完全には理解されていないため、グラム陰性細菌に対して有効であり、かつ許容可能な腎毒性を示すポリミキシン類似体を見出すことは困難である。
【0009】
したがって、本発明の目的は、グラム陰性細菌による感染の処置に有用な化合物を提供することである。さらなる目的は、ポリミキシンBおよびコリスチンと同様の、しかし好ましくはそれよりも低い毒性を示し、同時にポリミキシンBおよびコリスチンと同様の非常に良好な抗菌活性を示す新規な種類のポリミキシン類を提供することである。
【0010】
さらに、さらなる目的は、コスト効率がよく、環境に優しい方法で製造できる新規な種類のポリミキシン類を提供することである。最後に、ポリミキシン類似体、好ましくはポリミキシンBまたはE類似体を、細菌性病原体に対して作用しながらも腎毒性を低下させるように修飾する方法を提供することも目的である。
【発明の概要】
【0011】
したがって、第1の態様において、本発明は、細菌感染の処置に有用な化合物を提供する。例えば、該化合物は、グラム陰性細菌による感染の処置に有用であり得る。本発明の化合物は、脂質側鎖、好ましくはジスルフィド含有脂質側鎖を含むポリミキシン類骨格である。
【0012】
したがって、本発明は第1の態様において、式(I):
【化1】
[式中、
R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、任意の官能基が保護されている、天然または非天然α-アミノ酸の側鎖を示し、好ましくは、ここで、R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、水素、場合によりヒドロキシル、スルフヒドリル(suflhydryl)、アルキルチオールエーテル、カルボキシル、好ましくはβ-カルボキシルまたはγ-カルボキシル、芳香族またはヘテロ芳香族置換基、好ましくはベンジル、グアニジウムまたはイミダゾリウム、および/またはアミノ基、好ましくはε-NH
3
+によって置換されていてよい分枝鎖または直鎖C
1-C
4アルキルを示し;
R
1は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいベンジル部分を示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
3は、-NH
2または-N(H)-COCH
2NH
2を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し;
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素または場合により置換されていてよいアルキル部分を示し;
各Xは、独立して、C、S、OまたはNを示す]
の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグを提供する。
【0013】
本明細書において、結合X-Xは、C-C、C-S、C-O、C-N、S-S、S-C、S-O、S-N、O-O、O-C、O-S、O-N、N-N、N-C、N-SまたはN-O、好ましくは、C-C、S-S、C-S、S-C、C-OまたはO-C、より好ましくは、C-CまたはS-S、最も好ましくは、S-Sを示し得る。
【0014】
用語「天然または非天然α-アミノ酸の側鎖」とは、式NH2-CH(Rx)-COOHの天然または非天然アミノ酸中の基Rx(すなわち、RA;RB;RC;RD;RE;および/またはRF)を意味する。ただし、硫黄または酸素置換基がアミン酸骨格に直接連結しているもの、例えばNH2-CH(OR’)-COOHまたはNH2-CH(SR’)-COOHは、生物学的活性の低下が観察されたため好ましくない。
【0015】
好ましくは、式(Ia):
【化2】
[式中、
R
1は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいベンジル部分を示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
3は、-NH
2または-N(H)-COCH
2NH
2を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し;
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素または場合により置換されていてよいアルキル部分、好ましくはメチルを示す]
の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグである。
【0016】
好ましくは、式(Ia)の化合物において、R
1は、以下の構造の1つを示す:
【化3】
【0017】
好ましくは、式(Ia)の化合物において、R5およびR6は、それぞれ独立して水素を示す。
【0018】
さらに好ましい化合物は、式(II):
【化4】
[式中、
R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、任意の官能基が保護されている、天然または非天然α-アミノ酸の側鎖を示し、好ましくは、ここで、R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、水素、場合によりヒドロキシル、スルフヒドリル(suflhydryl)、アルキルチオールエーテル、カルボキシル、好ましくはβ-カルボキシルまたはγ-カルボキシル、芳香族またはヘテロ芳香族置換基、好ましくはベンジル、グアニジウムまたはイミダゾリウム、および/またはアミノ基、好ましくはε-NH
3
+によって置換されていてよい分枝鎖または直鎖C
1-C
4アルキルを示し;
R
1は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいベンジル部分を示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
3は、-NH
2または-N(H)-COCH
2NH
2を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し;
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素または場合により置換されていてよいアルキル部分を示す]
の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグである。
【0019】
好ましくは、式(IIa):
【化5】
[式中、
R
1は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいベンジル部分を示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
3は、-NH
2または-N(H)-COCH
2NH
2を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し;
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素または場合により置換されていてよいアルキル部分、好ましくはメチルを示す]
の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグである。
【0020】
好ましくは、式(IIa)の化合物において、R
1は、以下の構造の1つを示す:
【化6】
好ましくは、式(IIa)の化合物において、R
5およびR
6は、それぞれ独立して水素を示す。
【0021】
好ましくは、式(IIb):
【化7】
[式中、
R
1は、最多で20個までの炭素原子を有する、場合により置換されていてよい直鎖または分枝鎖アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアルキレン部分;場合によりアリールまたはヘテロアリール部分によって置換されていてよいものを示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、2-アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
3は、-NH
2または-N(H)-COCH
2NH
2を示し;そして、R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分または場合により置換されていてよいアリール部分または場合により置換されていてよいアリールアルキル部分を示す]
の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグである。
【0022】
好ましくは、式(IIb)の化合物において、R
1は、以下の構造の1つを示す:
【化8】
【0023】
さらに好ましい化合物は、式(III):
【化9】
[式中、
R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、任意の官能基が保護されている、天然または非天然α-アミノ酸の側鎖を示し、好ましくは、ここで、R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、水素、場合によりヒドロキシル、スルフヒドリル(suflhydryl)、アルキルチオールエーテル、カルボキシル、好ましくはβ-カルボキシルまたはγ-カルボキシル、芳香族またはヘテロ芳香族置換基、好ましくはベンジル、グアニジウムまたはイミダゾリウム、および/またはアミノ基、好ましくはε-NH
3
+によって置換されていてよい分枝鎖または直鎖C
1-C
4アルキルを示し;
R
1は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいベンジル部分を示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
3は、-NH
2または-N(H)-COCH
2NH
2を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し;
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素または場合により置換されていてよいアルキル部分を示す]
の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグである。
【0024】
好ましくは、式(IIIa):
【化10】
[式中、
R
1は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいベンジル部分を示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
3は、-NH
2または-N(H)-COCH
2NH
2を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し;
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素または場合により置換されていてよいアルキル部分、好ましくはメチルを示す]
の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグである。
【0025】
好ましくは、式(IIIa)の化合物において、R
1は、以下の構造の1つを示す:
【化11】
好ましくは、式(IIIa)の化合物において、R
5およびR
6は、それぞれ独立して水素を示す。
【0026】
本発明の第2の態様において、式(IV):
【化12】
[式中、
R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、任意の官能基が保護されている、天然または非天然α-アミノ酸の側鎖を示し、好ましくは、ここで、R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、水素、場合によりヒドロキシル、スルフヒドリル(suflhydryl)、アルキルチオールエーテル、カルボキシル、好ましくはβ-カルボキシルまたはγ-カルボキシル、芳香族またはヘテロ芳香族置換基、好ましくはベンジル、グアニジウムまたはイミダゾリウム、および/またはアミノ基、好ましくはε-NH
3
+によって置換されていてよい分枝鎖または直鎖C
1-C
4アルキルを示し;
R
1は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいベンジル部分を示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
3は、-NH
2または-N(H)-COCH
2NH
2を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し;
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素または場合により置換されていてよいアルキル部分を示す]
の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグが提供される。
【0027】
好ましくは、式(IVa):
【化13】
[式中、
R
1は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいベンジル部分を示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
3は、-NH
2または-N(H)-COCH
2NH
2を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し;
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素または場合により置換されていてよいアルキル部分、好ましくはメチルを示す]
の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグである。
【0028】
好ましくは、式(IVa)の化合物において、R
1は、以下の構造の1つを示す:
【化14】
好ましくは、式(IVa)の化合物において、R
5およびR
6は、それぞれ独立して水素を示す。
【0029】
本発明の第3の態様において、式(V):
【化15】
[式中、
R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、任意の官能基が保護されている、天然または非天然α-アミノ酸の側鎖を示し、好ましくは、ここで、R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、水素、場合によりヒドロキシル、スルフヒドリル(suflhydryl)、アルキルチオールエーテル、カルボキシル、特にβ-カルボキシルまたはγ-カルボキシル、芳香族またはヘテロ芳香族置換基、特にベンジル、グアニジウムまたはイミダゾリウム、および/またはアミノ基、好ましくはε-NH
3
+によって置換されていてよい分枝鎖または直鎖C
1-C
4アルキルを示し;
R
1は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいベンジル部分を示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示す]
の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグが提供される。
【0030】
好ましくは、式(Va):
【化16】
[式中、
R
1は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいベンジル部分を示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示す]
の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグである。
【0031】
好ましくは、式(Va)の化合物において、R
1は、以下の構造の1つを示す:
【化17】
【0032】
本発明の第4の態様において、式(VI):
【化18】
[式中、
R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、任意の官能基が保護されている、天然または非天然α-アミノ酸の側鎖を示し、好ましくは、ここで、R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、水素、場合によりヒドロキシル、スルフヒドリル(suflhydryl)、アルキルチオールエーテル、カルボキシル、特にβ-カルボキシルまたはγ-カルボキシル、芳香族またはヘテロ芳香族置換基、特にベンジル、グアニジウムまたはイミダゾリウム、および/またはアミノ基、好ましくはε-NH
3
+によって置換されていてよい分枝鎖または直鎖C
1-C
4アルキルを示し;
R
1は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいベンジル部分を示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示す]
の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグが提供される。
【0033】
好ましくは、式(VIa):
【化19】
[式中、
R
1は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいベンジル部分を示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示す]
の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグである。
【0034】
好ましくは、式(VIa)の化合物において、R
1は、以下の構造の1つを示す:
【化20】
【0035】
本発明の第5の態様は、本発明の化合物を製造する方法を提供する。
【0036】
本発明の第6の態様は、本発明の化合物および薬学的に許容できる担体を含む、本発明の組成物を提供する。前記組成物は、非経腸製剤または経口製剤であり得る。前記製剤は、非経腸製剤、例えば静脈内注射用製剤であり得る。
【0037】
第7の態様は、医薬として使用するための本発明の化合物または組成物を提供する。
【0038】
第8の態様は、細菌感染の処置に使用するための本発明の化合物または組成物を提供する。前記細菌感染は、グラム陰性細菌による感染であり得る。グラム陰性細菌は、以下のファミリーの少なくとも1つからのものであり得る。
【0039】
第9の態様は、患者において細菌感染を処置する方法であって、有効量の本発明の化合物または本発明の組成物を該患者に投与することを含む方法を提供する。
【0040】
したがって、さらなる態様において、本発明はまた、前記化合物を調製する方法1つ以上;本発明の化合物または組成物の医薬的使用;本発明の化合物または組成物を薬学的に許容できる希釈剤または担体と共に含む医薬組成物;敗血症性ショックを処置または予防するための医薬の調製における本発明の化合物または組成物の使用;および敗血症性ショックを処置または予防する方法であって、治療上または予防上有効量の本発明の化合物または組成物を、必要とする個体に投与することを含む、方法、を包含する。
【0041】
本発明による化合物または組成物は、グラム陰性細菌感染、例えば、内毒素中毒症、細菌性敗血症および/または敗血症性ショックにつながり得るグラム陰性細菌感染が診断された場合に、哺乳動物、好ましくはヒトに投与することが有利であり得る。
これらの致命的な障害の原因となり得るグラム陰性細菌としては、N.メニンギチディス(N. meningitidis)、E.コリ(E. coli)、サルモネラ・タイピー(Salmonella typhi)、ボルデテラ・パーツシス(Bordetella pertussis))およびシュードモナス・エアルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の化合物または組成物は、全身経路、好ましくは静脈内経路により、必要な個体に投与され得る。用量は、患者の年齢、体重、生理学的状態、および感染状態を含むがこれらに限定されない様々な要因に依存する。致命的事象の危険性が回避されるまで、1回または数回投与され得る。
【0042】
本発明は、ポリミキシンBおよびコリスチンと比較して毒性を低下させ、同時にポリミキシンBおよびコリスチンと同様の非常に優れた抗菌活性を示す新規な種類のポリミキシン類を提供する。さらに、これらのポリミキシン類は、コスト効率がよく、環境に優しい方法で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
本発明の実施態様は、添付図面を参照して以下にさらに説明される:
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
詳細な説明
本明細書の記載および特許請求の範囲を通して、「含む」および「含有する」という語ならびにそれらの変形は、「含むが、これらに限定されない」を意味し、他の部分、添加剤、成分、整数または工程を除外することを意図しない(また、除外しない)。本明細書の記載および特許請求の範囲を通じて、文脈上別段の定めがない限り、単数形は複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、本明細書は、文脈上他に必要とされない限り、単数形だけでなく複数形も意図していると理解される。
【0054】
本発明の特定の態様、実施態様または実施例に関連して記載される特徴、整数、特性、化合物、化学部分または基は、それと両立しない場合を除き、本明細書に記載される他の態様、実施態様または実施例にも適用可能であると理解される。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)に開示された特徴のすべて、および/またはそのように開示された任意の方法もしくはプロセスの工程のすべては、そのような特徴および/または工程の少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除き、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本発明は、前述の実施態様の詳細に限定されるものではない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約および図面を含む)に開示された特徴の任意の新規な1つ、または任意の新規な組み合わせ、あるいはそのように開示された任意の方法またはプロセスの工程の任意の新規な1つ、または任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0055】
読者は、本出願に関連して本明細書と同時またはそれ以前に提出され、本明細書とともに一般に公開されているすべての書類および文書に向けられ、そのようなすべての書類および文書の内容は引用により本明細書に包含されることに注意すべきである。
【0056】
本明細書に記載のすべての公開、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、その全体が引用により包含される。矛盾する場合は、定義を含む本明細書が優先される。
【0057】
定義
以下の用語および方法の説明は、本開示をよりよく説明し、本開示の実施において当業者を導くために提供される。
【0058】
アミノグリコシド、β-ラクタムおよびフルオロキノロン抗生物質に耐性を示すグラム陰性細菌が増加している。これらの細菌は、抗細菌性質を有するポリミキシン類および関連ペプチドにのみに対して感受性があることが多い。結果として、ヒトにおける多剤耐性グラム陰性細菌感染症の処置のためのポリミキシン類の使用に新たな関心がある。
【0059】
ポリミキシンBや、ポリミキシンEとも呼ばれるコリスチンなどのペプチドは、抗菌剤としてヒトに投与されてきた。しかし、毒性があるため、その使用はこれまで制限されていた。したがって、ポリミキシンBと同等の抗細菌性質を有し、治療指数が改善された新規なペプチド化合物、およびそのような抗菌化合物を製造する方法が必要とされている。
【0060】
本発明は、特に疾患の処置に関する。「処置」という用語、および本発明によって包含される治療には、以下のものおよびそれらの組み合わせが含まれる:(1)ある事象、状態、障害または症状の開始および/または進行を妨げること、例えば遅延させること、例えば、事象、状態、障害または症状の発展、または処置の維持または二次予防の場合のそれらの再発、またはその少なくとも1つの臨床的徴候または亜臨床的徴候、を阻止すること、低減すること、または遅延させること;(2)ある状態、障害または症状に罹患しているか、またはそれにかかりやすいが、その状態、障害または症状の臨床徴候または亜臨床的徴候をまだ経験していないか、または示していない動物(例えば人間)において発展するその事象、状態、障害または症状の臨床的徴候の出現を予防または遅延させること;および/または、(3)ある事象、状態、障害または症状を緩和および/または治癒すること(例えば、事象、状態、障害または症状、またはその臨床的徴候または亜臨床的徴候の少なくとも1つを消退させること、患者を治癒させること、または患者を寛解状態にすること)。処置される患者に対する利益は、統計的に有意であってもよく、または少なくとも患者または医師に知覚可能であってもよい。医薬は、それが投与される各患者において必ずしも臨床的効果を生じるとは限らないことが理解されるであろう。処置される患者に対する利益は、統計的に有意であってもよく、または少なくとも患者または医師に知覚可能であってもよい。医薬は、それが投与される各患者において必ずしも臨床的効果を生じるとは限らないことが理解されるであろう。このように、個々の患者において、あるいは特定の患者集団においてさえ、処置は部分的にのみ失敗することもあれば成功することもあり、「処置」および「予防」という用語、ならびに同種の用語の意味は、それに応じて理解されるべきである。本明細書に記載の組成物および方法は、上述の症状の治療および/または予防に使用される。
【0061】
用語「予防」には、健康を維持すること、あるいはある事象、状態、障害または症状の開始および/または進行を阻害または遅延させること目的とする、例えば、ある事象、状態、障害または症状が発生する可能性を減少させることを目的とする処置療法への言及が含まれる。予防の結果は、例えば、健康の維持、あるいはある事象、状態、障害または症状の開始および/または進行を遅延させることである。個々の患者において、あるいは特定の患者集団においてでさえ、処置が失敗する可能性があり、本段落はそれに応じて理解されることを想起されたい。
【0062】
用語「抗生物質」とは、細菌(グラム陽性細菌またはグラム陰性細菌など)などの微生物の成長を阻害するか、またはそれを破壊する化合物を意味する。「抗菌剤」とは、細菌に対して活性を有する抗生物質のことである。
本発明の化合物は、特にグラム陰性細菌に対して活性を有する抗細菌性である。グラム陽性細菌には、スタフィロコッカス(Staphylococcus)(例えば、S.アウレウス(S. aureus)、S.エピデルミディス(S. epidermidis)、S.サプロフィチクス(S. saprophyticus))、ストレプトコッカス(Streptococcus)(例えば、ストレプ.ピオゲネス(Strep. pyogenes)、ストレプ.アガラクティエ(Strep. agalactiae)、ストレプ.ビリダンス(Strep.ビリダンス)、ストレプ.ニューモニエ(Strep. pneumonia))、エンテロコッカス(Enterococus)、バシラス(Bacillus)、クロストリジア(Clostridia)、リステリア(Listeria)およびコリネバクテリウム(Corynebacterium)が含まれる。
【0063】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、最多で20個まで(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個または20個)の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル部分への言及を含む。該用語は、例えば、メチル、エチル、プロピル(n-プロピルまたはイソプロピル)、ブチル(n-ブチル、sec-ブチルまたはtert-ブチル)、ペンチル、ヘキシルなどへの言及を含む。特に、アルキルは、「C1-C10アルキル」、すなわち、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の炭素原子を有するアルキル;「C1-C6アルキル」、すなわち、1個、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を有するアルキル;「C1-C4アルキル」、すなわち、1個、2個、3個または4個の炭素原子を有するアルキル;「C1-C6アルキル」、すなわち、1個、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を有するアルキル;または「C1-C3アルキル」、すなわち、1個、2個または3個の炭素原子を有するアルキル、を含む。用語「低級アルキル」とは、1個、2個、3個または4個の炭素原子を有するアルキル基への言及を含む。
【0064】
本明細書で使用される用語「アルケニル」は、最多で20個まで(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個または20個)の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルケニル部分への言及を含む。該用語は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルなどへの言及を含む。特に、アルケニルは、「C2-C10アルケニル」、すなわち、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の炭素原子を有するアルケニル;「C2-C6アルキル」、すなわち、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を有するアルケニル;「C2-C4アルキル」、すなわち、2個、3個または4個の炭素原子を有するアルケニルであり得て、用語「低級アルケニル」は、2個、3個または4個の炭素原子を有するアルキル基への言及を含む。アルケニルは、一不飽和(すなわち、単一の炭素-炭素二重結合を含む)または多価不飽和(すなわち、2つ以上の炭素-炭素二重結合、例えば、2つ、3つまたは4つの炭素-炭素二重結合を含む)であり得る。例えば、アルケニルは、アルカジエニル、アルカトリエニルなどであり得る。
【0065】
用語「アルキレン」は、それ自体または他の置換基の一部として、-CH2CH2CH2CH2-によって例示されるが、これらに限定されない、アルキルから誘導される二価のラジカルを意味する。典型的には、アルキル(またはアルキレン)基は、1~24個の炭素原子を有し、本発明においては、10個以下の炭素原子を有する基が好ましい。「低級アルキル」または「低級アルキレン」は、より短鎖のアルキル基またはアルキレン基であり、一般に8個以下の炭素原子を有する。
【0066】
本明細書で使用される用語「シクロアルキル」は、3個、4個、5個または6個の炭素原子を有する脂環式部分への言及を含む。該基は、架橋式または多環式環系であり得る。より多くの場合、シクロアルキル基は単環式である。この用語は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの基への言及を含む。
【0067】
用語「ヘテロアルキル」は、それ自体で、または他の用語と組み合わせて、特に断らない限り、安定な直鎖もしくは分枝鎖、または環状炭化水素ラジカル、またはそれらの組み合わせであって、少なくとも1個の炭素原子および、O、N、P、SiおよびSからなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子からなり、ここで、窒素原子および硫黄原子は場合により酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は場合により4級化されていてもよいものを意味する。ヘテロ原子のO、N、P、SおよびSiは、ヘテロアルキル基のいずれかの内部位置、またはアルキル基が分子の残りの部分に結合している位置に配置されてよい。例としては、-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-CH2-N(CH3)-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、-CH2-CH2、-S(O)-CH3、-CH2-CH2-S(O)2-CH3、-CH=CH-O-CH3、-Si(CH3)3、-CH2-CH=N-OCH3、-CH=CH-N(CH3)-CH3、O-CH3、-O-CH2-CH3および-CNがあるが、これらに限定されない。例えば、-CH2-NH-OCH3および-CH2-O-Si(CH3)3のように、最多で2つまでのヘテロ原子が連続していてもよい。同様に、それ自体または別の置換基の一部としての用語「ヘテロアルキレン」は、-CH2-CH2-S-CH2-CH2-および-CH2-S-CH2-CH2-NH-CH2-によって例示されるが、これらに限定されない、ヘテロアルキルから誘導される二価のラジカルを意味する。ヘテロアルキレン基の場合、ヘテロ原子はまた、鎖の末端のいずれかまたは両方を占めることができる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。さらに、アルキレンおよびヘテロアルキレン結合基の場合、結合基の式が書かれる方向によって結合基の配向が暗示されることはない。例えば、式-C(O)2R'-は、-C(O)2R'-および-R'C(O)2-の両方を示す。上述したように、本明細書で使用されるヘテロアルキル基には、ヘテロ原子を介して分子の残りの部分に結合している基、例えば-C(O)R'、-C(O)NR'、-NR'R''、-OR’、-SR'および/または-SO2R’などの残りの部分が含まれる。「ヘテロアルキル」が記載され、その後に-NR'R''などの特定のヘテロアルキル基が記載される場合、ヘテロアルキルおよび-NR'R''という用語は冗長でも相互排他的でもないことが理解されるであろう。むしろ、特定のヘテロアルキル基は、明確性を付加するために記載されている。したがって、用語「ヘテロアルキル」は、-NR'R''などの特定のヘテロアルキル基を除外するものとして本明細書で解釈されるべきではない。
【0068】
本明細書で使用される用語「ヘテロシクロアルキル」は、3個、4個、5個、6個または7個の環炭素原子と、窒素、酸素、リンおよび硫黄から選択される1個、2個、3個、4個または5個の環ヘテロ原子とを有する飽和ヘテロ環式部分への言及を含む。例えば、ヘテロシクロアルキルは、3個、4個または5個の環炭素原子と、窒素および酸素から選択される1個または2個の環ヘテロ原子とを含み得る。該基は多環式環系であってもよいが、単環式であることが多い。この用語は、アゼチジニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、オキシラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリル、インドリジジニル、ピペラジニル、チアゾリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、キノリジジニルなどの基への言及を含む。
【0069】
本明細書で使用される「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、F、Cl、BrまたはI、例えば、F、ClまたはBrに対する言及を含む。特定の種類の実施態様において、ハロゲンはFまたはClであり、Fがより一般的である。
【0070】
用語「ハロ」または「ハロゲン」は、それ自体または他の置換基の一部として、特に断らない限り、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を意味する。さらに、「ハロアルキル」などの用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むことを意味する。例えば、用語「ハロアルキル」とは、1個以上の水素原子が対応する数のハロゲンによって置換されているアルキル基を意味する。例えば、用語「ハロ(C1-C4)アルキル」は、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピルなどを含むが、これらに限定されないことを意味する。
【0071】
本明細書で使用される用語「アルコキシ」は、-O-アルキル(ここで、アルキルは直鎖または分枝鎖であり、1個、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を含む)への言及を含む。一種類の実施態様において、アルコキシは、1個、2個、3個または4個の炭素原子、例えば、1個、2個または3個の炭素原子を有する。この用語は、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシなどへの言及を含む。用語「低級アルコキシ」は、1個、2個、3個または4個の炭素原子を有するアルコキシ基への言及を含む。
【0072】
本明細書で使用される用語「ハロアルコキシ」とは、1個以上の水素原子が対応する数のハロゲンによって置換されているアルコキシ基を意味する。
【0073】
用語「アリール」とは、特に断らない限り、単環または複数環(好ましくは1~3個の環)であり得る、縮合または共有結合している多価不飽和、芳香族、炭化水素置換基を意味する。用語「ヘテロアリール」とは、N、OおよびSから選択される1個~4個のヘテロ原子を含むアリール基(または環)であって、窒素原子および硫黄原子が場合により酸化されており、窒素原子(複数可)が場合により4級化されたれているものを意味する。ヘテロアリール基は、炭素またはヘテロ原子を介して分子の残りの部分に結合することができる。アリールおよびヘテロアリール基の非限定例として、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンゾイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリルおよび6-キノリルがある。上述のアリール環系およびヘテロアリール環系のそれぞれの置換基は、以下に記載の許容可能な置換基群から選択される。「アリーレン」および「ヘテロアリーレン」とは、それぞれアリールおよびヘテロアリールから誘導される2価のラジカルを意味する。
【0074】
本明細書で使用される置換基に関する用語「脂質」は、典型的には疎水性である部分を示す。脂質は、置換または非置換アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、架橋式シクロアルキル基、(アルキル)シクロアルキル基、(アルキル)架橋シクロアルキル基、(アルキル)シクロアルケニル基および/またはアルキルアリール基を含み得る。例えば、脂質は、置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、(アルキル)シクロアルキル基、(アルキル)シクロアルケニル基および/またはアルキルアリール基を含み得る。例示的な置換基としては、-OH、=O、-CN、-ハロ、-NH2、-NH(C1-C6アルキル)、-N(C1-C4アルキル)2、-フェニル、-フェニル-ハロ;例えば、-OH、=O、-CN、-ハロ、-NH2、-NH(C1-C6アルキル)、-N(C1-C4アルキル)2が挙げられる。置換または非置換脂質の骨格はまた、ジスルフィド結合(-S-S-)、チオエーテル結合(-S-)、エーテル結合-O-またはエステル(-C(O)O-)によって中断されていてもよい。
【0075】
上記の各用語(例えば、「アルキル」、「シクロアルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」および「ヘテロアリール」)は、特に断りのない限り、指定されたラジカルの置換および非置換の両方の形態を含むことを意味する。置換基がR-置換(例えば、Rx-置換アルキルであり、ここで「x」は整数である)である場合、置換基は、各R基が場合により異なる化学原子価規則で許容される1つ以上のR基によって置換されていてもよい(例えば、Rx-置換アルキルは、各Rx基が場合により異なる複数のRx基を含んでもよい)。各種類のラジカルの置換基の例は以下に提供される。
【0076】
部分に関して本明細書で使用される用語「置換されている」とは、前記部分の水素原子の1個以上、特に最多で5個まで、より具体的には、1個、2個または3個が、対応する数の記載された置換基によって互いに独立して置換されていることを意味する。特に断らない限り、例示的な置換基としては、-OH、-CN、-NH2、-NH(C1-C6アルキル)、-N(C1-C4アルキル)2、=O、-ハロ、-C1-C6アルキル、-C2-C6アルケニル、-C1-C6ハロアルキル、-C1-C6ハロアルコキシおよび-C2-C6ハロアルケニル、-C1-C6アルキルカルボン酸(例えば-CH3COOHまたは-COOH)が挙げられる。置換基が-C1-C6アルキルまたは-C1-C6ハロアルキルである場合、C1-C6鎖は、場合によりエーテル結合(-O-)またはエステル結合(-C(O)O-)によってに中断される。置換アルキルの例示的な置換基としては、-OH、-CN、-NH2、=O、-ハロ、-CO2H、-C1-C6ハロアルキル、-C1-C6ハロアルコキシおよび-C2-C6ハロアルケニル、-C1-C6アルキルカルボン酸(例えば、-CH3COOHまたは-COOH)が挙げられる。例えば、アルキルに対する例示的な置換基としては、-OH、-CN、-NH2、=O、-ハロが挙げられる。
【0077】
用語「天然または非天然α-アミノ酸の側鎖」とは、式NH2-CH(Rx)-COOHの天然または非天然アミノ酸中の基RA~RFのいずれかを意味する。
【0078】
天然α-アミノ酸の側鎖の例としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、システイン、グルタミン酸、ヒスチジン、5-ヒドロキシリジン、4-ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、α-アミノアジピン酸、-アミノ-n-酪酸、3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン、ホモセリン、α-メチルセリン、オルニチン、ピペコリン酸およびチロキシンが挙げられる。
【0079】
官能性置換基、例えばアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、グアニジル基、イミダゾリル基またはインドリル基を特徴的な側鎖に含む天然α-アミノ酸には、アルギニン、リシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、トリプトファン、ヒスチジン、セリン、トレオニン、チロシンおよびシステインが含まれる。本発明の化合物におけるRA~RFのいずれかがこれらの側鎖の1つである場合、該官能基は場合により保護されていてもよい。
【0080】
天然α-アミノ酸の側鎖の官能性置換基に関して使用される「保護された(protected)」という用語は、実質的に非官能性である、そのような置換基の誘導体を意味する。例えば、カルボキシル基はエステル化され得て、アミノ基はアミドまたはカルバメートに変換され得て、ヒドロキシル基はエーテルまたはエステルに変換され得て、チオール基はチオエーテルまたはチオエステルに変換され得る。
【0081】
非天然α-アミノ酸の側鎖の例としては、本発明の化合物における使用に適したRA~RF基の議論において後述するものが挙げられる。本発明で使用される化合物の塩としては、生理学的に許容できる酸付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩およびマレイン酸塩が挙げられる。塩基による塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩なども形成され得る。
【0082】
本発明に従って使用される化合物は、不斉炭素原子が存在するため、複数のキラル中心がある。複数の不斉炭素原子の存在は、各キラル中心にRまたはS、あるいはDおよびLの立体化学を有する多数のジアステレオマーを生じさせる。
【0083】
もちろん、置換基は化学的に可能な位置にのみ存在し、当業者は特定の置換基が可能かどうかを不適切な努力なしに(実験的または理論的に)決定できると理解される。例えば、遊離水素を有するアミノ基またはヒドロキシ基は、不飽和(例えばオレフィン性)結合を有する炭素原子に結合すると不安定になる可能性がある。さらに、本明細書に記載の置換基は、当業者によって認識されるような適切な置換基に対する前述の制限を条件として、それ自体がいずれかの置換基によって置換されていてもよいことは当然理解されるであろう。
【0084】
立体的問題によってある基上の置換基の配置が決まる場合、最も低い配座エネルギーを持つ異性体が好まれることがある。
【0085】
化合物、部分、方法または製品がある特徴を「場合により」有すると記載されている場合、本開示は、その特徴を有する化合物、部分、方法または製品、およびその特徴を有しない化合物、部分、方法または製品を含む。したがって、ある部分が「場合により置換されていてよい」と記載されている場合、本開示は、非置換部分および置換部分を含む。
【0086】
2つ以上の部分が、原子または基のリストから「独立して」または「それぞれ独立して」選択されると記載されている場合、これは、該部分が同一であっても異なっていてもよいことを意味する。したがって、各部分の同一性は、1つ以上の他の部分の同一性とは無関係である。
【0087】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容できる」とは、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わずに、ヒトまたは動物の組織と接触して使用するのに適しており、妥当な利益/リスク比に見合った化合物、材料、組成物、および/または剤形への言及を含む。この用語には、ヒトと獣医の両方の目的に対する許容性が含まれる。
【0088】
用語「薬学的に許容できる塩」とは、本明細書に記載の化合物上に見出される特定の置換基に応じて、比較的に無毒性の酸または塩基を用いて調製される活性化合物の塩を含むことを意味する。本発明の化合物が比較的に酸性の官能性を含む場合、塩基付加塩は、きちんとしたまたは適切な不活性溶媒中で、そのような化合物の中性型を十分な量の所望の塩基と接触させることによって得ることができる。薬学的に許容できる塩基付加塩の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、有機アミノ塩またはマグネシウム塩、または類似の塩が挙げられる。本発明の化合物が比較的に塩基性の官能性を含む場合、酸付加塩は、きちんとしたまたは適当な不活性溶媒中で、そのような化合物の中性型を十分な量の所望の酸と接触させることによって得ることができる。薬学的に許容できる酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸またはリン酸などの無機酸から誘導されるもの、および酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などの比較的に無毒性の有機酸から誘導される塩も含まれる。また、アルギネートなどのアミノ酸の塩、グルクロン酸やガラクツロン酸などの有機酸の塩も含まれる(例えば、Bergeら、“Pharmaceutical Salts”, Journal of Pharmaceutical Science, 1977, 66, 1-19を参照)。本発明の特定の化合物は、該化合物を塩基付加塩または酸付加塩のいずれかに変換することができる塩基性官能性および酸性官能性の両方を含む。
【0089】
化合物の中性型は、好ましくは、塩を塩基または酸と接触させ、従来の方法で親化合物を単離することにより再生される。化合物の親型は、極性溶媒中の溶解性などの特定の物理的性質において、様々な塩型と異なる。
【0090】
本発明の特定の化合物は、非溶媒和形態だけでなく、水和形態を含む溶媒和形態でも存在し得る。一般に、溶媒和形態は非溶媒和形態と同等であり、本発明の範囲に包含される。本発明の特定の化合物は、複数の結晶形態または非晶質形態で存在し得る。一般に、全ての物理的形態は、本発明によって企図される用途に対して等価であり、本発明の範囲内にあることが意図される。
【0091】
本発明の特定の化合物は、不斉炭素原子(光学中心)または二重結合を有し;ラセミ体、ジアステレオマー、互変異性体、幾何異性体および個々の異性体は、本発明の範囲内に包含される。本発明の化合物には、合成および/または単離が不安定すぎると当技術分野で知られているものは含まれない。
【0092】
記号:
【化21】
は、ある部分の、化合物の残りの部分への結合点を示す。
【0093】
本明細書で使用される用語「プロドラッグ」とは、例えば、血中での加水分解により、インビボで親化合物または他の活性化合物に変化する化合物を示す。このようなプロドラッグの例は、カルボン酸の薬学的に許容できるエステルである。徹底的な議論は、T. Higuchi and V. Stella, Pro-drugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14 of the A.C.S. Symposium Series, Edward B. Roche, ed., Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987; H Bundgaard, ed, Design of Prodrugs, Elsevier, 1985;およびJudkins, et al. Synthetic Communications, 26(23), 4351-4367 (1996);およびThe organic chemistry of drug design and drug action by Richard B Silverman in particularの497頁~546頁(その各々は引用により本明細書に包含される)に提供されている。
【0094】
本明細書で使用される用語「医薬製剤」とは、少なくとも1つの活性化合物および場合により1つ以上の追加の薬学的に許容できる成分、例えば薬学的に許容できる担体、を含む製剤への言及を含む。医薬製剤が2つ以上の活性化合物を含む場合、または少なくとも1つの活性化合物および1つ以上の追加の薬学的に許容できる成分を含む場合、該医薬製剤は医薬組成物でもある。文脈から別段の指示がない限り、本明細書において「製剤」という場合、すべて医薬製剤を言及するものである。
【0095】
本明細書で使用される用語「製品」または「本発明の製品」は、本発明の化合物を含有するいずれかの製品への言及を含む。特に、製品という用語は、例えば医薬組成物のような、本発明の化合物を含有する組成物および製剤に関するものである。
【0096】
本明細書で使用される用語「治療有効量」とは、健全な薬理学的判断の範囲内で、哺乳動物(動物またはヒト)において所望の治療応答を提供する(または提供するであろう)ように計算される薬物または医薬剤の量を意味する。治療反応は、例えば、疾患、障害または症状を治癒、進行を遅延または予防するのに役立つ。
【0097】
好ましくは、R
1は、C
1-C
10アルキル部分、C
2-C
10、好ましくは一不飽和アルケニル部分、または場合により置換されていてよいベンジル部分を示す。より好ましくは、R
1は以下の構造の1つを示す:
【化22】
好ましくは、R
2は、アミノエチルまたはアミノメチルを示す。
【0098】
好ましくは、R4は、4~20個の炭素原子を有するシクロアルキル部分、好ましくは、5個、6個または7個の炭素原子を含む脂環式部分を示し、ここで、前記部分は、好ましくは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルからなる群から選択される単環式環、架橋式環または多環式環;またはその薬学的に許容できる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグである。より好ましくは、R4は、場合により置換されていてよいアリールアルキル部分、場合により置換されていてよいアリール部分、ビフェニル部分を示す。
【0099】
好ましくは、(*)は、指定された炭素原子における立体化学を示し、それぞれが独立してLまたはDであり得る。
【0100】
本発明はまた、本発明による化合物を調製する方法であって、a)ポリミキシンBから、フィシンによる酵素消化によって側鎖を除去して、遊離のN末端アミン基を有する側鎖を含むポリミキシンノナペプチド大環状環を得る工程;b)該環のアミノ官能基を保護し、N末端アミンを非保護のままにして、4個の保護されたアミン基および遊離のN末端アミン基を含むポリミキシンノナペプチド大環状環を得る工程;c)遊離のN末端アミン基をジスルフィド含有化合物とカップリングさせて、4個の保護されたアミン基を含むジスルフィド-カップリングポリミキシンノナペプチド大環状環を得る工程;および、d)保護基を除去して、式(I)の化合物を単離する工程、を含む方法に関する。
【0101】
本発明はまた、本発明による化合物を調製する方法であって、ポリミキシンBのアミノ官能基を保護してN-保護ポリミキシンBを得る工程;N-保護ポリミキシンBから、savineによる酵素消化によって完全な側鎖を除去して、単一の遊離アミノ基を有するトリ-N-保護ポリミキシンB七量体大環状体を得る工程;遊離アミノ基をジスルフィド脂質化トリペプチドまたはN末端アミドまたはカルバメート結合ビルディングブロックとカップリングさせて、3個の保護されたアミン基を含むジスルフィド-カップリングポリミキシンノナペプチド大環状環を得る工程、および保護基を除去して式(I)の化合物を単離する工程、を含む方法に関する。
【0102】
本発明はまた、本発明による化合物を調製する方法であって、保護基がtert-ブチルオキシカルボニル(BOC)保護基である、方法に関する。
【0103】
本発明はまた、本発明による化合物を調製する方法であって、脂質化トリペプチドビルディングブロック、好ましくはジスルフィド脂質化トリペプチドビルディングブロックは、固相ペプチド合成を用いて調製される、方法に関する。
【0104】
本発明はまた、本発明による化合物を調製する方法であって、ジスルフィド脂質化N末端アミドまたはカルバメート結合ビルディングブロックは、式(VIIa)または(VIIb)による構造を有する、方法に関する:
【化23】
【0105】
本発明はまた、本発明による化合物を調製する方法であって、
a)ポリミキシンから、脂肪酸テールに最も近い位置にある環外アミノ酸と中間の環外アミノ酸との間の結合を破壊することができる酵素による酵素消化によって側鎖を除去して、遊離のN末端アミン基を有する側鎖を含むポリミキシンノナペプチド大環状環を得ること;
b)前記環のアミノ官能基を保護し、前記N末端アミンを保護しないままにして、保護されたアミン基および遊離のN末端アミン基を含むポリミキシンノナペプチド大環状環を得ること;
c)遊離のN末端アミン基を化合物とカップリングさせて、保護されたアミン基を含むカップリングされたポリミキシンノナペプチド大環状環を得ること;および
d)保護基を除去し、それぞれ得られた式(I)、式(Ia)、式(II)、式(IIa)、式(IIb)、式(III)、式(IIIa)、式(IV)、式(V)または式(VI)の化合物を単離すること、
を含み、
好ましくは、ここで、前記ポリミキシンノナペプチド大環状環は、4個の保護されたアミン基および遊離のN末端アミン基を含み、前記カップリングされたポリミキシンノナペプチド大環状環は、4個または5個の保護されたアミン基を含み;および/または
好ましくは、工程cは、遊離のN末端アミン基をジスルフィド含有化合物とカップリングさせて、4個または5個の保護されたアミン基を含むジスルフィド-カップリングポリミキシンノナペプチド大環状環を得ることを含む、方法に関する。
【0106】
本発明はまた、本発明による化合物を調製する方法であって、
a)ポリミキシンのアミノ官能基を保護して、N-保護ポリミキシンを得ること;
b)環状ヘプタペプチドに最も近い位置にある環外のアミノ酸と該環状ヘプタペプチドとの間の結合を破壊することができる酵素による酵素消化によって完全な側鎖を除去して、単一の遊離アミノ基を有するN-保護ポリミキシン七量体大環状環を得ること;
c)前記遊離のアミノ基を脂質化トリペプチドまたはN末端アミドまたはカルバメート結合ビルディングブロックとカップリングさせて、保護されたアミン基を含むカップリングされたポリミキシンペプチド大環状環を得ること、および
d)保護基を除去し、それぞれ式(I)、式(Ia)、式(II)、式(IIa)、式(IIb)、式(III)、式(IIIa)、式(IV)、式(V)、式または(VI)の化合物を単離すること、
を含み、
好ましくは、ここで、前記N-保護ポリミキシン七量体大環状環は、トリ-N-保護のものであり、前記カップリングされたポリミキシンペプチド大環状環は、3個、4個または5個、好ましくは4個または5個、または、好ましくは3個の保護されたアミン基を含み;および/または
好ましくは、工程cは、前記遊離のアミノ基をジスルフィド脂質化トリペプチドまたはN末端アミドまたはカルバメート結合ビルディングブロックとカップリングさせて、3個の保護されたアミン基を含むジスルフィド-カップリングポリミキシンノナペプチド大環状環を得ることを含む、方法に関する。
【0107】
好ましくは、前記カップリングされたポリミキシンペプチド大環状環は、カップリングされたポリミキシンノナペプチドまたはカップリングされたポリミキシンデカペプチドである。
【0108】
図1~
図8を参照すると、本明細書において用語「ポリミキシンノナペプチド大環状環」とは、ポリミキシン化合物が9個のアミノ酸および大環状環を含むことを意味すると理解される。誤解を避けるために、これは、大環状環が該大環状環に組み込まれた9個のアミノ酸を含むことを意味するのではなく、アミノ酸の総数を意味する。
【0109】
したがって、
図5~
図8を参照すると、本明細書において用語「ポリミキシンデカペプチド大環状環」とは、ポリミキシン化合物が10個のアミノ酸および大環状環を含むことを意味すると理解される。
【0110】
本発明はまた、本発明による化合物を調製する方法であって、ポリミキシンはポリミキシンBまたはポリミキシンEである、方法に関する。
【0111】
本発明はまた、本発明による化合物を調製する方法であって、酵素は、加水分解酵素、好ましくはタンパク分解性酵素、より好ましくはフィシン、savinaseまたはスブチリシンである、方法に関する。
【0112】
好ましくは、本発明による方法において、前記結合はペプチド結合である。
【0113】
本発明また、本発明による化合物を調製する方法であって、ジスルフィド含有化合物は、構造BXXIIIまたはBXXIV:
【化24】
[式中、Rは、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し、好ましくは、ここで、Rは、場合により置換されていてよいアルキル部分または場合により置換されていてよいアリール部分である]
による構造を有する、方法に関する。
【0114】
本発明はまた、本発明による化合物を調製する方法であって、ジスルフィド脂質化N末端アミドまたはカルバメート結合ビルディングブロックは、構造BXXVまたはBXXVI:
【化25】
[式中、Rは、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し、好ましくは、ここで、Rは、場合により置換されていてよいアルキル部分または場合により置換されていてよいアリール部分であり;
ここで、R’は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示す]
の構造を有する、方法に関する。
【0115】
好ましくは、R
1は、カルボニル基およびそれが結合している炭素に対してα位の窒素と一緒になって、D-フェニルアラニンまたはD-ロイシンを示す。より好ましくは、R
1は、カルボニル基およびそれが結合している炭素に対してα位の窒素と一緒になって、好ましくはD-フェニルアラニンを示す。以下または上記においてアミノ酸に言及する場合、これらは置換基R
1~R
4、およびアミノ酸部分を形成する隣接原子によって示される。例えば、R
1がカルボニル基およびそれが結合している炭素の窒素αと一緒になってD-フェニルアラニンを示す場合、R
1はベンジル基を示す。この場合、式I、式Ia、式II、式IIa、式III、式IV、式Vまたは式VIの6位に見出されるアミノ酸残基はD-Phe:
【化26】
を示す。
R
1がカルボニル基およびそれが結合している炭素に対してα位の窒素と一緒になった場合、R
1はイソプロピル基であることを示す。この場合、6位に見出されるアミノ酸残基は、式I、式Ia、式II、式IIa、式III、式IV、式Vまたは式VIにおいてD-Leuであり、以下の構造を有する:
【化27】
【0116】
化合物
一態様において、本発明は、先に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグを提供する。
【0117】
別の態様において、本発明は、先に記載の式(II)の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグを提供する。
【0118】
別の態様において、本発明は、先に記載の式(III)の化合物またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグを提供する。
【0119】
さらに別の態様において、本発明は、先に記載の式(IV)の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグを提供する。
【0120】
さらに別の態様において、本発明は、先に記載の式(V)の化合物、またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグを提供する。
さらに別の態様において、本発明は、先に記載の式(VI)の化合物、またはその薬学的に許容できる塩、立体異性体、溶媒和物もしくはプロドラッグを提供する。
【0121】
製剤および投与
本発明のさらなる態様によれば、本発明の化合物を含む、場合により少なくとも1つの薬学的に許容できるアジュバント、希釈剤または担体と混和される医薬製剤または組成物が提供される。
【0122】
前記製剤または組成物は、非経腸製剤または経口製剤であり得る。前記製剤は非経腸製剤、例えば静脈注射用製剤であり得る。前記製剤は経口製剤であり得る。
【0123】
本発明の化合物、製剤または組成物は、経口、局所、静脈内、皮下、頬部、直腸、経皮、経鼻、気管、気管支、その他の非経口経路で、経口または経鼻スプレーとして、または吸入により投与され得る。化合物は、該化合物を遊離化合物または、例えば薬学的に許容できる非毒性の有機または無機の酸または塩基の付加塩として含む、薬学的に許容できる剤形の医薬製剤の形態で投与され得る。組成物は、処置される障害および患者ならびに投与経路に応じて、様々な用量で投与され得る。
【0124】
典型的には、したがって、本発明の医薬化合物は、抗菌効果を得るために、宿主に非経腸的(本明細書で使用される「非経腸的」とは、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下および関節内注射および注入を含む投与様式を意味する)または経口的に投与され得る。例えば、本発明の医薬化合物は静脈内注射または点滴により投与され得る。ヒトなどの大型動物の場合、本発明の化合物は単独で、または薬学的に許容できる希釈剤、賦形剤または担体と組み合わせた組成物として投与され得る。
【0125】
本発明の医薬製剤および医薬組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、特定の患者、組成物および投与様式に対して所望の治療反応を達成するのに有効な活性化合物の量が得られるように変化させることができる。選択される用量レベルは、特定の化合物の活性、投与経路、処置される状態の重症度、処置される患者の状態および既往歴に依存する。しかし、所望の治療効果が得られるのに必要な量よりも低いレベルから化合物の投与を開始し、所望の効果が得られるまで徐々に用量を増加させることは当業者の技術範囲内である。好適な用量は、一般に0.01~100mg/kg/日の範囲であり、例えば0.1~50mg/kg/日の範囲である。
【0126】
非経腸(例えば静脈内)注射のための本発明の医薬製剤または組成物は、薬学的に許容できる無菌水性または非水性溶液、分散液、懸濁液またはエマルジョン、ならびに使用直前に無菌注射用溶液または分散液に再構成するための無菌粉末を含み得る。適当な水性および非水性の担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適当な混合物、植物油(オリーブ油など)、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング材料の使用、分散体の場合の必要な粒子径の維持、および界面活性剤の使用によって維持することができる。非経腸注射用の製剤または組成物は、本発明の好ましい製剤または組成物を示し得る。
【0127】
これらの組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含有し得る。微生物の作用の阻害は、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノールまたはフェノールソルビン酸を含有させることによって確実にすることができる。また、等張剤、例えば糖類または塩化ナトリウムを含有させることが望ましいこともある。注射用医薬品形態(pharmaceutical form)の吸収の延長は、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムやゼラチン)を包含させるによってもたらされることがある。
【0128】
経口投与用個体剤形には、カプセル、錠剤、丸薬、粉末および顆粒が含まれる。このような個体剤形において、活性化合物は通常、少なくとも1つの不活性で薬学的に許容できる賦形剤または担体、例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、および/または1つ以上の以下に記載のものと混合される:a)充填剤または増量剤、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸;b)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシア;c)保湿剤、例えばグリセロール;d)崩壊剤、例えば寒天-寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩および炭酸ナトリウム;e)溶液遅延剤(solution retarding agent)、例えばパラフィン;f)吸収促進剤、例えば第四級アンモニウム化合物;g)湿潤剤、例えばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール;h)吸収剤、例えばカオリンおよびベントナイト粘土;i)滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物。カプセル、錠剤および丸薬の場合、剤形は緩衝剤も含み得る。同様の種類の固体組成物も、例えばラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールのような賦形剤を使用する軟質および硬質充填ゼラチンカプセル内の充填剤として使用され得る。
【0129】
経口製剤は溶解補助剤を含有し得る。溶解補助剤の例としては、非イオン界面活性剤、例えばスクロース脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタントリオレエート)、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、メトキシポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルチオエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミドおよびアルキルアミンオキシド(alkyamine oxide);胆汁酸およびその塩(例えば、ケノデオキシコール酸、コール酸、デオキシコール酸、デヒドロコール酸およびその塩、ならびにグリシンまたはそのタウリンコンジュゲート);イオン界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸石鹸、アルキルスフォネート、アルキルホスフェート、エーテルホスフェート、塩基性アミノ酸の脂肪酸塩;トリエタノールアミン石鹸、およびアルキル第四級アンモニウム塩;および両性界面活性剤、例えばベタインおよびアミノカルボン酸塩が挙げられる。
【0130】
錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬および顆粒の固体剤形は、コーティングおよび殻、例えば、腸溶性コーティングおよび医薬製剤技術分野で周知の他のコーティングを用いて調製することができる。これらは、場合により不透明化剤を含み得て、また、腸管の特定の部分においてのみ、または優先的に、および/または遅延して、有効成分を放出するような組成であり得る。埋め込み用組成物の例としては、高分子物質やワックスなどが挙げられる。
【0131】
活性化合物はまた、適切であれば、上記の賦形剤の1つ以上とともにマイクロカプセル化された形態であり得る。
【0132】
活性化合物は細かく分割された形態であり得て、例えば微粒子化されたものであり得る。
【0133】
経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容できるエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルなどがある。液体剤形は、活性化合物に加えて、当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤、例えば水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿の実油、ピーナッツ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、キャスター油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルおよびこれらの混合物を含有し得る。不活性希釈剤に加えて、経口組成物はまた、アジュバント、例えば湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香味剤および芳香剤を含み得る。懸濁液は、活性合物に加えて、懸濁化剤、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天-寒天およびトラガカントおよびこれらの混合物を含有し得る。
【0134】
直腸または膣投与用組成物は、本発明の化合物を、室温では固体であるが体温では液体であり、したがって直腸または膣腔で融解し、活性化合物を放出する適当な非刺激性賦形剤または担体、例えばカカオバター、ポリエチレングリコールまたは座薬ワックスと混合することによって調製することができる坐薬の形態であり得る。
【0135】
本発明の化合物の局所投与用剤形は、粉末、スプレー、クリーム、フォーム、ゲル、軟膏および吸入剤を含む。活性化合物は、無菌条件下で、薬学的に許容できる担体および必要とされ得るいずれかの必要な防腐剤、緩衝剤または噴射剤と混合される。眼科用製剤、眼軟膏、粉末および溶液もまた、本発明の範囲内であると考えられる。
【0136】
液体(例えば、水性)製剤および組成物は、非経腸的な使用または経口的な使用が意図されているかどうかにかかわらず、活性化合物の沈殿を防止するのに役立つ追加の化合物(複数可)を含み得る。本発明の化合物はグリコペプチド誘導体である。水溶液中のこのような化合物の沈殿は、溶液中に単糖を含ませることによって回避または最小化され得る。例えば、水性製剤または組成物はグルコースを含み得る。特に、非経腸(例えば静脈内注射)製剤または組成物は、本発明の化合物、注射用水およびグルコースを含み得る。
【0137】
化合物の活性を妨げない限りにおいて、本主題による製剤または組成物は、特に細菌感染の処置に使用することを意図した他の活性剤を含有し得る。
【0138】
本主題による製剤は、不活性成分を含有し得る。適当な不活性成分は、当該技術分野において周知であり、標準的な教科書、例えばGoodmanおよびGillman:The Pharmacological Bases of Therapeutics, 13thEd., Brunton et al., Eds. McGraw-Hill Education (2017),およびRemington’s Pharmaceutical Sciences, 17th Ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa. (1990)(両方とも引用によりその全体が本明細書に包含される)に記載されている。
【0139】
本製剤は、本明細書に記載の障害のいずれかの処置における有効性を向上させるための追加の医薬剤形と組み合わせて使用され得る。この点に関して、本製剤は、これらの障害のいずれかの処置に有効であることが当技術分野で知られているいずれかの他の医薬および/または医薬剤形を追加的に含むレジメンの一部として投与され得る。
【0140】
使用
本発明の化合物は、新規な種類のポリミキシンまたはポリミキシン誘導体である。ポリミキシン類、特にポリミキシンBおよびコリスチンは、グラム陰性細菌に対して活性を有する抗生物質である。
【0141】
本明細書で提供される化合物は、抗生物質、特にグラム陰性細菌による感染に関連する症状の処置に有用な抗生物質を示す。本発明の化合物は、より低い腎毒性を示しながら、同様またはより優れた活性を提供し得る。
前記化合物は、好ましくは、細菌感染の処置に使用され、細菌感染は、グラム陰性またはグラム陽性細菌によって引き起こされるものであり得る。例えば、前記細菌感染は、以下の属の1つ以上(例えば、少なくとも1つ)からの細菌によって引き起こされるものであり得る:クロストリジウム(Clostridium)、シュードモナス(Pseudomonas)、エシェリキア(Escherichia)、クレブシエラ(Klebsiella)、エンテロコッカス(Enterococcus)、エンテロバクター(Enterobacter)、セラチア(Serratia)、ステノトロホモナス(Stenotrophomonas)、エロモナス(Aeromonas)、モルガネラ(Morganella)、エルシニア(Yersinia)、サルモネラ(Salmonella)、プロテウス(Proteus)、パスツレラ(Pasteurella)、ヘモフィルス(Haemophilus)、シトロバクター(Citrobacter)、バークホルデリア(Burkholderia)、ブルセラ(Brucella)、モラクセラ(Moraxella)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、ストレプトコッカス(Streptococcus)またはスタフィロコッカス(Staphylococcus)。特定の例としては、クロストリジウム(Clostridium)、シュードモナス(Pseudomonas)、エシェリキア(Escherichia)、クレブシエラ(Klebsiella)、エンテロコッカス(Enterococcus)、エンテロバクター(Enterobacter)、ストレプトコッカス(Streptococcus)およびスタフィロコッカス(Staphylococcus)が挙げられる。前記細菌感染は、例えば、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、ブルセラ・アボルタス(Brucella abortus)、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)、シトロバクター(Citrobacter)種、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、ヘモフィルス・ニューモニエ(Haemophilus Pneumonia)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella Pneumonia)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、エルシニア・エンテロコリチカ(Yersinia enterocolitica)マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、スタフィロコッカス・アウロイス(Staphylococcus aureus)、B群ストレプトコッシ(group B streptococci)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus Pneumonia)およびストレプトコックス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)から選択される1つ以上の細菌によって引き起こされるものであり得る。
【0142】
本発明の化合物は、グラム陰性細菌によって引き起こされる細菌感染の処置に特に有用である。
【0143】
アッセイ
本発明の化合物は、当業者に公知であろういずれかの適当なアッセイを用いて生物学的活性を評価することができる。本発明の化合物の評価に有用な例示的アッセイは、以下の段落に提供される。
【0144】
化合物の抗菌活性を、グラム陰性細菌を含む細菌パネルに対して試験した。得られた化合物パネルの構造と効能を以下の表A~Cにまとめた。特に好ましい化合物としては、以下の表1~表6に示す化合物が挙げられる:
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
特に好ましい化合物としては、以下の表7に示す化合物が挙げられる。
【表7-1】
【表7-2】
【0152】
表7の化合物の例は、以下の特徴を有するものとして説明できる:1. P3におけるジアミノプロピオン酸(Dap)、2. P3におけるジアミノ酪酸(Dab)、3. P3におけるジアミノプロピオン酸(Dap)、4. P3におけるジアミノ酪酸(Dab)、5. P3にDapを有する全炭素脂質バリアント、6. P3にDabを有する全炭素脂質バリアント、7. ジスルフィドモチーフに隣接する置換基とP3におけるDapを有する脂質。
【0153】
化合物の合成
本発明の化合物は、本明細書中に以下に示す反応スキームに従って製造することができる:
スキーム1(
図1)は、ポリミキシンノナペプチドを介した一般的な調製手順、すなわち、いずれかのポリミキシン種から出発して、ポリミキシンノナペプチドを介してポリミキシン類似体を合成することによる調製を示している。
【0154】
図1において、R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、任意の官能基が保護されている、天然または非天然α-アミノ酸の側鎖を示し、好ましくは、ここで、R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、水素、場合によりヒドロキシル、スルフヒドリル(suflhydryl)、アルキルチオールエーテル、カルボキシル、好ましくはβ-カルボキシルまたはγ-カルボキシル、芳香族またはヘテロ芳香族置換基、好ましくはベンジル、グアニジウムまたはイミダゾリウム、および/またはアミノ基、好ましくはε-NH
3
+によって置換されていてよい分枝鎖または直鎖C
1-C
4アルキルを示し;
R
1は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいベンジル部分を示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
3は、-NH
2または-N(H)-COCH
2NH
2を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し;
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素または場合により置換されていてよいアルキル部分を示し;
各Xは、独立して、C、S、OまたはNを示す。
【0155】
さらに、「PG」は保護された基、すなわちRA;RB;RC;RD;RE;またはRFの保護されたアミン側鎖を示す。例示的なビルディングブロックを以下に概説する。
【0156】
スキーム1における酵素的分解は、ポリミキシンを1位と2位の間で切断できる酵素により行われ得て、好ましくは、酵素は加水分解性酵素であり、好ましくは、酵素はフィシンである。
【0157】
スキーム2(
図2)は、ポリミキシンBノナペプチド(PMBN)を介した具体的な調製手順、すなわち、ポリミキシンBから出発してポリミキシンBノナペプチドを介してポリミキシンB類似体を合成することによる調製を示している。
【0158】
図2において、R
2はアミノエチルを示し;R
3は-NH
2または-N(H)-COCH
2NH
2を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し;R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素または場合により置換されていてよいアルキル部分を示し;各Xは、独立して、C、S、OまたはNを示す。
【0159】
例示的なビルディングブロックを以下に概説する。
スキーム3(
図3)は、ポリミキシンEノナペプチド(PMEN)を介した具体的な調製手順、すなわち、ポリミキシンEから出発してポリミキシンEノナペプチドを介してポリミキシンE類似体を合成することによる調製を示している。
【0160】
図3において、R
2はアミノエチルを示し;R
3は、-NH
2または-N(H)-COCH
2NH
2を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し;R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素または場合により置換されていてよいアルキル部分を示し;各Xは、独立して、C、S、OまたはNを示す。
【0161】
例示的なビルディングブロックを以下に概説する。
スキーム4(
図4)は、市販のポリミキシンBから出発してジスルフィド尾部を含むポリミキシン類似体を合成することによる調製を示している。
【0162】
スキーム1~4のいずれか1つによるこれらのポリミキシン類似体の合成には、多数のビルディングブロックが必要であった。以下に例示するように、調製されたジスルフィド含有ビルディングブロックの第一のシリーズは、単純な脂肪族基からなり、D-システイン(D-Cys)またはL-システイン(L-Cys)のいずれかの誘導体である。親油性アルキル尾部とアミン上の置換のレベルには様々なバリエーションが見られる。Boc保護された化合物(BI~BIV)および追加のGlyモチーフを有する化合物(BV~BVIII)の両方を調製した。
【0163】
以下の化合物は、脂肪族尾部を有する、システイン系ジスルフィドビルディングブロックであり、BI~BIXの構造を有する有用なジスルフィド脂質化トリペプチドビルディングブロックであり、スキーム1~4のいずれか1つに従って、任意のポリミキシン種が酵素的に分解されてノナペプチドになり、次いでアミン側鎖が保護されたもの(例えばPMEN(Boc)
4またはPMBN(Boc)
4)にカップリングされる:
【化28】
【0164】
さらに、構造BIX~BXV(下段の左上から右)による、Cysスキャフォールド上に芳香族置換尾部を有する化合物を合成した:
【化29】
【0165】
ここでは、芳香族部分および、芳香族部分とチオールとの間のリンカーを変化させ、4-フェノキシベンゼンチオールのように直接結合させるか、4-フェノキシフェニル)メタンチオールのように余分なメチレンリンカーを介して結合させた。
【0166】
ジスルフィドを含有しない類似体も同様に調製し、さらに、D-Cysの代わりにD-ペニシラミン(D-Pen)を有する類似体を調製した(BXVIおよびBXVII):
【化30】
【0167】
スキーム1-4は、いわゆる第1世代化合物を生成するのに使用される。
【0168】
スキーム5(
図5)は、P3バリエーションを含むポリミキシンヘプタペプチドを介した、本発明による化合物の別個の一般的合成経路、すなわち、任意のポリミキシン種から出発してポリミキシンヘプタペプチドを介してポリミキシン類似体を合成することによる調製を示す。
【0169】
図5において、R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、任意の官能基が保護されている、天然または非天然α-アミノ酸の側鎖を示し、好ましくは、ここで、R
A;R
B;R
C;R
D;R
E;およびR
Fは、それぞれ個々に、水素、場合によりヒドロキシル、スルフヒドリル(suflhydryl)、アルキルチオールエーテル、カルボキシル、好ましくはβ-カルボキシルまたはγ-カルボキシル、芳香族またはヘテロ芳香族置換基、好ましくはベンジル、グアニジウムまたはイミダゾリウム、および/またはアミノ基、好ましくはε-NH
3
+によって置換されていてよい分枝鎖または直鎖C
1-C
4アルキルを示し;
R
1は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいベンジル部分を示し;
R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;
R
3は、-NH
2または-N(H)-COCH
2NH
2を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し;
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素または場合により置換されていてよいアルキル部分を示し;
各Xは、独立して、C、S、OまたはNを示す。
【0170】
さらに、「PG」は、保護された基、すなわち、RA;RB;RC;RD;RE;またはRFの保護されたアミン側鎖を示す。
【0171】
スキーム5における酵素的分解は、ポリミキシンを3位と4位との間で切断することができる酵素により行われ得て、好ましくは、ここで、前記酵素は加水分解性酵素であり、好ましくは、前記酵素はsavinaseである。用語「savinase」は商標である。savinaseは、例えばスブチリシンなどいくつかの名称で知られており、国際生化学分子生物学連合(IUBMB)ではEC 3.4.21.62としてインデックスされている。
【0172】
化合物は市販のポリミキシンから出発して調製する。アミン側鎖の保護と酵素分解の後、保護されたポリミキシンヘプタペプチドを得て、これを、収束合成で別々に合成されたビルディングブロックにさらにコンジュゲートさせる(その調製の例としてスキーム9を示す
図9を参照)。
【0173】
ビルディングブロックは、例示的な第2世代ポリミキシン類似体の調製において使用される三量体ペプチドビルディングブロックの代表的な合成を示す
図9/スキーム9に示されるように、固相ペプチド合成を用いて合成することができる。CTC樹脂を所望のアミノ酸によって置換させ、そのカルボン酸を介してコンジュゲートさせる。標準固相ペプチド合成(SPPS)法により、樹脂上に所望のペプチドが得られる。これにより、P3アミノ酸の都合のよいバリエーション、ならびにジスルフィド結合脂質尾部の任意の導入が可能になる。この脂質化トリペプチドのセットにおいて、N末端システインはD-Cysである。第2世代類似体の合成に使用される脂質またはジスルフィド脂質は、第1世代化合物について上述した化合物から選択することができる。
【0174】
スキーム6(
図6)は、P3バリエーションを含むポリミキシンBヘプタペプチド(PMBH)を介した特定の調製手順、すなわち、ポリミキシンBから出発してポリミキシンBヘプタペプチドを介してポリミキシンB類似体を合成することによる調製を示す。
【0175】
図6において、R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;R
3は、-NH
2または-N(H)-COCH
2NH
2を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し;R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素または場合により置換されていてよいアルキル部分を示し;各Xは、独立して、C、S、OまたはNを示す。
【0176】
化合物は、市販のポリミキシンBから出発して調製される。Boc化(Bocylation)および、savinaseによる酵素消化の後、トリ-Boc保護ポリミキシンBヘプタペプチド(PMBH(Boc)3)が得られ、これを収束合成において別々に合成されたビルディングブロックにさらにコンジュゲートさせる。その調製の例についてはスキーム9を示す
図9を参照のこと。
【0177】
これらのいわゆる第2世代類似体は、スキーム6に示したように調製する。市販のポリミキシンBをまずBoc-無水物で処理して、すべての遊離アミンがBoc保護されたポリミキシン類が得られる。この保護された種を工業用酵素savinaseによる酵素消化にかけて、七量体大環状環PMBH(Boc)3が得られる。PMBH(Boc)3の調製法は文献でよく知られている。その後、ビルディングブロック、好ましくは脂質化トリペプチドビルディングブロック、またはα-アミンを有する脂質尾部に結合した2つのアミノ酸を含むビルディングブロックにカップリングさせ、次いで全体的な脱保護と精製を行って、第2世代類似体が得られる。
【0178】
例示的な第二世代ポリミキシン類似体の調製に使用される三量体ペプチドビルディングブロックの代表的な合成を示す
図9/スキーム9に示されるように、脂質化ビルディングブロックは固相ペプチド合成を用いて合成した。CTC樹脂を所望のアミノ酸によって置換させ、そのカルボン酸を介してコンジュゲートさせる。標準的な固相ペプチド合成(SPPS)手順により、樹脂上に所望のペプチドが得られる。これにより、P3アミノ酸のバリエーションや、ジスルフィド結合脂質尾部の場合による導入が可能になる。この脂質化トリペプチドのセットにおいて、N末端システインはD-Cysである。第2世代類似体の合成に使用される脂質またはジスルフィド脂質は、第1世代化合物について上に示した化合物から選択することができる。
【0179】
スキーム7(
図7)は、P3バリエーションを含むポリミキシンEヘプタペプチド(PMEH)を介した具体的な調製手順、すなわち、ポリミキシンEから出発してポリミキシンEヘプタペプチドを介してポリミキシンE類似体を合成することによる調製を示す。
【0180】
図7において、R
2は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示し;R
3は、-NH
2または-N(H)-COCH
2NH
2を示し;
R
4は、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し;R
5およびR
6は、それぞれ独立して、水素または場合により置換されていてよいアルキル部分を示し;各Xは、独立して、C、S、OまたはNを示す。
【0181】
化合物は、市販のポリミキシンEから出発して調製される。Boc化および、savinaseによる酵素消化後、トリ-Boc保護ポリミキシンEヘプタペプチド(PMEH(Boc)3)が得られ、このヘプタペプチドを、収束合成において別々に合成されたビルディングブロックにさらにコンジュゲートさせる(その調製の例についてはスキーム9を示す
図9を参照のこと)。
【0182】
これらのいわゆる第2世代類似体は、上記のスキーム7に示すように調製する。市販のポリミキシンEをまずBoc無水物で処理して、すべての遊離アミンがBoc保護されたポリミキシン種が得られる。この保護された種を工業用酵素savinaseによる酵素消化にかけて、七量体大環状環PMEH(Boc)3が得られる。PMEH(Boc)3の調製は文献からよく知られている。その後、ビルディングブロック、好ましくは脂質化トリペプチドビルディングブロック、またはα-アミンを有する脂質尾部に結合した2つのアミノ酸を含むビルディングブロックにカップリングし、次いで全体的な脱保護と精製を行って、第2世代の類似体が得られる。
【0183】
例示的な第2世代ポリミキシン類似体の調製に使用される三量体ペプチドビルディングブロックの代表的な合成を示す
図9/スキーム9に示されるように、脂質化トリペプチドビルディングブロックは固相ペプチド合成を用いて合成する。CTC樹脂を所望のアミノ酸によって置換させ、そのカルボン酸を介してコンジュゲートさせる。標準的な固相ペプチド合成(SPPS)手順により、樹脂上に所望のペプチドが得られる。これによって、P3アミノ酸のバリエーションや、ジスルフィド結合した脂質尾部の場合による導入が可能になる。この脂質化トリペプチドのセットにおいて、N末端システインはD-Cysである。第2世代類似体の合成に使用される脂質またはジスルフィド脂質は、第1世代化合物について上に示した化合物から選択することができる。
【0184】
スキーム8は、P3バリアントを含むジスルフィド結合ポリミキシンの特異的合成経路を示している。
図8ではスキーム8、すなわち、指定されたP3位に非標準残基を有するジスルフィド含有ポリミキシンバリアントの合成を示している。化合物は市販のポリミキシンBから出発して調製される。Boc化および、savinaseによる酵素消化の後、トリ-Boc保護ポリミキシンBヘプタペプチド(PMBH(Boc)3)が得られ、これを収束合成でさらに別々に合成されたビルディングブロックにコンジュゲートさせる(その調製の例についてはスキーム9を示す
図9を参照のこと)。
【0185】
これらのいわゆる第2世代類似体は、スキーム2に示されているように調製した。市販のポリミキシンBをまずBoc-無水物で処理して、すべての遊離アミンがBoc保護されたポリミキシン類が得られる。この保護された種を工業用酵素savinaseによる酵素消化にかけて、七量体大環状環PMBH(Boc)3が得られる。PMBH(Boc)3の調製法は文献でよく知られている。その後、必要な脂質化トリペプチドビルディングブロックにカップリングさせ、全体的なグローバルな脱保護と精製を行って、第2世代の類似体が得られる。
【0186】
第2世代ポリミキシン類似体の調製において使用される三量体ペプチド構築ブロックの代表的合成を示す
図9/スキーム9に示されているに、必要な脂質化トリペプチド構築ブロックを固相ペプチド合成を用いて合成した。CTC樹脂を所望のアミノ酸によって置換させ、そのカルボン酸を介してンジュゲートさせた。標準固相ペプチド合成(SPPS)手順により樹脂上に所望のペプチドを得た。これにより、P3アミノ酸の便利なバリエーションおよび所望のジスルフィド結合脂質尾部の導入が可能になった。この脂質化トリペプチドのセットおいて、N末端システインはD-Cysである。第2世代類似体の合成に用いたジスルフィド脂質は、第1世代化合物について上記に示した化合物から選択した。
【0187】
第2世代化合物は、構造BXX
【化31】
による化合物を含む。
【0188】
これらのいわゆる第2世代類似体は、
図8に示されているように調製した。市販のポリミキシンBをまずBoc無水物で処理して、すべての遊離アミンがBoc保護されたポリミキシン種が得られる。この保護された種を工業用酵素savinaseによる酵素消化にかけ、七量体大環状環PMBH(Boc)
3が得られる。PMBH(Boc)
3の調製は文献からよく知られている。その後、必要な脂質化トリペプチドビルディングブロックにカップリングさせ、全体的な脱保護と精製を行って、第2世代の類似体が得られる。
【0189】
前記の必要な脂質化トリペプチドビルディングブロックは、固相ペプチド合成を用いて合成した(スキーム9)。
【0190】
さらに、ノナペプチドとアシル尾部とを結合する非アミノ酸系リンカーを含む、第3世代化合物と称される一連の類似体を調製した。それらの類似体は共通して次のリンカー構造を有する:
【化32】
【0191】
P3におけるアミノ酸の置換が所望される場合には、スキーム2もしくはスキーム4によるPMBN(Boc)4またはスキーム6またはスキーム8によるPMBH(Boc)3のいずれかを介して化合物を調製した。ビルディングブロックは、それぞれのカルボン酸(アミド生成のためのもの)(構造BXXIII)またはクロロホルメート(カルバメート生成のためのもの)(構造BXXIV)とした。好ましくは、スキーム6または8によるPMBH(Boc)3を介した調製は、カップリング前に、保護され酵素的に消化されたポリミキシン(構造式BXXVまたはBXXVI)へのビルディングブロックの付着点にカルボン酸基またはヒドロキシル基、好ましくはカルボン酸基を有するビルディングブロックを含む。
【0192】
構造BXXIII、BXXIV、BXXVおよびBXXVIは、
【化33】
[ここで、Rは、場合により置換されていてよいアルキル部分、場合により置換されていてよいシクロアルキル部分;または場合により置換されていてよいアリール部分を示し、好ましくは、ここで、Rは、場合により置換されていてよいアルキル部分または場合により置換されていてよいアリール部分であり;
R’は、水素、ヒドロキシメチル、アミノエチル、アミノメチルまたは5-(2-アミノ)ペンタン酸を示す]
である。
【0193】
同様に、これらの第3世代化合物は、スキーム1に従って、またはP3におけるアミノ酸の置換が所望される場合にはスキーム5に従って、いずれかのポリミキシン種から出発して調製することもできる。ビルディングブロックは、それぞれのカルボン酸(アミド形成のためのもの)(構造BXXIII)またはクロロホルメート(カルバメート形成のためのもの)(構造BXXIV)であり得る。好ましくは、スキーム5に対する調製は、カップリングの前に、保護され酵素的に消化されたポリミキシンへのビルディングブロック(構造BXXVまたはBXXVI)の付着点にカルボン酸基またはヒドロキシル基、好ましくはカルボン酸基を有するビルディングブロックを含む。
【0194】
さらに、これらの第3世代化合物は、スキーム3によるPMEN(Boc)4またはスキーム7によるPMEH(Boc)3のいずれかを介して調製することもできる。ビルディングブロックは、それぞれのカルボン酸(アミド形成のためのもの)(構造BXXIII)またはクロロホルメート(カルバメート形成のためのもの)(構造BXXIV)であり得る。好ましくは、スキーム7に従ってPMEH(Boc)3を介した調製は、カップリングの前に、保護され酵素的に消化されたポリミキシン(構造BXXVまたはBXXVI)へのビルディングブロックの付着点にヒドロキシル基を有するビルディングブロックを含む。
【0195】
さらに、RA-RF位にバリエーションを有するポリミキシン類似体は文献上よく知られている。さらに、立体化学的バリアントも報告されている。このようなポリミキシン類似体は、従来技術に記載されている合成手段(例えば、ACS Cent Sci. 2021, 7, 126-134. DOI: 10.1021/acscentsci.0c01135; and Nature 2022, 601, 606-611. DOI: 10.1038/s41586-021-04264-x)によってアクセス可能である。
【実施例】
【0196】
本発明による化合物の合成
上記のスキーム2、3、4、6、7または8に従って化合物を調製し、置換パターンの異なる様々な化合物のセットを調製した。調製したすべてのポリミキシン類似体について、関連するグラム陰性株に対する抗細菌活性を試験した(表B)。ポリミキシンBおよびPMBNを参考として使用した。さらに、腎近位尿細管上皮細胞(PTEC)上の毒性を評価した。
【0197】
結果
以下の化合物群による化合物は、本明細書において以下第1世代化合物と称され、一般構造(BXIX):
【化34】
を有する。
【0198】
明確にするために、上記で開示したように、第1世代化合物は必ずしもジスルフィド結合を含まず、またポリミキシンB構造にのみに基づく必要はない。
表A、A'およびA''は、第1世代ジスルフィド含有ポリミキシン類のMIC値[ug/mL]および相対毒性値を示す。本明細書で使用する略語は、PMBN:ポリミキシンBノナペプチド;PTEC:近位尿細管上皮細胞である。
【0199】
【0200】
【0201】
【0202】
第2世代化合物は、構造BXX:
【化35】
による化合物を含む。
【0203】
BXXの実施例例および、アシル尾部がジスルフィド結合の代わりに炭素-炭素結合を含むBXXの2つの実施例を表Bに示す。表Bは、第2世代ポリミキシン類のMIC値[ug/mL]および相対毒性値を示す。略語:Dab:ジアミノ-酪酸;Dap:ジアミノプロピオン酸;PMBN:ポリミキシンBノナペプチド;PTEC:近位尿細管上皮細胞。
【0204】
【0205】
第3世代化合物を、関連するグラム陰性株に対するそれらの抗細菌活性の試験にもかけた(表C)。ポリミキシンBおよびPMBNを参考とした。さらに、腎近位尿細管上皮細胞(PTEC)に対する毒性を評価した(表Cを参照のこと)。
【0206】
表Cの化合物は、スキーム4に従ってPMBN(Boc)4を介して、あるいはP3におけるアミノ酸の置換が所望される場合にはスキーム8に従ってPMBH(Boc)3を介して、調製した。ビルディングブロックは、それぞれのカルボン酸(アミド生成のための)またはクロロホルメート(カルバメート生成のための)であった。
【0207】
【0208】
上記の実施例は、本発明による化合物が毒性と抗細菌効力の間の優れた関係を示し、それによって患者の処置におけるポリミキシン化合物の有用性の有意な改善が可能になる。
【国際調査報告】