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特表2025-505277四光波混合に使用する装置および不要なアイドラを抑制する位相調整手段を構成する方法
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  • 特表-四光波混合に使用する装置および不要なアイドラを抑制する位相調整手段を構成する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-21
(54)【発明の名称】四光波混合に使用する装置および不要なアイドラを抑制する位相調整手段を構成する方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/37 20060101AFI20250214BHJP
【FI】
G02F1/37
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547857
(86)(22)【出願日】2023-02-10
(85)【翻訳文提出日】2024-10-08
(86)【国際出願番号】 GB2023050317
(87)【国際公開番号】W WO2023152515
(87)【国際公開日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】2201809.7
(32)【優先日】2022-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500125788
【氏名又は名称】ユニバーシティ、オブ、サウサンプトン
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF SOUTHAMPTON
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】ペトロプロス,ペリクリス
(72)【発明者】
【氏名】ボットリル,カイル
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA09
2K102BA16
2K102BA18
2K102BB02
2K102BB04
2K102BC01
2K102DA06
2K102DC07
2K102EA21
2K102EB06
2K102EB08
2K102EB20
(57)【要約】
四光波混合に使用するための装置が開示される。装置は、非線形媒体を通る光学径路に沿って共伝搬する複数の光ビームを受信するための非線形媒体を備え、複数の光ビームは、信号周波数を有する少なくとも1つの信号波と、個々のポンプ周波数を有する1個または2個のポンプ波とを含み、光ビームは、非線形媒体内で1つ以上の不要なアイドラ波を発生する。装置はさらに、非線形媒体内で光の波長に、個々の波長依存性位相シフトを選択的に適用して、ポンプ波または各ポンプ波と信号波との間の位相差を調整するように構成された位相調整手段を備え、その結果、非線形媒体の光学径路に沿って不要なアイドラ波が発生し、破壊的に干渉して、非線形媒体の出力における不要なアイドラ波を抑制する。位相調整手段を構成する方法が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四光波混合に使用する装置であって、
使用時に、非線形媒体を通る光学径路に沿って共伝搬する複数の光ビームを受信するための非線形媒体であって、複数の光ビームは、信号周波数を有する少なくとも1つの信号波と、個々のポンプ周波数を有する1つまたは2つのポンプ波とを含み、非線形媒体は、個々の周波数f,f,fを有する非線形媒体内の共伝搬する3つの波が、四光波混合によって関係:f=f+f-fに従って周波数fを有するアイドラ波を発生するものであり、
四光波混合相互作用における周波数f,f,fのうちの1つを提供する波のうちの1つだけがポンプ波の1つによって提供され、そして、四光波混合相互作用における周波数f,f,fのうちの別の2つを提供する2つの別の波はポンプ波以外の別の波によって提供される場合、使用時に、非線形媒体内の光ビームは、個々の周波数fi.u1,fi.u2,…,fi.unを有する1つ以上の不要なアイドラ波を発生し、
装置はさらに、非線形媒体を通る光ビームの光学径路内の1つ以上の場所において、非線形媒体内の光の波長に、個々の波長依存性位相シフトを選択的に適用し、ポンプ波または各ポンプ波と信号波との間の位相差を調整するように構成された位相調整手段を備え、
波長依存性位相シフトは、不要なアイドラ波が非線形媒体の光学径路に沿って発生して破壊的に干渉し、その結果、不要なアイドラ波が非線形媒体の出力において抑制されるものである、装置。
【請求項2】
周波数f,f,fのうちの2つを提供する四光波混合相互作用における波のうちの2つがポンプ波の1つまたは両方によって提供され、そして、四光波混合相互作用における周波数f,f,fのうちの別の1つを提供する別の波は信号波または信号波の1つによって提供される場合、使用時に、非線形媒体内の光ビームは、個々の周波数fi.w1,fi.w2,…,fi.wnを有する1つ以上の必要なアイドラ波を発生し、
位相調整手段は、位相調整手段によって選択的に適用される波長依存性位相シフトが、非線形媒体の光学径路に沿って必要なアイドラ波が発生して建設的に干渉し、その結果、必要なアイドラ波が非線形媒体の出力において増強されるものであるようにしている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
位相調整手段は、位相調整手段によって選択的に適用される波長依存性位相シフトが、非線形媒体の出力において必要なアイドラ波のパワーと不要なアイドラ波のパワーとの比が最大化されるようにしている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
不要なアイドラ波は、最大限に抑制され、非線形媒体の出力において実質的に削除される、請求項1~3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
位相調整手段は、位相調整手段によって選択的に適用される波長依存性位相シフトが、非線形媒体の分散が、少なくとも、ポンプ波または各ポンプ波、信号波または各信号波、および必要なアイドラ波または各必要なアイドラ波を含む周波数範囲において補償されるものであるようにしている、請求項1~4のいずれかに記載の装置であって、
【請求項6】
位相調整手段は、非線形媒体内の光の波長に波長依存性位相シフトが適用される場所の1つ以上において、πラジアン位相シフトがポンプ波または各ポンプ波、または信号波または各信号波に適用されるよう選択されるようにしている、請求項1~5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
位相調整手段は、非線形媒体の光学径路に沿って異なる場所において、整合する不要なアイドラ波を逆位相で発生し、その結果、非線形媒体から出力される不要なアイドラ波の振幅を破壊的に干渉して抑制するようにしている、請求項1~6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
位相調整手段は、非線形媒体の光学径路の中間点において、非線形媒体内の光の波長に単一の波長依存性位相シフトが選択的に適用されるようにしている、請求項1~7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
位相調整手段は、単一のπラジアン位相シフトが選択されて、非線形媒体の光学径路の中間点においてポンプ波または各ポンプ波に適用されるようにしている、請求項1~8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
非線形媒体は光ファイバであり、必要に応じて高非線形光ファイバである、請求項1~9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
非線形媒体内の光学径路に沿って伝搬するポンプ波または各ポンプ波を提供するように構成された単一のポンプ波光源または2つの非縮退ポンプ波光源をさらに備える、請求項1~10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
非線形媒体内の光学径路に沿って伝搬する信号波または各信号波を提供するように構成された1つ以上の信号波光源をさらに備える、請求項1~11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
位相調整手段は、少なくとも1つのプログラム可能な光フィルタを含む、請求項1~12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
プログラム可能な光フィルタは、グレーティングと、そこに入射する光ビームに選択された位相シフトを適用するように個別にプログラム可能な制御可能な素子のアレイを含む空間光変調器と、を備え、
グレーティングは、制御可能な素子のアレイを横断して非線形媒体内を共伝搬する光ビームを分散させるように構成される、請求項1~13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
制御可能な素子のアレイは、シリコン素子上の反射型液晶マトリクスである、請求項1~14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
位相調整手段は、受動光コンポーネントだけを備える、請求項1~12のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
位相調整手段は、使用中の非線形媒体内を伝搬する光ビームの波長の少なくとも一部に、選択された波長依存性位相シフトを適用するように構成された、少なくとも1つの複素数のチャープファイバブラッググレーティングを含む、請求項1~12または16のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
光学径路に沿って配置され、光学径路内を共伝搬する波の1つ以上を増幅する1つ以上のエルビウム添加ファイバ増幅器をさらに備え、エルビウム添加ファイバ増幅器または各エルビウム添加ファイバ増幅器は、光学径路に沿って発生する不要なアイドラ波の振幅を平衡化させるように構成され、その結果、非線形媒体の出力における不要なアイドラ波の振幅が最小化される、請求項1~17のいずれかに記載の装置。
【請求項19】
光学径路に沿って、非線形媒体は、単一のタイプであり、あるいは、非線形媒体は、光学径路に沿った複数のセクションで異なるタイプである、請求項1~18のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
該装置は、1つ以上の通信チャネル信号波を、通信媒体中に多重化するための異なる周波数のアイドラ波に変換し、通信媒体におけるチャネル競合を緩和するように構成される、通信ネットワークにおける波長変換器として構成される、請求項1~19のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
請求項1~20のいずれかに記載の装置において、非線形媒体の出力において不要なアイドラ波を抑制する位相調整手段を構成する方法であって、
単一のポンプ波光源または2つの非縮退ポンプ波光源を動作させて、非線形媒体内の光学径路に沿って伝搬するポンプ波または各ポンプ波を提供するステップと、
1つ以上の信号波光源を動作させて、非線形媒体内の光学径路に沿って伝搬する信号波または各信号波を提供するステップと、
検出器を用いて、非線形媒体の出力において光ビームを検出し、そして、光ビームの検出されたパワースペクトル密度を表す信号を決定するステップと、
非線形媒体の出力において周波数fi.u1,fi.u2,…,fi.unにおける不要なアイドラ波の検出されたパワーを抑制するように、非線形媒体内を伝搬する光の波長について波長依存性位相シフトを決定するステップと、を含む方法。
【請求項22】
波長依存性位相シフトを決定するステップは、
少なくとも、ポンプ波または各ポンプ波、信号波または各信号波、および必要なアイドラ波または各必要なアイドラ波を含む範囲内で非線形媒体の分散が補償されるように、波長依存性位相シフトを決定するステップを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
非線形媒体の分散が補償されるように波長依存性位相シフトを決定するステップは、
前記範囲内で信号波光源の1つの波長を掃引するステップと、
掃引波長において、該掃引波長について波長依存性位相シフトを決定し、該掃引波長において信号波について発生する必要なアイドラ波の検出されたパワーを最大化するステップと、を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
波長依存性位相シフトを決定するステップはさらに、
非線形媒体の出力において周波数fi.u1,fi.u2,…,fi.unにおける不要なアイドラ波の検出されたパワーが最小化されるように、ポンプ波または各ポンプ波の光の波長について波長依存性位相シフトを決定するステップを含む、請求項21~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
波長依存性位相シフトを決定するステップはさらに、
非線形媒体の出力において周波数fi.w1,fi.w2,…,fi.wnにおける必要なアイドラ波の検出されたパワーを増強させるように、非線形媒体内を伝搬する光の波長について波長依存性位相シフトを決定するステップを含む、請求項21~24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
非線形媒体の出力において必要なアイドラ波の検出パワーと、不要なアイドラ波の検出パワーとの比を最大化するように、非線形媒体内を伝搬する光の波長について波長依存性位相シフトを決定するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
波長依存性位相シフトを決定するステップは、
位相調整手段として、少なくとも1つのプログラム可能な光フィルタを用意するステップと、
検出パワーに基づいて、プログラム可能な光フィルタまたは各プログラム可能な光フィルタにおいて適用される位相シフトを調整して、波長依存性位相シフトを決定するステップと、を含む、請求項21~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
1つ以上のファイバブラッググレーティングについて1つ以上の位相マスクを決定して、光学径路内に決定された波長依存性位相シフトを設けるステップと、
決定された位相マスクまたは各決定された位相マスクを用いて、ファイバブラッググレーティングまたは各ファイバブラッググレーティングを製造するステップと、
非線形媒体内の光学径路内の場所に製造されたファイバブラッググレーティングまたは各製造されたファイバブラッググレーティングを設けて、位相調整手段を提供するステップと、をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
放射線が媒体に入射した場合、振動する電磁場が媒体の分子内の電気双極子と相互作用し、これらを振動させる。その結果、媒体内で時間的に変化する局所的な電気分極が生ずる。そして、この振動する電界は電磁場を再放射し、入射波は、一連のこうした吸収と再放射のプロセスを経て媒体を通って伝搬すると考えらる。振幅ベクトルEを備えた電界によって誘導される分極ベクトルPは、次の形式の一般級数展開として表せる。
【表1】
ここで、εは、真空の誘電率、χは、媒体のリニア感受率テンソル、χとχは、2次および3次の感受率テンソル項である。
【背景技術】
【0002】
誘導分極が印加電界に対して純粋に線形依存性を有する場合、再放射電界は入射電界と同一になる。しかしながら、非線形媒体など、2次またはより高い次数の感受率項が非ゼロである場合は、入射電界には存在しなかった高調波が放射電界に出現し始める。
【0003】
非ゼロの3次感受率項χ(例えば、高いχ値を有するケイ酸塩ガラス材料で形成された高非線形光ファイバなど)を有する非線形カー(Kerr)媒体は、自己位相変調(SPM)、相互位相変調(CPM)、および四光波混合(FWM)を含む、媒体内を伝搬する光の非線形挙動を生じさせる。
【0004】
四光波混合は、4つの周波数の光波が、波の電界に対する媒体の非線形応答を介して相互作用するプロセスである。広く言えば、四光波混合(FWM)は、カー媒体内で共伝搬する任意の3つの波の間の相互作用を引き起こし、第4の波の生成をもたらす。簡単のために、誘電体媒体に入射する4つの光波がx軸に平行に直線偏光していると仮定すると、合成電界は、下記のように表せる。
【表2】
ここで、Eは、j番目の電界の振幅、βは、周波数ωでの波の伝搬定数である。伝搬定数は、下記の関係式で与えられる。
【表3】
ここで、n(ω)は周波数依存性の屈折率であり、cは真空中の光の速度である。
【0005】
合成電界の式を分極ベクトルの式に代入すると、2次および3次展開項は、4つの波の積を含む多数の項を含む。4つの入射周波数の各々における項を収集することによって、材料の非線形分極PNLは、下記のように各周波数jの成分に分解できる。
【表4】
【表5】
ここで、fとgは電界振幅の関数であり、パラメータθ,θは以下で説明する。
【0006】
入射周波数の各々における材料の分極は、Pの式から、自己位相変調、相互位相変調、およびj番目の周波数における電界と分極Pとの間の相対的位相を表すパラメータθ,θの2つの関数に起因した項を含むことが判る。四光波混合は、θまたはθがゼロに近づくときに最も効率的である。
【表6】
【表7】
【0007】
これら2つの条件により、異なる四光波混合現象を生じさせる。θまたはθのいずれかを最小化するには、信号の周波数およびその伝搬定数の両方が特定の条件を満たす必要がある。これらの条件は、FWM相互作用の前後のエネルギーおよび運動量の保存に実質的に相当する。後者の条件の成就は、位相整合と称される。
【0008】
θ条件の伝搬定数の位相整合(即ち、β+β+β-β=0)を満たすのは困難であり、実際、それは、非線形媒体で通常観察される2つのFWM機構のうちの2番目(即ち、θ)である。
【0009】
θの最小化は、波の周波数が関係式ω+ω=ω+ωを満たし、関連する位相整合要件が満たされた場合(即ち、β+β-β-β=0)に発生する。これは、非縮退の場合(ω≠ω≠ω≠ω)、または退縮退の場合(ω=ω≠ω≠ω)で発生することがある。このFWM相互作用は、図1に示しており、周波数ω,ωを有する2つの入力波が、周波数ωを有する第3入力波と組み合わされて、周波数ωを有する出力アイドラ波を生成する。FWMは、位相整合要件が満たされる非線形媒体内の任意の波の組合せで発生することがある。この相互作用は、縮退の場合、入力波が同じ周波数(即ち、ω=ω)である単一のポンプ波(レーザによって生成される)を用いて、あるいは、非縮退の場合、入力波が異なる周波数(即ち、ω≠ω)である2つのポンプ波(異なる周波数を出力する2つのレーザによって生成される)を用いて利用でき、信号波と相互作用し、信号波に基づいて異なる周波数のアイドラ波を生成する。このようにFWMは、原理的には、例えば、パラメトリック増幅、波長/チャネル変換、位相共役、光サンプリング、周波数コムラインの非線形相互作用、信号再生などの信号処理の目的のために利用できる。
【0010】
しかしながら、必要なアイドラ波を生成するためのポンプ波またはポンプ波と信号波との間の必要な相互作用に加えて、FWMは、他の波の組合せとの種々の相互作用を引き起こし、多数のスプリアス信号の発生を導いて、最終的に処理対象のチャネル間のクロストークをもたらす可能性がある。
【0011】
これは、縮退の場合に図2に示しており、周波数ωを有する2つのポンプ波が周波数ωの信号波と結合して、周波数ω112=2ω-ωを有する必要なアイドラ波を生成し、そして、周波数ωを有する1つのポンプ波が周波数ωを有する2つの信号波と結合して、周波数ω221=2ω-ωを有する不要なアイドラ波を生成する。異なる周波数を有する2つのポンプ波光源が提供される非縮退の場合は、状況はさらに複雑になり、図3に示すように、2つのポンプ波と1つの信号波のある組合せに基づいて生成される必要なアイドラ波が示され、他の波のある組合せ(例えば、1つのポンプ波と2つの信号波、または3つのポンプ波)に基づいた不要なアイドラ波が示される。高次の相互作用を観察する場合、そして様々な周波数を持つ複数の信号波が非線形媒体を通って伝搬する場合、組合せの数はさらに増加する。
【0012】
非線形媒体への増加した発射パワーの使用や改善した位相整合など、必要なアイドラ信号の発生の効率を増加させるために採用されるステップは、一般には、同時に不要な信号の発生にも利益になる。
【0013】
別個のポンプと信号を備えたシステムにおいて、不要なアイドラの増殖を緩和するために、当該技術分野で一般に使用される手法は、ポンプパワーを最大化し、信号パワーを制限することによって、必要なアイドラと不要なアイドラの発生の間でトレードオフを達成することであり、これは、出力アイドラの光信号対雑音比(OSNR)を制限する。別の提案されている手法は、相互作用するシステムを分離するための特殊な分散設計の使用、不要なアイドラのためのバンド幅を用意すること、または複数の分離された非線形媒体において簡単に処理することなどを含む。これらの手法と、不要なアイドラ、そして必要なアイドラの存在により、種々の用途のための信号処理に適用される四光波混合の有用性を制限し、これは、信号波長を変換し、固定波長送信機を多重化し、チャネル競合を緩和してデータスループットを増加させる四光波混合に基づいた信号処理の商業化を制限する。
【0014】
この文脈において本開示は考案された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
一態様から見ると、本開示は、四光波混合に使用する装置を提供する。この装置は、使用時に、非線形媒体を通る光学径路に沿って共伝搬する複数の光ビームを受信するための非線形媒体を備え、複数の光ビームは、信号周波数を有する少なくとも1つの信号波と、個々のポンプ周波数を有する1つまたは2つのポンプ波とを含み、非線形媒体は、個々の周波数f,f,fを有する非線形媒体内の共伝搬する3つの波が、四光波混合によって関係:f=f+f-fに従って周波数fを有するアイドラ波を発生するものである。 四光波混合相互作用における周波数f,f,fのうちの1つを提供する波のうちの1つだけがポンプ波の1つによって提供され、そして、四光波混合相互作用における周波数f,f,fのうちの別の2つを提供する2つの別の波はポンプ波以外の別の波によって提供される場合、使用時に、非線形媒体内の光ビームは、個々の周波数fi.u1,fi.u2,…,fi.unを有する1つ以上の不要なアイドラ波を発生する。装置はさらに、非線形媒体を通る光ビームの光学径路内の1つ以上の場所において、非線形媒体内の光の波長に、個々の波長依存性位相シフトを選択的に適用し、ポンプ波または各ポンプ波と信号波との間の位相差を調整するように構成された位相調整手段を備え、波長依存性位相シフトは、不要なアイドラ波が非線形媒体の光学径路に沿って発生して破壊的に干渉し、その結果、不要なアイドラ波が非線形媒体の出力において抑制されるものである。
【0016】
本開示によれば、この態様による四光波混合に使用する装置は、非線形媒体全体において、不要なアイドラ波が発生し、出力において互いに破壊的に干渉するように選択された、場所での1つ以上の波長依存性位相シフトの適用により、非線形媒体の出力における不要なアイドラ波の抑制を可能にし、その結果、不要なアイドラ波が抑制される。この不要なアイドラの抑制は、アイドラOSNRやバンド幅を妥協したり、あるいは、相互作用するシステムを分離するために分散の複雑な設計によることなく達成される。本開示による不要なアイドラの抑制は、簡単な位相フィルタの適用とともに、波長依存性位相シフトを適用し、ポンプ波または各ポンプ波と信号波との間の位相差を調整するだけで達成される。以下に示すように、いったん位相シフトが決定されると、チャープファイバブラッググレーティングなどの受動コンポーネントによって位相フィルタは提供でき、これにより高出力動作が可能になり、種々の信号処理用途での商用展開を容易にする。後に判るように、この手法は、不要なアイドラの26dB程度の抑制を達成することが示されている。
【0017】
実施形態では、周波数f,f,fのうちの2つを提供する四光波混合相互作用における波のうちの2つがポンプ波の1つまたは両方によって提供され、そして、四光波混合相互作用における周波数f,f,fのうちの別の1つを提供する別の波は信号波または信号波の1つによって提供される場合、使用時に、非線形媒体内の光ビームは、個々の周波数fi.w1,fi.w2,…,fi.wnを有する1つ以上の必要なアイドラ波を発生できる。位相調整手段は、位相調整手段によって選択的に適用される波長依存性位相シフトが、非線形媒体の光学径路に沿って必要なアイドラ波が発生して建設的に干渉し、その結果、必要なアイドラ波が非線形媒体の出力において増強されるものであるようにできる。実施形態では、位相調整手段は、位相調整手段によって選択的に適用される波長依存性位相シフトが、非線形媒体の出力において必要なアイドラ波のパワーと不要なアイドラ波のパワーとの比が最大化されるようにできる。実施形態では、不要なアイドラ波は、最大限に抑制され、非線形媒体の出力において実質的に削除されてもよい。こうして本開示によれば、不要なアイドラ波が抑制されるだけでなく、必要なアイドラ波が影響を受けないだけでなく、これらは増強することもできる。特に、本開示によれば、必要なアイドラのパワーと不要なアイドラのパワーの比率を最大化できる。
【0018】
実施形態では、位相調整手段は、位相調整手段によって選択的に適用される波長依存性位相シフトが、非線形媒体の分散が、少なくとも、ポンプ波または各ポンプ波、信号波または各信号波、および必要なアイドラ波または各必要なアイドラ波を含む周波数範囲において補償されるものであるようにしてもよい。非線形媒体の分散により、異なる波長であるポンプ波と信号波は、非線形媒体内の光学径路の長さにわたって未知の位相シフトを受ける。本開示によれば、位相フィルタは、非線形媒体における波長依存性分散に起因したこの相対位相シフトを見つけて補償するためにも使用され、ファイバの分散プロファイルを補償して、位相整合条件を満たすことができ、その結果、更なる位相シフトを適用して、ポンプまたは各ポンプと信号または各信号との間の相対的位相を変更して、不要なアイドラを抑制できる。こうして結果として得られる位相フィルタは、分散を補正し、アイドラを抑制し、位相フィルタに複素数の非分散的な位相プロファイルを与える。
【0019】
実施形態では、位相調整手段は、非線形媒体内の光の波長に波長依存性位相シフトが適用される場所の1つ以上において、πラジアン位相シフトがポンプ波または各ポンプ波、または信号波または各信号波に適用されるよう選択されるようにしてもよい。実施形態では、位相調整手段は、非線形媒体の光学径路に沿って異なる場所において、整合する不要なアイドラ波を逆位相で発生し、その結果、非線形媒体から出力される不要なアイドラ波の振幅を破壊的に干渉して抑制するようにしてもよい。非線形媒体内の光学径路上の場所においてポンプ波または信号波(典型的には1つまたは両方のポンプ)にπラジアン位相シフトを適用することによって、不要なアイドラ波が逆位相で発生する。これらは、互いに整合した場合、非線形媒体の出力において破壊的な干渉によって不要なアイドラ波の全体的抑制をもたらすことができる。ポンプ波と信号波の間にπラジアン位相シフトを適用することによって、2つのポンプ波および信号波によって発生する必要なアイドラ波は、各位相フィルタにおいて2πラジアン位相シフトを見ることになり、このことは、これらは位相フィルタの影響を受けず、抑制されないことを意味する。
【0020】
実施形態では、位相調整手段は、非線形媒体の光学径路の中間点において、非線形媒体内の光の波長に単一の波長依存性位相シフトが選択的に適用されるようにしてもよい。実施形態では、位相調整手段は、単一のπラジアン位相シフトが選択されて、非線形媒体の光学径路の中間点においてポンプ波または各ポンプ波に適用されるようにしてよい。このように非線形媒体の光学径路の中間において単一の位相シフトを適用することによって、光学径路内の単一の場所において単一の位相フィルタの適用により、不要なアイドラ波が抑制できる。
【0021】
実施形態では、非線形媒体は光ファイバでもよく、必要に応じて高非線形光ファイバでもよい。実施形態では、装置はさらに、非線形媒体内の光学径路に沿って伝搬するポンプ波または各ポンプ波を提供するように構成された単一のポンプ波光源または2つの非縮退ポンプ波光源を備えてもよい。実施形態では、装置はさらに、非線形媒体内の光学径路に沿って伝搬する信号波または各信号波を提供するように構成された1つ以上の信号波光源を備えてもよい。実施形態では、装置は、1つ以上の通信チャネル信号波を、通信媒体中に多重化するための異なる周波数のアイドラ波に変換し、通信媒体におけるチャネル競合を緩和するように構成される、通信ネットワークにおける波長変換器として構成されてもよい。このように、本開示の装置は、固定波長光源からの複数の信号の波長変換など、信号処理のための様々なファイバ方式の用途に適用することができ、信号競合を回避しながら多重化を可能にし、ファイバ方式のネットワークのスループットをさらに向上できる。
【0022】
実施形態では、位相調整手段は、少なくとも1つのプログラム可能な光フィルタを含んでもよい。実施形態では、プログラム可能な光フィルタは、グレーティングと、そこに入射する光ビームに選択された位相シフトを適用するように個別にプログラム可能な制御可能な素子のアレイを含む空間光変調器とを備えてもよく、グレーティングは、制御可能な素子のアレイを横断して非線形媒体内を共伝搬する光ビームを分散させるように構成される。実施形態では、制御可能な素子のアレイは、シリコン素子上の反射型液晶マトリクスでもよい。プログラム可能な光フィルタの使用により、不要なアイドラを抑制し、非線形媒体の分散を補償するために必要な波長依存性位相シフトを発見して適用できるようになり、複素数のフィルタプロファイルを生成できる。
【0023】
実施形態では、位相調整手段は、受動光コンポーネントだけを備えてもよい。実施形態では、位相調整手段は、使用中の非線形媒体内を伝搬する光ビームの波長の少なくとも一部に、選択された波長依存性位相シフトを適用するように構成された、少なくとも1つの複素数のチャープファイバブラッググレーティングを含んでもよい。不要なアイドラを抑制するために必要な複素数のフィルタプロファイルが、非線形媒体およびポンプ波およびソース波について既知であると(例えば、プログラム可能な光フィルタを用いた発見により)、位相フィルタプロファイルを受動コンポーネントに実装でき、ハイパワーで安定して動作可能な比較的安価で信頼性の高いコンポーネントを用いて現場においてその利点を提供できるようになる。
【0024】
実施形態では、装置はさらに、光学径路に沿って配置され、光学径路内を共伝搬する波の1つ以上を増幅する1つ以上のエルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)をさらに備え、エルビウム添加ファイバ増幅器または各エルビウム添加ファイバ増幅器は、光学径路に沿って発生する不要なアイドラ波の振幅を平衡化させるように構成され、その結果、非線形媒体の出力における不要なアイドラ波の振幅が最小化される。このようにEDFAの使用により、波長依存性位相シフトの適用後に、非線形媒体の様々なセクションにおける相互作用の平衡化に役立つ。
【0025】
実施形態では、光学径路に沿って、非線形媒体は、単一のタイプでもよく、あるいは、非線形媒体は、光学径路に沿ったセクションで異なるタイプでもよい。本開示は、単一のタイプの非線形媒体内での波長依存性位相シフトの適用を想定しているが、複素数の位相フィルタの使用により、異なる非線形媒体のセクションで発生するアイドラを抑制できる。
【0026】
他の態様から見ると、本開示は、本開示の態様に従って四光波混合に使用する装置において、非線形媒体の出力において不要なアイドラを抑制する位相調整手段を構成する方法を提供する。この方法は、単一のポンプ波光源または2つの非縮退ポンプ波光源を動作させて、非線形媒体内の光学径路に沿って伝搬するポンプ波または各ポンプ波を提供するステップと、1つ以上の信号波光源を動作させて、非線形媒体内の光学径路に沿って伝搬する信号波または各信号波を提供するステップと、検出器を用いて、非線形媒体の出力において光ビームを検出し、そして、光ビームの検出されたパワースペクトル密度を表す信号を決定するステップと、非線形媒体の出力において周波数fi.u1,fi.u2,…,fi.unにおける不要なアイドラ波の検出されたパワーを抑制するように、非線形媒体内を伝搬する光の波長について波長依存性位相シフトを決定するステップと、を含む。実施形態では、波長依存性位相シフトを決定するステップは、少なくとも、ポンプ波または各ポンプ波、信号波または各信号波、および必要なアイドラ波または各必要なアイドラ波を含む範囲内で非線形媒体の分散が補償されるように、波長依存性位相シフトを決定するステップを含んでもよい。実施形態では、非線形媒体の分散が補償されるように波長依存性位相シフトを決定するステップは、前記範囲内で信号波光源の1つの波長を掃引するステップと、掃引波長において、該掃引波長について波長依存性位相シフトを決定し、該掃引波長において信号波について発生する必要なアイドラ波の検出されたパワーを最大化するステップと、を含んでもよい。実施形態では、波長依存性位相シフトを決定するステップはさらに、非線形媒体の出力において周波数fi.u1,fi.u2,…,fi.unにおける不要なアイドラ波の検出されたパワーが最小化されるように、ポンプ波または各ポンプ波の光の波長について波長依存性位相シフトを決定するステップを含んでもよい。実施形態では、波長依存性位相シフトを決定するステップはさらに、非線形媒体の出力において周波数fi.w1,fi.w2,…,fi.wnにおける必要なアイドラ波の検出されたパワーを増強させるように、非線形媒体内を伝搬する光の波長について波長依存性位相シフトを決定するステップを含んでもよい。実施形態では、該方法は、非線形媒体の出力において必要なアイドラ波の検出パワーと、不要なアイドラ波の検出パワーとの比を最大化するように、非線形媒体内を伝搬する光の波長について波長依存性位相シフトを決定するステップをさらに含んでもよい。このように不要なアイドラを抑制し、分散を補償するために必要な複素数の波長依存性位相シフトが決定できる。
【0027】
実施形態では、波長依存性位相シフトを決定するステップは、位相調整手段として、少なくとも1つのプログラム可能な光フィルタを用意するステップと、検出パワーに基づいて、プログラム可能な光フィルタまたは各プログラム可能な光フィルタにおいて適用される位相シフトを調整して、波長依存性位相シフトを決定するステップと、を含んでもよい。実施形態では、該方法は、1つ以上のファイバブラッググレーティングについて1つ以上の位相マスクを決定して、光学径路内に決定された波長依存性位相シフトを設けるステップと、決定された位相マスクまたは各決定された位相マスクを用いて、ファイバブラッググレーティングまたは各ファイバブラッググレーティングを製造するステップと、非線形媒体内の光学径路内の場所に製造されたファイバブラッググレーティングまたは各製造されたファイバブラッググレーティングを設けて、位相調整手段を提供するステップと、をさらに含んでもよい。このようにプログラム可能な光フィルタを使用して、不要なアイドラを抑制し、分散を補償するために必要な複素数の波長依存性位相シフトを発見して決定でき、整合する複素数のフィルタプロファイルを有する簡単なパッシブ位相フィルタが製作でき、現場でのハイパワー使用に展開できる。
【0028】
前述の開示および下記の実施例の詳細な説明から、上述した開示の任意の所定の態様に関連して任意であると説明した特定の特徴および実装は、適用可能な場合、本開示の他の態様との組合せでも開示されていると読者によって理解されるべきであることは理解されよう。同様に、上述した開示の任意の所定の態様に関連して説明された付随する利点は、適用可能な場合、本開示の他の態様の利点として開示されていると読者によって理解されるべきであることは理解されよう。即ち、上述の開示の特定の態様に関連する任意の特徴および利点の説明は限定的なものではなく、これらの任意の特徴および利点の開示は、こうした組合せが適用可能な場合、組み合わせの本開示の全ての態様に関連することを意図していると理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本開示の特定の例を、添付図面を参照して説明する。
【0030】
図1】四光波混合においてポンプ波と信号波が結合する際に相互作用する光子のエネルギー間の関係を示す。
図2】縮退の場合の入力ポンプ波および信号波について必要なアイドラ波および不要なアイドラ波の発生の例を、周波数に対するパワースペクトルで示す。
図3】非縮退の場合の2つの入力ポンプ波および入力信号波について必要なアイドラ波と不要なアイドラ波の発生の例を、周波数に対するパワースペクトルで示す。
図4】本開示の態様に係る縮退四光波混合に使用するための例示的な装置を示す。
図5】本発明の態様に係る縮退四光波混合および非縮退四光波混合に使用するための他の例示的な装置を示しており、周波数に対するパワースペクトルで、装置の光学径路内の様々な場所における必要なアイドラ波および不要なアイドラ波の発生と、不要なアイドラ波の抑制をともに示す。
図6】本発明の態様に従って、図4図5に示すような装置において非線形媒体の出力において不要なアイドラを抑制するための位相調整手段を構成する方法を示す。
図7】プログラム可能な光フィルタが分散を調整し、不要なアイドラを抑制する際に、異なる周波数の3つの信号波を備えた、図4と5に示すような装置の出力パワースペクトル密度を非縮退の場合と縮退の場合で示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、これらへの全ての変更および/または均等物または代替物も本発明の範囲に属することは理解すべきである。明細書および図面全体に渡って、同じまたは類似の参照符号は、同じまたは類似の要素を参照するために使用されることがある。
【0032】
ここで使用しているように、ある特徴(例えば、数字、機能、動作、または部品などの構成要素)を「有する」、「有してもよい」、「含む」または「含んでもよい」という用語は、その特徴の存在を示し、他の特徴の存在を排除するものではない。本明細書の説明および請求項全体に渡って、「備える」および「含む」という語およびその変形は、「これらに限定されないがこれらを含む」という意味であり、他の構成要素、整数またはステップを排除することを意図していない(排除しない)。本明細書の説明および請求項全体に渡って、文脈上特に必要とされない限り、単数形は複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用されている場合、文脈上特に必要とされない限り、本明細書は単数形だけでなく複数形も想定していると理解すべきである。
【0033】
ここで使用しているように、「AまたはB」、「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」、または「Aおよび/またはBの1つ以上」という用語は、AおよびBの全ての可能な組合せを含むことができる。例えば、「AまたはB」、「AおよびBの少なくとも1つ」、「AまたはBの少なくとも1つ」は、(1)少なくとも1つのAを含む、(2)少なくとも1つのBを含む、または(3)少なくとも1つのAおよび少なくとも1つのBを含む、のすべてを示すことができる。
【0034】
ここで使用しているように、「第1」および「第2」という用語は、重要性に関わらず種々の構成要素を修飾するものであり、構成要素を制限するものではない。これらの用語は、ある構成要素を他の構成要素と区別するためにのみ使用される。例えば、第1構成要素および第2構成要素への言及は、構成要素の順序または重要性に関わらず、互いに異なる構成要素を示すことがある。
【0035】
要素(例えば、第1要素)が他の要素(例えば、第2要素)と(物理的に、動作的に、または通信的に)「結合される」または「接続される」と参照している場合、その要素は他の要素と直接に、または第3要素を介して結合または接続されている可能性があることが理解されよう。対照的に、要素(例えば、第1要素)が他の要素(例えば、第2要素)と「直接結合さいる」または「直接接続される」と参照している場合、その要素と他の要素との間に他の要素(例えば、第3要素)が介在していないことが理解されよう。
【0036】
ここで使用される用語は、その実施形態のいくつかを説明するためだけに提供されており、本開示の他の実施形態の範囲を制限するものではない。単数形"a"、"an"、および"the"は、文脈上明らかに別段の定めがない限り、複数形も含むものと理解すべきである。ここで使用している技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本開示の実施形態が属する技術分野の当業者が一般に理解している意味と同じ意味を有する。さらに、一般に使用されている辞書で定義されている用語などは、関連する技術分野の文脈での意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、ここで明示的に定義されていない限り、理想化された意味または過度に形式的な意味で解釈されないものと理解されよう。
【0037】
ここで、図4を参照すると、図4は、本開示の態様に係る縮退四光波混合に使用するための例示の装置402を示す。装置402は、高非線形光ファイバ408と、位相調整手段410と、高非線形光ファイバ414とを備える。
【0038】
高非線形光ファイバ408および高非線形光ファイバ414は、使用時に、非線形媒体を通る光学径路に沿って共伝搬する複数の光ビームを受信するための非線形媒体を共に形成する。高非線形光ファイバ408および高非線形光ファイバ414は、高い3次感受率項χを有する材料で構成された2つの等しい長さの光ファイバにすることができ、その結果、ファイバ内を共伝搬する光ビームの光波の間で四光波混合相互作用が発生する。
【0039】
この目的のために、周波数fを有する1つの信号波の光源を提供する信号波光源406が、高非線形光ファイバ408に光ビームを提供するように構成される。例えば、波長変換のために、信号波に基づいて非線形媒体内にアイドラ波を生成するために、単一のポンプ波光源404が配置され、位相整合したポンプ波(周波数fを有する)を有する光ビームを高非線形光ファイバ408に供給する。
【0040】
高非線形光ファイバ408の第1長さでは、信号波とポンプ波が結合して、周波数2f-fを有する必要なアイドラ波を提供する。即ち、2つの入力周波数を提供する四光波混合相互作用において波のうちの2つがポンプ波によって提供される場合(縮退の場合)、必要なアイドラ波は四光波混合によって発生する。
【0041】
また、高非線形光ファイバ408の第1長さでは、信号波とポンプ波が結合して、周波数2f-fの不要なアイドラ波を提供する。即ち、入力周波数の1つを提供する四光波混合相互作用において波のうちの1つだけがポンプ波によって提供され、他の2つの入力周波数f,f,fを提供する他の2つの波がポンプ波以外の波によって提供される場合、不要なアイドラ波は、四光波混合によって発生する(この場合、信号波は、縮退の方法で2回結合し、不要なアイドラ波を生成する)。
【0042】
第1長さの高非線形光ファイバ408と第2長さの高非線形光ファイバ414との間にある非線形媒体の中間点では、図2に示すようなスペクトルが生ずる(分散が補償される場合)。
【0043】
不要なアイドラ波を抑制するために、位相調整手段410が非線形媒体の中間点に配置され、非線形媒体内の光の波長に、複素数の位相フィルタを用いて個々の波長依存性位相シフトを選択的に適用する。位相調整手段410は、グレーティング(grating)を含むプログラム可能な光フィルタと、そこに入射する光ビームに選択された位相シフトを適用するように個別にプログラム可能な制御可能な素子のアレイを含む空間光変調器とによって提供でき、グレーティングは、制御可能な素子のアレイを横断して非線形媒体内を共伝搬する光ビームを分散させるように構成される。制御可能な素子のアレイは、シリコン素子上の反射型液晶マトリクスでもよい。位相調整手段410によって適用する必要がある複素数のフィルタプロファイルは、図6に関連して説明される方法を用いてプログラム可能な光フィルタの動作によって発見できる。代替として、位相調整手段410は、光サーキュレータによって第1長さの高非線形光ファイバ408と第2長さの高非線形光ファイバ414との間に結合された、複素数のチャープ式ファイバブラッググレーティングなどの受動光コンポーネントのみによって提供されてもよい。複素数のチャープ式ファイバブラッググレーティングは、プログラム可能な光フィルタによって発見されたものと同じ複素数の位相フィルタを非線形媒体内の光ビームに提供するようにプロファイル設定できる。
【0044】
位相調整手段410は、使用中に、非線形媒体内を共伝搬する光ビームの波長の少なくとも一部に、選択された波長依存性位相シフトを適用して、ポンプ波と信号波との間の位相差を少なくとも調整するように構成される。この実施形態では、位相調整手段410は、非線形媒体内(および光学径路の接続部)での分散が、ポンプ波、信号波または各信号波、および必要なアイドラ波または各必要なアイドラ波と不要なアイドラ波を含む周波数範囲でも少なくとも補償されるように、波長依存性位相シフトを選択的に適用するように構成される。分散が補償されることに加えて、位相調整手段410は、ポンプ波と信号波との間の相対位相シフトがπラジアンになるように、ポンプ波にπラジアン位相シフトを適用するように構成される。他の実施形態では、ポンプ波と信号波との間の相対位相シフトは、信号波の周波数にπラジアン位相シフトを適用することによって達成できる。
【0045】
選択された波長依存性位相シフトが適用された光ビームは、位相調整手段410から第2長さの高非線形光ファイバ414に移動して、ポンプ波と信号波が四光波混合によって結合されて、さらに必要なアイドラ波とさらに不要なアイドラ波を生成し、第1長さの高非線形光ファイバ408において四光波混合によって生成された必要なアイドラ波と不要なアイドラ波のパワーと一致させる。
【0046】
しかしながら、非線形媒体の出力において、第2長さの高非線形光ファイバ414の端部において、光スペクトルアナライザ412は、波長依存性位相シフトによって影響を受けない、必要なアイドラ波がスペクトル内に存在するが、不要なアイドラ波は削除されていることを明らかにする。4波混合相互作用において、運動量、つまり位相が保存されるため、位相調整手段410を用いて非線形媒体内の光学径路の中間点においてポンプ波にπラジアン位相シフトを適用することによって、第1長さの高非線形光ファイバ408および第2長さの高非線形光ファイバ414において発生する不要なアイドラ波は逆位相になる。こうして、これらの不要なアイドラ波は、パワーの点で互いに一致すると、互いに破壊的に干渉するため、非線形媒体の出力において不要なアイドラ波の全体的抑制を導くことができる。ポンプ波と信号波との間にπラジアン位相シフトを適用することによって、必要なアイドラ波は、2つのポンプ波および1つの信号波によって生成され、各位相フィルタにおいて2πラジアン位相シフトを見ることになり、このことは、第1長さの高非線形光ファイバ408および第2長さの高非線形光ファイバ414において生成される必要なアイドラ波が同位相であり、位相フィルタの影響を受けないままで抑制されないことを意味する。
【0047】
ここで、図5を参照すると、図5は、本開示の態様に係る縮退四光波混合および非縮退四光波混合に使用するための他の例示の装置500をより詳細に示す。図4の実施形態とは異なり、図5の装置は、周波数fA0を有する第1信号波と周波数fB0を有する第2信号波とを含む、波長変換のための2つの入力信号を提供する信号波光源502(図5では「S」で示す)を備える。装置はまた、位相整合ポンプ波周波数fを提供する第1ポンプ波光源504(図5では「P」で示す)と、位相整合ポンプ波周波数fを提供する第2ポンプ波光源506(図5では「Q」で示す)とを含む。第2ポンプ波光源506は、第1のポンプ波光源504に加えて必要に応じて動作可能であり、その結果、装置は2つの非縮退ポンプ波光源で動作する。図5の左側パネルと中央パネルに見えるように、信号波光源502および第1ポンプ波光源504および第2ポンプ波光源506によって高非線形光ファイバ510に提供される例示的な初期スペクトルは、上部パネル(番号1で識別)に示されており、左側は非縮退動作モード、中央は縮退動作モードである。ここで、信号波は、個々の周波数でA,Bとして示しており、ポンプは、P,Qとして示している。
【0048】
高非線形光ファイバ510に移動する前に、入力光ビームは、エルビウム添加ファイバ増幅器508を用いて増幅できる。第1長さの高非線形光ファイバ510を通過した後、ポンプ波および信号波は、四光波混合の第1ステージを経験する。
【0049】
FWMのこの初期ステージの結果は、図5の第2ペイン(番号1で識別)に示しており、左側は非縮退動作モード、中央は縮退動作モードである。非縮退プロセスを参照すると、信号A,Bが必要なアイドラY,Z(個々の周波数fY1,fZ1を有する)に変換される必要な非縮退FWMプロセスが、不要なアイドラα,β,ψ,ω(個々の周波数fα1,fβ1,fψ1,fω1を有する)を生成する多数の不要なプロセスを伴うことが判る。これら6つの波の位相φは、FWMの通常の規則(運動量保存則に基づく)を用いて決定でき、下記のようになる。
φZ1=φ+φ-φA0 (1) φY1=φ+φ-φB0 (2)
φα1=2φA0-φ (3) φβ1=φ+φB0-φA0 (4)
φω1=2φZ1-φ (5) φψ1=φ+φY1-φZ1 (6)
【0050】
FWMのこの第1ステージが高非線形光ファイバ510で発生した後、プログラム可能な光フィルタ512の形態で複素数の位相フィルタによって波長依存性位相シフトが適用される。プログラム可能な光フィルタ512は、ポンプP,Qの各々にπの位相シフトを適用するように構成される(あるいは、実際には一方のポンプに+πを他方のポンプに-πを適用する)。ただし、この複素数のフィルタは、非線形媒体内の分散を補償するために、そして、例えば、光学径路内のパッチコードなど、2つの長さの高非線形光ファイバ間の接続部で生ずる分散を補償するためにも使用できる。図5の第3ペインに示す例示的なパワースペクトルは、複素数の位相フィルタの適用後に、これが単なる位相フィルタであるため、FWMの第1ステージ後の第2ペインでの出力と比較して、パワースペクトルに変化はないことを示す。
【0051】
高非線形光ファイバ516に移動する前に、プログラム可能な光フィルタ512から出力された光ビームは、エルビウム添加ファイバ増幅器514を用いて増幅でき、第2長さの高非線形光ファイバ516における四光波混合の第2ステージで発生したアイドラのパワーは、第1ステージで発生したアイドラのパワーと一致できる。このようにEDFAの使用により、波長依存性位相シフトの適用後に、非線形媒体の様々なセクションにおける相互作用の平衡化に役立つ。
【0052】
FWMの第2ステージでは、アイドラが生成され、これは、第4ペインに示すパワースペクトルに示すように、第1ステージで発生したアイドラに自然にコヒーレント的に追加される。第2ステージで発生するアイドラの位相は、下記のとおりである。
φZ2=(φ+π)+(φ+π)-φA0=φZ1 (7)
φY2=(φ+π)+(φ+π)-φB0=φY1 (8)
φα2=2φA0-(φ+π)=φα1+π (9)
φβ2=(φ+π)+φB0-φA0=φβ1+π (10)
φω2=2φZ1-(φ+π)=φω1+π (11)
φψ2=(φ+π)+φY1-φZ1=φψ1+π (12)
【0053】
例えば、上記式(2)と(7)を見ると、FWMの第2ステージで発生する必要なアイドラZ,Yの位相について、両方のポンプがπ位相シフトを有するため、これらの合計は2πに等しく、これは当然に位相シフトなしと等価であり、φY1,φY2は等しく同位相であり、φZ1,φZ2についても同様であることが判る。よって、第1長さの高非線形光ファイバ510および第2長さの高非線形光ファイバ516の両方で発生する信号Aの必要なアイドラZ,Zおよび信号Bの必要なアイドラY,Yは、位相シフトが全て適用なしのように、建設的に干渉する。そのため必要なアイドラ波は、非線形媒体の出力において増強される。
【0054】
これに対して上記式(9)~(12)が示すように、ポンプへのπ位相シフトの適用により、第1ステージで発生する不要なアイドラに対してπ位相シフトを有する、第2ステージで発生する不要なアイドラを生じさせる(即ち、式(3)~(6)と比較して)。例えば、FWMの第2ステージで発生する不要なアイドラαの位相φα2は、FWMの第1ステージで発生する不要なアイドラαの位相φα1に対してπラジアンだけシフトしている。このように、光スペクトルアナライザ518で測定され、図5の下部ペインに示すように、これらの不要なアイドラは、第2長さの高非線形光ファイバ516の出力において破壊的に干渉して除去される。こうして本開示に従って構成されるプログラム可能な光フィルタ512では、選択的に適用される波長依存性位相シフトにより、不要なアイドラ波が最大限に抑制でき、非線形媒体の出力において実質的に削除されるようになる。
【0055】
この方式は、縮退(単一ポンプ)システムでも同様に機能する。図5の中央列は、こうした縮退システムについて上述したステップを示す。数学的には、上記結論は、単にφをφで置換することによって、縮退システムの結果に転換でき、その結論は変わらない。
【0056】
理解できるように、プログラム可能な光フィルタ512によって選択的に適用される波長依存性位相シフトは、非線形媒体の出力において必要なアイドラ波のパワーと不要なアイドラ波のパワーの比が最大化されるようになる。
【0057】
非線形媒体の出力における不要なアイドラを抑制する位相調整手段を提供するためのプログラム可能な光フィルタ512を構成する方法について、図6を参照しながら説明する。具体的には、図5に示す装置の位相調整手段の実験構成に関連しており、その結果は、図7に示している。
【0058】
ブロック602において、単一のポンプ波光源または2つの非縮退ポンプ波光源が動作して、非線形媒体内の光学径路に沿って伝搬するポンプ波または各ポンプ波を提供する。ブロック604において、ルーチン600が、1つ以上の信号波光源を動作させて、非線形媒体内の光学径路に沿って伝搬する信号波または各信号波を提供する。図5に基づく実験では、3つのCWレーザは、2つの偏光保持融合カップラを用いて多重化しており、これら全てが共偏光であることを確保している。縮退研究のために、第2ポンプ波光源506レーザ「Q」は、動作停止した。そして、信号は、エルビウム添加ファイバ増幅器508を用いて増幅され、第1長さの高非線形光ファイバ510に移動した。その後、光ビームは、波長依存性位相シフトを適用するためのプログラム可能な光フィルタ512に移動し、その後、位相シフトした光ビームは全て、第2エルビウム添加ファイバ増幅器514で増幅され、第2長さの高非線形光ファイバ516を通過して、FWMの第2ステージを経験する。
【0059】
プログラム可能な光フィルタ512を制御して、波長依存性位相シフトを決定できるようにするために、ブロック606において、非線形媒体の出力にある検出器を用いて、光ビームが検出され、光ビームの検出されたパワースペクトル密度を表す信号が決定される。
【0060】
分散補償を使用する場合、分散補償が実行される帯域幅を簡素化するために、2つのポンプの外部で発生する全てのアイドラを阻止するためにもプログラム可能な光フィルタ512が使用されるが、但し、これは必須ではない。波長依存性位相シフトが、非線形媒体内の分散が補償されるように(少なくともポンプ波または各ポンプ波、信号波または各信号波、および必要なアイドラ波または各アイドラ波を含む範囲内で)決定してもよい。これは、信号波光源の1つの波長を掃引することと、掃引波長において、信号波について発生した必要なアイドラ波の検出パワーを最大化するように、掃引された波長の波長依存性位相シフトを決定することとを含むことができる。
【0061】
ブロック608において、第2高非線形光ファイバ516の出力において検出されたパワースペクトルを参照して、非線形媒体の出力において周波数fi.u1,fi.u2,…,fi.unの不要なアイドラ波の検出されたパワーを抑制するように、非線形媒体内を伝搬する光の波長について波長依存性位相シフトが決定される。波長依存性位相シフトは、不要なアイドラ波の検出パワーが最小化され、必要なアイドラ波の検出パワーが増強され、あるいは、必要なアイドラ波の検出パワーと不要なアイドラ波の検出パワーとの比が最大化されるようにできる。この点に関して、プログラム可能な光フィルタ512は、ポンプ波または各ポンプ波の波長に適切なπラジアン位相シフトを適用することによって、不要なアイドラ発生を最小化するように調整される。このπラジアン位相シフトはさらに、高非線形光ファイバおよびそれらの間の光学径路の両方の分散を補償するために適用される。
【0062】
2つのステージ間での不要なアイドラ発生を平衡化するために、第2エルビウム添加ファイバ増幅器514のパワーを調整して、高非線形光ファイバの2つのセクションにおいて逆位相に発生する不要なアイドラ波が振幅の点で一致させることによって、不要なアイドラ発生を最小化した。
【0063】
不要なアイドラを抑制し、分散を補償するために必要な複素プロファイル位相フィルタがいったん決定されると、嵩張る高価なプログラム可能な光フィルタ512は、1つ以上の小型で安価な受動光コンポーネントに置換でき、これは現場での展開を導くことができる。ポンプ波の波長が一定のままである限り、分散を補償し、不要なアイドラ光を抑制するために必要な位相フィルタプロファイルは安定した状態にすべきであり、この位相プロファイルを、適切に構成された受動光コンポーネントに組み込むことにより、現場展開のために四光波混合システムにおいて安定したアイドラ光抑制を提供できる。受動光コンポーネントのこの実装は、1つ以上のファイバブラッググレーティングについて1つ以上の位相マスクを決定し、光学経路において決定された波長依存性位相シフトを提供することによって達成できる。グレーティング設計のための任意の適切なアルゴリズムが使用でき、例えば、文献(Feced et al, "An efficient inverse scattering algorithm for the design of nonuniform fiber Bragg gratings", IEEE Journal of Quantum Electronics, Volume:35, Issue:8, Aug 1999刊行)で提案された効率的な逆散乱アルゴリズムなどがある。所望の波長依存性位相シフトフィルタプロファイルを備えたファイバブラッググレーティングを生成するために、適切な位相マスクまたはフォトマスクがいったん決定されると、決定された位相マスクまたは各位相マスクを用いてファイバブラッググレーティング(または各ファイバブラッググレーティング)が製造される。そしてプログラム可能な光フィルタ512が取り外され、製造されたファイバブラッググレーティングに置換され、位相調整手段を提供する。
【0064】
プログラム可能な光フィルタ512が分散を補償し、不要なアイドラを抑制するように調整されたときの非線形媒体の観測された実験出力を示すパワースペクトルを図7に示す。非縮退ポンプシステムと縮退ポンプシステムの結果は、図7の上部と下部にそれぞれ示される。結果の類似性を考慮すると、両方のシステムについて同時に議論することが効率的である。
【0065】
最初に、信号波光源502から非線形媒体に単一信号が発射され、その波長が第1ポンプ波光源504および第2ポンプ波光源506の2つの波長間で掃引され、光スペクトルアナライザ518を用いて必要なアイドラ発生の変換効率を測定した。
【0066】
この測定は、4つの異なるシナリオについて繰り返した。1)フィルタプロファイルを使用しない。2)ポンプ波長の外側にあるアイドラを削除した(ただし、位相シフトは適用しない)。3)分散補償と外側アイドラ削除(ただし、ポンプに位相シフトは適用しない)。4)分散補償、外側アイドラ削除、およびポンプ位相シフトを適用した。
【0067】
図7の左側の第1ペインを参照すると、外側アイドラの削除は、フィルタなしの場合と比較して、変換効率にほとんど影響を与えないことが判る。この比較は、アイドラ削除によって予期しない影響が発生しなかったことを読者に保証するために提供される。両方の場合、FWMにおける分散と位相整合との相互作用により、低いパワーの谷が見られる(分散の大部分は、高非線形光ファイバ間のパッチコードから生ずる)。図7の左側の第1ペイン(A-1とA-2で示す)では、分散補正の適用により、非縮退の場合と縮退の場合で、変換効率をかなり平坦な-15~-17dBおよび-16dB~-18dBに上昇させることが判る。
【0068】
次に、元の信号に並んで2つの追加信号を多重化して、非線形媒体内で合計3つの信号を与えて、マルチチャネル設定での性能を検査した。3つの信号は、3つの異なるシナリオ、即ち、シナリオ1(図7中の第2ペインでB-1とB-2で示す)、シナリオ2(図7中の第3ペインでC-1とC-2で示す)、およびシナリオ3(図7中の第3ペインでD-1とD-2で示す)で配置し(単位は波長)、ある範囲の相互作用を調査した。縮退の場合も非縮退の場合も、スペクトル反転の中心が同じであるため、全く同じシナリオを検査することが可能であった。最初に、実線(凡例に「PPSなし(Without PPS)」とマークしている(即ち、プログラムされた位相シフト(Programmed Phase Shift)))がπ位相シフトを適用しないシステムの出力を示すことを考慮すると、FWMによって表現される相互作用の多様性を容易に確認できる。これらは、シナリオ2では特に顕著であり、スプリアスアイドラの多くと必要なアイドラとのパワー比は、非縮退システムでは-10dB程度、縮退システムでは+2dB程度になることがあり、深刻なクロストークの可能性を示している。
【0069】
破線(凡例では「PPSあり(With PPS)」(即ち、プログラムされた位相シフト)とマークしている)は、ポンプの波長にπラジアンのポンプ位相シフトを適用した後の結果を示す。この場合、グレー色の実線で示す不要なアイドラピークは破線では存在せず、多くの場合、ASEノイズフロアの下にあることから、不要なアイドラは、ほぼ完全に抑制されていることが判る。シナリオ2を一例として考えると(第3ペインのC-1とC-2で示す)、不要なアイドラの抑制は、非縮退システムでは18dB、縮退システムでは26dB程度になることが判る。全体的に、これらの結果は、ここで開示された手法が、これらのシステムにおいて不要なアイドラ誘発クロストークを有効に矯正することを示す。
【0070】
我々は、FWM方式の光処理システムにおいてスプリアスアイドラ発生を抑制する手法を提案し実証した。スプリアスアイドラ発生はしばしば、性能にとって制限する要因であり、システム設計者に処理帯域幅または出力パワーおよびSNRを妥協させるものである。非線形処理媒体を2つに分離して、中間点においてポンプにπラジアン位相シフトを適用することによって、後半でのスプリアスFWMを使用して、前半でのスプリアスFWMを打ち消すことができる。スプリアスアイドラ発生の抑制は、検査した非縮退システムでは18dB、縮退システムでは26dBと同程度であることが判り、どちらの場合もASEレベルまで減少している。この手法は、スプリアスアイドラ発生を抑制するための実用的かつ有効な解決策を提供するものであり、多くのFWM方式の処理方式と互換性のあることが判明すると考える。
【0071】
図4図5に関連して説明した実施形態では、非線形媒体は、高非線形光ファイバであるが、任意の適切な非線形媒体内の様々な場所において位相調整手段を使用して、四光波混合によって発生する不要なアイドラを抑制できる。
【0072】
図4図5に関連して説明した実施形態では、光学径路に沿って、非線形媒体は単一のタイプであるが、他の実施形態では、非線形媒体は、光学径路に沿った様々なセクションで異なるタイプのものでもよい。本開示は、単一タイプの非線形媒体内での波長依存性位相シフトの適用を想定しているが、複素数の位相フィルタの使用により、異なる非線形媒体の様々なセクションで発生するアイドラを抑制できる。
【0073】
図4図5に関連して説明した実施形態では、位相調整手段は、単一のπラジアン波長依存性位相シフトが選択されて、非線形媒体の光学径路の中間点において非線形媒体内のポンプ波または各ポンプ波の光の波長に適用されるようにしたが、他の配置も可能である。例えば、位相調整手段は、波長依存性位相シフトが非線形媒体内の光学径路内の複数の場所で適用できるようにしてもよく、例えば、各場所においてπラジアン位相シフトをポンプ波または各ポンプ波、あるいは信号波または各信号波に適用することによってでもよい。このように、位相調整手段は、非線形媒体の光学径路に沿って異なる位置に、整合する不要なアイドラ波が逆位相で発生されるようにして、非線形媒体から出力される不要なアイドラ波の振幅を破壊的に干渉させて抑制するようにしてもよい。
【0074】
簡潔さのために、上記の式および実施形態は、共伝搬する共偏光光を伴う四光波混合の動作を説明しているが、これは必要条件ではなく、装置および方法は、共伝搬する波が全て共偏光ではない場合に発生する不要なアイドラ光を抑制するために適用できる。
【0075】
本開示によれば、この態様による四光波混合に使用する装置は、非線形媒体全体において、不要なアイドラ波が発生し、出力において互いに破壊的に干渉するように選択された、場所での1つ以上の波長依存性位相シフトの適用により、非線形媒体の出力における不要なアイドラ波の抑制を可能にし、その結果、不要なアイドラ波が抑制される。この不要なアイドラの抑制は、アイドラOSNRやバンド幅を妥協したり、あるいは、相互作用するシステムを分離するために分散の複雑な設計によることなく達成される。本開示による不要なアイドラの抑制は、簡単な位相フィルタの適用とともに、波長依存性位相シフトを適用し、ポンプ波または各ポンプ波と信号波との間の位相差を調整するだけで達成される。以下に示すように、いったん位相シフトが決定されると、チャープファイバブラッググレーティングなどの受動コンポーネントによって位相フィルタは提供でき、これにより高出力動作が可能になり、種々の信号処理用途での商用展開を容易にする。後に判るように、この手法は、不要なアイドラの26dB程度の抑制を達成することが示されている。
【0076】
本開示によれば、不要なアイドラ波が抑制されるだけでなく、必要なアイドラ波が影響を受けないだけでなく、これらは増強することもできる。特に、本開示によれば、必要なアイドラのパワーと不要なアイドラのパワーの比率を最大化できる。
【0077】
本開示によれば、光学径路内の単一の場所において単一の位相フィルタの適用により、不要なアイドラ波が抑制できる。
【0078】
本開示によれば、本開示の装置は、固定波長光源からの複数の信号の波長変換など、信号処理のための様々なファイバ方式の用途に適用することができ、信号競合を回避しながら多重化を可能にし、ファイバ方式のネットワークのスループットをさらに向上できる。
【0079】
本開示の特定の側面、実施形態または例に関連して説明している特徴、整数、特性は、それと矛盾しない限り、ここで説明している別の側面、実施形態または実施例にも適用可能であると理解すべきである。本明細書(添付の請求項、要約、図面を含む)に開示された全ての特徴、および/またはそのように開示された方法またはプロセスの全てのステップは、任意の組合せで組合せ可能であるが、こうした特徴および/またはステップの少なくとも一部が相互に排他的である組合せを除く。本開示は、本明細書(添付の請求項、要約書、図面を含む)に開示された特徴の新規なもの、または新規な組合せ、あるいは、そのように開示された任意の方法またはプロセスのステップの新規なもの、または新規な組合せにまで及ぶ。特に、任意の従属請求項は、独立請求項のいずれか、および他の従属請求項のいずれかと組合せ可能である。
図1
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図7
【国際調査報告】