(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-21
(54)【発明の名称】アリールアミン化合物、有機エレクトロルミネッセンス素子、および電子機器
(51)【国際特許分類】
C07D 307/91 20060101AFI20250214BHJP
C07D 405/12 20060101ALI20250214BHJP
C07D 409/12 20060101ALI20250214BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20250214BHJP
H10K 50/17 20230101ALI20250214BHJP
H10K 50/11 20230101ALI20250214BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20250214BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20250214BHJP
H10K 50/18 20230101ALN20250214BHJP
【FI】
C07D307/91 CSP
C07D405/12
C07D409/12
H10K50/15
H10K50/17
H10K50/11
H10K85/60
C09K11/06 690
H10K50/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024550127
(86)(22)【出願日】2023-02-16
(85)【翻訳文提出日】2024-08-23
(86)【国際出願番号】 IB2023051389
(87)【国際公開番号】W WO2023161767
(87)【国際公開日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】10-2022-0024675
(32)【優先日】2022-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】高 相原
(72)【発明者】
【氏名】林 栽建
(72)【発明者】
【氏名】泉田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】林 秀一
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107CC03
3K107CC04
3K107CC12
3K107CC21
3K107DD53
3K107DD59
3K107DD68
3K107DD71
3K107DD78
(57)【要約】
本発明の目的は高効率、高耐久性の有機EL素子用材料として、正孔注入・輸送性能に優れ、電子阻止能力を有し、薄膜状態での安定性が高い優れた特性を有する有機化合物を提供し、更にこの化合物を用いて、高効率、高耐久性の有機EL素子を提供することにある。
本発明のアリールアミン化合物は、耐熱性に優れ、且つ良好な正孔輸送能力を有する。有機EL素子の正孔輸送層、電子阻止層、発光層及び正孔注入層に当該化合物を用いた有機EL素子は良好な素子特性を示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(a)または(b)で表される、アリールアミン化合物。
【化1】
【化2】
(式中、
Aは
置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基、
または置換もしくは無置換のジベンゾチエニル基を表し、
L
1は、
無置換のベンゼンから水素原子を2個除去した2価基、
または無置換のビフェニルから水素原子を2個除去した2価基を表し、
L
2は、
無置換のベンゼンから水素原子を2個除去した2価基を表し、
R
1、R
2は各々同一でも異なっていてもよい、
水素原子、
置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、
置換もしくは無置換の芳香族複素環基、
または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。)
【請求項2】
下記一般式(c)、(d)、(e)または(f)で表される、請求項1記載のアリールアミン化合物。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
(式中、A、L
1、L
2、R
1およびR
2は、前記一般式(a)または(b)と同じ定義である。)
【請求項3】
前記一般式(c)、(d)、(e)または(f)における
L
2が1,4-フェニレン基で表される
請求項1または請求項2記載のアリールアミン化合物。
【請求項4】
前記一般式(c)、(d)、(e)または(f)における
Aが無置換のジベンゾフラニル基、
または無置換のジベンゾチエニル基で表される
請求項1~3のいずれか一項に記載のアリールアミン化合物。
【請求項5】
前記一般式(c)、(d)、(e)または(f)における
Aが無置換のジベンゾフラニル基で表される
請求項1~4のいずれか一項に記載のアリールアミン化合物。
【請求項6】
前記一般式(c)、(d)、(e)または(f)における
Aが無置換の3-ジベンゾフラニル基、
または無置換の4-ジベンゾフラニル基で表される
請求項1~5のいずれか一項に記載のアリールアミン化合物。
【請求項7】
一対の電極とその間に挟まれた少なくとも一層の有機層を有する有機EL素子において、前記有機層に請求項1~6のいずれか一項に記載のアリールアミン化合物を含む有機EL素子。
【請求項8】
前記有機層が正孔輸送層である請求項7記載の有機EL素子。
【請求項9】
前記有機層が電子阻止層である請求項7記載の有機EL素子。
【請求項10】
前記有機層が正孔注入層である請求項7記載の有機EL素子。
【請求項11】
前記有機層が発光層である請求項7記載の有機EL素子。
【請求項12】
一対の電極とその間に挟まれた少なくとも一層の有機層を有する電子機器において、前記有機層に請求項1~6のいずれか一項に記載のアリールアミン化合物を含む電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の表示装置に好適な自発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と略称する。)に適した化合物と素子に関するものであり、詳しくはアリールアミン化合物と、該化合物を用いた有機EL素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は自発光性素子であるため、液晶素子に比べて明るく視認性に優れ、鮮明な表示が可能であることから、活発な研究がなされてきた。
【0003】
1987年にイーストマン・コダック社のC.W.Tangらは、各種の役割を各材料に分担した積層構造素子を開発することにより、有機材料を用いた有機EL素子を実用的なものにした。彼らは電子を輸送することのできる蛍光体と正孔を輸送することのできる有機物とを積層し、両方の電荷を蛍光体の層の中に注入して発光させることにより、10V以下の電圧で1000cd/m2以上の高輝度を得ている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
現在まで、有機EL素子の実用化のために多くの改良がなされ、積層構造の各種の役割をさらに細分化して、基板上に順次に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極を設けた電界発光素子によって高効率と耐久性が達成されるようになってきた(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
また、発光効率のさらなる向上を目的として三重項励起子の利用が試みられ、燐光発光性化合物の利用が検討されている(例えば、非特許文献2参照)。さらに、熱活性化遅延蛍光(TADF)による発光を利用する素子も開発されており、2011年に九州大学の安達らは、熱活性化遅延蛍光材料を用いた素子によって5.3%の外部量子効率を実現させた(例えば、非特許文献3参照)。
【0006】
発光層は、一般的にホスト材料と称される電荷輸送性の化合物に、蛍光性化合物や燐光発光性化合物または遅延蛍光を放射する材料をドープして作製することもできる。前記非特許文献に記載されているように、有機EL素子における有機材料の選択は、その素子の効率や耐久性など諸特性に大きな影響を与える(例えば、非特許文献2参照)。
【0007】
有機EL素子においては、両電極から注入された電荷が発光層で再結合して発光が得られるが、正孔、電子の両電荷を如何に効率良く発光層に受け渡すかが重要であり、キャリアバランスに優れた素子とする必要がある。故に、陽極から注入された正孔を発光層に供給する正孔注入性を高め、陰極から注入された電子をブロックする電子阻止性を高める特性を有する材料を用いる事によって、発光層内で正孔と電子が再結合する確率を向上させ、更には発光層内で生成した励起子を閉じ込めることによって、高発光効率を得ることができる。その為には、正孔輸送材料の果たす役割は重要であり、正孔注入性が高く、正孔の移動度が大きく、電子阻止性が高く、更には電子に対する耐久性が高い正孔輸送材料が求められている。
【0008】
また、素子の寿命に関しては材料の耐熱性やアモルファス性も重要である。耐熱性が低い材料では、素子駆動時に生じる熱により、低い温度でも熱分解が起こり、材料が劣化する。アモルファス性が低い材料では、短い時間でも薄膜の結晶化が起こり、素子が劣化してしまう。その為、使用する材料には耐熱性が高く、アモルファス性が良好な性質が求められる。
【0009】
これまで有機EL素子に用いられてきた正孔輸送材料としては、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(α-ナフチル)ベンジジン(NPD)や種々の芳香族アミン誘導体がある(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。しかし、NPDは良好な正孔輸送能力を持っているが、耐熱性の指標となるガラス転移点(Tg)が96℃と低く、高温条件下では結晶化による素子特性の低下が起こる(例えば、非特許文献4参照)。
【0010】
また、前記特許文献に記載の芳香族アミン誘導体の中には、正孔の移動度が10-3cm2/Vs以上と優れた移動度を有する化合物があるが(例えば、特許文献1および特許文献2参照)、電子阻止性が不十分であるため、電子の一部が発光層を通り抜けてしまい、発光効率の向上が期待できないなど、更なる高効率化のためには、より電子阻止性が高く、薄膜がより安定で耐熱性の高い材料が求められていた。また、耐久性の高い芳香族アミン誘導体の報告があるが(例えば、特許文献3参照)、電子写真感光体に用いられる電荷輸送材料として用いたもので、有機EL素子として用いた例はなかった。
【0011】
この問題点を解決すべく、耐熱性や正孔注入性などの特性を改良した化合物として、置換カルバゾール構造やアリールアミン化合物が提案されているが(例えば、特許文献4および特許文献5参照)、これらの化合物を正孔注入層または正孔輸送層に用いた素子では、素子寿命や発光効率などの改良はされているものの、未だ十分とはいえず、更なる低駆動電圧化や高発光効率化及び素子の長寿命化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5792557号明細書
【特許文献2】米国特許第5639914号明細書
【特許文献3】米国特許第7759030号明細書
【特許文献4】JP4589223B2
【特許文献5】JP6674892B2
【特許文献6】欧州特許第2684932号明細書
【特許文献7】JP6748335B1
【特許文献8】KR102288034B1
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】応用物理学会第9回講習会予稿集55~61ページ(2001)
【非特許文献2】応用物理学会第9回講習会予稿集23~31ページ(2001)
【非特許文献3】Appl.Phys.Let.,98,083302(2011)
【非特許文献4】有機EL討論会第三回例会予稿集13~14ページ(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、高効率、高耐久性の有機EL素子用の材料として、(1)正孔の注入・輸送性能に優れ、(2)電子阻止能力を有し、(3)薄膜状態での安定性が高く、(4)耐久性に優れた有機EL素子用の材料を提供する事である。
【0015】
本発明の材料を用いる事で、(1)発光効率および電力効率が高く、(2)発光開始電圧および実用駆動電圧が低く、(3)長寿命である有機EL素子を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは上記の目的を達成するために、アリールアミン化合物が、正孔の注入・輸送能力、薄膜の安定性および耐久性に優れている点に着目し、フェナントレニル基、ナフチレン基の導入および置換基の最適化を追求したことで、材料の特性が飛躍的向上した。有機EL素子においても、発光効率および電力効率の性能が向上し、発光開始電圧および実用駆動電圧の抑制を可能とし、従来の寿命を上回る長寿命化を実現させた結果、本発明を完成するに至った。
【0017】
1)すなわち本発明は、下記一般式(a)または(b)で表される、アリールアミン化合物。
【0018】
【0019】
【0020】
上記一般式(a)または(b)中、Aは置換もしくは無置換のジベンゾフラニル基、または置換もしくは無置換のジベンゾチエニル基を表し、
L1は、無置換のベンゼンから水素原子を2個除去した2価基、または無置換のビフェニルから水素原子を2個除去した2価基を表し、
L2は、無置換のベンゼンから水素原子を2個除去した2価基を表し、
R1、R2は各々同一でも異なっていてもよい、水素原子、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の芳香族複素環基、または置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基を表す。)
【0021】
2)また本発明は下記一般式(c)、(d)、(e)または(f)で表される、上記1)記載のアリールアミン化合物である。
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
上記一般式(c)、(d)、(e)または(f)中、A、L1、L2、R1およびR2は、前記一般式(a)または(b)と同じ定義である。)
【0027】
3)また本発明は前記一般式(c)、(d)、(e)または(f)における
L2が1,4-フェニレン基で表される上記1)または上記2)記載のアリールアミン化合物である。
【0028】
4)また本発明は前記一般式(c)、(d)、(e)または(f)における
Aが無置換のジベンゾフラニル基、または無置換のジベンゾチエニル基で表される
上記1)~3)のいずれか一項に記載のアリールアミン化合物である。
【0029】
5)また本発明は前記一般式(c)、(d)、(e)または(f)における
Aが無置換のジベンゾフラニル基で表される上記1)~4)のいずれか一項に記載のアリールアミン化合物である。
【0030】
6)また本発明は前記一般式(c)、(d)、(e)または(f)における
Aが無置換の3-ジベンゾフラニル基、または無置換の4-ジベンゾフラニル基で表される上記1)~5)のいずれか一項に記載のアリールアミン化合物である。
【0031】
7)また本発明は一対の電極とその間に挟まれた少なくとも一層の有機層を有する有機EL素子において、前記有機層に上記1)~6)のいずれか一項に記載のアリールアミン化合物を含む有機EL素子。
【0032】
8)また本発明は前記有機層が正孔輸送層である上記7)記載の有機EL素子。
【0033】
9)また本発明は前記有機層が電子阻止層である上記7)記載の有機EL素子。
【0034】
10)また本発明は前記有機層が正孔注入層である上記7)記載の有機EL素子。
【0035】
11)また本発明は前記有機層が発光層である上記7)記載の有機EL素子。
【0036】
12)また本発明は一対の電極とその間に挟まれた少なくとも一層の有機層を有する電子機器において、前記有機層に上記1)~6)のいずれか一項に記載のアリールアミン化合物を含む電子機器。
【0037】
一般式(a)または(b)中のR1、R2で表される
「置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基」、「置換もしくは無置換の芳香族複素環基」
または「置換もしくは無置換の縮合多環芳香族基」における、
「芳香族炭化水素基」、「芳香族複素環基」または「縮合多環芳香族基」としては、
具体的に、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基、スピロフルオレニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、アザフルオレニル基、ジアザフルオレニル基、アザスピロビフルオレニル基、ジアザスピロビフルオレニル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、およびカルボリニル基などの他に、炭素数6~30からなるアリ-ル基、または炭素数2~20からなるヘテロアリール基などが挙げられる。
【0038】
一般式(a)または(b)中のR1、R2で表される
「置換の芳香族炭化水素基」、「置換の芳香族複素環基」または「置換の縮合多環芳香族基」における「置換基」としては、
具体的に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などのシリル基;メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基などの炭素原子数1ないし6の直鎖状もしくは分岐状のアルキルオキシ基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニルオキシ基、トリルオキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアリールアルキルオキシ基;フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基、スピロフルオレニル基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基などの芳香族複素環基のような基を挙げることができ、これらの置換基はさらに、前記例示した置換基が置換していてもよい。また、これらの置換基と置換したベンゼン環が、または同一のベンゼン環に複数置換された置換基同士が、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0039】
一般式(a)または(b)中のAで表される「置換のジベンゾフラニル基」、または「置換のジベンゾチエニル基」における「置換基」としては、
一般式(a)または(b)中のR1、R2で表される
「置換の芳香族炭化水素基」、「置換の芳香族複素環基」または「置換の縮合多環芳香族基」における「置換基」として示したものと同様のものを挙げることができ、とりうる態様も、同様のものを挙げることができる。
【0040】
一般式(a)または(b)中のL1としては、フェニレン基が好ましく、1,4-フェニレン基がより好ましい。
【0041】
一般式(a)または(b)中のAとしては、3-ジベンゾフラニル基、4-ジベンゾフラニル基が好ましく、4-ジベンゾフラニル基がより好ましい。
【0042】
一般式(a)または(b)中のR1、R2としては、水素原子、フェニル基、ビフェニルリル基、ナフチル基、フェナンスレニル基、カルバゾリル基が好ましく、水素原子、フェニル基、ビフェニル基がより好ましい。
【0043】
本発明の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物は、有機EL素子の正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層または発光層の構成材料として使用することが好ましく、正孔輸送層または電子阻止層の構成材料として使用することがより好ましい。
【発明の効果】
【0044】
本発明のアリールアミン化合物は、従来の正孔輸送材料より、(1)正孔の注入特性が良い、(2)正孔の移動度が大きい、(3)電子阻止能力に優れている、(4)電子耐性が高く、(5)薄膜状態で安定に存在する、(6)耐熱性に優れている、などの特性があり、本発明のアリールアミン化合物を有機EL素子に使用することで、(7)発光効率が高い、(8)発光開始電圧が低い、(9)実用駆動電圧が低い、(10)長寿命、などの特性が得られる。
【0045】
本発明のアリールアミン化合物は、正孔の注入・輸送性能、薄膜の安定性および耐久性に優れている。それにより、同化合物を正孔注入材料および/または正孔輸送材料として用いて作製された正孔注入層および/または正孔輸送層を有する有機EL素子は、発光層への正孔輸送効率が向上して、発光効率が向上すると共に、駆動電圧が低下することで素子の耐久性が向上させることができ、高効率、低駆動電圧、長寿命の特性を得ることが可能である。
【0046】
本発明のアリールアミン化合物は、電子阻止能力に優れて、電子耐性が高く、かつ薄膜状態においても安定であり、発光層内で生成した励起子を閉じ込める特徴がある。それにより、同化合物を電子阻止材料として用いて作製された電子阻止層を有する有機EL素子は、正孔と電子が再結合する確率が向上して熱失活が抑制されるため高い発光効率を有し、駆動電圧が低下して電流耐性が改善されることで最大発光輝度が向上している。
【0047】
本発明のアリールアミン化合物は、正孔輸送性に優れ、かつバンドギャップが広い。それにより、同化合物をホスト材料として用いて作製された発光層を有する有機EL素子は、ドーパントと呼ばれる蛍光発光体や燐光発光体、遅延蛍光発光体を担持させて発光層を形成することで駆動電圧が低下し、発光効率が改善される。
【0048】
よって、本発明のアリールアミン化合物は、有機EL素子の正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層または発光層の材料として有用であり、従来の有機EL素子の発光効率および駆動電圧、そして耐久性を改良することができる。
【0049】
その他、本発明のアリールアミン化合物は、有機EL素子への利用だけでなく、電子写真感光体、イメージセンサー、光電変換素子、太陽電池などの電子装置分野にも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物の好ましい具体例として、化合物(1)~化合物(12)を示す図である。
【
図2】一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物の好ましい具体例として、化合物(13)~化合物(24)を示す図である。
【
図3】一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物の好ましい具体例として、化合物(25)~化合物(36)を示す図である。
【
図4】一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物の好ましい具体例として、化合物(37)~化合物(48)を示す図である。
【
図5】一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物の好ましい具体例として、化合物(49)~化合物(60)を示す図である。
【
図6】一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物の好ましい具体例として、化合物(61)~化合物(72)を示す図である。
【
図7】一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物の好ましい具体例として、化合物(73)~化合物(84)を示す図である。
【
図8】一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物の好ましい具体例として、化合物(85)~化合物(96)を示す図である。
【
図9】一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物の好ましい具体例として、化合物(97)~化合物(111)を示す図である。
【
図10】一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物の好ましい具体例として、化合物(112)~化合物(123)を示す図である。
【
図11】一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物の好ましい具体例として、化合物(124)~化合物(138)を示す図である。
【
図12】一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物の好ましい具体例として、化合物(139)~化合物(150)を示す図である。
【
図13】一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物の好ましい具体例として、化合物(151)~化合物(165)を示す図である。
【
図14】一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物の好ましい具体例として、化合物(166)~化合物(177)を示す図である。
【
図15】一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物の好ましい具体例として、化合物(178)~化合物(190)を示す図である。
【
図16】一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物の好ましい具体例として、化合物(191)~化合物(203)を示す図である。
【
図17】一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物の好ましい具体例として、化合物(204)~化合物(215)を示す図である。
【
図18】一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物の好ましい具体例として、化合物(216)~化合物(220)を示す図である。
【
図19】実施例19~34、比較例1、2の有機EL素子構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明のアリールアミン化合物は新規な化合物であるが、これら化合物は、それ自体公知の方法に準じて合成することができる。
【0052】
本発明の有機EL素子に好適に用いられる、前記一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物の中で、好ましい化合物の具体例を
図1~18に示すが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0053】
一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物の精製は、カラムクロマトグラフによる精製、シリカゲル、活性炭、活性白土等による吸着精製、溶媒による再結晶や晶析法、昇華精製法などの公知の方法で行うことができる。化合物の同定は、NMR分析で行うことができる。物性値としては、融点、ガラス転移点(Tg)と仕事関数の測定などが挙げられる。融点は蒸着性の指標となるものであり、ガラス転移点(Tg)は薄膜状態の安定性の指標となり、仕事関数は正孔注入性や正孔輸送性、または電子阻止性の指標となるものである。
【0054】
融点とガラス転移点(Tg)は、例えば、粉体を用いて高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100SA)によって測定することができる。
【0055】
仕事関数は、例えば、ITO基板の上に100nmの薄膜を作製して、イオン化ポテンシャル測定装置(住友重機械工業株式会社製、PYS-202)によって求めることができる。
【0056】
本発明の有機EL素子の構造としては、基板上に順次に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層及び陰極からなるもの、また、正孔輸送層と発光層の間に電子阻止層を有するもの、発光層と電子輸送層の間に正孔阻止層を有するものが挙げられる。これらの多層構造においては、1つの有機層が何層かの役割を兼ねることが可能であり、例えば1つの有機層が、正孔注入層と正孔輸送層を兼ねた構成とすること、電子注入層と電子輸送層を兼ねた構成とすること、などもできる。また、同一の機能を有する有機層を2層以上積層した構成とすることが可能であり、正孔輸送層を2層積層した構成、発光層を2層積層した構成、電子輸送層を2層積層した構成、などもできる。
【0057】
本発明の有機EL素子の陽極として、ITOや金のような仕事関数の大きな電極材料が用いられる。本発明の有機EL素子の正孔注入層の材料として、銅フタロシアニンに代表されるポルフィリン化合物、スターバースト型のトリフェニルアミン誘導体、分子中にトリフェニルアミン構造またはカルバゾリル構造を2個以上有し、それぞれが単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン化合物、ヘキサシアノアザトリフェニレンのようなアクセプター性の複素環化合物、および塗布型の高分子材料などを用いることができる。これらの材料は、蒸着法、スピンコート法およびインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0058】
本発明の有機EL素子の正孔注入層および正孔輸送層の材料として、本発明のアリールアミン化合物の他に、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)-ベンジジン(TPD)やN,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(α-ナフチル)-ベンジジン(NPD)、N,N,N’,N’-テトラビフェニリルベンジジンなどのベンジジン誘導体、1,1-ビス[(ジ-4-トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)および分子中にトリフェニルアミン構造またはカルバゾリル構造を2個以上有し、それぞれが単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン化合物などを用いることができる。これらの材料は、単独で成膜してもよいが、複数種を混合して成膜することもでき、それぞれを単層として使用できる。また、これらの材料を単独で成膜した層同士の積層構造、混合して成膜した層同士の積層構造、またはこれらの材料を単独で成膜した層と複数種を混合して成膜した層の積層構造としてもよい。また、正孔の注入・輸送層の材料として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)/ポリ(スチレンスルフォネート)(PSS)などの塗布型の高分子材料を用いることができる。これらの材料は、蒸着法、スピンコート法およびインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0059】
また、正孔注入層あるいは正孔輸送層には、これらの層に通常使用される材料に対してトリスブロモフェニルアミンヘキサクロルアンチモン、ラジアレン誘導体(例えば、特許文献6参照)などをPドーピングしたものや、TPDなどのベンジジン誘導体の構造をその部分構造に有する高分子化合物などを用いることができる。
【0060】
本発明の有機EL素子の電子阻止層の材料として、本発明のアリールアミン化合物が用いられる他に、4,4’,4’’-トリ(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、9,9-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]フルオレン、1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン(mCP)、2,2-ビス(4-カルバゾール-9-イルフェニル)アダマンタン(Ad-Cz)などのカルバゾール誘導体、9-[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-9-[4-(トリフェニルシリル)フェニル]-9H-フルオレンに代表されるトリフェニルシリル基とトリアリールアミン構造を有する化合物などの電子阻止作用を有する化合物を用いることができる。これらの材料は正孔輸送層の材料を兼ねてもよい。これらの材料は、単独で成膜してもよいが、複数種を混合して成膜することもでき、それぞれを単層として使用できる。また、これらの材料を単独で成膜した層同士の積層構造、混合して成膜した層同士の積層構造、またはこれらの材料を単独で成膜した層と複数種を混合して成膜した層の積層構造としてもよい。これらの材料は、蒸着法、スピンコート法およびインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0061】
本発明の有機EL素子の発光層の材料として、本発明のアリールアミン化合物が用いられる他に、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3)をはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体、各種の金属錯体、アントラセン誘導体、ビススチリルベンゼン誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体などを用いることができる。また、発光層をホスト材料とドーパント材料とで構成してもよく、ホスト材料として、アントラセン誘導体が好ましく用いられるが、本発明のアリールアミン化合物をはじめとする前記発光材料に加え、インドール環を縮合環の部分構造として有する複素環化合物、カルバゾール環を縮合環の部分構造として有する複素環化合物、カルバゾール誘導体、チアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体およびポリジアルキルフルオレン誘導体などを用いることができる。またドーパント材料としては、キナクリドン、クマリン、ルブレン、ペリレンおよびそれらの誘導体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体およびアミノスチリル誘導体などを用いることができる。これらの材料は、単独で成膜してもよいが、複数種を混合して成膜することもでき、それぞれを単層として使用できる。また、これらの材料を単独で成膜した層同士の積層構造、混合して成膜した層同士の積層構造、またはこれらの材料を単独で成膜した層と複数種を混合して成膜した層の積層構造としてもよい。これらの材料は、蒸着法、スピンコート法およびインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0062】
また、発光材料として燐光発光体を使用することも可能である。燐光発光体としては、イリジウムや白金などの金属錯体の燐光発光体を使用することができる。例えば、Ir(ppy)3などの緑色の燐光発光体、FIrpic、FIr6などの青色の燐光発光体、Btp2Ir(acac)などの赤色の燐光発光体などを挙げることができ、このときのホスト材料としては、正孔注入・輸送性のホスト材料として、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(CBP)、TCTA、mCPなどのカルバゾール誘導体などに加え、本発明のアリールアミン化合物を挙げることができ、電子輸送性のホスト材料として、p-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(UGH2)や2,2’,2’’-(1,3,5-フェニレン)-トリス(1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール)(TPBI)などを挙げることができる。このような材料を用いることで、高性能の有機EL素子を作製することができる。
【0063】
燐光性の発光材料のホスト材料へのドープは、濃度消光を避けるため、発光層全体に対して1~30重量パーセントの範囲で、共蒸着によって行うことが好ましい。
【0064】
また、発光材料として、PIC-TRZ、CC2TA、PXZ-TRZ、4CzIPNなどのCDCB誘導体などの遅延蛍光を放射する材料を使用することも可能である(例えば、非特許文献3参照)。これらの材料は、蒸着法、スピンコート法およびインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0065】
本発明の有機EL素子の正孔阻止層の材料として、バソクプロイン(BCP)などのフェナントロリン誘導体、ビス(2-メチル-8-キノリノレート)-4-(フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq)などのキノリノール誘導体の金属錯体、各種の希土類錯体、オキサゾール誘導体、トリアゾール誘導体およびトリアジン誘導体などの、正孔阻止作用を有する化合物を用いることができる。これらの材料は電子輸送層の材料を兼ねてもよい。これらの材料は、単独で成膜してもよいが、複数種を混合して成膜することもでき、それぞれを単層として使用できる。また、これらの材料を単独で成膜した層同士の積層構造、混合して成膜した層同士の積層構造、またはこれらの材料を単独で成膜した層と複数種を混合して成膜した層の積層構造としてもよい。これらの材料は、蒸着法、スピンコート法およびインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0066】
本発明の有機EL素子の電子輸送層の材料として、Alq3、BAlqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体、各種金属錯体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、アントラセン誘導体、カルボジイミド誘導体、キノキサリン誘導体、ピリドインドール誘導体、フェナントロリン誘導体およびシロール誘導体などを用いることができる。これらの材料は、単独で成膜してもよいが、複数種を混合して成膜することもでき、それぞれを単層として使用できる。また、これらの材料を単独で成膜した層同士の積層構造、混合して成膜した層同士の積層構造、またはこれらの材料を単独で成膜した層と複数種を混合して成膜した層の積層構造としてもよい。これらの材料は、蒸着法、スピンコート法およびインクジェット法などの公知の方法によって薄膜形成を行うことができる。
【0067】
本発明の有機EL素子の電子注入層の材料として、フッ化リチウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属塩、フッ化マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、リチウムキノリノールなどのキノリノール誘導体の金属錯体、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、並びにイッテルビウム(Yb)、サマリウム(Sm)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびセシウム(Cs)などの金属などを用いることができる。電子注入層は、電子輸送層と陰極の好ましい選択により省略することができる。
【0068】
さらに、電子注入層および電子輸送層には、これらの層に通常使用される材料に対してセシウムなどの金属をNドーピングしたものを用いることができる。
【0069】
本発明の有機EL素子の陰極としては、アルミニウムのような仕事関数の低い金属、並びにマグネシウム銀合金、マグネシウムインジウム合金、およびアルミニウムマグネシウム合金のような、より仕事関数の低い合金が電極材料として用いられる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明の実施の形態について、実施例により具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0071】
<4-(ジベンゾフラン-3-イル)フェニル-4-(ナフタレン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物1)の合成>
反応容器に、9-ブロモ-フェナントレン:18.1g、1-(4-アミノフェニル)ナフタレン:18.5g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):0.3g、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル:0.9g、t-ブトキシナトリウム:8.8gを仕込み、トルエン溶媒下にて15時間還流撹拌した。反応終了を確認後、濾過して得た濾液を濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をクロロベンゼン/アセトン混合溶媒によって晶析精製を行うことで、4-(ナフタレン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン:24.4g(収率:87.8%)を得た。
【0072】
【0073】
続けて、反応容器に、4-(ナフタレン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン:11.2g、3-(4-ブロモフェニル)ジベンゾフラン:10.1g、酢酸パラジウム(II):0.1g、トリ-t-ブチルホスフィン:0.2g、t-ブトキシナトリウム:3.5gを仕込み、トルエン溶媒下にて15時間還流撹拌した。反応終了を確認後、濾過して得た濾液を濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/n-ヘプタン)によって精製を行うことで、4-(ジベンゾフラン-3-イル)フェニル-4-(ナフタレン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物1)の白色紛体:11.0g(収率:60.8%)を得た。
【0074】
【0075】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の31個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.79(1H)、8.74(1H)、8.18(1H)、8.03(1H)、7.96(1H)、7.94(1H)、7.89(1H)、7.84(2H)、7.77(2H)、7.69(2H)、7.60(2H)、7.57(4H)、7.50(2H)、7.45(3H)、7.41-7.26(7H)。
【実施例2】
【0076】
<4-(ジベンゾフラン-3-イル)フェニル-4-(ナフタレン-2-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物38)の合成>
反応容器に、9-ブロモ-フェナントレン:47.2g、2-(4-アミノフェニル)ナフタレン:48.3g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):0.8g、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル:2.3g、t-ブトキシナトリウム:26.5gを仕込み、トルエン溶媒下にて15時間還流撹拌した。反応終了を確認後、濾過して得た濾液を濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をクロロベンゼン/アセトン混合溶媒によって晶析精製を行うことで、4-(ナフタレン-2-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン:51.0g(収率:70.2%)を得た。
【0077】
【0078】
続けて、反応容器に、4-(ナフタレン-2-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン:11.2g、3-(4-ブロモフェニル)ジベンゾフラン:10.1g、酢酸パラジウム(II):0.1g、トリ-t-ブチルホスフィン:0.2g、t-ブトキシナトリウム:3.5gを仕込み、トルエン溶媒下にて19時間還流撹拌した。反応終了を確認後、濾過して得た濾液を濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/n-ヘプタン)によって精製を行うことで、4-(ジベンゾフラン-3-イル)フェニル-4-(ナフタレン-2-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物38)の白色紛体:11.7g(収率:64.8%)を得た。
【0079】
【0080】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の31個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.79(1H)、8.74(1H)、8.13(1H)、8.00(1H)、7.95(2H)、7.87(2H)、7.83(2H)、7.77-7.66(5H)、7.63-7.50(8H)、7.46(3H)、7.34(1H)、7.27(4H)。
【実施例3】
【0081】
<4-(ジベンゾフラン-4-イル)フェニル-4-(ナフタレン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物81)の合成>
反応容器に、4-(ナフタレン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン:7.6g、4-(4-ブロモフェニル)ジベンゾフラン:6.6g、酢酸パラジウム(II):0.1g、トリ-t-ブチルホスフィン:0.2g、t-ブトキシナトリウム:2.4gを仕込み、トルエン溶媒下にて14時間還流撹拌した。反応終了を確認後、濾過して得た濾液を濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/n-ヘプタン)によって精製を行うことで、4-(ジベンゾフラン-4-イル)フェニル-4-(ナフタレン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物81)の白色紛体:3.9g(収率:31.8%)を得た。
【0082】
【0083】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の31個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.81(1H)、8.75(1H)、8.22(1H)、8.04(1H)、7.98(1H)、7.93-7.80(7H)、7.70(2H)、7.64(1H)、7.59(3H)、7.54-7.41(6H)、7.41-7.31(7H)。
【実施例4】
【0084】
<4-(ジベンゾフラン-4-イル)フェニル-4-(ナフタレン-2-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物130)の合成>
反応容器に、4-(ナフタレン-2-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン:7.6g、4-(4-ブロモフェニル)ジベンゾフラン:6.6g、酢酸パラジウム(II):0.1g、トリ-t-ブチルホスフィン:0.2g、t-ブトキシナトリウム:2.4gを仕込み、トルエン溶媒下にて14時間還流撹拌した。反応終了を確認後、濾過して得た濾液を濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/n-ヘプタン)によって精製を行うことで、4-(ジベンゾフラン-4-イル)フェニル-4-(ナフタレン-2-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物130)の白色紛体:5.5g(収率:44.8%)を得た。
【0085】
【0086】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の31個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.80(1H)、8.75(1H)、8.16(1H)、8.01(1H)、7.98(1H)、7.88(3H)、7.84(4H)7.78(1H)、7.73(1H)、7.69(2H)、7.65-7.53(6H)、7.51-7.28(9H)。
【実施例5】
【0087】
<{4’-(ジベンゾフラン-3-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル}-4-(ナフタレン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物11)の合成>
反応容器に、4-(ナフタレン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン:10.0g、3-(4’-ブロモ[1,1’-ビフェニル]-4-イル)ジベンゾフラン:11.1g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):0.5g、トリ-t-ブチルホスフィン:0.2g、t-ブトキシナトリウム:4.9gを仕込み、トルエン溶媒下にて一晩還流撹拌した。反応終了を確認後、濾過して得た濾液を濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をモノクロロベンゼン/アセトン混合溶媒によって晶析精製を行うことで、{4’-(ジベンゾフラン-3-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル}-4-(ナフタレン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物11)の白色紛体:12.8g(収率:71.1%)を得た。
【0088】
【0089】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の35個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.83-8.76(2H)、8.21(1H)、8.07-7.99(3H)、7.93-7.88(4H)、7.82(1H)、7.78-7.46(17H)、7.43-7.37(3H)、7.32(4H)。
【実施例6】
【0090】
<{4’-(ジベンゾフラン-3-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル}-4-(ナフタレン-2-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物54)の合成>
反応容器に、4-(ナフタレン-2-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン:8.0g、3-(4’-ブロモ[1,1’-ビフェニル]-4-イル)ジベンゾフラン:8.9g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):0.4g、トリ-t-ブチルホスフィン:0.2g、t-ブトキシナトリウム:3.9gを仕込み、トルエン溶媒下にて一晩還流撹拌した。反応終了を確認後、濾過して得た濾液を濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/n-ヘプタン)によって精製を行うことで、{4’-(ジベンゾフラン-3-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル}-4-(ナフタレン-2-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物54)の淡黄色紛体:7.8g(収率:54.2%)を得た。
【0091】
【0092】
得られた淡黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の35個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.83-8.76(2H)、8.16(1H)、8.05-7.99(3H)、7.92-7.85(5H)、7.78-8.56(16H)、7.49(3H)、7.39(1H)、7.31-7.27(4H)。
【実施例7】
【0093】
<{4’-(ジベンゾフラン-4-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル}-4-(ナフタレン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物93)の合成>
反応容器に、(4’-ブロモ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-4-(ナフタレン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン:12.0g、4-ジベンゾフラニルボロン酸:4.9g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):0.5g、炭酸カリウム:5.3gを仕込み、トルエン/EtOH/H2O混合溶媒下にて一晩還流撹拌した。反応終了を確認後、放冷した系内にトルエン/H2Oを加え、抽出および分液操作にて有機層を取り出し、濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/n-ヘプタン)によって精製を行うことで、{4’-(ジベンゾフラン-4-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル}-4-(ナフタレン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物93)の白色紛体:4.1g(収率:29.3%)を得た。
【0094】
【0095】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の35個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.84-8.77(2H)、8.23(1H)、8.07(1H)、8.04-8.01(3H)、7.97(1H)、7.94-7.82(4H)、7.78-7.60(10H)、7.56-7.45(6H)、7.42-7.38(3H)、7.33(4H)。
【実施例8】
【0096】
<{4’-(ジベンゾフラン-4-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル}-4-(ナフタレン-2-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物142)の合成>
反応容器に、(4’-ブロモ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-4-(ナフタレン-2-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン:12.0g、4-ジベンゾフラニルボロン酸:4.9g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):0.5g、炭酸カリウム:5.3gを仕込み、トルエン/EtOH/H2O混合溶媒下にて一晩還流撹拌した。反応終了を確認後、放冷した系内にトルエン/H2Oを加え、抽出および分液操作にて有機層を取り出し、濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/n-ヘプタン)によって精製を行うことで、{4’-(ジベンゾフラン-4-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル}-4-(ナフタレン-2-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物142)の白色紛体:8.7g(収率:63.5%)を得た。
【0097】
【0098】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6)で以下の35個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.99(1H)、8.92(1H)、8.22-8.15(3H)、8.08-7.91(9H)、7.83-7.61(12H)、7.57-7.42(5H)、7.20(4H)。
【実施例9】
【0099】
<4-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル-4-(ナフタレン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物183)の合成>
反応容器に、4-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン:10.0g、1-(4-ブロモフェニル)ナフタレン:7.2g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):0.4g、トリ-t-ブチルホスフィン:0.2g、t-ブトキシナトリウム:3.5gを仕込み、トルエン溶媒下にて一晩還流撹拌した。反応終了を確認後、濾過して得た濾液を濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/n-ヘプタン)によって精製を行うことで、4-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル-4-(ナフタレン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物183)の白色紛体:9.1g(収率:62.3%)を得た。
【0100】
【0101】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6)で以下の31個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.99(1H)、8.92(1H)、8.41(1H)、8.20(1H)、8.14(1H)、8.05(1H)、8.00-7.91(4H)、7.76-7.64(9H)、7.57-7.52(4H)、7.45-7.41(4H)、7.27-7.22(4H)。
【実施例10】
【0102】
<{4-(ジベンゾフラン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル}-4-(ナフタレン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物188)の合成>
反応容器に、(4’-ブロモ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-4-(ナフタレン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン:13.0g、2-ジベンゾフラニルボロン酸:5.3g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):0.5g、炭酸カリウム:5.7gを仕込み、トルエン/EtOH/H2O混合溶媒下にて一晩還流撹拌した。反応終了を確認後、放冷した系内にトルエン/H2Oを加え、抽出および分液操作にて有機層を取り出し、濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/n-ヘプタン)によって精製を行うことで、{4’-(ジベンゾフラン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル}-4-(ナフタレン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物188)の白色紛体:9.7g(収率:65.5%)を得た。
【0103】
【0104】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の35個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.83-8.77(2H)、8.23-8.21(2H)、8.05(2H)、7.93-7.85(3H)、7.82(1H)、7.77-7.70(7H)、7.67-7.58(6H)、7.56-7.46(5H)、7.42-7.38(3H)、7.32(4H)。
【実施例11】
【0105】
<4-(ジベンゾフラン-1-イル)フェニル-4-(ナフタレン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物193)の合成>
反応容器に、4-(ジベンゾフラン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン:8.0g、1-(4-ブロモフェニル)ナフタレン:5.7g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):0.3g、トリ-t-ブチルホスフィン:0.2g、t-ブトキシナトリウム:3.5gを仕込み、トルエン溶媒下にて一晩還流撹拌した。反応終了を確認後、濾過して得た濾液を濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/n-ヘプタン)によって精製を行うことで、4-(ジベンゾフラン-1-イル)フェニル-4-(ナフタレン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物193)の黄色紛体:8.4g(収率:71.7%)を得た。
【0106】
【0107】
得られた黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6)で以下の31個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=9.00(1H)、8.93(1H)、8.18(1H)、8.09-8.05(2H)、7.99(1H)、7.93(2H)、7.81-7.68(6H)、7.59-7.44(11H)、7.35-7.22(6H)。
【実施例12】
【0108】
<{4’-(ジベンゾフラン-1-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル}-4-(ナフタレン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物198)の合成>
反応容器に、(4’-ブロモ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-4-(ナフタレン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン:12.0g、2-(ジベンゾフラン-1-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン:6.2g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):0.5g、炭酸カリウム:5.3gを仕込み、トルエン/EtOH/H2O混合溶媒下にて一晩還流撹拌した。反応終了を確認後、放冷した系内にトルエン/H2Oを加え、抽出および分液操作にて有機層を取り出し、濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/n-ヘプタン)によって精製を行うことで、{4’-(ジベンゾフラン-1-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル}-4-(ナフタレン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物198)の白色紛体:8.5g(収率:62.0%)を得た。
【0109】
【0110】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の35個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.84-8.77(2H)、8.22(1H)、8.07(1H)、7.94-7.85(3H)、7.82(1H)、7.79-7.76(2H)、7.72(4H)、7.67-7.59(7H)、7.57-7.41(8H)、7.36-7.31(5H)、7.16(1H)。
【実施例13】
【0111】
<4-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル-4-(ナフタレン-2-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物204)の合成>
反応容器に、4-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン:11.4g、2-(4-ブロモフェニル)ナフタレン:8.2g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):0.5g、トリ-t-ブチルホスフィン:0.2g、t-ブトキシナトリウム:5.1gを仕込み、トルエン溶媒下にて一晩還流撹拌した。反応終了を確認後、濾過して得た濾液を濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/n-ヘプタン)によって精製を行うことで、4-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル-4-(ナフタレン-2-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物204)の白色紛体:12.5g(収率:74.8%)を得た。
【0112】
【0113】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6)で以下の31個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.98(1H)、8.91(1H)、8.42(1H)、8.21-8.16(2H)、8.08-8.01(2H)、7.98-7.90(4H)、7.83-7.61(12H)、7.56-7.47(3H)、7.42(1H)、7.20(4H)。
【実施例14】
【0114】
<{4’-(ジベンゾフラン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル}-4-(ナフタレン-2-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物209)の合成>
反応容器に、(4’-ブロモ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-4-(ナフタレン-2-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン:13.0g、2-ジベンゾフラニルボロン酸:5.3g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):0.5g、炭酸カリウム:5.7gを仕込み、トルエン/EtOH/H2O混合溶媒下にて一晩還流撹拌した。反応終了を確認後、室温下にて析出した固体を濾過して粗生成物を得た。得られた粗生成物をトルエン/アセトン混合溶媒によって晶析精製を行うことで、{4’-(ジベンゾフラン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル}-4-(ナフタレン-2-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物209)の白色紛体:8.4g(収率:56.7%)を得た。
【0115】
【0116】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6)で以下の35個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.98(1H)、8.92(1H)、8.53(1H)、8.25(1H)、8.15(1H)、8.06(1H)、8.01(1H)、7.97-7.90(4H)、7.87-7.72(12H)、7.69-7.60(4H)、7.57-7.42(4H)、7.21-7.17(4H)。
【実施例15】
【0117】
<4-(ジベンゾフラン-1-イル)フェニル-4-(ナフタレン-2-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物214)の合成>
反応容器に、4-(ジベンゾフラン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン:9.4g、2-(4-ブロモフェニル)ナフタレン:6.7g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0):0.4g、トリ-t-ブチルホスフィン:0.2g、t-ブトキシナトリウム:4.2gを仕込み、トルエン溶媒下にて一晩還流撹拌した。反応終了を確認後、濾過して得た濾液を濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/n-ヘプタン)によって精製を行うことで、4-(ジベンゾフラン-1-イル)フェニル-4-(ナフタレン-1-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物214)の白色紛体:8.2g(収率:59.4%)を得た。
【0118】
【0119】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(DMSO-d6)で以下の31個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.99(1H)、8.92(1H)、8.17(1H)、8.12(1H)、8.04(1H)、7.97-7.90(4H)、7.83-7.65(9H)、7.60-7.49(7H)、7.31-7.24(6H)。
【実施例16】
【0120】
<{4’-(ジベンゾフラン-1-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル}-4-(ナフタレン-2-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物219)の合成>
反応容器に、(4’-ブロモ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-4-(ナフタレン-2-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン:12.0g、2-(ジベンゾフラン-1-イル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン:6.2g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0):0.5g、炭酸カリウム:5.3gを仕込み、トルエン/EtOH/H2O混合溶媒下にて一晩還流撹拌した。反応終了を確認後、放冷した系内にトルエン/H2Oを加え、抽出および分液操作にて有機層を取り出し、濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:ジクロロメタン/n-ヘプタン)によって精製を行うことで、{4’-(ジベンゾフラン-1-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル}-4-(ナフタレン-2-イル)フェニル-フェナントレン-9-イル-アミン(化合物219)の白色紛体:10.2g(収率:74.4%)を得た。
【0121】
【0122】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H-NMR(CDCl3)で以下の35個の水素シグナルを検出した。
δ(ppm)=8.83-8.77(2H)、8.17(1H)、8.04(1H)、7.93-7.85(4H)、7.79-7.75(8H)、7.66-7.42(13H)、7.32-7.30(5H)、7.17(1H)。
【実施例17】
【0123】
一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物について、高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100SA)によって融点とガラス転移点を測定した。結果を表1に示す。
【0124】
【0125】
一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物は、100℃以上のガラス転移点を有しており、薄膜状態が安定であることを示すものである。
【実施例18】
【0126】
一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物を用いて、ITO基板の上に膜厚100nmの蒸着膜を作製して、イオン化ポテンシャル測定装置(住友重機械工業株式会社製、PYS-202)によって仕事関数を測定した。結果を表2に示す。
【0127】
【0128】
一般式(a)または(b)で表されるアリールアミン化合物は、NPD、TPDなどの一般的な正孔輸送材料が有する仕事関数5.4eVと比較して、好適なエネルギー準位を示しており、良好な正孔輸送能力を有している。
【実施例19】
【0129】
有機EL素子は、
図19に示すように、ガラス基板1上に透明陽極2として反射ITO電極をあらかじめ形成したものの上に、正孔注入層3、正孔輸送層4、電子阻止層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8、陰極9、キャッピング層10の順に蒸着して作製した。
【0130】
具体的には、膜厚50nmのITO、膜厚100nmの銀合金の反射膜、膜厚5nmのITOを順に成膜したガラス基板1をイソプロピルアルコール中にて超音波洗浄を20分間行った後、250℃に加熱したホットプレート上にて10分間乾燥を行った。その後、UVオゾン処理を2分間行った後、このITO付きガラス基板を真空蒸着機内に取り付け、0.001Pa以下まで減圧した。
続いて、透明陽極2を覆うように正孔注入層3として、下記構造式の電子アクセプター(Acceptor-1)と下記構造式の化合物(HTM-1)を、蒸着速度比がAcceptor-1:HTM-1=3:97となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚10nmとなるように形成した。
この正孔注入層3の上に、正孔輸送層4として下記構造式の化合物(HTM-1)を膜厚140nmとなるように形成した。
この正孔輸送層4の上に、電子阻止層5として実施例1の化合物(1)を膜厚5nmとなるよう形成した。
この電子阻止層5の上に、発光層6として下記構造式の化合物(EMD-1)と下記構造式の化合物(EMH-1)を、蒸着速度比がEMD-1:EMH-1=5:95となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚20nmとなるように形成した。
この発光層6の上に、電子輸送層7として下記構造式の化合物(ETM-1)と下記構造式の化合物(ETM-2)を、蒸着速度比がETM-1:ETM-2=50:50となる蒸着速度で二元蒸着を行い、膜厚30nmとなるように形成した。
この電子輸送層7の上に、電子注入層8としてフッ化リチウムを膜厚1nmとなるように形成した。
この電子注入層8の上に、陰極9としてマグネシウム銀合金を膜厚12nmとなるように形成した。
最後に、キャッピング層10として下記構造の化合物(CPL-1)を膜厚60nmとなるように形成した。
【0131】
作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。
作製した有機EL素子に直流電圧を印加した発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
実施例19において、電子阻止層5の材料として、実施例1の化合物(1)に代えて、それぞれ実施例2~16で得られた化合物を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
[比較例1]
【0136】
比較のために、実施例19において、電子阻止層5の材料として、実施例1の化合物(1)に代えて、下記構造式の化合物(HTM-2)(例えば、特許文献7参照)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0137】
【0138】
[比較例2]
比較のために、実施例19において、電子阻止層5の材料として、実施例1の化合物(1)に代えて、下記構造式の化合物(HTM-3)(例えば、特許文献8参照)を用いた以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で特性測定を行った。作製した有機EL素子に直流電圧を印加したときの発光特性の測定結果を表3にまとめて示した。
【0139】
【0140】
実施例19~34および比較例1、2で作製した有機EL素子を用いて、素子寿命を測定した結果を表3にまとめて示した。素子寿命は、発光開始時の発光輝度(初期輝度)を1000cd/m2として定電流駆動を行った時、発光輝度が950cd/m2(初期輝度を100%とした時の95%に相当:95%減衰)に減衰するまでの時間として測定した。
【0141】
【0142】
表3に示す様に、電流密度10mA/cm2の電流を流したときの発光効率は、比較例1、2の有機EL素子の9.19~9.27cd/Aに対し、実施例19~34の有機EL素子では9.29~10.38cd/Aと同等以上の効率であった。また、電力効率においても、比較例1、2の有機EL素子の8.73~8.81lm/Wに対し、実施例19~34の有機EL素子では9.06~9.92lm/Wと高効率であった。さらに、素子寿命(95%減衰)においては、比較例1、2の有機EL素子の355~422時間に対し、実施例19~34の有機EL素子では426~598時間と長寿命化していることが分かる。
【0143】
以上の結果から明らかなように、本発明の有機EL素子は、正孔の移動度が大きく、優れた電子の阻止能力を有するアリールアミン化合物を用いているため、従来の有機EL素子と比較して、高発光効率であって、かつ長寿命の有機EL素子を実現できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明の、特定の構造を有するアリールアミン化合物を用いた有機EL素子は、発光効率が向上するとともに、有機EL素子の耐久性を改善させることができ、例えば、家庭電化製品や照明の用途への展開が可能となった。
【0145】
1 ガラス基板
2 透明陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 電子阻止層
6 発光層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 陰極
10 キャッピング層
【国際調査報告】