(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-26
(54)【発明の名称】反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/536 20060101AFI20250218BHJP
G01N 21/59 20060101ALI20250218BHJP
G01N 21/82 20060101ALI20250218BHJP
【FI】
G01N33/536 F
G01N21/59 Z
G01N21/82
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531360
(86)(22)【出願日】2023-08-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 CN2023115262
(87)【国際公開番号】W WO2024051512
(87)【国際公開日】2024-03-14
(31)【優先権主張番号】202211084406.3
(32)【優先日】2022-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522259016
【氏名又は名称】北京九▲強▼生物技▲術▼股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】庄 献民
(72)【発明者】
【氏名】潘 旱霖
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 希
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB06
2G059CC16
2G059DD03
2G059EE01
2G059JJ02
2G059JJ17
2G059KK02
(57)【要約】
本発明は、反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための方法及び装置に関する。反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための方法は、検出待ちサンプルを取得するステップと、検出待ちサンプルのオリジナル信号反応データを処理し、吸光度の経時的な反応曲線を取得するステップと、吸光度の経時的な反応曲線上で予め設定された開始時点と予め設定された終了時点とを選択し、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点との間の吸光度の経時的な反応曲線の長さを計算するステップと、計算された長さと基準長さとを比較し、計算された長さが基準長さよりも大きい場合、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があることを決定するステップと、を含む。反応曲線の長さと基準長さとを比較することにより、サンプルにプロゾーン現象があるか否かを簡単かつ効果的に決定することができ、他のプロゾーンサンプル予測方法と組み合わせて使用することにより、検出結果の信頼性が向上する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための方法であって、
検出待ちサンプルを取得するステップと、
検出待ちサンプルのオリジナル信号反応データを処理し、吸光度の経時的な反応曲線を取得するステップと、
吸光度の経時的な反応曲線上で予め設定された開始時点と予め設定された終了時点とを選択し、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点との間の吸光度の経時的な反応曲線の長さを計算するステップと、
計算された長さと基準長さとを比較し、計算された長さが基準長さよりも大きい場合、検出待ちサプルにプロゾーン現象があることを決定するステップと、を含むことを特徴とする反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための方法。
【請求項2】
前記基準長さは、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点との間の正常サンプルの吸光度の経時的な反応曲線の長さを利用して決定されることを特徴とする請求項1に記載の反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための方法。
【請求項3】
次の式で基準長さを決定し、
【数1】
式中、L0は基準長さであり、
【数2】
は予め設定された開始時点と予め設定された終了時点との間の複数の正常サンプルの吸光度の経時的な反応曲線の長さの平均値であり、Cは係数であることを特徴とする請求項1に記載の反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための方法。
【請求項4】
検出待ちサンプルのオリジナル信号反応データは、検出待ちサンプルの反応中に光学検出システムによって収集された透過光強度の経時的なデータであり、
検出待ちサンプルのオリジナル信号反応データを吸光度の経時的なデータに変換することにより、検出待ちサンプルの反応曲線を決定することを特徴とする請求項1に記載の反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための方法。
【請求項5】
検出待ちサンプルにプロゾーン現象があることを決定した場合、プロンプトを出すステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための方法。
【請求項6】
反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための装置であって、
検出待ちサンプルを取得するように構成される取得モジュールと、
検出待ちサンプルのオリジナル信号反応データを処理し、吸光度の経時的な反応曲線を取得するように構成される処理モジュールと、
吸光度の経時的な反応曲線上で予め設定された開始時点と予め設定された終了時点とを選択し、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点との間の吸光度の経時的な反応曲線の長さを計算するように構成される計算モジュールと、
計算された長さと基準長さとを比較し、計算された長さが基準長さよりも大きい場合、検出待ちサプルにプロゾーン現象があることを決定するように構成される比較モジュールと、を備えることを特徴とする反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための装置。
【請求項7】
前記基準長さは、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点との間の正常サンプルの吸光度の経時的な反応曲線の長さを利用して決定されることを特徴とする請求項6に記載の反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための装置。
【請求項8】
次の式で基準長さを決定し、
【数3】
式中、L0は基準長さであり、
【数4】
は予め設定された開始時点と予め設定された終了時点との間の複数の正常サンプルの吸光度の経時的な反応曲線の長さの平均値であり、Cは係数であることを特徴とする請求項6に記載の反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための装置。
【請求項9】
前記処理モジュールは、
検出待ちサンプルのオリジナル信号反応データが検出待ちサンプルの反応中に光学検出システムによって収集された透過光強度の経時的なデータであり、
検出待ちサンプルのオリジナル信号反応データを吸光度の経時的なデータに変換することにより、検出待ちサンプルの反応曲線を決定するように構成されることを特徴とする請求項6に記載の反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための装置。
【請求項10】
検出待ちサンプルにプロゾーン現象があることを決定した場合、プロンプトを出すように構成されるプロンプトモジュールをさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出技術分野に関し、特に反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫比濁分析法は、全自動生化学分析装置及び全自動血液凝固測定装置で使用される従来の検出方法であるが、この方法は、使用中に検出対象である抗原又は抗体の過剰の現象が発生する可能性があり、これによって生じる状況は、プロゾーン現象と呼ばれ、このような標本は、プロゾーン現象のあるサンプルと呼ばれる。プロゾーン現象のあるサンプルを検出する場合、装置は、幾つかの判定方法を使用してプロンプトを与え、オペレーターがプロゾーン現象のあるサンプルを希釈してから検出して正しい濃度値を得る。
【0003】
現在の装置で使用されるプロゾーン標本判定方法は、反応曲線の傾き(即ち、一次導関数)の変化に基づいており、横座標を表す時間軸上で不安定区間と線形区間の2つの時間区間を選択し、プロゾーンサンプルの線形区間の傾きと不安定区間の傾きとの比が正常サンプルの傾きの比よりも大きいことに応じて、プロゾーン現象のあるサンプルを識別し、さらにシステムプロンプトを与えることができ、オペレーターは、プロゾーン現象のあるサンプルを希釈し、正しいサンプル濃度情報を与える。全自動生化学分析装置で使用される方法は、細かい点で上記方法とは異なるが、いずれも反応曲線の前後セグメントの傾きの変化を比較することに基づく方法である。しかしながら、一次導関数分析に基づく上記処理は、時間区間の選択に依存するが、区間の選択が反応曲線の具体的な性質、試薬の成分などの複数の要因に関するため、複雑でエラーが発生しやすくなる。そして、この方法は、多くのパラメータを決定する必要があるが、演算が複雑である。
【0004】
背景技術に対する上記の説明は、本発明の技術的解決策(使用される技術的手段、解決される技術的問題及び生じる技術的効果など)に対する深い理解を容易にするためのものだけであり、このメッセージが当業者に既に知られている先行技術を構成することを認めたり、いかなる形で示唆したりするものとみなされるべきではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、吸光度の経時的な反応曲線を取得することができ、反応曲線の長さと基準長さとを比較することにより、サンプルにプロゾーン現象があるか否かを簡単かつ効果的に決定することができ、他のプロゾーンサンプル予測方法と組み合わせて使用することにより、検出結果の信頼性が向上する、反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態によれば、検出待ちサンプルを取得するステップと、検出待ちサンプルのオリジナル信号反応データを処理し、吸光度の経時的な反応曲線を取得するステップと、吸光度の経時的な反応曲線上で予め設定された開始時点と予め設定された終了時点とを選択し、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点との間の吸光度の経時的な反応曲線の長さを計算するステップと、計算された長さと基準長さとを比較し、計算された長さが基準長さよりも大きい場合、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があることを決定するステップとを含む、反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための方法が提供される。
【0007】
さらに、前記基準長さは、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点との間の正常サンプルの吸光度の経時的な反応曲線の長さを利用して決定される。
【0008】
さらに、次の式で基準長さを決定する:
【数1】
、ここで、L0は、基準長さであり、
【数2】
は、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点との間の複数の正常サンプルの吸光度の経時的な反応曲線の長さの平均値であり、Cは、係数である。
【0009】
さらに、検出待ちサンプルのオリジナル信号反応データは、検出待ちサンプルの反応中に光学検出システムによって収集された透過光強度の経時的なデータであり、検出待ちサンプルのオリジナル信号反応データを吸光度の経時的なデータに変換することにより、検出待ちサンプルの反応曲線を決定する。
【0010】
さらに、前記方法は、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があることを決定した場合、プロンプトを出すステップをさらに含む。
【0011】
本発明の別の実施形態によれば、検出待ちサンプルを取得するように構成される取得モジュールと、検出待ちサンプルのオリジナル信号反応データを処理し、吸光度の経時的な反応曲線を取得するように構成される処理モジュールと、吸光度の経時的な反応曲線上で予め設定された開始時点と予め設定された終了時点とを選択し、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点との間の吸光度の経時的な反応曲線の長さを計算するように構成される計算モジュールと、計算された長さと基準長さとを比較し、計算された長さが基準長さよりも大きい場合、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があることを決定するように構成される比較モジュールと、を備える、反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための装置が提供される。
【0012】
さらに、前記基準長さは、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点との間の正常サンプルの吸光度の経時的な反応曲線の長さを利用して決定される。
【0013】
さらに、次の式で基準長さを決定する:
【数3】
、ここで、L0は、基準長さであり、
【数4】
は、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点との間の複数の正常サンプルの吸光度の経時的な反応曲線の長さの平均値であり、Cは、係数である。
【0014】
さらに、前記処理モジュールは、検出待ちサンプルのオリジナル信号反応データが検出待ちサンプルの反応中に光学検出システムによって収集された透過光強度の経時的なデータであり、検出待ちサンプルのオリジナル信号反応データを吸光度の経時的なデータに変換することにより、検出待ちサンプルの反応曲線を決定するように構成される。
【0015】
さらに、前記装置は、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があることを決定した場合、プロンプトを出すように構成されるプロンプトモジュールを備える。
【0016】
本発明は、上記の技術的解決策を採用しており、検出待ちサンプルの吸光度の経時的な反応曲線を取得することができ、反応曲線の長さと基準長さとを比較することにより、サンプルにプロゾーン現象があるか否かを簡単かつ効果的に決定することができ、他のプロゾーンサンプル予測方法と組み合わせて使用することにより、検出結果の信頼性が向上する、という有益な効果を有する。
【0017】
以下に図面を参照しながら本発明の例示的な実施例をより詳しく説明する。明確にするために、異なる図面における同じ部材は、同じ符号で示される。説明すべきものとして、図面は、概略的に示すものに過ぎず、必ずしも縮尺で描かれているわけではない。これらの図面は、次のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態による反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための方法を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の実施形態による反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための方法における検出待ちサンプルの実測データを示す概略図である。
【
図3】本発明の実施形態による反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための方法における正常サンプルの実測データを示す概略図である。
【
図4】本発明の実施形態による反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本実施形態は、本発明の技術的解決策を前提として実施され、詳細な実施方式及び具体的な操作プロセスが示されるが、本発明の保護範囲は、下記の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
図1は本発明の実施形態による反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための方法を示すフローチャートである。
図1に示すように、本発明の実施形態による反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための方法は、検出待ちサンプルを取得するステップS100と、検出待ちサンプルのオリジナル信号反応データを処理し、吸光度の経時的な反応曲線を取得するステップS200と、吸光度の経時的な反応曲線上で予め設定された開始時点と予め設定された終了時点とを選択し、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点との間の吸光度の経時的な反応曲線の長さを計算するステップS300と、計算された長さと基準長さとを比較し、計算された長さが基準長さよりも大きい場合、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があることを決定するステップS400と、を含む。
【0021】
ステップS100で、検出待ちサンプルを取得する。本発明の実施形態による検出待ちサンプルには、分析対象成分である抗原が存在し得る。例として、免疫学的方法を使用してサンプル中の被検抗原濃度を測定する原理は、抗原がシステム内の特異的な抗体に結合した場合、粒子の増大によりシステムの濁度が増加し、その結果、吸光度が増加するため、ランベルトベール法則(吸光度と濃度の正比例関係を表す)により、システムにおける分析対象成分である抗原の濃度を導出するようなものであってもよい。
【0022】
しかしながら、本発明の実施形態による検出待ちサンプルにおける抗原は、過剰の可能性がある。検出待ちサンプルがプロゾーン現象のある高濃度抗原サンプルである場合、サンプルにおける実際の抗原濃度が高濃度であるが、見かけ上、抗原が存在しない、又は低濃度であると判定されるため、抗原が存在しない、又は抗原の濃度測定値が低いという偽陰性結果が生じる。
【0023】
ステップS200で、検出待ちサンプルのオリジナル信号反応データを処理し、吸光度の経時的な反応曲線を取得する。
【0024】
具体的には、検出待ちサンプルのオリジナル信号反応データは、検出待ちサンプルの反応中に光学検出システムによって収集された透過光強度の経時的なデータである。1つの例示的な実施形態では、光学検出システムは、光源、レンズ、フィルター及び光ファイバーで構成され、光源システムは、分析器具の一側に位置し、光源から発せられた光が分析器具に照射され、分析器具内に反応中の検出待ちサンプルが配置されており、分析器具を透過した光が受信器に照射され、受信器内の信号収集回路が受光した光量を透過光強度に変換することにより、透過光強度の経時的なデータを収集し、オリジナル信号反応データを形成することができる。
【0025】
次に、検出待ちサンプルのオリジナル信号反応データを吸光度の経時的なデータに変換することにより、検出待ちサンプルの経時的な反応曲線を決定する。
【0026】
プロゾーン現象が存在する場合、抗原が過剰であるため、抗原と抗体の間の結合及び解離プロセスがより多くなり、反応曲線上にその特殊性が表れる。具体的には、より多くの変動として表れ、その結果、反応曲線全体の長さが大きくなる。この特徴こそ、本発明の実施形態によるステップS300に利用されるものである。
【0027】
図2は本発明の実施形態による反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための方法の検出待ちサンプルの実測データを示す概略図である。
【0028】
ステップS300で、吸光度の経時的な反応曲線上で予め設定された開始時点Tと予め設定された終了時点T’を選択する。
図2に示すように、例として、選択された、予め設定された開始時点Tが11sであり、予め設定された終了時点T’が27sである。検出待ちサンプルと試験用試薬の混合時の物理的な振動により、初期時間区間(例えば、0s~10s)の吸光度データが急激に変化するため、一定期間後(例えば、11s及びその以降)のデータは、実際の生化学反応によって引き起こされるものである。したがって、本発明の実施形態は、時間区間が選択されるが、従来技術のように2つの時間区間(即ち、不安定区間と線形区間)が選択されていない。本発明の実施形態は、従来技術のように反応曲線の具体的な性質、試薬の成分などの複数の要因にかかわるようなものではないため、より簡単で、エラーが発生しにくくなる。
【0029】
吸光度の経時的な反応曲線上で予め設定された開始時点Tと予め設定された終了時点T’とを選択した後、予め設定された開始時点Tと予め設定された終了時点T’の間の吸光度の経時的な反応曲線MM’の長さLを計算する。例えば、式
【数5】
に従って反応曲線MM’の長さLを計算することができ、yは、吸光度の経時的な反応曲線の関数である。
図2を例とすると、MM’の長さ(即ち、L)は、0.2182である。
【0030】
ステップS300で予め設定された開始時点Tと予め設定された終了時点T’との間の吸光度の経時的な反応曲線の長さLを計算した後、ステップS400で、計算された長さLと基準長さL0とを比較し、計算された長さLが基準長さL0よりも大きい場合、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があることを決定する。
【0031】
本発明の実施形態によれば、基準長さは、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点との間の正常サンプルの吸光度の経時的な反応曲線の長さを利用して決定される。以下、基準長さL0の決定について詳細に説明する。
【0032】
本発明の実施形態によれば、次の式で基準長さを決定する:
【数6】
【0033】
ここで、L0は、基準長さであり、
【数7】
は、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点との間の複数の正常サンプルの吸光度の経時的な反応曲線の長さの平均値であり、Cは、係数であり、複数回の実験により決定されてもよい。
【0034】
図3は本発明の実施形態による反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための方法における正常サンプルの実測データを示す概略図である。
図3に示すように、予め設定された開始時点を11sとし、予め設定された終了時点を27sとして選択する。予め設定された開始時点と予め設定された終了時点との間の
図3に示す正常サンプルの吸光度の経時的な反応曲線の長さNN’は、0.0505である。
【0035】
表1は予め設定された開始時点と予め設定された終了時点との間の7つの正常サンプルの反応曲線の長さを示す。
【0036】
【0037】
それに応じて、
【数8】
=(0.0080+0.0170+0.0334+0.0505+0.0675+0.0883+0.1526)/7≒0.0596。しかし、本発明は、これに限定されず、より好ましくは、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点との間の20個の正常サンプルの反応曲線の長さの平均値を
【数9】
とする。
【0038】
また、Cは、係数であり、係数Cの値の範囲は、0.8~1.2であってもよい。
【0039】
したがって、
【数10】
に従って、基準長さL0の値の範囲は、0.0477~0.0715であってもよい。
【0040】
本発明の例示的な実施形態によれば、計算された検出待ちサンプルの長さは、L=0.2182であり、基準長さL0の値の範囲は、0.0477~0.0715であり、L>L0であるため、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があることを決定することができる。その後の検出により、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があり、理論濃度は、9000mg/Lであり、実測濃度は、87.64mg/Lである。
【0041】
逆に、計算された検出待ちサンプルの長さLが基準長さL0の値の範囲にある場合、検出待ちサンプルにプロゾーン現象がないことを決定することができる。
【0042】
本発明の実施形態によれば、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があることを決定した場合、プロンプトを出す。
【0043】
図4は本発明の実施形態による反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための装置を示すブロック図である。
図4に示すように、本発明の実施形態による反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための装置は、取得モジュール、処理モジュール、計算モジュール及び比較モジュールを備える。取得モジュールは、検出待ちサンプルを取得することができる。処理モジュールは、検出待ちサンプルのオリジナル信号反応データを処理し、吸光度の経時的な反応曲線を取得することができる。計算モジュールは、吸光度の経時的な反応曲線上で予め設定された開始時点と予め設定された終了時点とを選択し、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点との間の吸光度の経時的な反応曲線の長さを計算することができる。比較モジュールは、計算された長さと基準長さとを比較し、計算された長さが基準長さよりも大きい場合、検出待ちサプルにプロゾーン現象があることを決定することができる。本発明の実施形態による反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロ現象を検出するための装置は、検出待ちサンプルにプロゾーン現象があることを決定した場合、プロンプトを出すことができるプロンプトモジュールを、さらに備えてもよい。
【0044】
処理モジュールは、検出待ちサンプルのオリジナル信号反応データが検出待ちサンプルの反応中に光学検出システムによって収集された透過光強度の経時的なデータであり、検出待ちサンプルのオリジナル信号反応データを吸光度の経時的なデータに変換することにより、検出待ちサンプルの反応曲線を決定するように構成される。
【0045】
本発明の実施形態によれば、基準長さは、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点との間の正常サンプルの吸光度の経時的な反応曲線の長さを利用して決定される。具体的には、次の式で基準長さを決定する:
【数11】
、ここで、L0は、基準長さであり、
【数12】
は、予め設定された開始時点と予め設定された終了時点との間の複数の正常サンプルの吸光度の経時的な反応曲線の長さの平均値であり、Cは、係数である。
【0046】
本発明の実施形態による反応曲線の長さに基づいて検出待ちサンプルのプロゾーン現象を検出するための方法及び装置の効果は、次のとおりである。
【0047】
本発明の実施形態によれば、検出待ちサンプルの吸光度の経時的な反応曲線を取得することができ、反応曲線の長さと基準長さを比較することにより、サンプルにプロゾーン現象があるか否かを簡単かつ効果的に決定することができ、他のプロゾーンサンプル予測方法と組み合わせて使用することにより、検出結果の信頼性が向上する。
【0048】
本発明の様々な実施形態は、すべての可能な組み合わせの網羅的なリストではなく、本発明の代表的な態様を説明することを意図しており、様々な実施形態で説明される内容は、独立して適用されてもよく、又は2つ以上を組み合わせて適用されてもよい。
【0049】
上記の例示的な実施形態に示された説明は、本発明の技術的解決策を説明するためのものだけであり、網羅的であることを意図したものではなく、また、本発明を説明された精確な形態に限定することを意図したものでもない。明らかに、当業者は、上記の教示に従って、多くの変更及び変形を行うことができる。例示的な実施形態を選択し説明することは、本発明の特定の原理及びその実際の応用を説明するためであり、他の当業者が本発明の様々な例示的な実施形態及びその様々な代替形態及び変形形態を容易に理解し、実現して利用できるようにするためである。本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれと同等の形態によって限定されることを意図している。
【国際調査報告】