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  • 特表-付加製造のための鉄合金粉末 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-26
(54)【発明の名称】付加製造のための鉄合金粉末
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20220101AFI20250218BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20250218BHJP
   C22C 38/38 20060101ALI20250218BHJP
   C22C 38/58 20060101ALI20250218BHJP
   B22F 9/08 20060101ALI20250218BHJP
   B22F 10/20 20210101ALI20250218BHJP
   B22F 10/16 20210101ALI20250218BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20250218BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20250218BHJP
【FI】
B22F1/00 T
C22C38/00 302Z
C22C38/38
C22C38/58
B22F9/08 A
B22F10/20
B22F10/16
B33Y70/00
B33Y80/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545165
(86)(22)【出願日】2023-01-31
(85)【翻訳文提出日】2024-09-27
(86)【国際出願番号】 IB2023050833
(87)【国際公開番号】W WO2023144803
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2022/050815
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボネ,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】デシュラー,バレリー
(72)【発明者】
【氏名】サンス・モラル,ルイス・ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】レメンテリア・フェルナンデス,ロザリア
(72)【発明者】
【氏名】デル・リオ・フェルナンデス,ラウラ
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4K017AA04
4K017BA06
4K017BB01
4K017BB08
4K017BB09
4K017BB13
4K017CA07
4K017FA04
4K017FA07
4K017FA09
4K017FA15
4K018AA24
4K018BA13
4K018BB04
(57)【要約】
本発明は、少なくとも95体積%の窒素で作られたガスによる噴霧化によって得られる、付加製造のための鉄合金粉末に関し、該合金は、0.5重量%までの炭素、11.0重量%までのチタン、5重量%までのホウ素、30重量%までのマンガン、15重量%までのアルミニウム、1.5重量%までのケイ素、0.5重量%までのバナジウム、2重量%までの銅、2重量%までのニオブを含み、残余は鉄及び残留元素であり、該粉末は、チタン、アルミニウム、ホウ素、バナジウム、ケイ素及びニオブからなる群から選択される少なくとも1つの元素の、内部に生じる窒化物及び/又は炭窒化物を含み、そのような鉄合金粉末の窒素含量は、噴霧化温度でのそのような合金中の窒素の溶解限度を上回る。本発明はまた、そのような粉末の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造のための鉄合金粉末であって、少なくとも95体積%の窒素で作られたガスによる噴霧化によって得られ、該合金は、0.5重量%までの炭素、11.0重量%までのチタン、5重量%までのホウ素、30重量%までのマンガン、15重量%までのアルミニウム、1.5重量%までのケイ素、0.5重量%までのバナジウム、2重量%までの銅、2重量%までのニオブを含み、残余は鉄及び残留元素であり、該粉末は、チタン、アルミニウム、ホウ素、バナジウム、ケイ素及びニオブからなる群から選択される少なくとも1つの元素の、内部に生じる窒化物及び/又は炭窒化物を含み、そのような鉄合金粉末の窒素含量は、噴霧化温度でそのような合金中の窒素の溶解限度を上回る鉄合金粉末。
【請求項2】
このような窒化物及び/又は炭窒化物の平均サイズが0.5μm未満である、請求項1に記載の鉄合金粉末。
【請求項3】
前記内部に生じる窒化物及び/又は炭窒化物が、接種材料として析出物中に含まれる、請求項1又は2に記載の鉄合金粉末。
【請求項4】
粉末粒子内に分布する前記窒化物及び/又は炭窒化物が、AlN、B(C,N)、Nb(C,N)、Si、TiN、Ti(C,N)、VN及びV(C,N)から選択することができる、請求項1~3のいずれか一項に記載の鉄合金粉末。
【請求項5】
前記窒化物又は炭窒化物が、TiN又はTi(C,N)である、請求項4に記載の鉄合金粉末。
【請求項6】
請求項1~5に記載の付加製造のための鉄合金粉末の製造方法であって、
- チタン、アルミニウム、ホウ素、バナジウム、ケイ素及びニオブからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む、元素及び/又は金属合金を、その液相線温度より少なくとも100℃高く、かつ1700℃より高い温度で溶融して、溶融組成物を得、
- 該溶融組成物を、ノズルを通して少なくとも95体積%の窒素及び任意選択で5体積%までの不活性ガスで作られたガスで噴霧化すること
を含む方法。
【請求項7】
請求項1~5に記載の鉄合金粉末又は請求項6に記載の方法により得られた鉄合金粉末を用いて付加製造プロセスにより製造された鉄合金部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品の製造のための鉄合金粉末、特に付加製造でのその使用のための鉄合金粉末に関する。本発明はまた、鉄合金粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造のための鉄合金粉末は、通常、噴霧化プロセスによって製造されており、噴霧化プロセスでは、溶融合金流をノズルに押し込み、溶融合金流がノズルから出る直前にそのような流に導入されたガスのジェットに溶融合金流を衝突させることによって、微細な金属液滴が得られる。合金液滴は、噴霧塔内での落下中に冷え、粉末粒子を形成する。
【0003】
そのような粉末粒子が落下中に受ける冷却速度は、液滴のサイズが小さいために非常に高く、また、粒子ごとに均質ではない。これは、不均質な粒径を有する熱力学的に不安定な微細組織の形成に至る可能性がある。場合によっては、凝固中に析出すべきいくつかの化合物は形成されない。
【0004】
このような粉末粒子を用いて、鉄合金部品を付加製造により製造する場合、得られた部品は、それらの不均質性から継承する可能性があり、不均質な使用特性をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、部品全体にわたって良好な使用特性を維持しながら、付加製造方法によって部品を製造するのに効率的に使用することができる粉末を提供することによって、そのような欠点を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明の第1の主題は、請求項1に記載の付加製造のための鉄合金粉末からなる。
【0007】
本発明による鉄合金粉末はまた、個別に又は組み合わせて考慮される、請求項2~5のいずれかに列挙される任意の特徴を有し得る。
【0008】
本発明の第2の主題は、請求項6に記載の鉄合金の製造方法からなる。
【0009】
本発明の第3の主題は、請求項7に列挙されるように、本発明による鉄合金粉末又は本発明による方法によって得られる鉄合金粉末を使用して、付加製造プロセスによって製造される金属部品からなる。
【0010】
この発明は、以下の図を参照しながら、純粋に説明のため提供され、限定する意図は全くない以下の説明を読むことでより深く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】チタン含量の関数として1600℃での鉄及びチタン合金における窒素溶解限度を示すグラフである。
図2】TiB析出物内のTi(C,N)接種材料の写真及びそのような写真の拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による付加製造のための鉄合金粉末は、チタン、アルミニウム、ホウ素、バナジウム、ケイ素及びニオブからなる群から選択される少なくとも1つの元素の、内部に生じる窒化物及び/又は炭窒化物を含み、そのような鉄合金粉末の窒素含量は、そのような合金中の噴霧化温度での窒素の溶解限度を超える。
【0013】
標準的な鉄合金工場プロセスでは、合金中の窒素含量は、そのような合金中のその溶解限度を超えることができない。
【0014】
所与の鉄合金における窒素溶解限度は、温度、窒素分圧及び合金に含まれる合金元素に依存する。いくつかの合金元素は、窒素溶解度を高め(Cr、Al、Ti...)又は低下させ(Si、C、P...)ることができる。
【0015】
温度、鉄合金組成、雰囲気組成及び圧力がこの溶解限度に及ぼす影響を予測するのに、熱力学が周知である。特に、窒化物及び/又は炭窒化物が形成されない限り、窒素溶解度はジーベルトの法則に従い、一定温度での溶融物中の窒素の量は、溶融物と接触する窒素の分圧の平方根に反比例する。
【0016】
この溶解限度を超えるとき、鉄合金が析出によって安定な窒化物又は炭窒化物を生成することができる合金元素を含有する場合、いくつかの追加の窒素を鉄合金に組み込むことができる。その場合、総窒素含量は、溶鋼に溶解した窒素と、窒化物又は炭窒化物として析出した窒素との合計となる。窒化物又は炭窒化物の密度は、一般に溶鋼より低く、浮選につながる。溶鋼による窒化物又は炭窒化物の濡れ性は一般に悪く、クラスター形成につながる。
【0017】
鉄合金の組成が何であれ、標準的な鋼工場の慣行は、凝固後に高い窒素含量及び/又は窒化物又は炭窒化物の良好な分布に到達することを妨げる。
【0018】
しかし、適切な鉄合金粉末に適用される特定の噴霧化プロセスは、内部に生じる窒化物及び/又は炭窒化物の析出をもたらし、そのような鉄合金粉末の窒素含量は、そのような合金における噴霧化温度での窒素の溶解限度を超えることが新たに発見された。そのような窒化物及び/又は炭窒化物は、粉末中に均質に分布する。
【0019】
窒素は、熱力学によって予測される溶解度の限度まで、チタン、アルミニウム、ホウ素、バナジウム、ケイ素及びニオブから選択される少なくとも1つの元素を含む溶融合金の加工中に鉄合金に導入することができる。しかし、噴霧化プロセス中、窒素の相補的添加は、少なくとも95体積%の窒素を含有するように噴霧化ガス組成を制御することによって、噴霧化温度を少なくとも1700℃に設定することによって、及び過熱温度を液相線より少なくとも100℃高く設定することによって行うことができる。
【0020】
理論に拘束されるものではないが、チタン、アルミニウム、ホウ素、バナジウム、ケイ素及びニオブから選択される少なくとも1つの元素を含む窒化物及び/又は炭窒化物の析出は、液滴によって吸収される前に液滴の表面で起こり、粉末粒子中のそのような内部に生じる窒化物及び/又は炭窒化物の微細かつ均質な分散をもたらすようである。
【0021】
次いで、そのような窒化物及び/又は炭窒化物は、液滴内の凝固機構を改変し、沈殿物の接種材料として作用し得ることが観察された。
【0022】
このようにして得られた粉末粒子は、相及び/又は析出物においてより均質な微細組織を示し、より均質な使用特性を示す部品の製造をもたらす。
【0023】
図1に表されるように、例えば鉄+チタンのような鉄合金中の窒素の溶解限度曲線は、窒化物及び/又は炭窒化物を形成するために析出し得るチタンの含量の関数として描くことができる。この曲線は、窒素が合金中の固溶体に完全に溶解している区域(曲線の下)と析出が起こる区域(曲線の上)との間の境界を具体化する。
【0024】
好ましい実施形態では、粉末粒子内部に形成される窒化物及び/又は炭窒化物は、AlN、BN、NbN、Si、Ti(C,N)、TiN、VN及びV(C,N)から選択することができる。
【0025】
最も好ましい実施形態では、粉末粒子内部に形成される窒化物及び/又は炭窒化物は、NbN、TiN、Ti(C,N)、VN及びV(C,N)から選択することができる。
【0026】
粉末は、例えば、まず、原料として純粋な元素及び/又は鉄合金を混合し溶融することにより得ることができる。あるいは、粉末は、予め合金化された組成物を溶融することによって得ることができる。
【0027】
純粋な元素は通常鉄合金に由来する過剰な不純物を有することを回避するために好ましく、それはこれらの不純物が結晶化を容易にする可能性があるためである。それにもかかわらず、本発明の場合、鉄合金に由来する不純物が本発明の達成に有害でないことが観察された。
【0028】
当業者は、異なる鉄合金及び純粋な元素をどのように混合して目標の組成物を得るかを知っている。
【0029】
本発明は、0.3又は0.5重量%までの炭素、11.0又は5.0又は2.0重量%までのチタン、5又は3又は1重量%までのホウ素、30又は20又は1又は0.5重量%までのマンガン、15又は10重量%までのアルミニウム、1.5重量%までのケイ素、0.5重量%までのバナジウム、2重量%までの銅、2又は1又は0.5重量%までのニオブを含み、残余は鉄及び残留元素である鉄合金組成物に適用される。
【0030】
好ましい実施形態では、炭素の最小量は0.001重量%に設定される。好ましい実施形態では、アルミニウムの最小量は0.001重量%に設定される。好ましい実施形態では、チタンの最小量は0.001又は0.1又は0.5重量%に設定される。好ましい実施形態では、ケイ素の最小量は0.001重量%に設定される。
【0031】
純粋な元素及び/又は鉄合金を適切な割合で混合することによって組成物を得たら、該組成物をその液相線温度より少なくとも100℃高い温度で加熱し、この温度で維持して全ての原材料を溶融し、溶融物を均質化する。溶融物の温度は1700℃超、好ましくは1750℃超でなければならない。この過熱及び特定の噴霧化温度のおかげで、溶融組成物の粘度の低下は、良好な特性を有する粉末を得るのに役立つ。そうは言っても、表面張力は温度と共に増加するので、組成物をその液相線温度より450℃超高い温度で加熱しないことが好ましい。
【0032】
好ましくは、組成物は、その液相線温度より少なくとも100℃又はさらにより良好には200℃高い温度で加熱される。より好ましくは、組成物は、その液相線温度より300~400℃高い温度で加熱される。
【0033】
溶融組成物は、次いで、溶融合金流を適度な圧力でオリフィス、すなわちノズルに押し込むことによって、及び溶融合金流をガスのジェット(ガス噴霧化)又は水のジェット(水噴霧化)に衝突させることによって、微細な合金液滴に噴霧化される。ガス噴霧化の場合、ガスは、金属流がノズルを出る直前に金属流に導入され、同伴ガスが(加熱により)膨張し、大きな収集容積である噴霧化塔に出るときに乱流を生じさせる働きをする。後者は、溶融金属ジェットのさらなる乱流を促進するためにガスで満たされる。合金液滴は、噴霧化塔内での落下中に冷める。ガス噴霧化は、高度の真円度及び少量のサテライトを有する粉末粒子の生成に有利であるため、好ましい。
【0034】
噴霧化ガスは、少なくとも95体積%の窒素、及び任意選択で5体積%までの不活性ガス、例えばアルゴンを含有する。アルゴンは、溶融粘度を他のガス、例えばヘリウムよりもゆっくりと高め、これはより小さい粒径の形成を促進する。粉末中に導入される窒化物及び/又は炭窒化物の量に応じて、窒素の割合を100体積%まで増加させることができる。
【0035】
ガス圧は、粉末の粒径分布及び微細組織に直接影響を与えるので重要である。特に、圧力が高いほど冷却速度が高い。したがって、ガス圧は通常、粒径分布を最適化し、マイクロ/ナノ結晶相の形成に有利に働くように10~30バールに設定される。好ましくは、ガス圧を14~26バールに設定して、そのサイズが付加製造技術と最も適合する粒子の形成を促進する。
【0036】
ノズルの直径は、溶融合金の流量に直接影響を及ぼし、したがって粒径分布及び冷却速度に直接影響を及ぼす。ノズルの最大直径は、通常、平均粒径の上昇及び冷却速度の低下を制限するために4mmに制限される。ノズルの直径は、粒径分布をより正確に制御し、特定の微細組織の形成に有利に働くように、2~3mmであることが好ましい。
【0037】
ガス流量(Kg/時)と金属流量(Kg/時)との間の比として定義されるガス対金属比は、好ましくは1.5~7、より好ましくは3~4に維持される。これは、冷却速度の調節を助け、したがって特定の微細組織の形成をさらに促進する。
【0038】
本発明の一変形形態によれば、湿気吸収の場合、噴霧化によって得られた合金粉末は、その流動性をさらに改善するために乾燥される。乾燥は、好ましくは真空チャンバー中において100℃で行われる。
【0039】
噴霧化によって得られた合金粉末は、そのままで使用することもできるし、後に使用する付加製造技術により良く適合するサイズの粒子を保持するために篩にかけることもできる。例えば、粉末床溶融結合による付加製造の場合、20~63μmの範囲が好ましい。レーザー金属堆積又は直接金属堆積による付加製造の場合、45~150μmの範囲が好ましい。
【0040】
本発明による金属粉末から作製される部品は、付加製造技術、例えば、レーザー粉末床溶融結合(LPBF)、直接金属レーザー焼結(DMLS)、電子ビーム溶融(EBM)、選択的加熱焼結(SHS)、選択的レーザー焼結(SLS)、レーザー金属堆積(LMD)、直接金属堆積(DMD)、直接金属レーザー溶融(DMLM)、直接金属印刷(DMP)、レーザークラッディング(LC)、バインダージェッティング(BJ)などによって得ることができ、本発明による金属粉末で作製されたコーティングはまた、冷間スプレー、熱間スプレー、高速酸素燃料などの製造技術によって得ることができる。
【実施例
【0041】
以下に提示される以下の実施例及び試験は、本質的に非限定的であり、例示のみを目的として考慮されなければならない。これらは、本発明の有利な特徴、広範な実験後に本発明者らによって選択されたパラメータの重要性を例示し、本発明による合金粉末によって達成され得る特性をさらに確立するものである。
【0042】
表1による合金組成物は、まず、鉄合金及び純粋な元素を適切な割合で混合し溶融することによって、又は予め合金化された組成物を溶融することによって得た。重量パーセントで表される添加元素の組成を表1にまとめる。
【0043】
【表1】
【0044】
これらの合金組成物を加熱し、次いで表2にまとめたプロセス条件でガス噴霧化した。
【0045】
<表2-噴霧化パラメータ>
全ての試行について、噴霧器BluePower AU3000の共通の入力パラメータは、以下の通りであった。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
次いで、得られた合金粉末を真空下100℃で0.5~1日間乾燥させ、篩にかけてそれらのサイズに応じて分離した。F1画分は、20μm未満のサイズを有する粒子から作製される。F2画分は、20~63μmのサイズを有する粒子から作製される。F3画分は、63を超え160μmまでのサイズを有する粒子から作製される。F4画分は、160μmを超えるサイズを有する粒子から作製される。F3~4に記される画分は、63μmを超えるサイズを有する粒子から作製される。
【0049】
<表3-F2画分の粉末の特性決定>
N含量を、標準的なLecoガス分析器法で測定する。噴霧温度での窒素溶解度を熱力学的計算に基づいて計算する。窒化物及び炭窒化物の性質を、熱力学的計算に基づいて予測する。窒化物及び炭窒化物のサイズを、走査型電子顕微鏡観察によって測定し、全ての試行について0.5μm未満である。
【0050】
FeTiBについて、FeBの存在を、研磨及びエッチングに基づく古典的な金属組織学的方法によって決定した。Ti及びBの重量パーセントを、ICP-光電子分光法によって測定する。TiBの体積パーセントを、物質収支に基づいて、又は古典的金属組織学の画像分析(閾値法)によって計算する。
【0051】
【表4】
【0052】
凝固又は固相転移中に微細組織に接種するために、窒化物又は炭窒化物の析出を使用することができる。本発明に従って製造されたFeTiB粉末の写真を示す図2に見られるように、白い領域として現れる炭窒化物は、通常、接種材料としてのTiB(暗い領域として現れる)の内側で観察される。
【0053】
様々なタイプの組成を有するいくつかの他の等級について、異なる化合物の析出を観察し、窒素含量を測定し、窒素含量は以下の表に示されるように溶解限度を上回った。
【0054】
【表5】
【0055】
<表4-他の画分の粉末の特性決定>
いくつかのさらなる特性決定を、いくつかの試行の画分F1、F3及び/又はF4に対して行った。
【0056】
【表6】
【0057】
窒素雰囲気中での噴霧化後、粉末の窒素含量は、粉末のサイズ及び凝固速度にかかわらず安定であることが観察され得る。粉末の窒素含量に対する粉末粒径分布及び関連する凝固速度の影響は観察されない。窒素は粒子粉末の内部に析出し、その含量は粉末の比表面積とは無関係である。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造のための鉄合金粉末であって、少なくとも95体積%の窒素で作られたガスによる噴霧化によって得られ、該合金は、0.5重量%までの炭素、11.0重量%までのチタン、5重量%までのホウ素、30重量%までのマンガン、15重量%までのアルミニウム、1.5重量%までのケイ素、0.5重量%までのバナジウム、2重量%までの銅、2重量%までのニオブを含み、残余は鉄及び残留元素であり、該粉末は、チタン、アルミニウム、ホウ素、バナジウム、ケイ素及びニオブからなる群から選択される少なくとも1つの元素の、内部に生じる窒化物及び/又は炭窒化物を含み、そのような鉄合金粉末の窒素含量は、噴霧化温度でそのような合金中の窒素の溶解限度を上回る鉄合金粉末。
【請求項2】
このような窒化物及び/又は炭窒化物の平均サイズが0.5μm未満である、請求項1に記載の鉄合金粉末。
【請求項3】
前記内部に生じる窒化物及び/又は炭窒化物が、接種材料として析出物中に含まれる、請求項に記載の鉄合金粉末。
【請求項4】
粉末粒子内に分布する前記窒化物及び/又は炭窒化物が、AlN、B(C,N)、Nb(C,N)、Si、TiN、Ti(C,N)、VN及びV(C,N)から選択することができる、請求項1~3のいずれか一項に記載の鉄合金粉末。
【請求項5】
前記窒化物又は炭窒化物が、TiN又はTi(C,N)である、請求項4に記載の鉄合金粉末。
【請求項6】
請求項1~に記載の付加製造のための鉄合金粉末の製造方法であって、
- チタン、アルミニウム、ホウ素、バナジウム、ケイ素及びニオブからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む、元素及び/又は金属合金を、その液相線温度より少なくとも100℃高く、かつ1700℃より高い温度で溶融して、溶融組成物を得、
- 該溶融組成物を、ノズルを通して少なくとも95体積%の窒素及び任意選択で5体積%までの不活性ガスで作られたガスで噴霧化すること
を含む方法。
【請求項7】
請求項4に記載の付加製造のための鉄合金粉末の製造方法であって、
- チタン、アルミニウム、ホウ素、バナジウム、ケイ素及びニオブからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む、元素及び/又は金属合金を、その液相線温度より少なくとも100℃高く、かつ1700℃より高い温度で溶融して、溶融組成物を得、
- 該溶融組成物を、ノズルを通して少なくとも95体積%の窒素及び任意選択で5体積%までの不活性ガスで作られたガスで噴霧化すること
を含む方法。
【請求項8】
請求項5に記載の付加製造のための鉄合金粉末の製造方法であって、
- チタン、アルミニウム、ホウ素、バナジウム、ケイ素及びニオブからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む、元素及び/又は金属合金を、その液相線温度より少なくとも100℃高く、かつ1700℃より高い温度で溶融して、溶融組成物を得、
- 該溶融組成物を、ノズルを通して少なくとも95体積%の窒素及び任意選択で5体積%までの不活性ガスで作られたガスで噴霧化すること
を含む方法。
【請求項9】
請求項1~に記載の鉄合金粉末を用いて付加製造プロセスにより製造された鉄合金部品。
【請求項10】
請求項4に記載の鉄合金粉末を用いて付加製造プロセスにより製造された鉄合金部品。
【請求項11】
請求項5に記載の鉄合金粉末を用いて付加製造プロセスにより製造された鉄合金部品。
【請求項12】
請求項6に記載の方法により得られた鉄合金粉末を用いて付加製造プロセスにより製造された鉄合金部品。
【国際調査報告】