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特表2025-505473イオントラップ型量子コンピュータ内の搬送を円滑にするための原子オブジェクト結晶運動モードのコヒーレントな脱励起
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-27
(54)【発明の名称】イオントラップ型量子コンピュータ内の搬送を円滑にするための原子オブジェクト結晶運動モードのコヒーレントな脱励起
(51)【国際特許分類】
   G06N 10/20 20220101AFI20250219BHJP
   G06F 7/38 20060101ALI20250219BHJP
【FI】
G06N10/20
G06F7/38 510
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543005
(86)(22)【出願日】2023-01-18
(85)【翻訳文提出日】2024-09-17
(86)【国際出願番号】 US2023011036
(87)【国際公開番号】W WO2023249672
(87)【国際公開日】2023-12-28
(31)【優先権主張番号】63/266,923
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/151,617
(32)【優先日】2023-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】522047446
【氏名又は名称】クオンティニュアム エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・スワローズ
(72)【発明者】
【氏名】イヴァイロ・マジャロフ
(72)【発明者】
【氏名】マヤ・アイ・ファブリカント
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・エー・モーゼス
(72)【発明者】
【氏名】アダム・ピー・リード
(57)【要約】
原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められた原子オブジェクト結晶のコヒーレントな運動モードを脱励起させるための量子コンピュータ、量子システム、量子装置など、および対応する方法。1つまたは複数の電圧源は、波形を原子オブジェクト閉じ込め装置の電極のアレイに印加させるように制御される。波形の電極のアレイへの印加は、1つまたは複数の搬送動作の各々をそれぞれの原子オブジェクト結晶に対して実施させ、1つまたは複数の搬送動作のうちの少なくとも1つに対応する、それぞれの原子オブジェクト結晶の少なくとも1つのコヒーレントな運動モードを脱励起させる。少なくとも1つのコヒーレントな運動モードを脱励起させるように構成されたそれぞれのシム波形は、パラメータ化されたシム波形、および原子オブジェクト閉じ込め装置に対応するパラメータを判定するための較正プロセスに基づいて、判定され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の原子オブジェクト閉じ込め装置のためのシム波形のパラメータを較正するための方法であって、
前記特定の原子オブジェクト閉じ込め装置に、前記原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められた少なくとも1つの原子オブジェクト結晶に対する搬送動作を実施させるステップと、
前記原子オブジェクト結晶に対する第1の結晶スペクトルをキャプチャするステップと、
前記第1の結晶スペクトル内の1つまたは複数の側波帯を識別するステップと、
前記第1の結晶スペクトルに基づいて、前記1つまたは複数の側波帯の各々に対するそれぞれの運動周波数およびそれぞれの運動振幅を判定するステップと、
前記それぞれの運動周波数および前記それぞれの運動振幅に基づいて、位相パラメータ化されたシム波形を定めるステップであって、前記位相パラメータ化されたシム波形が位相の関数である、ステップと、
前記位相パラメータ化されたシム波形の位相パラメータが位相範囲にわたって増分されると同時に、前記位相パラメータ化されたシム波形を前記原子オブジェクト結晶に印加させ、1つまたは複数の第2の結晶スペクトルをキャプチャするステップと、
前記1つまたは複数の第2の結晶スペクトルに基づいて、前記1つまたは複数の側波帯の少なくともそれぞれの側波帯を最小化する前記位相範囲内の位相を判定するステップと、
前記位相パラメータ化されたシム波形および前記位相に基づいて、特定のモードのシム波形を定めるステップと、
前記特定の原子オブジェクト閉じ込め装置を使用して量子演算を実施するときに使用するための前記シム波形を提供または記憶するステップと、を含む方法。
【請求項2】
複数の位相パラメータ化されたシム波形を判定するステップであって、
前記1つまたは複数の側波帯のそれぞれの側波帯に対応する前記複数の位相パラメータ化されたシム波形の各々およびそれぞれの位相が、前記複数の位相パラメータ化されたシム波形の各々の前記原子オブジェクト結晶への印加および前記1つまたは複数の第2の結晶スペクトルに少なくとも部分的に基づいて判定される、ステップ、をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の位相パラメータ化されたシム波形および前記それぞれの位相に基づいて、マルチモードのシム波形を判定するステップ、をさらに含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記特定のモードのシム波形は、前記原子オブジェクト結晶のそれぞれの特定のモードの運動エネルギーを低減させるために、前記特定の原子オブジェクト閉じ込め装置の電極のアレイに印加されるべき一連の電圧を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記特定のモードのシム波形は、前記特定のモードのシム波形が電極の前記アレイに印加されると、前記特定の原子オブジェクト閉じ込め装置の第1のロケーションにおいて電位内に勾配を引き起こし、前記特定の原子オブジェクト閉じ込め装置の1つまたは複数の第2のロケーションにおいて電場内に勾配を引き起こさないように構成され、
前記原子オブジェクト結晶は、前記第1のロケーションに位置し、前記1つまたは複数の第2のロケーションのうちのいずれにおいても位置しない、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記特定のモードのシム波形は、前記特定の原子オブジェクト閉じ込め装置の第1のロケーションにおける(a)前記搬送動作または(b)電位井戸のうちの少なくとも1つに対応する軸周波数に関連付けられ、または前記軸周波数によってパラメータ化され、
前記原子オブジェクト結晶は前記第1のロケーションに位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の結晶スペクトルおよび第2の結晶スペクトルのそれぞれのスペクトルをキャプチャするステップが、
固定露光時間にわたってレーザービームを用いて前記原子オブジェクト結晶をプローブするステップであって、前記レーザービームが、前記原子オブジェクト結晶の少なくとも1つの成分のラマン遷移に対応するプローブ周波数によって特徴付けられる、ステップと、
前記原子オブジェクト結晶に対する入射である前記レーザービームに応じて、前記原子オブジェクト結晶によって発せされる光を検出するステップと、を含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の結晶スペクトルおよび第2の結晶スペクトルの前記それぞれのスペクトルは、前記プローブ周波数において一次線を含み、
前記1つまたは複数の側波帯は、各々、前記それぞれの運動周波数に対応する、それぞれの周波数だけ前記一次線から離隔されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められた原子オブジェクト結晶の搬送動作中にコヒーレントなモードの脱励起を使用するための方法であって、
少なくとも部分的に並行して実施されるべき1つまたは複数の搬送動作を識別するステップであって、
前記1つまたは複数の搬送動作の各々の搬送動作が、それぞれの原子オブジェクト結晶をそれぞれの開始ロケーションからそれぞれの宛先ロケーションに移動させることに対応し、前記開始ロケーションおよび前記宛先ロケーションは、前記原子オブジェクト閉じ込め装置内のロケーションである、ステップと、
前記1つまたは複数の搬送動作のうちの少なくとも1つのためのそれぞれのシム波形を判定するステップと、
各搬送動作のためのそれぞれの搬送波形を判定するステップと、
前記それぞれのシム波形および前記それぞれの搬送波形のアグリゲーションに基づいて、印加される波形を判定するステップと、
1つまたは複数の電圧源を制御して、前記印加される波形による波形電圧信号を前記原子オブジェクト閉じ込め装置の電極のアレイの電極に印加させるステップと、を含み、
前記印加される波形の、前記電極のアレイへの印加が、
前記1つまたは複数の搬送動作の各々を前記それぞれの原子オブジェクト結晶に対して実施させ、
前記1つまたは複数の搬送動作のうちの少なくとも1つに対応する前記それぞれの原子オブジェクト結晶の少なくとも1つのコヒーレントな運動モードを脱励起させる、方法。
【請求項10】
前記それぞれのシム波形が、2つ以上の特定のモードのシム波形のアグリゲーションであり、
前記2つ以上の特定のモードのシム波形の各々が、前記それぞれの原子オブジェクト結晶の異なるコヒーレントな運動モードに対応する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記それぞれのシム波形が、少なくとも(a)前記それぞれの原子オブジェクト結晶の第1のコヒーレントな運動モードに対応する第1の特定のモードのシム波形および(b)前記それぞれの原子オブジェクト結晶の第2のコヒーレントな運動モードに対応する第2の特定のモードのシム波形、のアグリゲーションであり、
前記第1のコヒーレントな運動モードは第1の運動周波数によって特徴付けられ、
前記第2のコヒーレントな運動モードは第2の運動周波数によって特徴付けられ、
前記第1の運動周波数および前記第2の運動周波数は異なる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のコヒーレントな運動モードは質量中心モードであり、
前記第2のコヒーレントな運動モードは伸縮モードである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記印加される波形は、前記1つまたは複数の搬送動作を実施させ、少なくとも1つの搬送動作に対応する前記それぞれの原子オブジェクト結晶が特定の原子オブジェクト閉じ込め装置内に位置する、前記原子オブジェクト閉じ込め装置の第1のロケーションにおいて電位内に勾配を引き起こすために、前記原子オブジェクト閉じ込め装置の電極のアレイに印加されるべき一連の電圧を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のロケーションは、前記1つまたは複数の搬送動作のうちの少なくとも1つの前記それぞれの開始ロケーションから前記それぞれの宛先ロケーションまで前記原子オブジェクト結晶をたどる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記1つまたは複数の搬送動作のうちの少なくとも1つは、少なくとも第1の搬送動作と第2の搬送動作とを含み、
前記第1の搬送動作は、第1の原子オブジェクト結晶が位置する第1の電位井戸を第1の開始ロケーションから第1の宛先ロケーションに移動させることを含み、
前記第2の搬送動作は、第2の原子オブジェクト結晶が位置する第2の電位井戸を第2の開始ロケーションから第2の宛先ロケーションに移動させることを含み、
前記印加される波形は、(a)前記第1の電位井戸が前記第1の開始ロケーションから前記第1の宛先ロケーションに移動するにつれて、前記第1の電位井戸とコロケートされた前記電位内に第1の勾配を引き起こすように構成された少なくとも1つの特定のモードのシム波形と、(b)前記第2の電位井戸が前記第2の開始ロケーションから前記第2の宛先ロケーションに移動するにつれて、前記第2の電位井戸とコロケートされた前記電位内に第2の勾配を引き起こすように構成された少なくとも1つの特定のモードのシム波形と、を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の勾配は、前記第2の原子オブジェクト結晶の前記ロケーションにおいて実質的にゼロであり、
前記第2の勾配は、前記第1の原子オブジェクト結晶の前記ロケーションにおいて実質的にゼロである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の電位井戸は第1の軸周波数を定め、
前記第2の電位井戸は第2の軸周波数を定め、
前記第1の軸周波数および前記第2の軸周波数は0.05から5MHzだけ離隔されている、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
それぞれの特定のモードのシム波形は、各々、前記それぞれの原子オブジェクト結晶が位置する特定の原子オブジェクト閉じ込め装置のロケーションにおける(a)前記搬送動作または(b)電位井戸のうちの少なくとも1つに対応する、それぞれの軸周波数に関連付けられる、または前記それぞれの軸周波数によってパラメータ化される、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
それぞれの特定のモードのシム波形は、各々、それぞれの運動モード周波数、それぞれの運動モード振幅、およびそれぞれの位相によってパラメータ化される、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
原子オブジェクト閉じ込め装置内の異なるロケーションにおいて少なくとも部分的に並行して実施される脱励起動作間の寄生的クロストークを低減するための方法であって、
前記原子オブジェクト閉じ込め装置内の第1のロケーションにおいて実施されるべき第1の脱励起動作および前記原子オブジェクト閉じ込め装置内の第2のロケーションにおいて実施されるべき第2の脱励起動作を判定するステップと、
第1の軸周波数を前記第1のロケーションに位置する第1の電位井戸に割り当て、第2の軸周波数を前記第2のロケーションに位置する第2の電位井戸に割り当てるステップであって、
前記第1の軸周波数および前記第2の軸周波数が0.05から5MHzだけ互いと離隔されている、ステップと、
前記第1の軸周波数に対応する第1のシム波形および前記第2の軸周波数に対応する第2のシム波形を判定するステップと、
1つまたは複数の電圧源を制御して、前記第1の電位井戸を前記第1の軸周波数によって特徴付けさせ、前記第2の電位井戸を前記第2の軸周波数によって特徴付けさせ、前記第1の脱励起動作を前記第1のシム波形に基づいて前記第1のロケーションにおいて実施させ、前記第2の脱励起動作を前記第2のシム波形に基づいて前記第2のロケーションにおいて実施させるために、それぞれの波形電圧信号を前記原子オブジェクト閉じ込め装置の電極アレイの電極に印加させるステップと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、2022年1月19日に出願した、米国出願第63/266,923号の優先権を主張するものである。
【0002】
様々な実施形態は、原子オブジェクト閉じ込め装置(atomic object confinement apparatus)によって閉じ込められた原子オブジェクトに関する。たとえば、様々な実施形態は、原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められた原子オブジェクト結晶(atomic object crystal)の運動モードの脱励起に関する。たとえば、様々な実施形態は、原子オブジェクトトラップ型量子コンピュータの原子オブジェクト結晶の運動モードの脱励起に関する。
【背景技術】
【0003】
量子電荷結合デバイス(QCCD:Quantum charge-coupled device)は、その中で原子オブジェクトが原子オブジェクト閉じ込め装置内に閉じ込められ、原子オブジェクトのうちの少なくともいくつかが量子計算を実施するために使用される、量子コンピューティングアーキテクチャである。原子オブジェクトは、原子オブジェクト閉じ込め装置の異なるロケーション間で搬送され得る。しかしながら、これらの搬送動作は、原子オブジェクトを加熱させる。原子オブジェクトを所望のレベルまで冷却するために、原子オブジェクトに対して冷却動作が実施され得る。しかしながら、これらの冷却動作は、量子コンピュータによって実施される他の動作と比較して遅く、したがって、量子コンピュータの処理時間のかなりの部分に相当する。適用される取組み、創意工夫、および革新を通して、そのような従来の冷却システムの多くの欠点は、本発明の実施形態により構築される解決策を開発することによって解決されており、その多くの例について本明細書で詳細に説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第63/235,007号
【特許文献2】米国特許出願第17/533,587号
【特許文献3】米国特許第11,037,776号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
例示的な実施形態は、原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められた原子オブジェクト結晶のコヒーレントな運動モードを脱励起させるための量子コンピュータ、量子システム、量子装置など、および対応する方法を提供する。様々なシナリオでは、原子オブジェクト結晶のコヒーレントな運動モードは、搬送動作中に励起される。様々な実施形態では、コヒーレントな運動モードは、次いで、原子オブジェクト結晶のロケーションにおいて電位勾配を生成するために、1つまたは複数のシム波形を印加することによって脱励起される。電位勾配は、コヒーレントな運動モードによる運動を低減するために、励起されたコヒーレントな運動モードの運動を無効にする力を原子オブジェクト結晶に与える。様々な実施形態では、電位勾配は、電位勾配を経験している原子オブジェクト結晶に対して与えられる瞬間力が、それぞれの運動モードによる原子オブジェクトの加速に対する振幅に実質的に逆平行するかつ/もしくは実質的に等しいかつ/または同様であるように、それぞれの運動モードに実質的に等しい周波数に伴って時間とともに展開し、かつ/または時間に応じて発振する。したがって、原子オブジェクト結晶の運動エネルギーは低減される。
【0006】
一態様によれば、特定の原子オブジェクト閉じ込め装置が脱励起動作において使用するためのシム波形のパラメータを較正するための方法が提供される。例示的な実施形態では、この方法は、特定の原子オブジェクト閉じ込め装置に原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められた少なくとも1つの原子オブジェクト結晶に対する搬送動作を実施させるステップと、原子オブジェクト結晶に対する第1の結晶スペクトルをキャプチャするステップと、第1の結晶スペクトル内の1つまたは複数の側波帯を識別する(identify)ステップと、第1の結晶スペクトルに基づいて、1つまたは複数の側波帯の各々に対するそれぞれの運動周波数およびそれぞれの運動振幅を判定するステップと、それぞれの運動周波数およびそれぞれの運動振幅に基づいて、位相パラメータ化されたシム波形を定めるステップであって、位相パラメータ化されたシム波形が位相の関数であるステップと、位相パラメータ化されたシム波形の位相パラメータが位相範囲にわたって増分され(incremented)ると同時に、位相パラメータ化されたシム波形を原子オブジェクト結晶に印加させ、1つまたは複数の第2の結晶スペクトルをキャプチャするステップと、を含む。この方法は、1つまたは複数の第2の結晶スペクトルに基づいて、1つまたは複数の側波帯の少なくともそれぞれの側波帯を最小化する位相範囲内の位相を判定するステップと、位相パラメータ化されたシム波形および位相に基づいて、特定のモードのシム波形を定めるステップと、特定の原子オブジェクト閉じ込め装置を使用して量子演算を実施するときに使用するためのシム波形を提供または記憶するステップとをさらに含む。
【0007】
例示的な実施形態では、この方法は、量子コンピュータのコントローラによって実施される。
【0008】
例示的な実施形態では、この方法は、複数の位相パラメータ化されたシム波形を判定するステップであって、1つまたは複数の側波帯のそれぞれの側波帯に対応する複数の位相パラメータ化されたシム波形の各々およびそれぞれの位相が、複数の位相パラメータ化されたシム波形の各々の原子オブジェクト結晶への印加および1つまたは複数の第2の結晶スペクトルに少なくとも部分的に基づいて判定される、ステップをさらに含む。
【0009】
例示的な実施形態では、この方法は、複数の位相パラメータ化されたシム波形およびそれぞれの位相に基づいて、マルチモードのシム波形を判定するステップをさらに含む。
【0010】
例示的な実施医形態では、特定のモードのシム波形は、原子オブジェクト結晶のそれぞれの特定のモードの運動エネルギーを低減させるために、特定の原子オブジェクト閉じ込め装置の電極のアレイに印加されるべき一連の電圧を含む。
【0011】
例示的な実施形態では、特定のモードのシム波形は、特定のモードのシム波形が電極のアレイに印加されると、特定の原子オブジェクト閉じ込め装置の第1のロケーションにおいて電位内に勾配を引き起こし、特定の原子オブジェクト閉じ込め装置の1つまたは複数の第2のロケーションにおいて電場内に勾配を引き起こさないように構成され、原子オブジェクト結晶は、第1のロケーションに位置し、1つまたは複数の第2のロケーションのいずれにも位置しない。
【0012】
例示的な実施形態では、特定のモードのシム波形は、特定の原子オブジェクト閉じ込め装置の第1のロケーションにおける(a)搬送動作または(b)電位井戸のうちの少なくとも1つに対応する軸周波数に関連付けられるか、またはその軸周波数によってパラメータ化され、原子オブジェクト結晶は第1のロケーションに位置する。
【0013】
例示的な実施形態では、第1の結晶スペクトルおよび第2の結晶スペクトルのそれぞれのスペクトルをキャプチャするステップは、固定露光時間にわたってレーザービームを用いて原子オブジェクト結晶をプローブするステップであって、レーザービームが、原子オブジェクト結晶の少なくとも1つの成分(component)のラマン遷移に対応するプローブ周波数によって特徴付けられる、ステップと、原子オブジェクト結晶に対するレーザービームの入射に応じて、原子オブジェクト結晶によって発せられる光を検出するステップを含む。
【0014】
例示的な実施形態では、第1の結晶スペクトルおよび第2の結晶スペクトルのそれぞれのスペクトルは、プローブ周波数において一次線(primary line)を含み、1つまたは複数の側波帯は、各々、それぞれの運動周波数に対応する、それぞれの周波数だけ一次線から離隔されている。
【0015】
別の態様によれば、原子オブジェクト閉じ込め装置によって封じ込められた原子オブジェクト結晶の運動モードを脱励させるように、かつ/または制御するように構成された装置が提供される。例示的な実施形態では、この装置は、少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータ実行可能命令を記憶したメモリとを備える。コンピュータ実行可能命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、装置に原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められた少なくとも1つの原子オブジェクト結晶に対する搬送動作を特定の原子オブジェクト閉じ込め装置に少なくとも実施させることと、原子オブジェクト結晶に対する第1の結晶スペクトルをキャプチャすることと、第1の結晶スペクトル内の1つまたは複数の側波帯を識別することと、第1の結晶スペクトルに基づいて、1つまたは複数の側波帯の各々に対するそれぞれの運動周波数およびそれぞれの運動振幅を判定することと、それぞれの運動周波数およびそれぞれの運動振幅に基づいて、位相パラメータ化されたシム波形を定めることであって、位相パラメータ化されたシム波形が位相の関数である、ことと、位相パラメータ化されたシム波形の位相パラメータが位相範囲にわたって増分されると同時に、位相パラメータ化されたシム波形を原子オブジェクト結晶に印加させ、1つまたは複数の第2の結晶スペクトルをキャプチャすることとを行うように構成される。コンピュータ実行可能命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、装置に、1つまたは複数の第2の結晶スペクトルに基づいて、1つまたは複数の側波帯の少なくともそれぞれの側波帯を最小化する位相範囲内の位相を少なくとも判定させ、位相パラメータ化されたシム波形および位相に基づいて、特定のモードのシム波形を定め、特定の原子オブジェクト閉じ込め装置を使用して量子演算を実施するときに使用するためのシム波形を提供または記憶するようにさらに構成される。
【0016】
例示的な実施形態では、この装置は、量子コンピュータのコントローラである。
【0017】
例示的な実施形態では、コンピュータ実行可能命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、装置に複数の位相パラメータ化されたシム波形を少なくとも判定させることであって、1つまたは複数の側波帯のそれぞれの側波帯に対応する複数の位相パラメータ化されたシム波形の各々およびそれぞれの位相が、複数の位相パラメータ化されたシム波形の各々の原子オブジェクト結晶への印加および1つまたは複数の第2の結晶スペクトルに少なくとも部分的に基づいて判定される、ことを行うようにさらに構成される。
【0018】
例示的な実施形態では、コンピュータ実行可能命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、装置に、複数の位相パラメータ化されたシム波形およびそれぞれの位相に基づいて、マルチモードのシム波形を少なくとも判定させるようにさらに構成される。
【0019】
例示的な実施形態では、特定のモードのシム波形は、原子オブジェクト結晶のそれぞれの特定のモードの運動エネルギーを低減させるために、特定の原子オブジェクト閉じ込め装置の電極にアレイに印加されるべき一連の電圧を含む。
【0020】
例示的な実施形態では、特定のモードのシム波形は、特定のモードのシム波形が電極のアレイに印加されると、特定の原子オブジェクト閉じ込め装置の第1のロケーションにおいて電位内に勾配を引き起こし、特定の原子オブジェクト閉じ込め装置の1つまたは複数の第2のロケーションにおいて電場内に勾配を引き起こさないように構成され、原子オブジェクト結晶は、第1のロケーションに位置し、1つまたは複数の第2のロケーションのうちのいずれにも位置しない。
【0021】
例示的な実施形態では、特定のモードのシム波形は、特定の原子オブジェクト閉じ込め装置の第1のロケーションにおける(a)搬送動作または(b)電位井戸のうちの少なくとも1つに対応する軸周波数に関連付けられるか、またはその軸周波数によってパラメータ化され、原子オブジェクト結晶は第1のロケーションに位置する。
【0022】
例示的な実施形態では、第1の結晶スペクトルおよび第2の結晶スペクトルのそれぞれのスペクトルをキャプチャすることが、固定露光時間にわたってレーザービームを用いて原子オブジェクト結晶をプローブすることであって、レーザービームが、原子オブジェクト結晶の少なくとも1つの成分のラマン遷移に対応するプローブ周波数によって特徴付けられる、ことと、原子オブジェクト結晶に対するレーザービームの入射に応じて、原子オブジェクト結晶によって発せられる光を検出することとを含む。
【0023】
例示的な実施形態では、第1の結晶スペクトルおよび第2の結晶スペクトルのそれぞれのスペクトルは、プローブ周波数において一次線を含み、1つまたは複数の側波帯は、各々、それぞれの運動周波数に対応する、それぞれの周波数だけ一次線から離隔されている。
【0024】
さらに別の態様によれば、システムが提供される。例示的な実施形態では、このシステムは、1つまたは複数の原子オブジェクト結晶をその中に閉じ込めるように構成された原子オブジェクト閉じ込め装置と、コントローラとを備える。コントローラは、少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータ実行可能命令を記憶したメモリとを備え、コンピュータ実行可能命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、コントローラに原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められた少なくとも1つの原子オブジェクト結晶に対する搬送動作を特定の原子オブジェクト閉じ込め装置に少なくとも実施させることと、原子オブジェクト結晶に対する第1の結晶スペクトルをキャプチャすることと、第1の結晶スペクトル内の1つまたは複数の側波帯を識別することと、第1の結晶スペクトルに基づいて、1つまたは複数の側波帯の各々に対するそれぞれの運動周波数およびそれぞれの運動振幅を判定することと、それぞれの運動周波数およびそれぞれの運動振幅に基づいて、位相パラメータ化されたシム波形を定めることであって、位相パラメータ化されたシム波形が位相の関数である、ことと、位相パラメータ化されたシム波形の位相パラメータが位相範囲にわたって増分されると同時に、位相パラメータ化されたシム波形を原子オブジェクト結晶に印加させ、1つまたは複数の第2の結晶スペクトルをキャプチャすることとを行うように構成される。コンピュータ実行可能命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、装置に、1つまたは複数の第2の結晶スペクトルに基づいて、1つまたは複数の側波帯の少なくともそれぞれの側波帯を最小化する位相範囲内の位相を少なくとも判定させ、位相パラメータ化されたシム波形および位相に基づいて、特定のモードのシム波形を定め、特定の原子オブジェクト閉じ込め装置を使用して量子演算を実施するときに使用するためのシム波形を提供または記憶するようにさらに構成される。
【0025】
例示的な実施形態では、このシステムはQCCD量子コンピュータである。
【0026】
例示的な実施形態では、コンピュータ実行可能命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、装置に複数の位相パラメータ化されたシム波形を少なくとも判定させることであって、1つまたは複数の側波帯のそれぞれの側波帯およびそれぞれの位相に対応する複数の位相パラメータ化されたシム波形の各々が、複数の位相パラメータ化されたシム波形の各々の原子オブジェクト結晶への印加および1つまたは複数の第2の結晶スペクトルに少なくとも部分的に基づいて判定される、ことを行うようにさらに構成される。
【0027】
例示的な実施形態では、コンピュータ実行可能命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、装置に、複数の位相パラメータ化されたシム波形およびそれぞれの位相に基づいて、マルチモードのシム波形を少なくとも判定させるようにさらに構成される。
【0028】
例示的な実施形態では、特定のモードのシム波形は、原子オブジェクト結晶のそれぞれの特定のモードの運動エネルギーを低減させるために、特定の原子オブジェクト閉じ込め装置の電極のアレイに印加されるべき一連の電圧を含む。
【0029】
例示的な実施形態では、特定のモードのシム波形は、特定のモードのシム波形が電極のアレイに印加されると、特定の原子オブジェクト閉じ込め装置の第1のロケーションにおいて電位内に勾配を引き起こし、特定の原子オブジェクト閉じ込め装置の1つまたは複数の第2のロケーションにおいて電場内に勾配を引き起こさないように構成され、原子オブジェクト結晶は、第1のロケーションに位置し、1つまたは複数の第2のロケーションのうちのいずれにも位置しない。
【0030】
例示的な実施形態では、特定のモードのシム波形は、特定の原子オブジェクト閉じ込め装置の第1のロケーションにおける(a)搬送動作または(b)電位井戸のうちの少なくとも1つに対応する軸周波数に関連付けられるかまたはその軸周波数によってパラメータ化され、原子オブジェクト結晶は第1のロケーションに位置する。
【0031】
例示的な実施形態では、第1の結晶スペクトルおよび第2の結晶スペクトルのそれぞれのスペクトルをキャプチャすることは、固定露光時間にわたってレーザービームを用いて原子オブジェクト結晶をプローブすることであって、レーザービームが原子オブジェクト結晶の少なくとも1つの成分のラマン遷移に対応するプローブ周波数によって特徴付けられる、ことと、原子オブジェクト結晶に対するレーザービームの入射に応じて、原子オブジェクト結晶によって発せられる光を検出することとを含む。
【0032】
例示的な実施形態では、第1の結晶スペクトルおよび第2の結晶スペクトルのそれぞれのスペクトルは、プローブ周波数において一次線を含み、1つまたは複数の側波帯は、各々、それぞれの運動周波数に対応する、それぞれの周波数だけ一次線から離隔されている。
【0033】
別の態様によれば、原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められた原子オブジェクト結晶の搬送動作中にコヒーレントなモード脱励起を使用するための方法が提供される。例示的な実施形態では、この方法は、少なくとも部分的に並行して実施されるべき1つまたは複数の搬送動作を識別するステップを含む。1つまたは複数の搬送動作の各搬送動作は、それぞれの原子オブジェクト結晶をそれぞれの開始ロケーションからそれぞれの宛先ロケーションに移動させることに対応し、開始ロケーションおよび宛先ロケーションは、原子オブジェクト閉じ込め装置内のロケーションである。この方法は、1つまたは複数の搬送動作のうちの少なくとも1つのためのそれぞれのシム波形を判定するステップと、各搬送動作のためのそれぞれの搬送波形を判定するステップと、それぞれのシム波形およびそれぞれの搬送波形のアグリゲーションに基づいて、印加される波形を判定するステップと、1つまたは複数の電圧源を制御して、印加される波形による波形電圧信号を原子オブジェクト閉じ込め装置の電極のアレイの電極に印加させるステップとをさらに含む。印加される波形の電極のアレイへの印加は、1つまたは複数の搬送動作の各々をそれぞれの原子オブジェクト結晶に対して実施させ、1つまたは複数の搬送動作のうちの少なくとも1つに対応する、それぞれの原子オブジェクト結晶の少なくとも1つのコヒーレントな運動モードを脱励起させる。
【0034】
例示的な実施形態では、この方法は、量子コンピュータのコントローラによって実施される。
【0035】
例示的な実施形態では、それぞれのシム波形は、2つ以上の特定のモードのシム波形のアグリゲーションであり、2つ以上の特定のモードのシム波形の各々は、それぞれの原子オブジェクト結晶の異なるコヒーレントな運動モードに対応する。
【0036】
例示的な実施形態では、それぞれのシム波形は、少なくとも(a)それぞれの原子オブジェクト結晶の第1のコヒーレントな運動モードに対応する第1の特定のモードのシム波形および(b)それぞれの原子オブジェクト結晶の第2のコヒーレントな運動モードに対応する第2の特定のモードのシム波形のアグリゲーションであり、第1のコヒーレントな運動モードは第1の運動周波数によって特徴付けられ、第2のコヒーレントな運動モードは第2の運動周波数によって特徴付けられ、第1の運動周波数および第2の運動周波数は異なる。
【0037】
例示的な実施形態では、第1のコヒーレントな運動モードは質量中心(center-of-mass)モードであり、第2のコヒーレントな運動モードは伸縮モードである。
【0038】
例示的な実施形態では、印加される波形は、1つまたは複数の搬送動作を実施させ、少なくとも1つの搬送動作に対応する、それぞれの原子オブジェクト結晶が特定の原子オブジェクト閉じ込め装置内に位置する、原子オブジェクト閉じ込め装置の第1のロケーションにおいて電位内に勾配を引き起こすために、原子オブジェクト閉じ込め装置の電極のアレイに印加されるべき一連の電圧を含む。
【0039】
例示的な実施形態では、第1のロケーションは、1つまたは複数の搬送動作のうちの少なくとも1つのそれぞれの開始ロケーションからそれぞれの宛先ロケーションまで原子オブジェクト結晶をたどる。
【0040】
例示的な実施形態では、1つまたは複数の搬送動作のうちの少なくとも1つは、少なくとも第1の搬送動作と第2の搬送動作とを含み、第1の搬送動作は、第1の原子オブジェクト結晶が位置する第1の電位井戸を第1の開始ロケーションから第1の宛先ロケーションに移動させることを含み、第2の搬送動作は、第2の原子オブジェクト結晶が位置する第2の電位井戸を第2の開始ロケーションから第2の宛先ロケーションに移動させることを含み、印加される波形は、(a)第1の電位井戸が第1の開始ロケーションから第1の宛先ロケーションに移動するにつれて、第1の電位井戸とコロケートされた電位内に第1の勾配を引き起こすように構成された少なくとも1つの特定のモードのシム波形と、(b)第2の電位井戸が第2の開始ロケーションから第2の宛先ロケーションに移動するにつれて、第2の電位井戸とコロケートされた電位内に第2の勾配を引き起こすように構成された少なくとも1つの特定のモードのシム波形とを含む。
【0041】
例示的な実施形態では、第1の勾配は、第2の原子オブジェクト結晶のロケーションにおいて実質的にゼロであり、第2の勾配は、第1の原子オブジェクト結晶のロケーションにおいて実質的にゼロである。
【0042】
例示的な実施形態では、第1の電位井戸は第1の軸周波数を定め、第2の電位井戸は第2の軸周波数を定め、第1の軸周波数および第2の軸周波数は0.05から5MHzだけ離隔されている。
【0043】
例示的な実施形態では、それぞれの特定のモードのシム波形は、各々、それぞれの原子オブジェクト結晶が位置する特定の原子オブジェクト閉じ込め装置のロケーションにおいて(a)搬送動作または(b)電位井戸のうちの少なくとも1つに対応する、それぞれの軸周波数に関連付けられるかまたはその軸周波数によってパラメータ化される。
【0044】
例示的な実施形態では、それぞれの特定のモードのシム波形は、各々、それぞれの運動モード周波数、それぞれの運動モード振幅、およびそれぞれの位相によってパラメータ化される。
【0045】
別の態様によれば、原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められた原子オブジェクト結晶の運動モードの脱励起を引き起こす、かつ/または制御するように構成された装置が提供される。例示的な実施形態では、この装置は、少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータ実行可能命令を記憶するメモリとを備える。コンピュータ実行可能命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、装置に少なくとも部分的に並行して実施されるべき1つまたは複数の搬送動作を少なくとも識別させるように構成される。1つまたは複数の搬送動作の各搬送動作は、それぞれの原子オブジェクト結晶をそれぞれの開始ロケーションからそれぞれの宛先ロケーションに移動させることに対応し、開始ロケーションおよび宛先ロケーションは、原子オブジェクト閉じ込め装置内のロケーションである。コンピュータ実行可能命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、装置に1つまたは複数の搬送動作のうちの少なくとも1つのためのそれぞれのシム波形を少なくとも判定させ、各搬送動作のためのそれぞれの搬送波形を判定し、それぞれのシム波形およびそれぞれの搬送波形のアグリゲーションに基づいて、印加される波形を判定し、1つまたは複数の電圧源を制御して、印加される波形による波形電圧信号を原子オブジェクト閉じ込め装置の電極のアレイの電極に印加させるようにさらに構成される。印加される波形の電極のアレイへの印加は、1つまたは複数の搬送動作の各々をそれぞれの原子オブジェクト結晶に対して実施させ、1つまたは複数の搬送動作のうちの少なくとも1つに対応する、それぞれの原子オブジェクト結晶の少なくとも1つのコヒーレントな運動モードを脱励起させる。
【0046】
例示的な実施形態では、この装置は、量子コンピュータのコントローラである。
【0047】
例示的な実施形態では、それぞれのシム波形は、2つ以上の特定のモードのシム波形のアグリゲーションであり、2つ以上の特定のモードのシム波形の各々は、それぞれの原子オブジェクト結晶の異なるコヒーレントな運動モードに対応する。
【0048】
例示的な実施形態では、それぞれのシム波形は、少なくとも(a)それぞれの原子オブジェクト結晶の第1のコヒーレントな運動モードに対応する第1の特定のモードのシム波形および(b)それぞれの原子オブジェクト結晶の第2のコヒーレントな運動モードに対応する第2の特定のモードのシム波形のアグリゲーションであり、第1のコヒーレントな運動モードは第1の運動周波数によって特徴付けられ、第2のコヒーレントな運動モードは第2の運動周波数によって特徴付けられ、第1の運動周波数および第2の運動周波数は異なる。
【0049】
例示的な実施形態では、第1のコヒーレントな運動モードは質量中心モードであり、第2のコヒーレントな運動モードは伸縮モードである。
【0050】
例示的な実施形態では、印加される波形は、1つまたは複数の搬送動作を実施させ、少なくとも1つの搬送動作に対応する、それぞれの原子オブジェクト結晶が特定の原子オブジェクト閉じ込め装置内に位置する、原子オブジェクト閉じ込め装置の第1のロケーションにおいて電位内に勾配を引き起こすために、原子オブジェクト閉じ込め装置の電極のアレイに印加されるべき一連の電圧を含む。
【0051】
例示的な実施形態では、第1のロケーションは、1つまたは複数の搬送動作のうちの少なくとも1つのそれぞれの開始ロケーションからそれぞれの宛先ロケーションまで原子オブジェクト結晶をたどる。
【0052】
例示的な実施形態では、1つまたは複数の搬送動作のうちの少なくとも1つは、少なくとも第1の搬送動作と第2の搬送動作とを含み、第1の搬送動作は、第1の原子オブジェクト結晶が位置する第1の電位井戸を第1の開始ロケーションから第1の宛先ロケーションに移動させることを含み、第2の搬送動作は、第2の原子オブジェクト結晶が位置する第2の電位井戸を第2の開始ロケーションから第2の宛先ロケーションに移動させることを含み、印加される波形は、(a)第1の電位井戸が第1の開始ロケーションから第1の宛先ロケーションに移動するにつれて、第1の電位井戸とコロケートされた電位内に第1の勾配を引き起こすように構成された少なくとも1つの特定のモードのシム波形と、(b)第2の電位井戸が第2の開始ロケーションから第2の宛先ロケーションに移動するにつれて、第2の電位井戸とコロケートされた電位内に第2の勾配を引き起こすように構成された少なくとも1つの特定のモードのシム波形とを含む。
【0053】
例示的な実施形態では、第1の勾配は、第2の原子オブジェクト結晶のロケーションにおいて実質的にゼロであり、第2の勾配は、第1の原子オブジェクト結晶のロケーションにおいて実質的にゼロである。
【0054】
例示的な実施形態では、第1の電位井戸は第1の軸周波数を定め、第2の電位井戸は第2の軸周波数を定め、第1の軸周波数および第2の軸周波数は0.05から5MHzだけ離隔されている。
【0055】
例示的な実施形態では、それぞれの特定のモードのシム波形は、各々、それぞれの原子オブジェクト結晶が位置する特定の原子オブジェクト閉じ込め装置のロケーションにおける(a)搬送動作または(b)電位井戸のうちの少なくとも1つに対応する、それぞれの軸周波数に関連付けられるか、またはその軸周波数によってパラメータ化される。
【0056】
例示的な実施形態では、それぞれの特定のモードのシム波形は、各々、それぞれの運動モード周波数、それぞれの運動モード振幅、およびそれぞれの位相によってパラメータ化される。
【0057】
さらに別の態様によれば、システムが提供される。例示的な実施形態では、このシステムは、1つまたは複数の原子オブジェクト結晶をその中に閉じ込めるように構成された原子オブジェクト閉じ込め装置とコントローラとを備える。コントローラは、少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータ実行可能命令を記憶したメモリとを備え、コンピュータ実行可能命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、コントローラに、少なくとも部分的に並行して実施されるべき1つまたは複数の搬送動作を少なくとも識別させるように構成される。1つまたは複数の搬送動作の各搬送動作は、それぞれの原子オブジェクト結晶をそれぞれの開始ロケーションからそれぞれの宛先ロケーションに移動させることに対応し、開始ロケーションおよび宛先ロケーションは、原子オブジェクト閉じ込め装置内のロケーションである。コンピュータ実行可能命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、コントローラに1つまたは複数の搬送動作のうちの少なくとも1つのためのそれぞれのシム波形を少なくとも判定させ、各搬送動作のためのそれぞれの搬送波形を判定し、それぞれのシム波形およびそれぞれの搬送波形のアグリゲーションに基づいて、印加される波形を判定し、1つまたは複数の電圧源を制御して、印加される波形による波形電圧信号を原子オブジェクト閉じ込め装置の電極のアレイの電極に印加させるようにさらに構成される。印加される波形の電極のアレイへの印加は、1つまたは複数の搬送動作の各々をそれぞれの原子オブジェクト結晶に対して実施させ、1つまたは複数の搬送動作のうちの少なくとも1つに対応する、それぞれの原子オブジェクト結晶の少なくとも1つのコヒーレントな運動モードを脱励起させる。
【0058】
例示的な実施形態では、このシステムはQCCD量子コンピュータである。
【0059】
例示的な実施形態では、それぞれのシム波形は、2つ以上の特定のモードのシム波形のアグリゲーションであり、2つ以上の特定のモードのシム波形の各々は、それぞれの原子オブジェクト結晶の異なるコヒーレントな運動モードに対応する。
【0060】
例示的な実施形態では、それぞれのシム波形は、少なくとも(a)それぞれの原子オブジェクト結晶の第1のコヒーレントな運動モードに対応する第1の特定のモードのシム波形および(b)それぞれの原子オブジェクト結晶の第2のコヒーレントな運動モードに対応する第2の特定のモードのシム波形のアグリゲーションであり、第1のコヒーレントな運動モードは第1の運動周波数によって特徴付けられ、第2のコヒーレントな運動モードは第2の運動周波数によって特徴付けられ、第1の運動周波数および第2の運動周波数は異なる。
【0061】
例示的な実施形態では、第1のコヒーレントな運動モードは質量中心モードであり、第2のコヒーレントな運動モードは伸縮モードである。
【0062】
例示的な実施形態では、印加される波形は、1つまたは複数の搬送動作を実施させ、少なくとも1つの搬送動作に対応する、それぞれの原子オブジェクト結晶が特定の原子オブジェクト閉じ込め装置内に位置する、原子オブジェクト閉じ込め装置の第1のロケーションにおいて電位内に勾配を引き起こすために、原子オブジェクト閉じ込め装置の電極のアレイに印加されるべき一連の電圧を含む。
【0063】
例示的な実施形態では、第1のロケーションは、1つまたは複数の搬送動作のうちの少なくとも1つのそれぞれの開始ロケーションからそれぞれの宛先ロケーションまで原子オブジェクト結晶をたどる。
【0064】
例示的な実施形態では、1つまたは複数の搬送動作のうちの少なくとも1つは、少なくとも第1の搬送動作と第2の搬送動作とを含み、第1の搬送動作は、第1の原子オブジェクト結晶が位置する第1の電位井戸を第1の開始ロケーションから第1の宛先ロケーションに移動させることを含み、第2の搬送動作は、第2の原子オブジェクト結晶が位置する第2の電位井戸を第2の開始ロケーションから第2の宛先ロケーションに移動させることを含み、印加される波形は、(a)第1の電位井戸が第1の開始ロケーションから第1の宛先ロケーションに移動するにつれて、第1の電位井戸とコロケートされた電位内に第1の勾配を引き起こすように構成された少なくとも1つの特定のモードのシム波形と、(b)第2の電位井戸が第2の開始ロケーションから第2の宛先ロケーションに移動するにつれて、第2の電位井戸とコロケートされた電位内に第2の勾配を引き起こすように構成された少なくとも1つの特定のモードのシム波形とを含む。
【0065】
例示的な実施形態では、第1の勾配は、第2の原子オブジェクト結晶のロケーションにおいて実質的にゼロであり、第2の勾配は、第1の原子オブジェクト結晶のロケーションにおいて実質的にゼロである。
【0066】
例示的な実施形態では、第1の電位井戸は第1の軸周波数を定め、第2の電位井戸は第2の軸周波数を定め、第1の軸周波数および第2の軸周波数は0.05から5MHzだけ離隔されている。
【0067】
例示的な実施形態では、それぞれの特定のモードのシム波形は、各々、それぞれの原子オブジェクト結晶が位置する特定の原子オブジェクト閉じ込め装置のロケーションにおける(a)搬送動作または(b)電位井戸のうちの少なくとも1つに対応する、それぞれの軸周波数に関連付けられるか、またはその軸周波数によってパラメータ化される。
【0068】
例示的な実施形態では、それぞれの特定のモードのシム波形は、各々、それぞれの運動モード周波数、それぞれの運動モード振幅、およびそれぞれの位相によってパラメータ化される。
【0069】
別の態様によれば、原子オブジェクト閉じ込め装置内の異なるロケーションにおいて少なくとも部分的に並行して実施される脱励起動作間の寄生的クロストーク(parasitic cross-talk)を低減するための方法が提供される。例示的な実施形態では、この方法は、原子オブジェクト閉じ込め装置内の第1のロケーションにおいて実施されるべき第1の脱励起動作および原子オブジェクト閉じ込め装置内の第2のロケーションにおいて実施されるべき第2の脱励起動作を判定するステップと、第1の軸周波数を第1のロケーションに位置する第1の電位井戸に割り当て、第2の軸周波数を第2のロケーションに位置する第2の電位井戸に割り当てるステップであって、第1の軸周波数および第2の軸周波数が0.05から5MHzだけ互いと離隔されている、ステップと、第1の軸周波数に対応する第1のシム波形および第2の軸周波数に対応する第2のシム波形を判定するステップと、1つまたは複数の電圧源を制御して、第1の電位井戸を第1の軸周波数によって特徴付させ、第2の電位井戸を第2の軸周波数によって特徴付けさせ、第1の脱励起動作を第1のシム波形に基づいて第1のロケーションにおいて実施させ、第2の脱励起動作を第2のシム波形に基づいて第2のロケーションにおいて実施させるために、それぞれの波形電圧信号を原子オブジェクト閉じ込め装置の電極アレイの電極に印加させるステップとを含む。
【0070】
例示的な実施形態では、この方法は、量子コンピュータのコントローラによって実施される。
【0071】
別の態様によれば、原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められた原子オブジェクト結晶の運動モードの脱励起を引き起こす、かつ/または制御するように構成された装置が提供される。例示的な実施形態では、この装置は、少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータ実行可能命令を記憶したメモリとを備える。コンピュータ実行可能命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、装置に原子オブジェクト閉じ込め装置内の第1のロケーションにおいて実施されるべき第1の脱励起動作および原子オブジェクト閉じ込め装置内の第2のロケーションにおいて実施されるべき第2の脱励起動作を少なくとも判定させることと、第1の軸周波数を第1のロケーションに位置する第1の電位井戸に割り当て、第2の軸周波数を第2のロケーションに位置する第2の電位井戸に割り当てることであって、第1の軸周波数および第2の軸周波数が0.05から5MHzだけ互いと離隔されている、ことと、第1の軸周波数に対応する第1のシム波形および第2の軸周波数に対応する第2のシム波形を判定することと、1つまたは複数の電圧源を制御して、第1の電位井戸を第1の軸周波数によって特徴付けさせ、第2の電位井戸を第2の軸周波数によって特徴付けさせ、第1の脱励起動作を第1のシム波形に基づいて第1のロケーションにおいて実施させ、第2の脱励起動作を第2のシム波形に基づいて第2のロケーションにおいて実施させるために、それぞれの波形電圧信号を原子オブジェクト閉じ込め装置の電極アレイの電極に印加させることとを行うように構成される。
【0072】
例示的な実施形態では、この装置は、量子コンピュータのコントローラである。
【0073】
さらに別の態様によれば、システムが提供される。例示的な実施形態では、このシステムは、1つまたは複数の原子オブジェクト結晶をその中に閉じ込めるように構成された原子オブジェクト閉じ込め装置とコントローラとを備える。コントローラは、少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータ実行可能命令を記憶したメモリとを備え、コンピュータ実行可能命令は、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、コントローラに、原子オブジェクト閉じ込め装置内の第1のロケーションにおいて実施されるべき第1の脱励起動作および原子オブジェクト閉じ込め装置内の第2のロケーションにおいて実施されるべき第2の脱励起動作を少なくとも判定させることと、第1の軸周波数を第1のロケーションに位置する第1の電位井戸に割り当て、第2の軸周波数を第2のロケーションに位置する第2の電位井戸に割り当てることであって、第1の軸周波数および第2の軸周波数が0.05から5MHzだけ互いと離隔されている、ことと、第1の軸周波数に対応する第1のシム波形および第2の軸周波数に対応する第2のシム波形を判定することと、1つまたは複数の電圧源を制御して、第1の電位井戸を第1の軸周波数によって特徴付けさせ、第2の電位井戸を第2の軸周波数によって特徴付けさせ、第1の脱励起動作を第1のシム波形に基づいて第1のロケーションにおいて実施させ、第2の脱励起動作を第2のシム波形に基づいて第2のロケーションにおいて実施させるために、それぞれの波形電圧信号を原子オブジェクト閉じ込め装置の電極アレイの電極に印加させることとを行うように構成される。
【0074】
例示的な実施形態では、このシステムはQCCD量子コンピュータである。
【0075】
このように本発明を一般的に説明してきたが、次に、必ずしも一定の尺度で描かれているとは限らない添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】例示的な実施形態による、例示的な原子オブジェクト量子コンピュータのブロック図である。
図2】例示的な実施形態による、原子オブジェクト閉じ込め装置の一部分の中の2つの原子オブジェクト結晶を示すブロック図である。
図3】例示的な実施形態による、コヒーレントな質量中心運動モードで発振している原子オブジェクト結晶と、対応する特定のモードのシム波形の印加の結果として、原子オブジェクト結晶内に与えられる力とを示す概略図である。
図4】例示的な実施形態による、シム波形較正を実施する様々なプロセス、手順、および/または動作を示すフローチャートである。
図5】例示的な実施形態による、量子計算のシム波形実施を適用する様々なプロセス、手順、および/または動作を示すフローチャートである。
図6】例示的な実施形態による、原子オブジェクト閉じ込め装置の複数のエリアに同時に印加される脱励起信号間の寄生的クロストークを低減する様々なプロセス、手順、およびまたは動作を示すフローチャートである。
図7】例示的な実施形態による、その中に原子オブジェクトを閉じ込めるように構成された原子オブジェクト閉じ込め装置を備える量子コンピュータの例示的なコントローラの概略図である。
図8】例示的な実施形態に従って使用され得る量子コンピュータシステムの例示的なコンピューティングエンティティの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
本発明の実施形態のすべてではないが、いくつかが示されている添付の図面を参照しながら、本発明について以下でより十分に説明する。実際には、本発明は、多くの異なる形態で具現され得、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように提供される。「または(or)」(または「/」とも示される)という用語は、別段に表示がない限り、本明細書において代替的な意味と接続的な意味の両方で使用される。「例示的な(illustrative)」および「例示的な(exemplary)」という用語は、品質レベルの表示を伴わない例として使用される。「概して」および「約」という用語は、別段の表示がない限り、適用可能な工学および/もしくは製造公差内ならびに/またはユーザ測定能力内であることを指す。全体を通じて、同様の番号は同様の要素を指す。
【0078】
様々なシナリオでは、原子オブジェクトは、原子オブジェクト閉じ込め装置内に閉じ込められる。様々な実施形態では、原子オブジェクト閉じ込め装置は、表面イオントラップ、ポールイオントラップなど、イオントラップである。様々な実施形態では、原子オブジェクトは、イオン、原子、イオン分子または中性分子などである。様々な実施形態では、原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められた原子オブジェクトは、原子オブジェクト結晶にされる。たとえば、原子オブジェクト結晶は、2つ以上の原子オブジェクトを含む。例示的な実施形態では、原子オブジェクト結晶は、4つの原子オブジェクトを含む。例示的な実施形態では、原子オブジェクト結晶の第1の成分は、原子オブジェクト結晶用の共同冷却方式(sympathetic cooling scheme)において使用するための冷却イオンである。例示的な実施形態では、原子オブジェクト結晶の第2の成分は、量子コンピュータの量子ビットとして使用するための量子ビットイオンである。様々な実施形態では、原子オブジェクト結晶の第1の成分および原子オブジェクト結晶の第2の成分は、適用例に応じて、同じ原子タイプのものまたは異なる原子タイプのものであってよい。本明細書で使用する、原子オブジェクトおよび/または原子オブジェクト結晶の成分の原子タイプは、原子オブジェクトおよび/または原子オブジェクト結晶の成分の化学元素、原子番号、原子/イオン種などのタイプを指す。例示的な実施形態では、原子オブジェクト結晶は、2つの第1の成分(たとえば、第1の原子タイプの2つのイオン)と2つの第2の成分(たとえば、第2の原子タイプの2つのイオン)とを含む。
【0079】
様々な実施形態では、原子オブジェクト閉じ込め装置内に閉じ込められた原子オブジェクトは、実験、制御された量子状態進化、量子計算などを実施するために使用される。様々な実施形態では、原子オブジェクト閉じ込め装置内に閉じ込められた原子オブジェクトが実験、制御された量子状態進化、量子計算などを実施するために使用されるために、原子オブジェクトは、低温である、かつ/または原子オブジェクトおよび/またはその成分に対する運動基底状態近くまで冷却される必要がある。たとえば、原子オブジェクト(たとえば、量子ビットイオン)が実験、制御された量子状態進化、量子計算などを実施するために使用され得るように、原子オブジェクトがそれらの運動基底状態にあるように、原子オブジェクトおよび/または原子オブジェクト結晶の運動状態は、脱励起される必要がある。
【0080】
様々なシナリオでは、実験、制御された量子状態進化、量子計算などの実施中、原子オブジェクトおよび/または原子オブジェクト結晶は、原子オブジェクト閉じ込め装置内のそれぞれの開始ロケーションから原子オブジェクト閉じ込め装置内のそれぞれの宛先ロケーションに搬送され得る。そのような搬送動作中、原子オブジェクトおよび/または原子オブジェクト結晶がもはやそれらの運動基底状態ではなくなるように、原子オブジェクトおよび/または原子オブジェクト結晶は励起される。従来、レーザー冷却は、原子オブジェクトおよび/またはその成分の運動エネルギーを低減するために使用される。しかしながら、レーザー冷却は、実験、制御された量子状態進化、量子演算などの実施中に実行される様々な他のプロセスと比較して遅いプロセスである。たとえば、搬送動作および冷却動作を実施するために必要とされる時間は、従来、QCCD量子コンピュータの計算速度における制限要因とみなされる。その上、搬送動作の実施後に原子オブジェクト結晶を冷却するために必要とされるかなりの時間量は、QCCD量子コンピュータによって実施され得る量子回路および/または量子プログラムの深度を制限し、メモリエラーの一因となり得る。したがって、原子オブジェクト結晶の運動エネルギーをどのように迅速かつ効率的に低減させ、原子オブジェクト結晶の運動状態を脱励起させるかについて、技術的課題が存在する。
【0081】
2つの原子オブジェクト(たとえば、冷却材イオンおよび量子ビットイオン)を含む原子オブジェクト結晶は、原子オブジェクト結晶の質量中心(COM:center-of-mass)が発振するように、2つの原子オブジェクト間の距離が実質的に一定にとどまる方法で2つの原子オブジェクトが発振する、質量中心モードで発振し得る。2つの原子オブジェクトを含む原子オブジェクト結晶は、2つの原子オブジェクト間の距離が周期的に伸縮する伸縮モードで発振することも可能である。加えて、原子オブジェクト結晶は、異なる運動周波数、運動振幅、および/または位相を有し得るCOMモードおよび/または伸縮モードの重ね合わせで発振し得る。たとえば、原子オブジェクト結晶は、原子オブジェクト結晶の運動がCOM周波数によって特徴付けられる成分と伸縮周波数によって特徴付けられる成分とを含むように、COM周波数によって特徴付けられるCOMモードおよび伸縮周波数によって特徴付けられる伸縮モードの重ね合わせで発振し得る。特に、原子オブジェクト結晶の成分の電荷質量比が異なる場合、追加の運動モードおよびそれらの重ね合わせも可能である。したがって、運動モードのこれらの重ね合わせの脱励起は、技術的課題を提示する。
【0082】
脱励起されるべき原子オブジェクト結晶が原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められた複数の原子オブジェクト結晶のうちの1つであるとき、追加の技術的課題が提示される。そのようなシナリオでは、やはり原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められている他の原子オブジェクト結晶のうちのいずれも同時に励起させずに、特定の原子オブジェクト結晶を脱励起させることが望まれる。2つ以上の脱励起動作を少なくとも部分的に並行して実施する(たとえば、半同時にかつ/または脱励起動作の実施が時間的に少なくとも部分的に重複する場合)ことも望まれることがある。したがって、脱励起動作の効果をどのように局在化するかについて、技術的課題が存在する。
【0083】
様々な実施形態は、原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められた原子オブジェクト結晶のコヒーレントな運動モードの脱励起に関するこれらのおよび他の技術的課題に対する技術的解決策を提供する。たとえば、様々な実施形態は、モード固有のおよび/またはマルチモードのシム波形を提供する。シム波形は、一連の電圧を含む。一連の電圧は、複数の時間ステップにおいて原子オブジェクト閉じ込め装置の電極アレイの各電極および/または電極のサブセットに印加されるべきそれぞれの電圧を含む。一連の電圧のそれぞれの電圧が一連の電圧によって指定された時間順シーケンスで原子オブジェクト閉じ込め装置の電極アレイに印加されると、時間とともに展開する電位勾配が脱励起されるべき原子オブジェクト結晶のロケーションにおいて形成される。電位勾配は、原子オブジェクト結晶(および/またはその成分)の発振運動(oscillatory motion)を相殺する力を原子オブジェクト結晶(および/またはその成分)に与えるように構成される。
【0084】
様々な実施形態では、モード固有のおよび/またはマルチモードのシム波形は、原子オブジェクト閉じ込め装置内の特定のロケーションにおいて得られた電位勾配を局在化するように構成される。たとえば、モード固有のおよび/またはマルチモードのシム波形は、他の近くの原子オブジェクト結晶および/または原子オブジェクト閉じ込め装置内の他の原子オブジェクト結晶に影響を及ぼさずに、得られた電位勾配のロケーションがターゲット原子オブジェクト結晶のロケーションにおいて局在化されるように構成され得る。様々な実施形態では、モード固有のおよび/またはマルチモードのシム波形は、脱励起動作が原子オブジェクト結晶に対する搬送動作の実施と少なくとも部分的に並行して(たとえば、半同時にかつ/または動作の実施が時間的に少なくとも部分的に重複する場合)原子オブジェクト結晶に対して実施され得るように、得られた電位勾配のロケーションが非一定であり得るように構成され得る。たとえば、脱励起動作は、原子オブジェクト結晶の搬送および冷却を実施するために必要とされる時間をさらに低減するために、原子オブジェクト結晶が搬送されている間に原子オブジェクト結晶に対して実施され得る。
【0085】
その上、様々な実施形態は、複数の運動モードの脱励起を同時に引き起こすように構成されているマルチモードのシム波形を提供する。たとえば、マルチモードのシム波形は、得られた電位勾配およびその時間発展がCOMモード、伸縮モード、および/または他の運動モードを同時に脱励起させるように構成され得る。様々な実施形態では、原子オブジェクトおよび/または原子オブジェクトの結晶は、線形搬送(たとえば、線形閉じ込め領域または閉じ込め装置の脚部に沿って搬送される)、スプリット動作(たとえば、最初に2つ以上の原子オブジェクトまたは原子オブジェクト結晶が1つの電位井戸内に配設されていた、かつスプリット動作の終了時に、原子オブジェクトまたは原子オブジェクト結晶が別個の電位井戸内に配設されているように、2つ以上の原子オブジェクトまたは原子オブジェクト結晶が互いと分離されているとき)など、搬送動作の実施中かつ/またはその後、シム波形の閉じ込め装置のそれぞれの電極への印加を介して脱励起される。様々な実施形態の以下の説明に基づいて当業者に明らかになるように、様々な他の技術的利点および改善が様々な実施形態によって提供される。
【0086】
例示的な量子コンピュータシステム
原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められた原子オブジェクトおよび/または原子オブジェクト結晶の運動モードの脱励起は、多種多様な文脈で、かつ/または多種多様な適用例に対して実施され得る。1つの例示的な文脈は、量子電荷結合デバイス(QCCD)ベースの量子演算である。図1は、例示的な量子コンピュータシステム100のブロック図を提供する。様々な実施形態では、量子コンピュータシステム100は、コンピューティングエンティティ10と量子コンピュータ110とを備える。
【0087】
様々な実施形態では、量子コンピュータ110は、コントローラ30と、それによって原子オブジェクトを閉じ込めた原子オブジェクト閉じ込め装置50を封入した極低温および/または真空室40と、1つまたは複数の操作源(manipulation sources)64(たとえば、64A、64B、64C)とを備える。例示的な実施形態では、1つまたは複数の操作源64は、1つまたは複数のレーザー(たとえば、光レーザー、マイクロ波源、および/またはメーサーなど)または別の操作源を含み得る。様々な実施形態では、1つまたは複数の操作源64は、装置50内の1つまたは複数の原子オブジェクトの制御された量子状態進化を操作および/または引き起こすように構成される。たとえば、第1の操作源64Aは、第1の操作信号を生成および/または提供するように構成され、第2の操作源64Bは、第2の操作信号を生成および/または提供するように構成され、第1の操作信号および第2の操作信号は、原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められた原子オブジェクトを一括してレーザー冷却すること、1つまたは複数の原子オブジェクトに対して量子論理ゲートを実施すること、1つまたは複数の原子オブジェクトに対する読み動作を実施することなどを行うように構成される。
【0088】
様々な実施形態では、原子オブジェクト閉じ込め装置50は、表面イオントラップ、ポールイオントラップなど、イオントラップである。様々な実施形態では、原子オブジェクトは、イオン、原子、中性および/またはイオン分子などである。
【0089】
様々な実施形態では、原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められた原子オブジェクトは、原子オブジェクト結晶にされる。たとえば、原子オブジェクト結晶は2つ以上の原子オブジェクトを含む。例示的な実施形態では、原子オブジェクト結晶の第1の成分は、原子オブジェクト結晶用の共同冷却方式において使用するための冷却材イオンである。例示的な実施形態では、原子オブジェクト結晶の第2の成分は、量子コンピュータの量子ビットとして使用するための量子ビットイオンである。様々な実施形態では、原子オブジェクト結晶の第1の成分および原子オブジェクト結晶の第2の成分は、適用例に応じて、同じ原子タイプまたは異なる原子タイプのものであってよい。本明細書で使用する、原子オブジェクトおよび/または原子オブジェクト結晶の成分の原子タイプは、原子オブジェクトおよび/または原子オブジェクト結晶の成分の化学元素、原子番号、原子/イオン種などのタイプを指す。たとえば、例示的な実施形態では、原子オブジェクト結晶は、異なる電荷質量比を有する2つの原子オブジェクトを含む。
【0090】
例示的な実施形態では、1つまたは複数の操作源64は、各々、対応するビーム経路66(たとえば、66A、66B、66C)を介して、操作信号(たとえば、レーザービームなど)を原子オブジェクト閉じ込め装置50の1つまたは複数の領域に提供する。様々な実施形態では、少なくとも1つのビーム経路66は、ビーム経路66を介して装置50に提供されている操作信号を変調するように構成された変調器を備える。様々な実施形態では、操作源64、変調器、および/または量子コンピュータ110の他の構成要素は、コントローラ30によって制御される。
【0091】
様々な実施形態では、量子コンピュータ110は、1つまたは複数の磁場生成器70(たとえば、70A、70B)を備える。たとえば、磁場生成器は、極低温および/または真空室40内に配設された内部磁場生成器70Aおよび/または極低温および/または真空室40の外部に配設された外部磁場生成器70Bであってよい。様々な実施形態では、磁場生成器70は、永久磁石、ヘルムホルツコイル、電磁石などである。様々な実施形態では、磁場生成器70は、原子オブジェクト閉じ込め装置50の1つまたは複数の領域内に特定の大きさおよび特定の磁場方向を有する磁場を原子オブジェクト閉じ込め装置50の1つまたは複数の領域内に生成するように構成される。
【0092】
様々な実施形態では、量子コンピュータ110は、電気信号を原子オブジェクト閉じ込め装置の電極アレイの電極に、かつ/または原子オブジェクト閉じ込め装置の無線周波数(RF)レールおよび/または電極に提供するように構成された電圧源80を備える。たとえば、電圧源80は、様々な電気信号を生成して提供するように構成された任意波形生成器(AWG: arbitrary wave generators)、デジタルアナログ変換器(DAC)などを備え得る。例示的な実施形態では、電圧源80は、原子オブジェクト閉じ込め装置50の対応する電位生成要素(たとえば、電極アレイの電極、RFレール)に電気的に結合される。たとえば、電圧源80は、周期的電圧信号をRFレールに提供し、1つまたは複数の搬送波形および/またはシム波形による波形電圧信号を原子オブジェクト閉じ込め装置の電極アレイの電極に提供するように構成される。様々な実施形態では、電圧源80は、コントローラ30のそれぞれのドライバコントローラ要素によって制御される。
【0093】
様々な実施形態では、量子コンピュータ110は、原子オブジェクト閉じ込め装置50によって閉じ込められた原子オブジェクトによって生成および/または散乱された光子を収集および/または検出するように構成された集光システム90を備える。集光システム90は、1つまたは複数の光学素子(たとえば、レンズ、ミラー、導波路、光ファイバーケーブルなど)と1つまたは複数の光検出器とを備え得る。様々な実施形態では、光検出器は、フォトダイオード、光電子倍増管、電荷結合デバイス(CCD)センサー、相補型金属酸化膜半導体(CMOS:complementary metal oxide semiconductor)センサー、微小電気機械システム(MEMS:Micro-Electro-Mechanical Systems)センサー、および/または量子コンピュータ110の光および/または光の周波数に敏感な他の光検出器であってよい。様々な実施形態では、検出器は、1つまたは複数のA/D変換器725(図7を参照されたい)などを介して量子システムコントローラ30と電子通信していることがある。
【0094】
様々な実施形態では、コントローラ30は、電圧源80、電気信号源、および/または原子オブジェクト閉じ込め装置50および/もしくは原子オブジェクト閉じ込め装置50内の原子オブジェクトの搬送を制御するドライバ、極低温および/または真空室40内の温度および圧力を制御する極低温システムおよび/または真空システム、操作源64、磁場生成器70、ならびに/あるいは低温および/または真空室40内の環境条件(たとえば、温度、湿度、圧力など)を制御し、かつ/または原子オブジェクト閉じ込め装置50内の1つまたは複数の原子オブジェクトの制御された量子状態進化を操作および/または引き起こすように構成された、他のシステムを制御するように構成される。
【0095】
様々な実施形態では、コンピューティングエンティティ10は、ユーザが入力を量子コンピュータ110に(たとえば、コンピューティングエンティティ10のユーザインターフェースを介して)提供し、量子コンピュータ110からの出力の受信、閲覧などを行うことを可能にするように構成される。コンピューティングエンティティ10は、1つまたは複数の有線ネットワークまたはワイヤレスネットワーク20を介して、かつ/または直接有線および/またはワイヤレス通信を介して、量子コンピュータ110のコントローラ30と通信していることがある。例示的な実施形態では、コンピューティングエンティティ10は、情報/データ、量子計算アルゴリズム、量子回路などを、コントローラ30が理解および/または実装することができるコンピューティング言語、実行可能命令、コマンドセットなどに変換すること、構成すること、フォーマットすることなどが可能である。
【0096】
例示的な原子オブジェクト閉じ込め装置
図2は、原子オブジェクト閉じ込め装置50の一部分200の中に閉じ込められた第1の原子オブジェクト結晶220Aおよび第2の原子オブジェクト結晶220Bを示す。例示される実施形態では、第1の原子オブジェクト結晶220Aおよび第2の原子オブジェクト結晶220Bの各々は、第1の原子タイプのものであるそれぞれの第1の成分222と、第2の原子タイプのものである第2の成分224とを備える。様々な実施形態では、第1の原子タイプおよび第2の原子タイプは異なる。たとえば、原子オブジェクト結晶220の第1の成分222は、原子オブジェクト結晶220の第2の成分224とは異なる電荷質量比を有することがある。例示的な実施形態では、第1の成分222は、第1のタイプのイオンであり、第2の成分224は、第2の異なるタイプのイオンである。
【0097】
様々な実施形態では、原子オブジェクト閉じ込め装置50は、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている、2021年8月19日に出願した米国特許出願第63/235,007号、2021年11月23日に出願した米国特許出願第17/533,587号、および/または2021年6月15日に発行された米国特許第11,037,776号によって説明されている原子オブジェクト閉じ込め装置であってよい。
【0098】
図2は、例示的な原子オブジェクト閉じ込め装置50の一部分200の上部概略図を提供する。例示的な原子オブジェクト閉じ込め装置50は、一次元原子オブジェクト閉じ込め装置、二次元原子オブジェクト閉じ込め装置、一次元トラッピングセグメントの二次元(場合によっては、周期的)アレイなどを備える原子オブジェクト閉じ込め装置であってよい。例示的な実施形態では、原子オブジェクト閉じ込め装置50は、複数の原子オブジェクト(たとえば、イオン、原子、中性および/またはイオン分子など)および/またはその中の原子オブジェクト結晶をトラップするように構成された、多次元(たとえば、二次元または三次元)表面イオントラップ、表面ポールトラップなどである。
【0099】
例示的な実施形態では、原子オブジェクト閉じ込め装置50は、原子オブジェクト閉じ込め装置チップの一部および/または原子オブジェクト閉じ込め装置パッケージの一部として製作される。たとえば、原子オブジェクト閉じ込め装置50は、複数の電圧信号(たとえば、周期的電圧信号、波形電圧信号)が、それぞれ、RFレール210と、電極のアレイの電極204とに提供および/または印加され得るように、複数の導線および/または配線付着点(attachment points)を備えるチップ上に形成され得る。
【0100】
例示的な実施形態では、原子オブジェクト閉じ込め装置50は、いくつかの無線周波数(RF)レール210(たとえば、210A、210B)によって少なくとも部分的に定められる。様々な実施形態では、原子オブジェクト閉じ込め装置50は、電極のいくつかのシーケンス202(たとえば、202A、202B、202C)によって少なくとも部分的に定められる。たとえば、電極のシーケンス202は電極204のアレイを形成する。様々な実施形態では、電極204の様々なジオメトリック、配置、レイアウトなどが使用され得る。例示される電極204のジオメトリ、配置、レイアウトなどは、例示のために提供され、様々な実施形態では、原子オブジェクト閉じ込め装置50の意図される適用例に基づいて判定および/または構成されることになる。様々な実施形態では、原子オブジェクト閉じ込め装置50の上面は、平坦化されたトポロジーを有する。たとえば、いくつかのRFレールの各RFレール210の上面および電極のいくつかのシーケンス202の各電極204の上面は、実質的に同一平面上にあり得る。例示的な実施形態では、原子オブジェクト閉じ込め装置50の表面は平面ではなく、そこから原子オブジェクト閉じ込め装置50の「表面」上部の原子オブジェクトの高さが測定される平面が定められる。
【0101】
様々な実施形態では、2つの隣接するかつ/または実質的に並行するRFレール210は、縦方向の間隙215によって互いと分離され(たとえば、絶縁され)得る。たとえば、縦方向の間隙215は、原子オブジェクト閉じ込め装置50内の様々なロケーションにおいて1つまたは複数の原子オブジェクトおよび/または原子オブジェクト結晶220が閉じ込められかつ/またはトラップされ得る、原子オブジェクト閉じ込め装置50の閉じ込めチャネルまたは閉じ込め領域を(一次元または二次元で)定め得る。様々な実施形態では、それによって定められる縦方向の間隙215は、対応する部分および/または脚部の長さに沿って隣接するRFレール210と実質的に並行して延長し得る。例示的な実施形態では、縦方向の間隙215は、絶縁材(たとえば、誘電材料)で少なくとも部分的に充填され得る。様々な実施形態では、誘電材料は、二酸化ケイ素(たとえば、熱酸化を介して形成される)および/または他の誘電および/または絶縁材であってよい。様々な実施形態では、縦方向の間隙は、約40μmから500μmの幅(たとえば、隣接するRFレール210間の距離)を有する。様々な実施形態では、電極の1つまたは複数のシーケンス202Bは、縦方向の間隙215内に配設および/または形成される。
【0102】
様々な実施形態では、原子オブジェクト閉じ込め装置50(および/または、その脚部および/または接合部)は、各々が複数の電極204を含む、電極のいくつかのシーケンス202によって少なくとも部分的に定められ得る。例示的な実施形態では、脚部に関連付けられた、かつ/または脚部を少なくとも部分的に定める、電極の各シーケンス202は、脚部の長さの少なくとも一部分に沿ってそれぞれの脚部を少なくとも部分的に定める1つまたは複数のRFレール210に実質的に並行して延長するように形成される。たとえば、電極の3つのシーケンス202A、202B、202Cは、図2に例示する原子オブジェクト閉じ込め装置50の部分200を少なくとも部分的に定める。電極の3つのシーケンス202の各々は、複数の電極204を含む。様々な実施形態では、各脚部を少なくとも部分的に定める電極のいくつかのシーケンス202は、電極の2つ、3つ、4つ、および/または別の数のシーケンスを含む。例示的な実施形態では、原子オブジェクト閉じ込め装置50は、電極の複数のシーケンス202を備え、電極のいくつかのシーケンスの各々は、原子オブジェクト閉じ込め装置50の脚部および/または接合部を少なくとも部分的に定める。いくつかの実施形態では、電極204の各々は、RFレール210の上面と実質的に同一平面上にある実質的に同一平面上の上面に形成される。
【0103】
例示的な実施形態では、横方向の間隙が近隣のかつ/または隣接する電極204間に存在し得る。例示的な実施形態では、横方向の間隙は、空の区間であってよく、かつ/または近隣のかつ/または隣接する電極204間の電気通信を防ぐために誘電材料で少なくとも部分的に充填されてよい。例示的な実施形態では、近隣のかつ/または隣接する電極204間の横方向の間隙は、約1~10μmの範囲内であってよい。
【0104】
例示的な実施形態では、縦方向の間隙が電極のシーケンス202と近隣のかつ/または隣接するRFレール210との間に存在する。例示的な実施形態では、縦方向の間隙は、電極のシーケンス202の電極204とRFレール210との間の電気通信を防ぐために、誘電および/または絶縁材で少なくとも部分的に充填されてよい。例示的な実施形態では、電極204と近隣のかつ/または隣接するRFレール210との間の縦方向の間隙は、約1~10μmの範囲内であってよい。
【0105】
例示的な実施形態では、いくつかの(たとえば、対の)RFレール210は、TT電極の第2のシーケンス202BがRFレール210間の縦方向のチャネルに沿って延長する状態で、電極の第1のシーケンス202Aと電極の第3のシーケンス202Cの間に形成され得る。たとえば、特定の脚部の電極の各シーケンス202は、特定の脚部の長さの少なくとも一部分に沿って対応するRFレール210に実質的に平行方向に延長し得る。様々な実施形態では、電極204の上面は、RFレール210の上面と実質的に同一平面上にある。
【0106】
様々な実施形態では、周期的電圧信号(たとえば、無線周波数周期性を有する電圧信号)は、原子オブジェクト閉じ込め装置50内に閉じ込められた、かつ/またはトラップされた原子オブジェクトを維持するように働く電場および/または磁場を生成するために、RFレール210に印加され得る。たとえば、特定の脚部を少なくとも部分的に定めるRFレール210は、原子オブジェクト閉じ込め装置50の対応する一次元セグメントおよび/または部分に対して横方向に特定の脚部内に原子オブジェクトを閉じ込める、かつ/またはトラップする電気的な擬ポテンシャルを生成する。たとえば、RFレール210は、周期的電圧信号がそれに印加されると、局所的な擬ポテンシャルヌル(pseudopotential null)を表す、図2において破線212によって例示される、一次元セグメントに沿って原子オブジェクトを閉じ込める、かつ/またはトラップする擬ポテンシャルを生成するように構成される。たとえば、脚部に沿った無線周波数ヌルは、それに沿って原子オブジェクトおよび/または原子オブジェクト結晶220がその脚部の長さの少なくとも一部分に沿って搬送され得る脚部に沿った搬送経路(たとえば、搬送経路232)を定める。
【0107】
様々な実施形態では、電極のアレイ(たとえば、電極のいくつかのシーケンス202によって形成された)の電極204は、電極204が原子オブジェクトおよび/または原子オブジェクト結晶を原子オブジェクト閉じ込め装置50の対応する部分に対する搬送経路に沿って(たとえば、RFヌルに沿って)搬送させる時間依存の電位場を生成するように、それらの電極に波形電圧信号を印加させるように構成される。たとえば、電極204に印加された波形電圧信号によって少なくとも部分的に生成される電場および/または磁場は、それぞれの脚部および/または原子オブジェクト閉じ込め装置50の部分の電極の第2のシーケンス202Bおよび/または縦方向の間隙215の上面上部の電位井戸内の少なくとも1つの原子オブジェクトおよび/または原子オブジェクト結晶をトラップし得る。加えて、電極204に印加された波形電圧信号は、電極の第2のシーケンス202Bおよび/または縦方向の間隙215の上面上位の電位井戸内に閉じ込められたかつ/またはトラップされた原子オブジェクトに、対応する原子オブジェクト閉じ込め装置および/または原子オブジェクト閉じ込め装置の部分に対するRFヌルに実質的に続くかつ/またはRFヌルに沿った軌道および/または搬送経路を通過させ得る。
【0108】
様々な実施形態では、電極204に印加された波形電圧信号およびRFレール210に印加された周期的電圧信号は、導線を介して1つまたは複数の接続されたデバイス(たとえば、図7に示すコントローラ30など)によって制御される。たとえば、コントローラ30は、電圧源80および/または他の電圧ドライバを制御して、電圧源80および/またはドライバに波形電圧信号を電極204に印加させ、原子オブジェクト閉じ込め装置50によってトラップされたかつ/または閉じ込められた、原子オブジェクトを規定の搬送経路に沿って搬送させる、かつ/もしくは規定の位置に保持させる、かつ/または脱励起動作を経験させる、時間依存の電位(たとえば、時間とともに展開する電位)を生成させることができる。
【0109】
少なくとも1つの原子オブジェクトおよび/または原子オブジェクト結晶の原子オブジェクト上の電荷、および/または(たとえば、RFレール210に対する周期的電圧信号および波形電圧信号の電極204への印加を介して生成された)結合された電場および/または磁場の形状および/または大きさなどの要因に応じて、原子オブジェクトは、原子オブジェクト閉じ込め装置50の上面(たとえば、電極204およびRFレール210の同一平面上の上面)上部の特定の距離(たとえば、約20μmから約200μm)に安定し得る。所望の軌道に沿った原子オブジェクトおよび/または原子オブジェクト結晶の遷移の制御にさらに寄与するために、原子オブジェクト閉じ込め装置50は、様々な実施形態では、原子オブジェクト閉じ込め装置50を124ケルビン未満(たとえば、100ケルビン未満、50ケルビン未満、10ケルビン未満、5ケルビン未満など)の温度に冷却することが可能な極低温および/または真空室40内で動作し得る。
【0110】
例示的な脱励起動作
様々な実施形態では、コントローラ30は、量子コンピュータの1つまたは複数の構成要素を制御して、原子オブジェクト閉じ込め装置50によって閉じ込められた1つまたは複数の原子オブジェクト結晶220の運動エネルギーを低減するように構成された脱励起動作を実施することができる。様々な実施形態では、脱励起動作は、1つまたは複数の搬送動作と少なくとも部分的に並行して、かつ/または1つまたは複数の搬送動作と協調的な方法で実施され得る。様々な実施形態では、脱励起動作の実施は、原子オブジェクト結晶220の少なくとも1つの運動モードを少なくとも部分的に脱励起させるために、電力のいくつかのシーケンス202によって形成された電極アレイの電極204にそれぞれの一連の電圧を印加することを含む。様々な実施形態では、搬送動作の実施は、原子オブジェクトおよび/または原子オブジェクト結晶を、搬送経路232に沿って、原子オブジェクト閉じ込め装置50内のそれぞれの開始ロケーション230から原子オブジェクト閉じ込め装置50内のそれぞれの宛先ロケーション234に搬送させるために、電極のいくつかのシーケンス202によって形成された電極アレイの電極204にそれぞれの一連の電圧を印加することを含む。本明細書で使用する、少なくとも部分的に並行してという用語は、少なくとも半/準同時および/または動作の実施が時間的に少なくとも部分的に重複する場合を意味する。たとえば、少なくとも部分的に並行して実施される動作は、例示的な実施形態では、同時に実施され得る。
【0111】
様々な実施形態では、それぞれの一連の電圧は、シミュレーションを使用して代数計算で、かつ/または原子オブジェクト閉じ込め装置50の電極のアレイおよび所望の(時間依存の)電位井戸を生成するためにそれらの電極に印加される必要がある電圧に基づいて実験的に判定される。様々な実施形態では、コントローラ30は、それぞれ、様々な搬送動作および/または脱励起動作を実施するために使用され得る搬送波形および/またはシム波形のライブラリを(たとえば、メモリ710内に)記憶する。
【0112】
様々な実施形態では、コントローラ30は、電圧源80および/またはドライバを制御して、1つまたは複数の原子オブジェクト222、224および/または原子オブジェクト結晶220に1つまたは複数の搬送動作および/または脱励起動作を経験させる原子オブジェクト閉じ込め装置の電極のいくつかのシーケンス202によって形成された電極のアレイの電極204に一連の電圧を印加させることができる。様々な実施形態では、コントローラ30は、1つまたは複数の搬送動作および/または脱励起動作を少なくとも部分的に並行して実施させるように構成される。たとえば、コントローラ30は、印加されるべき1つまたは複数の搬送波形および/またはシム波形を判定し得る。各波形は、各電極204および/または電極のいくつかのシーケンス202によって形成された電極アレイの電極のサブセットに印加されるべき一連の電圧を含む。
【0113】
様々な実施形態では、搬送波形の一連の電圧は、原子オブジェクトおよび/または原子オブジェクト結晶に対して搬送動作を実施させるように構成される。たとえば、電極のアレイに対する搬送波形の一連の電圧の(一連の電圧によって指定された時間順シーケンス内での)印加は、第1の時間において、原子オブジェクト閉じ込め装置内の開始ロケーション230において電位井戸を形成させる。搬送されるべき原子オブジェクト結晶220Aは、第1の時間において開始ロケーション230に位置する。搬送波形の一連の電圧の電極のアレイへの印加は、電位井戸、ならびにその中の原子オブジェクトおよび/または原子オブジェクト結晶が開始ロケーション230から宛先ロケーション234に搬送経路232を通過するように、電位井戸を開始ロケーション230から宛先ロケーション234に移動させる。電位井戸、ならびに原子オブジェクト222、224および/または原子オブジェクト結晶220は、第2の時間において宛先ロケーション234に位置する。
【0114】
同様に、シム波形は一連の電圧を含む。一連の電圧の電圧が一連の電圧によって指定された時間順シーケンス内で電極アレイに印加されると、時間とともに展開する電位勾配が脱励起されることになる原子オブジェクト結晶のロケーションにおいて形成される。電位勾配は、原子オブジェクト結晶(および/またはその成分)の発振運動を相殺する力を原子オブジェクト結晶(および/またはその成分)に与えるように構成される。例示的な実施形態では、電位勾配は、電位井戸ならびに原子オブジェクト222、224および/または原子オブジェクト結晶220とともに搬送経路232に沿って宛先ロケーション234に移動するように構成される。例示的な実施形態では、シム波形は、原子オブジェクト222、224および/または原子オブジェクト結晶220が宛先ロケーション234に到着した後、ある時間期間にわたって(たとえば、第3の時間まで)、電位勾配を宛先ロケーション234において提供させ続ける。例示的な実施形態では、原子オブジェクト222、224および/または原子オブジェクト結晶220が、電位勾配が宛先ロケーション234において提供されている時間期間(たとえば、第2の時間と第3の時間との間の時間の少なくとも一部)と少なくとも部分的に重複する宛先ロケーション234に位置する間、様々なレーザー冷却技法が使用され得る。
【0115】
図3は、原子オブジェクト結晶220のロケーションにおいて生成された電位勾配がCOMモード発振の1つの運動期間にわたって原子オブジェクト結晶229のコヒーレントな運動にどのように影響を及ぼすかの概略図を提供する。破線305は、経時的な原子オブジェクト結晶220のCOMの実質的に一定のロケーションを示す。実線矢印は、様々な時間点における原子オブジェクト結晶の第1の成分222のそれぞれの加速度aおよび原子オブジェクト結晶220の第2の成分224のそれぞれの加速度aを示す。破線矢印は、電位勾配の結果として原子オブジェクト結晶220の第1の成分222が受けるそれぞれの力Fおよび電位勾配の結果として原子オブジェクト結晶220の第2の成分224が受けるそれぞれの力Fを示す。電位勾配は、運動モードの運動周波数に従って時間とともに展開し、その結果、図3において理解できるように、電位勾配の結果として原子オブジェクト結晶220の成分が受ける力F、F(時間の関数である)の方向および大きさは、運動モードで発振している原子オブジェクト結晶の結果として、原子オブジェクト結晶220の成分の加速度a、aの方向および大きさを無効にするように構成される。結果として、電位勾配の結果として原子オブジェクト結晶220の成分が受ける力F、Fは、運動モード発振を削ぐ(たとえば、振幅を低減させる)。これは、より低い運動エネルギー(たとえば、より少ない動的エネルギー(kinetic energy))を有する原子オブジェクト結晶をもたらす。例示的な実施形態では、電位勾配の結果として原子オブジェクト結晶220の成分が受ける力F、Fは、原子オブジェクト結晶220がその運動基底状態にあるように、運動モード発振を除去させる。別の例示的な実施形態では、原子オブジェクト結晶220は、脱励起動作とレーザー冷却演算の組合せを通じてその運動基底状態に達する。
【0116】
様々な実施形態では、様々な動作は少なくとも部分的に並行して実施され得る。たとえば、図2は、各々、第1の時間においてそれぞれの開始ロケーション230に位置する、第1の原子オブジェクト結晶220A.1および第2の原子オブジェクト結晶220B.1を示す。図2は、(第1の時間の後である)第2の時間までに、第1の原子オブジェクト結晶220A.2および第2の原子オブジェクト結晶220B.2が各々、第1の時間と第2の時間との間にそれぞれの搬送経路232を通過させた後に、それぞれの宛先ロケーション234に位置することをさらに示す。たとえば、コントローラ30は、搬送動作を第1の原子オブジェクト結晶220Aおよび第2の原子オブジェクト結晶220Bに対して少なくとも部分的に並行して実施させることができる。
【0117】
加えて、コントローラ30は、第1の時間と(第2の時間と同じかそれ以降である)第3の時間との間に第1の原子オブジェクトに対して脱励起動作を実施させ、かつ/または第1の時間と第3の時間との間に第2の原子オブジェクトに対して脱励起動作を実施させることができる。たとえば、脱励起動作は、それぞれの搬送動作の実施中に励起されたそれぞれの原子オブジェクト結晶の運動モードを脱励起させるように構成され得る。様々なシナリオでは、(たとえば、それぞれの搬送動作における差異(たとえば、搬送経路が原子オブジェクト閉じ込め装置の1つまたは複数の接合部を通過するか否か、搬送経路の長さ、その中でそれぞれの原子オブジェクトが閉じ込められる/トラップされる/搬送されるそれぞれの電位井戸の軸周波数の差異など)、原子オブジェクト結晶間の差異など、により)第1の原子オブジェクト220Aが受ける運動モード励起は第2の原子オブジェクト220Bが受ける運動モード励起とは異なる場合がある。したがって、搬送動作および脱励起動作を実施するために使用される搬送波形およびシム波形は局在化され、その結果、ターゲット原子オブジェクト結晶220のその瞬間のロケーションにおいて電位に影響を及ぼし、原子オブジェクト閉じ込め装置50内の1つまたは複数の他のロケーションにおいて電位に影響を及ぼさない。
【0118】
脱励起動作用のシム波形の例示的な較正
様々な実施形態では、シム波形は、1つまたは複数のパラメータ化された特定のモードのシム波形に少なくとも部分的に基づいて判定される。様々な実施形態では、1つまたは複数のパラメータ化された特定のモードのシム波形の各々に対するそれぞれのパラメータは、較正プロセスを通して判定される。様々な実施形態では、1つまたは複数のパラメータ化された特定のモードのシム波形に対するそれぞれのパラメータは、自動化された方法で判定される。様々な実施形態では、パラメータは、原子オブジェクト閉じ込め装置50およびその電極アレイに固有である。様々な実施形態では、パラメータ化された特定のモードのシム波形のパラメータは、対応する特定の運動モードに対するそれぞれの運動周波数、対応する特定の運動モードに対するそれぞれの運動振幅、および対応する特定の運動モードのための位相を含み、かつ/またはそれらからなる。様々な実施形態では、それぞれの運動周波数、運動振幅、および/または位相は、ターゲット原子オブジェクト結晶をトラップしているかつ/または閉じ込めている電位井戸の軸周波数の関数である。様々な実施形態では、ターゲット原子オブジェクト結晶をトラップしているかつ/または閉じ込めている電位井戸の軸周波数は、パラメータ化された特定のモードのシム波形のパラメータである。
【0119】
図4は、特定の原子オブジェクト閉じ込め装置50に対する特定のモードのシム波形に対するパラメータを判定するための較正プロセス400を実施するための様々なプロセス、手順、動作などを例示するフローチャートを提供する。様々な実施形態では、量子コンピュータ110のコントローラ30は、量子コンピュータ110の1つまたは複数の構成要素を制御して、較正プロセス400のプロセス、手順、動作などを実施する。たとえば、コントローラ30の処理デバイス705(図7を参照されたい)は、コンピュータ可読命令(たとえば、メモリ710内に記憶された)を実行して、コントローラ30の処理デバイス705、メモリ710、ドライバコントローラ要素715、A/D変換器725などに較正プロセス400の様々なプロセス、手順、動作などを実施させることができる。
【0120】
図4のステップ/動作402で開始し、コントローラ30は、搬送動作を実施させる。たとえば、コントローラ30は、原子オブジェクト結晶220に対して搬送動作を実施させる。たとえば、コントローラ30は、原子オブジェクト閉じ込め装置50の電極アレイの電極204に一連の電圧を印加させて、それぞれの原子オブジェクト結晶が搬送経路に沿ってそれぞれの開始ロケーションからそれぞれの宛先ロケーションに搬送されるように、軸周波数によって特徴付けられるかつ/または軸周波数を定める電位井戸を搬送経路に沿ってそれぞれの開始ロケーションからそれぞれの宛先ロケーションに移動させることができる。
【0121】
ステップ/動作404において、コントローラ30は、1つまたは複数の第1の結晶スペクトルをキャプチャする。たとえば、コントローラ30は、原子オブジェクト結晶に対する入射である操作信号を操作源に生成させ、かつ/または提供させる。様々な実施形態では、操作信号は、プローブ周波数を定め、かつ/またはプローブ周波数によって特徴付けられる。たとえば、操作信号は、プローブ周波数のレーザービームであってよい。例示的な実施形態では、操作信号は、固定露光時間にわたる原子オブジェクト結晶に対する入射である。様々な実施形態では、プローブ周波数は、原子オブジェクト結晶の少なくとも1つの成分(たとえば、原子オブジェクトのうちの1つ)のラマン遷移に対応する。原子オブジェクト結晶(および/または、その成分)は、操作信号の少なくとも一部分において散乱し、かつ/または操作信号の少なくとも一部分を吸収し、操作信号の吸収の結果として光を発し得る。この散乱されたかつ/または発せられた光は、第1の結晶スペクトルを形成する。集光システム90は、第1の結晶スペクトルをキャプチャし、第1の結晶スペクトルをコントローラ30に提供する。
【0122】
例示的な実施形態では、ステップ/動作404は、ステップ/動作402の実施の後に実施される。例示的な実施形態では、ステップ/動作404は、ステップ/動作402の実施中に1つまたは複数の時間において実施される。
【0123】
ステップ/動作406において、コントローラ30(および/または、コンピューティングエンティティ10)は、第1の結晶スペクトル内の1つまたは複数の側波帯を識別および/または判定する。たとえば、第1の結晶スペクトルは、プローブ周波数において線を含む。ドップラー効果により、第1の結晶スペクトルはまた、搬送動作によって励起された原子オブジェクト結晶のそれぞれの運動モードのそれぞれの運動周波数だけプローブ周波数から各々が分離されているそれぞれの周波数において、1つまたは複数の側波帯を含む。たとえば、第1の結晶スペクトルは、搬送動作によって励起された原子オブジェクト結晶の運動モードに対応する側波帯を含むことになる。これらの側波帯、それぞれの運動周波数、およびそれぞれの側波帯強度は、様々なスペクトル分析および/または処理技法を介して判定および/または識別され得る。
【0124】
ステップ/動作408において、コントローラ30(および/または、コンピューティングエンティティ10)は、搬送動作によって励起された原子オブジェクト結晶の1つまたは複数の運動モードに対して第1の結晶スペクトルから運動振幅情報および運動周波数情報を判定および/または抽出する。様々な実施形態では、第1の結晶スペクトル内に存在する運動周波数を識別することが原子オブジェクト結晶のどの運動モードが搬送動作によって励起されたかを判定することを可能にするように、原子オブジェクト結晶の様々な運動モードの運動周波数が知られている。様々な実施形態では、それぞれの側波帯の強度は、それぞれの運動モードの運動振幅を判定するために使用される。たとえば、それぞれの側波帯の強度が大きければ大きいほど、それぞれの運動モード内に存在する運動エネルギーも大きくなる。したがって、第1の結晶スペクトルに基づいて判定された運動周波数情報および運動振幅情報は、原子オブジェクト結晶のどの運動モードが搬送動作によって励起されたか、および搬送動作によって励起された原子オブジェクト結晶の運動モードの各々の中にどの程度の運動エネルギーが存在するかを判定することを可能にする。
【0125】
ステップ/動作410において、コントローラ30(および/または、コンピューティングエンティティ10)は、それに対する側波帯が第1の結晶スペクトル内で検出された特定の運動モードに対応する位相パラメータ化されたシム波形を判定する。たとえば、位相パラメータ化されたシム波形は、位相パラメータに基づいて時間的にシフトされ得る一連の電圧を含む。たとえば、位相パラメータ化されたシム波形は、それぞれの運動モードの運動振幅の関数および時間の発振関数(oscillatory function of time)である。たとえば、得られた電位勾配の振幅は、
【数1】
に従って時間的に変調され得、たとえば、式中、ωは、それぞれの運動モードの運動周波数であり、tは、時間を表す変数であり、
【数2】
は、位相パラメータである。したがって、位相パラメータ化されたシム波形は、(原子オブジェクト閉じ込め装置の電極アレイの電極204に印加されると)
【数3】
に従って時間的に変調される原子オブジェクト結晶のロケーションにおいて電位勾配を生成するように構成された一連の電圧である。
【0126】
ステップ/動作412において、コントローラ30は、位相範囲にわたって増分し、第2の結晶スペクトルをキャプチャすると同時に、位相パラメータ化されたシム波形を印加させる。たとえば、コントローラ30は、第1の時間長にわたって位相
【数4】
を用いて、位相パラメータ化されたシム波形を印加させ、次いで、位相
【数5】
に対応する第2の結晶スペクトルをキャプチャし得る。コントローラ30は、次いで、時間の第1の長さにわたって位相
【数6】
を用いて、位相パラメータ化されたシム波形を印加させ、次いで、位相
【数7】
に対応する第2の結晶スペクトルをキャプチャし得る。同様に、コントローラ30は、時間の第1の期間にわたって位相
【数8】
を用いて、位相パラメータ化されたシム波形を印加させ、次いで、位相セット
【数9】
内の各
【数10】
にわたって位相
【数11】
に対応する第2の結晶スペクトルをキャプチャし得る。例示的な実施形態では、nの自然数に対して位相セット
【数12】
である。
【0127】
様々な実施形態では、各第2の結晶スペクトルをキャプチャするために、コントローラ30は、操作源に原子オブジェクト結晶に対する入射である操作信号を生成および/または提供させる。様々な実施形態では、操作信号は、第1の結晶周波数をキャプチャするために使用される同じプローブ周波数を定め、かつ/または同じプローブ周波数によって特徴付けられる。例示的な実施形態では、操作信号は、固定露光時間にわたる原子オブジェクト結晶に対する入射である。操作信号が原子オブジェクト結晶に対する入射である結果として、原子オブジェクト結晶によって散乱される光および/または発せられる光は、集光システム90によってキャプチャされ、(たとえば、特定の位相
【数13】
に対応する)それぞれの第2の結晶スペクトルとしてコントローラ30に提供される。理解されるように、例示的な実施形態では、複数の第2の結晶スペクトルがキャプチャされ、各第2の結晶スペクトルは、それぞれの位相
【数14】
に対応する。
【0128】
様々な実施形態では、ステップ/動作412が実施されている間にステップ/動作402が依然として実施される。様々な実施形態では、ステップ/動作402は、ステップ/動作412の実施中に、再度実施される、かつ/または反復的に実施される。例示的な実施形態では、ステップ/動作412は、搬送動作を反復的に実施するステップと、それぞれの位相
【数15】
に対する位相パラメータ化されたシム波形を印加するステップと、それぞれの位相
【数16】
に対応する、それぞれの第2の結晶スペクトルをキャプチャするステップとを含む。
【0129】
ステップ/動作414において、それに対して、それぞれの対応する第2の結晶スペクトルが、第1の結晶スペクトルおよび/または他の第2の結晶スペクトルと比較して、それぞれの側波帯に対して最も著しい強度低減および/または最小強度を含む、1つまたは複数の位相が判定および/または識別される。たとえば、コントローラ30(および/または、コンピューティングエンティティ10)は、複数の第2の結晶スペクトルを分析および/または処理して、第2の結晶スペクトルのうちのどれがそれぞれの運動モードに対応する、それぞれの側波帯に対する最小強度を含むかを判定する。例示的な実施形態では、第2の結晶スペクトルのうちのどれがそれぞれの運動モードに対応する、それぞれの側波帯の最大の強度低減を提供するかを判定するために、第2の結晶スペクトルの各々が第1の結晶スペクトルと比較される。
【0130】
それぞれの運動モードに対応する、それぞれの側波帯に対して最も著しい強度低減および/または最小強度を提供すると判定および/または識別された第2の結晶スペクトルに対応する位相
【数17】
および位相パラメータ化されたシム波形は、それぞれの運動モードのための特定のモードのシム波形を生成および/または判定するために使用される。たとえば、それぞれの運動モードのための特定のモードのシム波形は、位相パラメータ化されたシム波形の位相パラメータを
【数18】
に設定する結果として、生成、判定、および/または定められ得る。
【0131】
ステップ/動作416において、特定のモードのシム波形が提供および/または記憶される。たとえば、コントローラ30は、特定のモードのシム波形をメモリ710に(たとえば、波形ライブラリの一部としてなど)記憶し得る。様々な実施形態では、メタデータに関連付けられて、特定のモードのシム波形が記憶される。たとえば、メタデータは、それぞれの運動モード、特定のモードのシム波形がいつ生成、判定、および/または記憶されたかを示すタイムスタンプ、特定のモードのシム波形の1つまたは複数のパラメータ(たとえば、運動周波数、運動振幅、位相、軸周波数)、特定のモードのシム波形に関連する軸周波数などを示す。
【0132】
述べたように、特定のモードのシム波形は、それぞれの運動モードを脱励起させるように構成される。しかしながら、原子オブジェクト結晶の複数の運動モードは、搬送動作によって励起され得る。様々な実施形態では、較正プロセス400および/またはその様々なステップ/動作は、複数の特定のモードのシム波形を生成および/または判定するために複数回実施される。たとえば、特定のモードのシム波形は、複数の運動モードに対して生成および/または判定され得る。たとえば、メモリ710内に記憶されるシム波形ライブラリは、原子オブジェクト結晶の1つまたは複数の運動モードに対応する特定のモードのシム波形でポピュレートされ得る。様々な実施形態では、それに対して特定のモードのシム波形が判定される運動モードは、どの運動モードおよび/または対応する側波帯が第1の結晶スペクトル内で識別されるかに基づいて、判定および/または識別され得る。
【0133】
様々な実施形態では、較正プロセス400は、複数の原子オブジェクト結晶に対して搬送動作を実施するステップと、複数の原子オブジェクト結晶の複数のそれぞれの第1の結晶スペクトルをキャプチャするステップと、複数のそれぞれの第1の結晶スペクトルに基づいて、アグリゲートされた第1の結晶スペクトルを判定するステップと、アグリゲートされた第1の結晶スペクトル内に存在する側波帯を判定するステップと、アグリゲートされた第1の結晶スペクトル内に存在する1つまたは複数の側波帯に対する運動周波数および/または運動振幅情報を抽出するステップと、位相パラメータ化されたシム波形の複数の原子オブジェクト結晶への印加、およびそれに基づいて判定された、アグリゲートされた第2の結晶スペクトルに基づいて、アグリゲートされた第1の結晶スペクトル内に存在するそれぞれの側波帯および/または対応する運動モードに対する1つまたは複数の特定のモードのシム波形を判定するステップとを含み得る。
【0134】
様々な実施形態では、較正プロセス400は、特定のモードのシム波形の軸周波数依存性が判定され得るように、かつ/または複数の特定のモードのシム波形がそれぞれの軸周波数に対応する各特定のモードのシム波形を用いて判定され得るように、異なる軸周波数に対応する搬送動作に対して複数回実施され得る。様々な実施形態では、判定される特定のモードのシム波形は、原子オブジェクト閉じ込め装置50に固有である。
【0135】
脱励起動作の例示的な実施
様々な実施形態では、脱励起動作は、量子計算の実施、量子プログラム/回路の実行などの間に実施され得る。たとえば、脱励起動作は、量子計算の実施、量子プログラム/回路の実行などの間に、搬送動作と少なくとも部分的に並行して、かつ/または搬送動作と協調する方法で、実施され得る。様々な実施形態では、原子オブジェクト閉じ込め装置50は、複数の原子オブジェクト結晶を閉じ込め、複数の搬送動作および/または脱励起動作が(たとえば、原子オブジェクト閉じ込め装置50内の異なるロケーション(たとえば、異なるそれぞれの開始および/または宛先ロケーション)において)少なくとも部分的に並行して実施される。様々な実施形態では、マルチモード脱励起動作が実施される。
【0136】
図5は、1つまたは複数の脱励起動作を少なくとも部分的に並行して実施するためにコントローラ30によって実施され得る様々なプロセス、手順、動作などを例示するフローチャートを提供する。様々な実施形態では、1つまたは複数の脱励起動作は、それぞれの搬送動作と少なくとも部分的に並行して、かつ/または協調して実施される。様々な実施形態では、量子コンピュータ110のコントローラ30は、量子コンピュータ110の1つまたは複数の構成要素を制御して、図5に示すプロセス、手順、動作などを実施する。たとえば、コントローラ30の処理デバイス705は、コンピュータ可読命令(たとえば、メモリ710内に記憶された)を実行して、コントローラ30の処理デバイス705、メモリ710、ドライバコントローラ要素715、A/D変換器725などに図5に示す様々なプロセス、手順、動作などの実施を引き起こさせることができる。
【0137】
ステップ/動作502で開始し、実施されるべき1つまたは複数の搬送動作が識別される。たとえば、コントローラ30は、少なくとも部分的に並行して実施されるべき1つまたは複数の搬送動作を識別する。様々な実施形態では、1つまたは複数の搬送動作の各々は、それぞれの原子オブジェクト結晶を原子オブジェクト閉じ込め装置50のそれぞれの搬送経路に沿ってそれぞれの開始ロケーションからそれぞれの宛先ロケーションに移動させることに対応する。様々な実施形態では、各搬送動作は、それぞれの軸周波数に関連付けられる。様々な実施形態では、それぞれの軸周波数は、同じであるか、または互いとは異なる。
【0138】
ステップ/動作504において、コントローラ30は、1つまたは複数の搬送動作のためのそれぞれの搬送波形を(たとえば、メモリ710内に記憶された波形ライブラリから)判定する、識別する、かつ/またはそれらにアクセスする。様々な実施形態では、それぞれの搬送波形は、各搬送動作のためのそれぞれの軸周波数に基づいて判定、識別、および/またはアクセスされる。例示的な実施形態では、たとえば、1つまたは複数の搬送動作の各々に対するそれぞれの搬送波形は、搬送動作のそれぞれの開始ロケーション、搬送動作のそれぞれの宛先ロケーション、搬送動作のそれぞれの搬送経路、搬送動作のそれぞれの軸周波数などに基づいて、判定、識別、および/またはアクセスされる。たとえば、搬送波形は、得られた電位井戸のロケーションを制御する1つまたは複数の局在化パラメータを含み得る。局在化パラメータは、搬送動作に対応する開始ロケーション、宛先ロケーション、および/または搬送経路に基づいて設定され得る。たとえば、例示的な実施形態では、搬送波形は、得られた電位井戸が原子オブジェクト結晶に搬送経路を通過させる搬送経路に対応する時間依存のロケーションにおいて局在化されるように構成される。
【0139】
ステップ/動作506において、コントローラ30は、1つまたは複数の搬送動作のうちの少なくとも1つに対する1つまたは複数の運動モードのためのそれぞれの特定のモードのシム波形を(たとえば、メモリ710内に記憶された波形ライブラリから)判定する、識別する、かつ/またはそれらにアクセスする。例示的な実施形態では、コントローラ30は、1つまたは複数の搬送動作の各それぞれの搬送動作に対する1つまたは複数の運動モードのためのそれぞれの特定のモードのシム波形を判定する、識別する、かつ/またはそれらにアクセスする。たとえば、例示的な実施形態では、1つまたは複数の搬送動作のそれぞれの搬送動作に対して励起されることが予想されるそれぞれの一次運動モードのためのそれぞれの特定のモードのシム波形が、判定、識別、および/またはアクセスされ得る。例示的な実施形態では、1つまたは複数の搬送動作のそれぞれの搬送動作に対して励起されることが予想される2つ以上の運動モードのためのそれぞれの特定のモードのシム波形が判定、識別、および/またはアクセスされる。たとえば、それぞれの原子オブジェクト結晶のCOMおよび/または伸縮モードに対応する特定のモードのシム波形が判定、識別、および/またはアクセスされ得る。
【0140】
例示的な実施形態では、較正プロセスの結果は、2つ以上の異なる運動モードのための特定のモードのシム波形を一緒に加算および/またはアグリゲートすることによって生成および/または判定されるマルチモード波形の記憶である。そのような実施形態では、それぞれのマルチモードのシム波形は、1つまたは複数の搬送動作のそれぞれの搬送動作に対して判定、識別、またはアクセスされ得る。たとえば、マルチモードのシム波形は、少なくとも(a)それぞれの原子オブジェクト結晶の第1のコヒーレントな運動モードに対応する第1の特定のモードのシム波形および(b)それぞれの原子オブジェクト結晶の第2のコヒーレントな運動モードに対応する第2の特定のモードのシム波形のアグリゲーションである。第1のコヒーレントな運動モードは第1の運動周波数によって特徴付けられ、第2のコヒーレントな運動モードは第2の運動周波数によって特徴付けられる。第1の運動周波数および第2の運動周波数は異なる。たとえば、例示的な実施形態では、第1の運動周波数および第2の運動周波数は、少なくとも1.5の倍数だけ異なり得る。たとえば、例示的な実施形態では、原子オブジェクト結晶のCOMモードの運動周波数は、約1MHzであり、原子オブジェクト結晶の伸縮モードの運動周波数は、約1.8MHzである。理解されるように、原子オブジェクト結晶の運動モードの運動周波数は、原子オブジェクト結晶の成分および原子オブジェクト結晶が遭遇している環境(たとえば、原子オブジェクト結晶が閉じ込められた電位井戸の軸周波数など)に依存することになる。
【0141】
例示的な実施形態では、搬送動作に対応する特定のモードのシム波形(または、マルチモードのシム波形)は、搬送動作の開始ロケーション、搬送動作の宛先ロケーション、搬送動作の搬送経路、搬送動作の軸周波数などに基づいて、判定、識別、および/またはアクセスされる。たとえば、特定のモードのシム波形(または、マルチモードのシム波形)は、得られた電位勾配のロケーションを制御する1つまたは複数の局在化パラメータを含み得る。局在化パラメータは、対応する搬送動作の開始ロケーション、宛先ロケーション、および/または搬送経路に基づいて設定され得る。たとえば、例示的な実施形態では、脱励起動作が搬送動作と少なくとも部分的に並行して実施されると、シム波形は、原子オブジェクト結晶が搬送経路を通過するにつれて、得られた電位勾配が原子オブジェクト結晶の瞬間的ロケーションにおいて局在化されるように構成される。様々な実施形態では、シム波形のパラメータは、搬送動作の軸周波数に基づいて設定され(たとえば、シム波形の運動振幅、運動周波数、および/または位相は軸周波数の関数であり得る)、かつ/または特定の軸周波数に対応するシム波形は、特定の軸周波数を用いた搬送動作の実施のために選択され得る。
【0142】
ステップ/動作508において、コントローラ30は、それぞれの特定のモードのシム波形およびそれぞれの搬送波形に基づいて、印加される波形を判定する。たとえば、ステップ/動作506において、判定、識別、および/またはアクセスされるそれぞれの特定のモードのシム波形、およびステップ/動作504において判定、識別、および/またはアクセスされる搬送波形は、印加される波形を判定および/または生成するために、一緒にアグリゲートおよび/または加算される。印加される波形は、(たとえば、第1の時間と第2の時間および/または第3の時間との間の)一連の各時間ステップにわたって原子オブジェクト閉じ込め装置50の電極アレイの電極204のサブセットおよび/またはすべてに印加されるべきそれぞれの電圧を含む一連の電圧である。印加される波形の一連の電圧は、原子オブジェクト閉じ込め装置50の電極のアレイの電極204に印加されると、それぞれの原子オブジェクト結晶をそれぞれの搬送動作に従ってそれぞれの搬送経路に沿って搬送させるように各々が構成されたそれぞれの電位井戸を生成し、それぞれの原子オブジェクト結晶の1つまたは複数の運動モードを脱励起させるように各々が構成されたそれぞれの電位勾配を生成するように構成される。それぞれの電位井戸およびそれぞれの電位勾配の各々は、それぞれの原子オブジェクトに対応するロケーションにおいて局在化される。たとえば、第1の原子オブジェクトの少なくとも1つの運動モードを脱励起させるように構成された第1の電位勾配は、第1の原子オブジェクトの少なくとも1つの運動モードを脱励起させるが、第2の原子オブジェクトのいずれの運動モードにも影響を及ぼさない(たとえば、励起または脱励起させない)ように構成される。様々な実施形態では、印加される波形は、一連の各時間ステップにわたって、かつ第1の電極204に対して、対応する時間ステップにわたって、搬送波形の各々および特定のモードのシム波形(または、マルチモードのシム波形)の各々からの第1の電極に対する電圧を一緒に加算することによって判定される。
【0143】
ステップ/動作510において、コントローラ30は、電圧源80を制御して、波形電圧信号が原子オブジェクト閉じ込め装置50の電極202のいくつかのシーケンスによって形成された電極のアレイの電極204に印加されるように、印加される波形の一連の電圧に従って電圧源80に波形電圧信号を生成および提供させる。様々な実施形態では、第1の時間から第2のおよび/または第3の時間までに印加される波形の一連の電圧に従って生成された波形電圧信号の電極204への印加は、1つまたは複数の搬送動作を実施させ、1つまたは複数の搬送動作のうちの少なくとも1つに対する1つまたは複数の運動モードに対応する脱励起動作を実施させる。
【0144】
様々な実施形態では、それぞれの原子オブジェクト結晶をさらに冷却するために、かつ/またはそれぞれの搬送動作中にそれぞれの原子オブジェクト結晶によって吸収される熱および/または運動/動的エネルギーを除去するために、レーザー冷却を含む冷却動作が(たとえば、第2の時間と第3の時間との間に)実施されてもよい。
【0145】
理解されるように、図5に示すプロセス、手順、および/または動作は、量子計算の実施および/または量子プログラム/回路の実行中に複数回繰り返されてよい。
【0146】
その間に低減された寄生的クロストークを伴う、少なくとも部分的に並行する脱励起動作の例示的な実施
上記で説明したように、様々な実施形態では、原子オブジェクト閉じ込め装置50は、導線および/または電気接続を備えたチップなどの上に形成される。導線および/または電気接続は、電圧源80によって生成された電圧信号(周期的電圧信号、波形電圧信号、および/または他の電圧信号)が原子オブジェクト閉じ込め装置50の電極(たとえば、RFレール210、電極204)に印加されることを可能にする。様々なシナリオでは、脱励起動作が原子オブジェクト閉じ込め装置50内の複数のロケーションにおいて少なくとも部分的に並行する方法で実施されると、異なる電極204間の配線および/または導線内の寄生結合は、電極に印加される波形電圧信号が別の電極上に出現することを可能にし、それにより、脱励起力の局在化を部分的に打ち消すことがある。たとえば、それぞれの波形電圧信号を異なる電極に提供するように構成された配線および/または導線間の寄生的クロストークは、所望のロケーションにおいて(たとえば、それぞれの原子オブジェクト結晶のロケーションにおいて)得られた電位勾配を局在化する能力に影響を及ぼす。これは、脱励起動作のターゲット原子オブジェクト結晶以外の原子オブジェクト結晶の運動モードの励起をもたらし得る。したがって、他の原子オブジェクト結晶の運動モードを意図せずに励起させずに、原子オブジェクト閉じ込め装置内の異なるロケーションにおいて少なくとも部分的に並行する方法で脱励起動作をどのように実施するかについて技術的課題が存在する。
【0147】
様々な実施形態は、これらの技術的課題に技術的解決策を提供する。たとえば、波形電圧信号が結合される可能性が低くなるように軸周波数が離隔されるように、それぞれの脱励起動作に対応する搬送動作の軸周波数を選択すること、割り当てることなどが可能である。
【0148】
図6は、低減された寄生的クロストークと少なくとも部分的に並行して2つ以上の脱励起動作を実施するためにコントローラ30によって実施され得る様々なプロセス、手順、動作などを例示するフローチャートを提供する。様々な実施形態では、2つ以上の脱励起動作は、それぞれの搬送動作と少なくとも部分的に並行して、かつ/または協調して実施される。様々な実施形態では、量子コンピュータ110のコントローラ30は、量子コンピュータ110の1つまたは複数の構成要素を制御して、図6に示すプロセス、手順、動作などを実施する。たとえば、コントローラ30の処理デバイス705は、コンピュータ可読命令(たとえば、メモリ710内に記憶された)を実行して、コントローラ30の処理デバイス705、メモリ710、ドライバコントローラ要素715、A/D変換器725などに図6に示す様々なプロセス、手順、動作などを実施させることができる。
【0149】
ステップ/動作602で開始し、実施されることになる2つ以上の搬送動作が識別される。たとえば、コントローラ30は、少なくとも部分的に並行して実施される2つ以上の搬送動作を識別する。様々な実施形態では、2つ以上の搬送動作の各々は、それぞれの原子オブジェクト結晶を原子オブジェクト閉じ込め装置50内のそれぞれの搬送経路に沿ってそれぞれの開始ロケーションからそれぞれの宛先ロケーションに移動させることに対応する。
【0150】
ステップ/動作604において、それぞれの軸周波数は、2つ以上の搬送動作の各々に対して判定され、かつ/または割り当てられる。たとえば、コントローラ30は、それぞれの軸周波数を判定し、かつ/またはそれぞれの軸周波数を2つ以上の搬送動作の各々に割り当てる。様々な実施形態では、それぞれの軸周波数は互いと離隔されている。たとえば、それぞれの軸周波数は、0.05から10MHzの範囲内の周波数差だけ互いと分離された第1の軸周波数および第2の軸周波数を含む。例示的な実施形態では、それぞれの軸周波数の第1の軸周波数に対して、他のそれぞれの軸周波数のうちのいずれも第1の軸周波数の最小周波数差内にはない。例示的な実施形態では、最小周波数差は0.05から10MHzの範囲内である。例示的な実施形態では、最小周波数差は約100kHzである。例示的な実施形態では、周波数差は50kHzから1MHzの範囲内である。
【0151】
ステップ/動作606において、コントローラ30は、1つまたは複数の搬送動作のためのそれぞれの搬送波形を(たとえば、メモリ710内に記憶された波形ライブラリから)判定する、識別する、かつ/またはそれらにアクセスする。様々な実施形態では、各搬送動作のために判定および/または割り当てられたそれぞれの軸周波数に基づいて、それぞれの搬送波形が判定、識別、および/またはアクセスされる。例示的な実施形態では、たとえば、搬送動作のそれぞれの開始ロケーション、搬送動作のそれぞれの宛先ロケーション、搬送動作のそれぞれの搬送経路、搬送動作の判定されたかつ/または割り当てられたそれぞれの軸周波数などに基づいて、1つまたは複数の搬送動作の各々のためのそれぞれの搬送波形が判定、識別、および/またはアクセスされる。たとえば、搬送波形は、得られた電位井戸のロケーションを制御する1つまたは複数の局在化パラメータを含み得る。局在化パラメータは、対応する搬送動作の開始ロケーション、宛先ロケーション、および/または搬送経路に基づいて設定され得る。たとえば、例示的な実施形態では、搬送波形は、得られた電位井戸が原子オブジェクト結晶に搬送経路を通過させる搬送経路に対応する時間依存のロケーションにおいて局在化されるように構成される。
【0152】
ステップ/動作608において、コントローラ30は、1つまたは複数の搬送動作のうちの少なくとも1つに対する1つまたは複数の運動モードのためのそれぞれの特定のモードのシム波形を(たとえば、メモリ710内に記憶された波形ライブラリから)判定する、識別する、および/またはそれらにアクセスする。例示的な実施形態では、コントローラ30は、1つまたは複数の搬送動作の各それぞれの搬送動作に対する1つまたは複数の運動モードのためのそれぞれの特定のモードのシム波形を判定する、識別する、かつ/またはそれらにアクセスする。たとえば、例示的な実施形態では、1つまたは複数の搬送動作のそれぞれの搬送動作に対して励起されることが予想されるそれぞれの一次運動モードのためのそれぞれの特定のモードのシム波形が判定、識別、および/またはアクセスされ得る。例示的な実施形態では、1つまたは複数の搬送動作のそれぞれの搬送動作に対して励起されることが予想される2つ以上の運動モードのためのそれぞれの特定のモードのシム波形が判定、識別、および/またはアクセスされる。たとえば、それぞれの原子オブジェクト結晶のCOMおよび/または伸縮モードに対応する特定モードのシム波形が判定、識別、および/またはアクセスされ得る。
【0153】
例示的な実施形態では、較正プロセスの結果は、2つ以上の異なる運動モードのための特定のモードのシム波形を一緒に追加および/またはアグリゲートすることによって生成および/または判定されるマルチモード波形の記憶である。そのような実施形態では、それぞれのマルチモードのシム波形は、1つまたは複数の搬送動作のそれぞれの搬送動作に対して判定、識別、および/またはアクセスされ得る。たとえば、マルチモードのシム波形は、少なくとも(a)それぞれの原子オブジェクト結晶の第1のコヒーレントな運動モードに対応する第1の特定のモードのシム波形および(b)それぞれの原子オブジェクト結晶の第2のコヒーレントな運動モードに対応する第2の特定のモードのシム波形のアグリゲーションである。第1のコヒーレントな運動モードは第1の運動周波数によって特徴付けられ、第2のコヒーレントな運動モードは第2の運動周波数によって特徴付けられる。第1の運動周波数および第2の運動周波数は異なる。たとえば、例示的な実施形態では、第1の運動周波数および第2の運動周波数は、少なくとも1.5の倍数だけ異なり得る。
【0154】
例示的な実施形態では、搬送動作に対応する特定のモードのシム波形(または、マルチモードのシム波形)は、搬送動作の開始ロケーション、搬送動作の宛先ロケーション、搬送動作の搬送経路、搬送動作の判定されたかつ/または割り当てられた軸周波数などに基づいて、判定、識別、および/またはアクセスされる。たとえば、特定のモードのシム波形(または、マルチモードのシム波形)は、得られた電位勾配のロケーションを制御する1つまたは複数の局在化パラメータを含み得る。局在化パラメータは、対応する搬送動作の開始ロケーション、宛先ロケーション、および/または搬送経路に基づいて設定され得る。たとえば、例示的な実施形態では、脱励起動作が搬送動作と少なくとも部分的に並行して実施されると、シム波形は、原子オブジェクト結晶が搬送経路を通過するにつれて、得られた電位勾配が原子オブジェクト結晶の瞬間的ロケーションにおいて局在化されるように構成される。様々な実施形態では、シム波形のパラメータは、搬送動作の判定されたかつ/または割り当てられた軸周波数に基づいて設定され(たとえば、シム波形の運動振幅、運動周波数、および/または位相は、軸周波数の関数である)、かつ/または特定の判定された、かつ/または割り当てられた軸周波数に対応するシム波形は、特定の判定されたかつ/または割り当てられた軸周波数を用いて搬送動作を実施するために選択される。
【0155】
ステップ/動作610において、コントローラ30は、それぞれの特定のモードのシム波形およびそれぞれの搬送波形に基づいて、印加される波形を判定する。たとえば、ステップ/動作608において判定、識別、および/またはアクセスされるそれぞれの特定のモードのシム波形、およびステップ/動作606において判定、識別、および/またはアクセスされる搬送波形は、印加される波形を判定および/または生成するために、一緒にアグリゲートおよび/または加算される。印加される波形は、一連の各時間ステップに対して(たとえば、第1の時間と第2の時間および/または第3の時間との間に).原子オブジェクト閉じ込め装置50の電極アレイの電極204のサブセットおよび/またはすべてに印加されるべきそれぞれの電圧を含む一連の電圧である。印加される波形の一連の電圧は、原子オブジェクト閉じ込め装置50の電極のアレイの電極204に印加されると、それぞれの原子オブジェクト結晶をそれぞれの搬送動作に従ってそれぞれの搬送経路に沿って搬送させるように各々が構成されたそれぞれの電位井戸を生成し、それぞれの原子オブジェクト結晶の1つまたは複数の運動モードを脱励起させるように各々が構成されたそれぞれの電位勾配を生成するように構成される。
【0156】
それぞれの電位井戸およびそれぞれの電位勾配の各々は、それぞれの原子オブジェクトに対応するロケーションにおいて局在化される。たとえば、第1の原子オブジェクトの少なくとも1つの運動モードを脱励起させるように構成された第1の電位勾配は、第1の原子オブジェクトの少なくとも1つの運動モードを脱励起させるが、第2の原子オブジェクトのいずれの運動モードにも影響を及ぼさない(たとえば、励起または脱励起させない)ように構成される。様々な実施形態では、印加される波形は、一連の各時間ステップにわたって、かつ第1の電極204に対して、対応する時間ステップにわたって、搬送波形の各々および特定のモードのシム波形(または、マルチモードのシム波形)の各々からの第1の電極に対する電圧を一緒に加算することによって判定される。
【0157】
ステップ/動作612において、コントローラ30は、電圧源80を制御して、波形電圧信号が原子オブジェクト閉じ込め装置50の電極202のいくつかのシーケンスによって形成された電極のアレイの電極204に印加されるように、印加される波形の一連の電圧に従って電圧源80に波形電圧信号を生成および提供させる。様々な実施形態では、第1の時間から第2のおよび/または第3の時間までに印加される波形の一連の電圧に従って生成された波形電圧信号の電極204への印加は、1つまたは複数の搬送動作を実施させ、1つまたは複数の搬送動作のうちの少なくとも1つに対する1つまたは複数の運動モードに対応する脱励起動作を実施させる。
【0158】
その上、2つ以上の搬送動作に関連するそれぞれの軸周波数における差により、波形電圧信号を電極204に提供するように構成された配線および/または導線間の寄生的クロストークが低減され、それにより、電位井戸および/または電位勾配の局在化を保つ。たとえば、2つ以上の搬送動作に関連するそれぞれの軸周波数における差により、波形電圧信号を電極204に提供するように構成された配線および/または導線間の寄生的クロストークが低減され、搬送動作および脱励起動作の効果をそれぞれのターゲット原子オブジェクト結晶に分離させる。
【0159】
様々な実施形態では、それぞれの搬送動作中に、それぞれの原子オブジェクト結晶をさらに冷却するために、かつ/またはそれぞれの原子オブジェクト結晶によって吸収された熱および/または運動/動的エネルギーを除去するために、レーザー冷却を含む冷却動作も(たとえば、第2の時間と第3の時間との間に)実施され得る。
【0160】
理解されるように、図6に示すプロセス、手順、および/または動作は、量子計算の実施および/または量子プログラム/回路の実行中に複数回繰り返されてよい。
【0161】
技術的利点
様々なシナリオでは、実験の実施、制御された量子状態進化、量子計算などの間、原子オブジェクトおよび/または原子オブジェクト結晶は、原子オブジェクト閉じ込め装置内のそれぞれの開始ロケーションから原子オブジェクト閉じ込め装置内のそれぞれの宛先ロケーションに搬送され得る。そのような搬送動作中、原子オブジェクトおよび/または原子オブジェクト結晶がもはやそれらの運動基底状態にないように、原子オブジェクトおよび/または原子オブジェクト結晶は励起される。従来、原子オブジェクトおよび/またはその構成要素の運動エネルギーを低減するためにレーザー冷却が使用される。しかしながら、レーザー冷却は、実験の実施、制御された量子状態進化、量子計算などの間に実行される様々な他のプロセスと比較して遅いプロセスである。たとえば、搬送および冷却動作を実施するために必要とされる時間は、従来、QCCD量子コンピュータの計算速度における制限要因とみなされる。その上、搬送動作の実施後に原子オブジェクト結晶を冷却するために必要とされるかなりの時間量は、QCCD量子コンピュータによって実施され得る量子回路および/または量子プログラムの深度を制限し、メモリエラーの一因となり得る。したがって、どのように、原子オブジェクト結晶の運動エネルギーを迅速かつ効率的に低減し、原子オブジェクト結晶の運動状態を脱励起させるかについて、技術的課題が存在する。
【0162】
2つの原子オブジェクト(たとえば、冷却材イオンおよび量子ビットイオン)を含む原子オブジェクト結晶は、原子オブジェクト結晶の質量中心(COM)が発振するように、2つの原子オブジェクト間の距離が実質的に一定にとどまるような方法で2つの原子オブジェクトが発振する、質量中心モードで発振し得る。2つの原子オブジェクトを含む原子オブジェクト結晶は、2つの原子オブジェクト間の距離が周期的に伸縮する伸縮モードで発振することも可能である。加えて、原子オブジェクト結晶は、異なる運動周波数、運動振幅、および/または位相を有し得るCOMモードおよび/または伸縮モードの重ね合わせで発振し得る。特に、原子オブジェクト結晶の成分の電荷質量比が異なる場合、追加の運動モードおよびそれらの重ね合わせも可能である。したがって、運動モードのこれらの重ね合わせの脱励起は、技術的課題を提示する。
【0163】
脱励起されるべき原子オブジェクト結晶が原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められた複数の原子オブジェクト結晶のうちの1つであるとき、追加の技術的課題が提示される。そのようなシナリオでは、やはり原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められている他の原子オブジェクト結晶のうちのいずれも同時に励起させずに、特定の原子オブジェクト結晶を脱励起させることが望まれる。2つ以上の脱励起動作を少なくとも部分的に並行して実施する(たとえば、半同時にかつ/または脱励起動作の実施が時間的に少なくとも部分的に重複する)ことも望まれることがある。したがって、脱励起動作の効果をどのように局在化するかについて、技術的課題が存在する。
【0164】
様々な実施形態は、原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められた原子オブジェクト結晶のコヒーレントな運動モードの脱励起に関するこれらのおよび他の技術的課題に対する技術的解決策を提供する。たとえば、様々な実施形態は、モード固有のおよび/またはマルチモードのシム波形を提供する。シム波形は、一連の電圧を含む。一連の電圧は、複数の時間ステップにおいて原子オブジェクト閉じ込め装置の電極アレイの各電極および/または電極のサブセットに印加されるべき電圧を含む。一連の電圧の電圧が一連の電圧によって指定された時間順シーケンス内で原子オブジェクト閉じ込め装置の電極アレイに印加されると、時間とともに展開する電位勾配が脱励起されるべき原子オブジェクト結晶のロケーションにおいて形成される。電位勾配は、原子オブジェクト結晶(および/またはその成分)の発振運動を相殺する力を原子オブジェクト結晶(および/またはその成分)に与えるように構成される。
【0165】
様々な実施形態では、モード固有のおよび/またはマルチモードのシム波形は、原子オブジェクト閉じ込め装置内の特定のロケーションにおいて得られた電位勾配を局在化するように構成される。たとえば、モード固有のおよび/またはマルチモードのシム波形は、他の近くの原子オブジェクト結晶および/または原子オブジェクト閉じ込め装置内の他の原子オブジェクト結晶に影響を及ぼさずに、得られた電位勾配のロケーションがターゲット原子オブジェクト結晶のロケーションにおいて局在化されるように構成され得る。様々な実施形態では、モード固有のおよび/またはマルチモードのシム波形は、脱励起動作が原子オブジェクト結晶に対する搬送動作の実施と少なくとも部分的に並行して(たとえば、半同時にかつ/または動作の実施が時間的に少なくとも部分的に重複する場合)原子オブジェクト結晶に対して実施され得るように、得られた電位勾配のロケーションが非一定であり得るように構成され得る。たとえば、脱励起動作は、原子オブジェクト結晶の搬送および冷却を実施するために必要とされる時間をさらに低減するために、原子オブジェクト結晶が搬送されている間に原子オブジェクト結晶に対して実施され得る。
【0166】
その上、様々な実施形態は、複数の運動モードの脱励起を同時に引き起こすように構成されているマルチモードのシム波形を提供する。たとえば、マルチモードのシム波形は、得られた電位勾配およびその時間発展がCOMモード、伸縮モード、および/または他の運動モードを同時に脱励起させるように構成され得る。
【0167】
加えて、原子オブジェクト閉じ込め装置内の異なるロケーションで複数の脱励起動作が少なくとも部分的に並行する方法で実施されると、それぞれの波形電圧信号を原子オブジェクト閉じ込め装置の電極204に提供するように構成された導線および/または配線間の寄生的クロストークは、脱励起動作の効果の局在化を劣化し得る。これは、原子オブジェクト結晶内の運動モードを意図させずに励起させ、さらなる技術的課題を引き起こすことがある。
【0168】
様々な実施形態は、それぞれの波形電圧信号を電極204に提供するように構成された導線および/または配線間のクロストークが低減および/または除去されるように、それらの間の寄生的結合を減結合するように構成される。たとえば、対応する搬送動作の軸周波数は、離隔された方法で判定および/または割り当てられ、その結果、それぞれのシム波形に対応する波形電圧信号を発振させることによって引き起こされる電極204にそれぞれの波形電圧信号を提供するように構成された導線および/または配線間の寄生的結合を低減する。
【0169】
例示的なコントローラ
様々な実施形態では、量子コンピュータ110は、量子コンピュータ110の様々な要素を制御するように構成されたコントローラ30を備える。様々な実施形態では、コントローラ30は、量子コンピュータ110に様々な動作(たとえば、ゲート動作、冷却動作、搬送動作、量子ビット相互作用動作、量子ビット測定動作、漏れ抑制/変換動作などの計算動作)を実施させるように構成され得る。たとえば、コントローラ30は、1つまたは複数の搬送動作、1つまたは複数の脱励起動作などを実施するように構成され得る。たとえば、コントローラ30は、極低温および/または真空室40、操作源64、電圧信号(たとえば、周期的電圧信号、波形電圧信号)を原子オブジェクト閉じ込め装置50の電極(たとえば、RFレール210、電極204)に印加するように構成された電圧源、磁場生成器70、および/または極低温および/または真空室40内の環境条件(たとえば、温度、湿度、圧力など)を制御し、かつ/または原子オブジェクト閉じ込め装置50内の1つまたは複数の原子オブジェクトの制御された量子状態進化を操作および/または引き起こすように構成されたシステム内の温度および圧力を制御する極低温システムおよび/または真空システムを制御するように構成され得る。
【0170】
図7に示すように、様々な実施形態では、コントローラ30は、処理要素705、メモリ710、ドライバコントローラ要素715、通信インターフェース720、アナログデジタル変換要素725などを含む様々なコントローラ要素を備え得る。たとえば、処理要素705は、プログラマブル論理デバイス(PLD:programmable logic device)、マイクロプロセッサ、コプロセッシングエンティティ、特定用途向け命令セットプロセッサ(ASIP:application-specific instruction-set processors)、集積回路、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuits)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate arrays)、プログラマブル論理アレイ(PLA:programmable logic arrays)、ハードウェアアクセラレータ、他の処理デバイスおよび/もしくは回路など、ならびに/またはコントローラを備え得る。回路という用語は、エンティティハードウェア実施形態またはハードウェアとコンピュータプログラム製品の組合せを指すことがある。例示的な実施形態では、コントローラ30の処理要素705は、クロックを備え、かつ/またはクロックと通信している。
【0171】
たとえば、メモリ710は、ハードディスク、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、MMC、SDメモリカード、メモリスティック、CBRAM、PRAM、FeRAM、RRAM、SONOS、レーストラックメモリ、RAM、DRAM、SRAM、FPM DRAM、EDO DRAM、SDRAM、DDR SDRAM、DDR2 SDRAM、DDR3 SDRAM、RDRAM、RIMM、DIMM、SIMM、VRAM、キャッシュメモリ、レジスタメモリなどのうちの1つまたは複数など、揮発性および/不揮発性のメモリ記憶装置などの非一時的メモリを備え得る。様々な実施形態では、メモリ710は、(たとえば、量子ビット記録データ記憶装置、量子ビット記録データベース、量子ビット記録テーブルなどの中に)量子コンピュータの量子ビットに対応する量子ビット記録、較正テーブル、実行可能キュー、(たとえば、1つまたは複数のコンピュータ言語、指定されたコントローラ言語などで)コンピュータプログラムコードなどを記憶し得る。例示的な実施形態では、メモリ710内に記憶されたコンピュータプログラムコードの少なくとも一部分の(たとえば、処理要素705による)実行は、コントローラ30に本明細書で説明する1つまたは複数のステップ、動作、処理、手順などを実施させる。
【0172】
様々な実施形態では、ドライバコントローラ要素715は、1つまたは複数のドライバおよび/または1つまたは複数ドライバを制御するように各々が構成されたコントローラ要素を含み得る。様々な実施形態では、ドライバコントローラ要素715は、ドライバおよび/またはドライバコントローラを備え得る。たとえば、ドライバコントローラは、1つまたは複数の対応するドライバにコントローラ30によって(たとえば、処理要素705によって)スケジュールおよび実行される実行可能命令、コマンドなどに従って動作させるように構成され得る。様々な実施形態では、ドライバコントローラ要素715は、コントローラ30が1つまたは複数の操作源64を動作させることおよび/または制御すること、1つまたは複数の磁場生成器70を制御すること、1つまたは複数の電圧源80および/またはドライバを制御すること、真空および/または極低温システムを動作させることなどを可能にし得る。様々な実施形態では、ドライバは、レーザードライバ、真空コンポーネントドライバ、電圧源(たとえば、AC電圧源、任意波形発生器(AWG:arbitrary waveform generators)、ダイレクトデジタルシンセサイザー(DDS:direct digital synthesizers)、など)、極低温および/または真空システムコンポーネントドライバなどであってよい。様々な実施形態では、コントローラ30は、カメラ、MEMカメラ、CCDカメラ、フォトダイオード、光電子倍増管など、1つまたは複数の光受信機構成要素からの信号を通信および/または受信するための手段を備える。たとえば、コントローラ30は、1つまたは複数の光受信機構成要素、較正センサーなどから信号を受信するように構成された1つまたは複数のアナログデジタル変換要素725を備え得る。たとえば、コントローラ30は、アナログデジタル変換要素725を介して、原子オブジェクト閉じ込め装置50の特定の領域および/または部分の条件に対応する、かつ/または様々な原子オブジェクトに対応する測定値を受信し得る。
【0173】
様々な実施形態では、コントローラ30は、コンピューティングエンティティ10とインターフェースおよび/または通信するための通信インターフェース720を備え得る。たとえば、コントローラ30は、実行可能命令、コマンドセットなどをコンピューティングエンティティ10から受信し、量子コンピュータ110(たとえば、光収集システムまたは他の測定システムから)受信された出力および/または出力の処理結果をコンピューティングエンティティ10に提供するための通信インターフェース720を備え得る。様々な実施形態では、コンピューティングエンティティ10およびコントローラ30は、直接有線および/もしくはワイヤレス接続ならびに/または1つまたは複数の有線および/もしくはワイヤレスネットワーク20を介して通信し得る。
【0174】
例示的なコンピューティングエンティティ
図8は、本発明の実施形態とともに使用され得る例示的なコンピューティングエンティティ10の例示的概略図を提供する。様々な実施形態では、コンピューティングエンティティ10は、ユーザが入力を量子コンピュータ110に(たとえば、コンピューティングエンティティ10のユーザインターフェースを介して)提供し、量子コンピュータ110からの出力を受信、表示、分析などすることを可能にするように構成される。たとえば、ユーザは、コンピューティングエンティティ10を動作させて、コントローラ30が量子アルゴリズムおよび/または量子回路を受信し、量子コンピュータ110に量子アルゴリズムおよび/または量子回路を実施させることができるように提供され得る量子アルゴリズムおよび/または量子回路を生成および/またはプログラムし得る。
【0175】
図8に示すように、コンピューティングエンティティ10は、アンテナ812と、送信機814(たとえば、無線)と、受信機806(たとえば、無線)と、それぞれ、送信機814および受信機806に信号を提供し、そこから信号を受信する処理デバイスおよび/または要素808とを含み得る。それぞれ、送信機814および受信機806に提供され、そこから受信される信号は、コントローラ30、他のコンピューティングエンティティ10など、様々なエンティティと通信するための適用可能なインターフェースシステムのエアインターフェース規格に従って情報/データをシグナリングすることを含み得る。この点で、コンピューティングエンティティ10は、1つまたは複数のエアインターフェース規格、通信プロトコル、変調タイプ、およびアクセスタイプで動作することが可能であり得る。たとえば、コンピューティングエンティティ10は、ファイバー分散データインターフェース(FDDI:fiber distributed data interface)、デジタル加入者線(DSL:digital subscriber line)、Ethernet、非同期転送モード(ATM:asynchronous transfer mode)、フレームリレー、データオーバーケーブルサービスインターフェース仕様(DOCSIS:data over cable service interface specification)、または任意の他の有線送信プロトコルなど、有線データ送信プロトコルを使用して通信を受信および/または提供するように構成され得る。同様に、コンピューティングエンティティ10は、汎用パケット無線サービス(GPRS:general packet radio service)、ユニバーサル移動電話通信システム(UMTS:Universal Mobile Telecommunications System)、符号分割多元接続2000(CDMA2000:Code Division Multiple Access 2000)、CDMA2000 1X(1xRTT)、広帯域符号分割多元接続(WCDAM:Wideband Code Division Multiple Access)、グローバルモバイル通信システム(GSM:Global System for Mobile Communications)、GSM進化型高速データレート(EDGE:Enhanced Data rates for GSM Evolution)、時分割同期符号分割多元接続(TD-SCDMA:Time Division-Synchronous Code Division Multiple Access)、ロングタームエボリューション(LTE:Long Term Evolution)、発展型ユニバーサル地上無線アクセスネットワーク(E-UTRAN:Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network)、エボリューションデータオプティマイズド(EVDO:Evolution-Data Optimized)、高速パケットアクセス(HSPA:High Speed Packet Access)、高速ダウンリンクパケットアクセス(HSDPA:High-Speed Downlink Packet Access)、IEEE 802.11(Wi-Fi)、Wi-Fiダイレクト、802.16(WiMAX)、ウルトラワイドバンド(UWB:ultra wideband)、赤外線(IR)プロトコル、近距離無線通信(NFC:near field communication)プロトコル、Wibree、Bluetoothプロトコル、ワイヤレスユニバーサルシリアルバス(USB:wireless universal serial bus)プロトコル、および/または任意の他のワイヤレスプロトコルなど、様々なプロトコルのうちのいずれかを使用してワイヤレス外部通信ネットワークを介して通信するように構成され得る。コンピューティングエンティティ10は、ボーダーゲートプロトコル(BGP:Border Gateway Protocol)、動的ホスト構成プロトコル(DHCP:Dynamic Host Configuration Protocol)、ドメイン名システム(DNS:Domain Name System)、ファイルトランスファープロトコル(FTP:File Transfer Protocol)、ハイパーテキストトランスファープロトコル(HTTP:Hypertext Transfer Protocol)、HTTPオーバーTLS/SSL/セキュア、インターネットメッセージアクセスプロトコル(IMAP:Internet Message Access Protocol)、ネットワーク時間プロトコル(NTP:Network Time Protocol)、シンプルメールトランスファープロトコル(SMTP:Simple Mail Transfer Protocol)、Telnet、トランスポートレイヤセキュリティ(TLS:Transport Layer Security)、セキュアソケットレイヤ(SSL:Secure Sockets Layer)、インターネットプロトコル(IP:Internet Protocol)、送信制御プロトコル(TCP:Transmission Control Protocol)、ユーザデータグラムプロトコル(UDP:User Datagram Protocol)、データグラム輻輳制御プロトコル(DCCP:Datagram Congestion Control Protocol)、ストリーム制御伝送プロトコル(SCTP:Stream Control Transmission Protocol)、ハイバーテキストマークアップ言語(HTML:HyperText Markup Language)などを使用して通信するために、そのようなプロトコルおよび規格を使用し得る。
【0176】
これらの通信規格および通信プロトコルを介して、コンピューティングエンティティ10は、非構造化付加サービスデータ(USSD:Unstructured Supplementary Service information/data)、ショートメッセージサービス(SMS:Short Message Service)、マルチメディアメッセージングサービス(MMS:Multimedia Messaging Service)、デュアルトーン多重周波数シグナリング(DTMF:Dual-Tone Multi-Frequency Signaling)、および/または加入者識別モジュールダイヤラ(SIM dialer:Subscriber Identity Module Dialer)などの概念を使用して、様々な他のエンティティと通信し得る。コンピューティングエンティティ10は、変更、アドオン、および更新を、たとえば、そのファームウェア、ソフトウェア(たとえば、実行可能命令、アプリケーション、プログラムモジュールを含む)、およびオペレーティングシステムにダウンロードすることもできる。
【0177】
コンピューティングエンティティ10は、1つまたは複数のユーザ入出力インターフェース(たとえば、処理デバイスおよび/または要素808ならびにタッチスクリーンに結合されたディスプレイ816および/またはスピーカ/スピーカドライバ、キーボード、マウス、および/または処理デバイスおよび/または要素808に結合されたマイクロフォン)を備えるユーザインターフェースデバイスを備えてもよい。たとえば、ユーザ出力インターフェースは、情報/データの表示または可聴提示を引き起こすために、かつ1つまたは複数のユーザ入力インターフェースを介してそれらと対話するためにコンピューティングエンティティ10上で実行する、かつ/またはその上でアクセス可能なアプリケーション、ブラウザ、ユーザインターフェース、インターフェース、ダッシュボード、スクリーン、ウェブページ、ページ、および/または本明細書で交換可能に使用される同様の用語を提供するように構成され得る。ユーザ入力インターフェースは、コンピューティングエンティティ10がキーパッド818(ハードまたはソフト)、タッチディスプレイ、ボイス/音声もしくは運動インターフェース、スキャナ、リーダー、または他の入力デバイスなどのデータを受信することを可能にするいくつかのデバイスのうちのいずれかを備え得る。キーボード818を含む実施形態では、キーパッド818は、従来のテンキー(0~9)および関連キー(#、*)、およびコンピューティングエンティティ10を動作させるために使用される他のキーを含んでよく(または、それらを表示させてよく)、アルファベットキーの完全なセットまたは英数字キーの完全なセットを提供するようにアクティブ化され得るキーのセットを含んでよい。入力を提供することに加えて、ユーザ入力インターフェースは、たとえば、スクリーンセーバおよび/またはスリープモードなど、一定の機能をアクティブ化または非アクティブ化するために使用され得る。そのような入力を介して、コンピューティングエンティティ10は、情報/データ、ユーザ対話/入力などを収集し得る。
【0178】
コンピューティングエンティティ10は、組み込まれてよく、かつ/またはリムーバブルであってよい、揮発性記憶装置もしくは揮発性メモリ822および/または不揮発性記憶装置もしくは不揮発性メモリ824を含んでもよい。たとえば、不揮発性メモリは、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、MMC、SDメモリカード、メモリスティック、CBRAM、PRAM、FeRAM、RRAM、SONOS、レーストラックメモリなどであってよい。揮発性メモリは、RAM、DRAM、SRAM、FPM DRAM、EDO DRAM、SDRAM、DDR SDRAM、DDR2 SDRAM、DDR3 SDRAM、RDRAM、RIMM、DIMM、SIMM、VRAM、キャッシュメモリ、レジスタメモリなどであってよい。揮発性および不揮発性の記憶装置またはメモリは、コンピューティングエンティティ10の機能を実装するためのデータベース、データベースインスタンス、データベース管理システムエンティティ、データ、アプリケーション、プログラム、プログラムモジュール、スクリプト、ソースコード、オブジェクトコード、バイトコード、コンパイル型コード、インタプリタ型コード、マシンコード、実行可能命令などを記憶し得る。
【0179】
結論
本明細書に記載する本発明の多くの修正および他の実施形態が、前述の説明および関連する図面に提示される教示の利益を有する、本発明が関係する当業者に思い浮かぶであろう。したがって、本発明は開示する特定の実施形態に限定されず、修正および他の実施形態は添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。特定の用語が本明細書で使用されているが、これらは、一般的な説明の意味で使用され、限定のためではない。
【符号の説明】
【0180】
10 コンピューティングエンティティ
20 有線ネットワークまたはワイヤレスネットワーク
30 コントローラ、量子システムコントローラ
40 極低温および/または真空管
50 原子オブジェクト閉じ込め装置、装置
64 操作源
64A 操作源、第1の操作源
64B 操作源、第2の操作源
64C 操作源
66 ビーム経路
66A ビーム経路
66B ビーム経路
66C ビーム経路
70 磁場生成器
70A 磁場生成器、内部磁場生成器
70B 磁場生成器、外部磁場生成器
80 電圧源
90 集光システム
100 量子コンピュータシステム
110 量子コンピュータ
200 一部分
202 電極のいくつかのシーケンス、電極の3つのシーケンス、電極の複数のシーケンス、電極のシーケンス、電極の各シーケンス
202A 電極のシーケンス、電極の第1のシーケンス
202B 電極のシーケンス、電極の1つまたは複数のシーケンス、TT電極の第2のシーケンス、電極の第2のシーケンス
202C 電極のシーケンス、電極の第3のシーケンス
204 電極
210 RFレール、無線周波数(RF)レール
210A 無線周波数(RF)レール
210B 無線周波数(RF)レール
212 破線
215 縦方向の間隙
220 原子オブジェクト結晶
220A 第1の原子オブジェクト結晶
220A.1 第1の原子オブジェクト結晶
220A.2 第1の原子オブジェクト結晶
220B 第2の原子オブジェクト結晶
220B.1 第2の原子オブジェクト結晶
220B.2 第2の原子オブジェクト結晶
222 第1の成分、原子オブジェクト
224 第2の成分、原子オブジェクト
230 開始ロケーション
232 搬送経路
234 宛先ロケーション
400 較正プロセス
705 処理デバイス、処理要素
710 メモリ
715 ドライバコントローラ要素
720 通信インターフェース
725 A/D変換器、アナログデジタル変換要素
806 受信機
808 処理デバイスおよび/または要素
812 アンテナ
814 送信機
816 ディスプレイ
818 キーパッド
822 揮発性メモリ
824 不揮発性メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-09-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の原子オブジェクト閉じ込め装置のためのシム波形のパラメータを較正するための方法であって、
前記特定の原子オブジェクト閉じ込め装置に、前記原子オブジェクト閉じ込め装置によって閉じ込められた少なくとも1つの原子オブジェクト結晶に対する搬送動作を実施させるステップと、
前記原子オブジェクト結晶に対する第1の結晶スペクトルをキャプチャするステップと、
前記第1の結晶スペクトル内の1つまたは複数の側波帯を識別するステップと、
前記第1の結晶スペクトルに基づいて、前記1つまたは複数の側波帯の各々に対するそれぞれの運動周波数およびそれぞれの運動振幅を判定するステップと、
前記それぞれの運動周波数および前記それぞれの運動振幅に基づいて、位相パラメータ化されたシム波形を定めるステップであって、前記位相パラメータ化されたシム波形が位相の関数である、ステップと、
前記位相パラメータ化されたシム波形の位相パラメータが位相範囲にわたって増分されると同時に、前記位相パラメータ化されたシム波形を前記原子オブジェクト結晶に印加させ、1つまたは複数の第2の結晶スペクトルをキャプチャするステップと、
前記1つまたは複数の第2の結晶スペクトルに基づいて、前記1つまたは複数の側波帯の少なくともそれぞれの側波帯を最小化する前記位相範囲内の位相を判定するステップと、
前記位相パラメータ化されたシム波形および前記位相に基づいて、特定のモードのシム波形を定めるステップと、
前記特定の原子オブジェクト閉じ込め装置を使用して量子演算を実施するときに使用するための前記シム波形を提供または記憶するステップと、を含む方法。
【請求項2】
システムであって、
原子オブジェクト閉じ込め装置であって、1つまたは複数の原子オブジェクト結晶を前記原子オブジェクト閉じ込め装置の中に閉じ込めるように構成された原子オブジェクト閉じ込め装置と、
少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータ実行可能命令を記憶したメモリとを備えるコントローラと、を備え、
前記コンピュータ実行可能命令は、前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記コントローラに対して少なくとも、
少なくとも部分的に並行して実施されるべき1つまたは複数の搬送動作を識別することであって、
前記1つまたは複数の搬送動作の各々の搬送動作が、それぞれの原子オブジェクト結晶をそれぞれの開始ロケーションからそれぞれの宛先ロケーションに移動させることに対応し、前記開始ロケーションおよび前記宛先ロケーションは、前記原子オブジェクト閉じ込め装置内のロケーションである、ことと、
前記1つまたは複数の搬送動作のうちの少なくとも1つのためのそれぞれのシム波形を判定することと、
各搬送動作のためのそれぞれの搬送波形を判定することと、
前記それぞれのシム波形および前記それぞれの搬送波形のアグリゲーションに基づいて、印加される波形を判定することと、
1つまたは複数の電圧源を制御して、前記印加される波形による波形電圧信号を前記原子オブジェクト閉じ込め装置の電極のアレイの電極に印加させることと、を実施させるように構成されており、
前記印加される波形の、前記電極のアレイへの印加が、
前記1つまたは複数の搬送動作の各々を前記それぞれの原子オブジェクト結晶に対して実施させ、
前記1つまたは複数の搬送動作のうちの少なくとも1つに対応する前記それぞれの原子オブジェクト結晶の少なくとも1つのコヒーレントな運動モードを脱励起させる、システム。
【請求項3】
前記それぞれのシム波形が、2つ以上の特定のモードのシム波形のアグリゲーションであり、
前記2つ以上の特定のモードのシム波形の各々が、前記それぞれの原子オブジェクト結晶の異なるコヒーレントな運動モードに対応する、請求項2に記載のシステム。