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特表2025-505474単体銀及び単体ルテニウムを備えた粒子状炭素材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-27
(54)【発明の名称】単体銀及び単体ルテニウムを備えた粒子状炭素材料
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/18 20220101AFI20250219BHJP
   C01B 32/354 20170101ALI20250219BHJP
   B01J 2/00 20060101ALI20250219BHJP
【FI】
B22F1/18
C01B32/354
B01J2/00 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024544370
(86)(22)【出願日】2022-09-08
(85)【翻訳文提出日】2024-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2022074937
(87)【国際公開番号】W WO2023160837
(87)【国際公開日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】22159080.5
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】324010105
【氏名又は名称】ヘレウス プレシャス メタルズ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】コヴィェニッチ,ミレナ
(72)【発明者】
【氏名】メザ チンチャ,アナ ルシア
(72)【発明者】
【氏名】ハーワード,マリー レナ
(72)【発明者】
【氏名】ゴック,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ヘルテイス,マティアス
【テーマコード(参考)】
4G004
4G146
4K018
【Fターム(参考)】
4G004BA00
4G146AA06
4G146AB01
4G146AD40
4G146BA01
4K018BC26
(57)【要約】
【解決手段】 単体銀及び単体ルテニウムを備え、0.5~500μmの範囲の平均粒径(d50)、0.5~10mL/gの範囲の細孔容積、及び200~2000m/gの範囲のBET表面を有する、粒子状炭素材料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単体銀及び単体ルテニウムを備え、0.5~500μmの範囲の平均粒径(d50)、0.5~10mL/gの範囲の細孔容積、及び200~2000m/gの範囲のBET表面を有する、粒子状炭素材料。
【請求項2】
前記単体銀及び前記単体ルテニウムによって形成された銀+ルテニウム重量割合を0.1~50重量%の範囲で有し、銀1~2,000重量部対ルテニウム1重量部の範囲の銀対ルテニウムの重量比を有する、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
単体銀及び単体ルテニウムを備えた炭素粒子95~100重量%と、貴金属を含まない炭素粒子0~5重量%とからなり、前記重量%が合計100重量%となる、請求項1又は2に記載の材料。
【請求項4】
水に懸濁された炭素粒子、特に活性炭粒子の存在下で、少なくとも1つの銀前駆体及び少なくとも1つのルテニウム前駆体を還元する工程と、前記還元プロセスの過程で形成された固体を、前記水相から分離する工程と、任意選択で、前記分離された固体を水で洗浄する工程と、任意選択で、前記分離され、任意選択で洗浄された固体を乾燥させる工程と、を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の材料を調製するための方法。
【請求項5】
銀前駆体及びルテニウム前駆体が、連続的に又は同時に還元される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの銀前駆体が、酢酸銀、硫酸銀、及び硝酸銀からなる群から選択され、前記少なくとも1つのルテニウム前駆体が、シュウ酸ルテニウム、酢酸ルテニウム、及びニトロシル硝酸ルテニウムからなる群から選択される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記活性炭粒子が、0.5~400μmの範囲の平均粒径(d50)、0.5~10mL/gの範囲の細孔容積、及び300~3,000m/gの範囲のBET表面を有する活性炭粒子である、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記還元プロセスが、1~4の範囲の酸性pH及び70~100℃の範囲の温度でギ酸を用いて、又は1~4の範囲の酸性pH及び10~40℃の範囲の温度でヒドラジンを用いて、又は9~14の範囲の塩基性pH及び10~40℃の範囲の温度で水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、次亜リン酸塩、及びギ酸塩からなる群から選択される還元剤を用いて、のいずれかで行われる、請求項4~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(1a)水、炭素粒子、特に活性炭粒子、少なくとも1つの銀前駆体及び少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水性懸濁液を供給する工程、
(2a)前記水性懸濁液を、1~4の範囲のpH及び70~100℃の範囲の温度でギ酸と接触させるか、又は1~4の範囲のpH及び10~40℃の範囲の温度でヒドラジンと接触させる工程、
(3)前記形成された固体を、前記水相から分離する工程、
(4)任意選択で、前記分離された固体を洗浄する工程、並びに
(5)任意選択で、前記固体を乾燥させる工程の連続工程を含む、一態様における請求項8に記載の方法。
【請求項10】
(1b)水、炭素粒子、特に活性炭粒子、少なくとも1つの銀前駆体及び少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水性懸濁液を供給する工程、
(2b)前記水性懸濁液を、9~14の範囲のpH及び10~40℃の範囲の温度で、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、次亜リン酸塩及びギ酸塩からなる群から選択される還元剤と接触させる工程、
(3)前記形成された固体を、前記水相から分離する工程、
(4)任意選択で、前記分離された固体を洗浄する工程、並びに
(5)任意選択で、前記固体を乾燥させる工程の連続工程を含む、一態様における請求項8に記載の方法。
【請求項11】
(1c)水、炭素粒子、特に活性炭粒子、並びに、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、次亜リン酸塩及びギ酸塩からなる群から選択される還元剤を含む、9~14の範囲のpHを有する水性懸濁液を供給する工程、
(2c)前記水性懸濁液を、9~14の範囲のpH及び10~40℃の範囲の温度で、(i)少なくとも1つの銀前駆体及び少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液と、又は(ii)少なくとも1つの銀前駆体を含む水溶液、次いで少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液と、又は(iii)少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液、次いで少なくとも1つの銀前駆体を含む水溶液と、接触させる工程、
(3)前記形成された固体を、前記水相から分離する工程、
(4)任意選択で、前記分離された固体を洗浄する工程、並びに
(5)任意選択で、前記固体を乾燥させる工程の連続工程を含む、一態様における請求項8に記載の方法。
【請求項12】
(1d)水、炭素粒子、特に活性炭粒子、及びギ酸又はヒドラジンを含む、1~4の範囲のpHを有する水性懸濁液を供給する工程、
(2d)前記水性懸濁液を、1~4の範囲のpH及び70~100℃の範囲の温度(還元剤としてギ酸の場合)又は10~40℃の範囲の温度(還元剤としてヒドラジンの場合)で、(i)少なくとも1つの銀前駆体及び少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液と、又は(ii)少なくとも1つの銀前駆体を含む水溶液、次いで少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液と、又は(iii)少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液、次いで少なくとも1つの銀前駆体を含む水溶液と、接触させる工程、
(3)前記形成された固体を、前記水相から分離する工程、
(4)任意選択で、前記分離された固体を洗浄する工程、並びに
(5)任意選択で、前記固体を乾燥させる工程の連続工程を含む、一態様における請求項8に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つのC1~C4アルコキシドの完全な加水分解のために少なくとも十分な水の量の存在下で、単体銀及び単体ルテニウムを備えた前記粒子状炭素材料を、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ケイ素、亜鉛、ジルコニウム、及び/又はチタンの少なくとも1つのC1~C4アルコキシドと接触させることによって、前記単体銀及び単体ルテニウムを備えた粒子状炭素材料を更に処理して、50~85の範囲の明度Lを有する増白された粒子状材料を形成させる、請求項4~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
金属表面;コーティング剤、プラスター、成形コンパウンド;プラスチックフィルム、プラスチック部品、若しくはプラスチック繊維の形態でのプラスチック材料、又は添加剤として活性炭を備えたプラスチック材料;合成樹脂製品;イオン交換樹脂;シリコーン製品;セルロース系製品;発泡体;化粧品;フィルタフリース;織物;織物における用途;健康及び衛生における用途;フェイスマスク;人工呼吸器;インソール; 活性炭を備えた又は活性炭をベースとする製品;空気又は水の浄化に使用される活性炭フィルタ;活性炭フィルタを含む製品の抗菌処理のための添加剤としての、請求項1~3に記載の単体銀及び単体ルテニウムを備えた粒子状炭素材料の、又は請求項4~12のいずれか一項に記載の方法に従って調製された粒子状炭素材料の、又は請求項13の方法に従って調製された製品の粒子状炭素材料の使用。
【請求項15】
細菌増殖を可能にする水性媒体中でのヒドロキシルラジカルの形成の触媒作用における不均一触媒としての、請求項1~3に記載の単体銀及び単体ルテニウムを備えた粒子状炭素材料の、又は請求項4~12のいずれか一項に記載の方法によって調製された粒子状炭素材料の、又は請求項13の方法に従って調製された製品の粒子状炭素材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単体銀及び単体ルテニウムを備えた粒子状炭素材料、並びにその調製のための効率的な方法に関する。
【0002】
国際公開第2021/084140(A2)号は、単体銀及び単体ルテニウムを備えた粒子状担体材料を調製するための方法を開示しており、粒子状担体材料は、多種多様な材料及び物質の抗菌処理のための添加剤として使用することができる。
【0003】
本発明の目的は、単体銀及び単体ルテニウムを備えた炭素材料に基づく高い抗菌性の活性材料を提供することであった。
【0004】
その目的は、単体銀及び単体ルテニウムを備え、0.5~500μmの範囲の平均粒径(d50)、0.5~10mL/gの範囲の細孔容積及び200~2,000m/gの範囲のBET表面を有する、」粒子状炭素材料(以下、略して「単体銀及び単体ルテニウムを備えた粒子状炭素材料」とも呼ぶ)を提供することによって達成することができる。単体銀及び単体ルテニウムによって形成されたその銀+ルテニウムの重量割合は、例えば、銀1~2,000重量部対ルテニウム1重量部の範囲の銀対ルテニウムの重量比で、例えば、0.1~50重量%(重量に基づく%)の範囲であることができる。
【0005】
単体銀及び単体ルテニウムを備えた本発明による粒子状炭素材料は、単体銀及び単体ルテニウムを備えた炭素粒子から実質的になり、すなわち、それは、例えば、95~100重量%の範囲の割合で、特に100重量%の割合で単体銀及び単体ルテニウムを備えた炭素粒子を含む。5重量%を超えない可能性のある割合は、貴金属を含まない炭素粒子によって構成され得る。言い換えれば、単体銀及び単体ルテニウムを備えた本発明による粒子状炭素材料は、特に、単体銀及び単体ルテニウムを備えた炭素粒子95~100重量%と、貴金属を含まない炭素粒子0~5重量%とからなることができ、重量%は合計で100重量%になる。
【0006】
「粒子状炭素材料」及び「炭素粒子」という用語が本明細書で使用される。粒子状炭素材料又は炭素粒子は、カーボンナノチューブでもカーボンナノファイバーでもない。むしろ、それらは、炭素粒子、特に活性炭粒子であることができ、すなわち、単体銀及び単体ルテニウムを備えた炭素粒子は、特に単体銀及び単体ルテニウムを備えた炭素粒子、特に単体銀及び単体ルテニウムを備えた活性炭粒子であることができ、貴金属を含まない炭素粒子は、貴金属を含まない炭素粒子、特に貴金属を含まない活性炭粒子であることができる。
【0007】
本明細書で使用される「平均粒径」という用語は、レーザー回折によって測定可能な体積平均一次粒径(d50)を意味する。この場合、円面積相当径(Equivalent Circular Area Diameter、ECAD)として知られているものを、粒径の尺度として有利に使用することができる(RENLIANG XU ET AL:「Comparison of sizing small particles using different technologies,」POWDER TECHNOLOGY,ELSEVIER,BASEL(CH),vol.132,no.2-3,June 24,2003(06-24-2003),pages 145-153を参照)。レーザー回折測定は、湿式測定プロセスに従って、対応する粒径測定装置、例えば、Malvern Instruments製のMastersizer 3000又はMastersizer 2000を使用して行うことができる。湿式測定プロセスでは、粒子状試料は、試料の調製の一部として超音波によってエタノール中に分散させることができる。
【0008】
「細孔容積」という用語が本明細書で使用される。細孔容積は、DIN ISO 15901-1:2016に従って水銀ポロシメトリーによって測定することができる(試料質量30mg;水銀の表面張力0.48N/m;水銀の接触角141.3°;機器:Porotec Pascal 140+440;測定プロセス:スキャン;開始時充填圧0.0128MPa;ディラトメーター:粉末、小容積;試料調製:真空下110℃で8時間)。
【0009】
本明細書で使用される「BET表面」という用語は、DIN ISO 9277:2014-01に従う(6.3.1章、static-volumetric measurement process,gas used:nitrogenに従う)BET測定によって決定できる比表面積を指す。
【0010】
本発明はまた、そのような単体銀及び単体ルテニウムを備えた粒子状炭素材料を調製するための方法にも関する。別の観点から、本プロセスは、単体銀及び単体ルテニウムを有する粒子状炭素材料を提供するための方法としても理解することもできる。本発明による方法では、単体銀及び単体ルテニウムを備えた本発明による粒子状炭素材料は、少なくとも1つの銀前駆体及び少なくとも1つのルテニウム前駆体を、水に懸濁した炭素粒子、特に活性炭粒子の存在下で還元し、次いで、このプロセスで形成された固体を水相から分離し、任意選択で、分離された固体を水で洗浄し、任意選択で、固体を乾燥させることによって、得ることができる。したがって、本発明による方法は、少なくとも1つの銀前駆体及び少なくとも1つのルテニウム前駆体を、水に懸濁された炭素粒子、特に活性炭粒子の存在下で還元する工程と、還元プロセスの過程で形成された固体を水相から分離する工程と、任意選択で、分離された固体を水で洗浄する工程と、任意選択で、分離され、任意選択で洗浄された固体を乾燥させる工程と、を含む。還元プロセス中、銀及びルテニウム前駆体は、連続的に又は好ましくは同時に還元することができる。
【0011】
本明細書で言及される銀前駆体及びルテニウム前駆体は、銀及びルテニウム化合物である。単体銀又は単体ルテニウムは、それぞれ銀化合物及びルテニウム化合物から還元によって製造することができる。
【0012】
好適な銀化合物の例としては、酢酸銀、硫酸銀、好ましくは硝酸銀が挙げられる。
【0013】
好適なルテニウム化合物の例としては、シュウ酸ルテニウム、酢酸ルテニウム、特にニトロシル硝酸ルテニウムが挙げられる。
【0014】
本発明による方法において前駆体化合物の組み合わせとして硝酸銀とニトロシル硝酸ルテニウムとの組み合わせを使用することが特に好ましい。
【0015】
当該還元プロセス中に使用される活性炭粒子は、特に、0.5~400μmの範囲の平均粒径(d50)、0.5~10mL/gの範囲の細孔容積、及び300~3,000m2/gの範囲のBET表面を有する、活性炭粒子である。活性炭粒子は、様々な種類のものであることができ、例えば、熱分解により製造された活性炭、又は、特に、木材、泥炭、果実の皮、クルミの殻、アプリコットの殻、ナツメヤシの皮、ヤシ殻などの天然源由来のものであることができる。それらは、25分後から28分後以内における50%の重量損失によって特徴付けられる燃焼挙動を構成する活性炭であることができ、重量損失は、200℃の開始温度及び20℃/分の加熱速度で、空気雰囲気中における、対応する活性炭の小さい(約8~16mg)粉末試料のTGA(熱重量分析)によって、測定される。約8~16mgの100%開始重量は、200℃の開始温度で測定される。木材又は泥炭から作製された活性炭は、そのような燃焼挙動を有する活性炭の例である。例としては、Cabot Corporation(Alpharetta,Georgia)によって製造されたNorit(登録商標)SX Plus、並びにCalgon Carbon Corporation(Moon Township,Pennsylvania)によって製造されたActicarbone(登録商標)3S及びActicarbone(登録商標)CXVなどの市販のタイプの活性炭が挙げられる。他の活性炭は、28分後超、例えば、28分後超から35分後における50%の重量損失によって特徴付けられ得るより劣った燃焼挙動を有し、その重量損失は、上記のように同じTGA測定プロセスによって同じ条件下で測定される。50%の重量損失が35分より長く続く場合、温度を800℃に維持し、このレベルを超えて上昇させない。ヤシ殻由来の活性炭は、劣った燃焼挙動を有する活性炭のタイプの一例である。例としては、両方ともDonau Carbon GmbH(Frankfurt,Germany)によって製造された、Desorex(登録商標)C33 spezial及びCarbopal(登録商標)CCP 90 FF spezialなどの市販の活性炭のタイプが挙げられる。
【0016】
本発明による方法において行われる還元は、1~4、好ましくは1~2の範囲の酸性pH及び70~100℃、好ましくは70~90℃の範囲の温度でギ酸を用いて、又は1~4、好ましくは1~2の範囲の酸性pH及び10~40℃、好ましくは15~35℃の範囲の温度でヒドラジンを用いて、又は9~14、好ましくは9~12の範囲の塩基性pH及び10~40℃、好ましくは15~35℃の範囲の温度で、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、次亜リン酸塩及びギ酸塩からなる群から選択される還元剤を用いて、のいずれかで行うことができる。
【0017】
ヒドラジンはそれ自体で使用することができるが、好ましくは30~65重量%の範囲のヒドラジン含有量を有するヒドラジン水和物として使用することができる。塩基性pHで操作する際には、ヒドラジンはまた、ヒドラジニウム塩として、例えば、硫酸ヒドラジニウムとして使用することもできる。好ましくは、ヒドラジン水和物を用いて操作する。
【0018】
次亜リン酸塩及びギ酸塩が、本明細書で言及される。これらは、塩、特に、アルカリ金属塩、アルカリ土類塩、及びアンモニウム塩(NH塩)である。好ましくは、次亜リン酸ナトリウム及び次亜リン酸カリウム、又はギ酸ナトリウム及びギ酸カリウムである。
【0019】
本発明による方法では、銀前駆体及びルテニウム前駆体を単体銀及び単体ルテニウムに完全に還元するために、還元剤は、化学量論的に必要な量以上で使用されるが、好ましくは化学量論的に必要な量の110%以下(還元剤としてヒドラジン)又は200%以下(還元剤としてギ酸、水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸塩又はギ酸塩)で使用される。ヒドラジンの例を使用して説明すると、これは、1モルの還元剤ヒドラジンが、還元効果を有する4モルの電子を供給することができ、したがって、還元において1モルのNを放出することを意味し、したがって、例えば、1モルのAgの還元は0.25モルのヒドラジンを要し、1モルのRu3+の還元は0.75モルのヒドラジンを要する。
【0020】
単体銀及び単体ルテニウムを備えた本発明による粒子状炭素材料を調製するための本発明による方法の4つの実施形態を以下に開示する。
【0021】
第1の好ましい実施形態では、本発明による調製方法は、
(1a)水、炭素粒子、特に活性炭粒子、少なくとも1つの銀前駆体及び少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水性懸濁液を供給する工程、
(2a)水性懸濁液を、1~4の範囲のpH及び70~100℃の範囲の温度でギ酸と接触させるか、又は1~4の範囲のpH及び10~40℃の範囲の温度でヒドラジンと接触させる工程、
(3)形成された固体を水相から分離する工程、
(4)任意選択で、分離された固体を水で洗浄する工程、並びに
(5)任意選択で、固体を乾燥させる工程の連続工程を含む。
【0022】
工程(1a)~(5)の順序は、連続工程に関するものであり、中間工程なしに直接連続する工程であることができる。
【0023】
本発明による方法の第1の実施形態の工程(1a)では、水、炭素粒子、特に活性炭粒子、少なくとも1つの銀前駆体及び少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む、水性懸濁液が供給される。
【0024】
水性懸濁液は、炭素粒子、特に活性炭粒子を、少なくとも1つの銀前駆体及び少なくとも1つのルテニウム前駆体の水溶液に添加すること、並びにその中にそれらを懸濁させることによって調製することができる。
【0025】
しかしながら、銀前駆体及びルテニウム前駆体が、好ましくは各場合において水溶液として、炭素粒子、特に活性炭粒子の最初に投入された水性懸濁液に同時に又は任意の順序で(時間遅延を伴って重複して、交互に又は連続的に)添加されるように、操作することが好ましい。両方の前駆体(少なくとも1つの銀前駆体及び少なくとも1つのルテニウム前駆体)の水溶液が、炭素粒子、特に活性炭粒子の最初に投入された水性懸濁液に添加されることが特に好ましい。添加は、好ましくはゆっくりと、例えば、2時間以上、例えば、3~5時間かけて行われる。
【0026】
概して、混合は、添加中、及びまた添加後も、例えば、撹拌によって行われる。添加後の混合は、便宜上、例えば8~120時間、特に24~120時間にわたって行うことができる。
【0027】
添加及び混合プロセスは、例えば、60~90℃の範囲の高温で行なうことができる。次の工程(2a)で一般的なpH範囲にある水性懸濁液のpHで混合を行うことも好都合な場合があり、この目的のために、それに応じてpHを調整するための好適な化学物質を添加することができる。
【0028】
本発明による方法の第1の実施形態の工程(1a)において供給された水性懸濁液の炭素粒子、特に活性炭粒子の重量割合は、例えば、5~30質量%の範囲であることができる。
【0029】
本発明による方法の第1の実施形態の工程(1a)において供給された水性懸濁液の銀の重量割合は、例えば、0.01~2.5重量%の範囲であることができ、一方ルテニウムの重量割合は、例えば、0.01~0.13重量%の範囲であることができる。本発明による方法の第1の実施形態の工程(1a)において供給された水性懸濁液は、例えば、銀1~2,000重量部対ルテニウム1重量部の範囲の重量比によって特徴付けられ、概して銀が著しく優勢である。この銀対ルテニウムの重量比は、工程(5)の完了後に得られた生成物中にも見出される。
【0030】
炭素粒子、特に活性炭粒子、及び貴金属前駆体に加えて、本発明による方法の第1の実施形態の工程(1a)において供給された水性懸濁液は、概して、水及び任意選択でpHを調整するために使用される化学物質を含むのみである。
【0031】
本発明による方法の第1の実施形態の工程(2a)では、工程(1a)で供給された水性懸濁液を、1~4、好ましくは1~2の範囲のpH及び70~100℃、好ましくは70~90℃の範囲の温度でギ酸と接触させるか、又は1~4、好ましくは1~2の範囲のpH及び10~40℃、好ましくは15~35℃の範囲の温度でヒドラジンと接触させる。必要であれば、この場合、水性懸濁液の対応するpH及び対応する温度を最初に調整することができる。酸性pHは、例えば、酢酸を使用して調整することができる。上記のように、銀前駆体及びルテニウム前駆体をそれぞれ単体銀及び単体ルテニウムに完全に還元するために、ギ酸又はヒドラジンは、化学量論的に必要な量以上で使用される。ギ酸を、水性懸濁液に対して、濃縮された形態で、若しくは例えば80重量%~<100重量%の水溶液の形態で添加するように、又はヒドラジンを、水性懸濁液に対して、それ自体で、若しくは例えば65重量%~<100重量%の範囲のヒドラジン濃度で水希釈して添加するように、操作することが好ましい。添加は、好ましくはゆっくりと、例えば、2時間以上、例えば、3~5時間かけて行われる。概して、混合は、添加プロセス中及びまた添加プロセス後にも、例えば、撹拌によって、例えば、2~24時間、特に4~8時間にわたって行われる。
【0032】
第2の特に好ましい実施形態では、本発明による調製方法は、
(1b)水、炭素粒子、特に活性炭粒子、少なくとも1つの銀前駆体及び少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水性懸濁液を供給する工程、
(2b)水性懸濁液を、9~14の範囲のpH及び10~40℃の範囲の温度で、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、次亜リン酸塩及びギ酸塩からなる群から選択される還元剤と接触させる工程、
(3)形成された固体を水相から分離する工程、
(4)任意選択で、分離された固体を水で洗浄する工程、並びに
(5)任意選択で、固体を乾燥させる工程の連続工程を含む。
【0033】
工程(1b)~(5)の順序は、連続工程に関するものであり、中間工程なしに直接連続する工程であることができる。
【0034】
本発明による方法の第2の実施形態の工程(1b)は、本発明による方法の第1の実施形態の工程(1a)と異なっておらず、又は工程(1a)と類似的に行い、この点では、工程(1a)に関する上記の説明を参照するが、参照は、後続の工程(ここでは(2b))において一般的なpH範囲にある水性懸濁液のpHで混合を行うこともここでは好都合であり得ることを指摘することのみにより、この目的のために、それに応じてpHを調整するための好適な化学物質を添加することができる。
【0035】
本質的にアルカリ性のpHを有する活性炭を用いて、例えば、Chemviron製のCeca 2SW活性炭を用いて、操作することは、工程(1b)において特に好都合である。
【0036】
本発明による方法の第2の実施形態の工程(2b)では、工程(1b)で供給された水性懸濁液を、9~14、好ましくは9~12の範囲のpH及び10~40℃、好ましくは15~35℃の範囲の温度で、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、次亜リン酸塩及びギ酸塩からなる群から選択される還元剤と接触させる。必要であれば、この場合、水性懸濁液の対応するpH及び対応する温度を最初に調整することができる。アルカリ性pHは、強塩基、特に水酸化アルカリ、とりわけ水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを使用して調整することができる。上記のように、銀前駆体及びルテニウム前駆体をそれぞれ単体銀及び単体ルテニウムに完全に還元するために、還元剤は、化学量論的に必要な量以上で使用される。還元剤が水溶液の形態で水性懸濁液に添加されるように操作することが、好ましい。添加は、好ましくはゆっくりと、例えば、2時間以上、例えば、3~5時間かけて行われる。概して、混合は、添加中及びまた添加後にも、例えば、撹拌によって、例えば、2~24時間、特に4~8時間にわたって行われる。
【0037】
第3の実施形態では、本発明による調製方法は、
(1c)水、炭素粒子、特に活性炭粒子、並びに、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、次亜リン酸塩及びギ酸塩からなる群から選択される還元剤を含む、9~14の範囲のpHを有する水性懸濁液を供給する工程、
(2c)水性懸濁液を、9~14の範囲のpH及び10~40℃の範囲の温度で、(i)少なくとも1つの銀前駆体及び少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液と、又は(ii)少なくとも1つの銀前駆体を含む水溶液、次いで少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液と、又は(iii)少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液、次いで少なくとも1つの銀前駆体を含む水溶液と、接触させる工程、
(3)形成された固体を水相から分離する工程、
(4)任意選択で、分離された固体を水で洗浄する工程、並びに
(5)任意選択で、固体を乾燥させる工程の連続工程を含む。
【0038】
工程(1c)~(5)の順序は、連続工程に関するものであり、中間工程なしに直接連続する工程であることができる。
【0039】
本発明による方法の第3の実施形態の工程(1c)では、9~14、好ましくは9~12の範囲のpHを有し、水、炭素粒子、特に活性炭粒子、並びに水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、次亜リン酸塩及びギ酸塩からなる群から選択される還元剤を含む、水性懸濁液が供給される。水性懸濁液は、炭素粒子、特に活性炭粒子を、還元剤の水溶液に添加すること、及びその中にそれらを懸濁させることによって調製することができる。しかしながら、還元剤が、好ましくは水溶液として、炭素粒子、特に活性炭粒子の最初に投入された水性懸濁液に添加されるように操作することが好ましい。アルカリ性pHは、強塩基、特に水酸化アルカリ、とりわけ水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを使用して調整することができる。概して、混合は、添加中及びまた添加後にも、例えば、撹拌によって、例えば、1~2時間にわたって行われる。
【0040】
本発明による方法の第3の実施形態の工程(1c)において供給された水性懸濁液の炭素粒子、特に活性炭粒子の重量割合は、例えば、5~30質量%の範囲であることができる。
【0041】
本発明によるプロセスの第3の実施形態の工程(1c)において供給された水性懸濁液の還元剤の重量割合は、例えば、0.5~10重量%の範囲であることができる。
【0042】
炭素粒子、特に活性炭粒子、及び還元剤に加えて、本発明によるプロセスの第3の実施形態の工程(1c)において供給された水性懸濁液は、概して、水及び任意選択でpHを調整するために使用される塩基を含むのみである。
【0043】
本質的にアルカリ性のpHを有する活性炭を用いて、例えば、Chemviron製のCeca 2SW活性炭を用いて、操作することは、工程(1c)において特に好都合である。
【0044】
本発明による方法の第3の実施形態の工程(2c)では、工程(1c)で供給された水性懸濁液を、9~14、好ましくは9~12の範囲のpH、及び10~40℃、好ましくは15~35℃の範囲の温度で、(i)少なくとも1つの銀前駆体及び少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液と、又は(ii)少なくとも1つの銀前駆体を含む水溶液、次いで少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液と、又は(iii)少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液、次いで少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液と、接触させる。上記のように、銀前駆体及びルテニウム前駆体をそれぞれ単体銀及び単体ルテニウムに完全に還元するために、単一の還元剤は、化学量論的に必要な量以上で使用される。変形例(i)に従って操作することが好ましい。
【0045】
本発明による方法の第3の実施形態の工程(1c)における変形例(i)、(ii)又は(iii)に従って使用される貴金属前駆体水溶液の銀及び/又はルテニウムから構成された貴金属の重量割合は、例えば、1~40重量%の範囲であることができる。例えば、銀1~2,000重量部対ルテニウム1重量部の範囲の重量比が使用され、この場合、概して銀が著しく優勢である。この銀対ルテニウムの重量比は、工程(5)の完了後に得られた生成物においても見出される。
【0046】
概して、混合は、添加中及びまた添加後にも、例えば、撹拌によって、例えば、2~24時間、特に4~8時間にわたって行われる。
【0047】
第4の実施形態では、本発明による調製方法は、
(1d)水、炭素粒子、特に活性炭粒子及びギ酸又はヒドラジンを含む、1~4の範囲のpHを有する水性懸濁液を供給する工程、
(2d)水性懸濁液を、1~4の範囲のpH及び70~100℃の範囲の温度(還元剤としてギ酸の場合)又は10~40℃の範囲の温度(還元剤としてヒドラジンの場合)で、(i)少なくとも1つの銀前駆体及び少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液と、又は(ii)少なくとも1つの銀前駆体を含む水溶液、次いで少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液と、又は(iii)少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液、次いで少なくとも1つの銀前駆体を含む水溶液と、接触させる工程、
(3)形成された固体を水相から分離する工程、
(4)任意選択で、分離された固体を水で洗浄する工程、並びに
(5)任意選択で、固体を乾燥させる工程の連続工程を含む。
【0048】
工程(1d)~(5)の順序は、連続工程に関するものであり、中間工程なしで直接連続する工程であることができる。
【0049】
本発明による方法の第4の実施形態の工程(1d)では、1~4、好ましくは1~2の範囲のpHを有する、水、炭素粒子、特に活性炭粒子、及びギ酸又はヒドラジンを含む、水性懸濁液が供給される。
【0050】
水性懸濁液は、炭素粒子、特に活性炭粒子を、ギ酸又はヒドラジンの水溶液に添加すること、及びその中にそれらを懸濁させることによって、調製することができる。しかしながら、ギ酸又はヒドラジンを、好ましくは水溶液として、炭素粒子、特に活性炭粒子の最初に投入された水性懸濁液に添加するように操作することが好ましい。酸性pHは、例えば、酢酸を使用して調整することができる。概して、混合は、添加中及びまた添加後にも、例えば、撹拌によって、例えば、1~2時間にわたって行われる。
【0051】
本発明による方法の第4の実施形態の工程(1d)において供給された水性懸濁液の炭素粒子、特に活性炭粒子の重量割合は、例えば、5~30質量%の範囲であることができる。
【0052】
本発明による方法の第4の実施形態の工程(1d)において供給された水性懸濁液のギ酸又はヒドラジンの重量割合は、例えば、0.5~10重量%の範囲であることができる。
【0053】
炭素粒子、特に、活性炭粒子、及びギ酸又はヒドラジンに加えて、本発明による方法の第4の実施形態の工程(1d)において供給された水性懸濁液は、概して、水及び任意選択でpHを調整するために使用される酸を含むのみである。
【0054】
本発明による方法の第4の実施形態の工程(2d)では、工程(1d)で供給された水性懸濁液を、還元剤としてギ酸の場合は1~4、好ましくは1~2の範囲のpH及び70~100℃、好ましくは70~90℃の範囲の温度で、又は還元剤としてヒドラジンの場合は1~4、好ましくは1~2の範囲のpH及び10~40℃、好ましくは15~35℃の範囲の温度で、(i)少なくとも1つの銀前駆体及び少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液と、又は(ii)少なくとも1つの銀前駆体を含む水溶液、次いで少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液と、又は(iii)少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液、次いで少なくとも1つの銀前駆体を含む水溶液と、接触させる。この場合、上記のように、銀前駆体及びルテニウム前駆体をそれぞれ単体銀及び単体ルテニウムに完全に還元するために、ギ酸又はヒドラジンは、化学量論的に必要な量以上で使用される。変形例(i)に従って操作することが好ましい。
【0055】
本発明による方法の第4の実施形態の工程(1d)における変形例(i)、(ii)又は(iii)に従って使用される貴金属前駆体水溶液の銀及び/又はルテニウムから構成された貴金属の重量割合は、例えば、1~36重量%の範囲であることができる。例えば、銀1~2,000重量部対ルテニウム1重量部の範囲の重量比が使用され、この場合、概して銀が著しく優勢である。この銀対ルテニウムの重量比は、工程(5)の完了後に得られた生成物においても見出される。
【0056】
概して、混合は、添加中及びまた添加後にも、例えば、撹拌によって、例えば、2~24時間、特に4~8時間にわたって行われる。
【0057】
工程(3)~(5)は、本発明による方法の4つ全ての実施態様で同じである。
【0058】
工程(3)では、工程(2a)、(2b)、(2c)及び(2d)の各々で形成された固体を水相から分離する。この目的に好適な固液分離方法の例としては、デカンテーション、圧搾、濾過、吸引濾過、遠心分離、又はこれらの組み合わせなどの当業者に既知の方法が挙げられる。
【0059】
本発明による方法の工程(4)は任意選択であるが、概して、工程(3)で分離された固体を水で洗浄することができる、好都合な工程である。ここで水溶性成分を除去することができる。洗浄は、例えば、ヌッチェフィルタ(Nutsche filter)上で行うことができる。
【0060】
本発明による方法の工程(5)は、任意選択であるが、概して、工程(3)で分離され、任意選択で工程(4)において洗浄された固体を乾燥させることができる、好都合な工程である。この場合、存在する水及び任意の他の揮発性成分は、工程(3)又は工程(4)の完了後に得られた固体から除去される。水は、実質的に完全な水の除去という意味で、又は所望の残留含水量に達するまでの水の除去という意味で、除去することができる。この目的のために、水の大部分は、圧搾、プレス濾過、吸引濾過、遠心分離又は同様な方法などの従来の方法によって除去することができ、その後、任意選択で、減圧によって補助される乾燥が、例えば、20~150℃の範囲の温度で実施される。
【0061】
工程(5)の完了後、単体銀及び単体ルテニウムを備え、0.5~500μmの範囲の平均粒径(d50)、0.5~10mL/gの範囲の細孔容積、及び200~2,000m2/gの範囲のBET表面を有する、本発明による粒子状炭素材料が得られる。単体銀及び単体ルテニウムによって構成されるその銀+ルテニウム重量割合は、広い限度内で、例えば、0.1~50重量%、好ましくは1~40重量%の範囲内で変化することができ、同時に、銀対ルテニウムの重量比は、例えば、銀1~2,000重量部対ルテニウム1重量部の範囲であることができる。走査型電子顕微鏡写真は、銀及びルテニウムが、元々銀を含まずルテニウムを含まない炭素粒子の内面(細孔及び/又は空洞内)及び/又は外面に存在し、それによって、例えば、不連続層及び/又は小さな銀若しくはルテニウム粒子(銀又はルテニウムアイランド)を形成し得ることを示すことができる。銀及びルテニウムは、合金になっておらず、ランダムに分布しており、両方の貴金属は、少なくとも部分的に互いに接触している。銀及びルテニウムが、その表面に単体金属銀以外の銀種及び単体金属ルテニウム以外のルテニウム種、例えば、対応する酸化物、ハロゲン化物及び/又は硫化物を含むことがあることは、当業者には明らかである。そのような種は、本発明による方法の実施中に、又はその後に、例えば、単体銀及び単体ルテニウムを備えた本発明による粒子状炭素材料の保管、使用又は更なる処理中に形成され得る。
【0062】
単体銀及び単体ルテニウムを備えた本発明による粒子状炭素材料は、例えば、35~45の範囲の相応して低い明度Lを有し、暗色又は黒色によって特徴付けられ、これはいくつかの用途では妨げとなる場合がある。明度Lは、d/8°の測定ジオメトリで分光光度測定によって測定されるCIEL色空間(DIN EN ISO/CIE 11664-4:2020-03)における特定のであり、単体銀及び単体ルテニウムを備えた本発明による粒子状炭素材料の分光光度測定は、使用される分光光度計の測定ヘッド上に配置されたガラス容器の平坦なガラス底部から1cmの充填高さまで無色のガラス容器に注入された試料について行うことができる。
【0063】
所望であれば、単体銀及び単体ルテニウムを備えた本発明による粒子状炭素材料を更に処理して、例えば、50~85の範囲の明度Lを有する増白された粒子状材料を形成させることができる。増白のために、単体銀及び単体ルテニウムを備えた本発明による粒子状炭素材料は、少なくとも1つのC1~C4アルコキシドの完全な加水分解のために少なくとも十分な水の量の存在下で、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ケイ素、亜鉛、ジルコニウム、及び/又はチタンの少なくとも1つのC1~C4アルコキシドと接触させることができる。述べたように、増白された粒子状材料、すなわち、例えば、50~85の範囲の明度Lを有する色、例えば、灰色を有する粒子状材料を形成させることができる。この増白された粒子状材料は、少なくとも部分的に表面に位置する固体を有する単体銀及び単体ルテニウムを備えた本発明による粒子状炭素材料からなる。少なくとも1つのC1~C4アルコキシドの選択に応じて、固体は、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、オキシ水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、オキシ水酸化カルシウム、二酸化ケイ素、シリカ、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、オキシ水酸化亜鉛、二酸化ジルコニウム、ジルコニウム(IV)オキシ水和物、二酸化チタン、チタン(IV)オキシ水和物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される固体である。
【0064】
単体銀及び単体ルテニウムを備え、任意選択で、上記のように増白された本発明による粒子状炭素材料は、従来の阻害域試験において、又は微生物の増殖曲線から最小阻害濃度を決定することによって決定することができるように、特に高い抗菌効果によって特徴付けられる。この点に関して、本発明はまた、金属表面;コーティング剤;プラスター;成形コンパウンド;プラスチックフィルム、プラスチック部品又はプラスチック繊維の形態でのプラスチック材料;合成樹脂製品;イオン交換樹脂;シリコーン製品;セルロース系製品;発泡体;化粧品;及び多くの他のもの;の抗菌処理のための添加剤としての、単体銀及び単体ルテニウムを備えた本発明による任意選択で増白された粒子状炭素材料の使用にも関する。
【0065】
添加剤としての、単体銀及び単体ルテニウムを備えた本発明による任意選択で増白された粒子状炭素材料の使用は、フィルタフリースの;織物の、又は織物用途における;健康及び衛生用途における、例えば、フェイスマスク、呼吸マスク、及びインソールにおける;添加剤として活性炭を備えたプラスチック材料などの、活性炭を備えた又は活性炭をベースとする製品の;空気又は水の浄化に使用可能な活性炭フィルタの;又は活性炭フィルタを含む製品の;抗菌処理に特に好都合である。
【0066】
単体銀及び単体ルテニウムを備え、任意選択で、上記のように増白された本発明による粒子状炭素材料は、不均一触媒として、例えば、細菌増殖を可能にする水性媒体中でのヒドロキシルラジカルの形成の触媒作用において使用することもできる。
【実施例
【0067】
参考例1(18.9重量%の単体銀及び1.0重量%の単体ルテニウムを有するセルロース粉末の調製):
75.6g(445mmol)の固体の硝酸銀及び13.94gのニトロシル硝酸ルテニウム溶液(ルテニウム含有量19.0重量%、26.2mmolのRu)を416.8gの脱イオン水に溶解し、このようにして得られた前駆体水溶液を211.2gのセルロース粉末(Rettenmaier und Sohne GmbH & Co KGからのVitacel(登録商標)L-600)と均一に混合して、オレンジ色の自由流動性の含浸粒子状材料を形成した。pH13.9のヒドラジン水溶液705mL[4.19g(131mmol)のヒドラジン、及び81.81gの32重量%水酸化ナトリウム溶液(654.51mmolのNaOH)、残りは水]を、室温で、撹拌しながら、30mL/分の計器計量速度で、自由流動性の含浸粒子状材料に計器で計量した。時間と共に、撹拌がより容易になる均質なパルプが形成された。計器計量が終了した後、窒素放出がもはや観察されなくなるまで、撹拌を30分間続けた。次いで、材料を吸引によって濾し取り、合計1,000mLの水で洗浄し、105℃/300mbarの乾燥キャビネット内で15重量%の残留含水量まで乾燥させた。ICP-OESによって、最終生成物の銀含有量18.9重量%及びルテニウム含有量1.0重量%(残留水分0重量%に対して)が測定された。
【0068】
本発明による実施例2(18.7重量%の単体銀及び0.9重量%の単体ルテニウムを備えた粒子状炭素材料の調製):
157.2gの硝酸銀水溶液(銀含有量36.2重量%、528mmolのAg)及び14.9gのニトロシル硝酸ルテニウム水溶液(ルテニウム含有量18.7重量%、30mmolのRu)、及び1,000mLの水から調製された水溶液を、3,000mLの脱イオン水中における240gの活性炭(Ceca 2SW)の懸濁液に、3時間かけて(7mL/分)添加した。32重量%水酸化ナトリウム水溶液を使用して懸濁液のpHを9に調整した。懸濁液を80℃で2日間撹拌した。次いで、懸濁液を35℃に冷却し、7.7gのヒドラジン水和物(ヒドラジン含有量64重量%)、96.5gの水酸化ナトリウム及び400mLの水からなる溶液を、3時間かけて計器計量し(3mL/分)、更に4時間撹拌した。次いで、材料を吸引で濾し取り、合計20Lの水で洗浄した。このようにして得られた生成物において、50.8重量%の残留水含有量が測定された。ICP-OESによって、生成物の銀含有量18.7重量%及びルテニウム含有量0.9重量%(残留水分0重量%に対して)が測定された。
【0069】
実施例3(参考例1及び本発明による実施例2からの生成物のそれらの抗微生物効果を比較するための試験):
別々の三角フラスコにおいて、トリプシン大豆ブロス(trypic soy broth、TSB)中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus、MRSA)の培養物30mLを、0.05の光学密度に調整した。次いで、1~20mgの範囲の異なる量の参考例1からの生成物を秤量した。試料は、振盪インキュベーターにおいて37℃及び150rpmでインキュベートした。6時間以内において、600nmの波長での光学密度(OD600)を1時間間隔で測定した。細菌増殖の阻害は、対照試料と比較して、光学密度の縮小された増加によって示された。活性抗菌物質を添加していないMRSA培養物が対照試料として役目を果たした。細菌増殖の完全な阻害の場合、光学密度の増加は観察されるようにならなかった。参考例1又は本発明による実施例2からの生成物の対応する試料量を使用して、最小阻害濃度を計算した。これは、0.55mg/mLの参考例1からの生成物の最小阻害濃度、及びそれに比較して、0.35mg/mLの本発明による実施例2からの生成物のより低い最小阻害濃度という結果になった。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単体銀及び単体ルテニウムを備え、0.5~500μmの範囲の平均粒径(d50)、0.5~10mL/gの範囲の細孔容積、及び200~2000m/gの範囲のBET表面を有する、粒子状炭素材料。
【請求項2】
前記単体銀及び前記単体ルテニウムによって形成された銀+ルテニウム重量割合を0.1~50重量%の範囲で有し、銀1~2,000重量部対ルテニウム1重量部の範囲の銀対ルテニウムの重量比を有する、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
単体銀及び単体ルテニウムを備えた炭素粒子95~100重量%と、貴金属を含まない炭素粒子0~5重量%とからなり、前記重量%が合計100重量%となる、請求項1又は2に記載の材料。
【請求項4】
水に懸濁された炭素粒子、特に活性炭粒子の存在下で、少なくとも1つの銀前駆体及び少なくとも1つのルテニウム前駆体を還元する工程と、前記還元プロセスの過程で形成された固体を、前記水相から分離する工程と、任意選択で、前記分離された固体を水で洗浄する工程と、任意選択で、前記分離され、任意選択で洗浄された固体を乾燥させる工程と、を含む、請求項1に記載の材料を調製するための方法。
【請求項5】
銀前駆体及びルテニウム前駆体が、連続的に又は同時に還元される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの銀前駆体が、酢酸銀、硫酸銀、及び硝酸銀からなる群から選択され、前記少なくとも1つのルテニウム前駆体が、シュウ酸ルテニウム、酢酸ルテニウム、及びニトロシル硝酸ルテニウムからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記活性炭粒子が、0.5~400μmの範囲の平均粒径(d50)、0.5~10mL/gの範囲の細孔容積、及び300~3,000m/gの範囲のBET表面を有する活性炭粒子である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記還元プロセスが、1~4の範囲の酸性pH及び70~100℃の範囲の温度でギ酸を用いて、又は1~4の範囲の酸性pH及び10~40℃の範囲の温度でヒドラジンを用いて、又は9~14の範囲の塩基性pH及び10~40℃の範囲の温度で水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、次亜リン酸塩、及びギ酸塩からなる群から選択される還元剤を用いて、のいずれかで行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
(1a)水、炭素粒子、特に活性炭粒子、少なくとも1つの銀前駆体及び少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水性懸濁液を供給する工程、
(2a)前記水性懸濁液を、1~4の範囲のpH及び70~100℃の範囲の温度でギ酸と接触させるか、又は1~4の範囲のpH及び10~40℃の範囲の温度でヒドラジンと接触させる工程、
(3)前記形成された固体を、前記水相から分離する工程、
(4)任意選択で、前記分離された固体を洗浄する工程、並びに
(5)任意選択で、前記固体を乾燥させる工程の連続工程を含む、一態様における請求項8に記載の方法。
【請求項10】
(1b)水、炭素粒子、特に活性炭粒子、少なくとも1つの銀前駆体及び少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水性懸濁液を供給する工程、
(2b)前記水性懸濁液を、9~14の範囲のpH及び10~40℃の範囲の温度で、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、次亜リン酸塩及びギ酸塩からなる群から選択される還元剤と接触させる工程、
(3)前記形成された固体を、前記水相から分離する工程、
(4)任意選択で、前記分離された固体を洗浄する工程、並びに
(5)任意選択で、前記固体を乾燥させる工程の連続工程を含む、一態様における請求項8に記載の方法。
【請求項11】
(1c)水、炭素粒子、特に活性炭粒子、並びに、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、次亜リン酸塩及びギ酸塩からなる群から選択される還元剤を含む、9~14の範囲のpHを有する水性懸濁液を供給する工程、
(2c)前記水性懸濁液を、9~14の範囲のpH及び10~40℃の範囲の温度で、(i)少なくとも1つの銀前駆体及び少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液と、又は(ii)少なくとも1つの銀前駆体を含む水溶液、次いで少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液と、又は(iii)少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液、次いで少なくとも1つの銀前駆体を含む水溶液と、接触させる工程、
(3)前記形成された固体を、前記水相から分離する工程、
(4)任意選択で、前記分離された固体を洗浄する工程、並びに
(5)任意選択で、前記固体を乾燥させる工程の連続工程を含む、一態様における請求項8に記載の方法。
【請求項12】
(1d)水、炭素粒子、特に活性炭粒子、及びギ酸又はヒドラジンを含む、1~4の範囲のpHを有する水性懸濁液を供給する工程、
(2d)前記水性懸濁液を、1~4の範囲のpH及び70~100℃の範囲の温度(還元剤としてギ酸の場合)又は10~40℃の範囲の温度(還元剤としてヒドラジンの場合)で、(i)少なくとも1つの銀前駆体及び少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液と、又は(ii)少なくとも1つの銀前駆体を含む水溶液、次いで少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液と、又は(iii)少なくとも1つのルテニウム前駆体を含む水溶液、次いで少なくとも1つの銀前駆体を含む水溶液と、接触させる工程、
(3)前記形成された固体を、前記水相から分離する工程、
(4)任意選択で、前記分離された固体を洗浄する工程、並びに
(5)任意選択で、前記固体を乾燥させる工程の連続工程を含む、一態様における請求項8に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つのC1~C4アルコキシドの完全な加水分解のために少なくとも十分な水の量の存在下で、単体銀及び単体ルテニウムを備えた前記粒子状炭素材料を、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ケイ素、亜鉛、ジルコニウム、及び/又はチタンの少なくとも1つのC1~C4アルコキシドと接触させることによって、前記単体銀及び単体ルテニウムを備えた粒子状炭素材料を更に処理して、50~85の範囲の明度Lを有する増白された粒子状材料を形成させる、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
金属表面;コーティング剤、プラスター、成形コンパウンド;プラスチックフィルム、プラスチック部品、若しくはプラスチック繊維の形態でのプラスチック材料、又は添加剤として活性炭を備えたプラスチック材料;合成樹脂製品;イオン交換樹脂;シリコーン製品;セルロース系製品;発泡体;化粧品;フィルタフリース;織物;織物における用途;健康及び衛生における用途;フェイスマスク;人工呼吸器;インソール; 活性炭を備えた又は活性炭をベースとする製品;空気又は水の浄化に使用される活性炭フィルタ;活性炭フィルタを含む製品の抗菌処理のための添加剤としての、請求項1に記載の単体銀及び単体ルテニウムを備えた粒子状炭素材料の使用。
【請求項15】
細菌増殖を可能にする水性媒体中でのヒドロキシルラジカルの形成の触媒作用における不均一触媒としての、請求項1に記載の単体銀及び単体ルテニウムを備えた粒子状炭素材料の使用。

【国際調査報告】