IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハーモニック ドライブ エスイーの特許一覧

<>
  • 特表-歯車装置ボックス 図1
  • 特表-歯車装置ボックス 図2
  • 特表-歯車装置ボックス 図3
  • 特表-歯車装置ボックス 図4
  • 特表-歯車装置ボックス 図5
  • 特表-歯車装置ボックス 図6
  • 特表-歯車装置ボックス 図7
  • 特表-歯車装置ボックス 図8
  • 特表-歯車装置ボックス 図9
  • 特表-歯車装置ボックス 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】歯車装置ボックス
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20250220BHJP
   F16H 55/06 20060101ALI20250220BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
F16H1/32 B
F16H55/06
F16C19/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518911
(86)(22)【出願日】2023-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 EP2023075415
(87)【国際公開番号】W WO2024149477
(87)【国際公開日】2024-07-18
(31)【優先権主張番号】102023100528.6
(32)【優先日】2023-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522394351
【氏名又は名称】ハーモニック ドライブ エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】ツェンス、フランク
(72)【発明者】
【氏名】ルーケルト、シモン
【テーマコード(参考)】
3J027
3J030
3J701
【Fターム(参考)】
3J027FA17
3J027FA36
3J027FB32
3J027GB03
3J027GC06
3J027GC22
3J027GE25
3J027GE27
3J027GE29
3J030BC02
3J701AA02
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA71
3J701FA44
3J701FA55
3J701GA11
(57)【要約】
【課題】転動体の軸方向の確保のために追加的な構成部品を使用することのない歯車装置ボックスを提供する。
【解決手段】歯車装置ボックス(70)であって、外側の回転ベアリングリング(1a)と、外側の回転ベアリングリング(1a)内に配設された内側の回転ベアリングリング(1b)とを備えた回転ベアリング(50)を含み、外側の回転ベアリングリング(1a)と内側の回転ベアリングリング(1b)との間には、転動体(16)のための装填溝(18)が構成されており、回転ベアリング(50)内に支持された、中心縦軸線(15)を有する波動歯車装置(40)が、ウェーブジェネレータ(10)と、外歯部(3)を備えた弾性的なフレクスプライン(4)と、内歯部(5)を備えたサーキュラスプライン(6)とを有し、フレクスプライン(4)は、ウェーブジェネレータ(10)上に差し込み可能であり、またウェーブジェネレータ(10)により、フレクスプライン(4)の外歯部(3)が楕円長軸の対向領域においてサーキュラスプライン(6)の内歯部(5)と係合可能であるように、弾性的に変形可能であり、サーキュラスプライン(6)は、転動体(16)の軸方向の運動を妨げる確保要素(20)を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車装置ボックス(70)であって、
外側の回転ベアリングリング(1a)と、前記外側の回転ベアリングリング(1a)内に配設された内側の回転ベアリングリング(1b)とを備えた回転ベアリング(50)を含み、前記外側の回転ベアリングリングと前記内側の回転ベアリングリングとの間には、転動体(16)のための装填溝(18)が構成されており、前記回転ベアリング(50)内に支持された、中心縦軸線(15)を有する波動歯車装置(40)が、ウェーブジェネレータ(10)と、外歯部(3)を備えた弾性的なフレクスプライン(4)と、内歯部(5)を備えたサーキュラスプライン(6)とを有し、前記フレクスプライン(4)は、前記ウェーブジェネレータ(10)上に差し込み可能であり、また駆動構成部品(2)により、前記フレクスプライン(4)の前記外歯部(3)が楕円長軸の対向領域において前記サーキュラスプライン(6)の前記内歯部(5)と係合可能であるように、弾性的に変形可能である構成であり、
前記サーキュラスプライン(6)は、前記転動体(16)の軸方向の運動を妨げる確保要素(20)を有すること、
を特徴とする歯車装置ボックス(70)。
【請求項2】
前記確保要素(20)は、前記サーキュラスプライン(6)の全周部をめぐって、特に回転対称に構成されていること、
を特徴とする、請求項1に記載の歯車装置ボックス(70)。
【請求項3】
前記確保要素(20)は、周部側で所定の有限角度(α)だけをとること、
を特徴とする、請求項1に記載の歯車装置ボックス(70)。
【請求項4】
前記確保要素(20)は、前記転動体(16)に対し、前記波動歯車装置(40)の前記中心縦軸線(15)に対して直角の当接走行面部(17)を有すること、
を特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の歯車装置ボックス(70)。
【請求項5】
前記確保要素(20)は、前記波動歯車装置(40)の前記中心縦軸線(15)に対して直角の方向において、前記転動体(16)の半径の4%と10%の間に位置する大きさ、特に7%の大きさを有すること、
を特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の歯車装置ボックス(70)。
【請求項6】
前記確保要素(20)は、前記転動体(16)の軸方向の運動を前記転動体(16)の半径の10%未満に制限すること、
を特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の歯車装置ボックス(70)。
【請求項7】
前記確保要素(20)は、軸方向のカラー部(22)として構成されていること、
を特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の歯車装置ボックス(70)。
【請求項8】
前記確保要素(20)は、横断面が2つの円弧により形成される平たい軸方向の突起部(24)として構成されていること、
を特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の歯車装置ボックス(70)。
【請求項9】
前記サーキュラスプラインの歯車(6)は、鋼材料又は鋳造材料から製造されていること、
を特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の歯車装置ボックス(70)。
【請求項10】
前記波動歯車装置(40)は、平形歯車装置として構成されていること、
を特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の歯車装置ボックス(70)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念による歯車装置ボックス(ギヤボックス)に関する。
【背景技術】
【0002】
回転ベアリングと、回転ベアリング内に支持された波動歯車装置(Spannungswellengetriebe; strain wave gearing)とは、歯車装置ボックスを構成する。この種の歯車装置ボックスは、多岐にわたり多くの技術分野において使用される。特にこの種の歯車装置ボックスは、ロボット技術において、また補装具技術においても、ますます使用されている。
【0003】
波動歯車装置は、互いに同軸に配設された3つのコンポーネント、即ち構成グループとして、楕円形の横断面を有するウェーブジェネレータと、剛性の内歯付きの中空歯車であるサーキュラスプラインと、薄肉のブッシュ形状の外歯付きの歯車装置構成部品であるフレクスプラインとから構成される。ウェーブジェネレータは、ボールベアリングを介してフレクスプラインの歯付き領域を変形させ、それによりフレクスプラインの外歯部が楕円長軸の両側でサーキュラスプラインの内歯部と係合状態にある。
【0004】
ウェーブジェネレータの回転に伴い、楕円長軸が移動し、それにより歯係合領域が周方向において移動する。歯車装置のフレクスプラインは、通常はサーキュラスプラインよりも歯が2つ少ないので、フレクスプラインは、ウェーブジェネレータの半回転中には1歯ピッチの角度分だけサーキュラスプラインに対して相対回転し、また全1回転中には2歯ピッチの角度分だけサーキュラスプラインに対して相対回転する。サーキュラスプラインが位置固定されている場合には、フレクスプラインは、従動要素としてウェーブジェネレータとは逆方向に回転する。この際、サーキュラスプラインは、回転ベアリングリング(回転軸受リング)内に位置固定可能に配設されていることが可能である。
【0005】
回転運動を実現するために、波動歯車装置における外歯付きの歯車装置構成部品ないしフレクスプラインと、中空歯車ないしサーキュラスプラインとは、回転ベアリングのそれぞれのリングと接続されている。
【0006】
下記特許文献1(DE 10 2015 104 308 A1)から、回転ベアリングを次のように構成すること、即ち中空歯車ないし伝達構成部品と、回転ベアリングリングとにそれぞれ少なくとも1つの受入部が備えられており、この受入部を通り、両方の受入部が互いに一致する位置において、中空歯車ないし伝達構成部品の回転ベアリング面と、回転ベアリングリングの回転ベアリング面との間の回転ベアリング内に転動体が取り入れ可能であるように構成することが公知である。
【0007】
下記特許文献2(DE 10 2020 109 646 A1)では、内側の回転ベアリングリングと外側の回転ベアリングリングとを備えた回転ベアリングが開示されており、この回転ベアリングでは、内側の回転ベアリングリングの回転ベアリング面と、外側の回転ベアリングリングの回転ベアリング面との間に、転動体のための受入部を備えた転がりベアリングが配設されており、この際、少なくとも1つの受入部において、転がりベアリングの受入開口部と転動体との間に、転動体のための案内リングが配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102015104308号
【特許文献2】独国特許出願公開第102020109646号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
既知の解決策において、転動体の軸方向の確保(脱落防止)のために追加的な構成部品を使用する必要があり、それにより構成部品の数、製造コスト、摩耗、及び故障の起こりやすさが増すことは、不利である。
【0010】
従って本発明の課題は、従来技術の欠点が克服されるように上述の歯車装置を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題は、本発明に従い、サーキュラスプラインないし中空歯車が、転動体の軸方向の運動を妨げる確保要素(抑止要素)を有することにより達成される。
【0012】
本発明の有利な構成は、下位請求項の対象である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態について説明する。
【0014】
本発明は、回転ベアリングからの転動体の脱落は必ず回避されるべきであろうという考えから出発している。特にアクセスが困難な取付状況において、回転ベアリングの交換は、極めて複雑である。更に稼働状態時のベアリングの機能不良やベアリングのブロック(ないしかみつき)は、危険な状況をもたらす可能性がある。転動体を軸方向に制限するための案内リングとして別個の構成部品を使用することは、回転ベアリングの組立手間を増やすことになる。
【0015】
そこで、転動体の脱落は、転動体のための装填溝に隣接する既存の構成部品に確保要素が組み込まれることにより、追加的な構成部品を用いないで防止可能であるということが認識された。サーキュラスプラインは、装填溝に隣接して配設され得るので、確保要素をサーキュラスプラインと一体化することができ、それにより更なる構成部品は不必要となる。つまり確保要素は、サーキュラスプラインないし中空歯車と一体化されて構成されており、このことは、両方の部品が一体式で、ないし1つの材料から製造されていることを意味する。
【0016】
それにより確保要素は、いわばセキュアリングノーズとして機能する。それによりサーキュラスプラインないし中空歯車は、その歯車装置機能の他に転動体の脱落も防止することにより、二重機能を満たす。
【0017】
歯車装置ボックスの構成部品、即ち両方の回転ベアリングリングと、構成グループ、即ちウェーブジェネレータ、フレクスプラインないし外歯付きの歯車装置構成部品、及びサーキュラスプラインないし中空歯車とは、波動歯車装置ないし歯車装置ボックスの中心縦軸線に対して同軸に配設されている。
【0018】
好ましい一実施形態において、確保要素は、中空歯車の全周部をめぐって、特に回転対称に構成されている。このことは、中空歯車のあらゆる回転位置において転動体が確保ないし保持されるという利点を有し、それにより歯車装置ボックスの組み立てが簡素化される。また同時に中心合わせが可能とされ、それにより回転対称の確保要素は、二重機能を行う。
【0019】
代替的な好ましい一実施形態において、確保要素は、確保要素が周部側で所定の有限角度だけをとるように構成されている。この構成は、装填溝の領域だけで転動体の確保を行えばよいという考えに基づく。角度の大きさは、転動体の大きさに依存し、つまり脱落又は挟まりが防止されるように選択されるべきである。その角度は、好ましくは5°と15°の範囲内に位置する。このようにして歯車の製造において重量を減らすことができる。
【0020】
確保要素は、有利には、転動体に対し、波動歯車装置の中心縦軸線に対して直角の当接走行面部(Anlaufflaeche)を有する。当接走行面部は、好ましくは平坦面部として形成されている。代替的に当接走行面部は、凸状又は凹状に形成されていてもよい。
【0021】
確保要素は、好ましくは(波動歯車装置の中心縦軸線に対して直角の)半径方向において、転動体の半径の4%と10%の間に位置する大きさ、特に7%の大きさを有する。
【0022】
好ましくは、確保要素は、転動体の軸方向の運動を転動体の半径の10%未満に制限する。
【0023】
好ましい一実施形態において、確保要素は、軸方向のカラー部(つば部)として構成されている。軸方向のカラー部は、好ましくは、軸方向において、即ち歯車装置ないし歯車装置ボックスの中心縦軸線と平行な方向において、装填溝内に突出する。
【0024】
更に好ましい一実施形態において、確保要素は、横断面が2つの円弧により形成される軸方向の突起部として構成されている。内側の円弧は、より大きい半径を有し、その中心は、構成部品軸線上に位置する。より小さい半径を有する外側の円弧の中心は、内側の円弧上又はその近くに位置する。突起部の軸線は、歯車装置の中心縦軸線と平行に延在することができ、又は装填開口部の軸線に対応して傾けられていてもよい。この実施形態の利点は、極端な荷重下での確保要素の変形に対する大幅に増加された抵抗力である。
【0025】
好ましくは、中空歯車ないしサーキュラスプラインは、鋼材料又は鋳造材料から製造されている。
【0026】
波動歯車装置は、第1の好ましい実施形態において、平形歯車装置(フラット形歯車装置)として構成されている。第2の好ましい実施形態において、波動歯車装置は、鍋形歯車装置(ポット形歯車装置)として構成されている。
【0027】
本発明の利点は、特に、転動体のための確保要素をサーキュラスプラインと一体化することにより、歯車装置ボックスの特に信頼性があり且つ丈夫な構成が提供されるということにある。転動体の軸方向の運動制限のために別個の構成部品が不必要となるので、歯車装置ボックスの組み立てが簡素化される。それに加え、確保要素は、サーキュラスプラインのねじ締めないしボルト締めを介して固定されている。
【0028】
本発明の更なる目的、利点、特徴、並びに適用可能性は、図面に基づく実施例の以下の説明から明らかである。この際、本明細書に記載された全ての特徴及び/又は本図面に図示された全ての特徴は、それら自体で又はそれらの有意義な任意の組み合わせとして、請求項又は請求項の従属関係におけるそれらの関連付けに依存せずとも、本発明の対象を構成するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】好ましい一実施形態における、鍋形歯車装置が内部に支持された回転ベアリングの縦断面の正面図を示す図である。
図2図1からの一部分拡大図を示す図である。
図3】平形歯車装置を有する回転ベアリングの縦断面の正面図を示す図である。
図4図3からの一部分拡大図を示す図である。
図5】好ましい一実施形態におけるサーキュラスプラインを斜視図として示す図である。
図6図5によるサーキュラスプラインを左側からの側面図として示す図である。
図7図6の縦断面を示す図である。
図8】他の好ましい一実施形態におけるサーキュラスプラインを斜視図として示す図である。
図9図8によるサーキュラスプラインを左側からの側面図として示す図である。
図10図9の縦断面を示す図である。
【実施例
【0030】
全ての図において、同じ部品には、同じ参照符号が付けられている。
【0031】
図1には、波動歯車装置(ストレインウェーブギア)40が内部に支持された本発明による回転ベアリング(回転軸受)50の一実施例が、組み立てられた状態で縦断面図として示されており、回転ベアリング50と波動歯車装置40は、共同で歯車装置ボックス(ギヤボックス)70を構成する。
【0032】
回転ベアリング50は、回転ベアリング面9ないしレース(軌道部)(図2を参照)を備えた外側の回転ベアリングリング1aと、外側の回転ベアリングリング1aに対して同軸に配設されて回転ベアリング面7ないしレース(軌道部)を備えた内側の回転ベアリングリング1bと、複数の転動体とを有する。両方の回転ベアリングリング1a、1bのレースは、周部の所定箇所において装填開口部18により中断されており、装填開口部18を通って転動体16が回転ベアリング50内に装填される。それらのレースは、好ましい一実施形態において、4点ベアリング(4点接触ベアリング)におけるように構成されている。転動体16は、図示の例において、ボール(球体)として構成されており、回転ベアリングリング1a、1bの低摩擦の相対回転を可能にし、同時に波動歯車装置40の構成部品の傾きと変位を防止する。図1に図示されたラジアルシャフトシールリング30は、回転ベアリング50からの潤滑剤の漏れ出しを防止する、半径方向に作用するシールである。更にこのシールは、回転ベアリング50内への異物の進入を防止する。
【0033】
波動歯車装置40は、鍋形歯車装置(ポット形歯車装置)として構成されており、楕円形のウェーブジェネレータ10と、外歯部3を備えたフレクスプライン4と、内歯部5を備えたサーキュラスプライン6とを有する。
【0034】
ウェーブジェネレータ10は、ここで選択された実施例では、中央のハブ、所謂プラグ28と、ボールベアリング、所謂ウェーブジェネレータベアリング12とにより構成されている。プラグ28は、半径方向でその外側において、楕円形に類似する横断面を有する。楕円形の横断面を有するこのマントル面部(外周面部)上にウェーブジェネレータベアリング12が取り付けられている。ウェーブジェネレータベアリング12は、楕円形の横断面への変形に耐えるように構成されている。
【0035】
波動歯車装置40の複数の構成部品は、同軸に配設されている。ウェーブジェネレータ10によりフレクスプライン4は、同様に楕円形に変形される。楕円形に変形されたフレクスプライン4は、その外歯部3を用い、楕円長軸の対向領域においてサーキュラスプライン6の内歯部5に係合する。
【0036】
フレクスプライン4は、その外歯部3をもって、楕円長軸の領域においてのみサーキュラスプライン6の内歯部5と係合状態にある。ウェーブジェネレータ10の回転により楕円形の変形は、フレクスプライン4の周部に沿って移動し、フレクスプライン4とサーキュラスプライン6の間の回転相対運動が起こり、それにより高い減速比が1つのギヤ段だけで実現される。
【0037】
フレクスプライン4は、ここで選択された実施例では、サーキュラスプライン6よりも歯が2つ少なく、それによりウェーブジェネレータ10の半回転中には、フレクスプライン4とサーキュラスプライン6の間に1歯ピッチの角度分だけ相対回転が生じ、また全回転中には2歯ピッチ分で相対回転が生じる。
【0038】
回転ベアリング50と波動歯車装置40の構成部品、即ち内側の回転ベアリングリング1b、外側の回転ベアリングリング1a、ウェーブジェネレータ10、フレクスプライン4、及びサーキュラスプライン6は、共通の中心縦軸線15の周りに同軸に配設されている。フレクスプライン4は、内側の回転ベアリングリング1bと接続されている。サーキュラスプライン6は、外側の回転ベアリングリング1aと接続されている。
【0039】
歯車装置ボックス70、従って回転ベアリング50は、高い信頼性と耐久性(寿命)のために最適化されている。装填溝18からの転動体16の脱落を防止するために、サーキュラスプライン6は、確保要素(抑止要素)20を有し、或いは確保要素20と一体的に構成されており、確保要素20は、好ましい本実施例では、軸方向のカラー部(つば部)22として構成されている(図2を参照)。このことは、確保要素20が軸方向において、即ち中心縦軸線15の方向において、装填溝18内に延在することを意味する。軸方向のカラー部22は、転動体16に対し、波動歯車装置40の中心縦軸線15に対して直角の当接走行面部17を有する。それに加え、軸方向のカラー部22は、半径方向において、即ち中心縦軸線15に対して直角の方向において、一定の厚さを有する。軸方向のカラー部22は、中空歯車(サーキュラスプライン)6の周方向において、全体的に延在し、即ち360°にわたり延在する。
【0040】
確保要素20がサーキュラスプライン6と一体的に構成されている、ないしサーキュラスプライン6と一体化されていることにより、追加的な構成部品としての別個の案内リングを省略することができ、それにより歯車装置ボックス70の組み立てが簡素化される。
【0041】
図3図4は、他の好ましい一実施形態における、波動歯車装置40を備えた回転ベアリング50を示している。ここで波動歯車装置40は、平形歯車装置(フラット形歯車装置)として構成されている。この波動歯車装置40においても、サーキュラスプライン6は、確保要素20を有し、確保要素20は、カラー部22として構成されており、転動体16に対する当接走行面部17を有し、当接走行面部17は、波動歯車装置40の中心縦軸線15に対して直角に配向されている。
【0042】
図5には、好ましい一実施形態における、波動歯車装置40のためのサーキュラスプライン6が斜視図として図示されている。図5によるサーキュラスプライン6は、図6では側面図として示されており、またその縦断面図は、図7に示されている。
【0043】
サーキュラスプライン6は、カラー部22として構成された確保要素20を有する。図1図2に示された実施例のカラー部22とは異なり、当該カラー部22は、サーキュラスプライン6において周方向に全体的には延在していない。カラー部22は、有利には、転動体16のための装填開口部と同じ大きさの角度α又はそれよりも幾らか大きい角度α(図6を参照)に延在している。本実施例において、その角度αは、例えば10°である。軸方向(に突出)のカラー部22は、転動体16に対し、波動歯車装置40の中心縦軸線15に対して直角の当接走行面部17を有する。
【0044】
図8には、他の好ましい一実施形態における、波動歯車装置40のためのサーキュラスプライン6が斜視図として図示されている。図8によるサーキュラスプライン6は、図9では側面図として示されており、またその縦断面図は、図10に示されている。
【0045】
サーキュラスプライン6は、この実施形態では軸方向の突起部24として構成されている確保要素20を有する。図1~4に示された実施例のカラー部22とは異なり、軸方向の突起部24は、サーキュラスプライン6において周側(周方向)で全体的には延在していない。他の好ましい一実施形態において、確保要素20は、横断面が2つの円弧により形成される軸方向の突起部24として構成されている。内側の円弧は、より大きい半径を有し、その中心は、構成部品軸線上に位置する。より小さい半径を有する外側の円弧の中心は、内側の円弧上又はその近くに位置し、即ちこの突起部24は、転動体16に対してより大きい当接走行面部17を有する。軸方向の突起部24(図9を参照)は、転動体16のための装填開口部よりも僅かに小さい。軸方向の突起部24は、図示の実施例では、転動体16に対し、波動歯車装置40の中心縦軸線15に対して直角の当接走行面部17を有する。この実施例の利点は、出て行こうとするボールに対する高められた抵抗力にある。
【0046】
図1~10に図示された全てのサーキュラスプライン6において、確保要素20は、それぞれ、サーキュラスプライン6と一部材式で製造(構成)されている。サーキュラスプライン6は、好ましくは、鋳物材料又は鋼材料から製造されている。
【符号の説明】
【0047】
1a 外側の回転ベアリングリング
1b 内側の回転ベアリングリング
3 外歯部
4 フレクスプライン
5 内歯部
6 サーキュラスプライン
7 内側の回転ベアリングリングにおける回転ベアリング面
8 転動体
9 外側の回転ベアリングリングにおける回転ベアリング面
10 ウェーブジェネレータ
12 ウェーブジェネレータベアリング
15 中心縦軸線
16 転動体
17 当接走行面部
18 装填溝
20 確保要素
22 軸方向のカラー部
24 突起部
28 プラグ
30 ラジアルシャフトシールリング
40 波動歯車装置
50 回転ベアリング
70 歯車装置ボックス
α 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-04-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車装置ボックスあって、
外側の回転ベアリングリング(1a)と、前記外側の回転ベアリングリング(1a)内に配設された内側の回転ベアリングリング(1b)とを備えた回転ベアリング(50)を含み、前記外側の回転ベアリングリング(1a)と前記内側の回転ベアリングリング(1b)との間には、転動体(16)のための装填溝(18)が構成されており、前記回転ベアリング(50)内に支持された、中心縦軸線(15)を有する波動歯車装置(40)が、ウェーブジェネレータ(10)と、外歯部(3)を備えた弾性的なフレクスプライン(4)と、内歯部(5)を備えたサーキュラスプライン(6)とを有し、前記フレクスプライン(4)は、前記ウェーブジェネレータ(10)上に差し込み可能であり、また前記ウェーブジェネレータ(10)により、前記フレクスプライン(4)の前記外歯部(3)が楕円長軸の対向領域において前記サーキュラスプライン(6)の前記内歯部(5)と係合可能であるように、弾性的に変形可能である構成であり、
前記サーキュラスプライン(6)は、前記転動体(16)の軸方向の運動を妨げる確保要素(20)を有すること、
を特徴とする歯車装置ボックス
【請求項2】
前記確保要素(20)は、前記サーキュラスプライン(6)の全周部をめぐって、又は前記サーキュラスプライン(6)の全周部をめぐって回転対称に構成されていること、
を特徴とする、請求項1に記載の歯車装置ボックス
【請求項3】
前記確保要素(20)は、周部側で所定の有限角度(α)だけをとること、
を特徴とする、請求項1に記載の歯車装置ボックス
【請求項4】
前記確保要素(20)は、前記転動体(16)に対し、前記波動歯車装置(40)の前記中心縦軸線(15)に対して直角の当接走行面部(17)を有すること、
を特徴とする、請求項に記載の歯車装置ボックス
【請求項5】
前記確保要素(20)は、前記波動歯車装置(40)の前記中心縦軸線(15)に対して直角の方向において、前記転動体(16)の半径の4%と10%の間に位置する大きさ、又は7%の大きさを有すること、
を特徴とする、請求項に記載の歯車装置ボックス
【請求項6】
前記確保要素(20)は、前記転動体(16)の軸方向の運動を前記転動体(16)の半径の10%未満に制限すること、
を特徴とする、請求項に記載の歯車装置ボックス
【請求項7】
前記確保要素(20)は、軸方向のカラー部(22)として構成されていること、
を特徴とする、請求項に記載の歯車装置ボックス
【請求項8】
前記確保要素(20)は、横断面が2つの円弧により形成される平たい軸方向の突起部(24)として構成されていること、
を特徴とする、請求項に記載の歯車装置ボックス
【請求項9】
前記サーキュラスプライン6)は、鋼材料又は鋳造材料からること、
を特徴とする、請求項に記載の歯車装置ボックス
【請求項10】
前記波動歯車装置(40)は、平形歯車装置として構成されていること、
を特徴とする、請求項に記載の歯車装置ボックス
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
前記課題は、本発明に従い、サーキュラスプラインないし中空歯車が、転動体の軸方向の運動を妨げる確保要素(抑止要素)を有することにより達成される。
即ち本発明の一視点により、
歯車装置ボックスであって、
外側の回転ベアリングリングと、前記外側の回転ベアリングリング内に配設された内側の回転ベアリングリングとを備えた回転ベアリングを含み、前記外側の回転ベアリングリングと前記内側の回転ベアリングリングとの間には、転動体のための装填溝が構成されており、前記回転ベアリング内に支持された、中心縦軸線を有する波動歯車装置が、ウェーブジェネレータと、外歯部を備えた弾性的なフレクスプラインと、内歯部を備えたサーキュラスプラインとを有し、前記フレクスプラインは、前記ウェーブジェネレータ上に差し込み可能であり、また前記ウェーブジェネレータにより、前記フレクスプラインの前記外歯部が楕円長軸の対向領域において前記サーキュラスプラインの前記内歯部と係合可能であるように、弾性的に変形可能である構成であり、
前記サーキュラスプラインは、前記転動体の軸方向の運動を妨げる確保要素を有すること、
を特徴とする歯車装置ボックスが提供される。
尚、本願の特許請求の範囲に付記された図面参照符号は、専ら本発明の理解の容易化のためのものであり、図示の形態への限定を意図するものではないことを付言する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
本発明において、以下の形態が可能である。
(形態1)
歯車装置ボックスであって、
外側の回転ベアリングリングと、前記外側の回転ベアリングリング内に配設された内側の回転ベアリングリングとを備えた回転ベアリングを含み、前記外側の回転ベアリングリングと前記内側の回転ベアリングリングとの間には、転動体のための装填溝が構成されており、前記回転ベアリング内に支持された、中心縦軸線を有する波動歯車装置が、ウェーブジェネレータと、外歯部を備えた弾性的なフレクスプラインと、内歯部を備えたサーキュラスプラインとを有し、前記フレクスプラインは、前記ウェーブジェネレータ上に差し込み可能であり、また駆動構成部品により、前記フレクスプラインの前記外歯部が楕円長軸の対向領域において前記サーキュラスプラインの前記内歯部と係合可能であるように、弾性的に変形可能である構成であり、
前記サーキュラスプラインは、前記転動体の軸方向の運動を妨げる確保要素を有すること。
(形態2)
前記確保要素は、前記サーキュラスプラインの全周部をめぐって、特に回転対称に構成されていること、が好ましい。
(形態3)
前記確保要素は、周部側で所定の有限角度だけをとること、が好ましい。
(形態4)
前記確保要素は、前記転動体に対し、前記波動歯車装置の前記中心縦軸線に対して直角の当接走行面部を有すること、が好ましい。
(形態5)
前記確保要素は、前記波動歯車装置の前記中心縦軸線に対して直角の方向において、前記転動体の半径の4%と10%の間に位置する大きさ、特に7%の大きさを有すること、が好ましい。
(形態6)
前記確保要素は、前記転動体の軸方向の運動を前記転動体の半径の10%未満に制限すること、が好ましい。
(形態7)
前記確保要素は、軸方向のカラー部として構成されていること、が好ましい。
(形態8)
前記確保要素は、横断面が2つの円弧により形成される平たい軸方向の突起部として構成されていること、が好ましい。
(形態9)
前記サーキュラスプラインの歯車は、鋼材料又は鋳造材料から製造されていること、が好ましい。
(形態10)
前記波動歯車装置は、平形歯車装置として構成されていること、が好ましい。
【国際調査報告】