(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】キメラILT受容体組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20250220BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20250220BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20250220BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20250220BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250220BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20250220BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250220BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20250220BHJP
A61K 35/17 20250101ALI20250220BHJP
A61K 35/15 20250101ALI20250220BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250220BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K14/705
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N15/867 Z
C12N5/10
C12N5/0783
A61K35/17
A61K35/15
A61P35/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545105
(86)(22)【出願日】2023-02-03
(85)【翻訳文提出日】2024-09-19
(86)【国際出願番号】 US2023061966
(87)【国際公開番号】W WO2023150698
(87)【国際公開日】2023-08-10
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524282629
【氏名又は名称】エヌケーアイエルティー セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ベイル ジョゼフ アンリ
(72)【発明者】
【氏名】ズオン ミリン ティ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB65
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
ILT2又はILT4からのターゲティング領域と、膜貫通ドメインと、細胞内ドメイン(ICD)とを含むキメラILT受容体(CIR)が提供される。前記ICDは、シグナル伝達領域(例えば、CD3ゼータ(CD3z))及び任意選択的に共刺激領域(例えば、CD28、4-1BB、OX40など)を含む。主題のCIRをコードする核酸(例えば、発現ベクター)、並びに主題のCIRを発現する遺伝子改変細胞(例えば、NK細胞、T細胞、iNKT細胞、マクロファージなどの免疫細胞)も提供される。例えば、ILT2又はILT4 CIRをコードする核酸を含むNK細胞などの遺伝子改変免疫細胞が提供される。本主題のCIRは、HLA-Gを発現するがんに対するNK細胞、T細胞、iNKT細胞、及びマクロファージなどの免疫細胞による細胞傷害性を活性化するように設計される。
【選択図】
図5B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)HLA-Gを標的とし、免疫グルリン(immunoglulin)様転写産物2(ILT2)又は免疫グルリン様転写産物4(ILT4)のD1~D2細胞外ドメインを含む、ターゲティング領域と、
(b)膜貫通アミノ酸配列を含む、膜貫通(TM)領域と、
(c)HLA-Gへの前記ターゲティング領域の結合により免疫エフェクター細胞の内部にシグナルを伝達してエフェクター細胞の機能を誘発することができるシグナル伝達領域を含む、細胞内ドメイン(ICD)と
を含む、キメラ受容体タンパク質。
【請求項2】
前記ターゲティング領域が、配列番号57に示されるILT4アミノ酸配列のY96又は配列番号31に示されるILT2アミノ酸配列のY96に対応する位置にアミノ酸変異を含む、請求項1に記載のキメラ受容体タンパク質。
【請求項3】
前記D1~D2細胞外ドメインが、ILT2 D1~D2細胞外ドメインである、請求項1又は2に記載のキメラ受容体タンパク質。
【請求項4】
前記D1~D2細胞外ドメインが、ILT4 D1~D2細胞外ドメインである、請求項1又は2に記載のキメラ受容体タンパク質。
【請求項5】
前記ターゲティング領域が、ILT2又はILT4のD3~D4細胞外ドメインを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のキメラ受容体タンパク質。
【請求項6】
前記ターゲティング領域が、配列番号55に示されるILT4アミノ酸配列のY394又は配列番号31に示されるILT2アミノ酸配列のY395に対応する位置にアミノ酸変異を含む、請求項5に記載のキメラ受容体タンパク質。
【請求項7】
前記ターゲティング領域が、ILT2又はILT4 D3~D4細胞外ドメインを欠く、請求項1~4のいずれか一項に記載のキメラ受容体タンパク質。
【請求項8】
ストークドメインを含む、請求項5に記載のキメラ受容体タンパク質。
【請求項9】
前記ストークドメインが、ILT2、ILT4、CD28、CH2/CH3、CH3、又はCD8ストークドメインを含む、請求項8に記載のキメラ受容体タンパク質。
【請求項10】
TMドメインが、ILT2、ILT4、CD28、又はCD8 TMドメインである、請求項1~9のいずれか一項に記載のキメラ受容体タンパク質。
【請求項11】
前記シグナル伝達領域が、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のキメラ受容体タンパク質。
【請求項12】
前記シグナル伝達領域が、CD3ζシグナル伝達ドメイン、DAP10シグナル伝達ドメイン、DAP12シグナル伝達ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のキメラ受容体タンパク質。
【請求項13】
前記シグナル伝達領域が、CD3ζシグナル伝達ドメインを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のキメラ受容体タンパク質。
【請求項14】
前記ICDが、少なくとも1つの共刺激ドメインを含む共刺激領域を更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のキメラ受容体タンパク質。
【請求項15】
前記少なくとも1つの共刺激ドメインが、CD28共刺激ドメインを含む、請求項14に記載のキメラ受容体タンパク質。
【請求項16】
前記少なくとも1つの共刺激ドメインが、4-1BB共刺激ドメインを含む、請求項14又は15に記載のキメラ受容体タンパク質。
【請求項17】
前記少なくとも1つの共刺激ドメインが、4-1BB、OX40、CD28、ICOS、RANK、DAP10、DAP12、CD27、MyD88、IL-1Rα、HVEM、TRANCE、IL-1Rβ、CD70、IL-18Rα、CD40、IL-18Rβ、IL-33Rα、CD30、若しくはIL-33Rβ共刺激ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項14に記載のキメラ受容体タンパク質。
【請求項18】
前記D1~D2細胞外ドメインが、ILT2 D1~D2細胞外ドメインであり、
前記細胞外ドメインが、ILT2 D3~D4細胞外ドメインを欠き、
前記キメラ受容体タンパク質が、CD8ストークドメインを含み、
前記TM領域が、CD TMであり、
前記シグナル伝達領域が、CD3ζシグナル伝達ドメインを含み、
前記キメラ受容体タンパク質が、4-1BB共刺激ドメインを含む、
請求項1に記載のキメラ受容体タンパク質。
【請求項19】
前記D1~D2細胞外ドメインが、ILT4 D1~D2細胞外ドメインであり、
前記細胞外ドメインが、ILT4 D3~D4細胞外ドメインを欠き、
前記キメラ受容体タンパク質が、CD8ストークドメインを含み、
前記TM領域が、CD TMであり、
前記シグナル伝達領域が、CD3ζシグナル伝達ドメインを含み、
前記キメラ受容体タンパク質が、4-1BB共刺激ドメインを含む、
請求項1に記載のキメラ受容体タンパク質。
【請求項20】
前記D1~D2細胞外ドメインが、ILT2 D1~D2細胞外ドメインであり、
前記細胞外ドメインが、ILT2 D3~D4細胞外ドメインを含み、
前記キメラ受容体タンパク質が、CD8ストークドメインを含み、
前記TM領域が、CD TMであり、
前記シグナル伝達領域が、CD3ζシグナル伝達ドメインを含み、
前記キメラ受容体タンパク質が、4-1BB共刺激ドメインを含む、
請求項1に記載のキメラ受容体タンパク質。
【請求項21】
前記D1~D2細胞外ドメインが、ILT4 D1~D2細胞外ドメインであり、
前記細胞外ドメインが、ILT4 D3~D4細胞外ドメインを含み、
前記キメラ受容体タンパク質が、CD8ストークドメインを含み、
前記TM領域が、CD TMであり、
前記シグナル伝達領域が、CD3ζシグナル伝達ドメインを含み、
前記キメラ受容体タンパク質が、4-1BB共刺激ドメインを含む、
請求項1に記載のキメラ受容体タンパク質。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載のキメラ受容体タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸。
【請求項23】
前記ヌクレオチド配列が、構成的プロモーターに作動可能に連結されている、請求項22に記載の核酸。
【請求項24】
前記ヌクレオチド配列が、誘導性プロモーターに作動可能に連結されている、請求項22に記載の核酸。
【請求項25】
発現ベクターである、請求項22~24のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項26】
前記発現ベクターが、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、又はプラスミドベクターである、請求項25に記載の核酸。
【請求項27】
請求項1~22のいずれか一項に記載のキメラ受容体タンパク質を発現する、遺伝子改変細胞。
【請求項28】
免疫細胞である、請求項27に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項29】
前記免疫細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、iNKT細胞、又はマクロファージである、請求項28に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項30】
前記免疫細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞である、請求項28に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項31】
前記免疫細胞が、T細胞である、請求項28に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項32】
安全スイッチを発現する、請求項27~31のいずれか一項に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項33】
前記安全スイッチが、誘導性である、請求項32に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項34】
前記安全スイッチが、リミドゥシド(rimiducid)によって、又はラパマイシン若しくはラパマイシンの類似体によって誘発される、請求項33に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項35】
キメラ抗原受容体を更に発現する、請求項27~34のいずれか一項に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項36】
前記キメラ受容体タンパク質に融合されていない共刺激ポリペプチドを更に発現する、請求項27~35のいずれか一項に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項37】
前記キメラ受容体タンパク質に融合されていない前記共刺激ポリペプチドが、4-1BB、OX40、CD28、ICOS、RANK、DAP10、DAP12、CD27、MyD88、IL-1Rα、HVEM、TRANCE、IL-1Rβ、CD70、IL-18Rα、CD40、IL-18Rβ、IL-33Rα、CD30、若しくはIL-33Rβ共刺激ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項36に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項38】
請求項27~37のいずれか一項に記載の遺伝子改変細胞を、必要のある個体に投与することを含む、治療方法。
【請求項39】
前記遺伝子改変細胞が、前記個体に対して自己である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記遺伝子改変細胞が、前記個体に対して同種である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記個体が、がんを有する、請求項38~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記個体が、固形腫瘍を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
遺伝子改変細胞を産生する方法であって、
請求項22~26のいずれか一項に記載の核酸を細胞に導入し、それによって、遺伝子改変細胞を産生することを含む、前記方法。
【請求項44】
前記遺伝子改変細胞が、免疫細胞である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記免疫細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、iNKT細胞、又はマクロファージである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記免疫細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞である、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記免疫細胞が、T細胞である、請求項44に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2022年2月4日に出願された米国仮特許出願第63/306,514号の利益を主張するものであり、この出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
XMLファイルとして提供される配列表の参照による組み込み
配列表は、2023年2月3日に作成され、142,627バイトのサイズを有する配列表XML「NKLT-001WO_SEQ_LIST.xml」として本明細書とともに提供される。配列表XMLの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
I.序論
免疫細胞療法は、疾患細胞を特異的に標的にするのに役立つ。この治療は、悪性及び非悪性状態の両方を治癒できる可能性がある。例えば、ドナーリンパ球注入、同種T細胞、及び同種ナチュラルキラー(NK)細胞を使用して、白血病の増殖を制御することができる。更に、遺伝子改変は、治療目的で、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、γδT細胞、誘導性NKT細胞、及びマクロファージを含む免疫細胞の特異性を、所与の標的細胞集団に向けることができる。例えば、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞を使用して、T細胞特異性を、ヒト白血球抗原(HLA)とは独立して、腫瘍関連細胞表面分子に再指示することができる。臨床試験では、多発性骨髄腫に対するCD19又はB細胞成熟抗原(BCMA)などの抗原を標的とすることによって、特に、B細胞白血病及びリンパ腫などの血液悪性腫瘍におけるCAR-T療法の有効性が示されている。これらの標的は、B細胞及び形質細胞、並びにそれらのそれぞれの腫瘍タイプにおいて別個の発現を有し、CD19及びBCMA CAR-T細胞による腫瘍外ターゲティングに起因する形成不全は、免疫グロブリン置き換え療法によって置き換えることができる。3つの自己CD19 CAR-T細胞療法産物が、米国FDAによって承認されている。より最近では、CD19に対して指向されたCARを発現するNK(CAR-NK)細胞によって、治療有効性が示されている。
【0004】
急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia)とも呼ばれる急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)は、形質転換した骨髄前駆細胞及び単球系統に向かってより分化した細胞の疾患である。AML芽球上に発現されたCD33及びCD123などの標的に対するCAR-T療法は、正常な骨髄系前駆細胞上の標的の発現に課題があり、治療による除去が非常に有害な血球減少をもたらす。AMLのより別個に発現された標的に対するCAR又は他の指向性細胞療法が必要である。1つのかかる標的は、クラス1B(又は非古典的)MHC-1タンパク質であるHLA-Gである。
【0005】
HLA-Gは、胎児胎盤の栄養膜細胞の表面に豊富に発現され、ほとんどのクラスのリンパ系及び骨髄系細胞の強力な阻害によって、母親による免疫攻撃から胎児にバリアを提供する。免疫攻撃を回避し、それによって腫瘍の増殖を促進するメカニズムとして、HLA-Gは、AMLを含む多様な腫瘍タイプで過剰発現しているが、造血前駆細胞は、免疫攻撃からの先天的な寛容性のためにHLA-Gを発現しない。
【0006】
HLA-G遺伝子は、選択的mRNAスプライシングを介して複数の異なるRNA転写産物を産生し、次いで、少なくとも7つの異なるタンパク質産物を産生する。これらのタンパク質産物は、腫瘍細胞の形質膜上、又はβ2-ミクログロブリン(β2-M)との複合体形成の有無にかかわらず、腫瘍微小環境内に分泌形態として存在し得る。更に、HLA-Gは、改変された三次構造を有する単量体又はジスルフィド結合ホモ二量体として存在し得る。従来のCAR-T産物は、抗体に由来する一本鎖断片(scFv)又はキメラ受容体におけるラクダ類由来VhHドメインを用いて、抗原を標的にする。HLA-G上の所与のscFvによってターゲティングされたエピトープは、いくつかのHLA-Gアイソフォームにおいて除去又は排除される可能性が高く、このエピトープを含むアイソフォームの発現を除去するが、HLA-Gの免疫抑制活性を保持するアイソフォームを発現する腫瘍細胞を選択する。免疫抑制が可能な全てのアイソフォームを含む、HLA-Gに対する細胞療法のためのターゲティング剤が必要である。
【発明の概要】
【0007】
II.概要
本開示によって提供されるのは、キメラ受容体タンパク質を発現するように操作された遺伝子改変細胞であり、キメラ受容体タンパク質は、改変細胞が対象において免疫応答を刺激することができるような親和性及び特異性を有する。例えば、キメラ受容体タンパク質は、形質転換されていない正常組織と比較して、腫瘍組織において高レベルで発現されたタンパク質を標的にし、腫瘍に対する細胞傷害応答又は炎症応答を生成し得る。CARは、抗体-抗原相互作用によって可能になる親和性及び特異性に基づいて、腫瘍組織の抗原特異的認識を生成するために頻繁に用いられる。本開示の組成物及び方法について、親和性及び特異性は、抗体又はVhH関係の使用によって、又はランダムに生成されたペプチドの標的抗原への結合によって維持されるのではなく、むしろ、親和性及び特異性が進化によって維持されるリガンド:受容体相互作用の使用によって維持される。
【0008】
例えば、好ましい実施形態では、遺伝子改変細胞は、HLA-Gに対して高い親和性を有するキメラ受容体を発現する。HLA-Gは、選択的mRNAスプライシング及び翻訳後改変によって生成された7つの既知の形態のうちの1つ以上で腫瘍組織において存在し得る標的タンパク質である。HLA-Gは、免疫細胞の表面上の負のシグナル伝達を行う免疫グルリン(immunoglulin)様転写産物2(ILT2)及びILT4受容体との関与を通して、免疫応答を抑制する作用物質として天然に機能する。これらの好ましい実施形態では、ILT2又はILT4による活性型HLA-Gの認識が代わりに活性化シグナルを生成するように、T細胞、NK細胞、iNKT細胞、又はマクロファージが操作される。これらの好ましい実施形態では、ILT2又はILT4の細胞内シグナル伝達要素が取り除かれ、免疫細胞活性化及び細胞傷害性を駆動するCD3ζ鎖のITAM含有シグナル伝達ドメインで置き換えられる。そのようなタンパク質は、「キメラILT受容体」又は「CIR」と呼ばれる。
【0009】
したがって、ILT2又はILT4からのターゲティング領域、膜貫通ドメイン、ならびに細胞内ドメイン(ICD)(シグナル伝達領域(例えば、CD3ゼータ(CD3ζ))及び任意選択的に共刺激領域(例えば、CD28、4-1BB、OX40など)を含む)を含む、キメラILT受容体(CIR)[加えて、それらをコードする核酸及びそれらを発現する免疫細胞などの遺伝子改変細胞]が提供される。本発明者らは、このアプローチが、抗体ベースのターゲティング領域(例えば、scFv)を使用することよりも有利であることを理解する。抗体ベースのターゲティングアプローチは、標的にされたエピトープを欠くHLA-Gアイソフォームを発現する腫瘍細胞の選択を引き起こし、したがって、がんが治療を回避できる可能性がある。反対に、主題のILT2又はILT4ベースのキメラILT受容体は、ILT2及びILT4がそれらのアイソフォームに天然に結合するため、より多くの、及びおそらく全てのHLA-Gアイソフォームを標的にするはずである。これにより、特定のHLA-Gアイソフォームの選択によって治療を回避するがん細胞の能力が大幅に低下し、おそらく除去されるであろう。
【0010】
ILT2及びILT4は、細胞外領域において構造的に類似しており、細胞の原形質膜に対して遠位から近位に配置された4つの折り畳まれたドメイン(D1、D2、D3、及びD4)で構成される。HLA-Gは、ILT2及びILT4のD1及びD2ドメインと相互作用し、これらのD1及びD2ドメインは、HLA-Gとの相互作用を維持しながら、ILTタンパク質の残りの部分から分離することができる。HLA-G以外の細胞タンパク質は、ILT4のD3及びD4ドメインと相互作用することができる。治療設定で毒性を生成する可能性のあるこれらのタンパク質とのオフターゲット相互作用を防止するために、かかるオフHLA-G相互作用を消失させることが望ましい。したがって、いくつかの実施形態では、ILT2又はILT4 D3~D4は、キメラ受容体融合物において、ストーク及び膜貫通ドメインとして機能する別の細胞外ドメインと置き換えられ、ILT2又はILT4 D1~D2をHLA-G発現標的細胞に提示する。D1~D2を提示するストークタンパク質の例は、CD28、CD8α、IgG4のCH2-CH3領域、HER2膜近位、及びmGluR2に由来する。他の実施形態では、ILT2及びILT4のD3~D4ドメインは、単に欠失される。したがって、いくつかの実施形態では、主題のキメラILT受容体は、ILT2のD1~D2を含むが、ILT2のD3~D4を欠く。いくつかの実施形態では、主題のキメラILT受容体は、ILT4のD1~D2を含み、ILT4のD3~D4を欠く。
【0011】
いくつかのタンパク質は、ILT4のD1及びD4領域との結合相互作用を行うことができる。D4の除去の状況では、そのようなD1単独との相互作用が弱くなる可能性が高い。HLA-G以外の他の細胞タンパク質との望ましくない相互作用を更に低減するために、いくつかの実施形態では、ILT4のD1におけるアミノ酸の置き換えをコードする変異が作製される。例えば、チロシン96は、アラニンを含む任意のアミノ酸で置き換えることができる。
【0012】
更に別の実施形態では、免疫応答の一部としての生存、持続性、細胞傷害性、及びサイトカインを分泌する能力を改善するための共刺激要素が、キメラ受容体の細胞内部分の一部として含まれ、他の実施形態では、共刺激要素は、キメラ受容体とは別個に発現するように操作される。これらの共刺激要素は、以下のタンパク質のうちのいずれか又はそれらの組み合わせに由来し得る:4-1BB、OX40、ICOS、CD28、CD27、MyD88、IL-1Rα、HVEM、TRANCE、IL-1Rβ、IL-18Rα、CD40、IL-18Rβ、CD30、IL-33Rα、BCMA、又はIL-33β。
【0013】
いくつかの実施形態では、安全スイッチは、同じ細胞でキメラ受容体タンパク質と共発現することができる。このスイッチの目的は、CIRを含む遺伝子改変細胞によって生成される可能性のある毒性を低減することである。そのような毒性は、サイトカイン放出症候群(CRS)、免疫細胞活性化神経毒性症候群(ICANS)、オフターゲット腫瘍外相互作用、又はHLA-Gを発現する可能性のある正常組織に対するターゲティングを引き起こす活動亢進に起因し得る。そのような一実施形態では、安全スイッチは、誘導性カスパーゼ9(iC9)であり、カスパーゼのアポトーシス促進活性が合成ダイマライザーリガンドであるリミドゥシド(rimiducid)の制御下にあるように、バリアントFKBP12とカスパーゼ9の切断型との融合物である。
【0014】
キメラILT受容体に関する試薬、組成物、キット/系、及び方法が提供される。例えば、遺伝子改変細胞の作製方法及び治療方法(例えば、個体に主題のCIRを発現するNK細胞、T細胞、又はマクロファージなどの免疫細胞を投与すること)が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
III.図面の簡単な説明
本発明の実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むとよりよく理解されるであろう。本発明は、図面に示される実施形態の正確な配置及び手段に限定されないことが理解されるべきである。図面は、技術のある特定の実施形態を示しており、限定的ではない。説明を明確にし、容易にするために、図面は縮尺に応じて作られておらず、場合によっては、特定の実施形態の理解を容易にするために、様々な態様が誇張又は拡大されて示されている場合がある。
【
図1】
図1A~1B:HLA-G及びHLA-Gの抑制性受容体。(
図1A)β2-Mと複合体を形成した腫瘍細胞の形質膜に繋留されたHLA-G1の概略図。また、HLA-Gの受容体(主にリンパ球上で発現されたILT2タンパク質及び主に骨髄系統に由来する細胞上で発現されたILT4)も示されている。ILT2及びILT4タンパク質上の4つの別個に折り畳まれた細胞外ドメインは、原形質膜へのそれらの近接性に従ってD1~D4と標識される。細胞内シグナル伝達ドメイン(ICD)も示されている。(
図1B)HLA-Gと複合体を形成したILT4(左)又はILT2の図。ペプチド結合クレフトを介した古典的なMHC-I相互作用とは異なり、ILTタンパク質は、HLA-Gの膜近位α3ドメイン及びβ2-Mと相互作用する。複合体の形成は、ILT2又はILT4のICDからのシグナル伝達及び免疫細胞活性化の抑制を開始する。
【
図2】二量体HLA-GとのILT4複合体の形成。HLA-Gタンパク質のサブセットは、α1又はα3ドメインにジスルフィド結合二量体を形成する。二量体HLA-Gは、おそらくILTシグナル伝達の増強及び免疫細胞の抑制をもたらすアビディティ効果により、ILT2/4に対してより高い親和性を有する。
【
図3】
図3A~3B:免疫細胞活性化のためのキメラILTタンパク質。(
図3A)ILT4の天然ICDが、免疫細胞活性化受容体又は活性化アダプタータンパク質に由来するシグナル伝達ドメインで置き換えられたキメラILT4受容体(CIR)の概略図。二量体HLA-GとのCIRの関与は、免疫細胞を活性化するシグナル伝達を開始する。(
図3B)単量体HLA-Gと複合体を形成したキメラILT4受容体の図。
【
図4】
図4A~4B:ILT2及びILT4のD1及びD2ドメインのHLA-Gアイソフォームとの相互作用。(
図4A)HLA-G1アイソフォームと複合体を形成した単離されたILT4(左)及びILT2(右)の模式図。ILTタンパク質のD3及びD4ドメインは、HLA-Gとの相互作用には必須ではない(
図4B)。HLA-G1アイソフォームと複合体を形成した単離されたILT4(左)及びILT2(右)の模式図。
【
図5A】
図5A~5B:ILT4 D1D2 CIRとHLA-Gとの相互作用。(
図5A)キメラハイブリッドとして、別個のタンパク質に由来するストーク及び膜貫通ドメインと融合され、活性化細胞内シグナル伝達部分と更に融合された、ILT4のD1及びD2ドメインの模式図。D1D2とHLA-Gとの相互作用は、免疫細胞を活性化するためのシグナル伝達を開始する。
【
図5B】
図5A~5B:ILT4 D1D2 CIRとHLA-Gとの相互作用。(
図5B)ILT4 D1D2 CIRを含むストークと二量体HLA-Gとの相互作用。
【
図6A】
図6A~6E:構築されたγ-レトロウイルスベクターからのCIRタンパク質の形質導入及び発現。(
図6A)キメラILT受容体(CIR)と称するILT2及びILT4融合タンパク質を発現するレトロウイルス構築物の概略図。D1~D4は、天然ILT2又はILT4に由来する細胞外ドメインD1~D4のコードを示す。STMは、細胞外Dドメインを膜貫通ドメイン(TM)と連結するリンカードメインであるステム(S)を指し、これらはILT2、ILT4、又はCD8α(CD8a)に由来する。FLは、天然ILT2及びILT4の全長バージョンを指す。ILT2及びILT4のICDは、免疫細胞への抑制シグナルを促進するILT2及びILT4の天然の細胞内ドメインを指す。BB.ζは、各々が免疫細胞への活性化シグナルを促進する4-1BBの共刺激ドメイン及びCD3-ζのシグナル伝達ドメインを有する融合物に由来する細胞内ドメインを指す。これらのγ-レトロウイルス構築物の各々はまた、別個のマーカータンパク質ΔCD19をコードして、形質導入の有効性を決定する。また、表13B、15B、16B、20B、21B、23B、24B、28B、36、及び37(
図6B)、レトロウイルス構築物の初代ヒトT細胞への形質導入を参照されたい。フローサイトメトリープロットは、オレンジナノランタン・レニラ(Orangenanolantern rennila)ルシフェラーゼ(ONL)をコードする別個の共形質導入マーカーウイルスの発現とともに、CIR構築物の発現と連結されたΔCD19マーカータンパク質の発現を示す。示されたプロットは、2人の健康な血液ドナーのうちの1人に由来するT細胞を表す。陰性対照(Neg ctl)は、T細胞の機能を阻害し、陰性対照として機能するILT2及びILT4の全長(FL)タンパク質を発現するILT2及びILT4の全長構築物の形質導入を示す(Neg.Ctl.)。(
図6C)初代ヒトT細胞(N=2)ドナーへのレトロウイルス形質導入の効率の定量。(
図6D)フローサイトメトリーによって決定された、抗体染色の平均蛍光強度によって決定された、形質導入後7日目の形質導入ヒトT細胞におけるILT4細胞外ドメインの発現。(
図6E)フローサイトメトリーによって決定された抗体染色の平均蛍光強度によって決定された、形質導入後7日目の形質導入ヒトT細胞におけるILT2細胞外ドメインの発現。
【
図7A-1】
図7A~7B:THP1急性骨髄性白血病細胞におけるHLA-Gアイソフォームのトランスジェニック発現。(
図7A)内因性HLA-Gタンパク質発現を欠くTHP1細胞において、HLA-G1、HLA-G2、及びHLA-G5を発現するγ-レトロウイルス構築物の安定した発現。形質導入効率は、レトロウイルス構築物によって共発現されたΔEGFRの発現によって特徴付けられる。HLA-G1発現は、HLA-G1に特異的なMEM-G/9抗体を用いたフローサイトメトリーによって容易に検出される。(
図7B)HLA-G1を安定して発現するTHP1細胞におけるGFP-ffルシフェラーゼの安定した発現。
【
図8】CIR-T細胞によるTHP1-HLA-G1細胞増殖の対照。示されたILT2及びILT4 CIR構築物又は全長ILT2若しくはILT4(Neg Ctl)で形質導入された初代ヒトT細胞(N=2ドナー)を、HLA-G1アイソフォーム及びGFP-fflucマーカーで安定的に形質導入されたTHP1細胞と共培養した。THP1の増殖又は殺滅を、48時間にわたるIncucyteにおけるGFP蛍光によって定期的に測定した。T細胞発現及びHLAG1特異的キメラ抗原受容体(HLA-G CAR)、又はAMLを標的にするCD33特異的CAR(CD33 CAR)は、陽性対照として機能した。NT=未形質導入。
【
図9】CIR-T細胞の短期細胞傷害性。示されたILT2及びILT4 CIR構築物又は全長ILT2若しくはILT4(Neg Ctl)で形質導入された初代ヒトT細胞(N=2ドナー)を、HLA-G1アイソフォーム及びGFP-fflucマーカーで安定的に形質導入されたTHP1細胞と24時間共培養した。THP1殺滅は、腫瘍標的からのルシフェラーゼ活性の喪失によって測定した。T細胞発現及びHLAG1特異的キメラ抗原受容体(HLA-G CAR)、又はAMLを標的にするCD33特異的CAR(CD33 CAR)は、陽性対照として機能した。NT=未形質導入。
【
図10】CIRレトロウイルス構築物のストーク及び膜貫通ドメインの改変。4-1BB及びCD3ζからの細胞内ドメインとともに、CD8αのヒンジ/ストーク及び膜貫通ドメインに連結されたILT4のHLA-G結合ドメインD1及びD2をコードするCIR4の誘導体を示す概略表を示す。CIR構築物6~10は、ヒト免疫グロブリンIgG4のストーク、IgG4のCH3ドメイン、又はCD28に由来するストークの置き換えをコードする。これらを、示されるように、CD8α又はCD28の膜貫通ドメインと融合させた。また、表28B及び38~42も参照されたい。
【
図11A】
図11A~11C:誘導体ストーク及び膜貫通ドメインを有するCIRタンパク質をコードするγ-レトロウイルス構築物の発現。(
図11A)同じレトロウイルス構築物によって発現された、ΔCD19マーカーによって特徴付けられる示されたストーク及び膜貫通誘導体をコードするレトロウイルス構築物の形質導入後7日目(黒色)及び14日目(灰色)の形質導入効率。(
図11B)アイソタイプ対照のベースラインによってゲーティングされた、ILT4抗体を用いてフローサイトメトリーによって決定された代替のストーク及び膜貫通ドメインを有するCIR構築物の発現。(
図11C)フローサイトメトリーによるILT4特異的抗体の平均蛍光強度(MFI)によって決定された、代替のストーク及び膜貫通ドメインを有するCIR構築物の発現。
【
図12】ヒトAML細胞株におけるHLA-Gの発現。Molm13-GFP及びMolm14-GFP細胞を、HLA-Gに特異的な蛍光標識抗体で染色し、フローサイトメトリーに供した。標識されたアイソタイプ対照抗体で染色することによって、ゲーティングを設定した。
【
図13】
図13A~13B:Molm-14腫瘍標的に対するCIR構築物の抗腫瘍有効性。(
図13A)GFPfflucで安定的に形質導入されたHLA-G陽性Molm14細胞を、5:1のエフェクター対標的比率で、非形質導入初代ヒトT細胞、CIR-T細胞、又はHLA-G指向性CAR-T細胞と共培養した(N=2人のドナー)。48時間におけるMolm14の増殖は、Incucyte顕微鏡インキュベーターにおけるGFP蛍光によって測定した。(
図13B)Molm14腫瘍標的に対するCIR-T細胞の短期細胞傷害性。ILT4 CIR構築物又はHLA-G CARで形質導入された初代ヒトT細胞(N=2人のドナー)を、Molm14-GFPffluc細胞と24時間共培養した。Molm14殺滅は、腫瘍標的からのルシフェラーゼ活性の喪失によって測定した。
【
図14】
図14A~14B:HLA-Gアイソフォームを発現するTHP1細胞に対するILT4 CIRの共培養。(
図14A)初代ヒトT細胞(NT)、ILT4 CIR-T細胞、又はHLA-G CAR-T細胞を、HLA-G1アイソフォームで安定的に形質導入されたTHP1細胞と培養した。CIR又はCARの関与によるT細胞の活性化は、培養培地へのインターフェロン-γ(IFN-γ)の分泌によって監視された。(
図14B)HLA-G2を発現するように安定的に形質導入されたTHP1細胞を有するCIR-T細胞及びCAR-T細胞の共培養において産生されたインターフェロン-γの分泌。
【発明を実施するための形態】
【0016】
IV.詳細な説明
ILT2又はILT4からのターゲティング領域と、膜貫通ドメインと、細胞内ドメイン(ICD)とを含むキメラILT受容体(CIR)が提供される。ICDは、シグナル伝達領域(例えば、CD3ゼータ(CD3ζ))及び任意選択的に共刺激領域(例えば、CD28、4-1BB、OX40など)を含む。主題のCIRをコードする核酸(例えば、発現ベクター)、並びに主題のCIRを発現する遺伝子改変細胞(例えば、NK細胞、T細胞、iNKT細胞、マクロファージなどの免疫細胞)も提供される。例えば、ILT2又はILT4 CIRをコードする核酸を含むNK細胞などの遺伝子改変免疫細胞が提供される。また、遺伝子改変細胞の作製方法及び治療方法(例えば、個体に主題のCIRを発現するNK細胞、T細胞、又はマクロファージなどの免疫細胞を投与すること)も提供される。
【0017】
本発明を更に説明する前に、本発明は記載された特定の実施形態に限定されず、それ自体は勿論、変化し得ることを理解されたい。また、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためのものであり、限定することが意図されるものではないことも理解されるべきである。
【0018】
値の範囲が提供される場合、文脈が別段明示しない限り、各介在値は、その範囲の上限及び下限と、その記載された範囲内の任意の他の記載値又は介在値との間に、下限の単位の10分の1まで包含されることが理解されよう。これらのより小さな範囲の上限及び下限は、独立して、より小さな範囲に含まれ得、また、記述の範囲内の任意の特定の除外された制限に従うことを条件として、本発明内に包含される。記載された範囲が限定の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限定のいずれか又は両方を除外する範囲も、同様に本発明に含まれる。
【0019】
ある特定の範囲は、「約」という用語が数値に先行して本明細書で提示される。本明細書では、「約」という用語は、それが先行する正確な数、及びその用語が先行する数に近い、又は近似する数について文字通りの支持を提供するために使用される。ある数が具体的に列挙された数に近いか、又は近似するかどうかを決定する際に、その近い又は近似する列挙されていない数は、それが提示されている文脈において、具体的に列挙された数の実質的な等価物を提供する数であってもよい。
【0020】
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料も、本発明の実施又は試験で使用することができるが、代表的な例示的な方法及び材料がここで説明される。
【0021】
本明細書で引用される全ての刊行物及び特許は、各個々の刊行物又は特許が、参照により組み込まれると具体的かつ個々に示されるかのように参照により本明細書に組み込まれ、方法及び/又は材料を刊行物が引用されるものに関して開示及び記載するために参照により本明細書に組み込まれる。いかなる刊行物の引用も、本出願日以前のその開示に関するものであり、本発明が以前の発明によってそのような刊行物に先行する資格を与えられないことを容認するものとして解釈されるべきではない。更に、提供される刊行物の日付は、独立して確認する必要があり得る実際の刊行日とは異なる場合がある。
【0022】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈において明確に別段の指示がない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、「1つの(a)」及び「1つの(an)」という冠詞は、本明細書では、その冠詞の文法的目的語の1つ又は複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素又は複数の要素を意味する。したがって、例えば、「細胞(a cell)」への参照は、複数のかかる細胞を含み、「ポリペプチド(the polypeptide)」への参照は、当業者に既知の1つ以上のポリペプチド及びその等価物などを含む。特許請求の範囲は、任意の任意選択的な要素を除外するように起草される場合があることに更に留意されたい。したがって、この記述は、特許請求要素の列挙に関連した「もっぱら(solely)」及び「のみ(only)」などの排他的用語の使用のための、又は「消極的な」限定の使用のための先行詞として機能することが意図される。
【0023】
本開示を読むと当業者には明らかであるように、本明細書に記載及び例示される個々の実施形態の各々は、本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のうちのいずれかの特徴から容易に分離され得るか、又はこれらと組み合わされ得る別個の構成要素及び特徴を有する。任意の列挙された方法は、列挙された事象の順序、又は論理的に可能な任意の他の順序で実行され得る。明確にするために、別個の実施形態の文脈で説明される本発明のある特定の特徴はまた、単一の実施形態では組み合わせて提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明される本発明の様々な特徴はまた、別個に又は任意の好適な部分的組み合わせで提供され得る。本発明に係る実施形態の全ての組み合わせもまた、本発明によって具体的に包含され、あたかもありとあらゆる組み合わせが本明細書に個別にかつ明示的に開示されているかのように本明細書に開示される。加えて、様々な実施形態及びその要素の全ての部分的組み合わせも本発明に具体的に包含され、あたかもありとあらゆるそのような部分的組み合わせが本明細書に個別にかつ明示的に開示されているかのように本明細書に開示される。
【0024】
装置及び方法は、文法的流動性のために、機能的な説明で記載されているか又は記載されるが、特許請求の範囲は、米国特許法第112条下で明確に記載されない限り、「手段」又は「ステップ」限定の構文によって必然的に限定されるとなんら解釈されるべきでなく、司法均等論下で特許請求の範囲によって提供される定義の意味及び均等物の完全な範囲を付与されるべきであり、特許請求の範囲は、米国特許法第112条下で明確に記載される場合、米国特許法第112条下で完全な法定による均等物が付与されるべきであることを明確に理解されたい。
【0025】
本明細書で参照される各特許、特許出願、刊行物、及び文書の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。特許、特許出願、刊行物、及び文書の引用は、前述のうちのいずれかが関連する先行技術であることを承認するものではなく、これらの刊行物又は文書の内容又は日付に関するいかなる承認を構成するものでもない。これらの引用は、関連する開示の検索を示すものではない。文書の日付又は内容に関する全ての記述は、入手可能な情報に基づいており、その正確性又は正当性を認めるものではない。
【0026】
技術の基本的な態様から逸脱することなく、前述に対して変更を行うことができる。本技術は、1つ以上の特定の実施形態を参照して実質的に詳細に記載されているが、当業者は、本出願に具体的に開示された実施形態に変更が行われ得ることを認識するであろう。しかし、これらの修正及び改善は、本技術の範囲及び趣旨内である。
【0027】
本明細書に例示的に記載された技術は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素の不在下で好適に実施することができる。したがって、例えば、本明細書の各事例において、「含む」、「から本質的になる」、及び「からなる」という用語のいずれも、他の2つの用語のいずれかに置き換えることができる。用いられた用語及び表現は、限定ではなく、説明の用語として使用され、そのような用語及び表現の使用は、示され説明された特徴又はその一部のいずれかの均等物を排除するものではなく、特許請求される技術の範囲内で様々な修正が可能である。「1つの(a)」又は「1つの(an)」という用語は、説明される要素のうちの1つ又は2つ以上が文脈的に明確でない限り、それが改変する要素のうちの1つ又は複数を指し得る(例えば、「試薬(a reagent)」は、1つ以上の試薬を意味し得る)。本明細書で使用される「約」という用語は、基礎となるパラメータの10%以内の値(すなわち、プラス又はマイナス10%)を指し、一連の値の先頭で「約」という用語を使用すると、値の各々が変更される(すなわち、「約1、2、及び3」は、約1、約2、及び約3を指す)。例えば、「約100グラム」の重量は、90グラム~110グラムの重量を含み得る。更に、値のリストが本明細書に記載されている場合(例えば、約50%、60%、70%、80%、85%、又は86%)、リストは、その全ての中間値及び分数値(例えば、54%、85.4%)を含む。したがって、本技術は、代表的な実施形態及び任意選択的な特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示される概念の修正及び変形は、当業者によって行われ得、そのような修正及び変形は、本技術の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。
【0028】
1.MHCクラスI(「MHC-I」)分子
ヒトにおけるMHC-I分子としては、古典的なHLA-A、HLA-B、又はHLA-C α鎖、並びに非古典的なHLA-E、HLA-F、HLA-G、及びHLA-H α鎖が挙げられる。古典的なMHC-I分子は、細胞内から細胞傷害性T細胞にペプチド断片を提示する。非自己抗原がMHC-I複合体に提示されると、MHC:ペプチド複合体に特異的な細胞傷害性T細胞は、MHC-I提示細胞を認識し、殺滅することができる。これらの細胞傷害性シグナルはまた、共刺激シグナル伝達と組み合わせてT細胞の増殖能力を活性化する。
【0029】
MHCクラスI分子は、2つのポリペプチド鎖(α及びβ2-ミクログロブリンβ2-M)からなるヘテロ二量体である。2本の鎖は、β2-M及びα3ドメインの相互作用を介して非共有結合的に連結される。α鎖(HLA遺伝子によってコードされる)は、高度に多型であるが、β2-Mサブユニット(β2-マイクログロブリン遺伝子によってコードされる)は、そうではない。α3ドメインは、形質膜貫通型であり、T細胞のCD8+共受容体と相互作用する。α3-CD8相互作用は、MHC-I分子を所定の位置に保持し、細胞傷害性T細胞の表面のT細胞受容体(TCR)は、そのα1-α2ヘテロ二量体リガンドに結合し、カップリングしたペプチドの抗原性をチェックする。α1及びα2ドメインが折り畳まれて、ペプチドが結合するためのαヘリックス溝を形成する[Bjorkman et al,(1987)Nature 329:506]。
【0030】
ドナー及びレシピエントを、それらのHLAサブタイプ(例えば、A、B、又はC)に基づいて一致させることが可能であるが、細胞表面に提示されたMHC-I:ペプチド複合体は、依然として非自己として認識され得る。同種T細胞療法の場合、移植片対宿主病(GvHD)につながる正常な宿主組織の同種認識を防ぎ、宿主対移植片(HvG)応答を緩和することによって移植細胞の持続性を改善するために、古典的なHLAタイプを一致させることが有益である。しかしながら、がんに対する同種ナチュラルキラー細胞療法は、特にNK細胞によるKIR認識の不一致及びそれらの先天性細胞傷害性応答の増強を促進することができる対立遺伝子を含むHLA-C1、HLA-C2、及びHLA-Bw4上の古典的なHLAサブタイプの不一致から恩恵を受ける。
【0031】
非古典的MHC-Iタンパク質(MHCクラスIbタンパク質とも呼ばれる)も同様のドメイン構造で構成され、一般に、β2-Mと結合している[Clements et al.,(2005)Proc Natl Acad Sci 102:3360]。それらはまた、細胞内部からのペプチド断片に結合するが、結合したペプチドの多様性は限定され、これらのペプチドをCD3-TCR複合体に提示して細胞傷害性を指示することはない。代わりに、これらのタンパク質は、免疫細胞のサブセット上で発現された抑制性受容体に関与して、免疫細胞の機能を阻害又は減弱する。HLA-Eは、細胞傷害性T細胞及びNK細胞上のCD94/NKG2A複合体と関与し、HLA-Gは、多様なグループの免疫エフェクター上のILTタンパク質と相互作用する。
【0032】
2.HLA-G
非古典的MHC-Iタンパク質HLA-Gは、母体-胎児発生に対する免疫寛容性の維持における主要な因子である[Kovats et al.Science(1990)248:220、Ferreira et al,(2017)I 38:272]。その正常な発現は、胎児胎盤の絨毛外栄養膜細胞で最も高く、ほとんどのタイプの母体免疫細胞(特に、ハプロタイプ一致MHCハプロタイプを有する胎児からのT細胞及びNK細胞)の活性化及び浸潤を遮断するように機能する。それは、角膜、間葉系幹細胞のサブセット[Chapel et al.(2006)Blood 108:4257、Selmani et al.(2008)Stem Cells 26:212]及び内分泌膵臓[Le Discorede et al.(2003)Human Immunology 64:1039、Cirulli et al.(2006)Diabetes 55:1214]を含む他の免疫特権組織において、はるかに低いレベルで維持されている。HLA-Gは、多様なセットの固形腫瘍タイプ及び白血病[Lin and Yan(2018)Front Imm.9:Art 2164で概説]で発現されており、これには、黒色腫[Paul et al,(1998)Proc Natl Acad Sci 95:4510]、大腸がん、AML、ALL、腎細胞がん[Tronik-Le Roux et al,(2017)Mol.Oncol.11:1561]、乳がん、及び肺がんが含まれる。がんにおけるその機能は、免疫攻撃を直接回避することであるが、HLA-Gは、寛容原性DC-10樹状細胞でも発現されており、この細胞は、抑制性サイトカインの分泌によってリンパ球応答を抑制し、Treg細胞及び骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)を活性化して免疫抑制性腫瘍微小環境を生成する[Carosella et al,Blood(2011)118:6499、Gao et al,(2018)BBA 1869:278で概説]。したがって、HLA-Gは、腫瘍促進の重要なチェックポイントメディエーターとみなすことができる。
【0033】
HLA-G遺伝子は、少なくとも7つの異なるタンパク質産物をコードする複数のmRNA転写産物を産生する[Ishitani et al(1992)Proc.Natl.Acad.Sci 89:3947](配列番号9、15、17、19、21)。HLA-G1は、αヘリックスペプチド結合溝を有するα1-α2-α3ドメイン構造と、膜貫通ドメインと、短い細胞内カルボキシ末端ドメインと、を含む(
図1を参照)。このドメイン構造は、MHC-I産物にとって標準的である。他の発現されたスプライス産物は、ドメイン全体が欠失しており、例えば、HLA-G2は、α1、α3、及び膜貫通ドメインをコードし、α2が欠失している。HLA-G4は、α3ドメインが欠失し、HLA-G3は、α1ドメインのみをコードする。導入遺伝子としてM8細胞で発現させた場合、これらの形態のHLA-Gの各々は、NK細胞攻撃に向けて免疫抑制活性を示すことが報告された[Riteau et al(2001)J.Immunology 166:5018]。選択的スプライシングによって生成された分泌形態としては、HLA-G5及びHLA-G6が挙げられ、これらは、それぞれHLA-G1及びG2のドメイン構造を維持するが、イントロン4のスプライスドナー部位を使用せず、代わりにイントロン4に由来する短い分泌型ペプチドをコードする。同様に、HLA-G7は、イントロン2に由来する3つのアミノ酸ペプチドを使用する。一部のHLA-G1の細胞表面を除くために、マトリックスメタロプロテイナーゼによる膜貫通ドメインでの切断によって、HLA-G1の更なる分泌形態が生成される[Rizzo et al(2012)Mol Cell Biochem 381:243]。
【0034】
HLA-Gは、単量体形態及びオリゴマー形態で存在する。オリゴマーは、主に、(α1における)Cys42又は(α2における)Cys147でのジスルフィド結合によって指向された二量体である[Gonen-Gross et al,(2005)J.Imm.175:4866、Boyson et al,Proc.Natl.Acad.Sci 99:16180]。HLA-Gの二量体形態が主な免疫抑制形態であり、天然の単量体の二量体形態と比較して、ねじれた四次構造をとるという証拠が存在する[Shiroishi et al(2006)Proc Natl Acad Sci 103:10095、Clements et al(2005)Proc Natl Acad Sci 102:3360、Wang et al(2020)Cel and Mol.Imm.17:966]。
【0035】
異なるHLA-G形態は一緒に、ターゲティング剤としての抗体由来scFv又はVhHドメインの結合に依存するCARベースの療法に対する課題を生み出す。異なるスプライス形態は、所与の抗体のエピトープを削除するため、免疫抑制活性を保持しながら、CARのバインダーによって認識されないエピトープのみを発現するために、CAR療法によって選択が行われる。更に、オリゴマー化は、構造変化により、scFvのエピトープを覆い隠す可能性がある。同様に、HLA-G 4H84及び87Gのための一般的に使用される抗体試薬のうちの2つは、CAR-T又はCAR-NK細胞のオフターゲット、腫瘍外ターゲティングにつながり得る他のHLA種に対する交差反応性を示す[Attia et al(2021)Int.J.Mol.Sci 21:8678、Polakova et al(2004)Hum.Imm.65:157、Swets et al(2018)Clin.Imm 194:80、Furukawa et al(2019)Int J.Mol.Sci 20:5947]。
【0036】
3.ILT2及びILT4
HLA-Gは、標的免疫細胞上の抑制性受容体免疫グロブリン様転写産物2(ILT2)及びILT4(それぞれ、LIRB1及びLIRB2、又はCD85j及びCD85dとも呼ばれる)の膜結合リガンドとしてのその免疫抑制活性を指示する[Colonna et al(1998)J.Immunology 160:3096、Gao et al(2018)BBA 1869:278で概説]。ILT2(配列番号29)は、ナチュラルキラー細胞、iNKT細胞、T細胞、B細胞、及び樹状細胞のサブセットで発現される。ILT4(配列番号53)は、主に骨髄系細胞及び幹細胞(マクロファージ、骨髄系由来サプレッサー細胞を含む)(単球系統上の低分化細胞の集団)、顆粒球(好中球、単球、造血幹細胞を含む)、及び一部のニューロンにおいてより広範な発現パターンを有する。
【0037】
ILT2は、膜遠位D1からほとんどの膜近位D4までの列状に配置された免疫グロブリンドメイン(Igドメイン)と配列相同性及び構造相同性を有する4つのドメインからなる細胞外ドメイン構造、続いて、膜貫通ドメイン、及び4つの反復免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)を含む細胞内シグナル伝達ドメインを有する。ILT4は、同様の細胞外及び膜貫通アーキテクチャを有するが、その細胞内ドメインには3つのITIMのみを有する。
【0038】
ILT2(例えば、配列番号37及び71を参照)及びILT4(例えば、配列番号57及び75を参照)のD1及びD2ドメインは、HLA-Gとの相互作用を支配し、D3及びD4ドメインから分離され得る[Donadi et al(2011)Cell.Mol.Life Sci.68:369、Morales(2007)122:179、HoWanYin et al(2012)Cell.Mol.Life Sci.69:4041、Shiroishi et al(2006)Proc Natl Acad Sci 103:10095、Wang et al(2020)Cel and Mol.Imm.17:966]。古典的なMHC-Iを有するCD3複合体によって形成された活性化相互作用とは異なり、NK細胞のILT2及びILT4のKIRタンパク質によって形成される抑制性及び活性化相互作用は、ペプチド結合溝を含むα1-α2ドメインとは結合しないが、代わりに、膜近位α3ドメイン及びβ2-ミクログロブリンと相互作用する(
図1Bを参照)。ILT2は、β2-Mと広範な接触を行い、HLA-Gのα3と比較的少ない接触を行い、たとえ低い親和性相互作用を維持するにもβ2-MのHLA-Gとの会合を必要とする。逆に、ILT4は、α3と広範な接触を行い、おそらく、α1ドメインのみを含むHLA-G3/G7を除いて、HLA-Gの全ての既知の能動的な免疫抑制形態との相互作用を維持することができる。
【0039】
ILT2及びILT4は、他のMHC-I及びMHCI様タンパク質、特に、HLA-A2、HLA-B、HLA-C、並びにHLA-F、CD1d、及びUL18と相互作用することができる。UL18、サイトメガロウイルスからのデコイMHC-I[Wilcox et al(2002)BMC Struct.Biol 2:6]を除いて、これらは、2μM~40μMの解離定数(KD)を有する低親和性相互作用である。免疫抑制シグナル伝達の関連性は、これほど弱い親和性では実証されていない。同様に、ILT2及びILT4とHLA-Gの単量体形態との相互作用は、μM範囲で弱い。しかしながら、二量体HLA-G形態は、ILT2及びILT4との高い親和性(2~4nM)相互作用を示すが、これはおそらく、更なる接触部位の提示、又は代替的に、ILT解離の解離速度を低下させるアビディティ効果によるものである[Shiroishi et al,(2006)J.Biol.Chem 281:10440、Gao et al(2020)Cell Mol Imm 17:966]。したがって、HLA-Gの二量体形態は、生物活性である可能性が最も高く[Gonen-Gross et al,(2005)J.Imm.175:4866]、腫瘍環境で免疫抑制のために機能し、更に、キメラ受容体による細胞ベースの免疫療法のために標的にされた分子として関連する可能性が最も高い。
【0040】
ILT4は、アンジオポエチン様タンパク質2及び5を含む非MHCリガンドの受容体である[Zheng et al(2012)Nature 485:656、Deng et al(2014)Blood 124:924]。可溶性ANGPTL2及びANGPTL5による調節は、ILT4を発現する造血幹細胞の自己再生及び生存のための骨髄間質からの保護シグナルを提供すると考えられる。ILT4とANGLPとの間の相互作用は、ILT4のD4ドメインと協調してD1ドメインによって指向され、D1又はD4のいずれかの特異的残基は、高い親和性相互作用を維持するために不可欠である。特に、チロシン96のアラニンへの変異は、ANGPTL2/5の結合を減少させたが、全長ILT4とのHLA-G1の相互作用を低減させなかった[Deng et al(2014)Blood 124:924]。
【0041】
ILT4は、ミエリンに由来する抑制性Nogo受容体リガンドに対する中程度の親和性で相互作用する[Atwal et al(2008)Science 322:967、Matsushita et al,(2014)J.Biol.Chem 286:25739]。ILTタンパク質のマウスオーソログであるPIRBは、ニューロンのサブセットにも見出され、ミエリンベースのMAG、Nogo、及びOMgp[米国特許第2010/0047232号]、並びにSema4a[Lu et al.(2018)Nat.Comm.7:742]との相互作用によって軸索伸長を調節し得る。高親和性相互作用を、ILT4、PIRBについてのマウスオーソログにおいて特徴付けられ、HLA-G結合D1及びD2ドメインにはマッピングされず、むしろPIRBの膜近位ドメインにマッピングされた[Matsushita et al,(2014)J.Biol.Chem 286:25739]。
【0042】
4.キメラ抗原受容体
キメラ抗原受容体(又はCAR)は、細胞に抗原特異性を与えるように設計された人工受容体である。それらは、一般に、細胞を活性化するために選択された抗原特異的成分、膜貫通成分、及び細胞内成分を含む。CARを発現する細胞は、がん療法を含む様々な療法で使用され得る。
【0043】
CARは、例えば、膜貫通ポリペプチドと、細胞を活性化するために選択され、それによって特異的免疫を提供する細胞内ドメインポリペプチドと、に連結された標的抗原(抗原認識ドメイン)を認識するポリペプチド配列を含むキメラポリペプチドである。抗原認識ドメインは、単鎖可変断片(scFv)であってもよく、例えば、T細胞受容体又はラクダ類VhHメインなどの他の分子に由来してもよい。細胞内ドメインは、細胞の活性化を引き起こす少なくとも1つのポリペプチド(「シグナル伝達領域」)を含み、例えば、限定されないが、CD3ゼータ(CD3ζ)(例えば、配列番号33を参照)、及び任意選択的に、共刺激分子(「共刺激領域」)(例えば、限定されないが、CD28(例えば、配列番号49を参照)、OX40、及び4-1BB(例えば、配列番号35を参照))を含む。
【0044】
したがって、CARの使用の典型的な例では、細胞は、リンカー領域を含む膜貫通ドメイン及びCD3ゼータ成分(例えば、配列番号33を参照)に由来する細胞内ドメインに融合された一本鎖抗体可変断片(scFv)を含むCARを発現するように改変される。天然T細胞及びNK細胞では、CD3ゼータからのシグナルは、NF-ATc転写因子へのシグナル伝達を通して、T細胞の初期活性化を駆動する。これらのシグナルは、細胞傷害性Tリンパ球における標的にされた細胞の殺滅を駆動し、共刺激シグナル伝達経路と相乗作用して、T細胞免疫応答の堅牢な細胞増殖を駆動する。遺伝子改変細胞は、CARを発現する核酸、及びキメラシグナル伝達ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸(同じ又は異なる)による形質導入又はトランスフェクションによって改変され得る(以下を参照)。他の実施形態では、CARは、キメラシグナル伝達ポリペプチドも発現することなく発現する。
【0045】
キメラ抗原受容体は、NK細胞、iNKT細胞、又はマクロファージで発現させて、抗原特異的細胞傷害を生成することができる。
【0046】
CARには、抗体に由来するキメラ受容体が含まれるが、キメラT細胞受容体も含まれる。これらのキメラT細胞受容体は、標的抗原を認識するポリペプチド配列を含んでもよく、認識配列は、例えば、限定されないが、T細胞受容体又はscFvに由来する認識配列であってもよい。細胞内ドメインポリペプチドは、T細胞を活性化するように作用するものである。キメラT細胞受容体は、例えば、Gross & Eshar FASEB Journal(1992)6:3370-3378及びZhang et al.,(2010)PLOS Pathogens 6:1-13で議論されている。
【0047】
5.ILTタンパク質によってターゲティングされたキメラ受容体(すなわち、「キメラILT受容体」又は「CIR」)
T細胞又はNK細胞の細胞傷害特異性の再指示は、抗原scFv(又はTCR)相互作用の関与によって制御され得るが、標的リガンドの受容体が、免疫細胞を活性化するためのシグナルの伝達を可能に維持しながら、細胞との高い親和性相互作用を維持することができるキメラタンパク質に形成され得るように、受容体-リガンド対合によっても制御され得る(以下では例として、T細胞及びNK細胞を使用する)。CAR様タンパク質の結合物質としてのそのような受容体の使用に不可欠なのは、標的タンパク質との高い親和性相互作用(50nM未満)であり、免疫細胞の標的との安定した接着、及びT細胞又はNK細胞を活性化するための安定したシグナル伝達を可能にする。更に、非常に好ましい実施形態では、標的と関与するために使用される受容体又は受容体の一部は、腫瘍外ターゲティングを防ぐために標的のみに特異的である。第三に、scFv及び類似のバインダーと同様に、標的タンパク質又はリガンドの高レベルの発現が、正常組織と比較して標的組織(例えば、腫瘍)に対して維持されることが不可欠である。
【0048】
(i)ターゲティング領域
ILT2の細胞外ドメイン(D1~D4)(例えば、D1~D4に加えてILT2の膜貫通領域を含む、配列番号31を参照)は、HLA-G発現腫瘍細胞を標的にし、かつ、天然に抑制性のITIM含有ILT2細胞内ドメイン(ICD)を活性化シグナルを駆動するシグナル伝達成分(例えば、CD3ζ及び4-1BBのICD)に置き換えるキメラバージョンのILT2を発現する免疫細胞において活性化シグナルの伝達を生成するように、操作され得る。
【0049】
同様に、ILT4の細胞外ドメイン(D1~D4)(例えば、D1~D4に加えてILT4の膜貫通領域を含む、配列番号55を参照)は、ILT4 ICDを活性化シグナル伝達部分(例えば、CD3ζ及び4-1BBのICD)に置き換えることによって、免疫細胞で活性化シグナルを生成するように操作され得る。ターゲティング領域にILT2又はILT4のD1~D4細胞外ドメインを使用すると、ILT2 D1~D4キメラ受容体(すなわち、ILT2 D1~D4 CIR)又はILT4 D1~D4キメラ受容体(すなわち、ILT4 D1~D4 CIR)が生成される(
図4Aを参照)。したがって、いくつかの場合では、主題のキメラILT受容体(CIR)のターゲティング領域は、ILT2又はILT4 D1~D4ドメイン(したがって、HLA-Gを標的にする)を含む。
【0050】
ILT4は、HLA重鎖上のα3とのより多くの接触を維持し、HLA-Gの遊離重鎖形態と相互作用することができるが、ILT2 D1/D2は、HLA-Gとの相互作用を維持するためにβ2-M及びα3との接触を必要とする(
図4B)。
【0051】
ILT2及びILT4は、二量体HLA-G及び低親和性(KDは、単量体HLA-G及びCD1dを含む他のMHC-Iタンパク質との相互作用に対してμMである)との高い親和性(KD 低nM)相互作用を維持するため、高レベルのHLA-Gを保有する腫瘍に対する特異性は、二量体形態でのHLA-Gの量を比例して増加し、高レベルの古典的MHC-Iを発現するが、HLA-Gはほとんど又はまったく発現しない正常組織よりも腫瘍組織の選択を可能にする。HLA-G1の、Cys42位からSerへの変異又はCys147位からSerへの変異は、HLA-G1の二量体化を遮断し、ILT2又はILT4 CIR-T細胞又はCIR-NK細胞によるターゲティングを著しく低下させる。
【0052】
本発明者らは、HLA-Gがいくつかの異なるアイソフォームで存在することを認識している。抗体ベースのターゲティング領域(scFvなど)を含むCARは、抗原結合領域(例えば、scFv)によってターゲティングされたエピトープを含むHLA-Gアイソフォームのみを標的にすることができるであろう。これにより、標的にされたエピトープを欠くHLA-Gアイソフォームを発現する腫瘍細胞が選択される可能性があり、したがって、がんが治療を回避できる可能がある。反対に、主題のILT2又はILT4ベースのキメラ受容体タンパク質(HLA-Gを標的とする)は、ILT2及びILT4がそれらのアイソフォームに天然に結合するため、より多くの、及びおそらく全てのHLA-Gアイソフォームを標的にするはずである。
【0053】
ILT2 D1/D2 CIR及びILT4 D1/D2 CIRの構築
D1及びD2ドメインは、ILT2及びILT4のHLA-Gへの直接結合に十分であるが、D3及びD4ドメインは、D1及びD2をHLA-Gに提示する足場として機能する可能性が高い[Shiroishi et al,(2006)J.Biol.Chem Apr 14;281(15):10439-47]。いくつかの実施形態では、D3及びD4ドメインは、ILT2 CIR又は及びILT4 CIRから欠失され得、HLA-G形態(
図4Aを参照)を有するILT2(例えば、配列番号71を参照)又はILT4(例えば、配列番号75を参照)からのD1~D2ドメインを介して機能的相互作用を維持する。したがって、いくつかの場合では、主題のILT2又はILT4キメラ受容体のターゲティング領域は、ILT2又はILT4のD1~D2ドメインを含み(例えば、ILT2のD1~D2については配列番号71、ILT4のD1~D2については配列番号75を参照)、場合によっては、ターゲティング領域は、D3~D4ドメインを含まない(すなわち、欠く)であろう。
【0054】
いくつかの実施形態では、主題のILT2キメラ受容体のターゲティング領域(D1~D2ドメインを含む領域)は、配列番号37、70、71、及び72(その配列は以下のとおりである)のうちのいずれか1つに示されるILT2配列と80%以上(例えば、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
MHLPKPTLWAEPGSVITQGSPVTLRCQGGQETQEYRLYREKKTAPWITRIPQELVKKGQFPIPSITWEHTGRYRCYYGSDTAGRSESSDPLELVVTGAYIKPTLSAQPSPVVNSGGNVTLQCDSQVAFDGFILCKEGEDEHPQCLNSQPHARGSSRAIFSVGPVSPSRRWWYRCYAYDSNSPYEWSLPSDLLELLVLG(配列番号37)
MHLPKPTLWAEPGSVITQGSPVTLRCQGGQETQEYRLYREKKTALWITRIPQELVKKGQFPIPSITWEHAGRYRCYYGSDTAGRSESSDPLELVVTGAYIKPTLSAQPSPVVNSGGNVILQCDSQVAFDGFSLCKEGEDEHPQCLNSQPHARGSSRAIFSVGPVSPSRRWWYRCYAYDSNSPYEWSLPSDLLELLVLG(配列番号70)
PKPTLWAEPGSVITQGSPVTLRCQGGQETQEYRLYREKKTAPWITRIPQELVKKGQFPIPSITWEHTGRYRCYYGSDTAGRSESSDPLELVVTGAYIKPTLSAQPSPVVNSGGNVTLQCDSQVAFDGFILCKEGEDEHPQCLNSQPHARGSSRAIFSVGPVSPSRRWWYRCYAYDSNSPYEWSLPSDLLELLVLG(配列番号71)
PKPTLWAEPGSVITQGSPVTLRCQGGQETQEYRLYREKKTALWITRIPQELVKKGQFPIPSITWEHAGRYRCYYGSDTAGRSESSDPLELVVTGAYIKPTLSAQPSPVVNSGGNVILQCDSQVAFDGFSLCKEGEDEHPQCLNSQPHARGSSRAIFSVGPVSPSRRWWYRCYAYDSNSPYEWSLPSDLLELLVLG(配列番号72)
【0055】
いくつかの場合では、ターゲティング領域は、配列番号37、70、71、及び72のうちのいずれか1つに示される配列と90%以上(例えば、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの場合では、ターゲティング領域は、配列番号37、70、71、及び72のうちのいずれか1つに示される配列と95%以上(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの場合では、ターゲティング領域は、配列番号37、70、71、及び72のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0056】
いくつかの場合では、ILT2キメラ受容体のターゲティング領域(D1~D2ドメインを含む領域)は、配列番号37として示される配列と80%以上(例えば、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの場合では、ターゲティング領域は、配列番号37として示される配列と90%以上(例えば、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの場合では、ターゲティング領域は、配列番号37として示される配列と95%以上(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの場合では、ターゲティング領域は、配列番号37として示されるアミノ酸配列を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、主題のILT4キメラ受容体のターゲティング領域(D1~D2ドメインを含む領域)は、配列番号57、74、及び75(それらの配列は以下のとおりである)のうちのいずれか1つに示されるILT4配列と80%以上(例えば、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
MTPIVTVLICLGLSLGPRTHVQTGTIPKPTLWAEPDSVITQGSPVTLSCQGSLEAQEYRLYREKKSASWITRIRPELVKNGQFHIPSITWEHTGRYGCQYYSRARWSELSDPLVLVMTGAYPKPTLSAQPSPVVTSGGRVTLQCESQVAFGGFILCKEGEDEHPQCLNSQPHARGSSRAIFSVGPVSPNRRWSHRCYGYDLNSPYVWSSPSDLLELLVPG(配列番号57)
MTPIVTVLICLGLSLGPRTRVQTGTIPKPTLWAEPDSVITQGSPVTLSCQGSLEAQEYRLYREKKSASWITRIRPELVKNGQFHIPSITWEHTGRYGCQYYSRARWSELSDPLVLVMTGAYPKPTLSAQPSPVVTSGGRVTLQCESQVAFGGFILCKEGEDEHPQCLNSQPHARGSSRAIFSVGPVSPNRRWSHRCYGYDLNSPYVWSSPSDLLELLVPG(配列番号74)
PKPTLWAEPDSVITQGSPVTLSCQGSLEAQEYRLYREKKSASWITRIRPELVKNGQFHIPSITWEHTGRYGCQYYSRARWSELSDPLVLVMTGAYPKPTLSAQPSPVVTSGGRVTLQCESQVAFGGFILCKEGEDEHPQCLNSQPHARGSSRAIFSVGPVSPNRRWSHRCYGYDLNSPYVWSSPSDLLELLVPG(配列番号75)
【0058】
いくつかの場合では、ターゲティング領域は、配列番号57、74、及び75のうちのいずれか1つに示される配列と90%以上(例えば、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの場合では、ターゲティング領域は、配列番号57、74、及び75のうちのいずれか1つに示される配列と95%以上(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの場合では、ターゲティング領域は、配列番号57、74、及び75のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0059】
いくつかの場合では、ILT4キメラ受容体のターゲティング領域(D1~D2ドメインを含む領域)は、配列番号57として示される配列と80%以上(例えば、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの場合では、ターゲティング領域は、配列番号57として示される配列と90%以上(例えば、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの場合では、ターゲティング領域は、配列番号57として示される配列と95%以上(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの場合では、ターゲティング領域は、配列番号57として示されるアミノ酸配列を含む。
【0060】
本セクションで論じられる上記の実施形態のうちのいずれかについて、いくつかの場合では、本主題のILT2又はILT4キメラ受容体は、D3及びD4ドメインを欠く(すなわち、それぞれ、ILT2(配列番号73)又はILT4(配列番号76)のD3~D4ドメインに対応する領域を欠く)。ILT2の場合、D3~D4ドメインを有する領域は、以下のとおりである:
PLDILIAGQFYDRVSLSVQPGPTVASGENVTLLCQSQGWMQTFLLTKEGAADDPWRLRSTYQSQKYQAEFPMGPVTSAHAGTYRCYGSQSSKPYLLT(配列番号73)。
ILT4の場合、D3~D4ドメインを有する領域は、以下のとおりである:
QPGPVMAPGESLTLQCVSDVGYDRFVLYKEGERDLRQLPGRQPQAGLSQANFTLGPVSRSYGGQYRCYGAHNLSSECSAPSDPLDILITGQIRGTPFISVQPGPTVASGENVTLLCQSWRQFHTFLLTKAGAADAPLRLRSIHEYPKYQAEFPMSPVTSAHAGTYRCYGSLNSDPYLLSHPSEPLEL(配列番号76)。
【0061】
いくつかの場合では、主題のCIRは、配列番号73として示される配列と85%以上(例えば、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を欠く。いくつかの場合では、主題のCIRは、配列番号76として示される配列と85%以上(例えば、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を欠く。いくつかの場合では、主題のCIRは、配列番号73及び76のうちのいずれか1つに示される配列と85%以上(例えば、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を欠く。
【0062】
いくつかの実施形態では、リンカーは、ILT2又はILT4からのD1~D2ドメインと原形質膜とのキメラとして融合され得、D3及びD4ドメインを置き換えるストークとして機能する。これらの実施形態では、D3~D4の欠失は、例えば、ANGPTL2及びANGPTL5とILT4 D4との相互作用、並びにnogo、Omgp、及びMAGとILT4 D3~D4との相互作用など、D3又はD4ドメインを介して天然ILT2又はILT4と相互作用するHLA-G以外のタンパク質とのCIRの相互作用を妨げ得る。そのような相互作用の防止により、CIRを発現する細胞と骨髄間質、ミエリン、及び内皮などの非腫瘍組織との潜在的に有毒な誤ターゲティングが減少する可能性がある。
【0063】
ストークドメイン
上記の実施形態では、D3~D4の置き換えは、別個の細胞上で発現されたHLA-Gの状況で、ILT2又はILT4 D1~D2バインダーを適切に提示する任意のタンパク質又はタンパク質の一部で行うことができる。ある特定の実施形態では、短いポリペプチドリンカーは、膜貫通ドメインとキメラILT受容体の細胞内ドメインとの間の結合を形成し得る。したがって、キメラILT受容体は、ストーク(すなわち、細胞外ドメインと膜貫通ドメインとの間のアミノ酸の細胞外領域)を更に含み得る。ストークドメインの目的は、D1/D2ドメインを形質膜から離れて、標的タンパク質HLA-Gに向かって延長することである。例えば、ストークは、選択された膜貫通ドメインに天然に会合するアミノ酸の配列であり得る。いくつかの実施形態では、キメラILT受容体は、CD8膜貫通ドメインを含み、ある特定の実施形態では、キメラILT受容体は、膜貫通ドメインの細胞外部分における追加のアミノ酸とともにCD8膜貫通ドメインを含む。ある特定の実施形態では、CARは、CD8膜貫通ドメイン及びCD8ストークを含む。特定の実施形態では、CD8膜貫通ドメインは、本明細書に開示される配列を含む(又はそれからなる)(表4~42を参照)。別の特定の実施形態では、CD8ストークは、本明細書に開示される配列を含む(又はそれからなる)(表4~42を参照)。キメラILT受容体は、膜貫通ドメインと細胞質ドメインとの間のアミノ酸の領域を更に含み得、これは、膜貫通ドメインが由来するポリペプチドと天然に会合する。
【0064】
形質導入後、細胞は今やその表面でCIRを発現し、HLA-Gとの接触及び連結時に、細胞傷害性及び細胞活性化を誘導するCD3ゼータ鎖を介したシグナルを発現する。かかるドメインが他のタンパク質に対して親和性を有さず、それによって、CIRを発現する免疫細胞の潜在的な誤ターゲティングを引き起こすことが重要である。そのようなキメラストーク部分の例としては、CD8αの膜近位部分(例えば、配列番号43及び107を参照)、IgGのCH2/CH3ドメイン(例えば、IgG1、IgG4)(例えば、配列番号51及び98を参照)、IgGのCH3ドメイン(例えば、IgG1、IgG4)(例えば、配列番号102を参照)、HER2、mGluR2、CD28(例えば、配列番号47及び106を参照)、及びCTLA4(
図5Aを参照)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
例えば、いくつかの場合では、主題のCIRのストークドメインは、ILT2、ILT4、CD28、CH2/CH3、CH3、及びCD8ストークドメインから選択される。例えば、以下を参照されたい:
VVSGPSGGPSSPTTGPTSTSGPEDQPLTPTGSDPQSGLGRHLGVVIGILVAVILLLLLLLLLFLILRHRRQ(配列番号39)、これには、ILT2ストーク及びTMドメインが含まれる;
PAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD(配列番号107)、これには、CD8ストークドメインが含まれる;
PAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCNHRNRRRVCKCPR(配列番号43)、これには、CD8ストーク及びTMが含まれる;
IEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKP(配列番号106)、これには、CD28ストークが含まれる;
IEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV(配列番号47)、これには、CD28ストーク及びTMドメインが含まれる;
VDKRVESKYGPPCPSCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFQSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLEL(配列番号98)、これには、CH2CH3ストークが含まれる;
VDKRVESKYGPPCPGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLEL(配列番号102)、これには、CH3ストークが含まれる;
DPAEPKSPDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKKDPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV(配列番号51)、これには、CH2CH3ストーク及びCD28 TMドメインが含まれる;
VVSGPSMGSSPPPTGPISTPAGPEDQPLTPTGSDPQSGLGRHLGVVIGILVAVVLLLLLLLLLFLILRHRRQ(配列番号59)、これには、ILT4ストーク及びTMドメインが含まれる。
【0066】
いくつかの実施形態では、主題のCIRのドメインのストークは、配列番号39、43、47、51、及び59のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列のストーク配列部分と80%以上(例えば、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、主題のCIRのドメインのストークは、配列番号39、43、47、51、及び59のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列のストーク配列部分と95%以上(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、主題のCIRのドメインのストークは、配列番号39、43、47、51、及び59のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列のストーク配列部分を含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、主題のCIRのドメインのストークは、配列番号98、102、106、及び107のうちのいずれか1つに示されるストーク配列と80%以上(例えば、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、主題のCIRのドメインのストークは、配列番号98、102、106、及び107のうちのいずれか1つに示されるストーク配列と95%以上(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、主題のCIRのドメインのストークは、配列番号98、102、106、及び107のうちのいずれか1つに示されるストーク配列を含む。
【0068】
D1/D2ストーク含有CIRと二量体HLA-Gとの相互作用は、ある特定の実施形態ではICDの活性化及び細胞シグナル伝達を刺激することができる細胞内シグナル伝達ドメインを二量体化する効果を有するであろう(
図5B)。
【0069】
ILT2 D1/D2 CIR又はILT4 D1/D2 CIRの変異体形態
更なる実施形態では、変異は、CIR内に含まれるILT2又はILT4 D1又はD2ドメイン内で行われ得、他の潜在的に相互作用するタンパク質よりも、HLA-Gに対するCIRの特異性を増加させる。例えば、変異は、ILT4(配列番号57)の天然アミノ酸96(Y96)又はILT2(配列番号31)(例えば、Y96A)の相関する位置で、チロシン以外のアミノ酸をコードするように作製され得る。そのような変異体形態の効果は、HLA-Gに対する結合親和性を保持しながら、ANGPTL2及びANGPTL5との潜在的な相互作用を低減することである。更に別の実施形態では、同様の変異を、ドメインD4における変異(配列番号55のチロシン394(Y394)に対応する位置)とともに、D1~D4ドメインを含む全長ILT4 CIRに配置し、ANGPTL2及びANGPTL5との相互作用を更に不安定化することができる(例えば、Y394A変異、配列番号61を参照)。ILT2の対応する位置は、配列番号31のチロシン395(Y395)である。
【0070】
したがって、いくつかの場合では、主題のILT4 CIRは、配列番号57のY96に対応するアミノ酸位置に変異(例えば、Y96A)を含む。いくつかの場合では、主題のILT2 CIRは、配列番号31のY96に対応するアミノ酸位置に変異(例えば、Y96A)を含む。いくつかの場合では、主題のILT4 CIRは、配列番号55のY394に対応するアミノ酸位置に変異(例えば、Y394A)を含む。いくつかの場合では、主題のILT2 CIRは、配列番号31のY395に対応するアミノ酸位置に変異(例えば、Y395A)を含む。いくつかの場合では、主題のILT4 CIRは、配列番号55のY96に対応するアミノ酸位置での変異(例えば、Y96A)及び配列番号55のY394に対応するアミノ酸位置での変異(例えば、Y394A)(例えば、Y96A/Y394A)を含む。いくつかの場合では、主題のILT2 CIRは、配列番号31のY96に対応するアミノ酸位置での変異(例えば、Y96A)及び配列番号31のY395に対応するアミノ酸位置での変異(例えば、Y395A)(例えば、Y96A/Y395A)を含む。
【0071】
他の実施形態は、同様に、HLA-Gに対する結合を保持しながら、古典的HLAタンパク質又はCD1との相互作用を制限し得る。これらの変異は、これらのHLAの重鎖に特異的であるか、又は表面でβ2-Mに結合したα3ドメインで相互作用部位を置き換えることができる。
【0072】
(ii)膜貫通(TM)領域
CIRは、一回膜貫通又は複数回膜貫通配列(例えば、キメラタンパク質のN末端若しくはC末端、又はタンパク質内、例えば、細胞外ターゲティング領域を細胞内ドメインに接続する)を含み得る。一回膜貫通領域は、ある特定のCD分子、チロシンキナーゼ受容体、セリン/スレオニンキナーゼ受容体、TGFβ、BMP、アクチビン、及びホスファターゼに見出される。一回膜貫通領域は、多くの場合、約20~約25個のアミノ酸のシグナルペプチド領域及び膜貫通領域を含み、その多くは、疎水性アミノ酸であり、αヘリックスを形成することができる。正に荷電したアミノ酸の短いトラックは、多くの場合、膜にタンパク質をアンカーする膜貫通スパンが続く。複数回膜貫通タンパク質は、イオンポンプ、イオンチャネル、及びトランスポーターを含み、膜を複数回貫通する2つ以上のヘリックスを含む。複数回膜貫通タンパク質の全て又は実質的に全てが、キメラタンパク質に組み込まれる。一回膜貫通及び複数回膜貫通領域の配列は既知であり、キメラタンパク質分子への組み込みのために選択することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CIRの細胞外ドメインに融合される。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、細胞外領域及び細胞内領域に融合され、それによって、細胞外及び細胞内領域が互いに接続される。一実施形態では、CIRのドメインのうちの1つに天然に会合している膜貫通ドメインが使用される。他の実施形態では、CIRのドメインのうちの1つと天然に会合していない膜貫通ドメインが使用される。いくつかの場合では、膜貫通ドメインは、同じ又は異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへのそのようなドメインの結合を回避して、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるために、アミノ酸置換(例えば、典型的には、疎水性残基に変更される)によって選択又は改変され得る。
【0074】
膜貫通(TM)ドメインは、例えば、T細胞受容体のアルファ、ベータ、又はゼータ鎖、CD3ε、CD3ζ、CD4、CD5、CD8、CD8α、CD9、CD16、CD22、CD28、CD33、CD38、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、ILT2、HER2、ILT4、若しくはCD154に由来するか、又はその構造(例えば、膜貫通)特性の実質的な部分を保持するものなどのその機能的バリアントを含む膜貫通領域であり得、それを使用することができる。例えば、Kahlon et al.(2004)Cancer Res.64:9160-9166、Schambach et al.(2009)Methods Mol.Biol.506:191-205、Jensen et al.(1998)Biol.Blood Marrow Transplant 4:75-83、Patel et al.(1999)Gene Ther.6:412、Song et al.(2012)Blood 119:696-706、Carpenito et al.(2009)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 106:3360-5、Hombach et al.(2012)Oncoimmunology 1:458-66)、及びGeiger et al.(2001)Blood 98:2364-71を参照されたい。
【0075】
又は、いくつかの例では、膜貫通ドメインは、例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、及びバリンなどの疎水性残基を大部分含む、新規に合成され得る。本発明で使用するための好適なCD8ストーク配列、膜貫通配列、及びCD3ζ配列は、表4~42に開示される。
【0076】
例えば、いくつかの場合では、主題のCIRのTMドメインは、ILT2(例えば、配列番号39を参照)、ILT4(例えば、配列番号59を参照)、CD28(例えば、配列番号47及び104を参照)、及びCD8(例えば、配列番号43及び100を参照)のTMドメインから選択される。例えば、以下を参照されたい:
VVSGPSGGPSSPTTGPTSTSGPEDQPLTPTGSDPQSGLGRHLGVVIGILVAVILLLLLLLLLFLILRHRRQ(配列番号39)、これには、ILT2ストーク及びTMドメインが含まれる;
IYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCNHRNRRRVCKCPR(配列番号100)、これには、CD8 TMドメインが含まれる;
PAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCNHRNRRRVCKCPR(配列番号43)、これには、CD8ストーク及びTMドメインが含まれる;
FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV(配列番号104)、これには、CD28TMドメインが含まれる;
IEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV(配列番号47)、これには、CD28ストーク及びTMドメインが含まれる;
DPAEPKSPDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKKDPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV(配列番号51)、これには、CH2CH3ストーク及びCD28 TMドメインが含まれる;並びに
VVSGPSMGSSPPPTGPISTPAGPEDQPLTPTGSDPQSGLGRHLGVVIGILVAVVLLLLLLLLLFLILRHRRQ(配列番号59)、これには、ILT4ストーク及びTMドメインが含まれる。
【0077】
いくつかの実施形態では、主題のCIRのTMドメインは、配列番号39、43、47、51、及び59のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列のTMドメイン配列部分と80%以上(例えば、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、主題のCIRのTMドメインは、配列番号39、43、47、51、及び59のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列のTMドメイン配列部分と95%以上(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、主題のCIRのTMドメインは、配列番号39、43、47、51、及び59のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列のTMドメイン配列部分を含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、主題のCIRのストークドメインに加えてTMドメイン(ストーク/TMドメイン)は、配列番号39、43、47、51、及び59のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列と80%以上(例えば、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、主題のCIRのストークドメインに加えてTMドメイン(ストーク/TMドメイン)は、配列番号39、43、47、51、及び59のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列と95%以上(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、主題のCIRのストークドメインに加えてTMドメイン(ストーク/TMドメイン)は、配列番号39、43、47、51、及び59のうちのいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、主題のCIRのTMドメインは、配列番号100及び104のうちのいずれか1つに示されるTMドメイン配列と80%以上(例えば、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、主題のCIRのTMドメインは、配列番号100及び104のうちのいずれか1つに示されるTMドメイン配列と95%以上の配列同一性(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、主題のCIRのTMドメインは、配列番号100及び104のうちのいずれか1つに示されるTMドメイン配列を含む。
【0080】
(iii)細胞内ドメイン(ICD)
上記のように、主題のキメラILT受容体(ILT2又はILT4に基づく)は、抑制性であるILT2又はILT4の天然の細胞内部分を、活性化しているCARのICDで置き換える細胞内領域(細胞内ドメイン又はICD)を含む。したがって、主題のCIR(ILT2バージョン又はILT4バージョン)のICDは、細胞の活性化を引き起こす少なくとも1つのシグナル伝達ドメインを有する「シグナル伝達領域」を含み、任意選択的に、1つ以上の共刺激ドメインを含み得る「共刺激領域」を含み得る。
【0081】
シグナル伝達領域
CIRの「シグナル伝達領域」(又は「細胞内シグナル伝達ドメイン」)とは、標的分子(主題のCIRの場合はHLA-G)へのCIR結合からのシグナルを、免疫エフェクター細胞の内部に伝達して、エフェクター細胞機能(例えば、CIR結合標的細胞への細胞傷害性因子の放出又は細胞外CIRドメインに結合する標的分子によって誘発される他の細胞応答を含む、活性化、サイトカイン産生、増殖、及び/又は細胞傷害活性)を誘発することに関与するCIRの部分を指す。したがって、「シグナル伝達領域」(「細胞内シグナル伝達ドメイン」)という用語は、エフェクター機能シグナルを伝達し、細胞に特定の機能を行うように指示するタンパク質の部分を指す。細胞内シグナル伝達ドメインの切断部分が使用される限り、かかる切断部分がエフェクター機能シグナルを伝達する限り、全長細胞内シグナル伝達ドメインの代わりに使用され得る。シグナル伝達領域という用語は、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインの任意の短縮部分を含むことを意味する。いくつかの場合では、シグナル伝達領域は、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(又は「ITAM」)として知られているシグナル伝達モチーフを含む。
【0082】
主題のCIRのシグナル伝達領域において使用され得る細胞内ドメイン配列の例としては、リンパ球受容体鎖の細胞内シグナル伝達ドメイン、TCR/CD3複合体タンパク質、Fc受容体サブユニット、IL-2受容体サブユニット、CD3ζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD66d、CD278(ICOS)、FcsRl、DAP10、及びDAP12に由来するものが挙げられる。
【0083】
いくつかの実施形態では、主題のCIRのシグナル伝達領域は、CD3ゼータ(CD3ζ)シグナル伝達ドメインを含む(例えば、配列番号33を参照)。したがって、いくつかの場合では、主題のキメラILT受容体のICD(ILT2バージョン又はILT4バージョン)は、配列番号33と80%以上(例えば、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むシグナル伝達領域を含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達領域は、配列番号33と90%以上(例えば、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達領域は、配列番号33と95%以上(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達領域は、配列番号33として示されるアミノ酸配列を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、主題のCIRのシグナル伝達領域は、DAP10シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、主題のCIRのシグナル伝達領域は、DAP12シグナル伝達ドメインを含む。
【0085】
共刺激領域
いくつかの実施形態では、主題CIRのICDは、共刺激領域も含む。共刺激領域は、少なくとも1つの共刺激ドメイン(例えば、1、2、3つ、1つ以上、2つ以上、又は3つ以上の共刺激ドメイン)を含む。共刺激ドメインの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:CD40、CD27、CD28、4-1BB、HVEM、TRANCE、RANK、OX40、DAP10、及びICOS共刺激ドメイン。共刺激ドメインの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:4-1BB、OX40、ICOS、CD28、CD27、MyD88、IL-1Rα、HVEM、TRANCE、IL-1Rβ、CD70、IL-18Rα、CD40、IL-18Rβ、IL-33Rα、CD30、及びIL-33Rβ。共刺激ドメインの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:4-1BB、OX40、ICOS、RANK、DAP10、DAP12、CD28、CD27、MyD88、IL-1Rα、HVEM、TRANCE、IL-1Rβ、CD70、IL-18Rα、CD40、IL-18Rβ、IL-33Rα、CD30、及びIL-33Rβ。いくつかの場合では、共刺激領域は、以下からなる群から選択される1つ以上(例えば、1、2、3つ、1つ以上、又は2つ以上)の共刺激ドメインを含む:CD28(例えば、配列番号49を参照)、4-1BB(例えば、配列番号35を参照)、及びOX40、又はそれらの任意の組み合わせ。いくつかの場合では、CD28共刺激ドメインが使用される。いくつかの場合では、4-1BB共刺激ドメインが使用される。いくつかの場合では、CD28共刺激ドメイン及び4-1BB共刺激ドメインの両方が使用される(すなわち、それらは両方とも使用される)。いくつかの場合では、CD28共刺激ドメイン及びOX40共刺激ドメインが使用される。
【0086】
いくつかの場合では、共刺激領域は、例えば、CD40、CD27、CD28、4-1BB、HVEM、TRANCE、RANK、OX40、又はICOSなどの共刺激の受容体メディエーターのシグナル伝達ドメインと融合された切断型MyD88ポリペプチドを含む。いくつかの場合では、共刺激領域は、MyD88ポリペプチド又は切断型MyD88ポリペプチド、並びにCD27、ICOS、RANK、TRANCE、CD28、4-1BB、OX40、及びDAP10からなる群から選択される共刺激ドメインを含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、主題のキメラILT受容体のICD(ILT2バージョン又はILT4バージョン)は、番号49と80%以上(例えば、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む共刺激領域を含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達領域は、配列番号49と90%以上(例えば、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達領域は、配列番号49と95%以上(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達領域は、配列番号49として示されるアミノ酸配列を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、主題のキメラILT受容体のICD(ILT2バージョン又はILT4バージョン)は、番号35と80%以上(例えば、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む共刺激領域を含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達領域は、配列番号35と90%以上(例えば、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達領域は、配列番号35と95%以上(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達領域は、配列番号35として示されるアミノ酸配列を含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、主題のキメラILT受容体のICD(ILT2バージョン又はILT4バージョン)は、番号35と80%以上(例えば、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列と、番号49と80%以上(例えば、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列と、を含む共刺激領域を含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達領域は、番号35と90%以上(例えば、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列と、番号49と90%以上(例えば、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列と、を含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達領域は、番号35と95%以上(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列と、番号49と95%以上(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%)の配列同一性を有するアミノ酸配列と、を含む。いくつかの実施形態では、シグナル伝達領域は、配列番号35に記載されるアミノ酸配列と、配列番号49に記載されるアミノ酸配列と、を含む。
【0090】
いくつかの実施形態では、主題のCIRのシグナル伝達領域は、CD3ゼータ(CD3ζ)シグナル伝達ドメインを含み、共刺激領域は、CD28共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、主題のCIRのシグナル伝達領域は、CD3ゼータ(CD3ζ)シグナル伝達ドメインを含み、共刺激領域は、4-1BB共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、主題のCIRのシグナル伝達領域は、CD3ゼータ(CD3ζ)シグナル伝達ドメインを含み、共刺激領域は、4-1BB共刺激ドメイン及びCD28共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、主題のCIRのシグナル伝達領域は、CD3ゼータ(CD3ζ)シグナル伝達ドメインを含み、共刺激領域は、CD28共刺激ドメイン及びOX40共刺激ドメインを含む。
【0091】
4-1BB、CD28、及びOX40共刺激シグナル伝達ドメインの非限定的な例は、U.S.2013/0266551、米国特許第5,686,281号、Geiger,T.L. et al.,Blood 98:2364-2371(2001)、Hombach A.et al.,J Immunol 167:6123-6131(2001)、Maher J.et al.Nat Biotechnol 20:70-75(2002)、Haynes N.M.et al.,J Immunol 169:5780-5786(2002)、Haynes N.M.et al.,Blood 100:3155-3163(2002)、U.S.2012/20148552に見出すことができる(これらは全て、共刺激ドメインに関連するそれらの教示について、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0092】
細胞活性化を誘導するのに有用なキメラポリペプチドの非限定的な例、及び例えば、発現構築物、ベクターを構築するための方法、及び活性又は機能のアッセイを含む治療用細胞の活性化を誘導するための関連する方法は、以下の特許及び特許出願にも見出され得る:US2014-0286987-A1、WO2014/151960、US2016/0046700、WO2015/123527、US2004/0209836、米国特許第7,404,950号、WO2004/073641、US2011/0033388、米国特許第8,691,210号、WO2008/049113、US2014/0087468、米国特許第9,315,559号、WO2010/033949、US2011/0287038、WO2011/130566、US2016/0175359、WO2016/036746、WO2016/100241、US2017/0166877、WO2017/106185、及びWO2018/208849(これらの各々は、細胞活性化ドメイン(例えば、細胞シグナル伝達ドメイン及び共刺激ドメイン)の記載に関連する目的を含めて、全ての目的のために、全てのテキスト、表、及び図面を含めて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0093】
例示的なCIR
主題のCIRの異なる領域/ドメインは、モジュール式であり、便利なように組み合わせることができる。
図6A及び
図10は、主題のCIRがとることができる様々な形態の例を提供し、図に示されているものは、実施例セクション全体を通して様々なアッセイで生成及び試験された。例えば、
図6Aでは、フォーマットCIR1、CIR2、CIR3、及びCIR4が導入され、
図10では、フォーマットCIR6、CIR7、CIR8、CIR9、及びCIR10が導入される。
図10は、ILT4のためのこれらのフォーマットのみを示すが、当業者は、必要に応じて、同じフォーマットを使用してILT2 CIRが生成され得ることを理解するであろう。
【0094】
いくつかの場合では、主題のCIRは、ILT2 CIR4 又はILT4 CIR4(すなわち、ILT2又はILT4 D1~D2ターゲティングドメイン、CD8ストーク及びTM、CD3ゼータ(CD3ζ)シグナル伝達ドメイン、並びに4-1BB共刺激ドメイン(T2A-デルタ-CD19領域は任意選択的であり、すなわち、いくつかの場合では不在となる)。例えば、
図6Aを参照されたい。
【0095】
いくつかの場合では、主題のCIRは、ILT2 CIR3 又はILT4 CIR3(すなわち、ILT2又はILT4 D1~D4ターゲティングドメイン、CD8ストーク及びTM、CD3ゼータ(CD3ζ)シグナル伝達ドメイン、並びに4-1BB共刺激ドメイン(T2A-デルタ-CD19領域は任意選択的であり、すなわち、いくつかの場合では不在となる)。
図6Aを参照されたい。
【0096】
いくつかの場合では、主題のCIRは、ILT2 CIR2又はILT4 CIR2(すなわち、ILT2又はILT4 D1~D2ターゲティングドメイン、ILT2又はILT4ストーク及びTM、CD3ゼータ(CD3ζ)シグナル伝達ドメイン、並びに4-1BB共刺激ドメイン(T2A-デルタ-CD19領域は任意選択的であり、すなわち、いくつかの場合では不在となる)。
図6Aを参照されたい。
【0097】
いくつかの場合では、主題のCIRは、ILT2 CIR1又はILT4 CIR1(すなわち、ILT2又はILT4 D1~D4ターゲティングドメイン、ILT2又はILT4ストーク及びTM、CD3ゼータ(CD3ζ)シグナル伝達ドメイン、並びに4-1BB共刺激ドメイン(T2A-デルタ-CD19領域は任意選択的であり、すなわち、いくつかの場合では不在となる)。
図6Aを参照されたい。
【0098】
CIRバリエーション
本発明の範囲には、本明細書に記載の本発明のCIRの機能部分が含まれる。「機能部分」という用語は、CIRに関して使用される場合、本発明のCIRの任意の部分又は断片を指し、その部分又は断片は、それが一部であるCIR(親CIR)の生物学的活性を保持する。機能部分は、例えば、親CIRと同様の程度、同じ程度、又はより高い程度で、標的(HLA-G)若しくは標的細胞を認識する能力を保持するか、又は疾患を検出、治療、若しくは予防する能力を保持する、CIRの部分を包含する。親CIRに関して、機能部分は、例えば、約10%、25%、30%、50%、68%、80%、90%、95%、又はそれ以上の親CIRを含むことができる。
【0099】
機能部分は、その部分のアミノ末端若しくはカルボキシ末端、又は両方の末端に追加のアミノ酸を含むことができ、その追加のアミノ酸は、親CIRのアミノ酸配列に見出されない。望ましくは、追加のアミノ酸は、生物学的機能を妨げず、例えば、標的細胞の認識、がんの検出、がんの治療、又は予防などを妨げない。より望ましくは、追加のアミノ酸は、親CIRの生物学的活性と比較して、生物学的活性を増強する。
【0100】
本発明の範囲には、本明細書に開示される本発明のCIRの機能的バリアント又は生物学的均等物が含まれる。機能的バリアントは、例えば、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を有する親ポリペプチドのアミノ酸配列を含み得る。代替的又は追加的に、機能的バリアントは、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を有する親ポリペプチドのアミノ酸配列を含み得る。この場合、非保存的アミノ酸置換は、機能的バリアントの生物学的活性を妨害又は阻害しないことが好ましい。非保存的アミノ酸置換は、親ポリペプチドと比較して、機能的バリアントの生物学的活性が増加するように、機能的バリアントの生物学的活性を増強させ得る。
【0101】
このような生物学的バリアント(その機能部分を含む)は、1つ以上の天然に存在するアミノ酸の代わりに合成アミノ酸を含み得る。
【0102】
そのような生物学的バリアント(その機能部分を含む)は、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N-アシル化、環化(例えば、ジスルフィド架橋を介した)、又は酸付加塩への変換、及び/あるいは任意選択的に二量体化若しくは重合、又はコンジュゲートされ得る。
【0103】
そのような生物学的バリアント(その機能部分を含む)は、当該技術分野で既知の方法によって得ることができる。ポリペプチドは、ポリペプチド又はタンパク質を作製する任意の好適な方法によって作製され得る。ポリペプチド及びタンパク質を新規に合成する好適な方法は、例えば、Chan et al.,Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis,Oxford University Press,Oxford,United Kingdom,2000、Peptide and Protein Drug Analysis,ed.Reid,R.,Marcel Dekker,Inc.,2000、Epitope Mapping,ed.Westwood et al.,Oxford University Press,Oxford,United Kingdom,2001、及び米国特許第5,449,752号に記載されている。また、ポリペプチド及びタンパク質は、標準的な組換え方法を使用して、本明細書に記載の核酸を使用して組換え的に産生され得る。例えば、Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.2001、及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons,NY,1994を参照されたい。
【0104】
6.共刺激ポリペプチド
主題のキメラILT受容体(CIR)を発現する遺伝子改変細胞は、共刺激ポリペプチドを更に発現し得る(例えば、CIRを発現することに加えて)。共刺激ポリペプチドの発現は、誘導性又は構成的であり得る。
【0105】
共刺激ポリペプチドは、CD27、ICOS、RANK、IL-18R、DAP12、HVEM、TRANCE、CD28、4-1BB、IL-1R、OX40、DAP10、IL-33R、MyD88、若しくはCD40などの1つ以上の共刺激シグナル伝達領域、又は例えば、その細胞質領域を含み得る。共刺激ポリペプチドは、CD27、ICOS、RANK、IL-18R、DAP-12、HVEM、TRANCE、CD28、4-1BB、IL-1R、OX40、DAP10、IL-33R、MyD88、又はCD40によって活性化されたシグナル伝達経路を活性化する1つ以上の好適な共刺激シグナル伝達領域を含み得る。共刺激ポリペプチドには、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)ファミリー(すなわち、CD40、RANK/TRANCE-R、OX40、4-1BB)、及びCD28ファミリーメンバー(CD28、ICOS)のNF-κB経路、MyD88経路、STAT5経路、STAT1経路、Akt経路、及び/又はp38経路を活性化する任意の分子又はポリペプチドが含まれる。複数の共刺激ポリペプチド又は共刺激ポリペプチドの細胞質領域が、改変細胞で発現され得る。
【0106】
本発明とともに使用するための好適なCD28、OX40、4-1BB、及びICOS配列は、表4d-36に開示されている。
【0107】
細胞は、例えば、切断型MyD88ポリペプチドが、例えば、CD40、CD27、CD28、4-1BB、OX40、又はICOSなどの共刺激の受容体メディエーターのシグナル伝達ドメインと融合されているキメラシグナル伝達ポリペプチドを含む、キメラシグナル伝達ポリペプチドを含み得る。
【0108】
7.安全スイッチ
主題のキメラILT受容体(CIR)を発現する遺伝子改変細胞はまた、誘導性自殺遺伝子又は自殺スイッチとしても知られている安全スイッチを発現することができる。これは、必要に応じて、例えば、GvHDが発症する場合、インビボで治療用細胞を根絶するために使用することができる。いくつかの例では、治療用細胞は、CIRに起因するオフターゲット毒性などの有害事象を誘発し得るか、若しくは改変細胞を使用する治療中に患者が陰性症状を経験し得るか、若しくは健康な組織に対する非特異的攻撃に起因する副作用が存在し得るか、又は、時には、治療用細胞はもはや必要ではない可能性があるか、若しくは療法が特定の期間意図され、例えば、治療用細胞が腫瘍細胞若しくは腫瘍サイズを減少させるように機能してもよく、もはや必要ではない可能性もある。したがって、遺伝子改変細胞がまた、誘導性カスパーゼ9ポリペプチドなどの細胞を死滅させるポリペプチドを誘導的に発現する可能性がある場合に有用であり得る。例えば、治療用細胞の数を低減する必要がある場合、スイッチを誘発することができる。
【0109】
これらのスイッチは、治療用細胞を根絶することが望まれる場合に供給され、細胞死を引き起こす(例えば、壊死又はアポトーシスを引き起こす)薬理学的作用物質などの誘発物質に応答する。これらの作用物質は、毒性遺伝子産物の新規発現をもたらす可能性があるが、遺伝子改変細胞が既に作用物質に応答して毒性形態に切り替えられているタンパク質を発現している場合、より迅速な応答を得ることができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、安全スイッチは、対象に誘発分子(リガンド誘導剤とも称される)を投与することによって誘発され得るアポトーシス促進性タンパク質に基づく。アポトーシス促進性タンパク質が、誘発分子に結合するポリペプチド配列に融合される場合、この誘発分子の送達により、2つのアポトーシス促進性タンパク質が接近し、それにより、アポトーシスが誘発され得る。例えば、カスパーゼ9を、薬理学的作用物質リミドゥシド(AP1903)に応答して二量体化するように誘導され得る改変ヒトFK結合タンパク質に融合してもよい。例えば、カスパーゼ9などのヒトアポトーシス促進タンパク質に基づく安全スイッチの使用は、スイッチを発現する細胞が、ヒト対象の免疫系によって異物として認識されるリスクを最小限に抑える。したがって、対象へのリミドゥシドの送達により、カスパーゼ9スイッチを発現する細胞のアポトーシスを誘発することができる。
【0111】
細胞死又はアポトーシスを誘導するのに有用なキメラポリペプチドの更なる非限定的な例は、以下の特許及び特許出願に見出され得る(それらの各々は、全ての目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。米国特許出願US2011/0286980、米国特許9,089,520、米国特許出願US2014/0255360、米国特許第9,434,935号、WO2014/16438、US2016/0151465、WO2014/197638、US2015/0328292、WO2015/134877、US2016/0166613、WO2016/100236、US2016/0175359、WO2016/100241、US2017/0166877、WO2017/106185(これらの各々は、全ての目的のために、全てのテキスト、表、及び図面を含めて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの特定のスイッチ及びアプローチの詳細も以下に与えられる。
【0112】
誘導性カスパーゼ9(iC9):このアポトーシス促進性スイッチは、カスパーゼ9とFKBP12又は誘導体との融合物を含む。リガンドの不在下では潜在的であるが、細胞のアポトーシスの固有の経路からのイニシエーターカスパーゼであるカスパーゼ9の二量体化を駆動する。二量体化は、カスパーゼ9の活性化、エフェクターカスパーゼであるカスパーゼ-3の切断及び活性化、並びにアポトーシスによる急速な細胞死をもたらす。誘導性カスパーゼ9は、毒性応答を遮断するための細胞療法における安全スイッチとして特に有用である。
【0113】
カスパーゼ9スイッチ:例は、上記のDi Stasi et al.(2011)に記載されている。また、Yagyu et al.(2015)Mol Ther 23(9):1475-85、Rossigloni et al.(2018)Cancer Gene Ther doi.org/10.1038/s41417-018-0034-1、Jones et al.(2014)Front Pharmacol doi.org/10.3389/fphar.2014.00254、米国特許第9,434,935号、米国特許第9,913,882号、米国特許第9,393,292号、及び米国特許出願2015/0328292も参照されたい。
【0114】
安全スイッチは、改変された活性、例えば、ホモ二量体リガンドの不在下で基底活性が低減した改変されたカスパーゼ9ポリペプチドを含み得る。改変されたカスパーゼ9ポリペプチドは、例えば、上記の米国特許第9,913,882号及び米国特許第2015/0328292号に記載されており、例えば、330位のアミノ酸置換(例えば、D330E若しくはD330A)又は例えば、450位のアミノ酸置換(例えば、N405Q)、又はそれらの組み合わせ(例えば、D330E-N405Q及びD330A-N405Qを含む)を含み得る。基底活性が低いカスパーゼ9ポリペプチドは、例えば、米国特許第9,434,935号、同第9,932,572号、及び同第9,913,882号、並びに米国特許出願第62/668,223号、同第62/756,442号、同第62/816,799号、同第15/901,556号、同第15/888,948号に以前に記載されている。
【0115】
いくつかの実施形態では、安全スイッチは、例えば、上記のDi Stasi et al.(2011)で論じられているiCasp9であり得、これは、その内因性カスパーゼの活性化及び動員ドメインを欠く改変されたヒトカスパーゼ9(CASP9)にSGGGSリンカーを介して接続された、F36V変異を有するヒトFK506結合タンパク質(FKBP12)(GenBank AH002 818)の配列からなる。F36V変異は、FKBP12の、合成ホモ二量体AP20187及びリミドゥシドに対する結合親和性を増加させる。
【0116】
リミドゥシドによるFKBP12対立遺伝子特異的結合:リミドゥシドは、FKBP12のバリン36対立遺伝子に高い親和性(約0.1nM)で結合するが、野生型フェニルアラニン36 FKBP12対立遺伝子には低い親和性(約500nM)で結合する。ラパマイシン及びラパログは、いずれかのFKBP対立遺伝子に結合することができる。リミドゥシドは、バリン36形態(FKBP12(F36V)、FKBP12v36、FKBPV、FV36、又は単にFvとして様々に知られている)に対して各々高い親和性及び特異性を有する2つの同一のタンパク質結合表面が逆方向に配置されている。Jemal et al.,CA Cancer J.Clinic.58,71-96(2008)、Scher & Kelly Journal of Clinical Oncology 11,1566-72(1993))を参照されたい。タンパク質の2つのタンデムコピーも、リミドゥシドによる架橋時に高次オリゴマーが誘導されるように、構築物において使用され得る。ホモ二量体化に通常依存する1つ以上の細胞シグナル伝達分子に1つ以上のFVドメインを結合すると、そのタンパク質がリミドゥシド制御スイッチに変換され得る。FKBP12バリアントも使用され得る。バリアントは、ラパマイシン又はラパログに結合し得るが、例えば、FKBP12v36よりもリミドゥシドに対する親和性が低い。FKBP12バリアントの例としては、例えば、酵母を含む多くの種からのものが挙げられる。一実施形態では、FKBP12バリアントは、FKBP12.6(カルスタブリン)である。
【0117】
自殺スイッチは、誘発分子(二量体化又は多量体化リガンドなど)を含む薬学的組成物によって制御されてもよい。誘発分子を含む薬学的組成物の有効量は、遺伝子改変細胞を殺滅する所望の結果を達成する量である。殺滅の程度は、高い(例えば、60%、70%、80%、85%、90%、95%、又は97%超)か又は完全であり得、逆に、時には、部分的な除去のみ(例えば、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、又は10%未満の遺伝子改変細胞が殺滅される)が望まれるであろう。このため、遺伝子改変は、誘発分子に対する様々な感受性を示し得る。したがって、誘発分子を使用して、一部の細胞(例えば、少なくとも10%)を生存させながら、一部の細胞のみ(例えば、少なくとも10%)を根絶することができる。誘発分子の濃度は、細胞の生死の所望のバランスに従って選択することができ、例えば、より高い割合の細胞の根絶(又は完全な根絶)が望まれる場合、より高い濃度が送達される。
【0118】
これらの濃度は、誘発分子に応答して細胞死のレベルを監視する単純な用量範囲実験によって決定することができる。任意の適切なアッセイを使用して、殺滅される遺伝子改変細胞のパーセントを決定することができる。アッセイは、誘発分子の投与前に対象から第1の試料を得るステップと、誘発分子の投与後に対象から第2の試料を得るステップと、第1の試料及び第2の試料における治療用細胞の数又は濃度を比較して、殺滅される治療用細胞のパーセントを決定するステップと、を含み得る。過度の実験をすることなく、本明細書に提示される特定の組成物の有効量を経験的に決定することができる。
【0119】
細胞は、例えば、切断型MyD88ポリペプチドが、例えば、CD40、CD27、CD28、4-1BB、HVEM、TRANCE、RANK、OX40、又はICOSなどの共刺激の受容体メディエーターのシグナル伝達ドメインと融合されているキメラシグナル伝達ポリペプチドを含む、キメラシグナル伝達ポリペプチドを含み得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、キメラシグナル伝達ポリペプチドは、例えば、4-1BB及びCD28などの2つの共刺激ポリペプチド、又はCD27、ICOS、RANK、TRANCE、CD28、4-1BB、OX40、DAP10からなる群から選択される1つ若しくは2つ以上の共刺激ポリペプチド細胞質シグナル伝達領域からの細胞質シグナル伝達領域を含む。いくつかの実施形態では、キメラシグナル伝達ポリペプチドは、MyD88ポリペプチド又は切断型MyD88ポリペプチドと、CD27、ICOS、RANK、TRANCE、CD28、4-1BB、OX40、及びDAP10からなる群から選択される共刺激ポリペプチド細胞質シグナル伝達領域とを含む。
【0121】
上記のように、細胞活性化を誘導するのに有用なキメラポリペプチドの非限定的な例、及び例えば、発現構築物、ベクターを構築するための方法、及び活性又は機能のアッセイを含む治療用細胞の活性化を誘導するための関連する方法は、以下の特許及び特許出願にも見出され得る(これらの各々は、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる):US2014-0286987-A1、WO2014/151960、US2016/0046700、WO2015/123527、US2004/0209836、米国特許第7,404,950号、WO2004/073641、US2011/0033388、米国特許第8,691,210号、WO2008/049113、US2014/0087468、米国特許第9,315,559号、WO2010/033949、US2011/0287038、WO2011/130566、US2016/0175359、WO2016/036746、WO2016/100241、US2017/0166877、WO2017/106185、及びWO2018/208849(これらの各々は、全ての目的のために、全てのテキスト、表、及び図面を含めて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0122】
いくつかの実施形態では、細胞は、構成的に活性な療法を提供するように設計される。いくつかの実施形態では、遺伝子改変細胞は、キメラILT2又はILT4受容体(又はCIR)をコードする第1のポリヌクレオチドと、キメラシグナル伝達ポリペプチドをコードする第2のポリヌクレオチドと、を含む核酸を含む。いくつかの実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、第1のポリヌクレオチドの5’に位置する。いくつかの実施形態では、第2のポリヌクレオチドは、第1のポリヌクレオチドの3’に位置する。いくつかの実施形態では、リンカーポリペプチドをコードする第3のポリヌクレオチドは、第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドとの間に位置する。第3のポリヌクレオチドが第1のポリヌクレオチドの3’及び第2のポリヌクレオチドの5’に位置する場合、リンカーポリペプチドは、翻訳後も無傷のまま残ってもよく、又は翻訳中若しくは翻訳後に第1のポリヌクレオチド及び第2のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを分離してもよい。いくつかの実施形態では、リンカーポリペプチドは、翻訳中又は翻訳後に、第1のポリヌクレオチド及び第2のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを分離することができる2Aポリペプチド(本明細書の他箇所を参照)である。高レベルの共刺激は、リーキーな2A共翻訳配列(本明細書の他箇所を参照)を使用して、キメラシグナル伝達ポリペプチドからCIRを分離する代替的なメカニズムを介して構成的に提供される。2Aの(例えば、リーキー2A配列からの)分離が不完全である場合、発現されたキメラシグナル伝達ポリペプチド分子の大部分は、キメラ抗原受容体ポリペプチドから分離され、細胞質に留まってもよく、いくつかの部分又はキメラシグナル伝達ポリペプチド分子は、CIRに結合又は連結されたままである。
【0123】
「構成的に活性な」とは、キメラ刺激ポリペプチドの細胞活性化の活性が、誘導剤の不在下でさえ活性であることを意味する。構成的に活性なシグナル伝達を生成する1つの方法は、膜貫通ドメイン又は脂質ターゲティング部分を介して、活性化タンパク質因子を原形質膜に繋ぎ止めることである。
【0124】
免疫細胞療法はまた、構成的に活性なT細胞又はNK細胞などの構成的に活性な療法を提供するように設計され得るが、誘導性の安全スイッチを提供して、必要に応じて、療法を停止又はレベルを低減させることができる(上記参照)。いくつかの実施形態では、CIR-T細胞又はCIR-NK細胞などの免疫細胞は、キメラ抗原受容体及びキメラシグナル伝達ポリペプチドを発現する。
【0125】
8.リンカーポリペプチド
2つのポリペプチドが単一の転写産物においてコードされるように、それらが単一の遺伝子にコードされることが望まれる場合、2つのポリペプチドは、リンカーポリペプチドによって結合され得る。例えば、これらは、MyD88-CD40キメラポリペプチドにおけるMyD88とCD40との間、又はCAR又はCIRの共刺激ポリペプチド細胞質シグナル伝達領域とCD3ζ部分との間に含まれ得る。必要に応じて、リンカーは、本明細書に記載の領域/ドメインのうちのいずれかの間に位置し得る。例えば、いくつかの場合では、リンカーは、TMドメインとシグナル伝達領域若しくは共刺激領域との間、ILT2若しくはILT4ターゲティング領域(例えば、D1~D2ドメイン)とストークとの間、シグナル伝達領域と共刺激領域との間、2つの共刺激ドメインとの間、共刺激若しくはシグナル伝達領域とT2A配列との間、又はそれらの任意の組み合わせの間に配置される。
【0126】
リンカーポリペプチドは、切断可能及び切断不能なリンカーポリペプチドを含む。リンカーの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:SGR、GS、VD、及びPRGSG(配列番号67)。追加のリンカーは、当業者に既知であり、任意の好都合なリンカーが使用され得る。
【0127】
リンカーポリペプチドとしては、例えば、約2~約30個のアミノ酸(例えば、フーリン切断部位(GGGGS)n)からなるリンカーが挙げられる。いくつかの実施形態では、リンカーポリペプチドは、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個のアミノ酸からなる。いくつかの実施形態では、リンカーポリペプチドは、約18~22個のアミノ酸からなる。いくつかの実施形態では、リンカーポリペプチドは、20個のアミノ酸からなる。
【0128】
切断可能なリンカーには、改変細胞における酵素によって切断されるリンカーが含まれる。酵素は、細胞に対して外因性であり得る。例えば、酵素は、リンカーをコードするポリヌクレオチドと同時又は異なる時間のいずれかでのトランスフェクション又は形質導入によって細胞に導入されるポリヌクレオチドによってコードされる。いくつかの実施形態では、切断可能なリンカーは、例えば、細胞内で天然に発現される酵素、及び細胞に対して天然のポリヌクレオチドによってコードされる酵素(例えば、リゾチームなど)を含む、集団内の改変細胞に対して内因性の酵素によって切断されるリンカーを含む。「切断可能なリンカー」という用語は、例えば、ペプチドスキッピングなどの非酵素的手段を含む任意の手段によって切断されるリンカーにも及ぶ。
【0129】
切断可能なリンカーの1つの利点は、2つのポリペプチドの発現の本質的に固定された化学量論比(2つの成熟したポリペプチドが単一の切断可能なリンカーによって連結されている場合は1:1の比率)を可能にすることである。
【0130】
リンカーポリペプチドは、例えば、トセア・アシグナ(Thosea asigna)昆虫ウイルスを含む多くの異なるウイルスに由来し得る2A様配列であってもよい。これらの配列は、「ペプチドスキッピング配列」としても知られることがある。このタイプの配列が、分離されることが意図された2つのポリペプチド間のシストロン内に配置されると、リボソームは、ペプチド結合をスキップするように見え、トセア・アシグナ配列の場合、カルボキシ末端「P-G-P」でのGly及びProアミノ酸間の結合が省略される。これにより、2~3個のポリペプチド、例えば、誘導性キメラアポトーシス促進性ポリペプチド及びキメラ抗原受容体、又は、例えば、マーカーポリペプチド及び誘導性キメラアポトーシス促進性ポリペプチドが残る可能性がある。この配列を使用する場合、2A配列の5’にコードされるポリペプチドは、カルボキシ末端で追加のアミノ酸(Gly残基及び2A配列における任意の上流残基を含む)で終わる可能性がある。2A配列の3’にコードされるペプチドは、Pro残基及び2A配列に続く任意の下流残基を含む、アミノ末端での追加のアミノ酸で終わる可能性がある。
【0131】
いくつかの実施形態では、切断可能なリンカーは、ブタテッショウウイルス-1(P2A)に由来する2Aポリペプチドである。いくつかの実施形態では、2A共翻訳配列は、2A様配列である。いくつかの実施形態では、2A共翻訳配列は、T2A(トセア・アシグナウイルス2A)、F2A(口蹄疫ウイルス2A)、P2A(ブタテッショウウイルス-1 2A)、BmCPV 2A(細胞質多角体病ウイルス2A)、BmIFV 2A(B.モリ(B.mori)の軟化病ウイルス2A)、又はE2A(ウマ鼻炎Aウイルス2A)である。いくつかの実施形態では、2A共翻訳配列は、T2A-GSG、F2A-GSG、P2A-GSG、又はE2A-GSGである。いくつかの実施形態では、2A共翻訳配列は、T2A、P2A、及びF2Aからなる群から選択される。特定の実施形態では、2TAは、本明細書に開示される配列を含む(又はそれからなる)。本明細書に開示される配列(例えば、以下の実施例に開示される配列)を含む(又はそれからなる)。
【0132】
2A様配列は、ポリペプチドのうちのいくつかが翻訳中に分離されず、代わりに、翻訳後に1つの長いポリペプチドとして残るという点で、時には「リーキー」である。リーキーリンカーの原因に関する1つの理論は、短い2A配列が、リボソームスキッピングを促進する必要な構造に折り畳まれない場合がある(「2A折り畳み」)ということである。これらの事例では、リボソームは、プロリンペプチド結合を見逃すことなく、次いで、融合タンパク質がもたらされる。リーキーなレベルを低減し、したがって、形成される融合タンパク質の数を低減するために、GSG(又は同様の)リンカーが、2Aポリペプチドのアミノ末端側に付加されてもよい。このGSGリンカーは、新たに翻訳されたポリペプチドの二次構造が自発的に折り畳まれ、「2A折り畳み」を破壊することを遮断する。例えば、同じコードされたポリペプチドを細胞表面に指向され得るが、他の場合では細胞質に残るように、リーキーな2A配列を使用することができる。
【0133】
ある特定の実施形態では、2Aリンカーは、配列番号11のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、2Aリンカーは、ポリペプチドのアミノ末端にGSGアミノ酸配列を更に含み、他の実施形態では、2Aリンカーは、ポリペプチドのアミノ末端にGSGPR(配列番号68)アミノ酸配列を含む。したがって、「2A」配列によって、この用語は、本明細書に記載の実施例における2A配列を指し得るか、又はリンカーのアミノ末端にGSG若しくはGSGPR(配列番号68)配列を更に含む本明細書に列挙される2A配列を指し得る。
【0134】
いくつかの実施形態では、リンカー、例えば、2Aリンカーは、翻訳されたポリペプチドの約10、20、30、40、50、60、70、75、80、85、90、95、98、又は99%で切断される。
【0135】
本発明で使用するための好適なリンカーポリペプチド(T2Aリンカーを含む)は、表4~42(「フレックス」リンカーポリペプチド配列を含む)に開示される。
【0136】
9.膜ターゲティング配列
膜ターゲティング配列は、細胞表面膜へのキメラタンパク質の輸送を提供する。細胞膜と会合する分子は、膜会合を促進するある特定の領域を含み、そのような領域をキメラタンパク質分子に組み込んで、膜標的分子を生成することができる。いくつかの実施形態では、CIRは、ILT2又はILT4の天然シグナルペプチドを介した小胞体の管腔へのシグナル依存性翻訳を通して細胞表面に輸送され得る。他の実施形態では、この天然シグナルペプチドは、他の分泌タンパク質のもので置き換えることができる。これらの実施形態では、シグナルペプチドは、GM-CSF又は免疫グロブリン軽鎖に由来し得るが、これらのタンパク質からの誘導に限定されない。
【0137】
例えば、いくつかのタンパク質は、アシル化されたN末端又はC末端に配列を含み、これらのアシル部分は、膜会合を促進する。そのような配列は、アシルトランスフェラーゼによって認識され、多くの場合、特定の配列モチーフに適合する。ある特定のアシル化モチーフは、単一のアシル部分(多くの場合、アニオン性脂質頭部基との会合を改善するためのいくつかの正荷電残基(例えば、ヒトc-Src:MGSNKSKPKDASQRRR、配列番号69)が続く)で改変されることができ、他のアシル化モチーフは、複数のアシル部分で改変することができる。例えば、タンパク質チロシンキナーゼSrcのN末端配列は、単一のミリストイル部分を含み得る。二重アシル化領域は、ある特定のタンパク質キナーゼ(例えば、Srcファミリーメンバーのサブセット(例えば、Yes、Fyn、Lck))及びGタンパク質アルファサブユニットのN末端領域内に位置する。かかる二重アシル化領域は、多くの場合、かかるタンパク質の最初の18個のアミノ酸内に位置し、配列モチーフMet-Gly-Cys-Xaa-Cysに準拠し、Metは切断され、GlyはN-アシル化され、Cys残基のうちの1つはS-アシル化される。多くの場合、Glyはミリストイル化され、Cysはパルミトイル化され得る。配列モチーフCys-Ala-Ala-Xaa(いわゆる「CAAXボックス」)に準拠するアシル化領域は、Gタンパク質ガンマサブユニット及び他のタンパク質のC末端からのC15又はC10イソプレニル部分で改変され得(例えば、https://www.ebi.ac.uk/interpro/entry/InterPro/IPR031771/or https://prosite.expasy.org/PS00294)、これも用いられ得る。これら及び他のアシル化モチーフには、例えば、Gauthier-Campbell et al.,Molecular Biology of the Cell 15:2205-2217(2004)、Glabati et al.,Biochem.J.303:697-700(1994)、及びZlakine et al.,J.Cell Science 110:673-679(1997)で論じられているものが含まれ、キメラ分子に組み込んで膜局在化を誘導することができる。
【0138】
いくつかの実施形態では、膜ターゲティング領域は、ミリストイル化領域を含む。いくつかの実施形態では、膜ターゲティング領域は、受容体からのミリストイル化ターゲティング配列、パルミトイル化ターゲティング配列、プレニル化配列(すなわち、ファルネシル化、ゲラニル-ゲラニル化、CAAXボックス)、タンパク質-タンパク質相互作用モチーフ、又は膜貫通配列(シグナルペプチドを用いる)からなる群から選択される。例としては、例えば、ten Klooster et al,Biology of the Cell(2007)99,1-12、又はVincent et al.,Nature Biotechnology 21:936-40,1098(2003)で論じられているものが挙げられる。
【0139】
ポリペプチドが膜ターゲティング領域を含まないか、又は本明細書に提供されるある特定のキメラポリペプチドなどの膜ターゲティング領域を欠く場合、ポリペプチドは、キメラタンパク質の細胞膜への輸送を提供する領域を含まない。ポリペプチドは、例えば、ポリペプチドを細胞表面膜に輸送する配列を含まなくてもよく、又はポリペプチドは、例えば、ポリペプチドを細胞表面膜に輸送しない機能不全の膜ターゲティング領域(例えば、ミリストイル化ターゲティング領域の機能を破壊するプロリンを含むミリストイル化領域)を含んでもよい。(例えば、Resh,M.D.,Biochim.Biophys.Acta.1451:1-16(1999)を参照されたい)。膜に輸送されないポリペプチドは、細胞質ポリペプチドと考えられる。
【0140】
本発明で使用するのに好適なミリストイル化配列は、表4~42に開示されている。
【0141】
10.遺伝子改変細胞
遺伝子改変細胞(例えば、主題のキメラILT受容体(コードする核酸を含む)を発現する免疫細胞などの細胞)は、細胞療法に有用な任意の細胞、例えば、免疫細胞であり得る。細胞は、例えば、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、B細胞、マクロファージ、末梢血細胞、造血前駆細胞、又は骨髄細胞であり得る。好ましい実施形態では、改変細胞は、T細胞、ナチュラルキラー細胞、又はナチュラルキラーT細胞である。
【0142】
本明細書に開示されるように遺伝子改変されている細胞(例えば、主題のキメラILT受容体(例えば、コードする核酸を含む)を発現する免疫細胞などの細胞)は、それらの投与から利益を得ることができる(例えば、ドナーリンパ球の投与から利益を得ることができる)対象に投与するのに有用である。これらの対象は典型的にはヒトであり、そのため、本発明は典型的にはヒト細胞を使用して行われることになる。
【0143】
細胞の供給源
遺伝子改変される細胞は、自己、同系、又は同種であり得る。同種細胞は、任意の健康なドナーに由来し得、同系細胞は、意図されたレシピエントに適切に関連する任意の健康なドナーに由来し得る。ドナーは、一般に、成人(少なくとも18歳)であるが、子供もまた、細胞ドナーとして好適である(例えば、Styczynski 2018,Transfus Apher Sci 57(3):323-330を参照されたい)。
【0144】
「自己」という用語は、それが後で投与される同じ個体に由来する細胞を意味する。「同種」という用語は、宿主細胞とドナー細胞との間で抗原的に異なるHLA又はMHC遺伝子座を指す。したがって、同じ種からの細胞は、抗原的に異なる可能性がある。「同系」という用語は、組織移植を可能にするのに十分に同一若しくは密接に関連する遺伝子型を有するか、又は免疫学的に適合する細胞を指す。例えば、一卵性双生児又は近親者は、同系であり得る。
【0145】
細胞は、血液細胞であり得る。例えば、細胞の供給源は、例えば、臍帯血、骨髄、又は末梢血であり得、それらは、末梢血単核細胞(PBMC)であり得る。これらには、リンパ球(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞)、又は単球が含まれる。本明細書で使用される場合、「末梢血」という用語は、血液の細胞成分(例えば、赤血球、白血球、及び血小板)を指し、これらは、血液の循環プールから取得又は調製され、リンパ系、脾臓、肝臓、又は骨髄内に隔離されない。臍帯血は、リンパ系、脾臓、肝臓又は骨髄内に隔離された末梢血及び血液とは異なり、出産後に胎盤及び付着した臍帯に残存する血液を指す。臍帯血は、多くの場合、造血細胞を含む幹細胞を含む。
【0146】
ヒトからT細胞を得るための好適なプロセスは、Di Stasi et al.(2011)N Engl J Med 365:1673-83(「プロトコル」)に付随する公開されたプロトコルに記載されている。一般的に言えば、T細胞が得られ、遺伝子改変及び選択に供され、次いで、レシピエント対象に投与され得る。T細胞の有用な供給源は、ヒトの末梢血である。末梢血試料は、一般に、白血球について濃縮された試料を提供するために、白血球分離に供されることになる。この濃縮された試料(ロイコパックとしても知られている)は、単球、リンパ球、血小板、血漿、及び赤血球を含む様々な血液細胞から構成され得る。ロイコパックは、典型的には、静脈穿刺又はバフィーコート製品と比較して、より高い濃度の細胞を含む。
【0147】
試料は、(プロトコルで論じられているように)同種枯渇(allodepletion)に供され得るが、試料は同種枯渇に供されないことが好ましい。したがって、好ましい試料は、Zhou et al.(2015)Blood 125:4103-13で論じられているように、同種充満(alloreplete)である。これらの集団は、治療目的でより堅牢なT細胞レパートリーを提供することができる。したがって、本発明の好ましい組成物は、T細胞同種枯渇されておらず、同種枯渇のステップに供されていない。
【0148】
T細胞は、一般に、遺伝子改変される前に(通常、活性化条件下で、例えば、抗CD3及び/又は抗CD28抗体を使用して、任意選択的にIL-2とともに)培養される。このステップは、改変プロセスの終了時にT細胞のより高い収率をもたらす。
【0149】
ヒトからNK細胞を取得及び増殖するためのプロセスは、Cho & Campana(2009)Korean J Lab Med 29:89-96、Somanchi et al.(2011)J Vis Exp 48:2540 and in Wang et al(2020)Blood Adv.4:1950に記載されている。
【0150】
CD4+及びCD8+T細胞
主題の組成物は、CD4+T細胞及びCD8+T細胞を含み得る。ロイコパックにおけるCD4+細胞とCD8+細胞の比率は、典型的には2を上回るが、いくつかの実施形態では、本発明の組成物における遺伝子改変CD4+細胞と遺伝子改変CD8+細胞の比率は、2未満、例えば、1.5未満である。理想的には、組成物中に、遺伝子改変CD8+T細胞が遺伝子改変CD4+T細胞よりも多く存在し、すなわち、比率は、1未満、例えば、0.9未満、0.8未満、0.7未満、0.6未満、又は好ましくは0.5未満である。したがって、ドナー細胞から始まり、遺伝子改変T細胞を産生する全体的な手順は、理想的に、CD4+T細胞と比較して、CD8+細胞T細胞を濃縮する。好ましくは、遺伝子改変T細胞の少なくとも60%は、CD8+T細胞であり、より好ましくは、少なくとも65%である。遺伝子遺伝子改変CD3+T細胞の集団内で、CD8+T細胞の好ましい範囲は、55~75%(例えば、63~73%)である。CD8+及びCD4+T細胞の割合は、フローサイトメトリーによって容易に評価することができ、CD4+及びCD8+T細胞を選別及び計数する方法は、当該技術分野において従来のものである。
【0151】
メモリーT細胞サブセット(Mahnke et al.(2013)Eur J Immunol 43:2797-809を参照されたい)
遺伝子改変T細胞の集団には、ターミナルエフェクターメモリーT細胞(CD45RA+CD45RO-CCR7-細胞として定義される、「TEMRA」)、Tエフェクターメモリー細胞(CD45RA-CD45RO+CCR7-細胞として定義される、「EM」)、Tセントラルメモリー細胞(CD45RA-CD45RO+CCR7+細胞として定義される、「CM」)、及びナイーブT細胞(CD45RA+CD45RO-CCR7+細胞として定義される)が含まれ得る。これらの細胞は、CD45RA/RO及びCCR7マーカーを使用して、フローサイトメトリーによって評価することができる。CCR7を認識し、CD45RA及びCD45ROアイソフォームを区別できる標識試薬は、商業サプライヤーから容易に入手可能である。
【0152】
平均的なロイコパックは、典型的には、ターミナルエフェクター細胞及びTエフェクターメモリー細胞の各々を約20%含む。ドナー細胞から遺伝子改変T細胞までの全体的な手順は、Tエフェクターメモリー細胞と比較して、ターミナルエフェクターメモリーT細胞を濃縮し得る。
【0153】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変T細胞の60%未満は、例えば、58%未満、好ましくは55%未満、より好ましくは50%未満のナイーブT細胞である。遺伝子改変CD3+T細胞の集団内で、ナイーブT細胞の好ましい範囲は、30~60%、より好ましくは42~49%、最も好ましくは43~46%である。ナイーブT細胞のこの割合は、T細胞レシピエントにおいて良好な転帰と相関することが見出されている。ナイーブEM細胞は、CD45RA/RO及びCCR7マーカーを使用して、フローサイトメトリーによって評価することができる。
【0154】
遺伝子改変T細胞の集団内では、TEMRA、EM、及びナイーブT細胞に加えて、Tセントラルメモリー細胞の割合は、一般に、10%未満である。
【0155】
いくつかの実施形態では、組成物中の遺伝子改変T細胞の集団は、約10%~約40%のCD4+T細胞及び約60%~約90%のCD8+T細胞を含む。遺伝子改変CD3+T細胞の集団は、約15%~約40%のCD4+T細胞及び約60%~約85%のCD8+T細胞、より好ましくは約20%~約40%のCD4+T細胞及び約60%~約80%のCD8+T細胞を含み得る。
【0156】
NK細胞
NK細胞は、ナチュラルキラー細胞又は大顆粒リンパ球(LGL)としても知られ、自然免疫系にとって重要な細胞傷害性リンパ球である。NK細胞の役割は、脊椎動物の適応免疫応答における細胞傷害性T細胞の役割に類似している。NK細胞は、ウイルスに感染した細胞に迅速な応答を提供し、腫瘍形成に応答する。
【0157】
T細胞は、T細胞活性化に必要な最初のステップとして、標的細胞上のT細胞受容体(TCR)とMHC-ペプチド複合体との間のプライミング相互作用に依存する。結果として、T細胞は、単一の抗原を認識することができ、腫瘍細胞は、抗原提示を大幅に低減させる変異によって、T細胞の認識を回避することができる。対照的に、NK細胞は、単一の抗原の提示に依存することなく、多数の形質転換細胞及び感染細胞を認識することができる。したがって、NK細胞による治療は、T細胞ベースの治療に対する耐性メカニズムのいくつかをバイパスすることができる。
【0158】
自然細胞として、NK細胞は、炎症誘発性ケモカイン及びサイトカインを分泌して、T細胞及びB細胞からなる体の適応免疫系を動員及び活性化し、持続的な抗腫瘍応答の第2波を生み出すことができる。更に、NK細胞は、サイトカイン放出症候群及び中枢神経系毒性などのCAR-T細胞療法に関連するある特定の毒性とは関連しない。
【0159】
NK細胞は、それらの先天性の細胞傷害メカニズムのために、抗原又は受容体ベースの指向性細胞療法の供給源として有用であり得る。NK細胞は、典型的なドナーの末梢血中に約10~15%のリンパ球を含み、容易に精製、増殖、及びウイルス形質導入することができる。腫瘍内の細胞に対する指向性細胞療法(例えば、HLA-G)の標的が失われた場合、活性化NK細胞は、NKG2D、p46、p44、p30、DNAM、及びCD16を含む細胞傷害機能を指示するための代替的な先天性のメカニズムを有する。
【0160】
細胞の遺伝子改変
細胞は、それに(主題のキメラILT受容体をコードする)発現構築物を導入ことによって遺伝子改変される。そのような導入は、遺伝子導入のウイルス法又は非ウイルス法を用いることができる。このセクションでは、遺伝子導入の方法及び組成について説明する。
【0161】
発現ベクターは、様々な手段によって細胞に導入することができる。「トランスフェクション」及び「形質導入」という用語は、互換的であり、外因性核酸配列が真核宿主細胞に導入されるプロセスを指す。トランスフェクション(又は形質導入)は、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、遺伝子銃送達、レトロウイルス感染、リポフェクション、スーパーフェクションなどを含むいくつかの手段のうちのいずれか1つによって達成され得る。
【0162】
任意の適切な方法を使用して、細胞(例えば、T細胞又はNK細胞)をトランスフェクト又は形質転換することができる。ある特定の非限定的な例が本明細書に提示される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、Tey et al.(2007)Biol Blood Marrow Transpl 13:913-24及びDi Stasi et al.,(2011)N Engl J Med 365:1673-83で論じられているように、SFGベースのウイルスベクターである。
【0163】
細胞は、本明細書に記載のポリペプチドをコードするウイルスベクターを使用して形質導入することができる。好適な形質導入技術は、フィブロネクチン断片CH-296を含み得る。ウイルスベクターを使用する形質導入の代替として、細胞は、例えば、リン酸カルシウム、カチオン性ポリマー(例えば、PEI)、磁気ビーズ、エレクトロポレーション、及び市販の脂質ベースの試薬(例えば、Lipofectamine(商標)及びFugene(商標))を使用して、関連するポリペプチドをコードするDNAなどを用いて、当該技術分野で既知の任意の好適な方法でトランスフェクトされ得る。形質導入/トランスフェクションステップの1つの結果は、様々なドナー細胞が、CIR及び任意の他の所望のポリペプチドを発現することができる遺伝子改変細胞となることである。
【0164】
いくつかの実施形態では、形質導入に使用されるウイルスベクターは、上記のTey et al.(2007)Biol Blood Marrow Transpl 13:913-24及びDi Stasi et al.(2011)によって開示されているレトロウイルスベクターである。このベクターは、iCasp9自殺スイッチ及びΔCD19細胞表面導入遺伝子マーカーをコードする、テナガザル白血病ウイルス(Gal-V)シュードタイプレトロウイルスに基づく(更に以下を参照されたい)。上記のTey et al.(2007)によって論じられているように、PG13パッケージング細胞株で産生され得る。また、所望のタンパク質をコードする他のウイルスベクターも使用され得る。いくつかの実施形態では、細胞当たり高コピー数のプロウイルス組み込み体を提供することができるレトロウイルスベクターが、形質導入に使用される。
【0165】
形質導入/トランスフェクション後、細胞を形質導入/トランスフェクション材料から分離し、再び培養して、遺伝子改変細胞を増殖させることができる。細胞は、所望の最小数の遺伝子改変細胞が達成されるように増殖させることができる。
【0166】
次いで、遺伝子改変細胞は、得られた細胞集団から選択され得る。CIRは、所望の細胞の陽性選択に好適ではない可能性があるため、いくつかの実施形態では、遺伝子改変細胞に、目的の細胞表面導入遺伝子マーカーを発現させる必要がある(以下を参照)。この表面マーカーを発現する細胞は、例えば、免疫磁気技法を使用して選択することができる。例えば、目的の細胞表面導入遺伝子マーカーを認識するモノクローナル抗体にコンジュゲートされた常磁性ビーズを使用(例えば、CliniMACS系(Miltenyi Biotecから入手可能)を使用)することができる。
【0167】
代替手順では、遺伝子改変細胞は、形質導入のステップの後に選択され、培養され、次いで供給される。したがって、形質導入、供給、及び選択の順序を変更することができる。
【0168】
これらの手順の結果は、遺伝子改変細胞を含み、したがって、キメラILT受容体(及び任意の他の所望のポリペプチド(例えば、共刺激ポリペプチド)、自殺スイッチ、細胞表面導入遺伝子マーカーなど)を発現することができる組成物である。これらの遺伝子改変細胞は、レシピエントに投与され得るが、それらは、投与される前に、任意選択的に、更なる増殖の後に、最初に保存され得る(例えば、凍結保存され得る)。
【0169】
選択マーカー
細胞は、その発現をインビトロ又はインビボで特定され得るポリペプチドを発現するように改変され得、それによって、例えば、遺伝子改変細胞を未改変細胞から分離するために、遺伝子改変細胞の選択を可能にする。そのようなマーカーは、細胞に特定可能な変化を付与し、所望の発現構築物を含む細胞の容易な特定を可能にする。
【0170】
薬物選択マーカーの包含は、クローニング及び形質転換体の選択を補助する。例えば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、GPT、ゼオシン、及びヒスチジノールに対する耐性を付与する遺伝子は、有用な選択マーカーである。代替的に、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)などの酵素が用いられる。
【0171】
細胞外非シグナル伝達ドメイン、又は様々なタンパク質(例えば、CD34、CD19、LNGFR)を含む免疫学的表面マーカーを使用することもでき、磁気又は蛍光抗体媒介性選別のための簡単な方法を可能にする。これらのマーカーは、例えば、タンパク質に結合する標識された抗体を使用して検出することができる。
【0172】
用いられる選択マーカーは、所望の遺伝子産物(例えば、主題のCIR)をコードする核酸と同時に発現され得る限り、重要であるとは考えられない。更に、マーカーは、理想的には、初期(ドナー)細胞によって発現されないポリペプチドであるべきであるが、マーカーが実際に初期細胞に対して内因性である状況では、発現レベルの違いを利用することができる。
【0173】
理想的には、マーカーを発現する細胞がヒト対象の免疫系によって外来物として認識されるリスクを最小限に抑えるため(例えば、それらが治療的に投与された後)、マーカーはヒトタンパク質に基づく。例えば、T細胞が所望のタイプの細胞である場合、T細胞によって天然に発現されないヒトCDタンパク質を、この目的のために使用することができる。
【0174】
本明細書に提供される遺伝子改変細胞は、主題のCIRを発現する発現ベクター上に存在する細胞表面導入遺伝子マーカーを発現することができ、かつ/又はいくつかの実施形態では、例えば、CAR、アポトーシス促進ポリペプチド安全スイッチ、又は共刺激ポリペプチドなどのCIR以外のタンパク質をコードする発現ベクター上に存在し得る。
【0175】
一実施形態では、細胞表面導入遺伝子マーカーは、細胞質内ドメインの大部分を除去するためにアミノ酸333で切断されたヒトCD19を含む切断型CD19(ΔCD19)ポリペプチド(上記のDi Stasi et al.(2011))である(例えば、配列番号12(ヌクレオチド)及び13(タンパク質)を参照)。細胞外CD19ドメインは、依然として認識することができる(例えば、フローサイトメトリー、FACS、又はMACSにおいて)が、細胞内シグナル伝達を誘発する可能性は最小限に抑えられる。CD19は、通常、T細胞又はNK細胞ではなく、B細胞によって発現されるため、CD19+細胞の選択は、遺伝子改変細胞(例えば、T細胞、NK細胞、又はNKT細胞)を未改変細胞から分離することを可能にする。
【0176】
別の有用なマーカーは、CD34であり、これは、マーカーとして有用である16アミノ酸の最小エピトープ(配列番号41)を有する。
【0177】
コード遺伝子の5’末端に所望のタンパク質をコードし、3’末端にマーカーをコードすることにより、(例えば、翻訳の早期終了による)所望のポリペプチドを有しない細胞を選択するリスクを最小限に抑える。このようにして、マーカー及び所望のポリペプチドの発現は並行して実行される。
【0178】
本発明で使用するための好適なCD34マーカー配列は、表4~42に開示されている。
【0179】
11.操作された発現構築物
主題のキメラILT受容体(CIR)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸が提供される。いくつかの場合では、そのような核酸は、発現構築物である。キメラILT受容体(及び任意選択的に、キメラ抗原受容体、シグナル伝達ポリペプチド、安全スイッチなどの他の所望のポリペプチド)を発現させるための発現構築物が、本明細書に提供される。いくつかの例では、1つ以上のポリペプチドが、プロモーターに「作動可能に連結された」と言われる。これは、プロモーター配列が第2の配列に機能的に連結され、プロモーター配列が、第2の配列に対応してRNAポリメラーゼ開始及びDNAの転写を制御し、それによって、得られた転写物が目的のポリペプチドをコードするように、その第2の配列に関して正しい位置及び配向にあることを示す。
【0180】
「プロモーター」は、遺伝子の特異的な転写を開始するために必要とされる、細胞の合成機構によって認識されたか、又は合成機構に導入されたDNA配列である。いくつかの実施形態では、プロモーターは、発生的に調節されたプロモーター、すなわち、発生プログラム又は経路によって制御、開始、又は影響されるある特定の条件下で発現される遺伝子を転写するためのRNAポリメラーゼの初期結合部位として機能するプロモーターである。
【0181】
「発現構築物」という用語は、核酸コード配列の一部又は全てが転写され得る遺伝子産物をコードする核酸を含む任意のタイプの遺伝子構築物である。転写産物は、タンパク質に翻訳され得るが、翻訳される必要はない。ある特定の実施形態では、発現は、遺伝子の転写とmRNAの遺伝子産物への翻訳との両方を含む。他の実施形態では、発現は、目的の遺伝子をコードする核酸の転写のみを含む。発現ベクターは、特定の宿主生物において作動可能に連結されたコード配列の転写及び場合によっては翻訳に必要な核酸配列を指す、様々な制御配列を含むことができる。
【0182】
「ベクター」は、核酸配列を標的細胞(例えば、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、粒子状担体、及びリポソーム)に導入することができる。典型的には、「ベクター構築物」、「発現ベクター」、「発現構築物」、及び「遺伝子導入ベクター」は、目的の核酸の発現を誘導することができ、核酸配列を標的細胞に導入することができる任意の核酸構築物を意味する。したがって、この用語は、クローニング及び発現ビヒクル、並びにウイルスベクターを含む。
【0183】
ある特定の例では、CIRをコードするポリヌクレオチドは、第二のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと同じベクター(例えば、ウイルス又はプラスミドベクター)に含まれる。この第2のポリペプチドは、例えば(及び本明細書の他箇所に記載されるように)、内因性タンパク質の下方調節因子、抑制性受容体に対する遮断抗体若しくはscFv、シグナル伝達ポリペプチド、誘導性自殺スイッチ、又はマーカーポリペプチドであり得る。他の例では、追加の発現転写産物は、タンパク質をコードしないが、代わりに、細胞産物中の望ましくないタンパク質をコードするある特定の内因性RNAの発現を除去するように設計された短いヘアピンRNA産物を生成してもよい。
【0184】
構築物は、リンカーポリペプチド(例えば、2Aポリペプチドなどの切断可能なリンカーポリペプチド)によって連結された、ポリペプチドの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む核酸に動作可能に連結された1つのプロモーターで設計され得る。この例では、第1及び第2のポリペプチドは、単一の翻訳事象中に産生されるが、次いで、それらは、分離されてもよい。他の例では、2つのポリペプチドは、同じベクターから別々に発現されてもよく、ポリペプチドのうちの1つをコードするポリヌクレオチドを含む各核酸は、別個のプロモーターに作動可能に連結される。更に他の例では、1つのプロモーターは、2つの別個のRNA転写産物(したがって、2つのポリペプチド)の産生を指示する2つのポリヌクレオチドに作動可能に連結されてもよく、1つの例では、プロモーターは、双方向であってもよく、コード領域は、反対方向5’-3’であってもよい。したがって、本明細書で論じられる発現構築物は、少なくとも1つ、又は少なくとも2つのプロモーターを含み得る。
【0185】
更に他の例では、2つのポリペプチド(例えば、CIR及びマーカータンパク質など)は、2つの別個のベクターを使用して細胞で発現され得る。細胞は、ベクターと共トランスフェクト又は共形質転換されてもよく、又はベクターが異なる時間に細胞に導入されてもよい。
【0186】
これらのアプローチの任意の組み合わせは、遺伝子改変細胞における所望のポリペプチドの発現を達成するために使用され得る。
【0187】
いくつかの実施形態では、核酸構築物は、ウイルスベクター内に含まれる。ある特定の実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクターである。ある特定の実施形態では、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター又はレンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、細胞は、エクスビボでウイルスベクターと接触し、いくつかの実施形態では、細胞は、インビボでウイルスベクターと接触することが理解される。したがって、発現構築物は、ベクター(例えば、ウイルスベクター又はプラスミド)に挿入され得る。提供される方法のステップは、任意の好適な方法を使用して行われてもよく、これらの方法は、限定されないが、本明細書に記載の核酸を形質導入する、形質転換する、又はそうでなければ細胞に提供する方法を含む。
【0188】
目的のポリヌクレオチド配列の発現を制御するために用いられる特定のプロモーターは、一般に、所望の細胞におけるポリヌクレオチドの発現を指示することができる限り、特に重要ではない。したがって、ヒト細胞が標的にされる場合、ポリヌクレオチド配列のコード領域は、例えば、ヒト細胞で発現され得るプロモーターに隣接し、その制御下に置かれ得る。一般的に言えば、そのようなプロモーターは、ヒトプロモーター又はウイルスプロモーターのいずれかを含み得る。本明細書に提供されるCIR及び他のポリペプチドを発現するために使用されるベクターに適切なプロモーターを選択することができる。
【0189】
例えば、発現ベクターがレトロウイルスである様々な実施形態では、適切なプロモーターの例は、マウスモロニー白血病ウイルスプロモーターである。他の実施形態では、プロモーターは、例えば、CMV最初期遺伝子プロモーター、SV40初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス長鎖末端反復、β2-ミクログロブリン、リボソームタンパク質31、ホスホグリセリン酸キナーゼ、EF1α、□-アクチン、ラットインスリンプロモーター、及びグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼを使用して、目的のコード配列の高レベルの発現を得ることができる。目的のコード配列の発現を達成するために当該技術分野で周知である他のウイルス又は哺乳動物細胞プロモーターの使用も企図されるが、発現レベルが所与の目的に十分であることであることを条件とする。周知の特性を有するプロモーターを用いることによって、トランスフェクション又は形質転換後の目的のポリペプチドの発現レベル及びパターンを最適化することができる。
【0190】
他の実施形態では、発現ベクターは、CIR及び関連するマーカータンパク質、共活性化タンパク質若しくは内因性因子の阻害剤、又は腫瘍微小環境をコードする遺伝子要素が、一過性に共発現されたトランスポザーゼによって認識される要素を担持するプラスミドベクター上に担持されるようなトランスポゾンである。トランスポザーゼの作用は、トランスポザーゼによって認識される反復要素と細胞ゲノムとの間で運ばれる導入遺伝子の融合を触媒することである。これらの実施形態で使用され得るトランスポゾン系の例は、Sleeping Beauty系及びPiggyback系である。トランスポゾン内に担持されるプロモーター要素が導入遺伝子の発現を指示する。プロモーターは、例えば、CMV最初期遺伝子プロモーター、SV40初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス長鎖末端反復、β2-ミクログロブリン、リボソームタンパク質31、ホスホグリセリン酸キナーゼ、EF1α、β-アクチン、ラットインスリンプロモーター、及びグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼであり得る。トランスポゾン及びトランスポザーゼのプラスミドを細胞に導入するための方法は、ウイルス形質導入ではなくトランスフェクションである。
【0191】
プロモーター及び他の調節要素は、所望の細胞又は組織においてそれらが機能するように選択される。更に、このプロモーターのリストは、網羅的又は限定的あると解釈されるべきではない。本明細書に開示されるプロモーター及び方法と併せて使用される他のプロモーター。
【0192】
ポリヌクレオチドの順序は変動してもよく、任意の特定の方法に対する構築物の好適性を決定するために試験されてもよく、したがって、核酸は、成分(a)~(d)の順序の変動も考慮される様々な順序のポリヌクレオチドを含んでもよいことが理解される。そして、核酸は、以下の順序のうちのいずれかにおいて第1~第4のポリヌクレオチドを含んでもよく、1、2、3、及び4(例えば、細胞内領域、例えば、(1)シグナル伝達領域、(2)第1の共刺激ドメイン、(3)第2の共刺激ドメイン、及び(4)表面マーカーにおける成分の配置を表す)は、5’から3’方向の核酸におけるポリヌクレオチドの第1、第2、第3、及び第4の順序を示す。他のポリヌクレオチド、例えば、2Aポリペプチドをコードするものなどは、該当する場合、列挙されたポリヌクレオチドの間に存在し得ることが理解される。
【0193】
【0194】
同様に、核酸は、上記の表に提供される3つのポリペプチドをコードする3つのポリヌクレオチドのみを含み得る。いくつかの実施例では、細胞は、上記の表1に含まれる4つのポリヌクレオチドを含む核酸でトランスフェクト又は形質導入される。他の例では、細胞は、例えば、表2に提供される3つのポリペプチドをコードする3つのポリヌクレオチドをコードする核酸でトランスフェクト又は形質導入される。
【0195】
【0196】
同様に、核酸は、上記の表に提供される2つのポリペプチドをコードする2つのポリヌクレオチドのみを含んでもよい。
【0197】
【0198】
様々なポリペプチド要素の順序の変更は、例えば、表4~42に見られる。
【0199】
いくつかの実施形態では、細胞は、2つのポリヌクレオチドをコードする核酸でトランスフェクト又は形質導入され、細胞はまた、第3のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸を含み、かつ/又は細胞はまた、第4のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、3つのポリヌクレオチドをコードする核酸でトランスフェクト又は形質導入され、細胞はまた、第4のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸を含む。例えば、細胞は、第1、第2、及び第3のポリヌクレオチドを含む核酸を含んでもよく、細胞はまた、キメラカスパーゼ9ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸を含んでもよい。また、細胞は、第1、第2、及び第4のポリヌクレオチドを含む核酸を含んでもよく、細胞はまた、キメラILT受容体をコードするポリヌクレオチド、天然ILT2機能のscFvモジュレーター又はインターロイキン15を含む核酸を含んでもよい。
【0200】
12.疾患を治療するための方法
例えば、注入による細胞(例えば、主題のCIRを発現する細胞)の投与が有益であり得る疾患の治療方法又は予防方法も提供される。細胞は、例えば、例えば、疾患細胞の機能を置き換えるために、再生に使用され得る。本明細書に記載の遺伝子改変細胞は、細胞療法に使用され得る。
【0201】
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療する」などの用語は、所望される薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指す。効果は、疾患若しくはその症状を完全に又は部分的に予防するという点では予防的であり得、かつ/あるいは疾患及び/若しくは疾患に起因する有害作用に対する部分的又は完全な治癒という点では治療的であり得る。本明細書で使用される「治療」は、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の任意の治療を網羅し、(a)疾患の素因があるか又は疾患を獲得する危険性があるが、それを有するとまだ診断されていない対象において疾患の発生を防止すること、(b)疾患を阻害すること、すなわち、その発達を阻止すること、及び(c)疾患を緩和すること、すなわち、疾患の退行を引き起こすことを含む。
【0202】
「個体」、「対象」、及び「患者」という用語は、本明細書において互換的に使用され、ヒト及び非ヒト霊長類(サル及びヒトを含む)、哺乳動物競技動物(例えば、ウマ)、哺乳動物家畜(例えば、ヒツジ、ヤギなど)、哺乳動物愛玩動物(イヌ、ネコなど)、及びげっ歯動物(例えば、マウス、ラットなど)を含むがこれらに限定されない哺乳動物を指す。
【0203】
「有効量」又は「十分量」は、単回又は複数回用量で、単独で又は1つ以上の他の組成物(治療剤、例えば、薬物)、治療、プロトコル、若しくは治療レジメンとの組み合わせで、任意の持続期間(長期又は短期)の検出可能な応答、任意の測定可能若しくは検出可能な程度の、又は任意の持続期間の(例えば、数分、数時間、数日間、数か月間、数年間、若しくは治癒)、対象における予期若しくは所望される転帰又は対象への利益を提供する量(例えば、有効量の細胞)を指す。
【0204】
治療のための(例えば、寛解させるか、又は治療的利益若しくは改善を提供するための)「有効量」又は「十分量」の用量は、典型的には、疾患の1つ、複数又は全ての有害な症状、帰結又は合併症、例えば、疾患によって引き起こされるか又はそれに関連する1つ以上の有害な症状、障害、疾病、病態、又は合併症に対する、測定可能な程度の応答を提供するのに有効であるが、疾患の進行又は悪化の減少、低減、阻害、抑制、制限又は制御もまた、満足のいく転帰である。
【0205】
本明細書に提供される遺伝子改変細胞(すなわち、主題のCIRを発現する細胞)は、その必要のあるヒト対象を治療するための方法で使用され得、そのような対象を治療するための薬剤を調製するために使用され得る。細胞は、通常、注入によってレシピエント対象に送達されることになる。
【0206】
遺伝子改変細胞は、T細胞、iNKT細胞、マクロファージ、又はNK細胞であり得る。対象における療法のためのT細胞又はNK細胞の典型的な用量は、105~107細胞/kgである。小児患者は、一般に、約106細胞/kgの用量を投与されるが、成人患者は、例えば、3×106細胞/kgのより高い用量を投与されることになる。
【0207】
一般的に言えば、本発明の遺伝子改変T細胞及びNK細胞は、既知のドナー白血球注入(DLI)と同じ方法で使用され得るが、それらは、CIRの更なる利点を有する。
【0208】
遺伝子改変T細胞又はNK細胞を投与される対象は、典型的には、同種ドナーから他の組織も投与されることになり、例えば、造血細胞及び/又は造血幹細胞(例えば、CD34+細胞)が投与され得る。この同種移植組織及び遺伝子改変T細胞は、理想的には、それらが遺伝的に一致するように、同じドナーに由来する。更に、ドナー及びレシピエントは、好ましくは、例えば、一致した無関係のドナー、又は好適な家族メンバーである。例えば、ドナーは、レシピエントの親又は子であり得る。したがって、対象が遺伝子改変T細胞を必要とすると特定される場合、好適なドナーをT細胞ドナーとして特定され得る。
【0209】
レシピエントは、遺伝子改変T細胞を投与される前に(及び同種移植片を投与される前に)リンパ枯渇コンディショニングを受ける場合がある。したがって、レシピエント自身のα/β T細胞(及びB細胞)は、遺伝子改変T細胞又はNK細胞を投与される前に枯渇され得る。
【0210】
レシピエントは、血液がん(治療抵抗性血液がんなど)又は遺伝性血液疾患を有し得る。例えば、レシピエントは、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、重症複合免疫不全(SCID)、ウィスコット・アルドリッチ症候群(WA)、ファンコニ貧血、慢性骨髄性白血病(CML)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキンリンパ腫(HL)、又は多発性骨髄腫を有し得る。
【0211】
CIRを発現するT細胞又はNK細胞のレシピエントは、HLA-Gを発現する非血液がんを有し得る。例えば、レシピエントは、腎細胞がん(RCC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、大腸がん(CRC)、乳がん、神経芽腫、肝細胞がん(HCC)を有し得る。
【0212】
他の細胞型もまた、療法で使用することができ、所望の治療結果のために患者に投与される任意の細胞を含む。治療用細胞は、例えば、T細胞、ナチュラルキラー細胞、B細胞、腫瘍浸潤リンパ球、又はマクロファージなどの免疫細胞、又はそれらの組み合わせであり得、治療用細胞は、例えば、末梢血細胞、造血前駆細胞、骨髄細胞、又は腫瘍細胞であり得る。より免疫原性であるように腫瘍微小環境を更に改善するために、治療を、1つ以上のアジュバント(例えば、IL-12、TLR、IDO阻害剤など)と組み合わせてもよい。いくつかの実施形態では、細胞は、例えば、腫瘍床への細胞の送達などの固形腫瘍を治療するために送達されてもよい。
【0213】
いくつかの実施形態では、核酸も提供され、これを対象に投与し、それによって、標的細胞をインビボで形質転換又は形質導入して、インサイツで遺伝子改変細胞を形成することができる。
【0214】
有効量の遺伝子改変細胞が投与される。有効量のリガンド又は改変細胞が投与されるかどうかを決定するために、標的細胞の数、又は標的抗原の量、又は腫瘍のサイズをアッセイ又は測定する任意の手段を使用して、標的細胞の数、標的抗原の量、又は腫瘍のサイズが増加しているか、減少しているか、又は同じままであるかどうかを決定することができる。改変細胞又はリガンドの投与前に取得された試料、画像、又は他の測定手段を使用して、改変細胞又はリガンドの投与後に取得された試料、画像、又は他の測定手段と比較してもよい。したがって、例えば、標的抗原を発現する細胞の量又は濃度が増加しているか、減少しているか、又は同じままであるかどうかを決定するために、第1の試料を、リガンド又は改変細胞の投与前に対象から得てもよく、第2の試料を、リガンド又は改変細胞の投与後に対象から得てもよい。第1の試料における標的抗原を発現する細胞の量又は濃度は、リガンド又は改変細胞の投与後、標的抗原を発現する細胞の量又は濃度が増加しているか、減少しているか、又は同じままであるかどうかを決定するために、第2の試料における標的抗原を発現する細胞の量又は濃度と比較され得る。
【0215】
任意の特定の用途の有効量は、治療される疾患又は状態、投与される特定の組成物、対象のサイズ、及び/又は疾患若しくは状態の重症度などの因子に応じて変動し得る。本明細書に提示される特定の組成物の有効量を経験的に決定することができる。
【0216】
本明細書に提示される改変細胞の有効性を高めるために、これらの組成物及び方法を、疾患の治療に有効な作用物質と組み合わせることが望ましい場合がある。
【0217】
薬学的組成物の投与は、数分から数週間の範囲の間隔で他の作用物質に先行、並行、及び/又は後行してもよい。薬学的組成物及び他の作用物質が別々に細胞、組織又は生物に適用される実施形態では、一般に、各送達の時間の間に著しい期間が満了しないことを確実にして、その結果、薬学的組成物及び作用物質が、依然として、細胞、組織、又は生物に対する有利に組み合わされた効果を発揮することができる。例えば、そのような場合、細胞、組織、又は生物を、実質的に同時に(すなわち、約1分以内に)2つ、3つ、4つ、又はそれ以上のモダリティで、薬学的組成物と接触させることができることが企図される。他の態様では、1つ以上の作用物質は、発現ベクターを投与する前及び/又は投与した後に、実質的に同時に、約1分間から、約24時間まで約7日間まで約1週間まで約8週間またはそれ以上まで、及びその中で導出可能な任意の範囲で投与され得る。更に、本明細書に提示される薬学的組成物の様々な併用レジメン、及び1つ以上の作用物質が用いられ得る。
【0218】
治療又は予防され得る疾患には、ウイルス、細菌、酵母、寄生虫、原虫、がん細胞などによって引き起こされる疾患が含まれる。治療及び/又は予防され得る例示的な疾患としては、HIV、インフルエンザ、ヘルペス、ウイルス性肝炎、エプスタインバー、ポリオ、ウイルス性脳炎、麻疹、水痘、パピローマウイルスなどのウイルス性病因の感染症;又は肺炎、結核、梅毒などの細菌性病因の感染症;又はマラリア、トリパノソーマ症、リーシュマニア症、トリコモナス症、アメーバ症などの寄生虫性病因の感染症が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的組成物(形質導入細胞、発現ベクター、発現構築物など)を使用して治療又は予防され得る前腫瘍状態又は過形成状態には、結腸ポリープ、クローン病、潰瘍性大腸炎、乳房病変などの前腫瘍状態又は過形成状態が含まれるが、これらに限定されない。
【0219】
細胞を使用して治療され得る固形腫瘍を含むがんには、原発性又は転移性黒色腫、腺がん、扁平上皮がん、腺扁平上皮がん、胸腺腫、リンパ腫、肉腫、肺がん、肝がん、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病、子宮がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、膵臓がん、結腸がん、多発性骨髄腫、神経芽腫、NPC、膀胱がん、子宮頸がんなど含まれるが、これらに限定されない。
【0220】
本明細書に提示される治療用細胞及び他の治療用細胞活性化系を使用して治療され得る固形腫瘍を含む他の過増殖性疾患には、関節リウマチ、炎症性腸疾患、変形性関節症、平滑筋腫、腺腫、脂肪腫、血管腫、線維腫、血管閉塞、再狭窄、アテローム性動脈硬化、前腫瘍性病変(例えば、腺腫様過形成及び前立腺上皮内腫瘍)、上皮内がん、口腔毛状白板症、又は乾癬が含まれるが、これらに限定されない。
【0221】
標的抗原、例えば、血管系において、例えば、HLA-Gを発現する任意の腫瘍、例えば、肺、骨、肝臓、前立腺、又は脳、また、例えば、乳房、卵巣、腸、精巣、結腸、膵臓、腎臓、膀胱、神経内分泌系、軟組織、骨塊、及びリンパ系に存在する固形腫瘍を含む、任意の組織又は臓器由来の固形腫瘍は、本方法を使用して治療され得る。治療され得る他の固形腫瘍には、例えば、膠芽腫、及び悪性多発性骨髄腫が含まれる。
【0222】
対象は、CIRに含まれる任意の亜鉛依存性因子又はCIRを含む細胞療法産物において発現される補因子が、完全な活性を可能にするためのこのイオンの適切な供給源を有することを確実にするために、亜鉛サプリメントが投与され得る。
【0223】
また、本開示の細胞を作製する方法も提供される。いくつかの実施形態では、かかる方法は、本開示の核酸又は発現ベクター(例えば、主題のCIRをコードするもの)で細胞をトランスフェクト又は形質導入することを含む。「トランスフェクション」という用語は、細胞による外来DNAの取り込みを指すために使用される。細胞膜内に外因性DNAが導入された場合、細胞は「トランスフェクション」されている。いくつかのトランスフェクション技術は、一般に、当該技術分野で既知である。例えば、Sambrook et al.(2001)Molecular Cloning,a laboratory manual,3rd edition,Cold Spring Harbor Laboratories,New York、Davis et al.(1995)Basic Methods in Molecular Biology,2nd edition,McGraw-Hill、及びChu et al.(1981)Gene 13:197を参照されたい。そのような技術は、1つ以上の外因DNA部分を好適な宿主細胞に導入するために使用され得る。この用語は、遺伝材料の安定した取り込み及び一過性の取り込みの両方を指す。
【0224】
いくつかの実施形態では、本開示の細胞は、CIRをコードするウイルスベクターで細胞を形質導入することによって産生される。ある特定の態様では、ポリペプチドはCIRを含み、細胞はT細胞であり、そのため、CIR T細胞を産生する方法が提供される。いくつかの実施形態では、かかる方法は、T細胞の集団(例えば、CIR T細胞療法が投与されるであろう個体から得られたT細胞)を活性化することと、T細胞の集団を刺激して増殖させることと、CIRを含むポリペプチドをコードするウイルスベクターでT細胞を形質導入することと、を含む。いくつかの実施形態では、免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞、マクロファージ)は、レトロウイルスベクター(例えば、ガンマレトロウイルスベクター若しくはレンチウイルスベクター)又はCIRをコードするAAVで形質導入される。ある特定の態様では、免疫細胞のT細胞は、ポリペプチドをコードするレンチウイルスベクターで形質導入される。ある特定の態様では、ポリペプチドはCIRを含み、細胞はCIR NK細胞であり、そのため、(例えば、AAV、レンチウイルス、又はレトロウイルスベクターなどのウイルスベクターを使用することによって)CIR NK細胞を産生する方法が提供される。
【0225】
13.一般
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」並びに「からなる(consisting)」を包含する。例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、排他的にXからなり得るか、又は追加のものが含まれ得る(例えば、X+Y)。
【0226】
数値xに関する「約」という用語は、任意選択的であり、例えば、x±10%を意味する。
【0227】
「実質的に」という単語は、「完全に」を除外するものではない。例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくてもよい。必要に応じて、「実質的に」という単語は、本発明の定義から省略される場合がある。
【0228】
2つの値に関して「間」という用語は、それら2つの値、例えば、10mg~20mgの「間」の範囲は、とりわけ10、15、及び20mgを包含する。
【0229】
特に明記されない限り、2つ以上の成分を混合するステップを含む方法は、混合の任意の特定の順序を必要としない。したがって、成分は、任意の順序で混合することができる。3つの成分が存在する場合、2つの成分を互いに組み合わせることができ、次いで、その組み合わせを、第3の成分などと組み合わせることができる。
【0230】
方法の様々なステップは、同じ又は異なる時間で、同じ又は異なる地理的位置(例えば、国)で、及び同じ又は異なる人々又は団体によって実行され得る。
【0231】
「薬学的に許容される」という用語は、動物又はヒトに投与された場合に望ましくない有害反応、アレルギー反応、又は他の有害反応を生じさせない分子実体及び組成物を指す。
【0232】
2つの配列間の類似性の程度は、配列同一性パーセントに基づくことができる。本明細書における「配列同一性」とは、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列が不変である程度を意味する。「配列アラインメント」とは、類似性の程度を評価する目的で、最大レベルの同一性を達成するように2つ以上の配列を整列させるプロセスを意味する。配列をアラインメントし、類似性/同一性を評価するための多数の方法は、例えば、クラスター法など、当該技術分野で既知であり、類似性が、MEGALIGNアルゴリズム、並びにBLASTN、BLASTP、及びFASTAに基づいている。これらのプログラムのうちのいずれかを使用する場合、最も高い配列類似性をもたらす設定が選択され得る。
【0233】
14.特定の核酸及びアミノ酸配列の例
以下のセクション及び表は、キメラシグナル伝達ポリペプチドをコードするポリペプチド及びヌクレオチド配列の例を含む。例えば、切断型ILT2及びILT4ポリペプチド、共刺激ポリペプチド細胞質シグナル伝達領域、安全スイッチなどの、これらの実施例で提供される個々のポリペプチドの配列を使用して、本実施形態のキメラシグナル伝達ポリペプチドをコードする他の発現ベクターを構築することができることが理解される。
表4は、マーカータンパク質ΔCD19とともにHLA-G1配列を含むγ-レトロウイルスの送達のための完全なベクター配列の例を含む。表5~20は、同じ例のγ-レトロウイルスベクターによって発現された導入遺伝子のみを含む。
【0234】
(表4)
プラスミドA:pNT101-SFG-HLAG1-T2A-ΔCD19
【0235】
(表5)
プラスミドB:pNT102-SFG-HLAG2-T2A-ΔCD19
【0236】
(表6)
プラスミドC:pNT103-SFG-HLAG3-T2A-ΔCD19
【0237】
(表7)
プラスミドD:pNT104-SFG-HLAG4-T2A-ΔCD19
【0238】
(表8)
プラスミドE:pNT105-SFG-HLAG5-T2A-ΔCD19
【0239】
(表9)
プラスミドF:pNT106-SFG-HLAG5C42S-T2A-ΔCD19
【0240】
(表10)
プラスミドG:pNT107-SFG-HLAG1C42S-T2A-ΔCD19
【0241】
(表11)
プラスミドH:pNT108-SFG-HLAG1C42SC147S-T2A-ΔCD19
【0242】
(表12)
プラスミドI:pNT109-SFG-HLAG1C147S-T2A-ΔCD19
【0243】
(表13A)
プラスミドK:pNT-110 SFG-ILT2-T2A-ΔCD19
【0244】
(表13B)
プラスミドK:pNT-110 SFG-ILT2-T2A-ΔCD19
【0245】
(表14)
プラスミドL:pNT-111 SFG-ILT2.ζ-T2A-ΔCD19
【0246】
(表15A)
プラスミドM:pNT-112 SFG-ILT2.BB.ζ-T2A-ΔCD19
【0247】
(表15B)
プラスミドM:pNT-112 SFG-ILT2.BB.ζ-T2A-ΔCD19
【0248】
(表16A)
プラスミドN:pNT-113 SFG-ILT2D1D2STM.BB.ζ-T2A-ΔCD19
【0249】
(表16B)
プラスミドN:pNT-113 SFG-ILT2D1D2STM.BB.ζ-T2A-ΔCD19
【0250】
(表17)
プラスミド0:pNT-114 SFG-ILT2D1D2.Q.8STM.BB.ζ-T2A-ΔCD19
【0251】
(表18)
プラスミドP:pNT-115 SFG-ILT2D1D2.Q.28STM.CD28.ζ-T2A-ΔCD19
【0252】
(表19)
プラスミドR:pNT-116 SFG-ILT2D1D2.Q.CH2CH3.8TM.BB.ζ-T2A-ΔCD19
【0253】
(表20A)
プラスミドS:pNT-117 SFG-ILT2D1D2.CD8STM.BB.ζ-T2A-ΔCD19
【0254】
(表20B)
プラスミドS:pNT-117 SFG-ILT2D1D2.CD8STM.BB.ζ-T2A-ΔCD19
【0255】
(表21A)
プラスミドT:pNT-118 SFG-ILT4-T2A-ΔCD19
【0256】
(表21B)
プラスミドT:pNT-118 SFG-ILT4-T2A-ΔCD19
【0257】
(表22)
プラスミドU:pNT-119 SFG-ILT4.ζ-T2A-ΔCD19
【0258】
(表23A)
プラスミドV:pNT-120 SFG-ILT4.BB.ζ-T2A-ΔCD19
【0259】
(表23B)
プラスミドV:pNT-120 SFG-ILT4.BB.ζ-T2A-ΔCD19
【0260】
(表24A)
プラスミドW:pNT-121 SFG-ILT4D1D2STM.BB.ζ-T2A-ΔCD19
【0261】
(表24B)
プラスミドW:pNT-121 SFG-ILT4D1D2STM.BB.ζ-T2A-ΔCD19
【0262】
(表25)
プラスミドX:pNT-122 SFG-ILT4D1D2.Q.8STM.BB.ζ-T2A-ΔCD19
【0263】
(表26)
プラスミドY:pNT-123 SFG-ILT4D1D2.Q.28STM.CD28.ζ-T2A-ΔCD19
【0264】
(表27)
プラスミドZ:pNT-124 SFG-ILT4D1D2.Q.CH2CH3.8TM.BB.ζ-T2A-ΔCD19
【0265】
(表28A)
プラスミドAA:pNT-124 SFG-ILT4D1D2.CD8STM.BB.ζ-T2A-ΔCD19
【0266】
(表28B)
プラスミドAA:pNT-124 SFG-ILT4D1D2.CD8STM.BB.ζ-T2A-ΔCD19
【0267】
(表29)
プラスミドU:pNT-119 SFG-ILT4Y394A.ζ-T2A-ΔCD19
【0268】
(表30)
プラスミドAC:pNT-126 SFG-ILT4Y394A.BB.ζ-T2A-ΔCD19
【0269】
(表31)
プラスミドAD:pNT-128 SFG-ILT4D1D2Y96A.STM.BB.ζ-T2A-ΔCD19
【0270】
(表32)
プラスミドAE:pNT-129 SFG-ILT4D1D2Y96A.Q.8STM.BB.ζ-T2A-ΔCD19
【0271】
(表33)
プラスミドAF:pNT-130 SFG-ILT4D1D2Y96A.Q.28STM.CD28.ζ-T2A-ΔCD19
【0272】
(表34)
プラスミドAG:pNT-131 SFG-ILT4D1D2Y96A.Q.CH2CH3.8TM.BB.ζ-T2A-ΔCD19
【0273】
(表35)
プラスミドAH:pNT-132 SFG-ILT4D1D2Y96A.CD8STM.BB.ζ-T2A-ΔCD19
【0274】
(表36)
pNT133-pSFG-ILT2(D1-D4).CD8ストークTM.BB.z.T2A-dCD19
【0275】
(表37)
pNT134-pSFG-ILT4(D1-D4).CD8ストークTM.BB.z.T2A-dCD19
【0276】
(表38)
pNT138 SFG-ILT4(D1-D2).CH2CH3(4-2NQ).CD8TM.BB.z.T2A-dCD19
【0277】
(表39)
pNT139 SFG- ILT4(D1-D2).CH3.CD8tm.BB.z.T2A-dCD19
【0278】
(表40)
pNT-159 SFG-ILT4(D1-D2).CH2CH3(4-2NQ)s.CD28tm.BB.z.T2A-dCD19
【0279】
(表41)
pNT-160 SFG-ILT4(D1-D2).CH3s.CD28tm.BB.z.T2A-dCD19
【0280】
(表42)
pNT-158 SFG- ILT4(D1-D2).CD28s.CD28tm.BB.z.T2A-dCD19
【0281】
本開示の例示的な非限定的な態様
上記の本主題の実施形態を含む態様は、単独で、又は1つ以上の他の態様若しくは実施形態との組み合わせで有益であり得る。上記の説明を限定することなく、本開示のある特定の非限定的な態様を以下に提供する(セットA及びセットBを参照)。本開示を読んだ際に当業者に明らかになるように、個々に番号付けされた態様の各々は、それに先行するか又はそれに続く個々に番号付けされた態様のうちのいずれかとともに使用又は組み合わされ得る。これは、態様の全てのそのような組み合わせの支持を提供することを意図しており、以下に明示的に提供される態様の組み合わせには限定されない。本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正が行われ得ることは、当業者には明白であろう。
セットA
1.遺伝子改変細胞が、抗体、VhHドメイン、又は合成的に誘導されたポリペプチドに由来しない結合ドメインを有するタンパク質又は炭水化物を特異的に標的にするキメラ受容体タンパク質を発現する、組成物。
2.キメラ受容体タンパク質が、抗体、VhHドメイン、又は合成的に誘導されたポリペプチドに由来しないHLA-Gを標的にする認識ドメイン又は結合ドメインを用いる、1に記載の組成物。
3.キメラ受容体タンパク質が、それらの生物学的作用機序の一部として、HLA-Gを含む標的タンパク質を天然に認識するヒト受容体タンパク質を用いる、1又は2に記載の組成物。
4.キメラ受容体タンパク質が、ヒト又はサル配列に由来するILT2を用いる、3に記載の組成物。
5.キメラ受容体タンパク質が、ヒト又はサル配列に由来するILT4を用いる、3に記載の組成物。
6.キメラ受容体タンパク質が、ヒト又はサル配列に由来するILT2の天然多型形態を用いる、4に記載の組成物。
7.キメラ受容体タンパク質が、ヒト又はサル配列に由来するILT4の天然多型形態を用いる、5に記載の組成物。
8.キメラ受容体タンパク質が、ILT2に由来するD1及びD2ドメインを用いる、4及び6に記載の組成物。
9.キメラ受容体タンパク質が、ILT4に由来するD1及びD2ドメインを用いる、5及び7に記載の組成物。
10.ILT2又はILT4のD1又はD2ドメインが、HLA-G以外のタンパク質の親和性を低減しながら、キメラ受容体の活性化に十分なHLA-Gに対する親和性を保持する目的で、代替アミノ酸をコードするように変異導入される、先行項目のいずれか一項に記載の組成物。
11.変異が、ILT4におけるアミノ酸96又は394に対応する位置にアミノ酸置換を生成する、10に記載の組成物。
12.遺伝子改変細胞が、安全スイッチを更に発現する、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
13.安全スイッチが、誘導性である、12に記載の組成物。
14.安全スイッチが、リミドゥシドによって、又はラパマイシン若しくはラパマイシンの類似体によって誘発される、12に記載の組成物。
15.遺伝子改変細胞が、第2のキメラ抗原受容体を更に発現する、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
16.遺伝子改変細胞が、1~11のいずれか1つに記載の組成物を有する融合要素として、NK細胞又はT細胞に対する細胞傷害性の活性化を駆動する細胞質シグナル伝達ドメインを更に発現する、1~11のいずれかに記載の組成物。
17.融合された細胞傷害性シグナル伝達要素が、ITAM配列を含む、16に記載の組成物。
18.融合されたシグナル伝達要素が、CD3ζ、DAP10、又はDAP12に由来する、16又は17に記載の組成物。
19.遺伝子改変細胞が、キメラ受容体の一部として共刺激ポリペプチドを更に発現する、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
20.遺伝子改変細胞が、キメラ受容体タンパク質から分離された単位として共刺激ポリペプチドを更に発現する、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
21.共刺激ポリペプチドが、4-1BB、OX40、ICOS、CD28、CD27、MyD88、IL-1Rα、HVEM、TRANCE、IL-1Rβ、CD70、IL-18Rα、CD40、IL-18Rβ、IL-33Rα、CD30、又はIL-33Rβに由来するシグナル伝達要素を含む、19及び20に記載の組成物。
22.遺伝子改変細胞が、(i)T細胞、(ii)NK細胞、(iii)iNKT細胞、又は(iv)マクロファージである、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物。
23.ヒト対象を治療する方法であって、先行請求項のいずれか一項に記載の組成物を患者に投与することを含む、方法。
24.ヒト対象を治療する方法であって、対象ががん患者である場合、任意の先行項目に記載の組成物を患者に投与することを含む、方法。
25.1~21のいずれか1つに記載のキメラ受容体タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、発現構築物。
26.レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、又はプラスミドベクターである、25に記載の発現構築物を含む、ベクター。
セットB
1.
(a)HLA-Gを標的とし、免疫グルリン様転写産物2(ILT2)又は免疫グルリン様転写産物4(ILT4)のD1~D2細胞外ドメインを含む、ターゲティング領域と、
(b)膜貫通アミノ酸配列を含む、膜貫通(TM)領域と、
(c)HLA-Gへの当該ターゲティング領域の結合により免疫エフェクター細胞の内部にシグナルを伝達してエフェクター細胞の機能を誘発することができるシグナル伝達領域を含む、細胞内ドメイン(ICD)と
を含む、キメラ受容体タンパク質。
2.ターゲティング領域が、配列番号57に示されるILT4アミノ酸配列のY96又は配列番号31に示されるILT2アミノ酸配列のY96に対応する位置にアミノ酸変異を含む、1に記載のキメラ受容体タンパク質。
3.D1~D2細胞外ドメインが、ILT2 D1~D2細胞外ドメインである、1又は2に記載のキメラ受容体タンパク質。
4.D1~D2細胞外ドメインが、ILT4 D1~D2細胞外ドメインである、1又は2に記載のキメラ受容体タンパク質。
5.ターゲティング領域が、ILT2又はILT4のD3~D4細胞外ドメインを含む、1~4のいずれか1つに記載のキメラ受容体タンパク質。
6.ターゲティング領域が、配列番号55に示されるILT4アミノ酸配列のY394又は配列番号31に示されるILT2アミノ酸配列のY395に対応する位置にアミノ酸変異を含む、5に記載のキメラ受容体タンパク質。
7.ターゲティング領域が、ILT2又はILT4 D3~D4細胞外ドメインを欠く、1~4のいずれか1つに記載のキメラ受容体タンパク質。
8.ストークドメインを含む、5に記載のキメラ受容体タンパク質。
9.ストークドメインが、ILT2、ILT4、CD28、CH2/CH3、CH3、又はCD8ストークドメインを含む、8に記載のキメラ受容体タンパク質。
10.TMドメインが、ILT2、ILT4、CD28、又はCD8 TMドメインである、1~9のいずれか1つに記載のキメラ受容体タンパク質。
11.当該シグナル伝達領域が、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含む、1~10のいずれか1つに記載のキメラ受容体タンパク質。
12.当該シグナル伝達領域が、CD3ζシグナル伝達ドメイン、DAP10シグナル伝達ドメイン、DAP12シグナル伝達ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含む、1~10のいずれか1つに記載のキメラ受容体タンパク質。
13.当該シグナル伝達領域が、CD3ζシグナル伝達ドメインを含む、1~10のいずれか1つに記載のキメラ受容体タンパク質。
14.ICDが、少なくとも1つの共刺激ドメインを含む共刺激領域を更に含む、1~13のいずれか1つに記載のキメラ受容体タンパク質。
15.当該少なくとも1つの共刺激ドメインが、CD28共刺激ドメインを含む、14に記載のキメラ受容体タンパク質。
16.当該少なくとも1つの共刺激ドメインが、4-1BB共刺激ドメインを含む、14又は15に記載のキメラ受容体タンパク質。
17.当該少なくとも1つの共刺激ドメインが、4-1BB、OX40、CD28、ICOS、RANK、DAP10、DAP12、CD27、MyD88、IL-1Rα、HVEM、TRANCE、IL-1Rβ、CD70、IL-18Rα、CD40、IL-18Rβ、IL-33Rα、CD30、若しくはIL-33Rβ共刺激ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含む、14に記載のキメラ受容体タンパク質。
18.
D1~D2細胞外ドメインが、ILT2 D1~D2細胞外ドメインであり、
細胞外ドメインが、ILT2 D3~D4細胞外ドメインを欠き、
キメラ受容体タンパク質が、CD8ストークドメインを含み、
TM領域が、CD TMであり、
シグナル伝達領域が、CD3ζシグナル伝達ドメインを含み、
キメラ受容体タンパク質が、4-1BB共刺激ドメインを含む、
1に記載のキメラ受容体タンパク質。
19.
D1~D2細胞外ドメインが、ILT4 D1~D2細胞外ドメインであり、
細胞外ドメインが、ILT4 D3~D4細胞外ドメインを欠き、
キメラ受容体タンパク質が、CD8ストークドメインを含み、
TM領域が、CD TMであり、
シグナル伝達領域が、CD3ζシグナル伝達ドメインを含み、
キメラ受容体タンパク質が、4-1BB共刺激ドメインを含む、
1に記載のキメラ受容体タンパク質。
20.
D1~D2細胞外ドメインが、ILT2 D1~D2細胞外ドメインであり、
細胞外ドメインが、ILT2 D3~D4細胞外ドメインを含み、
キメラ受容体タンパク質が、CD8ストークドメインを含み、
TM領域が、CD TMであり、
シグナル伝達領域が、CD3ζシグナル伝達ドメインを含み、
キメラ受容体タンパク質が、4-1BB共刺激ドメインを含む、
1に記載のキメラ受容体タンパク質。
21.
D1~D2細胞外ドメインが、ILT4 D1~D2細胞外ドメインであり、
細胞外ドメインが、ILT4 D3~D4細胞外ドメインを含み、
キメラ受容体タンパク質が、CD8ストークドメインを含み、
TM領域が、CD TMであり、
シグナル伝達領域が、CD3ζシグナル伝達ドメインを含み、
キメラ受容体タンパク質が、4-1BB共刺激ドメインを含む、
1に記載のキメラ受容体タンパク質。
22.1~21のいずれか1つに記載のキメラ受容体タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸。
23.当該ヌクレオチド配列が、構成的プロモーターに作動可能に連結されている、22に記載の核酸。
24.当該ヌクレオチド配列が、誘導性プロモーターに作動可能に連結されている、22に記載の核酸。
25.発現ベクターである、22~24のいずれか1つに記載の核酸。
26.発現ベクターが、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、又はプラスミドベクターである、25に記載の核酸。
27.1~22のいずれか1つに記載のキメラ受容体タンパク質を発現する、遺伝子改変細胞。
28.免疫細胞である、27に記載の遺伝子改変細胞。
29.免疫細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、iNKT細胞、又はマクロファージである、28に記載の遺伝子改変細胞。
30.免疫細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞である、28に記載の遺伝子改変細胞。
31.免疫細胞が、T細胞である、28に記載のシステム。
32.安全スイッチを発現する、27~31のいずれか1つに記載の遺伝子改変細胞。
33.安全スイッチが、誘導性である、32に記載の遺伝子改変細胞。
34.安全スイッチが、リミドゥシドによって、又はラパマイシン若しくはラパマイシンの類似体によって誘発される、33に記載の遺伝子改変細胞。
35.キメラ抗原受容体を更に発現する、27~34のいずれか1つに記載の遺伝子改変細胞。
36.キメラ受容体タンパク質に融合されていない共刺激ポリペプチドを更に発現する、27~35のいずれか1つに記載の遺伝子改変細胞。
37.当該キメラ受容体タンパク質に融合されていない共刺激ポリペプチドが、4-1BB、OX40、CD28、ICOS、RANK、DAP10、DAP12、CD27、MyD88、IL-1Rα、HVEM、TRANCE、IL-1Rβ、CD70、IL-18Rα、CD40、IL-18Rβ、IL-33Rα、CD30、若しくはIL-33Rβ共刺激ドメイン、又はそれらの任意の組み合わせを含む、36に記載の遺伝子改変細胞。
38.27~37のいずれか1つに記載の遺伝子改変細胞を、必要のある個体に投与することを含む、治療方法。
39.遺伝子改変細胞が、個体に対して自己である、38に記載の方法。
40.遺伝子改変細胞が、個体に対して同種である、38に記載の方法。
41.個体が、がんを有する、38~40のいずれか1つに記載の方法。
42.個体が、固形腫瘍を有する、41に記載の方法。
43.遺伝子改変細胞を産生する方法であって、
22~26のいずれか1つに記載の核酸を細胞に導入し、それによって、遺伝子改変細胞を産生することを含む、方法。
44.遺伝子改変細胞が、免疫細胞である、43に記載の方法。
45.免疫細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、iNKT細胞、又はマクロファージである、44に記載の方法。
46.免疫細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞である、44に記載の方法。
47.免疫細胞が、T細胞である、44に記載の方法。
【実施例】
【0282】
実験実施例
以下の実施例は、単に例示の目的のために提供され、特に指定されない限り、限定することを意図するものではない。したがって、本発明は、決して以下の実施例に限定されるものと解釈されるべきではなく、むしろ本明細書に提供される教示の結果として明らかになるあらゆる変形例を包含するものと解釈されるべきである。
【0283】
更なる説明なしに、当業者は、前述の説明及び以下の例示的な実施例を使用して、本発明を作成及び用い、特許請求される方法を実施することができると考えられる。したがって、以下の実施例は、本開示の残りの部分を決して限定するものとして解釈されるべきではない。
【0284】
分子生化学及び細胞生化学における一般的な方法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed.(Sambrook et al.,HaRBor Laboratory Press 2001)、Short Protocols in Molecular Biology,4th Ed.(Ausubel et al.eds.,John Wiley&Sons 1999)、Protein Methods(Bollag et al.,John Wiley&Sons 1996)、Nonviral Vectors for Gene Therapy(Wagner et al.eds.,Academic Press 1999)、Viral Vectors(Kaplift&Loewy eds.,Academic Press 1995)、Immunology Methods Manual(I.Lefkovits ed.,Academic Press,1997)、及びCell and Tissue Culture:Laboratory Procedures in Biotechnology(Doyle&Griffiths,John Wiley&Sons 1998)などの標準的なテキストブックにおいて見出され得、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。本開示において言及されるか又はそれに関連する方法のための試薬、クローニングベクター、細胞、及びキットは、BioRad、Agilent Technologies、Thermo Fisher Scientific、Sigma-Aldrich、New England Biolabs(NEB)、Takara Bio USA,Inc.などのような商業的販売会社、並びに、例えば、Addgene,Inc.、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)などのような貯蔵所から入手可能である。
【0285】
実施例1:初代ヒトT細胞における操作されたCIR構築物の発現
HLA-Gを標的とするキメラ受容体の発現の有用性を実証するために、免疫機能対抑制性シグナル伝達を活性化するシグナルを生成するように変更されたその天然受容体への結合を介して、組換えDNA構築物をSFG γ-レトロウイルスベクターにおいて操作した(
図6Aの概略図を参照)。一実施例では、ILT4をコードする全長遺伝子を、CD19の細胞外ドメインをコードする遺伝子(ΔCD19)の5’側にクローニングした(表21Bを参照)。全長ΔCD19は、このベクターで導入された導入遺伝子の発現をマークするのに有用であった。ILT4及びCD19をコードするシストロンを、トセア・アシグナウイルスに由来するT2A共翻訳切断部位によって分離して、個々のmRNA分子から別個のタンパク質を発現できるようにした。他の全ての例は、T2A配列によって分離された、同様にマークされたΔCD19であった。
【0286】
発現構築物の別の例は、ILT4のD1~D4ドメイン及び膜貫通ドメインをコードするが、ILT4の天然の細胞内ドメインをヒト4-1BBに由来する共刺激ドメイン及びヒトCD3ζ(BB.ζ)に由来するシグナル伝達ドメインに置き換えたキメラILT受容体(CIR)をコードした。この構築物は、この実施例ではCIR1を示すCIRタンパク質をコードした(表23Bを参照)。更なる例は、D3及びD4ドメインではなく、HLA-Gと直接相互作用するD1及びD2ドメインのみをコードする配列を含むCIR2をコードした。これらの配列を、ILT4膜貫通ドメイン並びに4-1BB及びCD3ζシグナル伝達ドメインの共刺激ドメインをコードする配列と融合させた(表24Bを参照)。更なる実施例は、ILT4ストーク及び膜貫通ドメインをコードする配列を、CD8αのストーク及び膜貫通ドメインをコードする配列に置き換えた。これらの構築物は、ILT4 CIR3(表37を参照)及びCIR4(表28Bを参照)をコードした。
【0287】
また更なる例では、ILT4のD1~D4ドメインをコードする配列を、ILT2又はILT2のD1及びD2ドメインのみをコードする配列に置き換えた。これらの構築物は、ILT2 CIR1、CIR2、CIR3、及びCIR4をコードした(それぞれ、表15B、16B、36、及び20Bを参照)。ILT2 CIR1及びCIR2では、ILT2のストーク及び膜貫通ドメインをコードする配列を用い、CIR3及びCIR4は、これらの配列を、CD8αストーク及び膜貫通ドメインをコードする配列に置き換えた。更なる実験では、2つの更なる構築物が陽性対照として生成された。それらは、CD8αストーク並びにCD8α及びBB.ζ細胞内ドメインの膜貫通ドメインと融合されたHLA-G特異的抗体15E7の結合要素をコードした(米国特許第11312774B2号を参照)。これは、ともに、及びHLA-Gキメラ抗原受容体(HLA-G CAR)をコードする。第2の陽性対照の構築物は、CD33に対して指向されたCARをコードし(Duong et al,Mol.Ther.Onc.12:124)、CD33は、急性骨髄性白血病細胞(AML)によって一般的に発現された標的タンパク質である。
【0288】
γ-レトロウイルスを、逆転写酵素並びにウイルスカプシド及びエンベロープタンパク質をコードするヘルパープラスミドとともに、HEK293細胞にトランスフェクションすることによって、これらのDNA構築物から産生した。これらのレトロウイルスベクターを使用して、2人の健康なドナーに由来する初代ヒトT細胞を形質導入した。形質導入の効率は、フローサイトメトリーによって検出されたΔCD19マーカータンパク質の発現によって特徴付けられた(
図6Bを参照)。形質導入の効率は、各組換えレトロウイルスについて80%を超えた(
図6C)。ILT4及びILT2の細胞外ドメインを含むCIR構築物の発現は、染色された形質導入細胞の集団の平均蛍光強度によって定量化された、ILT4(
図6D)及びILT2(
図6E)に特異的な抗体を用いたフローサイトメトリーによって決定された。ILT2 CIR4の発現レベルは、他のCIRタンパク質と比較して顕著に低減したが、CIRタンパク質の安定した発現は、容易に検出可能であった。
【0289】
この実施例に記載される実験は、ILT2及びILT4に由来するCIRタンパク質をコードする組換えレトロウイルスを生成することができること、並びにこれらのレトロウイルスによる初代ヒト免疫細胞の形質導入を行って、CIRタンパク質を安定的に発現する免疫細胞を生成できることを実証した。
【0290】
方法:DNA構築物をSnapGeneソフトウェアで設計し、DNA配列を、IDT LaboratoriesによってGBlock断片から合成した。合成DNA断片を、モロニーマウス白血病ウイルスに基づくレトロウイルスの産生のための組換えDNAのSFG DNAベクターへのアセンブリについての標準的なクローニング技法でクローニングした。
【0291】
実施例2:CIR-T細胞による抗腫瘍有効性
HLA-Gの異なるアイソフォームを安定して発現する腫瘍細胞株を生成するために、HLA-GアイソフォームであるHLA-G1、HLA-G2、及びHLA-G5をコードする組換えレトロウイルスを生成した。これらのレトロウイルスの各々はまた、マーカータンパク質ΔEGFRをコードし、これは、ウイルス形質導入の効率を検出するために、T2A共翻訳切断要素を用いてHLA-Gから分離される。これらのγ-レトロウイルスを使用して、安定した高レベル発現HLA-GアイソフォームのためのTHP1 AML細胞を形質導入した。EGFRに対する抗体で染色することによって特徴付けられる形質導入効率は、フローサイトメトリーによって検出され、各組換えレトロウイルスについて高かった。形質導入THP1細胞におけるHLA-Gの発現はまた、HLA-G1に特異的であり、HLA-G2には特異的ではないMEM-G/9抗体を用いたフローサイトメトリーによって決定され、発現は、形質導入細胞で高レベルであった。
【0292】
HLA-G1も発現するTHP1-GFP細胞におけるGFP-fflucマーカータンパク質の発現は、高レベルであった(
図7B)。GFPffルシフェラーゼの発現は、経時的な緑色蛍光の減少又はルシフェラーゼ酵素活性の喪失によって、CIR-T細胞との共培養実験におけるTHP1細胞の生存能の喪失を間接的に測定するのに有用であった。したがって、HLA-Gを発現するTHP1細胞は、CIRを発現するT細胞の細胞傷害性の決定のための適切な標的細胞であった。
【0293】
2人の健康なドナーからの初代ヒトT細胞を、実施例1に記載されるCIR及びCARをコードするレトロウイルスの同じコホートで形質導入した。CIR-T、CAR-T、又はモック形質導入(NT)T細胞を、THP1-GFP細胞を発現するHLA-G1と5:1のエフェクター対標的比率で共培養し、2日間にわたって定期的に撮像することができる顕微鏡を備えたIncucyteインキュベーターに配置した。THP1-HLAG1 GFP細胞からの緑色蛍光を、腫瘍の増殖又は腫瘍細胞の殺滅の間接的尺度として、共培養期間中12時間ごとに定量した(
図8)。モック形質導入T細胞との共培養又は天然抑制性シグナル伝達ドメインを含む完全長ILT2若しくはILT4を発現するように形質導入されたT細胞との共培養(陰性対照、Neg ctl)は、腫瘍標的においてGFPの安定した発現を示した。HLA-G CAR-T細胞又はCD33 CAR-T細胞との共培養は、腫瘍制御を示す最初の12時間の時点から始まるGFP蛍光の減少を示した。これらのCAR-T細胞は、この実験において陽性対照として機能した。各ドナーに由来するILT2 CIR-T細胞も、低減したGFP蛍光及び効果的な腫瘍制御を示した。CIR4構築物は、おそらく、この構築物の発現レベルの低下に起因して、その抗腫瘍有効性が低減したことに留意されたい(
図6Eを参照)。ILT4 CIR-T細胞はまた、THP-1 HLA-G1の増殖の効果的な制御を示した。
【0294】
同じTHP-1 HLA-G1に対する短い24時間経過にわたる抗腫瘍有効性は、形質導入されたヒトT細胞との共培養での腫瘍標的におけるGFP-ルシフェラーゼ発現に関連するルシフェラーゼ活性の測定によって決定された(
図9)。全長ILT2(Neg Ctl)を発現するT細胞(E:T - 5:1及び1:1)との共培養は、10万光単位を超える測定可能なルシフェラーゼ活性を有し、THP1-HLA-G1-GFPffluc標的を殺滅する他のILT2 CIR構築物の能力の参照として機能した。ILT2 CIR-T細胞共培養は、ルシフェラーゼ活性を著しく低減させ、ILT2 CIR-T細胞の殺滅能力を実証した。ILT2 CIR4細胞は、おそらくCIR発現の低減に起因して、他のCIR-T細胞及びCAR-T細胞陽性対照と比較して、低減した抗腫瘍細胞傷害性を示したことに再び留意されたい。ILT4 CIR-T細胞との共培養はまた、全長ILT4(Neg Ctl)と比較して、増強された抗THP1-HLAG1細胞傷害性を示した。この場合、CIR4-T細胞は、他のCIR-T細胞及びCD33 CAR-T細胞と比較して、優れた抗腫瘍細胞傷害性を有することに留意されたい。
【0295】
この実施例に記載の実験は、ヒト免疫細胞(この特定の例示的な実施形態でのT細胞)におけるCIRタンパク質の発現が、免疫細胞(例えば、T細胞)の特異性をHLA-G発現腫瘍標的に再指示することができることを実証する。更に、これらの実験は、HLA-GとILT2又はILT4配列との間の結合相互作用が、抗腫瘍有効性に十分ではなく、むしろ、T細胞機能を活性化するドメインによる天然ILT2又はILT4細胞内シグナル伝達ドメインの置き換えが、細胞傷害性の増強に必要であることを実証する。更に、ILT2又はILT4のD1及びD2ドメインは、キメラILT受容体(CIR)構築物におけるHLA-Gを標的とするのに十分であることが実証された。
【0296】
実施例3:CIR構築物におけるストーク及び膜貫通ドメインの改変
標的細胞との結合相互作用及び関与時の細胞内シグナルの伝達の両方を促進するように設計された、操作されたキメラタンパク質において、最適なリンカードメインの選択は、効率の向上を得るために重要であり得る。ストークドメインは、細胞膜から標的特異的結合要素を伸長し、標的タンパク質との関与を阻害しない状況で結合要素を提示する。膜貫通ドメインは、関与時に細胞内ドメインへのシグナルの伝達を促進し、形質膜における安定した発現を維持する。
【0297】
実施例1及び2は、ILT4 CIR4が、ヒトT細胞における形質導入時に適切な発現レベルを示し、他のCIR構築物と比較して、増強された抗腫瘍細胞傷害性を示した。ILT4のD1及びD2ドメインをBB.ζシグナル伝達要素と一緒に含むこの構築物設計は、CD8αストーク及び膜貫通ドメインを他のシグナル伝達受容体のストーク及び膜貫通ドメインに置き換える「組み合わせ」実験で使用された。作成された構築物は、
図10に示されている。一例として、CIR6は、CD8αストークを、ヒト免疫グロブリンタンパク質IgG4に由来するCH2及びCH3ドメインに置き換えた。2つ目の例は、CD8α膜貫通ドメインと融合されたヒトIgG4のCH3ドメインのみをコードすることによって、ストークの長さを低減させた。別の例は、CH3CH2ストークをヒトCD28に由来する膜貫通ドメインと融合させ、4つ目の例はまた、ストークの長さをCH3ドメインのみに短縮し、また、CD28 TMと融合させた。また更なる例は、CD28膜貫通ドメインと融合された短いCD28由来ストークをコードした。これらのCIR構築物を、CIR6、CIR7、CIR8、CIR9、及びCIR10で示した(それぞれ、表38~42を参照)。これらの代替的なILT4 CIR誘導体をコードするレトロウイルス構築物はまた、T2A共翻訳切断部位によって分離されたΔCD19マーカータンパク質をコードした。
【0298】
ILT4 CIR構築物をコードするγ-レトロウイルスを作製し、初代ヒトT細胞を形質導入した。低及び高多重度の感染には、2又は8ミリリットル(mL)のレトロウイルス上清を用いて形質導入を行った。全体的な形質導入効率を、フローサイトメトリーによって監視して、形質導入後7日目及び14日目のΔCD19マーカーの発現を検出した(
図11A)。形質導入効率は、ILT2 CIR4、ILT4 CIR4(親構築物)、及びHLA-G CARをコードする対照構築物について、60%よりも大きかった。形質導入効率は、CD28膜貫通ドメインを含むILT4 CIR誘導体と同等であった。しかしながら、CH2CH3又はCH3ストークと一致するCD8α膜貫通ドメインをコードするCIR構築物については、形質導入効率が比較的低かった。ILT4 CIR誘導体の発現レベルを、ILT4特異的抗体を用いたフローサイトメトリーによって調べた(
図11B、
図11C)。CD8αストーク及び膜貫通ドメインを含むCIR4の発現は、バックグラウンド以上でゲーティングされた細胞の%として(
図11B)、又はシグナルの平均蛍光強度(MFI)として調べた場合に堅牢であった。逆に、代替的なストーク又は膜貫通ドメインを有するILT4 CIR誘導体のMFIは、ILT4 CIRを発現しないHLA-G CAR又はILT2 CIR4などの対照構築物で形質導入されたT細胞で観察されたバックグラウンドシグナルよりも上昇しなかった。
【0299】
この実施例に記載される実験は、ILT4のD1及びD2ドメインの提示の状況が、CIRの安定した発現、及びひいてはCIR-T細胞の最適な機能性にとって重要であり得ることを示す。
【0300】
実施例4:HLA-GアイソフォームのCIR-T細胞ターゲティングに対する幅広い特異性
キメラ抗原受容体(CAR)は、典型的には抗体に由来する結合ドメイン、抗体に類似するVhHドメイン、又はそれほど一般的ではないが、標的親和性について選択され標的特異性についてスクリーニングされた合成ペプチドを介して、その巨大分子標的に関与する。これらの場合の各々において、結合ドメインは、ランダムに特異性及び親和性を達成し、バインダーは、潜在的なバインダーのプールの幅広い多様性から選択される。重要なことに、バインダーによって関与される標的上のエピトープは、最も頻繁に、選択的mRNAスプライシング又は翻訳後改変によって産生された標的タンパク質の異なる機能的アイソフォームの配列同一性の変化によって除去又は再構築され得るアミノ酸の直鎖状グループである。HLA-Gの場合、HLA-G2アイソフォームは、α2ドメイン全体を除去し、α2の曝露を必要とするエピトープを使用する任意の抗体は、HLA-G2との相互作用からマスクされるであろう。本発明者らは、逆に、タンパク質間の受容体-リガンド相互作用が、天然に選択されるであろう結合相互作用の幅広い領域を有する傾向があることに気付いた。ILT2及びILT4とのHLA-G相互作用の例では、本発明者らは、胎児胎盤又は腫瘍細胞による免疫回避の作用物質としてのHLA-Gの機能の性能が、ILT2及びILT4と相互作用する各機能的アイソフォームを必要とする可能性が高いことに気付いた。したがって、幅広い特異性に対するこの自然選択が、キメラILT受容体(CIR)が、典型的なHLA-G標的キメラ抗原受容体(CAR)よりもHLA-Gアイソフォームに対して幅広い特異性を有することを意味するかどうかを試験するように実験を設計した。
【0301】
Molm13-GFPffluc及びMolm14-GFPffluc細胞は、AML腫瘍に由来し、各々を安定的に形質導入して、ホタルルシフェラーゼとの融合物としてGFPを発現させた。フローサイトメトリーによって、各々をHLA-Gの発現について評価し、Molm14細胞がHLA-G陽性であることを見出した(
図12)。2人のドナーからの初代ヒトT細胞を、CD8α膜貫通ドメイン及びCD8αストーク(CIR4)、CH2CH3ストーク(CIR6)、又はCH3ストーク(CIR7)を有するHLA-Gバインダーとして、ILT4 D1及びD2ドメインをコードするILT4 CIR4、CIR6、及びCIR7構築物で形質導入した。これらの実験では、HLA-G CAR-T細胞も産生された。
【0302】
形質導入T細胞とHLAGを発現するMolm14標的との共培養を、5:1のE:T比率で行った。Incucyteインキュベーター/顕微鏡でGFP蛍光を監視することによって、CIR-T又はCAR-T細胞の腫瘍増殖を制御する能力について共培養を評価した(
図13A)。CIR又はCARを発現しないモック形質導入T細胞は、48時間にわたってMolm14の増殖を制御しなかったが、ILT4 CIR4-T共培養物は、モック形質導入細胞と比較して、はるかに低減したGFP蛍光を示した。実施例3に示されたこれらの構築物の乏しい発現を考慮すると、CIR6及びCIR7-T細胞は、予想されるように、Molm14細胞の低い制御を示した。驚くべきことに、HLA-G CAR-T細胞はまた、Molm14-GFPffluc細胞の増殖を制御する能力が低いことを示した。
【0303】
同様の共培養を行って、ルシフェラーゼ活性の低下によって、24時間にわたるMolm14-GFPffluc細胞に対するCIR-T及びHLA-G CAR-T細胞の細胞傷害性を決定した(
図13B)。モック形質導入T細胞と共培養されたMolm14-GFPffluc細胞によって産生されたルシフェラーゼ活性は、単独で培養された腫瘍細胞のルシフェラーゼ活性と同一であった。産生されたHLA-G CAR-T細胞との共培養は、モック形質導入T細胞との共培養と非常に類似したルシフェラーゼ活性を有した。これは、細胞傷害性についての独立したアッセイにおいて、HLA-G CAR-T細胞がMolm14 AML細胞を標的にすることができなかったことを示す。逆に、ILT4 CIR4-T細胞は、Molm14-GFPffluc標的に対して実質的な細胞傷害性を有した。これらの結果は、HLA-G CAR-T細胞が、代わりにILT4 D1D2 CIRによって特定及びターゲティングされるMolm14細胞上に存在するHLA-Gアイソフォームを認識しない可能性があるという仮説につながった。
【0304】
ILT4 CAR-T細胞がHLA-Gアイソフォームを標的にするための幅広い特異性を示すかどうかを決定するために、最適なストーク及び膜貫通ドメインを発現するILT4 CIR-T細胞(CIR4)又は発現を低減する最適以下のドメインを発現するILT4 CIR-T細胞(CIR6、CIR7)、又はHLA-G CAR-T細胞を、HLA-G1のみ(
図14A)又はHLA-G2のみ(
図14B)を発現するように形質導入されたTHP1-GFPluc細胞と共培養した。バインダーと標的タンパク質との関与及びシグナルの伝達の活性化に際して、炎症誘発性サイトカインの産生が誘導される。インターフェロンγ(IFN-γ)の培地への分泌を、共培養におけるT細胞の活性化状態の代わりとして使用した。実施例2に示された結果から予想されるように、HLA-G1発現標的細胞とILT4 CIR4-T細胞及びHLA-G CAR-T細胞との共培養は、両方とも、IFN-γ産生の増強を示した(
図14A)。興味深いことに、IFN-γの産生は、THP1-HLA-G2-GFPffluc標的細胞と共培養されたILT4 CIR4-T細胞でのみ刺激され、IFN-γの分泌は、HLA-G CAR-T細胞とHLA-G2のみを発現する標的細胞との共培養では支持されなかった(
図14B)。
【0305】
この実施例で提示された結果は、古典的なキメラ抗原受容体(CAR)における抗体由来バインダーの特異性と比較して、ILT D1及びD2含有結合物質(ILT4 D1~D2がこの特定の例示的な実施形態で使用された)を使用することによって、HLA-Gアイソフォームのターゲティングの特異性を高めることができる(例えば、標的にされ得るアイソフォームの範囲を広げることができる)ことを示した。
【0306】
上記の発明は、明確な理解のために例示及び例によって多少詳しく説明されてきたが、当業者であれば、本発明の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の趣旨又は範囲から逸脱することなく、それらの発明に対してある特定の変更及び修正が行われ得ることは、容易に明らかである。
【0307】
したがって、上記は単に本発明の原理を例示するにすぎない。当業者は、本明細書に明示的に記載又は示されていないが、本発明の原理を具現化し、その趣旨及び範囲内に含まれる様々な配置を考案することができることが理解されるであろう。更に、本明細書に列挙された全ての例及び条件的文言は、主として本発明の原理及び発明者らにより当該技術の促進のために寄与された概念を理解する上で読者を助けることを意図しており、そのような具体的に列挙された例及び条件への限定ではないと解釈されるべきである。更に、本発明の原理、態様、及び実施形態、並びにその特定の例を記載する本明細書における全ての記述は、その構造的及び機能的等価物の両方を包含することを意図する。追加的に、そのような等価物は、現在既知の等価物及び将来開発される等価物の両方、すなわち、構造に関係なく、同じ機能を実施する開発される任意の要素を含むことが意図される。更に、本明細書に開示のいかなるものも、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に列挙されているかどうかにかかわらず、公ともに供することを意図しない。
【0308】
したがって、本発明の範囲は、本明細書に示され、説明された例示的な実施形態に限定されることを意図されていない。むしろ、本発明の範囲及び趣旨は、添付の特許請求の範囲によって具現化される。特許請求の範囲において、米国特許法第112条(f)又は米国特許法第112条(6)は、特許請求の範囲におけるそのような限定の冒頭に正確な語句「のための手段」又は正確な語句「のためのステップ」が列挙されるときにのみ、特許請求の範囲における限定のために引用されるものとして明示的に定義され、そのような正確な語句が特許請求の範囲における限定で使用されない場合、米国特許法第112条(f)又は米国特許法第112条(6)は引用されない。
【配列表】
【国際調査報告】