(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】側方ゲートを有する2次元電子ガス電界効果トランジスタ
(51)【国際特許分類】
H10D 30/47 20250101AFI20250220BHJP
【FI】
H01L29/80 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545960
(86)(22)【出願日】2023-02-01
(85)【翻訳文提出日】2024-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2023052426
(87)【国際公開番号】W WO2023148210
(87)【国際公開日】2023-08-10
(32)【優先日】2022-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515031137
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ドュ モンペリエ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE MONTPELLIER
(71)【出願人】
【識別番号】509025832
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194973
【氏名又は名称】尾崎 祐朗
(72)【発明者】
【氏名】ショーベ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】レイモン,アンドレ
【テーマコード(参考)】
5F102
【Fターム(参考)】
5F102FA02
5F102GB01
5F102GC03
5F102GD10
5F102GJ05
5F102GK06
5F102GL05
5F102GM06
5F102GQ01
5F102GR00
5F102GS00
5F102HC21
(57)【要約】
本発明は、ドレイン(3)と、ソース(4)と、少なくとも2つの半導体層(21、22)の積層によって形成されたヘテロ構造に含まれる少なくとも1つのチャネル(6)とを備えるTEGFETと呼ばれる2次元電子ガス電界効果トランジスタに関する。TEGFETは、少なくとも1つのチャネルの両側に配置された少なくとも2つの側方ゲート(5)を備え、各々の側方ゲート(5)は、少なくとも1つのチャネルの1つの側面に対向して配置され、少なくとも1つのチャネルの前記側面は、少なくとも2つの半導体層の積層の軸(8)に沿って延びかつ少なくとも1つのチャネルの長さに垂直に延びる少なくとも1つのチャネルの厚さと呼ばれる前記少なくとも1つのチャネルのより小さい寸法を有する。TEGFETは、少なくとも1つのチャネルがソースとドレインとの間に延在するチャネル平面と呼ばれる平面に垂直な軸に関して少なくとも1つのチャネルの下方または上方に位置するゲートを含まず、前記チャネル平面は、少なくとも1つのチャネルの厚さに対して垂直である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TEGFETと称される2次元電子ガス電界効果トランジスタ(1)であって、前記TEGFETは、ドレイン(3)と、ソース(4)と、半導体の少なくとも2つの層(21、22)の積層によって形成されたヘテロ構造に含まれる少なくとも1つのチャネル(6)とを備え、前記少なくとも1つのチャネルは、前記少なくとも1つのチャネルの長さ(L)と呼ばれる最大寸法に沿って、前記ソースと前記ドレインとを接続し、前記TEGFETは、
・前記少なくとも1つのチャネルの両側に配置された少なくとも2つの側方ゲート(5)を備え、各々の側方ゲート(5)は、前記少なくとも1つのチャネルの1つの側面(7、71、72)に対向して配置され、前記少なくとも1つのチャネルの前記側面は、前記少なくとも2つの半導体層の積層の軸(8)に沿って延びかつ前記少なくとも1つのチャネルの前記長さに垂直に延びる前記少なくとも1つのチャネルの厚さ(e)と呼ばれる前記少なくとも1つのチャネルのより小さい寸法を備え、
・前記少なくとも1つのチャネルが前記ソースと前記ドレインとの間に延在するチャネル平面と呼ばれる平面に垂直な軸に関して前記少なくとも1つのチャネルの下方または上方に位置するゲートを備えず、前記チャネル平面は、前記少なくとも1つのチャネルの前記厚さに対して垂直であり、
前記TEGFETは、
・前記少なくとも1つのチャネルの幅、および/または
・前記少なくとも1つのチャネルのうちの導電率が変調および/または制御される前記少なくとも2つの側方ゲートに対向して位置する部分の長さ、および/または
・前記少なくとも1つのチャネルの前記長さに平行な方向の前記少なくとも2つの側方ゲートの寸法である前記少なくとも2つの側方ゲートの長さ
が、500ナノメートル以上であることを特徴とする、TEGFET。
【請求項2】
前記少なくとも2つの側方ゲートのいずれの側方ゲート(5)も、前記少なくとも1つのチャネル(6)と接触しておらず、共通の部分または界面も有していない、請求項1に記載のTEGFET。
【請求項3】
前記少なくとも2つの側方ゲート(5)は、前記チャネル平面内に含まれかつソースとドレインとを結ぶ軸に対して垂直である横軸として知られる軸(10)に沿った前記少なくとも1つのチャネル(6)内の電位を変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させるように配置される、請求項1または2に記載のTEGFET。
【請求項4】
前記少なくとも2つの側方ゲートの各々の側方ゲート(5)と前記少なくとも1つのチャネル(6)との間に配置された誘電体(11)を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のTEGFET。
【請求項5】
前記誘電体(11)は、凹部(11)の形態で配置される、請求項4に記載のTEGFET。
【請求項6】
前記凹部(11)は、気体を含む、請求項5に記載のTEGFET。
【請求項7】
前記少なくとも2つの側方ゲート(5)は、半導体材料で構成される、請求項1~6のいずれか1項に記載のTEGFET。
【請求項8】
前記少なくとも2つの側方ゲート(5)を構成する前記半導体材料は、前記半導体材料中に拡散した金属原子を含む、請求項7に記載のTEGFET。
【請求項9】
前記側方ゲート(5)の1つが、前記ソース(4)に電気的に接続される、請求項1~8のいずれか1項に記載のTEGFET。
【請求項10】
2次元電子ガス電界効果トランジスタ(1)、いわゆるTEGFETの少なくとも1つのチャネル(6)の導電率を変調するための方法であって、
・前記TEGFETのソース(4)とドレイン(3)との間に電位差を印加するステップと、
・前記TEGFETの前記少なくとも1つのチャネルの側方両側に配置された少なくとも2つの側方ゲートのうちの前記TEGFETの前記側方ゲート(5)の少なくとも1つと、前記TEGFETの前記ソースとの間に、同じ電位差を印加し、かつ/または
前記側方ゲートの1つまたは各々と、前記TEGFETの前記ソースとに、同じ電位を印加し、かつ/または
前記TEGFETの前記側方ゲートの少なくとも1つと、前記TEGFETの前記ソースとの間に、電位差を印加するステップと、
・前記少なくとも1つのチャネルの幅における2次元電子ガスの電子密度を変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させ、さらには/あるいは電流不均一性を変調するステップと
を含み、
前記少なくとも1つのチャネルは、前記少なくとも1つのチャネルの長さ(L)と呼ばれる前記少なくとも1つのチャネルの最大寸法に沿って、前記TEGFETの前記ソースと前記ドレインとを接続し、前記TEGFETは、前記少なくとも1つのチャネルが前記ソースと前記ドレインとの間に延在するチャネル平面と呼ばれる平面に垂直な軸に関して前記少なくとも1つのチャネルの下方または上方に位置するゲートを備えず、前記チャネル平面は、前記少なくとも1つのチャネルを含むヘテロ構造を形成する少なくとも2つの半導体層(21、22)の積層の軸(8)に沿って延びかつ前記少なくとも1つのチャネルの前記長さに垂直に延びる前記少なくとも1つのチャネルの厚さ(e)と呼ばれる前記少なくとも1つのチャネルの最小寸法に垂直であり、前記少なくとも2つの側方ゲートの各々は、前記少なくとも1つのチャネルの側面(7、71、72)に対向して配置され、前記少なくとも1つのチャネルの前記側面は、前記少なくとも1つのチャネルの前記厚さ(e)を備え、前記チャネルの幅、および/または前記少なくとも1つのチャネルのうちの導電率が変調および/または制御される前記少なくとも2つの側方ゲートに対向して位置するセグメントの長さ、および/または前記少なくとも2つの側方ゲートの長さが、500nm以上である、方法。
【請求項11】
前記側方ゲート(5)の少なくとも1つと前記ソース(4)との間に同じ電位差を印加すること、および/または前記側方ゲートの1つまたは各々と前記ソースとに同じ電位を印加すること、および/または前記側方ゲートの少なくとも1つまたは各々と前記ソースとの間に電位差を印加することによって、前記チャネル平面内に位置しかつソースとドレインとを結ぶ軸に対して垂直であるいわゆる横軸(10)に沿った少なくとも1つのチャネル(6)内の電位および/または導電率を変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させるステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの側方ゲート(5)と前記ソース(4)との間に同じ電位差を印加すること、および/または前記側方ゲートの1つまたは各々と前記ソースとに同じ電位を印加すること、および/または前記側方ゲートの少なくとも1つまたは各々と前記ソースとの間に電位差を印加することによって、前記少なくとも1つのチャネルの前記長さ(L)に垂直かつ前記少なくとも1つのチャネルの前記厚さ(e)に垂直な軸に沿って延びる前記少なくとも1つのチャネルの幅(l)に沿った前記少なくとも1つのチャネル(6)内の電位および/または前記2次元電子ガスの導電率を不均一に変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させるステップを含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
TEGFETと称される2次元電子ガス電界効果トランジスタ(1)を製造するための方法であって、
・電気接点を形成するように意図された第1の金属層(9、92)と前記TEGFETのドレイン(3)との間、および
・電気接点を形成するように意図された第2の金属層(9、93)と前記TEGFETのソース(4)との間、および
・電気接点を形成するように意図された第3の金属層(9、91)と前記TEGFETの少なくとも2つの側方ゲート(5)との間
の別個のオーミック接触を単一の工程にて同時に形成するための単一のアニーリング工程を含み、前記少なくとも2つの側方ゲート(5)は、前記TEGFETの少なくとも1つのチャネルの側方両側に配置され、各々の側方ゲート(5)は、前記少なくとも1つのチャネルの1つの側面(7、71、72)に対向して配置され、前記少なくとも1つのチャネルの前記側面は、前記少なくとも2つの半導体層の積層の軸(8)に沿って延びかつ前記少なくとも1つのチャネルの長さに垂直に延びる前記少なくとも1つのチャネルの厚さ(e)と呼ばれる前記少なくとも1つのチャネルのより小さい寸法を備え、アニーリング時間および温度が、金属原子が前記金属層(9、91、92、93)の各々から前記半導体層(21、22)へと拡散するように選択される、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TEGFETと呼ばれる2次元電子ガス電界効果トランジスタの技術分野に属する。電界効果トランジスタの動作原理は、トランジスタのゲートとソースとの間に印加される電圧を変更することによって、ソースとドレインとの間を流れる電流を変調することである。TEGFETの場合、ソース-ドレイン電流の変調が、2次元電子ガスの電子密度を変調することによって達成される。2次元電子ガスは、ヘテロ構造のチャネルに閉じ込められる。
【0002】
TEGFETは、高い電子輸送速度を特徴とし、したがって高周波デバイスでの使用に理想的である。TEGFETは、例えばGaNベースのデバイスまたはコンポーネントにおける高出力用途にも使用される。
【0003】
本発明は、とくに限定されないが、高周波トランジスタに関する。とくには、本発明は、既存のあらゆるタイプのTEGFETに適用可能であり、とりわけ、限定はされないが、III-V族およびIII-V-N型のTEGFETに適用可能である。
【背景技術】
【0004】
上述のTEGFETの適用分野に鑑み、それらの信頼性が決定的な基準である。
【0005】
先行技術のTEGFETは、2次元電子ガスをチャネルの全幅にわたって広げることにより、チャネル内の電荷キャリアの密度および/または幾何学的分布を変更することによって動作する。
【0006】
これは、ナノサイズのトランジスタにとくに当てはまる。このタイプのトランジスタは、例えばナノワイヤまたはナノ構造などのチャネルに関して、導電率が変調および/または制御されるゲートに面するチャネルの長さが、典型的には数百ナノメートル程度であり、一般的には300nm未満であることを特徴とする。この場合、チャネルの長さは、一般的には室温において例えばヒ化ガリウム(GaAs)では40ナノメートル程度であり、チッ化ガリウム(GaN)では百ナノメートル程度であるチャネル内の電子の平均自由行程と比べて短いか、等しいか、あるいは同程度の大きさである。また、このタイプのトランジスタにおけるチャネル内の電子の輸送は、バリスティックであり、量子物理学によって支配される。
【0007】
したがって、このタイプの量子サイズのトランジスタは、チャネルのナノメートルサイズに起因して、電力定格が低くなる。
【0008】
先行技術における大部分のTEGFETは、2次元電子ガスによって形成される平面に対してチャネルの垂直上方に位置する上部ゲートを有し、2次元電子ガスに垂直な電界によって2次元ガスの電子密度を変調することにより、ソース-ドレイン電流を制御することを可能にする。2次元電子ガスに垂直な電界を印加すると、電界効果トランジスタのタイプおよび/またはアーキテクチャに応じてキャリアが減少または増加することにより、チャネルの全幅にわたって2次元電子ガスが欠乏し、したがってチャネルの導電性が変化する。
【0009】
先行技術のTEGFETは、非限定的な例として、ゲート漏れ電流、界面欠陥、およびゲート脆性を含むいくつかの欠点を有する。
【0010】
ゲート漏れ電流は、デバイスの状態の主要な指標である。それらは、それらの将来の劣化を明らかにする。信頼性の改善は、電子ノイズ、すなわち「生成-再結合」および1/周波数(f)ノイズの発生源でもある漏れ電流を抑えることを意味する。
【0011】
界面欠陥は、半導体-ゲート界面における欠陥、および/または漏れ電流を低減するために誘電体が配置された場合の誘電体-ゲート界面における欠陥を指す。これらの欠陥は、相互コンダクタンス周波数分散、DCドレイン特性の崩壊、ゲートおよびドレイン過渡現象、ならびにマイクロ波電力制限などのトラッピング効果に寄与する。
【0012】
ゲート脆性は、一方では、ゲートとガスとの間の酸化物または結晶の脆性に起因し、他方では、ゲートが拡散されることなく半導体の表面に堆積させられるという事実に起因する。それが単に堆積させられるという事実は、それを静電衝撃に対してきわめて敏感にする。
【0013】
本発明は、先行技術のデバイスの欠点を少なくとも部分的に克服することを目的とする。
【0014】
本発明のさらなる目的は、
-先行技術のデバイスの欠点を克服し、かつ/または
-電流-電圧特性に信頼性および再現性があり、かつ/または
-ドレイン-ソース電流IDSがほぼ一定であり、かつ/またはドレイン-ソース電圧VDSに依存せず、もしくはわずかに依存するにすぎない飽和曲線を有し、かつ/または
-所与の電圧VDSに関して、ゲートバイアス電圧VGSが変化するときに電流IDSが大きく、または実質的に変化し、したがってTEGFETを電圧VGSを変化させることによって動作させることができ、かつ/または
-ゲート漏れ電流がわずか、または皆無であり、かつ/または
-300~1.5ケルビンの温度範囲にわたって特性に信頼性および再現性があり、かつ/または
-局所的環境ならびに電磁放射線または電離放射線などの干渉に影響されず、あるいは影響をあまり受けず、かつ/または
-大電力の用途に使用することができるTEGFETを提供することである。
【発明の概要】
【0015】
この目的のために、2次元電子ガス電界効果トランジスタ(TEGFET)が提案される。前記TEGFETは、ドレインと、ソースと、少なくとも2つの半導体層、好ましくは少なくとも2つの別個の層または異なる組成の層の積層によって形成されたヘテロ構造に含まれる少なくとも1つのチャネルとを含む。少なくとも1つのチャネルは、少なくとも1つのチャネルの長さと呼ばれるその最長寸法に沿ってソースとドレインとを接続する。
【0016】
前記TEGFETは、少なくとも1つのチャネルの両側に配置された少なくとも2つの側方ゲートを備え、各々の側方ゲートが、少なくとも1つのチャネルの1つの側面に対向して配置され、少なくとも1つのチャネルの前記側面は、少なくとも1つのチャネルの厚さと呼ばれる前記少なくとも1つのチャネルのより小さい寸法を備え、あるいはそれに沿って延在し、厚さは、少なくとも2つの半導体層の積層の軸に沿って延在し、かつ少なくとも1つのチャネルの長さに対して垂直に延在する。
【0017】
好ましくは、TEGFETは、少なくとも1つのチャネルがソースとドレインとの間に延在するチャネル平面と呼ばれる平面に垂直な軸に関して少なくとも1つのチャネルの下方または上方に位置するゲートを含まず、前記チャネル平面は、少なくとも1つのチャネルの厚さに対して垂直であり、かつ/または少なくとも2つの半導体層の積層軸に対して垂直であり、かつ/または少なくとも1つのチャネルの長さと平行である。
【0018】
好ましくは、「少なくとも1つのチャネルの側面」は、面または表面または界面を意味する。好ましくは、少なくとも1つのチャネルの側面は、少なくとも1つのチャネルの厚さおよび長さに延在し、あるいは少なくとも1つのチャネルの厚さおよび長さを含む。
【0019】
好ましくは、側方ゲートのうちの少なくとも1つは、側方ゲートのうちの少なくとも1つの他の側方ゲートが面する側面とは反対側の少なくとも1つのチャネルの側面に面する。
【0020】
好ましくは、ソースおよびドレインは、同じTEGFET層に含まれ、あるいは属する。好ましくは、ドレインおよびソースを含む層は、少なくとも1つのチャネルも含む。
【0021】
好ましくは、少なくとも1つのチャネルの導電率および/または2次元ガスの電子密度は、好ましくは少なくとも2つの側方ゲートによってのみ変調および/または制御される。
【0022】
好ましくは、少なくとも2つの側方ゲートは、少なくとも1つのチャネルの導電率および/または2次元ガスの電子密度を変調および/または制御するように配置される。
【0023】
好ましくは、TEGFETは、チャネルの下方または上方に位置するゲートを備えずに、少なくとも1つのチャネルの導電率および/または2次元ガスの電子密度を変調および/または制御する。
【0024】
好ましくは、2次元電子ガスは、少なくとも1つのチャネル内に収容され、閉じ込められる。好ましくは、チャネル平面は、2次元ガスの広がりの平面と平行である。
【0025】
好ましくは、2次元電子ガスは、ソースと少なくとも2つの半導体層の積層との間の好ましくはチャネル平面に垂直な積層軸に平行な平面内に位置する界面と、ドレインと少なくとも2つの半導体層の積層との間の好ましくはチャネル平面に垂直な積層軸に平行な平面内に位置する界面との間に広がる。好ましくは、2次元電子ガスは、ソースまたはドレイン内に延在しない。
【0026】
好ましくは、チャネルは、ソースおよびドレインまで延在する。
【0027】
好ましくは、少なくとも1つのチャネルの長さは、少なくとも1つのチャネルの最大寸法、および/または少なくとも1つのチャネルの2つの端部、好ましくは反対向きの端部を隔てる最大距離に対応する。
【0028】
「チャネル平面」は、少なくとも1つのチャネルの厚さに垂直な平面を意味する。
【0029】
好ましくは、少なくとも1つのチャネルの厚さは、少なくとも1つのチャネルの長さおよび幅の両方よりも小さい。少なくとも1つのチャネルの厚さを、少なくとも1つのチャネルの最小寸法として定義することができ、かつ/または少なくとも1つのチャネルの2つの面、好ましくは反対向きの面を隔てる最小距離として定義することができる。
【0030】
TEGFETは、偶数個の側方ゲートを備えることができる。TEGFETは、3つ以上の側方ゲートを備えてもよい。TEGFETは、少なくとも1つのチャネルの両側に配置されたソースをドレインに接続する軸に沿って延びる一連の隣接する側方ゲートを備えることができる。一連の側方ゲート内の2つの隣接する側方ゲートは、トレンチまたは凹部によって隔てられてよい。一連の側方ゲートの側方ゲートを、ソースをドレインに接続する軸に垂直かつ積層軸に垂直な軸に沿って2つずつ整列させることができる。
【0031】
好ましくは、少なくとも1つのチャネルは、2つの反対向きの側面、より好ましくは2つの平行な側面を備える。
【0032】
好ましくは、少なくとも1つのチャネルは、少なくとも1つのチャネルの2つの側面を接続する軸に沿って延びる幅を有する。
【0033】
好ましくは、少なくとも1つのチャネルの幅は、チャネル平面に含まれる軸に沿い、かつ/またはドレインをソースに接続する軸に垂直な軸に沿い、かつ/または少なくとも1つのチャネルの長さに垂直な軸に沿い、かつ/または少なくとも1つのチャネルの厚さに垂直な軸に沿って延びる。
【0034】
好ましくは、少なくとも1つのチャネルの厚さは、少なくとも1つのチャネルの長さよりも短い。
【0035】
好ましくは、TEGFETは、2つの別個の側方ゲートを備える。さらにより好ましくは、2つの側方ゲートの各々は、とくには2つの側方ゲートの他方から独立している。さらにより好ましくは、2つの側方ゲートは、共通部分を有さない。
【0036】
好ましくは、2つの側方ゲートは、対称である。好ましくは、2つの側方ゲートは、少なくとも1つのチャネルに対して対称である。
【0037】
好ましくは、2つの側方ゲートは、半導体材料から作られ、半導体材料を含み、あるいは半導体材料からなる。好ましくは、半導体材料は、金属原子、好ましくは拡散金属原子を含む。好ましくは、半導体材料、あるいは半導体材料のうちの拡散金属原子を含む一部分または一部は、オーミック接触を構成する。
【0038】
好ましくは、2つの側方ゲートおよびチャネルは、物理的および/または空間的に別個の要素または構成要素または構造または層または材料である。
【0039】
好ましくは、2つの側方ゲートは、ソースとドレインとを結ぶ軸に関して少なくとも1つのチャネルの両側に配置される。
【0040】
好ましくは、2つの側方ゲートは、少なくとも1つのチャネルが延在する平面内に主に延在する。
【0041】
TEGFETは、単一のチャネルを備えてよい。
【0042】
好ましくは、TEGFETは、2つのチャネル、さらにより好ましくは3つのチャネル、より好ましくは4つのチャネル、さらにより好ましくは5つのチャネルを備えてよい。好ましくは、TEGFETチャネルのチャネル平面は、互いに平行である。好ましくは、TEGFETチャネルは、少なくとも2つの半導体層の積層軸に沿って積層を形成する。
【0043】
好ましくは、2つの側方ゲートのうちの一方の側方ゲートの少なくとも1つのチャネルの側の面は、2つの側方ゲートのうちの他方の側方ゲートの少なくとも1つのチャネルの側の面と平行である。
【0044】
好ましくは、少なくとも1つのチャネルの側に位置する各々の側方ゲートの面の幅は、少なくとも1つのチャネルの厚さに対応するか、またはそれに等しく、好ましくはそれより大きい。
【0045】
各々の側方ゲートの少なくとも1つのチャネルの側の面の長さを、前記面の最大寸法、および/または前記面の2つの端部、好ましくは反対向きの端部の間の最大距離と定義することができる。
【0046】
好ましくは、各々の側方ゲートの少なくとも1つのチャネルの側の面の幅は、前記面の長さよりも短い。各々の側方ゲートの少なくとも1つのチャネルの側の面の幅を、前記面の最小寸法、および/または前記面の2つの端部、好ましくは反対向きの端部の間の最小距離と定義することができる。
【0047】
好ましくは、少なくとも2つの側方ゲートのいずれの側方ゲートも、ドレインおよびソースと接触しておらず、ドレインおよびソースと共通の部分または界面を有していない。
【0048】
少なくとも2つの側方ゲートのより大きな寸法は、ゲートとドレインとを結ぶ軸に対して主に垂直または平行に延びることができる。
【0049】
好ましくは、少なくとも1つのチャネルの導電率は、少なくとも1つのチャネルの一部分または一部にわたって変調および/または制御される。好ましくは、少なくとも1つのチャネルの導電率は、少なくとも1つのチャネルのセグメントにわたって変調および/または制御される。さらにより好ましくは、導電率が変調および/または制御される少なくとも1つのチャネルのセグメントは、少なくとも1つのチャネルの幅の一部のみ、および/または長さ全体、および/または厚さ全体にわたって延在する少なくとも1つのチャネルの一部分または一部に対応する。
【0050】
好ましくは、少なくとも1つのチャネルの導電率が変調および/または制御される少なくとも1つのチャネルのセグメントは、少なくとも1つのチャネルの長さの一部または一部分にわたって延在する少なくとも1つのチャネルの一部分または一部に対応する。「少なくとも1つのチャネルの長さの一部」を、ソースとドレインとを結ぶ軸または少なくとも1つのチャネルの長さの軸に沿った距離であって、少なくとも1つのチャネルの長さ以下の距離を意味すると解釈することができる。より好ましくは、チャネルの導電率が変調および/または制御される少なくとも1つのチャネルのセグメントのソースとドレインとを結ぶ軸に沿った距離または寸法は、少なくとも1つのチャネルの側面に位置する少なくとも2つの側方ゲートのうちの1つである側方ゲートの面の長さ、または少なくとも1つのチャネルの側面に位置する各々の側方ゲートの面の長さに等しい。
【0051】
導電率が変調および/または制御される少なくとも1つのチャネルの一部分または一部を、ドレインとソースとの間のキャリアの制御された阻止および/または好ましくは制御された循環を可能にするTEGFETの一部分または一部と定義することができる。
【0052】
少なくとも1つのチャネルの幅は、ソースをドレインに接続する軸に沿って変化し得る。
【0053】
好ましくは、「側面」、「横」、または「側方」という用語は、ドレインをソースに接続する軸に対する位置または場所を定義または指定する。
【0054】
好ましくは、横軸を、チャネル平面内にあり、ソースとドレインとを結ぶ軸に対して垂直であり、少なくとも1つのチャネルの厚さに対して垂直である軸を意味すると解釈することができる。
【0055】
好ましくは、少なくとも2つの側方ゲートは、少なくとも1つのチャネル内の各々のチャネルの両側で、少なくとも2つの半導体層の積層軸に沿って延在し、あるいはチャネル平面に垂直な軸に沿って延在する。好ましくは、少なくとも2つの側方ゲートは、TEGFETの外面から少なくとも1つのチャネルまで、少なくとも2つの半導体層の積層軸に沿って延在し、あるいはチャネル平面に垂直な軸に沿って延在する。好ましくは、少なくとも2つの側方ゲートは、少なくとも2つの半導体層の積層軸に沿い、かつ少なくとも2つの側方ゲートの上部外面を少なくとも1つのチャネルに接続する方向に沿って、少なくとも1つのチャネルのうちの各チャネルを越えて延在する。
【0056】
好ましくは、いずれの側方ゲートも、少なくとも1つのチャネルと接触しておらず、少なくとも1つのチャネルと共通の部分または界面を有していない。
【0057】
好ましくは、チャネル平面内に含まれかつソースとドレインとを結ぶ軸に対して垂直である横軸として知られる軸に沿った少なくとも1つのチャネル内の電位を変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させるように、TEGFETが配置され、さらにより好ましくは少なくとも2つの側方ゲートが配置される。好ましくは、少なくとも2つの側方ゲートをソースに対して分極させることによって、横軸に沿った少なくとも1つのチャネル内の電位を変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させるように、TEGFETが配置され、さらにより好ましくは少なくとも2つの側方ゲートが配置される。
【0058】
好ましくは、少なくとも1つのチャネル内の電位の変調および/または修正および/または横方向変化は、好ましくは少なくとも1つのチャネルの幅の1つ以上の部分または部位にわたって電位を修正し、かつ/または少なくとも1つのチャネル内に横方向に電位勾配を生成する効果を有する。
【0059】
好ましくは、少なくとも1つのチャネル内の電位の変調および/または修正および/または横方向変化は、少なくとも1つのチャネル内で、横軸に沿って、2次元ガスの電子密度および/またはドレイン-ソース電流密度および/または飽和電流を変調し、あるいは修正し、あるいは変化させる効果を有する。
【0060】
好ましくは、先行技術のFETと同様に、本発明によるTEGFETは、少なくとも1つのチャネル内の電位がチャネル軸に沿って変化するように配置される。
【0061】
さらに、本発明によれば、TEGFET、好ましくは少なくとも2つの側方ゲートは、2つのゲートがソースに対して同じ電位にあるとき、電位が少なくとも1つのチャネルの中心で最大になるように配置される。好ましくは、本発明によれば、TEGFET、好ましくは少なくとも2つの側方ゲートは、一方または両方のゲートがソースと同じ電位にあるとき、少なくとも1つのチャネルの片側または両側で電位が0になるように配置される。
【0062】
好ましくは、TEGFETは、少なくとも2つの側方ゲートの各々と少なくとも1つのチャネルとの間に配置され、あるいは側方ゲートの各々を少なくとも1つのチャネルから隔てる誘電体を備える。
【0063】
好ましくは、誘電体は、誘電特性を有する物体または媒体を意味する。誘電体の効果は、側方ゲートを少なくとも1つのチャネルから絶縁することである。
【0064】
さらにより好ましくは、少なくとも1つの側方ゲートと少なくとも1つのチャネルとの間に接触あるいは共通の部分または界面が存在せず、さらにより好ましくは、2つの側方ゲートの各々と少なくとも1つのチャネルとの間に誘電体が配置されることが、少なくとも1つのチャネル内の電位を横軸に沿って変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させることに寄与し、かつ/またはそのような効果を有し、かつ/またはそれを可能にする。
【0065】
好ましくは、TEGFETは、少なくとも1つのチャネルと誘電体との間の界面を含み、この界面は、誘電体と少なくとも2つの側方ゲートのうちの1つ、2つ以上、または好ましくは各々との間の界面に対し、反対側にあるか、面しているか、続いているか、あるいは連続しており、好ましくは直接連続している。
【0066】
好ましくは、少なくとも1つのチャネルと誘電体との間の界面、および少なくとも1つのチャネルと少なくとも2つの側方ゲートのうちの考慮される側方ゲートとの間の界面は、それぞれ、少なくとも1つのチャネルの壁または面または側面または表面、および考慮される側方ゲートの壁または面または側面または表面である。
【0067】
少なくとも1つのチャネルと誘電体との間の界面、および少なくとも1つのチャネルと少なくとも2つの側方ゲートのうちの考慮される側方ゲートとの間の界面は、それぞれ、少なくとも1つのチャネルと誘電体との間、および少なくとも1つのチャネルと考慮される側方ゲートとの間の共通の壁または共通の面または共通の側面または共通の表面であってよい。
【0068】
好ましくは、誘電体は、トレンチまたは凹部の形態で配置される。
【0069】
好ましくは、誘電体は、凹部である。
【0070】
好ましくは、凹部は、少なくとも2つの側方ゲートのうちの1つと少なくとも1つのチャネルとの間に延在する容積を構成する。
【0071】
好ましくは、凹部は、横方向において、少なくとも1つのチャネルの幅に平行な軸に沿って、少なくとも2つの側方ゲートのうちの考慮される側方ゲートの面に対向して位置し、あるいは面する少なくとも1つのチャネルの面または表面と、考慮される側方ゲートの少なくとも1つのチャネルの側に位置する面とによって境界付けられる。この場合、好ましくは、少なくとも1つのチャネルと誘電体との間の界面は、該当の側方ゲートの面に対向する少なくとも1つのチャネルの面によって形成される。さらにより好ましくは、この場合、誘電体と該当の側方ゲートとの間の界面は、該当の側方ゲートの少なくとも1つのチャネルの側に位置する面によって形成される。
【0072】
好ましくは、凹部は、気体を備え、あるいは含む。
【0073】
換言すると、誘電体は、気体であってよい。
【0074】
凹部に含まれ、あるいは封じられる気体は、空気であってよい。
【0075】
好ましくは、凹部は、固体材料を含まず、あるいは固体材料で構成されない。
【0076】
好ましくは、少なくとも2つの側方ゲート、より好ましくは各々の側方ゲートは、1つ以上の半導体材料または1つ以上の半導体材料の層を備え、さらには/あるいは1つ以上の半導体材料または1つ以上の半導体材料の層から形成および/または構成される。
【0077】
好ましくは、少なくとも2つの側方ゲート、より好ましくは各々の側方ゲートは、半導体材料または1つ以上の半導体材料の積層を含み、かつ/またはそれらからなり、かつ/またはそれらから形成され、かつ/またはそれらから構成される。
【0078】
好ましくは、少なくとも2つの側方ゲートを構成する半導体材料は、半導体材料に拡散した金属原子を含み、好ましくは半導体材料に拡散した金属原子を含む。
【0079】
好ましくは、ドレイン、ソース、および少なくとも2つの側方ゲートは、それぞれ、別個の電気接点を形成する金属層を含む。好ましくは、ドレインの金属層、ソースの金属層、および少なくとも2つの側方ゲートの金属層は、ドレイン、ソース、および少なくとも2つの側方ゲートの上部外面にそれぞれ位置する。好ましくは、ドレイン、ソース、および少なくとも2つの側方ゲートの金属層および上部外面は、少なくとも部分的に、好ましくは部分的にのみ、TEGFETの上部外面を構成する。
【0080】
金属層の厚さは、10~500nmであることが好ましい。好ましくは、金属層は、共晶を含み、かつ/または共晶からなる。好ましくは、共晶は、金、ゲルマニウム、およびニッケルを含み、かつ/またはそれらからなる。
【0081】
好ましくは、本発明によるTEGFETは、横軸に沿って少なくとも1つのチャネルの電位を変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させるように配置され、さらには/あるいはそのようにすることが可能である。好ましくは、本発明によるTEGFETは、少なくとも1つのチャネルの幅の好ましくは一部、さらに好ましくは一部のみについて、横軸に沿って、2次元ガスの電子密度および/または2次元電子ガスの電流密度を変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させるように配置され、さらには/あるいはそのようにすることが可能である。好ましくは、本発明によるTEGFETは、少なくとも1つのチャネルの全幅にわたって一定の電位を印加するようには配置されず、そのようにすることもできない。好ましくは、本発明によるTEGFETは、少なくとも1つのチャネルの全幅にわたって均一に2次元ガスの電子密度および/または電流密度を変化させるようには配置されず、そのようにすることもできない。
【0082】
好ましくは、少なくとも2つの側方ゲート、より好ましくは側方ゲートの各々は、横軸に沿って少なくとも1つのチャネルの電位を変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させるように配置される。好ましくは、少なくとも2つの側方ゲート、好ましくは側方ゲートの各々は、少なくとも1つのチャネルの幅にわたって、好ましくは不均一に、2次元電子ガスの電子密度を変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させるように配置され、さらには/あるいはそのようにすることが可能である。好ましくは、本発明によるTEGFETは、少なくとも1つのチャネルの全幅にわたって一定の電位を印加するようには配置されず、そのようにすることもできない。好ましくは、少なくとも2つの側方ゲート、さらにより好ましくは側方ゲートの各々は、少なくとも1つのチャネルの全幅にわたって均一に2次元電子ガスの空乏および/または電流密度を発生させるようには配置されず、そのようにすることもできない。
【0083】
好ましくは、本発明によるTEGFET、好ましくは2つの側方ゲート、より好ましくは2つの側方ゲートの配置は、2次元電子ガスを1次元電子ガスに変換するようには配置されておらず、さらには/あるいはそのようにすることができない。
【0084】
好ましくは、チャネルの導電率を変調するために、動作がチャネルの全幅にわたって均一にチャネルの電子を空乏化することにある先行技術のナノメートルスケールFETとは対照的に、本発明によるTEGFETは、2次元電子ガスを少なくとも1つのチャネルの全幅にわたって均一に空乏化させず、むしろ、少なくとも1つのチャネルの全幅にわたって電子密度および電流の不均一な変調を生成する。
【0085】
この目的のために、好ましくは、
・少なくとも1つのチャネルの幅と、少なくとも1つのチャネル内の電子の平均自由行程との間の比、および/または
・導電率が変調および/または制御される少なくとも2つの側方ゲートに面する少なくとも1つのチャネルのセグメントの長さと、少なくとも1つのチャネル内の電子の平均自由行程との間の比、および/または
・少なくとも2つの側方ゲートの長さ、好ましくは長さが変化する場合の最小長さと、少なくとも1つのチャネル内の電子の平均自由行程との間の比
が、10より大きく、好ましくは25より大きく、さらにより好ましくは50より大きく、より好ましくは60より大きく、さらにより好ましくは70より大きく、さらにより好ましくは80より大きく、さらにより好ましくは90より大きく、とくに有利には100より大きい。
【0086】
好ましくは、少なくとも2つの側方ゲートの長さは、少なくとも1つのチャネルの長さに平行な方向における少なくとも2つの側方ゲートの寸法を意味するように解釈される。
【0087】
また、少なくとも1つのチャネルの幅、および/または導電率が変調および/または制御される少なくとも2つの側方ゲートに面する少なくとも1つのチャネルのセグメントの長さ、および/または少なくとも2つの側方ゲートの長さは、好ましくは0.5μmより大きく、より好ましくは1.25μm、より好ましくは2.5μm、より好ましくは3μm、より好ましくは3.5μm、より好ましくは4μm、より好ましくは4.5μm、最も好ましくはすべてと5μmとの間である。
【0088】
先行技術のナノメートルFETとは対照的に、本発明によるTEGFETの少なくとも1つのチャネルにおける電子輸送は拡散性であり、すなわち、電子は非弾性衝撃を受け、その動きは電子の平均自由行程によって制御される。しかしながら、本発明の発明者は、本発明による少なくとも1つのマイクロメートルサイズのチャネルがTEGFETの実装を可能にすることを観察した。さらに、驚くべきことに、本発明によるTEGFETは、先行技術のナノメートルサイズのTEGFET(チャネル内の電子の弾道性伝導で動作する)と同等またはさらに優れた特性を有する。
【0089】
好ましくは、
・少なくとも1つのチャネルの幅と、少なくとも1つのチャネル内の電子の平均自由行程との間の比、および/または
・導電率が変調および/または制御される少なくとも2つの側方ゲートに面する少なくとも1つのチャネルのセグメントの長さと、少なくとも1つのチャネル内の電子の平均自由行程との間の比、および/または
・少なくとも2つの側方ゲートの長さと、少なくとも1つのチャネル内の電子の平均自由行程との間の比
が、電子ガスの電位および/または導電率を少なくとも1つのチャネルの幅にわたって不均一に変化させる。したがって、本発明によれば、少なくとも1つのチャネルの側面、すなわち少なくとも1つのチャネルの側縁で等電位が観察され、ドレイン-ソース電流は0、または実質的に0である。ドレイン-ソース電流が、少なくとも1つのチャネルの中央の一部または部分に主に流れることも分かる。
【0090】
さらに、本発明によれば、少なくとも1マイクロメートルの規模の少なくとも1つのチャネルの幅が、TEGFETの電力を増加させる効果も有する。
【0091】
好ましくは、側方ゲートのうちの1つをソースに電気的に接続することができる。
【0092】
好ましくは、側方ゲートのうちの1つをソースに電気的に接続することで、ソースに接続された側方ゲートがソースの電位と同じ電位を有することが保証される。
【0093】
TEGFETとして知られる2次元電子ガス電界効果トランジスタの少なくとも1つのチャネルの導電率を変調するための方法も提案される。本方法は、TEGFETのソースとドレインとの間に電位差を印加するステップを含む。本方法は、
・TEGFETの少なくとも1つの側方ゲート、例えばTEGFETの少なくとも1つのチャネルの側方両側に配置された少なくとも2つの側方ゲートのうちの第1の側方ゲートと、TEGFETのソースとの間に同じ電位差を印加するステップ、および/または
・側方ゲートの1つまたは各々およびTEGFETのソース上に同じ電位を印加するステップ、および/または
・TEGFETの側方ゲートの少なくとも1つ、例えばTEGFETの少なくとも1つのチャネルの側方両側に配置された第2または第2の側方ゲート、またはTEGFETの側方ゲートの各々と、TEGFETのソースとの間に電位差を印加するステップ
をさらに含む。
【0094】
少なくとも1つのチャネルは、少なくとも1つのチャネルの長さとして知られる少なくとも1つのチャネルのより大きな寸法に沿ってTEGFETのソースおよびドレインを接続する。
【0095】
TEGFETは、チャネル平面として知られるソースとドレインとの間の少なくとも1つのチャネルの延在の平面に垂直な軸に関して少なくとも1つのチャネルの下方または上方に位置するゲートを備えない。チャネル平面は、
少なくとも1つのチャネルを含むヘテロ構造を形成する少なくとも2つの半導体層の積層の軸に沿って延び、かつ
少なくとも1つのチャネルの長さに垂直に延びる
少なくとも1つのチャネルの厚さと呼ばれる少なくとも1つのチャネルのより小さい寸法に垂直である。
【0096】
少なくとも2つの側方ゲートとソースとの間に同じ電位または電位差を印加するステップ、および/または少なくとも1つの側方ゲートと少なくとも1つの他の側方ゲートとの間に同じ電位または電位差を印加するステップは、ソースの電位に対する少なくとも1つの側方ゲートの電位および/または少なくとも1つの他の側方ゲートの電位に対する少なくとも1つの側方ゲートの電位を変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させるステップを含むことができる。
【0097】
好ましくは、TEGFETの少なくとも1つのチャネルの導電率を変調するための方法は、少なくとも1つのチャネル内の電位および/または2次元ガスの電子密度および/または電流密度を、少なくとも1つのチャネルの全幅にわたって均一に変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させるステップを含まない。
【0098】
好ましくは、TEGFETの少なくとも1つのチャネルの導電率を変調するための方法は、少なくとも1つのチャネルの全幅にわたって一定の電位を印加することからなるステップを含まない。
【0099】
好ましくは、少なくとも1つのチャネルの導電率を変調するための方法は、側方ゲートの少なくとも1つとソースとの間に同じ電位差を印加すること、および/または側方ゲートの1つまたは各々とソースとに同じ電位を印加すること、および/または側方ゲートの少なくとも1つまたは各々とソースとの間に電位差を印加することによって、チャネル平面に含まれ、かつソースおよびドレインを接続する軸に垂直である横軸として知られる軸に沿って、少なくとも1つのチャネル内の電位および/または導電率を変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させるステップを含む。
【0100】
少なくとも1つのチャネル内の静電位を横軸に沿って変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させるステップは、ソース電位に対する少なくとも2つの側方ゲートの電位および/または少なくとも1つの他の側方ゲートの電位に対する少なくとも1つの側方ゲートの電位を変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させるステップをさらに含むことができる。
【0101】
ソース電位に対する少なくとも2つの側方ゲートの電位および/または少なくとも1つの他の側方ゲートの電位に対する少なくとも1つの側方ゲートの電位を変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させるステップは、横軸に沿って少なくとも1つのチャネル内の静電位を変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させることができ、あるいはそのような効果を有することができる。
【0102】
好ましくは、少なくとも1つのチャネル内の静電位を横軸に沿って空間的に変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させるステップは、TEGFETのドレイン-ソース電流および/または飽和電流を変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させる効果を有する。
【0103】
少なくとも1つのチャネルの導電率を変調するための方法は、少なくとも1つの側方ゲートとソースとの間に同じ電位差を印加すること、および/または側方ゲートの1つまたは各々とソースとに同じ電位を印加すること、および/または側方ゲートの少なくとも1つまたは各々とソースとの間に電位差を印加することによって、少なくとも1つのチャネルの幅、好ましくは少なくとも1つのチャネルの幅の一部分のみを横切って少なくとも1つのチャネル内の電位および/または2次元電子ガスの導電率を不均一に変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させるステップを含むことができ、かつ/または少なくとも1つのチャネルの幅は、少なくとも1つのチャネルの長さに垂直かつ少なくとも1つのチャネルの厚さに垂直な軸に沿って延びる。
【0104】
少なくとも1つのチャネルの幅の一部のみで2次元ガスの電子密度を変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させるステップは、ソース電位に対する少なくとも2つの側方ゲートの電位および/または少なくとも1つの他の側方ゲートの電位に対する少なくとも1つの側方ゲートの電位を変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させるステップをさらに含むことができる。
【0105】
ソース電位に対する少なくとも2つの側方ゲートの電位および/または少なくとも1つの他の側方ゲートの電位に対する少なくとも1つの側方ゲートの電位を変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させるステップは、少なくとも1つのチャネルの幅の少なくとも一部にわたって2次元ガスの電子密度を変調し、かつ/または修正し、かつ/または変化させることができ、あるいはそのような効果を有することができる。
【0106】
好ましくは、少なくとも1つのチャネルの導電率を変調するためのプロセスは、2次元電子ガスを1次元電子ガスに変換するステップを含まない。
【0107】
本発明によるTEGFETのチャネルの導電率を変調する方法は、好ましくは、本発明によるTEGFETによって実施される。好ましくは、本発明によるTEGFETは、本発明による方法の実施にとくに適しており、好ましくは本発明による方法の実施に合わせて特別に設計されてもいる。好ましくは、本発明による方法は、本発明によるTEGFETによる実施にとくに適しており、好ましくは本発明によるTEGFETによって実施されるように特別に設計されてもいる。したがって、本発明によるTEGFETのチャネルの導電率を変調するための方法の任意の特徴を、本発明によるTEGFETに組み込むことができ、逆もまた同様である。
【0108】
本発明によれば、TEGFET、好ましくは本発明によるTEGFETを製造するための方法も提案される。この製造方法は、
・電気接点を形成するように意図された第1の金属層とTEGFETのドレインとの間、および
・電気接点を形成するように意図された第2の金属層とTEGFETのドレインとの間、および
・電気接点を形成するように意図された第3の金属層とTEGFETの少なくとも1つのチャネルの側方両側に配置されたTEGFETの少なくとも2つの側方ゲートとの間
の別個のオーミック接触を単一の工程にて同時に形成するための単一のアニーリング工程を含む。
【0109】
好ましくは、第1、第2、および第3の金属層は、上部外側層である。好ましくは、第1、第2、および第3の金属層は、ドレイン、ソース、および少なくとも2つの側方ゲートを形成するように意図された少なくとも1つのチャネルを含むヘテロ構造を形成する半導体材料の少なくとも2つの層の積層の上部層上に配置される。
【0110】
好ましくは、本発明による方法の単一のアニーリング工程は、好ましくは半導体材料の少なくとも2つの層の積層軸に沿って、
・少なくとも2つの半導体材料層の積層における第1の金属層、および
・少なくとも2つの半導体材料層の積層における第2の金属層、および
・少なくとも2つの半導体材料層の積層における第3の金属層
の金属原子を拡散させることによって、ドレイン、ソース、および少なくとも2つの側方ゲートを単一の工程で同時に形成することにもある。
【0111】
アニーリング工程を、単一の動作で同時にオーミック接触を形成する単一のステップと定義することができる。
【0112】
好ましくは、第1、第2、および第3の金属層は、別個の独立した層である。
【0113】
好ましくは、金属層の金属原子は、ドレイン、ソース、およびとくには少なくとも2つの側方ゲートを形成する少なくとも2つの半導体材料層の積層内に、50nm、好ましくは100nm、さらにより好ましくは150nm、より好ましくは200nm、さらにより好ましくは250nmを超え、かつ/または400nm、さらにより好ましくは350nm、さらにより好ましくは300nmに満たない距離だけ拡散する。好ましくは、金属層の金属原子は、ドレイン、ソース、およびとくには少なくとも2つの側方ゲートの各々の上部外面から、少なくとも2つの半導体層の積層軸に沿って拡散する。
【0114】
好ましくは、金属層の金属原子は、ドレイン、ソース、およびとくには少なくとも2つの側方ゲートの上部外面から、半導体材料の少なくとも2つ層の積層へと、
少なくとも2つの半導体層の積層の上側層の上部外面と
チャネルと
を隔てる距離以上の距離だけ拡散する。
【0115】
好ましくは、少なくとも2つの半導体層の積層の上側層の上部外面とチャネルとの間の距離は、積層軸に平行であり、かつ/またはソースとドレインとの間の少なくとも1つのチャネルが延在するチャネル平面として知られる平面に垂直である。
【0116】
本発明によるTEGFETは、好ましくは、本発明による製造方法によって実現される。好ましくは、本発明による製造方法は、本発明によるTEGFETの実現にとくに適しており、好ましくは本発明によるTEGFETの実現に合わせて特別に設計されてもいる。したがって、本発明による製造方法の任意の特徴を、本発明によるTEGFETに取り入れることができ、逆もまた同様である。
【図面の簡単な説明】
【0117】
他の利点および特徴は、完全に非限定的な実施形態および実装形態の詳細な説明を検討し、以下の添付の図面から明らかになるであろう。
【0118】
【
図1a】先行技術のTEGFETの概略の斜視図である。
【
図1b】先行技術のTEGFETの概略の平面図である。
【0119】
【
図2a】本発明によるTEGFETの一実施形態の概略の斜視図である。
【
図2b】
図2a)に示した本発明によるTEGFETの実施形態の概略の平面図である。
【0120】
【
図3a】本発明によるTEGFETの実施形態の概略の側面図である。
【
図3b】本発明によるTEGFETの実施形態の概略の側面図である。
【0121】
【
図4】本発明によるマルチチャネルTEGFETの一実施形態の概略の側面図である。
【0122】
【
図5】側方ゲートがソースに電気的に接続されているTEGFETの概略の平面図である。
【0123】
【
図6a】上側ゲートの分極が存在しない場合の先行技術のTEGFETのチャネルの概略の斜視図である。
【
図6b】上側ゲートの分極が存在する場合の先行技術のTEGFETのチャネルの概略の斜視図である。
【
図6c】上側ゲートバイアスの存在下における先行技術のTEGFETの横軸に沿ったチャネル内のドレイン-ソース電位の推移を示すグラフである。
【0124】
【
図7a】側方ゲートの分極が存在しない場合の本発明によるTEGFETのチャネルの概略の斜視図である。
【
図7b】1つ以上の側方ゲートに分極が存在する場合の本発明によるTEGFETのチャネルの概略図である。
【
図7c】1つ以上の上側ゲートに分極が存在する場合の本発明によるTEGFETの横軸に沿ったチャネル内のドレイン-ソース電位の推移を示すグラフである。
【0125】
【
図8a】アニーリング工程の前の本発明によるTEGFETの概略図である。
【
図8b】アニーリング工程の後の本発明によるTEGFETの概略図である。
【0126】
【
図9a】本発明によるTEGFETの概略の平面図である。
【
図9b】別のチャネル形状を特徴とする本発明によるTEGFETの概略の平面図である。
【0127】
【
図10a】
図9aに示したTEGFETの300Kの温度における種々のゲート-ソース電圧についてのドレイン-ソース電流対ドレイン-ソース電圧の変化を示すグラフである。
【
図10b】
図9bに示した300KのTEGFET温度についてのドレイン-ソース電圧の関数としてのチャネルのソース端における横軸に沿ったチャネル内の電位の変化を示すグラフである。
【
図10c】
図9bに示した300KのTEGFET温度についてのドレイン-ソース電圧の関数としてのチャネルのドレイン端における横軸に沿ったチャネル内の電位の変化を示すグラフである。
【0128】
【
図11】アクセプタの役割を有するベリリウム原子を4.10
-10.cm
-2の密度で含むTEGFETのGaAS/GaAlAs界面から2nmの距離に位置するδドープ層を含む
図9bに示したTEGFETの300Kの温度における種々のゲート-ソース電圧に対するドレイン-ソース電流対ドレイン-ソース電圧の変化を示すグラフである。
【0129】
【
図12】アクセプタの役割を有するベリリウム原子を8.10
-10.cm
-2の密度で含むTEGFETのGaAS/GaAlAs界面から2.5nmの距離に位置するδドープ層を含む
図9bに示したTEGFETの1.5Kの温度における種々のゲート-ソース電圧に対するドレイン-ソース電流対ドレイン-ソース電圧の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0130】
以下で説明される実施形態は、決して限定的なものではなく、とくには、開示された特徴のうちの選択された特徴のみを開示された他の特徴から分離して含む本発明の変種(たとえその選択が他の特徴も含む表現において行われていても)を考慮することが、そのように選択された特徴が何らかの技術的利益をもたらすために充分であり、あるいは本発明を先行の技術水準に対して区別するために充分であるならば、可能である。そのような選択は、構造的な詳細を伴わない少なくとも1つの好ましくは機能に関する特徴を含み、あるいは構造的な詳細の一部分だけで、何らかの技術的利点をもたらすために充分であり、もしくは本発明を先行の技術水準に対して区別するために充分であるならば、そのような一部分のみを有する。
【0131】
図1を参照すると、先行技術からの従来のTEGFETが示されている。このTEGFETは、少なくとも2つの半導体層21、22の積層と、ドレイン3と、ソース4と、チャネル6と、金属層から形成された上部外側金属ゲート50とを備える。
【0132】
先行技術の多くのTEGFETは、半導体層21上に堆積させた金属からなるゲート(一般に、ショットキーゲートとして知られている)を備え、上部外側金属ゲート50から層21およびチャネル6への拡散を伴わない。先行技術における他のTEGFETは、上部外側金属ゲート50を層21およびチャネル6から電気的に絶縁するための誘電体を備える。
【0133】
図2および
図3を参照して、本発明によるTEGFET 1の一実施形態を提示する。この実施形態によるTEGFET 1は、ドレイン3と、ソース4と、少なくとも2つの半導体層21、22の積層によって形成されたヘテロ構造に含まれる少なくとも1つのチャネル6(図示の実施形態では、単一のチャネル6)とを備える。チャネル6は、その最長寸法Lに沿ってソース4とドレイン3とを接続する。
【0134】
TEGFET 1は、各々が少なくとも1つのチャネル6の両側に配置された少なくとも2つの側方ゲート5を備える。図示のように、TEGFET 1は、チャネル6の両側に2つの側方ゲート5を備える。側方ゲート5の各々は、チャネル6の2つの側面7、71、72のうちのチャネル6の異なる側面7、71、72に面する。チャネル6の側面7、71、72は、チャネル6の最小寸法であるチャネル6の厚さeを備える。チャネル6の厚さeは、少なくとも2つの半導体層21、22の積層軸8に沿って延在し、チャネル6の長さLに対して垂直に延びる。さらに、チャネル6の側面7、71、72は、チャネル6の長さLを備える。チャネル6の側面7、71、72は、チャネル6の長さLおよびチャネル6の厚さeに沿って延在する表面または界面である。
【0135】
TEGFET 1は、チャネル6が延在するチャネル平面に垂直な軸8に対してチャネル6の下方に配置された下部ゲートまたはチャネル6の上方に配置された上部ゲート50を備えない。チャネル平面は、チャネル6の厚さeに垂直である。また、積層軸8は、チャネル平面に対して垂直である。換言すると、本発明によるTEGFET 1は、積層軸8に沿ってチャネル6の下方に配置された下部ゲートまたは積層軸8に沿ってチャネル6の上方に配置された上部ゲート50を備えない。上部ゲートがないことにより、ゲート漏れ電流、界面欠陥、およびゲート脆性などの先行技術のトランジスタで遭遇されるすべての問題が回避される。
【0136】
この実施形態によれば、TEGFET 1は、例えば、GaAs基板と、5nm~50nmの厚さを有するGaAlAs層と、チャネルを形成する10nm~100nmの厚さを有するGaAs層22と、50nm~300nmの厚さを有するGaAlAs層21とからなる積層を備える。この構成において、チャネル6は、層21と層22との間の界面でGaAs層内に位置する。
【0137】
本発明による側方ゲート5は、上部または下部ゲート50の不在との組み合わせにおいて、チャネル6内の電位を横軸10に沿って変調し、かつ/または変更し、かつ/または変化させることを可能にする。横軸10は、チャネル平面内にあり、ソース4とドレイン3とを結ぶ軸に垂直である。さらに、横軸10は、積層軸8に対して垂直である。
【0138】
上部ゲート50または下部ゲートを備え、したがって
図6a)、
図6b)、および
図6c)に示されるようにチャネル6のlで示される全幅にわたって2次元電子ガスの電子密度を変更する先行技術のTEGFETとは異なり、本発明によるTEGFET 1の特定の配置は、
図7a)、
図7b)、および
図7c)に示されるように、横軸10に沿ってのみチャネル6内の電位を修正および変調することを可能にする。したがって、本発明によれば、ドレイン-ソース飽和電流が、チャネル6内の電流密度を変化させることによって制御される一方で、上部ゲート50または下部ゲートのTEGFETにおいては、横軸10の全体に沿って2次元電子ガスの電子密度を均一に変化させることによって制御される。
【0139】
本発明によるTEGFET 1のチャネル6の導電率を変調するための方法も説明される。この方法は、ソース4とドレイン3との間に電位差を印加するステップを含む。さらに、この方法は、
-各々の側方ゲート5とソース4との間に同じ電位差を印加するステップ、または
-1つの側方ゲート5とソース4とに同じ電位を印加し、別の側方ゲート5とソース4との間に電位差を印加するステップ、または
-各々の側方ゲート5とソース4との間に電位差を印加するステップ
をさらに含む。
【0140】
1つの側方ゲート5または各々の側方ゲート5とソース4との間に印加される同一の電位または異なる電位は、0であっても、非ゼロであってもよい。
【0141】
少なくとも1つの側方ゲート5とソース4との間に同じ電位または電位差を印加するステップ、および/または少なくとも1つの側方ゲート5と別の側方ゲート5との間に同じ電位または電位差を印加するステップは、横軸10に沿ってチャネル6内の電位を変化させる効果を有する。
【0142】
本発明によるTEGFETにおける上部ゲート50または下部ゲートの不在は、チャネル6の導電率を変調する方法が、チャネル6の幅lの全体にわたって2次元電子ガスの密度を均一に変化させるステップを含まないことを意味する。
【0143】
2つの側方ゲート5は、半導体材料で作られる。2つの側方ゲート5は、半導体材料内に拡散した金属原子を含む。図示の実施形態によれば、2つの側方ゲート5は、10~100nmの厚さを有するGaAs層22と、50~300nmの厚さを有するGaAlAs層21との積層からなる。側方ゲート5上のGaAs/GaAlAs層の積層は、散乱した金属原子を含む。
【0144】
側方ゲート5の各々は、上部外側金属層9、91から積層軸8に沿って、上部外側金属層9、91をチャネル6に接続する方向にチャネル6を越えて延在する。
【0145】
拡散した金属原子は、上部外側金属層9、91をチャネル6に接続する方向において、上部外側金属層9から100~300nmの距離にわたって層の積層21、22内に延びる。
【0146】
また、先行技術におけるTEGFETの上部または下部外側金属ゲート50と異なり、本発明による側方ゲート5は、拡散金属原子を含む半導体材料で作られる。加えて、本発明による側方ゲート5は、外側層ではなく、積層軸8に沿ってTEGFET 1の構造内に延在する。これにより、ゲートの機械的強度が向上する。これは、ゲートを損傷する前に印加される電位を大幅に増加させるという利点も有する。最後に、これは、印加電位をチャネル6の幅lを超えて延ばすことを可能にし、したがって電子ガスの幅lの全体にわたって最適で均一な電気効果を得ることも可能にする。
【0147】
ドレイン3およびソース4は、それぞれ上部外側金属層9、92および上部外側金属層9、93から積層軸8に沿って、上部外側金属層9、92をチャネル6に接続し、上部外側金属層9、93をチャネル6に接続する方向に、チャネル6を越えて延在する。拡散した金属原子は、上部外側金属層9、92および上部外側金属層9、93のそれぞれから、上部外側金属層9、92をチャネル6に接続し、上部外側金属層9、93をチャネル6に接続する方向にチャネル6を越えて、100~300nmの距離にわたって層の積層21、22内に延びる。
【0148】
上部外側金属層9、91、92、93および拡散した金属原子は、金、ゲルマニウム、およびニッケルを含む共晶である。
【0149】
本発明によれば、側方ゲート5のいずれも、チャネル6と接触しておらず、あるいはチャネル6と共通の部分または界面を有さない。加えて、TEGFET 1は、側方ゲート5の各々とチャネル6との間に配置された誘電体11を備える。誘電体11は、好ましくは凹部11の形態である。さらにより好ましくは、凹部11に含まれる誘電体11は気体である。図示の非限定的な例において、気体は空気である。気体は、チッ素または誘電特性を有する他の気体であってもよい。
【0150】
これらの特徴、すなわち(i)側方ゲート5とチャネル6との間に接触あるいは共通の部分または界面が存在しないこと、(ii)側方ゲート5の各々の間に配置された誘電体が存在すること、および(iii)凹部の形態の誘電体の配置が、個別に、降伏電圧の向上、漏れ電流の低減、およびTEGFET 1の特性の改善に寄与する。
【0151】
図3a)および
図3b)が、非限定的な例として、本発明によるTEGFET 1の2つの可能な構成を示している。2次元電子ガスを、
-
図3a)に示されるヘテロ接合、または
-
図3b)に示される量子井戸
に限定することができる。
【0152】
ヘテロ接合の場合、チャネル6は、異なる半導体の2つの層21、22の間の界面に位置する。この場合、層21、22を構成する半導体は、異なるバンドギャップを有するが、同じ族に属する。したがって、チャネル6は、この場合は層22である半導体層内に位置し、そこに二次元ガスの電子が閉じ込められ、ヘテロ接合の界面に結合する。
【0153】
量子井戸の場合、チャネル6は、例えば1電子ボルト(eV)より大きいギャップなどの大きいギャップを有する同じ半導体の2つの層23、25の間に堆積させた例えば1eV未満のギャップなどの小さいギャップを有する半導体の層24内に位置する。
【0154】
チャネル平面は、ヘテロ接合の界面の延在の平面、または量子井戸の場合の小ギャップの半導体の層24の延在の平面に平行である。
【0155】
図4は、TEGFET 1が複数のチャネル6を備える構成を示している。図示の実施形態によれば、TEGFET 1は3つのチャネル6を備える。チャネルは、積層軸8に沿って重ね合わせられる。各々のチャネル6のチャネル平面は、互いに平行である。この構成は、本発明による側方ゲート5の使用によって可能になる。この構成は、電流密度を高める効果がある。
【0156】
図5は、TEGFET 1の側方ゲートのうちの1つがソース4に電気的に接続される構成を示している。この構成において、側方ゲート5のうちの1つとソース4とは、層21、22の積層および上部外側金属層9、91、93によって物理的に接続される。したがって、ソース4とソース4に接続された側方ゲート5とは、同電位である。さらに、拡散した金属原子は、層21、22の積層のうちのソース4に接続された側方ゲート5とソース4とを接続する部分に延在する。
【0157】
図8を参照して、本発明によるTEGFET 1を製造するための方法も説明される。この製造方法は、TEGFET 1のすべてのオーミック接触を単一の工程で同時に形成するための単一のアニーリング工程を含む。これらは、
-ドレイン3の上部外側金属層9、92と、
-ソース4の上部外側金属層9、93と、
-各々のゲート5の上部外側金属層9、91と
の間のオーミック接触である。
【0158】
上部外側金属層9、91、92、93の各々は、TEGFET 1を外部電源に接続する電気接点を形成するように意図される。
【0159】
アニーリング工程に先立ち、本方法は、ドレイン3、ソース4、および側方ゲート5の上部外面上にそれぞれ金属層9、91、92、93を、例えば蒸着によって堆積させることを含むことができる。
【0160】
アニーリング温度は、300~450℃である。アニーリング工程の持続時間は、10秒~3分である。
【0161】
アニーリング工程は、拡散を含み、あるいは上部外側金属層9、91、92、93の各々から半導体層21内に金属原子を拡散させる効果を有する。好ましくは、アニーリングの時間および温度は、金属原子が金属層9、91、92、93の各々から半導体層21、22内に拡散するように選択される。
【0162】
アニーリング工程は、上部外側金属層9、91、92、93とドレイン3、ソース4、とくには側方ゲート5との間にオーミック接触を形成する効果を有する。
【0163】
先行技術のTEGFETにおいては、上部または下部外側金属ゲート50を形成する上部外側金属層50からの金属原子の拡散は、短絡を回避するため、および/または絶縁破壊電圧の低下を回避するため、および/または漏れ電流を制限するために禁止される。この目的のために、ドレイン3の上部外側金属層9、92およびソース4の上部外側金属層9、93の間にオーミック接触を形成するために、アニーリング工程の実行後に上部外側金属ゲート50または下部外側金属ゲートを形成する上部外側金属層50を堆積させる必要がある。結果として、本発明によるTEGFET 1を製造するための方法は、より少数の工程しか含まず、時間およびエネルギーの節約になる。
【0164】
図10、
図11、および
図12が、
図9に示されるとおりの本発明によるTEGFET 1のチャネル6の2つの異なる幾何学的形状の性能および特徴を示している。TEGFETa)1として知られる
図9a)に示される第1の形状において、チャネル6は、ソース4とドレイン3との間の730μmの長さ、およびチャネル6の側面7、71と7、72との間の10μmの厚さを有する。TEGFETb)1として知られる
図9b)に示される第2の形状において、チャネル6は、ソース4とドレイン3との間の30μmの長さ、およびチャネル6の側面7、71と7、72との間の10μmの厚さを有する。チャネル6の幅および/または長さは、TEGFET 1を製造するために使用される製造方法および設備によってのみ制限される。製造方法が許せば、チャネル6の長さおよび/または幅は数ミリメートルであってもよい。
【0165】
図10a)は、TEGFETb)1に関して、300Kの温度において、VGSと示される種々のゲート-ソース電圧について、VDSと示されるドレイン-ソース電圧の関数としてのIDSと示されるドレイン-ソース電流の変化を示している。2つの側方ゲート5の一方とソース4との間に電位差が印加される。とくには、側方ゲート5の一方は接地され、他方は分極される。VGSが0に等しい場合でも、飽和IDSが依然として観察されることに留意されたい。VGSが0に等しいとき、側方ゲート5は、実施形態に応じて接地されるソース4と同じ電位にある。さらに、側方ゲート5の負の分極、すなわち0未満のVGSの場合、IDSは減少し、VGSが正の場合、IDSは増加する。この構成は、TEGFETの従来の特徴を提供する。
【0166】
図10b)は、TEGFETb)1に関して、300Kの温度において、VDSの関数としてのVYSと示されるチャネル6のソース4端における横軸10に沿ったチャネル6内の電位の変化を示している。
図10c)は、TEGFETb)1に関して、300Kの温度において、VDSの関数としてのVYDと示されるチャネル6のドレイン3端における横軸10に沿ったチャネル6内の電位の変化を示している。この場合の2次元電子ガスのキャリア密度は、300Kで2.4×10
11.cm
-2、1.5Kで1.1×10
11.cm
-2である。
【0167】
VGSが0に等しい場合、VYSおよびVYDのいずれも0ではなく、この場合であっても、チャネル6の各々の側面7、71および7、72に沿って電荷が蓄積し得ることを示していることに留意されたい。しかしながら、側方ゲート5が同じ浮遊電位に維持される場合、VYSおよびVYDはゼロに向かう傾向がなく、これは、VGSがゼロに等しくても、側方ゲート5が横軸10およびチャネル6の長さLに沿った電位を強く修正することを実証している。
【0168】
これらの結果が、横軸10に沿ったチャネル6内の電位およびチャネル6の長さLに沿った軸に沿ったチャネル6内の電位に対するVGSの直接的かつ結果として生じる効果を裏付けていることにも留意されたい。
【0169】
図11は、4×10
10.cm
-2の密度でアクセプタとして作用するベリリウム原子を含むδドープ層を有するTEGFETb)2に関して、300Kの温度において、VGSと示されるさまざまなゲート-ソース電圧について、VDSと示されるドレイン-ソース電圧の関数としてのIDSと示されるドレイン-ソース電流の変化を示している。δドープ層は、GaAS/GaAlAs界面から2nmの距離に位置する。この場合の2次元電子ガスのキャリア密度は、300Kで2.7.10
11.cm
-2、1.5Kで1.25.10
11.cm
-2である。これは、TEGFET 1の形状が、本発明によるTEGFET 1の特性、とくにはIDS対VDSに影響を及ぼさないことを実証している。飽和電流IDSおよび安定性IDSは、TEGFET 1の形状にかかわらず不変のままである。
【0170】
図12は、8×10
10.cm
-2の密度でアクセプタとして作用するベリリウム原子を含むδドープ層を有するTEGFETb)2に関して、1.5Kの温度において、VGSと示されるさまざまなゲート-ソース電圧について、VDSと示されるドレイン-ソース電圧の関数としてのIDSと示されるドレイン-ソース電流の変化を示している。δドープ層は、GaAS/GaAlAs界面から2.5nmの距離に位置する。
図12の挿入図は、温度1.5Kおよび2次元電子ガスのキャリア密度6×10
10.cm
-2、ならびに温度300Kおよび2次元電子ガスキャリア密度1.6×10
11.cm
-2で、-0.5ボルト~+0.5ボルト、次いで+0.5ボルト~-0.5ボルトの電圧VGSの連続変化時、すなわち電圧変化の中断のない場合のIDSとして示されるドレイン-ソース電流の変化を示している。
【0171】
1.5Kにおいて、
図10および
図11に示される300Kと比較して、VDSの関数としてのIDSの変化の質が維持されることにも留意されたい。これは、8×10
10.cm
-2という低いキャリア密度であっても、TEGFET 1は低ノイズであり、したがって低温用途に適することを示している。
【0172】
当然ながら、本発明は、ここで説明した例に限定されず、本発明の範囲を超えることなく、これらの例に対して多くの調整を行うことができる。
【0173】
さらに、本発明のさまざまな特徴、形態、変種、および実施形態を、互いに適合しないか、または排他的でない限り、さまざまな組み合わせで互いに組み合わせることができる。
【国際調査報告】