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  • 特表-前駆体の調製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】前駆体の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/60 20060101AFI20250220BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
C08G77/60
C07F7/10 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546025
(86)(22)【出願日】2023-01-23
(85)【翻訳文提出日】2024-08-01
(86)【国際出願番号】 EP2023051526
(87)【国際公開番号】W WO2023148041
(87)【国際公開日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】2201257.9
(32)【優先日】2022-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501297550
【氏名又は名称】キネティック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100179925
【弁理士】
【氏名又は名称】上出 真紀
(72)【発明者】
【氏名】フッター チャールズ ジョン マイケル
【テーマコード(参考)】
4H049
4J246
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP10
4H049VQ35
4H049VR22
4H049VR52
4H049VS35
4H049VT47
4H049VU25
4H049VV16
4H049VW01
4H049VW02
4J246AA05
4J246AA10
4J246AB15
4J246BB080
4J246BB081
4J246BB083
4J246BB08X
4J246BB110
4J246BB113
4J246BB11X
4J246CA010
4J246CA01U
4J246CA01X
4J246CA210
4J246CA21X
4J246FA142
4J246FA322
4J246FA432
4J246FB272
4J246GB11
4J246GB16
4J246HA01
4J246HA06
4J246HA56
4J246HA58
4J246HA61
(57)【要約】
不活性ガスの制御を用いることなくオリゴシラザンを架橋する方法であって、オリゴシラザンを溶媒と混合する工程と、オリゴシラザン溶液の表面全体におけるガス状の副生成物の一貫した放出を確実とするように可溶性触媒を適切な速度で添加する工程とを含み、上記不活性ガスの制御は、グローブボックス内で、シュレンクラインを用いて、又は、窒素、アルゴン若しくは除湿された空気等の遮蔽ガスのその他の目的を有する添加と共に実施される反応を含む、上記溶液上の雰囲気を水及び/又は低酸素ガスで置き換える手法を含む、方法。さらには、上記方法により調製されるポリマーであって、好ましくは酸素含有量の低い方法により調製される、ポリマー、上記ポリマーから調製されるコンポジット、及び、航空宇宙、自動車、石油・ガス産業における使用も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガスの制御を用いることなくオリゴシラザンを架橋する方法であって、
オリゴシラザンを溶媒と混合する工程と、
オリゴシラザン溶液の表面全体におけるガス状の副生成物の一貫した放出を確実とするように可溶性触媒を適切な速度で添加する工程と
を含み、
前記不活性ガスの制御は、グローブボックス内で、シュレンクラインを用いて、又は、窒素、アルゴン若しくは除湿された空気等の遮蔽ガスのその他の目的を有する添加と共に実施される反応を含む、前記溶液上の雰囲気を水及び/又は低酸素ガスで置き換える手法を含む、方法。
【請求項2】
触媒がフッ化物イオン源である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒がテトラブチルアンモニウムフルオライドである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
溶媒がテトラヒドロフラン、トルエン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、又はそれらの混合物から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
オリゴマー:溶媒の質量比が8:1~1:8の間である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
触媒のオリゴマー繰り返し単位に対するモル比が1×10-4~10×10-4の間である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
触媒の添加速度が10~100(触媒合計%)時間-1の間である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
反応が、高さ/幅の寸法比が>1である容器内で実施される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
容器の入口開口部の幅/底辺の寸法が≦0.5である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
得られる架橋ポリマーが、不活性雰囲気中での1200℃超における熱分解で多量かつ均一な酸素含有量を要することなくセラミック材料を与える、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
触媒が滴下により添加され、阻害剤が反応の経路を通して選択的に添加される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
溶媒がテトラヒドロフラン若しくはトルエン又はそれらの混合物である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法により調製されるポリマーであって、好ましくは低い酸素含有量で請求項1~12のいずれか1項に記載の方法により調製される、ポリマー。
【請求項14】
請求項13に記載のポリマーを用いて調製されるコンポジット。
【請求項15】
請求項13又は14により調製されるポリマー又はコンポジットの、航空宇宙、自動車、石油・ガス産業における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックスにおける使用のためのポリマーを調製する方法に関する。特に、本発明は、Si-C-Nセラミックスのプレセラミックポリマーの製造方法、及びその生成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
Si-C-Nセラミック前駆体は、合成中、雰囲気の慎重な制御を要する。これは、ポリマー前駆体が周囲温度で水との反応性を有するSi-N主鎖を含むからであり、それは加水分解してシロキサンを生成させ、これは、結果として、熱変換(熱分解)でSi-Oセラミックスを生成しうる。
標準的な化学的方法は、感気性及び感湿性反応が、例えばシュレンクラインにより実施可能である高度に制御された条件下で実施される必要があると教示している。したがって、水分を排除するための追加の窒素雰囲気生成装置を指定する先行技術の方法は水分を制御するための大量の装置を要する。(例えばシュレンクライン、グローブボックス、溶媒乾燥手順)等。
Si-C-Nセラミックスの製造における特定の先行技術の教示内容は、テトラヒドロフラン(THF)中で触媒を含有するフッ化物を用いてポリシラザン材料を架橋する方法を開示する米国特許第10,385,234号を含むが、副反応を回避するために水分を排除するとの要件を強調している。文献参照O. Flores et al, J. Mat. Chem. A., 2013, 1, 15406もまた、ナトリウムを用いて全ての有機溶媒を乾燥させる工程、及びグローブボックス内で全ての材料を準備する限りにおいても水分が排除される必要があることを明確に教示している。原材料に関する言及は全て、不活性雰囲気を使用することの注記を含む。このように、当業者は、水分が反応性Si-N主鎖の加水分解につながる可能性があり、追加の処理後にSi-Oセラミックスの生成につながるとの理解に基づき、水分を排除するための全ての制御手段をとるように努める。
【0003】
先行技術の方法のさらなる問題は、既存のポリマー由来のセラミックス(PDC)材料が、大きい形状、又は複雑な形状に成形できないことであり、現在の加工方法は、既存のコンポジットの製造方法又は新たに開発された方法、例えば積層造形法には不十分である。要求されているのは、水分排除のための器具類により発生する費用を要さないSi-C-N前駆体の合成方法、及びスケーラビリティの向上した新規の合成方法である。
既存のプロセス及び材料に伴うさらなる問題は、それらではコンポジット材料が製造できないことであり、それは例えば、繊維コンポジットの浸出を防止する粘度に乏しいことに起因する。このように、セラミックコンポジットの製造を可能とする容易加工性材料ポリマー系の開発も、価値の高いものとなりうる。
【発明の概要】
【0004】
本発明によれば、不活性ガスの制御を用いることなくオリゴシラザンを架橋する改良された方法であって、
オリゴシラザンを溶媒と混合する工程と、
オリゴシラザン溶液の表面全体におけるガス状の副生成物の一貫した放出を確実とするように可溶性触媒を適切な速度で添加する工程と
を含み、
上記不活性ガスの制御は、グローブボックス内で、シュレンクラインを用いて、又は、窒素、アルゴン若しくは除湿された空気等の遮蔽ガスのその他の目的を有する添加と共に実施される反応を含む、上記溶液上の雰囲気を水及び/又は低酸素ガスで置き換える手法を含む方法が提供される。
上記触媒はフッ化物イオン源であってもよい。上記触媒は、テトラエチルアンモニウムフルオライド又はテトラブチルアンモニウムフルオライドから選択されるものであってもよい。好ましくは、上記触媒はテトラブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)である。
【0005】
上記溶媒は、テトラヒドロフランであってもよい。上記溶媒は、さらにトルエンであってもよい。上記溶媒は、さらに2-メチルテトラヒドロフランであってもよい。上記溶媒は、さらにジブチルエーテルであってもよい。上記溶媒は、2-メチルテトラヒドロフラン及びジブチルエーテルから選択される追加の溶媒を含むか又は含まない、テトラヒドロフラン又はトルエンが任意の特定の比率である混合物であってもよい。上記溶媒は、さらに、当技術において公知のあらゆるその他の溶媒であってもよく、オリゴシラザン、触媒の両方、及びクエンチ剤を溶解させるものであってもよい。
オリゴマー:溶媒の質量比は、8:1~1:8の間であってもよい。上記オリゴマー:溶媒の質量比は、より具体的には8:1~1:1の範囲内、さらにより具体的には8:1~3:1の範囲内、さらには8:1~5:1の範囲内であってもよい。或いは、上記オリゴマー:溶媒の質量比は1:1~1:8の範囲内、より具体的には1:3~1:8の範囲内、さらにより具体的には1:5~1:8の範囲内であってもよい。上記オリゴマー:溶媒の質量比は、好ましくは1:3~3:1の範囲内であってもよい。より好ましくは上記オリゴマー:溶媒の質量比は1:2及び2:1であってもよい。さらにより好ましくは、質量比は1:1.5~1:1であってもよい。最も好ましくは、質量比は1:1である。
触媒のオリゴマー繰り返し単位に対するモル比は、1×10-4~10×10-4の間であってもよい。より好ましくは、上記モル比は、2×10-4~10×10-4の間であってもよい。さらにより好ましくは、上記モル比は、2×10-4~7×10-4の間であってもよい。最も好ましくは、上記モル比は、2×10-4~6×10-4の間であってもよい。
【0006】
触媒の添加速度は、10~100(触媒合計%)時間-1の間であってもよい。好ましくは、添加速度は、15~35(触媒合計%)時間-1の間であってもよい。
上記反応は、高さ/幅の寸法比が>1である容器内で実施されてもよい。
上記容器の入口開口部の幅/底辺の寸法は、≦0.5であってもよい。
得られる架橋ポリマーは、不活性雰囲気中での1200℃超における熱分解で多量かつ均一な酸素含有量を要することなくセラミック材料を与えうる。
触媒は滴下により添加されてもよく、阻害剤は反応の経路を通して選択的に添加されてもよい。
さらなる態様では、本発明は、ポリマー及び本発明の方法にしたがって調製されたポリマーを含むコンポジット、並びに、航空宇宙、自動車、石油・ガス産業におけるそれらの使用を提供する。好ましくは、上記ポリマー及びコンポジットの酸素含有量は低く、例えば試料の全体で平均して10at%未満である。
本発明の特定の実施形態では、溶媒はTHFであり、触媒はTBAFであり、オリゴマー:溶媒の質量比は1:1.5~1:1の間であり、触媒:オリゴマー繰り返し単位のモル比は2×10-4~4×10-4の間であり、上記触媒は平均でおよそ17(触媒合計%)時間-1で追加される。
ある特定の実施形態では、溶媒はTHFであり、触媒はTBAFであり、オリゴマー:溶媒の質量比は1:1であり、触媒:オリゴマー繰り返し単位のモル比は3.6×10-4であり、上記触媒は平均でおよそ17(触媒合計%)時間-1で追加される。
【0007】
本発明のその他の実施形態では、溶媒はトルエンであり、触媒はTBAFであり、オリゴマー:溶媒の質量比は1:1.5~1:1の間であり、触媒:オリゴマー繰り返し単位のモル比は2×10-4~6×10-4の間であり、上記触媒は平均でおよそ33(触媒合計%)時間-1で追加される。
ある特定の実施形態では、溶媒はトルエンであり、触媒はTBAFであり、オリゴマー:溶媒の質量比は1:1であり、触媒:オリゴマー繰り返し単位のモル比は2.6×10-4であり、上記触媒は平均でおよそ33(触媒合計%)時間-1で追加される。
さらなる実施形態では、溶媒はトルエンであり、オリゴマー:溶媒の質量比は1:1.1であり、触媒:オリゴマー繰り返し単位のモル比は5.2×10-4であり、上記触媒は平均でおよそ33(触媒合計%)時間-1で追加される。
【0008】
1つの実施形態では、本発明は、反応性F-イオンを含有する触媒(テトラブチルアンモニウムフルオライド,TBAF)を用いて特定のポリシラザン(Durazane(TM)1800,Merck)を化学的に架橋する方法であって、分子量の高いポリマー材料をもたらす多くの反応を引き起こす方法を提供する。
特に、本発明の方法は、乾燥した不活性ガスの下で実施されるものではない。つまり、本発明によれば、反応液体上の雰囲気を追い払うように十分量の水素ガスが反応中に生成されるような配置により、インサイチュで「不活性」雰囲気を供する(水分が関係する限りにおいて)。本発明の方法の最中の加水分解の実際の程度も、生成された最終セラミック材料中に、特に高濃度のシロキサン(したがって酸素)を生成するとは考えられない。高濃度の酸素は、酸化物を含有する最終セラミックの相当量、例えば15モル%として定義されうる。
本発明の方法は、先行技術の方法とは異なり、保護工程を含まないことを特徴とするため、スケーラビリティへの大きなボーナスが与えられる。
さらなる態様では、本発明はさらに、THF中のDurazane(TM)1800及びTBAF、続いてCa(BH42・2THFを用いてクエンチしてCaF2及びテトラブチルアンモニウムボロハイドライド副生成物を生成する反応、続いて濾過及び真空下で乾燥させてセラミック前駆体を生成する工程から製造される、架橋材料を提供する。
【0009】
先行技術は、周囲圧力条件下でポリシラザンの架橋を含む方法により調製される架橋材料を開示も教示もしていない。本発明により提供される解決法は、遮蔽を目的とする、合成により生成される固有の雰囲気、及び、H2Oを反応容器の雰囲気から除去する程度に十分量のH2が放出されることを確実とする合成時間の制御に依存することである。
本発明の特に有利な点は、反応容器への手間のかかるガス供給のためのインフラ要件、洗浄、又はガス及び溶媒の乾燥手順を不要とすることにより生まれる。あらゆる形態の変更や追加は、合成において本来は小スケールでの解決法である複雑な感気性技法を採用する必要なく、反応に足すことができる。したがって、合成はさらにより柔軟かつスケーラブルである。
本発明による改良されたPDC前駆体の潜在用途は下記を含む。
・航空宇宙用途用の高温セラミックス:リーディングエッジ、排気ダクト
・耐高温性材料-エネルギー材料、自動車、航空宇宙
・硬質材料-研磨材、ベアリング、切削工具/機械加工工具
・ケミカルエンジニアリング-触媒支持体、食品及びバイオテクノロジー
・機能性材料-電気工学、ミクロ/ナノエレクトロニクス
【0010】
このように、本発明の方法及び生成物は、自動車、航空宇宙、石油及びガス等を含む様々な産業における用途を有する。本発明の方法は、必要に応じて、その他の方法と組み合わせて使用することもできる。
本発明のあらゆる態様又は実施形態の特徴は、単独で、又は必要に応じてその他の態様及び実施形態とのあらゆる組み合わせで使用することができる。
次に、一例としてのみ、下記概略図を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の方法の前駆体から作製されるセラミックコンポジットのエネルギー分散型分光法(EDS,元素分析)データを示している。
図2】丸底フラスコの実験セットアップを示している。
図3】縁の広い容器の実験セットアップを示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、本発明の実施形態が示されている添付の実施例及び図面を参照して以下においてより完全に記載される。本発明は、本発明に記載の実施形態に限定されるものと解釈するべきではない。
【実施例
【0013】
(実施例1)
400gのオリゴシラザン、Durazane(TM)1800(Merck Life Sciences,インド)を、1:1の質量比で、磁気撹拌下で3L丸底フラスコ内のTHF(Sigma-Aldrich,Gillingham,英国)に室温で加えた。上記容器の高さは24.3cm、幅は18.8cmであり、高い曲率を有し、ネックの開口部の径は2.5cmであった。還流凝縮器もガスラインも取り付けなかった。
均一化の後、テトラブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)1MのTHF(Sigma Aldrich,Gillingham,英国)液を滴下により添加した。大きな気泡により表面が広く阻害されることなく全体表面が気泡により覆われることで定義される、過剰量のH2ガスの放出を防止するために添加速度を制御した。添加したTBAF溶液の合計量は、完全な表面気泡の外観に起因して添加がなかった間の時間を含め、おおよそ6時間の経路を通して2.3cm3であった。上記の気泡の上部への触媒の添加は、薄い気泡の膜の過重合を生じさせて不溶性の皮膜の形成を生じさせうる。これは、最終的なTBAF濃度である0.00282Mに相当し、添加速度は0.00038molh-1であった。TBAF:オリゴシラザン繰り返し単位の最終的なモル比は0.000356であった。
【0014】
ガスの放出が終了するまで混合物を撹拌させた。さらなるガスの放出が発生していないことを確認するため、最後に0.1cm3のTBAF溶液を添加した。
Ca(BH42・2THF(Sigma Aldrich,Gillingham,英国)を、懸濁液としてF-に対して1.5:1のモル比でTHF(おおよそ5cm3)に添加した。上記懸濁液を10分間撹拌した後、濾過して凝集物を除去し、濾液を回収して、合成後そのまま溶液でコンポジット用途に使用した。
(実施例2)
300gのオリゴシラザン、Durazane(TM)1800を、実施例1に記載のとおりにTBAF 1MのTHF(1.7cm3)液及びCa(BH42・2THFを用いて処理した。これは最終的なTBAF濃度である0.00278Mに相当し、添加速度は0.00028molh-1であった。TBAF:オリゴシラザン繰り返し単位の最終的なモル比は0.000351であった。次に、800~300mBarの間の圧力でロータリーエバポレーター内で85℃で淡黄色油状物が得られるまで、上記溶液を濃縮した。これは、室温への冷却により、淡色のガラス状固体に固体化した。
【0015】
(実施例3)
400gのオリゴシラザン、Durazane(TM)1800を、実施例1に記載のとおりにTBAF及びCa(BH42・2THFを用いて処理した。これは最終的なTBAF濃度である0.00282Mに相当し、添加速度は0.00038molh-1であった。TBAF:オリゴシラザン繰り返し単位の最終的なモル比は0.000351であった。
その後、上記懸濁液を濾過して凝集物を除去し、濾液を回収した。次に、淡黄色の液体が得られるまで、ロータリーエバポレーター内で、85℃で、850~700mBarの間の圧力で、合計で15分間、溶液を濃縮した。これは22重量%が保持されたTHF溶媒を含有していた。この液体は粘性の油状物としてコンポジット用途に使用された。
【0016】
(実施例4)
30gのオリゴシラザン、Durazane(TM)1800(Merck Life Sciences,インド)を、1:1の質量比で、磁気撹拌下で、高さが13.5cm、幅が10cmであり、ネックの開口部の径が2.5cmである0.4L丸底フラスコ内のトルエン(Sigma-Aldrich,Gillingham,英国)に室温で加えた。還流凝縮器もガスラインも取り付けなかった。
均一化の後、テトラブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)1MのTHF(Sigma Aldrich,Gillingham,英国)液をトルエンで2倍に希釈した後に滴下により添加した。過剰量のH2ガスの放出を防止するために添加速度を制御した。添加したTBAF溶液の合計量は0.25cm3であった。ガスの放出が終了するまで混合物を撹拌させた。さらなるガスの放出が発生していないことを確認するため、最後に0.05cm3のTBAF溶液を添加した。これは最終的なTBAF濃度である0.00202Mに相当し、添加速度は2.08×10-5molh-1であった。TBAF:オリゴシラザン繰り返し単位の最終的なモル比は0.000258であった。
【0017】
Ca(BH42・2THF(Sigma Aldrich,Gillingham,英国)を、懸濁液としてF-に対して1.5:1のモル比でTHF(おおよそ5cm3)に添加した。上記懸濁液を10分間撹拌した後、濾過して凝集物を除去し、濾液を回収して、85℃及び80mBarでロータリーエバポレーター内で濃縮した。室温で淡黄色ゲルが得られた。
(実施例5)
30gのオリゴシラザン、Durazane(TM)1800(Merck Life Sciences,インド)を、1:1の質量比で、磁気撹拌下で、1L丸底フラスコ内のトルエン(Sigma-Aldrich,Gillingham,英国)に室温で加えた。還流凝縮器もガスラインも取り付けなかった。
均一化の後、テトラブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)1MのTHF(Sigma Aldrich,Gillingham,英国)液を滴下により添加した。過剰量のH2ガスの放出を防止するために添加速度を制御した。添加したTBAF溶液の合計量は0.15cm3であった。ガスの放出が終了するまで混合物を撹拌させた。さらなるガスの放出が発生していないことを確認するため、最後に0.05cm3のTBAF溶液を添加した。これは最終的なTBAF濃度である0.00403Mに相当し、添加速度は8.33×10-5molh-1であった。TBAF:オリゴシラザン繰り返し単位の最終的なモル比は0.000516であった。
【0018】
Ca(BH42・2THF(Sigma Aldrich,Gillingham,英国)を、懸濁液としてF-に対して1.5:1のモル比でTHF(おおよそ5cm3)に添加した。上記懸濁液を10分間撹拌した後、濾過して凝集物を除去し、濾液を回収して、85℃及び80mBarでロータリーエバポレーター内で3分間濃縮した。生成物を室温で粘性の淡色液体として回収した。
(実施例6)
実施例3の油状物の層を抽出し、プラスチック剥離フィルムの層に均一に広げた。Torayca COR8112繊維の層をこの油状物層に置いた。押出機及びローリング装置を使用してコーティングを塗布した。追加の繊維の層と油状物とを合計で25枚の繊維プライが積層されるまで順次塗布した。追加の剥離フィルムの層を積層体の最上部に置き、スペーサーにより4.6mmで分隔された2枚のスチール板の間に上記積層体を入れた。作製直後の積層幅は5mmであった。
【0019】
この積層体をオーブン内で160℃の周囲条件で乾燥させ、次にAr(g)中で1280℃で1時間熱分解させた。その後、上記サンプルをASTM C1341にしたがって屈曲させて試験し、エネルギー分散型分光法(Oxford Instruments,Oxford,英国)を次に破砕したセラミックコンポジットのマトリックスに対して走査型電子顕微鏡(SEM)で実施した。
図1:主要な構成物であるSi、C、N及びOのそれぞれの一定数の試験箇所の原子パーセンテージ。合成又は熱分解の最中の汚染物としてOを様々に導入した。実験データポイントに重ね合わせているのは、メジアン及び試験箇所全体で収集されたデータの原子パーセンテージ分布の四分位数範囲を表示する箱ひげ図である。
【0020】
図1から、観測された全ての元素について、位置依存性があり、大量に存在することが明らかである。しかしながら、統計学的な観点で言えば、コンポジット全体において、最大でも無視できる程度の量の酸素が存在する。量が豊富なケイ素に対して、マトリックスの平均化学量論数はSi1±0.481.58±0.610.68±0.570.11±0.11であり、セラミックが、主に一定量のNを含有するSi-Cガラスであり、統計学的に無視できる程度の酸素含有量を有することを示唆している。いくつかの箇所では酸素量が多いが、これは、強度試験又は十分に乾燥していない不活性ガスの供給に起因する熱分解の最中に形成される、酸素が豊富な局在領域に起因するとみられる。前駆体の全体的な加水分解は、ここで観測されたものと比較して、平均酸素含有量の大幅な上昇として現れうる。このように、本発明の方法は、多くの手続き上の非効率性、及び、感気性化学薬品の取扱方法に伴う大スケール化を阻害する複雑化要因なく最小限の酸素含有量でSi-C-Nセラミックスを製造することができると考えられる。
(実施例7)
実施例6に記載の方法に沿って6つの追加のコンポジットサンプルを作製した。これらのコンポジット及びそれらの成分の質量を表1に示す。
【0021】
【表1】

前駆体の平均セラミック収率は74±4%であると算出された。そのばらつきは、熱処理炉の全ての箇所においてガスの流量及び温度が一貫していないことに起因するとみられる。
【0022】
(比較例1)
オリゴシラザンと、Durazane(TM)1800(Merck Life Sciences,インド)とTHF(Sigma Aldrich,Gillingham,英国)との混合物を幅及び開口部の直径の両方が11cmである広縁の皿で調製し、ガラス棒で均一になるまで混合した。合計量はおよそ10mlであった。強く撹拌しながら、数滴のTBAF(1MのTHF液)を混合物に添加した。上記流体は、多量のガスを発生させ、不溶性の白くもろい凝集物を形成した。
図1
図2
図3
【国際調査報告】