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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】涙液分泌を刺激する装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20250220BHJP
   A61F 9/00 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
A61F9/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546027
(86)(22)【出願日】2023-02-05
(85)【翻訳文提出日】2024-09-25
(86)【国際出願番号】 IL2023050124
(87)【国際公開番号】W WO2023148741
(87)【国際公開日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】290389
(32)【優先日】2022-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(31)【優先権主張番号】294455
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(31)【優先権主張番号】18/159,978
(32)【優先日】2023-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524287820
【氏名又は名称】デマオド エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】DEMAOD LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】シャヴィト,ローネン
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082PA02
4C082PC07
4C082PE10
(57)【要約】
様々な実装では、網膜に光を放射することでユーザの目の涙腺および任意選択でマイボーム腺を刺激する装置は、制御部と、制御部に接続されてユーザが見る方向に配置される光学システムとを含むことができる。光学システムは少なくとも1つの光源を含むことができて、少なくとも1つの光源によりユーザの目へ光刺激パルスを与えるよう構成することができる。また、装置の実装は、制御部および/または光学システムへ電力を供給する電力供給装置も含むことができる。光刺激パルスは、瞳孔対光反射と、まばたき反射、角膜反射、威嚇反射、流涙反射、から選択される1つまたは複数の反射とを活性化する。装置が動作モードにある場合、少なくとも1つの光源により放射される光パルスと目の周りの光の間の光強度勾配は2ルーメン以上に維持しうる。光刺激パルスはユーザの目のまばたきを誘発しうる。
【選択図】 図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
網膜に光を放射することでユーザの目の涙腺および任意選択的にマイボーム腺を刺激する装置であって、
制御部と、
前記制御部に接続されて前記ユーザが見る方向に配置される光学システムであって、少なくとも1つの光源を含み、前記少なくとも1つの光源により前記ユーザの前記目へ光刺激パルスを与えるよう構成されている光学システムと、
前記制御部および/または前記光学システムへ電力を供給する電力供給装置と、を備え、
前記光刺激パルスは、瞳孔対光反射と、
まばたき反射、
角膜反射、
威嚇反射、
流涙反射、
から選択される1つまたは複数の反射と、を活性化し、
前記装置が動作モードにある場合、前記少なくとも1つの光源により放射される前記光パルスと前記目の周りの光との間の光強度勾配は少なくとも2ルーメンに維持され、前記光刺激パルスは前記ユーザの前記目のまばたきを誘発する、
装置。
【請求項2】
前記制御部は前記光学システムに有線または無線で接続されるパソコン、ノートパソコン、タブレット、携帯電話、またはマイクロプロセッサである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電力供給装置は前記光学システムと一体化されている、または前記光学システム内に配置されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記電力供給装置は前記制御部と一体化されている、または前記制御部内に配置されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
前記電力供給装置は前記制御部に接続される、および/または電線を介して前記装置に接続される外部電力供給装置である、請求項1または2に記載の装置。
【請求項6】
前記装置をヘッドセットまたは通常の眼鏡もしくはサングラスに解除可能に結合する結合手段をさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は、携帯電話と相互接続されて前記携帯電話を収容するよう構成されているヘッドセットとして構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの光源は、350nm~750nmの波長帯域の可視スペクトルで光を放射する、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記制御部により操作可能な音源をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記制御部により操作可能な振動源をさらに備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記制御部により操作可能なまつ毛の乱れを作る手段をさらに備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、前記ユーザの視線上に配置されて前記電力供給装置に電気的に接続される回転要素であって、光が前記ユーザの前記目へ向かって前記回転要素の外側表面に配置された管腔を通過できるよう構成されている回転要素をさらに備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記ユーザの前記目へ向かう気流を与える手段をさらに備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記ユーザの前記目へ向けて水滴を与える手段をさらに備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記光学システムは、前記制御部により操作可能で前記電力供給装置により電力供給される遮光要素をさらに備え、前記遮光要素は前記装置が前記動作モードである間は前記ユーザの前記目を光から遮る、および遮らないようにするよう構成される、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記装置はさらに、音源、振動源、まつ毛の乱れを作る手段、回転要素、気流を与える手段、水滴を与える手段、および遮光要素、のうちの少なくとも2つの組み合わせを備える、請求項1から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記装置は、前記目の前記光刺激パルスへの反応を撮影して分析のために撮影データを前記制御部へ転送するカメラをさらに備える、請求項1から16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記制御部は、前記ユーザの顔に配置可能な、仮想現実(VR)ヘッドセット、拡張現実(AR)ヘッドセット、複合現実(MR)ヘッドセット、または任意の他のスマートヘッドセット装置と相互接続されるよう構成される、請求項1から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記制御部はさらに、前記スマートヘッドセット装置と相互接続されて、前記ユーザの前記目へ向かって前記ユーザの前記目のまばたきを誘発する写真のシーケンスを所望のパターンで表示するようプログラムされる、請求項15に記載の装置。
【請求項20】
まばたき反射、および瞳孔対光反射は、前記装置が前記目や瞼に直接接触することなく活性化される、請求項1から19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
網膜に光を放射することでユーザの目の涙腺および任意選択でマイボーム腺を刺激する装置であって、
制御部と、
前記制御部に接続されて前記ユーザが見る方向に配置される光学システムであって、少なくとも1つの光源を含み、前記少なくとも1つの光源により前記ユーザの前記目へ光刺激パルスを与えるよう構成されている光学システムと、
前記制御部および/または前記光学システムへ電力を供給する電力供給装置と、
を備え、
前記光刺激パルスは、瞳孔対光反射と、
まばたき反射、
角膜反射、
威嚇反射、
流涙反射、
から選択される1つまたは複数の反射と、を活性化し、
前記装置が動作モードにある場合、前記少なくとも1つの光源により放射される前記光パルスと前記目の周りの光との間の光強度勾配は少なくとも2ルーメンに維持され、前記光刺激パルスは前記ユーザの前記目のまばたきを誘発し、前記まばたきはさらに、涙液の産生を誘発するマイバム分泌を誘発する、
装置。
【請求項22】
ユーザの目の涙腺および任意選択でマイボーム腺を刺激するキットであって、
請求項1から6および8から21のいずれか一項に記載の装置と、
前記装置を通常の眼鏡またはサングラスに解除可能に結合する結合手段と、
を備える、キット。
【請求項23】
ユーザの目の涙腺および任意選択でマイボーム腺を刺激するキットであって、
携帯電話と相互接続されて前記携帯電話を収容するよう構成されているヘッドセットとして構成される、請求項7に記載の装置と、
サービス提供者へのアクセスコードと、
を備え、
動作中は、前記サービス提供者は前記携帯電話を操作して網膜に光刺激パルスを放射し、前記瞳孔対光反射と、
まばたき反射、
角膜反射、
威嚇反射、
流涙反射、
から選択される1つまたは複数の反射と、を活性化し、
前記携帯電話が動作モードにある場合、前記少なくとも1つの光源により放射される前記光パルスと前記目の周りの光との間の光強度勾配は少なくとも2ルーメンに維持され、前記光刺激パルスは前記ユーザの前記目のまばたきを誘発する、キット。
【請求項24】
ユーザの目の涙腺および任意選択でマイボーム腺を刺激するキットであって、
前記ユーザの顔に適合して携帯電話を収容するよう構成されている取付け構造と、
サービス提供者へのアクセスコードと、
を備え、
動作中は、前記サービス提供者は前記携帯電話を操作して前記ユーザの網膜に光刺激パルスを放射し、前記瞳孔対光反射と、
まばたき反射、
角膜反射、
威嚇反射、
流涙反射、
から選択される1つまたは複数の反射と、を活性化し、
前記携帯電話が動作モードにある場合、前記少なくとも1つの光源により放射される前記光パルスと前記目の周りの光との間の光強度勾配は少なくとも2ルーメンに維持され、前記光刺激パルスは前記ユーザの前記目のまばたきを誘発する、キット。
【請求項25】
網膜に光を放射することでドライアイを刺激する方法であって、
ユーザの目の顔領域の付近にある前記ユーザの前記目の涙腺および任意選択でマイボーム腺を刺激するのに装置を利用するステップであって、前記装置は、
制御部と、
前記制御部に接続されて前記ユーザが見る方向に配置される光学システムであって、少なくとも1つの光源を含み、前記少なくとも1つの光源により前記ユーザの前記目へ光刺激パルスを与えるよう構成されている光学システムと、
前記制御部および/または前記光学システムへ電力を供給する電力供給装置と、
を備える、前記装置を利用するステップと、
前記少なくとも1つの光源により光パルスを生成して、前記光パルスを前記ユーザの前記目に向けて放射するステップと、
前記網膜に光を放射するステップと、
瞳孔対光反射と、まばたき反射、角膜反射、威嚇反射、流涙反射、から選択される1つまたは複数の反射とを活性化するステップと、
涙液の産生を誘発するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概してドライアイ疾患に関し、特に涙液分泌を刺激する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライアイは、不充分な涙液産生または過剰な涙液蒸発による涙液層の疾患と定義される。症状は、軽度の不快感、様々な強度の焼けるような痛み、異物感、乾燥、光恐怖症として現れることがある。重症例では、この疾患は進行して角膜組織に影響を与えて、潰瘍、浸潤物、視覚障害となりうる。加齢および女性はドライアイ疾患の危険因子である。年齢に関係なく、男性の約2倍の女性がドライアイを患っている。加齢の過程がドライアイ疾患(DED)に大きく影響を与えるようである。
【0003】
DEDを患う眼の表面における加齢による変化は、涙腺(LG)およびマイボーム腺(MG)における生物学的変化に関連する。涙腺は、涙液層の水層を分泌する、各目に一つの一対の外分泌腺である。人間では、涙腺は各眼窩の外側上縁領域、前頭骨により形成されている涙腺窩の中に位置する。涙腺(LG)は、目の生理の維持、および目の疾病に直接影響を与える加齢に関連する変化において極めて重要な役割を果たしている。加齢における免疫系の機能不全は、抗体、サイトカイン、タンパク質、およびビタミンの定量的変化および定性的変化をもたらす。涙液層は以下のようなタンパク質および他の化学的分子を数十から数百含む:電解質(ナトリウム、カリウム、塩化物、重炭酸塩、マグネシウム、カルシウム)、タンパク質(リゾチーム、ラクトフェリン、リポカリン、IgA、EGF、他の成長因子など)、脂質、ムチン、ビタミン。
【0004】
老化した涙腺は、涙液層の初期の化学組成に影響を与え、その結果、眼および瞼の機能に影響を与える。涙腺の老化の一つの側面は免疫系の緩やかな減退であり、低いレベルの炎症と老化の仕組みの間の相互経路により自己免疫が増加する。涙腺の老化は、機能的変化、神経支配の減少、分泌活性の減少に関連する。リンパ球の浸潤、破壊、腺実質の委縮、膵管拡張、および炎症性メディエータの分泌は、涙液の体積および組成を変化させる。
【0005】
マイボーム腺(眼瞼腺、瞼板腺、眼瞼結膜線とも呼ばれる)は、瞼板内部の瞼の縁に沿った皮脂腺である。マイボーム腺は、マイバムという目の涙液層の蒸発を防ぐ油性物質を作る。
【0006】
TFOS-IIによると、ドライアイ疾患は2つの種類に分類される、すなわち、涙液不足型と涙液蒸発型である。ほとんどの場合、涙液不足型は涙腺の機能不全の結果である。蒸発型ドライアイは、マイボーム腺機能不全と関連している。(J.P. Craig, K.K. Nichols, E.K. Akpek, B. Caffery, H.S. Dua, C. Joo, MD, Z. Liu, J.D. Nelson, J.J. Nichols, K. Tsubota, F. Stapleton, TFOS DEWS II Definition and Classification Report, The Ocular Surface Volume 15, Issue 3, July 2017, Pages 276-283, https://doi.org/10.1016/j.jtos.2017.05.008)
【0007】
Darttによると、涙腺の活性化も角膜上皮および結膜上皮の知覚神経の活性化により制御される(D.A. Dartt, Neural Regulation of Lacrimal Gland Secretory Processes: Relevance in Dry Eye Diseases, Prog Retin Eye Res. 2009 May; 28(3): 155-177. doi:10.1016/j.preteyeres.2009.04.003)。Darttから引用すると、「涙腺分泌を調節する涙腺機能部の第1部分は、角膜上皮および結膜上皮の知覚神経の活性化である。目の表面上皮には環境の変化に反応する知覚神経末端が豊富に存在して涙腺液を急速に分泌し、涙液層に入った異物を洗い流し、化学的に中和する。角膜の知覚神経を刺激することで、涙腺で体液が分泌されて、血管拡張が起こる。涙腺の体液分泌は血管拡張に依存し、血流が増加すると分泌が増強され、血流が減少すると刺激による分泌が抑制される。」。Darttは、涙腺の血管拡張と体液分泌とを結合するのに関与している仕組みは不明であると述べている。
【0008】
アメリカ国立眼研究所(US National Eye Institute)によりDEDを治療するのに提案されている従来の治療は、以下を含む:市販の点眼薬(人工涙液)または保湿ジェルと抗炎症局所製剤、シクロスポリン(Restasis)やリフィテグラスト(Xiidra)などの処方薬、並びに、煙、風や空調の回避といった生活様式の変更。
【0009】
伝統的な家庭療法は、温湿布を目に当てることである。Butcherなど(BUTCHER EO, COONIN A. The physical properties of human sebum. J Invest Dermatol. 1949 Apr;12(4):249-54. PMID: 18120703.)によると、人間の皮脂の粘度と温度の関係は線形で近似可能である。37℃では粘度は約600ミリポアズであり、27℃では粘度は約1000ミリポアズであり、マイバムは皮脂とほぼ同じなので、マイバムが瞼の皮膚に接触することによるわずかな加熱であってもマイバムの粘度は大幅に減少しうるので、マイボーム腺の中でのマイバムの流れを改善することが可能で、ドライアイおよびマイボーム腺機能不全(MGD)の症状が軽減されると結論付けることが可能である。上皮層の瞼皮膚の加熱は、Alcon Systane(登録商標) iLux2(登録商標)により以前提起された直接接触により行うことができる。別の事例で、熱と圧力を組み合わせることは、JNJ Lipiflowにより示されたものと同様の結果をえることを目的としている。Lipiflowを用いることで瞼は約40℃まで熱せられるので、マイバムの温度は上昇し、マイバムの粘度が変化する。このように、マイバムをより流動性があるようにすることでMGDは軽減される。より低い粘度のマイバムと、装置により加えられる外部からの圧力を組み合わせることで、容易に流動可能なマイバムが与えられ、マイバムの流れが回復する。
【0010】
多くの特許公報がこの伝統的療法に基づく装置を提案しており、そのうちの一つは米国特許出願公報第20180344512号でドライアイ治療装置について記述しており、この装置は上眼瞼および/または下眼瞼の皮膚に貼られて、対象者の瞼の下の皮膚の中に含まれる1つまたは複数のマイボーム腺に熱、または他の形態のエネルギーを与える、パッチまたはストリップを備える。更なる装置が中国特許出願公開第102846423号明細書、特許5137956号公報、米国特許出願公開第20200146881号明細書、米国特許出願公開第20210052216号明細書で開示されている。
【0011】
当技術分野で既知の、別のドライアイ治療法は、目の中に埋め込まれた電極を用いた涙腺への電気的な神経刺激を提案している。そのような埋め込み物は、欧州特許第3349848号明細書、国際出願第2017072575号明細書、米国特許出願公開第20180116872号明細書、国際出願2020198444号明細書、国際出願2021086924号明細書で記述されている。これは侵襲的方法であり、誰にでも合うわけではない。米国特許出願公開第2021138232号明細書は、急性の顔面麻痺(ベル麻痺やドライアイ症候群)を患う人などでまばたきを人工的に引き起こすための顔面神経刺激などの経皮神経刺激について記述している。米国特許出願公開第20150100001号明細書は、目の状態を治療する治療用超音波装置を開示している。
【0012】
特許4242195号公報は、涙腺を刺激することで涙液の分泌を促進する光学的治療機器を開示している。この機器は、瞼の上部の涙腺の近辺に接触した際にその先端から光を照射するプローブを備える。プローブはタッチセンサを備え、治療は眼球に照射することなく行われる。
【0013】
マイボーム腺を分析するため、マイボーム腺を画像化するための赤外光(IR)の瞼への照射が米国特許出願公開第20140330129号明細書および韓国特許第101776226号明細書で開示されている。
【0014】
韓国特許出願公開第1020210027842号明細書は装着可能な眼科用治療装置を開示しており、この装置はユーザの頭に装着可能な部品と、ユーザの瞼の組織に吸収される波長を有する光を照射する光照射部と、を備える。光照射部により照射される治療用光は瞼の組織に吸収され、ドライアイ症候群を治療するための熱エネルギーに変換されて、分泌経路に形成された脂質残留物や老廃物を溶解し、排出経路を確保する。治療用光は、脂質に非常によく吸収される特性を有する波長帯域(900nm~950nm、または1140nm~1260nm)を有する。装置は、患者が瞼を動かす状況に応じて治療を行えるように、リアルタイムの瞼の位置情報を検出する検出部を含む。
【0015】
したがって、ドライアイ症候群を治療するための先行技術の方法および装置は、以下のうちの一つを提案している:
・日中に何度も眼へ投与する必要があり、通常長期ではその効力を失う医薬組成物
・医療用の埋め込み物
・涙腺および/またはマイボーム腺を人工的に刺激して涙液または皮脂を分泌するために、熱エネルギーへと変換される光エネルギーを伝達することで瞼または涙腺および/もしくはマイボーム腺の近辺の皮膚を治療する医療機器。治療は主に、眼球が覆われていてプローブを皮膚に直接接触させる必要がある場合に提供される。
【0016】
これが本発明の出発点である。それゆえ、本発明の目的は、DEDを治療するための代替の選択肢を提案することである。本発明は、涙腺および/またはマイボーム腺をより自然な方法で刺激する装置を提供することを目的としている。一方では使用するのが安全で簡単であり、他方では身体にストレスを与えたり組織を傷つけたりしない装置である。さらに、本発明の装置の一部の実施形態は、ユーザは使用中に仮想現実を体験するので、ユーザが治療計画を順守するのに寄与しうる。また、本発明は、腺機能のバランスを取り戻して、涙腺およびマイボーム腺の両方の正常な機能に必要な涙液の当初の化学組成に少なくとも部分的に戻すために、まばたき反射および流涙反射を活性化するのを目的としている。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、ユーザの目の涙腺および/またはマイボーム腺を刺激する装置に関する。
【0018】
網膜に光を放射することで、装置は涙液の化学組成を変化させることができて、老化した涙腺を再活性化することでマイバムを激しく分泌させることができる。装置は、制御部と、前記制御部に接続されてユーザが見る方向に配置される光学システムとを含む。光学システムは少なくとも1つの光源を含み、少なくとも1つの光源によりユーザの目へ光刺激パルスを与えるよう構成される。また、装置は前記制御部および/または前記光学システムへ電力を供給する電力供給装置も含む。刺激パルスは、瞳孔対光反射と、まばたき反射、角膜反射、威嚇反射、流涙反射、から選択される1つまたは複数の反射とを活性化する。これらの反射のうち一つずつ、またはこれらと瞳孔対光反射の組み合わせを活性化することで、眼へ損傷を与える可能性が回避される。さらに、そのような活性化によりユーザの目のまばたきを誘発することで涙液機構の自己調整を促し、涙液の自然分泌とドライアイ症状の軽減をもたらす。また、装置は涙腺の能力を改善して、より化学的にバランスの取れたタンパク質およびビタミンAなどの他の分子を増殖させることができる。加えて、まばたき反射、および瞳孔対光反射は、眼や瞼に直接接触することなく活性化されることは強調されるべきである。
【0019】
本発明の一態様では、網膜に光を放射することでユーザの目の涙腺および/またはマイボーム腺を刺激する装置が提供され、この装置は、
制御部と、
前記制御部に接続されてユーザが見る方向に配置される光学システムであって、少なくとも1つの光源を含み、前記少なくとも1つの光源によりユーザの目へ光刺激パルスを与えるよう構成されている光学システムと、
前記制御部および/または前記光学システムへ電力を供給する電力供給装置と、
を備え、
前記光刺激パルスは瞳孔対光反射と、
まばたき反射、
角膜反射、
威嚇反射、
流涙反射、
から選択される1つまたは複数の反射とを活性化し、
前記装置が動作モードにある場合、前記少なくとも1つの光源により放射される光パルスと目の周りの光の間の光強度勾配は少なくとも2ルーメンに維持され、前記光刺激パルスは前記ユーザの目のまばたきを誘発する。装置は眼または瞼と物理的接触することなく動作する。本発明の一実施形態は、可視光に限定される波長を使用する、非熱的装置でありうる。
【0020】
1つまたは複数の実施形態では、制御部は前記光学システムに有線または無線で接続されるパソコン、ノートパソコン、タブレット、携帯電話、またはマイクロプロセッサとすることができる。制御部は、光学システムと、装置に一体化された任意の他の刺激パルスおよび刺激成分を作動させるようプログラムされる。1つまたは複数の実施形態では、電力供給装置は光学システムと一体化する、または光学システム内に配置することができる。他の実施形態では、電力供給装置は制御部と一体化する、または制御部内に配置することができて、また光学システムへ電力を供給することができる。装置の別の実施形態は、外部電力供給装置、またはさらに電線/アダプタを介して内部電源へのプラグに接続するよう構成することができる。
【0021】
1つまたは複数の実施形態では、装置はさらに、ヘッドセットまたは通常の眼鏡もしくはサングラスに装置を解除可能に結合する結合手段を備えることができる。一部の別の実施形態では、装置は、携帯電話と相互接続されて携帯電話の表示画面がユーザの目を向いているように携帯電話を収容するよう構成されているヘッドセットとして構成される。1つまたは複数の実施形態では、少なくとも1つの光源は、350nm~750nmの波長帯域の光を放射する。一部の実施形態では、光源は、目が耐えられるようになるのを防ぐために、ランダムなパターンで光刺激パルスを与える。光源は、ユーザを驚かせるランダムなパターンで光刺激パルスを生成する。1つまたは複数の実施形態では、光学システムは、レンズ、調整可能レンズ、および/またはレンズ調整機構をさらに備える。
【0022】
1つまたは複数の実施形態では、装置はさらに、制御部により操作可能な音源を備えることができる。1つまたは複数の実施形態では、装置はさらに、制御部により操作可能な振動源も備えることができる。1つまたは複数の実施形態では、装置は、制御部により操作可能なまつ毛の乱れを作る手段をさらに備える。1つまたは複数の実施形態では、装置はさらに、ユーザの視線上に配置されて前記電力供給装置に電気的に接続される回転要素であって、光が前記ユーザの目へ向かってその外側表面に配置された管腔を通過できるよう構成されている回転要素を備えることができる。
【0023】
1つまたは複数の実施形態では、装置はさらに、ユーザの目へ向かう気流を与える手段を備えることができる。1つまたは複数の実施形態では、装置はさらに、ユーザの目へ向けて水滴を与える手段を備えることができる。1つまたは複数の実施形態では、光学システムはさらに、制御部により操作可能で電力供給装置により電力供給される遮光要素を備え、この遮光要素は装置が動作モードである間はユーザの目を光から遮る、および遮らないようにするよう構成される。1つまたは複数の実施形態では、装置はさらに、以下のうちの少なくとも2つの組み合わせを備える:音源、振動源、まつ毛の乱れを作る手段、回転要素、気流を与える手段、無菌または非無菌の液滴、つまり水、生理食塩水、注入用の水を与える手段、および遮光要素。
【0024】
1つまたは複数の実施形態では、装置はさらに、眼の刺激パルスへの反応を撮影して分析のために撮影データを制御部へ転送するカメラを備えることができる。1つまたは複数の実施形態では、制御部は、ユーザの顔に配置可能な、仮想現実(VR)的なヘッドセット、拡張現実(AR)的なヘッドセット、複合現実(MR)的なヘッドセット、または任意の他のスマートヘッドセット装置と相互接続されるよう構成される。1つまたは複数の実施形態では、制御部はさらに、前記スマートヘッドセット装置と相互接続されて、ユーザの目へ向かってパルスのシーケンス、および/またはユーザの目のまばたきを誘発する写真のシーケンスを所望のパターンで表示するようプログラムされる。
【0025】
本発明は、一部の実施形態ではドライアイを刺激するキットに関する。本発明の一部の実施形態では、ユーザの目の涙腺および/またはマイボーム腺を刺激するキットは、ユーザの目の涙腺および/またはマイボーム腺を刺激する装置と、装置を通常の眼鏡またはサングラスに解除可能に結合する結合手段とを含む。一部の実施形態では、装置は、制御部と、制御部に接続されてユーザが見る方向に配置される光学システムとを含む。光学システムは少なくとも1つの光源を含み、少なくとも1つの光源によりユーザの目へ光刺激パルスを与えるよう構成され、また光学システムは制御部および/または光学システムへ電力を供給する電力供給装置を含む。光刺激パルスは、瞳孔対光反射と、まばたき反射、角膜反射、威嚇反射、流涙反射、から選択される1つまたは複数の反射とを活性化する。前記装置が動作モードにある場合、少なくとも1つの光源により放射される光パルスと目の周りの光の間の光強度勾配は少なくとも2ルーメンに維持され、光刺激パルスはユーザの目のまばたきを誘発する。
【0026】
加えて、本発明の別の実施形態では、ユーザの目の涙腺および/またはマイボーム腺を刺激するキットは、ユーザの目の涙腺および/またはマイボーム腺を刺激する装置を含み、この装置は携帯電話と相互接続されて携帯電話を収容するよう構成されているヘッドセットとして構成される。加えて、このキットはサービス提供者へのアクセスコードをさらに含む。動作中は、サービス提供者は、携帯電話を操作してユーザの網膜に光刺激パルスを放射し、瞳孔対光反射と、まばたき反射、角膜反射、威嚇反射、流涙反射、から選択される1つまたは複数の反射とを活性化する。携帯電話が動作モードにある場合、少なくとも1つの光源により放射される光パルスと目の周りの光の間の光強度勾配は少なくとも2ルーメンに維持され、光刺激パルスはユーザの目のまばたきを誘発する。サービス提供者は携帯電話用のアプリを提供する、またはウェブサイトを介してプログラムを動作させることができる。
【0027】
本発明の一態様は、網膜に光を放射することでドライアイを刺激する方法に関し、この方法は、
ユーザの目の顔領域の付近にあるユーザの目の涙腺および/またはマイボーム腺を刺激するのに装置を利用するステップであって、前記装置は、
制御部と、
前記制御部に接続されてユーザが見る方向に配置される光学システムであって、少なくとも1つの光源を含み、ユーザの目へ光刺激パルスを与えるよう構成されている光学システムと、
前記制御部および/または前記光学システムへ電力を供給する電力供給装置と、
を備える前記装置を利用するステップと、
前記少なくとも1つの光源により光パルスを生成して、前記光パルスを前記ユーザの目に向けて放射するステップと、
網膜に光を放射するステップと、
瞳孔対光反射と、まばたき反射、角膜反射、威嚇反射、流涙反射、から選択される1つまたは複数の反射とを活性化するステップと、
前記ユーザの目のまばたきを誘発するステップであって、前記装置が動作モードにある場合、前記少なくとも1つの光源により放射される光パルスと目の周りの光の間の光強度勾配は少なくとも2ルーメンに維持され、前記光刺激パルスは前記ユーザの目のまばたきを誘発する、誘発するステップと、
を含む。一部の実施形態では、方法は、目が耐えられるようになるのを防ぐために、ランダムなパターンで光刺激パルスを生成するステップを含む。具体的には、光源は、ユーザを驚かせるランダムなパターンで光刺激パルスを生成する。1つまたは複数の実施形態では、光学システムは、レンズ、調整可能レンズ、および/またはレンズ調整機構をさらに備える。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の一部の実施形態は、本明細書では添付の図面を参照して単に例として説明される。本発明の他の装置、方法、特徴、および利点は、以下の詳細な説明を精査することで当業者には明確となるであろう。図面に示される構成部品は必ずしも縮尺どおりではなく、本発明の重要な特徴をより良く示すために誇張されていることがある。
図1A】概して100で参照される、開示される発明の好ましい実施形態に従って構成され、動作する、涙腺および/またはマイボーム腺、ならびに網膜を刺激する装置を着用しているユーザの側面斜視図である。
図1B】(図1Aで示される)光学システム103の側面図である。
図2A】本発明に係る装置の更なる実施形態の、ユーザの目から見た内側パネルを模式的に示す。
図2B図2Aに示される装置の一実施形態の上から見た断面図である。
図3】本発明に係る装置の更なる実施形態の、ユーザの目から見た内側パネルを模式的に示す。
図4A図4Aは、本発明の一態様に係る回転要素を含む例示の装置の概念図を示す。図4Aは、内側パネルの図である。図4Bは、図4Aに示される装置の断面A-Aを示す。図4Cは、図4Aの回転要素402を示す。
図4B図4Bは、本発明の一態様に係る回転要素を含む例示の装置の概念図を示す。図4Aは、内側パネルの図である。図4Bは、図4Aに示される装置の断面A-Aを示す。図4Cは、図4Aの回転要素402を示す。
図4C図4Cは、本発明の一態様に係る回転要素を含む例示の装置の概念図を示す。図4Aは、内側パネルの図である。図4Bは、図4Aに示される装置の断面A-Aを示す。図4Cは、図4Aの回転要素402を示す。
図5図4Aに示される実施形態とは別の、本発明の一態様に係る実施形態を模式的に示す。
図6】本発明の一態様に係る、気流および/または水滴が用いられる本発明の一実施形態を模式的に示す。
図7】眼鏡に組み付けられた場合の本発明の例示の実施形態の概略構成を模式的に示す。
図8】本発明の装置と共に使用可能な、例示の光学システムの光システムパルス特性を示す。
図9】本発明の一態様に係る、制御部により操作可能な振動源を含む、本発明の一実施形態を模式的に示す。
図10】概して1000で参照される、開示される発明の好ましい実施形態に従って構成され、動作する、涙腺および/またはマイボーム腺を刺激する装置を着用しているユーザの正面斜視図である。
図11】開示される発明の好ましい実施形態に係る、光のドライアイに対する治療効果を提示する概略フローチャートを与える。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の開示は様々な実施形態または実施例を提供する。構成要素および配置の具体例が図面に示され、本開示を平易にして理解を容易とするために以下で説明される。これらはもちろん例に過ぎず、限定することは意図していない。したがって、本発明は具体的に説明される製品および方法には限定されず、本発明の範囲全体から逸脱することなく、様々な用途に適合させることが可能である。加えて、本開示は、様々な例において参照番号および/または参照文字を繰り返すことがある。この繰り返しは簡潔さおよび明確さを目的としており、それ自体では論じられる様々な実施形態および/または構成の間の関係を決定づけることはない。
【0030】
本開示は、眼そのもの、眼または瞼の付近の皮膚と直接物理的接触することなく、涙液分泌を刺激するよう設計されている新しい装置の複数の実施形態を以下で提示する。装置は刺激パルスを目に向けて放射することで、瞳孔対光反射と、まばたき反射、角膜反射、威嚇反射、流涙反射、から選択される1つまたは複数の反射とを活性化し、そのような活性化は涙液分泌を誘発する。
【0031】
反射は、刺激に対する身体の自動的な動作である。反射の解剖学的経路は、求心性神経(または知覚神経)、中枢神経系内の通常は1つまたは複数の介在ニューロン、および遠心性神経(運動神経、分泌神経、分泌促進神経)で構成される。瞳孔対光反射はよく知られた反射である。光が一方の目の近くで光った場合、両方の目の瞳孔が収縮する。光は刺激であり、インパルスが視神経を介して脳へ到達して、視力を提供する自律神経により反応が瞳孔の筋肉組織へ伝達される。瞳孔対光反射は視覚的認識により変調された、光への反応である。したがって、本開示で提示されるような間接的な光治療の有効性を高めるのは重要である。瞳孔対光反射は眼に入射する光量を制御し、それゆえ光パルスにおいて、この反射を活性化する重要性は、まばたき反射は光により活性化されるにも関わらず、装置が作動された場合に眼の網膜に損傷を与える可能性を防ぐ上で瞳孔対光反射は重要であるという事実の上に成り立っている。
【0032】
目に関わる別の反射は流涙反射である。何かが目の結膜または角膜を刺激すると、流涙反射により、神経インパルスが第5脳神経(三叉神経)に沿って流れて、中脳に到達する。この反射弓の輸出脚は自律神経、主に副交感神経による。これらの神経線維が眼窩の涙腺を刺激して、涙液を流出させる。
【0033】
まばたき反射は、大きな音や閃光などの外部刺激、予め規定されたシーン、額の上でのタップ、またはまつ毛を直接的または間接的に「刺激する」ことで引き起こされる。
【0034】
威嚇応答は、物体の急速な接近に対して起こるまばたき反射である。威嚇反射は、潜在的な損傷から目を保護するために瞼のまばたきを含む。潜在的な損傷は、現実、つまり目に向けての要素の潜在的動作、または仮想的のいずれかでありうる。人間の脳が視覚効果を目への潜在的な現実の脅威と解釈すると、脳は現実の脅威がまったくない場合でも同様に反応する。たとえば、ビデオを作る一連のフレーム、たとえばシステムのユーザへ向けてのパンチや、自動車が装置の外へ出てユーザの顔へ向かうカーチェイスが、仮想物体と目の間に実際の接触がないにも関わらず、威嚇反射をもたらしうる。
【0035】
角膜反射は、角膜の触覚刺激に応答して両方の目にまばたきを行わせる。角膜は第1物質であるので、刺激物または異物が眼に接触した場合、刺激物または異物が角膜に触れる。角膜への接触により角膜反射と涙液産生が始まる。感覚刺激が自由神経終末と角膜の上皮の中にある機械受容器のいずれかに接触すると、反射が活性化される。
【0036】
活性化されると、上述した反射のいずれか一つ、またはその組み合わせが涙腺および/またはマイボーム腺を刺激して、涙液が産出される。さらに、まばたき反射、角膜反射、威嚇反射、流涙反射の任意の組み合わせにより、自発的なまばたき単独よりも強いまばたきが誘発される。そのような強い反応により、涙腺およびマイボーム腺の両方のドライアイ症状を緩和することができる。
【0037】
上記を要約すると、本発明の装置から放射される光パルスが、以下の2つの別々の解剖学的経路を通る神経信号を引き起こす:
1.中脳の視蓋前域核で終端される視索線維
2.自律神経、主に副交感神経の神経経路。
【0038】
さらに、角膜上皮および結膜上皮の知覚神経を活性化し、角膜の知覚神経を刺激することで、涙腺で体液が分泌されて、血管拡張が起こる。角膜の知覚神経の刺激は、叉神経-副交感神経の反射により涙腺を刺激する。
【0039】
開示される装置の一実施形態は、DEDに対する非接触での瞼または眼窩部の治療を提供する。開いた、または閉じられた目に向けて放射される刺激パルスが一連のまばたきを活性化し、これにより涙腺および任意選択でマイボーム腺が再活性化されて、涙液の生成と、涙液機構の自己回復がもたらされる。特に、本発明の装置の使用は、仕事中のコンピュータ画面への長時間の曝露といった環境上の理由でまばたき反射が弱い場合に、有利である。装置の動作中、目は少なくとも一つの光源から放射されるパルスの強度および目の物理的状態に依存して、目は開いているか、または閉じられている。これらの反射は同時に、または次々に活性化されうる。また、特定のパターンおよび刺激の組み合わせを組み合わせる刺激療法を、特定の疾患に対して利用することもできる。網膜は、光を吸収すると化学変化を起こす分子を含む。たとえば、レチノールはレチナールへ変換することができて、レチナールは暗視を可能とするロドプシンに必要な化学物質である。光が眼に入ると、分子は異性化、すなわち、その分子配列に変化が起こることがある。新しい分子形態はタンパク質に同じように適合しないことがあり、タンパク質において一連の構造変化が始まる。
(Chemistry LibreTexts. 2016. Chemistry of vision、オンラインでは以下で入手可能:<https://chem.libretexts.org/Bookshelves/Biological_Chemistry/Supplemental_Modules_(Biological_Chemistry)/Photoreceptors/Chemistry_of_Vision>)
【0040】
本発明の装置はまばたき反射を活性化して涙腺に過剰な涙液産生を行わせ、また涙液層のタンパク質の組成を変化させて、眼と瞼における生化学プロセスに影響を与える。涙液層内のタンパク質の中で、成長因子、他のタンパク質、およびビタミンAなどのビタミンがドライアイのプロセスを制御する上で重要な役割を演じている。
【0041】
定義
本明細書で使用される場合、「ヘッドピース」という用語およびその派生語は、以下の非限定の例のいずれかを指す:ヘッドセット、ヘッドホン、眼鏡、サングラス、またはユーザの頭に装着可能で本発明の装置に結合可能な任意の他の装置。
【0042】
「ユーザ」という用語およびその派生語は、本明細書では、涙腺および/またはマイボーム腺の刺激から利益を得る任意の人、または動物を示すのに用いられる。
【0043】
「目」または「眼」という用語は、本明細書では、ユーザの一方の目/眼、またはユーザの両方の目/眼を示すのに用いられる。
【0044】
本明細書で使用される場合、「仮想現実ヘッドセット」という用語は、「VRヘッドセット」という用語で置き換え可能であり、スマートヘッドセット装置を指す。加えて、この用語、「仮想現実ヘッドセット」は、仮想現実(VR)ヘッドセット、拡張現実(AR)ヘッドセット、複合現実(MR)ヘッドセット、またはユーザの顔に配置可能な任意の他のスマートヘッドセット装置を含む。
【0045】
本明細書で使用される場合、「刺激パルス」という用語およびその派生語は、光パルス、音声パルス、振動パルス、まつ毛の乱れ、気流、またはこれらの任意の組み合わせでまばたき反射、角膜反射、威嚇反射、流涙反射、もしくは瞳孔対光反射から選択される1つ、または複数の反射を活性化するものを含む。
【0046】
本明細書で使用される場合、「涙腺および/またはマイボーム腺を刺激する」という用語は、涙腺のみの刺激、涙腺とマイボーム腺の両方の刺激、および涙腺の刺激に伴ってマイボーム腺が活性化される場合のマイボーム腺のみの刺激、を指す。好ましい意味は、涙腺、および任意選択でマイボーム腺を刺激することである。
【0047】
ここで、概して100で参照される、開示される発明の好ましい実施形態に従って構成され、動作する、涙腺および/またはマイボーム腺を刺激する装置を着用しているユーザの側面斜視図を示す図1Aを参照する。装置100は、ユーザの頭に装着可能なヘッドピースとして構成される。装置100は、電線102を介して光学システム103に接続される制御部101を含む。任意選択で、制御部101は光学システム103への無線接続を含むことができる。制御部101は、光学システム、および刺激パルスを与える、装置に一体化された任意の他の手段を作動させるようプログラムされる。光学システム103は、少なくとも一つの光源(示されていない)によりユーザの目に刺激パルスを与えるよう構成される。光学システム103は、ユーザが見る方向に配置される。光学システム103はさらに、レンズ、調整可能レンズ、および/またはレンズ調整機構(示されていない)を備えることができる。他の実施形態では、光源はランダムなパターンで光刺激パルスを与える。光源は、一斉に光を放射することができる、または結果を得るために所望する多くの構成およびパターンで次々と光を放射することができるLED列を含むことができる。
【0048】
光学システム103は、自己通電できるように電力供給装置をさらに含む。電力供給装置は、バッテリ、放射型電源、または太陽電池パネルを含むことができる。あるいは、光学システム103は制御部から電力供給されてもよい。図1Aに示される実施形態では、電力供給装置は制御部101と一体化されている。ただし、電力供給装置は同様に光学システムと一体化する、または光学システム内に配置することができることに留意されたい。他の実施形態では、装置は外部電力供給装置、またはさらに電線/アダプタを介して内部電源へのプラグに接続するよう構成することができる。
【0049】
図1Bは、光パネル106の配置とユーザの顔に向かう光の方向107を描写している、(図1Aに示される)光学システム103の側面図である。光源は皮膚や瞼に接触しないことに留意されたい。光パネル106は、ユーザのいずれかの目に光を放射する、少なくとも一つの光源を有することができる。ただし、本発明の一部の実施形態は、必要に応じて2つ以上の発光源を含むことができる。光パルスはランダムな配列で放射される。一部の実施形態では、光源は、目が耐えられるようになるのを防ぐために、ランダムなパターンおよびランダムな配列で光刺激パルスを与える。換言すると、光源は、ユーザを驚かせるランダムなパターンで光刺激パルスを生成する。1つまたは複数の実施形態では、光学システムは、レンズ、調整可能レンズ、および/または特定の顔の構造に適合するように水平方向、垂直方向、もしくはそれらの組み合わせに調整可能なレンズ調整機構をさらに備える。
【0050】
光源は可視スペクトル(波長が350nm~750nm)に限定される。装置の一実施形態は、可視光に限定された波長のみを使用可能であることに留意されたい。この実施形態は、IR放射を削減する専用のフィルタおよび他の手段を含むことができる。最大光強度は、Boyuan Yanaなどによる「“Maintaining ocular safety with light exposure, focusing on devices for optogenetic stimulation”, Vision Res. 2016 April; 121: 57-71. doi:10.1016/j.visres.2016.01.006」で記述されているように、光源、パルスのシーケンス、および他の要因に依存する。加えて、米国規格協会(American National Standards Institute、ANSI)によるZ136.1-2000標準は、眼科用装置でのエネルギー量についての詳細を提供する。たとえば、本発明の装置の一部の実施形態は、光源から1cmの距離で測定した際に5ルーメンから2500ルーメンの強度で光を放射することができる。装置は、様々な大きさの装置向けに閉じ込められたチャンバに入ったパルス光源を含むことができることに留意されたい。光源パルスは、光源と周囲の間の光強度勾配は少なくとも2ルーメンでなければいけないという必要条件を維持する。
【0051】
さらに、制御部は、必要な治療に応じた所定のシーケンスで光学システムを動作させるようプログラムすることができる。制御部はさらに、ユーザが自分の目の状態に対して最適な治療を選択するのを可能とする、ユーザーフレンドリーなアプリを備えることができる。そのようなアプリは、コンピュータプログラム、または電話、タブレット、スマートウォッチなどの携帯機器上で動作するよう設計されたアプリケーションソフトとすることができる。任意選択で、制御部は、光学システムが0.1msec(ミリ秒)から10分の間で変動する周期でパルスのシーケンスを生成できるようプログラムされたアルゴリズムを含む。セッションあたりのパルス数は、1パルス~1000パルスで変動するものとする。治療計画は、1日~100日ごとに1治療セッション~20治療セッションを含むものとする。
【0052】
ふたたび図1Aを参照すると、遮光要素104は、光源または光源パネルと目(片目または両目)の間に配置され、光源と周囲の間の光強度勾配を少なくとも2ルーメンに維持するよう構成される。あるいは、装置は暗環境で動作可能であり、これにより、光源と周囲の間の光勾配は期待される同じ光勾配となる。図1Aに示される実施形態では、制御部101は電線によりイヤホン105にも接続される。遮光要素は遮光する目的のためだけに、つまり、まばたきを引き起こすのに必要な充分に暗い環境を提供するために、顔に接触しうることに留意されたい。それゆえ、遮光要素は、流涙反射、まばたき反射、角膜反射、威嚇反射、または瞳孔対光反射のいずれかを刺激する際に能動的な要素ではない。遮光要素は任意選択の要素である。
【0053】
装置100の更なる実施形態は、通常の眼鏡またはサングラスに結合するよう設計することができる。装置100の別の実施形態は、従来のヘッドホンに結合するよう構成することができる。さらに、装置100の更なる実施形態は、ユーザの顔に配置可能な、仮想現実(VR)ヘッドセット、拡張現実(AR)ヘッドセット、複合現実(MR)ヘッドセット、または任意の他のスマートヘッドセット装置と相互接続されるよう構成することができる。さらに、装置100は制御部101または光学システム103から電力供給することができる、あるいはバッテリ、放射型電源、太陽電池パネルなどの任意の電力供給手段により自己通電するよう構成することができる。
【0054】
ユーザの頭に装着される場合、装置100は任意選択で、パソコン、ノートパソコン、タブレット、携帯電話、任意の他のマイクロプロセッサ制御装置などの、ユーザの頭に装着された光学システムを制御可能な外部制御部と共に用いることができる。別の実施形態では、制御部は装置内に配置される。さらに、本発明の更なる実施形態では、制御部は、一方は装置の外部、他方は装置内に搭載される、2つの要素を含む。こうした実施形態では、両方の要素は無線で相互接続される。
【0055】
制御部101は、パネル106(図1B)に装着された光源107から放射される光との間に接触することなしに、ユーザの目のまばたき反射、および/もしくは瞳孔反射、ならびに/または流涙反射を制御するために、光学システム103を作動させて刺激パルスを生成するようプログラムされる。目の反射は、間接的光パルスを用いるだけでなく、任意選択の追加の手段、すなわち、音声パルス、振動パルス、まつ毛の乱れ、これらの任意の組み合わせのうちのいずれか一つを用いることでも活性化することができる。音声パルスは、光パルスと並行して、または別々に作動させることができる。音声パルスは、二次威嚇反射を作り出すことができる。音声パルスの特性は、光パルスと同様の特性を有する。
【0056】
任意選択で、光パルスおよび音声パルスは、目への仮想的な脅威または拡張された脅威に対するユーザの反応の結果として目の威嚇反射を活性化するために、ユーザの目へ向かって進む自動車のショートビデオなどの現実的なシナリオを記述するよう形成することができる。そのようなものは音声と組み合わせることができる、また任意選択で振動によって組み合わせることができて、目の威嚇反射またはパニック反射を活性化して瞼の高速なまばたきをもたらす現実的なシナリオであるとユーザが認識する状況を共に作り出す。
【0057】
制御部101は、光学システム103を作動させて、毎秒10パルスから5分ごとに1パルスまでの周波数で、可視範囲の光パルスのシーケンスを生成するようプログラムすることができる。パルスの持続時間は、光流涙反射を開始させるために、0.1ミリ秒から20秒の間で変動してもよい。網膜は、過度の光で刺激されている間に、求心性視覚経路および遠心性涙河を通って涙液を分泌する。光学システム103は、眼、瞼、または顔に接続されていないことに留意されたい。
【0058】
装置は、ISO規格1999で提示される制限に準拠して、5Hz~20Khzの音声を生成することができる。一部の実施形態では、装置は5Hzから10Khzの音声を生成する。EUは、個人用音楽プレーヤーや音楽再生機能を含む携帯電話からの雑音への曝露による潜在的な健康上のリスクに関する科学委員会の報告書を発行した。装置の設計は、この報告書で提示されている要件に準拠する。音圧値は1dBから135dBの間で変動してもよい。音声パルスは0.01秒から5分の間で変動してもよい。
【0059】
ここで、概して200で参照される、本発明に係る装置の更なる実施形態の、ユーザの目から見た内側パネルを模式的に示す図2Aを参照する。取付け構造201は、光源要素202を含む光学システム200用の骨組み、またはパネルとして機能する。取付け構造201は、金属などの硬い材料、またはポリマーやエラストマーなどの可撓性のある材料、たとえばゴム、シリコンゴム、EPDM、PET、ニトリル、ポリアクリルゴム、フッ素ゴム、熱可塑性エラストマー、ポリ硫化物で作ることができる。取付け構造201は、図2Aで描写されるような、通常の眼鏡の形状を有することができる。あるいは、取付け構造201は、装置の前側から光が透過するのを防ぐために、中実の球形として構成することができる。
【0060】
光源202は取付けパネル201に取り付けられ、内部電源パック(たとえば、充電式または使い捨ての電池)である電力供給装置206に接続される。電源は外部電源に結合することができる。光源202は、たとえばLED列、電球、電子発光ディスプレイ(ELD)、LCDディスプレイ、OLEDディスプレイ、またはこれらの任意の組み合わせを備えることができる。光源202は、目を活性化してまばたき反射、および/もしくは瞳孔対光反射、ならびに/または流涙反射を誘発するために光パルス、光フレーム、またはショートビデオのシナリオまたはスクリプトを放射するよう構成することができる。様々な種類の反射の組み合わせが、涙腺および任意選択でマイボーム腺を活性化するのに必要とされる。光が網膜へ直接放射されて、投射された光と周辺領域の光レベルの間の光勾配が2ルーメンに維持されている場合、瞳孔反射(瞳孔対光反射)は活性化される。
【0061】
システムは、光を放射する少なくとも一つの光源を含むことができる。一部の実施形態では、装置は1個から10個の光源を含む。ただし、光源の個数は変動してもよく、装置の様々なパラメータおよび光源特性により決まる。遮光要素203は、取付け構造201とユーザの顔の間の全体積を覆うことができるように、または取付け構造の外周の5%~100%の間で変動する一部を覆うことができるように配置される。遮光要素203は、布、エラストマー、ポリマー、またはこれらの任意の他の組み合わせで作ることができる。
【0062】
装置を動作させる前は、遮光要素203を使用しているため、目は暗環境にさらされる。操作を行い、光源202が光を放射して上述した反射のうちの1つまたは複数を活性化すると、眼の網膜が可視範囲の光に急激に曝露されるために目はまばたきする。各光源は単独で、または少なくとも一つの別の光源と同時に作動させることができる。光パルスのシーケンスはランダムで予想外である。光パルスのシーケンスは、様々な角度および方向からの様々なパターンとすることができる。光パルスは、まばたき反射、角膜反射、威嚇反射、流涙反射、および/または瞳孔対光反射に応じてそれぞれの目でのまばたきを別々に活性化するようプログラムすることができるが、一方の目での前記反射の活性化は、両方の目での反射を同時に活性化させることがある。それぞれの目を別々に活性化できるようにするため、任意選択の間仕切り205が複数の光源をより良く分離するために(任意選択で取付け構造201に取り付けられた)複数の光源の間に配置される。
【0063】
装置の一実施形態は、カメラ204などのフィードバック要素を含むことができる。カメラ204は、様々な目の反射の活性化に対する閉ループ制御を可能とするため、かつ、光強度、パルス持続時間、パルスのシーケンスなどの光パルスの特性をユーザの必要条件に応じて変更できるようにするために提供される。また、カメラは威嚇反射を単独で誘発する、または光パルスのシーケンスと並行して威嚇反射を誘発するために用いられる音声および振動の特性をより良く監視、制御するための選択肢として提供することができる。さらに、本発明の別の実施形態では、涙液層が壊れるまでのまばたきからの経過時間を測定して涙液破壊時間(TBUT)を評価するために、カメラが光源および制御部と相互接続される。測定結果は秒で、または任意の他の表示形態で提示することができる。システムは、治療の前、治療している間、および/または治療の後に、評価に用いることができる。評価はユーザの進捗の指示を提供することができる。装置の別の実施形態はカメラや光センサなどのフィードバック要素を含むことができて、このフィードバック要素は、たとえばまばたきの効果を反射活性化機構(光、音声、刺激など)の関数として評価することができて、活性化のシーケンス、強度、周期、周波数、光、および/または音声を「刺激アルゴリズム」と組み合わせて、たとえばVRのシナリオを変更する(すなわち、自動車レースから雪の崩壊へ)ことができる。
【0064】
一部の実施形態では、装置は、複数の反射の活性化方法、すなわち、光、音声、振動、後述されるまつ毛への刺激、ならびに、眼の瞳孔の反射、まばたき反射、および流涙反射、の間の相関の記録を可能とする1台、2台、または最大で10台のカメラを含むことができる。反射反応は、まばたきの特性を分析することを目的としている深層学習アルゴリズムを用いて分析されるものとする。深層学習アルゴリズムにより、まばたきの速度や瞳孔の大きさなどのまばたきの特性を様々な反射の活性化との相関関係で判定することが可能となる。加えて、データをAIアルゴリズムへ統合して、本明細書に記載される反射活性化要素に続けて起こる特定のユーザに固有の振る舞いに基づいて、そのユーザに適合するように様々なパルスのシーケンスを調整するようにシステムに教示することが可能となる。図2Bは、図2Aに示される装置の一実施形態の上から見た断面図である。取付け構造201と平行としうる光源(図1A)は、図2Bに示されるように角度を付けることができる(207)。角度は、0度~45度の間で変動してもよい。
【0065】
図3は、概して300で参照される、本発明に係る装置の更なる実施形態の、ユーザの目から見た内側パネルを模式的に示す。図3は、光源の例示のシステム構成を描写している。本実施形態における光源301は、最大で2500ルーメンの光強度で可視範囲の光を放射する発光素子列を含む。一部の場合には、光強度は光パルスの関数とすることができる。たとえば、0.1ミリ秒から100.0秒の間の非常に早いパルスでは、光パルスは最高値に到達しうるが、長い光パルスでは、光強度は100ルーメンから最大で400ルーメンまで減少しうる。上述したように、光源301はLED列、電球、電子発光ディスプレイ(ELD)、LCDディスプレイ、OLEDディスプレイ、またはこれらの任意の組み合わせを含むことができる。発光素子アレイ302は、単一光源から、一列または多数の列の光源が行と列の形で配置された最大10000個の独立した要素を含むことができる。行および列の数は、1から5000の間で変動してもよい。光源の大きさは、光源アレイ302のそれぞれに対して、たとえば(長さで)0.5cmから15cmの間で変えることができる。この大きさはもちろん例に過ぎず、限定することは意図していない。光源は、一斉に光を放射することができる、または結果を得るために所望する多くの構成およびパターンで次々と光を放射することができるLED列を含むことができる。
【0066】
光源301は可視範囲すべてで光を放射することができる。さらに、光源301は、単一色、すなわち白、青、緑、赤、もしくはRGB(赤、緑、青)の任意の組み合わせで、またはパントンカラースキームの光組成により規定される任意の色を放射することができる。光源301が新しい光パルスを生成するためのリフレッシュ時間は、1ミリ秒から2分の間で変動する。
【0067】
装置の特定の実施形態は、あらかじめ設計されたパターンに従ってユーザの目へ向かって光を投射することのできる発光素子のアレイを含むことができる。例示のパターンとして水平軌道、垂直軌道、円軌道などが挙げられる。ユーザは光路を追い、そうすることで眼筋が鍛えられる。装置の更なる実施形態は、目の訓練用アプリケーションである。装置の光源は、眼筋を訓練するために、制御された眼球運動を教え込むよう構成することができる。一つの例は、行および列に構成された、またはランダムな角度で構成された光源である。操作者は、行もしくは列、または特定のLEDもしくは光源を選択して、訓練を実行することができる。同様のソリューションは、複数の画素から構成されるラスター型のディスプレイを用いて得ることができる。眼筋を訓練するための制御された眼球運動を作成するために、操作者は特定の行、列、または角度の光をオンオフさせることができる。点灯のシーケンスには、片方の側(右または左)の光源だけ、および/または同時に両側を含めることができる。別の選択肢は、単一光、またはLEDもしくは画素のアレイである。光のシーケンスは、光源がオンの場合に0.1秒から300秒の間続けることができる。治療のシーケンスは、10秒から2000秒かかることがある。光源のオンとオフの間隔は、0.1秒から300秒とすることができる。図4Aから図4Cは、概して400で参照される、本発明の一態様に係る回転要素を含む例示の装置の概念図を描写している。図4Aは内側パネルの図である。図4Bは、図4Aに示される装置の断面A-Aを示す。図4Cは、図4Aの回転要素402を示す。この実施形態は、瞳孔反射、まばたき反射、角膜反射、流涙反射、および威嚇反射を(それぞれ、またはこれらの任意の組み合わせで)活性化する。回転要素は本発明の任意の他の実施形態と組み合わせて使用できることを理解されたい。
【0068】
図4Aは光源401および回転要素402を描写している。図4Bからわかるように、回転要素402は光源401とユーザの目404との間に配置された円板である。任意選択で、回転要素402は円形、楕円形、不規則形状、矩形、不規則な形状の延長部を有する円板、のうちのいずれか一つの形状を有することができる。一つの例は、図4Cに示されるようなファン410である。回転要素402は、光が回転要素を通過することを可能とする、一連の管腔411(光源)を含むことができる。回転要素1つあたりの管腔411の個数は1個から10000000個で変えることができて、管腔は回転要素上にランダムに配置することができる。回転要素402は中心軸412の周りを回転する。回転速度は、0.001Hz~100Hzの周波数で1回転または連続した回転とすることができる。
【0069】
回転要素の一構成では、回転要素は光学的効果に加えて、0.1cfm~50cfmで空気を連続モードで、または治療している間に1秒~1000秒続くパルス状で供給することを可能とするファンの形態を取りうる。気流は、まつ毛の上の気流を作り出すことで角膜反射を活性化することができる。回転する複数の円板は同時に、または別々に作動させることができる。
【0070】
図4Bを参照すると、回転要素402は目の近くに配置されて、電気モータ403は回転要素402と光源401の間に配置されていることが分かる。回転要素の回転は、一体となっている、または外部の電気モータ(DC、ブラシレス、DCブラシレス、ACモータ)403、またはソレノイドにより行うことができる。加えて、電気モータ403の代わりにリニアモータ、または任意選択でソレノイド413(図4C)を、回転要素の動作を発生させるアクチュエータとして用いることができる。動作範囲は5°から最大で1回転に限定することができる。光パルスのシーケンスは、実際のドライアイの軽減結果に基づいて、および/またはAIによるデータ収集および分析に基づいて、目の反射の最適な活性化が可能となるように、同期させることができる。ファン状の要素は筐体405(図4C)を含むことができる。
【0071】
図4Bはファンの向きを示し、概略的なファンの組立品と、光源と、目を示す。ファンが設置される場合、ファンの目的は、光パルスをまつ毛の上の0.01cfmから50cfmの気流範囲の気流と組み合わせることである。2つのファンが設置される場合、各ファンは様々な気流で作動させることができる。加えて、各ファンは他方のファンとは独立して動作可能である。一部の場合では、ただ一つのファンが作動されて、他のものはオフとされる。ファンは連続的に、またはパルス状に作動して、気流パルスを生成することができる。
【0072】
図4A図4Cに示される実施形態とは別の実施形態が図5に示されており、装置500は概して、硬い材料、または図4A図4Cに関連して説明された様々な形状に形成可能な可撓性のある材料で出来た回転要素501を含む。本実施形態では、回転要素501は不規則形状505の円板である。本実施形態では、図4A図4Cで描写された実施形態と同様に、回転要素402が光源401と目の間に配置され、図5に示されるように、光が回転要素を通過することを可能とする、一連の管腔502を含む。回転要素1つあたりの管腔502の個数は1個から100個で変えることができて、管腔は回転要素上にランダムに配置することができる。回転要素は中心軸507(第2回転軸)の周りを回転するものとする。回転要素501は、要素回転、または要素回転と光流涙反射を活性化させる光の組み合わせにより、まばたき反射、流涙反射、または威嚇反射を(一緒に、もしくは任意の反射の組み合わせ、または各反射を別々に)誘発することができる。回転速度は0.1Hz~100Hzの周波数で1回転または連続した回転とすることができる。回転要素は空間角度(506、504)に置くことができる。回転軸は、電気モータまたはソレノイド503により駆動するものとする。
【0073】
図6は、瞳孔対光反射、および/もしくはまばたき反射、ならびに/もしくは流涙反射、ならびに/もしくは威嚇反射、またはこれらの反射の任意の組み合わせを刺激するのに気流および/または水滴が用いられる、本発明の一実施形態を描写している。液体噴霧システムでは、装置600はハウジング602に収納された液体容器601から成る。容器の中の液体は無菌、または非無菌とすることができて、0℃~60℃の温度、好ましくは室温に保たれる。たとえば、液体は水または生理食塩水である。ポンプまたはピストン603が容器601に接続され、容器601からチューブ604を介して液体を装置600の内部に配置されたノズル607へ供給するのに必要となる充分な圧力を生成する。装置600は、小さな液滴を生成することができて装置内の液体を少量、ユーザの目の周囲に振りかけることができるノズル607を1、2、3~6個含むことができる。まばたき反射および流涙反射は、液滴が分配されている間に瞼または角膜に達した場合に活性化される。液体容器601およびポンプ603は一体化してハウジング602の中に入れることができる。あるいは、装置600は、たとえば106(図1)または201(図2A)のような取付け構造である、自身の取付け構造と一体化された特別な区画の中に液体容器601およびポンプ603を含むよう構成することができる。任意選択で、図6に関連して描写される実施形態に追加可能な空気、または窒素、CO、アルゴンなどの他のガスの循環システムは、装置の壁(外壁または内壁、およびそれぞれの壁、すなわち側面、上面、下面)に設置される電動ファンまたは送風機606から成る。空気フィルタ605も同様に、粒子が装置の内部容積へと入って目を刺激するのを防ぐために設置することができる。換気システムは装置の内部に気流を提供し、これによりまばたき反射および流涙反射を活性化する。ファンまたは送風機を、装置内部の均一な気流のために装置内部のノズル607に接続することができる。
【0074】
ここで図7を参照すると、概して700で参照される、眼鏡に組み付けられた場合の本発明の例示の実施形態の概略構成を描写している。装置700は、装置を通常の眼鏡もしくはサングラスまたはゴーグルに解除可能に結合するための結合手段704を含む。任意選択で、結合手段704は、ヘッドセットまたは任意の他のヘッドピースに結合するよう構成することもできる。発光要素701は、装置の前側でゴーグルの前部フレーム702の上に設置される。耳の上の後部ゴーグル要素は、音声発生要素703を含む。発光部は、結合手段704としてのラッチ、または充分に強固で安全な取付けを提供する任意の他の締結器を用いてゴーグルへ堅く接続される。別の実施形態では、結合手段704は、様々なユーザに対応するために高さ調整を可能とする磁気式のピン、および/または鼻当てとすることができる。装置は、図2Aに示されるものと同様の遮光要素705を含むことができる。本発明の図において説明されるすべての機械部品は、眼、まつ毛、および/または瞼に接触することも、接触しないこともあるということに留意されたい。
【0075】
図8は、本発明の装置と共に使用可能な、例示の光学システムの光システムパルス特性を示す。時間の関数としての光強度801は、様々なパルス形状を持ちうる。たとえば、パルス持続時間802と強度aを有するステップ関数は1ミリ秒から5000秒の間で変えることができて、複数のパルス間の時間間隔bは1ミリ秒から5000秒の間で変えることができる。第2パルス803の持続時間は、第1パルスと同様とする、または示されるように少し長くすることができる。セッションあたりのパルス数は、1パルス~5000パルスで変えることができる。別のパルス形状は、光強度と要する時間の関係806がPL=f(t)の形式となる台形、または台形状の形状である。関数は、線形関数、対数関数、指数関数、または最大10次までの多項式とすることができる。総パルス持続時間804(D)は1ミリ秒から5000秒の間で変動してもよく、複数のパルス間の時間間隔805は1ミリ秒から5000秒の間で変動してもよい。セッションあたりのパルス数は、1パルス~5000パルスで変えることができる。更に別のものがより下のグラフに示されており、ここではパルス形状は、光強度と要する時間の関係808がPL=f(t)の形式となるのこぎり波、またはのこぎり波状の形状807である。関数は、線形関数、対数関数、指数関数、または最大10次までの多項式とすることができる。総パルス持続時間808は1ミリ秒から5000秒の間で変動してもよく、複数のパルス間の時間間隔809は1ミリ秒から5000秒の間で変動してもよい。セッションあたりのパルス数は、1パルス~5000パルスで変動してもよい。一部の実施形態では、光源は、耐えられるようになるのを防ぐために、ランダムなパターンで光刺激パルスを与える。たとえば、特異的疾患および年齢に対する所定のデータセットから選択される、様々なパルス形状と持続時間の組み合わせである。光源は、ユーザを驚かせる予測できないパターンで光刺激パルスを生成する。1つまたは複数の実施形態では、光学システムは、レンズ、調整可能レンズ、および/またはレンズ調整機構をさらに備える。
【0076】
図9は、概して900で参照される、制御部により操作可能な振動源を含む本発明の一実施形態の概略図である。示されるように、図9はポーション音声と振動の組み合わせを時間の関数として作り出すよう構成されているピストン901を描写している。ピストン901(機械式、電気式、磁気式、空気圧式)は、様々なパルス形状を作動させうる。ピストン901は、開ループ制御、または閉ループ制御することができる(図には示されていない)。たとえば、1ミリ秒から5000秒の間で変動しうるパルス持続時間802を有するステップ関数と、1ミリ秒から5000秒の間で変動しうる複数のパルス間の時間間隔b。セッションあたりのパルス数も、1パルス~5000パルスで変動してもよい。ピストンはソレノイド、電気モータ、または空気圧式ピストンもしくは油圧式ピストンとすることができる。生成されるパルスは隠すことができる、または活性化の間に眼にさらすことができる。
【0077】
図10は、概して1000で参照される、開示される発明の好ましい実施形態に従って構成され、動作する、涙腺および/またはマイボーム腺を刺激する装置を着用しているユーザの正面斜視図である。装置1000は、携帯電話1001を取付け構造1002に解除可能に結合する結合手段1003を有するヘッドピースまたは取付け構造1002を備える。携帯電話1001は、制御部、光学システム、光源、および電力供給装置を含む。取付け構造1002は、携帯電話1001と相互接続されるよう構成される。さらに、取付け構造1002は、携帯電話の表示画面がユーザの目を向いているように、携帯電話を収容するよう構成される。加えて、携帯電話は、ユーザが自分の目の状態に対して最適な治療を選択するのを可能とする、ユーザーフレンドリーなアプリを使用する。そのようなアプリは、コンピュータプログラム、または携帯電話、タブレット、スマートウォッチなどの携帯機器上で動作するよう設計されたアプリケーションソフトとすることができる。さらに、動作中は、アプリはパソコン、別の携帯電話、タブレット、またはスマートウォッチを介してユーザがアクセスして制御することができる。本発明は、一部の実施形態ではドライアイを刺激するキットに関する。本発明の一部の実施形態では、ユーザの目の涙腺および/またはマイボーム腺を刺激するキットは、ユーザの目の涙腺および/またはマイボーム腺を刺激する装置と、装置を通常の眼鏡またはサングラスに解除可能に結合する結合手段とを含む。一部の実施形態では、装置は、制御部と、制御部に接続されてユーザが見る方向に配置される光学システムとを含む。光学システムは少なくとも1つの光源を含み、少なくとも1つの光源によりユーザの目へ光刺激パルスを与えるよう構成され、また光学システムは制御部および/または光学システムへ電力を供給する電力供給装置を含む。光刺激パルスは、瞳孔対光反射と、まばたき反射、角膜反射、威嚇反射、流涙反射、から選択される1つまたは複数の反射とを活性化する。前記装置が動作モードにある場合、少なくとも1つの光源により放射される光パルスと目の周りの光の間の光強度勾配は少なくとも2ルーメンに維持され、光刺激パルスはユーザの目のまばたきを誘発する。
【0078】
加えて、本発明の別の実施形態では、ユーザの目の涙腺および/またはマイボーム腺を刺激するキットは、ユーザの目の涙腺および/またはマイボーム腺を刺激する装置を含み、この装置は携帯電話と相互接続されて携帯電話を収容するよう構成されているヘッドセットとして構成される。加えて、このキットはサービス提供者へのアクセスコードをさらに含む。動作中は、サービス提供者は、携帯電話を操作してユーザの網膜に光刺激パルスを放射し、瞳孔対光反射と、まばたき反射、角膜反射、威嚇反射、流涙反射、から選択される1つまたは複数の反射とを活性化する。携帯電話が動作モードにある場合、少なくとも1つの光源により放射される光パルスと目の周りの光の間の光強度勾配は少なくとも2ルーメンに維持され、光刺激パルスはユーザの目のまばたきを誘発する。
【0079】
本発明のさらに別の実施形態は、ユーザの目の涙腺および/またはマイボーム腺を刺激するキットであって、前記ユーザの顔に適合して携帯電話を収容するよう構成されている取付け構造と、サービス提供者へのアクセスコードを含むキットである。動作中は、サービス提供者は、携帯電話を操作してユーザの網膜に光刺激パルスを放射し、瞳孔対光反射と、まばたき反射、角膜反射、威嚇反射、流涙反射、から選択される1つまたは複数の反射とを活性化する。携帯電話が動作モードにある場合、少なくとも1つの光源により放射される光パルスと目の周りの光の間の光強度勾配は少なくとも2ルーメンに維持される。光刺激パルスは前記ユーザの目のまばたきを誘発する。
【0080】
本発明は、一部の実施形態ではドライアイを刺激する方法に関する。本発明の一部の実施形態では、装置は、ユーザの目の涙腺および/またはマイボーム腺を刺激するためにユーザの目の顔領域の付近で利用することができる。介護者または医者は、携帯電話内のアプリまたはコンピュータを介して、特定のユーザ向けの治療計画を選択する。治療計画により、好ましくは光パルスの個数、波長帯域の範囲、光刺激パルスの時間間隔から選択することが可能となる。方法は、ユーザの目の顔領域の付近にあるユーザの目の涙腺および/またはマイボーム腺を刺激するのに装置を利用することを含む。装置が動作モードにある場合、装置は網膜へ光を放射する。放射された光は涙液の化学組成における変化を活性化し、激しいマイバム分泌を誘発する。装置は、制御部と、前記制御部に接続されてユーザが見る方向に配置される光学システムとを備える。光学システムは少なくとも1つの光源を含み、ユーザの目へ光刺激パルスを与えるよう構成される。前記制御部および/または前記光学システムへ電力を供給する電力供給装置も提供される。方法はさらに、少なくとも1つの光源により光パルスを生成して、前記光パルスを前記ユーザの目に向けて放射するステップと、瞳孔対光反射と、まばたき反射、角膜反射、威嚇反射、流涙反射、から選択される1つまたは複数の反射とを活性化するステップと、前記ユーザの目のまばたきを誘発するステップと、を含む。装置が動作モードにある場合、少なくとも1つの光源により放射される光パルスと目の周りの光の間の光強度勾配は少なくとも2ルーメンに維持される。さらに、前記光刺激パルスはユーザの目のまばたきを誘発する。装置は眼または瞼と物理的接触することなく動作する。
【0081】
本発明のさらに別の実施形態は、ユーザの目の涙腺および/またはマイボーム腺を刺激する方法に関する。方法は、網膜に光を放射することでユーザの目の顔領域の付近に光刺激パルスを当てることと、瞳孔対光反射と、まばたき反射、角膜反射、威嚇反射、流涙反射、から選択される1つまたは複数の反射とを活性化することと、涙液の化学組成における変化を活性化して、激しいマイバム分泌を誘発することと、を含む。これらのステップは、ユーザの目のまばたきを誘発するために、必要に応じて繰り返される。少なくとも1つの光源により放射される光パルスと目の周りの光の間の光強度勾配は少なくとも2ルーメンに維持される。
【0082】
図11は、開示される発明の一実施形態に係る、光のドライアイに対する治療効果を提示する概略フローチャートを与える。図11を参照すると、光パルス源1100が網膜に光を放射して化学反応を活性化する(1101)。化学反応が2つの並列する反射機構、すなわち、瞳孔反射により活性化される脳反射(1103)と体性反射(1104)を活性化する(1102)。いずれの反射(1103、1104)も涙腺の激しい活性化(1105)を引き起こし、これにより過剰な涙液が作り出される。反射(1103、1104)の活性化と共に、激しいまばたきが起こる(1106)。プロセスの最後には、多数の脳反射および体性反射の活性化により、涙液およびマイバムの分泌がリセットされる(1107)。
【0083】
一部の別の方法は、以下のステップのうちのいずれか一つ、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる:波長帯域350nm~750nmの可視スペクトルで光を当てる、音源を単独、または光の放射と組み合わせて動作させる、ユーザに振動を加える、まつ毛の乱れを作る、ユーザの視線上にある回転要素を作動させる、ユーザの目へ向かう気流を生成する、ユーザの目へ向けて水滴を噴射する。一部の実施形態では、方法は、目が耐えられるようになるのを防ぐために、ランダムなパターンで光刺激パルスを生成するステップを含む。具体的には、光源は、ユーザを驚かせるランダムなパターンで光刺激パルスを生成する。1つまたは複数の実施形態では、光学システムは、レンズ、調整可能レンズ、および/またはレンズ調整機構をさらに備える。
【0084】
開示される発明は詳細に示されて上述されたものに限定されないということを当業者は理解するであろう。より正確には、開示される発明の範囲は以下に続く請求項のみによって規定される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-09-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
網膜に光を放射することでユーザの目の涙腺および任意選択的にマイボーム腺を刺激する装置であって、
制御部と、
前記制御部に接続されて前記ユーザが見る方向に配置される光学システムであって、少なくとも1つの光源を含み、前記少なくとも1つの光源により前記ユーザの前記目へ光刺激パルスを与えるよう構成されている光学システムと、
前記制御部および/または前記光学システムへ電力を供給する電力供給装置と、を備え、
前記光刺激パルスは、瞳孔対光反射と、
まばたき反射、
角膜反射、
威嚇反射、
流涙反射、
から選択される1つまたは複数の反射と、を活性化し、
前記装置が動作モードにある場合、前記少なくとも1つの光源により放射される前記光パルスと前記目の周りの光との間の光強度勾配は少なくとも2ルーメンに維持され、前記光刺激パルスは前記ユーザの前記目のまばたきを誘発する、
装置。
【請求項2】
前記制御部は前記光学システムに有線または無線で接続されるパソコン、ノートパソコン、タブレット、携帯電話、またはマイクロプロセッサである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電力供給装置は前記光学システムと一体化されている、または(a) 前記光学システム及び(b) 制御部のいずれかの中に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記電力供給装置は前記制御部に接続される、および/または電線を介して前記装置に接続される外部電力供給装置である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記装置をヘッドセットまたは通常の眼鏡もしくはサングラスに解除可能に結合する結合手段をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記装置は、携帯電話と相互接続されて前記携帯電話を収容するよう構成されているヘッドセットとして構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの光源は、350nm~750nmの波長帯域の可視スペクトルで光を放射する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記光学システムは、前記制御部により操作可能で前記電力供給装置により電力供給される遮光要素をさらに備え、前記遮光要素は前記装置が前記動作モードである間は前記ユーザの前記目を光から遮る、および遮らないようにするよう構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記装置はさらに、音源、振動源、まつ毛の乱れを作る手段、回転要素、気流を与える手段、水滴を与える手段、および遮光要素、のうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記装置は、前記目の前記光刺激パルスへの反応を撮影して分析のために撮影データを前記制御部へ転送するカメラをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記ユーザの顔に配置可能な、仮想現実(VR)ヘッドセット、拡張現実(AR)ヘッドセット、複合現実(MR)ヘッドセット、または任意の他のスマートヘッドセット装置と相互接続されるよう構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記制御部はさらに、前記スマートヘッドセット装置と相互接続されて、前記ユーザの前記目へ向かって前記ユーザの前記目のまばたきを誘発するパルス及び/又は写真のシーケンスを所望のパターンで表示するようプログラムされる、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
まばたき反射、および瞳孔対光反射は、前記装置が前記目や瞼に直接接触することなく活性化される、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
ユーザの目の涙腺および任意選択でマイボーム腺を刺激するキットであって、
携帯電話と相互接続されて前記携帯電話を収容するよう構成されているヘッドセットとして構成される、請求項に記載の装置と、
サービス提供者へのアクセスコードと、
を備え、
動作中は、前記サービス提供者は前記携帯電話を操作して網膜に光刺激パルスを放射し、前記瞳孔対光反射と、
まばたき反射、
角膜反射、
威嚇反射、
流涙反射、
から選択される1つまたは複数の反射と、を活性化し、
前記携帯電話が動作モードにある場合、前記少なくとも1つの光源により放射される前記光パルスと前記目の周りの光との間の光強度勾配は少なくとも2ルーメンに維持され、前記光刺激パルスは前記ユーザの前記目のまばたきを誘発する、キット。
【請求項15】
ユーザの目の涙腺および任意選択でマイボーム腺を刺激するキットであって、
前記ユーザの顔に適合して携帯電話を収容するよう構成されている取付け構造と、
サービス提供者へのアクセスコードと、
を備え、
動作中は、前記サービス提供者は前記携帯電話を操作して前記ユーザの網膜に光刺激パルスを放射し、前記瞳孔対光反射と、
まばたき反射、
角膜反射、
威嚇反射、
流涙反射、
から選択される1つまたは複数の反射と、を活性化し、
前記携帯電話が動作モードにある場合、前記少なくとも1つの光源により放射される前記光パルスと前記目の周りの光との間の光強度勾配は少なくとも2ルーメンに維持され、前記光刺激パルスは前記ユーザの前記目のまばたきを誘発する、キット。
【国際調査報告】