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特表2025-5056132-オクチルアクリレート、n-ブチルアクリレートおよびメチルメタクリレートをベースとする、二酸化チタン含有水性コーティング組成物用のポリマーバインダ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】2-オクチルアクリレート、n-ブチルアクリレートおよびメチルメタクリレートをベースとする、二酸化チタン含有水性コーティング組成物用のポリマーバインダ
(51)【国際特許分類】
   C08F 257/02 20060101AFI20250220BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20250220BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20250220BHJP
   C09D 133/22 20060101ALI20250220BHJP
   C09D 133/26 20060101ALI20250220BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20250220BHJP
【FI】
C08F257/02
C08L51/06
C09D5/02
C09D133/22
C09D133/26
C09D7/61
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546183
(86)(22)【出願日】2023-02-03
(85)【翻訳文提出日】2024-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2023052685
(87)【国際公開番号】W WO2023148332
(87)【国際公開日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】22155150.0
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】フリーデリケ・フライシュハッカー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・ミスケ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・フレッケンシュタイン
(72)【発明者】
【氏名】サビーヌ・アイヒホルン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
4J038
【Fターム(参考)】
4J002BN051
4J002DE136
4J002FD096
4J002GH01
4J002HA06
4J026AA17
4J026BA24
4J026BA27
4J026BA32
4J026BB04
4J026DB04
4J026FA04
4J026GA01
4J026GA09
4J038CG141
4J038CH031
4J038CH041
4J038CH221
4J038HA216
4J038KA20
4J038MA10
4J038NA01
4J038NA11
4J038NA24
(57)【要約】
場合によりシードラテックスの存在下で、ラジカル乳化重合によりモノマー組成物Mを重合することによって得られる水性ポリマーラテックスであって、モノマー組成物Mは、モノマー組成物Mの総重量に基づいて:
a)0.5~30重量%の2-オクチルアクリレート、
b)25~55重量%のn-ブチルアクリレート、
c)35~65重量%のメチルメタクリレート、
d)0~5重量%の1以上のモノエチレン性不飽和カルボン酸、
e)0~5重量%の1以上のモノエチレン性不飽和カルボン酸アミド、
f)0~10重量%の、モノマーa)、b)、c)、d)、およびe)とは異なる1以上のさらなるエチレン性不飽和非イオン性モノマー
を含む、水性ポリマーラテックス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
場合によりシードラテックスの存在下で、ラジカル乳化重合によりモノマー組成物Mを重合することによって得られる水性ポリマーラテックスであって、前記モノマー組成物Mは、前記モノマー組成物Mの総重量に基づいて:
a)0.5~30重量%の2-オクチルアクリレート、
b)25~55重量%のn-ブチルアクリレート、
c)35~65重量%のメチルメタクリレート、
d)0~5重量%の1以上のモノエチレン性不飽和カルボン酸、
e)0~5重量%の1以上のモノエチレン性不飽和カルボン酸アミド、
f)0~10重量%の、モノマーa)、b)、c)、d)、およびe)とは異なる1以上のさらなるエチレン性不飽和非イオン性モノマー
を含む、水性ポリマーラテックス。
【請求項2】
モノマーd)が、アクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸からなる群から選択される、請求項1に記載の水性ポリマーラテックス。
【請求項3】
モノマーe)が、アクリルアミドおよびメタクリルアミドからなる群から選択される、請求項1または2に記載の水性ポリマーラテックス。
【請求項4】
モノマーd)が0.1~4重量%の量で存在する、請求項1から3のいずれか一項に記載の水性ポリマーラテックス。
【請求項5】
モノマーe)が0.1~4重量%の量で存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載の水性ポリマーラテックス。
【請求項6】
前記モノマー組成物Mが、
a)1~15重量%の2-オクチルアクリレート、
b)25~55重量%のn-ブチルアクリレート、
c)40~65重量%のメチルメタクリレート、
d)0~5重量%の1以上のモノエチレン性不飽和カルボン酸、
e)0~5重量%の1以上のモノエチレン性不飽和カルボン酸アミド
を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の水性ポリマーラテックス。
【請求項7】
前記モノマー組成物Mが、
a)3~12重量%の2-オクチルアクリレート、
b)30~50重量%のn-ブチルアクリレート、
c)40~60重量%のメチルメタクリレート、
d)0.1~4重量%の、アクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸から選択されるモノエチレン性不飽和カルボン酸、
e)0.1~4重量%の、アクリルアミドおよびメタクリルアミドから選択されるモノエチレン性不飽和カルボン酸アミド
からなる、請求項1から6のいずれか一項に記載の水性ポリマーラテックス。
【請求項8】
前記モノマー組成物Mが、
a)3~12重量%の2-オクチルアクリレート、
b)30~50重量%のn-ブチルアクリレート、
c)40~60重量%のメチルメタクリレート、
d)0.5~3重量%のアクリル酸、
e)0.5~3重量%のアクリルアミド
からなる、請求項1から7のいずれか一項に記載の水性ポリマーラテックス。
【請求項9】
前記モノマー組成物Mが、前記モノマー組成物Mの前記総重量に基づいて、0.1~10重量%の、1以上のエチレン性不飽和モノマーで作製されたシードラテックスの存在下で重合される、請求項1から8のいずれか一項に記載の水性ポリマーラテックス。
【請求項10】
前記シードラテックスが、アクリル酸のC~C10-アルキルエステル、メタクリル酸のC~C-アルキルエステルおよびビニル芳香族モノマーからなる群から選択される1以上のエチレン性不飽和モノマーで作製される、請求項9に記載の水性ポリマーラテックス。
【請求項11】
前記2-オクチルアクリレートの少なくとも一部が、再生可能な原料から得られたものである、請求項1から10のいずれか一項に記載の水性ポリマーラテックス。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の前記水性ポリマーラテックスに含まれているコポリマー。
【請求項13】
i)請求項1から11のいずれか一項に記載の水性ポリマーラテックスと、
ii)二酸化チタン顔料と
を含む、水性コーティング組成物。
【請求項14】
コポリマーと前記二酸化チタン顔料との重量比が、0.1:5.0~5.0:0.1の範囲である、請求項13に記載の水性コーティング組成物。
【請求項15】
請求項1から11のいずれか一項に記載の水性ポリマーラテックスの、二酸化チタン顔料を含有する水性コーティング組成物中のバインダとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2-オクチルアクリレート、n-ブチルアクリレートおよびメチルメタクリレートを含むモノマー組成物Mを重合することによって得られる水性ポリマーラテックスに関する。本発明はさらに、水性ポリマーラテックスの、二酸化チタン顔料を含有する水性コーティング組成物におけるバインダとしての使用に関し、本発明はまた、水性ポリマーラテックスおよび二酸化チタン顔料を含有する水性コーティング組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化チタン(TiO2)は、ラテックス塗料などの水性コーティング組成物の顔料として頻繁に使用される。白色度に加えて、TiO2は、コーティングに不透明度または隠蔽力をそれぞれ与える。このことは、コーティングが不透明であり、コーティングが塗布される下面または基材表面を隠すように覆うことを意味する。
【0003】
国際公開第2017/191167号は、二酸化チタン顔料を含有する水性コーティング組成物中のバインダとして使用される水性ポリマーラテックスを開示している。水性ポリマーラテックスは、特定の供給方法を使用するラジカル乳化重合によりモノマー組成物Mを重合することによって得られ、該モノマー組成物Mは、
a)モノマー組成物Mの総重量に基づいて80~99.95重量%のエチレン性不飽和モノマーM1であって、アクリル酸のC1~C20-アルキルエステルおよびメタクリル酸のC5~C20-アルキルエステルから選択される少なくとも1つのモノマーM1aと;ビニル芳香族モノマーおよびメタクリル酸のC1~C4-アルキルエステルから選択される少なくとも1つのモノマーM1bとの混合物から選択されるエチレン性不飽和モノマーM1;
b)モノマー組成物Mの総重量に基づいて0.05~5重量%の1以上のモノエチレン性不飽和モノマーM2であって、3~6個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和モノカルボン酸、および4~6個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和ジカルボン酸から選択される、モノエチレン性不飽和モノマーM2;
c)モノマーM1とは異なる、0~20重量%の非イオン性モノマーM3
からなる。
【0004】
好ましいモノマーM1aは、アクリル酸のC2~C10-アルキルエステル、特にエチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートおよび2-プロピルヘプチルアクリレートである。好ましいモノマーM1bは、ビニル芳香族モノマー、およびビニル芳香族モノマーとメタクリル酸のC1~C4-アルキルエステルとの混合物である。特に、モノマーM1bは、スチレンおよびスチレンとメチルメタクリレートとの混合物から選択される。好ましいモノマーM2は、アクリル酸およびメタクリル酸である。好ましいモノマーM3は、アクリル酸およびメタクリル酸のヒドロキシ-C2~C4-アルキルエステルである。
【0005】
国際公開第2014/207389号は、再生可能な起源の2-オクチルアクリレートと、場合により少なくとも1つの他のモノマーとの重合から得られるポリマーの、コーティング組成物の製造におけるまたはそのための結合剤としての使用に関する。他のモノマーは、好ましくは、エチレン性不飽和モノ-およびジカルボン酸のエステル、特にメチルメタクリレートおよびn-ブチルアクリレート、ビニル芳香族モノマー、より具体的にはスチレン、ならびにそれらの混合物から選択される。この文献は、透明コーティングを開示している。
【0006】
国際公開第2016/128574号は、少なくとも30重量%のビニル共重合体(A)を含む水性ポリマーエマルジョンに関し、前記ビニル共重合体は、
(I)10~90重量%の2-オクチルアクリレートモノマー;
(II)10~90重量%の少なくとも1つのイタコン酸エステルモノマー;および
(III)0~80重量%の、(I)および(II)以外のエチレン性不飽和モノマー
を含む。
【0007】
他のエチレン性不飽和モノマー(III)は、アクリル酸および/またはメタクリル酸と、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、スチレンおよびそれらの組み合わせから選択されるモノマーとを含む。
【0008】
国際公開第2018/007325号は、少なくとも30重量%の1または複数のビニル共重合体(A)を含む水性エマルジョンを開示し、前記1または複数のビニル共重合体(A)は、以下のモノマーを含む:
(I)合計量が少なくとも30重量%のイソボルニルメタクリレートと2-オクチルアクリレート(イソボルニルメタクリレートと2-オクチルアクリレートの重量比は、5:95~95:5);
(II)70重量%以下の、2-オクチルアクリレートとイソボルニルメタクリレート以外の少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー。他のエチレン性不飽和モノマー(II)は、アクリル酸および/またはメタクリル酸と、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、スチレンおよびそれらの組み合わせから選択されるモノマーとを含む。この文献は、透明コーティングを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2017/191167号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2014/207389号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2016/128574号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2018/007325号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、良好な耐擦過性、増粘効率、光沢および不透明度、ならびに優れた接着性、耐汚染性、および低い汚れ付着性をもつTiO2を含有する建築用コーティングのバインダとして適した、メチルメタクリレートおよびn-ブチルアクリレート(BA)に基づくコポリマーと同等のガラス転移温度を有する代替メチルメタクリレート(MMA)コポリマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、ラジカル乳化重合によりモノマー組成物Mを重合することによって得られる水性ポリマーラテックスによって解決され、該モノマー組成物Mは、モノマー組成物Mの総重量に基づいて、
a)0.5~30重量%の2-オクチルアクリレート、
b)25~55重量%のn-ブチルアクリレート、
c)35~65重量%のメチルメタクリレート
d)0~5重量%の1以上のモノエチレン性不飽和カルボン酸、
e)0~5重量%の1以上のモノエチレン性不飽和カルボン酸アミド、
f)0~10重量%の、モノマーa)、b)、c)、d)およびe)とは異なる1以上のさらなるエチレン性不飽和非イオン性モノマー
を含む。
【0012】
驚くべきことに、2-オクチルアクリレート、n-ブチルアクリレート(BA)およびメチルメタクリレート(MMA)に基づく本発明のコポリマーは、同等に配合された建築用コーティング中のn-ブチルアクリレートおよびメチルメタクリレートに基づくコポリマーと比較して、改善された耐擦過性、改善された光沢および改善された増粘効率、ならびに同等の不透明度、接着性、耐汚染性および汚れ付着性をもたらすことが見出された。
【0013】
好ましくは、2-オクチルアクリレート、n-ブチルアクリレートおよびメチルメタクリレートは、モノマー組成物Mの少なくとも95重量%を占める。例えば、2-オクチルアクリレートは、モノマー混合物Mの1~15重量%の量で存在してもよく、n-ブチルアクリレートは、25~55重量%の量で存在してもよく、メチルメタクリレートは、40~65重量%の量で存在してもよい。
【0014】
好ましくは、モノエチレン性不飽和カルボン酸d)は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸の半メチルエステル、マレイン酸の半エチルエステル、シトラコン酸、シトラコン酸の半メチルエステル、イタコン酸、イタコン酸の半メチルエステル、3-ペンテン酸、2-ブテン酸、フマル酸、フマル酸の半メチルエステル、フマル酸の半エチルエステル、ハロゲン化アクリル酸およびハロゲン化メタクリル酸からなる群から選択される。最も好ましくは、モノマーd)は、アクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸から選択される。
【0015】
好ましくは、モノエチレン性不飽和カルボン酸アミドe)は、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-プロピルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-ブチルアクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、N-プロピルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミドおよびN-ブチルメタクリルアミドからなる群から選択される。最も好ましくは、モノマーe)はアクリルアミドおよびメタクリルアミドから選択される。
【0016】
好ましい実施形態では、モノマーd)は、0.1~4重量%の量で存在する。より好ましい実施形態では、モノマーd)は、モノマー組成物の総重量に基づいて、0.5~3重量%、さらにより好ましくは0.5~2重量%の量で存在する。
【0017】
さらに好ましい実施形態では、モノマーe)は、0.1~4重量%の量で存在する。より好ましい実施形態では、モノマーe)は、モノマー組成物の総重量に基づいて、0.5~3重量%、さらにより好ましくは1~3重量%の量で存在する。
【0018】
モノマーf)は、存在する場合、好ましくは、アクリル酸のC2~C10-アルキルエステル、特にtert-ブチルアクリレート、2-プロピルヘプチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチル-ヘキシルアクリレート、メチルメタクリレートとは異なるメタクリル酸のC1~C4-アルキルエステル、特に2-エチルヘキシルメタクリレート、ブチルメタクリレートおよびtert-ブチルメタクリレート、ならびにビニル芳香族モノマー、特にスチレンからなる群から選択される。
【0019】
さらに好ましい実施形態では、モノマーf)はモノマー組成物M中に存在しない。
【0020】
好ましい実施形態では、モノマー組成物Mは、
a)1~15重量%、より好ましくは3~12重量%の2-オクチルアクリレート、
b)25~55重量%、より好ましくは30~50重量%のn-ブチルアクリレート、
c)40~65重量%、より好ましくは40~60重量%のメチルメタクリレート、
d)0~5重量%の1以上のモノエチレン性不飽和カルボン酸、
e)0~5重量%の1以上のモノエチレン性不飽和カルボン酸アミド
を含むか、またはこれらからなる。
【0021】
より好ましい実施形態では、モノマー組成物Mは、
a)1~15重量%、より好ましくは3~12重量%の2-オクチルアクリレート、
b)25~55重量%、より好ましくは30~50重量%のn-ブチルアクリレート、
c)40~65重量%、より好ましくは40~60重量%のメチルメタクリレート、
d)0~5重量%の、アクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸から選択される1以上のモノエチレン性不飽和カルボン酸、
e)0~5重量%の、アクリルアミドおよびメタクリルアミドから選択される1以上のモノエチレン性不飽和カルボン酸アミド
を含むか、またはこれらからなる。
【0022】
特に好ましい実施形態では、モノマー組成物Mは、
a)3~12重量%の2-オクチルアクリレート、
b)30~50重量%のn-ブチルアクリレート、
c)40~60重量%のメチルメタクリレート、
d)0~5重量%のアクリル酸、
e)0~5重量%のアクリルアミド
からなる。
【0023】
いくつかの好ましい実施形態では、モノマー組成物Mは、
a)3~12重量%の2-オクチルアクリレート、
b)30~50重量%のn-ブチルアクリレート、
c)40~60重量%のメチルメタクリレート、
d)0.1~4重量%の、アクリル酸、メタクリル酸およびイタコン酸から選択されるモノエチレン性不飽和カルボン酸、
e)0.1~4重量%の、アクリルアミドおよびメタクリルアミドから選択されるモノエチレン性不飽和カルボン酸アミド
からなる。
【0024】
いくつかの好ましい実施形態では、モノマー組成物Mは、
a)3~12重量%の2-オクチルアクリレート、
b)30~50重量%のn-ブチルアクリレート、
c)40~60重量%のメチルメタクリレート、
d)0.5~3重量%のアクリル酸、
e)0.5~3重量%のアクリルアミド
からなる。
【0025】
いくつかの好ましい実施形態では、成分a)の2-オクチルアクリレートの少なくとも一部は、再生可能な原料から製造されている、すなわち、成分a)の2-オクチルアクリレートの少なくとも一部は、再生可能な原料から部分的にまたは完全に得られたバイオベースの2-オクチルアクリレートである。また、化石原料から得られる2-オクチルアクリレートと、再生可能な原料から部分的にまたは完全に得られる2-オクチルアクリレートとの混合物も使用することができる。
【0026】
2-オクチルアクリレートは、例えば、アクリル酸と2-オクタノールとのエステル化、または例えばメチルアクリレートもしくはエチルアクリレートと2-オクタノールとのエステル交換によって合成することができる。
【0027】
好ましくは、バイオ系2-オクチルアクリレートアクリレートは、2-オクタノールとアクリル酸との反応によって得られる。これにより、2-オクタノールおよび/またはアクリル酸および/またはメチルアクリレートおよび/またはエチルアクリレートは、再生可能な原料から少なくとも部分的に製造される。
【0028】
再生可能原料由来のバイオベースの2-オクタノールは、ヒマシ油から得ることができる。
【0029】
再生可能原料由来のアクリル酸は、例えば、国際公開第2006/092272号または独国特許出願公開第102006039203号または欧州特許出願公開第2922580号に従って調製することができる。
【0030】
また、マスバランス方式によれば、モノマー組成物Mを合成するために使用される抽出物の少なくとも一部が、再生可能な原材料由来であることも可能である。したがって、化石原料に加えて、バイオナフサ(例えば、欧州特許出願公開第2290045号または欧州特許出願公開第2290034号に記載されているもの)などの再生可能原料も、スチームクラッカーなどの化学物質製造システムに入る。再生可能原料は、アクリル酸、ブチルアクリレート、メチルメタクリレートまたはアクリルアミドなどの化学バリューチェーンに沿った製品に変換される。これらの製品の再生可能材料の含有量は、マスバランス方式によって定義され、これらの製品に割り当てることができる。
【0031】
ポリマーラテックスの調製プロセスは、ラジカル乳化重合技術の周知のプロセスに従って実施される。モノマーMのフリーラジカル乳化重合の実行に必要な条件は、例えば、最初に引用された先行技術および「Emulsions-polymerisation」[Emulsion Polymerization]in Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,vol.8,pages 659 ff.(1987);D.C.Blackley,in High Polymer Latices,vol.1,pages 35 ff.(1966);H.Warson,The Applications of Synthetic Resin Emulsions,chapter 5,pages 246 ff.(1972);D.Diederich,Chemie in unserer Zeit 24,pages 135 to 142(1990);Emulsion Polymerisation,Interscience Publishers,New York(1965);独国特許出願公開第40 03 422号およびDispersionen synthetischer Hochpolymere[Dispersions of Synthetic High Polymers],F.Holscher,Springer-Verlag,Berlin(1969)から、当業者に十分によく知られている。
【0032】
フリーラジカルによって開始される水性乳化重合は、フリーラジカル重合開始剤(フリーラジカル開始剤)によって開始される。これらは、原則として、過酸化物、アゾ化合物およびレドックス開始剤系である。過酸化物は、無機過酸化物であっても有機過酸化物であってもよい。
【0033】
特定の実施形態では、無機過酸化物は、過酸化水素および過硫酸塩、例えば過硫酸のモノ-もしくはジ-アルカリ金属またはアンモニウム塩、例えばモノ-およびジナトリウム、-カリウムまたはアンモニウム塩からなる群から選択される。
【0034】
他の実施形態では、有機過酸化物は、アルキルヒドロペルオキシド、例えばtert-ブチルヒドロペルオキシド、p-メンチルヒドロペルオキシドまたはクミルヒドロペルオキシド、およびジアルキルまたはジアリールペルオキシド、例えばジ-tert-ブチルまたはジ-クミルペルオキシドからなる群から選択される。
【0035】
さらなる実施形態では、アゾ化合物は、2,2’-アゾ-ビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)および2,2’-アゾビス(アミジノプロピル)二塩酸塩からなる群から選択される。
【0036】
好ましい実施形態では、フリーラジカル開始剤は、無機過酸化物、特に過硫酸塩、およびレドックス開始剤系である。
【0037】
レドックス開始剤系に適した酸化剤は、本質的に上記の過酸化物である。使用され得る対応する還元剤は、低酸化状態の硫黄化合物、例えばアルカリ金属亜硫酸塩、例えば亜硫酸カリウムおよび/または亜硫酸ナトリウム、アルカリ金属亜硫酸水素塩、例えば亜硫酸水素カリウムおよび/または亜硫酸水素ナトリウム、アルカリ金属メタ重亜硫酸塩、例えばメタ重亜硫酸カリウムおよび/またはメタ重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシレート、例えばホルムアルデヒドスルホキシレートカリウムおよび/またはナトリウム、アルカリ金属塩、具体的には脂肪族スルフィン酸およびアルカリ金属硫化水素のカリウムおよび/またはナトリウム塩、例えば硫化水素カリウムおよび/または硫化水素ナトリウム、多価金属の塩、例えば硫酸鉄(II)、硫酸鉄(II)アンモニウム、リン酸鉄(II)、エンジオール、例えばジヒドロキシマレイン酸、ベンゾインおよび/またはアスコルビン酸、ならびに還元サッカライド、例えばソルボース、グルコース、フルクトースおよび/またはジヒドロキシアセトンである。
【0038】
一実施形態では、乳化重合Mのフリーラジカル開始剤の量は、最初に重合容器に完全に充填される。しかしながら、フリーラジカル開始剤を全く投入しないか、またはフリーラジカル開始剤を一部だけ、例えば水性重合媒体に必要なフリーラジカル開始剤の総量に基づいて40重量%以下、特に30重量%以下投入し、その後、重合条件下、モノマーMのフリーラジカル乳化重合中に、消費量に応じて全量または残りの量を1回または複数回に分けてバッチ式に、あるいは一定流量または変動流量で連続的に添加することも可能である。
【0039】
もう一つの好ましい実施形態では、本発明のフリーラジカル水性乳化重合は、0~170℃の範囲;より好ましくは50~120℃の範囲、最も好ましくは60~120℃の範囲の温度で行われ、特に、本発明のフリーラジカル水性乳化重合は、70~110℃の範囲の温度で行われる。フリーラジカル水性乳化重合は、1気圧未満、1気圧、または1気圧超の圧力で行うことができる。
【0040】
特定の実施形態では、重合は連鎖移動剤の存在下で行われる。連鎖移動剤は、脂肪族および/または芳香脂肪族ハロゲン化合物、例えば塩化n-ブチル、臭化n-ブチル、ヨウ化n-ブチル、塩化メチレン、二塩化エチレン、クロロホルム、ブロモホルム、ブロモトリクロロメタン、ジブロモジクロロメタン、四塩化炭素、四臭化炭素、塩化ベンジル、臭化ベンジル;有機チオ化合物、例えば第一級、第二級または第三級脂肪族チオール、例えばエタンチオール、n-プロパンチオール、2-プロパンチオール、n-ブタンチオール、2-ブタンチオール、2-メチル-2-プロパンチオール、n-ペンタンチオール、2-ペンタンチオール、3-ペンタンチオール、2-メチル-2-ブタンチオール、3-メチル-2-ブタンチオール、n-ヘキサンチオール、2-ヘキサンチオール、3-ヘキサンチオール、2-メチル-2-ペンタンチオール、3-メチル-2-ペンタンチオール、4-メチル-2-ペンタンチオール、2-メチル-3-ペンタンチオール、3-メチル-3-ペンタンチオール、2-エチルブタンチオール、2-エチル-2-ブタンチオール、n-ヘプタンチオールおよびその異性化合物、n-オクタンチオールおよびその異性化合物、n-ノナンチオールおよびその異性化合物、n-デカンチオールおよびその異性化合物、n-ウンデカンチオールおよびその異性化合物、n-ドデカンチオールおよびその異性化合物、n-トリデカンチオールおよびその異性化合物、置換チオール、例えば2-ヒドロキシエタンチオールなど、芳香族 チオール、例えばベンゼンチオール、オルト-、メタ-もしくはパラ-メチルベンゼンチオールなど、メルカプト酢酸(チオグリコール酸)のアルキルエステル、例えば2-エチルヘキシルチオグリコレート、メルカプトプロピオン酸のアルキルエステル、例えばオクチルメルカプトプロピオネート、さらに、Polymer Handbook,3rd edition,1989,J.Brandrup and E.H.Immergut,John Wiley&Sons,section II,pages 133~141に記載のさらなる硫黄化合物、ならびに脂肪族および/または芳香族アルデヒド、例えばアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドおよび/またはベンズアルデヒドなど、オレイン酸などの不飽和脂肪酸、非共役二重結合を有するジエン、例えばジビニルメタンまたはビニルシクロヘキサンなど、あるいは容易に引き抜き可能な水素原子を有する炭化水素、例えばトルエンなどからなる群から選択される。
【0041】
一般に、連鎖移動剤の総量は、存在する場合、モノマーMの総量に基づいて、1重量%を超えない。
【0042】
一般に、重合は界面活性剤の存在下で行われる。界面活性剤は、乳化剤および保護コロイドから選択することができる。保護コロイドは、乳化剤とは対照的に、2000ダルトンを超える分子量を有するポリマー化合物を意味すると理解されるが、乳化剤は典型的にはより低い分子量を有する。界面活性剤は、アニオン性もしくは非イオン性、または非イオン性およびアニオン性界面活性剤の混合物であり得る。
【0043】
アニオン性界面活性剤は、通常、リン酸基、ホスホン酸基、硫酸基およびスルホン酸基から選択される少なくとも1つのアニオン性基を有する。少なくとも1つのアニオン性基を有するアニオン性界面活性剤は、典型的には、それらのアルカリ金属塩、特にそれらのナトリウム塩の形態またはそれらのアンモニウム塩の形態で使用される。
【0044】
好ましい実施形態では、アニオン性界面活性剤は、特に少なくとも1つの硫酸基またはスルホン酸基を有するアニオン性乳化剤である。同様に、少なくとも1つのリン酸基またはホスホン酸基を有するアニオン性乳化剤は、唯一のアニオン性乳化剤として、または少なくとも1つの硫酸基またはスルホン酸基を有する1つ以上のアニオン性乳化剤と組み合わせて使用することができる。
【0045】
少なくとも1つの硫酸基またはスルホン酸基を有するアニオン性乳化剤の例は、例えば、特にアルキル硫酸塩、特にC8~C22-アルキル硫酸塩のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、エトキシル化アルカノールの硫酸モノエステル、特にエトキシル化C8~C22-アルカノール(好ましくはエトキシル化レベル(EOレベル)が2~40の範囲のもの)の硫酸モノエステルの塩、特にアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、エトキシル化アルキルフェノールの硫酸モノエステル、特にエトキシル化C4~C18-アルキルフェノール(EOレベルは好ましくは3~40)の硫酸モノエステルの塩、特にアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、アルキルスルホン酸、特にC8~C22-アルキルスルホン酸の塩、特にアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、ジアルキルエステル、特にスルホコハク酸のジC1~C18-アルキルエステルの塩、特にアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸、特にC4~C22-アルキルベンゼンスルホン酸の塩、特にアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、ならびにモノもしくはジスルホン化アルキル置換ジフェニルエーテル、例えば、一方または両方の芳香環上にC4~C24-アルキル基を有するビス(フェニルスルホン酸)エーテルの塩、特にアルカリ金属およびアンモニウム塩である。例は、米国特許第4,269,749号およびDowfax(登録商標)2A1(ダウ・ケミカル・カンパニー)である。
【0046】
特に好ましい実施形態では、アニオン性界面活性剤は、以下の群から選択されるアニオン性乳化剤である:
・アルキル硫酸塩、特にC8~C22-アルキル硫酸の塩、特にアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、
・エトキシル化アルカノールの硫酸モノエステル、特にエトキシル化C8~C22-アルカノールの硫酸モノエステルの塩、特にアルカリ金属塩(好ましくはエトキシル化レベル(EOレベル)が2~40の範囲のもの)
・エトキシル化アルキルフェノールの硫酸モノエステル、特にエトキシル化C4~C18-アルキルフェノールの硫酸モノエステル(EOレベルは好ましくは3~40)、アルキルベンゼンスルホン酸、特にC4~C22-アルキルベンゼンスルホン酸の硫酸モノエステル、および
・モノもしくはジスルホン化アルキル置換ジフェニルエーテル、例えば、一方または両方の芳香環上にC4~C24-アルキル基を有するビス(フェニルスルホン酸)エーテル。
【0047】
リン酸基またはホスホン酸基を有するアニオン性乳化剤の例としては、限定されるものではないが、以下の群から選択される以下の塩が挙げられる:
・モノ-およびジアルキルホスフェート、特にC8~C22-アルキルホスフェートの塩、特にアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、
・好ましくは2~40の範囲、特に3~30の範囲のアルコキシル化レベルを有するC2~C3-アルコキシル化アルカノールのリン酸モノエステル、例えばエトキシル化C8~C22-アルカノール(好ましくはエトキシル化レベル(EOレベル)が2~40の範囲のもの)のリン酸モノエステル、プロポキシ化C8~C22-アルカノール(好ましくはプロポキシ化レベル(POレベル)が2~40のもの)のリン酸モノエステル、および、エトキシル化-コ-プロポキシ化C8~C22-アルカノール(好ましくはエトキシル化レベル(EOレベル)が1~20の範囲でありプロポキシ化レベルが1~20のもの)のリン酸モノエステルの塩、特にアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、
・エトキシル化アルキルフェノールのリン酸モノエステル、特にエトキシル化C4~C18-アルキルフェノール(EOレベルは好ましくは3~40)のリン酸モノエステルの塩、特にアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、
・アルキルホスホン酸、特にC8~C22-アルキルホスホン酸の塩、特にアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、ならびに
・アルキルベンゼンホスホン酸、特にC4~C22-アルキルベンゼンホスホン酸の塩、特にアルカリ金属塩およびアンモニウム塩。
【0048】
さらに適切なアニオン性界面活性剤は、Houben-Weyl,Methoden der organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry],volume XIV/1,Makromolekulare Stoffe[Macromolecular Substances],Georg-Thieme-Verlag,Stuttgart,1961,p.192-208に見出すことができる。
【0049】
他の好ましい実施形態では、界面活性剤は、少なくとも1つの硫酸基またはスルホン酸基を有する、少なくとも1つのアニオン性乳化剤を含む。少なくとも1つの硫酸基またはスルホン酸基を有する少なくとも1つのアニオン性乳化剤は、アニオン性乳化剤の唯一のタイプであり得る。しかしながら、少なくとも1つの硫酸基またはスルホン酸基を有する少なくとも1つのアニオン性乳化剤と、少なくとも1つのリン酸基またはホスホン酸基を有する少なくとも1つのアニオン性乳化剤との混合物も使用され得る。このような混合物において、少なくとも1つの硫酸基またはスルホン酸基を有する少なくとも1つのアニオン性乳化剤の量は、好ましくは、本発明の方法において使用されるアニオン性界面活性剤の総重量に基づいて少なくとも50%重量である。特に、少なくとも1つのリン酸基またはホスホン酸基を有するアニオン性乳化剤の量は、本発明の方法において使用されるアニオン性界面活性剤の総重量に基づいて20%重量を超えない。
【0050】
他の好ましい実施形態では、界面活性剤はまた、特に非イオン性乳化剤から選択される1つ以上の非イオン性界面活性物質を含んでもよい。適切な非イオン性乳化剤は、例えば、芳香脂肪族または脂肪族非イオン性乳化剤、例えば、エトキシル化モノ-、ジ-およびトリアルキルフェノール(EOレベル:3~50、アルキル鎖:C4~C10)、長鎖アルコールのエトキシレート(EOレベル:3~100、アルキル鎖:C8~C36)、ならびにポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドホモポリマーおよびコポリマーである。これらは、ランダムな分布でまたはブロックの形態で共重合されたアルキレンオキシド単位を含み得る。非常に適切な例は、EO/POブロックコポリマーである。長鎖アルカノールのエトキシレート(アルキル鎖C1~C30、平均エトキシル化レベル5~100)が好ましく、これらの中でも、C12~C20アルキル鎖および平均エトキシル化レベル5~20を有するもの、ならびにエトキシル化モノアルキルフェノールが特に好ましい。好ましくは、本発明の方法で使用される界面活性剤は、本発明の方法で使用される界面活性剤の総量に基づいて、60%重量未満、特に50%重量以下の非イオン性界面活性剤を含む。
【0051】
他の実施形態では、本発明の方法で使用される界面活性剤は、少なくとも1つのアニオン性界面活性剤および少なくとも1つの非イオン性界面活性剤を含み、アニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤の比は、通常、0.5:1~10:1、特に1:1~5:1の範囲である。
【0052】
他の好ましい実施形態では、1または複数の界面活性剤は、1または複数の界面活性剤の量が、重合されるモノマーMに基づいて、0.2重量%~5重量%の範囲、特に0.5重量%~3重量%の範囲であるような量で使用される。
【0053】
重合における水性反応媒質はまた、原則として、少量(≦5重量%)の水溶性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノールだけでなく、アセトンなども含み得る。しかしながら、好ましくは、本発明の方法は、そのような溶媒の非存在下で行われる。
【0054】
一般に、得られた水性ポリマー分散液は、いずれの場合にも水性ポリマー分散液の総重量に基づいて、10重量%~70重量%、好ましくは20重量%~65重量%、より好ましくは30重量%~60重量%、最も好ましくは40重量%~60重量%の範囲のポリマー固形分を有する。
【0055】
シードラテックスの存在下でフリーラジカル乳化重合を行うことが有利であることが見出された。シードラテックスは、モノマーMの計量を開始する前に水性重合媒体中に存在するポリマーラテックスである。シードラテックスは、本発明のフリーラジカル乳化重合で得られる最終的なポリマーラテックスの粒径をより良好に調整するのに役立ち得る。
【0056】
基本的には、どのポリマーラテックスもシードラテックスとして機能し得る。本発明の目的のために、ポリマー粒子の粒径が比較的小さいシードラテックスが好ましい。20℃での動的光散乱によって求められるシードラテックスのポリマー粒子のZ平均粒径は、好ましくは10~80 nm、特に10~50 nmの範囲である。好ましくは、シードラテックスのポリマー粒子は、エチレン性不飽和モノマーで作製され、エチレン性不飽和モノマーは、シードラテックスを形成するモノマーの総重量に基づいて、少なくとも95重量%の、アクリル酸のC2~C10-アルキルエステル、特にエチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メタクリル酸のC1~C4-アルキルエステル、特にメチルメタクリレート、およびビニル芳香族モノマー、特にスチレンから選択される1以上のモノマーを含む。
【0057】
このため、シードラテックスは、通常、モノマーMの計量を開始する前に重合容器に投入される。特に、シードラテックスが重合容器に投入され、続いて重合条件が確立され、モノマーMの計量が開始される前にフリーラジカル開始剤の少なくとも一部が重合容器に投入される。
【0058】
固体として計算されるシードラテックスの量は、重合されるモノマーMa)、b)、c)およびd)の総重量に基づいて、0.1~10重量%、特に0.5~5重量%の範囲であることが多い。
【0059】
本発明はまた、
i)上記で定義した少なくとも1つの水性ポリマーラテックス;および
ii)二酸化チタン顔料
を含む水性コーティング組成物にも関する。
【0060】
本発明はまた、二酸化チタン顔料を含有する水性コーティング組成物におけるバインダとしての水性ポリマーラテックスの使用にも関する。
【0061】
ポリマー複合材料の水性分散液を調製するために使用される水性TiO2顔料スラリーまたはペーストのTiO2濃度は、一般に、30重量%~85重量%、しばしば40重量%~80重量%の範囲であり、いずれの場合にも水性TiO2顔料スラリーまたはペーストの総重量に基づく。ポリマー複合体の水性分散液を調製するために使用される二酸化チタン顔料は、コーティング組成物、特に水性コーティング組成物に従来使用されている任意のTiO2顔料であり得る。多くの場合、TiO2顔料が使用され、TiO2粒子は好ましくはルチル型である。別の好ましい実施形態では、TiO2粒子は、例えばアルミニウム、ケイ素およびジルコニウム化合物でコーティングすることもできる。
【0062】
一般に、ポリマーと二酸化チタン顔料との重量比は、0.1:5.0以上5.0:0.1以下の範囲である。好ましくは、ポリマーと二酸化チタン顔料との重量比は、0.5:5.0以上5.0:0.5以下の範囲内である。特により好ましくは、ポリマーと二酸化チタン顔料との重量比は、0.5:3.0以上3.0:0.5以下の範囲内、特に0.5:1.5以上1.5:0.5以下の範囲内である。
【0063】
好ましくは、二酸化チタン顔料は、光散乱または電子顕微鏡によって求められるように、0.1μm以上0.5μm以下の範囲の平均一次粒径を有する。
【0064】
一般に、水性コーティング組成物は、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、成膜助剤、殺生物剤、湿潤剤または分散剤、充填剤および合体剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む。
【0065】
水性コーティング組成物は、TiO2顔料粉末またはTiO2顔料の水性スラリーもしくは水性ペーストを本発明の水性ポリマーラテックスと混合することによって、好ましくは混合物にせん断を加えることによって、例えば水性塗料を調製するために従来使用されている溶解剤を使用することによって、簡単に調製することができる。TiO2顔料および本発明の水性ポリマーラテックスの水性スラリーまたは水性ペーストを調製し、それを本発明のさらなるポリマーラテックスまたは任意の他のポリマーラテックスバインダーに組み込むか、または混合することも可能となる。
【0066】
ポリマー複合材料の水性分散物はまた、本発明の水性ポリマーラテックスを、TiO2顔料を既に含有する塗料の水性ベース配合物にバインダまたは共バインダとして組み込むことによって、例えば、本発明の水性ポリマーラテックスを、塗料配合物に従来使用されるさらなる添加剤を既に含有する顔料配合物と混合することによって調製することもできる。
【0067】
水性顔料スラリーまたはペースト中のTiO2顔料粒子を安定化させるために、混合は、場合により、分散剤などの水性顔料スラリーまたは顔料ペーストに従来使用されている添加剤の存在下で行われてもよい。適切な分散剤としては、限定されるものではないが、例えば、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウムまたはポリリン酸アンモニウムなどのポリリン酸塩、アクリル酸のホモポリマーもしくはコポリマーまたは無水マレイン酸ポリマーのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸ナトリウムなどのポリホスホン酸塩、およびナフタレンスルホン酸塩、特にそれらのナトリウム塩が挙げられる。
【0068】
ポリマー複合材料の水性分散液を調製するために使用される水性ポリマーラテックスのポリマー濃度は、一般に、いずれの場合にも水性ポリマーラテックスの総重量に基づいて、10重量%~70重量%、好ましくは20重量%~65重量%、最も好ましくは30重量%~60重量%の範囲である。
【0069】
本発明のポリマーラテックスおよび二酸化チタン顔料および任意の従来のバインダに加えて、水性コーティング組成物は、TiO2顔料および/または充填剤とは異なる1つ以上の顔料を含有してもよい。
【0070】
TiO2顔料とは異なる適切な顔料は、例えば、無機白色顔料、例えば硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、塩基性炭酸塩、三酸化アンチモン、リトポン(硫化亜鉛+硫酸バリウム)など、または着色顔料、例えば酸化鉄、カーボンブラック、グラファイト、亜鉛黄、亜鉛緑、群青、マンガンブラック、アンチモンブラック、マンガンバイオレット、プルシアンブルーまたはパリグリーンなどである。無機顔料に加えて、本発明のエマルジョン塗料は、有機着色顔料、例えばセピア、ガンボージ、キャッセルブラウン、トルイジンレッド、パラレッド、ハンザイエロー、インジゴ、アゾ染料、アントラキノノイドおよびインジゴイド染料、ならびにジオキサジン、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料および金属錯体顔料も含み得る。また、Ropaque(登録商標)およびAQACell(登録商標)分散液などの、光散乱を増強するための空気含有物を有する合成白色顔料も適している。さらに、BASF SEのLuconyl(登録商標)ブランド、例えば、Luconyl(登録商標)イエロー、Luconyl(登録商標)ブラウンおよびLuconyl(登録商標)レッド、特に透明バージョンも適している。
【0071】
好ましい充填剤は、長石などのアルミノケイ酸塩、カオリン、タルク、マイカおよびマグネサイトなどのケイ酸塩;アルカリ土類金属炭酸塩、例えば方解石またはチョークの形態の炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよびドロマイトなど;アルカリ土類金属硫酸塩、例えば硫酸カルシウム、二酸化ケイ素などからなる群から選択される。本発明のコーティング組成物では、微粉化された充填剤が当然好ましい。充填剤は、個々の成分の形で使用されてよい。しかしながら、実際には、炭酸カルシウム/カオリン、炭酸カルシウム/タルクなどの充填剤混合物が特に有用であることが見出されている。光沢塗料は、一般に、非常に細かく分割された少量の充填剤のみを含むか、または充填剤を全く含まない。充填剤には、望ましい光沢を著しく損なう艶消し剤も含まれている。艶消し剤は、一般に透明であり、有機物であっても無機物であってもよい。艶消し剤の例は、無機ケイ酸塩、例えば、W.R.Grace&CompanyのSyloid(登録商標)ブランドおよびEvonik GmbHのAcematt(登録商標)ブランドである。有機艶消し剤は、例えば、BYK-Chemie GmbHからCeraflour(登録商標)ブランドで、またCeramat(登録商標)ブランドで、Deuteron GmbHからDeuteron MK(登録商標)ブランドで入手可能である。
【0072】
コーティング組成物中の顔料および充填剤の割合は、顔料体積濃度(PVC)によってそれ自体公知の方法で説明することができる。PVCは、乾燥した塗膜中のバインダ(VB)、顔料(VP)および充填剤(VF)の体積からなる総体積に対する顔料(VP)および充填剤(VF)の体積の比をパーセントで表す:
PVC=(VP+VF)×100/(VP+VF+VB)。
【0073】
好ましくは、本発明のコーティング組成物の顔料体積濃度PVCは≦35%である。
【0074】
さらに好ましい実施形態では、湿潤剤は、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウムまたはポリリン酸アンモニウム、アクリル酸コポリマーまたは無水マレイン酸コポリマーのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、ポリホスホネート、例えばナトリウム1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホネートおよびナフタレンスルホン酸塩、特にそれらのナトリウム塩からなる群から選択される。
【0075】
適切な成膜助剤は、例えば、イーストマン・ケミカルのテキサノールまたはOptifilmと、例えばBASF SEからSolvenonおよびLusolvanの名称で、さらにDowからDowanolの商品名で市販されている、グリコールエーテルおよびエステルである。成膜助剤の量は、配合物全体に基づいて、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満である。
【0076】
適切な増粘剤は、例えば、ポリウレタン増粘剤などの会合性増粘剤である。増粘剤の量は、一般に、配合物全体に基づいて、5重量%未満、より好ましくは3重量%未満である。
【0077】
水性塗料のためのさらなる配合成分は、M.Schwartz and R.Baumstark「Water-based Acrylates for Decorative Coatings」,Curt R.Vincentz Verlag,Hanover,2001,p.191-212(ISBN 3-87870-726-6)に詳細に記載されている。
【0078】
コーティング組成物は、慣用的な様式で、例えば、塗装、噴霧、浸漬、圧延、バーコーティングによって基材に塗布され得る。
【0079】
この場合、基材のコーティングは、基材が最初に本発明の水性コーティング配合物でコーティングされ、次いで、特に-10~50℃、有利には5~40℃、特に有利には10~35℃の温度範囲内で、水性コーティングが乾燥工程に供されるように行われる。
【0080】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明される。
【実施例
【0081】
本実施例では以下の成分が使用される。
【0082】
【表1】
【0083】
実施例E1
2-オクチルアクリレート、n-ブチルアクリレートおよびメチルメタクリレートを有するポリマーをベースとしたバインダ
撹拌機、温度制御、窒素入口およびいくつかの注入口を備えた反応器に、244.3 gの脱イオン水、27.3 gのポリスチレンシード分散液(33重量%、粒径:30 nm)を投入する。反応混合物を窒素でパージし、85℃に加熱する。85℃で5.0 gのフィード2を添加する。5分後、フィード1およびフィード2を180分で添加する。フィード1:400.5 gの脱イオン水、18.5 gのDowfax 2A1、20.8 gのルテンゾールTO 82、6.9 gのアクリル酸、13.9 gのアクリルアミド(50重量%水溶液)、34.8 gの2-オクチルアクリレート、349.0 gのメチルメタクリレート、300.0 gのn-ブチルアクリレート。フィード2:19.8 gの過硫酸ナトリウム水溶液(7重量%)。反応混合物を85℃で30分間後重合する。次いで、フィード3およびフィード4を60分で添加する。フィード3:6.9 gのt-ブチルヒドロペルオキシド水溶液(10重量%)。フィード4:6.2 gのロンガリットC水溶液(10重量%)。次いで、反応混合物を周囲温度に冷却し、水酸化ナトリウムでpH 8~9に中和する。
Tg(乾燥分散液):21℃
平均粒径:133 nm
固形分:48.7重量%
【0084】
実施例E2
2-オクチルアクリレート、n-ブチルアクリレートおよびメチルメタクリレートを有するポリマーをベースとしたバインダ
撹拌機、温度制御、窒素入口およびいくつかの注入口を備えた反応器に、244.3 gの脱イオン水、27.3 gのポリスチレンシード分散液(33重量%、粒径:30 nm)を投入する。反応混合物を窒素でパージし、85℃に加熱する。85℃で5.0 gのフィード2を添加する。5分後、フィード1およびフィード2を180分で添加する。フィード1:400.5 gの脱イオン水、18.5 gのDowfax 2A1、20.8 gのルテンゾールTO 82、6.9 gのアクリル酸、13.9 gのアクリルアミド(50重量%水溶液)、69.5 gの2-オクチルアクリレート、349.0 gのメチルメタクリレート、265.0 gのn-ブチルアクリレート。フィード2:19.8 gの過硫酸ナトリウム水溶液(7重量%)。反応混合物を85℃で30分間後重合する。次いで、フィード3およびフィード4を60分で添加する。フィード3:6.9 gのt-ブチルヒドロペルオキシド水溶液(10重量%)。フィード4:6.2 gのロンガリットC水溶液(10重量%)。次いで、反応混合物を周囲温度に冷却し、水酸化ナトリウムでpH 8~9に中和する。
Tg(乾燥分散液):17℃
平均粒径:132 nm
固形分:48.0重量%
【0085】
比較例C1
n-ブチルアクリレートおよびメチルメタクリレートを有するポリマーをベースとしたバインダ
撹拌機、温度制御、窒素入口およびいくつかの注入口を備えた反応器に、244.3 gの脱イオン水、27.3 gのポリスチレンシード分散液(33重量%、粒径:30 nm)を投入する。反応混合物を窒素でパージし、85℃に加熱する。85℃で5.0 gのフィード2を添加する。5分後、フィード1およびフィード2を180分で添加する。フィード1:400.5 gの脱イオン水、18.5 gのDowfax 2A1、20.8 gのルテンゾールTO 82、6.9 gのアクリル酸、13.9 gのアクリルアミド(50重量%水溶液)、349.0 gのメチルメタクリレート、335.0 gのn-ブチルアクリレート。フィード2:19.8 gの過硫酸ナトリウム水溶液(7重量%)。反応混合物を85℃で30分間後重合する。次いで、フィード3およびフィード4を60分で添加する。フィード3:6.9 gのt-ブチルヒドロペルオキシド水溶液(10重量%)。フィード4:6.2 gのロンガリットC水溶液(10重量%)。次いで、反応混合物を周囲温度に冷却し、水酸化ナトリウムでpH 8~9に中和する。
Tg(乾燥分散液):19℃
平均粒径:132 nm
固形分:48.1重量%
【0086】
実施例E3
実施例E1のバインダを含む半光沢塗料の配合
315.0 gのKronos 4311顔料を15.0 gの水と混合する。低撹拌速度で、1.75 gのAMP-95中和剤(アンガス・ケミカル社)、5.0 gのプロピレングリコール(Univar)、2.0 gのフォームスター2420消泡剤(BASF)、10.0 gのタモール165 A分散剤(ダウ)および3.0 gのHydropalat WE 3320湿潤剤(BASF)を添加する。高撹拌速度で、1.5 gのAttagel 50(BASF)、25.0 gのMinex 10(シベルコ)充填剤および20.0 gのAquaflow NHS-310(アシュランド)非イオン性会合性増粘剤を添加し、30分間混合する。その後、105.8 gの脱イオン水を添加し、混合物を400μmフィルターで濾過する。次いで、実施例E1からのバインダ496.8 g、25.0 gのRopaque Ultra Eポリマー顔料(ダウ)、2.0 gのフォームスター2420消泡剤(BASF)、9.0 gのテキサノール合体剤(イーストマン)および7.5 gのOptifilm 400合体剤(イーストマン)を添加し、5分間混合する。次いで、2.0 gのプロキセルAQ殺生物剤(ロンザ)、3.0 gのPolyphase 663殺真菌剤(トロイ・コーポレーション)および2.0 gのRheolate CVS 10非イオン性会合性増粘剤(エレメンティス)を添加し、5分間混合する。最後に、2.0 gのAcrysol RM 895非イオン性会合性増粘剤(ダウ)及び3.5 gの水を添加し、混合物を中速で30分間攪拌する。
【0087】
実施例E4
実施例E2のバインダを含む半光沢塗料の配合
315.0 gのKronos 4311顔料を15.0 gの水と混合する。低撹拌速度で、1.75 gのAMP-95中和剤(アンガス・ケミカル社)、5.0 gのプロピレングリコール(Univar)、2.0 gのフォームスター2420消泡剤(BASF)、10.0 gのタモール165 A分散剤(ダウ)および3.0 gのHydropalat WE 3320湿潤剤(BASF)を添加する。高撹拌速度で、1.5 gのAttagel 50(BASF)、25.0 gのMinex 10(シベルコ)充填剤および20.0 gのAquaflow NHS-310(アシュランド)非イオン性会合性増粘剤を添加し、30分間混合する。その後、96.3 gの脱イオン水を添加し、混合物を400μmフィルターで濾過する。次いで、実施例E2からのバインダ504.0 g、25.0 gのRopaque Ultra Eポリマー顔料(ダウ)、2.0 gのフォームスター2420消泡剤(BASF)、9.0 gのテキサノール合体剤(イーストマン)および6.0 gのOptifilm 400合体剤(イーストマン)を添加し、5分間混合する。次いで、2.0 gのプロキセルAQ殺生物剤(ロンザ)、3.0 gのPolyphase 663殺真菌剤(トロイ・コーポレーション)および2.0 gのRheolate CVS 10非イオン性会合性増粘剤(エレメンティス)を添加し、5分間混合する。最後に、2.0 gのAcrysol RM 895非イオン性会合性増粘剤(ダウ)および5.1 gの水を加え、混合物を中速で30分間攪拌する。
【0088】
比較例C2
実施例C1のバインダを含む半光沢塗料の配合
315.0 gのKronos 4311顔料を15.0 gの水と混合する。低撹拌速度で、1.75 gのAMP-95中和剤(アンガス・ケミカル社)、5.0 gのプロピレングリコール(Univar)、2.0 gのフォームスター2420消泡剤(BASF)、10.0 gのタモール165 A分散剤(ダウ)および3.0 gのHydropalat WE 3320湿潤剤(BASF)を添加する。高撹拌速度で、1.5 gのAttagel 50(BASF)、25.0 gのMinex 10(シベルコ)充填剤および20.0 gのAquaflow NHS-310(アシュランド)非イオン性会合性増粘剤を添加し、30分間混合する。その後、100.0 gの脱イオン水を添加し、混合物を400μmフィルターで濾過する。次いで、実施例C1からのバインダ503.0 g、25.0 gのRopaque Ultra Eポリマー顔料(ダウ)、2.0 gのフォームスター2420消泡剤(BASF)、9.0 gのテキサノール合体剤(イーストマン)および5.0 gのOptifilm 400合体剤(イーストマン)を添加し、5分間混合する。次いで、2.0 gのプロキセルAQ殺生物剤(ロンザ)、3.0 gのPolyphase 663殺真菌剤(トロイ・コーポレーション)および3.2gのRheolate CVS 10非イオン性会合性増粘剤(エレメンティス)を添加し、5分間混合する。最後に、1.5 gのAcrysol RM 895非イオン性会合性増粘剤(ダウ)および5.4 gの水を添加し、混合物を中速で30分間攪拌する。
ASTM D2486に従って測定した耐擦過性:
E3のコーティングが破損するまでの擦過回数:1411回
E4のコーティングが破損するまでの擦過回数:1247回
C2のコーティングが破損するまでの擦過回数:1158回
【0089】
実施例E3およびE4の耐擦過性は、実施例C2と比較して著しく改善されている。
【0090】
光沢の測定:
3ミルのドローダウンバーを用いてLeneta 3B白黒シールド加工ドローダウンカードに塗膜を作製した。膜を室温で24時間乾燥させる。光沢は光沢計で測定した。結果は以下の通りであった:
実施例E3のコーティングの光沢(20°):8.4
実施例E4のコーティングの光沢(20°):8.4
実施例C2のコーティングの光沢(20°):7.7
実施例E3のコーティングの光沢(60°):42.2
実施例E4のコーティングの光沢(60°):42.3
実施例E4のコーティングの光沢(60°):40.8
実施例E3のコーティングの光沢(85°):81.8
実施例E4のコーティングの光沢(85°):81.7
実施例C2のコーティングの光沢(85°):80.9
【0091】
実施例E3およびE4の光沢は、実施例C2と比較して改善されている。
ASTM D562に従って測定した低剪断粘度:
E3の実施例のコーティングの低剪断粘度(調製後7日)::96.2 KU
E4の実施例のコーティングの低剪断粘度(調製後7日):95.6 KU
C2の実施例のコーティングの低剪断粘度(調製後7日):94.8 KU
【0092】
不透明度の測定:
3ミルのドローダウンバーを用いてLeneta 3B白黒シールド加工ドローダウンカードに塗膜を作製した。膜を室温で24時間乾燥させる。不透明度は、Lanetaカードの黒色部分および白色部分上の乾燥したコーティングからの反射光の比として分光光度法で決定した。不透明度は、黒色の表面を隠すコーティングの能力を示す。結果は以下の通りであった:
実施例E3のコーティングの不透明度:97.52%
実施例E4のコーティングの不透明度:97.53%
実施例C2のコーティングの不透明度:97.51%
【0093】
ASTM D3359に従って測定されたコート間のアルミニウムおよびアルキドの接着性:E3、E4およびC2のコーティングで同等。
【0094】
ASTM D4828による染み除去:鉛筆、口紅、クレヨン、ボールペン、赤ワイン、ケチャップ、コーヒー、マスタードのE3、E4およびC2のコーティングで同等(目視検査による評価)。
【0095】
汚れ付着性の決定:
黄マツ木材表面のミルグレーズ(mill glaze)を水で擦過し、一晩乾燥させる。
【0096】
基材は、試験されるサンプルの数に応じてセクションに分割される。適切なブラシを使用して、試験塗料サンプルを自然な広がり速度で塗布する。
【0097】
コーティングを室温でそれぞれ4時間および24時間硬化させる。次いで、コーティングされた領域の半分を2インチの乾燥した汚れ(アリゾナ土またはカーペット土)で覆う。パネルを15分間放置した後、垂直に傾けて軽くたたいて汚れを落とす。
【0098】
各サンプルの汚れた領域を軽くブラッシングする(15ストローク)。
【0099】
汚れ付着性は、実施例E3、E4および実施例C2のコーティングで同等である(目視検査による評価)。
【国際調査報告】