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特表2025-505621フェリチン重鎖1発現のアップレギュレーション
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  • 特表-フェリチン重鎖1発現のアップレギュレーション 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】フェリチン重鎖1発現のアップレギュレーション
(51)【国際特許分類】
   C07K 4/12 20060101AFI20250220BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250220BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20250220BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20250220BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20250220BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20250220BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20250220BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20250220BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20250220BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20250220BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20250220BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20250220BHJP
   A61K 9/127 20250101ALI20250220BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
C07K4/12
C12N5/10 ZNA
C12N15/12
C12N15/63 Z
C12N5/071
A61K38/08
A61P7/06
A61K47/12
A61K47/10
A61K47/46
A61K47/42
A61K9/50
A61K9/127
A61K9/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546221
(86)(22)【出願日】2023-02-03
(85)【翻訳文提出日】2024-08-27
(86)【国際出願番号】 US2023061975
(87)【国際公開番号】W WO2023150705
(87)【国際公開日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】63/306,978
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524289905
【氏名又は名称】エイチビーシー イミュノロジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フラムローズ, ボミ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90Y
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB12
4B065BB14
4B065BB19
4B065BB25
4B065BB34
4B065BC03
4B065BC07
4B065BC11
4B065BD16
4B065CA26
4B065CA41
4B065CA44
4C076AA19
4C076AA31
4C076AA64
4C076BB01
4C076BB02
4C076BB29
4C076DD41N
4C076EE23N
4C076EE41N
4C076EE56
4C076FF34
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA17
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA60
4C084NA14
4C084ZA551
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA53
4H045CA52
4H045EA01
4H045EA20
4H045FA70
4H045FA74
4H045GA25
(57)【要約】
本開示は、哺乳動物細胞によるフェリチン重鎖1(FTH1)の発現を増加可能な単離されたオリゴペプチド、ならびにそのオリゴペプチドの製剤に関する。前記製剤は、鉄欠乏および/または貧血に関連する、疾患または状態を処置するために適している。本開示の単離されたオリゴペプチドはXm(R/D)EES(G/D)(E/K)Xn(コンセンサス番号1)のアミノ酸配列からなり、mおよびnは0~10の範囲から独立して選択される整数であり、各Xは存在する場合には任意のアミノ酸から独立して選択される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Xm(R/D)EES(G/D)(E/K)Xn(コンセンサス番号1)のアミノ酸配列からなる単離されたオリゴペプチドであって、mおよびnは0~10の範囲から独立して選択される整数であり、各Xは存在する場合には任意のアミノ酸から独立して選択される、単離されたオリゴペプチド。
【請求項2】
XjREESDKPXk(配列番号18)のアミノ酸配列からなる単離されたオリゴペプチドであって、jは0~10の範囲から選択される整数であり、kは0~9の範囲から選択される整数であり、各Xは存在する場合には任意のアミノ酸から独立して選択される、単離されたオリゴペプチド。
【請求項3】
XgREESDKP(XhXi)(配列番号19)のアミノ酸配列を含み、Xgはプロリンであるかまたは存在せず、XhXiはメチオニンおよびチロシンであるかまたは存在しない、請求項2に記載の単離されたオリゴペプチド。
【請求項4】
REESDKPMY(配列番号6)のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の単離されたオリゴペプチド。
【請求項5】
PREESDKP(配列番号7)のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の単離されたオリゴペプチド。
【請求項6】
REESGEL(配列番号8)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離されたオリゴペプチド。
【請求項7】
REESDKPMY(配列番号6)、PREESDKP(配列番号7)、REESGEL(配列番号8)、REESGE(配列番号1)、REESGEP(配列番号2)、KEEDEESGE(配列番号3)、KPREESGE(配列番号4)、またはLDEESGEP(配列番号5)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離されたオリゴペプチド。
【請求項8】
前記オリゴペプチドと接触させた哺乳動物細胞によるフェリチン重鎖1(FTH1)mRNAの発現を増加可能である、請求項7に記載の単離されたオリゴペプチド。
【請求項9】
請求項8に記載の単離されたオリゴペプチドと少なくとも1種の薬学的に受容可能な賦形剤とを含む、製剤。
【請求項10】
請求項8に記載の単離されたオリゴペプチドと経口送達剤とを含む、製剤。
【請求項11】
前記経口送達剤が吸収促進剤、脂肪酸、酵素阻害剤、ポリエチレングリコール、粘膜付着性ポリマー、細胞透過性ペプチド、またはそれらの組合せを含む、請求項10に記載の製剤。
【請求項12】
腸溶コーティング、リポソーム、ミクロスフェア、および/またはマイクロ粒子/ナノ粒子をさらに含む、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
請求項7に記載のオリゴペプチドをコードする、単離された核酸。
【請求項14】
プロモーターと作動可能に組み合わされた請求項13に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項15】
請求項13に記載の単離された核酸または請求項14に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項16】
請求項9~12のいずれか一項に記載の製剤を含む、医薬。
【請求項17】
哺乳動物細胞によるフェリチン重鎖1(FTH1)mRNAの発現を増加させるための方法であって、
前記哺乳動物細胞と、FTH1発現を増加させるために有効な量の請求項9~12のいずれか一項に記載の製剤とを接触させること
を含む、方法。
【請求項18】
前記哺乳動物細胞が腸上皮細胞、骨格筋細胞、アストロサイト、またはマクロファージである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
接触させることがインビボで行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
フェリチン重鎖1(FTH1)発現を増加させることを必要とする哺乳動物対象においてFTH1発現を増加させるための方法であって、
前記対象に、FTH1発現を増加させるために有効な量の請求項9~12のいずれか一項に記載の製剤を投与すること
を含む、方法。
【請求項21】
血清フェリチン濃度を増加させることを必要とする哺乳動物対象において血清フェリチン濃度を増加させるための方法であって、
前記対象に、血清フェリチン濃度を増加させるために有効な量の請求項9~12のいずれか一項に記載の製剤を投与すること
を含む、方法。
【請求項22】
疾患または状態を処置または予防することを必要とする哺乳動物対象において疾患または状態を処置または予防するための方法であって、
前記対象に、前記疾患または状態を処置または予防するために有効な量の請求項9~12のいずれか一項に記載の製剤を投与すること
を含む、方法。
【請求項23】
前記疾患または状態が鉄欠乏に関連する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記疾患または状態が貧血に関連する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記疾患または状態がレストレスレッグス症候群である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記製剤が口から投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記製剤が経腸投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記製剤が頬側経路、唇下経路、または舌下経路によって投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記哺乳動物対象がヒト対象である、請求項20~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記ヒト対象ががんを有しない、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2022年2月4日に出願された米国特許仮出願第63/306,978号の優先権および利益を主張し、この米国特許仮出願の内容はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
(電子配列表の参照)
電子配列表(197732000740SEQLIST.xml;サイズ:18,684バイト;および作成日:2023年1月31日)の内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0003】
(分野)
本開示は、上皮細胞によるフェリチン重鎖1(FTH1)の発現を増加可能な単離されたオリゴペプチド、ならびにそのオリゴペプチドの製剤に関する。前記製剤は、鉄欠乏および/または貧血に関連する、疾患または状態を処置するために適している。
【背景技術】
【0004】
(背景)
ミルク、水または他の飲料と混合したタンパク質粉末は、筋肉量および筋力を増加させることにより活動的な成人が身体の性能を改善することを支援すると報告されている、一般的なダイエタリー・サプリメントである(Pasiakosら、Sports Med、45:111~131、2015)。また、タンパク質サプリメントは、持久力トレーニングおよび損傷からの回復の途中にあるアスリートにとって有益であり得る。さらに、タンパク質サプリメントとしてのサケタンパク質加水分解産物の消費は、鉄欠乏性貧血に罹患している患者において血清ヘモグロビンレベルを増加させることが公知である(Bomiら、J Nutr Food Sci、5:4、2015)。
しかし、タンパク質粉末は非常に複雑な組成物であり、一部の製造業者に由来するサプリメントは添加糖類または毒性混入物を含み得る。したがって、当該分野において必要とされる物は、望ましい特性を有する単離されたオリゴペプチドおよびそのオリゴペプチドの製剤である。特に、生物活性オリゴペプチドが豊富な製剤が、必要とされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Pasiakosら、Sports Med、45:111~131、2015
【非特許文献2】Bomiら、J Nutr Food Sci、5:4、2015
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(概要)
本開示は、上皮細胞によるフェリチン重鎖1(FTH1)の発現を増加可能な単離されたオリゴペプチド、ならびにそのオリゴペプチドの製剤に関する。前記製剤は、鉄欠乏および/または貧血に関連する、疾患または状態を処置するために適している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、3個の生物活性画分FRP18、FRP20およびFRP30に由来する8種の主要オリゴペプチドのアミノ酸配列のアラインメントであり、共有される「EES」モチーフ、コンセンサス配列および配列識別子を伴う。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(詳細な説明)
本開示は、上皮細胞によるフェリチン重鎖1(FTH1)の発現を増加可能な単離されたオリゴペプチド、ならびにそのオリゴペプチドの製剤に関する。前記製剤は、鉄欠乏および/または貧血に関連する、疾患または状態を処置するために適している。
【0009】
(定義)
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(ある)(a)」、「または(もしくは)(あるいは)(or)」および「その(前記)(上記)(the)」は、文脈が特に指示しない限りは、複数の指示物を含む。例えば、「(1つの)賦形剤」は1つまたは複数の賦形剤を含む。
【0010】
「含む」と本明細書において記載されている態様および実施形態は「からなる」および/または「から本質的になる」の態様ならびに実施形態を含むことが、理解される。
【0011】
値に関して本明細書において使用される用語「約」とは、その値の90%から110%までを記載する。例えば、FTH1 mRNA発現における約2倍の変化は、FTH1 mRNAにおける1.8倍から2.2倍までの変化を含み、FTH1 mRNAにおける2.0倍の変化を含む。
【0012】
本明細書において使用される場合、用語「フェリチン重鎖1」および「FTH1」とは、「フェリチン重鎖」タンパク質(これは「フェリチンHサブユニット」としても知られている)をコードする核酸配列を指す。ヒトフェリチン重鎖のアミノ酸配列はGenBankアクセッション番号NP_002023として示されており、そのmRNA配列はGenBankアクセッション番号NM_002032として示されており、そのコード配列はヌクレオチド210~761に広がる。
【0013】
分子(例えば、オリゴペプチド)に関して本明細書において使用される用語「単離された」とは、天然環境または合成環境から取り出されたかもしくは他の方法で精製された、分子を指す。実質的に「単離された」分子は、他の成分を少なくとも75%含まず、好ましくは少なくとも90%含まず、より好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%または99%含まない。例えば、「配列番号18のアミノ酸配列からなる単離されたオリゴペプチド」は、配列番号18のアミノ酸配列を含まないペプチドおよびタンパク質を少なくとも少なくとも75%含まない。
【0014】
FTH1 mRNAの発現またはレベルに関して本明細書において使用される用語「増加させること」および文法上の同等物は、FTH1 mRNAの量をより大きくすることを指す。好ましくは、FTH1 mRNAにおける増加は統計的に有意な増加を含み、好ましくは、約2倍~約200倍、約2倍~20倍、もしくは約2倍~4倍の増加、好ましくは少なくとも2.0倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、3.0倍、3.1倍、3.2倍、3.3倍、3.4倍もしくは3.5倍の増加を含む。
【0015】
本明細書において使用される場合、用語「処置すること」および「処置」とは、有益な結果または望ましい結果(臨床結果を含む)を得るためのアプローチを指す。有益な臨床結果または望ましい臨床結果としては、検出可能であるか検出不能であるかに関わらず、1つもしくは複数の症状の軽減または改善、疾患の程度の減少、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しないこと)、疾患の拡散を防止すること、疾患進行の遅延または緩徐化、疾患状態の改善または緩和、および寛解(部分的であるか全体的であるかに関わらず)が挙げられるが、それらに限定はされない。したがって、本明細書において使用される用語「処置すること」および「処置」は、兆候または症状の完全な軽減を必要とせず、治癒を必要とせず、具体的には、個体に対してささやかな効果を有するプロトコルを含む。
【0016】
本明細書において開示されている薬剤(例えば、単離されたオリゴペプチドまたはそのオリゴペプチドの製剤)の「有効量」とは、具体的に記載された目的を実行するために十分な量である。「有効量」は、その記載された目的に関して経験的に決定され得る。薬剤の「有効量」または「十分な量」とは、望ましい生物学的効果(例えば、有益な結果(有益な臨床結果を含む))をもたらすために十分な量である。用語「治療有効量」とは、対象(例えば、哺乳動物、例えば、ヒト)において疾患または障害を「処置する」ために有効な薬剤(例えば、単離されたオリゴペプチドまたはそのオリゴペプチドの製剤)の量を指す。薬剤の「有効量」または「十分な量」は、1回または複数回の用量で投与され得る。
【0017】
用語「個体」および「対象」とは哺乳動物を指す。「哺乳動物」としては、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、サル)、農場動物、スポーツ動物、齧歯類(例えば、マウスおよびラット)ならびにペット(例えば、イヌおよびネコ)が挙げられるが、それらに限定はされない。
【0018】
(I.単離されたオリゴペプチド)
本開示の単離されたオリゴペプチドはXm(R/D)EES(G/D)(E/K)Xn(コンセンサス番号1)のアミノ酸配列からなり、mおよびnは0~10の範囲から独立して選択される整数であり、各Xは存在する場合には任意のアミノ酸から独立して選択される。具体的には、一部の実施形態において、mおよびnの整数は各々、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10から選択される。したがって、本特許請求されるオリゴペプチドは6残基長~26残基長である。一部の実施形態において、前記オリゴペプチドは6残基長以上、7残基長以上、8残基長以上、9残基長以上、10残基長以上、11残基長以上、12残基長以上、13残基長以上、14残基長以上、15残基長以上、16残基長以上、17残基長以上、18残基長以上、19残基長以上、20残基長以上、21残基長以上、22残基長以上、23残基長以上、24残基長以上もしくは25残基長以上であり、および/または前記オリゴペプチドは26残基長以下、25残基長以下、24残基長以下、23残基長以下、22残基長以下、21残基長以下、20残基長以下、19残基長以下、18残基長以下、17残基長以下、16残基長以下、15残基長以下、14残基長以下、13残基長以下、12残基長以下、11残基長以下、10残基長以下、9残基長以下、8残基長以下、もしくは7残基長以下であり、その下限はその上限よりも小さい。一部の実施形態において、前記単離されたオリゴペプチドはREESGE(配列番号1)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、前記単離されたオリゴペプチドはREESGEP(配列番号2)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、前記単離されたオリゴペプチドはKEEDEESGE(配列番号3)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、前記単離されたオリゴペプチドはKPREESGE(配列番号4)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、前記単離されたオリゴペプチドはLDEESGEP(配列番号5)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、前記単離されたオリゴペプチドはREESDKPMY(配列番号6)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、前記単離されたオリゴペプチドはPREESDKP(配列番号7)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、前記単離されたオリゴペプチドはREESGEL(配列番号8)のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、前記単離されたオリゴペプチドは、配列番号1~8のいずれか1つに対して少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、本開示の単離されたオリゴペプチドはXjREESDKPXk(コンセンサス番号2/配列番号18)のアミノ酸配列からなり、jは0~10の範囲から選択される整数であり、kは0~9の範囲から選択される整数であり、各Xは存在する場合には任意のアミノ酸から独立して選択される。したがって、一部の実施形態において、本特許請求されるオリゴペプチドは7残基長~26残基長である。一部の実施形態において、前記オリゴペプチドは7残基長以上、8残基長以上、9残基長以上、10残基長以上、11残基長以上、12残基長以上、13残基長以上、14残基長以上、15残基長以上、16残基長以上、17残基長以上、18残基長以上、19残基長以上、20残基長以上、21残基長以上、22残基長以上、23残基長以上、24残基長以上もしくは25残基長以上であり、および/または前記オリゴペプチドは26残基長以下、25残基長以下、24残基長以下、23残基長以下、22残基長以下、21残基長以下、20残基長以下、19残基長以下、18残基長以下、17残基長以下、16残基長以下、15残基長以下、14残基長以下、13残基長以下、12残基長以下、11残基長以下、10残基長以下、9残基長以下、もしくは8残基長以下であり、その下限はその上限よりも小さい。一部の実施形態において、前記オリゴペプチドはXgREESDKP(XhXi)(コンセンサス番号3/配列番号19)のアミノ酸配列を含み、Xgはプロリン(P)であるかまたは存在せず、XhXiはメチオニンおよびチロシン(MY)であるかまたは存在しない。一部の実施形態において、前記単離されたオリゴペプチドはREESDKPMY(配列番号6)のアミノ酸配列またはPREESDKP(配列番号7)のアミノ酸配列を含む。
【0019】
好ましい実施形態において、前記単離されたオリゴペプチドは、そのオリゴペプチドと接触させた腸上皮細胞によるフェリチン重鎖1(FTH1)mRNAの発現を増加可能である。前記オリゴペプチドとの接触の結果としてのFTH1 mRNAの発現における増加は、前記オリゴペプチドと接触させていない腸上皮細胞(例えば、ベースライン)との比較、前記オリゴペプチドの不在以外は同じ条件下で培養された腸上皮細胞との比較、または陰性対照オリゴペプチド(例えば、ほぼ同じ長さであるがコンセンサス番号1を含まないオリゴペプチド)の存在以外は同じ条件下で培養された腸上皮細胞との比較である。一部の実施形態において、前記腸上皮細胞は哺乳動物細胞である。一部の好ましい実施形態において、前記哺乳動物細胞はヒト細胞である。例示的な実施形態において、前記腸上皮細胞はHIEC-6細胞である。他の実施形態において、前記腸上皮細胞は初代ヒト腸上皮細胞である。
【0020】
一部の好ましい実施形態において、前記オリゴペプチドは合成により作製される。例示的な実施形態において、前記オリゴペプチドは、当該分野において公知であるとおりに固相合成によって作製され、高速液体クロマトグラフィーによって精製される。たとえそうであっても、本開示はまた、前記オリゴペプチドをコードする単離された核酸も提供する。前記核酸は、プロモーターと作動可能に組み合わされて、発現カセットまたは発現ベクター中に存在し得る。前記単離された核酸、発現カセットまたは発現ベクターを含む、宿主細胞もまた、前記オリゴペプチドの組換え発現のために提供される。
【0021】
(II.製剤)
本開示は、上記の節の少なくとも1種の単離されたオリゴペプチドと、少なくとも1種の薬学的に受容可能な賦形剤および/または経口送達剤とを含む、製剤を提供する。一部の実施形態において、前記製剤は、腸溶コーティング、リポソーム、ミクロスフェア、またはマイクロ粒子/ナノ粒子をさらに含み得る。例えば、一部の実施形態において、前記単離されたオリゴペプチドは、腸溶コーティング、リポソーム、ミクロスフェア、またはマイクロ粒子/ナノ粒子内に封入される。しかし、前記製剤のオリゴペプチドは単離されているので、本開示の製剤は魚タンパク質加水分解産物、例えば、サケタンパク質加水分解産物を含まない。
【0022】
本開示のオリゴペプチドの量(これは、本明細書において開示されている特定の障害または状態の処置において有効である)はその障害または疾患の性質に依存し、その量は、標準の臨床的技術によって決定され得る。さらに、インビトロアッセイまたはインビボアッセイが、最適な投与量範囲を特定するのを支援するために、必要に応じて使用され得る。一部の実施形態において、本開示のオリゴペプチドの用量は、処置されるべき対象の体重1kg当たり約0.1mg~約1000mg、約1.0mg~約100mg、または約10mgである。一部の実施形態において、オリゴペプチドの用量は0.1mg/kg以上、0.5mg/kg以上、1.0mg/kg以上、5.0mg/kg以上、10mg/kg以上、20mg/kg以上、30mg/kg以上、40mg/kg以上、50mg/kg以上、60mg/kg以上、70mg/kg以上、80mg/kg以上、90mg/kg以上、100mg/kg以上、もしくは500mg/kg以上であり、および/または前記オリゴペプチドの用量は1000mg/kg以下、500mg/kg以下、100mg/kg以下、90mg/kg以下、80mg/kg以下、70mg/kg以下、60mg/kg以下、50mg/kg以下、40mg/kg以下、30mg/kg以下、20mg/kg以下、10mg/kg以下、5.0mg/kg以下、1.0mg/kg以下、もしくは0.5mg/kgであり、その下限はその上限よりも小さい。
【0023】
(A.賦形剤)
本開示の薬学的に受容可能な賦形剤としては、例えば、溶媒、増量剤、緩衝剤、張度調整剤、および保存剤(Pramanickら、Pharma Times、45:65~77、2013)が挙げられる。一部の実施形態において、前記製剤は、溶媒、増量剤、緩衝剤、および張度調整剤のうちの1つまたは複数として機能する賦形剤を含み得る(例えば、生理食塩水中の塩化ナトリウムは水性媒体および張度調整剤の両方として役立ち得る)。
【0024】
一部の実施形態において、前記製剤は、溶媒として水性媒体を含む。適切な媒体としては、例えば、滅菌水、生理食塩水溶液、リン酸緩衝生理食塩水、およびリンゲル液が挙げられる。一部の実施形態において、前記製剤は等張性である。
【0025】
前記製剤は緩衝剤を含み得る。緩衝剤は、処理中、保管中、必要に応じて再構成中の活性薬剤の分解を阻害するためにpHを制御する。適切な緩衝液としては、例えば、酢酸塩を含む塩、クエン酸塩を含む塩、リン酸塩を含む塩、または硫酸塩を含む塩が挙げられる。他の適切な緩衝液としては、例えば、アミノ酸、例えば、アルギニン、グリシン、ヒスチジン、およびリジンが挙げられる。前記緩衝剤は、塩酸または水酸化ナトリウムをさらに含み得る。一部の実施形態において、前記緩衝剤は、前記製剤のpHを6~9の範囲内で維持する。一部の実施形態において、前記pHは(下限)6、7または8よりも大きい。一部の実施形態において、前記pHは、(上限)9、8、または7よりも小さい。すなわち、前記pHは約6~9の範囲内にあり、前記下限は前記上限よりも小さい。
【0026】
前記製剤は張度調整剤を含み得る。適切な張度調整剤としては、例えば、デキストロース、グリセロール、塩化ナトリウム、グリセリンおよびマンニトールが挙げられる。
【0027】
前記製剤は増量剤を含み得る。増量剤は、前記医薬製剤が投与前に凍結乾燥される場合に特に有用である。一部の実施形態において、前記増量剤は、凍結乾燥中もしくは噴霧乾燥中および/または保管中に活性薬剤の安定化および分解防止を補助する保護剤である。適切な増量剤は、糖(単糖、二糖、および多糖)、例えば、スクロース、ラクトース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、グルコースおよびラフィノースである。
【0028】
前記製剤は保存剤を含み得る。適切な保存剤としては、例えば、抗酸化剤および抗菌剤が挙げられる。しかし、好ましい実施形態において、前記製剤は、滅菌条件下で調製され、単回使用容器中にあり、したがって、保存剤を含むことを必要としない。
【0029】
(B.経口送達薬剤)
本開示の経口送達薬剤としては、例えば、吸収促進剤、脂肪酸、酵素阻害剤、ポリエチレングリコール、粘膜付着性ポリマー、および細胞透過性ペプチド(Danら、Children、7:307、2020)が挙げられる。
【0030】
治療ペプチドおよび治療タンパク質について一般的に利用される投与経路としては、静脈内(IV)注射、腹腔内(IP)注射、および筋肉内(IM)注射が挙げられる。しかし、経口投与が患者によって好まれ、経口薬は、製造し、流通させ、管理するための価格が典型的にはより安い。残念ながら、治療ペプチドおよび治療タンパク質の経口的に利用可能な剤形の開発は、種々の理由ために複雑になっており、その理由としては、生理条件における安定性の乏しさ、短い生物学的半減期、および小腸において上皮性関門を通る透過性の低さが挙げられるが、それらに限定はされない。したがって、一部の実施形態において、本開示の製剤は、単離されたオリゴペプチドを胃で見出されるタンパク質分解酵素および酸性環境から保護して、その製剤が血流中に吸収された際にその生物活性が保持されるように、設計される(例えば、Danら、Children、7:307、2020を参照のこと)。
【0031】
(III.使用方法)
本開示の単離されたオリゴペプチドおよび製剤は、哺乳動物細胞によるFTH1 mRNA発現の発現を増加させるための方法および医薬において用途が見出される。一部の実施形態において、前記哺乳動物細胞は、上皮細胞、例えばヒト上皮細胞である。一部の好ましい実施形態において、本開示の単離されたオリゴペプチドおよび製剤は、血清フェリチン濃度を増加させることを必要とするヒト対象において血清フェリチン濃度を増加させるための方法および医薬において用途が見出される。一部の好ましい実施形態において、本開示の単離されたオリゴペプチドおよび製剤は、疾患または状態を処置または予防することを必要とするヒト対象において疾患または状態を処置または予防するための方法および医薬において用途が見出され、前記疾患または状態は不十分な血清フェリチン濃度に関連する。
【0032】
一部のインビボ実施形態において、前記製剤は口から投与される。例えば、前記製剤は経腸投与され得る。一部の実施形態において、前記製剤は頬側経路、唇下経路、または舌下経路によって投与される。一部の実施形態において、哺乳動物対象(レシピエント)はがんを有しない。特定の実施形態において、前記対象は、前立腺がんを有しないヒト対象である。一部の実施形態において、前記ヒト対象は男性である。他の実施形態において、前記ヒト対象は女性である。
【0033】
(FTH1 mRNA発現の増加)
一部の態様において、本開示は、フェリチン重鎖1(FTH1)mRNAの発現を増加させることを必要とする哺乳動物対象においてFTH1mRNAの発現を増加させるための方法および医薬を提供し、それらは、前記対象に、有効量の節Iもしくは節IIのオリゴペプチドまたは製剤を投与することを含む。一部の実施形態において、前記哺乳動物対象はヒト対象である。
【0034】
フェリチンは、広範に発現される高度に保存されたタンパク質であり、2つの種類のオリゴペプチド鎖(フェリチン重鎖およびフェリチン軽鎖)からなる。フェリチン重鎖はFe2+酸化反応を触媒し、一方、フェリチン軽鎖はFe3+の貯蔵において重要な役割を果たす。両方の鎖が、鉄ホメオスタシスを維持し鉄過剰を防止するために必須である(Tianら、Neurotherapeutics、17:1796~1812、2020)。FTH1遺伝子は、フェリチンの重鎖サブユニットをコードする。FTH1発現における増加、したがってフェリチンの増加は、鉄吸収およびバイオアベイラビリティにおける増加をもたらす。鉄吸収およびバイオアベイラビリティにおけるこの増加は、不十分な量の鉄から生じる疾患および障害(例えば、鉄欠乏性貧血)を改善するために有益である。
【0035】
一部の実施形態において、哺乳動物細胞によるフェリチン重鎖1(FTH1)mRNAの発現を増加させるための方法は、その哺乳動物細胞と、有効量の前記製剤とを接触させることを含む。一部の実施形態において、前記FTH1 mRNAの発現を増加させるための方法は、前記哺乳動物細胞と、有効量の前記製剤とを接触させることを含み、前記増加はベースライン(例えば、接触前)との比較である。一部の実施形態において、FTH1 mRNAの発現を増加させるための方法は、前記哺乳動物細胞と、有効量の前記製剤とを接触させることを含み、前記増加は、前記製剤と接触させていない哺乳動物細胞との比較である。一部の実施形態において、FTH1 mRNAの発現を増加させるための方法は、前記哺乳動物細胞と、有効量の前記製剤とを接触させることを含み、前記増加は、前記オリゴペプチドを欠く対照製剤と接触させた哺乳動物細胞との比較である。一部の実施形態において、FTH1 mRNAの発現を増加させるための方法は、前記哺乳動物細胞と、有効量の前記製剤とを接触させることを含み、前記増加は、陰性対照オリゴペプチドを含む哺乳動物細胞との比較である。
【0036】
一部の実施形態において、前記接触させることはインビボで行われる。したがって、一部の実施形態において、フェリチン重鎖1(FTH1)発現を増加させることを必要とする哺乳動物対象においてFTH1発現を増加させるための方法および医薬は、前記対象に、FTH1発現を増加させるために有効な量の前記製剤を投与することを含み、前記増加はベースライン(例えば、投与前)との比較である。一部の実施形態において、前記方法および医薬は、血清フェリチン濃度を増加させることを必要とする哺乳動物対象において血清フェリチン濃度を増加させることをさらに含む。したがって、一部の実施形態において、血清フェリチン濃度を増加させることを必要とする哺乳動物対象において血清フェリチン濃度を増加させるための方法および医薬は、前記対象に、血清フェリチン濃度を増加させるために有効な量の前記製剤を投与することを含み、前記増加はベースライン(例えば、投与前)との比較である。
【0037】
(鉄欠乏の処置または予防)
一部の態様において、疾患または状態を処置または予防することを必要とする哺乳動物対象において疾患または状態を処置または予防する方法が本明細書において提供されており、前記方法は、前記対象に、前記状態を処置または予防するために有効な量の前記製剤を投与することを含む。一部の実施形態において、前記疾患または状態は鉄欠乏に関連する。
【0038】
鉄は、ヒトおよび動物の生理機能のために必須である。ヒトおよび動物において不十分な鉄は、多くの疾患ならびに障害(鉄欠乏性貧血および発育不全が挙げられる)を引き起こし得る。鉄欠乏は、ヘモグロビン測定値にしたがって、貧血を伴わない鉄欠乏、および貧血を伴う鉄欠乏(それぞれ、IDNAおよびIDA)、という2つのレベルに分類され得る。貧血を伴わない鉄欠乏(IDNA、別名、非貧血性鉄欠乏)は、通常は潜行性であり、診断および管理にとって難題である(Zhuら、Front Neur、11:298、2020)。一部の実施形態において、処置または予防されるべき疾患または状態は、貧血を伴わない鉄欠乏に関連する。他の実施形態において、処置または予防されるべき疾患または状態は、貧血を伴う鉄欠乏に関連する。
【0039】
(貧血の処置または予防)
一部の態様において、疾患または状態を処置または予防することを必要とする哺乳動物対象において疾患または状態を処置または予防する方法が本明細書において提供されており、前記方法は、前記対象に、前記疾患または状態を処置または予防するために有効な量の前記製剤を投与することを含み、前記疾患または状態は貧血に関連する。
【0040】
別の実施形態において、前記障害は鉄欠乏性貧血である。貧血は、赤血球の欠乏によって特徴付けられる障害である。鉄欠乏性貧血は、不十分な量の鉄によって引き起こされる貧血である。この鉄欠乏は、不十分な鉄摂取量、不十分な鉄吸収、血液損失、またはこれらの組合せから生じ得る。
【0041】
鉄欠乏による貧血は、他の多くの貧血から区別され得る。例えば、鉄欠乏性貧血は、慢性感染性障害、炎症性障害、または悪性障害、例えば、関節炎もしくはがんから生じる貧血とは異なる。
【0042】
(レストレスレッグス症候群の処置または予防)
一部の態様において、疾患または状態を処置または予防することを必要とする哺乳動物対象において疾患または状態を処置または予防する方法が本明細書において提供されており、前記方法は、前記対象に、前記疾患または状態を処置または予防するために有効な量の前記製剤を投与することを含み、前記疾患または状態はレストレスレッグス症候群(restless leg syndrome)(レストレスレッグス症候群(restless legs syndrome)とも呼ばれる)である。
【0043】
レストレスレッグス症候群(RLS)は一般的な神経障害であり、鉄欠乏がその病因において重要な役割を果たすと考えられている。鉄欠乏はRLSにおいて一般的であり、鉄欠乏性貧血(IDA)は、続発性RLSの周知の原因である。さらに、IDAは、RLSを有する患者において頻繁に観察される(Zhuら、Front Neurol、11:298、2020)。しかし、RLSについての治療法は何も知られておらず、RLSに罹患している個体の一部が神経活性薬または鉄補充によるいくらかの軽減を見出し得るが、どの患者にも作用する薬物は1つも存在しない(Mayo Clinic、2020)。
(列挙される実施形態)
1. Xm(R/D)EES(G/D)(E/K)Xn(コンセンサス番号1)のアミノ酸配列からなる単離されたオリゴペプチドであって、mおよびnは0~10の範囲から独立して選択される整数であり、各Xは存在する場合には任意のアミノ酸から独立して選択される、単離されたオリゴペプチド。
2. XjREESDKPXk(配列番号18)のアミノ酸配列からなる単離されたオリゴペプチドであって、jは0~10の範囲から選択される整数であり、kは0~9の範囲から選択される整数であり、各Xは存在する場合には任意のアミノ酸から独立して選択される、単離されたオリゴペプチド。
3. XgREESDKP(XhXi)(配列番号19)のアミノ酸配列を含み、Xgはプロリンであるかまたは存在せず、XhXiはメチオニンおよびチロシンであるかまたは存在しない、実施形態2に記載の単離されたオリゴペプチド。
4. REESDKPMY(配列番号6)のアミノ酸配列を含む、実施形態3に記載の単離されたオリゴペプチド。
5. PREESDKP(配列番号7)のアミノ酸配列を含む、実施形態3に記載の単離されたオリゴペプチド。
6. REESGEL(配列番号8)のアミノ酸配列を含む、実施形態1に記載の単離されたオリゴペプチド。
7. REESGE(配列番号1)、REESGEP(配列番号2)、KEEDEESGE(配列番号3)、KPREESGE(配列番号4)、LDEESGEP(配列番号5)、REESDKPMY(配列番号6)、PREESDKP(配列番号7)、またはREESGEL(配列番号8)のアミノ酸配列を含む、実施形態1に記載の単離されたオリゴペプチド。
8. そのオリゴペプチドが、そのオリゴペプチドと接触させた哺乳動物細胞によるフェリチン重鎖1(FTH1)mRNAの発現を増加可能であり、必要に応じてその哺乳動物細胞がヒト細胞であり、かつ/あるいは必要に応じてその哺乳動物細胞が腸上皮細胞、骨格筋細胞、アストロサイト、またはマクロファージである、実施形態1~7のいずれか一実施形態に記載の単離されたオリゴペプチド。
9. 実施形態1~8のいずれか一実施形態に記載の単離されたオリゴペプチドと少なくとも1種の薬学的に受容可能な賦形剤とを含む、製剤。
10. 実施形態1~8のいずれか一実施形態に記載の単離されたオリゴペプチドと経口送達剤とを含む、製剤。
11. 前記経口送達剤が吸収促進剤、脂肪酸、酵素阻害剤、ポリエチレングリコール、粘膜付着性ポリマー、細胞透過性ペプチド、またはそれらの組合せを含む、実施形態10に記載の製剤。
12. 腸溶コーティング、リポソーム、ミクロスフェア、および/またはマイクロ粒子/ナノ粒子をさらに含む、実施形態9~11のいずれか一実施形態に記載の製剤。
13. 実施形態1~7のいずれか一実施形態に記載のオリゴペプチドをコードする、単離された核酸。
14. プロモーターと作動可能に組み合わされた実施形態13に記載の核酸を含む、発現ベクター。
15. 実施形態13に記載の単離された核酸または実施形態14に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
16. 実施形態9~12のいずれか一実施形態に記載の製剤を含む、医薬。
17. 哺乳動物細胞によるフェリチン重鎖1(FTH1)mRNAの発現を増加させるための方法であって、
前記哺乳動物細胞と、FTH1発現を増加させるために有効な量の実施形態9~12のいずれか一項に記載の製剤とを接触させること
を含む、方法。
18. 前記哺乳動物細胞が腸上皮細胞、骨格筋細胞、アストロサイト、またはマクロファージであり、かつ/あるいは必要に応じてその哺乳動物細胞がヒト細胞であり、あるいは必要に応じてその哺乳動物細胞がヒト腸上皮細胞である、実施形態17に記載の方法。
19. 接触させることがインビボで行われる、実施形態17または実施形態18に記載の方法。
20. フェリチン重鎖1(FTH1)発現を増加させることを必要とする哺乳動物対象においてFTH1発現を増加させるための方法であって、
前記対象に、FTH1発現を増加させるために有効な量の実施形態9~12のいずれか一実施形態に記載の製剤を投与すること
を含む、方法。
21. 血清フェリチン濃度を増加させることを必要とする哺乳動物対象において血清フェリチン濃度を増加させるための方法であって、
前記対象に、血清フェリチン濃度を増加させるために有効な量の実施形態9~12のいずれか一実施形態に記載の製剤を投与すること
を含む、方法。
22. 疾患または状態を処置または予防することを必要とする哺乳動物対象において疾患または状態を処置または予防するための方法であって、
前記対象に、前記疾患または状態を処置または予防するために有効な量の実施形態9~12のいずれか一実施形態に記載の製剤を投与すること
を含む、方法。
23. 前記疾患または状態が鉄欠乏に関連する、実施形態22に記載の方法。
24. 前記疾患または状態が貧血に関連する、実施形態22または実施形態23に記載の方法。
25. 前記疾患または状態がレストレスレッグス症候群である、実施形態22~24のいずれか一実施形態に記載の方法。
26. 前記製剤が口から投与される、実施形態20~25のいずれか一実施形態に記載の方法。
27. 前記製剤が経腸投与される、実施形態26に記載の方法。
28. 前記製剤が頬側経路、唇下経路、または舌下経路によって投与される、実施形態26に記載の方法。
29. 前記哺乳動物対象がヒト対象である、実施形態20~28のいずれか一項に記載の方法。
30. 前記ヒト対象ががんを有しない、実施形態29に記載の方法。
【実施例
【0044】
(実施例)
略語:ACTB(βアクチン);FTH1(フェリチン重鎖1);H&E(ヘマトキシリン・エオシン);HSkMC(ヒト骨格筋);LDH(乳酸デヒドロゲナーゼ);MBMM(マウス骨髄由来マクロファージ);RLS(レストレスレッグス症候群);およびSPH(サケタンパク質加水分解産物)。
【0045】
(実施例1)
(生物学的に活性なサケタンパク質加水分解産物の調製)
サケタンパク質加水分解産物(SPH)粉末を、記載された(US2021/0252099)とおりに切り身にした後のサケ(Salmo salar)の頭部および背骨の酵素加水分解によって作製した。簡単に述べると、1000グラムの粉砕した頭部および背骨を1000mlの水に添加し、その混合物を50℃に加熱した。10gのエンドペプチダーゼ酵素(ペプシン)を添加し、前記混合物を30分間撹拌した。その後、10gのエキソペプチダーゼ酵素(カルボキシペプチダーゼ)を添加し、前記混合物を15分間撹拌した。次に、5グラムのFlavourzyme(登録商標)(Aspergillus oryzaeに由来するエンドプロテアーゼとエキソプロテアーゼのブレンド;Novozymes A/S(Bagsvaerd、Denmark)によって市販されている)を添加し、その混合物を10分間撹拌した。その後、前記エンドペプチダーゼとエキソペプチダーゼとで処理したサケタンパク質混合物を85℃になるまで15分間加熱して、それらのプロテアーゼを不活化した。濾過後、その加水分解産物画分を従来のエバポレーター中で30%乾燥物になるまで濃縮し、噴霧乾燥してサケタンパク質加水分解産物粉末を得た。
【0046】
(実施例2)
(サケタンパク質加水分解産物のサイズ排除分画)
クォータナリポンプとオートサンプラーとRS変量波長UV-Vis検出器と自動化フラクションコレクターを備えたDionex/Thermo UltiMate(商標)3000 HPLC System (Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を、前記サケタンパク質加水分解産物(SPH)の分取クロマトグラフィーのために使用した。分離は、TSソフトウェアバージョン7.0を使用して、BioSep(商標)-SEC-s2000サイズ排除カラム(Phenomenex、Torrance、CA)(300mm×7.8mm内径、145Å細孔径)で25℃にて実行した。
【0047】
移動相は、0.1Mリン酸緩衝液(pH6.9)からなった。流量5ml/分を48分間使用してアイソクラティック溶出を実行し、214nm波長にてモニターした。注入体積1mlのSPH水溶液(100mg/ml)を使用し、12個の画分(F1~F12)を4分から48分まで収集した。収集した画分を凍結乾燥し、-20℃にて保管した。
【0048】
(実施例3)
(F1画分~F12画分によるフェリチン重鎖1発現の調節)
ヒト小腸由来の上皮細胞株を、遺伝子発現に対するSPH画分の効果を評価するために選択した。この細胞型は、SPHが胃腸の健康調節因子として研究されてきたので選択した。ATCC(Manassas、VA)から入手したHIEC-6(CRL-3266(商標))細胞を、100mm細胞培養皿上にて、20mM HEPESと10mM GlutaMAX(商標)と10ng/ml上皮成長因子と最終濃度4%のウシ胎児血清とを補充した、OptiMEM(商標)1血清低減培地において増殖させた。このアッセイのために、HIEC-6細胞を24ウェルプレート中に細胞密度1×10細胞/cmにて播種し、加湿5% CO雰囲気中で37℃にて維持した。約24時間後に、前記細胞をSPH画分F1~F12の各々とともに12時間インキュベートした。
【0049】
全RNAを、製造業者のプロトコルにしたがってUPzol試薬を前記細胞のペレットに対して使用し、その後、DNAse処理(DNAse TURBO)して、抽出した。ランダムヘキサマーを使用して、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Applied Biosystems)で相補的DNA(cDNA)を合成した。遺伝子発現レベルをqRT-PCRによって測定した。
【0050】
50ngの逆転写されたRNAに対応する1μlのcDNAを、TaqMan(商標)Universal PCR Master Mix(カタログ番号4304437)およびTaqMan(商標)アッセイ(Roche Molecular Systems,Inc.、Pleasanton、CA)を使用してQpcr(QuantStudio(商標)6 Flex Real-Time PCR System)によって増幅した。
【0051】
FTH1遺伝子発現を、標準式2-ΔCtにしたがって、ハウスキーピング遺伝子であるβアクチン(ACTB)の発現と比較して推定した。使用したTaqMan(商標)プローブIDは以下であった:(i)FTH1、Hs01694011_s1;および(ii)ACTB、Hs01060665_g1。すべての実験は三回実施した。
【0052】
表3-1に示すとおり、FTH1遺伝子発現の有意な(>2倍)アップレギュレーションをF2画分およびF3画分で観察した。有意ではない(<2倍)アップレギュレーションをF7画分、F9画分およびF11画分で観察した。
(表3-1.FTH1発現に対するSPH画分でのHIEC-6細胞処理の効果)
【表3-1】
【0053】
(実施例4)
(F2画分およびF3画分の分取逆相クロマトグラフィー)
F2画分とF3画分との混合物の直交型クロマトグラフィー分離を、実施例2に記載したDionex/Thermo UltiMate(商標)3000 HPLC System(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)を使用して実施した。等重量の画分F2と画分F3(100mg/ml)とを含む水溶液の1mlアリコートを、BetaSil(商標)C18カラム(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)、250mm×10mm内径、10ミクロン粒子径を使用して25℃にて分離した。
【0054】
移動相は水(溶媒A)およびアセトニトリル(溶媒B)であり、両方とも0.05%のTFAで酸性化しており、流量は4ml/分であった。グラジエント溶出を以下のとおりに実行した:0分、0%B;10分、0%B;45分、40%B;50分、100%B;60分、100%B。
【0055】
分離を214nmにてモニターし、12個の画分(FRP12~FRP34)を12分から36分まで収集し、実施例3に記載したとおりに、それらのFTH1調節活性について評価した。
【0056】
2個の早い溶出画分(18分保持時間および20分保持時間における)および1個の遅い溶出画分(30分保持時間における)だけが、表4-1に示すとおり有意なFTH1遺伝子アップレギュレーションを示した。これらの3個の活性画分をFRP18、FRP20およびFRP30と呼んだ。
(表4-1.FTH1発現に対するSPH部分画分でのHIEC-6細胞処理の効果)
【表4-1】
【0057】
(実施例5)
(FRP18画分、FRP20画分およびFRP30画分のHPLC-HRMS分析)
生物活性オリゴペプチドを、50%メタノール中に再溶解した凍結乾燥FRP18、凍結乾燥FRP20および凍結乾燥FRP30の高速液体クロマトグラフィー-高分解能質量分析(HPLC-HRMS)による分析を使用して同定した。注入体積10μlの逆相Luna(登録商標)Omega Polar C18カラム(Phenomenex、Torrance、CA)(250mm×4.6mm、5mm粒子、100Å細孔径)を、G1340AデガッサとG1311Aクォータナリポンプとサーモスタットカラムコンパートメントとフォトダイオードアレイ検出器(Santa Clara、CA、USA)とからなるAgilent 1290クロマトグラフに配置し、このクロマトグラフを、エレクトロスプレーイオン化インターフェースを備えたBruker micrOTOF-Q II質量分析計に取り付けた。
【0058】
流量は0.5ml/分で維持した。移動相A(水/アセトニトリル 95:5(体積/体積))および移動相B(水/アセトニトリル、5:95(体積/体積))(両方とも0.1%ギ酸で酸性化した)のグラジエント溶出プロファイルは、以下であった:0分、0%B;5分、0% B;25分、100%B;35分、100%B;37分、0%B。
【0059】
自動化MS/MSスペクトルを、乾燥温度200℃および乾燥ガスフロー8l/分を使用して正イオンモードで取得した。構造同定は、MaxQuantソフトウェアVersion 2.0.3.0および自動化[M+H]n+フラグメントマッチング解析を使用した、データベース支援型であった。
【0060】
8種の主要なオリゴペプチドを上記3個の生物活性画分FRP18、FRP20およびFRP30から同定した。保持時間、MS/MS結果およびオリゴペプチド配列を表5-1に示す。
(表5-1.生物活性オリゴペプチドの同定)
【表5-1-1】

【表5-1-2】
【0061】
(実施例6)
(ヒト骨格筋細胞(HSkMC)に対するオリゴペプチドの効果)

ヒト骨格筋由来の細胞株を、遺伝子発現に対するSPHおよびオリゴペプチドの効果を評価するために選択した。ATCC(Manassas、VA)から入手したHSkMC(PCS-950-010)を、100mm細胞培養皿において、L-グルタミン(10mM)とデキサメタゾン(10μM)とrh上皮成長因子(5ng/ml)とrh FGF-b(5ng/mL)とrhインスリン(25μg/mL)とウシ胎児血清(4%)とを含むPrimary Skeletal Cell Muscle Growth Kit(ATCC)を補充した、Mesenchymal Stem Cell Basal Medium(ATCC)血清低減培地において増殖させた。このアッセイのために、HSkMC細胞を24ウェルプレート中に細胞密度1×10細胞/cmにて播種し、加湿5% CO雰囲気中で37℃にて維持した。約24時間後に、前記細胞をSPH(100μM)または合成オリゴペプチド(10μM)とともに約12時間インキュベートした。
【0062】
全RNAを、製造業者のプロトコルにしたがってUPzol試薬を前記細胞のペレットに対して使用し、その後、DNAse処理(DNAse TURBO)して、抽出した。ランダムヘキサマーを使用して、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Applied Biosystems)で相補的DNA(cDNA)を合成した。遺伝子発現レベルをqRT-PCRによって測定した。
【0063】
50ngの逆転写されたRNAに対応する1μlのcDNAを、TaqMan(商標)Universal PCR Master Mix(カタログ番号4304437)およびTaqMan(商標)アッセイ(Roche Molecular Systems,Inc.、Pleasanton、CA)を使用してQpcr(QuantStudio(商標)6 Flex Real-Time PCR System)によって増幅した。
【0064】
FTH1遺伝子発現を、標準式2-ΔCtにしたがって、ハウスキーピング遺伝子であるβアクチン(ACTB)の発現と比較して推定した。使用したTaqMan(商標)プローブIDは以下であった:(i)FTH1、Hs01694011_s1;および(ii)ACTB、Hs01060665_g1。すべての実験は三回実施した。
(表6-1.HSkMCにおけるFTH1発現に対するオリゴペプチドの効果)
【表6-1】
【0065】
表6-1に示すとおり、FTH1遺伝子発現の認識可能な(>2倍)アップレギュレーションを、FT-002ペプチド、FT-004ペプチド、FT-006ペプチド、FT-007ペプチド、およびFT-008ペプチドの存在下で初代ヒト筋細胞をインキュベートした場合に観察した。さらに、FTH1遺伝子発現に対する用量依存的効果を、以下の表6-2に示すとおり、漸増するオリゴペプチド濃度でHSkMCを処理した場合に観察した。
(表6-2.HSkMCにおけるFTH1発現に対するオリゴペプチドの用量依存的効果)
【表6-2】
【0066】
(実施例7)
(ヒトアストロサイトに対するオリゴペプチドの効果)
本実施例は、インビトロでのヒトアストロサイトのヘミン誘導性鉄依存的酸化損傷に対するSPHおよびオリゴペプチドの保護効果の評価を記載する。
【0067】
不死化ヒトアストロサイト(P10251-IM)をInnoprot(Spain)から入手し、その供給業者により推奨される条件下で調製した。90%コンフルエンシーにて、前記P10251-IM細胞を8mlのDPBSおよび2mlのT/E溶液(Innoprotの手順にしたがって調製した)でリンスし、その後、エルレンマイヤーフラスコに添加し、前記P10251-IM細胞が完全に覆われるように穏やかに振盪した。その後、前記フラスコを37℃にて2分間インキュベートした。その後、5mlのウシ胎児血清(FBS)および前記フラスコからのT/E溶液を50mlコニカル型遠心管に添加した。前記フラスコをさらに2分間インキュベートし、穏やかにタッピングすることによって前記P10251-IM細胞をその表面から外した。その後、前記P10251-IM細胞を、5mlのTNS溶液を含む50mlコニカル型遠心管に移した。その管を1000rpmにて5分間遠心分離した。その後、前記P10251-IM細胞を培養培地中に再懸濁し、計数し、ポリL‐リジンコーティング済み培養プレート中に1×10細胞密度にてプレーティングした。細胞をインビトロで21日間インキュベートした後、それらの細胞を試験した。
【0068】
コンフルエントなP10251-IM細胞培養物を洗浄し、その後、培地単独で、またはSPH(160μM)を補充した培地もしくはオリゴペプチド(10μM)を補充した培地で、37℃にて24時間事前処理した。160μM濃度の市販のコラーゲンペプチド(Vital Protein)および滅菌水を陰性対照として使用した。その後、それらのP10251-IM細胞を、10mMグルコースを含むMEMからなる無血清培地(MEM10)中の30μMヘミンで6時間処理した。
【0069】
30μMヘミンで事前処理したP10251-IMアストロサイト培養物は、広範な細胞損傷を維持した。細胞生存度を、以前に記載された(Chen and Regan、Curr Neurovasc Res、2:189~196、2005)とおりに乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出アッセイを使用して定量した。簡単に述べると、SPHおよびオリゴペプチドの保護効果の定量は、放出されたLDHの平均パーセンテージを、0.1% Triton(登録商標)X-100で処理した完全溶解対照培養物(培養LDHの100%を放出すると考えられる)に対して調整して決定することによって、評価した。
(表7-1.ヘミン誘導性損傷からのヒトアストロサイトの保護)
【表7-1】
【0070】
その後、L-フェリチン遺伝子発現およびH-フェリチン遺伝子発現を定量した。簡単に述べると、ヘミンとの6時間のインキュベーション後に、前記アストロサイトを溶解し、Qiagen lipid mini kitを使用してRNAを抽出した。鉄ホメオスタシスに関与する両方の遺伝子(L-フェリチンおよびH-フェリチン)の発現を、qRT-PCRによって評価した。倍率変化を、GAPDHをハウスキーピング遺伝子として使用するΔCt法を使用して、算出した。倍率変化を、対照ウェルにおける発現レベルに対して正規化した。実験は3回実施した。
cDNAの増幅のために使用したプライマーは、以下であった:
H-フェリチンフォワード:TAAAGAACTGGGTGACCACGTGAC(配列番号10);
H-フェリチンリバース:AAGTCAGCTTAGCTCTCATCACCG(配列番号11);
L-フェリチンフォワード:TGGCCATGGAGAAGAACCTGAATC(配列番号12;および
L-フェリチンリバース:GCTTTCCAGGAAGTCACAGAGAT(配列番号13)。
(表7-2.アストロサイトにおけるフェリチン発現に対するオリゴペプチドの効果)
【表7-2】
【0071】
フェリチン過剰発現およびフェリチン事前処理は、内皮細胞およびアストロサイトにおいてヘミン誘導性酸化毒性を減少させると報告されていた(Ballaら、J.Biol Chem、267:18148~18153、1992;およびReganら、Neuroscience、113:985~994、2002)。今や、アストロサイトのSPHでの事前処理は、ヘミンで損傷したアストロサイトの生存度において小さな改善を生じたことが見出された。さらに、3種すべてのオリゴペプチドFT-006、FT-007、およびFT-008(10μM)が、ヘミンにより誘導された酸化損傷からのアストロサイトの実質的な予防的保護を提供することが見出された(すなわち、コラーゲン対照についての48%死亡率と比較して、それぞれ40%の死亡率、36%の死亡率、および29%の死亡率)。さらに、3種すべてのオリゴペプチドは前記H-フェリチン遺伝子の選択的アップレギュレーションを示し、前記L-フェリチン遺伝子の発現において変化はほとんどないかまたは全くなかった。具体的には、オリゴペプチドFT-006、FT-007、およびFT-008は、H-フェリチン遺伝子発現において、それぞれ、3.0倍、3.3倍、および4.0倍の増加を生じた。これらの結果は、ヘミン誘導性鉄酸化損傷からのアストロサイトの保護は、少なくとも部分的にはH-フェリチン遺伝子発現のアップレギュレーションによって生じることを示す。
【0072】
(実施例8)
(マウスマクロファージに対するオリゴペプチドの効果)
本実施例は、通常細胞培養条件、鉄強化細胞培養条件および鉄枯渇細胞培養条件での、マウス骨髄由来マクロファージ(MBMM)におけるH-フェリチンタンパク質発現およびH-フェリチンmRNA発現に対するSPHおよびオリゴペプチドの効果の評価を記載する。
【0073】
(細胞培養物)。 MBMM(C57BL/6遺伝的背景)をCellBiologics.netから入手し、その供給業者によって推奨された条件下で調製した。単離したMBMMを10cm直径のペトリ皿に播種し、10%熱非働化処理済みFCS(Gibco)と10% L-細胞馴化培地(コロニー刺激因子1の供給源)と2mM L-グルタミンと50U/mLペニシリンと50mg/mLストレプトマイシンとを補充した、RPMI-GlutaMAX(商標)培地(Invitrogen)中で成長させた。播種の4日後に、接着性MBMMをハンクス平衡塩溶液(HBSS)で2回リンスし、前記培地を7日間取り替えた。その時点で、前記MBMMはマクロファージへと完全に分化しており、いつでも下流の実験に適用する状態になっていた。
【0074】
(細胞処理)。 SPH(平均分子量約1100ダルトン)およびオリゴペプチドを滅菌水に溶解して、0.1mMストック溶液を得た。前記SPHおよびオリゴペプチドを細胞培養培地でさらに希釈して、ペトリ皿1枚当たり最終濃度160μMのSPHおよび最終濃度10μMのオリゴペプチドを得た。
【0075】
マウスマクロファージを、鉄-ニトリロ三酢酸溶液(Fe-NTA;FeCl(100μM)-NTA(400μM))の存在下または非存在下で、SPHまたはオリゴペプチドとともに37℃にて8時間インキュベートして、細胞鉄濃度を増加させた。マウスマクロファージはまた、メシル酸デスフェリオキサミン(DFO;100μM)の存在下または非存在下でも、SPHまたはオリゴペプチドとともに37℃にて16時間インキュベートして、細胞鉄濃度を減少させた。10μM濃度の市販のコラーゲンペプチド(Vital Protein)および滅菌水を陰性対照として使用した。
【0076】
(H-フェリチンの定量)。 マクロファージを冷たい生理食塩水で洗浄し、50mM HEPES(Gibco)と1% IGEPAL C-630(Sigma)と1%プロテアーゼインヒビターカクテルP840(Sigma)とを含む400μlの溶液で溶解させた。溶解物中のH-フェリチン濃度を、マウス組換えH-フェリチンサブユニットに対して産生したポリクローナル抗体を使用するELISAによって決定し、対応する組換えホモポリマーで較正した。前記抗体の特異性および前記抗体の交差反応性の非存在は、記載されている。結果を、表8-1において、細胞溶解物中の(全タンパク質mg)当たりの(フェリチンng)として表し、3回の読取りの平均として示した。全タンパク質含有量は、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を使用して測定した。
【0077】
(遺伝子発現の測定)。 全RNAを、動物およびヒトの細胞および組織からの全RNAの精製のためのQiagen miRNeasy Mini Kitを製造業者の指示にしたがって使用して、マクロファージから抽出した。RT2 RNA QC PCR Arrayを実行してRNAサンプルの品質を確認し、その後RT2 Profiler PCRアレイを使用する遺伝子発現分析を行った後で、約2μgの全RNAをcDNAへと転写させた。
【0078】
cDNAの増幅のために使用したプライマーは以下であった:
HPRT1フォワード:5’-GTAATGATCAGTCAACGGGGGAC-3’(配列番号14);
HPRT1リバース:5’-CCAGCAAGCTTGCAACCTTAACCA-3’(配列番号15);
FTH1フォワード:5’-GGAGTTGTATGCCTCCTAC-3’(配列番号16);および
FTH1リバース:5’-GAGATATTCTGCCATGCC-3’(配列番号17)。
【0079】
これらのプライマーはゲノムDNAを共増幅しない。すべての反応は全反応体積20μlにてiQ(商標)SYBR(登録商標)Green Supermix(Bio-Rad)を用いて実施し、iQ(商標)5装置(Bio-Rad)において実行した。ベースライン閾値をBio-Rad iQ5プログラムによって算出し、その閾値サイクル(Ct)を使用し、前記Fth1遺伝子についてのCt値をHprt1(ハウスキーピング)遺伝子の発現レベルに対して正規化した。結果を、対照サンプルと比較してn倍の差として表8-2に示す。
(表8-1.マウスマクロファージにおけるH-フェリチンタンパク質レベルに対するオリゴペプチドの効果)
【表8-1】
(表8-2.マウスマクロファージにおけるFTH1レベルに対するオリゴペプチドの効果)
【表8-2】
【0080】
最も活性な3種のオリゴペプチドはFT-008、FT-007、およびFT-006であった。これらのペプチドの各々でのマウスマクロファージの処置は、正常条件および鉄枯渇条件の両方において、FTH1 mRNA発現レベルおよび細胞内H-フェリチンタンパク質レベルにおいて実質的な増加をもたらした。前記H-フェリチンタンパク質の増加は鉄枯渇細胞環境において最も顕著であったが、鉄が豊富な細胞環境においては、FTH1 mRNA発現レベルおよびH-フェリチンタンパク質レベルの変化はほとんどまたは全く観察しなかった。
【0081】
(実施例9)
(オリゴペプチド処置マウスにおけるフェリチンの濃度および運動の分析)
本実施例は、レストレスレッグス症候群(RLS)のマウスモデル、ならびに血清および脳脊髄液中のフェリチン濃度に対するオリゴペプチド処置の効果を評価するためのその使用を記載する。このモデルはまた、運動(locomotion)に対するオリゴペプチド処置の効果を評価するためにも適している。
【0082】
(動物モデルおよび処置)。 C57/BL6マウスに、3.5mg鉄/kgだけを含む鉄欠乏ID食(TD 80396、Harlan、WI、USA)を給餌する。前記ID食を開始して1か月後に、6-ヒドロキシドーパミン(hydroxydopamome)(6-OHDA)損傷を両側のA11核において作製する。簡単に述べると、それらの動物に麻酔し、その後、0.01%アスコルビン酸生理食塩水中0.2%の6-OHDA 1μlを、以前に記載された(Quら、J Neuropathol Exp Neurol、66:383-388、2007;およびLuoら、Sleep Medicine、12:41-46、2011)とおりに両側のA11核に定位的に注射する(中外側0.35mm、背側/腹側4.5mm、前後方向-1.95mm)。
【0083】
その後、マウスを無作為に以下の種々の処置群に割り当てる(1群当たりn=5匹~10匹のマウス):(i)媒体対照,(2)SPH,(3)オリゴペプチドFT-006,(iv)オリゴペプチドFT-007、および(v)オリゴペプチドFT-008。FT-002、FT-004、およびコンセンサス番号1と整合する他のオリゴペプチドのうちの1つまたは複数を試験するために、追加の群を含め得る。この研究のためのオリゴペプチド用量は、前記マウスの体重1kg当たり約1mg~約1000mg、または約10mg~約100mgの範囲内であり得る。1日目の腹腔内注射による初回処置の後、その後の処置はマウス固形飼料で経口投与する。本研究は最長、4週間、8週間または12週間、継続し得る。
【0084】
(自発運動測定)。 自発運動(locomotor activity)測定を、Accu-Scan Digiscanシステム(Acuscan Instruments、Columbus、OH、USA)を使用して実行する。コンピュータにより収集するデータとしては、総移動距離(Total Distance traveled)(cm/60分)および移動時間(Moving Time)(秒/60分)が挙げられる。前記測定は、暗室中で9AMから11AMまで実行する。各マウスを試験チャンバ中に、順応のために30分間入れ、その後、コンピュータ生成自動分析システムを使用して60分間記録する。前記自発運動をマウスにおいて測定し、その後、0日目(ベースライン活動レベル)に処置を開始し、その後、本研究の過程を通じて定期的に行う。
【0085】
血液サンプルを、鉄レベルおよびバイオマーカーレベルの分析のために2週間ごとに収集する(尾静脈または頬の穿刺)。本研究の終わりに当たって、マウスを人道的に屠殺する。脊髄組織をすぐに解剖して氷上に配置する。その後、腰髄を分離し、以下のとおり処理する:鉄レベルの評価のためのホモジナイゼーションおよび消化;FTH1遺伝子発現の評価のためのRNA単離;ならびに免疫組織化学解析のための固定。鉄分析およびバイオマーカー分析のために、血液を心臓穿刺によって収集する。骨格筋サンプル、脾臓サンプル、心臓サンプルおよび肝臓サンプルもまた、遺伝子発現の測定および免疫組織化学解析のために屠殺時に収集する。脾臓を半分に分割する:第1の半分は免疫組織化学解析のために瞬間凍結し、第2の半分は、EasySep Mouse F4/80免疫磁気陽性選択キット(StemCell Technologies)を使用してマクロファージを単離するために処理し、それから遺伝子発現分析のためにRNAを単離する。
【0086】
(腰髄中の鉄測定)。 剖検時に、腰髄を収集し、秤量し、濃塩酸中で消化する。組織鉄濃度(組織1グラム当たりの鉄のマイクログラム)を、Diagnostic Chemical Limited(Charlotteown、PE、Canada)からのキットをマイクロタイタープレートアッセイのために改変して使用して、分光光度的に決定する。
【0087】
(遺伝子発現)。 RNA単離および遺伝子発現分析を、上記の実施例8に記載しているとおりに実施する。
【0088】
(免疫組織化学解析)。 器官サンプルをOCT化合物中に包埋し、瞬間凍結する。凍結サンプルをクリオスタットにて切片化し、その後、H-フェリチンおよびL-フェリチンについて染色する。切片は、炎症の評価のためにH&Eでも染色する。
【0089】
(統計解析)。 データを平均±平均値の標準誤差(SEM)、または平均±標準偏差(SD)として示す。媒体で処置したID+6OHDA損傷マウスと、オリゴペプチドFT-006で処置したID+6OHDA損傷マウス、オリゴペプチドFT-007で処置したID+6OHDA損傷マウス、およびオリゴペプチドFT-008で処置したID+6OHDA損傷マウスとの間の差を、元データまたは媒体対照に対して正規化した変換データ(対照の%)を使用して解析する。外部フェンスを2標準偏差に設定して、1群当たりの外れ値を解析する。複数の試験について補正するために、正規分布用の一元配置ボンフェローニ多重比較検定およびクラスカル・ウォリスノンパラメトリック検定を少数の動物サンプルのために適用する。<0.05のp値を有意であると考える。
【0090】
本開示は理解の明確さを目的として例示および例としていくらか詳細に記載されてきたが、特定の変更および改変が上記の教示を考慮して実施され得ることが当業者には明らかである。したがって、上記の実施例は本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によって明確に示される。
図1
【配列表】
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【国際調査報告】