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特表2025-505631非アモルファス炭素同素体の粒子を用いたプリント方法
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  • 特表-非アモルファス炭素同素体の粒子を用いたプリント方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】非アモルファス炭素同素体の粒子を用いたプリント方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/48 20060101AFI20250220BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20250220BHJP
   B41M 5/46 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
B41J2/48
B05D1/26 Z
B41M5/46 510
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546290
(86)(22)【出願日】2023-12-06
(85)【翻訳文提出日】2024-08-05
(86)【国際出願番号】 EP2023084482
(87)【国際公開番号】W WO2024132526
(87)【国際公開日】2024-06-27
(31)【優先権主張番号】22215497.3
(32)【優先日】2022-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】322002676
【氏名又は名称】ヘリオゾニック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン ヒンデラー
(72)【発明者】
【氏名】フランク バルター
(72)【発明者】
【氏名】ザーラ ツィンマーマン
(72)【発明者】
【氏名】ヨルク マイ
(72)【発明者】
【氏名】ホーマン ガンドムカー
【テーマコード(参考)】
2H111
4D075
【Fターム(参考)】
2H111AA35
2H111BA03
2H111BA34
2H111BA50
4D075AC06
4D075BB48Z
4D075BB95Z
4D075EA05
4D075EA33
4D075EB07
4D075EB38
4D075EC01
4D075EC02
4D075EC21
(57)【要約】
【課題】高いプリント品質を達成することができる汎用的に適用可能な(リフト)プリント技術を提供する。
【解決手段】本発明は、プリント方法に関し、プリントされる基材が液体インク層を有するインク担体に対向して配置され、液体インク層が局所的に照射され、液体インク層が液体および液体中に分散された炭素含有粒子Xを含み、炭素含有粒子Xがカーボンナノチューブ粒子、グラファイト粒子、並びに/または、グラフェン粒子、酸化グラフェン粒子、酸化グラファイト粒子、フラーレン粒子、およびグラファイト層間化合物の粒子からなる群から選択されるグラファイトの構造類似体粒子として存在する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント方法であって、
プリントされる基材が、液体インク層を有するインク担体に対向して配置され、前記液体インク層が、局所的に照射され、
前記液体インク層が、液体と、前記液体中に分散された炭素含有粒子Xとを含み、
前記炭素含有粒子Xが、カーボンナノチューブ粒子、グラファイト粒子、並びに/または、グラフェン粒子、酸化グラフェン粒子、酸化グラファイト粒子、フラーレン粒子、およびグラファイト層間化合物の粒子からなる群から選択されるグラファイトの構造類似体粒子として存在し、
前記インク層が、前記液体中に分散された、0.02~0.40重量%の前記炭素含有粒子Xを含有する、
プリント方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント方法であって、インクプリント装置によって実行され、前記インク層が、局所的に照射され、それによって:
(a)加熱膨出部が前記インク層に形成され、これがインク液滴の分離を引き起こすことによって、前記インクプリント装置が、前記インク層からインクの液滴を吐出するためのノズルレス液滴吐出器として機能し、かつ/又は
(b)加熱膨出部が前記インク層に形成され、この膨出部が、前記基材に接触し、基材とインク担体との間の相対移動によって、インク分離がもたらされる、
プリント方法。
【請求項3】
前記インク層が、レーザーによって、より具体的にはスイッチレーザーによって、局所的に照射される、請求項1または2に記載のプリント方法。
【請求項4】
インク担体とインク層とが、互いに対して平行に移動される、請求項1~3のいずれか一項に記載のプリント方法。
【請求項5】
基材およびインク担体が、少なくともプリント速度に対応する速度、好ましくは少なくともプリント速度の2倍の速度で、互いに対して移動される、請求項1~4のいずれか一項に記載のプリント方法。
【請求項6】
前記インク層が、10~99重量%、好ましくは15~95重量%、より好ましくは50~90重量%の前記液体を含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のプリント方法。
【請求項7】
前記液体中に分散された全ての炭素含有粒子の少なくとも50重量%が、カーボンナノチューブ粒子、グラファイト粒子および/またはグラフェン粒子として存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載のプリント方法。
【請求項8】
前記液体が、水および/若しくは有機溶媒を含有するか、または水および/若しくは有機溶媒からなる、請求項1~7のいずれか一項に記載のプリント方法。
【請求項9】
前記液体インクが、フリーラジカル重合性有機溶媒を含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のプリント方法。
【請求項10】
前記インク層が、前記液体中に分散および/または溶解されたポリマーを含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のプリント方法。
【請求項11】
前記インク層が、顔料を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のプリント方法。
【請求項12】
前記インク層が、0.4重量%未満のカーボンブラックを含有し、好ましくはカーボンブラックを含有しない、請求項1~11のいずれか一項に記載のプリント方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のプリント方法であって、
前記インク層が、
好ましくは顔料粒子として存在する、0.1~80.0重量%、好ましくは1.0~20.0重量%の、(レーザー回折によってDIN ISO13220、2020年版に従って測定したときの)3~300マイクロメートルの直径を有する、非炭素粒子
を含有する、プリント方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のインク層を含むプリントアセンブリ。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載のプリント方法でプリントされた基材。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか一項に記載のプリント方法における、請求項1~13のいずれか一項に記載のインク層の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント方法(印刷方法)、プリントアセンブリ(印刷アセンブリ)、基材、およびインク層の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インクの液滴がインクコーティングされた担体から被プリント基材上に投げ出される、基材をプリントするための方法が、US6,241,344B1から知られている。インクを転写する(移動させる)ために、基材がプリントされる位置で、担体上のインクに、担体を通して、エネルギーが導入される。これは、インクの一部の気化、またはインク中に存在する液体の気化を引き起こし、そのようにして、担体からインクが離れる。気化インクの圧力の結果として、このように分離されたインクの液滴は、基材上に投げ出される。
【0003】
指向的にエネルギーを導入することによって、プリントされるパターンに従って、基材上にインクを転写することが可能である。インクを転写するのに必要なエネルギーは、例えば、レーザーによって導入される。
【0004】
塗布されたインクを担持する担体は、例えば、循環リボンであり、インクは、塗布装置(適用装置)によって、プリント領域の手前で、循環リボンに塗布(適用)される。レーザーは循環リボンの内部に配置され、したがって、レーザーは、インクとは反対の側で、担体に作用する。インク担体へのインクの適用は、例えば、インクリザーバに浸漬されたロールによって達成される。この種のプリント機は、米国特許出願公開第5,021,808A号明細書からも知られている。
【0005】
この文献の教示によれば、インクはリザーバ容器から塗布装置を用いて循環リボンに適用され、循環リボン内にはレーザーが配置され、レーザーによって、インクが所定の位置で気化され、それに応じて、被プリント基材上に投げ出される。この場合、リボンは、レーザーに対して透明な材料(レーザー透過性の材料)で作られる。
【0006】
インクの選択的な気化のために、循環リボンを吸収層でコーティングすることが可能であり、レーザー光がこの吸収層で吸収され、熱に変換され、そのようにして、インクが、レーザーへの曝露位置で気化される。
【0007】
上述の方法を用いてレーザーによって液状インクを対向する基材に転写する場合(リフトプリント技術)、一般に、多数の隣接する衛星部(飛沫)を有する不定形の「点」が生じることになる。さらに、インクベルト上のインク担持層から滴を分離し、次いでそれを対向する基材上に自由飛行で運ぶために、多大なエネルギーが必要とされる。このため、非常に強力なレーザーを使用することが、特に許容可能な高さのプリント速度を達成するために、必要であり、したがって、コストが増加し、可能な用途が制限される。
【0008】
さらに、US20050212888により、小型レーザー吸収性粒子を使用することにより、レーザー誘起プリント法の効率を高めることができることが知られている。これは、記載されたプロセスの生産性の著しい増加を可能にするという点で重要である。吸収粒子を使用する場合の1つの欠点は、これらの粒子が、多くの場合、可視波長スペクトルにおいても吸収を示し、プリントされるインク(液体インク)の多かれ少なかれ強い変色を生じることである。
【0009】
国際公開第2019/175056号は、インク層からインクの液滴を吐出するためのノズルレス液滴吐出装置として機能するインクプリント装置を使用する(リフト)プリント技術を扱っている。そのようなプロセスにおいて、問題は、粒子のレーザー誘導吐出(液滴飛行)が、多数の望ましくない衛星部の吐出を伴い得ることであり得、これは、プリント結果の品質を低下させる。しかしながら、国際公開第2019/145300号は、代替(リフト)プリント機構に関し、これによれば、インク層に加熱膨出部が形成され、この膨出部が基材に接触し、基材とインク担体との間の相対移動によって、インク分離がもたらされる。
【0010】
国際公開第2021047886号は、対応する(リフト技術)プリント法において、カーボンブラック(吸収)粒子の代わりに反射性粒子を使用することを提案している。そのような(適切な)反射性粒子は、レーザビームに関して吸収特性も有する。典型的なカーボンブラック吸収性粒子とは対照的に、これらの反射性(吸収性)粒子は、インク層によって運ばれる着色印刷に関して比較的ニュートラルであり得る。そのような反射性(吸収性)粒子は、典型的には金属または金属被覆担体材料である。しかしながら、これらの反射性粒子は、十分な(レーザビーム)吸収効果を発生させるために、相対的に高い量(典型的には、インク層に使用されるインクに対して1~10重量%の量)で添加されなければならない。これは、一般に、インクの透明性のかなりの損失を引き起こす。さらに、そのような反射性粒子は、典型的には金属光沢および/またはグレーヘイズを生成する。このことは、多くの用途、特に高濁度(及び/又は光沢)が望ましくない(例えば、クリアコートに関する)用途に関するこのタイプのプリント技術の適合性を制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の課題は、高いプリント品質を達成することができる汎用的に適用可能な(リフト)プリント技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、プリント方法によって達成され、この方法では、被プリント基材が、液体インク層を有するインク担体に対向してて配置され、かつ液体インク層が、局所的に照射され、液体インク層は、液体と、液体中に分散された炭素含有粒子Xとを含み、炭素含有粒子Xは、カーボンナノチューブ粒子、グラファイト粒子、並びに/または、グラフェン粒子、酸化グラフェン粒子、酸化グラファイト粒子、フラーレン粒子、およびグラファイトインターカレーション化合物(グラファイト層間化合物)の粒子からなる群から選択されるグラファイトの構造類似体粒子として存在し、インク層は、液体中に分散された、0.02~0.40重量%の炭素含有粒子Xを含有する。
【0013】
本発明によるプリント方法は、リフトプリント法によるインクの移動(転写)を可能にする。最終的に、本発明により提供される吸収粒子は、インクの有意な曇りを引き起こすことなく、高い吸収性能が依然として達成され得ることを保証し、このような高い程度の吸収効率は、一般に、エネルギー効率を意味するだけでなく、プリント物の魅力的な外観にも直接的な影響を及ぼす。これは、望ましくないヘイズを回避することができるので、色プリント、光プリント、透明プリント、および光沢プリントに、特に関連する。
【0014】
プリントインクのリフトのために前記吸収粒子の少量の投与量のみが必要とされたことは、経済的利点である。
【0015】
これは、公知の吸収粒子、リフト技術で用いられる公知の吸収粒子、例えば、カーボンブラックまたは金属粒子、とは対照的であり、これらは、インク層によって運ばれる着色印刷に関して実質的にニュートラルではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明による方法を実施するために使用され得るプリント機(1)の1つの例示的な実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好ましい実施形態によれば、本プリント方法が、インクプリント装置によって実行され、インク層が、局所的に照射され、それにより:
(a)インク層内に加熱膨出部が形成され、これがインク液滴の分離を引き起こすことによって、インクプリント装置が、インク層からインクの液滴を吐出するためのノズルレス液滴吐出器として機能し、かつ/または、
(b)インク層内に加熱膨出部が形成され、この膨出部が基材と接触し、かつ基材とインク担体との間の相対運動によってインク分離がもたらされる。
【0018】
ノズルレス液滴吐出は、関係するプリント機構に従ってインクノズルが使用されないことを意味する。
【0019】
典型的には、インク層は、レーザーによって、より具体的にはスイッチレーザーによって、局所的に照射される。
【0020】
好ましくは、インク担体およびインク層が、互いに対して平行に移動される(特に、互いに重なって配置される)。
【0021】
典型的には、基材およびインク担体は、少なくともプリント速度に対応する速度、好ましくは少なくともプリント速度の2倍の速度で、互いに対して移動する。
【0022】
インク層は、液体中に分散された、0.02~0.40重量%の炭素含有粒子Xを含む。
【0023】
液体中に分散された炭素含有粒子Xのこの特別な小さな(相対的かつ定量的な)範囲は、一方では十分な(レーザー)吸収を保証するが、他方では望ましくないヘイズを回避する。さらに、約0.4重量%よりも高い対応する重量%値は、多くの場合、インクの望ましくない高い粘度を引き起こす(良好なプリント適性を維持するために、増粘効果は制限されるべきである)。粒子Xタイプの対応する混合物、例えば、カーボンナノチューブ粒子、グラファイト粒子およびグラフェン粒子の混合物を使用することも可能である。
【0024】
一般に、(可能であれば)使用されるレーザー出力を低減することが有利である(エネルギー効率的でもある)。
【0025】
通常、インク層は、10~99重量%、好ましくは15~95重量%、より好ましくは50~90重量%の液体を含有する。
【0026】
一般に好ましいのは、カーボンナノチューブ粒子、グラファイト粒子、並びに/または、グラフェン粒子、酸化物グラフェン粒子および酸化物グラファイト粒子からなる群から選択されるグラファイトの構造類似体粒子である。
【0027】
より好ましいのは、カーボンナノチューブ粒子、グラファイト粒子、および/または、グラフェン粒子からなる群から選択されるグラファイトの構造類似体粒子である。
【0028】
典型的には、液体中に分散された全ての炭素含有粒子の少なくとも50重量%が、カーボンナノチューブ粒子、グラファイト粒子および/またはグラフェン粒子として存在する。
【0029】
最も好ましいのは、グラファイト粒子、および/または、グラフェン粒子からなる群から選択されるグラファイトの構造類似体粒子である。
【0030】
通常、比較的小さいサイズ(約<5μm)および比較的小さいサイズ分布(粒径分布)を有する粒子Xが使用された。
【0031】
透明度が必要とされない場合、比較的広い粒径分布を有する比較的大きな粒子Xを使用することもできる。
【0032】
好ましくは、液体が、水および/若しくは有機溶媒を含有するか、または水および/若しくは有機溶媒からなる。
【0033】
特定の実施形態によれば、液体インクは、フリーラジカル重合性有機溶媒(反応性シンナー)を含有する。
【0034】
しかしながら、通常、インク層は、液体中に分散および/または溶解されたポリマーを含有する。
【0035】
多くの場合、インク層は、250,000g/molを超える重量平均(Mw)分子量を有する可溶性ポリマーを(レオロジー調整剤として)含み、ここで、可溶性ポリマーの分子量の重量平均(Mw)は、DIN55672-2:2016-3(溶出溶媒としてN,N-ジメチルアセトアミドが使用される)に従って決定される。
【0036】
このような可溶性ポリマーの割合は、本発明の一実施形態によれば、全インク混合物の0.05~2重量%である。
【0037】
本発明の1つの好ましい実施形態に従って使用されるそのような可溶性ポリマーは、セルロースエステル、硝酸セルロース、セルロースエーテルを含み、より具体的には、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリウレタンまたはビニルポリマーを含む。特に、ヒドロキシプロピルセルロース、言い換えれば、ヒドロキシル基の一部がエーテルとしてヒドロキシプロピル基と結合しているセルロースエーテルは、本発明の効果に特に適していると考えられる。
【0038】
しかしながら、従来の(有機または無機)バインダー、好ましくは従来のポリマーバインダーを使用することが可能である。
【0039】
特別な実施形態によれば、インク層が、顔料を含有する。
【0040】
好ましい実施形態によれば、インク層は、0.4重量%未満のカーボンブラックを含有し、好ましくはカーボンブラックを含有しない。
【0041】
多くの場合、インク層は、好ましくは顔料粒子として存在する、(DIN ISO13220、2020年版、に従ってレーザー回折によって測定したときに)3~300マイクロメートルの直径を有する、0.1~80.0重量%、好ましくは1.0~20.0重量%の、非炭素粒子を含有する。
【0042】
このような大きな粒子は、従来の噴射法によってプリントすることはできない(ノズルが詰まる)が、本発明によるリフトプリント技術によってプリントすることができる。
【0043】
本発明はさらに、上述のインク層を含むプリントアセンブリに関する。
【0044】
さらに、本発明は、上述のプリント方法でプリントされる基材に関する。
【0045】
さらに、本発明は、リフトプリント法における上述のインク層の使用に関する。
【0046】
以下、実施例を用いて本発明をさらに説明する。
【0047】
実行された(リフト)プリント方法:
図1に係る、プリント装置を使用した。
【0048】
図1は、本発明による方法を実施するために使用され得るプリント機(1)の1つの例示的な実施形態の模式図である。
【0049】
プリント機(プリント装置)(1)は、インク担体(4)として循環インクリボンを備える。
【0050】
インクリボンは、インクユニット(8)によって、均一にかつその全領域にわたってインク(2)でコーティングされる。続いて、インクリボンは、プリントニップ(10)に向かって矢印方向に移動する。インク担体(4)は、被プリント基材(6)から間隔を空けて離れている。好ましくは、間隔の幅が調節可能であり、かつ/または連続的に制御される。これは、例えば、適合可能な離隔ロール(5)によって行うことができる。
【0051】
プリントニップ(10)では、レーザスキャナ(11)を用いて、レーザビーム(3)が、レーザー光を透過するインク担体(4)を通して、インク(2)に集束される。レーザービーム(3)によるインク(2)の部分の局所的かつ選択的な加熱は、インク(2)の小領域の爆発的な気化を引き起こし、それにより、プリントインク(2)の部分が、インクリボンから、対向する基材(6)上へと転写される(移動する)。
【0052】
離隔ロール(5)および偏向ローラ(7)によって制御されるインクリボンは、その後、インクユニット(8)の方向に戻る。インクユニット(8)とインクリボンとの間の接触の際に、消費されたインク(2)が補充される。
【0053】
インクユニット(8)内の過剰なインク(2)は、インクトラフ(9)内に底部で集められ、プリント動作に、繰り返し連続的に添加される。
【0054】
図1に関連する参照番号のリスト

1.プリント機(プリント装置)

2.インク

3.レーザビーム

4.インク担体

5.離隔ロール

6.基材

7.偏向ローラ

8.インクユニット

9.インクトラフ

10.プリントニップ

11.レーザスキャナ
【0055】
プリント詳細及びプリント結果:
レーザー(LASER)吸収効率を評価するために、異なる濃度の炭素含有粒子を、クリアコート製剤に添加し(0.125~2.000重量%)、各試料を、上記の標準LIFTプリント法に従って、300Wのレーザー出力および2.5m/分のプリント速度で、透明PET箔上にプリントした。
【0056】
次の工程において、プリントされた領域(10×20cm)の被覆率を、デジタル光学顕微鏡(「Keyence VHX-7000」)下で視覚的に評価した。レーザー吸収、したがってインク転写(インク移動)は、非プリント(プリントされていない)領域が可視的でないときに十分であった:これは「全面プリント」を意味する。
【0057】
追加の予備試験(シミュレーション試験)において、粒子濃度に応じて、試料の膜透明性を、有線Kバー・ハンドコーター(密巻き、12μm溝部)を介して透明PET箔上に膜を適用することによって評価した。このようにして、全ての試料が同じ膜厚を有することを確実にすることができ、これは、対応する実験が互いに比較可能であった条件である。
【0058】
予備試験の前の結果に基づいて、(上記の通りの)標準的なLIFT法(リフト法)による試料のプリント試験を行った;ただし、アルミニウム粒子の場合は除き、なぜならば透明度が0.500重量%において既に不十分であった。
【0059】
Kバーテスト及びプリント結果
種々の炭素含有粒子(およびアルミニウム粒子)を、溶媒系クリアコート(分散体)に組み込み、Kバーによって透明PET箔上に塗布し、乾燥後に約6μmの厚さを有する膜を得た。これは、本発明による対応するリフトプリント法の(基材)結果をシミュレートする(この方法は同じ膜厚を提供するので、結果は比較可能である)。言い換えると、Kバーを介して適用された試料の乾燥後の膜厚は、LIFT法によって得られるプリントアウトと同等である。
【0060】
視覚的結果を評価した:対応する膜の光透過率を視覚的に評価した(0~6の範囲を提供する)(0は透明を表し、6は不透明を表す)。
【0061】
全ての適用された分散体は、標準的な分散手順によって調製された。得られる分散体の品質は、市販の標準分散液に従う。
【0062】
【表1】
上記の表中の重量パーセンテージは単に近似値である(なぜならばそれらは必ずしも正確に100になるとは限らない);しかしながら、少なくとも重量比が表示される。
【0063】
【表2】
【0064】
実験で使用されるグラフェン粒子は、典型的には8~10の凝集した(「一重化した」)層からなり(明確性のため:この層は、化学グラファイト構造に従って凝集したものではない);実験で使用されるグラファイト粒子(化学グラファイト構造に従って凝集した対応する層)は、約5μmのエッジ長さおよび約0.5μmのフレーク厚さを有する。
【0065】
【表3】
【0066】
上記のリフトプリント法によってプリント可能(またはプリント不可):「プリント可能」は「全面プリント」を意味し、「プリント困難」は、「全面プリント」が達成されないこと意味する。
【0067】
例えば、カーボンブラックの場合、0.500重量%以下の濃度では全面プリントを得ることさえできず、より高いレーザー放射パワー値でも得られなかった。
【0068】
グラフェン、グラファイトおよびカーボンナノチューブ(CNT)粒子については、0.250重量%(及びまたそれ未満)の濃度でさえ既に、高い透明性を有する全面プリントを得るために十分であった(「ほぼ透過吸収剤」)。
【0069】
上記の表に示される結果は、LIFT法のための透明(またはほぼ透明である)吸収体材料としてのグラフェン、グラファイトおよびカーボンナノチューブ粒子の高い効率を実証している。これらの粒子が使用される場合、本発明によるプリントは、0.250重量%未満の粒子濃度でも可能である。例えば、約0.01重量%のグラフェン粒子の濃度は、全面プリントを得るために十分でさえあり得る。しかしながら、そのような低粒子濃度を用いる場合、プリント法を可能にするために、対応する高いレーザー放射パワーが必要であろう。しかしながら、多くの場合、そのような高いレーザー放射パワーは(例えば、エネルギーの節約のために)回避されるべきである。
【0070】
非アモルファス炭素粒子の粒子は、典型的には高い粘度に寄与する。特に、CNT粒子(カーボンナノチューブ粒子)は、高粘度に寄与する(増粘剤の一種としても作用することが多い)。多くの場合、さらなる影響パラメータ(使用される液体の粘度など)に応じて、増粘効果を低減するためにCNTの量を制限することが有利である(制限された粘度を有するインクは、通常、プリントがより容易である)。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-08-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
非アモルファス炭素粒子の粒子は、典型的には高い粘度に寄与する。特に、CNT粒子(カーボンナノチューブ粒子)は、高粘度に寄与する(増粘剤の一種としても作用することが多い)。多くの場合、さらなる影響パラメータ(使用される液体の粘度など)に応じて、増粘効果を低減するためにCNTの量を制限することが有利である(制限された粘度を有するインクは、通常、プリントがより容易である)。
本開示は、下記の発明の態様を含む:
<態様1>
プリント方法であって、
プリントされる基材が、液体インク層を有するインク担体に対向して配置され、前記液体インク層が、局所的に照射され、
前記液体インク層が、液体と、前記液体中に分散された炭素含有粒子Xとを含み、
前記炭素含有粒子Xが、カーボンナノチューブ粒子、グラファイト粒子、並びに/または、グラフェン粒子、酸化グラフェン粒子、酸化グラファイト粒子、フラーレン粒子、およびグラファイト層間化合物の粒子からなる群から選択されるグラファイトの構造類似体粒子として存在し、
前記インク層が、前記液体中に分散された、0.02~0.40重量%の前記炭素含有粒子Xを含有する、
プリント方法。
<態様2>
態様1に記載のプリント方法であって、インクプリント装置によって実行され、前記インク層が、局所的に照射され、それによって:
(a)加熱膨出部が前記インク層に形成され、これがインク液滴の分離を引き起こすことによって、前記インクプリント装置が、前記インク層からインクの液滴を吐出するためのノズルレス液滴吐出器として機能し、かつ/又は
(b)加熱膨出部が前記インク層に形成され、この膨出部が、前記基材に接触し、基材とインク担体との間の相対移動によって、インク分離がもたらされる、
プリント方法。
<態様3>
前記インク層が、レーザーによって、より具体的にはスイッチレーザーによって、局所的に照射される、態様1または2に記載のプリント方法。
<態様4>
インク担体とインク層とが、互いに対して平行に移動される、態様1~3のいずれか一項に記載のプリント方法。
<態様5>
基材およびインク担体が、少なくともプリント速度に対応する速度、好ましくは少なくともプリント速度の2倍の速度で、互いに対して移動される、態様1~4のいずれか一項に記載のプリント方法。
<態様6>
前記インク層が、10~99重量%、好ましくは15~95重量%、より好ましくは50~90重量%の前記液体を含有する、態様1~5のいずれか一項に記載のプリント方法。
<態様7>
前記液体中に分散された全ての炭素含有粒子の少なくとも50重量%が、カーボンナノチューブ粒子、グラファイト粒子および/またはグラフェン粒子として存在する、態様1~6のいずれか一項に記載のプリント方法。
<態様8>
前記液体が、水および/若しくは有機溶媒を含有するか、または水および/若しくは有機溶媒からなる、態様1~7のいずれか一項に記載のプリント方法。
<態様9>
前記液体インクが、フリーラジカル重合性有機溶媒を含有する、態様1~8のいずれか一項に記載のプリント方法。
<態様10>
前記インク層が、前記液体中に分散および/または溶解されたポリマーを含有する、態様1~9のいずれか一項に記載のプリント方法。
<態様11>
前記インク層が、顔料を含む、態様1~10のいずれか一項に記載のプリント方法。
<態様12>
前記インク層が、0.4重量%未満のカーボンブラックを含有し、好ましくはカーボンブラックを含有しない、態様1~11のいずれか一項に記載のプリント方法。
<態様13>
態様1~12のいずれか一項に記載のプリント方法であって、
前記インク層が、
好ましくは顔料粒子として存在する、0.1~80.0重量%、好ましくは1.0~20.0重量%の、(レーザー回折によってDIN ISO13220、2020年版に従って測定したときの)3~300マイクロメートルの直径を有する、非炭素粒子
を含有する、プリント方法。
<態様14>
態様1~13のいずれか一項に記載のインク層を含むプリントアセンブリ。
<態様15>
態様1~13のいずれか一項に記載のプリント方法でプリントされた基材。
<態様16>
態様1~13のいずれか一項に記載のプリント方法における、態様1~13のいずれか一項に記載のインク層の使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント方法であって、
プリントされる基材が、液体インク層を有するインク担体に対向して配置され、前記液体インク層が、局所的に照射され、
前記液体インク層が、液体と、前記液体中に分散された炭素含有粒子Xとを含み、
前記炭素含有粒子Xが、カーボンナノチューブ粒子、グラファイト粒子、並びに/または、グラフェン粒子、酸化グラフェン粒子、酸化グラファイト粒子、フラーレン粒子、およびグラファイト層間化合物の粒子からなる群から選択されるグラファイトの構造類似体粒子として存在し、
前記インク層が、前記液体中に分散された、0.02~0.40重量%の前記炭素含有粒子Xを含有する、
プリント方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント方法であって、インクプリント装置によって実行され、前記インク層が、局所的に照射され、それによって:
(a)加熱膨出部が前記インク層に形成され、これがインク液滴の分離を引き起こすことによって、前記インクプリント装置が、前記インク層からインクの液滴を吐出するためのノズルレス液滴吐出器として機能し、かつ/又は
(b)加熱膨出部が前記インク層に形成され、この膨出部が、前記基材に接触し、基材とインク担体との間の相対移動によって、インク分離がもたらされる、
プリント方法。
【請求項3】
前記インク層が、レーザーによって、より具体的にはスイッチレーザーによって、局所的に照射される、請求項1または2に記載のプリント方法。
【請求項4】
インク担体とインク層とが、互いに対して平行に移動される、請求項1または2に記載のプリント方法。
【請求項5】
基材およびインク担体が、少なくともプリント速度に対応する速度、好ましくは少なくともプリント速度の2倍の速度で、互いに対して移動される、請求項1または2に記載のプリント方法。
【請求項6】
前記インク層が、10~99重量%、好ましくは15~95重量%、より好ましくは50~90重量%の前記液体を含有する、請求項1または2に記載のプリント方法。
【請求項7】
前記液体中に分散された全ての炭素含有粒子の少なくとも50重量%が、カーボンナノチューブ粒子、グラファイト粒子および/またはグラフェン粒子として存在する、請求項1または2に記載のプリント方法。
【請求項8】
前記液体が、水および/若しくは有機溶媒を含有するか、または水および/若しくは有機溶媒からなる、請求項1または2に記載のプリント方法。
【請求項9】
前記液体インクが、フリーラジカル重合性有機溶媒を含有する、請求項1または2に記載のプリント方法。
【請求項10】
前記インク層が、前記液体中に分散および/または溶解されたポリマーを含有する、請求項1または2に記載のプリント方法。
【請求項11】
前記インク層が、顔料を含む、請求項1または2に記載のプリント方法。
【請求項12】
前記インク層が、0.4重量%未満のカーボンブラックを含有し、好ましくはカーボンブラックを含有しない、請求項1または2に記載のプリント方法。
【請求項13】
請求項1または2に記載のプリント方法であって、
前記インク層が、
好ましくは顔料粒子として存在する、0.1~80.0重量%、好ましくは1.0~20.0重量%の、(レーザー回折によってDIN ISO13220、2020年版に従って測定したときの)3~300マイクロメートルの直径を有する、非炭素粒子
を含有する、プリント方法。
【請求項14】
請求項1または2に記載のインク層を含むプリントアセンブリ。
【請求項15】
請求項1または2に記載のプリント方法における、請求項1または2に記載のインク層の使用。
【国際調査報告】