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特表2025-505632上昇したHbA1cを有する対象における体重減少の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】上昇したHbA1cを有する対象における体重減少の方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4168 20060101AFI20250220BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20250220BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20250220BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20250220BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20250220BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
A61K31/4168
A61P1/16
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P9/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546294
(86)(22)【出願日】2023-02-06
(85)【翻訳文提出日】2024-09-30
(86)【国際出願番号】 US2023062065
(87)【国際公開番号】W WO2023150759
(87)【国際公開日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】63/307,470
(32)【優先日】2022-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/382,426
(32)【優先日】2022-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523436089
【氏名又は名称】リーバス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】カーン, シャハリヤール
(72)【発明者】
【氏名】ジョカスキー, ダイアン
(72)【発明者】
【氏名】ポルテル, フランシスコ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA42
4C086ZA70
4C086ZA75
4C086ZC33
4C086ZC35
(57)【要約】
本開示は、治療有効量の5-[(2,4-ジニトロフェノキシ)メチル]-1-メチル-2-ニトロ-1H-イミダゾール、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、異常なHbA1cレベルを有する対象における体重、体脂肪量、肝臓脂肪を低減する方法を提供する。一態様において、本開示は、異常なHbA1cレベルを有する対象における体重減少のための方法を提供し、ここで、該方法は、治療有効量の5-[(2,4-ジニトロフェノキシ)メチル]-1-メチル-2-ニトロ-1H-イミダゾール、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常なHbA1cレベルを有する対象における体重減少のための方法であって、治療有効量の5-[(2,4-ジニトロフェノキシ)メチル]-1-メチル-2-ニトロ-1H-イミダゾール、またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
異常なHbA1cレベルを有する対象における体脂肪量の低減のための方法であって、治療有効量の5-[(2,4-ジニトロフェノキシ)メチル]-1-メチル-2-ニトロ-1H-イミダゾール、またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項3】
前記異常なHbA1cレベルが、上昇したHbA1cである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象が、5.7よりも大きい上昇したHbA1cレベルを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
肝臓脂肪の上昇を有する対象における非アルコール性脂肪性肝臓疾患(NAFLD)を処置するための方法であって、治療有効量の5-[(2,4-ジニトロフェノキシ)メチル]-1-メチル-2-ニトロ-1H-イミダゾール、またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項6】
肝臓脂肪の低減を必要とする対象において肝臓脂肪を低減するための方法であって、治療有効量の5-[(2,4-ジニトロフェノキシ)メチル]-1-メチル-2-ニトロ-1H-イミダゾール、またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項7】
前記対象が、高いボディマス指数を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記対象が、28.0kg/mよりも大きいボディマス指数を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記対象が、28.0~45.0kg/mの間のボディマス指数を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記対象が、上昇したHbA1cレベルを有する、請求項5から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記対象が、5.7よりも大きい上昇したHbA1cレベルを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記肝臓脂肪の低減が、前記対象において少なくとも30%である、請求項6から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記治療有効量が、150mgである、請求項6から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記対象において約40%の肝臓脂肪低減をもたらす、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記上昇したHbA1cレベルを有する前記対象において約43%の肝臓脂肪低減をもたらす、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記治療有効量が、300mgである、請求項6から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記対象において約70%の肝臓脂肪低減をもたらす、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記上昇したHbA1cレベルを有する前記対象において約75%の肝臓脂肪低減をもたらす、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記治療有効量が、450mgである、請求項6から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象において約72%の肝臓脂肪をもたらす、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記上昇したHbA1cレベルを有する前記対象において約86%の肝臓脂肪をもたらす、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
非アルコール性脂肪性肝臓疾患の進行を遅らせる、いずれかの先行する請求項に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が、肥満、過剰な体脂肪、糖尿病、高血圧(高血圧症)、脂質異常症、高トリグリセリド血症、後天性リポジストロフィー、遺伝性リポジストロフィー、部分型リポジストロフィー、またはメタボリック症候群を患う、いずれかの先行する請求項に記載の方法。
【請求項24】
前記対象が、肥満または過剰な体脂肪を患う、いずれかの先行する請求項に記載の方法。
【請求項25】
前記対象が、糖尿病を患う、いずれかの先行する請求項に記載の方法。
【請求項26】
前記糖尿病が、2型糖尿病(T2DM)である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記対象が、非アルコール性脂肪性肝臓疾患(NAFLD)および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)から選択される障害を患う、いずれかの先行する請求項に記載の方法。
【請求項28】
前記対象が、低減した運動耐容能、疲労、疲労感、エクササイズ後に回復するための時間の増加、および足首腫脹から選択される症状のうちの少なくとも1つを患っている、いずれかの先行する請求項に記載の方法。
【請求項29】
FASTスコアの低減を必要とする対象においてFASTスコアを低減するための方法であって、治療有効量の5-[(2,4-ジニトロフェノキシ)メチル]-1-メチル-2-ニトロ-1H-イミダゾール、またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項30】
前記対象において進行性疾患のリスクを低減する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記進行性疾患が、進行性線維症、または進行性線維性肝臓疾患NASHである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
線維症、進行性線維症、または進行性線維性肝臓疾患NASHの処置を必要とする対象において線維症、進行性線維症、または進行性線維性肝臓疾患NASHを処置するための方法であって、治療有効量の5-[(2,4-ジニトロフェノキシ)メチル]-1-メチル-2-ニトロ-1H-イミダゾール、またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項33】
前記対象が、高いボディマス指数を有する、請求項29から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記対象が、28.0kg/mよりも大きいボディマス指数を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記対象が、28.0~45.0kg/mの間のボディマス指数を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記対象が、上昇したHbA1cレベルを有する、請求項29から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記対象が、5.7よりも大きい上昇したHbA1cレベルを有する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記治療有効量が、1日当たり約30mgから約1400mg、1日当たり約50mgから約100mg、1日当たり約150mgから約600mg、または1日当たり200mgから550mgである、請求項1から12または29から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記治療有効量が、1日当たり約100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、または600mgである、請求項1から12または29から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記治療有効量が、1日当たり約150mg、300mg、または450mgである、請求項1から12または29から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記治療有効量が、1日当たり約30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、または95mgである、請求項1から12または29から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
5-[(2,4-ジニトロフェノキシ)メチル]-1-メチル-2-ニトロ-1H-イミダゾールが、1日1回経口的に投与される、請求項1から12または29から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記対象が、5%、10%、20%、30%、または40%よりも大きい体重減少を経験する、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記対象が、およそ40%の体重減少を経験する、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記治療有効量が、約150mgであり、体重減少は10%より大きい、請求項34に記載の方法。
【請求項46】
前記治療有効量が、約300mgであり、体重減少は20%より大きい、請求項34に記載の方法。
【請求項47】
前記治療有効量が、約450mgであり、体重減少は30%より大きい、請求項34に記載の方法。
【請求項48】
前記対象が、
i)少なくとも5%もしくは少なくとも30%の体重の低減;
ii)少なくとも5mmHgの血圧の低下;
iii)少なくとも0.5%のHbA1cの低減;
iv)少なくとも10%の脂質の低減;および/または
v)少なくとも30%の肝臓脂肪の低減
のうちの少なくとも1つを経験する、先行する請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記対象が、
i)少なくとも5%もしくは少なくとも30%の体重の低減;
ii)少なくとも5mmHgの血圧の低下;
iii)少なくとも0.5%のHbA1cの低減;
iv)少なくとも10%の脂質の低減;および/または
v)少なくとも50%の肝臓脂肪の低減
のうちの少なくとも1つを経験する、先行する請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記対象が、1.5%よりも大きいHbA1cの低減を経験する、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
肥満、高血圧症、または糖尿病の進行を遅らせる、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この国際PCT出願は、2022年2月7日に出願された米国仮出願第63/307,470号および2022年11月4日に出願された米国仮出願第63/382,426号の優先権および利益を主張し、これらの内容は、参照によりそれら全体で本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本開示は、異常なHbA1cレベルを有する対象における体重、体脂肪量、および肝臓脂肪を低減する方法を提供し、ここで、該方法は、治療有効量の5-[(2,4-ジニトロフェノキシ(2,4-initrophenoxy))メチル]-1-メチル-2-ニトロ-1H-イミダゾール、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む。
【背景技術】
【0003】
背景
肥満は、2型糖尿病(T2D)および非アルコール性脂肪性肝臓疾患(NAFLD)など多くの共通の疾患の発症にとっての周知の危険因子である。肥満は、健康リスクを与える任意の程度の過剰な脂肪症(adiposity)として最もよくみなされる。グリコシル化ヘモグロビンHbA1cは、対象の血中グルコースレベルを指し示すバイオマーカーであり、糖尿病を診断するための他のマーカーと一緒に使用される。肥満および過体重は、上昇したHbA1cを引き起こす多くの因子の1つである。上昇したHbA1cレベルは、心疾患、肝臓疾患、膵臓疾患、腎臓疾患などの合併症を発症するより高いリスクと関連してきた。そのため、上昇したHbA1cを有する対象における体重を低減するための有効な処置に対する大きな必要がある。
【0004】
脂肪沈着を低下させるための手段としてミトコンドリアの化学的脱共役剤の投与は、長年の間の科学的な目標であった。ミトコンドリアの酸化的リン酸化を脱共役させるいくつかの小分子がある一方で、最もよく知られているのは、2,4-ジニトロフェノール(DNP)である。DNPは、頑強な効果で脱共役させることが知られているが、それは、残念ながら、許容できない高い率の著しい有害効果と関連する(J. Med. Toxicol. 2011 Sep; 7(3): 205-212)。これらの有害効果は、高体温、頻拍、発汗および頻呼吸(tachypnoea)を含むことがあり、最終的に死亡に至る。小さく高透過性の親油性酸であり、DNPは、胃において急速に吸収される。高濃度は、急速に分布し、直ちに脱共役し、短時間で高レベルの熱を生成する。したがって、DNPは、小さい治療指数を有し、過剰摂取において極めて危険である。DNPは、1938年の連邦食品医薬品化粧品法によって「ヒトの消費には極めて危険であり不向きである」と標記された。したがって、ミトコンドリア関連の障害または状態を安全に処置することができる脱共役剤の必要がある。
5-[(2,4-ジニトロフェノキシ)メチル]-1-メチル-2-ニトロ-1H-イミダゾールは、新規な小分子脱共役剤(化合物1)である。それは、制御代謝加速剤(CMA)として働く。それは、代謝性疾患の根本的原因、体内の脂肪および糖の蓄積に有効に取り組むように設計されている。CMAは、細胞代謝を改善するとともにエネルギー支出およびカロリー消費を増加させるように働き、脂肪の蓄積を低減する。新たな制御されかつ標的化された手法を使用して、化合物1は、エネルギーを散逸させるとともに毎日のカロリーの20%~40%を占める体内の進行中のプロセスであるミトコンドリアのプロトン漏出を増加させることができる。化合物1は、ミトコンドリア脱共役機序を活用して、基質利用を増加させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J. Med. Toxicol. 2011 Sep; 7(3): 205-212
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
一態様において、本開示は、異常なHbA1cレベルを有する対象における体重減少のための方法を提供し、ここで、該方法は、治療有効量の5-[(2,4-ジニトロフェノキシ)メチル]-1-メチル-2-ニトロ-1H-イミダゾール、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む。
【0007】
ある特定の実施形態では、異常なHbA1cレベルは、上昇したHbA1cである。
【0008】
別の態様において、本開示は、治療有効量の5-[(2,4-ジニトロフェノキシ)メチル]-1-メチル-2-ニトロ-1H-イミダゾール、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、肝臓脂肪の低減を必要とする対象において肝臓脂肪を低減するための方法を提供する。
【0009】
ある特定の実施形態では、方法は、対象における肝臓脂肪の低減をもたらす。
【0010】
ある特定の実施形態では、方法は、肝臓脂肪の上昇を有する対象における非アルコール性脂肪性肝臓疾患(NAFLD)を処置するためのものである。
【0011】
ある特定の実施形態では、対象は、高いボディマス指数(BMI)を有する。
【0012】
ある特定の実施形態では、対象における肝臓脂肪の低減は、対象において少なくとも30%である。
【0013】
ある特定の実施形態では、肝臓脂肪の低減は、上昇したHbA1cレベルを有する対象において少なくとも40%である。
【0014】
ある特定の実施形態では、方法は、非アルコール性脂肪性肝臓疾患の進行を遅らせる。
【0015】
特定の実施形態では、対象は、肥満、過剰な体脂肪、糖尿病、高血圧(高血圧症)、脂質異常症、高トリグリセリド血症、後天性リポジストロフィー、遺伝性リポジストロフィー、部分型リポジストロフィー、またはメタボリック症候群を患う。
【0016】
ある特定の実施形態では、対象は、低減した運動耐容能、疲労(fatigue)、疲労感(tiredness)、エクササイズ後に回復するための時間の増加、および足首腫脹から選択される症状のうちの少なくとも1つを患っている。
【0017】
特定の実施形態では、対象は、非アルコール性脂肪性肝臓疾患(NAFLD)および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)から選択される障害を患う。
【0018】
特定の実施形態では、化合物1の治療有効量は、1日当たり約30mgから約1400mg、1日当たり約50mgから約100mg、1日当たり約150mgから約600mg、または1日1回経口的に200mgから550mgである。
【0019】
ある特定の実施形態では、対象は、化合物1の投与後に体重減少を経験し、ここで、体重減少は、5%、10%、20%、または30%よりも大きい。
【0020】
一実施形態では、対象は、
i)少なくとも5%または少なくとも30%の体重の低減;
ii)少なくとも5mmHgの血圧の低下;
iii)少なくとも0.5%の、または少なくとも1.5%のHbA1cの低減
のうちの少なくとも1つを経験する。
【0021】
別の実施形態では、方法は、肥満、高血圧症、または糖尿病の進行を遅らせる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、第2相研究設計を示す。
【0023】
図2図2は、HbA1c上昇集団での対象における全ての用量にわたる処置効果を示す。
【0024】
図3図3は、増加したHbA1cを有する対象における体重低減を示す。
【0025】
図4図4は、HbA1c上昇集団での対象における体脂肪変化を示す(平均±SEM)。
【0026】
図5図5は、全体の集団およびHbA1c上昇群における体重減少を示す。
【0027】
図6図6は、ベースラインから61日目までの肝臓脂肪における応答率(即ち、≧30%)低減を示す。
【0028】
図7図7は、ベースラインから61日目までの150mg、300mg、および450mgの化合物1での肝臓脂肪における絶対および相対百分率(%)変化を示す。
【0029】
図8図8は、肝硬度パラメーターについてベースラインからのパーセント(%)変化を示す。
【0030】
図9図9は、全体の(FAS)集団における糖化アルブミンの低減(パーセント%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
詳細な記載
定義
本発明の様々な実施形態および態様が、本明細書において示され、記載されているが、こうした実施形態および態様が、ほんの一例によって提供されることは、当業者に明白であろう。多数の変動、変化および置換が、ここで、本発明から逸脱することなく当業者に生じるであろう。本明細書に記載されている本発明の実施形態の様々な代替は、本発明を実践する際に用いることができると理解されるべきである。
【0032】
本明細書において使用されているセクション見出しは、構成目的のためだけであり、記載されている主題を限定すると解釈されるべきでない。限定せずに、特許、特許出願、記事、本、マニュアル、および論文などの本出願において引用されている全ての文献または文献の一部は、本明細書によって、任意の目的のためにそれら全体で参照により明確に組み込まれる。
【0033】
5-[(2,4-ジニトロフェノキシ)メチル]-1-メチル-2-ニトロ-1H-イミダゾールは、新規な小分子脱共役剤である。それは、以下の構造を有する:
【化1】
【0034】
5-[(2,4-ジニトロフェノキシ)メチル]-1-メチル-2-ニトロ-1H-イミダゾールは、WO2018/129258に記載されている手順によって調製することができる。
【0035】
この開示において、化合物1およびCM1は、相互交換可能である。それら両方は、5-[(2,4-ジニトロフェノキシ)メチル]-1-メチル-2-ニトロ-1H-イミダゾールを指す。
【0036】
「a」または「an」という用語は、本明細書において使用されている場合、1つまたは複数を意味する。
【0037】
「含む(comprise)」「含む(include)」および「有する」という用語ならびにその派生語は、本明細書において、包括的なオープンエンド用語として相互交換可能に使用される。例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、または「有する」の使用は、含まれる(comprised)、有される、または含まれる(included)要素が何であれ、動詞を含有する節の主語によって包含される唯一の要素ではないことを意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、当業者が、特定された値と合理的に同様であると考える特定された値を含む、ある範囲の値を意味する。一部の実施形態では、「約」という用語は、当技術分野において一般に許容される測定を使用して標準偏差以内を意味する。一部の実施形態では、「約」は、特定された値の+/-10%、+/-5%、または+/-2%に及ぶ範囲を意味する。一部の実施形態では、「約」は、特定された値を意味する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「処置」または「処置すること」または「和らげること」または「好転させること」または「低減すること」は、本明細書において相互交換可能に使用される。これらの用語は、以下に限定されないが、治療利益などの有益なまたは所望の結果を得るための手法を指す。治療利益によって、処置されている基礎障害の根絶または好転を意味する。その上、治療利益は、対象が依然として基礎障害に苦しんでいることがあるにもかかわらず改善が対象において観察されるような、基礎障害と関連する生理学的症状の1つまたは複数の根絶または好転で達成される。処置は、疾患の臨床症状の発症が組成物の投与によって遅くなるのを引き起こすこと;疾患を抑制すること、すなわち、疾患の臨床症状の低減を引き起こすこと;疾患を阻害すること、すなわち、症状の初期出現の後、組成物の投与によって臨床症状の発症を停止すること;および/または疾患を軽減すること、すなわち、臨床症状の退行を、それらの初期出現後の組成物の投与によって引き起こすことを含む。
【0040】
「患者」または「対象」または「それを必要とする対象」は、本明細書において提供されている方法を使用することによって処置することができる疾患または状態を患うまたはそれに罹りやすい生体を指す。該用語は、対象が特定の疾患と診断されたことを必ずしも指し示しているわけでないが、典型的には、医療上の監督下にある個体を指す。非限定的な例は、ヒト、他の哺乳動物を含む。
【0041】
本明細書で使用される場合、開示されている化合物の「投与」は、任意の適当な製剤または投与経路を使用して、例えば、本明細書に記載されている通りに、本明細書に記載されている通りの化合物、またはそのプロドラッグもしくは他の薬学的に許容される誘導体を対象に送達することを包含する。
【0042】
「薬学的に許容される」は、獣医学的またはヒト薬学的使用に適当である医薬組成物を調製することにおいて有用である化合物、塩、組成物、剤形および他の材料を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という言語は、無機酸、無機塩基、有機酸、無機塩基、溶媒和物、水和物、およびその包接体などの薬学的に許容される非毒性酸および塩基から調製される投与化合物の塩を指す。
【0044】
「有効量」は、明記されている目的を達成する(例えば、それが投与される効果を達成する、疾患を処置する、酵素活性を低減する、疾患または状態の1つまたは複数の症状を低減する、細胞におけるウイルス複製を低減する)のに十分な量である。「有効量」の例は、疾患の処置またはその症状(単数)もしくは症状(複数)の低減に寄与するのに十分な量であり、「治療有効量」と称することもできる。症状(単数)または症状(複数)の「低減」(およびこの成句の文法的等価物)は、症状(複数可)の重症度もしくは頻度の低下、または症状(複数可)の排除を意味する。有効性は、「-倍」の増加または低下と表すこともできる。例えば、治療有効量は、対照よりも少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍、またはそれを超える効果を有することができる。
【0045】
本明細書で使用される場合、対象における「体温の上昇」という用語は、対象に対する有害作用と関連する体温上昇を指すが、疾病、身体的不快感または疼痛、昏睡および死亡に限定されない。非限定的な一実施形態では、体温の有意な上昇は、約0.5℃、約1℃、約1.5℃、約2℃、約2.5℃、約3℃、約3.5℃、約4℃、約4.5℃、約5℃、約5.5℃、約6℃またはそれより高い上昇である。
【0046】
本明細書で使用される場合、「肝臓脂肪の上昇」は、一般に、肝臓の重量の8%超が脂肪で構成される場合を指す。しかしながら、AASLDは、NAFLDの肝臓脂肪の上昇を5%と定義した。Chalasani et al., Hepatology, 2018 67: 328-357. Le et al. Diabetes,2022; 71 (Supplement_1) 119-OR。他は、任意のレベルでの肝臓脂肪の任意の上昇が不健康であると示唆した。Minhdale etal. Diabetes 2022; 71(Supplement_1):119-OR。他の研究者は、任意の肝臓脂肪の存在が異常であり得、およそ2%の[肝臓脂肪含量]カットオフは、非アルコール性脂肪性肝臓疾患を定義するのに最適であり得ると示唆した。
【0047】
処置の方法
【0048】
一態様において、本明細書において提供されるのは、治療有効量の5-[(2,4-ジニトロフェノキシ)メチル]-1-メチル-2-ニトロ-1H-イミダゾール、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、異常なHbA1cレベルを有する対象における体重減少のための方法である。
【0049】
糖尿病を有しない人々では、ヘモグロビンHbA1cレベルについての正常範囲は、4%から5.6%の間である。5.7%から6.4%の間のヘモグロビンHbA1cレベルは、前糖尿病および糖尿病を発症するより高いリスクとして特徴付けすることができる。6.5%またはそれより高いレベルは、糖尿病と考えられる。
【0050】
ある特定の実施形態では、異常なHbA1cレベルは、上昇したHbA1cである。
【0051】
別の実施形態では、対象は、5.7よりも大きい上昇したHbA1cレベルを有する。
【0052】
ある特定の実施形態では、対象は、肥満、過剰な体脂肪、糖尿病、高血圧(高血圧症)、脂質異常症、高トリグリセリド血症、後天性リポジストロフィー、遺伝性リポジストロフィー、部分型リポジストロフィー、またはメタボリック症候群を患う。
【0053】
ある特定の実施形態では、対象は、肥満または過剰な体脂肪を患う。
【0054】
ある特定の実施形態では、対象は、糖尿病を患う。
【0055】
ある特定の実施形態では、糖尿病は、2型糖尿病(T2DM)である。
【0056】
別の実施形態では、対象は、非アルコール性脂肪性肝臓疾患(NAFLD)および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)から選択される障害を患う。
【0057】
ある特定の実施形態では、対象は、低減した運動耐容能、疲労、疲労感、エクササイズ後に回復するための時間の増加、および足首腫脹から選択される症状のうちの少なくとも1つを患っている。
【0058】
別の態様において、本明細書において提供されているのは、治療有効量の5-[(2,4-ジニトロフェノキシ)メチル]-1-メチル-2-ニトロ-1H-イミダゾール、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における体脂肪量を低減するための方法である。
【0059】
別の態様において、本明細書において提供されているのは、治療有効量の5-[(2,4-ジニトロフェノキシ)メチル]-1-メチル-2-ニトロ-1H-イミダゾール、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、肝臓脂肪の低減を必要とする対象において肝臓脂肪を低減するための方法である。
【0060】
ある特定の実施形態では、それを必要とする対象は、肝臓脂肪の上昇を有する。
【0061】
ある特定の実施形態では、上記方法は、対象における肝臓脂肪の低減をもたらす。
【0062】
【0063】
ある特定の実施形態では、方法は、肝臓脂肪の上昇を有する対象における非アルコール性脂肪性肝臓疾患(NAFLD)を処置することである。
【0064】
ある特定の実施形態では、対象は、高いボディマス指数(BMI)を有する。
【0065】
ある特定の実施形態では、対象における肝臓脂肪の低減は、対象において少なくとも30%である。
【0066】
ある特定の実施形態では、肝臓脂肪の低減は、上昇したHbA1cレベルを有する対象において少なくとも40%である。
【0067】
ある特定の実施形態では、対象のBMIは、28.0kg/mよりも大きい。
【0068】
ある特定の実施形態では、対象のBMIは、28.0から45.0kg/mの間である。
【0069】
ある特定の実施形態では、体重低減は、脂肪低減に起因する。
【0070】
ある特定の実施形態では、体重低減は、肝臓脂肪低減に起因する。
【0071】
ある特定の実施形態では、治療有効量は、150mgであり、肝臓脂肪の低減は、対象において約40%である。
【0072】
ある特定の実施形態では、治療有効量は、150mgであり、肝臓脂肪の低減は、上昇したHbA1cレベルを有する対象において肝臓脂肪の約43%である。
【0073】
ある特定の実施形態では、治療有効量は、300mgであり、肝臓脂肪の低減は、上昇したHbA1cレベルを有する対象において約70%である。
【0074】
ある特定の実施形態では、治療有効量は、300mgであり、肝臓脂肪の低減は、上昇したHbA1cレベルを有する対象において約75%である。
【0075】
ある特定の実施形態では、治療有効量は、450mgであり、肝臓脂肪の低減は、対象において約72%である。
【0076】
ある特定の実施形態では、治療有効量は、450mgであり、肝臓脂肪の低減は、上昇したHbA1cレベルを有する対象において約86%である。
【0077】
ある特定の実施形態では、方法は、非アルコール性脂肪性肝臓疾患の進行を遅らせる。
【0078】
ある特定の実施形態では、本開示は、治療有効量の5-[(2,4-ジニトロフェノキシ)メチル]-1-メチル-2-ニトロ-1H-イミダゾール、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、NAFLDを有する対象が非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に進むリスクを低減するための方法を提供し、ここで、対象は、肝臓脂肪の上昇を有する。
【0079】
別の態様において、NAFLDを有する患者は、上昇した脂肪症、または上昇したHbA1cを有する。
【0080】
ある特定の実施形態では、対象は、肥満、過剰な体脂肪、糖尿病、高血圧(高血圧症)、脂質異常症、高トリグリセリド血症、後天性リポジストロフィー、遺伝性リポジストロフィー、部分型リポジストロフィー、またはメタボリック症候群を患う。
【0081】
ある特定の実施形態では、方法は、肥満、高血圧症、または糖尿病の進行を遅らせる。
【0082】
別の態様において、ここに開示されているのは、治療有効量の5-[(2,4-ジニトロフェノキシ)メチル]-1-メチル-2-ニトロ-1H-イミダゾール、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における線維症、進行性線維症、または進行性線維性肝臓疾患NASHを処置するための方法である。
【0083】
ある特定の実施形態では、治療有効量は、1日当たり約30mgから約1400mg、1日当たり約50mgから約100mg、1日当たり約150mgから約600mg、または1日当たり200mgから550mgである。
【0084】
ある特定の実施形態では、治療有効量は、1日当たり約100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、または600mgである。
【0085】
ある特定の実施形態では、治療有効量は、1日当たり約30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、または95mgである。
【0086】
ある特定の実施形態では、治療有効量は、1日当たり約150mg、300mg、または450mgである。
【0087】
ある特定の実施形態では、化合物1は、1日1回経口的に投与される。
【0088】
ある特定の実施形態では、対象は、化合物1の投与後に体重減少を経験し、ここで、改善は、5%、10%、>20%、または30%より大きい体重減少を含む。
【0089】
ある特定の実施形態では、化合物1の治療有効量は、約150mgであり、体重減少は、10%より大きい。
【0090】
ある特定の実施形態では、化合物1の治療有効量は、約300mgであり、体重減少は、20%より大きい。
【0091】
ある特定の実施形態では、化合物1の治療有効量は、約450mgであり、体重減少は、30%より大きい。
【0092】
ある特定の実施形態では、対象は、
i)少なくとも5%もしくは少なくとも30%の体重の低減;
ii)少なくとも5mmHgの血圧の低下;
iii)少なくとも0.5%のHbA1cの低減、
iv)少なくとも10%の脂質の低減;および/または
v)少なくとも30%の肝臓脂肪の低減
のうちの少なくとも1つを経験する。
【0093】
ある特定の実施形態では、対象は、
i)少なくとも5%もしくは少なくとも30%の体重の低減;
ii)少なくとも5mmHgの血圧の低下;
iii)少なくとも0.5%のHbA1cの低減、
iv)少なくとも10%の脂質の低減;および/または
v)少なくとも50%の肝臓脂肪の低減
のうちの少なくとも1つを経験する。
【0094】
ある特定の実施形態では、対象は、少なくとも1.5%のHbA1cの低減を経験する。
【0095】
ある特定の実施形態では、方法は、肥満、高血圧症、または糖尿病の進行を遅らせる。
【0096】
医薬剤形
【0097】
本開示は、化合物1またはその薬学的に許容される塩の新規な医薬剤形を含む。本明細書に記載されている剤形は、対象への経口投与に適当である。剤形は、以下に限定されないが、カプセルまたは錠剤などの経口投与に適当な任意の形態であってよい。一部の実施形態では、本開示は、約30mgから約1400mg、約100mgから約1000mg、約150mgから約600mg、または200mgから550mgの化合物1またはその薬学的に許容される塩を含有する単一の単位投与量カプセルまたは錠剤形態を提供する。一部の実施形態では、化合物1は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセル中で投与される。
【0098】
一部の実施形態では、単位投与量における化合物1の量は、約30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、75mg、80mg、90mg、100mg、150mg、170mg、200mg、250mg、300mg、340mg、350mg、400mg、450mg、500mg、510mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1000mg、1050mg、1100mg、1150mg、1200mg、1250mg、1300mg、1350mg、または1400mgである。一部の実施形態では、単一の単位剤形は、カプセルである。一部の実施形態では、単一の単位剤形は、錠剤である。
【0099】
一部の実施形態では、単位投与量における化合物1の量は、約30mg、100mg、200mg、500mg、600mg、1050mg、または1400mgである。一部の実施形態では、単位投与量における化合物1の量は、約200mg、400mg、または550mgである。一部の実施形態では、単位投与量における化合物1の量は、約170mg、340mg、510mgである。一部の実施形態では、単位投与量における化合物1の量は、約150mg、300mg、450mgである。
【0100】
投与経路
【0101】
哺乳動物における体重増加を制御または防止するための治療的使用において、本開示の化合物またはそれの医薬組成物は、経口的に、または非経口的に投与することができる。
【実施例
【0102】
(実施例1)
肝臓脂肪の上昇および高いボディマス指数(BMI)を有する対象における化合物1の第2a相研究
【0103】
これは、非アルコール性脂肪性肝臓疾患(NAFLD)、肝臓脂肪の上昇(>8%)、およびボディマス指数(BMI)の上昇(28kg/mから45kg/m)を有する対象において、プラセボと比較した、3用量の経口投与化合物1の安全性および有効性を評価するための、61日の無作為化二重盲検試験プラセボ対照試験であった。対象を糖化ヘモグロビン(HbA1c≧5.7%)によって層別化した。一次エンドポイントは、磁気共鳴画像法プロトン密度脂肪率(MRI-PDFF)によって評価されたベースラインから61日目までの肝臓脂肪含量における相対的な変化であり;二次エンドポイントは、安全性、身体組成の変化、体重、血糖制御、および炎症マーカーを含んでいた。
【0104】
80人の対象を登録した(プラセボn=20、化合物1 150mg n=20、300mg n=21、450mg n=19)。ベースライン時に、HbA1cを対象の40%において上昇させた。61日目に、化合物1処置対象およびHbA1cサブセットにおける肝臓脂肪の絶対的低減および相対的低減は、非常に有意であった(プラセボに対してp<0.0001)。MRI-PDFFによって肝臓脂肪の30%またはそれより大きい低減を使用する応答者分析は、化合物1の150mg、300mg、および450mg用量についてそれぞれ40%、71%、および72%において、ならびにHbA1cサブセットにおいて43%、75%、および86%、それに対してプラセボで0~5%において応答を示した(全ての比較についてp<0.05)。化合物1処置は、全身脂肪、体重、炎症マーカー、および糖化アルブミンの有意な低減と関連した。除脂肪体重は保存された。重篤な有害事象は生じなかった。6人の対象は、早期に、化合物1で3人(150mg n=2、300 n=1)およびプラセボで3人が中断した。下痢および潮紅が、最もしばしば軽度に、それぞれ化合物1の対象の35%および25%において生じた。
【0105】
研究設計
【0106】
これは、高いBMIおよび肝臓脂肪の上昇のエビデンスを有する健康な対象における化合物1の安全性および有効性を評価するための、第2相、単一施設、無作為化、並行群、二重盲検、プラセボ対照の研究であった。対象を45日の期間にわたってスクリーニングし、適格な対象を、61日間の絶食条件下で、1日1回の経口用量の化合物1を150mg、300mg、もしくは450mgで、または対応するプラセボを受けるように無作為化した。無作為化は、<5.7%のHbA1cとして定義されている通常のベースラインおよび≧5.7%のHbA1cとして定義されている高いベースラインを用いて、糖化ヘモグロビンA1c(HbA1c)によって層別化した。最終の追跡調査来院が最後の用量後の10日から14日以内に行った。図1を参照されたい。
【0107】
無作為化は、HbA1cによってブロック化および層別化される。対象は、2つのHbAc層:<5.7%のHbAcとして定義されている通常のベースラインHbAcを有する対象の一方のサブグループおよび5.7%から9.0%の間(両端の値を含む)のHbAcとして定義されている高いベースラインHbAcを有する対象の他方のサブグループに層別化される。
【0108】
目的
この研究の主な有効性および安全目的は以下である:
有効性:
・プラセボと比較して化合物1で処置されたBMIの上昇を有する対象においてベースラインから61日目まで磁気共鳴画像法プロトン密度脂肪率(MRI-PDFF)によって評価される場合の肝臓脂肪含量の低減を評価すること。
安全性:
・BMIによって定義されている通りの過体重および肥満の対象において61日間の化合物1の反復毎日投薬の安全性および耐容性を評価すること。
この研究の二次目的は以下である:
・61日間の化合物1処置後の体重減少の速度および量を評価すること。
・61日間の化合物1処置後のMRIによる全身脂肪症におけるベースラインからの変化を評価すること。
・高いBMIを有する対象における61日間の投薬にわたる、化合物1およびそれの代謝物、DNPおよびM1の薬物動態学的(PK)プロファイルを特徴付けること。
・化合物1での投薬後の肝臓脂肪含量における変化と肝臓組成の尺度におけるベースラインからの変化を評価および相関させること。
・代謝的および心血管的危険因子に対する化合物1の薬力学的(PD)効果を調査すること。
・メタボロミクス、プロテオミクスおよびリピドミクスのプロファイルに対する化合物1のPD効果を調査すること、
・データが許容する場合、化合物1の有効性およびPD効果の用量/曝露関係を特徴付けること。
【0109】
包含基準
対象は、適格であるための全ての以下の包含基準を満たさなければならない:
1.28.0kg/mから45.0kg/mの間(両端の値を含む)のBMIを有する、インフォームドコンセント時に28歳から65歳(両端の値を含む)の成人男性または女性。
a.出産可能な女性対象は、非授乳中であり、スクリーニング時の陰性尿妊娠試験によって確認されるように妊娠しておらず、研究薬物の最後の用量後30日まで、少なくとも4週間にわたり避妊の有効な方法または第1の研究薬物投与の前2週間にわたりバリア方法を使用するのを継続することに同意しなければならない。
b.出産可能な女性対象は、研究中および研究薬物の最後の用量後少なくとも30日間、卵子を提供してはいけない。
c.出産不可能な女性対象は、外科的に不妊であるか(例えば、子宮摘出、両側卵管結紮、卵巣摘出)または閉経後(スクリーニング時に>40U/Lの卵胞刺激ホルモン(FSH)で、>1年間月経がない)でなければならない。
d.精管切除を受けていない男性対象および/または精管切除を受けたが精子について2回の外科手術後陰性試験を有していない対象は、研究薬物の第1の用量の時から研究薬物の最後の用量後30日まで避妊の許容される方法を使用すること、ならびに研究中および研究薬物の最後の用量後少なくとも30日間精子を提供しないことに同意しなければならない。
【0110】
除外基準
対象は、以下の基準のいずれかが満たされれば、研究から除外される:
1.インスリン制御されている糖尿病。
2.妊娠中もしくは授乳中または妊娠する予定があること。
3.以下に限定されないが、MRIスキャナーまたは外科的クリップ/金属移植片/破片(shrapnel)になじまないことなどの、磁気共鳴画像法(MRI)に対する不耐性またはMRI手技が禁忌である状態を有すること。対象は、閉所恐怖症でなく、閉所恐怖症の履歴、または閉ざされたもしくは小さい空間の不耐性を有していてはならない。
4.研究の前3カ月における>5%またはスクリーニングの前6カ月における>10%の体重増加または減少。
5.スクリーニングの5年以内のラップバンディング(lap banding)、胃内バルーン、十二指腸空腸スリーブ、または肥満外科手術の履歴、研究参加の終了の前の肥満外科手術の予定、または特殊な食事、エクササイズプログラムもしくは両方のいずれかを介してこの研究中に体重を減少させる予定。
6.悪性高体温の履歴。
7.原因が不明な慢性の重篤な再発性皮膚発疹の履歴。
8.以下に限定されないが、スクリーニングの前6カ月における一過性虚血性発作、脳卒中、不整脈、失神、不安定狭心症、心筋梗塞、うっ血性心不全、または制御されない高血圧症などの、心血管疾患の履歴または現在の臨床的に重大な心血管疾患。(制御されない高血圧症は、適切なサイズのカフを用いて座位における3つの安静時決定の平均に基づき、≧160mmHgの収縮期血圧または≧100mmHgの拡張期血圧と定義される)。
9.<45bpmまたは>110bpmの安静時心拍数。
10.スクリーニングECGで、または履歴により:
a.QT/QTcF間隔の著しいベースライン延長(例えば、男性では>450msecおよび女性では>470msecのQTcF間隔の反復実証)。
b.多形性心室頻拍(TdP)についての付加的な危険因子の履歴(例えば、心不全、低カリウム血症、QT延長症候群の家族歴)または起源が不明な心臓突然死の家族歴。
11.腎臓疾患、腎臓移植、またはCKD-EPIクレアチニン式(NKF 2009; https://www.kidney.org/content/ckd-epi-creatinine-equation-2009)に基づく<50mL/min/1.73mの推定糸球体濾過速度(eGFR)。
12.慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺気腫、肺線維症、または喘息などの、慢性の毎日薬物療法を必要とする重大な肺疾患。
13.未処置の肥満低換気症候群(OHS)または閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)。
14.以下に限定されないが、自己免疫性肝臓疾患、ウイルス性肝炎、遺伝性ヘモクロマトーシス、原発性胆汁性肝硬変、ウイルソン病、アルファ-1-抗トリプシン欠損、アルコール性肝臓疾患、妊娠の急性脂肪肝または薬物誘発(アセトアミノフェンを含める)肝臓疾患など、非アルコール性脂肪性肝臓疾患(NAFLD)/非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)以外の肝臓疾患の履歴または活動性(急性または慢性)肝臓疾患。
15.臨床的に重大な胃不全麻痺、炎症性腸疾患の履歴もしくはその処置、または胆嚢摘出を除く上部消化管の任意の外科手術、もしくはメディカルモニターによって承認されている副次的胃手順。
16.腹水、肝性脳症、または静脈瘤出血などの、硬変および/または肝代償不全の履歴。
17.スクリーニングの1年以内の急性膵炎または任意の原因の慢性膵炎の履歴。
18.500mg/dLを超える血清トリグリセリド濃度。
19.>9.0%のHbA1c
20.過去における任意時の網膜剥離の家族(母/父/きょうだい)および/または個人履歴。
21.緑内障の任意の履歴または現在の診断。
22.スクリーニング眼科検査での以下のエビデンス:
a.処置を必要とする周辺網膜病理、網膜裂孔、または処置を必要とする格子。
b.光学コヒーレンス断層撮影(OCT)および検査によって示されている場合の黄斑滲出物または黄斑浮腫を有する糖尿病性網膜症。
c.黄斑パッカー(網膜上膜)および黄斑変性症などの、視覚に影響する任意の活動性黄斑疾患。
d.眼科医によって決定される場合の視覚的に重大な白内障。
e.黄斑変性症のための抗VEGF剤の任意の以前の硝子体内注射。
f.前の硝子体切除の履歴。
23.基底細胞もしくは扁平上皮細胞皮膚がん、子宮頸上皮内癌、あるいは放射線治療、化学療法および/もしくは外科的介入を必要とするまたはホルモン処置を開始することが現在ないまたはそれが予想されない前立腺がんを除いて、スクリーニングの5年以内の悪性新生物の履歴。
24.臓器移植の履歴。
25.投薬(来院2/1日目)の前1週間未満にCOVID-19ワクチンを受けた、および/または研究期間中にCOVID-19ワクチンを受ける予定である。
26.スクリーニングの前1年以内の著しい薬物乱用の履歴、またはスクリーニング来院の前3カ月以内のソフトドラッグ(マリファナなど)、もしくはスクリーニングの前1年以内のハードドラッグ(コカイン、フェンシクリジン[PCP]、ヘロインを含めたオピオイド誘導体、およびアンフェタミン誘導体など)の頻繁な使用。
27.最近2年間におけるアルコール症の履歴、またはアルコール使用障害同定試験(Alcohol Use Disorders Identification Test)(AUDIT、Thompson 2018)を使用するスクリーニング評価によって評価される場合の過度のアルコール消費の現在のエビデンス、ならびに治験責任医師によって決定される場合に、スクリーニングの6カ月以内の、男性ではおよそ14飲酒/週および女性では7飲酒/週[1飲酒=4オンス(120mL)のワインまたは12オンス(360mL)のビールまたは1オンス(30mL)の蒸留酒]を超える定期的なアルコール消費の履歴。
28.乱用の薬物についての陽性尿中薬物スクリーニングまたはスクリーニングでの>100ng/mLの陽性ホスファチジルエタノール(PEth)血液試験結果。排他的PEth値の例において、対象の履歴がアルコール乱用と一致しないと主たる治験責任医師およびメディカルモニターが同意するならば、登録のための考慮が提供され得る。
29.現在の定期的ベイピングまたは1週当たり5つよりも多い紙巻きたばこもしくは同等物。禁煙のためのニコチンパッチの使用は容認される。
30.B型肝炎表面抗原(HBsAg)、C型肝炎ウイルス抗体(HCVAb)、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV1/2)抗体の陽性試験結果。
31.≦1000/μLの好中球絶対数として定義されている好中球減少症。
32.スクリーニングで血清ASTまたはALT>5×基準値上限(ULN)。(1回の反復試験は、治験責任医師の裁量で7日以内に可能になり得る)。
33.ギルバート症候群によるものでない限り、またはメディカルモニターによって承認された場合の他の臨床関連肝臓機能障害の非存在下での正常の変動が考えられるならば、総ビリルビン>ULN。
34.潜在的な重大な肝臓機能障害の他のエビデンスがあるならば、スクリーニングでの国際標準比(INR)≧1.3。
35.スクリーニング時での別の臨床試験における参加、またはスクリーニングの30日、もしくは半減期が公知ならば5半減期以内の、局所を含めた、任意の治験薬剤への曝露。
36.研究の過程中に刺青もボディピアスもなし。治験責任医師またはスポンサーの見解において、対象が研究要件に従うことができることを不可能にするまたは研究を完了することができない任意の根底にある身体的または心理学的医学的状態。
37.書面インフォームドコンセントを提供する彼/彼女の能力に干渉する、研究指示に従う、または研究結果の解釈を混乱させることもしくは対象を過度のリスクに置くことがあると、治験責任医師が考える任意の状態。
38.化合物1またはそれの賦形剤に対する公知のまたは潜在的な過敏症。
禁止薬物療法(現在の使用):
39.体重減少のための任意のハーブ系サプリメント、大衆薬、通信販売または処方薬物。
40.以下に挙げるものなどの、処方または店頭販売の刺激物:デキストロアンフェタミン/デキセドリン、デキストロアンフェタミン/アンフェタミン組合せ生成物/アデラル、またはメチルフェニデート(Ritalin(登録商標)、Concerta(登録商標))。
41.チアゾリジンジオン(TZD):ピオグリタゾン/アクトス、ロシグリタゾン/アバンディア。
42.グルカゴン様ペプチド1(GLP1)アゴニスト:エクセナチド/バイエッタ/ビデュリオン、リキシセナチド/アドリキシン、リラグルチド/ビクトーザ、デュラグルチド/トルリシティ、セマグルチド/オゼンピック。
43.ナトリウム-グルコース共輸送体-2(SGLT2)阻害剤:カナグリフロジン/インボカナ、ダパグリフロジン/フォシーガ、エンパグリフロジン/ジャディアンス、エルツグリフロジン/ステグラトロ。
44.ビタミンE:最近6カ月以内の少なくとも1カ月間のウルソジオールもしくは高用量ビタミンE >400IU/日の使用、またはスクリーニングの最近3カ月以内の高用量ビタミンEの開始。
45.オベチコール酸/Ocaliva、全身性副腎皮質ステロイド、メトトレキセート、タモキシフェン、アミオダロンの最近の(スクリーニングの3カ月以内)もしくは現在の使用、またはテトラサイクリンの長期使用。
46.ワルファリン、ヘパリン、第Xa因子阻害剤(ダビガトランベトリキサバンエドキサバン、アピキサバン、およびリバロキサバン)。
47.QT/QTc間隔を延長するとともにhttps://crediblemeds.org/ website list category of 'Known Risk'において同定される通りの多形性心室頻拍のリスクの増加と関連することが知られている併用薬物療法。
48.カンナビジオール(CBD)を有する生成物。
【0111】
第2a相試験結果
化合物1の第2a相代謝試験は、肝臓脂肪の上昇(8%より大きい)を有する肥満参加者(ボディマス指数28kg/mから45kg/m)において3つの用量レベルの化合物1(150mg、300mg、および450mg)の安全性および有効性を評価するように設計された61日の無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験であった。28歳から65歳の間の年齢を範囲とする80人の(80)参加者を、3つの化合物1処置群または対応プラセボ群の1つに無作為に割り当て、5.7%またはそれより大きいHbA1Cレベルについて層別化およびブロック化し、1日1回投薬した(絶食)。参加者に、食事またはエクササイズに関して行動を変えないように指示した。第2a相試験は、一次(MRI-PDFFによる肝臓脂肪低減)および二次(腹部MRIによる体重および脂肪低減)エンドポイントを満たした。鍵となる結果および観察は以下を含む:
・体重低減は、もっぱら脂肪の減少からであり、8週で全ての投薬レベルで除脂肪体重を保ち、食事またはエクササイズ行動の変化がなかった。
○体重および脂肪減少は、最も高い投薬レベルで最も大きく、参加者は、平均6ポンド減少した(p<0.001、高用量対プラセボ)。
○上昇したHbA1cレベルを有する参加者は、より大きな体重および脂肪減少を経験し、平均10ポンド減少した(p<0.0001、高用量対プラセボ)。
○脂肪減少は、MRIによって肝臓、内蔵および皮下の区画において観察された。
○MRI-PDFFによる肝臓脂肪における>30%の絶対的低減が観察された:化合物1について150mg、300mg、および450mgの用量レベルで、それぞれ40%、71%、および72%、ならびにHbA1cサブセットにおいて化合物1用量で43%、75%、および86%、それに対してプラセボで0~5%(全てについてP<0.05)。
○肝臓脂肪における相対的低減は、2%の肝臓脂肪および5%の応答者率のプラセボ相対的低減と比較して、低、中および高用量で、それぞれ40%、71%および72%の応答者率(>30%の相対的低減)に対応して33%、43%、および40%であった。
・化合物1は、優れたコンプライアンスにて全ての用量レベルで耐容性が良好であった。重篤な有害事象も死亡も報告されなかった。アルコール摂取と関連する下痢および一過性の潮紅は、化合物1対象のそれぞれ25%および31.6%において生じ、最も共通して報告されている治療下で発現した有害事象であった。これらの事象の大多数は軽度であり;1人の参加者が低用量アームにおいて下痢のために化合物1を中断したが、高用量で何らかの理由のために中断した参加者はいなかった。
・化合物1を用いる短期処置は、NAFLDおよび肥満に関連した一次および二次エンドポイントにわたって著しい改善と関連した。HbA1cステータスにかかわらず対象における肝臓および全身の脂肪症を低減する能力と組み合わされた化合物1の安全性および耐容性は、化合物1を用いる長期処置が、NAFLDおよび他の肥満関連代謝性疾患にとって有効な処置であるという潜在性を有することを示唆する。
・150mg、300mg、および450mgでの化合物1は、全体の集団にわたっておよび上昇したHbA1cを有するものの中で、MRI-PDFFによる肝臓脂肪含量におけるベースラインからの変化の一次有効性エンドポイントに対する著しい用量に関連する正の効果を実証し、これらの変化は、61日の処置内に生じた。ベースラインからのプラセボ補正変化は、化合物1で06&から-7%を範囲とし、これは、NAFLDのための薬物の他の短期の第2相研究(Harrison et al, 2021; Loomba et al, 2020)を好都合に比較する。全体で対象のおよそ60%およびサブグループにおける対象の68%が、MRI-PDFFに基づき肝臓脂肪の少なくとも30%の低下を経験し、ベースラインからのプラセボ補正平均パーセント変化は、対象全体では-33%から43%、およびサブグループにおける対象では-42%から-50%を範囲とした。肝臓脂肪含量の低下は、除脂肪体重の減少なく体脂肪によって説明される体重の低下を伴った。肝臓体積、SAT、およびCAPスコアの改善は、全体の群においておよび上昇したHbA1cを有するサブグループにおいて、化合物1で生じた。
300mg用量および450mg用量で、化合物1は、骨格筋量、除脂肪体重または乾燥除脂肪量(dry lean mass)に対する有意な効果なく、体重、体脂肪量、およびパーセント体脂肪のInBodyスケール測定などの、いくつかのエンドポイントに対して有意な正の効果を実証した。プラセボと比較して、平均体重は、61日目で450mg群において6ポンドおよび上昇したHbA1cを有する対象のサブグループにおいて10ポンド低下し、一方、骨格筋量(および除脂肪体重および乾燥除脂肪量)は、変化しないままであった。炎症および代謝マーカーの有意な低減が化合物1で観察された。この研究において、HbA1cよりはむしろ、糖化アルブミンを使用して、代謝制御を評価した。なぜなら、糖化アルブミンの変化は、HbA1c(120日)よりも早期に生じ、この61日研究において血糖制御のより良好なマーカーであったからである。統計的に有意であった糖化アルブミンのより大きな低減と並行して、HbA1cの0.5%低減が観察された。上昇したHbA1cを有する対象における脂肪の優先的減少および血糖制御の改善は興味深く、より長期の治療として、2型糖尿病および肥満を有する人々における代謝的および炎症的健康を改善するという潜在性を有する。
・結果は、化合物1を用いる処置がFASTスコアを改善し、この改善が、使用された最低用量(150mg)で明らかな臨床関連規模であることを指し示す。FASTスコアは、進行性肝臓線維症を有する患者を同定するための非侵襲的試験である。非アルコール性脂肪性肝臓疾患は、特に肥満および2型糖尿病患者集団において高い有病率を有する。一部の患者は、進行性疾患なく肝臓脂肪の上昇レベルで生存することができるが、他は、進行してNASHを発症する。現在では、NASHの確定診断は、肝臓生検および組織学的スコア化(ある程度のリスクと関連する侵襲的および時間のかかる診断手順)を必要とする。進行性疾患を有する患者を同定することに対する課題は、介入なくNASHの後期段階に進行するというリスクに患者をさらす。フィブロスキャン(Fibroscan)は、肝臓の弾性および剛性の非侵襲的な超音波ベースの測定であり、線維症の尺度を提供する。アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)は、血液試料中で測定することができる肝臓酵素であり、上昇レベルは、肝損傷を指し示す。組合せにおいて、フィブロスキャンおよびASTレベル(FASTスコア)は、進行性線維症を有する患者の貴重な指標を提供することが示されている(Woreta et al. PLoS One 2022 April 15; 17(4): e0266859, https://doi.org/10.1371/journal.pone.0266859)。0.2ポイントというFASTスコアにおける比較的小さい低下は、NASHと診断された患者においていくつかの臨床的測定における改善を提供することが指し示されている(Wong et al, J. of Hepatology Vol. 75, pp. S257-S258) 2021; Newsome et al, The N England J of Medicine 2021;384:1113-24)。
・したがって、本開示は、FASTスコアの上昇を有する対象を処置するための方法を提供し、ここで対象は、進行性疾患を経験している。一部の実施形態では、該方法は、進行性疾患のリスクを低減するために患者におけるFASTスコアを低減する。一部の実施形態では、進行性疾患は、進行性線維症、進行NASH、および/または進行性線維性肝臓疾患NASHを含む。
・NASHは、肝臓における脂肪に加えて肝臓の炎症および肝損傷を有するNAFLDの形態である。NASHの炎症および肝損傷は、肝臓の線維症、または瘢痕を引き起こすことがある。NASHは、肝臓が瘢痕化されるとともに恒久的に損傷される硬変に至ることがある。本発明者らのデータは、化合物1が、進行性線維性肝臓疾患NASHである5.7%~9.0%の間のHbA1cレベルを有する患者を処置するのに、より低い用量レベルで効力があることをさらに指し示す。
・第2a相結果の具体的な有効性および安全性は、下記の図および表に示されている:
【0112】
(1)図2および下記の表1に示されている通り、上昇したHbA1cを有する対象における全ての用量にわたって実証された相対的肝臓脂肪の変化における処置効果、これは、HbA1c5.7%~9.0%における対象においてMRIプロトン密度脂肪率(PDFF)についてのベースライン値からのプラセボ補正パーセント変化である(平均±SEM)。
表1
【表1】
【0113】
(2)MRIプロトン密度脂肪率(PDFF)についての共分散分析は、表2に示されている。HbA1c5.7%~9.0%における対象について61日目でのベースラインからの平均変化。サブグループのみ(LS平均±95%CI)。
表2
【表2】
【0114】
(3)下記の表3に示されている通りの全ての用量アームにわたった応答(MRI-PDFFによる>30%の肝臓脂肪低減)における処置結果:
表3
【表3】
【0115】
(4)図3および下記の表4aに示されている通りの、上昇したHbA1cを有する対象における有意な体重低減(ポンド)、これは、InBody体重についての反復測定分析である。ベースラインFAS集団(LS平均±95%CI)からの平均変化。全患者集団についてのデータは表4bにある。
表4a
【表4a】
表4b
【表4b】
【0116】
(5)HbA1c上昇集団での対象における脂肪減少(平均±SEM)は、図4に示されている。
【0117】
(6)全体の集団におけるおよびHbA1c上昇群における体重減少は、図5に示されている。61日目でのパーセント体重変化(450mgの化合物1を使用する)は、全体の集団(FAS)対象において-2.55%、および高いHbA1cを有する対象において-4%である。
【0118】
(7)体脂肪量は、表5に示されている通りHbA1c上昇群においておよび表6に示されている通り全体の集団において低減された。体脂肪量の低減は、上昇したHbA1cを有する患者集団においてより高かった。
表5
【表5】
表6
【表6】
【0119】
(8)ベースラインから61日目までの肝臓脂肪における応答率、即ち≧30%、低減は、図6に示されている。
【0120】
(9)150mg、300mg、および450mgの化合物1での肝臓脂肪における絶対的および相対的パーセント(%)変化(ベースラインから61日目まで)は、図7に示されている。
【0121】
(10)150mg、300mg、および450mgの化合物1での肝硬度パラメーターについてのベースラインからのパーセント(%)変化は、図8に示されている。
【0122】
(11)ベースラインから61日目までの糖化アルブミンの低減(パーセント(%)変化)は、表7および図9に示されている。
表7
【表7】
【0123】
(12)61日目での肝臓パラメーターにおけるLS平均変化は、下記の表8に示されている:
表8
【表8】
この分析は、固定効果として処置、および共変数として応答変数のベースライン値とともに因子としてベースラインHbA1c層別化を含めたモデルで行った。
a p<0.05; bp<0.01; c p<0.001。
【0124】
(13)全ての対象および上昇したHbA1cを有する対象のサブグループにおけるベースラインから61日目までのMRIプロトン密度脂肪率(%)における変化は、表9に示されている。
表9
【表9】
【0125】
(14)全ての対象および上昇したHbA1cを有する対象のサブグループにおけるベースラインから61日目までの肝臓体積および全身脂肪症における変化は、表10に示されている。
表10
【表10】
略語: ANCOVA= 共分散分析; FAS = 最大の解析対象集団(full analysis set); HbA1c = ヘモグロビン A1c; LS = 最小二乗。
a 負の値は、パラメーター値の低下を指し示す。
b ベースラインからの変化についてのLS平均および関連の95%CI、LS平均における差異および関連の95%CI、ならびに両側p値は、固定効果として処置、因子としてベースラインHbA1c層別化、および共変数としてベースラインパラメーター値を用いるANCOVAモデルからである。
【0126】
まとめると、150mg、300mg、および450mgでの化合物1は、全体の集団にわたっておよび上昇したHbA1cを有するものの中でMRI-PDFFによる肝臓脂肪含量におけるベースラインからの変化の一次有効性エンドポイントに対して著しい用量に関連する正の効果を実証し、これらの変化は、処置の61日以内に生じた。全体的に対象のおよそ60%およびサブグループにおける対象の68%は、MRI-PDFFに基づき肝臓脂肪の少なくとも30%の低下を経験し、ベースラインからのプラセボ補正平均パーセント変化は、全体的に対象については-33%から-43%およびサブグループにおける対象については-42%から-50%を範囲とした。肝臓脂肪含量の低下は、除脂肪体重の減少なく体脂肪によって説明される体重の低下を伴った。肝臓体積、SAT、およびCAPスコアにおける改善は、全体の群においておよび上昇したHbA1cを有するサブグループにおいて、化合物1で生じた。
【0127】
加えて、化合物1の300mgおよび450mg用量は、骨格筋量、除脂肪体重または乾燥除脂肪量に対する効果なく、体重、体脂肪量、およびパーセント体脂肪のInBodyスケール測定などの、いくつかの二次エンドポイントに対する有意な正の効果を実証した。プラセボと比較して、平均体重は、61日目で450mg群において6ポンドおよび上昇したHbA1cを有する対象のサブグループにおいて10ポンド低下し、一方、骨格筋量(ならびに除脂肪体重および乾燥除脂肪量)は、変化しないままであった。炎症および代謝マーカーにおける有意な低減は、化合物1で観察された。この研究において、HbA1cよりはむしろ糖化アルブミンを使用して、代謝制御を評価した。なぜなら、糖化アルブミンにおける変化は、HbA1c(120日)よりも早期に生じ、この61日研究における血糖制御のより良好なマーカーであったからである。統計的に有意である糖化アルブミンのより大きな低減と並行して、HbA1cの0.5%低減が観察された。脂肪の優先的減少および上昇したHbA1cを有する対象における血糖制御の改善は、興味深く、より長期の治療として、2型糖尿病および肥満を有する人々における代謝的および炎症的健康を改善するという潜在性を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】