(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】救命具
(51)【国際特許分類】
A41D 13/012 20060101AFI20250220BHJP
【FI】
A41D13/012 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546394
(86)(22)【出願日】2023-02-02
(85)【翻訳文提出日】2024-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2023052553
(87)【国際公開番号】W WO2023148261
(87)【国際公開日】2023-08-10
(32)【優先日】2022-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524292031
【氏名又は名称】アールエフディー ビューフォート リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ポール オリバー
【テーマコード(参考)】
3B211
【Fターム(参考)】
3B211AA01
3B211AB03
3B211AB12
3B211AC10
(57)【要約】
使用時に着用者の身体の少なくとも一部を覆うように構成された身体の保護衣類品110であって、保護衣類品は、膨張したときに着用者の身体を水上に支持して溺れることから着用者を保護する浮力を提供するように構成された領域119内の膨張可能チャンバを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時に着用者の身体の少なくとも一部を覆うように構成された身体の保護衣類品であって、
前記保護衣類品は、溺れることから着用者を救うために、膨張したときに前記着用者の身体を水上で支持する浮力を提供するように構成された膨張可能チャンバを有する、保護衣類品。
【請求項2】
前記保護衣類品は、火災、高いG加速度、及び/又は高度の影響から前記着用者を保護するように構成される、請求項1に記載の保護衣類品。
【請求項3】
前記膨張可能チャンバはライフジャケット又は救命具として機能する、請求項1又は2に記載の保護衣類品。
【請求項4】
水に触れると前記膨張可能チャンバの膨張を自動的に始動するための始動手段を含む、請求項1、2又は3に記載の保護衣類品。
【請求項5】
前記膨張可能チャンバは前記着用者の胸の上及び前記着用者の首の後ろに延びる、請求項1~4の何れか一項に記載の保護衣類品。
【請求項6】
前記保護衣類品は、少なくとも前記着用者の胸及び背中を覆い、首の後ろに延びる、請求項1~5の何れか一項に記載の保護衣類品。
【請求項7】
前記保護衣類品はフライトベスト又はフライトスーツである、請求項1~6の何れか一項に記載の保護衣類品。
【請求項8】
前記膨張可能チャンバは膨張可能空気袋である、請求項1~7の何れか一項に記載の保護衣類品。
【請求項9】
前記膨張可能空気袋は、収縮したときに前記保護衣類品の外側衣類品層の下に配置され、前記外側衣類品層は、前記膨張可能空気袋の部分的膨張によって加えられる圧力によって開く脆弱線を含み、前記保護衣類品の前記外側衣類品層の外側で前記膨張可能空気袋の完全な膨張を可能にする、請求項8に記載の保護衣類品。
【請求項10】
前記外側衣類品層は実質的に非弾性である、請求項9に記載の保護衣類品。
【請求項11】
前記膨張可能空気袋は、収縮したときに、前記保護衣類品の外側衣類品層と内側衣類品層との間に位置する、請求項9又は10に記載の保護衣類品。
【請求項12】
前記内側衣類品層は前記着用者の胴に隣接している、請求項11に記載の保護衣類品。
【請求項13】
前記内側衣類品層は実質的に非弾性である、請求項11又は12に記載の保護衣類品。
【請求項14】
前記脆弱線が張り裂けジッパーなどの解放可能な結合部によって形成される、請求項9~13の何れか一項に記載の保護衣類品。
【請求項15】
前記膨張可能空気袋は内側空気袋層及び外側空気袋層を含み、前記内側空気袋層は前記外側空気袋層から分離している、請求項8~14の何れか一項に記載の保護衣類品。
【請求項16】
前記外側空気袋層は、薄手で共に縫合された第1のシート材及び第2のシート材を備え、例えば、前記第1のシート材は外面及び内面を有し、前記第2のシート材は外面及び内面を有し、前記第1のシート材及び前記第2のシート材は、第1及び第2のシート材の各々の縁部領域において接続され、前記第1及び第2のシート材の一方の前記内面の遠位部分が前記第1及び第2のシート材の他方の前記外面の遠位部分と重なり、遠位表面が互いに縫合される、請求項16に記載の保護衣類品。
【請求項17】
前記内側空気袋層と前記外側空気袋層との間に低摩擦材料を含む、請求項15又は16に記載の保護衣類品。
【請求項18】
前記外側空気袋層が実質的に非弾性である、請求項15、16又は17に記載の保護衣類品。
【請求項19】
溺れることから人を保護する方法であって、
通常の使用中に、人を保護するために人の身体の少なくとも一部を覆うように構成された保護衣類品を人に提供するステップを含み、
前記保護衣類品は、人が溺れることを防止するために、膨張したときに水上で人の身体を支持するように構成された浮力を提供するように構成された膨張可能チャンバを有し、
前記方法は、水と接触するとき、又は水と接触すると予想されるときに、前記膨張可能チャンバを膨張させるステップを含み、その結果、前記浮力は溺れることから人を保護する、方法。
【請求項20】
前記保護衣類品は請求項1~18の何れか一項に記載の保護衣類品である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は身体の保護衣類品(garment)に関する。また、本発明は溺れることから人を保護する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パイロットのような飛行機乗務員は飛行機で飛行するときに、保護フライト衣類品(例えば、フライトスーツ又はベスト)を含む一揃いの衣類品(ensemble)を着用する。伝統的に、スーツは、単一の衣類品にジャケットとズボンの両方を組み合わせた1ピーススーツであるか、又は分かれているジャケットとズボンを有する2ピーススーツである。
【0003】
保護衣類品は、高いG加速度又は高度及び他の潜在的に損傷を与える因子の影響から着用者を保護する特別な機器(乗務員生命維持装置)を含むことができる。
【0004】
飛行機を水上で飛行させる場合、パイロット及び乗務員は、通常、救命具ユニット(例えば、ライフジャケット)を装着する。救命具ユニットは、保護フライト衣類品に取り付けられ、その上に着用される。一揃いの衣類品組み合わせは保護フライト衣類品及び救命具ユニットを備える。
【0005】
着用者の首の周りに着用される救命具の従来の設計は、嵩張り、頭の動きに制限を引き起こす可能性があり、飛行用途では、それらは飛行機乗務員ヘルメットとの相互作用を引き起こす可能性があり、頭の可動性をさらに低下させ、ヘルメットの変位を引き起こす可能性がある。加えて、肩及び前胸領域上の顕著な嵩張りは下方視界を低減し、飛行機から脱出を試みるときに引っ掛かる危険を生ずる可能性がある。
【0006】
同様の欠点は、溺れることから着用者を保護することが望まれる他の状況(例えば、海に落下するかもしれない、又は海へ避難しなければならない船舶又は石油採掘施設の職員)においても、分かれている保護衣類品及びライフジャケットが望ましくない嵩張りを作り出す場合にも生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、使用時に着用者の身体の少なくとも一部を覆うように構成された身体保護衣類品が提供され、保護衣類品は膨張したときに着用者の身体を水上で支持する浮力を提供するように構成された膨張可能チャンバを含み、着用者が溺れることを防ぐ。
【課題を解決するための手段】
【0008】
保護衣類品は、飛行機乗務員が着用し、通常の飛行中に飛行機乗務員を保護する目的を有する衣類品であってもよい。従来、ライフジャケットは、保護衣類品の上に着用されて、水上で飛行機乗務員の身体を支持する浮力を提供する。保護衣類品は、溺れることからの保護が望ましい場合に他の海洋用途、例えば船上又は石油掘削施設で着用される衣類品であってもよい。
【0009】
特許請求の範囲の保護衣類品は、保護衣類品自体が浮力を提供するので、従来のライフジャケットを不要にすることができる。ライフジャケットによるのではなく、保護衣類品の膨張可能チャンバによる浮力を提供することは、飛行機乗務員(又は他の人員)が着用しなければならないアイテムの数を減らす。これにより、嵩張りや引っ掛かりの危険性を減らし、飛行機乗務員が飛行の準備をするのにかかる時間を短縮する。
【0010】
衣類品は、通常の使用中(すなわち、水中にないとき)、例えば、難燃性又は耐水性であるなど、着用者のための保護品質を有し得る。衣類品は、火災、高いG加速度及び/又は高度の影響から航空機乗務員を保護するように構成されてもよい。衣類品は、フライトベスト又はフライトスーツであってもよく、又はフライトベスト又はフライトスーツによって従来行われていた機能を実行してもよい。
【0011】
衣類品は、少なくとも着用者の胸及び背中を覆って、首の後ろに延在してもよい。衣類品による着用者の身体の覆いは、従来のフライトベスト又はスーツの覆いに対応し得る。
【0012】
本発明の一実施形態では、膨張可能チャンバがライフジャケット又は救命具ユニットとして機能する。着用者を溺れることから守るために必要とされる浮力は、保護衣類品自体によって(その膨張可能チャンバによって)提供することができる。したがって、衣類品又は衣類品の一部ではない従来のライフジャケット/救命具は不要となる。
【0013】
衣類品は水との接触時に膨張可能チャンバの膨張を自動的に始動するための始動手段、例えば、静水圧始動機構を含むことができる。加えて、又は代替的に、膨張可能チャンバの膨張は、例えば、飛行機乗務員がレバーを操作することによって、手動で始動可能であってもよい。
【0014】
本発明の一実施形態では、膨張可能チャンバが着用者の胸の上及び首の後ろに延在する。そのような構成は着用者が溺れるのを防ぐために、所望の位置で浮力を提供する。膨張可能チャンバは膨張していない場合、保護衣類品の領域の一部のみを覆う-例えば、膨張可能チャンバは、衣類品によって覆われている着用者の背中を覆わない。
【0015】
膨張可能チャンバは、収縮されたときに衣類品の外層の下に配置されてもよく、外層は衣類品の外面の外側で膨張可能チャンバの完全な膨張を可能にするために、膨張可能チャンバの部分的な膨張によって加えられる圧力によって開く脆弱線を含む。脆弱線は解放可能な結合部によって形成されてもよく、解放可能な結合部は破裂開口ジッパーであってもよい。
【0016】
膨張可能チャンバは、収縮されたときに衣類品の外側層と内側層との間に配置されてもよい。内側層は、好ましくは着用者の胴に隣接する。
【0017】
外側層及び内側層は、実質的に非弾性であってもよく、それによって、膨張可能チャンバのための実質的に非弾性のポケットを形成する。ポケットの非弾性は、ポケットを拡張するのではなく、膨張可能チャンバの膨張からの圧力を解放可能な結合部に加える。
【0018】
膨張可能チャンバは内側チャンバ層及び外側チャンバ層であってもよく、内側チャンバ層は外側チャンバ層とは分かれている。特許請求の範囲に記載された膨張式チャンバの構成は、丈夫で嵩の低い膨張式チャンバを提供することができる。これは、衣類品が膨張可能チャンバを含むにもかかわらず、低い嵩を有することができるので、非常に有利である。これは、着用者の快適性及び安全性を高めることができる。
【0019】
本発明の第2の態様によれば、溺れることから人を保護する方法が提供され、この方法は人の身体の少なくとも一部を覆い、通常の使用中に人を保護するように構成された保護衣類品を人に提供することを含み、保護衣類品は人が溺れることを防ぐために膨張させられたときに水上で人の身体を支持するように構成された浮力を提供するように構成された膨張可能チャンバを含み、この方法は水と接触したとき、又は水と接触することが予想されるときに膨張可能チャンバを膨張させることを含み、その結果、浮力は人を溺れることから保護する。
【0020】
通常の使用において衣類品によって提供される保護は、水中への浸漬に関係しない保護であってもよく、火災又は寒さから保護であってもよい。
【0021】
本方法において、保護衣類品は上記で定義された通りであってもよい。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、保護衣類品(例えば、フライトジャケット/ベスト)の内側に、脱着ジッパー等を備えた救命具空気袋を配置し、保護衣類品の前面に直接取り付けられた救命具空気袋の膨張を可能にすることが提案される。救命具空気袋は、空気袋の膨張によって加えられる圧力のためにジッパーを破断する。次いで、空気袋は、ジッパー開口部によって形成された穴を通過する。
【0023】
この実施形態は、一揃いの衣類品組み合わせの美容的外観に大きな利点を有する。(知られている構成のように)保護衣類品の上に装着される救命具の代わりに、保護衣類品は、膨張していないときには見えない救命具が装着される。実施形態はまた、着用者の肩の頂部、前胸、及び首の後ろから嵩張りを無くし、頭の可動性及びヘルメットの相互作用に対する制限を排除する。新しい軽量(マイクロ)救命具及び遠隔膨張システム(例えば、本出願人の英国特許第2573474号明細書に記載されているよう)と共に使用される場合、膨張しない救命具の存在は、着用者にとって実際に気付かないかもしれない。
【0024】
梱包サイズが小さくなるため、通常なら救命具に取り付けられるリモートアンテナやライトなどのアイテムを移動し、別の解決策を導入する必要があるかもしれない。
【0025】
本発明の実施形態は、現在の救命具の設計で特定された最大の問題の1つ、すなわち、嵩張り、及び頭の可動性の制限、引っ掛かりの可能性にして対処するものである。
【0026】
本発明の実施形態は、海洋及び特殊部隊の用途に使用することができる。保護衣類品はフライトスーツであってもよいが、別の形態では保護を提供する衣類品であってもよい。
【0027】
膨張可能チャンバは衣類品に内蔵されているので、着用者は衣類品を着用するとき、常に、溺れることから保護される。対照的に、別の衣類品及びライフジャケットが使用される場合、ライフジャケットは忘れられてもよく、又は意図的に着用されなくてもよい。
【0028】
本明細書で説明される特徴のすべては、任意の組合せで、上記の態様のいずれかと組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の実施形態をより良く理解するために、添付の図面を参照して、例として以下に説明する。
図面において、同様の要素は、一般に同じ参照符号で示されている。
【
図1】
図1は、ライフジャケットが着用される保護フライト衣類品を備える既知の一揃いのフライト衣類品の正面図を示す。
【
図2】
図2は
図1の保護フライト衣類品及びライフジャケットの左側面図を示す(他の側面は対応する)。
【
図3】
図3は
図1の保護フライト衣類品及びライフジャケットの背面図を示す。
【
図5】
図5はライフジャケットを膨張させた後の
図1の保護フライト衣類品及びライフジャケットの正面図を示す。
【
図6】
図6は、ライフジャケットを膨張させた後の、
図1の保護フライト衣類品及びライフジャケットの左側面図を示す(他の側面は対応する)。
【
図8】
図8は本発明の実施形態による保護フライト衣類品の正面図を示す。
【
図9】
図9は
図8の保護フライト衣類品の左側面図を示す(他の側面は対応する)。
【
図11】
図11は、矢印「A」によって示されるように、部分的拡大図を含む、
図8及び9の線A-Aに沿って取られた断面図を示す。
【
図12】
図12は、その膨張可能チャンバが膨張した後の、
図8の保護フライト衣類品の正面図を示す。
【
図13】
図13は、その膨張可能チャンバが膨張した後の、
図8の保護フライト衣類品の左側面図を示す(他の側面は対応する)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
最初に、
図1、
図2又は
図3に関し、既知の飛行機乗務員の一揃いの衣類品8は、この例で飛行機乗務員(航空機に乗っている任意の人であってもよい)によって着用されるフライトベスト(代わりにジャケット又はフルボディスーツであってもよい)である保護フライト衣類品10を含む。フライト衣類品10は、NOMEX(登録商標)などの本質的に耐火性の生地から作製されてもよい。フライト衣類品10は、腰部12と、首開口部14と、左右の腕貫通孔16A,16Bと、をそれぞれ有する。フライト衣類品10はまた、例えば、従来のジッパーによって閉じられた前開口部18を有する。
【0031】
フライト衣類品10は備品ポケット20を備える。フライト衣類品10はまた腰ベルト22を備える。腰ベルト22は、バックル23又は任意の他の適切な結合部によって胴の前に固定されてもよい。
【0032】
図1、2又は3に示されるように、飛行機乗務員の一揃いの衣類品8は、フライト衣類品10の上に着用され、それに取り付けられ得るライフジャケット30を含む。ライフジャケット30は図示の例では略U字形であり、着用者の首の後の周りを通過する中央部32と、着用者の胴31の前の両側に位置するように構成された中央部32の両側の左側及び右側から延びる2つの腕部34A及び34Bとを有する。ライフジャケットの他の形状及び構成も可能である。
【0033】
ライフジャケット30には、ライフジャケット30内の袋(
図4の52に示す)を膨張させるための圧縮ガスシリンダーなどの1つ以上の膨張システム33が取り付けられている。
【0034】
ライフジャケット30は、典型的には2つ又は3つ以上の場所でフライト衣類品10に取り付けられる。
【0035】
図示の例では前胴において、ライフジャケット30は一対のジッパー38A及び38Bによってフライト衣類品10に取り付けられる。この取り付けは、フライト衣類品10にしっかりと取り付けられていない場合に、ライフジャケット30が外れる可能性がある速度で飛行機から飛び出す場合に、「風」を受ける可能性があるので、飛行機乗務員の使用において重要である。
【0036】
左ジッパー38Aは、ライフジャケット30の左腕部34Aの内側に沿って長手方向に延在する第1の列の歯と、フライト衣類品10の前に沿って長手方向に延在し、フライト衣類品10の開口部18の左に概ね平行かつ離間する対応する第2の列の歯とを有する。ライフジャケット30の左腕部34Aは、ジッパー38Aのスライダ(図示せず)を上方に引くことによってフライト衣類品10に取り付けられ、ジッパーの従来の動作方法で第1及び第2の歯列を一緒に引く。
【0037】
同様に、右ジッパー38Bは、ライフジャケット30の右腕部34Bの内側に沿って長手方向に延在する第3の列の歯と、フライト衣類品10の前に沿って長手方向に延在し、フライト衣類品10の開口部18の右に間隔を空けて延在する対応する第4の列の歯とを有する。ライフジャケット30の右腕部34Bは、ジッパー38Bのスライダ(図示せず)を上方に引くことによってフライト衣類品10に取り付けられ、ジッパーの従来の動作方法で第3及び第4の列の歯を一緒に引く。
【0038】
ジッパーへの代替的な取り付け構成を使用して、バックルなどによって、ライフジャケット30を前胴でフライト衣類品10に取り付けることができる。
【0039】
図示の例では、ライフジャケット30の腕部34A及び34Bは、着用者の胴の左側及び右側のそれぞれの点35A及び35B(
図4参照)で腰ベルト22に取り付けられている。この取り付けは、腰ベルト22が左腕部34Aの下側に取り付けられたそれぞれのループ(図示せず)を通り、ライフジャケット30の右腕部34Bの下側に通ることによるものであってもよい。これらは、ライフジャケット30が膨張したときに、強固な固着点を形成する。
【0040】
バックストラップ26は、背胴の中央で腰ベルト22に(例えば、ライフジャケットループ40-
図2及び4参照)その下端で取り付けられ、首の後の中央部32でその上端でライフジャケット30に取り付けられる。これにより、膨張時にライフジャケット30が着用者の頭に乗り上げることを防止することができる。バックストラップ26は
図3に示されるように、バックストラップ26をさらに配置するために、フライト衣類品10の通路24に通されてもよい。
【0041】
図4に示されるように、ライフジャケット30は、カバー50の内側に詰め込まれた膨張可能空気袋52を損傷から保護するカバー50を有する。膨張システム33は、(
図1及び
図4に示されるように)カバー50内に収容され得るか、又はカバー50から離れて、管によって空気袋52(遠隔膨張システム)に接続され得る。
【0042】
ライフジャケット膨張システム33が作動すると、カバー50は、「張り裂け」ジッパー、Velcro(登録商標)又はプレススタッド等のような、自動的に解放可能なクロージャ54のいずれかによって自動的に開く。ライフジャケット膨張システム33が(手動又は自動のいずれかで)起動されると、膨張する空気袋52は、自動的に解放可能なクロージャ54に作用してそれを開く。
図5、6、及び7は、自動的に解放可能なクロージャ54が開いた後の、完全に膨張したときの空気袋52を示す。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、保護フライト衣類品の上に着用されるライフジャケットを含む飛行機乗務員の一揃いの衣類品を有するのではなく、保護フライト衣類品自体が浮力を有し、膨張可能空気袋を提供し、別のライフジャケットは必要とされない。すなわち、膨張可能空気袋は、着用者の身体に着用される保護フライト衣類品に組み込まれる。
【0044】
図8、
図9、及び
図10について、この例ではフライトベストである(しかし、代わりにジャケット又はフルボディスーツであってもよい)新規の保護フライト衣類品110が提供される。フライト衣類品110は、NOMEX(登録商標)などの本質的に耐火性の生地から作製されてもよい。保護フライト衣類品110は、高いG加速度又は高度又は他の潜在的に有害な因子の影響から着用者を保護する特別な装置(飛行機乗務員生命維持装置、ALSE)を含むことができる。
【0045】
フライト衣類品110は、腰部112と、首開口部114と、左右の腕貫通孔116A及び116Bとをそれぞれ有する。また、フライト衣類品110は、例えば、従来のジッパーによって閉じられた前開口部118を有する。前開口部118が閉じられると、フライト衣類品110は着用者の身体にしっかりと取り付けられる。
【0046】
フライト衣類品110は備品ポケット120を備える。フライト衣類品110は腰ベルト122を備える。腰ベルト122は、バックル123又は任意の他の適切な結合部によって胴の前に固定されてもよい。
【0047】
本実施形態におけるフライト衣類品110は少なくとも航空機乗務員の胸及び背中を覆い、首の後ろに延在する。
【0048】
図8、
図9及び
図10に示すように、フライト衣類品110は、収縮した膨張可能空気袋又は膨張可能チャンバ152(
図11参照)が収容される領域119を有する。図示の例では、領域119が略U字形であり、着用者の首の後の周りを通過する中央部132と、着用者の胴31の前の両側に位置するように構成された中央部132の両側の左側及び右側から延びる2つの腕部134A及び134Bを有する。
【0049】
収縮した空気袋152は領域119と同様の形状や大きさを有し、その結果、収縮した空気袋152もまた、略U字形であり、着用者の首の後の周りを通過する中央部を有し、中央部の対向する左側及び右側から延びる2つの腕部が、着用者の胴31の前の対向する側の上に位置するように構成される。収縮した空気袋152は、領域119に嵌るように折り畳むことができる。
【0050】
領域119及び空気袋152の他の形状及び構成も可能である。
【0051】
領域119には、領域119内の空気袋152を膨張させるための圧縮ガスシリンダーなどの1つ以上の膨張システム133が取り付けられている。膨張システム133は、水との接触時に自動的に始動されてもよく、及び/又は飛行機乗務員によって手動で始動されてもよい。
【0052】
図示の例では、空気袋152の腕部134A及び134Bが、それぞれ着用者の胴の左側及び右側の強力な取り付け点135A及び135B(
図11参照)で腰ベルト122に取り付けられる。この取り付けは、腰ベルト122が空気袋の左腕部の下側及び空気袋の右腕部の下側に取り付けられたそれぞれのループ(図示せず)を通過することによるものであってもよい。取り付け点135A及び135Bは空気袋152が膨張したときに強固な固定点を形成する。腰ベルト122はフライト衣類品110に一体化されてもよい。
【0053】
バックストラップ126は背胴の中心で腰ベルト122に(例えば、ループ140-
図9及び11参照)その下端で取り付けることができ、首の後の中央部132でその上端で空気袋152に取り付けられる。これにより、膨張時に空気袋152が着用者の頭の上に乗り上げることを防止することができる。バックストラップ126は、フライト衣類品110の通路(図示せず)に通されて、バックストラップ126をさらに配置することができる。バックストラップ126は、フライト衣類品110に一体化されてもよく、又は省略されてもよい(
図10に示されるように)。
【0054】
図11に示されるように、空気袋152は、フライト衣類品110の外面(外層又は前層)150の内側で収縮して収容され、空気袋152を損傷から保護する。膨張システム133は外面150の下に収容することができ、又は外面150から離れて、管によって空気袋152に接続することができる(例えば、本出願人の英国特許第2573474号明細書に記載されているような遠隔膨張システムによって)。
【0055】
内部カバー(内層又は後層)156は、衣類品の内側の空気袋152を保護するために取り付けることができる。内部カバー156は空気袋152と着用者の胴31との間に位置する。内部カバー156は好ましくは実質的に非弾性である。内部カバー156は非弾性織物材料から形成することができる。内部カバー156の概ね非弾性的な性質は、空気袋152が膨張したときにそれが著しく膨張しないことを手段する。結果として、空気袋152の膨張は、内部カバー156を膨張させるのではなく、自動的に解放可能なクロージャ154に圧力を加える。
【0056】
同様に、フライト衣類品110の外面(外側面)150は、非弾性織物材料などの実質的に非弾性の材料から形成されてもよい。外面150の概ね非弾性的な性質は、空気袋152が膨張したときにそれが著しく膨張しないことを意味する。結果として、空気袋152の膨張は、外面150を膨張させるのではなく、自動的に解放可能なクロージャ154に圧力を加える。
【0057】
フライト衣類品110の内部カバー156及び外面(外側面)150は一緒に、収縮した空気袋152が収容されるポケット159を形成する。内部カバー156及び外面(外側面)150の両方が存在する領域は、収縮した膨張可能空気袋152が収容される領域119に対応する。
【0058】
内部カバー156は領域119と同様の形状や大きさを有し、その結果、内部カバー156もまた、略U字形であり、着用者の首の後の周りを通過する中央部を有し、中央部の対向する左側及び右側から延びる2つの腕部が、着用者の胴31の前の対向する側の上に位置するように構成される。
【0059】
開口部160は、腰ベルト122の位置に対応するその腕部の各々の位置で内部カバー156に設けられてもよい。腰ベルト122は、腕部及び空気袋152が腰ベルト122に取り付けられる強力な取り付け点135A及び135Bがポケット159の内側にあるように、開口部160を通過することができる。合計4つの開口部160が設けられてもよく、各腕部に2つずつ設けられてもよい。
【0060】
フライト衣類品110の外面150には、領域119、例えば領域119の中心に、自動的に解放可能なクロージャ154が設けられている。自動的に解放可能なクロージャ154は、「張り裂け」ジッパー、Velcro(登録商標)又はプレススタッドなどであってもよい。自動的に解放可能なクロージャ154は、出願人の英国特許第2588110号明細書に記載されているようなスライドファスナであってもよい。自動的に解放可能なクロージャ154は、着用者の首の後ろで、2つの腕部134A及び134B並びに中央部136に沿って延在する。
【0061】
膨張システム133が作動すると、外面150は、自動的に解放可能なクロージャ154によって自動的に開く。膨張システム133が(手動又は自動のいずれかで)起動されると、膨張する空気袋152は、自動的に解放可能なクロージャ154に作用してそれを開く。空気袋152の膨張によって生成される圧力は、自動的に解放可能なクロージャ154を開かせる。自動的に解放可能なクロージャ154が開くと、空気袋152は、更なる膨張が生じると、開口部を通過する。
図12、
図13及び
図14は、解放可能なクロージャ154が開いた後の、完全に膨張したときの空気袋152を示す。
【0062】
図12、
図13及び
図14は(
図8~
図11に示されるように)衣類品110の内部から、膨張するにつれている衣類品110の外部に移動した後の空気袋152を示す。膨張した空気袋は着用者の胸の上及び着用者の首の後ろに配置され、浮力を提供し、それによって、飛行機乗務員が水中で緊急着陸を行った場合に、溺れることを防止する。
【0063】
内部カバー156又は外面150は空気袋152がメンテナンス又は修理のために衣類品110から取り外されることを可能にするために、(例えば、プレススタッド、従来のジッパー又はVelcro(登録商標)によって形成された)解放可能なクロージャ158によって開くことができる。自動的に解放可能なクロージャ154とは異なり、解放可能なクロージャ158は、空気袋152が膨張したときに自動的に開くように構成されていない。
【0064】
この実施形態では、ネオプレン又はポリウレタンなどの可撓性空気不透過性ポリマーのシートを内側にコーティング又は積層した繊維支持シート(例えばナイロン又はポリエステル)からなる従来の単一層の材料を使用する代わりに、2つの分離層(すなわち外側繊維層及び別の内側ポリマー層)が設けられて空気袋152を形成する。
【0065】
空気袋152を作製するための2つの分かれている層の使用は、より軽量であり、収納されたときによりコンパクトであり、より強力である、空気袋構造をもたらし得る。
【0066】
図15A~15Cに示されるように、空気袋152の外側繊維層252(例えば、ナイロン又はポリエステル)は、一緒に縫合される2つのシート材で形成され得る。上部シート材253Aは、外面257A及び内面257Bを有する。下部シート材253Bは外面258A及び内面258Bを有する。シート材253A及び253Bは、シート材の各々の縁部領域259において、シート材の一方の遠位内面がシート材の他方の遠位外面と重なるように接続され、遠位面は261で示されるように、共に縫合される。図示の構成において、上層257Aの遠位内面257Bが下層253Bの外面258Aの遠位部分に面するように配置され、これらの層は縫合261によって接触状態に保持される。
【0067】
空気袋152の内層255は、可撓性の空気不透過性材料の2つのシート254によって形成される。2つのシートは溶接部256によって接合される。
【0068】
この実施形態では外側繊維層252がその縁部の周りに縫い付ける(薄手で)ことができ、これは溶接よりもはるかに強い綴じ目を作り出す。
図15A~15Cに示すように、空気袋152の内層は大きすぎるように作製されるか、又は伸張することができるポリマーから作製され、したがって、溶接された縁部256は決して表面張力を受けない。空気袋152の内層255は外側繊維層252とほぼ同じ形状であってもよいが、空気袋152の内層255はほぼ大きいサイズであってもよい。空気袋152の内層255は、外側繊維層252内で膨張したとき、空気袋152の内層255が空気袋152の内層255のいかなる伸張も起こさずに外側繊維層252の内容積を満たし、張力が外側繊維層252によって吸収されるように、十分に大きいサイズから作製されてもよい。空気袋152の内側が過大サイズに作られる場合、空気袋152の内層255は、非伸張性及び/又は非弾性材料で作られてもよい。外側繊維層252は空気袋152の内層よりも強いので、張力が外側繊維層252によって受け止められるのが有利である。
【0069】
好ましくは、外側繊維層252が軽量の「リップストップ」原料から作製され、シリコンなどの潤滑剤でコーティングされる。これは、高い引裂強度を有する極めて強い材料を生成し、また、表面が非常に低い表面摩擦を有するので、内側ポリマー層255は容易にその上を摺動し、非常にコンパクトなライフジャケットをもたらす。
【0070】
リップストップ生地は、引き裂きや裂けに対する耐久性を高める特殊な補強技術を用いたナイロン製などの織物である。製織中、比較的厚い補強糸は、クロスハッチパターンにより一定間隔で織り込まれる。間隔は典型的には5~8mmである。薄く軽量のリップストップ生地は、より厚い糸がより薄い生地に織り合わされるため、3次元構造を有する。
【0071】
上記の実施形態において、LPU空気袋は、ジャケット又はベスト、スーツなど(すなわち、衣類品)の内面に取り付けられるが、膨張の起動時に、空気袋が加圧される結果として、自動的に開くジッパー又はベルクロ(登録商標)又はプレススタッドなどを介して衣類品の内部から外部に移動する。
【0072】
保護衣類品は、上述の実施形態で説明したように、飛行機乗務員が着用し、通常の飛行中に飛行機乗務員を保護する目的を有する衣類品であってもよい。保護衣類品は、代替的に、船又は石油掘削施設など、溺水からの保護が望ましい場合に、他の用途で着用される衣類品であってもよい。
【0073】
上記の実施形態は例として説明されている。本発明から逸脱することなく、多くの変形が可能である。
【国際調査報告】