(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】EGFR/MET二重特異性抗体で処置された患者における注入関連反応を低減するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/573 20060101AFI20250220BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20250220BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20250220BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250220BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20250220BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20250220BHJP
A61K 31/135 20060101ALI20250220BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20250220BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20250220BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20250220BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20250220BHJP
A61P 9/02 20060101ALI20250220BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250220BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20250220BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20250220BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
A61K31/573
A61K31/47
A61K31/519
A61K45/00
A61K31/5377
A61K31/506
A61K31/135
A61P11/00
A61P9/00
A61P1/08
A61P1/00
A61P9/02
A61P43/00 121
A61P43/00 113
A61K31/167
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024546404
(86)(22)【出願日】2023-02-07
(85)【翻訳文提出日】2024-09-20
(86)【国際出願番号】 IB2023051076
(87)【国際公開番号】W WO2023148702
(87)【国際公開日】2023-08-10
(32)【優先日】2022-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100209037
【氏名又は名称】猪狩 俊博
(72)【発明者】
【氏名】アグラワル,トリシャラ
(72)【発明者】
【氏名】マハデヴィア,パルシヴ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA22
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4H045AA11
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4H045BA40
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4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、抗上皮成長因子受容体(EGFR)/肝細胞成長因子受容体(c-Met)抗体で処置された対象における注入関連反応(IRR)の発生又は重症度を低減する方法であって、(a)デキサメタゾン、(b)モンテルカスト、又は(c)メトトレキサート、を対象に投与することを含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗上皮成長因子受容体(EGFR)/肝細胞成長因子受容体(c-Met)抗体で処置された対象における注入関連反応(IRR)の発生又は重症度を低減する方法であって、
a)デキサメタゾン、
b)モンテルカスト、又は
c)メトトレキサート、
を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記抗体が、
a)それぞれ、配列番号1、2、3、4、5、及び6の、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、HCDR3、軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列を含む、EGFRに特異的に結合する第1のドメインと、
b)それぞれ、配列番号7、8、9、10、11及び12の、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列を含む、c-Metに特異的に結合する第2のドメインと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のドメインが、配列番号13の重鎖可変領域(VH)と配列番号14の軽鎖可変領域(VL)とを含み、前記第2のドメインが、配列番号15のVHと配列番号16のVLとを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体が、IgG1アイソタイプのものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体が、配列番号17の第1の重鎖(HC1)、配列番号18の第1の軽鎖(LC1)、配列番号19の第2の重鎖(HC2)、及び配列番号20の第2の軽鎖(LC2)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体が、単離された二重特異性抗体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記二重特異性抗体が、アミバンタマブである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体が、約1,050mg、約1,400mg、約1,600mg、又は約2,240mgの用量で投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体が、約1,400mgの用量で投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体が、約1,050mgの用量で投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体が、約1,600mgの用量で投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体が、約2,240mgの用量で投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体が、週1回又は2週間毎に1回投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体が、最初の4週間は週1回、次いで2週間毎に1回投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体が、単剤療法として投与される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗EGFR/c-Met抗体で処置された前記対象が、1つ又は2つ以上の化学療法剤を更に投与される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ又は2つ以上の化学療法剤が、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ又は2つ以上の化学療法剤が、ラゼルチニブを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記1つ又は2つ以上の化学療法剤が、オシメルチニブを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
メトトレキサートが、前記抗EGFR/c-Met抗体の前記投与の7日~3日前に投与される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
メトトレキサートが、25mgの用量で投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
モンテルカストが、前記抗EGFR/c-Met抗体の前記投与の4日前から毎日投与される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
モンテルカストが、5回投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
モンテルカストが、10mgの用量で投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記抗EGFR/c-Met抗体の投与の1日目及び2日目にIVデキサメタゾンを投与することを更に含み、デキサメタゾンの前記投与が、前記抗EGFR/c-Met抗体の前記投与の45~60分前である、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
IVデキサメタゾンが、10mgの用量で投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
経口デキサメタゾンが、前記抗EGFR/c-Met抗体の前記投与の1日前に投与される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
経口デキサメタゾンが、8mgの総一日用量で投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記抗EGFR/c-Met抗体の投与の1日目及び2日目にIVデキサメタゾンを投与することを更に含み、IVデキサメタゾンが、10~20mgの用量で投与される、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
抗ヒスタミン薬、解熱薬、又はグルココルチコイドのうちの1つ若しくは2つ以上で前投薬を投与することを更に含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記前投薬が、ジフェンヒドラミンを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ジフェンヒドラミンが、25~50mgの用量で投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記前投薬が、アセトアミノフェンを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記アセトアミノフェンが、650~1,000mgの用量で投与される、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2022年2月7日に出願された米国仮特許出願第63/307,375号、及び2022年7月14日に出願された米国仮特許出願第63/389,042号の利益を主張するものであり、これらの開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(電子的に提出された配列表の参照)
本出願の配列表は、ファイル名が「JBI6706WOPCT1SEQLIST.xml」であり、2023年1月23日に作成され、20キロバイト(kilobyte、KB)のサイズであるXML形式の配列表として電子的に、The United States Patent and Trademark Center Patent Centerを通じて提出される。提出されたこの配列表は、本明細書の一部であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、抗上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor、EGFR)/肝細胞成長因子受容体(c-Met)抗体で処置された対象における注入関連反応(infusion-related reaction、IRR)の発生又は重症度を低減する方法であって、(a)デキサメタゾン、(b)モンテルカスト、又は(c)メトトレキサート、を対象に投与することを含む、方法に関する。
【背景技術】
【0004】
アミバンタマブは、FDA承認の検査によってEGFRのエクソン20挿入変異を有することが確認され、かつ白金ベースの化学療法中又は療法後に進行した、局所進行性又は転移性NSCLCを有する成人患者の処置のためにFDAによって認可された二重特異性EGF受容体指向性及びMET受容体指向性抗体である。アミバンタマブ投与は、一部の患者において注入関連反応(IRR)を引き起こす可能性がある。IRRの徴候及び症状としては、呼吸困難、潮紅、発熱、悪寒、悪心、胸部不快感、低血圧、及び嘔吐が挙げられるが、これらに限定されない。重度の反応を含む全身性IRRは、新たなタンパク質治療薬注入の導入時に頻繁に観察されるが、反応を誘導する機序は様々である。
【発明の概要】
【0005】
アミバンタマブなどのEGFR/c-Met二重特異性抗体で処置された患者における注入関連反応(IRR)を低減することになる治療薬の改善された組み合わせに対する必要性が存在する。
【0006】
本開示は、一般に、EGFR/c-Met二重特異性抗体で処置された患者においてIRRを処置するのに有用な方法に関する。
【0007】
一態様では、本開示は、抗上皮成長因子受容体(EGFR)/肝細胞成長因子受容体(c-Met)抗体で処置された対象における注入関連反応(IRR)の発生又は重症度を低減する方法であって、(a)デキサメタゾン、(b)モンテルカスト、又は(c)メトトレキサート、を投与することを含む、方法を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態では、抗体は、
-それぞれ、配列番号1、2、3、4、5、及び6の、重鎖相補性決定領域1(heavy chain complementarity determining region 1、HCDR1)、HCDR2、HCDR3、軽鎖相補性決定領域1(light chain complementarity determining region 1、LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列を含む、EGFRに特異的に結合する第1のドメインと、
-それぞれ、配列番号7、8、9、10、11及び12の、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列を含む、c-Metに特異的に結合する第2のドメインと、を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、第1のドメインは、配列番号13の重鎖可変領域(VH)と配列番号14の軽鎖可変領域(VL)とを含み、第2のドメインは、配列番号15のVHと配列番号16のVLとを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1アイソタイプのものである。
【0011】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号17の第1の重鎖(first heavy chain、HC1)、配列番号18の第1の軽鎖(first light chain、LC1)、配列番号19の第2の重鎖(second heavy chain、HC2)、及び配列番号20の第2の軽鎖(second light chain、LC2)を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、抗体は、単離された二重特異性抗体である。
【0013】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、アミバンタマブである。
【0014】
いくつかの実施形態では、抗体は、約700mg~約1,400mgの用量で投与される。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗体は、約700mg、約1,050mg、又は約1,400mgの用量で投与される。
【0016】
いくつかの実施形態では、抗体は、約1,400mgの用量で投与される。
【0017】
いくつかの実施形態では、抗体は、約1,050mgの用量で投与される。
【0018】
いくつかの実施形態では、抗体は、約700mgの用量で投与される。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗体は、週1回又は2週間毎に1回投与される。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗体は、最初の4週間は週1回、次いで2週間毎に1回に投与される。
【0021】
いくつかの実施形態では、抗体は、単剤療法として投与される。
【0022】
いくつかの実施形態では、抗EGFR/c-Met抗体で処置された対象は、1つ又は2つ以上の化学療法剤を更に投与される。
【0023】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の化学療法剤は、チロシンキナーゼ阻害剤(tyrosine kinase inhibitor、TKI)を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の化学療法剤は、ラゼルチニブを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の化学療法剤は、オシメルチニブを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、抗EGFR/c-Met抗体の投与の7日~3日前に投与される。
【0027】
いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、25mgの用量で投与される。
【0028】
いくつかの実施形態では、モンテルカストは、抗EGFR/c-Met抗体の投与の4日前から毎日投与される。
【0029】
いくつかの実施形態では、モンテルカストは、5回投与される。
【0030】
いくつかの実施形態では、モンテルカストは、10mgの用量で投与される。
【0031】
いくつかの実施形態では、方法は、抗EGFR/c-Met抗体の投与の1日目及び2日目にIVデキサメタゾンを投与することを更に含み、デキサメタゾンの投与は、抗EGFR/c-Met抗体の投与の45~60分前である。
【0032】
いくつかの実施形態では、IVデキサメタゾンは、10mgの用量で投与される。
【0033】
いくつかの実施形態では、経口デキサメタゾンは、抗EGFR/c-Met抗体の投与の1日前に投与される。
【0034】
いくつかの実施形態では、経口デキサメタゾンは、8mgの総一日用量で投与される。
【0035】
いくつかの実施形態では、方法は、抗EGFR/c-Met抗体の投与の1日目及び2日目にIVデキサメタゾンを投与することを更に含み、IVデキサメタゾンは、10~20mgの用量で投与される。
【0036】
いくつかの実施形態では、方法は、抗ヒスタミン薬、解熱薬、又はグルココルチコイドのうちの1つ又は2つ以上で前投薬を投与することを更に含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、前投薬は、ジフェンヒドラミンを更に含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、ジフェンヒドラミンは、25~50mgの用量で投与される。
【0039】
いくつかの実施形態では、前投薬は、アセトアミノフェンを更に含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、アセトアミノフェンは、650~1,000mgの用量で投与される。
【発明を実施するための形態】
【0041】
定義
本明細書に引用される、特許及び特許出願を含むがそれらに限定されない全ての刊行物は、完全に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのみに使用され、限定することを意図するものではないと理解すべきである。別途定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【0043】
本明細書に記載されているものと同様又は同等の任意の方法及び材料を、本発明の試験を実施するために使用することができるが、例示となる材料及び方法を本明細書に記載する。本発明を説明及び特許請求する上で以下の用語が使用される。
【0044】
リストが提示される場合、別途記載されない限り、そのリストの各個々の要素及びそのリストの全ての組み合わせは別個の実施形態であることを理解されたい。例えば、「A、B、又はC」として提示される実施形態のリストは、実施形態「A」、「B」、「C」、「A又はB」、「A又はC」、「B又はC」、又は「A、B、又はC」を含むと解釈されるべきである。
【0045】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、その内容に別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「細胞(a cell)」という言及には、2つ又はそれ以上の細胞の組み合わせ等が含まれる。
【0046】
複数の列挙された要素間の「及び/又は」という接続句は、個々の及び組み合わされた選択肢の両方を包含するものとして理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって接続される場合、第1の選択肢は、第2の要素なしに第1の要素が適用可能であることを指す。第2の選択肢は、第1の要素なしに第2の要素が適用可能であることを指す。第3の選択肢は、第1及び第2の要素が一緒に適用可能であることを指す。これらの選択肢のうちのいずれか1つは、意味に含まれ、したがって、本明細書に使用される場合、「及び/又は」という用語の要件を満たすことが理解される。選択肢のうちの2つ以上の同時適用性もまた、意味に含まれ、したがって、「及び/又は」という用語の要件を満たすことが理解される。
【0047】
移行句「備える/含む(comprising)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」、及び「からなる(consisting of)」は、特許用語において一般的に受け入れられている意味を含意することを意図し、すなわち、(i)「備える/含む(comprising)」は、「含む」、「含有する」、又は「特徴とする」と同義であり、包括的又は非制限的なものであり、追加の列挙されていない要素又は方法工程を除外するものではなく、(ii)「からなる(consisting of)」は、特許請求の範囲において特定されていないあらゆる要素、工程、又は成分を除外し、並びに(iii)「から本質的になる」は、特定される材料又は工程、及び、特許請求される発明の「基本的かつ新しい特徴に実質的に影響しないもの」に、特許請求の範囲の範囲を制限する。「備える/含む」という語句(又はその同義語)を伴って記載される実施形態はまた、「からなる」及び「から本質的になる」を伴って独立して記載される実施形態を実施形態として提供する。
【0048】
「約」は、当業者によって求められた特定の値について許容される誤差範囲内であることを意味し、これは、その値が測定又は決定される方法、すなわち、測定システムの制限事項にある程度依存する。特定のアッセイ、結果、又は実施形態の文脈において、実施例又は本明細書の他の箇所に別途明示的に記載されない限り、「約」は、当該技術分野の慣行による1以内の標準偏差、又は5%までの範囲のうちのいずれか大きい方であることを意味する。
【0049】
「抗体(単数形又は複数形)」という用語は、広義の意味を有し、モノクローナル抗体(マウス、ヒト、ヒト化、及びキメラモノクローナル抗体を含む)、完全長抗体、抗原結合断片、二重特異性、三重特異性、四重特異性などの多重特異性抗体、二量体、四量体、又は多量体抗体、一本鎖抗体、ドメイン抗体、並びに必要とされる特異性の抗原結合部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された形態を含む免疫グロブリン分子を含む。
【0050】
「特異的結合」、又は「特異的に結合する」、又は「特異的な結合」、又は「結合する」とは、抗体が、抗原又は抗原内のエピトープに、他の抗原に対するよりも高い親和性で結合することを指す。典型的には、抗体は、典型的には平衡解離定数(KD)が、非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)に対する結合についてのKDよりも少なくとも100倍小さい、約5×10-8M以下、例えば、約1×10-9M以下、約1×10-10M以下、約1×10-11M以下、又は約1×10-12M以下のKDで抗原又は抗原内のエピトープに結合する。解離定数は、既知のプロトコルを使用して測定することができる。しかしながら、抗原又は抗原内のエピトープに結合する抗体は、他の関連抗原、例えば、ヒト又はサル、例えば、Macaca fascicularis(カニクイザル、cyno)又はPan troglodytes(チンパンジー、chimp)などの他の種由来の同じ抗原(ホモログ)に対して交差反応性を有する場合がある。単一特異性抗体は、1つの抗原又は1つのエピトープに結合するが、二重特異性抗体は、2つの異なる抗原又は2つの異なるエピトープに結合する。
【0051】
「相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)」とは、抗原に結合する抗体の領域である。CDRは、Kabat(Wu et al.(1970)J Exp Med 132:211-50)(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991)、Chothia(Chothia et al.(1987)J Mol Biol 196:901-17)、IMGT(Lefranc et al.(2003)Dev Comp Immunol 27:55-77)、及びAbM(Martin and Thornton(1996)J Bmol Biol 263:800-15)などの、様々な記述を使用して定義することができる。様々な記述と、可変領域の付番との間の対応が記載されている(例えば、Lefranc et al.(2003)Dev Comp Immunol 27:55-77;Honegger and Pluckthun,(2001)J Mol Biol 309:657-70;及びInternational ImMunoGeneTics(IMGT)データベース;ウェブリソース、http://www_imgt_orgを参照されたい)。UCL Business PLCによるabYsisなどの利用可能なプログラムを使用して、CDRを記述することができる。本明細書で使用される場合、「CDR」、「HCDR1」、「HCDR2」、「HCDR3」、「LCDR1」、「LCDR2」、及び「LCDR3」という用語は、本明細書で別途明示的に記載されない限り、上述したKabat、Chothia、IMGT、又はAbMの方法のいずれかにより定義されるCDRを含む。
【0052】
「完全長抗体」は、ジスルフィド結合により相互接続された、2本の重鎖(heavy chain、HC)及び2本の軽鎖(light chain、LC)、並びにこれらの多量体(例えば、IgM)から構成される。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)、及び重鎖定常領域(ドメインCH1、ヒンジ、CH2、及びCH3からなる)で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(light chain constant region、CL)で構成される。VH領域及びVL領域は、フレームワーク領域(framework region、FR)が散在しており相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)と呼称される超可変領域に更に細分化され得る。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって次の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4で配置された、3つのCDR及び4つのFRセグメントで構成される。
【0053】
「抗原結合断片」とは、抗原に結合する免疫グロブリン分子の一部分を指す。抗原結合断片は合成ポリペプチド、酵素により入手可能なポリペプチド、又は遺伝子組換えされたポリペプチドであってもよく、VH、VL、VH及びVL、Fab、F(ab’)2、Fd及びFv断片、1つのVHドメイン又は1つのVLドメインからなるドメイン抗体(domain antibody、dAb)、サメ可変性IgNARドメイン、ラクダ化VHドメイン、FR3-CDR3-FR4部分などの、抗体のCDRを再現したアミノ酸残基からなる最小の認識単位、HCDR1、HCDR2、及び/又はHCDR3、並びにLCDR1、LCDR2、及び/又はLCDR3が挙げられる。VH及びVLドメインは互いに、合成リンカーを介して結合し、様々なタイプの一本鎖抗体設計を形成することができ、VH及びVLドメインが、別個の一本鎖抗体構築物により発現される場合では、VH/VLドメインが分子内、又は分子間で対形成し、一価の抗原結合部位、例えば一本鎖Fv(single chain Fv、scFv)又はダイアボディを形成することができ、これらは、例えば国際公開第1998/44001号、同第1988/01649号、同第1994/13804号、及び同第1992/01047号に記載されている。
【0054】
「モノクローナル抗体」とは、抗体重鎖からC末端リジンを除去する、又はアミノ酸の異性化若しくは脱アミド、メチオニンの酸化、又はアスパラギン若しくはグルタミンの脱アミドなどの翻訳後修飾といった、可能な周知の変更を除いて同一である、抗体分子の実質的に均質な母集団から得られた抗体、すなわち、集団を構成する個別の抗体を意味する。モノクローナル抗体は、典型的には、1つの抗原性エピトープに結合する。二重特異性モノクローナル抗体は、2つの異なる抗原性エピトープに結合する。モノクローナル抗体は、抗体集団内で不均一なグリコシル化を有し得る。モノクローナル抗体は、単一特異性であってもよく、又は、二重特異性などの多重特異性であってもよく、一価、二価、又は多価であってもよい。
【0055】
「ヒト化抗体」とは、抗原結合部位がヒト以外の種に由来しかつ可変領域フレームワークがヒト免疫グロブリン配列に由来する、抗体を指す。ヒト化抗体は、フレームワーク領域内に意図的に導入された変異を含む可能性があることから、かかるフレームワークは、発現したヒト免疫グロブリン又は生殖系列遺伝子配列の完全な複製物でなくてもよい。
【0056】
「ヒト抗体」とは、フレームワーク及び抗原結合部位の両方がヒト起源の配列に由来する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する抗体を指す。抗体が定常領域又は定常領域の一部分を含む場合、定常領域もまた、ヒト起源の配列に由来する。抗原結合部位が非ヒト種に由来する抗体は、「ヒト抗体」の定義には含まれない。
【0057】
ヒト抗体は、抗体の可変領域がヒト生殖系列免疫グロブリン又は再編成された免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られた場合のヒト由来の配列に由来する重鎖可変領域又は軽鎖可変領域を含む。非限定的な例示的な系としては、ファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリ、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座を保有するトランスジェニック非ヒト動物、例えばマウス又はラットが挙げられる。ヒト抗体は、典型的には、例えば天然に存在する体細胞変異、フレームワーク若しくは抗原結合部位における意図的な置換、及び非ヒト動物におけるクローニング又はVDJ組換え中に導入された置換に起因して、ヒト生殖系列又は再編成された免疫グロブリン配列と比較した場合のアミノ酸の相違を含む。典型的には、ヒト抗体は、アミノ酸配列において、ヒト生殖系列又は再編成された免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも80%同一である。例えば、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である。場合によっては、ヒト抗体は、ヒトフレームワーク配列分析から得られたコンセンサスフレームワーク配列(例えば、Knappik et al.,J Mol Biol 296:57-86(2000)を参照)、又はファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリに組み込まれた合成HCDR3(例えば、Shi et al.,J Mol Biol 397:385-96(2010)、及び国際公開第2009/085462号を参照)を含有し得る。
【0058】
「二重特異性」は、2つの異なる抗原、又は同じ抗原中の2つの異なるエピトープと特異的に結合する抗体を指す。二重特異性抗体は、他の関連抗原、例えば、ヒト又はサル、例えば、カニクイザル(Macaca cynomolgus)(例えば、カニクイザル(cynomolgus、cyno)又はチンパンジーなどの他の種由来の同じ抗原(ホモログ)に対して交差反応性を有し得る、あるいは2つ又はそれ以上の異なる抗原間で共有されているエピトープに結合し得る。
【0059】
「二重特異性抗EGFR/c-Met抗体」又は「二重特異性EGFR/c-Met抗体」は、EGFRに特異的に結合する第1のドメインと、c-Metに特異的に結合する第2のドメインとを有する、二重特異性抗体を指す。EGFR及びc-Metに特異的に結合するドメインは、典型的には、VH/VL対であり、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、EGFR及びc-Metに対する結合に関して一価である。
【0060】
「単離された」とは、組換え細胞などの分子が生成される系の他の構成成分から離して実質的に分離及び/又は精製されている分子の均質な集団(例えば、合成ポリヌクレオチド、ポリペプチド、ベクター、又はウイルス)に加えて、少なくとも1つの精製又は単離工程に供されたタンパク質を指す。「単離された」とは、その他の細胞材料及び/又は化学物質を実質的に含まない分子を指し、より高い純度、例えば80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の純度まで単離される分子を包含する。
【0061】
免疫グロブリンは、重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMに割り当てられ得る。IgA及びIgGは、アイソタイプのIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4として更に細分類される。どのような脊椎動物種の抗体軽鎖も、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、2つの明確に異なるタイプ、すなわち、カッパ(κ)及びラムダ(λ)のうちの一方に割り当てることができる。
【0062】
本出願で使用される場合、「低フコース」又は「低フコース含量」は、抗体が約1%~15%のフコース含量を有することを指す。
【0063】
本明細書で使用するところの「正常なフコース」又は「正常なフコース含量」とは、抗体が約50%を超える、通常80%を超える、又は85%を超えるフコース含量を有することを指す。
【0064】
「組換え物」は、異なる供給源由来のセグメントが結合されて組換えDNA、抗体、又はタンパク質を産生するときに、組換え手段によって調製、発現、作製、又は単離されるDNA、抗体、及び他のタンパク質を指す。
【0065】
「担体」は、本発明の抗体が共に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、又はビヒクルを指す。このようなビヒクルは、水、及び石油、動物、植物、又は合成物由来のものを含む油、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの液体であってもよい。例えば、0.4%生理食塩水及び0.3%グリシンを使用して、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体を製剤化してもよい。これらの溶液は滅菌され、概して粒子状物質を含まない。これらは、従来周知の滅菌技術(例えば、濾過)によって滅菌することができる。非経口投与の場合、担体は、滅菌水を含み得、溶解度の上昇又は保存のために他の賦形剤が添加されてもよい。注射用の懸濁液又は溶液はまた、水性担体を適切な添加剤と共に利用して調製されてもよい。好適なビヒクル及び製剤(他のヒトタンパク質、例えばヒト血清アルブミンを含む)は、例えば、例を挙げると、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,Troy,D.B.ed.,Lipincott Williams and Wilkins,Philadelphia,PA 2006,Part 5,Pharmaceutical Manufacturing pp 691-1092に記載されており、特にpp.958-989を参照されたい。
【0066】
「投薬量」とは、対象によって摂取される治療薬又は薬物の量、及び対象によって摂取される治療薬の回数の頻度に関する情報を指す。「用量」とは、各回に摂取される治療薬又は薬物の量又は分量を指す。
【0067】
「治療に有効な量」とは、必要な用量及び期間で所望の治療結果を得るための有効量を指す。治療有効量は、個体の病態、年齢、性別、及び体重などの要因、並びに個体において所望の応答を誘発する治療薬又は治療薬の組み合わせの能力によって変動し得る。有効な治療薬又は治療薬の組み合わせの例示的な指標としては、例えば、患者の改善された健康が挙げられる。
【0068】
「共投与」、「~と共に投与」、「~と組み合わせて投与」、「~と組み合わせて」などは、選択された治療薬又は薬物の単一の患者への投与を包含し、治療薬又は薬物が同じ若しくは異なる投与経路によって又は同じ若しくは異なる時間に投与される治療レジメンを含むことを意図する。
【0069】
「固定された組み合わせ」は、2つ又はそれ以上の化合物を含む単一の医薬組成物を指す。
【0070】
「固定されていない組み合わせ」は、各々が1つ又は2つ以上の化合物を含む別々の医薬組成物を指す。1つ又は2つ以上の化合物又は単位剤形は、別個の実体として、同時に、並行して、又は投与間の時間に具体的な制限なしで逐次的に投与することができ、そのような投与は、対象の体内で、2つの化合物の有効レベルを提供する。
【0071】
「アンタゴニスト」又は「阻害剤」は、細胞タンパク質に結合したとき、そのタンパク質の天然のリガンドによって誘導される少なくとも1つの反応又は活性を抑制する分子を指す。少なくとも1つの反応又は活性が、アンタゴニストの非存在下(例えば、陰性対照)で抑制される少なくとも1つの反応又は活性よりも少なくとも約20%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは100%多く抑制されたとき、あるいはアンタゴニストの非存在下における抑制と比較して抑制が統計的に有意であるとき、分子はアンタゴニストである。
【0072】
がんなどの疾患若しくは障害を「治療する」、「治療すること」、又は「治療」とは、以下、すなわち、障害の重篤度及び/若しくは期間を低減する、治療される障害に特徴的な症状の悪化を抑制する、以前に障害を有していた対象における障害の再発を制限若しくは予防する、又は障害について以前に症候性であった対象における症状の再発を制限若しくは予防する、のうちの1つ又は2つ以上を達成することを指す。
【0073】
疾患若しくは障害を「予防する」、「予防すること」、「予防(prevention)」、又は「予防(prophylaxis)」とは、障害が対象に発生することを予防することを意味する。
【0074】
「応答性である」、「応答性」、又は「応答する可能性が高い」は、検出可能か若しくは検出不可能であるかにかかわらず、任意の種類の改善又は陽性応答、例えば、1つ又は2つ以上の症状の軽減又は回復、疾患の程度の減少、安定化した(すなわち、悪化しない)疾患状態、疾患の蔓延の防止、疾患の進行の遅延又は減速、疾患状態の回復又は緩和、及び寛解(部分的であっても全体的であっても)を指す。
【0075】
「対象」は、任意のヒト又は非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」としては、全ての脊椎動物、例えば哺乳類及び非哺乳類、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などが挙げられる。用語「対象」及び「患者」は、本明細書では互換的に使用される。
【0076】
「がん」は、無制御に増殖し、場合によっては、患者の身体の他の領域に転移(拡散)する傾向がある細胞の異常な成長を指す。
【0077】
「EGFR又はc-Met発現がん」は、EGFR若しくはc-Metの検出可能な発現を有するか、又はEGFR若しくはc-Metの変異若しくは増幅を有するがんを指す。EGFR又はc-Metの発現、増幅、及び変異状態は、配列決定、次世代配列決定、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション、免疫組織化学的検査、フローサイトメトリー、又はウェスタンブロッティングなどの既知の方法を使用して検出することができる。
【0078】
「上皮成長因子受容体」又は「EGFR」は、GenBankアクセッション番号NP_005219に示されているアミノ酸配列を有するヒトEGFR(HER1又はErbB1としても知られている(Ullrich et al.,Nature 309:418-425,1984)に加えて、その天然に存在するバリアントを指す。
【0079】
本明細書で使用される場合、「肝細胞成長因子受容体」又は「c-Met」は、GenBankアクセッション番号NP_001120972に示されているアミノ酸配列を有するヒトc-Met及びその天然のバリアントを指す。
【0080】
「新たに診断された」は、EGFR又はc-Met発現がんと診断されてはいるが、CRC(例えば、mCRC)の治療をまだ受けたことがない対象を指す。
【0081】
「難治性」とは、処置に応答しない疾患を指す。難治性疾患は、治療前若しくは治療開始時に治療に対して耐性であり得るか、又は難治性疾患は、治療中に耐性疾患となり得る。
【0082】
「再発性」とは、治療薬による前処置後の改善期間後に疾患又は疾患の徴候及び症状が再開することを指す。
【0083】
「診断すること」又は「診断」は、対象が所与の疾患若しくは病態に罹患しているかどうか、又は将来的に所与の疾患若しくは病態を発症し得るかどうか、又は以前に診断された疾患若しくは病態に対する治療に応答する可能性が高いかどうかを判定する、すなわち、治療に対して応答する可能性について患者集団を層別化する方法を指す。診断は、典型的には、診断される疾患についての全般的な指針、又は対象が特定の治療に応答する可能性が高いことを示す他の基準に基づいて医師によって行われる。
【0084】
「生物学的試料」は、対象から単離された類似の流体、細胞、又は組織に加えて、対象内に存在する流体、細胞、又は組織の収集物を指す。例示的な試料は、生物学的流体、例えば、血液、血清及び漿膜液、血漿、リンパ液、尿、唾液、嚢胞液、涙液、糞便、喀痰、分泌組織及び器官の粘膜分泌液、膣分泌液、腹水、胸膜腔、心膜腔、腹膜腔、腹腔、及び他の体腔の流体、気管支洗浄によって回収された流体、滑液、対象又は生物学的起源、例えば、細胞又は器官の馴化培地を含む細胞及び器官の培養培地、洗浄液などと接触した液体溶液、組織生検、腫瘍組織生検、腫瘍組織試料、穿刺吸引、外科的に切除された組織、器官培養物又は細胞培養物である。
【0085】
本開示の方法
一態様では、本開示は、抗上皮成長因子受容体(EGFR)/肝細胞成長因子受容体(c-Met)抗体で処置された対象における注入関連反応(IRR)の発生又は重症度を低減する方法であって、メトトレキサート、モンテルカスト、又はデキサメタゾンのうちの1つ又は2つ以上を投与することを含む、方法、を提供する。
【0086】
一態様では、本開示は、抗上皮成長因子受容体(EGFR)/肝細胞成長因子受容体(c-Met)抗体を含む併用処置で処置された対象における注入関連反応(IRR)の発生又は重症度を低減する方法であって、メトトレキサート、モンテルカスト、又はデキサメタゾンのうちの1つ又は2つ以上を投与することを含む、方法、を提供する。
【0087】
IRR低減のための方法
本開示は、抗上皮成長因子受容体(EGFR)及び/又は肝細胞成長因子受容体(c-Met)に特異的に結合する抗体で処置される対象における注入関連反応(IRR)の発生又は重症度を低減する方法を提供する。一実施形態では、対象は、EGFR及び/又はc-Metに特異的に結合する抗体を含む併用処置で処置される。一実施形態では、対象は、アミバンタマブを含む併用処置で処置される。
【0088】
非経口投与されたEGFR/c-Met二重特異性抗体は、患者又は対象において有害反応又は有害事象(adverse event、AE)、具体的には注入関連反応(IRR)を引き起こし得る。RYBREVANT(アミバンタマブ)に関するUnited States Prescribing Information(www.janssenlabels.com/package-insert/product-monograph/prescribing-information/RYBREVANT-pi.pdf)に報告されているように、CHRYSALIS研究において単剤として推奨される第2相用量(recommended Phase 2 dose、RP2D)でIVアミバンタマブを受けた局所進行性又は転移性非小細胞肺がん(non-small cell lung cancer、NSCLC)を有する302人の患者の中で、IRRは、66%の発生率で最も一般的に起こる有害反応の1つであった。
【0089】
有害反応又は有害事象(AE)は、EGFR/c-Met二重特異性抗体が投与されている、又は投与された患者又は対象における任意の不都合な医学的出来事である。いくつかの実施形態では、AEはIRRである。いくつかの実施形態では、IRRは軽度のIRRであり、限定されないが、悪寒、悪心、呼吸困難、潮紅、胸部不快感、低血圧、嘔吐、頻脈、発熱、又は注入時若しくは注入後の任意の他の症状として現れる。いくつかの実施形態では、IRRは、EGFR/c-Met二重特異性抗体などの新しいタンパク質治療薬注入の導入時の重度の反応を含む全身性IRRである。いくつかの実施形態では、EGFR/c-Met二重特異性抗体は、アミバンタマブである。いくつかの実施形態では、IRRの重症度は、National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events(NCI-CTCAE、バージョン5.0)に従ってグレード分類される。重症度スケールは、グレード1(軽度)~グレード5(死亡)の範囲である。グレード1:軽度、グレード2:中等度、グレード3:重度、グレード4:生命を脅かす、及びグレード5:有害事象に関連する死亡。いくつかの実施形態では、患者又は対象におけるIRRの存在は、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置のサイクル1の1日目に開始し、30日後に終了する任意の時点で評価される。いくつかの実施形態では、患者又は対象におけるIRRの存在は、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置のサイクル1の1日目に評価される。いくつかの実施形態では、患者又は対象におけるIRRの存在は、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の開始後3ヶ月までの時点で評価される。いくつかの実施形態では、患者又は対象におけるIRRの存在は、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の終了後1日~30日の任意の時点で評価される。いくつかの実施形態では、患者又は対象におけるIRRの存在は、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の終了後1日~5日の任意の時点で評価される。いくつかの態様において、患者又は対象におけるIRRの存在は、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の終了後1日~10日の任意の時点で評価される。いくつかの実施形態では、患者又は対象におけるIRRの存在は、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の終了後1日~15日の任意の時点で評価される。いくつかの実施形態では、患者又は対象におけるIRRの存在は、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の終了後1日~20日の任意の時点で評価される。
【0090】
いくつかの実施形態では、IRRの発生又は重症度を低減する方法は、メトトレキサート、モンテルカスト、又はデキサメタゾンのうちの1つ又は2つ以上を投与することを含む。いくつかの実施形態では、IRRの発生又は重症度を低減する方法は、メトトレキサートを投与することを含む。いくつかの実施形態では、IRRの発生又は重症度を低減する方法は、モンテルカストを投与することを含む。いくつかの実施形態では、IRRの発生又は重症度を低減する方法は、デキサメタゾンを投与することを含む。
【0091】
メトトレキサート
メトトレキサート(MTX)[N-[4-[[(2,4-ジアミノ-6-プテリジニル)メチル]メチルアミノ]ベンゾイル]-Lグルタミン酸]は、関節リウマチの処置に適応される、FDAによって認可された葉酸アンタゴニストである。MTXは、化学療法及び自己免疫疾患における免疫抑制剤において一般的に使用される代謝拮抗薬である。メトトレキサートは、ジヒドロ葉酸レダクターゼを阻害し、DNA合成、修復、及び細胞複製を妨害する。悪性細胞、骨髄、胎児細胞、頬側及び腸粘膜、並びに膀胱の細胞などの活発に増殖している組織は、一般に、メトトレキサートのこの効果に対してより感受性である。
【0092】
いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、皮下(subcutaneously、SC)投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、経口投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、筋肉内投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、静脈内投与される。
【0093】
いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の数日前に投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の1~7日前に投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の1~5日前に投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の1~6日前に投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の1~4日前に投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の1~3日前に投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の1~2日前に投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の3~7日前に投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の3~6日前に投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の3~5日前に投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の2~7日前に投与される。
【0094】
いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の1日前に投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の2日前に投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の3日前に投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の4日前に投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の5日前に投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の6日前に投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の7日前に投与される。.いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の8日前に投与される。
【0095】
いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、12~30mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、20~30mgの総用量で投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、25mgの総用量で投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、20~30mgの単回用量で投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、25mgの単回用量で投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、20mgの単回用量で投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、21mgの単回用量で投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、22mgの単回用量で投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、23mgの単回用量で投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、24mgの単回用量で投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、26mgの単回用量で投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、27mgの単回用量で投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、28mgの単回用量で投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、29mgの単回用量で投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、30mgの単回用量で投与される。
【0096】
いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、単回用量で投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、2回用量として投与される。いくつかの実施形態では、メトトレキサートは、2回又はそれ以上の用量として投与される。
【0097】
モンテルカスト
モンテルカストは、慢性喘息の処置、並びに運動誘発性気管支収縮の予防及び防止のためにFDAによって認可された経口薬である。モンテルカストはまた、季節性及び通年性アレルギー性鼻炎の両方の症状の軽減のために認可されている。モンテルカストは、ロイコトリエンの肥満細胞媒介性放出を阻害し、炎症及び気管支収縮を低減するために使用され得る。モンテルカストは、ロイコトリエンに高い親和性で結合する高度に選択的なロイコトリエン受容体アンタゴニストであり、肥満細胞を含む様々な細胞型によって分泌され、喘息及びアレルギー性鼻炎の徴候及び症状を引き起こし得る炎症プロセスに関与する。ロイコトリエン受容体は、マクロファージ及び平滑筋細胞などの気道細胞において見出される。ロイコトリエン受容体に結合すると、モンテルカストは、ロイコトリエンの生理学的効果(気道浮腫、平滑筋収縮、及び正常な細胞活性の障害など)を阻害する。これは、モンテルカストが、EGFR/c-Met二重特異性抗体IRRに関連する症候学(例えば、呼吸困難)を潜在的に低減する論理的根拠となる。
【0098】
いくつかの実施形態では、モンテルカストは、経口投与される、いくつかの実施形態では、モンテルカストは、注射として投与される。いくつかの実施形態では、モンテルカストは、皮下投与される。いくつかの実施形態では、モンテルカストは、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、モンテルカストは、筋肉内投与される。
【0099】
いくつかの実施形態では、モンテルカストは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置前に投与される。いくつかの実施形態では、モンテルカストは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置前に1~7回投与される。いくつかの実施形態では、モンテルカストは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置前に1回投与される。いくつかの実施形態では、モンテルカストは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置前に2回投与される。いくつかの実施形態では、モンテルカストは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置前に3回投与される。いくつかの実施形態では、モンテルカストは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置前に4回投与される。いくつかの実施形態では、モンテルカストは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置前に5回投与される。いくつかの実施形態では、モンテルカストは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置前に6回投与される。いくつかの実施形態では、モンテルカストは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置前に7回投与される。
【0100】
いくつかの実施形態では、モンテルカストは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の開始5日前に投与される。いくつかの実施形態では、モンテルカストは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の開始4日前に投与される。いくつかの実施形態では、モンテルカストは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の開始3日前に投与される。いくつかの実施形態では、モンテルカストは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の開始2日前に投与される。いくつかの実施形態では、モンテルカストは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の開始2日前に投与される。いくつかの実施形態では、モンテルカストは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の開始4日前に投与され、モンテルカストの最後の投与は、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の初日に与えられる。
【0101】
いくつかの実施形態では、モンテルカストは、4~20mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、モンテルカストは、5~10mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、モンテルカストは、4mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、モンテルカストは、5mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、モンテルカストは、8mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、モンテルカストは、10mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、モンテルカストは、15mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、モンテルカストは、16mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、モンテルカストは、20mgの用量で投与される。
【0102】
デキサメサゾン
デキサメタゾンは、アレルギー状態のためのFDAによって認可された経口及びIV製剤で利用可能な合成副腎皮質ステロイドである。IVデキサメタゾン(10mg)は、全ての患者がIVアミバンタマブを受ける前に投与される標準的な前投薬である。本開示は、EGFR/c-Met二重特異性抗体IRRの発生率を低減するための、ステロイド前負荷を増強する新規方法を提供する。
【0103】
いくつかの実施形態では、デキサメタゾンは、経口投与される。いくつかの実施形態では、デキサメタゾンは、皮下投与される。いくつかの実施形態では、デキサメタゾンは、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、デキサメタゾンは、筋肉内投与される。
【0104】
いくつかの実施形態では、デキサメタゾンは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置前に投与される。いくつかの実施形態では、デキサメサゾンは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の2日前に投与される。いくつかの実施形態では、デキサメサゾンは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の1日前に投与される。いくつかの実施形態では、デキサメサゾンは、EGFR/c-Met二重特異性抗体による処置の3日又はそれ以上前に投与される。
【0105】
いくつかの実施形態では、デキサメタゾンは、1日1回投与される。いくつかの実施形態では、デキサメタゾンは、1日2回投与される。
【0106】
いくつかの実施形態では、デキサメタゾンは、2~10mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、デキサメタゾンは、4~8mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、デキサメタゾンは、4mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、デキサメタゾンは、8mgの用量で投与される。
【0107】
いくつかの実施形態では、IVデキサメタゾンは、メトトレキサート、モンテルカスト、又は経口デキサメタゾンに加えて投与される。
【0108】
いくつかの実施形態では、IVデキサメタゾンは、10~20mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、IVデキサメタゾンは、10mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、IVデキサメタゾンは、15mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、IVデキサメタゾンは、20mgの用量で投与される。
【0109】
いくつかの実施形態では、IVデキサメタゾンは、IV EGFR/c-Met二重特異性抗体の45~60分前に投与される。いくつかの実施形態では、IVデキサメタゾンは、IV EGFR/c-Met二重特異性抗体の前に、IV EGFR/c-Met二重特異性抗体と同じ日に投与される。いくつかの実施形態では、IVデキサメタゾンは、IV EGFR/c-Met二重特異性抗体投与の1日目及び2日目に投与される。
【0110】
患者集団
いくつかの実施形態では、EGFR及び/又はc-Metに特異的に結合する抗体で処置される対象は、がんと診断されている。いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、肺がん、非小細胞肺がん、又は小細胞肺がんである。いくつかの実施形態では、がんは、非小細胞肺がん(NSCLC)である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、結腸直腸がん(colorectal cancer、CRC)である。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、肝臓がんである。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、肝細胞がんである。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、胃がんである。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、食道がんである。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、頭頸部がんである。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、頭頸部の扁平上皮がんである。
【0111】
いくつかの実施形態では、がんは上皮細胞がんである。いくつかの実施形態では、がんは乳がんである。いくつかの実施形態では、がんは卵巣がんである。いくつかの実施形態では、がんは肺がんである。いくつかの実施形態では、がんは肺腺がんである。いくつかの実施形態では、がんは肺扁平上皮がんである。いくつかの実施形態では、がんは小細胞肺がんである。いくつかの実施形態では、がんは結腸直腸がんである。いくつかの実施形態では、がんは肛門がんである。いくつかの実施形態では、がんは前立腺がんである。いくつかの実施形態では、がんは腎臓がんである。いくつかの実施形態では、がんは膀胱がんである。いくつかの実施形態では、がんは頭頸部がんである。いくつかの実施形態では、がんは咽頭がんである。いくつかの実施形態では、がんは鼻のがんである。いくつかの実施形態では、がんは膵臓がんである。いくつかの実施形態では、がんは皮膚がんである。いくつかの実施形態では、がんは口腔がんである。いくつかの実施形態では、がんは舌のがんである。いくつかの実施形態では、がんは食道がんである。いくつかの実施形態では、がんは膣がんである。いくつかの実施形態では、がんは子宮頸がんである。いくつかの実施形態では、がんは脾臓のがんである。いくつかの実施形態では、がんは精巣がんである。いくつかの実施形態では、がんは胃がんである。いくつかの実施形態では、がんは胸腺のがんである。いくつかの実施形態では、がんは結腸がんである。いくつかの実施形態では、がんは甲状腺がんである。いくつかの実施形態では、がんは肝臓がんである。いくつかの実施形態では、がんはHCCである。いくつかの実施形態では、がんはPRCCである。
【0112】
いくつかの実施形態では、がんは、EGFR又はc-Met発現がんである。
【0113】
いくつかの実施形態では、がんは、EGFR及びc-Met発現がんである。
【0114】
いくつかの実施形態では、がんは、EGFR発現がんである。
【0115】
いくつかの実施形態では、がんは、c-Met発現がんである。
【0116】
いくつかの実施形態では、EGFR又はc-Met発現がんは、野生型EGFR、EGFR変異、EGFR遺伝子増幅、循環HGFのレベルの上昇、野生型c-Met、c-Met変異、c-Met遺伝子増幅、又は変異体KRASに関連する。EGFR変異は、エクソン19欠失又はL858R変異などの活性化変異であってもよい。いくつかの実施形態では、EGFR変異は、EGFRのエクソン19変異である。いくつかの実施形態では、EGFR変異は、L858R変異である。
【0117】
がんに関連し得るEGFR活性化変異などの例示的なEGFR変異には、チロシンキナーゼ活性の上昇、受容体ホモ二量体及びヘテロ二量体の形成、リガンド結合の強化などのEGFRの少なくとも1つの生物活性を増加させる点変異、欠失変異、挿入変異、逆位、又は遺伝子増幅が挙げられる。変異は、EGFR遺伝子又はEGFR遺伝子に関連する調節領域の任意の部分に位置する可能性があり、エクソン18、19、20、若しくは21における変異を含む。EGFR活性化変異の他の例は、当該技術分野において既知である(例えば、米国特許出願公開第2005/0272083号を参照されたい)。受容体ホモ及びヘテロ二量体、受容体リガンド、自己リン酸化部位、並びにErbBの媒介によるシグナル伝達に関与するシグナル伝達分子を含むEGFR及び他のErbB受容体に関する情報は、当該技術分野において既知である(例えば、Hynes and Lane,Nature Reviews Cancer 5:341-354,2005を参照されたい)。
【0118】
いくつかの実施形態では、EGFR変異は、E709K、L718Q、L718V、G719A、G719X、G724X、G724S、I744T、E746K、L747S、E749Q、A750P、A755V、V765M、C775Y、T790M、L792H、L792V、G796S、G796R、G796C、C797S、T854I、L858P、L858R、L861X、delE746-A750、delE746_T751InsKV、delE746_A750InsHS、delE746_T751InsFPT、delE746_T751InsL、delE746_S752InsIP、delE746_P753InsMS、delE746_T751InsA、delE746_T751InsAPT、delE746_T751InsVA、delE746_S752InsV、delE746_P753InsVS、delE746_K754InsGG、delE746_E749、delE746_E749InsP、delL747_E749、delL747_A750InsP、delL747_T751InsP、delL747_T751InsN、delL747_S752InsPT、delL747_P753InsNS、delL747_S752InsPI、delL747_S752、delL747_P753InsS、delL747_K754、delL747_T751InsS、delL747_T751、delL747_P753InsS、delA750_I759InsPT、delT751_I759InsT、delS752_I759、delT751_I759InsN、delT751_D761InsNLY、delS752_I759、delR748-P753、delL747-P753insS、delL747-T751、M766_A767InsA、S768_V769InsSVA、P772_H773InsNS、D761_E762InsX、A763_Y764InsX、Y764_Y765 InsX、M766_A767InsX、A767_V768 InsX、S768_V769 InsX、V769_D770 InsX、D770_N771 InsX、N771_P772 InsX、P772_H773 InsX、H773_V774 InsX、V774_C775 InsX、EGFRのエクソン20内の1つ又は2つ以上の欠失若しくはEGFRのエクソン20内の1つ又は2つ以上の挿入、EGFRのエクソン19内の1つ又は2つ以上の欠失又はEGFRのエクソン19内の1つ又は2つ以上の挿入、又はそれらの任意の組み合わせであり、Xは、天然に存在するアミノ酸のうちの任意のものを指し、アミノ酸1~7個の長さであってもよい。いくつかの実施形態では、EGFR変異は、L858Rである。変異の命名法は周知である。
【0119】
いくつかの実施形態では、EGFR変異は、エクソン19内の1つ又は2つ以上の欠失、若しくはL858R、又はこれらの任意の組み合わせである。例示的なエクソン19欠失は、delE746-A750、delE746_T751InsKV、delE746_A750InsHS、delE746_T751InsFPT、delE746_T751InsL、delE746_S752InsIP、delE746_P753InsMS、delE746_T751InsA、delE746_T751InsAPT、delE746_T751InsVA、delE746_S752InsV、delE746_P753InsVS、delE746_K754InsGG、delE746_E749、delE746_E749InsP、delL747_E749、delL747_A750InsP、delL747_T751InsP、delL747_T751InsN、delL747_S752InsPT、delL747_P753InsNS、delL747_S752InsPI、delL747_S752、delL747_P753InsS、delL747_K754、delL747_T751InsS、delL747_T751、delL747_P753InsS、delA750_I759InsPT、delT751_I759InsT、delS752_I759、delT751_I759InsN、delT751_D761InsNLY、delS752_I759、delR748-P753及びdelL747-P753insS、delL747-T751である。
【0120】
例示的なc-Met変異としては、チロシンキナーゼ活性の上昇、受容体ホモ二量体及びヘテロ二量体の形成、リガンド結合の強化などのc-Metタンパク質の少なくとも1つの生物活性を増加させる点変異、欠失変異、挿入変異、逆位、又は遺伝子増幅が挙げられる。変異は、c-Met遺伝子の任意の部分又はc-Metのキナーゼドメインにおける変異などの遺伝子に関連する制御領域に位置し得る。例示的なc-Met変異は、残基位置N375、V13、V923、R175、V136、L229、S323、R988、S1058/T1010、及びE168における変異、又はエクソン14スキッピング変異である。いくつかの実施形態では、c-Met変異は、c-Metのエクソン14スキッピング変異である。
【0121】
EGFR及びc-Metの変異又は遺伝子増幅を検出する方法は周知である。
【0122】
いくつかの実施形態では、対象は、EGFR/c-Met二重特異性抗体を含む療法を施す前にEGFR変異と診断されている。
【0123】
いくつかの実施形態では、対象は、新たに診断されたがんを有する。いくつかの実施形態では、対象は、新たに診断されたEGFR又はc-Met発現がんを有する。いくつかの実施形態では、対象は、新たに診断されたEGFR及びc-Met発現がんを有する。いくつかの実施形態では、対象は、新たに診断されたEGFR発現がんを有する。いくつかの実施形態では、対象は、新たに診断されたc-Met発現がんを有する。
【0124】
いくつかの実施形態では、新たに診断されたがんを有する対象は、1つ又は2つ以上のEGFRエクソン20変異を有する。いくつかの実施形態では、新たに診断されたEGFR又はc-Met発現がんを有する対象は、1つ又は2つ以上のEGFRエクソン20変異を有する。エクソン20変異(1つ又は2つ以上のアミノ酸の挿入は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)に対して一般的に抵抗性である(例えば、国際公開第2018/094225号を参照されたい)。例示的なエクソン20変異としては、M766_A767InsA、S768_V769InsSVA、P772_H773InsNS、D761_E762InsX、A763_Y764InsX、Y764_Y765 InsX、M766_A767InsX、A767_V768 InsX、S768_V769 InsX、V769_D770 InsX、D770_N771 InsX、N771_P772 InsX、P772_H773 InsX、H773_V774 InsX、及びV774_C775 InsXが挙げられ、Xは、1~7個のアミノ酸である。
【0125】
いくつかの実施形態では、対象は、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)治療未経験である。
【0126】
いくつかの実施形態では、対象は、第1世代EGFR TKIによる治療に対して抵抗性又は再発性である。
【0127】
いくつかの実施形態では、第1世代EGFR TKIは、エルロチニブ又はゲフィニブである。
【0128】
いくつかの実施形態では、対象は、第2世代EGFR TKIによる治療に対して抵抗性又は再発性である。
【0129】
いくつかの実施形態では、第2世代EGFR TKIは、アファチニブである。
【0130】
いくつかの実施形態では、対象は、第3世代EGFR TKIによる治療に対して抵抗性又は再発性である。
【0131】
いくつかの実施形態では、第3世代EGFR TKIは、オシメルチニブである。
【0132】
いくつかの実施形態では、対象は、以前の抗がん療法による治療に対して抵抗性であるか又は抵抗性を獲得している。
【0133】
いくつかの実施形態では、以前の抗がん療法は、化学療法、標的抗がん療法、又はキナーゼ阻害剤である。いくつかの実施形態では、以前の抗がん療法は、二重白金化学療法である。
【0134】
いくつかの実施形態では、TKIは、EGFR、c-Met、HER2、HER3、HER4、VEGFR、又はAXLの阻害剤である。
【0135】
いくつかの実施形態では、TKIは、モボセルチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ポジオチニブ、クリオチニブ、カボザンチニブ、カプマチニブ、アキシチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、レゴラフェニブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、又はスニチニブである。
【0136】
いくつかの実施形態では、対象は、EGFR阻害剤に対して耐性であるか又は耐性を獲得している。がんが抵抗性を獲得し得る例示的なEGFR阻害剤は、抗EGFR抗体であるセツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パンチヌムマブ(VECTIBIX(登録商標))、マツズマブ、ニモツズマブ、低分子EGFR阻害剤であるエルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、EKB-569(ペリチニブ、不可逆性EGFR TKI)、汎ErbB及び他の受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるラパチニブ(EGFR及びHER2阻害剤)、ペリチニブ(EGFR及びHER2阻害剤)、バンデタニブ(ZD6474、ZACTIMA(商標)、EGFR、VEGFR2、及びRET TKI)、PF00299804(ダコミチニブ、不可逆性汎ErbB TKI)、CI-1033(不可逆性汎erbB TKI)、アファチニブ(BIBW2992、不可逆性汎ErbB TKI)、AV-412(二重EGFR及びErbB2阻害剤)、EXEL-7647(EGFR、ErbB2、GEVGR、及びEphB4阻害剤)、CO-1686(不可逆性変異体選択的EGFR TKI)、AZD9291(不可逆性変異体選択的EGFR TKI)、並びにHKI-272(ネラチニブ、不可逆性EGFR/ErbB2阻害剤)である。
【0137】
抗EGFR/c-Met抗体
いくつかの実施形態では、抗EGFR/c-Met抗体は、二重特異性抗体である。ある特定の実施形態では、抗体は、単離された抗体である。特定の実施形態では、抗体は、単離された二重特異性抗体である。
【0138】
いくつかの実施形態では、抗体(例えば、二重特異性抗体)は、EGFRに特異的に結合する第1のドメインと、c-Metに特異的に結合する第2のドメインとを含む。
【0139】
EGFR結合アーム
いくつかの実施形態では、EGFRに特異的に結合する第1のドメインは、
a)それぞれ、配列番号1、2、及び3の、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、及びHCDR3のアミノ酸配列、及び/又は
b)それぞれ、配列番号4、5、及び6の、軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2及びLCDR3のアミノ酸配列、を含む。
【0140】
ある特定の実施形態では、EGFRに特異的に結合する第1のドメインは、
a)それぞれ、配列番号1、2、及び3の、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3のアミノ酸配列、及び
b)それぞれ、配列番号4、5、及び6の、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列、を含む。
【0141】
HCDR1:TYGMH(配列番号1)
【0142】
HCDR2:VIWDDGSYKYYGDSVKG(配列番号2)
【0143】
HCDR3:DGITMVRGVMKDYFDY(配列番号3)
【0144】
LCDR1:RASQDISSALV(配列番号4)
【0145】
LCDR2:DASSLES(配列番号5)
【0146】
LCDR3:QQFNSYPLT(配列番号6)
【0147】
いくつかの実施形態では、第1のドメインは、配列番号13と少なくとも90%同一である、例えば、配列番号13と約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である、重鎖可変領域(VH)アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、配列同一性は、約90~99.9%、90~99.8%、92~99.8%、92~99.6%、94~99.6%、94~99.5%、95~99.5%、95~99.4%、96~99.4%、96~99.2%、97~99.2%、又は97~99%である。特定の実施形態では、第1のドメインは、配列番号13のVHを含む。
【0148】
ある特定の実施形態では、第1のドメインは、配列番号14と少なくとも90%同一である、例えば、配列番号14と約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である、軽鎖可変領域(VL)アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、配列同一性は、約90~99.9%、90~99.8%、92~99.8%、92~99.6%、94~99.6%、94~99.5%、95~99.5%、95~99.4%、96~99.4%、96~99.2%、97~99.2%、又は97~99%である。特定の実施形態では、第1のドメインは、配列番号14のVLを含む。
【0149】
本明細書で使用される場合、「同一」又は「配列同一性を有する」という用語は、2つのアミノ酸配列が、同一性の最大レベルを達成するように配列を整列させた場合に、同じ位置に同じ残基を有する程度を指し、パーセンテージとして表される。配列のアライメント及び比較のために、典型的には1つの配列が、試験配列をそれに対して比較する参照配列として設計される。参照配列と試験配列との間の配列同一性は、最大レベルの同一性を達成するように参照配列及び試験配列を整列させた際に、参照配列及び試験配列が同じアミノ酸を共有する、参照配列の全長にわたる位置のパーセンテージとして表される。例として、2つの配列は、最大レベルの同一性を達成するように整列させた際に、試験配列が、参照配列の全長にわたって同じ位置の70%で同じアミノ酸残基を有する場合、70%の配列同一性を有するとみなされる。
【0150】
いくつかの実施形態では、第1のドメインは、
a)配列番号13と少なくとも90%同一であるVHアミノ酸配列、及び/又は
b)配列番号14と少なくとも90%同一であるVLアミノ酸配列、を含む。
【0151】
いくつかの実施形態では、第1のドメインは、
a)配列番号13と少なくとも90%同一であるVHアミノ酸配列、及び
b)配列番号14と少なくとも90%同一であるVLアミノ酸配列、を含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、第1のドメインは、
a)配列番号13のVH、及び/又は
b)配列番号14のVL、を含む。
【0153】
特定の実施形態では、第1のドメインは、
a)配列番号13のVH、及び
b)配列番号14のVL、を含む。
【0154】
VH:QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSTYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWDDGSYKYYGDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDGITMVRGVMKDYFDYWGQGTLVTVSS(配列番号13)
【0155】
VL:AIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISSALVWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSESGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQFNSYPLTFGGGTKVEIK(配列番号14)
【0156】
いくつかの実施形態では、第1のドメインは、配列番号17と少なくとも80%同一である、例えば、配列番号17と約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である、第1の重鎖(HC1)アミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、配列同一性は、約80~99.9%、80~99.8%、85~99.8%、85~99.6%、90~99.6%、90~99.5%、95~99.5%、95~99.4%、96~99.4%、96~99.2%、97~99.2%、又は97~99%である。特定の実施形態では、第1のドメインは、配列番号17のHC1アミノ酸配列を含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、第1のドメインは、配列番号18と少なくとも80%同一である、例えば、配列番号18と約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である、第1の軽鎖(LC1)アミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、配列同一性は、約80~99.9%、80~99.8%、85~99.8%、85~99.6%、90~99.6%、90~99.5%、95~99.5%、95~99.4%、96~99.4%、96~99.2%、97~99.2%、又は97~99%である。特定の実施形態では、第1のドメインは、配列番号18のLC1アミノ酸配列を含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、第1のドメインは、
a)配列番号17と少なくとも80%同一であるHC1アミノ酸配列、及び/又は
b)配列番号18と少なくとも80%同一であるLC1アミノ酸配列、を含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、第1のドメインは、
a)配列番号17と少なくとも80%同一であるHC1アミノ酸配列、及び
b)配列番号18と少なくとも80%同一であるLC1アミノ酸配列、を含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、第1のドメインは、
a)配列番号17のHC1、及び/又は
b)配列番号18のLC1、を含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、第1のドメインは、
a)配列番号17のHC1、及び
b)配列番号18のLC1、を含む。
【0162】
HC1:QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSTYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWDDGSYKYYGDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDGITMVRGVMKDYFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFLLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号17)
【0163】
LC1:AIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISSALVWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSESGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQFNSYPLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号18)
【0164】
c-Met結合アーム
ある特定の実施形態では、c-Metに特異的に結合する第2のドメインは、
a)それぞれ、配列番号7、8、及び9の、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3のアミノ酸配列、及び/又は
b)それぞれ、配列番号10、11、及び12の、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列、を含む。
【0165】
ある特定の実施形態では、c-Metに特異的に結合する第2のドメインは、
a)それぞれ、配列番号7、8、及び9の、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3のアミノ酸配列、及び
b)それぞれ、配列番号10、11、及び12の、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列、を含む。
【0166】
HCDR1:SYGIS(配列番号7)
【0167】
HCDR2:WISAYNGYTNYAQKLQG(配列番号8)
【0168】
HCDR3:DLRGTNYFDY(配列番号9)
【0169】
LCDR1:RASQGISNWLA(配列番号10)
【0170】
LCDR2:AASSLLS(配列番号11)
【0171】
LCDR3:QQANSFPIT(配列番号12)
【0172】
いくつかの実施形態では、第2のドメインは、配列番号15と少なくとも90%同一である、例えば、配列番号15と約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一であるVHアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、配列同一性は、約90~99.9%、90~99.8%、92~99.8%、92~99.6%、94~99.6%、94~99.5%、95~99.5%、95~99.4%、96~99.4%、96~99.2%、97~99.2%、又は97~99%である。特定の実施形態では、第2のドメインは、配列番号15のVHを含む。
【0173】
ある特定の実施形態では、第2のドメインは、配列番号16と少なくとも90%同一である、例えば、配列番号16と約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一であるVLアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、配列同一性は、約90~99.9%、90~99.8%、92~99.8%、92~99.6%、94~99.6%、94~99.5%、95~99.5%、95~99.4%、96~99.4%、96~99.2%、97~99.2%、又は97~99%である。特定の実施形態では、第2のドメインは、配列番号16のVLを含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、第2のドメインは、
a)配列番号15と少なくとも90%同一であるVHアミノ酸配列、及び/又は
b)配列番号16と少なくとも90%同一であるVLアミノ酸配列、を含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、第2のドメインは、
a)配列番号15と少なくとも90%同一であるVHアミノ酸配列、及び
b)配列番号16と少なくとも90%同一であるVLアミノ酸配列、を含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、第2のドメインは、
a)配列番号15のVH、及び/又は
b)配列番号16のVL、を含む。
【0177】
特定の実施形態では、第2のドメインは、
a)配列番号15のVH、及び
b)配列番号16のVL、を含む。
【0178】
VH:QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCETSGYTFTSYGISWVRQAPGHGLEWMGWISAYNGYTNYAQKLQGRVTMTTDTSTSTAYMELRSLRSDDTAVYYCARDLRGTNYFDYWGQGTLVTVSS(配列番号15)
【0179】
VL:DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCRASQGISNWLAWFQHKPGKAPKLLIYAASSLLSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQANSFPITFGQGTRLEIK(配列番号16)
【0180】
いくつかの実施形態では、第2のドメインは、配列番号19と少なくとも80%同一である、例えば、配列番号19と約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である、第2の重鎖(HC2)アミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、配列同一性は、約80~99.9%、80~99.8%、85~99.8%、85~99.6%、90~99.6%、90~99.5%、95~99.5%、95~99.4%、96~99.4%、96~99.2%、97~99.2%、又は97~99%である。特定の実施形態では、第2のドメインは、配列番号19のHC2アミノ酸配列を含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、第2のドメインは、配列番号20と少なくとも80%同一である、例えば、配列番号20と約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、又は99.9%同一である、第2の軽鎖(LC2)アミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、配列同一性は、約80~99.9%、80~99.8%、85~99.8%、85~99.6%、90~99.6%、90~99.5%、95~99.5%、95~99.4%、96~99.4%、96~99.2%、97~99.2%、又は97~99%である。特定の実施形態では、第2のドメインは、配列番号20のLC2アミノ酸配列を含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、第2のドメインは、
a)配列番号19と少なくとも80%同一であるHC2アミノ酸配列、及び/又は
b)配列番号20と少なくとも80%同一であるLC2アミノ酸配列、を含む。
【0183】
いくつかの実施形態では、第2のドメインは、
a)配列番号19と少なくとも80%同一であるHC2アミノ酸配列、及び
b)配列番号20と少なくとも80%同一であるLC2アミノ酸配列、を含む。
【0184】
いくつかの実施形態では、第2のドメインは、
a)配列番号19のHC2、及び/又は
b)配列番号20のLC2、を含む。
【0185】
いくつかの実施形態では、第2のドメインは、
a)配列番号19のHC2、及び
b)配列番号20のLC2、を含む。
【0186】
HC2:QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCETSGYTFTSYGISWVRQAPGHGLEWMGWISAYNGYTNYAQKLQGRVTMTTDTSTSTAYMELRSLRSDDTAVYYCARDLRGTNYFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号19)
【0187】
LC2:DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCRASQGISNWLAWFQHKPGKAPKLLIYAASSLLSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQANSFPITFGQGTRLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号20)
【0188】
いくつかの実施形態では、抗体(例えば、二重特異性抗体)は、
a)それぞれ、配列番号1、2、3、4、5、及び6のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列を含む、EGFRに特異的に結合する第1のドメイン、及び/又は
b)それぞれ、配列番号7、8、9、10、11及び12の、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列を含む、c-Metに特異的に結合する第2のドメイン、
を含む。
【0189】
ある特定の実施形態では、抗体(例えば、二重特異性抗体)は、
a)それぞれ、配列番号1、2、3、4、5、及び6のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列を含む、EGFRに特異的に結合する第1のドメインと、
b)それぞれ、配列番号7、8、9、10、11及び12の、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列を含む、c-Metに特異的に結合する第2のドメインと、
を含む。
【0190】
いくつかの実施形態では、抗体(例えば、二重特異性抗体)は、
a)配列番号13と少なくとも90%同一であるVHアミノ酸配列を含む第1のドメイン、
b)配列番号14と少なくとも90%同一であるVLアミノ酸配列を含む第1のドメイン、
c)配列番号15と少なくとも90%同一であるVHアミノ酸配列を含む第2のドメイン、及び/又は
d)配列番号16と少なくとも90%同一であるVLアミノ酸配列を含む第2のドメイン、を含む。
【0191】
ある特定の実施形態では、抗体(例えば、二重特異性抗体)は、
a)配列番号13と少なくとも90%同一であるVHアミノ酸配列を含む第1のドメイン、
b)配列番号14と少なくとも90%同一であるVLアミノ酸配列を含む第1のドメイン、
c)配列番号15と少なくとも90%同一であるVHアミノ酸配列を含む第2のドメイン、及び
d)配列番号16と少なくとも90%同一であるVLアミノ酸配列を含む第2のドメイン、を含む。
【0192】
いくつかの実施形態では、抗体(例えば、二重特異性抗体)は、
a)配列番号13のVHを含む第1のドメイン、
b)配列番号14のVLを含む第1のドメイン、
c)配列番号15のVHを含む第2のドメイン、及び/又は
d)配列番号16のVLを含む第2のドメイン、を含む。
【0193】
いくつかの実施形態では、抗体(例えば、二重特異性抗体)は、
a)配列番号13のVHを含む第1のドメイン、
b)配列番号14のVLを含む第1のドメイン、
c)配列番号15のVHを含む第2のドメイン、及び
d)配列番号16のVLを含む第2のドメイン、を含む。
【0194】
ある特定の実施形態では、抗体(例えば、二重特異性抗体)は、
a)配列番号17と少なくとも80%同一であるHC1アミノ酸配列、
b)配列番号18と少なくとも80%同一であるLC1アミノ酸配列、
c)配列番号19と少なくとも80%同一であるHC2アミノ酸配列、及び/又は
d)配列番号20と少なくとも80%同一であるLC2アミノ酸配列、を含む。
【0195】
ある特定の実施形態では、抗体(例えば、二重特異性抗体)は、
a)配列番号17と少なくとも80%同一であるHC1アミノ酸配列、
b)配列番号18と少なくとも80%同一であるLC1アミノ酸配列、
c)配列番号19と少なくとも80%同一であるHC2アミノ酸配列、及び
d)配列番号20と少なくとも80%同一であるLC2アミノ酸配列、を含む。
【0196】
ある特定の実施形態では、抗体(例えば、二重特異性抗体)は、
a)配列番号17のHC1、
b)配列番号18のLC1、
c)配列番号19のHC2、及び/又は
d)配列番号20のLC2、を含む。
【0197】
特定の実施形態では、抗体(例えば、二重特異性抗体)は、
a)配列番号17のHC1、
b)配列番号18のLC1、
c)配列番号19のHC2、及び
d)配列番号20のLC2、を含む。
【0198】
いくつかの実施形態では、抗体(例えば、二重特異性抗体)は、IgGアイソタイプのものである。ある特定の実施形態では、抗体(例えば、二重特異性抗体)は、IgG1アイソタイプのものである。IgG1定常ドメイン内にはいくらかのバリエーション(例えば、周知のアロタイプ)が存在し、例えば、214、356、358、422、431、435、及び/又は436位(EU付番に従った残基の付番)にバリエーションがある(例えば、IMGT Web resources;IMGT Repertoire(IG and TR);Proteins and alleles;allotypesを参照されたい)。二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、G1m17、G1m3、G1m1、G1m2、G1m27、又はG1m28などの任意のIgG1アロタイプであってもよい。
【0199】
いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト抗体である。
【0200】
特定の実施形態では、抗体は、アミバンタマブである。アミバンタマブ又はJNJ-61186372(JNJ-372)は、米国特許第9,593,164号に記載されているIgG1抗EGFR/c-Met二重特異性抗体である。
【0201】
他の抗EGFR/c-Met抗体(例えば、二重特異性抗体)もまた、例えば、公的に入手可能なEGFR結合VH/VLドメイン及びc-Met結合VH/VLドメインを組み合わせることによって、本開示の方法において使用され得る。
【0202】
いくつかの実施形態では、抗体(例えば、二重特異性抗体)は、約1%~約15%のフコース含量を有する二分岐グリカン構造を含む。
【0203】
低フコース含量を有する抗体は、次のような二分岐複合体型のFcオリゴ糖を有する比較的高度に脱フコシル化された抗体の発現を成功させることが報告されている様々な方法を使用して作製することができる:培養物の浸透圧の制御(Konno et al.,Cytotechnology 64(:249-65,2012)、宿主細胞株としてのバリアントCHO株Lec13の適用(Shields et al.,J Biol Chem 277:26733-26740,2002)、宿主細胞株としてのバリアントCHO株EB66の適用(Olivier et al.,MAbs;2(4),2010;印刷前に電子出版;PMID:20562582)、宿主細胞株としてのラットハイブリドーマ細胞株YB2/0の適用(Shinkawa et al.,J Biol Chem 278:3466-3473,2003)、α1,6-フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)遺伝子に対して特異的な低分子干渉RNAの導入(Mori et al.,Biotechnol Bioeng88:901-908,2004)、又はβ-1,4-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII及びゴルジα-マンノシダーゼII又は強力なアルファ-マンノシダーゼI阻害剤であるキフネンシンの共発現(Ferrara et al.,J Biol Chem281:5032-5036,2006、Ferrara et al.,Biotechnol Bioeng 93:851-861,2006;Zhou et al.,Biotechnol Bioeng 99:652-65,2008)。概して、抗体のグリカン中のフコース含量を低下させることにより、抗体媒介性細胞毒性(antibody-mediated cellular cytotoxicity、ADCC)が増強される。
【0204】
抗EGFR/c-Met抗体の生成
本開示の方法で使用される抗EGFR/c-Met抗体は、例えば、無細胞環境においてインビトロで又は共発現を使用して、異なる特異性を有する2つの抗体半分子のヘテロ二量体を形成しやすくなるように各半分子における重鎖CH3界面に置換を導入することによって、2つの単一特異性二価抗体間でのFabアーム交換(又は半分子交換)を使用して生成することができる。Fabアーム交換反応は、ジスルフィド結合異性化反応及びCH3ドメインの解離-会合の結果である。親単一特異性抗体のヒンジ領域における重鎖ジスルフィド結合は減少する。親単一特異性抗体のうちの1つの得られた遊離システインは、第2の親単一特異性抗体分子のシステイン残基と重鎖内ジスルフィド結合を形成し、同時に、親抗体のCH3ドメインは、解離-会合により放出され及び再形成する。FabアームのCH3ドメインは、ホモ二量体化よりもヘテロ二量体化に有利となるように操作され得る。得られる生成物は、各々異なるエピトープ、すなわち、EGFRにおけるエピトープ及びc-Metにおけるエピトープに結合する2つのFabアーム又は半分子を有する二重特異性抗体である。例えば、本発明の二重特異性抗体は、国際公開第2011/131746号に記載の技術を使用して生成することができる。IgG1抗体の場合、一方の重鎖における変異F405L及び他方の重鎖におけるK409Rを使用することができる。IgG2抗体では、F405L及びR409K置換を有する野生型IgG2及びIgG2抗体を使用してもよい。IgG4抗体では、F405L及びR409K置換を有する野生型IgG4及びIgG4抗体を使用してもよい。二重特異性抗体を生成するために、第1の単一特異性二価抗体及び第2の単一特異性二価抗体を、Fc領域に前述の変異を有するように操作し、ヒンジ領域でシステインがジスルフィド結合異性化を受けることができる十分な還元条件下で、抗体を一緒にインキュベートし、それにより、Fabアーム交換により二重特異性抗体が生成される。インキュベート条件は、最適には、非還元条件に戻され得る。使用され得る例示的な還元剤は、2-メルカプトエチルアミン(2-mercaptoethylamine、2-MEA)、ジチオスレイトール(dithiothreitol、DTT)、ジチオエリスリトール(dithioerythritol、DTE)、グルタチオン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(tris(2-carboxyethyl)phosphine、TCEP)、L-システイン、及びβ-メルカプトエタノールである。例えば、少なくとも20℃の温度で、少なくとも25mMの2-MEAの存在下又は少なくとも0.5mMのジチオスレイトールの存在下で、pH5~8、例えばpH7.0又はpH7.4で、少なくとも90分間のインキュベートを使用することができる。
【0205】
本開示の方法で使用される二重特異性抗EGFR/c-Met抗体は、ノブ-イン-ホール(Genentech)、CrossMAb(Roche)及び静電的適合(electrostatically-matched)(Chugai,Amgen,NovoNordisk,Oncomed)、LUZ-Y(Genentech)、Strand Exchange Engineered Domain body(SEEDbody)(EMD Serono)、及びBiclonic(Merus)などの設計を使用して生成することもできる。
【0206】
「ノブ-イン-ホール」手法(例えば、国際公開第2006/028936号を参照されたい)において、ヒトIgGのCH3ドメインの界面を形成する選択されたアミノ酸は、ヘテロ二量体形成を促進するために、CH3ドメイン相互作用に影響を及ぼす位置に変異を導入され得る。小さい側鎖を有するアミノ酸(ホール)が、第1の抗原に特異的に結合する抗体の重鎖内に導入され、大きな側鎖を有するアミノ酸(ノブ)が、第2の抗原に特異的に結合する抗体の重鎖内に導入される。2つの抗体の共発現後に、ヘテロ二量体が、「ホール」を有する重鎖と「ノブ」を有する重鎖との優先的な相互作用の結果として形成される。ノブ及びホールを形成する例示的なCH3置換ペアは、T366Y/F405A、T366W/F405W、F405W/Y407A、T394W/Y407T、T394S/Y407A、T366W/T394S、F405W/T394S、及びT366W/T366S_L368A_Y407Vである(第1の重鎖の第1のCH3ドメインにおける修飾位置/第2の重鎖の第2のCH3ドメインにおける修飾位置として表現される)。
【0207】
Fabアーム交換を促進するための「ノブ-イン-ホール」手法の利用に加えて、CrossMAb技術は、1つの半アームにCH1/CLドメイン交換を利用して、得られる二重特異性抗体の正しい軽鎖の対合を保証する(例えば、米国特許第8,242,247号を参照されたい)。
【0208】
他の交差手法を使用して、二重特異性抗体の重鎖と軽鎖の間又は重鎖内で、一方又は両方のアームにおいて、可変又は定常、又は両ドメインを交換することによって、本発明の完全長二重特異性抗体を生成してもよい。これらの交換としては、例えば、国際公開第2009/080254号、同第2009/080251号、同第2009/018386号、及び同第2009/080252号に記載されるVH-CH1とVL-CL、VHとVL、CH3とCL、及びCH3とCH1が挙げられる。
【0209】
他の手法、例えば、あるCH3表面における正に荷電した残基及び第2のCH3表面における負に荷電した残基を置換することによる静電的相互作用を使用する重鎖ヘテロ二量体化の促進が、米国特許出願公開第2010/0015133号、米国特許出願公開第2009/0182127号、米国特許出願公開第2010/028637号、又は米国特許出願公開第2011/0123532号に記載されるように使用されてもよい。他の手法では、ヘテロ二量体化は、米国特許出願公開第2012/0149876号又は米国特許出願公開第2013/0195849号に記載されているように、次の置換:L351Y_F405A_Y407V/T394W、T366I_K392M_T394W/F405A_Y407V、T366L_K392M_T394W/F405A_Y407V、L351Y_Y407A/T366A_K409F、L351Y_Y407A/T366V_K409F、Y407A/T366A_K409F、又はT350V_L351Y_F405A_Y407V/T350V_T366L_K392L_T394W(第1の重鎖の第1のCH3ドメインにおける修飾位置/第2の重鎖の第2のCH3ドメインにおける修飾位置として表す)により促進することができる。
【0210】
SEEDbody技術を利用して、本発明の二重特異性抗体を生成してもよい。SEEDbodyは、それらの定常ドメインにおいて、米国特許出願公開第20070287170号に記載されるように、ヘテロ二量体化を促進するためにIgA残基で置換された選択IgG残基を有する。
【0211】
変異は、典型的には、標準的な方法を使用して、抗体の定常ドメインなどの分子に対してDNAレベルで行われる。
【0212】
投与
抗EGFR/c-Met抗体(例えば、二重特異性抗体)は、医薬組成物において投与され得る。いくつかの実施形態において、本医薬組成物は、医薬的に許容される担体を更に含む。
【0213】
いくつかの実施形態では、抗EGFR/c-Met抗体(例えば、二重特異性抗体)を含む医薬組成物は、静脈内注入を介して投与される。
【0214】
いくつかの実施形態では、抗EGFR/c-Met抗体を含む医薬組成物は、皮下(SC)投与される。
【0215】
いくつかの実施形態では、抗体は、約700mg~約2,240mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、約700mg、約1,050mg、約1,400mg、約1,600mg、又は約2,240mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、約1,050mgの用量で投与される。ある特定の実施形態では、抗体は、約1,400mgの用量で投与される。特定の実施形態では、抗体は、約700mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、約1,600mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、約2,240mgの用量で投与される。
【0216】
いくつかの実施形態では、抗体は、約350mgの用量で投与される。
【0217】
いくつかの実施形態では、抗体は、約750mgの用量で投与される。
【0218】
いくつかの実施形態では、抗体は、約800mgの用量で投与される。
【0219】
いくつかの実施形態では、抗体は、約850mgの用量で投与される。
【0220】
いくつかの実施形態では、抗体は、約900mgの用量で投与される。
【0221】
いくつかの実施形態では、抗体は、約950mgの用量で投与される。
【0222】
いくつかの実施形態では、抗体は、約1,000mgの用量で投与される。
【0223】
いくつかの実施形態では、抗体は、約1,100mgの用量で投与される。
【0224】
いくつかの実施形態では、抗体は、約1,150mgの用量で投与される。
【0225】
いくつかの実施形態では、抗体は、約1,200mgの用量で投与される。
【0226】
いくつかの実施形態では、抗体は、約1,250mgの用量で投与される。
【0227】
いくつかの実施形態では、抗体は、約1,300mgの用量で投与される。
【0228】
いくつかの実施形態では、抗体は、約1,350mgの用量で投与される。
【0229】
いくつかの実施形態では、抗体は、約1,500mgの用量で投与される。
【0230】
いくつかの実施形態では、抗体は、約1,600mgの用量で投与される。
【0231】
いくつかの実施形態では、抗体は、約1,700mgの用量で投与される。
【0232】
いくつかの実施形態では、抗体は、約1,800mgの用量で投与される。
【0233】
いくつかの実施形態では、抗体は、約1,900mgの用量で投与される。
【0234】
いくつかの実施形態では、抗体は、約2,000mgの用量で投与される。
【0235】
いくつかの実施形態では、抗体は、約2,100mgの用量で投与される。
【0236】
いくつかの実施形態では、抗体は、約2,200mgの用量で投与される。
【0237】
いくつかの実施形態では、抗体は、約2,240mgの用量で投与される。
【0238】
いくつかの実施形態では、抗体は、約2,300mgの用量で投与される。
【0239】
ある特定の実施形態では、抗体は、体重80kg未満については1,050mg、及び体重80kg以上については1,400mgの用量で投与される。
【0240】
特定の実施形態では、抗体は、体重80kg未満については700mg、及び体重80kg以上については1,050mgの用量で投与される。
【0241】
ある特定の実施形態では、抗体は、体重80kg未満については1,600mg、及び体重80kg以上については2,240mgの用量で投与される。
【0242】
いくつかの実施形態では、抗体は、週2回投与される。
【0243】
ある特定の実施形態では、抗体は、週1回投与される。
【0244】
いくつかの実施形態では、抗体は、2週間毎に1回投与される。
【0245】
ある特定の実施形態では、抗体は、3週間毎に1回投与される。
【0246】
いくつかの実施形態では、抗体は、4週間毎に1回投与される。
【0247】
ある特定の実施形態では、抗体は、週1回又は2週間毎に1回投与される。特定の実施形態では、抗体は、最初の4週間は週1回、次いで2週間毎1回に投与される。
【0248】
いくつかの実施形態では、抗体は28日周期で投与される。
【0249】
いくつかの実施形態では、対象は80kg未満の体重を有し、抗体(例えば、アミバンタマブなどの二重特異性抗体)は、700mgの用量で、最初の4週間は週1回、次いで2週間毎に1回、28日周期で投与される。他の実施形態では、対象は、80kg未満の体重を有し、抗体(例えば、アミバンタマブなどの二重特異性抗体)は、1,050mgの用量で、最初の4週間は週1回、次いで2週間毎に1回、28日周期で投与される。他の実施形態では、対象は80kg未満の体重を有し、抗体(例えば、アミバンタマブなどの二重特異性抗体)は、1,600mgの用量で、最初の4週間は週1回、次いで2週間毎に1回、28日周期で投与される。
【0250】
ある特定の実施形態では、対象は80kg以上の体重を有し、抗体(例えば、アミバンタマブなどの二重特異性抗体)は、1,050mgの用量で、最初の4週間は週1回、次いで2週間毎に1回、28日周期で投与される。他の実施形態では、対象は80kg以上の体重を有し、抗体(例えば、アミバンタマブなどの二重特異性抗体)は、1,400mgの用量で、最初の4週間は週1回、次いで2週間毎に1回、28日周期で投与される。他の実施形態では、対象は80kg以上の体重を有し、抗体(例えば、アミバンタマブなどの二重特異性抗体)は、2,240mgの用量で、最初の4週間は週1回、次いで2週間毎に1回、28日周期で投与される。
【0251】
1,400mg、1,050mg、及び700mg用量の抗EGFR/c-Met抗体を含む医薬組成物は、単回用量バイアル中の350mg/7mL(50mg/mL)溶液を用いて、それぞれ、約28mL、21mL及び14mLの総体積で投与することができる。
【0252】
アミバンタマブに関する追加の情報は、例えば、RYBREVANT(登録商標)の製品添付文書の処方情報(amivantamab-vmjw)(www.janssenlabels.com/package-insert/product-monograph/prescribing-information/RYBREVANT-pi.pdf)に見出すことができ、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0253】
いくつかの実施形態では、抗体は、単剤療法として投与される。
【0254】
追加の治療剤
一態様では、本開示は、抗上皮成長因子受容体(EGFR)/肝細胞成長因子受容体(c-Met)抗体を含む併用処置で処置された対象における注入関連反応(IRR)の発生又は重症度を低減する方法であって、メトトレキサート、モンテルカスト、又はデキサメタゾンのうちの1つ又は2つ以上を投与することを含む、方法、を提供する。
【0255】
いくつかの実施形態では、EGFR/c-Met二重特異性抗体を含む併用処置は、1つ又は2つ以上の化学療法剤、チェックポイント阻害剤、標的化抗がん療法若しくはキナーゼ阻害剤、又はそれらの任意の組み合わせを含む1つ又は2つ以上の抗がん療法も含む。
【0256】
いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、EGFRの阻害剤、c-Metの阻害剤、HER2の阻害剤、HER3の阻害剤、HER4の阻害剤、VEGFRの阻害剤、又はAXLの阻害剤である。
【0257】
いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ラゼルチニブ、モボセルチニブ、ポジオチニブ、クリオチニブ、カボザンチニブ、カプマチニブ、アキシチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、レゴラフェニブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、又はスニチニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、ラゼルチニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、オシメルチニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、モボセルチニブである。
【0258】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の以前の抗がん療法は、カルボプラチン、パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、ビノレルビン、ドセタキセル、パルボシクリブ、クリゾチニブ、PD-(L)1軸阻害剤、EGFRの阻害剤、c-Metの阻害剤、HER2の阻害剤、HER3の阻害剤、HER4の阻害剤、VEGFRの阻害剤、AXLの阻害剤、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ラゼルチニブ、モボセルチニブ、ポジオチニブ、クリオチニブ、カボザンチニブ、カプマチニブ、アキシチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、レゴラフェニブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、若しくはスニチニブ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0259】
ラゼルチニブは、第三世代EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)であり、ラゼルチニブの構造及び合成は、米国特許第9,593,098号に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書の式(I)で表されるラゼルチニブ遊離塩基の化学名は、N-(5-(4-(4-((ジメチルアミノ)メチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-1-イル)ピリミジン-2-イルアミノ)-4-メトキシ-2-モルホリノフェニル)アクリルアミド(本明細書ではラゼルチニブと称される)である。ラゼルチニブのメシル酸塩は、式IIで表され得る。
【0260】
【0261】
ラゼルチニブ(例えば、塩及び結晶形態)の実施形態は、国際出願PCT/KR2018/004473号に記載されており、これもまた、参照により本明細書に組み込まれる。
【0262】
特定の実施形態によると、遊離塩基の形態のラゼルチニブは、野生型EGFRに対してほとんど又は全く効果がなく、T790Mの単一変異及び二重変異に対して強い阻害活性を有する高度に選択的かつ不可逆的なEGFR TKIであり、例えば、活性化EGFR変異del19及びL858R、並びにT790M変異を標的とする。本発明の一態様では、変異は、delE746-A750、L858R、又はT790Mであってもよく、delE746-A750/T790M又はL858R/T790Mから選択される二重変異であってもよい。
【0263】
本開示の実施形態は、がんを有する対象を処置する方法であって、対象に併用療法を施すことを含み、この併用療法は、治療有効量の単離二重特異性抗上皮成長因子受容体(EGFR)/肝細胞成長因子受容体(c-Met)抗体と、治療有効量の式(I):
【0264】
【化2】
の化合物、又はその溶媒和物、水和物、互変異性体、若しくは医薬的に許容される塩と、を含む、方法、を提供する。
【0265】
本開示の実施形態は、薬剤として使用するための、特に対象において薬剤として使用するための、治療有効量の単離二重特異性抗上皮成長因子受容体(EGFR)/肝細胞成長因子受容体(c-Met)抗体と、治療有効量の式(I)の化合物、又はその溶媒和物、水和物、互変異性体、若しくは医薬的に許容される塩と、を含む医薬組み合わせを提供する。
【0266】
各実施形態では、二重特異性抗EGFR/c-Met抗体及びラゼルチニブ化合物、又はその溶媒和物、水和物、互変異性体、若しくは医薬的に許容される塩は、本明細書に記載されるように、同時に(例えば、同じ医薬組成物の一部として又は別個の医薬組成物において)、又は異なる時間に投与されてもよい。
【0267】
医薬的に許容される塩形態としては、医薬的に許容される酸性/アニオン性又は塩基性/カチオン性の塩が挙げられる。医薬的に許容される酸性/アニオン性塩としては、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、酒石酸水素塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレソルシン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ムコ酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩及びトリエチオジド塩が挙げられる。医薬的に許容される塩基性/カチオン性塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ジエタノールアミン、N-メチル-D-グルカミン、L-リジン、L-アルギニン、アンモニウム、エタノールアミン、ピペラジン及びトリエタノールアミン塩が挙げられる。
【0268】
医薬的に許容される酸性塩は、式(I)の化合物の遊離塩基形態と、臭化水素酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、コハク酸、マレイン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸塩、乳酸、安息香酸塩、サリチル酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、例えば2-ナフタレンスルホン酸、又はヘキサン酸が挙げられるが、これらに限定されない、好適な無機又は有機酸との反応によって形成される。式(I)の化合物の医薬的に許容される酸付加塩は、例えば、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩(例えば、2-ナフタレンスルホン酸塩)、又はヘキサン酸塩を含んでよく、又はこれらであってもよい。
【0269】
式(I)の化合物の遊離酸又は遊離塩基形態は、それぞれ、対応する塩基付加塩又は酸付加塩形態から調製することができる。例えば、酸付加塩形態の本発明の化合物は、好適な塩基(例えば、水酸化アンモニウム溶液、水酸化ナトリウムなど)で処理することによって、対応する遊離塩基形態に変換することができる。塩基付加塩形態の本発明の化合物は、好適な酸(例えば、塩酸など)で処理することによって、対応する遊離酸に変換することができる。
【0270】
ある特定の実施形態では、本方法は、対象に、1つ又は2つ以上の追加的治療剤を投与することを更に含む。1つ又は2つ以上の追加の治療剤の非限定的な例としては、キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor、CAR)を発現するT細胞(CAR-T細胞)、CARを発現するナチュラルキラー細胞(CAR-NK細胞)、CARを発現するマクロファージ(CAR-M細胞)、化学療法剤、免疫チェックポイント阻害剤、T細胞リダイレクタ、放射線療法、外科手術、及び標準治療薬が挙げられる。ある特定実施形態では、1つ又は2つ以上の追加的治療剤は、化学療法、放射線療法、手術、標的抗がん療法、キナーゼ阻害剤、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0271】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の追加の治療剤は、1つ又は2つ以上の抗がん療法である。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の追加の治療剤は、1つ又は2つ以上の化学療法剤を含む。
【0272】
併用療法における使用のために考慮される化学療法剤の非網羅的リストとしては、アナストロゾール(アリミデックス(登録商標))、ビカルタミド(カソデックス(登録商標))、ブレオマイシン硫酸塩(ブレノキサン(登録商標))、ブスルファン(ミレラン(登録商標))、ロイコボリンカルシウム、メルファラン(アルケラン(登録商標))、6-メルカプトプリン(プリントール(登録商標))、メトトレキサート(Folex(登録商標))、ミトキサントロン(ノバントロン(登録商標))、ミロターグ、パクリタキセル(タキソール(登録商標))、フェニックス(イットリウム90/MX-DTPA)、ペントスタチン、カルムスチンインプラント(グリアデル(登録商標))を伴うポリフェプロサン20、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD、コスメゲン)、ダウノルビシン塩酸塩(セルビジン(登録商標))、ダウノルビシンクエン酸塩リポソーム注射液(ダウノキソム(登録商標))、デキサメタゾン、ドセタキセル(タキソテール(登録商標))、ドキソルビシン塩酸塩(アドリアマイシン(登録商標)、ルベックス(登録商標))、エトポシド(ベペシド(登録商標))、ブスルファン注射液(ブスルフェクス(登録商標))、カペシタビン(ゼローダ(登録商標))、N4-ペントキシカルボニル-5-デオキシ-5-フルオロシチジン、カルボプラチン(パラプラチン(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、クロラムブシル(ロイケラン(登録商標))、シスプラチン(プラチノール(登録商標))、クラドリビン(ロイスタチン(登録商標))、シクロホスファミド(シトキサン(登録商標)又はネオサール(登録商標))、シタラビン、シトシンアラビノシド(シトサール-U(登録商標))、シタラビンリポソーム注射液(DepoCyt(登録商標))、ダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標))、フルダラビンホスフェート(フルダラ(登録商標))、5-フルオロウラシル(アドルシル(登録商標)、Efudex(登録商標))、フルタミド(ユーレキシン(登録商標))、テザシチビン、ゲムシタビン(ジフルオロデオキシシチジン)、ヒドロキシ尿素(ハイドレア(登録商標))、イダルビシン(イダマイシン(登録商標))、イホスファミド(IFEX(登録商標))、イリノテカン(カンプトサール(登録商標))、L-アスパラギナーゼ(ELSPAR(登録商標))、タモキシフェンクエン酸塩(ノルバデックス(登録商標))、テニポシド(ブモン(登録商標))、6-チオグアニン、チオテパ、チラパザミン(チラゾン(登録商標))、注射用トポテカン塩酸塩(ハイカムチン(登録商標))、ビンブラスチン(ベルバン(登録商標))、ビンクリスチン(オンコビン(登録商標))、及びビノレルビン(ナベルビン(登録商標))が挙げられる。
【0273】
アルキル化剤の例としては、限定されないが、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホネート、ニトロソ尿素及びトリアゼン)、ウラシルマスタード(アミノウラシルマスタード(登録商標)、Chlorethaminacil(登録商標)、ヘマンタミン(登録商標)、ノルドパン(登録商標)、ウラシルナイトロジェンマスタード(登録商標)、Uracillost(登録商標)、Uracilmostaza(登録商標)、Uramustin(登録商標)、Uramustine(登録商標))、クロルメチン(ムスタルゲン(登録商標))、シクロホスファミド(シトキサン(登録商標)、ネオサール(登録商標)、クラフェン(登録商標)、エンドキサン(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(商標))、イホスファミド(Mitoxana(登録商標))、メルファラン(アルケラン(登録商標))、クロラムブシル(ロイケラン(登録商標))、ピポブロマン(アメデル(登録商標)、ベルシテ(登録商標))、トリエチレンメラミン(へメル(登録商標)、へキシレン(登録商標)、ヘキサスタット(登録商標))、デメチルドパン(登録商標)、デスメチルドパン(登録商標)、トリエチレンチオホスホラミン、テモゾロミド(テモダール(登録商標))、チオテパ(Thioplex(登録商標))、ブスルファン(ブシルベックス(登録商標)、マイレラン(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、ロムスチン(CeeNU(登録商標))、ストレプトゾシン(ザノサール(登録商標))、及びダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標))が挙げられる。アルキル化剤の更なる例としては、限定されないが、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標));メルファラン(L-PAM、L-サルコリシン、及びフェニルアラニンマスタード、Alkeran(登録商標)としても知られている);アルトレタミン(ヘキサメチルメラミン(HMM)、Hexylen(登録商標)としても知られている);カルムスチン(BiCNU(登録商標));ベンダムスチン(トレアンダ(登録商標));ブスルファン(ブスルフェクス(登録商標)及びマイレラン(登録商標));カルボプラチン(パラプラチン(登録商標));テモゾロミド(Temodar(登録商標)及びTemodal(登録商標));ダクチノマイシン(アクチノマイシン-D、コスメゲン(登録商標)としても知られている);ロムスチン(CCNU、CeeNU(登録商標)としても知られている);シスプラチン(CDDP、プラチノール(登録商標)及びプラチノール(登録商標)-AQとしても知られている);クロラムブシル(ロイケラン(登録商標));シクロホスファミド(シトキサン(登録商標)及びネオサール(登録商標));ダカルバジン(DTIC、DIC、及びイミダゾールカルボキサミド、DTIC-Dome(登録商標)としても知られている);アルトレタミン(ヘキサメチルメラミン(HMM)、Hexylen(登録商標)としても知られている);イホスファミド(Ifex(登録商標));プレドヌムスチン;プロカルバジン(Matulane(登録商標));メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード、ムスチン、及びメクロレタミン塩酸塩ムスタルゲン(登録商標)としても知られている);ストレプトゾシン(ザノサール(登録商標));チオテパ(チオホスホアミド、TESPA、及びTSPA、チオプレックス(登録商標)としても知られている)、シクロホスファミド(エンドキサン(登録商標)、シトキサン(登録商標)、ネオサール(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(登録商標));及びベンダムスチンHCl(Treanda(登録商標))が挙げられる。
【0274】
いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の追加的治療剤は、キナーゼ阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、EGFRの阻害剤、c-Metの阻害剤、HER2の阻害剤、HER3の阻害剤、HER4の阻害剤、VEGFRの阻害剤、AXLの阻害剤、又はそれらの組み合わせを含む。ある特定の実施形態では、キナーゼ阻害剤は、EGFRの阻害剤である。特定の実施形態では、キナーゼ阻害剤は、c-Metの阻害剤である。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、HER2の阻害剤である。ある特定の実施形態では、キナーゼ阻害剤は、HER3の阻害剤である。特定の実施形態では、キナーゼ阻害剤は、HER4の阻害剤である。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、VEGFRの阻害剤である。ある特定の実施形態では、キナーゼ阻害剤は、AXLの阻害剤である。
【0275】
いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ラゼルチニブ、モボセルチニブ、ポジオチニブ、クリオチニブ、カボザンチニブ、カプマチニブ、アキシチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、レゴラフェニブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、又はそれらの組み合わせを含む。ある特定の実施形態では、キナーゼ阻害剤は、エルロチニブである。特定の実施形態では、キナーゼ阻害剤は、ゲフィチニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、ラパチニブである。ある特定の実施形態では、キナーゼ阻害剤は、バンデタニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、アファチニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、オシメルチニブである。ある特定の実施形態では、キナーゼ阻害剤は、ラゼルチニブである。特定の実施形態では、キナーゼ阻害剤は、ポジオチニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、クリオチニブである。ある特定の実施形態では、キナーゼ阻害剤は、カボザンチニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、カプマチニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、アキシチニブである。ある特定の実施形態では、キナーゼ阻害剤は、レンバチニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、ニンテダニブである。特定の実施形態では、キナーゼ阻害剤は、レゴラフェニブである。ある特定の実施形態では、キナーゼ阻害剤は、パゾパニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、ソラフェニブである。特定の実施形態では、キナーゼ阻害剤は、スニチニブである。いくつかの実施形態では、キナーゼ阻害剤は、モボセルチニブである。
【0276】
ある特定の実施形態では、1つ又は2つ以上の以前の抗がん療法は、カルボプラチン、パクリタキセル、ゲムシタビン、シスプラチン、ビノレルビン、ドセタキセル、パルボシクリブ、クリゾチニブ、PD-(L)1軸阻害剤、EGFRの阻害剤、c-Metの阻害剤、HER2の阻害剤、HER3の阻害剤、HER4の阻害剤、VEGFRの阻害剤、AXLの阻害剤、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、アファチニブ、オシメルチニブ、ラゼルチニブ、モボセルチニブ、ポジオチニブ、クリオチニブ、カボザンチニブ、カプマチニブ、アキシチニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、レゴラフェニブ、パゾパニブ、ソラフェニブ、若しくはスニチニブ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0277】
本開示の方法において抗EGFR/c-Met抗体(例えば、二重特異性抗体)と組み合わせて投与され得る抗がん療法としては、化学療法薬又は当業者に既知の他の抗がん治療薬のうちの任意の1つ又は2つ以上が挙げられる。化学療法剤は、がんの治療に有用な化学化合物であり、成長阻害剤又は他の細胞毒性剤を含み、アルキル化剤、抗代謝剤、抗微小管阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、受容体チロシンキナーゼ阻害剤、血管新生阻害剤などが挙げられる。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えばチオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標));アルキルスルホネート、例えばブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ、及びウレドパ;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチロールメラミンを含むエチレンイミン及びメチラメラミン(methylamelamine);ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えばアクラシノマイシン(aclacinomysin)、アクチノマイシン、アウトラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗物質、例えばメトトレキサート及び5-FU;葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリン類似体、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなど;アンドロゲン、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充剤(folic acid replenisher)、例えばフォリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジクオン;エルフォルニチン(elfornithine);エリプチニウムアセテート(elliptinium acetate);エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン(triaziquone);2,2′,2″-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド又はタキサンファミリーのメンバー、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標)ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標))及びその類似体;クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11、トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、スニチニブ(SUTENT(登録商標))、パゾパニブ(VOTRIENT(商標))、トセラニブ(PALLADIA(商標))、バンデタニブ(ZACTIMA(商標))、セジラニブ(RECENTIN(登録商標))、レゴラフェニブ(BAY73-4506)、アキシチニブ(AG013736)、レスタウルチニブ(CEP-701)、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(商標))、アファチニブ(BIBW 2992)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標))、ネラチニブ(HKI-272)などを含む受容体チロシンキナーゼの阻害剤及び/若しくは血管新生の阻害剤、並びに上述のいずれかの医薬的に許容される塩、酸、又は誘導体が挙げられる。腫瘍に対するホルモン作用を制御又は阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン、LY 117018、オナプリストン、及びトレミフェン(FARESTON(登録商標))を含む抗エストロゲン薬;並びに抗アンドロゲン薬、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリン;並びに上述のいずれかの医薬的に許容される塩、酸又は誘導体もまた、この定義に含まれる。Wiemann et al.,1985,Medical Oncology(Calabresi et al,eds.),Chapter 10,McMillan Publishingに開示されている他の従来の細胞毒性化合物も、本発明の方法に適用可能である。
【0278】
いくつかの実施形態では、抗EGFR/c-Met抗体(例えば、二重特異性抗体)及び1つ又は2つ以上の追加の治療剤(例えば、化学療法剤)は、同時に投与される。他の実施形態では、抗体及び1つ又は2つ以上の追加の治療剤は、別々に(例えば、逐次的に)投与される。
【0279】
併用療法の場合、1つ又は2つ以上の抗がん剤は、抗がん剤の推奨用量及び投与量を使用して投与され得る。
【0280】
対象
用語「対象」及び「患者」は、本明細書では互換的に使用することができる。「(それ)を必要としている患者」又は「(それ)を必要としている対象」とは、本発明の方法に従って、二重特異性抗EGFR抗MET抗体が投与される又は投与された、疾患を有すると診断された又は有すると疑われる哺乳類対象、好ましくはヒトを指す。「(それ)を必要としている患者」又は「(それ)を必要としている対象」は、望ましくない生理学的変化又は疾患を既に有している対象、並びに生理学的変化又は疾患を有しやすい傾向のある対象を含む。
【0281】
いくつかの実施形態では、対象は、18歳以上、例えば、18~40歳未満、18~45歳未満、18~50歳未満、18~55歳未満、18~60歳未満、18~65歳未満、18~70歳未満、18~75歳未満、40~75歳未満、45~75歳未満、50~75歳未満、55~75歳未満、60~75歳未満、65~75歳未満、60~75歳未満、40歳以上、45歳以上、50歳以上、55歳以上、60歳以上、60歳以上、65歳以上、70歳以上、又は75歳以上である。
【0282】
いくつかの実施形態では、対象は子どもである。いくつかの実施形態では、対象は、18歳以下、例えば、0~18歳、0~12歳、0~16歳、0~17歳、2~12歳、2~16歳、2~17歳、2~18歳、3~12歳、3~16歳、3~17歳、3~18歳、4~12歳、4~16歳、4~17歳、4~18歳、6~12歳、6~16歳、6~17歳、6~18歳、9~12歳、9~16歳、9~17歳、9~18歳、12~16歳、12~17歳、又は12~18歳である。
【0283】
いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも約1ヶ月、例えば少なくとも約2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、1年、18ヶ月、2年、30ヶ月、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年又は10年にわたって、CRC(例えば、mCRC)と診断されている。特定の実施形態では、対象は、新たにCRC(例えば、mCRC)と診断される。いくつかの実施形態では、CRCは、腺がんである。
【0284】
ある特定の実施形態では、対象は、治療未経験である。
【0285】
いくつかの実施形態では、対象は、以前に1つ又は2つ以上の抗がん療法を受けたことがある。ある特定の実施形態では、以前の1つ又は2つ以上の抗がん療法は、1つ又は2つ以上の、化学療法剤、チェックポイント阻害剤、標的抗がん療法若しくはキナーゼ阻害剤、又はそれらの任意の組み合わせを含む。特定の実施形態では、対象は、以前の1つ又は2つ以上の抗がん療法による治療に対して再発性又は抵抗性である。
【0286】
いくつかの実施形態では、対象は、EGFR阻害剤に対して耐性であるか又は耐性を獲得している。がんが抵抗性を獲得し得る例示的なEGFR阻害剤は、抗EGFR抗体であるセツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パンチヌムマブ(VECTIBIX(登録商標))、マツズマブ、ニモツズマブ、低分子EGFR阻害剤であるエルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、EKB-569(ペリチニブ、不可逆性EGFR TKI)、汎ErbB及び他の受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるラパチニブ(EGFR及びHER2阻害剤)、ペリチニブ(EGFR及びHER2阻害剤)、バンデタニブ(ZD6474、ZACTIMA(商標)、EGFR、VEGFR2、及びRET TKI)、PF00299804(ダコミチニブ、不可逆性汎ErbB TKI)、CI-1033(不可逆性汎erbB TKI)、アファチニブ(BIBW2992、不可逆性汎ErbB TKI)、AV-412(二重EGFR及びErbB2阻害剤)、EXEL-7647(EGFR、ErbB2、GEVGR、及びEphB4阻害剤)、CO-1686(不可逆性変異体選択的EGFR TKI)、AZD9291(不可逆性変異体選択的EGFR TKI)、並びにHKI-272(ネラチニブ、不可逆性EGFR/ErbB2阻害剤)である。
【0287】
様々な定性的及び/又は定量的な方法を使用して、対象が抗がん療法による治療に対して耐性であるかどうか、耐性を発現しているかどうか、又は耐性を発現しやすいかどうかを判定することができる。抗がん療法に対する耐性に関連し得る症状としては、患者の健康の低下若しくは定常状態、腫瘍サイズの増大、腫瘍の成長の低減の停止若しくは減速、及び/又は1つの位置から他の器官、組織、若しくは細胞への体内におけるがん性細胞の拡散が挙げられる。食欲低下、認知障害、うつ病、呼吸困難、倦怠感、ホルモン撹乱、好中球減少、疼痛、末梢神経障害、及び性機能不全などのがんに関連する様々な症状の再確立又は悪化も、対象が抗がん療法に対する耐性を発現しているか又は発現しやすいことの指標となり得る。がんに関連する症状は、がんのタイプに応じて異なり得る。例えば、子宮頸部がんに関連する症状としては、異常出血、異常な激しい膣分泌物、通常の月経周期に関連しない骨盤痛、膀胱痛又は排尿中の疼痛、及び定期的な月経期間の間、性交、膣洗浄、又は内診後の出血を挙げることができる。肺がんに関連する症状としては、しつこい咳、喀血、息切れ、ぜーぜーする胸痛、食欲減退、意図しない体重減少、及び倦怠感を挙げることができる。肝臓がんの症状としては、食欲及び体重の減少、特に背部及び肩部に及び得る腹部の右上部分における腹痛、悪心及び嘔吐、全身の衰弱及び倦怠感、肝肥大、腹部膨潤(腹水)、並びに皮膚及び白眼の黄変(黄疸)を挙げることができる。腫瘍学の当業者であれば、特定のタイプのがんに関連する症状を容易に特定することができる。
【0288】
例示的なPD-(L)1軸阻害剤は、ニボルマブ(OPDIVO(登録商標))、ペンブロリムマブ(KEYTRUDA(登録商標))、シンチリマブ、セミプリマブ(LIBTAYO(登録商標))、トリポリバマブ、チスレリズマブ、スパルタリズマブ、カムレリズマブ、ドストラリマブ、ゲノリムズマブ、若しくはセトレリマブなどのPD-1に結合する抗体、又はPD-L1に結合する抗体であり、例えば、PD-L1抗体は、エンバホリマブ、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(登録商標))、デュルバルマブ(IMFINZI(登録商標))、及びアベルマブ(BAVENCIO(登録商標))である。
【0289】
市販の抗体は、認可された販売業者又は薬局を介して購入することができる。低分子のアミノ酸配列構造は、CASレジストリの企業によるUSAN及び/又はINN寄託から見出すことができる。
【0290】
前投薬
いくつかの実施形態では、EGFR/c-Met抗体を含む併用処置は、1つ又は2つ以上の前投薬も含む。いくつかの実施形態では、前投薬は、抗ヒスタミン薬、解熱薬、又はグルココルチコイドを含む。いくつかの実施形態では、前投薬は抗ヒスタミン薬を含む。いくつかの実施形態では、前投薬は解熱薬を含む。いくつかの実施形態では、前投薬はグルココルチコイドを含む。いくつかの実施形態では、1つ又は2つ以上の前投薬は、表1に記載されるように投与される。
【0291】
【表1】
*全ての用量で必要であった。
‡初期用量で必要であった(1週目、1日目及び2日目);その後の用量については任意選択である。
【0292】
実施形態
1.抗上皮成長因子受容体(EGFR)/肝細胞成長因子受容体(c-Met)抗体で処置された対象における注入関連反応(IRR)の発生又は重症度を低減する方法であって、
a)デキサメタゾン
b)モンテルカスト、又は
c)メトトレキサート、
を対象に投与することを含む、方法。
2.抗体が、
a)それぞれ、配列番号1、2、3、4、5、及び6の、重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、HCDR2、HCDR3、軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列を含む、EGFRに特異的に結合する第1のドメインと、
b)それぞれ、配列番号7、8、9、10、11及び12の、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のアミノ酸配列を含む、c-Metに特異的に結合する第2のドメインと、
を含む、実施形態1に記載の方法。
3.第1のドメインが、配列番号13の重鎖可変領域(VH)と配列番号14の軽鎖可変領域(VL)とを含み、第2のドメインが、配列番号15のVHと配列番号16のVLとを含む、実施形態2に記載の方法。
4.抗体が、IgG1アイソタイプのものである、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
5.抗体が、配列番号17の第1の重鎖(HC1)、配列番号18の第1の軽鎖(LC1)、配列番号19の第2の重鎖(HC2)、及び配列番号20の第2の軽鎖(LC2)を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
6.抗体が、単離された二重特異性抗体である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
7.二重特異性抗体が、アミバンタマブである、実施形態6に記載の方法。
8.抗体が、約1%~約15%のフコース含量を有する二分岐グリカン構造を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
9.抗体が、約700mg~約2,240mgの用量で投与される、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
10.抗体が、約700mg、約1,050mg、約1,400mg、約1,600mg、又は約2,240mgの用量で投与される、実施形態9に記載の方法。
11.抗体が、約1,400mgの用量で投与される、実施形態10に記載の方法。
12.抗体が、約1,050mgの用量で投与される、実施形態10に記載の方法。
13.抗体が、約700mgの用量で投与される、実施形態10に記載の方法。
13a.抗体が、約1,600mgの用量で投与される、実施形態10に記載の方法。
13b.抗体が、約2,240mgの用量で投与される、実施形態10に記載の方法。
14.抗体が、週1回又は2週間毎に1回投与される、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
15.抗体が、最初の4週間は週1回、次いで2週間毎に1回投与される、実施形態14に記載の方法。
16.抗体が、28日周期で投与される、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
17.抗体が、単剤療法として投与される、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
18.抗EGFR/c-Met抗体で処置された対象が、1つ又は2つ以上の化学療法剤を更に投与される、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
19.1つ又は2つ以上の化学療法剤が、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)を含む、実施形態18に記載の方法。
20.1つ又は2つ以上の化学療法剤が、ラゼルチニブ、オシメルチニブ、カプマチニブ、又はモボセルチニブを含む、実施形態18に記載の方法。
20a.1つ又は2つ以上の化学療法剤が、ラゼルチニブを含む、実施形態20に記載の方法。
20b.ラゼルチニブが、240mgの用量で投与される、実施形態20に記載の方法。
20c.1つ又は2つ以上の化学療法剤が、オシメルチニブを含む、実施形態20に記載の方法。
20d.1つ又は2つ以上の化学療法剤が、モボセルチニブを含む、実施形態20に記載の方法。
20e.1つ又は2つ以上の化学療法剤が、カプマチニブを含む、実施形態20に記載の方法。
21.がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)、上皮細胞がん、乳がん、卵巣がん、肺がん、肺扁平上皮がん、肺腺がん、小細胞肺がん、結腸直腸がん、肛門がん、前立腺がん、腎臓がん、膀胱がん、頭頸部がん、咽頭がん、鼻のがん、膵臓がん、皮膚がん、口腔がん、舌のがん、食道がん、膣がん、子宮頸がん、脾臓のがん、精巣がん、胃がん、胸腺のがん、結腸がん、甲状腺がん、肝臓がん、肝細胞がん(hepatocellular carcinoma、HCC)、又は散発性若しくは遺伝性の乳頭状腎細胞がん(papillary renal cell carcinoma、PRCC)、頭頸部扁平上皮がん(head and neck squamous cell carcinoma、HNSCC)である、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法。
22.がんが、NSCLCである、実施形態21に記載の方法。
22a.がんが、EGFRのエクソン19欠失に関連する、実施形態1、21、又は22のいずれか1つに記載の方法。
22b.がんが、L858R変異に関連する、実施形態1、21、又は22のいずれか1つに記載の方法。
23.対象が、左側mCRCと診断されている、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
24.対象が、右側mCRCと診断されている、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
25.対象が、抗EGFR療法未経験である、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
26.対象が、以前に抗EGFR療法を受けたことがある、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
27.対象が、治療未経験である、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
28.対象が、以前の1つ又は2つ以上の抗がん療法による治療に対して再発性又は抵抗性である、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法。
28a.以前の抗がん療法が、オシメルチニブである、実施形態28に記載の方法。
28b.以前の抗がん療法が、白金化学療法である、実施形態28に記載の方法。
29.対象が、18歳以上である、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法。
30.抗ヒスタミン薬、解熱薬、又はグルココルチコイドのうちの1つ又は2つ以上で前投薬を投与することを更に含む、実施形態1~29のいずれか1つに記載の方法。
30a.前投薬が、抗ヒスタミン薬を含む、実施形態30に記載の方法。
30b.前投薬が、解熱薬を含む、実施形態30に記載の方法。
30c.前投薬が、グルココルチコイドを含む、実施形態30に記載の方法。
31.メトトレキサートが、抗EGFR/c-Met抗体の投与の5日~1日前に投与される、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法。
32.メトトレキサートが、25mgの用量で投与される、実施形態31に記載の方法。
33.モンテルカストが、抗EGFR/c-Met抗体の投与の4日前から毎日投与される、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法。
34.モンテルカストが、5回投与される、実施形態33に記載の方法。
35.モンテルカストが、10mgの用量で投与される、実施形態33に記載の方法。
36.抗EGFR/c-Met抗体の投与の1日目及び2日目にIVデキサメタゾンを投与することを更に含み、デキサメタゾンの投与が、抗EGFR/c-Met抗体の投与の45~60分前である、実施形態30~35のいずれか1つに記載の方法。
37.IVデキサメタゾンが、10mgの用量で投与される、実施形態36に記載の方法。
38.経口デキサメタゾンが、抗EGFR/c-Met抗体の投与の1日前に投与される、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法。
39.経口デキサメタゾンが、8mgの総一日用量で投与される、実施形態38に記載の方法。
40.抗EGFR/c-Met抗体の投与の1日目及び2日目にIVデキサメタゾンを投与することを更に含み、IVデキサメタゾンが、10~20mgの用量で投与される、実施形態38又は39に記載の方法。
41.IVデキサメタゾンが、1日目に20mg、及び2日目に10mgの用量で投与される、実施形態40に記載の方法。
42.抗ヒスタミン薬、解熱薬、又はグルココルチコイドのうちの1つ又は2つ以上で前投薬を投与することを更に含む、実施形態1~41のいずれか1つに記載の方法。
43.前投薬が、ジフェンヒドラミンを含む、実施形態42に記載の方法。
44.ジフェンヒドラミンが、25~50mgの用量で投与される、実施形態43に記載の方法。
45.前投薬が、アセトアミノフェンを含む、実施形態42に記載の方法。
46.アセトアミノフェンが、650~1,000mgの用量で投与される、実施形態45に記載の方法。
【0293】
実施例1.アミバンタマブ注入関連反応を低減するためのメトトレキサート、モンテルカスト、又はデキサメタゾン。
目的及びエンドポイント
主な目的は、IRRの発生率及び/又は重症度を減少させるために、ラゼルチニブ及びIVアミバンタマブ注入前にメトトレキサート、モンテルカスト、又はデキサメタゾンの予防効果を評価することである。
【0294】
全体的な計画
これは、以前のオシメルチニブの治療中又は治療後、及び白金化学療法の治療中又は治療後に進行しており、IVアミバンタマブ+ラゼルチニブ併用療法から利益を得る可能性がある、EGFRのエクソン19欠失又はL858R変異NSCLCを有する参加者における概念実証、非盲検、多施設研究である。研究において、参加者は、抗ヒスタミン薬、解熱薬、及びグルココルチコイドによる標準的な予防を受ける。
【0295】
研究には3つのコホートがある。
・コホートA:参加者は、全ての他の標準的な前投薬に加えて、ラゼルチニブ及びIVアミバンタマブ併用療法(サイクル1)の前に、-1日目に経口デキサメタゾン(4mg)を1日2回(8mg総一日用量)投与される。
・コホートB:参加者は、ラゼルチニブ及びIVアミバンタマブ併用療法の前に、-4日目、-3日目、-2日目、-1日目、及びC1D1日目の朝に経口モンテルカスト(10mg)を投与される(合計5回用量)。
・コホートC:参加者は、ラゼルチニブ及びIVアミバンタマブ併用療法(サイクル1)の前に、-7日目~-3日目の任意の日に、25mgの皮下(SC)メトトレキサートの単回用量を投与される。
【0296】
研究処置は、全ての他の標準的な前投薬に加えて施される。
【0297】
試験母集団
適格な参加者のためのスクリーニングは、ラゼルチニブ及びIVアミバンタマブの投与前28日以内に行われる。本試験に参加者を登録するための組み入れ基準及び除外基準を以下に記述する。
【0298】
組み入れ基準:
インフォームドコンセント時に18歳(又は研究が行われている管轄区における同意の法定年齢)以上。
【0299】
参加者は、進行性又は転移性NSCLCを有していなければならない。
【0300】
オシメルチニブ及び白金ベースの化学療法による前処置中又は処置後に進行した。第1又は第2世代EGFR TKIの事前使用は、オシメルチニブの前に投与された場合に許可される。
【0301】
以前に同定されたEGFR変異NSCLC(EGFRのエクソン19欠失又はL858R)(Clinical Laboratory Improvement Amendments[CLIA]認定研究所[又は同等]において現地で同定された)
【0302】
0又は1のECOGパフォーマンスステータスグレード(Eastern Cooperative Oncology Group,Robert Comis M.D,Group Chair(Oken,1982))。
【0303】
被験者は、以下のような臓器及び骨髄機能を有する必要がある。
a)ヘモグロビン≧9g/dL
b)ANC≧1.5×109/L
c)血小板≧75×10 9/L
d)ALT及びAST≦3×ULN
e)総ビリルビン≦1.5×ULN;ジルベール症候群を有する対象は、
抱合型ビリルビンが正常範囲内である場合に登録することができる
f)腎疾患における修正食(Modified Diet in Renal Disease、MDRD)4変数式(添付5を参照)に基づいて、>30mL/分の推定糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate、eGFR)を有する。
【0304】
処置群及び継続期間
オシメルチニブ及び二重白金化学療法中又はその後の疾患進行を伴うEGFRのエクソン19又はL858Rが変異した進行性NSCLCは、治験責任医師によって決定されるように、IVアミバンタマブ+ラゼルチニブの研究処置を続ける。
【0305】
研究処置の説明。
メトトレキサート
メトトレキサート(MTX)[N-[4-[[(2,4-ジアミノ-6-プテリジニル)メチル]メチルアミノ]ベンゾイル]-Lグルタミン酸]は、関節リウマチの処置に適応される、FDAによって認可された葉酸アンタゴニストである。MTXは、化学療法及び自己免疫疾患における免疫抑制剤において一般的に使用される代謝拮抗薬である。
【0306】
メトトレキサートは、ジヒドロ葉酸レダクターゼを阻害し、DNA合成、修復、及び細胞複製を妨害する。悪性細胞、骨髄、胎児細胞、頬側及び腸粘膜、並びに膀胱の細胞などの活発に増殖している組織は、一般に、メトトレキサートのこの効果に対してより感受性である。
【0307】
関節リウマチにおける作用機序は不明であり、これは、酵素アミノイミダゾールカルボキサミドリボシドトランスホルミラーゼを阻害することによって免疫機能に影響を及ぼし得、アデノシン及びグアニン代謝における妨害、アデノシン蓄積をもたらし、アデノシンの抗炎症作用に起因して、T細胞活性化の抑制、B細胞の下方制御、活性化CD-95 T細胞感受性の増加、及びメチルトランスフェラーゼ活性の抑制、ベータ-1インターロイキンのその細胞表面受容体への結合の阻害をもたらす。
【0308】
モンテルカスト
モンテルカストは、慢性喘息の処置、並びに運動誘発性気管支収縮の予防及び防止のためにFDAによって認可された経口薬である。モンテルカストはまた、季節性及び通年性アレルギー性鼻炎の両方の症状の軽減のために認可されている。
【0309】
モンテルカストは、ロイコトリエンの肥満細胞媒介性放出を阻害し、炎症及び気管支収縮を低減するために使用され得る。
【0310】
モンテルカストは、ロイコトリエンに高い親和性で結合する高度に選択的なロイコトリエン受容体アンタゴニストであり、肥満細胞を含む様々な細胞型によって分泌され、喘息及びアレルギー性鼻炎の徴候及び症状を引き起こし得る炎症プロセスに関与する。ロイコトリエン受容体は、マクロファージ及び平滑筋細胞などの気道細胞において見出される。ロイコトリエン受容体に結合すると、モンテルカストは、ロイコトリエンの生理学的効果(気道浮腫、平滑筋収縮、及び正常な細胞活性の障害など)を阻害する。これは、アミバンタマブIRRに関連する症候学(例えば、呼吸困難)を潜在的に低減するためのモンテルカストの論理的根拠として役立つ。
【0311】
デキサメサゾン
デキサメタゾンは、アレルギー状態のためのFDAによって認可された経口及びIV製剤で利用可能な合成副腎皮質ステロイドである。IVデキサメタゾン(10mg)は、全ての患者がIVアミバンタマブを受ける前に投与される標準的な前投薬である。この研究は、IVアミバンタマブIRRの発生率を低減するためのステロイド前負荷の増強の役割を調査する。
【0312】
研究処置、デキサメタゾン、モンテルカスト、及びメトトレキサートは、IRRの発生率を評価するために、ラゼルチニブ+IVアミバンタマブのバックグラウンド抗がん併用レジメンの投与前に調査される。
【0313】
研究処置は、全ての他の標準的な前投薬に加えて施される。IVアミバンタマブ初回用量(1週目、1日目及び2日目)で必要とされるデキサメタゾン10mgのIVによる前投薬を含む、抗ヒスタミン薬、解熱薬、及び/又はグルココルチコイドによる標準的な前投薬が推奨される。
【0314】
活動のスケジュールの概要を表2に示す。推奨される投与順序を表3~5に示す。
【0315】
【0316】
【0317】
【0318】
【0319】
用量調整。
IVアミバンタマブ又はラゼルチニブの用量は、資格のある研究施設職員によって決定される場合には調整されてもよい。経験された毒性がIVアミバンタマブ又はラゼルチニブのいずれかに起因すると思われる場合、原因薬剤の用量は優先的に調整されるべきである。
【0320】
いくつかの実施形態では、用量調整が必要とされる場合、調整は、以下に列挙されるように生じ得る(表6)。
【0321】
【0322】
いくつかの実施形態では、ラゼルチニブ又はIVアミバンタマブの保留が臨床的に示されると考えられる場合、ラゼルチニブ又はIVアミバンタマブの投与を保留する決定は、両方の処置の安全プロファイルに基づいて、経験された毒性及び毒性に寄与するいずれかの処置の可能性によって導かれ得る。
【0323】
いくつかの実施形態では、両方の処置が保留され、再開される場合、ラゼルチニブが最初に再開され、次のIVアミバンタマブの注入の約7日前に投与されてもよい。
【0324】
注入関連反応の処置
限定されないが、悪寒、悪心、呼吸困難、潮紅、胸部不快感、嘔吐、又は注入時の任意の他の症状として現れるIRRの初期症状を経験する参加者は、示される場合、彼らの注入を中断してもよく、症状は表7に提供される推奨に従って管理され得る。IVアミバンタマブの初回用量(サイクル1、1日目及び2日目)では、注入の中断は、IRRのより重篤な出現を予防するために、軽度の症状であっても考慮され得る。
【0325】
【表7】
*有害事象のNCI共通用語基準(Common Terminology Criteria for Adverse Event、CTCAE):バージョン4.03による
【0326】
注入関連反応
注入関連反応は、様々なモノクローナル抗EGFR抗体による処置の間に観察されている。注入関連反応もまた、二重特異性抗EGFR/抗MET抗体による処置の間に観察されている。注入反応の重症度は様々であった。
【0327】
IRRの徴候及び症状には、悪寒、呼吸困難、潮紅、悪心、胸部不快感、嘔吐、頻脈、低血圧、及び発熱が含まれ得る。
【0328】
併用療法の考慮事項。
メトトレキサートコホート。
禁忌療法は、研究処置(デキサメタゾン、モンテルカスト、又はメトトレキサート)の最初の投与の前に、少なくとも3週間又は5半減期のいずれか短い方で中止されなければならない。
【0329】
メトトレキサートは、妊娠、アルコール依存症、又は肝疾患、免疫不全症候群、既存の血液疾患、及びメトトレキサート(MTX)に対する過敏症において禁忌である。
【0330】
NSAID、サリチル酸塩、TMP、ペニシリン、ワルファリン、バルプロエート、プロトンポンプ阻害剤、シクロスポリン、シスプラチンは、血液中のMTX毒性のリスクを増加させ、アミノグリコシド、ネオマイシン、プロベネシドは、MTXの吸収を低減する。
【0331】
薬物相互作用:
アスピリン、NSAID、及びステロイド:併用は、血清メトトレキサートレベルを上昇及び延長させ、毒性の増加を引き起こす可能性がある。
【0332】
プロトンポンプ阻害剤:併用は、血清メトトレキサートレベルを上昇及び延長させ、毒性の増加を引き起こす可能性がある。
経口抗生物質
肝毒素
テオフィリン
葉酸及び葉酸代謝拮抗剤
メルカプトプリン
亜酸化窒素
【0333】
メトトレキサートは高度に血漿タンパク質に結合しているため、タンパク質からメトトレキサートを置換する任意の薬物は、その血中レベルを増加させることができる。
【0334】
モンテルカストコホート
モンテルカストは、薬物又はその構成成分に対する過敏症の病歴を有する患者において禁忌である。フェニルケトン尿症(phenylketonuria、PKU)の患者については、フェニルアラニン含有製剤について注意を払うべきである。
【0335】
ラゼルチニブ及びIVアミバンタマブ
以下の併用薬及び療法は、研究中に禁止される。
任意の化学療法、抗がん治療(ラゼルチニブ及びIVアミバンタマブ以外)、又は実験的療法。
【0336】
CYP3A4/A5活性に対する既知の強力な誘導又は阻害効果を有する薬剤、ハーブサプリメント、及び/又は食物の摂取の併用は避けるべきである。CYP3A4活性の強力な阻害剤である薬物は、ラゼルチニブの投与前の適切な期間にわたって中止されていなければならない。
【0337】
ラゼルチニブは、P-糖タンパク質(P-glycoprotein、P-gp)、多剤耐性タンパク質4(multi-drug resistance protein 4、MRP4)、乳がん耐性タンパク質(Breast Cancer Resistance Protein、BCRP)、及び有機カチオントランスポーター1(Organic Cation Transporter 1、OCT1)の阻害剤である。したがって、P-gp、MRP4、BCRP、若しくはOCT1の基質である薬剤、ハーブサプリメントの同時投与及び/又はそれらと共に食物を摂取することは推奨されない。
【0338】
ラゼルチニブは、CYP3A4の可逆的かつ時間依存的阻害の可能性を有する。CYP34A基質薬物の併用は、ラゼルチニブの投与前に中止されなければならない。
【0339】
有効性の評価
主な目的は、IRRの初回用量を低減するために、ラゼルチニブ及びIVアミバンタマブ注入前にメトトレキサート、モンテルカスト、又はデキサメタゾンの予防効率を評価することである。主要エンドポイントは、ラゼルチニブ及びIVアミバンタマブ併用療法の投与後のサイクル1の1日目に発生するIRRの割合である。IRRの徴候及び症状には、悪寒、呼吸困難、潮紅、悪心、胸部不快感、嘔吐、頻脈、低血圧、及び/又は発熱が含まれ得る。
【0340】
IVアミバンタマブ注入中、対象は、定期的な間隔で臨床的にモニタリングされるべきである(注入開始前の評価を含む)。バイタルサインは、IVアミバンタマブ投与前30分以内に測定されるべきである。サイクル1の1日目に、バイタルサインもまた、IVアミバンタマブ投与の2時間±15分後に測定されるべきである。モニタリングは、脈拍/心拍数、血圧、体温、呼吸数、及び酸素飽和度の測定を含むべきである。
【0341】
二次エンドポイントは、サイクル1の1日目の間にNCI CTCAE Criteria、バージョン5.0によって定義されるIRR徴候及び症状(悪寒、呼吸困難、潮紅、悪心、胸部不快感、嘔吐、頻脈、低血圧、発熱)に関連する個々のAEの割合及び重症度、3ヶ月までのその後の投与におけるこれらのAEの割合及び重症度、注入関連反応の重症度、他のAEの発生率、並びにアミバンタマブ注入前薬、IVアミバンタマブ注入、アミバンタマブ注入後薬についての注入時間の期間中央値、治験責任医師が評価した腫瘍応答及び応答の期間である。
【0342】
この研究は、バックグラウンド抗がん療法(IVアミバンタマブ及びラゼルチニブ)の尺度ではないが、固形腫瘍に対する応答の評価は、RECIST v1.1基準(European Journal of Cancer 45(2009)228-247)に従って行われる。
【0343】
安全性評価
研究処置(メトトレキサート、モンテルカスト、及びデキサメタゾン)の安全は、身体検査、臨床検査、バイタルサイン、心電図、有害事象(AE)のモニタリング、及び併用薬使用によって評価される。
【0344】
バックグラウンド抗がん療法(IVアミバンタマブ及びラゼルチニブ)の安全は、身体検査、臨床検査、バイタルサイン、心電図、有害事象(AE)のモニタリング、及び併用薬使用によって評価される。
【0345】
処置の最初の3ヶ月間及び研究の終了までの間の能動的安全性調査、及び非盲検の間に地域の診療により施設が疾患評価及び安全性について対象を追跡し得る受動的安全性調査がある。
【0346】
統計的方法
この研究の主な仮説は、デキサメタゾン、メトトレキサート、又はモンテルカストによる予防処置を通して、サイクル1の1日目におけるIVアミバンタマブIRRsの発生率が低減されるということである。
【0347】
この研究では、真のIRR率が0.67以上であるという帰無仮説を、各予防コホートについて片側対立に対して検定する。
【0348】
試料サイズ決定のために、シモンの2段階設計(Simon,1989)を各コホートについて別個に使用する。各コホートを拡大することができる。
【0349】
主要エンドポイントは、ラゼルチニブ及びIVアミバンタマブ併用療法の投与後のサイクル1の1日目に発生するIRRの割合である。IRRの主要分析は、最後の対象が最初の注入を受けた後、又は研究終了時のいずれか早い方に行う。処置された対象集団を、一次分析のために使用する。95%信頼区間と共にIRR率をコホートについて推定する。
【0350】
二次エンドポイントは、サイクル1の1日目、及び3ヶ月までのIVアミバンタマブのその後の投与で発生するIRRの個々のAE徴候及び症状(悪寒、呼吸困難、潮紅、悪心、胸部不快感、嘔吐、頻脈、低血圧、発熱)の割合及び重症度、注入関連反応の重症度、他の有害事象の発生率、その後の投与後のIRRの割合、アミバンタマブ注入前薬、IVアミバンタマブ注入、及びアミバンタマブ注入後薬についての注入時間中央値、並びに治験責任医師が評価したORR及び応答の期間である。
【0351】
最良総合応答を確認したORRの二次エンドポイントは、最後の対象が最初の注入を受けた約12週間後、又は研究終了時のいずれか早い方に行う。ORRは、RECIST v1.1を使用する治験責任医師の評価によって定義される、完全応答(complete response、CR)又は部分応答(partial response、PR)のいずれかを達成する対象の割合として定義される。必要に応じて各コホートについて、観察されたORRを両側正確95%信頼区間と共に提示する。
【0352】
応答期間は、カプラン・マイヤー法を使用して推定され、CR又はPRを達成した対象についてのみ、CR又はPRの初回応答から疾患の進行(progressive disease、PD)又は基礎疾患による死亡のいずれか早い方までの期間として計算される。
【配列表】
【国際調査報告】