(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】低用量・高薬物暴露量のソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤及びその応用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/44 20060101AFI20250220BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20250220BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20250220BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20250220BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20250220BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20250220BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20250220BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20250220BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20250220BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250220BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20250220BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20250220BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20250220BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20250220BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20250220BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20250220BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20250220BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20250220BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20250220BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20250220BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20250220BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20250220BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20250220BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20250220BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20250220BHJP
【FI】
A61K31/44
A61K47/32
A61K47/38
A61K9/20
A61K9/10
A61K9/14
A61K9/48
A61K47/34
A61P1/16
A61P35/00
A61P15/00
A61P13/12
A61P25/00
A61P11/00
A61P5/14
A61P1/18
A61P1/02
A61P1/00
A61P17/00
A61P35/02
A61P7/00
A61K9/107
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547164
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(85)【翻訳文提出日】2024-08-07
(86)【国際出願番号】 CN2022091593
(87)【国際公開番号】W WO2023155307
(87)【国際公開日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2022/077001
(32)【優先日】2022-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519002003
【氏名又は名称】北京叡創康泰医薬研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】Beijing Creatron Institute of Pharmaceutical Research Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】11th Floor,Building 15,No.1 Chaoqian RD, Changping Science & Technology Park,Changping District, Beijing,102200,China
(71)【出願人】
【識別番号】522098769
【氏名又は名称】天津叡創康泰生物技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】賈慧娟
(72)【発明者】
【氏名】侯▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】李衍
(72)【発明者】
【氏名】張加晏
(72)【発明者】
【氏名】陳▲シェン▼▲ギョウ▼
(72)【発明者】
【氏名】任▲シャオ▼慧
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076AA22
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA44
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC09
4C076CC14
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC18
4C076CC27
4C076CC44
4C076DD21
4C076DD29
4C076DD37
4C076DD41C
4C076DD45
4C076EE01
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4C086BC17
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4C086MA34
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4C086ZA59
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4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、TKIの分子レベルの混合物、自己組織化用高分子材料を含むソラフェニブ又はドナフェニブ(TKI)の経口剤を提供しており、本願は、さらに、TKI経口剤の応用を提供してる。本願で提供されるTKI経口剤中の2種の自己組織化用高分子材料とTKIゲスト分子との相乗的調整により、経口剤の吸収過程中に胃腸粘膜の上皮細胞にあるシトクロムP450であるCYP3A4/A5、CYP2D6、CYP2C8、又はP-gpによる薬物の早期分解又は排出を低減させ、分子レベルの組成物からの薬物の速い溶出後に迅速にパッキングに起因する吸収の低下も低減できるため、より低い用量で同じ治療効果を実現でき、Cmax、AUC0-tの変動がより低く、無効又は有毒のリスクを低減し、且つ、経口投与では食事の影響を受けなく、同時に用量関連の副作用を著しく低減させ、患者のコンプライアンスを高め、しかも、良好な物理的及び化学的安定性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソラフェニブ又はドナフェニブの分子レベルの医薬組成物、自己組織化用高分子材料、及び他の薬学的に許容される添加物を含む低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤であって、前記ソラフェニブ又はドナフェニブの分子レベルの医薬組成物の状態は、分子レベルの固体分散体、固溶体、ポリマーナノ粒子、自己乳化型マイクロエマルション、ナノエマルジョン又は分子レベルの混合物であり、
前記自己組織化用高分子材料は、ポビドン+ヒドロキシプロピルセルロース、低粘度ポビドン+高粘度ポビドン、ポビドン + コポビドン、ポビドン+ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体、ポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン+酢酸セルロース、ポビドン+架橋型カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポビドン+ポリエチレングリコール、ポビドン+低置換量ヒドロキシプロピルセルロース、ポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポビドン+メタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体、ポビドン+メタクリル酸-アクリル酸メチル共重合体、コポビドン+ヒドロキシプロピルセルロース、コポビドン+ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体、コポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、コポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コポビドン+酢酸セルロース、コポビドン+架橋型カルボキシメチルセルロースナトリウム又はカルシウム、コポビドン+ポリエチレングリコール、コポビドン+低置換量ヒドロキシプロピルセルロース、コポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、コポビドン+メタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体、コポビドン+メタクリル酸-アクリル酸メチル共重合体、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+低置換量ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+架橋型カルボキシメチルセルロースナトリウム又はカルシウム、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+ポリエチレングリコール、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+メタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+メタクリル酸-アクリル酸メチル共重合体から選ばれる、低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤。
【請求項2】
前記自己組織化用高分子材料は、前記ソラフェニブ又はドナフェニブの分子レベルの医薬組成物に対して10~50wt%である、ことを特徴とする請求項1に記載のソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤。
【請求項3】
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、HPMC E5又はHPMCK100LVであり、前記自己組織化用高分子材料は、ポビドン、コポビドン、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体及び疎水性の強いヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートのH等級の1種とHPMC E5との複合自己組織化用高分子材料であり、複合化割合は、(1~10):1であり、前記自己組織化用高分子材料は、前記ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体及び疎水性の強いヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートのH等級の1種とHPMCK100LVの複合自己組織化用高分子材料であり、複合化割合は、(1~10):1である、ことを特徴とする請求項1に記載のソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤。
【請求項4】
前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートは、アセチル基の置換量が6~16%であり、スクシニル基の置換量が、4~16%であることを特徴とする請求項1又は3に記載のソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤。
【請求項5】
前記ポビドンは、平均分子量が34000~1300000又は平均分子量が34000のポビドンと平均分子量が1300000のポビドンとが1:1~1:0.1の割合で複合したポビドンであることを特徴とする請求項1又は3に記載のソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤。
【請求項6】
前記経口製剤は、単位用量でソラフェニブ又はドナフェニブを20~69mg含む、ことを特徴とする請求項1に記載のソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤。
【請求項7】
前記ソラフェニブ又はドナフェニブの分子レベルの医薬組成物は、ソラフェニブ又はドナフェニブ、又はその塩、水和物、溶媒和物、塩の水和物又は溶媒和物、及び担体を含み、前記担体は、コポビドン、ポビドン、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体、ポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロース、低粘度ポビドン+高粘度ポビドン、ポビドン+コポビドン、ポビドン+ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体、コポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、コポビドン+ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体、コポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コポビドン+ポリエチレングリコール、コポビドン+ヒドロキシプロピルセルロース、コポビドン+酢酸セルロース;ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+ポビドン又はポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+コポビドンから選ばれることを特徴とする請求項1に記載のソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤。
【請求項8】
前記ソラフェニブ又はドナフェニブ、又はその塩、水和物、溶媒和物、塩の水和物又は溶媒和物は、前記ソラフェニブ又はドナフェニブの分子レベルの医薬組成物に対して30~60wt%である、ことを特徴とする請求項7に記載のソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤。
【請求項9】
前記ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤の剤形は、錠剤、懸濁剤、顆粒剤又はカプセル剤である、ことを特徴とする請求項1に記載のソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤。
【請求項10】
前記錠剤の添加物は、充填剤、崩壊剤、流動促進剤又は潤滑剤を含み、前記充填剤は、微結晶セルロース及びケイ化微結晶セルロースから選ばれる1種又は2種であり、前記崩壊剤は、架橋型カルボキシメチルセルロースナトリウムから選ばれ、前記流動促進剤は、シリカから選ばれ、前記潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム及びフマル酸ステアリルナトリウムから選ばれる1種又は2種であることを特徴とする請求項9に記載のソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤。
【請求項11】
前記充填剤の含有量は、前記錠剤に対して30~45wt%であり、前記崩壊剤の含有量は、前記錠剤に対して5~15wt%であり、前記流動促進剤の含有量は前記錠剤に対して3~5wt%であり、前記潤滑剤の含有量は、前記錠剤に対して1~5wt%であることを特徴とする請求項10に記載のソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤。
【請求項12】
前記ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤は、食べ物と一緒に服用する製剤、又は食べ物と一緒に服用しない製剤であることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載のソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤。
【請求項13】
肝細胞がん、乳がん、原発性肝悪性腫瘍、胆管がん、腎細胞がん、再発性又は難治性固形腫瘍、中枢神経系固形腫瘍、転移性非小細胞肺がん、手術で切除できない肝細胞がん、甲状腺がん、膵臓がん、唾液腺腺様嚢胞がん、甲状腺未分化がん、難治性分化型甲状腺がん、腺様嚢性がん、晩期子宮内膜がん、甲状腺退形成がん、直腸がん、結腸がん、切除不能なIII期又はIV期黒色腫、白血病、急性骨髄性白血病、全ての固形腫瘍又は様々な晩期固形腫瘍を治療又は軽減するための医薬品の調製における、請求項1~12のいずれか1項に記載のソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
本願は、2022年02月21日に中国特許庁へ提出された、出願番号がPCT/CN2022/077001、発明の名称が「低用量・高薬物暴露量のソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤及びその応用」である国際特許出願に基づき優先権を主張し、その全内容は、援用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、医薬製剤技術及び材料科学の分野に関し、特に、分子レベルの医薬組成物が体内で放出された後、自己組織化用高分子材料を用いて新たな自己組織化システムを再構築し、ソラフェニブ(Sorafenib)又はドナフェニブ(Donafenib)の分子間での相互作用によって形成される分子パッキングを破壊し、消化管でのCYP3A4/A5/CYP2/P-gpによる医薬品の早期代謝を減少させ、医薬品が吸収されて循環システムに入った前に胃腸管への毒性・副作用を低減させ、より低用量のソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を採用して治療におけるその応用を実現する。
【背景技術】
【0003】
Nexavar(一般名:ソラフェニブトシル酸塩錠)は、ドイツのバイエル社とOnyx社が共同で開発した、末期肝臓がん、腎細胞がん、及び甲状腺がんを治療するための最初の多標的経口腫瘍分子標的薬である。該医薬品は、2007年に末期の肝細胞がんの全身療法における第一選択薬として発売されて以来、肝細胞がんの全身療法に顕著な変化が発生した。ソラフェニブは、腫瘍細胞及び腫瘍内血管に同時に作用でき、細胞増殖の抑制、細胞アポトーシスの促進、血管生成の抑制などのメカニズムにより腫瘍成長の阻害作用を発揮する。一方で、ソラフェニブは、c-Rafキナーゼ及び下流シグナル伝達下游信号を抑制し、MEK及びERKのリン酸化過程を阻害し、ERKのリン酸化レベルを低減させることにより、細胞増殖抑制の作用を発揮しており、他方、ソラフェニブは、血管内皮細胞増殖因子受容体-2(VEGFR-2)、血管内皮細胞増殖因子受容体-3(VEGFR-3)、及び血小板由来増殖因子受容体-β(PDGFR-β)を抑制し、チロシンキナーゼ受容体の自己リン酸化過程を阻害することにより抗血管新生作用を発揮する。それは、RAF/MEK/ERKによって媒介される細胞シグナル伝達経路をブロックすることで腫瘍細胞の増殖を直接に抑制できるし、また、VEGFR及び血小板由来成長因子(PDGF)受容体を抑制することで腫瘍の血管新生をブロックするという両方の抗腫瘍作用を持つとともに、開始因子-4E(eIF4E)のリン酸化過程を抑制し、体内の抗アポトーシスタンパクMcl-1のレベルを下方制御し、アポトーシス促進の役割を果たす。
【0004】
ソラフェニブは、ジアリール尿素系経口用マチルキナーゼ阻害剤であり、その化学名が4-[4-[3-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)ウレイド]-フェノキシ]-N-メチルピリジン-2-カルボキサミド、相対分子質量が464.8である。ソラフェニブ錠(販売名としては、ネクサバール,Nexavar)で使用される有効成分は、分子式がC21H16ClF3N4O3・C7H8O3Sである、式(2)に示すソラフェニブトシル酸塩である。ソラフェニブの化学構造は、以下の通りである。
【0005】
【0006】
ドナフェニブは、中国蘇州澤▲ケイ▼製薬有限公司が開発したソラフェニブの重医薬品であり、その化学名が4-(-[3-[4-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ウレイド]フェノキシ) -n-(メチル- d3)ピリジン-2-ホルムアミド-4-トシル酸塩であり、ソラフェニブとの化学構造の違い及び物理的・化学的性質は、下表1に示す。
【0007】
【0008】
表1より示すように、両方は、アミド結合で連結されるメチル基が異なる以外は全く同じである。しかも、重水素化された基は、薬物分子内相互作用、分子間相互作用、薬物pKa、疎水性(LogP)、水素供与体数、水素受容体数、回転可能な化学結合数、体内代謝酵素作用部位などにも影響を与えないため、両方では、構造上のメチル基又は重水素化メチル基を除いて、その他はすべて同じである。そこで、以下、ソラフェニブを例として説明する。
ドナフェニブトシル酸塩錠は、2021年に中国で第1類の革新薬として2021年6月に中国国家薬品監督管理局で公布され承認された。発売商品名は、澤普生であり、発売された剤形は錠剤であり、規格として100mgであり、1回あたり2錠(200mg)、1日2回、合計400mg服用する。
【0009】
生物薬剤学分類システムによると、ソラフェニブ又はドナフェニブは、いずれもBCSクラスIVに属する薬物であり、低溶解性・低透過性薬物である。ソラフェニブトシル酸塩錠(中国での販売名としては、多吉美)の添付文書によると、経口溶液に比べて、ソラフェニブトシル酸塩錠剤は平均相対的生物学的利用率がわずか38%~49%である。それにより、販売名として多吉美であるソラフェニブトシル酸塩錠は規格で200mgであり、1回2錠を1日2回投与し、1日最大用量が800mgである。販売名としてNexavarであるソラフェニブ錠の添付文書によると、健康なボランティアは、14C放射性標識したソラフェニブ経口溶液100mgを経口投与し、投与量の77%が糞便中に排泄され、且つ未変化体が排泄物に51%以上を占め、これは、Nexavarであるソラフェニブトシル酸塩錠の経口生物学的利用率が低いの理由の1つは、薬物自身の溶解度の問題のためであり、投与量の薬物の半分以上は、溶解度のせいで糞便を通じて体外に直接排出される。しかしながら、実際の臨床投与量は、単回投与で400mgであり、現在、400 mg 用量中、どのぐらいの未変化体が糞便を通じて体外に直接排出されるかについてのデータがない。
【0010】
AAPS J. 2019 Jan 9, 21(2):15、AAPS J. 2019 Oct 21;21(6):107、Chem Biol Interact. 2021 Apr 1;338:109401、Xenobiotica2016 Jul; 46(7): 651-658及び多吉美であるソラフェニブトシル酸塩錠の添付文書では、ソラフェニブの代謝はシトクロムP450酵素であるCYP3A4/A5、CYP2C8/D6によって媒介され、産生した代謝産物はソラフェニブ N-オキサイドであることを指摘している。ソラフェニブも排出トランスポーターP-gpの基質である。しかしながら、それらのCYP3A4/A5、CYP2C8/D酵素及びP-gpは、在ヒトの腸管粘膜上皮細胞中に広く分布しているため、ソラフェニブが体内での吸収が高変動になり、経口生物学的利用率が低いもう一つの要因である。Clin Cancer Res2005で開示されたソラフェニブの臨床試験では、結果として、ソラフェニブのヒトでの薬物動態パラメータは、個体間変動性が高く、200mg(Bid)又は400mg(Bid)を経口投与し、7日間連続投与し、定常状態に達した時のCmax 及びAUC0-12hの変動係数は、それぞれ、200mg (Bid)で、8.6%及び16.9%であり、400mg (Bid)で、106.7%及び90.5%%であることを示す。従って、難溶性薬物については、患者の化管環境(pH、食物、酵素、消化液の量)及び薬物を経口投与後の胃から腸管へ入るまでの過程がソラフェニブの吸収に非常に大きな影響を与える。臨床的大量投与は、シトクロムP450酵素によるPKの高変動を補償する可能性があるが、溶解度の問題によるPKの高変動を補償できない。Oncotarget, 2017, Vol. 8, (26), pp: 43458-43469では、94人の腎細胞がん患者による臨床試験において、群1(n=74)でソラフェニブ錠400mg(Bid)を経口投与し、群2(n=18)でソラフェニブ錠600mg(Tid) を経口投与し、群3(n=2)でソラフェニブ錠400mg(Qd)を経口投与した。2週間の治療後、ソラフェニブ定常状態血中薬物(血漿)濃度は881~12,526 ng/mLであり、主な副作用の発生率は、下痢(76.5%)、手足症候群(68.99%)、疲労(55.32%)であり、それらの重大な副作用はいずれもソラフェニブの血中薬物濃度に関連する。重大な副作用が発生した患者の血中薬物濃度は、いずれも10000ng/mlを超え、しかも、それらの重大な副作用は投与量の低下又は休薬に伴って減少する。これは、それらの重大な副作用はいずれも投与量に関連することを示す。Cancer Chemotherapy and Pharmacology (2020) 86:129-139では、ソラフェニブの全身暴露量は、末期肝細胞がん患者の応答、有効性、及び安全性に及ぼす影響を研究している。研究した結果より、ソラフェニブトシル酸塩錠は、投与量0.4g(1日2回)と投与量0.2g(1日2回)を比較して、3級、4級の重大な副作用が顕著に増加し、且つその多くの3級、4級の重大な副作用がソラフェニブのCthrough谷濃度と顕著な相関性があり、ソラフェニブの谷濃度が3.45μg/mlを超える場合には、3級以上の重大な副作用(ALT上昇、AST上昇、エステラーゼ上昇、手足症候群、高血圧など)の発生率は72.7%であり、3.45μg/ml未満の場合には、3級以上の重大な副作用の発生率は26.7%である。ソラフェニブトシル酸塩錠のPKの高変動は、医薬品の治療効果[治療失敗までの時間(TTF)、無増悪生存期間(PFS)、及び全生存期間(OS)] に顕著な影響を与える。ソラフェニブの谷濃度<1.40μg/mL場合には、TTF、PFS、及びOSは、それぞれ、4.7ヶ月、4.7ヶ月、及び5.3ヶ月であり、1.40μg/mL≦ソラフェニブCthrough<3.45μg/mLの場合には、TTF、PFS、及びOSは、それぞれ、13.1ヶ月、15.8ヶ月、及び17.8ヶ月であり[レンバチニブメシル酸塩カプセル(LENVIMA)のTTF、PFS、及びOSは、それぞれ、8.9ヶ月、7.4ヶ月、及び13.6ヶ月である。]、ソラフェニブの谷濃度≧3.45μg/mLの場合には,TTF、PFS、及びOSは、それぞれ、2.4ヶ月、8.9ヶ月、及び9.5ヶ月である。長期間にわたる不十分な治療濃度(谷濃度は1.40μg/mL未満)では、治療反応が悪くなり、薬剤耐性を誘発し、がんの化学療法の失敗にもたらすよく見られる原因であるが、高すぎる治療濃度(≧3.45μg/mL)では、重大な副作用の倍増に招致し、最終的に重大な副作用に耐えられないために治療を放棄し(TTFは2.4ヶ月)、また、全生存期間OS及び無増悪生存期間は顕著に低下することを報道している。
【0011】
上記の研究結果は、ソラフェニブを使用して治療する場合には、降低薬物のPKの高変動を低減させるのは重篤な毒性及び無効の低下に重要な意味があることを示すため、PKの低変動のソラフェニブの新世代治療薬の開発は、重要な臨床価値がある。従来技術では、提高ソラフェニブ製剤の経口生物学的利用率を高め、臨床用量を低減させ、PKの高変動などの厄介な世界的難題を解決するために、大量の実験研究及び挑戦を行っているが、現在まで、Nexavarであるソラフェニブトシル酸塩錠の核心特許はすでに失効しているが、既存の販売医薬品を超えた新しい製品はまだ商業化されていない。
US20090203709では、少なくとも1つのチロシンキナーゼ阻害剤、少なくとも1つの薬学的に許容されるポリマー、及び少なくとも1つの薬学的に許容される可溶化剤からなる固体分散物を含む医薬品の剤形を開示している。中でも、可溶化剤は、ポリオール脂肪酸エステル、ポリアルコキシル化ポリオール脂肪酸エステル、ポリアルコキシル化脂肪アルコールエーテル、トコフェロール類化合物及びそれらの混合物から選択され、同時に、上記の医薬品の剤形を調製するための方法であって、少なくとも1つのチロシンキナーゼ阻害剤と少なくとも1つの薬学的に許容されるポリマーと少なくとも1つの薬学的に許容される可溶化剤との均一な溶融体を調製し、その後、該溶融体を硬化させて固体分散物を取得することを含む方法を開示している。
【0012】
CN107115317には、ソラフェニブ、少なくとも1つの高分子ポリマー、及び可溶化剤を含み非晶質ハイブリッドナノ粒子を形成する医薬組成物であって、さらに、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコール共重合体、d-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸エステル(TPGS1000)、及び例えばPEG-40水添ヒマシ油又はPEG-35水添ヒマシ油といった水添ヒマシ油から選ばれる少なくとも1つの薬学的に許容される可溶化剤を含む医薬組成物が開示されている。その文献には、以上の医薬組成物を生産するための製造方法が超臨界流体法であることが開示されている。
WO2006026501A1には、固体分散体の態様として、ソラフェニブ及び/又はその塩、水和物、並びに溶媒和物を含む組成物が開示されている。前記固体分散体のマトリックスは、ポビドン、コポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール又はポリエチレンオキシドから選ばる少なくとも1つのポリマーである。
CN105126111Aには、ソラフェニブ、ソラフェニブ塩、ソラフェニブ誘導体又はそのプロドラッグから選ばれる少なくとも1つである有効成分、及び、例えばVA64、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体といった酢酸ビニル基を有するポリマー共溶媒を含むソラフェニブの分子レベルの医薬組成物が開示されている。
【0013】
従来技術では、ソラフェニブ又はドナフェニブの分子レベルの医薬組成物のin vitroの溶出率は、ソラフェニブトシル酸塩錠(中国の販売名として、多吉美)と比較して、ある程度向上されているが、以下の問題がある。即ち、
1)人体における生物学的利用率の向上幅は、in vitroの溶出率ほど顕著ではなく、例えば、WO2018211336A2では、健康なボランティアにおいて参照製剤であるソラフェニブトシル酸塩錠(中国の販売名として、多吉美)と比較して、経口生物学的利用率を2倍程度になるように向上させることができるが(Cmax、AUC72h, T/Rは、それぞれ、194.32%及び199.58%である。)、この特許には被験者数及び自製品及び参照製剤の投与量が開示されておらず、ソラフェニブトシル酸塩錠(販売名としては、多吉美)又はドナフェニブトシル酸塩錠(販売名としては、澤普生)の添付文書によると、この技術は溶解度の問題の一部を解決している。
2)ヒトの生物学的利用率の大幅な改善に関するデータはなく、ビーグル犬又はラットによる生物学的利用率のデータのみがあり、例えば、CN106667916Bでは、その実施例にラット中のAUCは経口懸濁剤の2.24倍であり、CN105126111Aでは、その最適な処方に市販製剤の模擬品と比較してビーグル犬中のCmax及びAUC分布がそれぞれ85%、78%向上している。ラット又はビーグル犬では生物学的利用率を向上できるが、人体では必ずしも向上できないことがよく知られており、大量の試験で両方に必然的なつながりがないことが証明されているが、人体中で実現可能かどうかを確認するには、大量の試験を行い、また大量の資金を費やす必要がある。他方、以上に開示された技術では、ラット及びビーグル犬の体内でも2倍程度しか改善できず、医薬品の臨床投与の安全性要件と比較すると、依然として取るに足らないものである。
【0014】
3)in vitroの溶出率のデータのみがあり、in vivoのデータがなく、例えば、CN107115317、CN104888228A、WO2006026501A1は、いずれもソラフェニブのin vitroの溶出率のデータのみを提供しているが、医薬専門技術者は、in vitro溶出試験、特に難溶性薬物の場合、溶出媒介の体積、媒介に溶出率を高めるために添加される界面活性剤の濃度が異なると、最終的に測定される溶出挙動及び溶出結果は大きく異なることになり、in vitroの溶出率を向上することができるのはin vivoでも生物学的利用率を顕著に高めることができることを実証することができない。
4)市販のソラフェニブトシル酸塩錠は、規格が200mgであり、推奨される1回投与量が400mgであり、規格が比較的に大きく、投与量も大きく、固体分散体を調製する場合に質量で有効成分の用量よりも数倍の担体を添加する必要があり、例えば、WO2006026501A1では、高分子材料であるポビドンK25を有効成分の5倍で使用する場合には、溶出率が35%のみに達し、目的とする100mg規格で製造された剤形処方において、固体分散体組成物の質量だけで600mgに達するが、通常の固体分散体の担体の大部分は結合剤として作用するか、又はゲルを形成し、製剤の成形が難しくなり、例えば、錠剤、カプセル剤の崩壊時間は大きく延長してしまい、崩壊を改善するためには、大量の製剤用添加物を添加する必要があり、錠剤又はカプセル内容物の体積、重量が大きくなり、作成した製剤は患者の服用に不利で、コンプライアンスが悪く、同時に改良後の製品のコストも高くなる。しかしながら、固体分散体中の担体の使用量を減少させると、一方、溶解増加効果は顕著ではない、また、製品の物理的安定性を低減させ、他方、例えば、特許WO2006026501A1では、実施例2に示すように、製造プロセスの点から固体分散体の不完全な形成を招致できる(結晶質薬物は全て非晶質に変換することはできない。)。その場合には、ソラフェニブの結晶質薬物の核が存在すると、その後の保存中における薬物は短時間で急速に結晶化して析出するか、又は物理的安定性が悪くなるため、薬物の治療効果に影響を与え、ひいては本物の製品として開発・発売することができない。従って、如何に従来技術の限界を突破するか、ソラフェニブトシル酸塩錠の臨床的な投与量が多く、単位製剤あたり添加物の使用量が大きいという客観的事実に対して、如何に最小の担体又は添加物の使用量で安定性が良く、生物学的利用率が高く、患者のコンプライアンスが良好なソラフェニブの新世代治療薬を開発するかは容易なことではない。それも従来技術に存在する深刻な限界である。
【0015】
5)固体分散体、固溶体、及びナノ結晶製剤は、水分に敏感であり、水分の含有量が高いと薬物の核形成、晶析及び化学的分解が加速し、製剤の安定性が悪くなる。加えて、ソラフェニブ自体の安定性が低く、分解して変異原性不純物CTF-アニリンを生成しやすく、固体分散体の調製後に、さらにCTF-アニリンを生成しやすく。CTF-アニリンの構造は、式(3)に示す。
【0016】
【0017】
6)高分子担体で調製されたソラフェニブ固体分散体医薬組成物は、固体分散体がin vitro又はin vivoでも急速に溶出することができるが、ソラフェニブ分子間相互作用、ソラフェニブとトルエンスルホン酸の分子間相互作用により、溶液中では水素結合、イオン作用などの分子間非共有結合作用を介して分子パッキングを発生させて超分子自己組織化システムを形成することによって溶液又は腸液から急速に析出し、最終的に溶液中のソラフェニブ分子濃度非常低は非常に低くなってしまい(pH1.0: 0.0034mg/ml、pH4.5: 0.00013mg/ml)、界面活性剤として0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを含む(ソラフェニブトシル酸塩の質量制御用溶出媒介における界面活性剤の使用量よりも少なくとも10倍少ない)pH6.8のリン酸塩緩衝液を溶出媒介とする溶出試験において、37℃、2h~4hの条件下で、累積溶出率は、ソラフェニブ錠(販売名としては、多吉美)と基本的に一致し、それよりも低くなり(従来の開示技術でよく言われるスプリング効果)、その結果、固体分散体の医薬組成物のin vivo生物学的利用率の向上が顕著ではない。
【0018】
Acta Cryst. (2011). C67, o29-o32、ACS Omega. 2021 Mar 2; 6(8): 5532-5547では、ソラフェニブトシル酸塩の単結晶の構造及びソラフェニブ分子構造中のジアリール尿素とジメチルスルホキシドが分子間相乗的調整による超分子自己組織化システムの構築を報告している。ソラフェニブの化学構造には、ジアリール尿素が含まれ、ジアリール尿素中の2つのアリール平面の平面化がソラフェニブ分子間に強いπ-πスタッキング相互作用、疎水効果、水素結合作用に寄与し、その結果、ソラフェニブ分子は、溶液中で分子間相互作用を介して分子パッキングを急速に発生しやすく、安定した固体超分子自己組織化システムを形成し、
図2に示すようになる。医薬開発者の視点から見ると、そのπ-πスタッキング相互作用による超分子自己組織化システムは、破壊するのが最も困難であり、従来の技術的手段、例えば、分散体技術、共結晶、塩形成などの技術でもそのπ-πスタッキングが関与する超分子自己組織化構造を瞬時に破壊することができるが、実際の応用に必要な時間軸上の安定を維持することはできない。AAPS Pharm Sci Tech (2022) 23:16では、難溶性薬物溶解度を解決する従来技術を総説したが、現在これらの技術を採用してもソラフェニブの現在発売されている製品の臨床応用における痛点を解決することはできない。ACS Appl. Mater. Interfaces 2019, 11, 43996-44006、 Molecular Pharmaceutics, 2015, 12 (3): 922-931、Scientifc Reports | (2021) 11:874では、それぞれ、ソラフェニブ/クルクミン/PEG-VES(PEG-ビタミンE共重合体)、ソラフェニブ/ Indocyanine(インドシアニン)、及びソラフェニブとポリペプチドなどから構築された自己組織化システムによりソラフェニブの治療効果及び生物学的利用率を向上させることを報告しているが、それらの研究は目前でも学術研究に止まっており、製品への転化にはまだ大きな距離がある。
7)固体分散体に、更に、共溶媒又はCYP3A4又はP-gp阻害作用を持つ担体、例えば、トコフェロール系化合物、ポリオール脂肪酸エステル、ポリアルコキシル化脂肪アルコールエーテル、及び水添ヒマシ油などの共溶媒又は酵素阻害剤を添加すると、それらの共溶媒は融点が低いため、製剤の製造過程で放熱して製造プロセスの難しさを向上させ、他方、ソラフェニブ固体分散体の物理的安定性が低下し、長期間保管過程で熱力学的安定性が悪い非晶質ソラフェニブは、共溶媒によって誘導されやすく核の結晶化を加速して大量に析出し、それにより、薬物の生物学的利用率を大幅に高め、投与量を低減させる目的を達成することができない。また、水添ヒマシ油及びトコフェロールは、CYP3A4又はP-gpに対して阻害作用を有するが、特異性が強くなく、一定の効果を得るには大きな用量を加える必要がる。
【0019】
8)中国特許CN103301066 B、CN103301067 Bでは、江蘇省澤▲ケイ▼製薬製ドナフェニブ製剤組成物という特許を開示しており、ドナフェニブ販売品で固体分散体技術を使用してその溶解度を向上させながら経口生物学的利用率をソラフェニブよりも2倍に高めているため、臨床用量をソラフェニブトシル酸塩錠(販売名としては、多吉美)よりも半分に低減していることが分かった。ドナフェニブ原薬の調製過程中で重水素化中間体を利用したが、重水素化中間体の価格は非重水素化中間体よりも著しく高いため、ドナフェニブ製剤の経口吸収效率を高め、単位製剤コストの有効成分(API)の使用量を低減するのは、単位製剤コストを下げ、ドナフェニブ製剤の副作用を低減させるのに重要な意味がある。該特許によると、ドナフェニブトシル酸塩固体分散体の調製では、少なくとも主薬と高分子ポリマーの割合が2~4:1であり、即ち、単位製剤あたり主薬量が274mgであることを必要とし、固体分散体の調製で使用される高分子ポリマーの質量は少なくとも548mg~1096mgであり、そうではない場合には、薬物の溶解度、溶出率、及び有効期間(shelf life)内での物理的・化学的安定性を解決することは困難である。
また、現在、中国で市販されている多吉美であるNexavarの服用方法は、1日2回、空腹時、又は低脂肪、中脂肪食とともに服用し、アメリカのNexavarの添付文書に記載の服用方法は、1日2回、食物と一緒に服用しない(食前少なくとも1h又は食後2h)ことである。低脂肪又は中脂肪食とともに服用するのは、実際の投与時に判断が困難であり、当業者でも低脂肪、中脂肪食と高脂肪食の違いを判断することが困難であり、況して患者はなおさらであり、それにより、患者はアメリカの添付文書で要求される食前少なくとも1h又は食後2hに服用するように空腹で服用することが多い。空腹時に服用すると、局所的な薬物濃度が高いため、消化管の上段に毒性・副作用の発生率が高く、副作用の重症度がより大きく、3級、4級の重大な副作用の発生率がより高い[例えば、Seminars in Oncology, Vol 41, No S2, February 2014, pp S1-S16]。前記の[Oncotarget, 2017, Vol. 8, (26), pp: 43458-43469]のように、ソラフェニブを服用する後に下痢の発生率は76.5%に高くなる。例えば、文献{蘇華, 周暁東, 馬愛華,など. 常用薬物に起因する胃腸管副作用及び予防[J]. 薬物副作用雑誌, 2004, 6(1):5.}のように、空腹時の薬物服用は、胃腸管副作用を引き起こす主要な原因の1つである。食事に伴う服用は、胃腸管への薬物の刺激を減少させ、副作用を低減し、例えば、NMPAで発表された「如何に医薬添付文書を読むかの12 食中服薬に学問がある」(https://www.nmpa.gov.cn/xxgk/kpzhsh/kpzhshyp/20160503170501830.html)において、食事と一緒に薬物を服用するのは薬物副作用の発生を減らすことができることを説明しており、食べ物と一緒に、又は食事の直後に薬を服用するのは薬物の胃腸管への刺激を大幅に軽減することができるからである。それにより、食事に一緒に服用できるソラフェニブ製剤の開発は、本剤の副作用を低減させ、胃腸管の副作用による薬物の減量を低下させることに重要な意味がある。
【0020】
さらに、Variability of Sorafenib Toxicity and Exposure over Time: A Pharmacokinetic /Pharmacodynamic AnalysisThe Oncologist 2012;17:1204-1212の記載によると、現在、ソラフェニブトシル酸塩錠の臨床的治療用量は、固定用量であり、毎回400mg、1日2回(毎日800mg)であるが、現在発売されている製品は治療時間の延長に伴い、薬物暴露量は次第に低下し、例えば、120日間の服薬は、15日間の服薬と比較して、薬物暴露量は約38%低下しているが、該薬物の暴露量は臨床的治療効果(全生存期間、無増悪生存期間、治療失敗までの時間)に直接関連し、既存販売している製品の臨床治療中に疾患が進展した場合、引き続き、臨床用量を増加し、例えば、毎回400mgの経口投与から毎回600mgに増加し、薬物溶解度及び溶出率に制限され、ソラフェニブの薬物暴露量は13%のみ増加し、臨床的意義はないが[FDA 審査報告書 Bio Pharmacology Review]、3級又は4級の重大な副作用は顕著に増加し、深刻な胃腸管毒性及び皮膚毒性を含み、言い換えれば、既存の市販製品を用いて臨床治療を行って疾患の進展が発生した場合、現在の治療案に基づいて滴定投与(Drug titration)を行うことができず、最適な治療効果を維持する。従って、ソラフェニブ/ドナフェニブの薬剤耐性を克服し、滴定投与を容易にし、製品の治療効果を発揮するのに重大な意味があり、臨床で早急に解決しなければならない難題である。
それにより、ソラフェニブ又はドナフェニブの臨床的薬剤耐性を解決し、吸収が食事の影響を受けず、胃腸管酵素(CYP3A4又はP-gpなど)の影響を受けず、安定した治療効果を持つソラフェニブの新たな製剤の開発は、臨床的に必要があり、既存の販売製剤よりも顕著な臨床的な優位性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明が解决しようとする技術的問題は、ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を提供し、本願で提供されたソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤は、低用量で服用でき、且つ物理的・化学的安定性がよく、Cmax、AUC0-t変動が低く、吸収が食事の影響を受けず、患者に疾患の進展が発生した場合には、滴定投与により最適な治療効果を維持し、耐性の難題を克服するため、患者無増悪生存期間を顕著に延長させ、患者全生存期間を向上させ、治療の失敗時間を遅らせ、より顕著な治療効果及び安全性を持ち、同時に患者のコンプライアンスも高める。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本願は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、ソラフェニブ又はドナフェニブの分子レベルの医薬組成物、自己組織化用高分子材料、及び他の薬学的に許容される添加物を含む低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤であって、前記ソラフェニブ又はドナフェニブの分子レベルの医薬組成物の態様は分子レベルの固体分散体、固溶体、ポリマーナノ粒子、自己乳化型マイクロエマルション、ナノエマルジョン又は分子レベルの混合物である低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を提供する。
前記自己組織化用高分子材料は、ポビドン+ヒドロキシプロピルセルロース、低粘度ポビドン+高粘度ポビドン、ポビドン+コポビドン、ポビドン+ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体、ポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン+酢酸セルロース、ポビドン+架橋型カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポビドン+ポリエチレングリコール、ポビドン+低置換量ヒドロキシプロピルセルロース、ポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポビドン+メタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体、ポビドン+メタクリル酸-アクリル酸メチル共重合体、コポビドン+ヒドロキシプロピルセルロース、コポビドン+ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体、コポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、コポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コポビドン+酢酸セルロース、コポビドン+架橋型カルボキシメチルセルロースナトリウム又はカルシウム、コポビドン+ポリエチレングリコール、コポビドン+低置換量ヒドロキシプロピルセルロース、コポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、コポビドン+メタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体、コポビドン+メタクリル酸-アクリル酸メチル共重合体、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+低置換量ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+架橋型カルボキシメチルセルロースナトリウム又はカルシウム、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+ポリエチレングリコール、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+メタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+メタクリル酸-アクリル酸メチル共重合体からなる群より選ばれる。
【0023】
好ましくは、前記自己組織化用高分子材料は、前記ソラフェニブ又はドナフェニブの分子レベルの医薬組成物に対して10~50wt%である。
好ましくは、前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、HPMC E5又はHPMCK100LVであり、前記自己組織化用高分子材料は、ポビドン、コポビドン、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体、及び疎水性の強いヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートのH等級からの1種とHPMC E5との複合自己組織化用高分子材料であり、複合化割合は、(1~10):1であり、前記自己組織化用高分子材料は、前記ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体及び疎水性の強いヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートのH等級からの1種とHPMCK100LVとの複合自己組織化用高分子材料である、複合化割合は、(1~10):1である。
好ましくは、前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートのアセチル基置換量は、6~16%であり、スクシニル基の置換量は、4~16%である。
好ましくは、前記ポビドンは、平均分子量が34000~1300000又は平均分子量が34000のポビドンと平均分子量が1300000のポビドンが1:1~1:0.1の割合で複合したポビドンである。
好ましくは、前記経口剤の単位用量には、ソラフェニブ又はドナフェニブ20~69mgが含まれる。
【0024】
好ましくは、前記ソラフェニブ又はドナフェニブの分子レベルの医薬組成物には、ソラフェニブ又はドナフェニブ、又はその塩、水和物、溶媒和物、塩の水和物又は溶媒和物、及び担体を含み、前記担体は、コポビドン、ポビドン、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体、ポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロース、低粘度ポビドン+高粘度ポビドン、ポビドン+コポビドン、ポビドン+ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体、コポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、コポビドン+ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体、コポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コポビドン+ポリエチレングリコール、コポビドン+ヒドロキシプロピルセルロース、コポビドン+酢酸セルロース、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+ポビドン又はポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+コポビドンからなる群より選ばれる。
好ましくは、前記ソラフェニブ又はドナフェニブ、又はその塩、水和物、溶媒和物、塩の水和物又は溶媒和物は前記ソラフェニブ又はドナフェニブの分子レベルの医薬組成物的30~60wt%。
【0025】
好ましくは、前記ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤の剤形は、錠剤、懸濁剤、顆粒剤又はカプセル剤である。
好ましくは、前記錠剤の添加物は、充填剤、崩壊剤、流動化剤又は潤滑剤を含み、前記充填剤は、微結晶セルロース及びケイ化微結晶セルロースから選ばれる1種又は2種であり、前記崩壊剤は、架橋型カルボキシメチルセルロースナトリウムから選ばれるものであり、前記流動化剤は、シリカから選ばれるものであり、前記潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム及びフマル酸ステアリルナトリウムから選ばれる1種又は2種である。
好ましくは、前記充填剤の含有量は、前記錠剤に対して30~45wt%であり、前記崩壊剤の含有量は、前記錠剤に対して5~15wt%であり、前記流動化剤の含有量は前記錠剤に対して3~5wt%であり、前記潤滑剤の含有量は、前記錠剤に対して1~5wt%である。
【0026】
本願は、さらに、肝細胞がん、乳がん、原発性肝悪性腫瘍、胆管がん、腎細胞がん、再発性又は難治性固形腫瘍、中枢神経系固形腫瘍、転移性非小細胞肺がん、手術で切除できない肝細胞がん、甲状腺がん、膵臓がん、唾液腺腺様嚢胞がん、甲状腺未分化がん、難治性分化型甲状腺がん、腺様嚢性がん、晩期子宮内膜がん、甲状腺退形成がん、直腸がん、結腸がん、切除不能なIII期又はIV期黒色腫、白血病、急性骨髄性白血病、全ての固形腫瘍又は様々な晩期固形腫瘍の治療又は軽減用医薬品の調製における、前記のソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤の応用。
【発明の効果】
【0027】
本願は、ソラフェニブ又はドナフェニブの分子レベルの医薬組成物、自己組織化用高分子材料、及び他の添加物を含むソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を提供し、ここで、自己組織化用高分子材料は、特定の2種の高分子材料を使用いて複合化して複合自己組織化の構成単位として、2種の高分子材料とソラフェニブ分子とを相乗的に調整し、可逆的で分子間弱相互作用による自己組織化システムを再構築し、ソラフェニブ又はドナフェニブの溶解度、安定性を高めるとともに、CYP3A4/5、CYP2C8/D6及びP-gpによる薬物の早期代謝及び排出を低減させ、得られた新たなソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤は、より低用量で服用でき、より高い薬物暴露量を取得し、且つ安全性を持ち、副作用の発生率がより低く、Cmax、AUC0-tの低変動、低重量/体積、迅速な崩壊、良好な物理的及び化学的安定性を有し、水分の含有量が5%に高くなっても安定した特徴を維持でき、しかも、服用が食物の影響を受けず、同時に患者が治療時間の延長に伴い疾患の進展が発生した場合、滴定投与により、最適な治療効果を実現でき、該ソラフェニブ又はドナフェニブの既存の市販製品の治療過程における薬剤耐性の問題を克服する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明のソラフェニブの立体構造の概略図である。
【
図2】
図2は、本発明のソラフェニブ及ドナフェニブの分子間相互作用による単結晶構造の概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例における高濃度の単一高分子の自己組織化構成単位によるSLFN分子パッキングの調整曲線を示すグラフである。
【
図4】
図4は、本発明の実施例におけるコポビドン複合高分子自己組織化構成単位によるソラフェニブ分子パッキングの相乗的調整曲線を示すグラフである。
【
図5】
図5は、本発明の実施例における低粘度ポビドン複合高分子自己組織化構成単位によるソラフェニブ分子パッキングの相乗的調整曲線を示すグラフである。
【
図6】
図6は、本発明の実施例におけるHPMC AS複合高分子自己組織化構成単位によるソラフェニブ分子パッキングの相乗的調整曲線を示すグラフである。
【
図7】
図7は、本発明の実施例におけるHPMC複合高分子自己組織化構成単位によるソラフェニブ分子パッキングの相乗的調整曲線を示すグラフである。
【
図8】
図8は、本発明の実施例におけるPEG複合高分子自己組織化構成単位によるソラフェニブ分子パッキングの相乗的調整曲線を示すグラフである。
【
図9】
図9は、本発明の実施例におけるHPMCAS-H複合高分子自己組織化構成単位によるソラフェニブ分子パッキングの相乗的調整曲線を示すグラフである。
【
図10】
図10は、本発明の実施例におけるHPMCAS-L複合高分子自己組織化構成単位によるソラフェニブ分子パッキングの相乗的調整曲線を示すグラフである
【
図11】
図11は、本発明の実施例におけるHPMCE5複合高分子自己組織化構成単位によるソラフェニブ分子パッキングの相乗的調整曲線を示すグラフである。
【
図12】
図12は、本発明の実施例におけるHPMC E5と他の高分子を異なる割合で複合化した自己組織化構成単位がソラフェニブ分子パッキングの相乗的調整及び安定性に与える影響-6hを示す縦棒グラフである。
【
図13】
図13は、本発明の実施例における異なる製剤と参照製剤による健康な被験者血中薬物濃度-時間曲線の図である。
【
図14】
図14は、本発明の製剤T1と参照製剤である多吉美による健康被験者の空腹と高脂脂肪食のPK曲線の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明をさらに理解するために、以下、実施例と組み合わせて本発明における好ましい実施形態を説明するが、これらの説明は、本発明の特徴及び利点をさらに説明するためのものであり、本発明の請求項に対する制限ではないことを理解すべきである。
【0030】
従来技術におけるソラフェニブ又はドナフェニブ固体製剤に存在する多くの問題に鑑み、本願は、大規格の難溶性、体内の高変動、薬物分子自体の分子パッキングという問題、経口医薬品が腸管のシトクロムP450酵素/P-gpに起因する薬物吸収の高変動又は低生物学的利用率という問題に対して、薬物の有効性及び安全性を最大限に高めるために革新的な解決策及び構想を提供し、それにより、本願は、具体的には、ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤であって、複合自己組織化構成単位を使用し、同時に分子レベルの医薬組成物の技術を組み合わせることにより、得られたソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤が低用量で服用でき、即ち、多吉美であるソラフェニブトシル酸塩錠剤(Nexavar)の投与量の10%~35%だけで、理想的な治療効果と同じ治療効果を達成でき、又は現在のドナフェニブ錠の投与量の40%~60%でより高い薬物暴露量を取得することができ、それは、よりよい安全性を持ち、副作用の発生率がより少なく、Cmax、AUC0-tの低変動、低重量/体積、迅速な崩壊、物理的・化学的安定性が良好で、水分の含有量が5%と高くても安定性を保つことができる特徴を有し、しかも、服用が食物の影響を受けず、同時に患者が治療時間の延長に伴い疾患の進展が発生した場合、滴定投与により、最適な治療効果を実現でき、該ソラフェニブ又はドナフェニブの既存の市販製品の治療過程における薬剤耐性の問題を克服するソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を提供する。
具体的には、本発明の実施例では、ソラフェニブ又はドナフェニブの分子レベルの医薬組成物、自己組織化用高分子材料、及び他の薬学的に許容される添加物を含む低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤であって、前記ソラフェニブ又はドナフェニブの分子レベルの医薬組成物の態様は、固体分散体、固溶体、ポリマーナノ粒子、自己乳化型マイクロエマルション、ナノエマルジョン又は分子レベルの混合物である低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を提供する。
【0031】
本願に記載の自己組織化用高分子材料は、複合自己組織化構成単位と呼ぶこともでき、ポビドン+ヒドロキシプロピルセルロース、低粘度ポビドン+高粘度ポビドン、ポビドン+コポビドン、ポビドン+ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体、ポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン+酢酸セルロース、ポビドン+架橋型カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポビドン+ポリエチレングリコール、ポビドン+低置換量ヒドロキシプロピルセルロース、ポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポビドン+メタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体、ポビドン+メタクリル酸-アクリル酸メチル共重合体、コポビドン+ヒドロキシプロピルセルロース、コポビドン+ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体、コポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、コポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コポビドン+酢酸セルロース、コポビドン+架橋型カルボキシメチルセルロースナトリウム又はカルシウム、コポビドン+ポリエチレングリコール、コポビドン+低置換量ヒドロキシプロピルセルロース、コポビドン+ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、コポビドン+メタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体、コポビドン+メタクリル酸-アクリル酸メチル共重合体、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+低置換量ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+架橋型カルボキシメチルセルロースナトリウム又はカルシウム、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+ポリエチレングリコール、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+メタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体+メタクリル酸-アクリル酸メチル共重合体からなる群より選ばれる。
本願は、ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤であって、そのうちの複合自己組織化構成単位は、前記ソラフェニブの分子レベルの医薬組成物に対して10~50wt%であり、より具体的には、前記複合自己組織化構成単位は、前記ソラフェニブ又はドナフェニブの分子レベルの医薬組成物に対して20~40wt%であるソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を提供する。
【0032】
前記ソラフェニブ又はドナフェニブの分子レベルの医薬組成物は、固体分散体、固溶体、ポリマーナノ粒子、自己乳化型マイクロエマルション、ナノエマルジョン又は分子レベルの混合物として存在し、前記ソラフェニブ又はドナフェニブの分子レベルの医薬組成物には、ソラフェニブ又はドナフェニブ、又はその塩、水和物、溶媒和物、塩の水和物又は溶媒和物、及び担体を含む。
本願では、前記ソラフェニブ又はドナフェニブ、又はその塩、水和物、溶媒和物、塩の水和物又は溶媒和物は、前記ソラフェニブ又はドナフェニブの分子レベルの医薬組成物に対して30~60wt%であり、より具体的には、前記ソラフェニブ、又はその塩、水和物、溶媒和物、塩の水和物又は溶媒和物は、前記ソラフェニブ又はドナフェニブの分子レベルの医薬組成物に対して35~55wt%である。
【0033】
ソラフェニブ又はドナフェニブの分子レベルの医薬組成物において、前記担体は、水素受容体を供与でき、疎水性基を一定の割合で持つ高分子担体及び/又は少なくとも2種の高分子担体の組み合わせ担体から選ばれ、具体的には、コポビドン、ポビドン、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体(Soluplus)、ポビドンとヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、ポビドンとヒドロキシプロピルメチルセルロース、低粘度ポビドンと高粘度ポビドン、ポビドンとコポビドン、ポビドンとポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体、コポビドンとヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、コポビドンとポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体、コポビドンとヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、コポビドンとポリエチレングリコール(PEG)、コポビドンとヒドロキシプロピルセルロース、コポビドンと酢酸セルロース、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体とヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体とヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体とポビドン、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体とコポビドンからなる群より選ばれ、より具体的には、前記担体は、PVP K30、HPC LF、HPMC E5、VA64、PVP K25+K90、PVP K25+VA64、PVP K30+HPMC AS、PVP K90+HPMC AS、Soluplus又はVA64+HPMC ASから選ばれる。具体的な実施例において、前記ソラフェニブ又はドナフェニブ、又はその塩、水和物、溶媒和物、塩の水和物又は溶媒和物と前記担体の質量比は、1:1である。
【0034】
本願では、前記複合自己組織化構成単位のうちのヒドロキシプロピルメチルセルロースは、Eシリーズ又はKシリーズであることが好ましく、Eシリーズは、低粘度タイプであることがより好ましく、Kシリーズは、K100LVであることがより好ましく、前記複合自己組織化構成単位は、ポビドン、コポビドン、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体、及び疎水性の強いヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートからの1種とHPMC Eとの複合自己組織化構成単位であり、複合化割合は、(1~10):1であり、前記複合自己組織化構成単位は、前記ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体及び疎水性の強いヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートからの1種とHPMC K100LVとの複合自己組織化構成単位であり、複合化割合は、(1~10):1である。前記ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートのアセチル基の置換量は、6~16%であり、スクシニル基の置換量は、4~16%であり、より具体的には、前記アセチル基の置換量は、10~14%であり、前記スクシニル基の置換量は、4~8%である。結晶化抑制剤では、前記ポビドンは、平均分子量が34000~1300000又は平均分子量が34000のポビドンと平均分子量が1300000のポビドンとが1:1~1:0.1の割合で複合化したポビドンである。
具体的な実施例において、前記複合自己組織化構成単位は、具体的には、PVP VA64+HPMCAS H等級、PVP VA64+HPMCAS M等級、PVP VA64+Soluplus、PVP VA64+HPMC、PVP K90+HPMCAS、PVP K90+HPMC、PVP K25+PVP K90、PVP K30+PVP K90、低粘度HPMC+PVP VA64、PVP K90+HPMC K100LV、+ポビドン、HPMCAS H等級+Soluplus、HPMCAS M等級+、HPMCAS L型+Soluplus、HPMC(低粘度)+ポビドン、HPMC(低粘度)+コポビドン又はHPMC(低粘度)+HPMCAS(高疎水性)から選ばれる。
本願では、複合自己組織化構成単位の添加方式は、内添加であってもよく、外添加であってもよく、或いは、一方が内添加であり、もう一方が外添加であり、複合自己組織化構成単位は、コーティング、例えば、粉末コーティング、マイクロペレットコーティング又は錠剤コーティングに添加されることができる。
【0035】
本願に記載のソラフェニブ経口剤では、前記ソラフェニブの分子レベルの医薬組成物の1回用量は、多吉美錠剤(Nexavar)の投与量の10%~35%であり、12.5~30%であることが好ましく、経口剤単位用量には、ソラフェニブ又はドナフェニブ20mg~69mgが含まれ、多吉美錠剤(Nexavar)200mgに相当し、好ましくは25mg、30mg、50mg又は60mgであり、単位製剤の規格は、50~140mgであり、多吉美錠剤(Nexavar)の単回用量400mgに相当し、好ましくは、50mg、60mg、100mg又は120mgである。
本願に記載のドナフェニブ経口剤では、前記ドナフェニブの分子レベルの医薬組成物の毎回用量は、澤普生ドナフェニブトシル酸塩錠の投与量の40%~60%であり、好ましくは45%~55%であり、単位製剤の規格は、25mg、30mg、40mg、45mg、50mg及び55mgであることが好ましく、澤普生ドナフェニブトシル酸塩錠の単回用量100mgを服用することに相当し、50mg、60mgであることが好ましく、澤普生ドナフェニブトシル酸塩錠の単回用量200mgに相当し、好ましくは、80mg、90mg、100mg又は110mgである。
前記ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤の剤形は、錠剤、懸濁剤、顆粒剤又はカプセル剤であり、前記錠剤の添加物は、充填剤、崩壊剤、流動化剤又は潤滑剤を含み、前記充填剤は、微結晶セルロース及びケイ化微結晶セルロースから選ばれる1種又は2種であり、前記崩壊剤は、架橋型カルボキシメチルセルロースナトリウムから選ばれるものであり、前記流動化剤は、シリカから選ばれるものであり、前記潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム及びフマル酸ステアリルナトリウムから選ばれる1種又は2種である。前記充填剤の含有量は、前記錠剤に対して30~45wt%であり、好ましくは30~40wt%であり、前記崩壊剤の含有量は、前記錠剤に対して5~15wt%であり、好ましくは5~10wt%であり、前記流動化剤の含有量は前記錠剤に対して3~5wt%であり、前記潤滑剤の含有量は、前記錠剤に対して1~5wt%である。本願では、前記錠剤の崩壊時間≦5minである。
【0036】
本発明は、さらに、腫瘍の治療薬の調製における上記のソラフェニブ組成物を含む製剤の応用を提供し、前記腫瘍は、具体的には、肝細胞がん、乳がん、原発性肝悪性腫瘍、胆管がん、腎細胞がん、再発性又は難治性固形腫瘍、中枢神経系固形腫瘍、転移性非小細胞肺がん、手術で切除できない肝細胞がん、甲状腺がん、膵臓がん、唾液腺腺様嚢胞がん、甲状腺未分化がん、難治性分化型甲状腺がん、腺様嚢性がん、晩期子宮内膜がん、甲状腺退形成がん、直腸がん、結腸がん、切除不能なIII期又はIV期黒色腫、白血病、急性骨髄性白血病、及び全ての固形腫瘍、様々な晩期固形腫瘍である。
本発明で提供される製剤は、単剤とするか、又は他の薬物と併用して上記腫瘍の治療に使用されることができ、他の薬物としては、PD-1阻害剤、ベネトクラクス(Venetoclax)及び/又はデシタビン(Decitabine)、TACE及び/又はI-125シード線源(Iodion-125 seeds brachytherapy)との併用治療、薬剤溶出ビーズを用いた肝動脈化学塞栓療法(Drug-eluting bead transarterial chemoembolization)との併用治療、ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)との併用、Toripalimab(トリパリマブ)との併用、Atezolizumab(アテゾリズマブ)との併用、Atezolizumab+Bevacizumab(ベバシズマブ)との併用、TACE+Tilelizumabとの併用、組換えヒトアデノウイルス5型注射剤(Recombinant Human Adenovirus Type 5 injection)との併用、MTL-CEBPAとの併用、Vemurafenib(ベムラフェニブ)との併用、Oxaliplatin(オキサリプラチン)及び5-フルオロウラシル、エリブリン(Eribulin)とToripalimab、Gemox又はエベロリムス(Everolimus)の併用、Doxorubicin(ドキソルビシン)及びLipiodol(リピオドール)との併用、Oxaliplatin(オキサリプラチン)、Raltitrexed(ラルチトレキセド)及びEpirubicin(エピルビシン)との併用、Toripalimaとの併用、PD-1 mAbとの併用、Hydroxychloroquine(ヒドロキシクロロキン)との併用、CVM-1118との併用、肝動脈注入化学療法(Hepatic Artery Infusion Chemotherapy)(Oxaliplatin , fluorouracil(フルオロウラシル),及びleucovorin(ロイコボリン))との併用、肝動脈注入化学療法(Hepatic Artery Infusion Chemotherapy)( Irinotecan(イリノテカン), Oxaliplatin , fluorouracil, 及びleucovorin)との併用、YIV-906との併用、Tislelizumab(チスレリズマブ)との併用であることが好ましい。
【0037】
さらに、各疾患治療分野におけるソラフェニブ又はドナフェニブの単剤又は多剤併用又は併用療法の臨床応用を広げる。
例えば、前記の本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を末期肝臓がんの一線治療薬物として含み、PD-1阻害剤、例えば、カムレリズマブ(Camrelizumab)と併用でき、1日目にカムレリズマブ200 mgを2週間1回静脈内注射し、翌日から該医薬組成物ソラフェニブ又はドナフェニブ50mg~120mgを1日2回経口投与する。
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んでTACE療法と併用して肝細胞がんを治療し、TACE療法は、化学療法薬(ドキソルビシン(Doxorubicin)及びリピオドール(Lipiodol))を注射し、ソラフェニブ又はドナフェニブを毎回50~120mg、1日2回を経口投与する。
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んでToripalimabと併用し、切除不可能な肝細胞がん、門脈腫瘍栓の治療に適用し、患者のcohort A(コホートA)又はcohort B(コホートB)に基づいて、ソラフェニブ又はドナフェニブを毎回50~120mg、1日1回又は1日2回投与する。
【0038】
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んでSBRT+TACEとの逐次治療により切除不可能な肝細胞がん、門脈腫瘍栓を治療し、ソラフェニブ又はドナフェニブを毎回100~120mg、1日2回を経口投与する。
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んでHydroxychloroquine(ヒドロキシクロロキン、HCQ)と併用して肝細胞がんの治療に応用し、ソラフェニブ又はドナフェニブを毎回100~120mg、1日2回経口投与し、ヒドロキシクロロキン(HCQ)を400mg、1日1回経口投与する。
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んでPembrolizumabモノクローナル抗体と併用して成人の末期肝細胞がんの治療に応用し、治療の1日目に、Pembrolizumabを静脈内注射し、30分間内に注射を完了し、治療の1~21日目にソラフェニブ又はドナフェニブを毎回100~120mg、1日2回を経口投与し、3週間ごとに1コースを繰り返す。
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んでCVM-1118と併用し、末期肝細胞がんの治療に応用し、CVM-1118を150mg又は200mg、1日2回経口投与し、ソラフェニブ又はドナフェニブを毎回50~120mg、1日2回経口投与し、治療は28日間を1サイクルとする。
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んで肝動脈注入化学療法(Hepatic arterial infusion chemotherap)(Oxaliplatin , fluorouracil, 及び leucovorin)と併用し、肝細胞がんの治療に応用し、ソラフェニブ又はドナフェニブを毎回50~120mg、1日2回経口投与する。
【0039】
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んで肝動脈注入化学療法(Hepatic arterial infusion chemotherapy)(Irinotecan, Oxaliplatin , fluorouracil, 及びleucovorin)と併用し、肝細胞がんの治療に応用し、ソラフェニブ又はドナフェニブを毎回50~120mg、1日2回経口投与する。
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んでDEB-TACEと併用して肝細胞がんを治療し、ソラフェニブ又はドナフェニブを毎回50~120mg、1日2回経口投与する。
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んでYIV-906と併用してB型肝炎ウィルス(HBV)に感染している末期肝細胞がん患者を治療し、治療は28日間を1サイクルとし、ソラフェニブ又はドナフェニブを毎回50~120mg、1日2回を28日間連続経口投与し、YIV-906を毎回600mg、1日2回、毎週4日間投与し、3日間停止する。
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んでTACE、Tislelizumabと併用して手術不可能な肝細胞がんの治療に応用し、第1のTACE治療後の3~7日目に経口ソラフェニブ又はドナフェニブを100~120mg、1日2回経口投与するとともに、Tislelizumabを毎回200mg、3週間1回静脈内注射し、臨床結果に基づいてTACE治療の繰り返し回数を決定し、Tislelizumabの治療は24ヶ月まで続く。
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んでVemurafenibと併用して膵臓がんの治療に応用し、Vemurafenibを720mg、1日2回経口投与し、毎朝にソラフェニブ又はドナフェニブを100~120mg、毎日午後にソラフェニブを50~60mg服用する。
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んでMTL-CEBPAと併用してウイルス感染による肝細胞がんの治療に応用し、毎週にMTL-CEBPAを130mg/m2で静脈内投与し、3週間連続投与して1週間停止するとともに、ソラフェニブ又はドナフェニブを毎回100~120mg、1日2回経口投与する。
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んでTACE、Tilelizumabと併用してBCLC分類ステージC肝細胞がんを治療し、まず、TACE治療を開始し、TACE治療の1週間内にTilelizumabを240mg、3週間1回静脈内投与し、TACE治療の1週間内にソラフェニブ又はドナフェニブの毎回100~120mg、1日2回経口投与を開始する。
【0040】
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んでAtezolizumabと併用して手術不可能な末期肝細胞がんの治療に応用し、治療周期の1及び21日目にAtezolizumab 1200mgを静脈点滴し、治療周期内にソラフェニブ又はドナフェニブを毎回100~120mg、1日2回、毎日経口投与し、効果的になれば複数の治療コースを病状が進展するか耐えられなくなるまで繰り返することができる。
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んでTACE療法と併用して肝細胞がんを治療し、TACE療法は、化学療法薬 (Oxaliplatin 200mg、raltitrexed 4mg、cTACEでは、Epirubicin 20mg 、又はdTACEでは、70mg)を注射することであり、ソラフェニブ又はドナフェニブを毎回50~120mg、1日2回を経口投与する。
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んでTACE 療法と併用して手術不可能な肝細胞がんを治療し、第1のTACE治療後の3~7日間で、ソラフェニブ又はドナフェニブを100~120mg、1日2回経口投与する。臨床治療の結果に基づいて病気の進展や患者が耐えられなくなるまでTACEの繰り返し回数及びソラフェニブの治療を決定する。
【0041】
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んでVenetoclax及びDecitabineと併用して成人急性髄性白血病( FLT3-ITD アレル比が比較的に高くなり)の治療に応用し、各治療周期の1~5日目に、Decitabine 20 mg/m2を静脈内投与するとともに、Venetoclaxを100mgから400 mg(28日間)に徐々に増量して1つの治療周期が終了するにように経口投与する。患者がFLT3-ITD の高アレル比を伴う場合には、各治療周期の3日目から、ソラフェニブ又はドナフェニブを毎回100~120mg,1日2回、28日間の1つの治療周期が終了するまでに服用する。
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んで急性白血病の発作、再発、及び造血幹細胞移植に応用し、ソラフェニブ又はドナフェニブを毎回100~120mg、1日2回経口投与し、耐えられなければ毎日50mg~240mgに減量することができる。
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んでHAIC(130 mg/m2 Oxaliplatin、2400 mg/m2 5-fu又は85 mg/m2 Oxaliplatin、及び2400 mg/m2 5-fu)と併用し、末期の手術不可能な肝細胞がんの治療に応用し、ソラフェニブ又はドナフェニブを毎回100~120mg、1日2回投与する。
上記のいずれかの治療方案が治療時間の延長に伴い疾患の進展が発生した場合には、本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤は、臨床治療結果に基づいて滴定投与を行うことができ、例えば、毎回100~120mgの経口投与から毎回125~150mg又は毎回150~210mg又は毎回175~240mg又は毎回200~270mg又は毎回225~300mg又は毎回250~330mg又は毎回275~360mg又は毎回300~400mg、1日2回経口投与する。
【0042】
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んで上記のいずれか1つの他の治療と併用するか単独に使用することでは、患者の全生存期間及び無増悪生存期間を延長させ、高薬物暴露量による副作用を低減させ、患者の耐性及びコンプライアンスを高めるために、薬物の暴露量は治療効果と関連するが、ある副作用とも一定の関連性があり、暴露量が高いほど、深刻な手足皮膚反応(Hand Foot Skin Reaction、HFSR)が重篤であり、患者の耐性に基づいて、まず、本発明の低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤50mg~60mgを一定の時間経口投与し、そして、滴定投与を行い、50mg~60mg、1日2回とすることになり、該用量を維持して一定時間治療した後、患者の耐性に基づいて、用量を毎回50mg~60mg、1日1回に調整し、一定時間治療し、患者が重大な副作用を起こして耐えられない場合には、投与方案を用量50mg~60mg、1日おきに1回服用するように調整するか、又は疾患の進展及び患者の耐受に基づいて周期的に調整する。
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含み、上記のいずれか1つの他の治療と併用するか、又は単剤で使用し、患者の全生存期間及び無増悪生存期間を延長させ、高薬物暴露量による副作用を低下し、患者の耐性及びコンプライアンスを高めるために、ソラフェニブ又はドナフェニブを毎日50~240mg、1日1回服用することができる。
本願で提供されたソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤中の自己組織化用高分子材料は、特定の2種の高分子材料を使用して複合自己組織化構成単位として複合化し、2種の自己組織化用高分子材料とソラフェニブゲスト分子が相乗的に調整され、ソラフェニブ又はドナフェニブ分子の本来の分子間相互作用による分子パッキングを阻止し、新しいマイク環境中で複合自己組織化構成単位と新しい自己組織化システムを再構築し、得られた経口剤の吸収過程中に胃腸粘膜の上皮細胞中のシトクロムP450酵素であるCYP3A4/A5、CYP2D6、CYP2C8又はP-gpによる薬物の早期分解又は排出を減少させるとともに、分子レベルの組成物から薬物が迅速に溶出した後にソラフェニブ分子間の相互作用により分子パッキングが迅速に発生して吸収を低下させることもできる。従って、より低用量で服用でき、安全で、副作用の発生率がより少なく、Cmax、AUC0-tの低変動、低重量/体積、迅速崩壊、良好な物理的及び化学的安定性を有し、水分の含有量が5%に高くなっても良好な物理的・化学的安定性を維持できる。
【実施例】
【0043】
本発明をさらに理解するために、以下、実施例を組み合わせて本発明で提供された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤及びその応用を詳しく説明するが、本発明の保護範囲は以下の実施例に限定されない。
ソラフェニブの化学構造において生分子間相互作用が発生する可能な基は
図2に示すように、いずれもアミドに連結するメチル基とは関係がないため、ソラフェニブでもドナフェニブでも、分子間相互作用、ソラフェニブ又はドナフェニブと自己組織化構成単位における高分子材料の有効基との相互作用タイプ、作用の強さ、分子認識はいずれも一致している。
従って、以下、ソラフェニブを例として説明するが、ドナフェニブにすべて適用する。
【0044】
実施例1 自己組織化構成単位のスクリーニング
ソラフェニブ又はソラフェニブトシル酸塩の各々を適量秤量し、ジメチルスルホキシドをそれぞれ少量加えて溶解させ、アセトニトリルで希釈して毎1mlあたりソラフェニブ約50mgを含む高濃度ストック溶液を作製し、ソラフェニブが分子レベルで溶液に分散することを確保した。
0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含むpH6.8のリン酸塩緩衝液を基礎媒介(pH6.8リン酸塩+0.1%SDS)として、基礎媒介は、経口固形製剤溶出試験のガイドラインに従って調製され、高分子材料としてポビドン(PVP ) PVP K25、PVP K30、PVP K90;コポビドン(ビニルピロリドンと酢酸ビニルとの共重合体)、例えば、PVP VA64;醋酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースコハク酸エステル(HPMCAS)、例えば、HPMCASのH等級(メトキシ基の含有量は22%~26%、ヒドロキシプロポキシ基の含有量は6%~10%、アセチル基の含有量は10%~14%、スクシニル基の含有量は4%~8%)(又はそれに相当する型番)、HPMCAS MG(メトキシ基の含有量21%~25%、ヒドロキシプロポキシ基の含有量5%~9%、アセチル基の含有量7%~11%、スクシニル基の含有量10%~14%)(又はそれに相当する型番)、HPMCAS LG(メトキシ基の含有量20%~24%、ヒドロキシプロポキシ基の含有量5%~9%、アセチル基の含有量5%~9%、スクシニル基の含有量14%~18%)(又はそれに相当する型番)の顆粒型又は粉末型;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、例えば、HPMCE5、 K100LV;ポリエチレングリコール、例えば、PEG 8000、Soluplusなどを適量秤量し、pH6.8のリン酸塩+0.1%SDSで溶解させて異なる同濃度の媒介を作製し、用意した。
上記の基礎媒介50ml、又は自己組織化構成単位として高分子材料を一定の質量%で含む基礎媒介をそれぞれ計り取り、100mlの共栓三角フラスコに入れ、37℃でのシェーカーに振とうして37℃までにインキュベートし、各共栓三角フラスコにソラフェニブのストック溶液1.0ml(1000μg/mL)をそれぞれ加え、37℃で均一になるように超音波分散を行った後、37℃での恒温振とうシェーカーに移し、0.5h、1h、2h、3h、4h、及び6hでサンプリングし、37℃、13000rpmで遠心分離し、上澄み液を適量採取し、希釈剤として50%-アセトニトリルを加えて希釈し、HPLC法により異なる自己組織化構成単位を含む媒介で構築されたシステム中にも分子として存在するソラフェニブの濃度を検出し、結果は、下表1に示した。
【0045】
ソラフェニブ分子の立体構造及び単結晶構造は、
図1に示すように、カルボキサミドにおけるN4水素とピリジンにおけるN3とは分子内水素結合を形成しやすいが、ウレイド基のN1、N2上の水素は、他の分子上のカルボキサミドのO1と分子間水素結合、疎水効果、π-πスタッキング相互作用を形成しやすいため、ソラフェニブ分子は溶液に溶解された後に分子間相互作用によって分子パッキングを迅速に形成し、最終的に固体超分子自己組織化システムを形成して溶液から析出されることになり、
図2に示した。
【0046】
【0047】
以上の結果及び
図1より示すように、基礎媒介(自己組織化構成単位を含まず)と比較して、0.5%-HPMC K100LV以外の他の高分子材料を構成単位とする単独使用は、溶液中のソラフェニブ分子パッキングの発生に対して一定の調整作用があるが、インキュベート時間の延長につれて分子の熱運動が増加し、分子間の形成水素結合の作用機会が大きくなり、分子パッキングは経時的に増加することが分かった。0.5%-ポビドン(PVP K25-K90、N-ビニルピロリドンのポリマー)、0.5%-コポビドン(PVPVA64)、0.5%-Soluplus、0.5%-HPMCASのH等級(アセチル基10%~14%、スクシニル基4%~8%)は、いずれもソラフェニブ分子パッキングに良好な調整作用を持ち、6hで測定した自己組織化システム中のソラフェニブ濃度は208.61μg/mL~759.31μg/mLであり、いずれも基礎媒介の6hで測定された濃度(5.61μg/mL)よりも顕著に高くなり、基礎媒介と比較しては、0.5% Soluplus及び0.5% HPMCASのH等級で構築された自己組織化システムは、ソラフェニブの封入率が高く、それぞれ75.9%及び63.4%であり、少なくとも100倍高めることが可能で、0.5% Soluplus及び0.5%HPMCASのH等級で構築された自己組織化システムは、経時的に封入した薬物が緩やかな上昇する傾向があり、その原因は、Soluplus及びHPMCASのH等級はソラフェニブ分子と水素結合を競合的に形成する機会以外は、同時に強い疎水作用が決定的な役割を果たす。他のポビドンシリーズ、コポビドンシリーズは、インキュベート時間の延長につれて、ソラフェニブ分子が徐々に分子パッキングを発生するが、6hで測定した自己組織化システム中のソラフェニブの濃度は依然として基礎媒介の34~55倍になり、ソラフェニブ分子パッキングに対する高分子量のK90の調整作用はK25、K30及びVA64よりも優れたので、高粘度のK90はソラフェニブ分子自体の熱運動を制限し、分子間で水素結合を形成する機会を低減させると推測される。
【0048】
0.5%-コポビドン(例えば、PVP VA64)は、酢酸ビニル-N-ビニルピロリドンの共重合体であり、中でも、共重合体においてN-ビニルピロリドンが約60%を占め、酢酸ビニルが約40%を占めるため、同じ質量分率のコポビドンの疎水性は、ポビドンシリーズよりも優れたとともに、コポビドンが供与可能な水素受容体の密度はポビドンとは異なり、ソラフェニブ分子の油水分配系数LogPは約5.6であり、疎水性が高くなるため、ソラフェニブ分子パッキングに対する0.5%-PVP VA64の調整作用は、ポビドンシリーズの低粘度K25、K30よりも優れたが、後期に自己組織化システム安定性を維持する能力はK90よりもやや劣っている。
0.5%-ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフト共重合体(Soluplus)は、コポビドンと比較して、13%の親水性基(PEG6000)を増加した以外は、同時に59%のビニルラクタム基及び30%の酢酸ビニルのエステル基の疎水性はポビドン及びコポビドンよりも優れ、即ち、疎水性相互作用を与えるとともに、親水性基とソラフェニブ分子とは水素結合を競合的に形成するため、Soluplusが関与して構築された超分子自己組織化システムはソラフェニブ分子パッキングに対する相乗的調整能力が最も強く、且つ構築された超分子自己組織化システムは最も安定し、封入率も最も高くなった。
0.5%-ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMC AS)は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース (HPMC)のアセテートとコハク酸エステルの混合体であり、スクシニル基が徐々に増加するに伴ってアセチル基が徐々に減少し、その疎水性逐は徐々に弱まり、スクシニル基及びアセチル基の置換量に従って一般的に販売規格の3つがあり、例えば、H等級(スクシニル基は4%~8%、アセチル基は10%~14%である。)、L型(スクシニル基は14%~18%、アセチル基は5%~9%である。)があり、M等級は両方の間にあり、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートは、水素受容体及び水素供与体を与えることができ、そのスクシニル基は弱塩基性薬物とイオン相互作用が発生することもでき、疎水性薬物と疎水作用が発生するとともに、水溶液と適当的なpH条件下で安定な超分子自己組織化システムを形成するため、そのH等級は、ソラフェニブ分子パッキングに対する相乗的調整作用がL又はM等級よりも強く、長時間安定を維持することができる。具体的には、
図3に示した。
【0049】
以上より、ソラフェニブで調製された分子レベルの医薬組成物、例えば、固体分散体、固溶体、ポリマーナノ粒子、自己乳化型マイクロエマルション、ナノエマルジョン又は分子レベルの混合物の上で、要解决ソラフェニブ分子自身の構造が超分子自己組織化システムを形成しやすく固体になり、薬物の吸収に影響を与え、超分子自己組織化構成単位として選択する高分子材料は、一定の数量の水素受容体、水素供与体を持つ基以外は、ソラフェニブ分子の特殊な構造及び強い疎水特性について、さらに十分な疎水作用及びイオン作用を与えれば、サブシステムと超分子システム全体のバランスを維持でき、より多くのソラフェニブ分子を新たに構築された超分子自己組織化システムに長時間にわたって安定して封入した。
しかし、各種の高分子材料は医薬用添加物として、特に、長期間服用する薬物に対して、いずれも最大日安全用量を持ち、また、処方におけるある高分子材料の含有量は高すぎると(0.5%質量分率、腸液は250mLで計算し、単位製剤中に含まれる添加物は約125mgであり、毎回2つの製剤単位、1日2回を服用する必要とすれば、毎日に服用する該担体量は500mgになり、多くの添加物はいずれも達成できない。)、調製プロセス、溶出、崩壊挙動、物理的安定性、化学安定性の変化にも招致し、所期の結果を達成できない場合が多い。従って、上記の研究を基礎として、発明者は、異なる特性がある高分子材料の2つ又はそれ以上を複合化して超分子自己組織化システムの構成単位を共にとすることにより予期せぬ効果を得ることを発見した。具体的な態様及び実験結果は、以下の通りである。
【0050】
【0051】
【0052】
上記の結果より、コポビドン、ポビドン又はSoluplusの用量を半分低減させ、他の高分子材料と質量比にて1:1で複合化して使用する場合には、単一高分子材料の日用量を顕著に低減させた以外は、予想外の相乗的調整効果も発見され、具体的には、
図4~7に示した。
【0053】
コポビドンは、PVP VA64を例として、Soluplus又はHPMCAS H等級と比較して、親水性基が不足し、また、水素供与体基が不足するが、また、ソラフェニブと比較して、疎水作用はSoluplusよりも弱い。ポビドンシリーズは、コポビドンの特性を有する以外は、疎水作用がコポビドンに劣る。0.25%-(PVP-VA64)と0.25%のHPMCASのH等級又はHPMCASのM等級又はSoluplusと複合化して使用すると、いずれも単独したPVP VA64の不足を顕著に補うことができ、6hで測定した自己組織化システムにおけるソラフェニブの濃度は、いずれも700μg/mLであり、同様に、0.25%-(PVP-VA64)と親水性のHPMCとの複合化にもソラフェニブ分子パッキングへの顕著的な調整作用を持ち、6hで測定した自己組織化システムにおけるソラフェニブの濃度は、335~458μg/mLに維持し、複合担体中のいずれかの単一高分子材料が達成できる作用効果よりも顕著に高くなった。0.25% PVPVA64と0.25% PEG8000の複合では、PEG8000の高度な親水性のため、0.5%-PVPVA64と比較して、ソラフェニブ分子パッキングに対する相乗的調整作用は顕著に低減した。
ポビドンシリーズについては、低粘度では、PVP K25を例として、高粘度では、PVP K90を例として、0.25%(PVP+HPMCAS)、0.25%(PVP+HPMC)シリーズはいずれも高質量分率のいずれか1つの高分子材料の単独した応用よりも優れ、特に、0.5%-HPMCAS M及びL、又は0.5%-PVP VA64又は0.5%-PVP又は0.5%HPMCE5、0.5%HPMC K100LVよりも顕著に優れ、各々の高分子材料構造中の親水基・疎水性基及び水素受容体、供与体を与える能力により、自己組織化構成単位を複合化して単一高分子材料及び商業化に利用可能な高分子材料の制限を補足し、薬物自身の構造及び分子間相互作用の分類に基づいて、合理的に複合化を行うことができる。さらに予想外なことは、低粘度PVPK25、K30と高粘度PVP K90の複合化による使用では、ソラフェニブの分子パッキングに対する相乗的調整作用が単独した高分子材料の1つの作用効果よりも優れた。0.25%-PVP(K25+K90)では、0.5h~6hでソラフェニブがいずれも718~630μg/mLに維持できるが、0.5%-PVPK25、0.5%-PVP K90を自己組織化構成単位として、6hで測定したシステムにおけるソラフェニブの濃度は209~310μg/mLである。
0.25%-(PVP-VA64/PVP+HPMC)シリーズの複合自己組織化構成単位の作用効果でも、高質量分率のいずれか1つの高分子材料の単独した応用よりも顕著に優れ、0.5% HPMCはソラフェニブ分子パッキングに対する相乗的調整能力が悪くなり、基礎媒介と比較して、基本的に違いはないが、0.25%-(PVP-VA64/PVP+HPMC)複合化後の効果は、0.5%-PVP VA64、0.5%-PVP及び0.5%-HPMCよりも顕著に優れ、0.25%(PVP-VA64+HPMC)群では、低粘度HPMCと高粘度HPMCとコポビドンが複合化して使用した後に単独した応用よりも顕著に優れたが、低粘度HPMCとPVP VA64が複合化した後にソラフェニブ分子パッキングに対する相乗的調整効果は、高粘度HPMC K100 LVよりも顕著に優れた。0.25%(PVP+HPMC)群では、PVP K25は、高・低粘度HPMCに対する相乗的調整効果が基本的に一致した。
【0054】
しかし、全ての高分子材料の複合化応用はいずれもソラフェニブ分子パッキングに対する相乗的調整効果を持っているわけではなく、例えば、ポビドン、コポビドン、SoluplusとPEG8000との複合化は、基礎媒介に相当し、
図8に示した。
Soluplusは、ポビドン、コポビドン、HPMCAS シリーズ、HPMCシリーズと複合化して超分子自己組織化の構成単位として、それぞれの質量分率を半分に低減した上で、Soluplusの高質量分率が達成できる相乗効果を維持している。Soluplusの大きな用量、悪い成型性、及び有効成分の安定性への影響などの問題を解決するために新しい構想を提供した。
0.25%-PVP K90と低疎水性基を持つHPMCASシリーズ又はHPMCとの複合化応用では、顕著的な相乗的調整効果も発見され、HPMCASシリーズの高親水基含有量的スクシニル基(L型、M等級)は、ソラフェニブにイオン作用を与えるとともに、ソラフェニブ分子間での水素結合を形成しやすい基と競合的に作用することによりその元の自己組織化システムを破壊することができ、PVP K90は、HPMCAS(L型、M等級)、HPMCの疎水性不足による欠陥を補足するとともに、分子の熱運動による相互接触の機会を低減させ、分子間水素結合の形成を減少させ、0.25%-PVP K90+0.25%-HPMC K100LVの作用効果でもこれを裏付けているが、高分子材料上の水素供与体又は受容体とソラフェニブ分子間との水素結合の競合及び疎水効果はさらに顕著的になる。
【0055】
表4は、HPMCASシリーズ(疎水性アセチル基、親水性スクシニル基の含有量が異なる。)と他の高分子材料の複合化応用で構築された超分子自己組織化システムの性能データ表である。
【0056】
【0057】
表4より、HPMCASシリーズと他の高分子材料の複合化応用では、顕著な選択性を示し、0.25%-HPMCASのH等級(スクシニル基は4%~8%、アセチル基は10%~14%である。)とポビドン、コポビドン、Soluplusとは質量分率を低減した後に使用されても依然として元の高質量分率時の高い可溶化・結晶化抑制効果を維持し、6hで測定した自己組織化システム中ソラフェニブの濃度は約793~818μg/mLであり、封入率が81.8%に高くなり、0.25%-HPMCASのH等級と等質量分率の親水性高分子材料とが複合化される場合には、相乗的調整能力は経時的に徐々に低下した。HPMCASのL型と同じ質量分率のHPMCASのM等級とを組み合わせた後に、構築された複合自己組織化構成単位における疎水性アセチル基は、約6%~10%であり、親水性のスクシニル基は、約12%~16%であり、その達成できる相乗的調整効果はHPMCAS H等級と同等であり、0.5%-HPMCAS L型又は0.5%-HPMCAS M等級の単独した応用をはるかに超えており、これは製剤製品の開発にとって非常に重要であり、両方の異なる配合比に基づいて製品の体内溶出及び放出特性を調節することができる。HPMCAS L型とコポビドン、ポビドンとを複合化すると、両方は互いに長所を取って短所を補い、相乗的に作用することができる結果は、いずれも、いずれか1つの高分子材料の単独した応用による効果を超える。0.25%HPMCAS L型と0.25% Soluplusとを複合化すると、それぞれの用量を低減させるとともに、製剤技術の実行可能性を高め、同時に薬物のin vivoでの設計された放出挙動に基づいて放出を調整することができる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースEシリーズによると、一般的に、メトキシ基の含有量は、約29%であり、ヒドロキシプロピル基の含有量は、約12%であり、その構造上での水素供与体、受容体の数は、HPMCASよりも高くなり、HPMCASよりも親水性であるため、単独した応用ではソラフェニブ分子パッキングの形成を調整する能力がない。しかし、HPMCASと疎水性がより強いポビドン、コポビドン、Soluplusとを複合化した後、システム中での水素供与体数及び受容体数を変化させるとともに、構築されたシステムをさらに疎水化させがが、インキュベート時間の延長につかれ、例えば、6時間のインキュベート際に、低粘度のポビドン、コポビドン及びHPMCが複合化して構築された超分子システムにおいてソラフェニブが緩やかにパッキングしたが、高粘度ポビドンが6hまでに緩やかに成長した。0.25%-HPMC(低粘度)と同じ質量分率のポビドン、コポビドン、HPMCASの中・高疎水性型番との複合化応用では、いずれも顕著な相乗的調整作用を示し、作用結果は単独したいずれか1つの達成できる調整効果よりも優れた。具体的は、
図9、10に示した。
【0058】
HPMCは、Eシリーズを例として、そのメトキシ基の平均含有量は、約29%であり、ヒドロキシプロピル基の平均含有量は10%であり、HPMCASと比較して、親水性基がより多く、疎水性がHPMCASよりも悪いため、疎水性複合結晶化抑制剤の質量分率を1:2になるように増加させると、その可溶化・結晶化抑制能を顕著に高めることができ、中でも、0.5% ポビドン、HPMCAS-Hと0.25% HPMCE5とを複合化して使用し、より疎水性添加物をさらに添加するとソラフェニブに対する可溶化及び抑制析晶作用を増強させることができるが、0.5% コポビドンとSoluplusはより明らかな優位性を示さず、詳しくは、
図11及び
図12に示した。
HPLCの分析方法は、以下の通りである。
Agilent1260による高速液体クロマトグラフィー、4液勾配低圧ポン、カラムオーブン、オートサンプラー、紫外線検出器、オンライン脱気装置を使用し、パラメータを表5に示した。
【0059】
【0060】
実施例2 低担体用量分子レベル医薬組成物の調製
ソラフェニブ(SLFN)/ソラフェニブトシル酸塩(TSSLFN)をメタノール-ジクロロメタン(1:3)の混合溶媒に加え、30~33℃で撹拌して溶解させ、主薬と混合溶媒の割合は1:100であり、さらに、担体を加えて溶解させ、担体用量として主薬と担体の割合で1:1であり、噴霧乾燥し、給風温度120℃、出風温度60℃に設定し、窒素ガスをキャリアガスとした。
【0061】
【0062】
以上の結果より、低担体割合の条件下で、コポビドン、ポビドン、コポビドン+HPMCAS、HPMC E5、Soluplusを担体として分子レベル医薬組成物を形成することができる。
【0063】
実施例3 錠剤サンプルの調製
調製プロセス:実施例2に基づいて分子レベル医薬組成物(SD)を調製し、SD、自己組織化構成単位、処方量半分の充填剤、崩壊剤、処方量半分の潤滑剤を均一に混合し、乾式造粒し、残りの処方量半分の充填剤、流動促進剤、処方量半分の潤滑剤を加え、均一に混合し、打錠した。錠剤サンプルの処方は、表7に示した。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
溶出試験では、パドル法により、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)のpH6.8リン酸塩緩衝液900mL、100rpm、37℃という条件を使用した。サンプリング及びサンプル処理方法では、10 mLサンプリングし、PESろ過膜(直径25mm、孔径0.45μm)でろ過し、濾液8mLを捨て、濾液1~2 mLを採取し続け、溶出カップに媒介10mLを補充した。ろ過後に、サンプルを解析に供与し、希釈後に測定した。参照製剤(RLD)は、1錠(200mg)、自制製剤は、4錠(200mg)を投与した。溶出率の検出は、HPLC法により行い、溶出結果は、下表に示した。
【0070】
【0071】
【0072】
以上の結果より、処方F1~F42の累積溶出率はいずれもRLD及びF43(低主薬の含有量分子レベル医薬組成物)、DB1よりもはるかに高くなり、また、製剤において複合自己組織化構成単位はソラフェニブ分子パッキングに対する相乗的調整効果がより良いことが分かった。
【0073】
実施例4 錠剤の添加物、水分による錠剤の硬度、崩壊、製剤安定性の考察
調製プロセス:実施例2に従って固体分散体(SD)を調製し、SD、結晶化抑制剤、処方量半分の充填剤、崩壊剤、処方量半分の潤滑剤を均一に混合し、乾式造粒し、剰余処方量半分の充填剤、流動促進剤、処方量半分の潤滑剤を加え、均一に混合し、打錠した。水分の測定は、中華人民共和国薬局方2020年版第4部通則0831第1法に従って行った。
錠剤の処方は、下表に示した。
【0074】
【0075】
【0076】
硬度については、錠剤硬度計を用いて検査を行い、6錠を測定し、平均値を取り、崩壊時間については、崩壊試験器を使用して試験を行い、6錠を測定し、平均値を取り、CTF-アニリン、総不純物については、HPLC法により検出し、結晶質の含有量については、ラマン分光法を用いて測定し、結果は表10に示し、安定性実験的考察条件としては、40℃±2℃/RH75%±5%の加速試験箱で考察した。安定性考察を行った錠剤は、アルミニウム・プラスチック複合フィルムに加えて二重アルミ箔包装を追加した。
【0077】
【0078】
以上のデータより、錠剤充填剤である微結晶セルロース、ケイ化微結晶セルロースはラクトース、マンニトールより明らかに優れ、用量範囲は、錠剤の全重量に対して30~45%である。崩壊剤は、架橋型カルボキシメチルセルロースナトリウムであることが好ましく、用量が錠剤の全重量に対して5~15%であり、錠剤には潤滑剤も含まれ、好ましくはステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウムであり、より好ましくはステアリン酸マグネシウムである。好ましくは、処方で調製された製剤は、5min以内に迅速に崩壊することができる。
以上のデータより、高水分の条件下で、充填剤が微結晶セルロース、ケイ化微結晶セルロースであり、崩壊剤が架橋型カルボキシメチルセルロースナトリウムである錠剤を採用し、ソラフェニブ錠は、40℃/RH75%の条件下で包装を付いて90日間放置し、分子パッキングが発生しなかった。
【0079】
実施例5 コーティング錠の調製
自己組織化構成単位の高分子材料は、核錠の製造時に添加してもよいし、コーティング材料に添加してもよいし、同時に添加してもよい。調製プロセスでは、実施例2に従って分子レベル医薬組成物(SD)を調製し、SD、自己組織化構成単位の高分子材料、処方量半分の充填剤、崩壊剤、処方量半分の潤滑剤を均一に混合し、乾式造粒し、剰余処方量半分の充填剤、流動促進剤、処方量半分の潤滑剤を加え、均一に混合し、打錠し、コーティングした。下表の処方に従って錠剤を調製した。
【0080】
【0081】
【0082】
溶出試験では、パドル法により、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)のpH6.8 リン酸塩緩衝液900mL、100rpm、37℃という条件を使用した。サンプリング及びサンプル処理方法では、10 mLサンプリングし、PESろ過膜(直径25mm、孔径0.45μm)でろ過し、濾液8mLを捨て、濾液1~2 mLを採取し続け、溶出カップに媒介10mLを補充した。ろ過後にサンプルを同じ割合で希釈した後に検出した。参照製剤(RLD)では、1錠(200mg)、自制製剤では、4錠(200mg)を投与した。溶出結果は、下表に示した。
【0083】
【0084】
以上の結果より、核錠内に自己組織化により構築された高分子材料を添加しても、コーティング中に添加しても、両方を同時に添加しても、顕著な効果があることが分かった。
【0085】
実施例6 マイクロペレットの調製
調製プロセスでは、ソラフェニブ、VA64をジクロロメタンとメタノールと(3:1)の混合溶液に溶解させ、流動床によりマイクロペレットに薬物を積層させた後、さらにコーティング層を噴霧し、得られたマイクロペレットをカプセルに封入し、カプセル1粒あたりソラフェニブ50mgを含有した。下表の処方に従ってマイクロペレットを調製した。
【0086】
【0087】
溶出試験では、パドル法により、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)のpH6.8 リン酸塩緩衝液900mL、100rpm、37℃という条件を使用した。サンプリング及びサンプル処理方法では、10 mLサンプリングし、PESろ過膜(直径25mm、孔径0.45μm)でろ過し、濾液8mLを捨て、濾液1~2 mLを採取し続け、溶出カップに媒介10mLを補充した。ろ過後にサンプルを同じ割合で希釈した後に検出した。参照製剤(RLD)では、1錠(200mg)、自制製剤では、4粒(200mg)を投与した。溶出結果は、下表に示した。
【0088】
【0089】
以上の結果より、マイクロペレットは共沈法により分子レベル医薬組成物として調製し、自己組織化構成単位を含む高分子材料コーティングを追加し、溶出後のソラフェニブ分子パッキングを明らかに相乗的に調整する作用を有する。
【0090】
実施例7 粉末コーティング
実施例2に従って噴霧乾燥法よりソラフェニブの分子レベルの医薬組成物を調製し、医薬組成物SDを下表の処方に従って粉末コーティングし、さらに表8の処方に従って添加物を加え錠剤を調製した。下表の処方に従って粉末コーティングを調製した。
【0091】
【0092】
溶出溶出試験では、パドル法により、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)のpH6.8リン酸塩緩衝液900mL、100rpm、37℃という条件を使用した。サンプリング及びサンプル処理方法では:10 mLサンプリングし、PESろ過膜(直径25mm、孔径0.45μm)でろ過し、濾液8mLを捨て、濾液1~2 mLを採取し続け、溶出カップに媒介10mLを補充した。ろ過後に、サンプルを解析に供与し、希釈後に測定した。参照製剤(RLD)では、1錠(200mg)、自制製剤では、4粒(200mg)を投与した。溶出結果は、下表に示した。
【0093】
【0094】
以上の結果より、SDでは、自己組織化構成単位を含むコーティング材料を使用して粉末コーティングを行い、ソラフェニブ溶出後に溶液に入れ、コーティング層における自己組織化用高分子材料が最外層ですでにシステム中に入っており、ソラフェニブ分子パッキングに対して依然として良好な相乗的調整作用を持っている。
【0095】
実施例7 自己乳化型マイクロエマルションの調製
オレイン酸エチル、ポリオキシエチレンヒマシ油、エタノールを割合で均一に混合し、ブランクの自己乳化型マイクロエマルションを形成し、ソラフェニブを加えて溶解させ、さらに自己組織化構成単位を加え、均一に混合してできた。下表に従って自己乳化型マイクロエマルションを調製した。
【0096】
【0097】
脂肪分解試験:
脂肪分解用緩衝液は、トリス-マレイン酸緩衝液 (0.474 g/L) 、クロロ化カルシウム無水物(0.208 g/L) 、NaCl 水溶液 (8.766 g/L、超純水) 、5mol/L NaOHを使用してpHが6.5になるように調整した。脂肪分解用媒介は、L-α-ホスファチジルコリン(PC)(0.576 g/L)であり、ウルソデオキシコール酸ナトリウム(1.565g/L)を緩衝液に加え、媒介を一晩撹拌しながらPCの完全な溶解を保証した。トリプシン溶液は、研磨した豚膵臓液3gを脂肪分解用緩衝液15ml中に加え、5mol/L NaOHを使用してpHが6.5になるように調整し、マグネチックスターラーを使用して混合物を10分間撹拌し、混合物を等分して遠心分離(5℃、10 分間)し、上澄み液を採取して脂肪分解実験を行った。トリプシンの酵素活性の検出では、脂肪分解実験の開始前に、トリブチリンを酵素基質として使用してトリプシンの酵素活性を検出した。反応速度が酵素濃度に比例するように過剰のトリブチリンを加えた。そのためには、脂肪分解用媒介35ml(ホスファチジルコリン無添加)中のトリブチリン500μlはトリプシン1.5μlで脂肪分解されることができる。酵素活性は、900 U/mgより多くなければならない。脂肪分解試験では、SLFN 50mgに相当する処方サンプルを採取し、体積が36mlの37℃での脂肪分解用媒介に加えた。10分間撹拌した後、トリプシン溶液4mlを加えた。試験過程全体(約1時間)で定期的にサンプル(約1ml)を採取し、サンプルを4-ブロモフェニルボロン酸(リパーゼ阻害剤)と混合した。サンプルを37℃で遠心分離し、上澄み液を採取して希釈した後に検出した。
サンプリング時間は、酵素添加前の10分間及び0分間(分散階段)、酵素添加後の5、15、30及び60分間(消化階段)である。
【0098】
【0099】
以上の結果より、自己組織化構成単位材料を加えた自己乳化型マイクロエマルションは、リパーゼ消化過程中にもソラフェニブ分子パッキングに対する相乗的調整を依然として維持できるが、結晶化抑制剤を添加しない処方F75では、経時的にソラフェニブ分子パッキングは徐々に増加したことが分かった。
【0100】
実施例8 ドナフェニブの製剤
調製プロセスでは、実施例2に従って分子レベル医薬組成物SD(実施例2のソラフェニブをドナフェニブに置き換える。)を調製し、SD、自己組織化構成単位、処方量半分の充填剤、崩壊剤、処方量半分の潤滑剤を均一に混合し、乾式造粒し、剰余処方量半分の充填剤、流動促進剤、処方量半分の潤滑剤を加え、均一に混合し、打錠した。錠剤サンプルの処方は、表20、21に示した。
【0101】
【0102】
【0103】
溶出試験では、パドル法により、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)のpH6.8 リン酸塩緩衝液900mL、100rpm、37℃という条件を使用した。及びサンプル処理方法では、10 mLサンプリングし、PESろ過膜(直径25mm、孔径0.45μm)でろ過し、濾液8mLを捨て、濾液1~2 mLを採取し続け、溶出カップに媒介10mLを補充した。ろ過後に、サンプルを解析に供与し、希釈後に測定した。参照製剤(RLD)では、1錠(200mg)、自制製剤では、4錠(200mg)を投与した。溶出率の検出では、HPLC法により行い、溶出結果は、下表に示した。
【0104】
【0105】
F76は、特許CN103301067 Bの実施例1を参照として調製された比較例である。
以上の結果より、本発明で調製されたサンプルF77、F78、F79の溶出はF76よりも顕著に高くなることが分かった。
【0106】
実施例9 ビーグル犬のPK試験
実施例F44(50mg 4錠、T1)、実施例F33(50mg 4錠、T2)サンプル、DB1サンプル(50mg 4錠、T3)、参照製剤として多吉美(規格200mg 1錠、R)を使用してビーグル犬空腹PK試験を行った。
動物は、成年雄ビーグル犬(8-11kg)、非ナイープ(Non-naive)を使用し、3つの群に分けられ、各群あたり2匹のビーグル犬である。
投与経路及び投与頻度については、胃に単回200mgを経口投与し、投与前に16時間以上絶食し、投与4時間後に自由採食し、洗浄期間は4日間であり、4サイクルクロス投与した。
取血時点は、0、1.5、2、2.5、3、4、5、6 8、12、24、48hである。
LC/MS/MS法を使用して血中薬物濃度を検出し、Phoenix WinNonlin 7.0を使用して薬物動態パラメータ(AUC0-t、AUC0-∞、Cmax、T1/2、Tmax及びそれらのパラメータの算術平均(±SD)及び幾何平均)を算出した。
【0107】
【0108】
以上の結果より、本発明のF33、F44の生物学的利用率は参照製剤よりもはるかに高くなり、且つ且比較例DB1よりもはるかに高くなることが分かった。
該試験により、自己組織化用高分子材料を加えることによりソラフェニブの生物学的利用率を顕著に向上させることが確認された。
【0109】
実施例10 健康なボランティアのPK試験
実施例のF44(50mg、T1)、実施例F33(50mg、T2)サンプル、参照製剤として多吉美(規格200mg、R)を使用して空腹PK試験を行った。
被験者は、18~65 歳の健康な中国男性又は女性12名(ここで、女性5名)である。
単一中心、ランダム化、3つの製剤、3サイクル、3 クロスオーバー設計。
投与経路及び投与頻度については、被験者は少なくとも10時間で一晩絶食した後、翌朝空腹時に参照製剤を1錠、T1、T2をそれぞれ2錠、水溶液240 mLで服用した。洗浄期間は10日間である。
取血時点は、投与前(0h)、投与後0.5h、1h、1.5h、2h、2.5h、3h、3.5h、4h、6h、8h、12h、16h、24h、36h、48h、72h、96hである。
LC/MS/MS法により血中薬物濃度を検出し、Phoenix WinNonlin 7.0を使用して薬物動態パラメータ(AUC
0-t、AUC
0-∞、C
max、T
1/2、T
max及びこれらのパラメータの算術平均(±SD)及び幾何平均)を算出し、相対的バイオアベイラビリティの分析を行い、結果は、以下の表24、表25及び
図13に示した。
【0110】
【0111】
【0112】
以上の結果より、T1の50mg投与は、参照製剤である多吉美200mgに相当し、T2の60mg投は、参照製剤である多吉美200mgに相当する。また、T1、T2 製剤のCmax、AUCの変動性は、いずれも参照製剤よりも低くなることが分かった。それは、本発明で提供された技術的方案を使用して開発された製品は、将来の臨床的応用において、多吉美 ソラフェニブトシル酸塩錠及びジェネリック医薬品800mg(Bid)の代わりに、又はドナフェニブ錠400mg(Bid)の代わりに、200mg(Bid)を使用することができることを意味する。
【0113】
実施例11 健康なボランティアの高脂肪食PK試験
実施例F44(50mg、T1)のサンプル、参照製剤である多吉美(規格200mg、R)を採用して高脂肪・高カロリー食PK試験を行った。
被験者は、18~55 歳の健康な中国男性又は女性12名(ここで、女性5名)である。
単一中心、ランダム化、非盲検、食後、単回投与、2つの製剤、2サイクル、ダブルクロスオーバー設計
投与経路及び投与頻度については、被験者は、全て一晩絶食して絶水しなく(少なくとも10h)、各サイクルの投与日の投与前30分間から高脂肪・高カロリーの食事を開始し、30分間以内に食事を終え、食事開始から30分間(±30 s)で試験薬物を投与し、水240 mLでソラフェニブ錠である被験製剤T1 100 mg又は参照製剤(R、多吉美/Nexavar)200 mgを服用し、サイクルの間で洗浄期間は、10日間である。
取血時点としては、投与前(0h)、並び投与後1.0h、2.0h、2.5h、3.0h、3.5h、4.0h、4.5h、5.0h、6.0h、8.0h、12.0h、16.0h、24.0h、36.0h、48.0h、72.0h及び96.0hにそれぞれ肘部静脈血約4 mLを採取した。
LC/MS/MS法により血中薬物濃度を検出し、Phoenix WinNonlin 7.0を使用して薬物動態パラメータ(AUC
0-t、AUC
0-∞、C
max、T
1/2、T
max及びそれらのパラメータの算術平均(±SD)及び幾何平均)を計算し、相対的バイオアベイラビリティの分析を行い、結果は、以下の表26、表27及び
図14に示した。
【0114】
【0115】
【0116】
多吉美/Nexavarの添付文書によると、高脂肪・高カロリーの食事時に、ソラフェニブの生物学的利用率は、絶食の状態よりも29%低減した。従って、多吉美/Nexavarの添付文書で規定された服用方法は、空腹服用(食事なし(without food)(食事前の少なくとも1時間前又は食事後の2時間))である。実施例9及び10によれば、空腹時にT1-100mg及びRLD-200mgにおける相対的バイオアベイラビリティは200.98%であり、高脂肪・高カロリー食時に相対的バイオアベイラビリティは268%であり、被験製剤T1の食後/食前のCmax及びAUC0-∞の比はそれぞれ1.1及び1.3であるが、食後に参照製剤のAUC0-∞は約30%低減していることが分かった。以上より、本発明の製剤は、高脂肪食による生物学的利用率への影響を排除し、食後の投与を実現することができることを示した。食事と一緒に摂取すると、吐き気や下痢などの胃腸の副作用を大幅に軽減できる。同時に、実施例9、10により、本発明の製剤のCVはいずれも参照製剤である多吉美よりも顕著に低くなることを示した。それにより、治療効果のさらなる向上にも寄与し、副作用を低減させる。従って、本発明の製剤は、顕著な臨床的優位性を持ち、患者に重大な利益をもたらすことができる。
以上のデータ及び分析より、本発明の製剤は、ソラフェニブの溶解及び吸収という問題を解決していため、長期間の投与により薬剤耐性が発生すると用量を増加する必要がある場合には、便利な滴定投与による有効暴露量の維持ことができ、薬剤耐性という問題を解決している。
【0117】
以上の実施例への説明は、本発明の方法及びその主旨の理解を助けるためにのみ使用される。当業者にとっては、本発明の原理から逸脱することなく本発明にいくつかの改良及び修飾を加えることができ、これらの改良及び修飾も特許請求の保護範囲内に含まれる。
開示された実施例に記載の説明は、当業者によって実現できるか、又は本発明を使用である。これらの実施例に対する様々なの修正は、当業者にとっては明になり、本明細書に定義された一般的な原理は、本発明の精神又は範囲から逸脱せずに、他の実施例で実現することができる。従って、本発明は、本明細書に示される実施例に限定されるものではなく、本明細書に開示される原理及び新規な特徴と一致する最も広い範囲が与えられるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項12
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項12】
前記ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤は、食べ物と一緒に服用する製剤、又は食べ物と一緒に服用しない製剤であることを特徴とする請求項
1に記載のソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項13
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項13】
肝細胞がん、乳がん、原発性肝悪性腫瘍、胆管がん、腎細胞がん、再発性又は難治性固形腫瘍、中枢神経系固形腫瘍、転移性非小細胞肺がん、手術で切除できない肝細胞がん、甲状腺がん、膵臓がん、唾液腺腺様嚢胞がん、甲状腺未分化がん、難治性分化型甲状腺がん、腺様嚢性がん、晩期子宮内膜がん、甲状腺退形成がん、直腸がん、結腸がん、切除不能なIII期又はIV期黒色腫、白血病、急性骨髄性白血病、全ての固形腫瘍又は様々な晩期固形腫瘍を治療又は軽減するための医薬品の調製における、請求項
1に記載のソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤の応用。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
本発明は、さらに、腫瘍の治療薬の調製における上記のソラフェニブ組成物を含む製剤の応用を提供し、前記腫瘍は、具体的には、肝細胞がん、乳がん、原発性肝悪性腫瘍、胆管がん、腎細胞がん、再発性又は難治性固形腫瘍、中枢神経系固形腫瘍、転移性非小細胞肺がん、手術で切除できない肝細胞がん、甲状腺がん、膵臓がん、唾液腺腺様嚢胞がん、甲状腺未分化がん、難治性分化型甲状腺がん、腺様嚢性がん、晩期子宮内膜がん、甲状腺退形成がん、直腸がん、結腸がん、切除不能なIII期又はIV期黒色腫、白血病、急性骨髄性白血病、及び全ての固形腫瘍、様々な晩期固形腫瘍である。
本発明で提供される製剤は、単剤とするか、又は他の薬物と併用して上記腫瘍の治療に使用されることができ、他の薬物としては、PD-1阻害剤、ベネトクラクス(Venetoclax)及び/又はデシタビン(Decitabine)、TACE及び/又はI-125シード線源(Iodion-125 seeds brachytherapy)との併用治療、薬剤溶出ビーズを用いた肝動脈化学塞栓療法(Drug-eluting bead transarterial chemoembolization)との併用治療、ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)との併用、Toripalimab(トリパリマブ)との併用、Atezolizumab(アテゾリズマブ)との併用、Atezolizumab+Bevacizumab(ベバシズマブ)との併用、TACE+Tislelizumabとの併用、組換えヒトアデノウイルス5型注射剤(Recombinant Human Adenovirus Type 5 injection)との併用、MTL-CEBPAとの併用、Vemurafenib(ベムラフェニブ)との併用、Oxaliplatin(オキサリプラチン)及び5-フルオロウラシル、エリブリン(Eribulin)とToripalimab、Gemox又はエベロリムス(Everolimus)の併用、Doxorubicin(ドキソルビシン)及びLipiodol(リピオドール)との併用、Oxaliplatin(オキサリプラチン)、Raltitrexed(ラルチトレキセド)及びEpirubicin(エピルビシン)との併用、Toripalimabとの併用、PD-1 mAbとの併用、Hydroxychloroquine(ヒドロキシクロロキン)との併用、CVM-1118との併用、肝動脈注入化学療法(Hepatic Artery Infusion Chemotherapy)(Oxaliplatin , fluorouracil(フルオロウラシル),及びleucovorin(ロイコボリン))との併用、肝動脈注入化学療法(Hepatic Artery Infusion Chemotherapy)( Irinotecan(イリノテカン), Oxaliplatin , fluorouracil, 及びleucovorin)との併用、YIV-906との併用、Tislelizumab(チスレリズマブ)との併用であることが好ましい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んで肝動脈注入化学療法(Hepatic arterial infusion chemotherapy)(Irinotecan, Oxaliplatin , fluorouracil, 及びleucovorin)と併用し、肝細胞がんの治療に応用し、ソラフェニブ又はドナフェニブを毎回50~120mg、1日2回経口投与する。
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んでDEB-TACEと併用して肝細胞がんを治療し、ソラフェニブ又はドナフェニブを毎回50~120mg、1日2回経口投与する。
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んでYIV-906と併用してB型肝炎ウィルス(HBV)に感染している末期肝細胞がん患者を治療し、治療は28日間を1サイクルとし、ソラフェニブ又はドナフェニブを毎回50~120mg、1日2回を28日間連続経口投与し、YIV-906を毎回600mg、1日2回、毎週4日間投与し、3日間停止する。
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んでTACE、Tislelizumabと併用して手術不可能な肝細胞がんの治療に応用し、第1のTACE治療後の3~7日目に経口ソラフェニブ又はドナフェニブを100~120mg、1日2回経口投与するとともに、Tislelizumabを毎回200mg、3週間1回静脈内注射し、臨床結果に基づいてTACE治療の繰り返し回数を決定し、Tislelizumabの治療は24ヶ月まで続く。
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んでVemurafenibと併用して膵臓がんの治療に応用し、Vemurafenibを720mg、1日2回経口投与し、毎朝にソラフェニブ又はドナフェニブを100~120mg、毎日午後にソラフェニブを50~60mg服用する。
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んでMTL-CEBPAと併用してウイルス感染による肝細胞がんの治療に応用し、毎週にMTL-CEBPAを130mg/m2で静脈内投与し、3週間連続投与して1週間停止するとともに、ソラフェニブ又はドナフェニブを毎回100~120mg、1日2回経口投与する。
本発明で研究された低用量ソラフェニブ又はドナフェニブ経口剤を含んでTACE、Tislelizumabと併用してBCLC分類ステージC肝細胞がんを治療し、まず、TACE治療を開始し、TACE治療の1週間内にTislelizumabを240mg、3週間1回静脈内投与し、TACE治療の1週間内にソラフェニブ又はドナフェニブの毎回100~120mg、1日2回経口投与を開始する。
【国際調査報告】