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特表2025-505716エラストマーばね式メカニカルシール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】エラストマーばね式メカニカルシール
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/34 20060101AFI20250220BHJP
【FI】
F16J15/34 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547493
(86)(22)【出願日】2023-02-17
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 US2023062839
(87)【国際公開番号】W WO2023159193
(87)【国際公開日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】63/311,305
(32)【優先日】2022-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512115807
【氏名又は名称】エー. ダブリュー. チェスタートン カンパニー
【氏名又は名称原語表記】A.W. CHESTERTON COMPANY
【住所又は居所原語表記】860 Salem Street, Groveland, MA 01834 (US).
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】アジベルト, アンリ, ビンセント
(72)【発明者】
【氏名】カレシアン, ジョセフ, ケー.
【テーマコード(参考)】
3J041
【Fターム(参考)】
3J041AA04
3J041BA02
3J041BA09
3J041BB03
3J041DA11
3J041DA12
(57)【要約】
【要約】
グランド組立体と、回転シールリングと、固定シールリングと、回転シールリングを取り付けるためのフランジ部を有するスリーブ組立体と、フランジ部の上に装着されると共に回転シールリングの一部に接触するカバー密封要素と、カバー密封要素から軸方向に離間されると共に、固定シールリング及びグランド組立体の一部を密封するエナジャイザー密封要素であって、前記固定シールリングに軸方向の付勢力を印加するエナジャイザー密封要素とを含むメカニカルシール組立体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定装置内にスラリーを密封するためにシャフトの周りに取り付けるメカニカルシール組立体であって、
前記固定装置に結合するよう構成されると共に、半径方向に延在する外表面と、対向する半径方向に延在する内表面とを有するたグランド組立体であって、前記本体は軸方向外側端部から半径方向内側端部まで延在し、前記半径方向内側端部の一部はオーバーハング部を形成し、前記内表面は、前記オーバーハング部に形成されたグランドチャンネルを有する、グランド組立体と、
外表面を有すると共に、前記シャフトに結合されると回転運動するよう構成された回転シールリングと、
前記回転シールリングとの間で流体シールを形成するよう前記回転シールリングに密封接触して配置された固定シールリングと、
前記回転シールリングを取り付けるための空間を画定する第1端に形成されたフランジ部と、外表面を備えたスリーブ部と、を備えた本体を有するスリーブ組立体であって、前記スリーブ組立体の前記本体は、前記第1端に形成された係合チャンネルを有する内表面を備えた、スリーブ組立体と、
前記スリーブ組立体の前記スリーブ部の前記外表面に接触するよう位置決めされた支持リング要素であって、外表面及び内表面を有した支持リング要素と、
前記スリーブ組立体の前記フランジ部の少なくとも一部と、前記回転シールリングの前記外表面の少なくとも一部と、に接触するよう配置されると共に、内側表面及び対向する外側表面を備えるカバー密封要素であって、
前記外表面は、末端領域に形成された半径方向内側に延在する端リップ部を備えた平坦な端表面部分と、前記平坦な端表面部分に結合されたテーパー端表面部分とを有し、
前記カバー密封要素の前記内表面は、第1の内表面であって、第2の半径方向内側階段状内表面より直径が大きい第1の内表面を備え、前記第1の内表面及び前記第2の内表面は、壁チャンネルが形成された半径方向に延在する階段状壁面によって結合されており、
前記壁チャンネルは、前記壁チャンネルの一部の上に重なる壁リップ部を備え、
前記フランジ部の底部は、前記壁チャンネル内に取り付けられ、前記壁リップ部は、前記係合チャンネル内に取り付けられると共にそれに係合するカバー密封要素と、
前記カバー密封要素から軸方向に離間されると共に、前記固定シールリングの少なくとも一部に接触して前記固定シールリングに軸方向の付勢力を印加するよう配置されたエナジャイザー密封要素であって、外表面及び内表面を備えた本体を有するエナジャイザー密封要素とを含み、
前記エナジャイザー密封要素の前記本体は、第1端に形成されたカバー部と、対向する第2端に形成された屈曲部とを含み、
前記屈曲部は、前記屈曲部を前記グランド組立体に結合するため、前記グランドチャンネル内に取り付けられる接続特徴部を含む末端領域を有する、メカニカルシール組立体。
【請求項2】
前記カバー密封要素の前記第1の内表面には、カバーチャンネルが形成されており、前記スリーブ組立体の前記フランジ部は、前記フランジ部の外周面から外側に延在すると共に、前記カバーチャンネル内に取り付けるための突起部を有する、請求項1に記載のメカニカルシール組立体。
【請求項3】
前記エナジャイザー密封要素の前記カバー部の前記内表面には、1つ又は複数の突起が形成されており、前記固定シールリングは、ステーターチャンネルが形成された外表面を有し、前記突起は、組み立てられると前記固定シールリングの前記ステーターチャンネル内に取り付けられるよう構成されている、請求項2に記載のメカニカルシール組立体。
【請求項4】
前記エナジャイザー密封要素の前記屈曲部の前記接続特徴部は階段状リップ部を含む、請求項3に記載のメカニカルシール組立体。
【請求項5】
前記回転シールリングは、ローターチャンネルが形成された外表面を備えた本体を有し、前記回転シールリングの前記ローターチャンネル内に取り付けられるようにサイズ決め且つ構成された密封要素をさらに含む、請求項3に記載の分割メカニカルシール。
【請求項6】
前記カバー密封要素の前記第2の内表面には、前記カバー密封要素と前記シャフトとの間に流体シールを形成するために前記シャフトと係合する1つ又は複数の突起が形成されている、請求項3に記載のメカニカルシール組立体。
【請求項7】
前記エナジャイザー密封要素の前記カバー部の前記内表面は、第2階段状壁面に移行する第1階段状壁面を含む階段状壁部を含み、
前記支持リング要素は、前記固定シールリングに隣接して配置された第1端と、前記第1端に形成された環状壁特徴部とを有し、
組立状態では、前記カバー部の前記内表面は、前記固定シールリングの前記外表面に接触し、前記カバー部の前記第2階段状壁面は、前記支持リング要素の前記環状壁特徴部に接触する、請求項3に記載のメカニカルシール組立体。
【請求項8】
組立状態では、前記エナジャイザー密封要素の前記屈曲部の前記接続特徴部は、前記グランド組立体と前記固定装置との間に配置されるよう構成されている、請求項7に記載のメカニカルシール組立体。
【請求項9】
前記エナジャイザー密封要素が前記グランド組立体と前記固定装置とに結合されると、前記エナジャイザー密封要素の前記屈曲部は付勢位置に配置され、前記エナジャイザー密封要素の前記屈曲部は、前記付勢位置に配置されると、前記固定シールリングを付勢するために屈曲中間部を形成する、請求項7に記載のメカニカルシール組立体。
【請求項10】
固定装置内にスラリーを密封するためにシャフトの周りに取り付けるメカニカルシール組立体であって、
前記固定装置に結合するよう構成されると共に、
外表面を有すると共に、前記シャフトに結合されると回転運動するよう構成された回転シールリングと、
前記回転シールリングとの間で流体シールを形成するよう前記回転シールリングに作動的に密封接触して配置された固定シールリングと、
前記回転シールリングを取り付けるための空間を画定する第1端に形成されたフランジ部と、外表面を備えたスリーブ部と、を備えた本体を有するスリーブ組立体であって、前記スリーブ組立体の前記本体は、前記第1端に形成された係合チャンネルを有する内表面を備えた、スリーブ組立体と、
前記スリーブ組立体の前記フランジ部の少なくとも一部と、前記回転シールリングの前記外表面の少なくとも一部と、に接触するよう配置されると共に、内側表面及び対向する外側表面を備えるカバー密封要素と、
前記カバー密封要素から軸方向に離間されると共に、前記固定シールリングの少なくとも一部に接触して前記固定シールリングに軸方向の付勢力を印加するよう配置されたエナジャイザー密封要素であって、外表面及び内表面を備えた本体を有するエナジャイザー密封要素とを含み、前記エナジャイザー密封要素の前記本体は、第1端に形成されたカバー部と、対向する第2端に形成された屈曲部とを含み、前記屈曲部は、前記屈曲部を前記グランド組立体に結合するため、前記グランドチャンネル内に取り付けられる接続特徴部を含む末端領域を有する、メカニカルシール組立体。
【請求項11】
前記スリーブ組立体の前記スリーブ部の前記外表面に接触するよう位置決めされた支持リング要素をさらに含み、前記支持リング要素は外表面及び内表面を有する、請求項10に記載のメカニカルシール組立体。
【請求項12】
前記グランド組立体は、半径方向に延在する外表面と、対向する半径方向に延在する内表面とを有し、前記本体は軸方向外側端部から半径方向内側端部まで延在し、前記半径方向内側端部の一部はオーバーハング部を形成し、前記内表面は、前記オーバーハング部に形成されたグランドチャンネルを有する、請求項11に記載のメカニカルシール組立体。
【請求項13】
前記カバー密封要素の前記外表面は、末端領域に形成された半径方向内側に延在する端リップ部を備えた平坦な端表面部分と、前記平坦な端表面部分に結合されたテーパー端表面部分とを有し、
前記カバー密封要素の前記内表面は、第1の内表面であって、第2の半径方向内側階段状内表面より直径が大きい第1の内表面を備え、前記第1の内表面及び前記第2の内表面は、壁チャンネルが形成された半径方向に延在する階段状壁面によって結合されており、
前記壁チャンネルは、前記壁チャンネルの一部の上に重なる壁リップ部を備え、
前記フランジ部の底部は、前記壁チャンネル内に取り付けられ、前記壁リップ部は、前記係合チャンネル内に取り付けられると共にそれに係合する、請求項12に記載のメカニカルシール組立体。
【請求項14】
前記カバー密封要素の前記第1の内表面には、カバーチャンネルが形成されており、
前記スリーブ組立体の前記フランジ部は、前記フランジ部の外周面から外側に延在すると共に、前記カバーチャンネル内に取り付けるための突起部を有する、請求項13に記載のメカニカルシール組立体。
【請求項15】
前記エナジャイザー密封要素の前記カバー部の前記内表面には、1つ又は複数の突起が形成されており、前記固定シールリングは、ステーターチャンネルが形成された外表面を有し、前記突起は、組み立てられると前記固定シールリングの前記ステーターチャンネル内に取り付けられるよう構成されている、請求項14に記載のメカニカルシール組立体。
【請求項16】
前記エナジャイザー密封要素の前記屈曲部の前記接続特徴部は階段状リップ部を含む、請求項15に記載のメカニカルシール組立体。
【請求項17】
前記エナジャイザー密封要素の前記カバー部の前記内表面は、第2階段状壁面に移行する第1階段状壁面を含む階段状壁部を含み、
前記支持リング要素は、前記固定シールリングに隣接して配置された第1端と、前記第1端に形成された環状壁特徴部とを有し、
組立状態では、前記カバー部の前記内表面は、前記固定シールリングの前記外表面に接触し、前記カバー部の前記第2階段状壁面は、前記支持リング要素の前記環状壁特徴部に接触する、請求項15に記載のメカニカルシール組立体。
【請求項18】
組立状態では、前記エナジャイザー密封要素の前記屈曲部の前記接続特徴部は、前記グランド組立体と前記固定装置との間に配置されるよう構成されている、請求項17に記載のメカニカルシール組立体。
【請求項19】
前記エナジャイザー密封要素が前記グランド組立体と前記固定装置とに結合されると、前記エナジャイザー密封要素の前記屈曲部は付勢位置に配置され、前記エナジャイザー密封要素の前記屈曲部は、前記付勢位置に配置されると、前記固定シールリングを付勢させるために屈曲中間部を形成する、請求項17に記載のメカニカルシール組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、引用してその内容を本明細書に援用する、「ローリングエラストマーばねメカニカルシール」と題した2022年2月17日付けの米国特許仮出願63/311,305号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
従来のメカニカルシールは、流体密シールを提供するために、例えば機械装置などにおける多種多様な環境及び設定で使用されている。通常、こうしたメカニカルシールは、固定機械ハウジング内に取り付けられ且つそのハウジングから突出する回転若しくは往復シャフト又はロッドの周囲に設けられる。
【0003】
これらメカニカルシールは、気密且つ流体密シールを提供するために、多種多様な機械的装置で使用されている。通常、こうしたメカニカルシールは、固定装置内に取り付けられ且つその固定装置から突出する回転シャフトの周囲に設けられる。このメカニカルシールは、通常はシャフトの出口箇所で固定装置にボルト止めされており、よって加圧プロセス流体が固定装置から流出するのを防いでいる。従来の分割メカニカルシールは面型(face-type)メカニカルシールを含むが、この面型メカニカルシールには、シャフトの周囲に同心状に配置されると共に、軸方向に互いから離間された一対のシールリングが含まれる。各シールリングは、互いに密封接触するように付勢された複数の密封面を備えている。通常は、1つのシールリングが静止状態を維持し、他方のリングがシャフトと結合され且つそれと共に回転する。このメカニカルシールは、シールリングの密封面を互いに密封接触するように付勢することによって、加圧プロセス流体が外部又は周囲環境に漏れ出すのを防ぐ。通常、回転シールリングは、グランド組立品及び固定装置により形成されるチャンバ内に配置されたホルダ組立品又はスリーブ内に取り付けられる。ホルダ組立品を使用する場合、ホルダ組立品は、ねじで互いに固定された一対のホルダ半割れ又は区分を備えることができる。同様に、グランド組立品は、同様にねじで互いに固定された一対のグランド半割れ又は区分を備えることができる。シールリングもしばしば複数区分に分割され、各区分が一対の密封面を備えているので、各リングは、シャフト端部の一方を解放することなくシャフトに環着可能な割りリングとなる。
【0004】
従来のメカニカルシールは、シャフトに環着した後に密封対象の機器にボルトで固定される回転部品及び固定部品を備えている。回転シール面は、区分がシャフトに環着された後で回転金属クランプ内に挿入される。次に、固定面区分とグランド区分が組み立てられると、分割グランド組立品がポンプハウジングにボルトで固定される。あるいは、固定及び回転密封部品をあらかじめ小組立品へ組み立てておき、それをシャフトに取り付けてもよい。
【0005】
従来のメカニカルシールは、典型的にはスラリー式プロセス流体を適切に密封することが容易ではなかった。スラリー状プロセス流体は、時間の経過とともに密封性能を劣化させうるため、修理や交換が必要となる。これは、設備全体の維持費を増加させ、典型的には設備が通常サービスのために停止するため、プラントの実績に悪影響を及ぼす。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、研磨粒子の含有量が多いプロセス流体すなわちスラリーの密封に使われる、回転シャフトと装置ハウジング及び/又はグランド組立体の静止表面との間に流体シールを設けるためのメカニカルシール組立体に関する。メカニカルシール組立体は、軸方向に隣接する第1及び第2の環状シールリング要素を含み、これら第1及び第2の環状シールリング要素は、シールを分解することなくシャフトの軸方向の大きな調整を可能にし、同時に研磨プロセス環境からシール部品を保護する。第1の回転シールリング要素は、第2の静止又は固定シールリング要素に対して、シャフトと共に回転する。グランド組立体のような静止ハウジングは、軸方向ローリングばね式密封要素などのエラストマー密封要素に結合された第2の静止密封要素を収容する。この軸方向ローリングばね式密封要素は、シールリング要素のシール面間に、軸方向予荷重すなわち付勢力を与えるための屈曲領域と、固定シールリングの一部を覆うカバー部とを有する。密封要素の一端は、通常であればスラリーに曝されるであろうグランド組立体の外方向延在表面に結合される。拡大ばね表面は、研磨粒子から露出した静止環状ハウジングを保護し、装置と固定ハウジングとの間に二次的な軸方向シール表面を提供する。さらに、本発明は、回転シールリングを取り付けるスリーブ組立体に結合し、回転シールリングの外表面の一部を覆うために、メカニカルシール組立体内に配置された第2の密封要素を使用することができる。この密封要素は、密封要素の、スリーブ及び回転シールリングへの結合を容易にする接続特徴部を含むことができる。
【0007】
本発明は、固定装置内にスラリーを密封するためにシャフトの周りに取り付けるメカニカルシール組立体に関する。前記メカニカルシール組立体は、前記固定装置に結合するよう構成されたグランド組立体を含む。前記グランド組立体は、半径方向に延在する外表面と、対向する半径方向に延在する内表面とを有し、前記本体は軸方向外側端部から半径方向内側端部まで延在し、前記半径方向内側端部の一部はオーバーハング部を形成する。前記内表面は、前記オーバーハング部に形成されたグランドチャンネルを有する。前記グランド組立体は、外表面を有すると共に、前記シャフトに結合されると回転運動するよう構成された回転シールリングと、前記回転シールリングとの間で流体シールを形成するよう前記回転シールリングに密封接触して配置された固定シールリングと、前記回転シールリングを取り付けるための空間を画定する第1端に形成されたフランジ部と、外表面を備えたスリーブ部と、を備えた本体を有するスリーブ組立体とをさらに含む。前記スリーブ組立体の前記本体は、前記第1端に形成された係合チャンネルを有する内表面を備える。支持リング要素がさらに提供され、前記スリーブ組立体の前記スリーブ部の前記外表面に接触するよう位置決めされる。
【0008】
前記メカニカルシール組立体は、カバー密封要素及びエナジャイザー密封要素も含む。前記カバー密封要素は、前記スリーブ組立体の前記フランジ部の少なくとも一部と、前記回転シールリングの前記外表面の少なくとも一部と、に接触するよう配置されている。前記カバー密封要素の前記外表面は、末端領域に形成された半径方向内側に延在する端リップ部を備えた平坦な端表面部分と、前記平坦な端表面部分に結合されたテーパー端表面部分とを有する。前記カバー密封要素の前記内表面は、第1の内表面であって、第2の半径方向内側階段状内表面より直径が大きい第1の内表面を備え、前記第1の内表面及び前記第2の内表面は、壁チャンネルが形成された半径方向に延在する階段状壁面によって結合されている。前記壁チャンネルは、前記壁チャンネルの一部の上に重なる壁リップ部を備え、前記フランジ部の底部は、前記壁チャンネル内に取り付けられ、前記壁リップ部は、前記係合チャンネル内に取り付けられると共にそれに係合する。
【0009】
前記カバー密封要素の前記第1の内表面には、カバーチャンネルが形成されており、前記スリーブ組立体の前記フランジ部は、前記フランジ部の外周面から外側に延在すると共に、前記カバーチャンネル内に取り付けるための突起部を有する。
【0010】
前記メカニカルシール組立体の前記エナジャイザー密封要素は、前記カバー密封要素から軸方向に離間されると共に、前記固定シールリングの少なくとも一部に接触して前記固定シールリングに軸方向の付勢力を印加するよう配置される。前記エナジャイザー密封要素は、第1端に形成されたカバー部と、対向する第2端に形成された屈曲部とを含む本体を有し、前記屈曲部は、前記屈曲部を前記グランド組立体に結合するため、前記グランドチャンネル内に取り付けられる接続特徴部を含む末端領域を有する。前記エナジャイザー密封要素の前記カバー部の前記内表面には、1つ又は複数の突起が形成されており、前記固定シールリングは、ステーターチャンネルが形成された外表面を有し、前記突起は、組み立てられると前記固定シールリングの前記ステーターチャンネル内に取り付けられるよう構成されている。前記カバー密封要素の前記第2内表面には、前記カバー密封要素と前記シャフトとの間に流体シールを形成するために前記シャフトと係合する1つ又は複数の突起が形成されている。
【0011】
本発明によれば、前記エナジャイザー密封要素の前記カバー部の前記内表面は、第2階段状壁面に移行する第1階段状壁面を含む階段状壁部を含み、前記支持リング要素は、前記固定シールリングに隣接して配置された第1端と、前記第1端に形成された環状壁特徴部とを有し、組立状態では、前記カバー部の前記内表面は、前記固定シールリングの前記外表面に接触し、前記カバー部の前記第2階段状壁面は、前記支持リング要素の前記環状壁特徴部に接触する。
【0012】
前記エナジャイザー密封要素が前記グランド組立体と前記固定シールリングとに結合されると、前記エナジャイザー密封要素の前記屈曲部は付勢位置に配置され、前記エナジャイザー密封要素の前記屈曲部は、前記付勢位置に配置されると、前記固定シールリングを付勢するために屈曲中間部を形成する。
【0013】
本発明は、メカニカルシール組立体であって、前記固定装置に結合するよう構成されたグランド組立体と、外表面を有すると共に、前記シャフトに結合されると回転運動するよう構成された回転シールリングと、前記回転シールリングとの間で流体シールを形成するよう前記回転シールリングに作動的に密封接触して配置された固定シールリングと、前記回転シールリングを取り付けるための空間を画定する第1端に形成されたフランジ部と、外表面を備えたスリーブ部と、を備えた本体を有するスリーブ組立体とを有するメカニカルシール組立体にも関する。前記スリーブ組立体の前記本体は、前記第1端に形成された係合チャンネルを有する内表面を備える。前記メカニカルシール組立体は、前記スリーブ組立体の前記フランジ部の少なくとも一部と、前記回転シールリングの前記外表面の少なくとも一部と、に接触するよう配置されるカバー密封要素と、前記カバー密封要素から軸方向に離間されると共に、前記固定シールリングの少なくとも一部に接触して前記固定シールリングに軸方向の付勢力を印加するよう配置されたエナジャイザー密封要素とをさらに含む。前記エナジャイザー密封要素は、外表面及び内表面を備えた本体を含み、前記エナジャイザー密封要素の前記本体は、第1端に形成されたカバー部と、対向する第2端に形成された屈曲部とを含む。前記屈曲部は、前記屈曲部を前記グランド組立体に結合するため、前記グランドチャンネル内に取り付けられる接続特徴部を含む末端領域を有する。
【0014】
前記メカニカルシール組立体は、前記スリーブ組立体の前記スリーブ部の前記外表面に接触するよう位置決めされた支持リング要素をさらに含み、前記支持リング要素は外表面及び内表面を有する。
【0015】
前記グランド組立体は、半径方向に延在する外表面と、対向する半径方向に延在する内表面とを有する。前記本体は軸方向外側端部から半径方向内側端部まで延在し、前記半径方向内側端部の一部はオーバーハング部を形成する。前記内表面は、前記オーバーハング部に形成されたグランドチャンネルを有する。
【0016】
前記カバー密封要素の前記外表面は、末端領域に形成された半径方向内側に延在する端リップ部を備えた平坦な端表面部分と、前記平坦な端表面部分に結合されたテーパー端表面部分とを有する。前記カバー密封要素の前記内表面は、第1の内表面であって、第2の半径方向内側階段状内表面より直径が大きい第1の内表面を備え、前記第1の内表面及び前記第2の内表面は、壁チャンネルが形成された半径方向に延在する階段状壁面によって結合されている。前記壁チャンネルは、前記壁チャンネルの一部の上に重なる壁リップ部を備え、前記フランジ部の底部は、前記壁チャンネル内に取り付けられ、前記壁リップ部は、前記係合チャンネル内に取り付けられると共にそれに係合する。前記カバー密封要素の前記第1の内表面には、カバーチャンネルが形成されており、前記スリーブ組立体の前記フランジ部は、前記フランジ部の外周面から外側に延在すると共に、前記カバーチャンネル内に取り付けるための突起部を有する。
【0017】
本発明によれば、前記エナジャイザー密封要素の前記カバー部の前記内表面には、1つ又は複数の突起が形成されており、前記固定シールリングは、ステーターチャンネルが形成された外表面を有し、前記突起は、組み立てられると前記固定シールリングの前記ステーターチャンネル内に取り付けられるよう構成されている。さらに、前記エナジャイザー密封要素の前記カバー部の前記内表面は、第2階段状壁面に移行する第1階段状壁面を含む階段状壁部を含む。前記支持リング要素は、前記固定シールリングに隣接して配置された第1端と、前記第1端に形成された環状壁特徴部とを有する。組立状態では、前記カバー部の前記内表面は、前記固定シールリングの前記外表面に接触し、前記カバー部の前記第2階段状壁面は、前記支持リング要素の前記環状壁特徴部に接触する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の上記及びその他の特徴及び利点は、次の詳細な説明と添付の図面を参照すればより完全に理解されるはずであり、図面の中の類似した参照記号は、これら複数の異なる図面を通して類似の部材を示す。これら図面は本発明の原理を表すもので、縮尺は一定ではないが、相対的寸法を示す。
【0019】
図1図1は、本発明の教示によるメカニカルシール組立体の部分断面透視図である。
図2図2Aは、本発明のメカニカルシール組立体のスリーブ組立体に結合するよう構成された回転密封要素の第1実施形態の透視図である。 図2Bは、本発明のメカニカルシール組立体のスリーブ組立体に結合するよう構成された回転密封要素の第2実施形態の透視図である。
図3図3は、本発明の回転カバー密封要素の断面透視図である。
図4図4は、本発明の回転カバー密封要素の断面図である。
図5図5は、本発明の回転カバー密封要素の部分断面図である。
図6図6は、メカニカルシール組立体の部分断面透視図であって、本発明の教示によるカバー密封要素のスリーブ組立体への結合状態を示す。
図7図7は、本発明のメカニカルシール組立体で使用されるエナジャイザー密封要素の断面透視図である。
図8図8は、本発明のメカニカルシール組立体で使用されるエナジャイザー密封要素の断面透視図である。
図9図9は、本発明のメカニカルシール組立体に取り付けられるエナジャイザー密封要素を示す部分断面透視図である。
図10図10は、本発明のメカニカルシール組立体に取り付けられるエナジャイザー密封要素を示す部分断面透視図であり、グランド組立体に結合した密封要素と、支持リング要素と、固定シールリングとを示す。
図11図11は、本発明のメカニカルシール組立体に取り付けられるエナジャイザー密封要素を示す部分断面透視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、シールリング、スリーブ組立体、及びグランド組立体の少なくとも一部を含むシール組立体の選択された部品を密封するためのカバー密封要素とエナジャイザー密封要素を採用したメカニカルシール組立体を提供する。本発明を、図示した実施形態に関連して以下の記載で説明する。当業者であれば、本発明は、多数の異なる応用例及び実施形態で実現可能であり、本明細書に記載した特定の実施形態に特に限定されないことは理解するはずである。
【0021】
本明細書で使用する「メカニカルシール組立体」及び「メカニカルシール」という用語は、単一又は一体シール、分割シール、同心シール、螺旋シール、タンデムシール、二重シール、カードリッジシール、ガスシール、並びに他の既知のメカニカルシール及び密封タイプ及び構成を含む様々なタイプのメカニカル流体密封システムを含むことを意図している。
【0022】
「シャフト」という用語は、機械システムにおいてメカニカルシールを取り付け可能な任意適切な装置を指すことを意図し、軸、ロッド、及び他の既知の装置を含む。シャフトは、例えば回転方向や往復運動方向など、選択された任意の方向に移動することができる。
【0023】
ここでいう「軸方向の」及び「軸方向に」という用語は、任意のシャフトの軸に概ね平行な方向を指す。ここでいう「半径方向の」及び「半径方向に」という用語は、任意のシャフトの軸に概ね直角の方向を指す。「流体」及び「複数の流体」という用語は、液体、気体、及びそれらの組み合わせを指す。
【0024】
本明細書で用いる「軸方向内側」又は「軸方向内部」という用語は、固定機器及びメカニカルシールを使用する固定機器に近位のメカニカルシールの部分を指す。反対に、本明細書で用いる「軸方向外側」又は「軸方向外部」という用語は、機械システムから遠位の固定装置及びシール組立品の部分を指す。
【0025】
本明細書で用いる「半径方向内側」という用語は、シール組立品の、任意のシャフトに近位の部分を指す。反対に、本明細書で「半径方向外側」という用語は、任意のシャフトから遠位のメカニカルシールの部分を示す。
【0026】
ここでいう「固定装置」及び/又は「静止表面」という用語は、グランドを備えたシールが固定されるシャフト又はロッドを収容する任意適切な固定構造体を含むことを意図する。
【0027】
ここでいう「プロセス媒体」及び/又は「プロセス流体」という用語は、一般に、固定装置を介して移送されている媒体又は流体を指す。ポンプの応用例では、例えば、プロセス媒体は、ポンプハウジングを介してポンピングされている流体である。
【0028】
ここでいう「グランド」という用語は、固定装置へのメカニカルシールの固定を可能にし、容易にし、補助する任意の適切な構造体であって、同時に1つ又は複数のシール部品を少なくとも部分的に取り囲む又は収容する構造体を含むことを意図している。必要に応じて、グランドはメカニカルシールへの流体アクセスを提供することもできる。通常の技能を備えた当業者であれば、グランド組立品が、メカニカルシール組立品の一部又は固定装置の一部を形成できることも理解するはずである。
【0029】
本明細書で使用される「スラリー」又は「スラリープロセス流体」という用語は、固体粒子又は微粒子を含むプロセス流体又は他のタイプの流体を含むことを意図している。このように、スラリーは、水などの分散媒中に懸濁された、より高密度の固体物質微粒子材料の混合物とすることができる。スラリーの最も一般的な用途は、固形物の輸送又は鉱物の分離手段であり、分散媒は、本発明のメカニカルシール組立体を採用した遠心ポンプなどの装置によって圧送される。固体粒子の粒径は様々とすることができる。粒子はある輸送速度以下で沈降し、混合物はニュートン流体又は非ニュートン流体のように振る舞うことがある。混合物によっては、スラリーは研磨性及び/又は腐食性を有することがある。流体は、例えば、温度又は圧力の変化に応答してのみ粘度が変化するというニュートン特性を有する又は示すニュートン流体とすることができる。具体的には、ニュートン流体の粘度は、一定温度についてその流体に加えられる剪断の量に関係なく一定である。よって、ニュートン流体は、粘度と剪断応力との間で比例関係を有している。ニュートン流体には、分散媒から微粒子を比較的簡単かつ迅速に沈殿させる能力がある。ニュートン流体は沈殿スラリーとも呼ばれる。沈殿スラリー中の微粒子は、典型的には約100μm以上である。この流体はまた、非ニュートン特性を有するか又は示す非ニュートン流体でもよく、そのような非ニュートン流体では、剪断力がそれに加えられると、この非ニュートン流体の粘度が流体の種類の関数として減少又は増加する。非ニュートン流体では微粒子が沈殿しにくいため、非沈殿性スラリー(例えば、均質混合物)とも呼ばれる。非沈殿性スラリーでは、流体は流体と微粒子のより均質な混合物を含む。非沈殿性スラリー中の微粒子は、典型的には約100μm未満である。このスラリーは、クリーンなスラリー、軽いスラリー、重いスラリーなど、さまざまな種類がある。
【0030】
本発明のメカニカルシール組立体は、例えば図1に示されている。図示したメカニカルシール組立体10は、第1又はシャフト軸に沿って延伸するシャフト12の周りに同心円状に環着されると共に、ポンプ又は他の機械装置のような固定装置14に固定されている。シャフト12は、少なくとも部分的には固定装置14内部に又は固定装置に隣接して設けることができる。メカニカルシール組立品10は流体密シールを形成するよう構成でき、従ってスラリーを含みうるプロセス流体又は媒体が固定装置から流出するのを防止し、メカニカルシールの損傷又は劣化を防止する。流体密シールは、一対のシールリング20及び30として示した密封部材で達成される。図示されたこれら密封リングは、互いと作動的に密封接触して配置されており、その間にシールを形成する第1すなわち回転シールリング20と第2すなわち固定シールリング30とを含む。固定シールリングは、ローターチャンネル又は溝22が形成された外表面を備えた本体を有する。ローターチャンネル22は、Oリングのような密封要素150を装着するようにサイズ決め且つ構成されることができる。同様に、固定シールリング30は、ステーターチャンネル又は溝32が形成された外表面を備えた本体を有する。ステーターチャンネル32も、密封要素を装着するようにサイズ決め且つ構成される。固定シールリング20と回転シールリング30は、それぞれ滑らかな弓形密封表面を有し、エナジャイザー密封要素130などの任意の適切な付勢組立体によって互いに密封接触するように付勢される。シールリング20及び30は、一体としてもよいし、メカニカルシール組立体10の取付を容易にするため一対のシールリング区分にそれぞれ分割してもよい。シールリング20及び30の密封表面は、広範囲にわたる動作条件下で動作可能な流体密シールを提供する。一実施形態によれば、シールリング20及び30は、類似の又は同一の形状としてよい。
【0031】
さらに、メカニカルシール組立体10は、グランド組立体50と、グランド組立体50の内部及び固定装置14の内部に取り付けられるホルダ又はスリーブ組立体60とを含むことができる。図示したスリーブ組立体60は、任意の選択した形状又は構成を備えることができ、図示した実施形態では、シャフト12の周りに配置されると共にシャフトに回転可能に結合されたスリーブとして形成された本体を有している。スリーブ組立体60は、グランド組立体50及び固定装置14によって形成された内部空間18内に配置される。スリーブ組立体60の本体は、延長スリーブ部62と、回転シールリング20を収容し且つ保持する空間を画定するチャンネル66を形成するよう構成された軸方向内部端におけるフランジ部64とを有する。一実施形態によれば、フランジ部64は、概して又は実質的にU字形状の構成を有する。スリーブ部62は、外表面68Aと、例えば密封要素154を取り付けるための1つ又は複数の密封要素を内部に取り付けるよう形成された任意の選択された数の溝を備えた対向する内表面65Bとを有する。密封要素154は、スリーブ60とシャフト12との間にシールを形成し、固定装置14内のプロセス流体をシールするように構成されている。また、内表面68Bには、フランジ部64の領域でスリーブの端部に配置された係合チャネル又は領域70を形成するために切り抜き部分が形成されており、これがシール保持機構を形成する。係合チャネル70は、例えばカバー密封要素90の一部などの保護シールの一部を収容するよう構成されている。
【0032】
図1及び図10を参照すると、図示したメカニカルシール組立体10は、スリーブ60のスリーブ部62の外表面68A上に取り付けられる支持リング要素80も含む。支持リング要素80は、外表面82及び対向する内表面を有する本体を含む。外表面82は、軸方向内側端部に形成された壁部84を含み、この軸方向内側端部は、外表面82から半径方向外側に延在する階段状壁面86を有する。壁部84は、軸方向にその外側に延びる接続特徴部88を含み、この接続特徴部88は、支持リング要素80をそこに機械的に結合するための固定シールリング30に形成された補完形状チャネル又はシート36内に収容されるように構成されている。補完形状チャンネル36は、密封表面に対向する固定シールリング30の端部に形成されている。したがって、支持リング要素80は、シールの動作中も静止状態を保つように、固定シールリング30に機械的に結合されている。支持リング要素80はまた、動作中及び様々な圧力条件下でエナジャイザー密封要素130のような密封要素を支持するのを助けるために、密封要素に接触するように位置決めされている。
【0033】
メカニカルシール組立体10はまた、スリーブ組立体60のスリーブ部62の端部の周りに取り付けられ、スリーブ組立体60をシャフト12に固定するためのロックリング組立体100を含む。具体的には、ロックリング組立体100は、スリーブ組立体60をシャフト12に固定するためのピン102を採用しているため、スリーブ組立体はそれと共に回転することができる。
【0034】
グランド組立体50は、シャフト12の周りに同心円状に配置され、周知の締結機構を介し且つ周知の締結技法にしたがって固定装置14に取りけられる。グランド組立体50は、外表面52及び対向する内表面54を有する本体を含む。本体は同心円状であり、オーバーハング部58を形成するように、半径方向外側端部から、固定装置14に対して空間18の内部へと半径方向内側に延びる半径方向内側端部まで延びるよう構成され且つサイズ決めされることができる。内表面54には、オーバーハング部58の領域における切除領域には溝56が形成されており、この溝56は、エナジャイザー密封要素130のような密封要素の一部を収容するためにサイズ決め且つ構成されている。さらに、メカニカルシール組立体10は、グランド組立体50と固定装置14との間に配置されて流体シールをその間に形成可能な環状グランド密封要素又はガスケット158を含むことができる。
【0035】
また、メカニカルシール組立体10は、このメカニカルシールがスラリー材料をシールするために使用されているときに、メカニカルシール組立体の部品を保護するのに役立つ一対の特別に構成された密封要素を含む。スラリー材料は、固定装置14内に収容されるプロセス流体を形成する。一実施形態によれば、メカニカルシール組立体10は、シール内で軸方向内側に配置されるカバー密封要素90であって、スリーブ組立体60のフランジ部64の少なくとも一部と回転シールリング20の少なくとも一部とを覆うように位置決めされるカバー密封要素90を採用することができる。カバー密封要素90は、スリーブ組立体に結合し且つそれと一体的に回転するよう構成されている。メカニカルシール組立体10はまた、メカニカルシール組立体の軸方向外側端部に配置されたエナジャイザー密封要素130であって、固定シールリング30に軸方向付勢力を加えてシールリングの密封面又は表面を互いに嵌合シール係合状態にし且つ外側シールを形成してプロセス流体が固定装置14から周囲環境に漏れるのを防止するように配置される、エナジャイザー密封要素130を含む。カバー密封要素90は、例えば図1-6に示されている。図示したカバー密封要素90は、外表面94及び内表面108を備えた本体92を含む。外表面94は、テーパー端表面部98に移行する比較的平坦な端表面部分96を有している。テーパー端表面部分98は、任意の選択した態様でテーパー状にすればよい。例えば、テーパー端部分98は、好ましくは、平坦な端表面部分96に隣接する位置100での直径がより大きくなり、本体92の末端領域102でより小さい直径に移行する。一実施形態によれば、図示されたように、テーパー端表面部分98は、位置100から末端部分又は領域102まで連続的な直線的様態でテーパーしている。平坦な端表面部分96は、末端部領域106で終端するテーパー端部分104を任意選択で含むことができる。平坦な端表面部分92は、外側末端部106に形成されたリップ部110であって、半径方向内側に延び且つ第1の捕捉又は保持機構として機能するリップ部110を有している。
【0036】
カバー密封要素90の本体92の内表面108は、平坦な端表面部分92に対向する上部内表面108Aと、テーパー端表面部分98に対向する下部内表面108Bとを含むことができる。上部内表面108Aの直径は、下部内表面108Bの直径より大きい。さらに、内表面108Aには環状チャンネル又は溝112が形成されている。下部内表面108Bは、メカニカルシール組立体内に取りけられた状態で、上部内表面108Aに対して半径方向内側に階段状になっており、階段状壁部114を形成する。詳細には、上部内表面108Aは、半径方向に延びる階段状壁部114によって下部内表面108Bに結合されている。階段状壁部114は、スリーブ組立体60のフランジ部64を取り付けるために形成された壁チャンネル116を含むことができる。階段状壁部114は、壁チャンネル116の一部の上に重なる壁リップ部118も含む。壁リップ部及び壁チャンネル116は、スリーブ組立体60に形成された係合チャネル70と協働して第2の捕捉又は保持機構を形成する。
【0037】
例えば図6に示したように、カバー密封要素90に形成された壁チャンネル116は、フランジ部64の底部72を取り付けるようサイズ決め且つ構成されている。壁チャンネル116のリップ部118は、スリーブ組立体60の内表面68Bにおける切除部分に形成された係合チャネル70と係合する。リップ部118とチャンネル70との係合は、カバー密封要素90とスリーブ組立体60との機械的な連結又は結合を助ける。さらに、端リップ部110は、組み立てられると、スリーブ組立体60のフランジ部64の頂部78の上に重なる。互いに結合されると、リップ部118はフランジ部64と接続し、それを捕捉する助けとなる。
この構成では、フランジ部64の外表面74に形成された突起76は、カバー密封要素90の上部内表面108に沿って形成されたチャンネル112内に取り付けられる。突起76は、カバー密封要素90とスリーブ組立体60との間の付加的な捕捉又は保持機構として機能する役目を果たす。
【0038】
カバー密封要素90の下部内表面108Bは、下部内表面108Bからシャフト12に向かって半径方向内側に延びる1つ又は複数の突起120を任意選択で含むことができる。突起120は、カバー密封要素90とシャフトとの間にシールを形成するためシャフト12に接触するようサイズ決め且つ構成されている。突起120は、スラリーなどのプロセス媒体又は流体がシャフト12の外表面に沿って通過するのを防止する助けとなる。
【0039】
図示したカバー密封要素90は、スリーブ組立体60のフランジ部64及び回転シールリング20の少なくとも一部を、スラリータイプのプロセス流体中に典型的には存在する有害な微粒子によって引き起こされる損傷(例えば、摩耗)から保護するのに役立つ。さらに、カバー密封要素90は、スリーブ組立体60とシャフト12との間に二次シールを設ける又は形成する助けとなる。図示したカバー密封要素90には、複数の異なる捕捉又は保持機構が形成されており、スリーブ組立体に密封要素を固定する助けとなる。例えば、カバー密封要素90は、スリーブ組立体60のフランジ部64の捕捉と固定を助けるために、内面108の階段状壁部114に形成された壁溝116と、対応するリップ118とを有する。さらに、本体92の外側末端部106には、フランジ要素64の頂部表面78と結合し且つそれを固定するリップ110が形成されている。さらには、密封要素の上部内表面108Aには、突起76を取り付けるためのチャンネル112が形成されている。突起及びチャンネル112は、カバー密封要素90をスリーブ組立体60に固定するさらなる助けとなる。
【0040】
図2A及び2Bに示したようにカバー密封要素90の外表面94には、任意選択でポンピング要素124を形成することができる。ポンピング要素124は、スラリープロセス流体を、カバー密封要素90の外表面94の周囲で移動又はポンピングする助けとなる任意に選択した種類の表面特徴部とすることができる。ポンピング要素124は、任意の選択した形状又は構成を有することができ、外表面94に沿った任意の選択した位置に形成することができる。通常の技能を備えた当業者であれば、本明細書の教示に基づいて、任意の数及び配置のポンピング要素124を使用できることは容易に理解するであろう。図2Aに示したように、ポンピング要素124は、カバー密封要素90のテーパー端表面部分98に沿ってのみ形成してもよい。図2Bに示したように、ポンピング要素124は、平坦な端表面部分96のみに沿って、又は平坦な端表面部分96とテーパー端表面部分98との両方に沿って形成してもよい。ポンピング要素124は、スラリー中に存在する研磨粒子をシール接触領域(例えば、シールリングの密封表面)から移動又は排出するのに役立ち、その結果、シールリングを保護し、メカニカルシール組立体の寿命を延ばすのに役立つ。
【0041】
本発明のメカニカルシール組立体は、エナジャイザー密封要素130も含むことができる。例えば図1及び図7-11に示すように、図示したエナジャイザー密封要素130は、固定シールリング30及び支持リング要素80の少なくとも一部の周り、並びにグランド組立体50の一部の周りに取り付けられるか、又は装着される。エナジャイザー密封要素130は、選択したシール部品をスラリープロセス流体から保護しつつ同時にメカニカルシール組立体10の外部端に流体シールを形成する助けとなる。図示したエナジャイザー密封要素130は、外表面134及び内表面136を備えた本体132を含む。本体132はまた、軸方向内側すなわち内部端に形成されたカバー部138及び対向する軸方向外側すなわち外部端に形成された屈曲部140を含む。カバー部138は、比較的平坦な外表面134A及び対向する内表面136Aを含む。内表面136Aには、突起142などの表面特徴部を形成してもよい。この突起は、捕捉又は保持機構を形成する助けとなりうる。外表面134Aは、屈曲部140に対応する外表面134Bに移行する任意選択の傾斜平面134Cも含むことができる。外表面134Bは、階段状リップ部148などの接続特徴部を含む末端領域146を含む。末端領域146はグランド組立体50に当接するよう構成されている。屈曲部140は、さらに対向する内表面136Bを含む。内表面136A及び136Bは、階段状壁面144によって互いに結合されている。階段状壁部144は、第2階段状壁面144Bに移行する第1階段状壁面144Aを含む。屈曲部140は、メカニカルシール組立体10内に取り付けられると、屈曲部140の屈曲及び撓みを許容するカバー部138よりも薄い厚みを備えている。屈曲部140は、例えば図7及び8に示したように、概して未屈曲状態又は位置に配置されている。未屈曲位置では、屈曲部140は概してL字形状を有する。エナジャイザー密封要素130がメカニカルシール組立体10内に取り付けられると、屈曲部140は、例えば図1、10、及び11に示したように、概して屈曲若しくは負荷状態又は位置に配置させることができる。付勢(energized)若しくは屈曲状態又は位置にあるときは、屈曲部は、カバー部を介して軸方向の付勢力を固定シールリング30の裏面に印加して、シールリングの密封面又は表面を互いに強制的に密封接触させる。屈曲状態にあるときは、屈曲部140は、屈曲部140の中間部170が曲げ戻されて圧力キャビティ172を形成するので、概して屈曲U字構成を有する。中間部170によって形成される屈曲した部分は、屈曲状態に配置されると、軸方向の付勢力を印加するばね様部分を形成する。具体的には、エナジャイザー密封要素の屈曲部は、付勢位置に配置されると、固定シールリングを付勢するための屈曲中間部を形成する。中間部によって形成された圧力キャビティ172は、スラリーが、屈曲部140に密封圧力を印加することと、固定シールリング30に伝達される付勢力をカバー部138に印加することとを可能にする。エナジャイザー密封要素の屈曲部は、弾性及び可撓性を備え、屈曲してばね様中間部を形成することができる。
【0042】
図1、10、及び11に示したように、エナジャイザー密封要素130がメカニカルシール組立体10内に取り付けられると、カバー部138が、固定密封要素30の外表面34の一部を覆うように取り付けられる。内表面136Aに沿って形成された突起142は、固定シールリング30の外表面34に形成されたチャンネル32と位置合わせされ、そのチャンネル内に取り付けられる。カバー部138がこの位置に配置されると、階段状壁面144Bが、支持リング要素80の壁部84に当接する。支持リング要素80の外表面82が密封要素の内表面136Bに接触して、エナジャイザー密封要素130を固定シールリング30に対して支持し且つ位置決めする。末端領域146に形成された接続特徴部は、グランド組立体50に結合可能である。具体的には、接続特徴部は、グランドチャンネル56内に取り付けられるリップ部148を含んでいる。リップ部148は、グランド組立体50の内表面54と固定装置14との間に取り付けられ且つ固定されて、それらの間に末端領域146を確実に取り付ける。さらに、突起142が固定シールリングのチャンネル32と機械的に位置合わせされ且つ係合すること、及び階段状壁面144Bと支持リング要素80の壁部84との間の係合によって、エナジャイザー密封要素130を固定シールリング30上で保持するための複数の異なる捕捉及び保持機構が形成される。さらには、エナジャイザー密封要素130の屈曲部140をグランド要素に確実に取り付け、カバー部138を固定シールリング30及び支持リング要素80に確実に取り付けることで、屈曲部140が屈曲状態へと屈曲することが可能となり、軸方向の付勢力を固定シールリングに印加することになる。屈曲部140の屈曲した中間部170は、固定シールリング30に十分な付勢力を印加するのと同時に、屈曲部が圧力変動に対応するように屈曲できるため、エナジャイザー密封要素130が広範囲の圧力条件で作動することを許容する。カバー部138の内径も、固定シールリング30に環着された際に固定シールリングと摩擦又は締まりばめを形成するようサイズ決めできる。
【0043】
エナジャイザー密封要素130の屈曲部140の接続特徴部は、グランド組立体50の内表面に形成される補完的な形状のチャンネル内に収容される付加的な隆条要素176を任意選択で含んでもよい。
【0044】
よって、エナジャイザー密封要素130は、メカニカルシール組立体10内に画定された軸方向位置に固定シールリング30を配置し且つ位置決めする助けとなる。さらに、カバー部分138のようなエナジャイザー密封要素130は、スラリープロセス流体内に存在する研磨微粒子による潜在的な損傷から固定シールリング30の外表面34の少なくとも一部を保護するための二次シールとなり又はそうした二次シールを形成する。屈曲領域140は、エナジャイザー隔膜又はばね付勢要素のように動作且つ機能し、メカニカルシール組立体10内に取り付けられると、屈曲して外側に延在した形状を有することができる。この屈曲形状は、圧力変動を吸収し且つばね様部分を形成する役目を果たすので、軸方向の付勢力を固定シールリング30に印加することでシールを付勢する。屈曲部140は、グランド組立体50と固定装置14との間に取り付けられると、メカニカルシール組立体10内でシールバランスラインを維持し、付勢予荷重力をシールリングに加える滑り止め特徴部を提供すなわち形成する。グランド組立体50と固定装置14との間にある屈曲部140の部分の位置決めによって、二次シールが形成され、固定グランド軸方向表面の部分的なライニングが、プロセス流体の研磨粒子から表面を保護する役目を果たす。
【0045】
カバー密封要素90及びエナジャイザー密封要素130は、同じ材料で構成しても異なる材料で構成してもよい。例えば、これら密封要素は、熱硬化性又は熱可塑性ポリウレタン、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)などのポリウレタン、シリコーンゴム、強化布材料、又は任意の種類のエラストマー材料から形成することができる。密封要素を形成するために使用される材料は、従来のメカニカルシール組立体に使用される標準的な金属材料と比較して、耐摩耗性が高いことが好ましい。これら材料は、このようにシールの部品を保護するのに使用できる。
【0046】
別の実施形態によれば、固定セラリングに付加的な量のばね付勢力を与えるように、エナジャイザー密封要素130と支持リング要素80とグランドアセンブリ50との間に取り付けられる付加的なばね要素を設けることができる。
【0047】
したがって、本発明は、これまでの記載から明らかとなった目的に含まれる、上述した目的を有効に達成することが分かるはずである。本発明の範囲を逸脱することなく上記の構成に対して一定の変更を施すことが可能であるから、上記の説明に含まれ又は添付の図面に示されたすべての事項は、例示的なものとして解釈すべきであり、限定的な意味で解釈すべきではないことが意図されている。
【0048】
さらに、次の特許請求の範囲は、本明細書に説明された本発明のすべての一般的特徴及び具体的特徴を網羅するものと理解すべきであり、また本発明の範囲に関するすべての言明もその範囲に入ると言うこともできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】