(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】分割メカニカルシールにおける流体環境を最適化するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
F16J 15/34 20060101AFI20250220BHJP
【FI】
F16J15/34 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547500
(86)(22)【出願日】2023-02-20
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 US2023013428
(87)【国際公開番号】W WO2023158857
(87)【国際公開日】2023-08-24
(32)【優先日】2022-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512115807
【氏名又は名称】エー. ダブリュー. チェスタートン カンパニー
【氏名又は名称原語表記】A.W. CHESTERTON COMPANY
【住所又は居所原語表記】860 Salem Street, Groveland, MA 01834 (US).
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】パワーズ, ロバート, ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】アジベルト, アンリ, ビンセント
【テーマコード(参考)】
3J041
【Fターム(参考)】
3J041AA02
3J041BA04
3J041BB02
3J041BD01
3J041DA03
3J041DA16
(57)【要約】
【要約】
メカニカルシール組立品は、流体インサート要素を取り付けるために、内側表面にチャンバーが形成されたグランド組立品を含む。流体インサート要素は、回転、及び、固定シールリングの密封表面によって形成される、シール境界面から離れる方向への、スラリープロセス流体内に存在する粒子の運動を、促進する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転シャフト有する固定機器に取り付けられると共にスラリープロセス流体を収容するメカニカルシール組立品であって、
前記固定機器に取り付けられると共にグランド取り付け領域を形成するよう構成されたグランド組立品であって、外側表面及び内側表面を含む本体を有し、前記内側表面には少なくとも1つのグランドチャンバーが形成された、グランド組立体と、
前記グランドチャンバーに取り付けられるようサイズ決め且つ構成された流体インサート要素であって、前記グランド取り付け領域内で前記スラリープロセス流体に暴露されるよう構成された非平面形状底面を有した本体を有する、流体インサート要素と、
ホルダチャンバーを形成すると共に前記グランド取り付け領域内に配置されたホルダ組立品と、
前記ホルダ組立品の前記ホルダチャンバー内に配置されると共に、回転子密封表面が一端に形成された本体を有する回転シールリングと、
前記グランド取り付け領域内に配置されると共に、固定子密封表面が一端に形成された本体を有する固定シールリングであって、前記固定子密封表面及び前記回転子密封表面が、互いに隣接して配置されて密封境界面を形成する、固定シールリングとを含む、メカニカルシール組立品。
【請求項2】
前記固定子密封表面及び前記回転子密封表面は同じサイズ及び形状を有する、請求項1に記載のメカニカルシール組立品。
【請求項3】
前記グランド組立品の前記本体は、前記グランド組立品の前記内側表面と前記外側表面との間に延伸する第1流体ポートが形成された第1環状部を有し、前記第1流体ポートは前記グランドチャンバーと流体連通するように配置されている、請求項2のメカニカルシール組立品。
【請求項4】
前記グランド組立品の前記本体は、流体を前記グランド取り付け領域に導入するために、前記グランド組立品の前記内側表面と前記外側表面との間に延伸する第2流体ポートが形成された第2環状部を有する、請求項3に記載のメカニカルシール組立品。
【請求項5】
前記第1環状部には、前記グランド組立品の前記内側表面と前記外側表面との間に延伸する第3流体ポートが形成されており、前記第3流体ポートは前記グランドチャンバーと流体連通するように配置されている、請求項4のメカニカルシール組立品。
【請求項6】
前記流体インサート要素の前記底面は湾曲形状を有する、請求項4のメカニカルシール組立品。
【請求項7】
前記流体インサート要素の前記底面の前記湾曲形状は横方向に湾曲している、請求項6のメカニカルシール組立品。
【請求項8】
前記流体インサート要素の前記底面の前記湾曲形状は中間方向に湾曲している、請求項7のメカニカルシール組立品。
【請求項9】
前記流体インサート要素の前記底面は傾斜面を有する、請求項6のメカニカルシール組立品。
【請求項10】
前記流体インサート要素の前記底面は、それぞれが第1角度で傾斜した第1傾斜面及び対向する第2傾斜面と、前記第1傾斜面と第2傾斜面との間に配置されると共に第2角度で傾斜した中間傾斜面とを有し、前記第2角度は前記第1角度より大きい、請求項9に記載のメカニカルシール組立品。
【請求項11】
前記流体インサート要素の前記本体は、上面と、前記上面に結合された複数の側壁と、前記上面から外側に延伸するタワー部とを含み、前記タワー部はタワー上面及び複数のタワー側壁を有し、前記複数のタワー側壁の1つ又は複数には側壁開口部が形成されている、請求項3に記載のメカニカルシール組立品。
【請求項12】
前記タワー上面には、前記流体インサート要素が前記グランドチャンバー内に取り付けられると、前記第1流体ポートと位置合わせされる第1流体開口部が形成されており、前記流体インサート要素の前記本体の前記上面には、前記第1流体開口部と位置合わせされた第2流体開口部が形成されている、請求項11に記載のメカニカルシール組立品。
【請求項13】
前記固定シールリングの前記外側表面の周りに配置された固定子密封要素と、
上面と、反対側の底面と、半径方向内側に離間されたフランジ部とを備えた軸方向に移動可能なばねホルダプレートであって、前記上面には複数の締結具開口部が形成されている、ばねホルダプレートと、
前記ばねホルダプレートの周りに取り付けられるよう構成された複数の付勢クリップ組立品であって、前記ばねホルダプレートを前記固定シールリングに結合するため前記固定シールリングと嵌め合い係合するよう構成された複数の付勢クリップ組立品と、
前記締結具開口部及び前記グランド締結具穴に取り付けると共に前記ばねホルダプレートを前記グランド組立品の前記上面に固定するための複数の締結具と、を含み、
前記グランド組立品は、複数のグランド締結具穴が形成されている上面を有し、
前記固定子密封要素は、第1の無荷重位置にあるときには半径方向に圧縮されていない状態で配置可能であり、前記ばねホルダプレートは、前記複数の締結具が締め付けられると軸方向に移動可能であって、前記固定子密封要素を、第2の荷重位置にあるときには半径方向に圧縮された状態となるように軸方向に移動させる、請求項4に記載のメカニカルシール組立品。
【請求項14】
前記グランド組立品の前記上面には複数のばね穴が形成されており、前記複数のばね穴に取り付けるための複数のばねをさらに含む、請求項13に記載のメカニカルシール。
【請求項15】
前記ホルダ組立品は、ホルダ移動止め溝が形成された内側表面を備え、前記回転シールリングは、その前記外側表面に形成された回転移動止め溝を有する、請求項13に記載のメカニカルシール。
【請求項16】
前記固定シールリングは、前記複数の付勢クリップ組立品のそれぞれの一部に結合するように形成された溝を具備した内側表面を有する、請求項13に記載のメカニカルシール
【請求項17】
前記複数の付勢クリップ組立品のそれぞれが、
本体を備えた内側ばねクリップであって、前記本体が、
その第1端部に形成される内側隆条部であって、前記ばねホルダプレートの底面に係合するよう構成された内側隆条部と、
第2の反対側端部に形成される屈曲部であって、前記固定シールリングの前記上面に係合するよう構成された屈曲部とを有する、内側ばねクリップと、
前記内側ばねクリップの前記屈曲部内に取り付けられるようサイズ決め且つ構成された第1コイル状端部と、前記固定シールリングの前記内側表面に形成された前記溝と係合するようサイズ決め且つ構成された屈曲張出部とを有する外側ばねクリップとを含む、請求項16に記載のメカニカルシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、「メカニカルシールにおける流体環境を最適化するためのシステム及び方法」と題した2022年2月18日付けの米国特許仮出願第63/311,724号の優先権を主張し、さらに本願は、「分割メカニカルシールにおける外部付勢二次シール」と題した2021年06月04日付けの米国特許出願第17/339,397号の一部継続特許出願であり、これは、2020年06月05日付けの「分割メカニカルシールにおける外部付勢二次シール」と題された米国仮特許出願第63/035,504号の優先権を主張するものである。上記出願の内容は、本明細書に引用して援用する。
【背景技術】
【0002】
従来のメカニカルシールは、流体密シールを提供するために、例えば機械装置などにおける多種多様な環境及び設定で使用されている。通常、こうしたメカニカルシールは、固定機械ハウジング内に取り付けられ且つそのハウジングから突出する回転シャフト又はロッドの周囲に設けられる。
【0003】
分割メカニカルシールは、気密且つ流体密シールを提供するために、多種多様な機械的装置で使用されている。通常、こうしたメカニカルシールは、固定機器内に取り付けられ且つその固定機器から突出する回転シャフトの周囲に設けられる。このメカニカルシールは、通常はシャフトの出口箇所で固定機器にボルト止めされており、よって加圧プロセス流体が固定装置から失われるのを防いでいる。従来の分割メカニカルシールは面型(face-type)メカニカルシールを含むが、この面型メカニカルシールには、シャフトの周囲に同心状に配置されると共に、軸方向に互いから離間された一対のシールリングが含まれる。各シールリングは、互いに密封接触するように付勢された複数の密封面を備えている。通常は、1つのシールリングが静止状態を維持し、他方のシールリングがシャフトと結合され且つそれと共に回転する。このメカニカルシールは、シールリングの密封面を互いに密封接触するように付勢することによって、加圧プロセス流体が外部環境に漏れ出すのを防ぐ。通常、回転シールリングは、グランド組立品により形成されるチャンバー内に配置されたホルダ組立品内に取り付けられる。ホルダ組立品は、ねじで互いに固定された一対のホルダ半割れ又は区分を備えることができる。同様に、グランド組立品は、同様にねじで互いに固定された一対のグランド半割れ又は区分を備えることができる。シールリングもしばしば複数区分に分割され、各区分が一対の密封面を備えているので、各リングは、シャフトの一方の端部を解放することなくシャフトに環着可能な割りリングとなる。
【0004】
従来の分割メカニカルシールは、シャフトに環着した後に密封対象の機器にボルトで固定される回転構成要素及び固定構成要素を備えている。回転シール面は、区分がシャフトに環着された後で回転金属クランプ内に挿入される。次に、固定面区分とグランド区分が組み立てられると、分割グランド組立品がポンプハウジングにボルトで固定される。代替的には、固定及び回転密封部品をあらかじめ小組立品へ組み立てておき、それをシャフトの周囲に取り付けてもよい。
【0005】
回転式と固定式の半組立品(例えば4つの小組立品)からなる分割メカニカルシールは、金属部品、エラストマーガスケット、及びOリングの分割面、並びに一次面がすべて一直線上に存在している。このため、すべての構成要素が密封位置合わせされるよう確実に拘束することが著しく困難となる。例えば、Oリングは溝内で半径方向に圧縮されるため、端部が突出した状態で周方向に広がり、接合時に座屈する可能性があり、分割位置で金属やシール面部品による挟み込みが発生する。回転又は固定組立品内で様々な部品の分割位置をずらす従来の方法は、個々の部品ではなく、小組立品全体がシャフトの周りに固定されているため、使用することができない。これは、機器へのシール組立品の取り付けを容易にし且つ迅速にするが、部品の位置合わせ不良や、その後の、密封構成要素により形成される接合部からの測定可能な漏れを発生させる可能性がある。
【0006】
従来の分割メカニカルシールの設計には、これらシールの使用者にとって幾つかの問題があった。例えば、分割メカニカルシールは、プロセス流体のようなスラリー中に存在する汚染物質を十分に循環又は除去できないことがしばしばあった。汚染物質が分割シール面の近くに残存していると、メカニカルシールの密封性能に悪影響を及ぼし、時間の経過とともにメカニカルシールの動作や機能を低下させる可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、流体インサート要素を取り付けるために内側表面にチャンバーが形成されたグランド組立品を含むメカニカルシール組立品に関する。前記流体インサート要素は、回転及び固定シールリングの密封表面によって形成されるシール境界面から離れる方向への、スラリープロセス流体内に存在する粒子の運動を促進する。
【0008】
本発明のメカニカルシール組立体は、外側表面及び内側表面を含む本体を有するグランド組立品を含み、前記内側表面には少なくとも1つのグランドチャンバーが形成されている。流体インサート要素が設けられ、前記グランドチャンバーに取り付けられるようサイズ決め且つ構成されている。前記流体インサート要素は、前記グランド取り付け領域内で前記スラリープロセス流体に暴露されるよう構成された非平面形状底面を有した本体を有する。前記メカニカルシール組立体は、ホルダチャンバーを形成すると共に前記グランド取り付け領域内に配置されたホルダ組立品と、前記ホルダ組立品の前記ホルダチャンバー内に配置されると共に、回転子密封表面が一端に形成された本体を有する回転シールリングと、前記グランド取り付け領域内に配置されると共に、固定子密封表面が一端に形成された本体を有する固定シールリングとをさらに含む。前記固定子密封表面及び前記回転子密封表面が、互いに隣接して配置されて密封境界面を形成する。前記固定子密封表面及び前記回転子密封表面は同じサイズ及び形状を有する。
【0009】
前記グランド組立品の前記本体は、前記グランド組立品の前記内側表面と前記外側表面との間に延伸する第1流体ポートが形成された第1環状部を有する。前記第1流体ポートは前記グランドチャンバーと流体連通するように配置されている。前記グランド組立品の前記本体は、流体を前記グランド取り付け領域に導入するために、前記グランド組立品の前記内側表面と前記外側表面との間に延伸する第2流体ポートが形成された第2環状部も有することができる。前記第1環状部は、前記グランド組立品の前記内側表面と前記外側表面との間に延伸して形成された任意の第3流体ポートを含むこともできる。前記第3流体ポートは前記グランドチャンバーと流体連通するように配置されている。
【0010】
前記流体インサート要素の前記底面は、横方向に湾曲させてよい湾曲形状を有する。代替的には、前記流体インサート要素の前記底面の前記湾曲形状は、中間方向に湾曲させることもできる。本発明によれば、前記流体インサート要素の前記底面は傾斜面を有することもできる。具体的には、前記流体インサート要素の前記底面は、それぞれが第1角度で傾斜した第1傾斜面及び対向する第2傾斜面と、前記第1傾斜面と第2傾斜面との間に配置されると共に第2角度で傾斜した中間傾斜面とを有することができ、前記第2角度は前記第1角度より大きい。
【0011】
一実施形態によれば、前記流体インサート要素の前記本体は、上面と、前記上面に結合された複数の側壁と、前記上面から外側に延伸するタワー部とを含むことができる。前記タワー部は、タワー上面及び複数のタワー側壁を含むことができ、前記複数のタワー側壁の1つ又は複数には側壁開口部が形成されている。前記タワー上面には、前記流体インサート要素が前記グランドチャンバー内に取り付けられると、前記第1流体ポートと位置合わせされる第1流体開口部を形成することができる。前記流体インサート要素の前記本体の前記上面には、前記第1流体開口部と位置合わせされた第2流体開口部が形成されている。
【0012】
本発明のメカニカルシール組立体は、さらに、前記固定シールリングの前記外側表面の周りに配置された固定子密封要素と;上面と、反対側の底面と、半径方向内側に離間されたフランジ部とを備えた軸方向に移動可能なばねホルダプレートであって、前記上面には複数の締結具開口部が形成されている、ばねホルダプレートと;前記ばねホルダプレートの周りに取り付けられるよう構成された複数の付勢クリップ組立品であって、前記ばねホルダプレートを前記固定シールリングに結合するため前記固定シールリングと嵌め合い係合するよう構成された複数の付勢クリップ組立品と;前記締結具開口部及び前記グランド締結具穴に取り付けると共に前記ばねホルダプレートを前記グランド組立品の前記上面に固定するための複数の締結具と、を含むことができる。前記グランド組立品は、複数のグランド締結具穴が形成されている上面を有している。前記固定子密封要素は、第1の無荷重位置にあるときには半径方向に圧縮されていない状態で配置可能であり、前記ばねホルダプレートは、前記複数の締結具が締め付けられると軸方向に移動可能であって、前記固定子密封要素を、第2の荷重位置にあるときには半径方向に圧縮された状態となるように軸方向に移動させる。前記グランド組立品の前記上面には複数のばね穴が形成されており、前記シールは、前記複数のばね穴に取り付けるための複数のばねをさらに含む。
【0013】
前記ホルダ組立品は、ホルダ移動止め溝が形成された内側表面を備えることができる。前記回転シールリングは、その外側表面に形成された回転移動止め溝を有する。さらに、前記固定シールリングは、前記複数の付勢クリップ組立品のそれぞれの保持部に結合するように形成された溝を具備した内側表面を有する。前記付勢クリップ組立品は、内側ばね要素及び外側ばね要素を含む。前記内側ばねクリップは、その第1端部に形成される内側隆条部であって、前記ばねホルダプレートの底面に係合するよう構成された内側隆条部と、第2の反対側端部に形成される屈曲部であって、前記固定シールリングの前記上面に係合するよう構成された屈曲部と、を有する本体を含む。前記外側ばねクリップは、前記内側ばねクリップの前記屈曲部内に取り付けられるようサイズ決め且つ構成された第1コイル状端部と、前記固定シールリングの前記内側表面に形成された前記溝と係合するようサイズ決め且つ構成された屈曲張出部とを有する。
【0014】
別の態様では、本発明は分割メカニカルシールに関し、前記シールは、プロセス流体としてスラリーを使用する例えば遠心ポンプなどの機械装置において、前記シールの安全な動作を許容する機械的特徴を使用する。前記機械的特徴は、シャフトに関連するメカニカルシール構成要素の境界層から発生する前記シャフト及び関連した前記構成部品の周りの流体の回転運動などの既存の流体運動を利用して、流体の流れを引き起こし、必要に応じてプロセス流体内に存在する汚染物質を移動、循環、捕捉、排出する。本発明の前記機械的特徴は、前記遠心ポンプに取り付けられたグランドアセンブリの内側表面に沿って選択された位置に形成された選択されたチャネルに取り付けられる機械的インサート部品を含むことができる。分割メカニカルシールに元々備わっている分割部又は接続箇所によって、連続的な同心円状螺旋部品は望ましくない。本発明の機械的インサート部品は、前記グランド要素の利用度が低い区分、位置、又は弓形部に取り付けたり、配置したりできる。例えば、環状キャビティ又はチャンバーを、前記機械的インサート部品を取り付けるようサイズ決め且つ構成された前記グランドの内側表面に沿って形成できる。前記機械的インサート部品の構成は変更可能であり、好適には、前記プロセス流体に面する傾斜又は弓形表面を有する本体を含む。よって、前記構成は、前記メカニカルシール組立品内で流体-粒子運動を引き起こし、流体の流れに影響を及ぼす開放容積装置(open volume arrangements)から複雑な形状寸法までを含むことができる。前記機械的インサート部品の目的は、粒子の密着を防止し且つ/又はシールリングのシール面から前記粒子を移動させることである。メカニカルシール境界面の保護は、前記分割メカニカルシールの動作及び寿命にとって重要であり、前記メカニカルシールの保守作業を減らし、寿命を延ばすことになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の上記及びその他の特徴及び利点は、次の詳細な説明と添付の図面を参照すればより完全に理解されるはずであり、図面の中の類似した参照記号は、これら複数の異なる図面を通して類似の部材を示す。これら図面は本発明の原理を表すもので、縮尺は一定ではないが、相対的寸法を示す。
【
図1】
図1は、本発明の分割メカニカルシールの透視図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の教示による、シールリング及び密封要素が分離・無荷重位置にあることを示すメカニカルシールの部分断面図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の教示による、シールリングに関連付けられた密封要素が分離・無荷重位置にあることを示すメカニカルシールの部分断面図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の教示による、シールリングに関連付けられた密封要素が係合・荷重位置にあることを示すメカニカルシールの部分断面図である。
【
図3B】
図3Bは、本発明の教示による、シールリングに関連付けられた密封要素が係合・負荷位置にあることを示すメカニカルシールの別の部分断面図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明のメカニカルシールで使用されるばねホルダプレートであって、本発明の教示による、シールリングに関連付けられた密封要素を係合位置と分離位置に移動するために使用できるホルダプレートの透視図である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の教示によるばねホルダプレートのばねホルダ区分の1つの透視図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の教示による事前に組み立てられたグランド小組立品ユニットを示すメカニカルシールの部分断面図である。
【
図5B】
図5Bは、本発明の教示による事前に組み立てられたホルダ小組立品ユニットを示すメカニカルシールの部分断面図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明の分割メカニカルシールで使用される固定シールリング区分の透視図である。
【
図6B】
図6Bは、本発明のメカニカルシールで使用されるボルト、付勢クリップ組立品、及びスペーサ要素を図示した、ばねホルダプレートが除去された状態の分解部分断面図である。
【
図6C】
図6Cは、ばねホルダプレートと、付勢クリップ組立品と、離間要素とが除去された状態の分解部分断面図であり、本発明のメカニカルシールで使用されるボルト及びばねを示している。
【
図7】
図7は、本発明のメカニカルシール組立品の透視図である。
【
図8】
図8は、本発明の教示による
図7のメカニカルシール組立品の部分断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の教示によるグランド組立品の一区分の透視図であって、その内側表面に形成されたグランドチャンバーを示す。
【
図10】
図10は、本発明の教示によるグランドチャンバーへの取り付けに適した流体インサート要素の一実施形態の透視図である。
【
図12】
図12は、本発明の教示による流体インサート要素の別の実施形態の取り付けを示す
図7のメカニカルシール組立品の部分断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の教示によるグランドチャンバーへの取り付けに適した流体インサート要素の別の実施形態の透視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、流体インサート要素を取り付けるためのグランドチャンバーが形成されたグランド組立品を使用するメカニカルシール組立品を提供する。この流体インサート要素は、スラリープロセス流体内に存在し且つシールリング構成要素の領域又は付近に存在する微粒子の少なくとも一部に動きを与え、又はその軌跡を調節し、変化させ、若しくは変動させる助けとなる。本発明を、図示した実施形態に関連して以下に記載する。当業者であれば、本発明は、多数の異なる応用例及び実施形態で実現可能であり、本明細書に記載した特定の実施形態に特に限定されないことは理解するはずである。
【0017】
本明細書で使用する「メカニカルシール組立品」及び「メカニカルシール」という用語は、単一又は一体シール、分割シール、同心シール、螺旋シール、タンデムシール、二重シール、カードリッジシール、ガスシール、並びに他の既知のメカニカルシール及び密封タイプ及び構成を含む様々なタイプのメカニカル流体密封システムを含むことを意図している。
【0018】
「シャフト」という用語は、機械システムにおいてメカニカルシールを取り付け可能な任意適切な装置を指すことを意図し、軸、ロッド、及び他の既知の装置を含む。シャフトは、例えば回転方向や往復運動方向など、選択された任意の方向に移動することができる。
【0019】
ここでいう「軸方向の」及び「軸方向に」という用語は、任意のシャフトの軸に概ね平行な方向を指す。ここでいう「半径方向の」及び「半径方向に」という用語は、任意のシャフトの軸に概ね直角の方向を指す。「流体」及び「複数の流体」という用語は、液体、気体、及びそれらの組み合わせを指す。
【0020】
本明細書で用いる「軸方向内側」又は「軸方向内部」という用語は、固定機器及びメカニカルシールを使用する固定機器に近位のメカニカルシールの部分を指す。反対に、本明細書で用いる「軸方向外側」又は「軸方向外部」という用語は、機械システムから遠位の固定装置及びシール組立品の部分を指す。
【0021】
本明細書で用いる「半径方向内側」という用語は、シール組立品の、任意のシャフトに近位の部分を指す。反対に、本明細書で「半径方向外側」という用語は、任意のシャフトから遠位のメカニカルシールの部分を示す。
【0022】
ここでいう「固定機器」及び/又は「静止表面」という用語は、グランドを備えたシールが固定されるシャフト又はロッドを収容する任意適切な固定構造体を含むことを意図する。
【0023】
ここでいう「プロセス媒体」及び/又は「プロセス流体」という用語は、一般に、固定機器を介して移送されている媒体又は流体を指す。ポンプの応用例では、例えば、プロセス媒体は、ポンプハウジングを介してポンピングされている流体である。
【0024】
ここでいう「グランド」という用語は、固定機器へのメカニカルシールの固定を可能にし、容易にし、補助する任意の適切な構造体であって、同時に1つ又は複数のシール部品を少なくとも部分的に取り囲む又は収容する構造体を含むことを意図している。必要に応じて、グランドはメカニカルシールへの流体アクセスを提供することもできる。通常の技能を備えた当業者であれば、グランド組立品が、メカニカルシール組立品の一部又は固定機器の一部を形成できることも理解するはずである。
【0025】
本明細書で使用される「スラリー」又は「スラリープロセス流体」という用語は、固体粒子又は微粒子を含むプロセス流体又は他のタイプの流体を含むことを意図している。このように、スラリーは、水などの分散媒中に懸濁された、より高密度の固体物質微粒子材料の混合物とすることができる。スラリーの最も一般的な用途は、固形物を輸送する又は鉱物を分離する手段であり、分散媒は、本発明のメカニカルシール組立品を採用した遠心ポンプなどの装置によって圧送される。固体粒子の粒径は様々とすることができる。粒子はある輸送速度以下で沈降し、混合物はニュートン流体又は非ニュートン流体のように振る舞うことがある。混合物によっては、スラリーは研磨性及び/又は腐食性を有することがある。流体は、例えば、温度又は圧力の変化に応答してのみ粘度が変化するというニュートン特性を有する又は示すニュートン流体とすることができる。具体的には、ニュートン流体の粘度は、一定温度についてその流体に加えられる剪断の量に関係なく一定である。よって、ニュートン流体は、粘度と剪断応力との間で比例関係を有している。ニュートン流体には、分散媒から微粒子を比較的簡単かつ迅速に沈殿させる能力がある。ニュートン流体は沈殿スラリーとも呼ばれる。沈殿スラリー中の微粒子は、典型的には約100μm以上である。この流体はまた、非ニュートン特性を有するか又は示す非ニュートン流体でもよく、そのような非ニュートン流体では、剪断力がそれに加えられると、この非ニュートン流体の粘度が流体の種類の関数として減少又は増加する。非ニュートン流体では微粒子が沈殿しにくいため、非沈殿性スラリー(例えば、均質混合物)とも呼ばれる。非沈殿性スラリーでは、流体は流体と微粒子のより均質な混合物を含む。非沈殿性スラリー中の微粒子は、典型的には約100μm未満である。このスラリーは、クリーンなスラリー、軽いスラリー、重いスラリーなど、さまざまな種類がある。
【0026】
図1-6Cは、本発明の教示によるメカニカルシール10を示す。図示したメカニカルシール10は、好適にはシャフト(図示しない)の周りに同心円状に装着されると共に、図示したボルトタブ14の間に収容されたボルトのような締結具によって固定機器の外側壁に固定することができる。本発明の教示に従って作製されたメカニカルシール10は流体密シールを形成し、従って作動油などのプロセス媒体が固定機器から逃げ出すのを防止する。この流体密シールは、回転シールリング20及び固定シールリング30として図示した一対の密封部材であって、その間にシールを形成する一対の密封部材によって達成される。シールリング21、31それぞれは、一対のシールリング半割れ又は区分を備え、さらに、それぞれ滑らかな弓形密封表面21、31を備える。各シールリングの滑らかな弓形密封表面21、31は、他方のシールリングの対応する密封表面21又は31と密封接触するよう付勢されている。好適には、シールリング20、30は、後述するように取付を容易にするため一対の区分にそれぞれ分割されている。これらシールリングの密封表面21、31は、真空条件を含む広範囲の動作条件で動作可能な流体密シールを形成する。回転シールリング20はホルダ組立品110内に取り付けられ、ホルダ組立品はグランド組立品40内に取り付けられ、固定シールリング30はグランド組立品40内に取り付けられる。
【0027】
図2A-3B及び5Bに示すように、図示したホルダ組立品110は、回転シールリング20を収容し且つ保持するスペース111を画定する。ホルダ組立品110は、組立と取付を容易にするため分割できる。一実施形態では、ホルダ組立品110は、互いに結合して環状ホルダ組立品110を形成する一対の弓形ホルダ区分112を含む。ホルダ組立品110は、或いはこのホルダ組立品が分割されている場合は各弓形ホルダ区分112は、グランド組立品40に面する半径方向外側表面116と、シールリング20に対して密封する第1の概ね半径方向の内側表面124であって、回転シールリング20を収容し且つ保持するスペース111を画定する内側表面124(半径方向の最内側表面138に加え)とを備えている。
【0028】
Oリング188などの密封要素は、回転シールリング20とホルダ組立品110との間をシールするために回転シールリング20の周りに同心円状に環着されている。図示したように、このOリング188は、好適には回転シールリング20の軸方向内側部の半径方向外側表面184に環着されており、ホルダ組立品110の半径方向内側表面124に対してシールしている。ホルダ組立品110の半径方向内側表面124は、回転シールリング20に環着されたOリング188を収容且つ保持するための移動止め溝189を含み、これはメカニカルシールの組立と動作を容易にすると共に回転シールリング20を最適位置に保持するためのものである。
【0029】
他の密封部材が、メカニカルシール10の異なる構成要素間の境界面をシールできる。例えば、平坦な環状エラストマーガスケット60を使用して、グランド組立品40と固定機器との間の境界面をシールすることができる。さらに、ホルダ組立品110が分割されている場合は、ホルダガスケット160が対応する溝158に取り付けられ、ホルダ区分112を一緒にシールすることができる。ホルダ/シャフトエラストマー部材がOリング142として図示されており、内側表面138に沿って形成されたホルダ溝140内に配置され、回転シールリングホルダ組立品110とシャフト12との間をシールする。Oリング202として図示された固定シールリング/グランドエラストマー部材は、固定シールリング30とグランド組立品40との間の境界面をシールすると共に、固定シールリング30に半径方向内側の圧力をかける。グランドガスケット76は、グランドガスケット溝70(
図3A)内に配置されて、グランド半割れが互いに組み付けられると、それらの間にシールを形成する。当業者であれば、このメカニカルシール組立品10は、異なる構成要素間の密封のために任意適切な手段を備えてよいことは理解するはずである。
【0030】
さらに、図示した分割メカニカルシール10は、回転シールリング20とホルダ組立品110との間に軸方向に延伸するピン又は平坦表面要素のような回り止め機構(図示しない)を含むことができ、回転シールリングとホルダ組立品110との間の相対回転運動を防ぐ。通常の技能を備えた当業者であれば、ボルトのような適切な締結具を用いてグランド半割れとホルダ半割れとを互いに固定することができることは理解するはずである。本発明のメカニカルシール10のいくつかの構成要素は、その内容を引用して本明細書に援用する米国特許第5,571,268号、第7,708,283号、及び第10,352,457号に記載されたメカニカルシール組立品に類似している。
【特許文献1】米国特許第5,571,268号公報
【特許文献2】米国特許第7,708,283号公報
【特許文献3】米国特許第10,352,457号公報
【0031】
回転シールリング20を取り付けるための図示したホルダ組立品110は、グランド組立品40により形成されるチャンバー24内に設けられると共に、そこから半径方向内側に離間している。しかし、ホルダ組立品110をグランド組立品40内に配置する必要はないことは理解すべきである。そのかわり、ホルダ組立品110は、グランド組立品40から軸方向に離間して配置してもよい。ホルダ組立品110は、第2の軸方向延伸面133を形成する内側階段状表面をさらに含む。半径方向内側表面124及び軸方向延伸面133の間には、半径方向内側に延伸する第1壁132が形成されている。図示したように、内側軸方向延伸面133と半径方向で最内部の軸方向延伸面すなわちホルダ内面138とが、それらの間に軸方向最内部の第2壁134を画定し、この第2壁は、回転シールリング20を収容するキャビティ又は回転シールリング収容スペース111(
図2B)の底部として機能する。
【0032】
一実施形態では、回転シールリング20と回転シールリングホルダ110との間を密封する密封要素又はOリング188は、ホルダ組立品110の半径方向内側表面124に形成された移動止め溝のような溝189に収容されている。移動止め溝189は、Oリング188の半径方向の最も外側部分を収容し、取り付け時に、動作に影響を及ぼすことなく、Oリング188をホルダ組立品110に対して位置決め且つ取り付けるように寸法決めされ、配置され、且つ構成されている。移動止め溝189は、Oリング188を階段状壁132より上方に収容するのが好ましい。代替的には、移動止め溝189は、ホルダ組立品110と回転シールリング20との間の別の位置でOリングを収容する。移動止め溝189と、ホルダの半径方向内側表面124にこの溝を配置したこととの大きな利点は、これによってOリング188をこの溝に収容するのに必要な圧縮量が減少することである。
【0033】
図示された回転シールリング20は、概ね滑らかな弓形内側表面172と、スカート部を形成する第1外側傾斜表面182、比較的平坦な外側表面184、及び軸方向内側にテーパ又は傾斜した外側表面186を含む幾つかの表面を含む外側表面と、を備えている。回転シールリング20は、リング20の上部に設けられた滑らかな弓形密封表面21も含む。
図3B及び5Bに最もよく示されているように、回転シールリング移動止め溝92は、第1傾斜表面182に隣接して平坦外側表面184に形成されている。回転シールリング20に形成された移動止め溝92は、少なくとも2つの主要な機能を果たす。第一に、溝92は、回転シールリング20を、ホルダ組立品110に対して正しい位置に位置決めする助けとなり、第二に、この溝92によって回転シールリングはホルダ組立品110内で事前組立が可能となるが、これは、Oリング188をその間に捕捉する二重捕捉溝(ホルダ移動止め溝189と回転シールリング移動止め溝92との間に)を形成し、同時に回転シールリング20をホルダ組立品110内に保持しておくことにより行われる。回転シールリングの内側表面172には、ホルダ突起(図示しない)上に取り付けられて構成要素を結合するための概ね長方形の切り欠き(図示しない)が形成できる。回転シールリング内側表面172の内径は、シャフトの直径より大きくしてその周りへの環着を可能としている。回転シール区分の外側表面184の直径は、ホルダ組立品110への取付係合のため、ホルダ区分の軸方向延伸面133の直径と同一又は僅かに小さくする。回転シールリング20の最外側表面の直径は、ホルダ組立品110の内側表面124の内径より小さい。当業者であれば、回転シールリング20は、固定シールリング30のような別の密封要素と接続し且つそれに対してシールするための任意適切な構成を備えうることは、本明細書の教示に基づけば容易に理解するはずである。
【0034】
図1-3B及び5Aに示すように、図示したメカニカルシール10は、グランド組立品40も含んでいる。例示的なグランド組立品40は、互いに結合して環状シールグランド組立品40を形成する一対の弓形グランド区分41、42を含む。これらグランド区分41、42は、互いに係合してメカニカルシール組立品10の組立と動作を容易にするよう構成されている。グランド組立品区分41、42は、これらグランド区分の係合を容易にするためのかみ合い機構を用いることができる。それぞれの例示的なグランド区分41、42は、角度付き導入表面52を備えた軸方向外端部に設けられた第1面46を備えた内側表面と、第1面46から半径方向外側に延伸する第2面50であって一体形成され且つ階段状の第2面50と、を含むことができる。第1面46と第2面50は合わせて第1結合環状壁48を形成する。階段状の第2面50は、半径方向内側に傾斜した表面56に移行する。上述のように、面46、48、50、及び56により形成されるグランド区分の内側表面は、ホルダ組立品110を収容するスペース24を画定する。さらに、ぞれぞれのグランド区分41、42には、一対のねじハウジング80、82が一体形成されている。それぞれのねじハウジング80、82は、実質的に貫通して形成された横断締結具収容開口部84を含むことができる。横断開口部84には、グランド区分41、42を互いに固定するためのねじ90が取り付けられる。グランド組立品40は、グランド組立品40の底部内面59に沿って形成されたハウジングガスケット溝58も含む。溝58は、平坦な環状エラストマーガスケット60を収容する。グランド組立品40は、複数のばね穴64及び複数の締結具穴66が形成された軸方向外側の最上面62も含んでいる。ばね穴64には、ばね要素80が取り付けられ、締結具穴にはボルト250などの適切な締結具が取り付けられる。
【0035】
図2A-3B、5A及び6A-6C、特に
図6Aに示したように、図示した固定シールリング30は同様に、一対の弓形シールリング区分を備えることができ、それぞれは他方と同一又は概ね同一である。図示した固定シールリング区分は、シャフト軸に平行に延伸する概ね滑らかな弓形内側表面32と、反対側の外側表面36とを備えることができる。後に詳述するように、固定シールリング30をばね保持プレート230に取り付け且つ保持するための付勢クリップ組立品210の保持部を収容するようサイズ決め且つ構成された円周方向に延伸する凹部又は溝33が、内側表面32の内壁に沿って形成されている。溝33は連続的でも非連続的でもよい。非連続的であれば、この溝は、内側表面32に沿って離間された一連の凹所として形成できる。固定シールリング30の外側表面36は、好適には、半径方向外側に延伸する傾斜受け面192で終端する軸方向に延伸する第1外側表面190を備える。固定シールリング30は、好適には、軸方向外側上面194と、シールリングの底部に設けられた反対側の滑らかな軸方向内側の弓形リング密封表面31とを備える。この上面194には、付勢クリップ組立品210の少なくとも一部を選択的に収容且つ/又は係合するようサイズ決め且つ構成された一連の凹所又は切り欠き196が、当該上面に沿って形成されている。この構成は、固定シールリング30をチャンバー24内で位置合わせし且つ収容しやすくすると共に、固定シールリング30がシャフト12及び回転シールリング20と共に回転するのを防止する機械的障害物としても機能する。
【0036】
内側表面32により画定された固定シールリング30の内径は、シャフト径より大きく、さらに、所望であれば、回転シールリング20の内側表面172の直径より大きくすることで、それらの相対運動を可能とすることもできる。よって、固定シールリング30は、シャフトの回転時にも静止状態を維持する。例えばOリング202などのエラストマー密封部材は、半径方向内側への十分な付勢力を掛けて、シールリング区分密封面35を他方の固定シールリング区分に密封接触させる。さらに、Oリング202は、グランド組立品40の内側表面46と固定シールリング30との間に流体密及び気密シールを形成する。Oリング202は、荷重位置に配置されているときは、グランド第1面46と、環状壁48と、固定シールリング30の外側表面190とにより画定される第1取り付け領域204内に収容される。好適な一実施形態では、固定シールリング30の受け面192は、固定シールリング外側表面190に対して好適には約30度乃至約60度で、最も好適には約45度の角度をなす。固定シールリング30は、炭素材料又はアルミナ、炭化珪素などのようなセラミック材料製とするのが好ましい。
【0037】
さらに、付勢クリップ組立品210として示した本発明の分割メカニカルシール10の付勢組立品は、固定及び回転シールリング20、30を弾性的に支持することにより軸方向の付勢手段として作用する。これは、固定及び回転密封表面21及び31が互いと密封接触されるようこれらシールリングを軸方向に付勢することで達成される。
図2A-3Bに示したように、シールリング20、30は、グランド及びホルダ組立品40、110の硬質壁及び面に対して離間した浮動関係で浮動的且つ非硬質的に支持されている。
図2A-3Bに示したように、シールリング20、30は、グランド及びホルダ組立品40、110の硬質壁及び面に対して離間した浮動関係で浮動的且つ非硬質的に支持されている。この浮動的且つ非硬質的支持と離間関係とによって、回転シール区分と固定シール区分とがシャフト12に対して半径方向及び軸方向に小さく浮動運動可能となる一方、回転密封表面21は、固定シールリング30の滑らかな弓形密封表面31に追従し且つ表面31と密封接触可能となる。従って、回転及び固定シールリングの密封表面21、31は、この浮動動作の結果として自己位置合わせする。
【0038】
本発明のメカニカルシール10は、グランド組立品40の軸方向最外端に取り付けられた一連の付勢クリップ組立品210を使用することが好ましい。これら付勢クリップ組立品210は同一なので、これらクリップ組立品の1つの説明のみしか必要としない。付勢クリップ組立品210は、内側ばねクリップ216及び外側ばねクリップ218として形成される一対の概ねC字形ばねクリップを使用するのが好ましい。内側ばねクリップ216は、ばねホルダプレート230の凹部242内に収容される隆条部220を備えた第1下部を備えている。内側ばね216の隆条部220が凹部242に係合することで、内側ばねクリップ216がそこに固定される助けとなる。さらに、内側ばねクリップ216は、反対端に、固定シールリング30に軸方向付勢力を与えるため、その上面194に形成された凹部196に収容又は配置される屈曲部222をさらに含む。従って、この屈曲部222は、軸方向付勢力をシールリング20、30にかけるための軸方向付勢部材として機能する。通常の技能を備えた当業者には周知のこの軸方向の付勢力は、シールリング20、30のそれぞれのシール面21、31を互いと密封接触させる助けとなる内部に向けられた力である。
【0039】
図示したメカニカルシール10は、例えば、
図2A-4Bに示したように、軸方向に移動可能なばねホルダプレート230も含む。図示したばねホルダプレート230は、互いに接続可能な一対のプレート区分231、233から形成できる。ばねホルダプレート230は、複数の切り欠き又は凹所234が形成された上面232を備えた環状本体を含み、切り欠き又は凹所は、本体の周縁に沿って円周状に離間されている。上面232には、例えばボルト250などの締結具を収容するための一連の締結具収容開口部236が形成されている。ばねホルダプレート230は、軸方向に延伸するフランジ部240に隣接して形成された凹部242を備えた底面238も含んでいる。凹所234及び凹部242は、内側ばねクリップ216の選択した部分のような付勢クリップ組立品210の一部を収容するよう構成されている。ばねホルダプレート区分は端面244を備えており、これらは、他方のばねホルダプレート区分の端面と結合するよう構成されている。端面244の一方は、オス型突出又は突起246を備え、他方の端面はメス型の穴又は表面特徴248を備える。突起246は、他方のばねホルダプレート区分の対向する端面244に形成された対応する穴248内に収容されるよう構成されている。同様に、穴248は、他方のホルダプレート区分の対向する端面に形成された対応する突起を収容するよう構成されている。突起246及び穴248によって、ホルダプレート区分は互いに機械的に結合可能となる。ばねホルダプレート230は、フランジ部240がグランド組立品40の内側表面46と、固定シールリング30の外側表面190との間に収容されるように、サイズ決め及び寸法決めされている。ばねホルダプレート230は、ボルト250によって締め付けられると、ばね86を圧縮し、Oリング202と係合する。Oリング202は、フランジ部240によって、グランド組立品40の導入表面52を超えて、取り付け領域204内に押し込まれる。同時に、固定シールリング20は、付勢クリップ組立品210によって回転シールリング20に向けて軸方向に押される。
【0040】
本発明のメカニカルシール10の付勢クリップ組立品210は、内側ばねクリップ216に被さるように取り付けられるよう適合された外側ばねクリップ218を含んでいる。外側ばねクリップ218は、
図2B、3B及び6Bに最も明確に示したように、内側ばねクリップ216の外側表面に取り付けられそれに係合するよう構成された概ね丸形の第1端部224を含む本体を有する。外側ばねクリップ218は、そこから外側へ延伸する屈曲張出部228を備えた反対端も含む。屈曲張出部228は、内側ばねクリップ216の屈曲部222に重なり、固定シールリング30の内側表面32に沿って形成された凹所33に結合且つ係合するよう構成されている。外側ばねクリップ218の屈曲張出部228は、凹所33と係合することによって固定シールリング30をグランド組立品40に保持し且つ取り付ける。固定シールリング30をグランド組立品40に保持又は取り付けることで、メカニカルシール10の構成要素は事前に組み立てておくことができ、これによって分割メカニカルシール10の取付を容易とする助けになる。通常の技能を備えた当業者であれば、内側及び外側ばねクリップ216、218は、ばねプレートホルダ230及び固定シールリング30に係合して、軸方向の付勢力を固定シールリング及びばねプレートホルダにかけることができるのであれば、任意の適切な形状又は構成を備えてよいことは容易に理解するはずである。
【0041】
組立及び動作において、メカニカルシール10は、事前に組み立てて小組立品ユニットを形成する選択シール要素を備えた4つの選択半割れ又は区分から構成できる。例えば、
図5Aに示したように、グランド組立品40の各グランド区分は、グランド小組立品ユニット260を形成するために選択要素で事前に組み立てることができ、このグランド小組立品ユニットは、固定シールリング30、ばねホルダプレート230、Oリング202の対応する半分又は区分、及びばねホルダプレート230の上面232に形成された凹所234の数に対応する選択した数の付勢クリップ組立品210とを含む。内側ばねクリップ216は、ばねホルダプレート230の上及び周りに取り付けられ、その後、外側ばねクリップ218が、内側ばねクリップ216を覆うように又はその上に取り付けられる。外側ばねクリップ218の屈曲張出部228は、固定シールリング30の内側表面32に沿って形成された凹所33に係合し、このばねクリップの反対側端は、ばねホルダプレート230に係合する。ばね86は、グランド組立品40の上面62に形成されたばね穴64に取り付けられ、ばねホルダプレート230は、対応する締結具穴66にボルト250が配置されるとそれらによって上面に固定される。
【0042】
同様に、
図5Bに示したように、ホルダ組立品110の各ホルダ区分は、ホルダ小組立品ユニット270を形成するために選択要素で事前に組み立てることができ、このホルダ小組立品は、回転シールリング20及びOリング188の対応する半分又は区分を含む。ホルダスペーサ要素126はホルダスペース111内に配置される。スペーサ要素126は、例えばOリング188及び例えば回転シールリング20などの選択したシール構成要素を、最初に軸方向に位置決めする手助けとなり、これら構成要素への偶発的な損傷を防ぐため、選択した軸方向位置に配置する助けとなる。ホルダスペーサ要素は、ホルダ組立品がシャフト12の周りに取り付けられる前に取り除かれる。Oリング188は、回転シールリング20の外側表面184に形成された移動止め溝92に配置される。Oリング188及び回転シールリング区分がグランド組立品40内に配置されると、Oリング188は、ホルダ組立品120の内側表面124に形成された移動止め溝189内に収容されるよう位置決めされる。移動止め溝92、189は、Oリングに軸方向又は半径方向に過剰な荷重を掛けることなくOリング188を捕捉し、保持するよう作用する。グランド及びホルダ小組立品ユニット260、270は、例えば、ホルダガスケット160、グランドガスケット60、76、並びにOリング142などの他のOリング及び密封要素を含む他の密封要素を含むこともできる。これら密封要素も、小組立品ユニット内に嵌合するように分割されている。
【0043】
ホルダ及びグランド小組立品ユニットを互いに組み付ける際には、例えばOリング188、202などの密封要素が無荷重位置から荷重位置まで移動されると、Oリングは挟み込まれることがある。例えば、Oリングは半径方向に圧縮されるため、Oリングは、Oリング区分の端部が突出した状態で周方向に広がり、接合時に座屈する可能性があり、分割位置で金属やシール面部品による挟み込みが発生する。この発生を防ぐため、本発明は、荷重組立品を形成する構成要素の選択集合体を提供するものだが、この荷重組立品は、小組立品ユニットがシャフト12の周りに組み付けられる前に、Oリング188、202に早計に荷重を掛けないので、Oリング188、202がホルダ及びグランド区分の端面を超えて押し出されるのを防止する。
【0044】
ホルダ小組立品ユニット270に関しては、Oリング188区分のそれぞれは、回転シール区分20に同心円状に環着され、好適には、回転シール外側表面182、184及び回転シールリング移動止め溝92と接触して配置され、回転シールリング事前組立品を形成する。Oリング188及び回転シールリング20は、Oリング188が表面124、184に形成された移動止め溝189、92内に収容されるように、ホルダ組立品110内に取り付けられる。これによって、ホルダ小組立品ユニット270が組み付けられる際に、Oリング188への時期尚早で不要な荷重がかかることが防止、減少、又は最小化される。従って、Oリング区分の端部域がホルダ及びグランド区分の端面を超えて押し出されることはない。ホルダ事前組立品ユニット270、270は、次にシャフト12に環着される。駆動平部(drive flat)のような結合機構を用いて回転シールリング20をホルダ組立品110に回転可能に結合でき、ホルダ組立品と共に相対回転できる。この結合機構は、ホルダ組立品又は回転シールリングの何れかに配置できるが、好適な一実施形態では、回転シールリングと固定シールリングの両方に配置される。ホルダ組立品110の移動止め溝189及び回転シールリング20の移動止め溝92は、Oリング188を最適位置に収容し、保持する。Oリング188は、回転シール区分の軸方向シール面25を、互いと密封接触させるに十分な半径方向内側の力をかける。次に、ホルダ区分は、締結具収容口164内に確実に保持されたねじ170を締め付けることで互いに固定される。回転シールリング区分は、ホルダ組立品の内側表面124からは離間され且つOリング188によりその内部に非硬質的に支持されているので、回転シールリング20の半径方向及び軸方向の小さな浮動運動が可能となる。Oリング188は、移動止め溝内に配置されると、無荷重位置に配置される。
【0045】
グランド事前組立品ユニット260に関して、Oリング202は、固定シールリング30の周りに配置され、その後、グランド組立品40の内側表面に沿って形成された導入表面52に隣接して配置される。ばね86は、グランド組立品40の上面62に形成された対応するばね穴64内に取り付けられる。ボルト250を締結具穴66に部分的に締め付けることによって、ばねホルダプレート230は、グランド組立品上面62に固定される。ばねホルダプレート230、ばね86、及びボルト250は、荷重組立品を形成できる。多数の付勢内側クリップ216が、グランド組立品の上面61の外辺部すなわち外周縁に沿って取り付けられる。内側ばねクリップ216の第1端部の隆条部220は、ばねホルダプレート230の底面238に形成された凹部242に取り付けられる。外側ばねクリップ218は、端部又は先端を具備した屈曲張出部228を備え、内側ばねクリップ216に取り付けられると、端部又は先端は、固定シールリング30の内側表面32に形成された溝33に収容される。Oリング202は、導入表面52(
図3B)と、回転シールリング30の外側表面190との間に捕捉される。
【0046】
図2A及び2Bに示したように、グランド小組立品ユニット260は、Oリング202を分離・無荷重位置に配置し、ホルダ小組立品ユニット270は、Oリング188を移動止め溝188、92に配置して、Oリング188を分離、無荷重位置に配置する。従って、Oリング188、202が、ホルダ及びグランド区分のシール面を超えて押し出されることはない。完全に組み立てられると、作業者は、ばねホルダプレート230を内部に向けて軸方向移動させることによって、Oリング188、202を係合・荷重位置に移動させることができる。例えば、作業者は、レンチなどの適切な工具を使ってボルト250を選択的に締め付けることができる。ボルト250は、締め付けられると、ばね86の付勢に抗して、ばねホルダプレート230を軸に沿った内部方向に移動させるよう作用する。フランジ部240の底面は、Oリング202に接触し、Oリング202を、角度付き導入表面52を超えて軸に沿った内部方向に、スペース204内へと押し込む。従って、Oリング202は、半径方向の圧縮によって領域204に押し込まれ(例えば荷重をかけられ)、Oリングは、固定シールリング30の外側表面190と、グランド組立品40の内表面又は内側表面46とに密封接触するように配置される。よって、Oリング202は、係合・荷重位置に配置される。さらに、固定シールリング30が付勢クリップ組立品210によってばねホルダプレート230に結合されると、ばねホルダプレート230の軸方向への移動は、固定シールリング30を軸に沿った内部方向に押圧又は移動させるよう作用する。固定シールリング30は、回転シールリング20にシール面21、31を介して接触し、よって、回転シールリング20を軸に沿った内部方向に押す。回転シールリング20の軸方向移動は、Oリング188を、ホルダ組立品110の内側表面124に形成された移動止め溝189から押し出す。Oリング189は、移動止め溝189から出されると、ホルダ組立品110の内側表面124と、回転シールリング20の外側表面184との間で圧縮される(例えば荷重をかけられる)。よって、荷重位置にあるときも無荷重位置にあるときも、Oリング188は移動止め溝92内に収容される。移動止め溝189及び92は、好適には、湾曲した断面を備えており、Oリング188を収容するようサイズ決め且つ構成された別個の溝である。
【0047】
よって、図示した荷重組立品を用いて、Oリング202、188を、これらが半径方向に圧縮される係合・荷重位置まで軸方向に移動させることができる。これらOリングは、グランド及びホルダ小組立品ユニットが組み立てられ且つシャフトの周りで固定機器に固定された後に、圧縮される。本発明の荷重組立品によれば、小組立品ユニットが互いに固定されるときに、Oリングが挟み込まれ得る箇所に、組立以前に、Oリングが端面を超えて押し出されることが回避される。Oリング202、188を取り付ける領域を画定するグランド及びホルダ表面は、Oリングが密封位置で半径方向に圧縮される以前に、互いに接触しているので、Oリング区分の突出端が存在せず、密封要素の取り付け不良に至る可能性がない。
【0048】
ばねホルダプレート230は、さらに、オス及びメス型機械的結合部を用いて互いに固定される区分231、233を含む。ばねホルダプレート230は、作業者によって締め付けられる以前は、回転及び固定Oリング188、202を、グランド及びホルダ小組立品ユニット260、270がシャフト周りに固定される間、自由状態又は無荷重位置に保持する役割を果たす。事前に組み立てた小組立品ユニット260、270によって、これらユニットの順序通りの取り付けが可能となる。具体的には、ホルダ小組立品ユニット270(例えば、回転小組立品ユニット)がシャフト12に固定され、次に、グランド小組立品ユニット260(例えば、固定小組立品ユニット)が、回転構成要素の周りで、固定機器に固定される。ボルト250を介したばねホルダプレート230の軸方向の移動が、シール面21、31及び回転及び固定Oリング188、202を、それらの動作位置に押し込む。よって、単一の要素を用いてOリング188、202を半径方向に圧縮されていない状態(例えば、無荷重位置)から圧縮された付勢(energized)状態(例えば、荷重位置)まで変位させることができる。
【0049】
本発明のメカニカルシール組立品の別の実施形態が、例えば
図7-14に示されている。類似の参照数字は、様々な図を通して同様又は類似の部品を示す。メカニカルシール組立品300は、シールリングのシール面から微粒子を洗い流す(flush)ためにフラッシング流体又はバリア流体などの外部流体をシール内部に導入する必要がないため、ノーフラッシュ又はゼロフラッシュメカニカルシール組立品を形成する。具体的には、本発明の図示したメカニカルシール組立品300は、1つ又は複数の流体インサート要素又は部品を収容するようサイズ決め且つ構成された内側表面に形成されたグランドチャンバーを有するグランド組立品を使用する分割メカニカルシール組立品に関する。この流体インサート部品は、グランドチャンバー内に取り付けられると、シールの回転要素によってスラリープロセス流体の循環を促進する拡張された流体体積の空間を形成する。図示したメカニカルシール組立品300は、好適にはシャフト12の周りに同心円状に装着されると共に、図示したボルトタブ14又はグランドランド領域370の間に収容されたボルトのような締結具によって固定機器の外側壁に固定することができる。本発明の教示に従って作製されたメカニカルシール組立品300は流体密シールを提供し、従ってスラリープロセス流体が固定機器から逃げ出すのを防止する。この流体密シールは、回転シールリング320及び固定シールリング330として図示した一対の密封部材であって、その間にシールを形成する一対の密封部材によって達成される。シールリング20、30それぞれは、一対の弓形シールリング半割れ又は区分を備え、さらに、それぞれ滑らかな弓形密封面又は表面324及び334を備える。これらシールリング区分は、互いに同一又は実質的に類似でよい。各シールリングの滑らかな弓形密封表面324、334は、付勢クリップ組立品210によって付勢されており、他方のシールリングの対応する密封表面と密封接触して流体密シールを形成する。これらシールリングの密封表面324及び334は、真空条件を含む広範囲の動作条件で動作可能な流体密シールを形成する。各シールリングの密封表面324、334は、好適には、ラインツーライン・シール面又は境界面を形成するように同じサイズ及び形状である。具体的には、固定シールリングのシール表面334を参照すると、図示したシール表面334は、単一平面に二次元平面を形成する端部表面を有する。密封表面334は、端部の内側表面332から端部の外側表面まで延伸する。固定シールリング320の密封表面334も類似の様式で形成される。したがって、密封表面324、334は同じサイズ及び形状を有し、完全に重なり合い、且つ流体密シールを形成するように位置合わせされている。回転シールリング320がホルダ組立品380のホルダチャンバー内に取り付けられると、今度は、ホルダ組立品がグランド組立品340のグランド取り付け領域内に取り付けられる。固定シールリング330も、グランド取り付け領域内に取り付けられる。
【0050】
固定シールリング区分330は、シャフト12の長手方向軸に平行に延伸する概ね滑らかな弓形内側表面332と、反対側の外側表面とを備えることができる。後に詳述するように、固定シールリング330をばね保持プレート230に取り付け且つ保持するための付勢クリップ組立品210の保持部を収容するようサイズ決め且つ構成された円周方向に延伸する凹部又は溝333が、内側表面332の内壁に沿って形成されている。溝333は連続的でも非連続的でもよい。非連続的であれば、溝333は、内側表面332に沿って離間された一連の凹所として形成できる。
【0051】
内側表面332によって画定される固定シールリング330の内径は、シャフトの直径より大きくしてそれらの間での相対運動を許容している。よって、固定シールリング330は、シャフトの回転時にも静止状態を維持する。例えばOリング202などのエラストマー密封部材は、半径方向内側への十分な付勢力を加えて、シールリング区分の軸方向密封面を他方の固定シールリング区分に密封接触させる。さらに、Oリング202は、グランド組立品340の内側表面374と固定シールリング330との間に流体密及び気密シールを形成する。固定シールリング330は、炭素材料又はアルミナ、炭化珪素などのようなセラミック材料製とするのが好ましい。
【0052】
図示したグランド組立品340は、公知の締結機構及び技法を介して固定機器に結合された本体342を有する。例えば
図1、
図7-9、および
図12に示すように、グランド組立品340は、ボルトなどの締結具を収容するために、グランド本体の周りに配置され得るボルトタブ18を採用することができる。現在の実施形態では、グランド本体342は、グランドランド領域370に形成された締結具チャンネル372を含む。一実施態様によれば、締結具チャンネル370は、グランド組立品340のランド領域370及び締結具ハウジング80、82を画定する助けとなる。締結具チャンネル372は、グランド組立品340を固定機器に固定するための締結具を収容するようサイズ決め且つ構成されている。グランド組立品の本体342は、内側表面374と、半径方向外側第1環状部344及び半径方向内側階段状第2環状部346を含む外側表面376とを有する。グランド組立品の内側表面376には1つ又は複数のグランドチャンバー360が形成されている。グランドチャンバー360は、本体342の内側表面374の使用可能な全周囲に沿って延伸するように形成することもできるし、或いは、分離した別個の複数グランドチャンバー360として形成することもでき、それぞれが内側表面374の円周の一部のみに延伸することになる。一実施形態によれば、内側表面374に複数のグランドチャンバー360を形成することができ、合計で、内側表面374により画定される内周面の約65度から約90度の間の円弧部分に沿って延伸でき、内周面の約75度から約80度の間に延びるのが好ましい。グランドチャンバー360は、グランドチャンバー360を画定するフロア部362及び一組の壁部364を有する。グランド組立品340の内側表面374及び固定機器は、メカニカルシール組立品の他の構成要素を取り付けるスペース308(例えば、グランド取り付け領域)であって、スラリープロセス流体を収容するようサイズ決めされた空間308を形成する。グランドチャンバー360のフロア362は、流体インサート要素440、430の上面の形状に補完的な形状及び構成を有することができる。
【0053】
グランド組立品340の本体342には複数の任意の半径方向に延伸するポートが形成されている。一実施形態によれば、本体342には、第1環状部344にバリア又はフラッシング流体ポート352が形成されている。フラッシング流体ポート352は、本体の外側表面376からグランドチャンバー360のフロア部362まで延伸する。フラッシング流体ポート352は、メカニカルシール組立品300の内部スペース308に水などのフラッシング流体を導入するための外部配管システムなどの流体管路に結合するよう構成できる。フラッシング流体を使用して、典型的には、スラリープロセス流体に存在する微粒子をシール面324、334から洗い流したり(flush)又は移動したりできる。グランド組立品340は、メカニカルシール組立品300の内部スペース308へのユーザによるアクセスを許容する定置洗浄(CIP)流体ポート354を任意に含むこともできる。一実施形態によれば、CIP流体ポート354は、グランド本体342の階段状環状部346に形成されている。CIP流体ポート354は、グランド組立品340の外側表面376から内側表面374まで延伸する。よって、CIP流体ポート354は、内部スペース308と直接流体連通して配置されている。CIP流体ポートは、内部スペース308に水などの清掃流体を導入するための配管システムなどの流体管路に結合するよう構成できる。清掃流体を使用してプロセス流体中の微粒子をシール境界面から移動させることで、スペース308から微粒子を一掃することができる。グランド組立品340は、第1環状部に形成された任意のメカニカルポート348を含むこともでき、メカニカルポート348は、グランド組立品の外側表面376からグランド組立品340の内側表面又はフロア部362まで延伸する。メカニカルポート348は、流体インサート要素400、430をグランドチャンバー360内で固定するのに使用可能な締結具350を取り付けるようサイズ決め且つ構成されうる。
【0054】
図示したメカニカルシール組立品300は、回転シールリング320を収容し且つ保持するスペースを画定するホルダ組立品380を含むこともできる。ホルダ組立品380は、組立と取付を容易にするため分割できる。一実施形態では、ホルダ組立品380は、互いに結合して環状ホルダ組立品を形成する一対の弓形ホルダ区分を含む。ホルダ組立品380は、或いはこのホルダ組立品が分割されている場合は各弓形ホルダ区分は、グランド組立品340に面する半径方向外側表面382と、シールリング320に対して密封する第1の概ね半径方向の内側表面384であって、回転シールリング320を収容し且つ保持するスペースを画定する内側表面384(半径方向の最内側表面386に加え)とを有する本体を備えている。
【0055】
Oリング188などの密封要素は、回転シールリング20とホルダ組立品110との間をシールするために回転シールリング20の周りに同心円状に環着されている。図示したように、このOリング188は、好適には回転シールリング320の軸方向内側部の半径方向外側表面に環着されており、ホルダ組立品380の半径方向内側表面384に対してシールしている。ホルダ組立品380の半径方向内側表面384は、回転シールリング320に環着されたOリング188を収容且つ保持するための移動止め溝189を任意に含み、これはメカニカルシールの組立と動作を容易にすると共に回転シールリング320を最適位置に保持するためのものである。
【0056】
メカニカルシール組立品300の異なる構成要素間の境界面をシールするための他の密封部材を設けてもよい。例えば、平坦な環状エラストマーガスケット60を使用して、グランド組立品340と固定機器との間の境界面をシールすることができる。さらに、ホルダ組立品380が分割されている場合は、ホルダガスケット160が対応する溝に取り付けられ、ホルダ区分を一緒にシールすることができる。ホルダ/シャフトエラストマー部材がOリング142として図示されており、最内側表面138に沿って形成されたホルダ溝内に配置され、回転シールリングホルダ組立品380とシャフト12との間をシールする。Oリング202として図示された固定シールリング/グランドエラストマー部材は、固定シールリング330とグランド組立品340との間の境界面をシールすると共に、固定シールリング330に半径方向内側の圧力をかける。グランドガスケット76は、グランドガスケット溝70(
図9)内に配置されて、グランド半割れが互いに組み付けられると、それらの間にシールを形成する。当業者であれば、このメカニカルシール組立品300は、異なる構成要素間の密封のために任意の適切な手段を備えてよいことは理解するはずである。
【0057】
さらに、図示した分割メカニカルシール300は、回転シールリング320とホルダ組立品380との間に軸方向に延伸するピン又は平坦表面要素のような回り止め機構(図示しない)を含むことができ、回転シールリング330とホルダ組立品380との間の相対回転運動を防ぐ。通常の技能を備えた当業者であれば、ボルトのような適切な締結具を用いてグランド半割れとホルダ半割れとを互いに固定することができることは理解するはずである。本発明のメカニカルシール300のいくつかの構成要素は、その内容を引用して本明細書に援用する米国特許第5,571,268号、第7,708,283号、及び第10,352,457号に記載されたメカニカルシール組立品に類似している。
【0058】
一実施形態によれば、図示したシールリング320、330、ホルダ組立品380、及びグランド組立品340の1つ又は複数は、メカニカルシール組立品10に関連して上述した移動止め溝に似た移動止め溝を含むことができる。これら移動止め溝は、同じ又は似た様式で動作し且つ機能する。
【0059】
本発明のメカニカルシール組立品300では、軸方向外部の付勢クリップ組立品210を用いて、軸方向内側に延伸する付勢力を発生して固定シールリング330に印加することで、回転及び固定シールリングのシール面324、334を互いと密封接触させる。図示した付勢クリップ組立品210も、固定及び回転シールリング320、330を弾性的に支持することにより軸方向の付勢機構として作用する。この弾性的支持は、これらシールリングを軸方向に互いに付勢して、固定及び回転密封表面334及び324を互いと密封接触させて密封境界面を形成することで達成される。シールリング320、330は、グランド組立品340及びホルダ組立品380の硬質壁及び面に対して離間した浮動関係で浮動的且つ非硬質的に支持されている。この浮動的且つ非硬質的支持と離間関係とによって、回転シール区分と固定シール区分とがシャフト12に対して半径方向及び軸方向に浮動運動可能となる一方、回転密封表面324は、固定シールリング330の滑らかな弓形密封表面334に追従し且つその表面334と密封接触可能となる。従って、回転及び固定シールリングの密封表面は、この浮動動作の結果として自己位置合わせする。
【0060】
本発明のメカニカルシール組立品300は、グランド組立品340の軸方向最外端に取り付けられた一連の付勢クリップ組立品210を使用することができる。これら付勢クリップ組立品210は同一なので、1つのクリップ組立品のみの説明しか必要としない。付勢クリップ組立品210は、内側ばねクリップ216及び外側ばねクリップ390として形成される概ねC字形ばねクリップを使用することができる。内側ばねクリップ216は第1下端220を有しており、ばねホルダプレート230とグランド組立品340の上面すなわち外側表面とが互いに結合され第1下端220をそれらの間に固定すると、第1下端220は、それらの間に取り付けられるよう構成されている。一実施形態によれば、固定シールリング330の端面は比較的平坦でよい。別の実施形態によれば、固定シールリング330の端面は平坦で環状とすることができ、又は端面には凹部196などの凹部を形成してもよい。内側ばねクリップは凹所内に取り付けられると説明されているが、本発明は、内側ばねクリップが平坦端面に当接することも意図している。さらに、内側ばねクリップ216は、固定シールリング330の上面に軸方向付勢力を与えるため、その上面に取り付けられ又は接触して配置される屈曲部222を含むことができる。従って、この屈曲部222は、軸方向付勢力をシールリング320、330にかけるための軸方向付勢部材として機能する。通常の技能を備えた当業者には周知のこの軸方向の付勢力は、シールリング320、330のそれぞれのシール面324、334を互いと密封接触させる助けとなる内部に向けられた力である。
【0061】
図示したメカニカルシール組立品300は、軸方向に移動可能なばねホルダプレート230も含む。図示したばねホルダプレート230は、互いに接続可能な一対のプレート区分から形成できる。ばねホルダプレート230は、複数の切り欠き又は凹所234を任意に含みうる上面232を備えた環状本体を含み、これら切り欠き又は凹所は、本体の周縁に沿って円周状に離間されている。上面232には、例えばボルト250などの締結具を収容するための一連の締結具収容開口部236が形成されている。ばねホルダプレート230は、軸方向に延伸するフランジ部240に隣接して形成された凹部242を備えた底面238も含んでいる。凹所234及び凹部242は、内側ばねクリップ216の選択した部分のような付勢クリップ組立品210の一部を収容するよう構成されている。ばねホルダプレート区分は端面244を備えており、これらは、他方のばねホルダプレート区分の端面と結合するよう構成されている。ばねホルダプレート230は、フランジ部240がグランド組立品340の内側表面374と、固定シールリング330の外側表面との間に収容されるように、サイズ決め及び寸法決めされている。ばねホルダプレート230は、ボルト250によって締め付けられると、プレート230を圧縮し、Oリング202と係合する。Oリング202は、フランジ部によって、グランド組立品340の導入表面を超えて、取り付け領域204内に押し込まれる。同時に、固定シールリング330は、付勢クリップ組立品210により回転シールリング20に向かって軸方向に押される。
【0062】
本発明のメカニカルシール10の付勢クリップ組立品210は、内側ばねクリップ390に動作可能に結合されるよう適合され且つ保持部として機能する外側ばねクリップ216を含んでいる。具体的には、外側ばねクリップ390は、内側ばねクリップ216の屈曲部222内に取り付けられそれに係合するよう構成された概ね丸形又はコイル状の第1端部392を含む本体を有する。コイル状部392と屈曲部222との係合が外側ばねクリップ390を保持し、取り付ける役目を果たす。外側ばねクリップ390の本体は、コイル状部392に対向して配置された屈曲張出部394も含む。屈曲張出部394は、固定シールリング330の端部領域に重なり、その内側表面332に形成された溝333に係合しその内部に収容されるよう構成されている。外側ばねクリップ390の屈曲張出部394は、凹所333と係合することによって固定シールリング330をグランド組立品340に保持し且つ取り付ける。固定シールリング330をグランド組立品340に保持又は取り付けることで、メカニカルシール組立品300の構成要素は事前に組み立てておくことができ、これによって分割メカニカルシール組立品300の取付を容易とする助けになる。通常の技能を備えた当業者であれば、内側及び外側ばねクリップ216、390は、ばねプレートホルダ230及び固定シールリング330に係合して、軸方向の付勢力を固定シールリング及びばねプレートホルダにかけることができるのであれば、任意の適切な形状又は構成を備えてよいことは容易に理解するはずである。
【0063】
図7-11を参照すると、メカニカルシール組立品300は、グランド組立品340の内側表面374に形成されたグランドチャンバー360内に収容されるようサイズ決め且つ構成された流体インサート要素400を含む。流体インサート要素400は、任意の選択されたサイズ、形状、又は構成を有することができる。グランドチャンバー360内に収容されると、流体インサート要素400は、スペース308内のスラリープロセス流体に面し且つそれに暴露される暴露表面を有する。流体インサート要素400の暴露表面は、任意の選択された形状を有することができ、好適には、プロセス流体およびその中に含まれるあらゆる微粒子の、固定機器に戻る方向で且つシール面324、334によって形成されるシール境界面から離れる方向の移動を促進するのに十分である1つ又は複数の湾曲した、傾斜した、又は段差のある表面特徴が形成された非平面形状を有する。一実施形態によれば、図示した流体インサート要素400は、上面404と一連の側壁又は側面406とを有する本体402を有する。本体402は、スラリープロセス流体と接触し又はそれに暴露された暴露表面を形成する底面408も有する。本体の上面404は任意の選択した形状又は構成を有することができ、一実施形態によれば階段状タワー部410を含む。階段状タワー部410は、上部412及び接続した側壁414を含むことができる。側壁414は、中実でしたがって閉じたものでもよいし、或いは、1つ以上の側壁414には流体開口部416が形成されていてもよい。流体開口部416は、任意の選択した形状又は構成を有することができる。タワー部410の上部412は、フラッシング流体ポート352と位置合わせ可能な開口部418を含むこともできる。同様に、本体部も、開口部418及び流体ポート352と位置合わせ可能な上面404に形成された流体開口部420を含むことができる。さらに、上面404は、締結具350の一部を収容し且つ保持するための、メカニカルポート348と位置合わせされた開口部422を有することができる。隣接する側壁406Bには側開口部424を形成することができる。流体インサート要素400を逆にできるようにするため、開口部422は、上面404の対向端部にも形成でき、さらに、対向側壁406Aにも側開口部424を形成することができる。図示した底面408は任意の選択した様式で形成できる。一実施形態によれば、底面408は、側壁406Aと406Bとの間で横方向に湾曲又は延伸した湾曲形状を有する。別の実施形態によれば、底面408は、側壁406Cと406Dとの間で中間(前後)方向に延伸した湾曲形状を有することができる。別の実施形態によれば、底面408は、横方向及び中間方向の両方に湾曲していてもよい。
【0064】
別の実施形態によれば、流体インサート要素は、スラリープロセス流体内の微粒子の、シールリング320、330のシール面から離れる方向への移動を増大させる又は促進するための異なる形状及び構成を含むことができる。例えば
図12-14に示したように、図示した流体インサート要素430は、上面434と一連の側壁又は側面436とを有する本体432を有する。本体432は、スラリープロセス流体と接触し又はそれに暴露された暴露表面を形成する底面438も有する。上面434は任意の選択した形状又は構成を有することができ、一実施形態によれば階段状タワー部440を含む。階段状タワー部440は、上部442及び接続した側壁444を含むことができる。側壁444は、中実でしたがって閉じたものでもよいし、或いは、1つ以上の側壁444には流体開口部446が形成されていてもよい。流体開口部446は、任意の選択した寸法、形状、又は構成を有することができる。上部442は、フラッシング流体ポート352と位置合わせ可能な開口部を含むこともできる。同様に、本体部も、タワー部の開口部及び流体ポート352と位置合わせ可能な上面434に形成された流体開口部420を含むことができる。さらに、本体432の上面434には、締結具350の一部を収容し且つ保持するための、メカニカルポート348と位置合わせされた開口部452を形成することができる。隣接する側壁には側開口部を形成することができる。例えば図示した実施形態に示したように、側壁436A及び436Bにはそれぞれ開口部454を形成することができる。流体インサート要素430を逆にできるようにするため、開口部452は、上面434の対向端部にも形成でき、さらに、対向側壁436A及び436Bにも側開口部454を形成することができる。図示した底面438は任意の選択した様式で形成できる。一実施形態によれば、底面438は、湾曲領域及び傾斜領域の両方を含む多輪郭形状を有している。例えば、底面438は、中間方向に(例えば、側壁436Cと436Dと間に)傾斜させることができる。傾斜面は、対向傾斜端部462及び中間傾斜部464を含むことができる。傾斜端部462は、中間傾斜部464の傾斜角より小さい又は浅い角度で傾斜させることができる。底面438は、側壁436Aと436Bとの間で横方向に延伸する湾曲領域468も含んでいる。
【0065】
組み立てられると、流体インサート要素400、430はグランドチャンバー360に挿入されることができ、流体開口部は、メカニカルポート348及びフラッシング流体ポート352と位置合わせされる。シールリング320、330の外側表面と、グランド組立品の内側表面374と、流体インサート部品の底面との間に形成されるスペース308は、スラリープロセス流体を収容する環状チャンバー又はスペース308を形成する。密封対象のスラリープロセス流体は、このスペース308内に収容され流動する。ホルダ組立品380及び回転シールリング320などのメカニカルシール組立品300の回転構成要素の運動が、スラリープロセス流体内に乱流を形成し、するとこれがスペース308内でのプロセス流体の運動を促進する。スラリープロセス流体内の微粒子がシール境界面で蓄積するのはこの運動の最中である。他の実施形態によれば、ホルダ組立品380は、スラリープロセス流体の運動をさらに促進するため、ポンピング羽根の形式で外側表面に形成された1つ又は複数の表面特徴を有することができる。スラリープロセス流体内に存在する微粒子は、使用時に、シールリング320、330のシール面324、334に堆積することがあり、時間が経つにつれシール面を損傷させることがある。シール面324、334から離れる方向へ微粒子の移動を促進し且つシール構成要素を保護するために、グランドチャンバー360は、スペース308内での流動力学(flow dynamics)を変化させることによって、微粒子のシール面から離れる方向への移動を促進する特別に構成された底面を有する流体インサート部品を取り付けている。具体的には、グランドチャンバー360は、流体インサート要素を収容するのに十分な深さ又は高さを有することができる一方で、流体インサート要素の底面とホルダ組立品380の外側表面との間に形成される空間を増大させる。構成要素をこうして配置することで、スペース308内により大きな流動領域又は容積が与えられ又は形成される。この実質的に増大した空間又は容積によって、流体インサート要素はシール境界面から微粒子を移動させることにより、シール面324及び334上での粒子堆積及び密着を防止できる。グランドチャンバー360と流体インサート要素400、430との組合せは、より大きな流動領域容積をシール内にもたらし、汚染物質粒子がシール面に与える潜在的な影響を排除する。スラリーが使用時にポンピング又は移動されると、流体インサート要素の底面は、シール面から離れる方向への微粒子の移動を促進する。より具体的には、
図8及び12で矢印470で示したように、底面408、438の形状が、微粒子のシール面から離れる方向への移動を促進する。矢印470は、流体粒子の排出路及び関連した軌跡を示す。
【0066】
この流体インサート要素を使用する利点は多数存在する。流体インサート要素400、430は、スラリープロセス流体をシール面の周りに付加的に循環させる助けとなる。この流体インサート要素は、シール面で発生しうる摩擦熱の散逸を増大させる助けにもなる。さらに、流体インサート要素が使用時に発生するスラリープロセス流体の運動は、固定Oリングが粒子状物質で目詰まりするのを防止する助けとなる。さらには、流体の流動はメカニカルシール組立品の回転部品によって引き起こされ、流体インサート要素は粒子のシール面から離れる方向への運動を促進するので、外部フラッシング流体を供給又は使用する必要はない。よって、メカニカルシール組立品300をフラッシングするのに必要な関連した流体供給構造や動力を設ける必要はない。付加的な表面特徴を選択した回転構成要素(例えば動的/回転シール面の外径)に追加して流体の流速を増大させてもよい。本発明によるメカニカルシール組立品300の別の利点は、流体の流動及びスラリープロセス流体の流れ特性を最適化するため、グランド組立品内の使用可能スペース308を利用してグランドチャンバー360を形成するようにシールを構成できることである。
【0067】
単純な例としては、従来の3.5インチのメカニカルシールにおいて、グランド又はハウジングの内側表面とホルダ組立品との間の通常のチャンバー領域は、約8.50立方インチとなりうる。本発明によれば、グランドチャンバー360及び取り付けられた流体インサート要素400、430の組合せによって、本明細書で図示し説明したように、容積領域は約10.8立方インチまで増加させることができる。よって、本発明のメカニカルシール組立品300は、スペース308内に約15%から約30%の付加的な容積を加える流体インサート要素を利用する。
【0068】
図示した流体インサート要素400、430は、スラリープロセス流体中の微粒子の戻り流路を含む複数の異なる流路を形成するための選択した構成を有する。流体インサート要素の形状寸法が、回転シャフト12の周りの流動様式による差圧をもたらす。この差圧は、スラリー粒子を運動させる流体の流れを引き起こす。流体インサート要素400、430の底面の形状寸法が、粒子をシール面領域から離れる方向へ放出させ且つ粒子に運動量を与えるので、これらはシール面から(例えば固定機器内の)プロセス流体リザバまで放出され戻されうる。流体インサート要素のこの構成は、さらに、フラッシュ流量要件を無くす(すなわちフラッシュ無し又はゼロフラッシュシステム)か、低下させる。通常の技能を備えた当業者であれば、流体インサート要素の底面がプロセス流体に流れを与えると共にシール面から離れる方向への微粒子の運動を促進するよう構成されているのであれば、この要素は任意の選択された形状又は構成を有してよいことは容易に認識するであろう。
【0069】
流体インサート要素400、430は、従来の付加製造技術を利用して形成できる。さらに、この構成要素を別個の構成要素として形成すると、複雑なパターン及び形状を、グランド組立品の内側表面に機械加工で作りこむ必要性を無くす。流体インサート要素400、430は、シャフトの回転方向からは独立して流体を流動させることもできる(例えば二方向動作)。さらに、流体インサート要素の対称構成が二方向動作を可能にする。
【0070】
流体インサート要素は、例えばポリウレタン、プラスチック、ゴム、EPDM、H-NBR等を含む任意の適切な材料で構成できる。この材料は、従来の金属材料に比べて耐摩耗性(すなわちステンレス鋼グランドの一般に知られている浸食)が向上するように選択することができる。
【0071】
したがって、本発明は、これまでの記載から明らかとなった目的に含まれる、上述した目的を有効に達成することが分かるはずである。本発明の範囲を逸脱することなく上記の構成に対して一定の変更を施すことが可能であるから、上記の説明に含まれ又は添付の図面に示されたすべての事項は、例示的なものとして解釈すべきであり、限定的な意味で解釈すべきではないことが意図されている。
【0072】
さらに、次の特許請求の範囲は、本明細書に説明された本発明のすべての一般的特徴及び具体的特徴を網羅するものと理解すべきであり、また本発明の範囲に関するすべての言明もその範囲に入ると言うこともできる。
【0073】
本発明を説明してきたが、新規なものと主張し特許証による確保を望むものは以下の通りである。
【国際調査報告】