(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】無はんだの大電流、高電圧、広帯域幅の試験フィクスチャ
(51)【国際特許分類】
G01R 31/26 20200101AFI20250220BHJP
【FI】
G01R31/26 J
G01R31/26 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547641
(86)(22)【出願日】2023-02-10
(85)【翻訳文提出日】2024-10-08
(86)【国際出願番号】 US2023012846
(87)【国際公開番号】W WO2023154488
(87)【国際公開日】2023-08-17
(32)【優先日】2022-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505436014
【氏名又は名称】ケースレー・インスツルメンツ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Keithley Instruments,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】ソボレフスキ・グレゴリー
【テーマコード(参考)】
2G003
【Fターム(参考)】
2G003AA02
2G003AE09
2G003AG04
2G003AG08
2G003AG12
2G003AH05
(57)【要約】
被試験デバイス(DUT)を測定装置に結合するための試験フィクスチャは、1つ以上のDUTに電気的に接続するための、はんだ付け不要の圧入ボードであっても良いデバイス・インタフェース基板と、電気接点シリーズを介してデバイス・インタフェース基板に電気的に結合される電力供給部と、第2電気的接点シリーズを介してデバイス・インタフェース基板に電気的に結合され、測定装置に結合されるように構成された測定結合部と、測定結合部と電力供給部との間に結合され、電気的リターン・パスを提供する金属板とを有している。金属板は、試験中に破壊されるDUTから物理的な保護を提供するようにサイズと形状が形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験デバイス(DUT)を測定装置に結合するための試験フィクスチャであって、
1つ以上のDUTに電気的に接続されるデバイス・インタフェース基板と、
電気接点シリーズを介して上記デバイス・インタフェース基板に電気的に結合される電力供給部と、
第2電気接点シリーズを介して上記デバイス・インタフェース基板に電気的に結合され、上記測定装置に結合されるように構成された測定結合部と、
上記測定結合部と上記電力供給部との間に結合されて電気的リターン・パスを提供する金属板と
を具える試験フィクスチャ。
【請求項2】
上記金属板は、銅又は銅合金の固体片である請求項1による試験フィクスチャ。
【請求項3】
上記金属板の厚さは、約3から10mmである請求項1による試験フィクスチャ。
【請求項4】
上記金属板は、少なくとも1kAの電流を流すように構成される請求項1による試験フィクスチャ。
【請求項5】
上記電気的リターン・パスから上記デバイス・インタフェース基板を分離する絶縁体を更に具える請求項1による試験フィクスチャ。
【請求項6】
上記絶縁体の厚さが、約5μmから1mmの範囲内にある請求項5による試験フィクスチャ。
【請求項7】
上記電力供給部に結合され、上記1つ以上のDUTを試験するためのエネルギーを供給するように構成された1つ以上のコンデンサを更に具える請求項1による試験フィクスチャ。
【請求項8】
上記電気接点シリーズと上記第2電気接点シリーズが、無はんだ接点である請求項1による試験フィクスチャ。
【請求項9】
上記電気接点シリーズと上記第2電気接点シリーズが、上記デバイス・インタフェース基板の幅の50%を超える長さの銅ストリップからそれぞれ形成される請求項8による試験フィクスチャ。
【請求項10】
上記銅ストリップの少なくとも1つが非平面形状を有する請求項9による試験フィクスチャ。
【請求項11】
被試験デバイス(DUT)を測定装置に結合するための試験フィクスチャであって、
1つ以上のDUTを試験するためのエネルギー源に結合されるように構成された電力供給部と、
上記測定装置に結合されるように構成された測定結合部と、
1つ以上のDUTに電気的に接続される圧入式デバイス・インタフェース基板と
を具え、
該圧入式デバイス・インタフェース基板は、はんだなしで電気的接続を確立する第1及び第2接点によって、上記電力供給部及び上記測定結合部に電気的に結合される試験フィクスチャ。
【請求項12】
上記第1及び第2接点の夫々は、上記デバイス・インタフェース基板の幅の50%を超える長さを有する、銅のストリップから形成された複数の電気接点のシリーズを含む請求項11による試験フィクスチャ。
【請求項13】
上記銅のストリップの少なくとも1つが非平面形状を有する請求項12による試験フィクスチャ。
【請求項14】
上記測定結合部と上記電力供給部との間に電気的リターン・パスを更に具える請求項11による試験フィクスチャ。
【請求項15】
上記デバイス・インタフェース基板と上記電気的リターン・パスとの間に配置された絶縁体を更に具える請求項14による試験フィクスチャ。
【請求項16】
上記絶縁体の厚さが、5μmから1mmの範囲内にある請求項15による試験フィクスチャ。
【請求項17】
上記電気的リターン・パスが、約3~10mmの厚さの金属板である請求項14による試験フィクスチャ。
【請求項18】
上記金属板が、銅又は銅合金の固体片である請求項17による試験フィクスチャ。
【請求項19】
上記金属板が、少なくとも1kAの電流を流すように構成される請求項17による試験フィクスチャ。
【請求項20】
上記電力供給部に結合され、上記1つ以上のDUTを試験するためのエネルギーを供給するように構成された1つ以上のコンデンサを更に具える請求項11による試験フィクスチャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験測定システムに関し、特に被試験デバイスを試験測定システムに接続するための試験フィクスチャに関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)などのハイ・パワー・デバイスでは、特性を完全に評価するのに、多数の測定が必要である。これらデバイスは、通常、複数の試験スタンドを使用して特性が評価され、各試験スタンドは、特定のタイプの測定用に最適化されている。概して、これらの試験スタンドは、静的(スタティック)又は動的(ダイナミック)測定プラットフォームとして記述することができる。
【0003】
「被試験デバイスの静的及び動的特性評価のための統合型測定システム」と題する、2022年3月7日に出願された米国特許出願第17/688,733号は、被試験デバイス(DUT)の静的及び動的測定の両方を1つの試験システム・プラットフォームに統合することを可能とし、複数の試験スタンドを必要としないシステム及び方法を説明しており、その内容は、参照により、本願に援用されるが、これによれば、デバイスの特性評価の精度が低下する。このような静的及び動的試験複合型のシステム・プラットフォームは、妥協することなくフルセットの測定を可能にするDUTのインタフェース(つまり、フィクスチャ)に依存しており、特に、ワイド・バンド・ギャップDUTの試験には有益である可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公開第2013/0229200号明細書
【特許文献2】米国特許公開第2014/0009181号明細書
【特許文献3】国際公開第2011/087764号
【特許文献4】米国特許公開第2002/0158645号明細書
【特許文献5】米国特許公開第2006/0202709号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この静的試験と動的試験の組み合わせを実現するためには、DUTインタフェースは、大電流処理、高電圧処理、広帯域幅、低リークなど、多数の試験要件を満たす必要がある。従来のインタフェースでは、これらの機能が提供されておらず、全ての試験要件を満たすインタフェースを開発することは困難であることがわかっている。例えば、DUTを受けるソケットは、通常、これら試験要件の中の少なくとも1つを満たしていない。これまでのところ、ハイ・パワー半導体デバイスの完全なデバイス特性の評価を可能にする単一の試験フィクスチャ(fixture: 取付装置)は存在していない。
【0006】
本開示技術の実施形態は、従来技術におけるこれら及び他の欠陥に取り組むものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示技術の実施形態による大電流機能、高電圧機能及び広帯域幅機能を有する試験フィクスチャを含む測定環境を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本開示技術の実施形態による例示的な試験フィクスチャを構成するコンポーネントの配置を示す。
【
図3】
図3は、本開示技術の実施形態による別の例示的な試験フィクスチャを構成するコンポーネントの別の配置を示す。
【
図4】
図4は、本開示技術の実施形態による更に別の試験フィクスチャを構成するコンポーネントの更に別の配置を示す。
【
図5】
図5は、本開示技術の実施形態による別の試験フィクスチャを構成するコンポーネントの更に別の層状配置を示す。
【
図6】
図6は、本開示技術の実施形態による、
図2~5に例示される試験フィクスチャの例示的なコンポーネントの底面を示す。
【
図7】
図7は、本開示技術の実施形態による、ホット・プレートを更に含む試験フィクスチャのコンポーネントの層状配置を示す。
【
図8】
図8は、本開示技術の実施形態による
図7の試験フィクスチャの上面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、試験フィクスチャ(fixture: 取付装置)14を含む測定環境10を示すブロック図であり、試験測定装置12は、試験フィクスチャ14を通して被試験デバイス(DUT)16に結合される。以下に説明するように、試験フィクスチャ14は、DUT16を受け入れ、次いで、試験測定装置12によってDUTについての特性評価試験が行われる。DUT16は、ハイ・パワーMOSFETデバイスである可能性もあるので、試験フィクスチャ14は、厳しい試験環境に耐えることができなければならず、また、以下で説明するように、大電流機能、高電圧機能及び広帯域幅機能を有する必要がある。
【0009】
図2は、本開示技術の実施形態による試験フィクスチャ200の例を示す。試験フィクスチャ200は、概して、複数の物理的コンポーネントの層状配置から形成され、これら物理的コンポーネントにより、試験測定装置によって、安全、正確、かつ包括的にDUTを試験することが可能になる。
図2は、試験フィクスチャ200に電気的に結合された2つのDUT190及び192を示している。図示の実施形態では、DUT190及び192は、ワイド・バンド・ギャップ材料で形成されたもののようなハイ・パワーMOSFETであるが、本開示技術の実施形態は、他のタイプの電気部品でも動作することができ、ハイ・パワーMOSFETの試験に限定されない。2つのDUT190及び192が図示されているが、試験フィクスチャ200の実施形態は、1から10個のDUTを収容することができる。
図2では、DUT190及び192は、試験フィクスチャ200を介して結合され、ハーフ・ブリッジ整流回路が形成されている。DUT190及び192は、断面で示されていないが、試験フィクスチャ200のコンポーネントは、断面で示されている。なお、縮尺は必ずしも一定ではなく、相対的な位置及び接続関係が強調して示されている。
【0010】
概して、試験フィクスチャには、DUT印刷回路基板(PCB)110(デバイス・インタフェース基板とも呼ぶ)があり、その上にDUT190及び192が物理的に実装される。これら実装は、無はんだであっても良いし、又は、DUT190及び192が、試験フィクスチャ200に、はんだ付けされても良い。ここでは、DUT PCB110に対して垂直に実装されるように図示されているが、いくつかの実施形態では、DUT190及び192は、DUT PCB110に対して平行に又は別の角度で実装されても良い。DUT PCB110の本体は絶縁性であって、このため、DUT190及び192に対して、少なくともある程度の電気的アイソレーションを提供する。
【0011】
DUT PCB110の真下には電気面がある。これは、任意の金属から作ることができるが、電気面は、銅、銅合金、真鍮又はその他の任意の導電性金属で作られていることが好ましく、本願では、銅面120と呼ぶ。もちろん、銅は導電性金属であるので、銅面120は、DUT190及び192と試験装置との間で、電気信号を伝送するために使用される。
【0012】
電力供給部130は、PCB基板などの基板上に形成される。1つ以上のコンデンサ131は、DUT190及び192の試験中に電力を供給するために、電力供給部130に結合されても良い。コンデンサ131は、DUT190及び192を試験するために使用できる電源の一つであるが、例えば、試験ベンチ電源プラグ、壁面電源などから供給される調整電力(regulated power)、又は、独立した発電装置から得られる電力など、他の電源も可能である。便宜上、本開示では、電源を1つ以上のコンデンサ131として言及し、図示しているが、本願に記載されている試験フィクスチャは、コンデンサに限定されず、代わりに任意の適切な電源によって給電されても良い。電力供給部130の一方の導体は、上部導体132と呼ばれ、電力供給部を接点140を介して銅面120に結合する。ある実施形態では、接点140は、
図1に示される単一の接点ではなく、複数の個別の接点から形成される。接点の配列の例は、
図6に示され、以下で説明する。いずれにせよ、接点140は、上部導体132を銅面120に電気的に結合するように構成されている。コンデンサ131は、試験フィクスチャ200の高電圧源として使用され、1000ボルトを超えるような比較的高い電圧に充電することができる。そして、接点140は、このような高電圧に対応するように構成されている。電力供給部130のもう1つの導体は、底部導体134と呼ばれ、以下でより詳細に説明する。
【0013】
試験フィクスチャ200上の電力供給部130の反対側には、もう1つの構造体、測定結合部(measurement coupler:測定カプラ)150があり、これは、コンデンサ131からのエネルギーがDUT190及び192を通じて放電される際のリターン・パスを提供する。また、測定結合部150は、試験フィクスチャ200を測定装置160に結合する。より詳細には、接点142は、DUT192から出力パスを測定結合部150の上部リターン導体152に結合する。測定結合部150には、測定装置160への物理的接続があり、これは、測定装置からのキャリアPCB(図示せず)によって形成されても良い。また、測定装置160は、測定結合部150の底部リターン導体154にも結合されている。この配置により、測定装置160は、DUT190及び192の動作中に、電流や電圧などの測定を行うことができる。測定結合部150には、測定装置から戻るのに続いて、電力供給部130の下部導体134へ戻るリターン電気パスがある。より具体的には、導電性材料から形成される底部リターン導体154は、測定結合部150を比較的大きな金属板170に結合する。金属板170は、物理的に大きく、試験フィクスチャ200を通じて、大量のエネルギーの消散を可能にする。この金属板170は、測定結合部150の底部リターン導体154を電力供給部130の下部導体134に電気的に結合する。いくつかの実施形態では、金属板170は、試験フィクスチャ200を別のPCBにはんだ付け又は取り付けることを容易にするために、エッジ又は縁部(Lip:リップ)172を有していてもよい。同様に、オプションの位置合わせ(アライメント)ピン174が、試験フィクスチャ200をそのようなPCBに位置合わせするのを補助するために存在しても良い。試験フィクスチャ200に金属板170があると、多くの利点がある。例えば、DUTは、大量のエネルギーにより、物理的に曲がることがある。大きな金属板170があることで、試験フィクスチャ200を補強するのに役立つだけでなく、DUT190及び192と、試験フィクスチャの反対側の他の任意のデバイスとの間に物理的保護を提供する。金属板170は、また、試験フィクスチャ200内のメイン回路を保護し、試験回路用の堅牢なリターン・パスを提供する。金属板170の他の利点は、以下で説明する。金属板170は、例えば、銅、真鍮又は他の類似の金属又は合金で形成されても良い。いくつかの実施形態では、金属板170は、厚さが約1~15mmであり、好ましくは厚さが約5~10mmである。この開示で使用される約とは、+/-20%以内を意味する。
【0014】
ほとんどの実施形態では、金属板170は、絶縁体180によって銅面120から分離されている。絶縁体180は、試験の目的に適した任意の絶縁体であっても良い。例えば、比較的高い電圧の絶縁体の場合、絶縁体180は、1000ボルトを超える電圧に耐えることができるテフロン(登録商標)その他の材料で形成されても良い。また、特に断熱特性が重要である場合には、エアロゲルを絶縁体180として使用しても良い。比較的低電圧の試験環境では、エア・ギャップ(空気の間隙)自体を絶縁体として使用できる。言い換えると、これら実施形態では、エア・ギャップ以外の絶縁体180は、金属板170と銅面120との間に存在しない。この実施形態を
図5を参照して図示し、以下で説明する。
【0015】
図2を再度参照すると、試験フィクスチャ200には、全てが電気的な回路があり、これは、コンデンサ131から始まり、電力供給部130を通り、DUT190及び192を通って延び、測定結合部150を通り(これにより、測定装置160でDUT190及び192を測定でき)、大きな金属板170を通り、下部導体134に戻り、下部導体134は、次いで、コンデンサ131に戻って結合される。この試験フィクスチャ200によれば、複数の試験フィクスチャ間でDUTを移動させることなく、測定デバイス160によって、DUT190及び192の完全な特性を評価する(これは、静的及び動的試験とも呼ばれる)ことができる。
【0016】
試験フィクスチャ200を使用することによって、試験環境において、いくつかの利点が促進される。例えば、試験フィクスチャは、多くの場合1~3kAを超える大きな試験電流に耐えることができる必要がある。試験フィクスチャ200は、電磁気干渉(EMI)/シールド接点の長いストリップを使用して大電流を処理し、電流の流れに対する最大の接触面積を提供する。大きな接触面積を有する部品には、銅面120及び金属板170が含まれる。電力供給部130の上部導体132及び下部導体134、並びに測定結合部150の上部リターン導体152及び下部リターン導体154も、最大で数キロ・アンペアの電流を流すことができる大きさに作成される。更に、接点140及び142は、大電流定格用に選択される。従って、試験フィクスチャ200の全ての構成要素(コンポーネント)は、1kAを超える電流に耐える材料で形成される。特定の接点が大量の電流に耐える必要がある場合、これらの接点は、接触面間の間隔を最小限に抑えることができる他の高密度/大電流接点インタフェースに置き換えることができる。
【0017】
5000ボルトを超える、そして、場合によっては、10kVにも達する高電圧を処理する機能は、絶縁体180の材料及び厚さを、これらの高電圧に耐えるように選択することによって実現される。最高の高電圧機能を有する試験フィクスチャ設計では、絶縁体180は、最大1mmの厚さであっても良く、高電圧への曝露に耐えることができるテフロン(登録商標)若しくはカプトン(登録商標)などのポリマー、又は、シリコーンなどの材料その他の絶縁材料で形成されても良い。このような高電圧が必要ない場合は、代わりに他の絶縁材料を選択しても良い。いくつかの低電圧試験の状況において、又は、低コストが重要な場合には、絶縁体180は省略されても良い。言い換えれば、これらの実施形態では、絶縁体180は、
図5を参照して以下に説明するように、金属板170と銅面120との間のエア・ギャップ(air gap)であるか、又は、PCBの絶縁特性を使用するというのであっても良い。
【0018】
試験フィクスチャ200は、広い試験帯域幅に対応している。試験帯域幅を増加させる要素の1つは、試験フィクスチャ200のインダクタンスを最小化することである。いくつかの設計では、インダクタンスが、厚さが最大で5~50μmのような数十ミクロンのもののような比較的薄い絶縁体180を使用することによって最小に維持されても良い。上述したように、いくつかの実施形態では、絶縁体180が完全に省略される。これらの実施形態では、試験フィクスチャ200のインダクタンスが、1nH未満のように低くても良い。帯域幅のもう1つの要素は、試験ループが小さい又はタイト(tight:窮屈)なことである。上述したように、コンデンサ131からDUT190及び192を通り、測定結合部150を経てコンデンサ131に戻るループは比較的短い。例えば、
図2を参照すると、DUT PCB110のサイズは、幅5~15cm(x方向)、深さ10~20mm(z方向)であっても良く、好ましくは、およそ10mm×15mmであっても良い。標準的な基板の厚さは、約1.6mmである。このように電流経路(パス)が短いことにより、試験フィクスチャ200の試験帯域幅を広く維持でき、帯域幅は、最高で500MHz~1.2GHzのオーダーである。
【0019】
試験フィクスチャの品質を左右するもう一つの要素は、1nA未満のような低リークである。この試験フィクスチャ200は、測定結合部150から電力供給部130へ、コンデンサ131とDUT190及び192との間の高電圧信号からのリーク(漏れ)を防止するガードとしての金属板170を経由するリターン・パスを用いることで、リークが極めて低くなっている。更に、絶縁体180が、電流リークを最小限にするように選択されても良い。いくつかの実施形態では、DUT PCB110のようなPCB内の溝構造(channels)又は切れ目(cuts)もまた、電流リークを防止するために機能しても良い。
【0020】
汎用性が高く強力な試験フィクスチャの更に別の要素は、表面実装技術(SMT)デバイス、トランジスタ・アウトライン(TO:Transistor Out-line)デバイスの34mm及び62mmデバイスなど、幅広いデバイスを受け入れる機能である。試験フィクスチャ200は、ランドスケープ・フォーム・ファクタを有する比較的平面的な構造を利用することにより、複数のデバイスをサポートする。言い換えれば、試験フィクスチャ200は、高さや厚さに比べて広く、これにより、多種多様なサイズのDUTを試験フィクスチャの上面に取り付けることができる。
【0021】
実施形態による試験フィクスチャの更なる特徴及び変形例を
図2~7を参照して説明する。
図2を再度参照すると、先に説明していない試験フィクスチャ200の特徴の1つは、DUT PCB100と電力供給部130の上部との間の距離が金属板170の厚さに依存せず、その代わりに、絶縁体180であける間隔と接点140及び142の高さによって個別に制御されても良いことである。
【0022】
また、堅牢な部品で形成されていることに加えて、試験フィクスチャ200のコンポーネントの一部(DUT PCB110など)は、比較的交換が容易である。好ましくは、DUT PCB110は、無はんだ接続によって試験フィクスチャ200の残りの部分に結合され、試験フィクスチャの本体に押し込まれるか又はクランプされるだけで電気的接続を行っても良い。
図2を参照すると、DUT PCB110は、絶縁体180上であって、金属板170の近くに手作業で配置しても良い。次いで、クランプ力195を使用して、DUT PCB110を試験フィクスチャ200に押し込んでも良く、具体的には、接点140及び142と、これらと係合する上部導体132及び上部リターン導体152の面との間に電気的接続を作り出しても良い。クランプ力195は、1本以上のネジによって又はDUT PCB110を試験フィクスチャ200に保持する物理的クランプによって生じても良い。また、DUT PCB110と試験フィクスチャ200の残りの部分との間が無はんだ接続であることにより、個々のDUT PCB110は、特定のDUT190及び192又は特定のタイプのDUTに適したものを作成することができ、これにより、ユーザは、試験対象のDUT用に選択された特定のDUT PCB110に置き換えるだけで、様々なタイプのDUT間で、試験セットアップを迅速に変更できる。DUT PCB110と試験フィクスチャとの間の物理的接続に関する追加情報は、以下の
図6を参照して提供される。
【0023】
図3は、別の試験フィクスチャ300を示しており、これは、
図2の試験フィクスチャ200に類似していても良い。試験フィクスチャ200と300の間の同様のコンポーネントは、簡単のため説明せず、その代わり、これら試験フィクスチャ間の違いのみを説明する。試験フィクスチャ300と試験フィクスチャ200との間の主な違いとしては、試験フィクスチャ300には、金属板370があり、これは、
図1の金属板170よりも、はるかに薄くて小さいが、同じ材料から作られていても良い。ビア376及び378は、銅その他の金属で形成されていてもよく、金属板370を介して電力供給部130に測定結合部150を電気的に結合する。いくつかの実施形態では、コネクタPCB375は、金属板370の下に取り付けられ、金属板370は、コネクタPCB375上に形成された銅面又はトレース377に直接接触する。
図2の厚い金属板170ではなく、より薄い金属板370を試験フィクスチャ300に使用することにより、試験フィクスチャ300を
図2の試験フィクスチャ200よりも安価に製造することができる可能性がある。更に、試験フィクスチャ300は、金属板170が存在しないため、試験フィクスチャ200ほど物理的に堅牢ではないかもしれないが、これは多くの試験の状況では、重要ではないこともある。
【0024】
図4は、別の試験フィクスチャ400を示しており、これは、金属板370が取り外され、PCB375とその銅トレース377のみが測定結合部150をコンデンサ供給部130に電気的に接続することを除いて、
図3の試験フィクスチャ300と同様である。この試験フィクスチャ400は、金属板370を完全に省略しているため、
図3の試験フィクスチャ300よりも更に安価に製造できる可能性がある。
【0025】
図5は、更に別の試験フィクスチャ500を示しており、絶縁体180も、金属板170又は370も存在しないことを除けば、上述の試験フィクスチャと同様である。電力供給部130と測定結合部150は、単一のPCB510上に形成されており、このPCB510は、これらの間に電気的接続を形成するための銅トレース512を有している。PCB510自体は、ある程度の絶縁特性がある。この実施形態は、低電圧試験に用いても良く、試験フィクスチャ200の絶縁体180が存在する必要ない代わりに、PCB510の絶縁性に依存している。また、金属板が存在しないため、試験フィクスチャ500は、安価に製造することができる。
【0026】
図6は、上述のいくつかの試験フィクスチャのDUT PCB110コンポーネントの下面の例を示している。位置合わせ(アライメント)孔676は、上述の位置合わせピン174(又は、場合によっては、別の位置合わせピン)を受け入れるサイズ及び形状で形成される。上述したような接点140及び142の例である接点640及び642は、単一の接点ではなく、複数の個別の接点のシリーズ又は集合から作られる。接点640及び642は、クランプ力195(
図2)のような下向きの力がDUT PCB110に加えられたときに、曲がって様々に変形する、銅ストリップ(銅片)を成形して形成されても良い。様々に変形することにより、銅のストリップ(Strip:細長い片)は、非平面形状になる。このような屈曲により、接点640及び642の銅の多数の個々の点が、これらの係合する金属面(例えば、
図2の上部導体130及び上部リターン導体152の夫々)をスライドするため、銅ストリップが確実な電気的接続を形成するのにも役立つ。
図6に示されるように、接点640及び642を構成する銅ストリップは、DUT PCB110のエッジの長さの80%を超える長さを有しても良い。別の実施形態では、接点640及び642を構成する銅ストリップは、DUT PCB110のエッジの長さの30%を超える長さを有していても良い。銅ストリップの長さは、ストリップによって運ばれる電流又は電圧の量及びDUT PCB110と試験フィクスチャの残りの部分との間の望ましい抵抗の量など、試験環境の電気的特性に基づいて選択しても良い。
【0027】
接点620は、DUT PCB110の上面(図示せず)上のDUTに電気的に結合される。このため、接点640及び642は、「無はんだ」接点であってもよい。即ち、試験フィクスチャの本体とDUT PCB110との間の電気的接続を確立するために、DUT PCB110を試験フィクスチャの残りの部分にはんだ付けする必要はない。
【0028】
DUT PCB110の両側の接続部610も、ポゴピンのような無はんだ接続であって、これは、DUT PCB110を電気的及び物理的に試験フィクスチャの他の電気コンポーネントに接続するために使用され、これらの間の電気的接続を確立するために、はんだその他の固定接続を必要としない。その代わりに、接点620、640及び642を介した電気的接続は、電気面を互いに押しつけるだけで確立されても良い。DUT PCB110のこれらの無はんだ接続により、PCBを試験フィクスチャ内の所定の位置に「圧入(press-fit)」することができる。上述したように、DUT PCB110は、クランプ又は1本以上のねじによって固定され、DUT PCBと試験フィクスチャの残りの部分との間の電気的接続を維持しても良い。DUT PCB110を試験フィクスチャにはんだ付けする必要がなく、その代わりに接点620、640及び642及び接続部610を形成することで、はんだ付けなしで電気的に接続されるため、複数の様々なDUT PCB間の交換が非常に容易かつ迅速になる。
【0029】
また、銅トレース641、643及び621は、それぞれの接点640、642及び620を、DUT PCB110の上面上のDUTに結合する。これらの銅トレースは比較的幅が広く、接点とDUTの間に少なくとも3~5mmの比較的幅の広いトレースを提供する。このように幅が比較的広いため、これらのトレースは、DUTに供給される可能性のある大電流を流すことができる。
【0030】
また、
図6は、実施形態による試験フィクスチャは、電流が流れる最小限の試験ループを有するという、上述した特徴を示している。
図2及び
図6を参照すると、電流は、電力供給部130を介して、接点640を経由し、DUT190及び192に運ばれる(
図2では図示されているが、
図6では遮られている)。DUTを通過した後、電流は、接点642を通って上部リターン導体152に運ばれる。電流は、測定装置160を通過した後、次に厚い金属板172を通過して電力供給部130に戻る。この電流経路(パス)全体は、上述の堅牢な物理的構造でできており、上述のように最小サイズであるため、試験環境の帯域幅を最大化するような方法で、数千ボルトと数アンペアをDUTに供給できる堅牢な試験フィクスチャを提供する。
【0031】
図7は、本開示技術の実施形態による試験フィクスチャ700のコンポーネントの層状配置を示す。試験フィクスチャ700は、試験フィクスチャ700が加熱又はホット・プレート710を含むことを除いて、上述のフィクスチャと同様である。ホット・プレート710は、上述の試験フィクスチャのいずれかと連携して使用しても良い。いくつかの実施形態では、ホット・プレート710は、様々な厚さのDUT790及び792を収容するように高さを調整可能である。ホット・プレート710は、室温を超える温度で、特定の測定又は試験を行うために、DUT790及び792の温度を上昇させるように構成されている。ホット・プレート710は、流れる電流に基づいて熱を発生する抵抗性電気素子であっても良いし、別の方法で熱を発生しても良い。いくつかの実施形態では、ホット・プレート710は、それ自体は熱を発生しないが、別の発生源から生成された熱をDUT790及び792に伝達する。ホット・プレート710の温度は、概して、ユーザがDUT790及び792の所望の温度を指定し、ユーザによって制御される。いくつかの実施形態では、ホット・プレート710をヒート・シンクとして使用し、DUT790及び792から熱を除去して、それらの動作温度を低下させることができる。
図8は、
図7の試験フィクスチャ700の上面斜視図であって、一対のねじ712によって試験フィクスチャ700に取り付けられるホット・プレート710を示している。もちろん、ホット・プレート710は、実現形態に応じて、任意の方法で試験フィクスチャに取り付けられても良い。別の実施形態では、加熱プレートを取り付けずに、クランプしても良いし、単に試験フィクスチャ700の上に置いても良い。概して、ホット・プレート710は、上述したように、試験中のDUTの温度を制御するために、DUT790及び792(
図7)の非常に近くにあるか又は高さが調整される。
実施例
【0032】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の特定の構成は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0033】
実施例1は、被試験デバイス(DUT)を測定装置に結合するための試験フィクスチャであって、1つ以上のDUTに電気的に接続されるデバイス・インタフェース基板と、電気接点シリーズを介して上記デバイス・インタフェース基板に電気的に結合される電力供給部と、第2電気接点シリーズを介して上記デバイス・インタフェース基板に電気的に結合され、上記測定装置に結合されるように構成された測定結合(interface:インタフェース)部と、上記測定結合部と上記電力供給部との間に結合されて電気的リターン・パスを提供する金属板とを具える。
【0034】
実施例2は、実施例1による試験フィクスチャであって、上記金属板は、銅又は銅合金の固体片である。
【0035】
実施例3は、上記実施例のいずれかによる試験フィクスチャであって、上記金属板の厚さは、約3から10mmである。
【0036】
実施例4は、先の実施例のいずれかによる試験フィクスチャであって、上記金属板は、少なくとも1kAの電流を流すように構成される。
【0037】
実施例5は、先の実施例のいずれかによる試験フィクスチャであって、上記電気的リターン・パスから上記デバイス・インタフェース基板を分離する絶縁体を更に具える。
【0038】
実施例6は、実施例5による試験フィクスチャであって、上記絶縁体の厚さが、約5μmから1mmの範囲内にある。
【0039】
実施例7は、先の実施例のいずれかによる試験フィクスチャであって、上記電力供給部に結合され、上記1つ以上のDUTを試験するためのエネルギーを供給するように構成された1つ以上のコンデンサを更に具える。
【0040】
実施例8は、先の実施例のいずれかによる試験フィクスチャであって、上記電気接点シリーズと上記第2電気接点シリーズは、無はんだ接点である。
【0041】
実施例9は、実施例8による試験フィクスチャであって、上記電気接点シリーズと上記第2電気接点シリーズは、上記デバイス・インタフェース基板の幅の50%を超える長さの銅ストリップからそれぞれ形成される。
【0042】
実施例10は、実施例9による試験フィクスチャであって、上記銅ストリップの少なくとも1つが非平面形状を有する。
【0043】
実施例11は、被試験デバイス(DUT)を測定装置に結合するための試験フィクスチャであって、1つ以上のDUTを試験するためのエネルギー源に結合されるように構成された電力供給部と、上記測定装置に結合されるように構成された測定結合(interface:インタフェース)部と、1つ以上のDUTに電気的に接続される圧入式デバイス・インタフェース基板とを具え、該圧入式デバイス・インタフェース基板は、はんだなしで電気的接続を確立する第1及び第2接点によって、上記電力供給部及び上記測定結合部に電気的に結合される。
【0044】
実施例12は、実施例11による試験フィクスチャであって、上記第1及び第2接点の夫々は、上記デバイス・インタフェース基板の幅の50%を超える長さを有する、銅のストリップから形成された複数の電気接点のシリーズを含む。
【0045】
実施例13は、実施例12による試験フィクスチャであって、上記銅のストリップの少なくとも1つが非平面形状を有する。
【0046】
実施例14は、先の実施例11から13のいずれかによる試験フィクスチャであって、上記測定結合部と上記電力供給部との間に電気的リターン・パスを更に具える。
【0047】
実施例15は、実施例14による試験フィクスチャであって、上記デバイス・インタフェース基板と上記電気的リターン・パスとの間に配置された絶縁体を更に具える。
【0048】
実施例16は、実施例15による試験フィクスチャであって、上記絶縁体の厚さが、5μmから1mmの範囲内にある。
【0049】
実施例17は、先の実施例14から16のいずれかによる試験フィクスチャであって、上記電気的リターン・パスが、約3から10mmの厚さの金属板である。
【0050】
実施例18は、実施例17による試験フィクスチャであって、上記金属板が、銅又は銅合金の固体片である。
【0051】
実施例19は、実施例17から18による試験フィクスチャであって、上記金属板が、少なくとも1kAの電流を流すように構成される。
【0052】
実施例20は、先の実施例11から19のいずれかによる試験フィクスチャであって、上記電力供給部に結合され、上記1つ以上のDUTを試験するためのエネルギーを供給するように構成された1つ以上のコンデンサを更に具える。
【0053】
本開示の主題の上述のバージョンは、記述したか又は当業者には明らかであろう多くの効果を有する。それでも、開示された装置、システム又は方法のすべてのバージョンにおいて、これらの効果又は特徴のすべてが要求されるわけではない。
【0054】
加えて、本願の説明は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0055】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0056】
加えて、本願の説明は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。例えば、ある特定の特徴が特定の態様又は実施形態に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施形態との関連においても利用できる。
【0057】
更に、「左」、「右」、「上(top)」、「下(bottom:底)」のような方向が、便宜上、図面で提供される図に関連して使用されている。しかし、開示技術は、実際の使用においては、多数の方向があり得る。よって、図面における上部にある又は下部にあるという特性は、実際の使用においては、同じ向き又は方向ではないことがある。
【0058】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【国際調査報告】