(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】分離膜の製造方法、該方法で製造された分離膜、及び該分離膜を含む電気化学素子
(51)【国際特許分類】
H01M 50/417 20210101AFI20250220BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20250220BHJP
【FI】
H01M50/417
H01M50/403 B
H01M50/403 A
H01M50/403 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547738
(86)(22)【出願日】2023-02-10
(85)【翻訳文提出日】2024-08-13
(86)【国際出願番号】 KR2023002039
(87)【国際公開番号】W WO2023153884
(87)【国際公開日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】10-2022-0017777
(32)【優先日】2022-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュ-スン・イ
(72)【発明者】
【氏名】スン-ミ・ジン
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB02
5H021BB04
5H021BB05
5H021EE04
5H021HH01
(57)【要約】
本発明は、分離膜の製造方法、該方法によって製造された分離膜、及び該分離膜を含む電気化学素子に関する。本発明の一実施形態による分離膜の製造方法は、(S1)ポリオレフィン及び希釈剤を投入及び混合した後、押出して、ポリオレフィン組成物を製造する段階と、(S2)前記ポリオレフィン組成物をシート状に成形及び延伸する段階と、(S3)延伸された前記シートを抽出槽に浸漬して多孔性膜を製造する段階と、(S4)前記多孔性膜を熱固定する段階と、を含み、前記抽出槽は下層部に有機溶媒を含み、上層部に水及び界面活性剤を含む。本発明は、ポリオレフィン分離膜に界面活性剤を導入することで、電解液の濡れ性が向上した分離膜の製造方法を提供することができる。また、水シミによる外観不良を抑制でき、優れた物性を有する分離膜、及び該分離膜を備える電気化学素子を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S1)ポリオレフィン及び希釈剤を投入及び混合した後、押出して、ポリオレフィン組成物を製造する段階と、
(S2)前記ポリオレフィン組成物をシート状に成形及び延伸する段階と、
(S3)延伸された前記シートを抽出槽に浸漬して多孔性膜を製造する段階と、
(S4)前記多孔性膜を熱固定する段階と、を含み、
前記抽出槽は、下層部に有機溶媒を含み、上層部に水及び界面活性剤を含む、ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項2】
前記界面活性剤が70%以下の透過度変化率を有し、前記透過度変化率が下記の数式1:
透過度変化率(%)=[(電解液保管前の透過度-電解液保管後の透過度)/(電解液保管前の透過度)]×100 … 数式1
で定義され、
数式1において、電解液保管前の透過度は、前記電解液に界面活性剤を投入した直後に測定された透過度を意味し、前記電解液保管後の透過度は、前記電解液に界面活性剤を投入し、70℃で3時間保管した後の透過度を意味し、前記電解液は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比7:3で含む混合溶媒にLiPF
6を1.0Mになるように溶解させて用意し、前記界面活性剤は前記電解液100質量%中に1質量%の含量で投入され、前記電解液保管前の透過度及び電解液保管後の透過度は紫外可視分光光度計を用いてASTM-D1003に準じて測定される、請求項1に記載のポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項3】
前記界面活性剤が50%以下の透過度変化率を有する、請求項1に記載のポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項4】
前記水と前記界面活性剤との重量比が99.9:0.1~95:5である、請求項1に記載のポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項5】
前記有機溶媒が塩化メチレンである、請求項1に記載のポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項6】
(S3)段階において、延伸された前記シートは、前記抽出槽で下層部を先に経由した後、上層部を経由する、請求項1に記載のポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されたポリオレフィン分離膜。
【請求項8】
多数のフィブリル、及び多数の前記フィブリルが絡み合いながら生じた多数の気孔を含むポリオレフィン多孔支持体を備え、
前記フィブリルの表面に前記界面活性剤を含み、
前記界面活性剤が70%以下の電解液保管前後の透過度変化率を有し、前記透過度変化率が下記の数式1:
透過度変化率(%)=[(電解液保管前の透過度-電解液保管後の透過度)/(電解液保管前の透過度)]×100 … 数式1
で定義され、
数式1において、電解液保管前の透過度は、前記電解液に界面活性剤を投入した直後に測定された透過度を意味し、前記電解液保管後の透過度は、前記電解液に界面活性剤を投入し、70℃で3時間保管した後の透過度を意味し、前記電解液は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比7:3で含む混合溶媒にLiPF
6を1.0Mになるように溶解させて用意し、前記界面活性剤は前記電解液100質量%中に1質量%の含量で投入され、前記電解液保管前の透過度及び電解液保管後の透過度はヘーズメーターを用いてASTM-D1003に準じて測定される、ポリオレフィン分離膜。
【請求項9】
前記界面活性剤が50%以下の電解液保管前後の透過度変化率を有する、請求項8に記載のポリオレフィン分離膜。
【請求項10】
前記ポリオレフィン分離膜が100°以下の水接触角を有する、請求項8に記載のポリオレフィン分離膜。
【請求項11】
正極、負極、前記正極と前記負極との間に介在された請求項8に記載の分離膜を含む、電気化学素子。
【請求項12】
前記電気化学素子がリチウム二次電池である、請求項11に記載の電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池などの電気化学素子に利用可能な分離膜、該分離膜の製造方法、及び該分離膜を含む電気化学素子に関する。
【0002】
本出願は、2022年2月10日付け出願の韓国特許出願第10-2022-0017777号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
最近、エネルギー貯蔵技術に関する関心が高まりつつある。携帯電話、カムコーダー及びノートパソコン、さらには電気自動車のエネルギーにまで適用分野が拡がり、電気化学素子の研究及び開発に対する努力がだんだん具体化している。このような点で、電気化学素子は最も注目されている分野であり、中でも充放電可能な二次電池と高いエネルギー密度を有するリチウム二次電池に関心が寄せられている。
【0004】
リチウム二次電池は、電極集電体上にそれぞれ活物質が塗布されている正極と負極との間に分離膜が介在された電極組立体にリチウム塩を含む非水系電解質が含浸されている構造からなる。
【0005】
一般に、リチウム二次電池の組み立ては、正極と負極とを交互に積層し、前記正極と負極との間に分離膜を介在した構造の電極組立体を製造した後、一定の大きさ及び形状の缶又はパウチなどからなる電池ケースに前記電極組立体を挿入し、最終的に電解液を注入する方式で行われる。このとき、電解液は、毛細管力(capillary force)によって正極、負極及び分離膜の間に染み込む。しかし、材料の特性上、正極、負極及び分離膜はいずれも疎水性の高い物質である一方、電解液は親水性物質であるため、電解液の電極及び分離膜に対する濡れ性(wettability)を高めるには相当な時間が必要であって複雑な工程条件が要求される。
【0006】
特に、電解液の分離膜に対する濡れ性を向上させるため、分離膜の気孔サイズ及び気孔度の制御が試みられている。分離膜としては、ポリオレフィン系高分子樹脂を用いた高分子多孔支持体が広く使用されており、高分子多孔支持体分離膜の製造時に気孔サイズ及び気孔度を調節しようとしているものの、物理的な方式では分離膜に対する電解液濡れ性の向上に限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、電解液の濡れ性が向上したポリオレフィン分離膜の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、電解液の濡れ性が向上し、外観不良を抑制し、優れた物性を有する分離膜、及び該分離膜を備える電気化学素子を提供することを目的とする。
【0009】
その他の本発明の目的及び長点は、特許請求の範囲に記載される手段又は方法及びその組み合わせによって実現できることが容易に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、下記の分離膜の製造方法、該方法で製造された分離膜、及び該分離膜を含む電気化学素子を通じて上述した課題を解決できることを見出した。
【0011】
第1具現例は、
(S1)ポリオレフィン及び希釈剤を投入及び混合した後、押出して、ポリオレフィン組成物を製造する段階と、
(S2)前記ポリオレフィン組成物をシート状に成形及び延伸する段階と、
(S3)延伸された前記シートを抽出槽に浸漬して多孔性膜を製造する段階と、
(S4)前記多孔性膜を熱固定する段階と、を含み、
前記抽出槽は、下層部に有機溶媒を含み、上層部に水及び界面活性剤を含む、ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0012】
第2具現例は、第1具現例において、
前記界面活性剤が70%以下の透過度変化率を有し、前記透過度変化率が下記の数式1で定義される、ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0013】
透過度変化率(%)=[(電解液保管前の透過度-電解液保管後の透過度)/(電解液保管前の透過度)]×100 … 数式1
【0014】
(数式1において、電解液保管前の透過度は、前記電解液に界面活性剤を投入した直後に測定された透過度を意味し、前記電解液保管後の透過度は、前記電解液に界面活性剤を投入し、70℃で3時間保管した後の透過度を意味し、前記電解液は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比7:3で含む混合溶媒にLiPF6を1.0Mになるように溶解させて用意し、前記界面活性剤は前記電解液100質量%中に1質量%の含量で投入され、前記電解液保管前の透過度及び電解液保管後の透過度は紫外可視分光光度計を用いてASTM-D1003に準じて測定される。)
【0015】
第3具現例は、第1具現例又は第2具現例において、
前記界面活性剤が50%以下の透過度変化率を有する、ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0016】
第4具現例は、第1具現例~第3具現例のうちいずれか一具現例において、
前記水と前記界面活性剤との重量比が99.9:0.1~95:5である、ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0017】
第5具現例は、第1具現例~第4具現例のうちいずれか一具現例において、
前記有機溶媒が塩化メチレン(MC)である、ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0018】
第6具現例は、第1具現例~第5具現例のうちいずれか一具現例において、
(S3)段階において、延伸された前記シートは、前記抽出槽で下層部を先に経由した後、上層部を経由する、ポリオレフィン分離膜の製造方法に関する。
【0019】
第7具現例は、第1具現例~第6具現例のうちいずれか一具現例の製造方法によって製造されたポリオレフィン分離膜に関する。
【0020】
第8具現例は、多数のフィブリル、及び多数の前記フィブリルが絡み合いながら生じた多数の気孔を含むポリオレフィン多孔支持体を備え、
前記フィブリルの表面に前記界面活性剤を含み、
前記界面活性剤が70%以下の電解液保管前後の透過度変化率を有し、前記透過度変化率が下記の数式1で定義される、ポリオレフィン分離膜に関する。
【0021】
透過度変化率(%)=[(電解液保管前の透過度-電解液保管後の透過度)/(電解液保管前の透過度)]×100 … 数式1
【0022】
(数式1において、電解液保管前の透過度は、前記電解液に界面活性剤を投入した直後に測定された透過度を意味し、前記電解液保管後の透過度は、前記電解液に界面活性剤を投入し、70℃で3時間保管した後の透過度を意味し、前記電解液は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比7:3で含む混合溶媒にLiPF6を1.0Mになるように溶解させて用意し、前記界面活性剤は前記電解液100質量%中に1質量%の含量で投入され、前記電解液保管前の透過度及び電解液保管後の透過度はヘーズメーターを用いてASTM-D1003に準じて測定される。)
【0023】
第9具現例は、第8具現例において、
前記界面活性剤が50%以下の電解液保管前後の透過度変化率を有する、ポリオレフィン分離膜に関する。
【0024】
第10具現例は、第8具現例又は第9具現例において、
前記ポリオレフィン分離膜が100°以下の水接触角を有する、ポリオレフィン分離膜に関する。
【0025】
第11具現例は、正極、負極、前記正極と前記負極との間に介在された第8具現例~第10具現例のうちいずれか一具現例による分離膜を含む、電気化学素子に関する。
【0026】
第12具現例は、第11具現例において、
前記電気化学素子がリチウム二次電池である、電気化学素子に関する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一具現例によるポリオレフィン分離膜の製造方法は、ポリオレフィン分離膜に界面活性剤を導入することで、電解液の濡れ性が向上した分離膜を提供することができる。また、水シミによる外観不良を抑制することができ、優れた物性を有する分離膜、及び該分離膜を備える電気化学素子を提供することができる。
【0028】
また、本発明の一具現例によれば、希釈剤を抽出するための抽出槽に界面活性剤を含むことで、界面活性剤を導入するための別途の追加的な工程を必要としないため、より簡単な方法で界面活性剤を導入することができる。
【0029】
本明細書に添付される図面は、本発明の好ましい実施形態を例示するものであり、発明の内容とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。一方、本明細書に添付される図面における要素の形状、大きさ、縮尺又は比率などはより明確な説明を強調するため誇張されることもある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実施例1で用意した分離膜の表面にプロピレンカーボネート2μlを落としてから5分後に撮影したイメージである。
【
図2】実施例2で用意した分離膜の表面にプロピレンカーボネート2μlを落としてから5分後に撮影したイメージである。
【
図3】比較例1で用意した分離膜の表面にプロピレンカーボネート2μlを落としてから5分後に撮影したイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を詳しく説明する。本明細書及び特許請求の範囲において使用された用語や単語は通常的及び辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0032】
本明細書の全体において、ある部分が他の構成要素を「含む」又は「備える」とは、特に言及しない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0033】
一般に、ポリオレフィン系分離膜は疎水性の特性を示す。それにより、親水性の特性を示す電解液は、ポリオレフィン系分離膜に十分に含浸されない問題がある。分離膜の気孔サイズ及び気孔度を制御することで分離膜に対する電解液の濡れ性を向上させようとしたが、物理的な制御方法では限界があった。
【0034】
このような問題を解決するため、本発明者等は、分離膜の製造工程を活用して分離膜の表面に界面活性剤を導入することで、分離膜に対する電解液の濡れ性を改善しようとする。
【0035】
さらに、本発明者等は、分離膜の表面に所定の界面活性剤を導入することで、電極組立体に電解液が注液された後にも安定性を維持することができる分離膜を提供しようとする。
【0036】
本発明の一実施形態による分離膜の製造方法は、
(S1)ポリオレフィン及び希釈剤を投入及び混合した後、押出して、ポリオレフィン組成物を製造する段階と、
(S2)前記ポリオレフィン組成物をシート状に成形及び延伸する段階と、
(S3)延伸された前記シートを抽出槽に浸漬して多孔性膜を製造する段階と、
(S4)前記多孔性膜を熱固定する段階と、を含み、
前記抽出槽は、下層部に有機溶媒を含み、上層部に水及び界面活性剤を含む。
【0037】
(S1)段階では、ポリオレフィン及び希釈剤を投入及び混合した後、押出してポリオレフィン組成物を製造する。
【0038】
前記ポリオレフィンは、ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリブチレン;ポリペンテン;ポリヘキセン;ポリオクテン;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、4-メチルペンテン、ヘキセン、及びオクテンのうちの2種以上の共重合体;又はこれらの混合物であり得る。
【0039】
特に、前記ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線形低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)などが挙げられ、中でも結晶度が高く、樹脂の溶融点が高い高密度ポリエチレンが最も好ましい。
【0040】
前記ポリオレフィンの重量平均分子量は、200,000~1,000,000、220,000~700,000、又は250,000~500,000であり得る。本発明では200,000~1,000,000の重量平均分子量を有する高分子量のポリオレフィンを分離膜製造の出発物質として使用することで、分離膜フィルムの均一性及び製膜工程性を確保しながら、最終的に強度及び耐熱性に優れた分離膜を得ることができる。
【0041】
前記希釈剤は、分離膜の製造に一般に使用される流動又は固形パラフィンオイル、ワックス、大豆油などを使用し得る。例えば、前記希釈剤としては、ポリオレフィンと液-液相分離可能な希釈剤も使用可能である。例えば、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジオクチルフタレートなどのフタル酸エステル類;ジフェニルエーテル、ベンジルエーテルなどの芳香族エーテル類;パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの炭素数10~20の脂肪酸類;パルミチン酸アルコール、ステアリン酸アルコール、オレイン酸アルコールなどの炭素数10~20の脂肪酸アルコール類;パルミチン酸モノ-、ジ-又はトリエステル、ステアリン酸モノ-、ジ-又はトリエステル、オレイン酸モノ-、ジ-又はトリエステル、リノール酸モノ-、ジ-又はトリエステルなどの、脂肪酸基の炭素数が4~26である飽和及び不飽和脂肪酸、若しくは、不飽和脂肪酸の二重結合がエポキシで置換された一つまたは二つ以上の脂肪酸が、ヒドロキシ基が1~8個であって炭素数が1~10個であるアルコールとエステル結合された脂肪酸エステル類であり得る。前記希釈剤は、上述した成分を単独で又は2種以上含む混合物として使用され得る。
【0042】
前記希釈剤の含量は、前記ポリオレフィンの含量100重量部を基準にして100重量部~350重量部、125重量部~300重量部、又は150重量部~250重量部であり得る。希釈剤の総含量が上記の数値範囲を満たすと、ポリオレフィンの含量が多いことによる、気孔度が減少して気孔サイズが小さくなり、気孔間の相互連結が少なくて透過度が大幅に低下し、ポリオレフィン組成物の粘度が上昇して押出負荷が高まり、加工が困難になるという問題が減少し、また、ポリオレフィンの含量が少ないことによる、ポリオレフィンと希釈剤との混練性が低下して、ポリオレフィンが希釈剤に熱力学的に混練されずにゲル形態で押出され、延伸時の破断及び厚さのバラツキなどが発生するという問題が減少する。
【0043】
前記ポリオレフィン組成物は、必要に応じて、開始剤、架橋剤、触媒剤、酸化安定剤などの特定の機能を向上させるための一般的な添加剤をさらに含み得る。
【0044】
前記押出は、200℃~250℃の範囲で行われ得る。前記押出は、通常の単軸押出機や二軸押出機を使用して行われ得る。例えば、前記押出機は、ポリオレフィン及び希釈剤を投入するホッパー、投入された物質を移送しながら混合する混練部、及び混合した物質を押出するダイ出口を備える二軸押出機であり得る。
【0045】
次いで、(S2)段階では、前記ポリオレフィン組成物をシート状に成形及び延伸する。
【0046】
本発明の具体的な一実施形態において、前記(S1)の結果物である押出されたポリオレフィン組成物を、水冷又は空冷式を用いた一般的なキャスティング又はカレンダリング方法で冷却してシート状に成形し得る。
【0047】
本発明の具体的な一実施形態において、シート状に成形された結果物を縦方向及び横方向に二軸延伸して、延伸されたシートを形成し得る。シート状に成形された結果物を延伸することで、改善された機械的強度及び穿孔強度を有する分離膜を提供することができる。
【0048】
前記延伸は、ロール方式又はテンター方式を用いて逐次又は同時延伸で行われ得る。延伸比は、縦方向及び横方向にそれぞれ3倍以上、又は4倍~10倍であり得る。延伸比が上記の数値範囲を満たす場合、一方向の配向が不十分であって縦方向と横方向との物性均衡が崩れて引張強度及び穿孔強度が低下する問題を防止することができる。また、総延伸比が上記の数値範囲を満たすことにより、延伸されないか又は気孔が形成されないという問題を防止することができる。
【0049】
本発明の具体的な一実施形態において、延伸温度は、使用されたポリオレフィンの融点、希釈剤の濃度及び種類によって変わり得る。
【0050】
例えば、使用されたポリオレフィンがポリエチレンであって、希釈剤が流動パラフィンである場合、延伸温度は、縦延伸(MD)の場合、70℃~160℃、90℃~140℃、又は100℃~130℃であり得、横延伸(TD)の場合、90℃~180℃、110℃~160℃、又は120℃~150℃であり得る。
【0051】
延伸温度が上記の数値範囲を満たす場合、低い延伸温度によって軟質性が足りなくなり、破断や未延伸が発生する問題を防止でき、また、高い延伸温度によって発生する部分的な過延伸又は物性差を防止することができる。
【0052】
次いで、(S3)段階では、延伸された前記シートを抽出槽に浸漬して多孔性膜を製造する。このとき、前記抽出槽は、下層部に有機溶媒を含み、上層部に水及び界面活性剤を含む。
【0053】
本発明の一実施形態では、希釈剤を抽出するための抽出槽に界面活性剤を含むことで、分離膜に界面活性剤を導入するための別途の追加的な工程を必要としないため、より簡単な方法で界面活性剤を導入することができる。
【0054】
本発明の具体的な一実施形態において、前記抽出槽は、上層部と下層部とに区分される少なくとも二層の構造を有する。
【0055】
具体的には、前記抽出槽の下層部には水よりも比重の高い有機溶媒を含み、上層部には水及び界面活性剤を含む。前記上層部は、抽出槽内の水シール(water seal)の役割を果たせるため、有機溶媒の揮発を防止することができる。
【0056】
前記上層部と下層部との含量比(又は体積比)は1:99~10:90であり得る。上記の範囲を満たすことで、下層部の有機溶媒の蒸発を抑制しながらも、有機溶媒を通じた希釈剤の溶解時間を確保することができる。
【0057】
本発明の具体的な一実施形態において、延伸された前記シートは、前記抽出槽で下層部を先に経由した後、上層部を経由し得る。
【0058】
例えば、まず、延伸された前記シートを抽出槽の下層部に浸漬させて有機溶媒によって希釈剤を抽出する。次いで、希釈剤が抽出されたシートが抽出槽の上層部を経由することで、前記シートに界面活性剤が塗布され、その後、乾燥させることで多孔性膜を製造し得る。
【0059】
前記抽出槽の上層部に含まれる水と界面活性剤との重量比は、99.9:0.1~95:5、又は99.5:0.5~97:3であり得る。上記の範囲の重量比で水及び界面活性剤が含まれることで、上層部の水と下層部の有機溶媒との混合を防止しながらも、分離膜に残留する界面活性剤が分離膜の親水度を向上させることができるという利点がある。
【0060】
本発明の具体的な一実施形態において、前記界面活性剤は70%以下、10%~70%、又は20%~60%の電解液保管前後の透過度変化率を有し得る。好ましくは、前記界面活性剤は20~50%の電解液保管前後の透過度変化率を有し得る。
【0061】
前記透過度変化率が上記の数値範囲を満たす場合、電極組立体に電解液が注入された後にも界面活性制が安定性を維持できて、電気化学的な副反応を抑制することができるため、リチウム二次電池の安全性が改善される効果がある。
【0062】
透過度変化率(%)=[(電解液保管前の透過度-電解液保管後の透過度)/(電解液保管前の透過度)]×100 … 数式1
【0063】
数式1において、電解液保管前の透過度は、前記電解液に界面活性剤を投入した直後に測定された透過度を意味し、前記電解液保管後の透過度は、前記電解液に界面活性剤を投入し、70℃で3時間保管した後の透過度を意味し、前記電解液は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比7:3で含む混合溶媒にLiPF6を1.0Mになるように溶解させて用意し、前記界面活性剤は前記電解液100質量%中に1質量%の含量で投入され、前記電解液保管前の透過度及び電解液保管後の透過度は紫外可視分光光度計を用いて測定される。
【0064】
本発明において、透過度は、紫外可視分光光度計(UV-Vis spectrophotometer)を用いてASTM-D1003に準じて測定し得る。
【0065】
本発明の具体的な一実施形態において、前記界面活性剤は、陰イオン性、陽イオン性、両性、非イオン性などがあり得、これらを1種又は2種以上を混合して使用し得る。
【0066】
本発明の具体的な一実施形態において、前記有機溶媒は前記希釈剤を抽出可能なものであれば特に制限されないが、抽出効率が高くて乾燥が速い塩化メチレン(MC)、ヘキサン(n-hexane)などを有機溶媒として使用し得る。水との比重を考慮すると、有機溶媒として塩化メチレン(MC)を適用することが好ましい。
【0067】
本発明の具体的な一実施形態において、前記抽出方法は、浸漬(immersion)方法、溶剤スプレー(solvent spray)方法、超音波(ultrasonic)法などの一般的なあらゆる溶媒抽出方法をそれぞれ又は複合して使用し得る。抽出処理の後、残留希釈剤の含量は1重量%以下であることが好ましい。残留希釈剤の含量が1重量%を超過すると、物性が低下して多孔性膜の透過度が減少する。残留希釈剤の含量は抽出温度と抽出時間の影響を受け得、希釈剤と有機溶媒との溶解度増加のため、抽出温度は高いことが良いが、有機溶媒の沸騰による安全性問題を考慮すると、40℃以下であることが好ましい。前記抽出温度が希釈剤の凝固点以下であると、抽出効率が著しく低下するため、希釈剤の凝固点よりも高くなければならない。
【0068】
また、抽出時間は、製造される多孔性膜の厚さによって異なるが、厚さ5μm~15μmの多孔性膜の場合は、2分~4分が適切である。
【0069】
その後、(S4)段階では、前記多孔性膜を熱固定する。
【0070】
前記熱固定は、多孔性膜を固定して熱を加え、収縮しようとする多孔性膜を強制的に固定して残留応力を除去するものである。
【0071】
本発明の具体的な一実施形態において、前記ポリオレフィンがポリエチレンである場合、前記熱固定温度は120℃~150℃、123℃~138℃、又は125℃~133℃であり得る。ポリオレフィンがポリエチレンである場合、前記熱固定温度が上記の数値範囲を満たすと、ポリオレフィン分子の再配列が起きて多孔性膜の残留応力を除去でき、部分的溶融によって多孔性膜の気孔が詰まる問題を減少させることができる。
【0072】
本発明の具体的な一実施形態において、前記熱固定温度の時間は10秒~120秒、20秒~90秒、又は30秒~60秒であり得る。上記の時間で熱固定する場合、ポリオレフィン分子の再配列が起きて多孔性膜の残留応力を除去でき、部分的溶融によって多孔性膜の気孔が詰まる問題を減少させることができる。
【0073】
本発明の他の一実施形態によるポリオレフィン分離膜は、本発明の一実施形態による製造方法によって製造された分離膜であって、前記分離膜は、多数のフィブリル、及び多数の前記フィブリルが絡み合いながら生じた多数の気孔を含むポリオレフィン多孔支持体を備え、前記フィブリルの表面に界面活性剤を含む。
【0074】
前記フィブリルは、ポリオレフィン多孔支持体の製造過程でポリオレフィン多孔支持体を構成する高分子鎖が長手方向に延伸及び配向することで、隣接する分子鎖間の結合力が大きくなって長手方向に集合して形成されたものである。その結果、ポリオレフィン多孔支持体は、基材の表面と平行に配列された多数のフィブリルが層状に積層された構造を有するようになる。前記ポリオレフィン多孔支持体については、上述したポリオレフィンの内容を参照できる。
【0075】
また、前記界面活性剤は、上述した界面活性剤の内容を参照できる。
【0076】
特に、本発明の具体的な一実施形態において、前記フィブリルの表面に界面活性剤を含むことで、分離膜に対する電解液の濡れ性を向上させることができ、シミ発生を防止して外観不良を抑制することができる。
【0077】
本発明の一実施形態によるポリオレフィン分離膜は、100°以下の水接触角を有し得る。具体的には、本発明によるポリオレフィン分離膜は相対的に親水性特性が向上するため、前記ポリオレフィン分離膜は10°~80°範囲の水接触角を有し得る。
【0078】
前記水接触角は、Kruss社のドロップシェイプアナライザ(DSA100S)を用いして測定し得る。若しくは、例えば、蒸留水の水滴をポリオレフィン分離膜の表面に落として形成された水滴の接触角を23℃、50%のRH条件下で接触角測定計モデルCA-DT-A(協和界面科学製)によって測定し得る。このとき、3個のサンプルフィルムのそれぞれの二点(左側点及び右側点)で接触角を測定し、6回測定した平均値を接触値とし得る。蒸留水の水滴の直径は2mmであり得、測定計に現れた接触角の数値は蒸留水の水滴を落としてから1分後に測定した値であり得る。
【0079】
本発明のさらに他の一実施形態による電気化学素子は、正極、負極、前記正極と前記負極との間に介在された分離膜を含む。前記分離膜は、上述した分離膜の製造方法によって製造された分離膜である。
【0080】
このような電気化学素子は、電気化学反応をする全ての素子を含み、具体的には、全種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池又はスーパーキャパシター素子などのキャパシターなどが挙げられる。特に、前記二次電池のうちリチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池又はリチウムイオンポリマー二次電池などを含むリチウム二次電池が好ましい。
【0081】
本発明の分離膜とともに適用される正極と負極の両電極は特に制限されず、当業界に知られた通常の方法によって電極活物質を電極電流集電体に結着した形態で製造し得る。前記電極活物質のうち正極活物質の非制限的な例には、従来の電気化学素子の正極に使用される通常の正極活物質が使用可能であり、特に、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウム鉄酸化物、又はこれらを組み合わせたリチウム複合酸化物を使用することが好ましい。負極活物質の非制限的な例には、従来の電気化学素子の負極に使用される通常の負極活物質が使用可能であり、特にリチウム金属又はリチウム合金、炭素、石油コークス(petroleum coke)、活性炭(activated carbon)、グラファイト、又はその他の炭素類などのリチウム吸着物質などが好ましい。正極電流集電体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケル、又はこれらの組み合わせによって製造されるホイルなどがあり、負極電流集電体の非制限的な例としては、銅、金、ニッケル又は銅合金、又はこれらの組み合わせによって製造されるホイルなどがある。
【0082】
本発明の電気化学素子で使用される電解液は、A+B-のような構造の塩であって、A+は、Li+、Na+、K+などのアルカリ金属陽イオン又はこれらの組み合わせからなるイオンを含み、B-は、PF6
-、BF4
-、Cl-、Br-、I-、ClO4
-、AsF6
-、CH3CO2
-、CF3SO3
-、N(CF3SO2)2
-、C(CF2SO2)3
-などの陰イオン又はこれらの組み合わせからなるイオンを含む塩が、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ガンマブチロラクトン(γ-ブチロラクトン)又はこれらの混合物からなる有機溶媒に溶解又は解離したものがあるが、これらに限定されることはない。
【0083】
また、前記塩は、通常使用可能な範囲内で適切に変更して使用し得、電解液内に0.5M~2M、具体的には0.9M~1.5M濃度で前記塩を含み得る。例えば、前記塩はリチウム塩が使用され得る。
【0084】
前記電解液の注入は、最終製品の製造工程及び求められる物性に応じて、電池製造工程における適切な段階において行われ得る。すなわち、電池組み立ての前又は電池組み立ての最終段階などにおいて注入すればよい。
【0085】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて詳しく説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形され得、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0086】
[実施例]
下記の方法でそれぞれの実施例及び比較例の分離膜を製造した。
【0087】
<実施例1>
ポリオレフィンとして重量平均分子量500,000の高密度ポリエチレンと、希釈剤として動粘度68.00cStの流動パラフィンとを35:65の重量比で使用し、210℃で押出してポリオレフィン組成物を製造した。
【0088】
製造されたポリエチレン組成物をTダイと冷却キャスティングロールに通してシート状に成形し、逐次延伸機で延伸温度115℃、縦方向及び横方向にそれぞれ7倍の延伸比で二軸延伸した。
【0089】
次いで、延伸されたシートを、上層部と下層部との体積比率が5:95である抽出槽の上層部から下層部側に走行させて有機溶媒に浸漬させ、3分間滞留させた後、下層部から上層部側に通過させてから乾燥し、126℃で熱固定して多孔性膜を製造した。抽出槽の下層部には有機溶媒として塩化メチレンを投入し、抽出槽の上層部には水と界面活性剤であるBYK333(BYK社製、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)とを重量比98:2で投入した。
【0090】
<実施例2>
抽出槽の上層部(水シール)に界面活性剤としてWE3475(BASF社製、ジ-2-エチルヘキシルスルホこはく酸ナトリウム)を導入したことを除き、実施例1と同様に分離膜を製造した。
【0091】
<実施例3>
抽出槽の上層部(水シール)に界面活性剤としてKL245(TEGO社製、ポリエーテル変性ポリシロキサン)を導入したことを除き、実施例1と同様に分離膜を製造した。
【0092】
<比較例1>
抽出槽の上層部(水シール)に界面活性剤を導入していないことを除き、実施例1と同様に分離膜を製造した。
【0093】
<比較例2>
抽出槽の上層部(水シール)に界面活性剤としてBYK347(BYK社製、ポリエーテル変性シロキサン)を導入したことを除き、実施例1と同様に分離膜を製造した。
【0094】
<実験結果>
本願実施例で使用された界面活性剤の透過度変化率を測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0095】
【0096】
<電解液保管前/保管後の透過度の測定方法>
エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの3:7(体積比)組成の有機溶媒に、LiPF6を1.0Mになるように溶解させて電解液を用意した。前記電解液100質量%に1質量%の含量で界面活性剤を投入し、紫外可視分光光度計を用いてASTM-D1003に準じて透過度を測定した。
【0097】
電解液保管前の透過度は、前記電解液に界面活性剤を投入した直後に測定し、前記電解液保管後の透過度は、前記電解液に界面活性剤を投入し、70℃で3時間保管した後に測定した。
【0098】
さらに、分離膜の電解液に対する含浸性を評価するため、実施例1、2及び比較例1で製造された分離膜にプロピレンカーボネートを2μl落とし、5分後に観察した。撮影したイメージを
図1~
図3に示した。
【0099】
実施例及び比較例で製造された分離膜に対し、下記のような物性評価を行った。その結果を下記の表2に示した。
【0100】
【0101】
(1)外観(水シミ)評価方法
ポリエチレン分離膜フィルムの外観から水シミを観察して良品如何を判断した。
(判断基準:OK:シミなし、NG:目視でシミが観察される)
【0102】
(2)電池サイクル特性の評価
実施例及び比較例で製造された分離膜を介在して負極と正極とが交互に積層されるように二次電池を製造した。このとき、正極は、正極活物質としてLi[Ni0.6Mn0.2Co0.2]O2、導電材としてカーボンブラック、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を97:1.5:1.5の比率で混合してスラリーを製造し、製造されたスラリーを厚さ20μmのアルミニウムホイル上にコーティング、乾燥及び圧着して製造した。負極は、負極活物質として人造黒鉛と天然黒鉛とが5:5で混合された混合物、導電材としてスーパーC、バインダーとしてSBR/CMCを98:1:1の重量比で混合して負極スラリーを製作し、これを銅集電体の一面に塗布、乾燥及び圧延して製造した。
【0103】
製造した二次電池に対し、電気化学充放電器を用いて初期(1回)充放電を行った。このとき、充電は電圧4.3Vまで0.1Cレートの電流密度で電流を加えて行われ、放電は同じ電流密度で2.5Vまで行われた。このような充放電を総200回実施した。上記のような充放電過程で各電池に含まれた正極及び負極の電圧及び容量を測定した。これらから各電池の容量維持率を下記のように算出した。
【0104】
容量維持率(%)=(200回サイクルでの容量/初期容量)×100 … 数式2
(判断基準:OK:容量維持率が90%以上、NG:容量維持率が90%未満)
【0105】
(3)分離膜の水滴接触角の評価
蒸留水の水滴をポリオレフィン分離膜の表面に落として形成された水滴の接触角を、23℃、50%のRH条件下で接触角測定計モデルCA-DT-A(協和界面科学製)によって測定した。このとき、3個のサンプルフィルムのそれぞれの二点(左側点及び右側点)で接触角を測定し、6回測定した平均値を接触値とした。蒸留水の水滴の直径は2mmであり得、測定計に現れた接触角の数値は蒸留水の水滴を落としてから1分後に測定した値である。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S1)ポリオレフィン及び希釈剤を投入及び混合した後、押出して、ポリオレフィン組成物を製造する段階と、
(S2)前記ポリオレフィン組成物をシート状に成形及び延伸する段階と、
(S3)延伸された前記シートを抽出槽に浸漬して多孔性膜を製造する段階と、
(S4)前記多孔性膜を熱固定する段階と、を含み、
前記抽出槽は、下層部に有機溶媒を含み、上層部に水及び界面活性剤を含む、ポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項2】
前記界面活性剤が70%以下の透過度変化率を有し、前記透過度変化率が下記の数式1:
透過度変化率(%)=[(電解液保管前の透過度-電解液保管後の透過度)/(電解液保管前の透過度)]×100 … 数式1
で定義され、
数式1において、電解液保管前の透過度は、前記電解液に界面活性剤を投入した直後に測定された透過度を意味し、前記電解液保管後の透過度は、前記電解液に界面活性剤を投入し、70℃で3時間保管した後の透過度を意味し、前記電解液は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比
3:7で含む混合溶媒にLiPF
6を1.0Mになるように溶解させて用意し、前記界面活性剤は前記電解液100質量%中に1質量%の含量で投入され、前記電解液保管前の透過度及び電解液保管後の透過度は紫外可視分光光度計を用いてASTM-D1003に準じて測定される、請求項1に記載のポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項3】
前記界面活性剤が50%以下の透過度変化率を有する、請求項1に記載のポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項4】
前記水と前記界面活性剤との重量比が99.9:0.1~95:5である、請求項1に記載のポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項5】
前記有機溶媒が塩化メチレンである、請求項1に記載のポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項6】
(S3)段階において、延伸された前記シートは、前記抽出槽で下層部を先に経由した後、上層部を経由する、請求項1に記載のポリオレフィン分離膜の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されたポリオレフィン分離膜。
【請求項8】
多数のフィブリル、及び多数の前記フィブリルが絡み合いながら生じた多数の気孔を含むポリオレフィン多孔支持体を備え、
前記フィブリルの表面に前記界面活性剤を含み、
前記界面活性剤が70%以下の電解液保管前後の透過度変化率を有し、前記透過度変化率が下記の数式1:
透過度変化率(%)=[(電解液保管前の透過度-電解液保管後の透過度)/(電解液保管前の透過度)]×100 … 数式1
で定義され、
数式1において、電解液保管前の透過度は、前記電解液に界面活性剤を投入した直後に測定された透過度を意味し、前記電解液保管後の透過度は、前記電解液に界面活性剤を投入し、70℃で3時間保管した後の透過度を意味し、前記電解液は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比
3:7で含む混合溶媒にLiPF
6を1.0Mになるように溶解させて用意し、前記界面活性剤は前記電解液100質量%中に1質量%の含量で投入され、前記電解液保管前の透過度及び電解液保管後の透過度は
紫外可視分光光度計を用いてASTM-D1003に準じて測定される、ポリオレフィン分離膜。
【請求項9】
前記界面活性剤が50%以下の電解液保管前後の透過度変化率を有する、請求項8に記載のポリオレフィン分離膜。
【請求項10】
前記ポリオレフィン分離膜が100°以下の水接触角を有する、請求項8に記載のポリオレフィン分離膜。
【請求項11】
正極、負極、前記正極と前記負極との間に介在された請求項8に記載の分離膜を含む、電気化学素子。
【請求項12】
前記電気化学素子がリチウム二次電池である、請求項11に記載の電気化学素子。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
(数式1において、電解液保管前の透過度は、前記電解液に界面活性剤を投入した直後に測定された透過度を意味し、前記電解液保管後の透過度は、前記電解液に界面活性剤を投入し、70℃で3時間保管した後の透過度を意味し、前記電解液は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比3:7で含む混合溶媒にLiPF6を1.0Mになるように溶解させて用意し、前記界面活性剤は前記電解液100質量%中に1質量%の含量で投入され、前記電解液保管前の透過度及び電解液保管後の透過度は紫外可視分光光度計を用いてASTM-D1003に準じて測定される。)
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
(数式1において、電解液保管前の透過度は、前記電解液に界面活性剤を投入した直後に測定された透過度を意味し、前記電解液保管後の透過度は、前記電解液に界面活性剤を投入し、70℃で3時間保管した後の透過度を意味し、前記電解液は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比3:7で含む混合溶媒にLiPF6を1.0Mになるように溶解させて用意し、前記界面活性剤は前記電解液100質量%中に1質量%の含量で投入され、前記電解液保管前の透過度及び電解液保管後の透過度は紫外可視分光光度計を用いてASTM-D1003に準じて測定される。)
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
数式1において、電解液保管前の透過度は、前記電解液に界面活性剤を投入した直後に測定された透過度を意味し、前記電解液保管後の透過度は、前記電解液に界面活性剤を投入し、70℃で3時間保管した後の透過度を意味し、前記電解液は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比3:7で含む混合溶媒にLiPF6を1.0Mになるように溶解させて用意し、前記界面活性剤は前記電解液100質量%中に1質量%の含量で投入され、前記電解液保管前の透過度及び電解液保管後の透過度は紫外可視分光光度計を用いて測定される。
【国際調査報告】