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特表2025-505758ガードネレラエンドリシンの新規な治療的使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】ガードネレラエンドリシンの新規な治療的使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/47 20060101AFI20250220BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20250220BHJP
   A61P 15/02 20060101ALI20250220BHJP
   C12N 9/78 20060101ALI20250220BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20250220BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20250220BHJP
   C12N 15/34 20060101ALN20250220BHJP
【FI】
A61K38/47
A61P31/04
A61P15/02
C12N9/78
C12N1/20 Z ZNA
C12N15/55
C12N15/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024547756
(86)(22)【出願日】2023-02-10
(85)【翻訳文提出日】2024-10-08
(86)【国際出願番号】 EP2023053316
(87)【国際公開番号】W WO2023152298
(87)【国際公開日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】22156413.1
(32)【優先日】2022-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524300783
【氏名又は名称】ビオンテック ソシエタス オイロペア
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【弁理士】
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツォ コルシーニ
(72)【発明者】
【氏名】ベラ オバーバウアー
(72)【発明者】
【氏名】レンカ ポドペラ ティサコバ
(72)【発明者】
【氏名】ティモ シュベブス
(72)【発明者】
【氏名】ロシオ ベルダゲル タロド
(72)【発明者】
【氏名】アン-カトリン キニンガー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065BB21
4B065BB37
4B065BC12
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA04
4C084DC22
4C084MA56
4C084MA63
4C084NA14
4C084ZB351
4C084ZB352
(57)【要約】
本発明は、特に細菌性膣炎(BV)の治療における、更により具体的には、以前に抗生物質による治療に失敗したBVに罹患している患者、及び/又は感染性細菌が抗生物質による治療に耐性であるBVに罹患している患者の治療における、種選択的ファージエンドリシンの新規治療的使用に関する。本発明はまた、本発明の使用のための医薬組成物及びそれを使用する治療方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌性膣炎の治療における使用のための組み換えガードネレラ特異的エンドリシンであって、以前に抗生物質による治療に失敗した患者、及び/又は感染細菌が抗生物質による治療に耐性である細菌性膣炎に罹患している患者に投与されるものであり、特に、前記抗生物質が、ニトロイミダゾール及び/又はクリンダマイシンである、エンドリシン。
【請求項2】
前記抗生物質による治療が、メトロニダゾール、チニダゾール、セクニダゾール、クリンダマイシン、又はそれらの任意の組み合わせによる治療である、請求項1に記載の使用のためのエンドリシン。
【請求項3】
前記患者が、再発性細菌性膣炎に罹患しており、好ましくは、前記患者が、6カ月以内にBVの2回以上のエピソードを有していたか、又は12カ月以内にBVの3回以上のエピソードを有していた、請求項1又は2に記載の使用のためのエンドリシン。
【請求項4】
前記細菌性膣炎が、ガードネレラ・バギナリス・センス・ストリクト、ガードネレラ・レオポルジ、ガードネレラ・ピオチイ、及びガードネレラ・スウィドシンスキイの種、並びに/又は、ガードネレラ属の任意の他の種の感染性細菌の存在を特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のためのエンドリシン。
【請求項5】
前記エンドリシンが、ガードネレラ属の種に対する死滅活性を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のためのエンドリシン。
【請求項6】
前記エンドリシンが、ガードネレラ・バギナリス・センス・ストリクト、ガードネレラ・レオポルジ、ガードネレラ・ピオチイ、及び/又はガードネレラ・スウィドシンスキイに対する死滅活性を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのエンドリシン。
【請求項7】
前記エンドリシンが、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・ガセリ、及び/又はラクトバチルス・イエンセニーに対する死滅活性を有していない、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のためのエンドリシン。
【請求項8】
(i)N末端触媒ドメイン、又はその機能的変異体、
(ii)C末端細胞壁結合領域又はその機能的変異体であって、前記C末端細胞壁結合領域が、少なくとも1つの細胞壁結合ドメインを含むか、又はそれからなる、C末端細胞壁結合領域又はその機能的変異体、及び
(iii)任意に、前記N末端触媒ドメインと前記C末端細胞壁結合領域との間のリンカー領域、
を含むか又はそれらからなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のためのエンドリシン。
【請求項9】
前記触媒ドメインが、配列番号2~10のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなるポリペプチド、又は配列番号2~10のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するその任意の機能的変異体、好ましくは配列番号3のアミノ酸配列を含むポリペプチドである、請求項8に記載の使用のためのエンドリシン。
【請求項10】
前記細胞壁結合ドメインが、配列番号11~28のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなるポリペプチド、又は配列番号11~28のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するその任意の機能的変異体である、請求項8又は9に記載の使用のためのエンドリシン。
【請求項11】
前記C末端細胞壁結合領域が、第1の細胞壁結合ドメイン及び第2の細胞壁結合ドメインを含むか又はそれらからなり、
前記第1の細胞壁結合ドメインが、配列番号23のアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなるポリペプチド、又は配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するその任意の機能的変異体であり、
前記第2の細胞壁結合ドメインが、配列番号24若しくは配列番号26のアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなるポリペプチド、又は配列番号24若しくは配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するその任意の機能的変異体である、請求項8~10のいずれか一項に記載の使用のためのエンドリシン。
【請求項12】
前記エンドリシンが、機能的であり、前記機能が、ガードネレラの細胞壁を溶解する能力を含む、請求項8~11のいずれか一項に記載の使用のためのエンドリシン。
【請求項13】
前記エンドリシンが、配列番号1で提供されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドであり、ガードネレラに対する死滅活性を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のためのエンドリシン。
【請求項14】
前記エンドリシンが、
(i)配列番号3のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるポリペプチドからなるN末端触媒ドメイン、並びに
(ii)第1の細胞壁結合ドメイン及び第2の細胞壁結合ドメインを含むか又はそれらからなるC末端細胞壁結合領域、
を含むか又はそれからなり、
前記第1の細胞壁結合ドメインが、配列番号23のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるポリペプチドであり、前記第2の細胞壁結合ドメインが、配列番号24又は配列番号26のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるポリペプチドである、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のためのエンドリシン。
【請求項15】
前記第1の細胞壁結合ドメインが、前記第2の細胞壁結合ドメインのN末端に位置する、請求項11又は請求項14に記載の使用のためのエンドリシン。
【請求項16】
配列番号1又は配列番号37で提供されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用のためのエンドリシン。
【請求項17】
女性対象の膣内、及び/又は男性対象の陰茎亀頭、包皮若しくは尿道入口内若しくは上に局所投与されるものである、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のためのエンドリシン。
【請求項18】
膣のpHを4.0~6.0に調整する化合物又は組成物と共投与されるものである、請求項1~17のいずれか一項に記載の使用のためのエンドリシン。
【請求項19】
以前に抗生物質による治療に失敗した患者及び/又は感染性細菌が抗生物質による治療に耐性である細菌性膣炎に罹患している患者における細菌性膣炎の治療に使用するための、組み換えガードネレラ特異的エンドリシンと、任意選択で薬学的に許容される担体及び/又は希釈剤と、を含む医薬組成物。
【請求項20】
前記抗生物質による治療が、メトロニダゾール、チニダゾール、セクニダゾール、クリンダマイシン又はそれらの任意の組み合わせによる治療である、請求項19に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項21】
前記患者が、再発性細菌性膣炎に罹患しており、好ましくは、前記患者が、6ヶ月以内にBVの2回以上のエピソードを有していたか、又は12ヶ月以内にBVの3回以上のエピソードを有していた、請求項19又は請求項20に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項22】
前記細菌性膣炎が、ガードネレラ・バギナリス・センス・ストリクト、ガードネレラ・レオポルジ、ガードネレラ・ピオチイ、及びガードネレラ・スウィドシンスキイの種、並びに/又は、ガードネレラ属の任意の他の種の感染性細菌の存在を特徴とする、請求項19~21のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項23】
前記エンドリシンが、ガードネレラ属の種に対する死滅活性を有する、請求項19~22のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項24】
前記エンドリシンが、ガードネレラ・バギナリス・センス・ストリクト、ガードネレラ・レオポルジ、ガードネレラ・ピオチイ、及び/又はガードネレラ・スウィドシンスキイに対する死滅活性を有する、請求項19~23のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項25】
前記エンドリシンが、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・ガセリ、及び/又はラクトバチルス・イエンセニーに対する死滅活性を有していない、請求項19~24のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項26】
前記エンドリシンが
(i)N末端触媒ドメイン、又はその機能的変異体、
(ii)C末端細胞壁結合領域又はその機能的変異体であって、前記C末端細胞壁結合領域が、少なくとも1つの細胞壁結合ドメインを含むか、又はそれからなる、C末端細胞壁結合領域又はその機能的変異体、及び
(iii)任意に、前記N末端触媒ドメインと前記C末端細胞壁結合領域との間のリンカー領域、
を含むか又はそれらからなる、請求項19~26のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項27】
前記触媒ドメインが、配列番号2~10のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなるポリペプチド、又は配列番号2~10のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するその任意の機能的変異体、好ましくは配列番号3のアミノ酸配列を含むポリペプチドである、請求項26に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項28】
前記細胞壁結合ドメインが、配列番号11~28のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなるポリペプチド、又は配列番号11~28のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するその任意の機能的変異体である、請求項26又は27に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項29】
前記C末端細胞壁結合領域が、第1の細胞壁結合ドメイン及び第2の細胞壁結合ドメインを含むか又はそれらからなり、
前記第1の細胞壁結合ドメインが、配列番号23のアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなるポリペプチド、又は配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するその任意の機能的変異体であり、
前記第2の細胞壁結合ドメインが、配列番号24若しくは配列番号26のアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなるポリペプチド、又は配列番号24若しくは配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するその任意の機能的変異体である、請求項26~28のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項30】
前記エンドリシンが、機能的であり、前記機能が、ガードネレラの細胞壁を溶解する能力を含む、請求項26~29のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項31】
前記エンドリシンが、配列番号1で提供されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドであり、ガードネレラに対する死滅活性を有する、請求項19~30のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項32】
前記エンドリシンが、
(i)配列番号3のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるポリペプチドからなるN末端触媒ドメイン、並びに
(ii)第1の細胞壁結合ドメイン及び第2の細胞壁結合ドメインを含むか又はそれらからなるC末端細胞壁結合領域、
を含むか又はそれからなり、
前記第1の細胞壁結合ドメインが、配列番号23のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるポリペプチドであり、前記第2の細胞壁結合ドメインが、配列番号24又は配列番号26のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるポリペプチドである、請求項19~31のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項33】
前記第1の細胞壁結合ドメインが、前記第2の細胞壁結合ドメインのN末端に位置する、請求項29又は請求項32に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項34】
前記エンドリシンが、配列番号1又は配列番号37で提供されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、請求項19~33のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項35】
女性対象の膣内、及び/又は男性対象の陰茎亀頭、包皮若しくは尿道入口内若しくは上に局所投与されるものである、請求項19~34のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項36】
前記エンドリシンが、膣のpHを4.0~6.0に調整する化合物又は組成物と共投与されるものである、請求項19~35のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項37】
膣のpHを4.0~6.0に調整する化合物又は組成物を更に含む、請求項19~35のいずれか一項に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項38】
以前に抗生物質による治療に失敗した患者及び/又は感染性細菌が抗生物質による治療に耐性である細菌性膣炎に罹患している患者において細菌性膣炎を治療する方法であって、前記方法が、組み換えガードネレラ特異的エンドリシン又は組み換えガードネレラ特異的エンドリシンを含む医薬組成物の治療有効量を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項39】
前記抗生物質による治療が、メトロニダゾール、チニダゾール、セクニダゾール、クリンダマイシン又はそれらの任意の組み合わせによる治療である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記患者が、再発性細菌性膣炎に罹患しており、好ましくは、前記患者が、6ヶ月以内にBVの2回以上のエピソードを有していたか、又は12ヶ月以内にBVの3回以上のエピソードを有していた、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
前記細菌性膣炎が、ガードネレラ・バギナリス・センス・ストリクト、ガードネレラ・レオポルジ、ガードネレラ・ピオチイ、及びガードネレラ・スウィドシンスキイの種、並びに/又は、ガードネレラ属の任意の他の種の感染性細菌の存在を特徴とする、請求項38~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記エンドリシンが、ガードネレラ属の種に対する死滅活性を有する、請求項38~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記エンドリシンが、ガードネレラ・バギナリス・センス・ストリクト、ガードネレラ・レオポルジ、ガードネレラ・ピオチイ、及び/又はガードネレラ・スウィドシンスキイに対する死滅活性を有する、請求項38~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記エンドリシンが、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・ガセリ、及び/又はラクトバチルス・イエンセニーに対する死滅活性を有していない、請求項38~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記エンドリシンが、
(i)N末端触媒ドメイン、又はその機能的変異体、
(ii)C末端細胞壁結合領域又はその機能的変異体であって、前記C末端細胞壁結合領域が、少なくとも1つの細胞壁結合ドメインを含むか、又はそれからなる、C末端細胞壁結合領域又はその機能的変異体、及び
(iii)任意に、前記N末端触媒ドメインと前記C末端細胞壁結合領域との間のリンカー領域、
を含むか又はそれらからなる、請求項38~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記触媒ドメインが、配列番号2~10のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなるポリペプチド、又は配列番号2~10のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するその任意の機能的変異体、好ましくは配列番号3のアミノ酸配列を含むポリペプチドである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記細胞壁結合ドメインが、配列番号11~28のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなるポリペプチド、又は配列番号11~28のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するその任意の機能的変異体である、請求項45又は46に記載の方法。
【請求項48】
前記C末端細胞壁結合領域が、第1の細胞壁結合ドメイン及び第2の細胞壁結合ドメインを含むか又はそれらからなり、
前記第1の細胞壁結合ドメインが、配列番号23のアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなるポリペプチド、又は配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するその任意の機能的変異体であり、
前記第2の細胞壁結合ドメインが、配列番号24若しくは配列番号26のアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなるポリペプチド、又は配列番号24若しくは配列番号26のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性を有するその任意の機能的変異体である、請求項45~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記エンドリシンが、機能的であり、前記機能が、ガードネレラの細胞壁を溶解する能力を含む、請求項45~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記エンドリシンが、配列番号1で提供されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドであり、ガードネレラに対する死滅活性を有する、請求項38~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記エンドリシンが、
(i)配列番号3のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるポリペプチドからなるN末端触媒ドメイン、並びに
(ii)第1の細胞壁結合ドメイン及び第2の細胞壁結合ドメインを含むか又はそれらからなるC末端細胞壁結合領域、
を含むか又はそれからなり、
前記第1の細胞壁結合ドメインが、配列番号23のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるポリペプチドであり、前記第2の細胞壁結合ドメインが、配列番号24又は配列番号26のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるポリペプチドである、請求項38~50のいずれか一項に記載の使用のための法。
【請求項52】
前記第1の細胞壁結合ドメインが、前記第2の細胞壁結合ドメインのN末端に位置する、請求項48又は請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記エンドリシンが、配列番号1又は配列番号37で提供されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、請求項38~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記エンドリシン又は組成物が、女性対象の膣内、及び/又は男性対象の陰茎亀頭、包皮若しくは尿道入口内若しくは上に局所投与されるものである、請求項38~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記エンドリシン又は組成物が、膣のpHを4.0~6.0に調整する化合物又は組成物と共投与されるものである、請求項38~54のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に細菌性膣炎(BV)の治療における、更により具体的には、以前に抗生物質による治療に失敗したBVに罹患している患者、及び/又は感染性細菌が抗生物質による治療に耐性であるBVに罹患している患者の治療における、種選択的ファージエンドリシンの新規治療的使用に関する。本発明はまた、本発明の使用のための医薬組成物及びそれを使用する治療方法に関する。
【0002】
細菌性膣炎(BV)は、文献では細菌性膣炎、非特異的膣炎及び非特異的膣炎とも呼ばれており、世界中で最も一般的な膣感染であり、早期分娩及び出産、分娩後子宮内膜炎及びHIV獲得のリスクの増加を含む、重大な有害結果を伴う。それは、共生する乳酸菌(Lactobacilli)が多菌性バイオフィルムによって置き換えられ、pHが天然の3.5~4.5から5.5まで増加し、悪臭流体が形成される、膣のディスバイオシスである。それは、最も一般的には、正常な膣細菌叢、特にH産生種ラクトバチルスの喪失、及びガードネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis、G.vaginalis)を含む嫌気性細菌の同時過剰増殖を特徴とする病理学的状態として定義される。この生物は、最初はヘモフィラス・バギナリスと呼ばれていたが、その特性に関する情報が増えるにつれて繰り返し改名され、現在はG.バギナリスとして分類され、2018年までは、ガードネレラ属の唯一のメンバーであると考えられていた。しかしながら、2019年の初期に、ガードネレラ属には実際には少なくとも13種が含まれ、最も頻度の高いものをG.バギナリス・センス・ストリクト(G.vaginalis sensu stricto)、G.レオポルジイ(G.leopoldii)、G.ピオチイ(G.piotii)及びG.スイドシンスキイ(G.swidsinskii)として改名された(Vaneechoutte et al.,2019 Int.J.Syst.Evol.Biol.898661)。ガードネレラ属の細菌は、それらがグラム可変であるという点、すなわち、それらがグラム陰性種を規定する外膜を形成しないという点で特別である。細胞壁は一般に非常に薄く、ペプチドグリカンの含有量はわずか10%以下であり、これが、グラム染色に使用されるクリスタルバイオレット染料が必ずしもグラム陽性種に典型的な濃い紫色を生じるとは限らない理由である。むしろ、ガードネレラの細胞は、グラム染色においてグラム陽性及び陰性の両方で現れ得る。16S rRNAに基づく系統発生解析に基づき、ガードネレラは、グラム陽性菌のビフィズス菌科に分類される。
【0003】
BVの間、上皮表面は、膣上皮上に接着性バイオフィルムを形成するガードネレラ細菌の密集した集まりで覆われ、他の種は増殖することができ、治療に対してしばしば不応性である多微生物性バイオフィルムが生じる。バイオフィルムは、多糖、タンパク質及び/又は核酸から構成されるポリマーマトリックスによって一緒に保持された微生物の接着性コミュニティである。異なる遺伝子発現パターン、並びにバイオフィルムの物理的構造は、化学消毒剤、極端なpH、宿主免疫防御及び抗生物質を含む多くの負の刺激に対する細菌耐性を増加させる。
【0004】
BVに対して推奨される第一選択療法は、主に、メトロニダゾール(MDZ)、チニダゾール(TDZ)及びセクニダゾールなどのニトロイミダゾール抗菌剤、及び/又はクリンダマイシン(CLI)を用いた抗菌剤治療である。メトロニダゾール(MDZ)は、ニトロイミダゾールの群に属し、そのヒドロキシ代謝産物(MDZ-OH)に代謝された場合にのみ、その完全な活性を獲得する。抗菌剤は、BV症状を迅速に減少させるのに有効であるが、治療の6ヶ月以内に60%までの高い再発率を伴う。再発性BVを有する患者が16週間にわたって0.75%MDZ膣ゲルで治療された臨床試験では、治癒が持続する確率は、16週間後に70%であり(すなわち、患者の30%が16週間の治療期間の終わりに症状を有していた)、治療終了後12週間、すなわち28週目に34%に低下した(Sobel et al.,2006,Am.J.Obstet.Gynecol.194,1283-1289)。性交渉相手からの再感染の可能性に加えて、残存感染の持続は、BVを引き起こす細菌を抗菌療法から保護するバイオフィルムの形成に潜在的に起因して、再発の理由として仮定されている。別の理由は、BV病原体の抗生物質耐性であり得る。抗生物質耐性は、自然に生じるが、ヒト及び動物における抗生物質の誤用は、このプロセスを加速させる。すなわち、既存の治療は、バイオフィルムに効果的に浸透することができない。したがって、抗生物質による治療を中止すると、バイオフィルムが再成長し、再発性の症候が示される。更に、抗生物質による治療は、生存可能なバイオフィルムのいくらかの残りを残すにもかかわらず、膣微生物叢を拭き取り、これは、他の病原体(例えば、真菌)に対するこの生態学的ニッチを開くこととなる。したがって、BV治療による頻繁な影響としては、カンジダ症が存在する。したがって、治療の失敗及び再発性疾患は、抗生物質治療に共通する課題である。
【0005】
したがって、BVに罹患している患者、特に抗生物質治療が禁忌である患者及び/又は抗生物質治療による有害な副作用の記録を有する患者を治療するための、新規な方法及び組成物が必要とされている。以前に抗生物質による治療に失敗した個体、及び/又は感染性細菌が抗生物質治療に耐性である細菌感染に罹患している個体における、BVの治療も、必要とされている。
【0006】
したがって、本発明の根底にある技術的課題は、本明細書において上記で特定された患者などの、困難な臨床状況におけるBVの治療のための新規な手段及び方法の提供である。
【0007】
技術的課題は、特許請求の範囲において特徴付けられる実施形態の提供によって解決される。
【0008】
特に、本発明は、細菌性膣炎の治療における使用のためのガードネレラ特異的エンドリシン、好ましくは組み換えガードネレラ特異的エンドリシンを提供し、エンドリシンは、抗生物質、特にニトロイミダゾール及び/又はクリンダマイシンによる治療に以前失敗した患者に投与されるものである。本発明は更に、細菌性膣炎の治療に使用するためのガードネレラ特異的エンドリシン、好ましくは組み換えガードネレラ特異的エンドリシンであって、感染性細菌が、抗生物質、特にニトロイミダゾール及び/又はクリンダマイシンによる治療に耐性である、細菌性膣炎に罹患している患者に投与されるものである、エンドリシンを提供する。
【0009】
エンドリシンは、バイオフィルムを根絶するそれらの能力、耐性の発生に対するそれらの低い傾向、及び細菌の個々の属又は種に対するそれらの特異性のために、現在の抗生物質に対する有望な代替物である。天然及び遺伝子操作されたガードネレラ特異的エンドリシンが報告されている(国際公開第2020/225335 A1号パンフレット、Landlingerら、2021、Pathogens10、1-19、又は国際公開第2020/229802 A1号パンフレット)。国際公開第2020/225335号パンフレットは、BVなどのガードネレラ感染を治療する方法において使用するための特定の組み換えガードネレラ特異的エンドリシン(例えば、H2B10)を記載しており、かかる細菌性膣炎は、ガードネレラ・バギナリス・センス・ストリクト、ガードネレラ・レオポルジ、ガードネレラ・ピオチイ及び/又はガードネレラ・スウィドシンスキイによって引き起こされる。国際公開第2020/225335号パンフレットの実施例6及び7は、エンドリシンH2B10(組み換えガードネレラ特異的エンドリシンの代表例として)が、特にガードネレラ株の懸濁液中での増殖に対する最小阻止濃度(MIC)に関して、抗生物質メトロニダゾール及びクリンダマイシンよりも優れていることを実証している。したがって、国際公開第2020/225335号パンフレットの結果は、(組み換え)ガードネレラ特異的エンドリシンが、一般的にBVの治療において抗生物質よりも優れていることを実証している。言い換えれば、抗生物質の場合と比較し、様々なガードネレラ種にわたり、エンドリシンが一般的により低いMIC値を示すことから、(組み換え)ガードネレラ-特異的エンドリシンは、一般に、ガードネレラ菌株の懸濁液中での増殖に対してより有効であることが示されている。添付の実施例1はまた、これらのガードネレラ特異的エンドリシンが、ガードネレラ株の懸濁液中での増殖を阻害することを実証する(表1及び2参照)。エンドリシンは、BVを治療するための抗生物質の有望な代替物であることが示されているが、細菌性膣炎の病歴を有する患者(すなわち、すでにBVの症状を経験した患者、又は再発性BVに罹患している患者)、及び以前に抗生物質による治療に失敗した患者を治療する可能性を示すデータは、未だ提供されていない。同様に、感染性細菌が抗生物質による治療に対して耐性である、好ましくは高度に耐性である(例えば、抗生物質による治療が1回以上、好ましくは3回以上失敗した後に抗生物質耐性が獲得された)BVに罹患している患者を治療するためのエンドリシンの可能性を示すデータも未だ提供されていない。
【0010】
本発明は、抗生物質に対するエンドリシンの優位性が、(添付の実施例2に例示されるように)バイオフィルムで増殖したガードネレラ株において更により顕著であるという驚くべき予想外の知見に基づくものである。実際、バイオフィルム増殖株は、抗生物質メトロニダゾール(MDZ)及びクリンダマイシン(CLI)の作用に対してより耐性であるが、組み換えガードネレラ特異的エンドリシンPM-477は、これらのバイオフィルム増殖生物を破壊することができる。BVに罹患している患者におけるガードネレラ株は、典型的にはバイオフィルム状態であるため、これは臨床的に適切である。本発明は更に、ガードネレラ種が、(添付の実施例3に例示されるように)例示的な例として抗生物質メトロニダゾール(MDZ)を使用する抗生物質治療に対して耐性を急速に発達させるという驚くべき予想外の発見に基づく。したがって、MDZ治療に対する同様の速い耐性形成が、かかる抗生物質を使用する抗生物質治療の過程の間にBV患者において起こり、BV療法失敗の悪循環、更なるMDZ治療の過程、及びこの抗生物質に対する細菌の耐性の更なる増加、を引き起こすと考えられる。驚くべきことに、菌株間の耐性状態が、抗菌剤メトロニダゾール(MDZ)及びチニダゾール(TDZ)について同等であることが本発明において見出されたため(添付の実施例1)、TDZ治療に対する同様の迅速な耐性形成が、かかる抗菌剤を使用する抗菌剤治療の過程の間にBV患者において生じると考えられた。更に、MDZ及びTDZは両方とも、ニトロイミダゾール抗生物質のクラス、すなわち、類似の化学構造を共有する抗生物質のクラスに属するため、MDZ、TDZ及びセクニダゾールを含むニトロイミダゾール抗生物質からなる群からの抗生物質のいずれか1つを使用する抗生物質治療の過程中に、抗生物質治療に対する類似の迅速な耐性形成がBV患者において生じると考えられる。更に、驚くべきことに、抗生物質MDZ及びクリンダマイシン(CLI)の両方が、試験されたガードネレラ単離株の大部分に対して、それらがバイオフィルムとして増殖した場合に無効であることが本発明において見出された(添付の実施例2)。BVに罹患している患者におけるガードネレラ株は、典型的にはバイオフィルム状態にあるため、したがって、CLIによる治療はまた、BV治療の失敗をもたらし、CLI治療に対する同様の迅速な耐性形成が、かかる抗生物質を使用する抗生物質治療の過程中にBV患者において生じると考えられる。本発明は更に、かかる抗生物質治療とは対照的に、組み換えガードネレラ特異的エンドリシン(「H2B10」とも互換的に称され、エンドリシン「PM-477」として例示され、そのアミノ酸配列を配列番号1に示す)が、ガードネレラにより予め形成されたバイオフィルムに対して高度に活性であり(添付の実施例2)、耐性形成を誘導せず(添付の実施例3)、抗生物質耐性ガードネレラ株、特に抗生物質に対して高度に耐性である及び/又は1つ以上の(失敗した)抗生物質治療後に抗生物質耐性を獲得したガードネレラ株に対して完全に活性である(添付の実施例4)、という驚くべき予想外の発見に基づく。したがって、本発明は、特に再発性BVを有する患者(すなわち、細菌性膣炎の病歴を有する患者、すなわち、既にBVの症状を経験した患者)、並びに抗生物質、特にニトロイミダゾール(例えば、MDZ)及び/若しくはCLIによる治療に失敗した患者、並びに/又は、感染性細菌が抗生物質治療に耐性である(例えば、抗生物質耐性が、抗生物質、特にニトロイミダゾール(例えば、MDZ)及び/若しくはCLIによる1回以上、好ましくは3回以上の失敗した治療後に獲得された)細菌性膣炎に罹患している患者において、BVを治療するために、(組み換え)ガードネレラ特異的エンドリシンが有用であるという驚くべき予想外の発見に基づく。
【0011】
本発明は、治療される対象の特定の群によって、国際公開第2020/225335号パンフレットに記載されている治療的使用と明確に区別されるべきである。本発明の新しい治療的使用は、具体的には、以前に抗生物質による治療に失敗した患者、及び/又は感染性細菌が抗生物質による治療に耐性である細菌性膣炎に罹患している患者、例えば、かかる抗生物質による1回又は複数回の治療の失敗後に抗生物質に対する耐性を獲得したガードネレラ株によって引き起こされるBVに罹患している患者を対象とする。この新しい臨床状況は、添付の実施例において、ガードネレラ株をMDZ(BVを治療するために使用される抗生物質の代表として)と共に「継代」することによって表される。本発明の文脈において、「継代」とは、増殖が損なわれるが完全には阻害されないよう方法で細菌株を抗生物質で処理することを指す。したがって、このインビトロ設定は、細菌感染(例えば、BV)に罹患している患者に対する、抗生物質による失敗した治療による効果を人工的に再現することを意図する。添付の実施例3及び図2に示されるように、抗生物に対するガードネレラ株の耐性は、抗生物(例えば、MDZ)を用いた各失敗処理(すなわち、各「継代」)後に(MIC値の増加によって表されるように)大きく増加する。いくつかの継代ラウンド(例えば、5回以上)の後、試験されたガードネレラ株の大部分は、使用される最大濃度によってさえ、もはや阻害され得ず、これは、これらのガードネレラ株が、(本明細書において以下に定義されるように)抗生物質治療に対して高度に耐性になったことを意味する。驚くべきことに、かつ予想外に、本発明者らは、この有害な効果が、(エンドリシンPM-477で例示されるように)組み換えガードネレラ特異的エンドリシンでの治療の際には見られないことを本明細書において示す。実際、添付の実施例3及び図2は、組み換えガードネレラ特異的エンドリシンのMICが、25回の継代後であってもわずかに増加しただけであることを示す。更に驚くべきことに、そして予期せぬことに、(エンドリシンPM-477で例示されるように)組み換えガードネレラ特異的エンドリシンは、最も高い耐性を示す株であっても、(BVを治療するために使用される抗生物質の代表としてMDZで例示されるように)抗生物質に対する耐性を獲得したガードネレラ株の増殖を依然として効果的に減少させることが本明細書において示されている。したがって、組み換えガードネレラ特異的エンドリシンは、驚くべきことに、BVに罹患している患者であって、かかる患者が以前に抗生物質による治療に失敗した患者であって、及び/又は、かかるBVの感染性細菌が抗生物質による治療に(高度に)耐性である、特にかかる抗生物質がニトロイミダゾール及び/又はクリンダマイシンである、患者の治療における使用に適していることが本明細書において示される。
【0012】
したがって、本発明の第1の態様では、本明細書に記載のガードネレラ特異的エンドリシン、好ましくは組み換えガードネレラ特異的エンドリシンは、細菌性膣炎の治療に使用するためのものであり、エンドリシンは、以前に抗生物質による治療に失敗した患者に投与されるものである。
【0013】
本明細書で使用される場合、「以前に抗生物質による治療に失敗した患者」とは、細菌性膣炎の病歴を有する患者、すなわち、過去に細菌性膣炎の症状に罹患した(又はすでに経験した)患者、抗生物質によってかかる細菌性膣炎の治療を受けた患者であって、かつ再発した患者、すなわち、症状が再発した患者を指す。かかる患者は、再発性BVに罹患している患者と呼ぶこともできる。本明細書で使用される場合、「細菌性膣炎の病歴を有する患者」、「細菌性膣炎の症状を既に経験した患者」、及び「再発性BVに罹患している患者」という用語は、互換的に使用することができ、限定されないが、6ヶ月以内にBVの1回以上のエピソード、好ましくはBVの2回以上のエピソード、より好ましくはBVの2回以上のエピソード、更により好ましくは過去6ヶ月以内にBVの2回以上のエピソード、又は好ましくは12ヶ月以内にBVの3回以上のエピソード、より好ましくはBVの3回以上のエピソード、更により好ましくは過去12ヶ月以内のBVの3回以上のエピソードを有していた患者を含む。患者内のBVを診断する方法、又はBVの発症を証明する方法は、当業者に公知であり、例えば、BVは、臨床基準(例えば、Amselの診断基準など)を使用することによって臨床的に、又は膣グラム染色からNugentスコアを決定することによって顕微鏡的に診断することができる。いかなる理論にも束縛されるものではないが、抗生物質による治療後の患者におけるBVの再燃(又は再発)は、使用された抗生物質に対する感染性細菌の耐性による残留感染の持続によって引き起こされ得る。したがって、本発明のこの第1の態様の1つの好ましい実施形態では、患者は、感染性細菌が抗生物質治療に耐性である細菌性膣炎に罹患している。したがって、本発明の好ましい一態様では、本明細書に記載されるガードネレラ特異的エンドリシンは、細菌性膣炎の治療に使用するためのものであり、エンドリシンは、以前に抗生物質による治療に失敗した患者、及び感染性細菌が抗生物質治療に耐性である細菌性膣炎に罹患している患者に投与されるものである。本明細書において以下に定義されるように、本明細書において治療されるBVの感染性細菌は、更により好ましくは、抗生物質治療に対して高度に耐性である。本発明の治療的使用の好ましい一実施形態では、治療される患者は、BVに罹患しており、かかるBVの感染性細菌は、メトロニダゾール、チニダゾール、セクニダゾール、クリンダマイシン又はそれらの任意の組合せによる治療に対して耐性、好ましくは高度に耐性である。本発明の治療的使用の1つのより好ましい実施形態では、治療される患者は、BVに罹患しており、かかるBVの感染性細菌は、メトロニダゾール及び/又はクリンダマイシンによる治療に対して耐性、好ましくは高度に耐性である。本発明の治療的使用の更により好ましい一実施形態では、治療される患者は、BVに罹患しており、かかるBVの感染性細菌は、メトロニダゾールによる治療に対して耐性、好ましくは高度に耐性である。
【0014】
本発明の第2の態様では、本明細書に記載されるガードネレラ特異的エンドリシン、好ましくは組み換えガードネレラ特異的エンドリシンは、細菌性膣炎の治療に使用するためのものであり、エンドリシンは、感染性細菌が抗生物質治療に耐性である細菌性膣炎に罹患している患者に投与されるものである。
【0015】
本発明に関連して、抗生物質に関する細菌株(好ましくはガードネレラ株)の「耐性」は、以前に感受性であった抗生物質の活性に抵抗し、抗生物質治療を生き延びることを可能にする株の能力を指す。抗生物質耐性は、天然に生じ得る(「内因性耐性」)か、又はヒト及び動物における抗生物質の誤用によって誘導され得る(「獲得耐性」)。抗生物質に対する細菌株の耐性又は感受性を決定する方法は、当業者に公知である。例として、グラム陽性嫌気性菌(v11、2021)のEUCASTブレークポイントを使用することができる。代替的な定義がPetrinaら(2017,Anaerobe47,115-119)に与えられており、そこでは、いくつかのニトロイミダゾール及びクリンダマイシンの局所製剤は、膣液中でmg/ml範囲の濃度を確立することができ、経口送達された抗菌剤で達成可能な濃度よりもはるかに高いため、わずかに高い耐性ブレークポイントが使用される。この代替案によれば、より厳密な定義(添付の実施例でも使用される)では、耐性(R)は、メトロニダゾールについては32μg/ml以上のMIC値として、クリンダマイシンについては8μg/ml以上のMIC値として、定義することができ、一方、感受性(S)は、メトロニダゾールについては8μg/ml以下のMIC値として、クリンダマイシンについては2μg/ml以下のMIC値として、定義することができる。「最小発育阻止濃度」及び「MIC」という用語は、本明細書において互換的に使用され、細菌の目に見える成長を防止する化学物質、通常は薬物、の最低濃度を指す。MICは、OD測定によって48時間後に増殖が検出されなかった最小濃度として定義することができる。したがって、本発明の治療的使用の1つの好ましい実施形態では、治療される患者は、感染性細菌がEUCASTブレークポイントによって定義される抗生物質治療に耐性であるBVに罹患している。他の一般的に受け入れられている抵抗基準は、上述したEUCAST定義又は代替定義の代わりに、及び/又はそれに加えて使用して(Petrina et al.,2017,Anaerobe 47,115-119)、本発明の文脈における抗生物質治療に対する感染性細菌の耐性を定義することができる。
【0016】
当業者に知られているように、「耐性」及び「感受性」は、MBC及び/又はMBEC値に関して定義され得る。「最小殺菌濃度」又は「MBC」という用語は、特定の細菌を死滅させるのに必要な抗菌剤の最低濃度を指す。通常、MBC90又はMBC99.5、すなわち、規定時間内に細胞のそれぞれ90%又は99.5%を死滅させる抗生物質濃度が測定される。MBCは、例えば2.5×10CFU/mlの懸濁液を完全に根絶する最小濃度として定義することができる。MICは、目に見える増殖を阻害するのに必要な抗菌剤の最低濃度である一方、MBCは、細菌の少なくとも90%(MBC90)又は少なくとも99.5%(MBC99.5)の死滅をもたらす、定義された検出限界までの懸濁液中のすべての細胞の細菌死をもたらす抗菌剤の最小濃度である。「最小バイオフィルム根絶濃度」又は「MBEC」という用語は、バイオフィルムとして増殖する細菌集団を検出限界未満に減少させるのに必要な抗菌剤の最低濃度を指す。MBECを測定するために本開示で使用される方法の詳細は、実施例の材料及び方法の項に記載されている。
【0017】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、抗生物質に対する感染性細菌の耐性は、再発性BVに罹患している患者におけるBVの再燃(又は再発)に関与している(又は部分的若しくは実質的にその原因である)可能性がある。したがって、感染性細菌が抗生物質による治療に耐性である細菌性膣炎に罹患している患者は、抗生物質による治療に失敗する可能性が高い。したがって、この第2の態様の1つの好ましい実施形態では、治療され、感染性細菌が抗生物質による治療に耐性である細菌性膣炎に罹患している患者は、抗生物質による治療に失敗する傾向がある患者である。本明細書で使用される場合、「抗生物質による治療に失敗する傾向がある」患者は、抗生物質による治療に失敗するリスクが高い患者、すなわち、かかる患者が抗生物質で治療された場合に再発(例えば、12カ月以内)の可能性が非常に高い患者を指す。患者が抗生物質による治療に失敗する傾向があるかどうかを決定する方法は、当業者に知られている。一例として、臨床試料を収集し、膣微生物叢株の耐性を評価することができる。同様に、感染性細菌が抗生物質による治療に対して耐性である細菌性膣炎に罹患している患者は、抗生物質(上記で定義される)による治療に既に(すなわち、以前に)失敗している可能性が高い。したがって、この第2の態様の更に好ましい一実施形態では、治療され、感染性細菌が抗生物質による治療に耐性である細菌性膣炎に罹患している患者は、以前に抗生物質による治療に失敗した患者である。
【0018】
添付の実施例において驚くべきことに示されるように、ガードネレラ株は、かかる抗生物質による各「継代」後にますます多くの抗生物質耐性を獲得したが、全ての株はガードネレラ特異的エンドリシンに対して感受性のままである(添付の実施例4を参照されたい)。実際、以下の表4に示されるように、継代前に、ガードネレラ株は、MDZについて8~256μg/mLのMIC値を示すが、対応する継代株についてのMIC値は、252μg/mL又は2048μg/mLを超え、これは、継代されたガードネレラ株が生存能力を全く失うことなく非常に高濃度の抗生物質耐性を許容することができる点まで、各継代の後に増加したことを意味する。継代後、(継代された)ガードネレラ株は、抗生物質処理に対して高度に耐性になった。耐性の上記定義によれば、「高耐性」(HR)は、メトロニダゾールについては256μg/ml以上のMIC値、クリンダマイシンについては64μg/ml以上のMIC値、すなわち、EUCAST定義の標準的な耐性ブレークポイントよりも既に高い代替定義の耐性ブレークポイントよりも8倍高いものとして定義することができる。抗生物質とは対照的に、本明細書に記載されるガードネレラ特異的エンドリシンについての耐性ブレークポイントは存在せず(PM-477で例示されるように)、かかる「継代された」又は「高耐性」ガードネレラ株でさえ、かかるエンドリシンでの処理に対して感受性のままである。したがって、本発明の治療的使用の一実施形態では、治療される患者はBVに罹患しており、かかるBVの感染性細菌は、好ましくはEUCASTブレークポイントによって定義されるように、抗生物質治療に対して耐性、好ましくは高度に耐性である。本発明の治療的使用の好ましい一実施形態では、治療される患者は、BVに罹患しており、かかるBVの感染性細菌は、メトロニダゾール、チニダゾール、セクニダゾール、クリンダマイシン又はそれらの任意の組合せによる治療に対して耐性、好ましくは高度に耐性である。本発明の治療的使用の1つのより好ましい実施形態では、治療される患者は、BVに罹患しており、かかるBVの感染性細菌は、メトロニダゾール及び/又はクリンダマイシンによる治療に対して耐性、好ましくは高度に耐性である。本発明の治療的使用の更により好ましい一実施形態では、治療される患者は、BVに罹患しており、かかるBVの感染性細菌は、メトロニダゾールによる治療に対して耐性、好ましくは高度に耐性である。
【0019】
本発明の別の態様では、本明細書に記載のガードネレラ特異的エンドリシン、好ましくは組み換えガードネレラ特異的エンドリシンは、細菌性膣炎に罹患している患者の治療に使用するためのものであり、かかる患者は、以前に抗生物質による治療に失敗しており、かつ/又はかかる細菌性膣炎の感染性細菌は、抗生物質治療に耐性である。
【0020】
本明細書に記載の本発明の態様の全ては、「本発明の治療的使用」に包含される。
【0021】
本明細書で使用される場合、「抗生物質による治療」及び「抗生物質治療」という用語は互換的に使用され、好ましくは、BVの治療のために推奨又は承認された抗生物質による治療を指す。BVの治療のために現在推奨又は承認されている抗生物質としては、ニトロイミダゾール(メトロニダゾール、チニダゾール、及びセクニダゾールが挙げられるが、これらに限定されない)、並びにクリンダマイシンが挙げられる。したがって、一実施形態では、かかる「抗生物質による治療」又は「抗生物質治療」は、ニトロイミダゾール及び/又はクリンダマイシンによる治療である。好ましい実施形態では、本明細書に記載の抗生物質による治療は、メトロニダゾール、チニダゾール、セクニダゾール、クリンダマイシン又はそれらの任意の組合せによる治療である。より好ましい実施形態では、本明細書に記載の抗生物質治療は、メトロニダゾール及び/又はクリンダマイシンによる治療である。更により好ましい実施形態では、本明細書に記載される抗生物質治療は、メトロニダゾールによる治療である。
【0022】
本発明の治療的使用の一実施形態では、治療される患者は、再発性細菌性膣炎(本明細書において上記に定義される)に罹患している。本発明の治療的使用の一実施形態では、治療される患者は、細菌性膣炎の病歴を有する。本発明の治療的使用の一実施形態では、治療される患者は、細菌性膣炎の症状を既に経験している。本発明の治療的使用の一実施形態では、治療される患者は、6ヶ月以内に1回以上、好ましくは2回以上のBVのエピソード、より好ましくは2回以上のBVのエピソード、更により好ましくは過去6ヶ月以内に2回以上のBVのエピソード、又は好ましくは12ヶ月以内に3回以上のBVのエピソード、より好ましくは3回以上のBVのエピソード、更により好ましくは過去12ヶ月以内の3回以上のBVのエピソードを有していた。したがって、一実施形態では、本明細書に記載されるガードネレラ特異的エンドリシン、好ましくは組み換えガードネレラ特異的エンドリシンは、細菌性膣炎の治療に使用するためのものであり、かかる細菌性膣炎は再発性細菌性膣炎である。好ましい実施形態では、ガードネレラ特異的エンドリシン、好ましくは本明細書に記載の組み換えガードネレラ特異的エンドリシンは、細菌性膣炎の治療に使用するためのものであり、エンドリシンは、6カ月以内にBVの2回以上のエピソードを有していた患者、又は12カ月以内にBVの3回以上のエピソードを有していた患者に投与されるものである。別の好ましい実施形態では、本明細書に記載されるガードネレラ特異的エンドリシン、好ましくは組み換えガードネレラ特異的エンドリシンは、細菌性膣炎に罹患している患者の治療に使用するためのものであり、かかる患者は、6ヶ月以内に2回以上のBVエピソードを有していたか、又は12ヶ月以内に3回以上のBVエピソードを有していた。別の好ましい実施形態では、本明細書に記載のガードネレラ特異的エンドリシン、好ましくは組み換えガードネレラ特異的エンドリシンは、細菌性膣炎の病歴を有する患者の治療に使用するためのものである。
【0023】
本明細書で使用される場合、「細菌性膣炎」(BV)は、文献において細菌性膣炎とも称され、非特異的膣炎及び非特異的膣炎は、世界中で最も一般的な膣感染症を指す。一実施形態では、BVは、正常な膣フローラ、特にH産生種ラクトバチルスの喪失、及びしばしば属ガードネレラ由来のものを含む嫌気性細菌の同時過剰増殖を特徴とする病理学的状態として定義される。ガードネレラ属には少なくとも13種が含まれ、最も頻度の高いものが、G.バギナリス・センス・ストリクト、G.レオポルジイ、G.ピオチイ及びG.スウィドシンスキイと改名された(Vanechoutte et al.,2019Int.J.Syst.Evol.Microbiol.69,679-687)。本発明の治療的使用の好ましい一実施形態では、治療されるBVは、ガードネレラ・バギナリス・センス・ストリクト、ガードネレラ・レオポルジイ、ガードネレラ・ピオチイ及びガードネレラ・スウィドシンスキイ、並びに任意の他のガードネレラ種からなる群から選択されるガードネレラ属の少なくとも1つの株の存在を特徴とする細菌感染である。したがって、一実施形態では、本明細書に記載のガードネレラ特異的エンドリシン、好ましくは組み換えガードネレラ特異的エンドリシンは、細菌性膣炎の治療に使用するためのものであり、かかる細菌性膣炎は、ガードネレラ・バギナリス・センス・ストリクト、ガードネレラ・レオポルジイ、ガードネレラ・ピオチイ、ガードネレラ・スウィドシンスキイ及び/又は属ガードネレラの任意の他の種の感染性細菌の存在を特徴とする。本明細書では、ガードネレラ属の特定の細菌種「の存在によって特徴付けられる」(又は本明細書で互換的に使用される「によって引き起こされる」)細菌性膣炎は、患者の膣微生物叢におけるかかる細菌(本明細書では「感染性細菌」とも呼ばれる)の過剰増殖を指し、膣ディスバイオシス及び/又はラクトバチルス優性の喪失をもたらすことが理解される。細菌性膣炎が、ガードネレラ属の細菌種の感染性細菌の存在によって特徴付けられるかどうかを決定する方法は、当業者に公知である。例として、BVを診断するためにガードネレラ株の存在をチェックするPCR検査を使用することができる。
【0024】
本発明の治療的使用の一実施形態では、本明細書に記載されるガードネレラ特異的エンドリシンによって治療されるBVは、1つ以上の抗生物質に耐性であるガードネレラ株(すなわち、ガードネレラ属由来の株)の存在によって特徴付けられる。好ましい一実施形態では、かかる1つ又は複数の抗生物質は、ニトロイミダゾール及びクリンダマイシンからなる群から選択される。更により好ましい一実施形態では、かかるガードネレラ株は、メトロニダゾール、チニダゾール、セクニダゾール、クリンダマイシン又はそれらの任意の組合せに耐性である。更により好ましい一実施形態では、かかるガードネレラ株は、メトロニダゾール及び/又はクリンダマイシンに耐性である。更により好ましい一実施形態では、かかるガードネレラ株は、メトロニダゾールに耐性である。最も好ましい一実施形態では、かかるガードネレラ株は、メトロニダゾールに耐性であるか、又は高度に耐性である。
【0025】
本明細書で使用される「エンドリシン」という用語は、宿主細菌細胞壁を消化し、バクテリオファージ子孫を放出するために、バクテリオファージによって通常産生されるポリペプチドを指す。エンドリシンは、外因的に添加された場合に標的細菌の細胞壁を加水分解する(外からの溶解)能力を有するバクテリオファージによってコードされる細胞壁溶解酵素である。この新規なクラスの抗菌剤は、例えば、新規な作用様式、狭いスペクトルの感受性細菌、定常期及び対数増殖期の両方における細菌の迅速な死滅、粘膜及び細菌性バイオフィルムに対する活性、耐性を発現する可能性が低いこと、並びに正常な微生物叢に対する影響が少ないこと、など、古典的な抗生物質に対して重要な利点を有する。これらの独特な特徴は、リシンの生物工学的及び薬理学的利用、並びに抗生物質耐性と戦うための最も重要な現在の代替物の中へのそれらの最近の包含に対する関心を押し上げた。エンドリシンは、多くの場合、2つ以上のドメイン、すなわち、ペプチドグリカン層中の特定のモチーフを切断するヒドロラーゼドメイン(典型的にはポリペプチドのN末端に位置する)などの少なくとも1つの触媒ドメインと、多くの場合、細菌ペプチドグリカンの特異的結合及びプロセシングに関与する1つ以上の細胞壁結合ドメイン(古典的にはポリペプチドのC末端に位置する)と、からなる。この典型的な構造は、エンドリシン構造の一般的な組織化を提供するが、全てのエンドリシンの明確な特徴ではない。グラム陽性菌及びそれらのファージ由来のエンドリシンは、通常、少なくとも1つの触媒ドメイン及び1つ以上の細胞壁結合ドメインを含む。対照的に、グラム陰性種又はそれらのファージによって産生される多くのエンドリシンは、触媒ドメインのみを含有するが、モジュラーエンドリシンも報告されている。触媒ユニットは、切断されるペプチドグリカン(PG)結合のタイプを決定し、一方、細胞壁結合ドメイン(複数可)は、属特異的又は種/株特異的に分布する細胞壁要素の特異的認識によって溶解スペクトルを主に決定する。
【0026】
本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンは、好ましくは、ガードネレラ属特異的である組み換えエンドリシンであり、すなわち、それは、ガードネレラ属に属する細菌を特異的に標的とする。本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンは、更に好ましくは、ガードネレラ属の種に対して死滅活性を有する。例えば、本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンは、ガードネレラ・バギナリス・センス・ストリクト、ガードネレラ・レオポルジイ、ガードネレラ・ピオチイ及び/又はガードネレラ・スウィドシンスキイに対して、好ましくはそれらの全てに対して死滅活性を有し得る。ガードネレラに対する本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンの死滅活性は、より好ましくは、ガードネレラに対する属選択的死滅活性である。本明細書において、「属選択的死滅活性」又は「属特異的溶菌効果」は、本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンが、細菌一般に対して死滅活性又は溶菌効果を有していないことを意味する。特に、本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンは、ガードネレラ種以外の細菌に対する死滅活性を有していない。好ましくは、本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンは、ガードネレラに対して属選択的死滅活性を有するが、乳酸桿菌に対しては有していない。特に、かかるエンドリシンは、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・ガセリ、及び/又はラクトバチルス・イエンセニーに対する死滅活性を有していないことが好ましい。より好ましくは、かかるエンドリシンは、これらのラクトバチルス、すなわち、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・ガセリ、及びラクトバチルス・イエンセニーの全てに対して死滅活性を有していない。
【0027】
本明細書で使用される場合、特定の細菌に対するエンドリシンの「死滅活性」は、かかるエンドリシンの溶解活性によって引き起こされる生存細菌細胞の数の減少として定義することができる。かかる細菌に対するエンドリシンの死滅活性は、細菌細胞の100%が溶解されたことを意味する完全なもの、又は細菌細胞の少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、若しくは少なくとも約99.9%が溶解されたことを意味する部分的なものであり得る。特定の微生物に対するエンドリシンの死滅活性は、Andrews,2001に記載されているような一晩のインキュベーション後に微生物の目に見える増殖を阻害する抗菌剤の最低濃度として定義される抗菌剤の最小阻止濃度(MIC)の決定に基づくものを含む、当該分野における標準的な手順によって決定され得る(Andrews,2001,J Antimicrobial Chemotherapy,48,Suppl.SI,5-16 or in「Document M7-A7,Methods for dilution antimicrobial susceptibility tests for bacteria that grow aerobically;Approved standards,7th Edition,January 2006,vol.26,No.2」published by Clinical and Laboratory Standards Institute)。エンドリシンの死滅活性を決定するための別の好適な方法は、国際公開第2020/225335号パンフレットの実施例セクションに記載されており、試験されるエンドリシンへの曝露後の細菌細胞懸濁液の610~620nmでの光学密度の減少及び/又は細菌細胞懸濁液1ミリリットル当たりのコロニー形成単位(CFU)の減少を測定することからなる。感受性が試験される細菌の懸濁液の610~620nmで測定される光学密度の減少は、精製エンドリシンの存在下で行われるインビトロ濁度アッセイにおいて決定することができる。別の実施形態によれば、インビトロ濁度試験において、エンドリシンが、少なくとも1種のガードネレラ細菌株の懸濁液のOD(610~620nm)を20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、又は95%超減少させる場合、エンドリシンは、ガードネレラに対する死滅活性を有する。
【0028】
本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンは、更に好ましくは、上で定義したような抗生物質耐性ガードネレラ株又は高抗生物質耐性ガードネレラ株に対して死滅活性を有する。1つの好ましい実施形態では、本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンは、ニトロイミダゾール及びクリンダマイシンからなる群から選択される1つ以上の抗生物質に耐性であるガードネレラ株に対して死滅活性を有する。1つのより好ましい実施形態では、本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンは、メトロニダゾール、チニダゾール、セクニダゾール、クリンダマイシン又はそれらの任意の組み合わせに耐性であるガードネレラ株に対して死滅活性を有する。更により好ましい一実施形態では、本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンは、メトロニダゾール及び/又はクリンダマイシンに耐性であるガードネレラ株に対して死滅活性を有する。更により好ましい一実施形態において、本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンは、メトロニダゾールに耐性であるガードネレラ株に対する死滅活性を有する。1つのより好ましい実施形態では、本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンは、上記のかかる抗生物質に対して高度に耐性であるガードネレラ株に対して死滅活性を有する。
【0029】
本発明の治療的使用において、エンドリシンは、経口的に(例えば、ピルとして)又は局所的に(例えば、局所ゲル、ローション若しくはクリームとして、又はペッサリー、すなわち腟坐薬として)投与されるものである。本発明の治療的使用の1つの好ましい態様では、エンドリシンは、局所的に、すなわち、女性対象の膣内に局所的に投与され、及び/又は男性対象において、陰茎亀頭、包皮又は尿道入口(urethral entry)内又は上に局所的に投与されるものである。本明細書において、「陰茎亀頭内又は陰茎亀頭上への(投与)」という用語は、「陰茎亀頭内及び陰茎亀頭上への(投与)」も含む。これに従い、「男性対象の陰茎亀頭、包皮又は尿道入口の中又は上への(投与)」という用語は、「男性対象の陰茎亀頭、包皮及び尿道入口の中又は上への(投与)」も含む。例示的な例として、本発明の使用のためのエンドリシンは、女性対象の膣に挿入される、並びに/又は男性対象の陰茎亀頭に挿入及び/若しくは塗布される、局所ゲル、ローション又はクリームとして製剤化され得る。別の例示的な例として、本発明の使用のためのエンドリシンは、ペッサリー(腟坐薬)の形態で女性対象の膣に挿入され得る。別の例示的な例として、本発明の使用のためのエンドリシンはまた、性的関係の前にコンドーム上に塗布され得る。
【0030】
本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンがガードネレラに対して死滅活性、好ましくは属選択的死滅活性を示す最適pHは、約4~6、好ましくはpH約5である。したがって、本発明の治療的使用の1つの好ましい態様では、エンドリシンは、膣のpHを4.0~6.0、好ましくは4.5~5.5、より好ましくは約5に調整する化合物又は組成物と共投与されるものである。膣のpHを調節する適切な化合物又は組成物としては、リン酸塩、乳酸(例えば、酸性環境を確立するために分泌する天然の酸性化物質)又は他の有機酸、例えば、カルボキシ置換ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンは、好ましくは機能性ポリペプチドであり、その機能は、ガードネレラ属由来の細菌を特異的に標的とすること、より好ましくは、ガードネレラ属由来の細菌を特異的に死滅させることを含む。本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンは、更に好ましくは、触媒ドメイン若しくはその機能的断片及び/又は細胞壁結合ドメイン若しくはその機能的断片を含む。本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンは、天然又は組み換えエンドリシンであり得る。本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンは、最も好ましくは組み換えエンドリシンである。本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンは、より好ましくは、組み換えエンドリシンであり:
(i)N末端触媒ドメイン、又はその機能的変異体、
(ii)C末端細胞壁結合領域又はその機能的変異体であって、かかるC末端細胞壁結合領域が、少なくとも1つの細胞壁結合ドメインを含むか、又はそれからなる、C末端細胞壁結合領域又はその機能的変異体、及び
(iii)任意に、かかるN末端触媒ドメインとかかるC末端細胞壁結合領域との間のリンカー領域、を含むか又はそれらからなる。
ガードネレラ細胞/株に対して、好ましくは死滅活性、より好ましくは属選択的死滅活性を有する。
【0032】
本開示の文脈において、「組み換えエンドリシン」という用語は、好ましくは、国際公開第2020/225335号に定義されるように、ドメイン交換されたエンドリシンを指す。この定義に従って、当業者は、本明細書に記載される「ドメイン交換」又は「組み換え」エンドリシンが天然に存在しないエンドリシンであることを容易に理解する。すなわち、本発明の使用のための組み換えエンドリシンは、ヒトの手によって改変されており、定義により、天然エンドリシン、すなわち、天然に見出され得るものを除外する。添付の実施例並びに国際公開第2020/225335号パンフレットの教示は、本発明の人工エンドリシンを生成する適切な方法(複数可)を提供する。
【0033】
「触媒ドメイン」又は「酵素ドメイン」という用語は、触媒化学反応が起こる領域を含有するタンパク質鎖の部分を指す。本明細書で使用される「触媒ドメイン」は、機能がガードネレラの細胞壁を溶解する能力を含む、機能的ポリペプチドを指す。特に、本明細書に記載の触媒ドメインは、好ましくは、ガードネレラ細胞壁中の基質、好ましくはペプチドグリカンを修飾及び/又は切断することができる。好ましくは、触媒ドメインは、ガードネレラ細胞壁中のペプチドグリカンを切断し、ガードネレラ細胞溶解を引き起こすことができる。好ましくは、触媒ドメインは、ガードネレラ種、例えば、ガードネレラ・バギナリス・センス・ストリクト、ガードネレラ・レオポルジイ、ガードネレラ・ピオチイ及び/又はガードネレラ・スウィドシンスキイ、好ましくはそれらの全ての細胞壁及び/又はペプチドグリカンに存在する結合を修飾及び/又は切断することができる。好適には、触媒ドメインは、ガードネレラ種以外の細菌、好ましくは健康な膣共生細菌、例えばラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・ガセリ、及び/又はラクトバチルス・イエンセニーを含むラクトバチルス種の細胞壁に存在する基質、好ましくはペプチドグリカンを修飾及び/又は切断しない。触媒ドメインは、N-アセチルムラミダーゼ、N-アセチルムラモイル-L-アラニンアミダーゼ、L-アラノイル-D-グルタミン酸エンドペプチダーゼ、ペプチド間架橋エンドペプチダーゼ、又はN-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼであり得る。好ましくは、N末端触媒ドメインはN-アセチルムラミダーゼであり、最も好ましくは1,4-β-N-アセチルムラミダーゼである。触媒ドメインは、好ましくは、(組み換え)エンドリシン内のN末端に位置し、それによって「N末端触媒ドメイン」と称され、更により好ましくは、N末端触媒ドメインは、(組み換え)エンドリシン内のC末端細胞壁結合領域からN末端に位置する。
【0034】
本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンは、好ましくは、配列番号2~10のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなるポリペプチド、又は配列番号2~10のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、更により好ましくは少なくとも95%の同一性、更により好ましくは少なくとも96%の同一性、更により好ましくは少なくとも97%の同一性、更により好ましくは少なくとも98%の同一性、更により好ましくは少なくとも99%の同一性、更により好ましくは少なくとも99.5%の同一性、最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその任意の機能的変異体を含む。WO 2020/225335に示されるように、最も活性な触媒ドメインは、「H2」(配列番号3)である。したがって、本発明の好ましい態様では、触媒ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列、又は配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、更により好ましくは少なくとも95%の同一性、更により好ましくは少なくとも96%の同一性、更により好ましくは少なくとも97%の同一性、更により好ましくは少なくとも98%の同一性、更により好ましくは少なくとも99%の同一性、更により好ましくは少なくとも99.5%の同一性、最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその任意の機能的変異体を含むか又はそれからなるポリペプチドからなり、それにより、エンドリシンは機能的であり、その機能は、ガードネレラの細胞壁を溶解する能力を含む。触媒ドメインは、好ましくは、(組み換え)エンドリシン内のN末端に位置し、それによって「N末端触媒ドメイン」と称され、更により好ましくは、(組み換え)エンドリシンは、細胞壁結合領域を更に含み、N末端触媒ドメインは、(組み換え)エンドリシン内のC末端細胞壁結合領域からN末端に位置する。
【0035】
本明細書で使用される「細胞壁結合領域」は、機能がガードネレラの細胞壁に結合する能力を含む機能的ポリペプチドを指す。細胞壁結合領域は、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の細胞壁結合ドメインを含み得るか、又はそれらからなり得る。細胞壁結合ドメインは、細菌細胞壁及び/又は細菌細胞壁内の特異的基質と相互作用及び/又は結合するポリペプチドである。特に、本明細書に記載される細胞結合ドメインは、好ましくは、ガードネレラ種、例えば、ガードネレラ・バギナリス・センス・ストリクト、ガードネレラ・レオポルジイ、ガードネレラ・ピオチイ及び/又はガードネレラ・スウィドシンスキイ、好ましくはそれらの全ての細胞壁に(例えば、ペプチドグリカンに)特異的に結合することができる。細胞壁結合領域は、好ましくは、(組み換え)エンドリシン内のC末端に位置し、それによって「C末端細胞壁結合領域」と称され、更により好ましくは、C末端細胞壁結合領域は、(組み換え)エンドリシン内のN末端触媒ドメインからC末端に位置する。
【0036】
本発明の治療用途に使用されるエンドリシンは、好ましくは、配列番号11~28のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか又はそれからなるポリペプチド、並びに配列番号11~28のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、更により好ましくは少なくとも95%の同一性、更により好ましくは少なくとも96%の同一性、更により好ましくは少なくとも97%の同一性、更により好ましくは少なくとも98%の同一性、更により好ましくは少なくとも99%の同一性、更により好ましくは少なくとも99.5%の同一性、最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその任意の機能的変異体、からなる群から選択される少なくとも1つの細胞壁結合ドメインを含むか又はそれからなる細胞壁結合領域を含む。WO 2020/225335に示されるように、最も活性な細胞壁結合領域は、「B10」(配列番号23及び24の細胞壁結合ドメインを含む)であり、続いて「B11」(配列番号25及び26の細胞壁結合ドメインを含む)である。したがって、本発明の好ましい態様では、細胞壁結合ドメインは、配列番号23、24、25及び26のいずれか1つのアミノ酸配列を含む又はからなるポリペプチド、並びに配列番号23、24、25及び26のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、更により好ましくは少なくとも95%の同一性、更により好ましくは少なくとも96%の同一性、更により好ましくは少なくとも97%の同一性、更により好ましくは少なくとも98%の同一性、更により好ましくは少なくとも99%の同一性、更により好ましくは少なくとも99.5%の同一性、最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその任意の機能的変異体、からなる群から選択され、エンドリシンは機能的であり、その機能はガードネレラの細胞壁を溶解する能力を含む。細胞壁結合領域は、好ましくは、(組み換え)エンドリシン内のC末端に位置し、それによって「C末端細胞壁結合領域」と称され、更により好ましくは、(組み換え)エンドリシンは、触媒ドメインを更に含み、触媒ドメインは、(組み換え)エンドリシン内のC末端細胞壁結合領域からN末端に位置する。
【0037】
本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンは、好ましくは2つの細胞壁結合ドメイン(細胞壁結合領域内)を含む。本発明の好ましい一態様では、本発明のエンドリシンの細胞壁結合ドメインはそれぞれ、配列番号23、24、25及び26のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか又はそれからなるポリペプチド、並びに配列番号23、24、25及び26のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、更により好ましくは少なくとも95%の同一性、更により好ましくは少なくとも96%の同一性、更により好ましくは少なくとも97%の同一性、更により好ましくは少なくとも98%の同一性、更により好ましくは少なくとも99%の同一性、更により好ましくは少なくとも99.5%の同一性、最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその任意の機能的変異体、からなり、それによりエンドリシンは機能的であり、その機能は、ガードネレラの細胞壁を溶解する能力を含む。本発明の更により好ましい一態様では、エンドリシンは、第1の細胞壁結合ドメイン及び第2の細胞壁結合ドメインを含み、かかる第1の細胞壁結合ドメインは、配列番号23及び25からなる群から選択され、かかる第2の細胞壁結合ドメインは、配列番号24及び26からなる群から選択される。好ましくは、かかる第1の細胞壁結合ドメインは、かかる第2の細胞壁結合ドメインのN末端に位置する。
【0038】
1つのより好ましい実施形態では、本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンは、
(i)配列番号3のアミノ酸配列を含むか若しくはそれからなるポリペプチド、又は配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、更により好ましくは少なくとも95%の同一性、更により好ましくは少なくとも96%の同一性、更により好ましくは少なくとも97%の同一性、更により好ましくは少なくとも98%の同一性、更により好ましくは少なくとも99%の同一性、更により好ましくは少なくとも99.5%の同一性、最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその任意の機能的変異体、からなるN末端触媒ドメイン、並びに
(ii)第1の細胞壁結合ドメイン及び第2の細胞壁結合ドメインを含むか又はそれらからなるC末端細胞壁結合領域、を含む。
かかる第1の細胞壁結合ドメインは、配列番号23及び25、並びに配列番号23及び25のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、更により好ましくは少なくとも95%の同一性、更により好ましくは少なくとも96%の同一性、更により好ましくは少なくとも97%の同一性、更により好ましくは少なくとも98%の同一性、更により好ましくは少なくとも99%の同一性、更により好ましくは少なくとも99.5%の同一性、最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその任意の機能的変異体、からなる群から選択され、
かかる第1の細胞壁結合ドメインは、配列番号24及び26、並びに配列番号24及び26のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも80%の同一性(好ましくは少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、更により好ましくは少なくとも95%の同一性、更により好ましくは少なくとも96%の同一性、更により好ましくは少なくとも97%の同一性、更により好ましくは少なくとも98%の同一性、更により好ましくは少なくとも99%の同一性、更により好ましくは少なくとも99.5%の同一性、最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性)を有するその任意の機能的変異体、からなる群から選択され、
それにより、かかるエンドリシンは機能的であり、その機能は、ガードネレラの細胞壁を溶解する能力を含む。好ましくは、かかる第1の細胞壁結合ドメインは、かかる第2の細胞壁結合ドメインのN末端に位置する。
【0039】
1つの特に好ましい実施形態では、本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンは、
(i)配列番号3のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなるポリペプチドからなるN末端触媒ドメイン、並びに
(ii)第1の細胞壁結合ドメイン及び第2の細胞壁結合ドメインを含むか又はそれらからなるC末端細胞壁結合領域、を含む。
かかる第1の細胞壁結合ドメインは、配列番号23及び25からなる群から選択され、かかる第2の細胞壁結合ドメインは、配列番号24及び26からなる群から選択される。
【0040】
好ましくは、かかる第1の細胞壁結合ドメインは、かかる第2の細胞壁結合ドメインのN末端に位置する。
【0041】
本発明の治療的使用における使用のための特に好ましいエンドリシンの例示的な例は、国際公開第2020/225335号パンフレットに定義されるような「H2B10」(N末端からC末端まで:配列番号3、23、及び24を含む)、「H2B11」(N末端からC末端まで:配列番号3、25、及び26を含む)、並びに「H2B10B11」(N末端からC末端まで:配列番号3、23、及び26を含む)である。
【0042】
本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンは、更に好ましくは、N末端触媒ドメインとC末端細胞壁結合領域との間にリンカー領域を含む。リンカー領域は、6~18アミノ酸の長さ、好ましくは9~15アミノ酸の長さ、更により好ましくは12アミノ酸の長さを有するポリペプチドからなり得る。好ましくは、リンカー領域は、アミノ酸配列(i)(XXX)n(式中、各Xが独立してG、A又はSであり得る)、好ましくはアミノ酸配列(GGS)n(式中、nが配列XXXの繰り返し数に対応し、好ましくはnが2、3、4、5又は6である)、又は(ii)XGLNGXNGGS(配列番号36)(式中、XはN又はKであり、XはA又はVであり、XはY又はCであり、XはK又はQである)を含むか、又はそれからなる。かかるリンカー領域の非限定的な例は、配列番号29~35で提供される。
【0043】
特に好ましい実施形態では、本発明の治療的使用における使用のためのエンドリシンは、その配列が配列番号1に示される「H2B10」であるか、又はその配列が配列番号37に示される「H2B10B11」である。したがって、本発明は、細菌性膣炎の治療に使用するためのガードネレラ特異的エンドリシン、好ましくは組み換えガードネレラ特異的エンドリシンであって、抗生物質による治療に以前失敗した患者、及び/又は感染性細菌が抗生物質治療に耐性である細菌性膣炎に罹患している患者に投与されるものであり、配列番号1で提供されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドであり、ガードネレラに対する死滅活性を有する、エンドリシンを提供する。一つのより好ましい実施形態では、本発明は、細菌性膣炎の治療に使用するためのガードネレラ特異的エンドリシン、好ましくは組み換えガードネレラ特異的エンドリシンであって、抗生物質による治療に以前失敗した患者、及び/又は感染性細菌が抗生物質治療に耐性である細菌性膣炎に罹患している患者に投与されるものであり、配列番号1で提供されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するポリペプチドであり、ガードネレラに対する死滅活性を有する、エンドリシンを提供する。一つのより更に好ましい実施形態では、本発明は、細菌性膣炎の治療に使用するためのガードネレラ特異的エンドリシン、好ましくは組み換えガードネレラ特異的エンドリシンであって、抗生物質による治療に以前失敗した患者、及び/又は感染性細菌が抗生物質治療に耐性である細菌性膣炎に罹患している患者に投与されるものであり、配列番号1で提供されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドであり、ガードネレラに対する死滅活性を有する、エンドリシンを提供する。一つのより更に好ましい実施形態では、本発明は、細菌性膣炎の治療に使用するためのガードネレラ特異的エンドリシン、好ましくは組み換えガードネレラ特異的エンドリシンであって、抗生物質による治療に以前失敗した患者、及び/又は感染性細菌が抗生物質治療に耐性である細菌性膣炎に罹患している患者に投与されるものであり、配列番号1で提供されるアミノ酸配列と少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチドであり、ガードネレラに対する死滅活性を有する、エンドリシンを提供する。最も好ましい一実施形態では、本発明は、細菌性膣炎の治療に使用するためのガードネレラ特異的エンドリシン、好ましくは組み換えガードネレラ特異的エンドリシンを提供し、エンドリシンは、以前に抗生物質による治療に失敗した患者、及び/又は感染性細菌が抗生物質治療に耐性である細菌性膣炎に罹患している患者に投与されるものであり、かかるエンドリシンは、配列番号1で提供されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。配列番号37で提供されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなるエンドリシンはまた、本発明の文脈において、すなわち、細菌性膣炎の治療における(組み換え)ガードネレラ特異的エンドリシンの医学的使用の文脈において、使用され得、エンドリシンは、以前に抗生物質による治療に失敗した患者及び/又は感染性細菌が抗生物質治療に耐性である細菌性膣炎に罹患している患者に投与されるものである。したがって、配列番号37で提供されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなるエンドリシンは、配列番号1で提供されるガードネレラ特異的エンドリシンの代替物である。
【0044】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、「タンパク質」及びこれらの用語の変形は、例えば、等配電子ペプチドの場合のように、正常又は修飾ペプチド結合によって互いに連結された少なくとも2つのアミノ酸を含む、ペプチド、オリゴペプチド、オリゴマー又は融合タンパク質を含むタンパク質をそれぞれ指す。これらの用語にはまた、本明細書において、非ペプチド構造要素を含有するペプチド類似体として定義される「ペプチド模倣体」が含まれ、かかるペプチドは、天然親ペプチドの生物学的作用(複数可)を模倣又は拮抗することができる。ペプチド模倣体は、酵素的に切断可能なペプチド結合などの古典的なペプチド特性を欠く。ペプチド又はポリペプチドは、遺伝子コードによって定義される20アミノ酸以外のアミノ酸から構成され得る。それは、L-アミノ酸及び/又はD-アミノ酸から構成され得る。ペプチド又はポリペプチドは、同様に、翻訳後成熟プロセスなどの天然プロセスによって、又は当業者に周知である化学プロセスによって修飾されたアミノ酸から構成され得る。かかる修飾は、文献に完全に詳述されている。これらの修飾は、ポリペプチド中のどこにでも、すなわちペプチド骨格中に、アミノ酸鎖中に、又はカルボキシ若しくはアミノ末端にさえ、出現し得る。ペプチド又はポリペプチドは、ユビキチン化後に分岐していてもよく、又は分岐を伴って若しくは伴わずに環状であってもよい。このタイプの修飾は、当業者に周知の天然又は合成の翻訳後プロセスの結果であり得る。例えば、ペプチド又はポリペプチド修飾は、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合固定、リピド又はリピド誘導体の共有結合固定、ホスファチジルイノシトールの共有結合固定、共有結合又は非共有結合架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル、ペグ化を含む糖鎖形成、水酸化、ヨード化、メチレーション、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセス、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セネロイル化(seneloylation)、硫酸化、アルギニル化又はユビキチン化などのアミノ酸付加を含むことができる。かかる修飾は文献に完全に詳述されており、当業者に周知である。
【0045】
本明細書で定義されるように、特定の細菌の細胞壁へのエンドリシンの結合能力を指す用語「結合する」及び「に結合する」は、かかる細菌の細胞壁に特異的に相互作用及び接着するかかるエンドリシンの能力を指す。細菌の細胞壁へのエンドリシンの結合能力は、当技術分野で公知の方法によって決定することができる。
【0046】
本明細書で使用される場合、「治療」及び「治療すること」などは、一般に、所望の薬理学的効果及び生理学的効果を得ることを意味する。効果は、疾患、その症状若しくは状態を予防若しくは部分的に予防することに関して予防的であってもよく、かつ/又は疾患、状態、症状若しくは疾患に起因する有害作用の部分的若しくは完全な治癒に関して治療的であってもよい。本明細書で使用される「治療する」という用語は、哺乳動物、特にヒトにおける細菌性膣炎の任意の治療を包含し、(a)細菌性膣炎にかかりやすい可能性があるが、それを有するとまだ診断されていない患者において細菌性膣炎が発生するのを予防すること、(b)細菌性膣炎を阻害すること、すなわち、その発症を阻止すること、又は細菌感染を緩和すること、すなわち、細菌感染及び/又はその症状若しくは状態の退行、例えば損傷の改善又は修復を引き起こすこと、を包含する。特に、細菌性膣炎の治療は、例えば、感染性細菌を死滅させ、したがって、細菌増殖を制御、低減又は阻害し、並びに生存細菌細胞の数を低減することによって、感染を予防、低減又は根絶することをも含む。本明細書において、疾患、すなわちBVは、疾患又は症状の部分的又は完全な治癒に関して治療的に治療されることが好ましい。
【0047】
「患者」及び「被験体」という用語は、本明細書において互換的に使用され、哺乳動物を指す。例えば、本発明によって企図される哺乳動物としては、ヒト、霊長類、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、実験用げっ歯類など)が挙げられる。患者はヒトであることが好ましい。患者が女性(本明細書では「女性対象」とも呼ばれる)であることが更により好ましい。
【0048】
「変異体」という用語は、天然アミノ酸配列に対して、非保存的又は好ましくは保存的な挿入、欠失、及び/又は置換を含むポリペプチドを指す。例えば、ポリペプチドは、天然アミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性、好ましくはかかるアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、更により好ましくは少なくとも95%の同一性、更により好ましくは少なくとも96%の同一性、更により好ましくは少なくとも97%の同一性、更により好ましくは少なくとも98%の同一性、更により好ましくは少なくとも99%の同一性、更により好ましくは少なくとも99.5%の同一性、最も好ましくは少なくとも99.7%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。同一性パーセントは、適切なコンピュータープログラム、例えば、MatGAT 2.0(Myers and Miller,CABIOS(1989))を使用して、当該分野で周知の方法によって決定され得る。好ましくは、同一性%は、比較される配列の全長にわたって同定される。同一性パーセントは、その配列が最適に整列されたポリペプチドに関して計算されることが理解される。アミノ酸配列のフラグメント及び改変体は、当該分野で周知のタンパク質工学、指向進化及び/又は部位特異的変異誘発の方法のいずれかを使用して作製され得る(例えば、Molecular Cloning:a Laboratory Manual,3 rd edition,Sambrook&Russell,2001,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照のこと)。当業者であれば、本発明によるポリペプチド、又はその断片、変異体、若しくは融合体が、天然アミノ酸配列の誘導体、又はその断片若しくは変異体を含み得るか、又はそれらからなり得ることを理解するであろう。1つ以上のアミノ酸の化学的誘導体は、官能性側鎖基との反応によって達成され得る。かかる誘導体化分子としては、例えば、遊離アミノ酸基が誘導体化されて、アミン塩酸塩、p-トルエンスルホニル基、カルボキシベンゾキシ基、t-ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基又はホルミル基を形成している分子が挙げられる。遊離カルボキシル基は、誘導体化されて、塩、メチル及びエチルエステル又は他のタイプのエステル及びヒドラジドを形成することができる。遊離ヒドロキシル基は、誘導体化されて、0-アシル又は0-アルキル誘導体を形成することができる。20種の標準アミノ酸の天然に存在するアミノ酸誘導体を含有するペプチドも化学誘導体として含まれる。例えば、プロリンを4-ヒドロキシプロリンで置換してもよい。5-ヒドロキシリジンは、リジンの代わりに置換されてもよい。ヒスチジンの代わりに、3-メチルヒスチジンを使用してもよい。ホモセリンはセリンと置換され得、オルニチンはリジンと置換され得る。誘導体はまた、必要な活性が維持される限り、1つ以上の付加又は欠失を含むペプチドを含む。他の包含される修飾は、アミド化、アミノ末端アシル化(例えば、アセチル化又はチオグリコール酸アミド化)、末端カルボキシルアミド化例えば、アンモニア又はメチルアミンによるなどの末端修飾である。ペプチド模倣化合物もまた有用であり得ることが、当業者によって更に理解される。したがって、「ポリペプチド」には、エンドリシン活性を示すペプチド模倣化合物が含まれる。「ペプチド模倣体」という用語は、治療剤としての特定のポリペプチドの立体構造及び望ましい特徴を模倣する化合物を指す。
【0049】
本発明による使用のためのエンドリシン、又はその断片、変異体、融合体、若しくは誘導体の産生のための方法は、当技術分野において周知である。好都合には、本発明の使用のためのエンドリシン、又はその断片、変異体、融合体若しくは誘導体は、組み換えエンドリシンであるか、又は組み換えエンドリシンを含む。本発明による使用のためのエンドリシンは、本明細書に記載されるようなエンドリシンをコードするポリヌクレオチドを含む組み換えベクターの使用を含む遺伝子操作の標準的な技術によって産生することができる。細菌プラスミド及び誘導ベクター、トランスポゾン、酵母エピソーム、挿入エレメント、酵母染色体エレメント、バキュロウイルスなどのウイルス、SV40などのパピローマウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、キツネポックスウイルス、仮性狂犬病ウイルス、レトロウイルス、コスミド又はファージミド誘導体を含む多数の発現系を使用することができる。ヌクレオチド配列は、例えば、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,Sambrook et al.,4 th Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,2001に記載されているような当業者に周知の方法によって組み換え発現ベクターに挿入することができる。組み換えベクターは、エンドリシンをコードするポリヌクレオチドの調節、発現、転写、及び/又は翻訳を制御するヌクレオチド配列を含むことができ、これらの配列は、使用される宿主細胞に従って選択される。組み換えベクターは、精製工程を容易にするために、Hisタグをコードするものなどのヌクレオチド配列を更に含むことができる。続いて、かかる組み換えベクターは、BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,Davis basic methods in molecular biology,Davisら、第2版、McGraw-Hill Professional Publishing,1995、及びMOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL(前出)に記載される方法(例えば、リン酸カルシウムによるトランスフェクション、DEAEデキストランによるトランスフェクション、トランスフェクション、マイクロインジェクション、カチオン性脂質によるトランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入又は感染))に従って宿主細胞に導入される。宿主細胞は、例えば、大腸菌などの細菌細胞、酵母菌などの真菌細胞、及びアスペルギルス、ストレプトマイセスの細胞、昆虫細胞、チャイニーズ・ハムスター・卵巣細胞(CHO)、C127マウス細胞株、シリアンハムスター細胞のBHK細胞株、ヒト胎児腎臓293(HEK 293)細胞であり得る。好ましくは、宿主細胞は大腸菌である。次いで、かかる宿主細胞は、本明細書に記載されるエンドリシンを産生するように適切な条件で培養され、次いで、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)を含む任意の標準的な精製方法によって、培地又は宿主細胞溶解物から更に生成することができる(Block et al.2008,Protein Expr.Purif.27:244.254)。
【0050】
本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンは、好ましくは、低い又は観察可能でない耐性プロファイルを示す。抗菌剤に対する細菌の耐性は、本明細書に記載され、当業者に知られているアッセイによって測定することができる。
【0051】
本発明の治療的使用において使用されるエンドリシンは、組成物、例えば、本発明の使用のための本明細書に記載のエンドリシンを含む医薬組成物として提供することができる。したがって、本発明はまた、本明細書に記載のガードネレラ特異的エンドリシン、好ましくは組み換えガードネレラ特異的エンドリシンと、任意選択で薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤とを含む、本明細書に記載の細菌性膣炎の治療に使用するための医薬組成物を提供する。
【0052】
「医薬組成物」という用語は、有効成分の生物学的活性が明確に有効となるような形態であり、かつ、当該組成物が投与される患者にとって有毒となる追加成分を含まない製剤を指す。本明細書で使用される場合、「医薬組成物」は、本発明の方法における使用のための治療的に有効な処方物を意味する。本明細書で使用される「治療有効量」又は「有効量」又は「治療的に有効」は、所与の状態及び投与レジメンに対して治療効果を提供する量を指す。これは、必要とされる添加剤及び希釈剤、すなわち担体又は投与ビヒクルと関連して所望の治療効果を生じるように計算された活性物質の所定量である。更に、それは、宿主の活性、機能及び応答における臨床的に有意な欠損を減少させ、最も好ましくは予防するのに十分な量を意味することが意図される。あるいは、治療有効量は、宿主における臨床的に有意な状態の改善を引き起こすのに十分である。当業者によって理解されるように、化合物の量は、その比活性に依存して変化し得る。適切な投与量には、必要な希釈剤と組み合わせて所望の治療効果を生み出すように計算された所定量の活性組成物が含まれ得る。本発明の組成物の製造のための方法及び使用において、治療有効量の活性成分が提供される。治療有効量は、当技術分野において周知であるように、年齢、体重、性別、状態、合併症、他の疾患などの患者の特徴に基づいて、通常の熟練した医学又は獣医学従事者によって決定することができる。本発明の使用の一実施形態では、医薬組成物は、組み換えガードネレラ特異的エンドリシンを含む本明細書において上記に記載され、本明細書において上記に記載された細菌性膣炎の治療における使用のためのものである。したがって、医薬組成物は、かかる細胞に感染しているか、又は感染しやすい本明細書で上述した患者において、ガードネレラ属の細胞の増殖を少なくとも部分的に阻害するのに十分な量のエンドリシン、又はその断片、変異体、融合体若しくは誘導体を含み得る。好ましくは、医薬組成物は、本明細書において上記で定義されたように治療される患者におけるガードネレラ属の細胞を死滅させるのに十分な量のエンドリシン、又はその断片、変異体、融合体若しくは誘導体を含む。本発明に従って使用されるエンドリシンは、一般に、意図される投与経路及び標準的な薬務に関して選択される適切な薬学的賦形剤、希釈剤又は担体と混合して投与されることが当業者によって理解されるであろう(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,19 th edition,1995,Ed.Alfonso Gennaro,Mack Publishing Company,Pennsylvania,USAを参照)。例えば、エンドリシンは、局所的に、すなわち、女性対象の膣内に局所的に投与することができ、及び/又は男性対象では、陰茎亀頭、包皮又は尿道入口の中又は上に投与することができる。本明細書において、「陰茎亀頭内又は陰茎亀頭上への(投与)」という用語は、「陰茎亀頭内及び陰茎亀頭上への(投与)」も含む。これに従い、「男性対象の陰茎亀頭、包皮又は尿道入口の中又は上への(投与)」という用語は、「男性対象の陰茎亀頭、包皮及び尿道入口の中又は上への(投与)」も含む。別の実施形態では、エンドリシンは、膣のpHを調整する化合物又は組成物と共投与することができる。一部の実施形態では、化合物又は組成物は、膣のpHをpH 4.0~6.0、好ましくはpH 5.0に調整する。
【0053】
「薬学的に許容される」という用語は、生物学的に又は他の点で望ましくないものではない材料から構成される担体を指す。
【0054】
「担体」という用語は、活性薬剤以外の医薬製剤中に存在する任意の成分を指し、したがって、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、充填剤、着色剤、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、保存剤などを含む。
【0055】
本発明の使用のための組成物は、1つ以上のエンドリシンポリペプチドを含有することができる。この実施形態では、エンドリシンポリペプチドは、独立したポリペプチドとして、又はかかるエンドリシンポリペプチド若しくはその断片を含む融合タンパク質として存在することができる。
【0056】
本発明の使用のための医薬組成物は、1つ以上の薬学的に受容可能な更なる成分(例えば、ミョウバン、安定剤、抗菌剤、緩衝剤、着色剤、矯味矯臭剤、アジュバントなど)を更に含み得る。本発明の使用のための医薬組成物は、イミダゾールを含まないことが好ましい。
【0057】
本明細書で提供される医療用途及び治療方法のためのガードネレラ特異的エンドリシン、好ましくは組み換えガードネレラ特異的エンドリシンは、従来使用されているアジュバント、担体、希釈剤又は賦形剤と一緒に、医薬組成物及びその単位用量の形態にすることができ、かかる形態では、錠剤若しくは充填カプセルなどの固体、又は溶液、懸濁液、エマルジョン、エリキシル若しくはそれらを充填したカプセルなどの液体として、すべて経口使用のために、又は局所(膣内を含む)使用のための坐剤の形態で使用することができる。更に、他の投与手段も本発明の文脈において企図される。かかる手段は、とりわけ非経口投与を含み得る。また局所及び/又は局部投与のための医薬組成物、例えば、(局所)ゲル、ローション若しくはクリームの形態の医薬組成物、又はペッサリー、すなわち腟坐薬を介する医薬組成物も企図される。かかるペッサリー/腟坐薬は、本明細書に記載されるように、ガードネレラ特異的エンドリシン、好ましくは組み換えガードネレラ特異的エンドリシンでコーティングされ得る。医薬組成物及びその単位剤形は、追加の活性化合物又は成分の有無にかかわらず、従来の割合で成分を含むことができ、かかる単位剤形は、使用される意図された1日用量範囲に見合った任意の適切な有効量の活性成分を含有することができる。本発明の使用のための組成物は、水性又は油性懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップ、及びエリキシルを含むがこれらに限定されない液体製剤であってもよい。組成物は、使用前に水又は他の適切なビヒクルで再構成するための乾燥製品として製剤化されてもよい。かかる液体調製物は、懸濁化剤、乳化剤、非水性ビヒクル及び保存剤を含むがこれらに限定されない添加剤を含有し得る。懸濁化剤としては、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル、及び水素化食用脂が挙げられるが、これらに限定されない。乳化剤としては、レシチン、ソルビタンモノラウレート及びアカシアが挙げられるが、これらに限定されない。非水性ビヒクルとしては、食用油、アーモンド油、分画ヤシ油、油性エステル、プロピレングリコール、及びエチルアルコールが挙げられるが、これらに限定されない。防腐剤としては、p-ヒドロキシ安息香酸メチル又はプロピル及びソルビン酸が挙げられるが、これらに限定されない。更なる材料並びに加工技術などは、Part 5 of Remington’s「The Science and Practice of Pharmacy」,22 nd Edition,2012,University of the Sciences in Philadelphia,Lippincott Williams&Wilkinsに記載されている。
【0058】
本発明の使用のための固体組成物は、従来の様式で製剤化された錠剤又はロゼンジの形態であり得る。錠剤は、当技術分野で周知の方法に従ってコーティングされ得る。注射可能な組成物は、典型的には、注射可能な滅菌生理食塩水若しくはリン酸緩衝化生理食塩水、又は当該分野で公知の他の注射可能な担体に基づく。
【0059】
本発明の使用のための組成物はまた、坐剤として処方され得、これは、坐剤基剤(ココアバター又はグリセリドが挙げられるが、これらに限定されない)を含み得る。本発明の組成物はまた、クリーム、軟膏、ローション、ペースト、薬用プラスター、パッチ、又は膜を含むがこれらに限定されない水性又は非水性ビヒクルを含む経皮製剤に製剤化され得る。本発明の使用のための組成物はまた、注射又は持続注入によるものを含むがこれらに限定されない非経口投与のために製剤化され得る。注射用製剤は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、又はエマルジョンの形態であってもよく、懸濁化剤、安定化剤、及び分散剤を含むがこれらに限定されない製剤化剤を含有してもよい。組成物はまた、適切なビヒクル(発熱物質を含まない滅菌水が挙げられるが、これに限定されない)で再構成するための粉末形態で提供され得る。
【0060】
本発明の使用のための組成物はまた、デポー調製物として処方され得、これは、移植又は筋肉内注射によって投与され得る。組成物は、適切なポリマー材料若しくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)、イオン交換樹脂を用いて、又は難溶性誘導体として(例えば、難溶性塩として)製剤化され得る。
【0061】
本発明の使用のための化合物はまた、持続放出形態で、又は持続放出薬物送達系から投与され得る。代表的な持続放出材料の説明もまた、Remington’s「The Science and Practice of Pharmacy」に見出すことができる。
【0062】
また、本発明によって提供されるのは、患者における本明細書中上記の細菌性膣炎を治療する方法であって、該患者は、以前に抗生物質による治療に失敗した患者及び/又は細菌性膣炎に罹患している患者であって、感染性細菌が抗生物質治療に耐性である患者であり、かかる方法は、かかる患者に、治療有効量のガードネレラ-特異的エンドリシン、好ましくは本明細書に記載されるような組み換え体ガードネレラ特異的エンドリシン、又は、ガードネレラ-特異的エンドリシン、好ましくは本明細書に記載の組み換えガードネレラ特異的エンドリシンを含む医薬組成物を、投与することを含む。
【0063】
本発明による治療的使用について本明細書において上記に記載される実施形態及び定義は、BVを治療する方法の前後関係において必要な変更を加えて適用される。
【0064】
本発明の使用の一実施形態では、宿主細胞又は宿主細胞を含む薬理学的組成物は、エンドリシン(好ましくは宿主細胞)を送達するために使用される。
【0065】
本明細書に記載される使用のためのエンドリシン及び医薬組成物は、1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて対象に投与され得ることが理解されるであろう。例えば、本明細書に記載されるエンドリシン及び医薬組成物は、以下のものとの組み合わせで対象に投与され得る:
(a)1つ以上の従来の抗生物質治療:かかる抗生物質には、クリンダマイシン、メトロニダゾール、又は当業者に知られている任意の他の適切な抗生物質が含まれ得る;
(b)1つ以上の追加のエンドリシン、又はそれを発現することができる核酸分子、ベクター、宿主細胞若しくはバクテリオファージ;
(c)膣のpHを、好ましくはpH 4.0~6.0、より好ましくは約pH 5.0に調整する化合物又は組成物;かかるpH調整化合物には、リン酸塩、乳酸(例えば、酸性環境を確立するために分泌する天然の酸性化物質)又は他の有機酸、例えばカルボキシ置換ポリマーが含まれ得る;
(d)膣内でのG.vaginalis細胞の細菌溶解の際に放出される毒素を中和するための療法;適切な中和療法には、抗体(Babcock et al.,2006,Infect.Immun.74:6339-6347を参照)及びトレバマーなどの毒素吸収剤(Barker et al.,2006,Aliment.Pharmacol.Ther.24:1525.1534を参照)が含まれ得る、
(e)プロバイオティクス。
【0066】
本発明は、以下の非限定的な図面及び実施例を参照することによって更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図面は以下を示す:
図1】MDZ、CLI、及びPM-477(H2B10)による、代表的なガードネレラ株のバイオフィルムCFUの減少(G.バギナリスATCC14018)である。 図1は、バイオフィルム中で増殖したG.バギナリス(ATCC14018)が、MDZ及びPM-477(H2B10)によって根絶することができるが、CLI処理によっては根絶することができないことを示す。バイオフィルムを40時間増殖させ、次いで、示された抗菌剤と共に更に24時間インキュベートした。分析のために、抗菌剤を洗い流し、バイオフィルムを機械的に除去し、生存細胞を定量的プレーティングによって計数した(CFU/mL)。LOD:検出限界。略語:ctrl:対照、培地のみ。LOD:検出限界。
【0068】
図2】連続継代による耐性形成である。 図2は、凡例に示されるように、MIC以下濃度のMDZ又はMDZ-OHの存在下で、6つのガードネレラ株が25日間まで継代されたことを示す。1つの代表的なガードネレラ株を、図の説明文に示すように、PM-477(H2B10)と共に25日間継代した。MIC(μg/mL)を、継代の次のラウンドの前に毎日決定した。
【0069】
図3】懸濁液中の野生型細胞及びMDZ継代G.バギナリス(ATCC 14018)細胞に対するMDZ及びPM-477(H2B10)の溶解効果である。 図3は、MDZに対してナイーブな野生型細胞、及びMIC未満の濃度のMDZで25ラウンド継代した株を、それぞれMDZ(A)及びPM-477(H2B10)(B)で1、5及び24時間処理したことを示す。略語:ctr:対照、培地のみ;LOD:検出限界。
【0070】
図4-1】バイオフィルムとして増殖させたMDZ継代株は、MDZに耐性であり、PM-477(H2B10)に感受性である。 図4は、72時間前形成されたバイオフィルムが、x軸上に示されるように、異なる濃度のMDZ(A)及びPM-477(H2B10)(B)で24時間処理され、生存細胞が定量化されたことを示す。略語:ctr:対照、培地のみ;LOD:検出限界。MDZ-OH:ヒドロキシメトロニダゾール。数字は、MIC未満の濃度のMDZ又はMDZ-OHを用いた継代のラウンドを示す。
図4-2】バイオフィルムとして増殖させたMDZ継代株は、MDZに耐性であり、PM-477(H2B10)に感受性である。 図4は、72時間前形成されたバイオフィルムが、x軸上に示されるように、異なる濃度のMDZ(A)及びPM-477(H2B10)(B)で24時間処理され、生存細胞が定量化されたことを示す。略語:ctr:対照、培地のみ;LOD:検出限界。MDZ-OH:ヒドロキシメトロニダゾール。数字は、MIC未満の濃度のMDZ又はMDZ-OHを用いた継代のラウンドを示す。
【0071】
図5】H2B10B11の溶解効果は、MDZ耐性ガードネレラ単離株で維持される。 ガードネレラBV患者単離株(n=18)のパネルに対して決定されたH2B10B11及びMDZのMIC及びMBC99.5値を示す。H2B10B11のMBC99.5は1つの株について分析することができず、別の株の増殖は低すぎてMDZのMICを決定することができなかった(n=17)。両方の抗菌剤について、同じ株を試験した。ボックス(25~75パーセンタイル)及びウィスカー(10~90パーセンタイル)を示し、メジアンは線として示し、ウィスカーの下及び上のデータ点は円として示す。MDZの耐性の区切り点を線(32μg/mL)として示す。ULOQを超える値は、16μg/mL(H2B10B11)及び4096μg/mL(MDZ)として任意に表示する。略語:LLOQ:定量下限。ULOQ:定量化の上限。
【0072】
図6】種々の起源のガードネレラBV患者単離物は、H2B10B11に感受性である。 図6は、表1に記載されているように受け取った、又は社内で単離された、ガードネレラBV患者単離物に対して決定されたH2B10B11のMIC及びMBC99.5値を示す。分析した株の数nをグラフの右側に示す。成長の速い株のサブセットについてのMICを48時間後に決定した。大部分の臨床単離株はpH 5.5ではほとんど増殖しないため、大部分の株のMICを72時間後に決定した。ボックス(25~75パーセンタイル)及びウィスカー(10~90パーセンタイル)を示し、メジアンは線として示し、ウィスカーの下及び上のデータ点は円として示す。ULOQを超える値は、16μg/mLとして表示する。略語:LLOQ:定量下限。ULOQ:定量化の上限。 以下の実施例は、本発明を更に例証する。
【0073】
概要
抗生物質は、細菌性膣炎(BV)の治療の主力である。しかしながら、再発性BVの患者における治療失敗率は約50%である。本明細書において、本発明者らは、メトロニダゾール(MDZ)、クリンダマイシン(CLI)及びPM-477(H2B10)、すなわちガードネレラ属の細菌に対して特異性を有する遺伝子操作されたエンドリシン、の耐性形成及びバイオフィルム活性の傾向を含む、治療失敗の潜在的な機構を調査した。最小阻止濃度(MIC)の決定から、4つの異なる種の22個のガードネレラ単離株のパネルの60%がMDZに耐性であり、一方、全ての株がCLI及びエンドリシンPM-477(H2B10)に対して高度に感受性であることが示された。同様の結果が、BV患者の膣スワブからの18個のガードネレラ単離株のパネルで得られ、そのうちの10個は、MDZに耐性であったが(MIC>32μg/mL)、4~8μg/mLのエンドリシンH2B10B11によって阻害された(MIC90=4.4μg/mL)。
【0074】
最初にMDZに対して感受性であった6つの株を、MDZ又はそのより強力なヒドロキシ代謝産物と共に継代した。それらの全ては、5~10継代後に完全な耐性を生じ、MIC>512μg/mLをもたらした。対照的に、PM-477(H2B10)では、MICの軽度の増加しか見られなかった。MDZ耐性ガードネレラ株は、懸濁液及び予め形成されたバイオフィルムの両方においてPM-477(H2B10)に対して高い感受性のままであったため、交差耐性の形成もなかった。懸濁液中のMDZに耐性であった株はまた、バイオフィルムとして増殖する場合、>2048μg/mLのMDZに対して耐性であった。全ての株は、1~4μg/mLの範囲の最小バイオフィルム根絶濃度(MBEC)で、予め形成されたバイオフィルムとして増殖させた場合、PM-477(H2B10)に対して感受性であった。驚くべきことに、CLIのMBECは、9つの試験されたガードネレラ株のうち7つについて>512μg/mLであり、それらの全ては、懸濁液中で増殖する場合にCLIに対して感受性であった。バイオフィルムに対する耐性形成及び無効性に起因するMDZ及びCLIの観察された課題は、それぞれ、単純性又は再発性BVにおける頻繁な治療失敗の1つの説明であり得る。したがって、インビトロバイオフィルムにおけるガードネレラの除去におけるPM-477(H2B10)の高い有効性、並びに耐性形成に対するその高い復元力は、PM-477(H2B10)を、特に頻繁な再発を有する患者における細菌性膣炎の治療のための有望な代替物にするものである。更に、本発明者らは、異なる地理的起源並びにいくつかの型の株由来の合計104個のガードネレラ単離株に対するH2B10B11のMICを調べたが、H2B10B11に対するそれらの感受性に有意差は見出されなかった。
【0075】
材料及び方法
細菌単離物及び培養条件
異なる種のガードネレラspp.単離株(すなわちG.バギナリス・センス・ストリクト、G.レオポルジイ、G.ピオチイ及びG.スウィドシンスキイ、cf.Vaneechoutte et al.,2019,Int.J.Syst.Evol.Microbiol.69,679-687)は、Laboratory of Bacteriology,University of Ghent,Belgiumから入手した。これらの単離株には、培養コレクションから購入した株及びUniversity Clinic Brugesから得たBV患者からの新鮮な単離株が含まれる。ガードネレラ単離株を、嫌気性雰囲気生成バッグ(Sigma Aldrich)を備えた嫌気性チャンバ内で、嫌気性条件下でチョコレート(Choc)寒天プレート(Becton Dickinson)上で48時間増殖させた。全ての単離物を、10%ウマ血清(HS)(Thermo Fisher Scientific)を補充した、10mM HEPES(Sigma Aldrich)、15g/Lプロテオースペプトン(Sigma Aldrich)、3.8g/L酵母抽出物(Thermo Fisher Scientific)、86mM塩化ナトリウム(Carl Roth)、28mMα-D-グルコース(Sigma Aldrich)からなるNew York City broth III(NYCB)中で培養した。表1は、試験した全てのガードネレラ単離株を列挙する。実施可能要件を満たすために述べると、ガードネレラ属の各同定された種、すなわちG.バギナリス・センス・ストリクト、G.レオポルジイ、G.ピオチイ及びG.スウィドシンスキイ(Vanechoutte et al.,2019,Int.J.Syst.Evol.Microbiol.69,679-687の命名法に従う)の少なくとも1つの株は、当業者が公的なものを入手できる。これらの公的に入手可能な株は、対応するガードネレラ種についての型株(T)として「T」を用いて以下の表1において同定される。例示的な例として、ATCC 14018は、公的に入手可能なタイプのG.バギナリス・センス・ストリクトの株であり、UGent 18.01は、公的に入手可能なタイプのG.ピオチイの株であり、UGent 06.41及びUGent 09.48は、両方とも公的に入手可能なタイプのG.レオポルジイの株あり、GS 9838-1は、公的に入手可能なタイプのG.スウィドシンスキイの株である。当業者には明らかなように、それぞれの種からの他の細菌株も使用することができる。更に、更なるガードネレラ株を、いくつかの医療センター、すなわち、Ghent(BE)、Vilnius(LT)、Vienna(AT)及びDurban(ZA)から受け取ったBV患者由来の膣スワブからの単離を介してから得た。全ての試料を、AZ St.Jan(Bruges,BE)、Lithuanian Bioethics Committee(LT)、Medical University in Vienna(AT)及びUniversity of KwaZulu-Natal(Durban,ZA)によるインフォームドコンセント及び倫理的承認の下で得た。スワブをChoc又はガードネレラ選択寒天プレート(両方ともBecton Dickinson)上にストリークした。個々のコロニーを採取し、Choc又はガードネレラ選択寒天プレート(両方ともBecton Dickinson)上に再ストリークし、プレートを37℃で48時間嫌気的にインキュベートし、単離及び再ストリークのプロセスを更に少なくとも2回繰り返すことによって、単一株を単離した。個々の株のこの精製後、グリセロール凍結ストックを調製し、株をMALDI-TOF MS(Bruker Biotyper)による同定に供した。この方法で、G.バギナリスはG.レオポルジイ及びG.スウィドシンスキイと区別することができたが、しかしながら、後者2つの区別を可能性にするものはない。また、G.ピオチイは、種レベルで同定できなかった。
【0076】
PM-477の調製(互換的に「H2B10」とも呼ばれる)
エンドリシンPM-477(H2B10、配列番号1)を、過去に報告されているように(Landlingerら、(2021 Pathogens10、1-19)及び国際公開第2020/225335 A1号パンフレット)操作及び産生した。エンドリシンH2B10B11は、結合ドメインの1つにおける1つのアミノ酸置換においてH2B10と異なる(配列番号37を参照されたい)。簡単に述べると、PM-477(H2B10)及びH2B10B11を大腸菌BL21(DE3)中で組み換え発現させた。ニッケル-ニトリロ三酢酸(Ni-NTA)HISTrapカラム上でのアフィニティークロマトグラフィーによってタンパク質精製を行った。タンパク質を50mM MES(Carl Roth)pH 7、150mM NaCl(Carl Roth)、150mM~500mMイミダゾール画分(2倍希釈)で溶出した。Landlingerらの研究(2021、Pathogens10、1-19)で使用された調製物と比較して、N末端Hisタグは、1:100 w/w 3Cプロテアーゼによる消化によって切断された。除去されたタグ及びプロテアーゼを、陰イオン交換クロマトグラフィーによってPM-477(H2B10)及びH2B10B11から分離した。タグ付けされていないタンパク質を濃縮し(必要に応じて)、MES緩衝液(50mM MES pH 5.5、200mM NaCl、8mM MgSO(Sigma Aldrich))に対して透析した。
【0077】
タンパク質濃度を、OD 260/280nmで、又はPierce(商標)BCA(ビシンコニン酸)タンパク質アッセイキット(Thermo Fisher Scientific)を使用することによって決定した。0.7mg/mLのPM-477(H2B10)又は1.3mg/mLのH2B10B11を含む1000μLの精製アリコートを、使用時まで-80℃で保存した。
【0078】
PM-477(H2B10)のアミノ酸配列を、配列番号1に示す。H2B10B11のアミノ酸配列を、配列番号37に示す。
【0079】
培養物ベースでの殺菌活性の評価
細菌懸濁液(OD600 0.1、約10~10CFU/mLに相当する)を、NYCB+10%HS、pH 5.5中に希釈することによって、細菌懸濁液を調製した。96ウェルプレートのウェル中で、10μLのエンドリシン(200μg/mL)を90μLの細菌懸濁液と混合することによって、反応を3連で行った。エンドリシンを含まない10μLのMES緩衝液を対照として使用した。96ウェル反応プレートを37℃で5時間嫌気的にインキュベートした。細胞反応混合物の10倍希釈系列(10-1~10-6)をNYCB+10%HS中で調製し、各希釈物2μLをChoc寒天プレート上にスポットした。37℃で48時間の嫌気性インキュベーションの後、コロニーを計数し、CFU/mLを計算し、MES緩衝液処理対照と比較したlog10減少を決定した。
【0080】
MIC評価
抗菌物質の活性の標準的な尺度である最小阻止濃度(MIC)を、臨床・検査標準協会プロトコル(2018)嫌気性細菌の抗菌剤感受性試験のための方法(Carpenter et al.,2018)に従って決定した。NYCB+10%HS中の10~10CFU/mLの細菌懸濁液を、開始濃度64μg/mLで試験したPM-477(H2B10)または抗生物質クリンダマイシン(塩酸クリンダマイシン、Sigma Aldrich)の2倍希釈系列、又はそれぞれ2048または512μg/mLで開始した抗生物質メトロニダゾール(MDZ、Gatt-Koller)及びそのヒドロキシ代謝物1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ヒドロキシ-メチル-5-ニトロイミダゾール(MDZ-OH、Sigma Aldrich)、又は128μg/mLで開始したチニダゾール(TDZ、Sigma Aldrich)の2倍希釈系列で処理した。抗微生物剤の非存在下での増殖についての対照も含めた。OD600を、37℃で48時間のインキュベーション後、又はいくつかの急速に増殖する株については24時間のインキュベーション後に、マイクロプレートリーダー(Tecan,Grodig,Austria)によって記録した。増殖の不在は、OD600≦0.14として定義した。図5及び図6に要約される臨床単離株の大部分は、pH 5.5でゆっくりかつ不十分に増殖したため、NYCB(pH 5に調整する代わりに約7の未調整pH)+10%HS中の一晩培養物を接種し、MIC決定のためのインプットとして使用した。MIC読み取り及びMBC99.5スポッティングを、H2B10B11についての72時間のインキュベーション後に行った。MBC99.5は、定義された検出限界まで懸濁液中の全ての細胞の細菌死をもたらし、細菌の少なくとも99.5%の死滅をもたらす抗菌剤の最小濃度である。MBC99.5を決定するために、MICプレート中の2μLの抗菌希釈系列及び細菌懸濁液をNYCB+10%HS寒天プレート上にスポットし、嫌気的に2~3日間37℃でインキュベートした。72時間のインキュベーション後に決定されたMIC結果を、以前に得られた結果とブリッジするために、その急速に増殖する株のサブセットについてのMICを、48時間のインキュベーション後に決定した(図6)。
【0081】
耐性形成プロファイリングのための連続継代
NYCB+10%HS中の10~10CFU/mLの細菌懸濁液を調製し、過去に報告されたように製造したエンドリシンPM-477(H2B10)(Landlinger et al.,2021,Pathogens 10,1-19)、本明細書で定義する改変を加えたPM-477(H2B10)、メトロニダゾール(MDZ、Gatt-Koller)、または1(2-ヒドロキシエチル)-2-ヒドロキシメチル-5-ニトロイミダゾール(MDZ-OH、Sigma Aldrich)のいずれかの2倍希釈系列で処理した。反応の最終体積は100μLであり、反応は384ウェルプレート中で3連で行った。OD600を、マイクロプレートリーダー(Tecan,Grodig,Austria)を使用して測定して、時点0時間ベースライン値を得た。反応物を嫌気的に24時間インキュベートし、次いでOD600を再び測定し、MICをOD600<0.14の最低濃度として測定した。増殖が検出された最高濃度の抗菌剤(「サブMIC」)で処理した細菌懸濁液を、10~10CFU/mLに希釈し、希釈系列の抗菌剤で新たに処理した。このプロセスを最大25ラウンド繰り返した。各ラウンドにおいて、インプットCFU/mLを定量的プレーティングによって決定した。
【0082】
バイオフィルム形成及びMBEC測定
ガードネレラspp.(株の詳細については図を参照されたい)を、2%(w/v)ゼラチン、0.5%イーストエキス(w/v)、0.1%デンプン(w/v)及び0.25%グルコース(w/v)(sBHIG)を補充したブレインハートインフュージョンブロス中に再懸濁した。継代した株を、1%グルコース(w/v)を補充した非緩衝化NYCB(sNYCB)に再懸濁した。OD600を0.1(約10~10CFU/mL)に設定し、細胞懸濁液を、バイオフィルム形成のためのインプットとして増殖培地中で1:10に希釈した。合計200μLのそれぞれの細菌懸濁液を96ウェル平底プレート(組織培養用に処理、Sigma-Aldrich)に添加した。バイオフィルムを、嫌気性条件下、37℃で、単離株に応じて40~72時間増殖させた。続いて、上清を除去し、バイオフィルムを、sBHIG(PM-477(H2B10)で処理する場合はpH 5、及び抗生物で処理する場合は非緩衝化)に溶解させた100μLの抗微生物剤で処理し、更に24時間37℃で嫌気的にインキュベートした。処理後、バイオフィルムを200μLの1×PBSで2回洗浄し、激しいピペッティング(40×上下)によって溶解させた。溶解した細胞の連続希釈物をチョコレート寒天プレート上にスポットした。プレートを嫌気的に2~3日間インキュベートし、使用中のエンドリシン又は抗生物質の最小バイオフィルム根絶濃度(MBEC)を計算した。
【0083】
統計解析
必要に応じて、統計的検定を適用する前に、データを対数正規化した(例えば、CFU/mL値について、図の凡例に示されるように)。2つの群のみを比較した場合、対応のない両側t検定をそれぞれの図の凡例に示されるように使用した。複数の群を両側一元配置ANOVA検定によって比較した。統計分析にはGraphPad Prism8ソフトウェアを使用した。p<0.05である場合、群間の差を統計的に有意であると見なした。
【0084】
実施例1:試験したガードネレラ型株及び患者単離株の59%は、MDZ耐性であるが、PM-477(H2B10)及びH2B10B11に対して高度に感受性である
MDZ、チニダゾール(TDZ)、CLI、及びPM-477(H2B10)の最小阻止濃度(MIC)を、嫌気的細菌についての臨床・検査標準協会(CLSI)プロトコル(Carpenter et al.,2018)に従って、22株のガードネレラについて決定した。グラム陽性嫌気性菌についてEUCASTによって定義される耐性ブレークポイントは、CLI及びMDZの両方について>4μg/mLである(EUCAST,2021)。しかしながら、局所抗生物質投与がBV療法に推奨され、これはmg/mL範囲の活性成分の濃度に到達することを可能にする。したがって、この実施例では、BVに関連する細菌について以前に記載されているように、CLI及びMDZそれぞれについて≧8μg/mL及び≧32μg/mLの耐性ブレークポイントを使用した(Petrinaら、2017年Anaerobe 47,115-119)。ガードネレラ株の抗菌剤PM-477(H2B10)、MDZ、CLI及びTDZに対する感受性を評価した。以下の表1に、各株について、MIC値及びMBC99.5値(処理の24時間以内にCFUを99.5%低減する最小濃度)を示す。略語:n.d.、測定せず、SJHB、St.Jan Hospital Bruges。
【表1】
【0085】
ガードネレラ型株及び患者単離株についてのMDZ、CLI及びPM-477(H2B10)の最小阻止濃度(MIC)を以下の表2に要約する。耐性は、MDZ及びCLIについてそれぞれ≧32μg/mL及び≧8μg/mLと定義される。MIC90は、試験株の90%についてのMIC値として定義される。PM-477(H2B10)については、耐性ブレークポイントは定義されておらず、したがって「%耐性」は定義されていない(n.d.)。
【表2】
【0086】
MDZについては、8から>256μg/mLの範囲のMICが観察され、株の90%についてのMIC値(MIC90)は256μg/mLを超えた。試験した22個の単離株のうち13個(59%)が、32μg/mL以上のMDZのMICを有していた。異なるガードネレラ株のMDZ耐性はG.バギナリスの25%からG.レオポルジイ及びG.スウィドシンスキイの100%まで変動した。MDZ及びTDZについてのMIC値は非常に類似しており、大部分は同じ単離株が耐性又は感受性であり、活性及び耐性形成の非常に類似した機構を示した。したがって、いかなる理論にも束縛されないが、株にわたる耐性状態がMDZ及びTDZについて同等であることが見出されるため、これらの知見は、セクニダゾールを含む全てのニトロイミダゾールについて当てはまることが予想される。対照的に、4つ全ての種の全てのガードネレラ株は、CLI(MIC90=0.5μg/mL、範囲<0.06~2μg/mL)並びにエンドリシンPM-477(H2B10)(MIC90=1μg/mL、範囲<0.03~1μg/mL)に対して高度に感受性であった。
【0087】
H2B10B11及びMDZのMIC及びMBC99.5を、BV患者の膣スワブからの18の自家単離ガードネレラ株で決定した(図5)。分析した単離株の大部分は、64μg/mLの中央値MIC及び1536μg/mLの中央値MBC99.5で、MDZに対して耐性であった(耐性のブレークポイント32μg/mL)。重要なことに、同じ単離株は、H2B10B11に対して高度に感受性であり、中央値MICは2μg/mL H2B10B11であり、中央値MBC99.5は8μg/mLであった。H2B10B11のMIC値は、72時間のインキュベーション後に決定し、これは、PM-477(H2B10)について上記で決定されたMICとは異なることに留意されたい。
【0088】
実施例2:MDZ、CLI及びPM-477(H2B10)によるバイオフィルム中のガードネレラ細胞の明確な死滅
ヒト膣上皮細胞を覆うガードネレラ優勢バイオフィルムは、現在、一般的にBVの顕著な特徴と考えられている。したがって、抗生物質及びPM-477(H2B10)が、様々なガードネレラ株のインビトロで予め形成させた40~72時間後のバイオフィルムにどのように浸透して死滅させるかを試験した。祖先(非継代)ガードネレラ単離株のMBEC値を以下の表3に示す。興味深いことに、ガードネレラ株は、懸濁液中のCLIに対してすべて高度に感受性であり(0.01~1μg/mLの範囲のMIC)、バイオフィルムとして増殖させた場合にCLIに対して耐性となり(表3及び図1)、MBECは最大≧512μg/mLである。MDZは、8~128μg/mLの範囲のMBECでLODを超えてバイオフィルムを除去したが、エンドリシンPM-477(H2B10)は、いずれの抗生物質よりも低いMBEC、すなわち、<2~32μg/mLでバイオフィルムとして増殖した6つ全てのガードネレラ株を死滅させることができた。MDZ、CLI、及びPM-477(H2B10)による、代表的なガードネレラ株(G.バギナリスATCC14018)のバイオフィルムCFUの減少を、図1に示す。
【表3】
【0089】
実施例3:最初はMDZに対して感受性であるガードネレラ種が、連続継代ラウンドで急速に耐性になる
最初はMDZに対して(G.バギナリスATCC14018、MIC 8μg/mL)又は少なくともより強力なMDZヒドロキシ代謝産物(MDZ-OH、2~16μg/mLの間のMIC、データは示さず)に対して、感受性であった6つのガードネレラ株を、増殖が損なわれるが完全には阻害されないように、MIC未満の濃度のMDZ又はMDZ-OH中で連続的に継代した。継代すると、MDZ及びMDZ-OH代謝産物の両方に対するMICが強く増加し、すべてのガードネレラ株が、5回の継代以内に≧32μg/mLの耐性ブレークポイントに達した(図2参照)。9ラウンドの継代後、6株のうち4株は、使用中の最大濃度(MIC>512μg/mL)によってさえ、もはや阻害することができなかった(図2)。これと並行して、G.バギナリス(ATCC 14018)をPM-477(H2B10)と共に25回継代した。PM-477(H2B10)のMICは、25回の継代にわたって8μg/mLまでわずかに増加しただけであった(図2)。
【0090】
実施例4:MDZ耐性を獲得した継代単離株は、依然としてPM-477(H2B10)感受性である
次に、MDZに対するガードネレラ細胞の耐性が、エンドリシンPM-477(H2B10)に対する感受性にどの程度影響を及ぼすかを試験した。MDZ上で25日間継代したG.バギナリス(ATCC 14018)を、異なる濃度のMDZ及びPM-477(H2B10)に1、5、及び24時間曝露し、次いで、Choc寒天プレート上に定量的にプレーティングすることによって、殺菌効果を評価した。MIC未満濃度のMZD又はMDZ-OHによる8~9回の継代の前後のガードネレラ株の感受性を以下の表4に示す。全てのMICをインキュベーションの48時間後に決定した。
【表4】
【0091】
祖先株については、MDZへの曝露時に生存率の明らかな投与量/時間依存性が存在する(図3A)。対照的に、MDZ上で継代されたG.バギナリス株は、生存率のいかなる損失も伴わずに、1時間及び5時間にわたって2mg/mLまでの非常に高濃度のMDZに耐えることができ、24時間にわたる2mg/mLでの処理は、緩衝液処理対照と比較して2 logの減少しかもたらさなかった。G.バギナリス(ATCC 14018)をPM-477(H2B10)に曝露したところ、感受性は祖先株及び継代株と同様であった(図3B)。1時間の処理の後、10μg/mLのPM-477(H2B10)は、祖先株及び継代株について、それぞれ3.0及び2.8 log単位だけ、10 CFU/mLの懸濁液を減少させた。また、PM-477(H2B10)のMIC値は、祖先株及びMDZ継代株について非常に類似していた(表4)。これは、MDZに対する獲得耐性がエンドリシンの作用様式を妨害しないことを示す。
【0092】
全てのMDZ又はMDZ-OH継代ガードネレラ株は、それらのそれぞれの非継代祖先と同様の厚さ及びCFU数のバイオフィルムを依然として形成することができた(データは示さず)。MDZ又はMDZ-OH上で継代されたガードネレラ株上のMDZのMBECは、6つ全ての継代株について>2048μg/mLであった(図4A)。これらのうち、1つのG.バギナリス株(ATCC 14018)は、最初、耐性ブレークポイント未満のMICを有していた。しかしながら、膣内MDZ(典型的には0.75%クリーム、すなわち7.5mg/mL)が膣液中でmg/mL範囲の濃度を確立することができることを考慮し、EUCASTブレークポイントを超えるMICを有する株も継代し、試験した(継代前MIC範囲8~256μg/mL、表4参照)。
【0093】
対照的に、全ての株は、PM-477(H2B10)に対して高度に感受性であり、MB ECは1~8μg/mLの範囲であった(図4B、表3)。
【0094】
実施例5:種々の起源のガードネレラBV患者単離物は、H2B10B11に感受性である
様々な地理的起源からの約100種のガードネレラ型株及び患者単離株のパネルに対するH2B10B11のMIC及びMBC99.5を、CLSIプロトコルに従って決定した。ほとんどの臨床単離株は増殖の乏しい株であったため、MICの反応プレートを72時間インキュベートした。急速に増殖する株のサブセット及びいくつかの追加の株について、MIC決定をインキュベーションの48時間後に実施して、結果を以前に評価されたMIC値と連携させた(図6)。合計で104のMICの異なる株について決定した(15株のMICは、48時間後及び72時間後の両方で決定した)。MIC及びMBC99.5値は両方とも、72時間後と比較して48時間後に読み出しを行った場合に1濃度低かった。「全ガードネレラ(72h)」にまとめられた株は、それらの地理的起源又はそれらの種に従ってサブグループ化した(2つの単離株は種レベルで同定することができず、これが種サブグループに現れていない理由であることに留意されたい)。各群における株の数をグラフの右側に示す。重要なことに、H2B10B11に対するアフリカ人及びヨーロッパ人のBV患者由来の単離株の感受性の間に有意差はなかった(単離株の供給源については材料及び方法の項を参照のこと)(log2変換データの対応のないt検定、p=0.1221)。同様に、G.バギナリスのMICとG.レオポルジイ/スウィドシンスキイのMICとの間に有意差はなかった。(log2変換データの対応のないt検定、p=0.5076)。
【0095】
【化1-1】
【化1-2】
【化1-3】
【化1-4】
【化1-5】
【化1-6】
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6
【配列表】
2025505758000001.xml
【国際調査報告】