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特表2025-505777抗IL-13RA2モノクローナル抗体およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】抗IL-13RA2モノクローナル抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20250220BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20250220BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20250220BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20250220BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20250220BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20250220BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20250220BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250220BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20250220BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250220BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250220BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250220BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K45/00
A61K47/68
A61K39/395 Y
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/02
A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024548393
(86)(22)【出願日】2023-02-15
(85)【翻訳文提出日】2024-10-11
(86)【国際出願番号】 CN2023076131
(87)【国際公開番号】W WO2023155796
(87)【国際公開日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2022/076606
(32)【優先日】2022-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524134546
【氏名又は名称】ラノバ メディシンズ デベロップメント カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リー, ルンシェン
(72)【発明者】
【氏名】ファン, ウェンタオ
(72)【発明者】
【氏名】リー, イーファン
(72)【発明者】
【氏名】ルオ, ジエ
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ジファン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA92Y
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC04
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA17
4C084NA13
4C084ZB11
4C084ZB26
4C084ZB27
4C085AA14
4C085AA26
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
前記ヒトインターロイキン13受容体サブユニットアルファ2(IL-13RA2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはそのフラグメントが提供される。これらの抗体は、IL-13RA2に高親和性で結合することができ、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介し、エンドサイトーシスを効果的に誘導することができる。がんおよび炎症性疾患を処置するための方法および使用も提供される。IL-13シグナル伝達は、複雑な受容体系を介して調節される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトインターロイキン13受容体サブユニットアルファ2(IL-13RA2)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはそのフラグメントであって、重鎖相補性決定領域CDRH1、CDRH2およびCDRH3を含む重鎖可変領域、ならびに相補性決定領域CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む軽鎖可変領域軽鎖を含み、
(a)前記CDRH1が、配列番号25のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH2が、配列番号26のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH3が、配列番号27のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL1が、配列番号28のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL2が、配列番号29のアミノ酸配列を含み、および
前記CDRL3が、配列番号30のアミノ酸配列を含む、
(b)前記CDRH1が、配列番号31のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH2が、配列番号32または49のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH3が、配列番号33のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL1が、配列番号34のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL2が、配列番号35のアミノ酸配列を含み、および
前記CDRL3が、配列番号36のアミノ酸配列を含む、
(c)前記CDRH1が、配列番号37のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH2が、配列番号38または50のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH3が、配列番号39または51のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL1が、配列番号40のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL2が、配列番号41のアミノ酸配列を含み、および
前記CDRL3が、配列番号42のアミノ酸配列を含む、あるいは
(d)前記CDRH1が、配列番号43のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH2が、配列番号44または52のアミノ酸配列を含み、
前記CDRH3が、配列番号45のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL1が、配列番号46のアミノ酸配列を含み、
前記CDRL2が、配列番号47のアミノ酸配列を含み、および
前記CDRL3が、配列番号48または53のアミノ酸配列を含む、抗体またはそのフラグメント。
【請求項2】
前記CDRH1が、配列番号25のアミノ酸配列を含み、前記CDRH2が、配列番号26のアミノ酸配列を含み、前記CDRH3が、配列番号27のアミノ酸配列を含み、前記CDRL1が、配列番号28のアミノ酸配列を含み、前記CDRL2が、配列番号29のアミノ酸配列を含み、および前記CDRL3が、配列番号30のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項3】
前記重鎖可変領域が、配列番号13および54~57からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、ならびに前記軽鎖可変領域が、配列番号14および58~61からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項4】
前記重鎖可変領域が配列番号54のアミノ酸配列を含み、および前記軽鎖可変領域が配列番号58のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項5】
前記CDRH1が、配列番号31のアミノ酸配列を含み、前記CDRH2が、配列番号32または49のアミノ酸配列を含み、前記CDRH3が、配列番号33のアミノ酸配列を含み、前記CDRL1が、配列番号34のアミノ酸配列を含み、前記CDRL2が、配列番号35のアミノ酸配列を含み、および前記CDRL3が、配列番号36のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項6】
前記CDRH2が、配列番号32のアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項7】
前記重鎖可変領域が、配列番号11および62~65からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、ならびに前記軽鎖可変領域が、配列番号12および66~69からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項8】
前記重鎖可変領域が配列番号62のアミノ酸配列を含み、および前記軽鎖可変領域が配列番号66のアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項9】
前記CDRH1が、配列番号37のアミノ酸配列を含み、前記CDRH2が、配列番号38または50のアミノ酸配列を含み、前記CDRH3が、配列番号39または51のアミノ酸配列を含み、前記CDRL1が、配列番号40のアミノ酸配列を含み、前記CDRL2が、配列番号41のアミノ酸配列を含み、および前記CDRL3が、配列番号42のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項10】
前記CDRH2が、配列番号38のアミノ酸配列を含み、および前記CDRH3が、配列番号39のアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項11】
前記重鎖可変領域が、配列番号19および70~73からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、ならびに前記軽鎖可変領域が、配列番号20および74~77からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項12】
前記重鎖可変領域が配列番号70のアミノ酸配列を含み、および前記軽鎖可変領域が配列番号74のアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項13】
前記CDRH1が、配列番号43のアミノ酸配列を含み、前記CDRH2が、配列番号44または52のアミノ酸配列を含み、前記CDRH3が、配列番号45のアミノ酸配列を含み、前記CDRL1が、配列番号46のアミノ酸配列を含み、前記CDRL2が、配列番号47のアミノ酸配列を含み、および前記CDRL3が、配列番号48または53のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項14】
前記CDRH2が、配列番号44のアミノ酸配列を含み、および前記CDRL3が、配列番号48のアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項15】
前記重鎖可変領域が、配列番号21および78~81からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、ならびに前記軽鎖可変領域が、配列番号22および82~85からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項16】
前記重鎖可変領域が配列番号79のアミノ酸配列を含み、および前記軽鎖可変領域が配列番号83のアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項17】
ヒト化されている、請求項1~16のいずれか一項に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項18】
ヒトインターロイキン13受容体サブユニットアルファ2(IL-13RA2)タンパク質に対する結合特異性を有し、かつ請求項1に記載の抗体もしくはそのフラグメントと同じ前記IL-13RA2タンパク質上のエピトープに結合するか、または前記IL-13RA2タンパク質への結合において請求項1に記載の抗体もしくはそのフラグメントと競合する、抗体またはそのフラグメント。
【請求項19】
抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介することができる、請求項1~18のいずれか一項に記載の抗体またはフラグメント。
【請求項20】
第2の標的タンパク質に対する結合特異性をさらに有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の抗体またはそのフラグメント。
【請求項21】
抗新生物剤にコンジュゲートされた請求項1~20のいずれか一項に記載の抗体またはそのフラグメントを含む、抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項22】
請求項1~20のいずれか一項に記載の抗体またはそのフラグメントと、薬学的に許容され得る担体とを含む、組成物。
【請求項23】
請求項1~20のいずれか一項に記載の抗体またはそのフラグメントをコードする1またはそれを超えるポリヌクレオチド。
【請求項24】
請求項23に記載の1またはそれを超えるポリヌクレオチドを含む、細胞。
【請求項25】
がんまたは炎症の処置を必要とする患者においてがんまたは炎症を処置する方法であって、請求項1~20のいずれか一項に記載の抗体またはそのフラグメントを前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項26】
がんまたは炎症を処置するための医薬を調製するための、請求項1~20のいずれか一項に記載の抗体またはそのフラグメントの使用。
【請求項27】
前記がんが、膀胱がん、肝臓がん、結腸がん、直腸がん、子宮内膜がん、白血病、リンパ腫、膵臓がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、乳がん、尿道がん、頭頸部がん、胃腸がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、腎臓がん、黒色腫、前立腺がんおよび甲状腺がんからなる群から選択される、請求項25に記載の方法または請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記炎症が感染または自己免疫疾患によって引き起こされる、請求項25に記載の方法または請求項26に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
分化抗原群213A2(CD213A2)としても知られるインターロイキン13受容体サブユニットアルファ2(IL-13RA2またはIL-13Rα2)は、IL13に結合する膜結合タンパク質である。他の受容体タンパク質とは異なり、IL-13RA2は短い細胞質ドメインを有し、シグナルメディエーターとして機能しないようである。しかしながら、このタンパク質は、IL-13およびIL-4の両方に直接結合しないにもかかわらず、これらの両方の効果を調節することができる。
【0002】
IL-13シグナル伝達は、複雑な受容体系を介して調節される。非造血細胞では、IL-13は、IL-4RαおよびIL-13 Rα1から構成されるヘテロ二量体受容体に会合する。IL-13 Rα1は低親和性でIL-13に結合する。しかし、IL-4Rαと複合体を形成する場合、それははるかに高い親和性で結合し、IL-13のエフェクター機能を誘導する。IL-13RA2は、IL-13Rα1と密接に関連している。
【0003】
IL-13RA2は、膵臓、卵巣、黒色腫および悪性神経膠腫を含む種々のがんにおいて過剰発現することが見出されている。高いIL-13RA2発現を有する細胞は、細胞外IL-13を迅速かつ効率的に枯渇させ得る。同様に、IL-13応答は、IL13RA2を欠くマウスにおいて増強される。したがって、IL-13RA2は、IL-13に対するデコイ受容体として作用することができ、IL-13に対するアンタゴニスト活性を誘発する。
【0004】
IL-13RA2は、膜結合型および可溶性型の両方で存在する。IL-13RA2のヒト可溶性形態は、マトリックスメタロプロテイナーゼ8による膜結合型の酵素的切断によって生成される。
【0005】
IL-13RA2の過剰発現も炎症に関連している。例えば、鼻ポリープ(NP)を有する患者では、IL-13RA2は、主要な病理学的特徴である気道炎症および異常なリモデリングに寄与し得る。
【発明の概要】
【0006】
概要
ヒトIL-13RA2タンパク質に対する高い結合親和性を有し、抗体依存性細胞傷害(ADCC)の媒介、細胞傷害の誘導、および細胞更新の促進において効率的である抗IL-13RA2抗体が本明細書で発見される。したがって、これらの抗体は、がんおよび炎症性疾患などの疾患の処置に好適に用いることができ、抗体-薬物コンジュゲートの標的担体として機能する。
【0007】
一実施形態では、ヒトIL-13RA2タンパク質に対する特異性を有する抗体またはそのフラグメントが提供される。いくつかの実施形態において、抗体またはそのフラグメントは、重鎖相補性決定領域CDRH1、CDRH2およびCDRH3を含む重鎖可変領域、ならびに相補性決定領域CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む軽鎖可変領域軽鎖を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記CDRH1は、配列番号25のアミノ酸配列を含み、前記CDRH2は、配列番号26のアミノ酸配列を含み、前記CDRH3は、配列番号27のアミノ酸配列を含み、前記CDRL1は、配列番号28のアミノ酸配列を含み、前記CDRL2は、配列番号29のアミノ酸配列を含み、および前記CDRL3は、配列番号30のアミノ酸配列を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記重鎖可変領域は、配列番号13および54~57からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、ならびに前記軽鎖可変領域は、配列番号14および58~61からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は配列番号54のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は配列番号58のアミノ酸配列を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記CDRH1は、配列番号31のアミノ酸配列を含み、前記CDRH2は、配列番号32または49のアミノ酸配列を含み、前記CDRH3は、配列番号33のアミノ酸配列を含み、前記CDRL1は、配列番号34のアミノ酸配列を含み、前記CDRL2は、配列番号35のアミノ酸配列を含み、および前記CDRL3は、配列番号36のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CDRH2は、配列番号32のアミノ酸配列を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記重鎖可変領域は、配列番号11および62~65からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、ならびに前記軽鎖可変領域は、配列番号12および66~69からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は配列番号62のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は配列番号66のアミノ酸配列を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記CDRH1は、配列番号37のアミノ酸配列を含み、前記CDRH2は、配列番号38または50のアミノ酸配列を含み、前記CDRH3は、配列番号39または51のアミノ酸配列を含み、前記CDRL1は、配列番号40のアミノ酸配列を含み、前記CDRL2は、配列番号41のアミノ酸配列を含み、および前記CDRL3は、配列番号42のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、前記CDRH2は、配列番号38のアミノ酸配列を含み、および前記CDRH3は、配列番号39のアミノ酸配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記重鎖可変領域は、配列番号19および70~73からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、ならびに前記軽鎖可変領域は、配列番号20および74~77からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は配列番号70のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は配列番号74のアミノ酸配列を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記CDRH1は、配列番号43のアミノ酸配列を含み、前記CDRH2は、配列番号44または52のアミノ酸配列を含み、前記CDRH3は、配列番号45のアミノ酸配列を含み、前記CDRL1は、配列番号46のアミノ酸配列を含み、前記CDRL2は、配列番号47のアミノ酸配列を含み、および前記CDRL3は、配列番号48または53のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、前記CDRH2は、配列番号44のアミノ酸配列を含み、および前記CDRL3は、配列番号48のアミノ酸配列を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記重鎖可変領域は、配列番号21および78~81からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、ならびに前記軽鎖可変領域は、配列番号22および82~85からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は配列番号79のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は配列番号83のアミノ酸配列を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、抗体またはフラグメントをコードするポリヌクレオチド、抗体またはフラグメントに基づく抗体-薬物コンジュゲート、および抗体またはそのフラグメントと薬学的に許容され得る担体とを含む組成物も提供される。
【0017】
疾患および症状を処置するための方法および使用も提供される。一実施形態では、本開示の抗体またはそのフラグメントを患者に投与することを含む、それを必要とする患者のがんまたは炎症を処置する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A図1A~Bは、A375細胞上のIL-13RA2に対するマウス抗体の結合親和性を示す。
図1B図1A~Bは、A375細胞上のIL-13RA2に対するマウス抗体の結合親和性を示す。
【0019】
図2A図2A~Bは、A375細胞上のIL-13RA2に対するラット抗体の結合親和性を示す。
図2B図2A~Bは、A375細胞上のIL-13RA2に対するラット抗体の結合親和性を示す。
【0020】
図3図3は、A375細胞上のIL-13RA2に対する特定のキメラ抗体の結合親和性を示す。
【0021】
図4図4は、キメラ抗体の抗体依存性細胞傷害(ADCC)を示す。
【0022】
図5図5は、キメラ抗体の殺細胞活性を示す。
【0023】
図6A図6A~Cは、キメラ抗体の国際化を示す。
図6B図6A~Cは、キメラ抗体の国際化を示す。
図6C図6A~Cは、キメラ抗体の国際化を示す。
【0024】
図7A図7A図7Jは、ヒト化抗体の結合親和性を示す。
図7B図7A図7Jは、ヒト化抗体の結合親和性を示す。
図7C図7A図7Jは、ヒト化抗体の結合親和性を示す。
図7D図7A図7Jは、ヒト化抗体の結合親和性を示す。
図7E図7A図7Jは、ヒト化抗体の結合親和性を示す。
図7F図7A図7Jは、ヒト化抗体の結合親和性を示す。
図7G図7A図7Jは、ヒト化抗体の結合親和性を示す。
図7H図7A図7Jは、ヒト化抗体の結合親和性を示す。
図7I図7A図7Jは、ヒト化抗体の結合親和性を示す。
図7J図7A図7Jは、ヒト化抗体の結合親和性を示す。
【0025】
図8A図8A~Bは、IL-13RA2過剰発現細胞株(A)および内在性神経膠腫細胞株(B)におけるヒト化抗体のADCCを示す。
図8B図8A~Bは、IL-13RA2過剰発現細胞株(A)および内在性神経膠腫細胞株(B)におけるヒト化抗体のADCCを示す。
【0026】
図9A図9A~Cは、選択されたヒト化抗体の国際化を示す。
図9B図9A~Cは、選択されたヒト化抗体の国際化を示す。
図9C図9A~Cは、選択されたヒト化抗体の国際化を示す。
【0027】
図10A図10A~Cは、ヒト化抗体を使用した抗体-薬物コンジュゲートのインビトロ細胞毒性を示す。
図10B図10A~Cは、ヒト化抗体を使用した抗体-薬物コンジュゲートのインビトロ細胞毒性を示す。
図10C図10A~Cは、ヒト化抗体を使用した抗体-薬物コンジュゲートのインビトロ細胞毒性を示す。
【0028】
図11A図11A~Bは、ヒト化抗体を使用した抗体-薬物コンジュゲートのインビボ細胞毒性を示す。
図11B図11A~Bは、ヒト化抗体を使用した抗体-薬物コンジュゲートのインビボ細胞毒性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
定義
用語「a(1つの、ある)」または「an(1つの、ある)」実体は、1つまたはそれを超えるその実体を指す。例えば、「1つの抗体(an antibody)」は、1つまたはそれを超える抗体を表すものと理解すべきである。従って、用語「a」(または「an」)、「1つまたはそれを超える(one or more)」、および「少なくとも1つの(at least one)」は、本明細書において、互換的に使用され得る。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチド(polypeptide)」は、単数の「ポリペプチド」、ならびに複数の「ポリペプチド」を包含することが意図されており、および、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって直鎖状に連結されたモノマー(アミノ酸)で構成される分子を指す。用語「ポリペプチド」は、2つまたはそれを超えるアミノ酸の任意の単数の鎖または複数の鎖を指し、その産物の特定の長さを指すものではない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、または2つまたはそれを超えるアミノ酸の単数の鎖または複数の鎖を指すために使用される任意の他の用語は、「ポリペプチド」の定義の中に含まれ、また、用語「ポリペプチド」は、これらの用語のいずれかの代わりに、またはこれらの用語のいずれかと互換的に使用され得る。用語「ポリペプチド」は、また、ポリペプチドの発現後修飾(限定されないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解切断、または非天然起源アミノ酸による修飾が含まれる)の産物を指すことも意図されている。ポリペプチドは、天然の生物源由来であってもよく、組換え技術によって生成されてもよいが、必ずしも指定された核酸配列から翻訳されなくてもよい。ポリペプチドは、化学合成を含む、いかなる方法で生成されてもよい。
【0031】
「相同性」、または「同一性」、または「類似性」は、2つのペプチド間、または2つの核酸分子間の配列類似性を指す。相同性は、各配列(比較の目的でアラインされてもよい)における位置を比較することによって決定することができる。比較される配列における位置が、同じ塩基またはアミノ酸によって占められている場合、その分子は、その位置において相同である。配列間の相同性の程度は、その配列によって共有されている、マッチした、または相同な位置の数の関数である。「無関係な」または「非相同」配列は、本開示の配列の1つと、40%未満の同一性(好ましくは25%未満の同一性であるが)を共有する。
【0032】
ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドまたはポリペプチド領域)は、他の配列とある特定のパーセンテージ(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%)の「配列同一性」を有し、これは、アラインされた場合、2つの配列の比較において、そのパーセンテージの塩基(またはアミノ酸)が同一であることを意味する。
【0033】
用語「同等の核酸またはポリヌクレオチド」は、核酸またはその相補体のヌクレオチド配列に対して、ある程度の相同性または配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する核酸を指す。二本鎖核酸のホモログは、その相補体とまたはその相補体と(with or
with the complement thereof)ある程度の相同性を有するヌクレオチド配列を有する核酸を含むことが意図されている。1つの態様において、核酸のホモログは、核酸またはその相補体とハイブリダイズすることが可能である。同様に、「同等のポリペプチド」は、参照ポリペプチドのアミノ酸配列に対して、ある程度の相同性または配列同一性を有するポリペプチドを指す。いくつかの態様において、配列同一性は、少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%である。いくつかの態様において、同等のポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、参照ポリペプチドまたはポリヌクレオチドと比較して、1、2、3、4、または5つの付加、欠失、置換、およびそれらの組み合わせを有する。いくつかの態様において、前記同等の配列は、前記参照配列の活性(例えば、エピトープ結合)または構造(例えば、塩橋)を保持している。
【0034】
本明細書で使用される場合、「抗体」または「抗原結合ポリペプチド」は、抗原を特異的に認識し、結合するポリペプチドまたはポリペプチド複合体を指す。抗体は、全抗体、およびその任意の抗原結合フラグメントまたは単鎖であり得る。よって、用語「抗体」は、抗原に結合する生物学的活性を有する免疫グロブリン分子の少なくとも一部分を含む分子を含む、任意のタンパク質またはペプチドを含む。そのようなものの例には、限定されないが、重鎖または軽鎖の相補性決定領域(CDR)、またはそのリガンド結合部分、重鎖または軽鎖可変領域、重鎖または軽鎖定常領域、フレームワーク(FR)領域、またはそれらの任意の部分、または結合タンパク質の少なくとも一部分があげられる。
【0035】
用語「抗体フラグメント」または「抗原結合フラグメント」は、本明細書で使用される場合、例えばF(ab’)、F(ab)、Fab’、Fab、Fv、scFvなどの、抗体の一部分である。構造にかかわらず、抗体フラグメントは、インタクトな抗体によって認識される、同じ抗原と結合する。用語「抗体フラグメント」は、アプタマー、スピーゲルマー、およびダイアボディーを含む。用語「抗体フラグメント」は、また、特定の抗原に結合して複合体を形成することによって抗体のように働く、任意の合成または遺伝子操作タンパク質も含む。
【0036】
「単鎖可変領域フラグメント」または「scFv」は、免疫グロブリンの重鎖の可変領域(V)および軽鎖の可変領域(V)の融合タンパク質を指す。いくつかの態様において、この領域は、10~約25アミノ酸のショートリンカーペプチドによって連結される。このリンカーは、柔軟性のためにグリシンが、さらに溶解性のためにセリンまたはスレオニンが豊富であり得、ならびにVのN末端をVのC末端と連結するか、またはその逆のいずれかであり得る。このタンパク質は、定常領域が除去され、リンカーが導入されているにもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持している。ScFv分子は、当該技術分野において知られており、例えば、米国特許第5,892,019号に記載されている。
【0037】
用語抗体は、生物学的に識別し得る、種々の幅広いクラスのポリペプチドを包含する。当業者は、重鎖が、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロン(γ,μ,α,δ,ε)に分類され、その中にいくつかのサブクラス(例えば、γ1~γ4)があることを理解する。抗体の「クラス」を、それぞれIgG、IgM、IgA IgG、またはIgEとして決定するのは、この鎖の性質である。免疫グロブリンサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG、IgG、IgG、IgG、IgGなどは、十分に特徴付けされ、機能特化をもたらすことが知られている。これらのクラスおよびアイソタイプのそれぞれの修飾形態は、本開示を考慮して当業者に容易に識別可能であり、したがって、本開示の範囲内である。全ての免疫グロブリンクラスは、明確に本開示の範囲内であり、以下の考察は、一般に、IgGクラスの免疫グロブリン分子に向けられる。IgGに関し、標準的な免疫グロブリン分子は、分子量がおよそ23,000ダルトンの2つの同一の軽鎖ポリペプチド、および分子量53,000~70,000の2つの同一の重鎖ポリペプチドを含む。これら4つの鎖は、典型的には、ジスルフィド結合によって連結されて「Y」の配置にあり、前記軽鎖は、「Y」の口で始まり可変領域を通して続く前記重鎖を挟む。
【0038】
本開示の抗体、抗原結合ポリペプチド、バリアント、またはそれらの誘導体としては、それらに限定されないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体、もしくはキメラ抗体、単鎖抗体、エピトープ結合フラグメント、例えば、Fab、Fab’およびF(ab’)、Fd、Fv、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、VKまたはVHドメインのいずれかを含むフラグメント、Fab発現ライブラリーによって産生されるフラグメント、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書に開示のLIGHT抗体に対する抗Id抗体を含む)があげられる。本開示の免疫グロブリンまたは抗体分子は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgAl、およびIgA2)、またはサブクラスであり得る。
【0039】
軽鎖は、カッパまたはラムダ(Κ、λ)のいずれかに分類される。各重鎖クラスは、カッパまたはラムダ軽鎖のいずれかと結合され得る。一般に、軽鎖および重鎖は、互いに共有結合し、2つの重鎖の「テイル」部分は、免疫グロブリンが、ハイブリドーマ、B細胞、または遺伝子操作宿主細胞のいずれかによって生成される場合、共有ジスルフィド結合または非共有結合によって互いに結合される。重鎖において、アミノ酸配列は、Y配置のフォーク端におけるN末端から、各鎖の底部におけるC末端まで及ぶ。
【0040】
軽鎖および重鎖は、両方とも、構造的および機能的相同性の領域に分けられる。用語「定常」および「可変」は、機能的に使用される。この点について、軽鎖部分の可変ドメイン(VK)および重鎖部分の可変ドメイン(VH)は、両方とも、抗原認識および特異性を決定する。逆に、軽鎖の定常ドメイン(CK)および重鎖の定常ドメイン(CH1、CH2、またはCH3)は、分泌、経胎盤移動性、Fc受容体結合、補体結合などの重要な生物学的特性を付与する。慣習により、定常領域ドメインのナンバリングは、抗体の抗原結合部位またはアミノ末端から遠ざかるにつれて増える。N末端部分は、可変領域であり、C末端部分は、定常領域であり;CH3とCKドメインは、実際に、それぞれ重鎖と軽鎖のカルボキシ末端を含む。
【0041】
上に示したように、可変領域は、抗体が、抗原のエピトープを選択的に認識し、特異的に結合することを可能にする。すなわち、抗体のVKドメインおよびVHドメイン、または相補性決定領域(CDR)のサブセットが組み合わさり、三次元抗原結合部位を規定する可変領域を形成する。この抗体の四次構造は、前記Yの各腕の末端に存在する抗原結合部位を形成する。より具体的には、抗原結合部位は、VHおよびVK鎖それぞれの3つのCDR(すなわちCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3)によって規定される。いくつかの例、例えば、ラクダ科の種に由来する、またはラクダ科免疫グロブリンに基づいて操作されたある特定の免疫グロブリン分子において、完全な免疫グロブリン分子は、軽鎖を有さず、重鎖のみからなり得る。例えば、Hamers-Castermanら、Nature 363:446-448(1993)を参照のこと。
【0042】
天然起源抗体において、各抗原結合ドメインに存在する6個の「相補性決定領域」または「CDR」は、抗体が、水性環境において三次元配置をとった場合に抗原結合ドメインを形成するように特異的な位置を占める、短く、非連続的なアミノ酸配列である。抗原結合ドメインの残りのアミノ酸(「フレームワーク」領域と呼ばれる)は、より小さい分子間変動性を示す。フレームワーク領域は、主としてβシート構造をとり、CDRは、βシート構造を連結し、かつ、いくつかのケースではβシート構造の一部を形成する、ループを形成する。よって、フレームワーク領域は、鎖間の非共有結合相互作用によって正しい方向のCDRの配置を提供する足場を形成する役割を果たす。配置されたCDRによって形成される抗原結合ドメインは、免疫反応性抗原上のエピトープに対する表面相補性を決定する。この相補的表面が、抗体の、その同族エピトープに対する非共有結合を促進する。CDRとフレームワーク領域をそれぞれ含むアミノ酸は、正確に規定されている(Sequences of Proteins of Immunological Interest,’’Kabat,E.ら、U.S.Department of Health and Human Services,(1983);およびChothia and Lesk、J.MoI.Biol.,196:901-917(1987)を参照のこと)ため、当業者によって、任意の所与の重鎖または軽鎖可変領域について、容易に決定することができる。
【0043】
当該技術分野において使用および/または受け入れられている用語の2つまたはそれを超える定義があるケースにおいて、本明細書において使用されるその用語の定義は、別段の明確な指示がある場合を除き、それらの意味の全てを含むことが意図されている。具体的な例は、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域の中に見いだされる非連続的な抗原結合部位を記述するための用語「相補性決定領域」(「CDR」)の使用である。この特定の領域は、Kabatら、U.S.Dept.of Health and Human Services,’’Sequences of Proteins
of Immunological Interest’’(1983)、およびChothiaら、J.MoI.Biol.196:901-917(1987)(これらは、参照によりその全体が本明細書に援用される)によって記述されている。KabatおよびChothiaによるCDRの定義は、相互に比較した場合、アミノ酸残基のオーバーラップまたはサブセットを含む。にもかかわらず、抗体またはそのバリアントのCDRを指すためのどちらかの定義の適用は、本明細書で定義および使用される用語の範囲内であることが意図されている。上で引用された参考文献のそれぞれで定義されたCDRを包含する適切なアミノ酸残基は、比較として、下記の表に記載されている。特定のCDRを包含する正確な残基数は、そのCDRの配列およびサイズに応じて異なる。当業者は、抗体の可変領域アミノ酸配列が与えられた場合、どの残基が特定のCDRを含むかを日常的に決定することができる。
【表14】
【0044】
Kabatらは、また、任意の抗体に適用できる、可変ドメイン配列のためのナンバリングシステムも定義した。当業者は、その配列自体以外、いかなる実験データに依拠することなく、この「Kabatナンバリング」システムを、任意の可変ドメイン配列に明確に割り当てることができる。本明細書で使用される場合、「Kabatナンバリング」は、Kabatら、U.S.Dept.of Health and Human Services,’’Sequence of Proteins of Immunological Interest’’(1983)に記述されたナンバリングシステムを指す。
【0045】
上記の表に加えて、Kabatナンバリングシステムは、以下のようにCDR領域を記述する:CDR-H1は、およそアミノ酸31(すなわち、最初のシステイン残基の後およそ9残基)において始まり、およそ5~7アミノ酸を含み、次のトリプトファン残基において終わる。CDR-H2は、CDR-H1の末端の後の15番目の残基において始まり、およそ16~19アミノ酸を含み、次のアルギニンまたはリジン残基において終わる。CDR-H3は、CDR-H2の末端の後のおよそ33番目のアミノ酸残基において始まり;3~25アミノ酸を含み;および配列W-G-X-G(ここで、Xは、任意のアミノ酸である)において終わる。CDR-L1は、およそ残基24(すなわち、システイン残基の後)において始まり;およそ10~17残基を含み;および次のトリプトファン残基において終わる。CDR-L2は、CDR-L1の末端の後のおよそ16番目の残基において始まり、およそ7残基を含む。CDR-L3は、CDR-L2の末端の後のおよそ33番目の残基(すなわち、システイン残基の後)において始まり;およそ7~11残基を含み;配列FまたはW-G-X-G(ここで、Xは、任意のアミノ酸である)において終わる。
【0046】
本明細書に開示されている抗体は、鳥類および哺乳類を含む、任意の動物起源であり得る。好ましくは、抗体は、ヒト、マウス、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ラマ、ウマ、またはニワトリ抗体である。別の実施形態において、可変領域は、起源が軟骨魚(condricthoid)(例えば、サメ起源)であり得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「重鎖定常領域」は、免疫グロブリン重鎖由来のアミノ酸配列を含む。重鎖定常領域を含むポリペプチドは、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部、中央部、および/または下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、またはそのバリアントまたはフラグメントの少なくとも1つを含む。例えば、本開示で使用するための抗原結合ポリペプチドは、CH1ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメイン、少なくともヒンジドメインの一部、およびCH2ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメインおよびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメイン、少なくともヒンジドメインの一部、およびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖、またはCH1ドメイン、少なくともヒンジドメインの一部、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含み得る。別の実施形態において、本開示のポリペプチドは、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含む。さらに、本開示において使用するための抗体は、少なくともCH2ドメインの一部(例えば、CH2ドメインの全て、または一部)を欠いていてもよい。上記のように、当業者によって、重鎖定常領域は、天然起源の免疫グロブリン分子とはアミノ酸配列が異なるように修飾されていてもよいことが理解されよう。
【0048】
本明細書に開示されている抗体の重鎖定常領域は、異なる免疫グロブリン分子に由来していてもよい。例えば、ポリペプチドの重鎖定常領域は、IgG分子に由来するCH1ドメインと、IgG分子に由来するヒンジ領域を含んでいてもよい。別の例において、重鎖定常領域は、部分的にIgG分子に由来し、部分的にIgG分子に由来するヒンジ領域を含み得る。別の例において、重鎖部分は、部分的にIgG分子に由来し、部分的にIgG分子に由来するキメラヒンジを含み得る。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「軽鎖定常領域」は、抗体軽鎖に由来するアミノ酸配列を含む。好ましくは、軽鎖定常領域は、定常カッパドメインまたは定常ラムダドメインの少なくとも1つを含む。
【0050】
「軽鎖-重鎖ペア」は、軽鎖のCLドメインと重鎖のCH1ドメインの間のジスルフィド結合によってダイマーを形成し得る、軽鎖と重鎖の集合を指す。
【0051】
先に示したように、種々の免疫グロブリンクラスの定常領域のサブユニット構造および三次元配置はよく知られている。本明細書で使用される場合、用語「VHドメイン」は、免疫グロブリン重鎖のアミノ末端を含み、用語「CH1ドメイン」は、免疫グロブリン重鎖の最初の(最もアミノ末端)定常領域ドメインを含む。CH1ドメインは、VHドメインに近接し、かつ免疫グロブリン重鎖分子のヒンジ領域に対してアミノ末端である。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「CH2ドメイン」は、慣習的なナンバリングスキームを使用して、抗体の約残基244から残基360(残基244~360、Kabatナンバリングシステム;および残基231~340、EUナンバリングシステム;Kabatら、U.S.Dept.of Health and Human Services,’’Sequences of Proteins of Immunological Interest’’(1983)参照)まで伸びる重鎖分子の部分を含む。CH2ドメインは、別のドメインと密接に対合しないという点でユニークである。寧ろ、2つのN結合型分枝炭水化物鎖が、インタクトな天然IgG分子の2つのCH2ドメインの間に挿入されている。また、CH3ドメインが、CH2ドメインからIgG分子のC末端まで伸び、およそ108残基を含むことも十分に証明されている。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「ヒンジ領域」は、CH1ドメインをCH2ドメインに連結する重鎖分子の部分を含む。このヒンジ領域は、およそ25残基を含み、かつフレキシブルであり、よって2つのN末端抗原結合領域が独立して動くことが可能になる。ヒンジ領域は、3つの別個のドメイン、すなわち上部、中央部、および下部ヒンジドメインに細分することができる(Rouxら、J.Immunol 161:4083(1998))。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「ジスルフィド結合」は、2つの硫黄原子の間に形成される共有結合を含む。アミノ酸システインは、第2のチオール基とジスルフィド結合または架橋を形成することができるチオール基を含む。ほとんどの天然起源のIgG分子において、CH1およびCK領域は、ジスルフィド結合によって連結され、2つの重鎖は、Kabatナンバリングシステムを使用して239および242(位置226または229、EUナンバリングシステム)に対応する位置において、2つのジスルフィド結合によって連結される。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「キメラ抗体」は、免疫反応性領域または部位が、第1の種から得られるか、またはそれに由来し、定常領域(これは、インタクトであり得るか、一部分であり得るか、または本開示に従って修飾され得る)が、第2の種から得られる、任意の抗体を意味する。ある特定の実施形態において、標的結合領域または部位は、非ヒト源(例えば、マウスまたは霊長類)に由来し、定常領域は、ヒトである。
【0056】
本明細書で使用される場合、「パーセントヒト化」は、ヒト化ドメインと生殖系列ドメインの間のフレームワークアミノ酸の相異(すなわち、非CDRの相異)の数を決定し、この数をアミノ酸の総数から差し引き、次いでそれをアミノ酸の総数で割り、100を掛けることによって算出する。
【0057】
「特異的に結合する」または「に対して特異性を有する」は、抗体がその抗原結合ドメインによってエピトープに結合すること、およびその結合が抗原結合ドメインとエピトープの間にいくらかの相補性を要することを一般的に意味する。この定義にしたがって、抗体は、その抗原結合ドメインによって、ランダムで無関係なエピトープに結合するであろう場合と比較して、あるエピトープにより容易に結合する場合、そのエピトープに対して「特異的に結合する」と言われる。用語「特異性」は、本明細書において、ある特定の抗体がある特定のエピトープに結合する相対的親和性を認定するために使用される。例えば、抗体「A」は、抗体「B」よりも、所定のエピトープに対して、より高い特異性を有するとみなされ得、または抗体「A」は、関連するエピトープ「D」に対して有する特異性よりも、より高い特異性でエピトープ「C」に結合すると言われ得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「処置する」または「処置」は、治療的処置と、予防的または防止的手段の両方を指し、ここで、目的は、望まれない生理学的変化または障害(例えば、がんの進行)を予防または減速(軽減)させることである。有益または望まれる臨床結果は、それらに限定されないが、検出可能にせよ、検出不可能にせよ、症状の軽減、疾患の程度の減少、疾患の安定化(すなわち、悪化しない)状態、疾患の進行の遅延または減速、疾患の状態の改善または緩和、および寛解(部分寛解にせよ、完全寛解にせよ)を含む。「処置」は、また、処置を受けなかった場合に予期される生存期間と比較して、生存期間を延長させることも意味し得る。処置を必要とする対象には、状態または障害をすでに有する対象、ならびに状態または障害を有する傾向がある対象、または状態または障害を予防すべき対象が含まれる。
【0059】
「対象」、または「個体」、または「動物」、または「患者」、または「哺乳動物」は、診断、予後、または治療が所望される任意の対象、特に哺乳動物対象を意味する。哺乳動物対象は、ヒト、飼育動物、農場動物、および動物園動物、スポーツ動物、またはペット動物(例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ(cattle)、ウシ(cow)など)を含む。
【0060】
本明細書で使用される場合、「処置を必要とする患者に対して」または「処置を必要とする対象」のような表現は、例えば、検出のために、診断手順のために、および/または処置のために使用される、本開示の抗体または組成物の投与から利益を受けるであろう対象(例えば、哺乳動物対象)を含む。
抗IL-13RA2抗体
【0061】
本開示は、ヒトIL-13RA2タンパク質に対して高い親和性を有し、ADCCおよび細胞傷害の媒介において強力であり、エンドサイトーシスを効果的に誘導し得る抗IL-13RA2抗体およびフラグメントを提供する。さらに、インビトロ試験およびインビボ試験の両方は、IL-13RA2発現細胞の死滅およびがんの処置におけるこれらの抗体の有効性を実証している。したがって、これらの抗体は、IL-13RA2の過剰発現を特徴とする種々の疾患、例えば、がんおよび炎症性疾患を処置するための好適な薬剤である。
【0062】
したがって、本開示の一実施形態によれば、IL-13RA2に結合することができる抗体およびその抗原結合フラグメントが提供される。抗体例は、表1に列挙したマウス抗体(例えば、24G6D5、34A5G9、42E3C4、51G2B3、54A4F7、57F8H3F1、61H8C1、62A8D8、62F6A8、72B4H4、73A11E2および74B5E4)、ならびに表8~11のヒト化抗体を含む。また、本明細書に例示されるものと同じCDRを含むものも含まれる。いくつかの実施形態では、開示される抗体およびフラグメントは、本明細書に例示されるエピトープと同じエピトープに結合するもの、およびIL-13RA2への結合において即座に開示されるものと競合するものを含む。
【0063】
本開示の一つの実施形態によれば、本明細書で開示されているCDR領域を有する重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む抗体またはそのフラグメント、ならびにそれらの生物学的同等物が提供される。
【0064】
一つの実施形態において、CDRは、表8Bおよび8Dに例示されているように、61H8C1のものまたはそのヒト化した対応物である。一つの実施形態において、CDRH1は、配列番号25のアミノ酸配列、または1つ、2つ、もしくは3つの欠失、付加、置換、もしくはそれらの組み合わせを有するそれらのバリアントを含み、CDRH2は、配列番号26のアミノ酸配列、または1つ、2つ、もしくは3つの欠失、付加、置換、もしくはそれらの組み合わせを有するそれらのバリアントを含み、CDRH3は、配列番号27のアミノ酸配列、または1つ、2つ、もしくは3つの欠失、付加、置換、もしくはそれらの組み合わせを有するそれらのバリアントを含み、CDRL1は、配列番号28のアミノ酸配列、または1つ、2つ、もしくは3つの欠失、付加、置換、もしくはそれらの組み合わせを有するそれらのバリアントを含み、CDRL2は、配列番号29のアミノ酸配列、または1つ、2つ、もしくは3つの欠失、付加、置換、もしくはそれらの組み合わせを有するそれらのバリアントを含み、およびCDRL3は、配列番号30のアミノ酸配列、または1つ、2つ、もしくは3つの欠失、付加、置換、もしくはそれらの組み合わせを有するそれらのバリアントを含む。
【0065】
一実施形態では、前記CDRH1は、配列番号25のアミノ酸配列を含み、前記CDRH2は、配列番号26のアミノ酸配列を含み、前記CDRH3は、配列番号27のアミノ酸配列を含み、前記CDRL1は、配列番号28のアミノ酸配列を含み、前記CDRL2は、配列番号29のアミノ酸配列を含み、および前記CDRL3は、配列番号30のアミノ酸配列を含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、61H8C1またはそのヒト化対応物と同じCDRを含むものも提供される。いくつかの実施形態では、開示される抗体およびフラグメントは、61H8C1またはそのヒト化対応物と同じエピトープに結合するもの、およびIL-13RA2への結合においてそれらのいずれかと競合するものを含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号13(マウスまたはキメラ)および54~57(ヒト化)からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号13(マウスまたはキメラ)および54~57(ヒト化)からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号14(マウスまたはキメラ)および58~61(ヒト化)からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号14(マウスまたはキメラ)および58~61(ヒト化)からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は配列番号54のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は配列番号58~61のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は配列番号54~57のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は配列番号58のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は配列番号54のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は配列番号58のアミノ酸配列を含む。
【0070】
一実施形態では、CDRは、表9Bおよび9Dに例示されるように、57F8H3F1またはそのヒト化対応物のCDRである。一実施形態では、CDRH1は、配列番号31のアミノ酸配列または1、2、もしくは3個の欠失、付加、置換もしくはそれらの組み合わせを有するその変異体を含み、CDRH2は、配列番号32もしくは49のアミノ酸配列または1、2、もしくは3個の欠失、付加、置換もしくはそれらの組み合わせを有するその変異体を含み、CDRH3は、配列番号33のアミノ酸配列または1、2、もしくは3個の欠失、付加、置換もしくはそれらの組み合わせを有するその変異体を含み、CDRL1は、配列番号34のアミノ酸配列または1、2、もしくは3個の欠失、付加、置換もしくはそれらの組み合わせを有するその変異体を含み、CDRL2は、配列番号35のアミノ酸配列または1、2、もしくは3個の欠失、付加、付加、置換、もしくはそれらの組み合わせを有するその変異体を含み、およびCDRL3は、配列番号36のアミノ酸配列、または1、2、もしくは3個の欠失、付加、付加、置換、もしくはそれらの組み合わせを有するその変異体を含む。
【0071】
一実施形態では、前記CDRH1は、配列番号31のアミノ酸配列を含み、前記CDRH2は、配列番号32または49のアミノ酸配列を含み、前記CDRH3は、配列番号33のアミノ酸配列を含み、前記CDRL1は、配列番号34のアミノ酸配列を含み、前記CDRL2は、配列番号35のアミノ酸配列を含み、および前記CDRL3は、配列番号36のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、前記CDRH1は、配列番号31のアミノ酸配列を含み、前記CDRH2は、配列番号32のアミノ酸配列を含み、前記CDRH3は、配列番号33のアミノ酸配列を含み、前記CDRL1は、配列番号34のアミノ酸配列を含み、前記CDRL2は、配列番号35のアミノ酸配列を含み、および前記CDRL3は、配列番号36のアミノ酸配列を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、57F8H3F1またはそのヒト化対応物と同じCDRを含むものも提供される。いくつかの実施形態では、開示される抗体およびフラグメントは、57F8H3F1またはそのヒト化対応物と同じエピトープに結合するもの、およびIL-13RA2への結合においてそれらのいずれかと競合するものを含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号11(マウスまたはキメラ)および62~65(ヒト化)からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号11(マウスまたはキメラ)および62~65(ヒト化)からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む。
【0074】
一実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号12(マウスまたはキメラ)および66~69(ヒト化)からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号12(マウスまたはキメラ)および66~69(ヒト化)からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は配列番号62のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は配列番号66~69のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は配列番号62~65のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は配列番号66のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は配列番号62のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は配列番号66のアミノ酸配列を含む。
【0076】
一実施形態では、CDRは、表10Bおよび10Dに例示されるように、72B4H4またはそのヒト化対応物のCDRである。一実施形態では、CDRH1は、配列番号37のアミノ酸配列または1、2、もしくは3個の欠失、付加、置換もしくはそれらの組み合わせを有するその変異体を含み、CDRH2は、配列番号38もしくは50のアミノ酸配列または1、2、もしくは3個の欠失、付加、置換もしくはそれらの組み合わせを有するその変異体を含み、CDRH3は、配列番号39もしくは51のアミノ酸配列または1、2、もしくは3個の欠失、付加、置換もしくはそれらの組み合わせを有するその変異体を含み、CDRL1は、配列番号40のアミノ酸配列または1、2、もしくは3個の欠失、付加、置換もしくはそれらの組み合わせを有するその変異体を含み、CDRL2は、配列番号41のアミノ酸配列または1、2、もしくは3個の欠失、付加、付加、置換、もしくはそれらの組み合わせを有するその変異体を含み、およびCDRL3は、配列番号42のアミノ酸配列、または1、2、もしくは3個の欠失、付加、付加、置換、もしくはそれらの組み合わせを有するその変異体を含む。
【0077】
一実施形態では、前記CDRH1は、配列番号37のアミノ酸配列を含み、前記CDRH2は、配列番号38または50のアミノ酸配列を含み、前記CDRH3は、配列番号39または51のアミノ酸配列を含み、前記CDRL1は、配列番号40のアミノ酸配列を含み、前記CDRL2は、配列番号41のアミノ酸配列を含み、および前記CDRL3は、配列番号42のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、前記CDRH1は、配列番号37のアミノ酸配列を含み、前記CDRH2は、配列番号38のアミノ酸配列を含み、前記CDRH3は、配列番号39のアミノ酸配列を含み、前記CDRL1は、配列番号40のアミノ酸配列を含み、前記CDRL2は、配列番号41のアミノ酸配列を含み、および前記CDRL3は、配列番号42のアミノ酸配列を含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、72B4H4またはそのヒト化対応物と同じCDRを含むものも提供される。いくつかの実施形態では、開示される抗体およびフラグメントは、72B4H4またはそのヒト化対応物と同じエピトープに結合するもの、およびIL-13RA2への結合においてそれらのいずれかと競合するものを含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号19(マウスまたはキメラ)および70~73(ヒト化)からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号19(マウスまたはキメラ)および70~73(ヒト化)からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号20(マウスまたはキメラ)および74~77(ヒト化)からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号20(マウスまたはキメラ)および74~77(ヒト化)からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は配列番号70のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は配列番号74~77のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は配列番号70~73のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は配列番号74のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は配列番号70のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は配列番号74のアミノ酸配列を含む。
【0082】
一実施形態では、CDRは、表11Bおよび11Dに例示されるように、73A11E2またはそのヒト化対応物のCDRである。一実施形態では、CDRH1は、配列番号43のアミノ酸配列または1、2、もしくは3個の欠失、付加、置換もしくはそれらの組み合わせを有するその変異体を含み、CDRH2は、配列番号44もしくは52のアミノ酸配列または1、2、もしくは3個の欠失、付加、置換もしくはそれらの組み合わせを有するその変異体を含み、CDRH3は、配列番号45のアミノ酸配列または1、2、もしくは3個の欠失、付加、置換もしくはそれらの組み合わせを有するその変異体を含み、CDRL1は、配列番号46のアミノ酸配列または1、2、もしくは3個の欠失、付加、置換もしくはそれらの組み合わせを有するその変異体を含み、CDRL2は、配列番号47のアミノ酸配列または1、2、もしくは3個の欠失、付加、付加、置換、もしくはそれらの組み合わせを有するその変異体を含み、およびCDRL3は、配列番号48もしくは53のアミノ酸配列、または1、2、もしくは3個の欠失、付加、付加、置換、もしくはそれらの組み合わせを有するその変異体を含む。
【0083】
一実施形態では、前記CDRH1は、配列番号43のアミノ酸配列を含み、前記CDRH2は、配列番号44または52のアミノ酸配列を含み、前記CDRH3は、配列番号45のアミノ酸配列を含み、前記CDRL1は、配列番号46のアミノ酸配列を含み、前記CDRL2は、配列番号47のアミノ酸配列を含み、および前記CDRL3は、配列番号48または53のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、前記CDRH1は、配列番号43のアミノ酸配列を含み、前記CDRH2は、配列番号44のアミノ酸配列を含み、前記CDRH3は、配列番号45のアミノ酸配列を含み、前記CDRL1は、配列番号46のアミノ酸配列を含み、前記CDRL2は、配列番号47のアミノ酸配列を含み、および前記CDRL3は、配列番号48のアミノ酸配列を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、73A11E2またはそのヒト化対応物と同じCDRを含むものも提供される。いくつかの実施形態では、開示される抗体およびフラグメントは、73A11E2またはそのヒト化対応物と同じエピトープに結合するもの、およびIL-13RA2への結合においてそれらのいずれかと競合するものを含む。
【0085】
いくつかの実施形態において、前記重鎖可変領域は、配列番号21(マウスまたはキメラ)および78~81(ヒト化)からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号21(マウスまたはキメラ)および78~81(ヒト化)からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む。
【0086】
いくつかの実施形態において、前記軽鎖可変領域は、配列番号22(マウスまたはキメラ)および82~85(ヒト化)からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号22(マウスまたはキメラ)および82~85(ヒト化)からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するペプチドを含む。
【0087】
いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は配列番号79のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は配列番号82~85のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は配列番号78~81のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は配列番号83のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は配列番号79のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域は配列番号83のアミノ酸配列を含む。
【0088】
これらのCDR領域を含む抗体は、マウス、ヒト化またはキメラにかかわらず、強力なIL-13RA2結合活性を有した。表8~11に示すように、CDR内の特定の残基が修飾されて、特性を保持もしくは改善するか、または翻訳後修飾(PTM)を有する可能性を低下させ得る。そのような改変CDRは、親和性成熟CDRまたはリスク低減CDR(例えば、配列番号49~53)と呼ばれ得る。
【0089】
修飾CDRは、1、2、または3つのアミノ酸付加、欠失、および/または置換を有するものを含み得る。いくつかの実施形態において、この置換は、保存的置換であり得る。
【0090】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において規定されており、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。よって、免疫グロブリンポリペプチドにおける非必須アミノ酸残基は、好ましくは、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基で置き換えられる。別の実施形態において、アミノ酸のストリングは、側鎖ファミリーメンバーの順序および/または組成が異なる構造的に類似するストリングで置き換えられ得る。
【0091】
保存的アミノ酸置換の非限定的な例は、以下の表に示されており、ここで、類似性スコアが0またはそれより高いことは、2つのアミノ酸の間が保存的置換であることを示す。
【表A】

【表B-1】

【表B-2】
【0092】
また、当業者は、本明細書で開示されている抗体は、それらが由来する天然起源の結合ポリペプチドとアミノ酸配列が異なるように修飾され得ることも理解する。例えば、指定されたタンパク質に由来するポリペプチドまたはアミノ酸配列は、類似であり得、例えば、出発配列に対してある特定のパーセント同一性を有し、例えば、出発配列と60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%同一であり得る。
【0093】
ある特定の実施形態において、抗体は、通常は抗体と関連しないアミノ酸配列、もしくは1つまたはそれを超える部分を含む。例示的な修飾は、以下により詳細に記載されている。例えば、本開示の抗体は、フレキシブルなリンカー配列を含み得、または機能的部分(例えば、PEG、薬物、毒素、または標識)を付加するように修飾され得る。
【0094】
本開示の抗体、そのバリアント、または誘導体は、修飾された、すなわち、共有結合がその抗体のエピトープに対する結合を妨げないように、抗体に対して任意の種類の分子が共有結合することによって修飾された誘導体を含む。例えば、限定としてではないが、抗体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、リン酸化、アミド化、知られている保護/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質に対する結合などによって修飾され得る。多数の化学的修飾のいずれも、知られている技術(それらに限定されないが、特異的化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝性合成などを含む)によって実施され得る。さらに、抗体は、1つまたはそれを超える非古典的アミノ酸を含み得る。
【0095】
いくつかの実施形態において、抗体は、治療剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、ウイルス、脂質、生物学的応答調節剤、医薬品、またはPEGにコンジュゲートされ得る。
【0096】
抗体は、治療剤(放射性標識のような検出可能な標識を含んでいてもよい)、免疫調節剤、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治療または診断剤、細胞傷害性薬剤(薬物または毒素であり得る)、超音波増強剤、非放射性標識、それらの組み合わせ、および当該技術分野において知られている他のこのような作用物質にコンジュゲートまたは融合され得る。
【0097】
抗体は、化学発光化合物に対してカップリングすることによって、検出可能に標識され得る。化学発光タグ付け抗原結合ポリペプチドの存在は、次いで、化学反応の過程の間に生じる発光の存在を検出することによって判定される。特に有用な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、テロマティックアクリジニウムエステル(theromatic acridinium ester)、イミダゾール、アクリジニウム塩、およびシュウ酸エステルである。
【0098】
抗体は、また、152Eu、またはランタン系列の他の金属のような蛍光放射金属を使用して検出可能に標識し得る。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(diethylenetriaminepentacetic acid)(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような金属キレート基を使用して抗体に結合させ得る。種々の部分を抗体にコンジュゲートするための技術はよく知られている(例えば、Arnonら、’’Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy’’,in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeldら(eds.)、pp.243-56(Alan R.Liss,Inc.(1985);Hellstromら、’’Antibodies For Drug Delivery’’,in Controlled Drug Delivery(2nd Ed.)、Robinsonら(eds.)、Marcel Dekker,Inc.,pp.623-53(1987);Thorpe、’’Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer
Therapy:A Review’’,in Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications,Pincheraら(eds.)、pp.475-506(1985);’’Analysis,Results,And Future Prospective
Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy’’,in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy、Baldwinら(eds.)、Academic Press pp.303-16(1985)、およびThorpeら、’’The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates’’,Immunol.Rev.(52:119-58(1982))を参照のこと)。
二官能性分子および併用療法
【0099】
IL-13RA2は、腫瘍細胞上に過剰発現する。腫瘍抗原標的化分子として、IL-13RA2に特異的な抗体または抗原結合フラグメントは、免疫細胞に特異的な第2の抗原結合フラグメントまたは免疫チェックポイントに特異的な抗原結合フラグメントと組み合わせて、併用治療または二重特異性抗体を作製することができる。
【0100】
いくつかの実施形態において、免疫細胞は、T細胞、B細胞、単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、貪食細胞、ナチュラルキラー細胞、好酸球、好塩基球、およびマスト細胞からなる群から選択される。標的化され得る免疫細胞上の分子としては、例えば、CCL1、CD3、CD16、CD19、CD28、およびCD64があげられる。他の例としては、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG-3(CD223としても知られる)、CD28、CD122、4-1BB(CD137としても知られる)、TIM3、OX-40またはOX40L、CD40またはCD40L、LIGHT、ICOS/ICOSL、GITR/GITRL、TIGIT、CD27、VISTA、B7H3、B7H4、HEVMまたはBTLA(CD272としても知られる)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、およびCD47があげられる。
【0101】
二重特異性抗体の異なるフォーマットも提供される。いくつかの実施形態において、抗IL-13RA2フラグメントおよび第2のフラグメントの各々は、それぞれ独立して、Fabフラグメント、単鎖可変フラグメント(scFv)、または単一ドメイン抗体から選択される。いくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、Fcフラグメントをさらに含む。
【0102】
単に抗体または抗原結合フラグメントだけを含むものではない二官能性分子もまた提供される。腫瘍抗原標的化分子として、IL-13RA2に対して特異的な抗体または抗原結合フラグメント(例えば、本明細書に記載されているものなど)は、免疫サイトカインまたはリガンドと、必要に応じてペプチドリンカーによって、連結され得る。連結される免疫サイトカインまたはリガンドとしては、それらに限定されないが、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、GM-CSF、TNF-α、CD40L、OX40L、CD27L、CD30L、4-1BBL、LIGHTおよびGITRLがあげられる。このような二官能性分子は、免疫チェックポイント遮断効果を、腫瘍部位の局所的な免疫モジュレーションと組み合わせ得る。
抗体-薬物コンジュゲート
【0103】
いくつかの実施形態において、抗体またはフラグメントは、治療剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、ウイルス、脂質、生物学的応答調節剤、医薬品、またはPEGにコンジュゲートされ得る。
【0104】
一つの実施形態において、本開示の抗体またはフラグメントは、薬物部分に共有結合で付着される。前記薬物部分は、抗体上のコンジュゲーションポイントと反応性の基であってもよく、または抗体上のコンジュゲーションポイントと反応性の基を含むように改変されてもよい。例えば、薬物部分は、(例えば、抗体のリジンのε-アミノ基またはN末端における)アルキル化、酸化された炭水化物の還元的アミノ化、ヒドロキシル基とカルボキシル基の間のエステル交換反応、アミノ基またはカルボキシル基におけるアミド化、およびチオールへのコンジュゲーションによって結合され得る。
【0105】
いくつかの実施形態において、コンジュゲートされる薬物部分の数pは、一つの抗体分子につき、平均で1~8;1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、または1~2の範囲である。いくつかの実施形態において、pは、平均で2~8、2~7,2~6、2~5、2~4または2~3の範囲である。他の実施例において、pは、平均で1、2、3、4、5、6、7または8である。いくつかの実施形態において、pは、平均で約1~約20、約1~約10、約2~約10、約2~約9、約1~約8、約1~約7、約1~約6、約1~約5、約1~約4、約1~約3、または約1~約2の範囲である。いくつかの実施形態において、pは、約2~約8、約2~約7、約2~約6、約2~約5、約2~約4または約2~約3の範囲である。
【0106】
例えば、タンパク質の化学的活性化によって遊離チオール基が形成された場合、そのタンパク質は、スルフヒドリル反応性試薬とコンジュゲートされ得る。一つの態様において、前記試薬は、遊離チオール基に実質的に特異的なものである。そのような試薬としては、例えば、マレイミド(malemide)、ハロアセトアミド(例えば、ヨウ素、臭素または塩素)、ハロエステル(例えば、ヨード、ブロモまたはクロロ)、ハロメチルケトン(例えば、ヨード、ブロモまたはクロロ)、ベンジルハライド(例えば、ヨウ化物、臭化物または塩化物)、ビニルスルホンおよびピリジルチオがあげられる。
【0107】
薬物は、抗体またはフラグメントと、リンカーによって連結され得る。適切なリンカーとしては、例えば、切断可能リンカーおよび非切断可能リンカーがあげられる。切断可能リンカーは、典型的には、細胞内条件において切断されやすい。適切な切断可能リンカーとしては、例えば、細胞内プロテアーゼ、例えばリソソームプロテアーゼまたはエンドソームプロテアーゼなどによって切断され得るペプチドリンカーがあげられる。例示的な実施形態において、リンカーは、ジペプチドリンカー、例えば、バリン-シトルリン(val-cit)、フェニルアラニン-リジン(phe-lys)リンカー、またはマレイミドカプロニック-バリン-シトルリン-p-アミノベンジルオキシカルボニル(maleimidocapronic-valine-citruline-p-aminobenzyloxycarbonyl)(mc-Val-Cit-PABA)リンカーなどであり得る。別のリンカーは、スルホスクシンイミジル-4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート(smcc)である。Sulfo-smccコンジュゲーションは、スルフヒドリル(チオール、-SH)と反応するマレイミド基によって起こり、一方で、そのSulfo-NHSエステルは、(リジンおよびタンパク質またはペプチドのN末端に見出されるような)第一級アミンに対して反応性である。さらに別のリンカーは、マレイミドカプロイル(mc)である。他の適切なリンカーとしては、ヒドラゾンリンカーなどの特定のpHまたはpH範囲において加水分解され得るリンカーがあげられる。さらなる適切な切断可能リンカーとしては、ジスルフィドリンカーがあげられる。リンカー、例えば前記mcリンカーなどは、薬物が放出されるために、抗体が細胞内で分解されなければならない程度に、抗体に共有結合され得る。
【0108】
リンカーは、抗体に対する連結のための基を含み得る。例えば、リンカーは、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシルまたはスルフヒドリル反応性基(例えば、マレイミド(malemide)、ハロアセトアミド(例えば、ヨード、ブロモまたはクロロ)、ハロエステル(例えば、ヨード、ブロモまたはクロロ)、ハロメチルケトン(例えば、ヨード、ブロモまたはクロロ)、ベンジルハライド(例えば、ヨウ化物、臭化物または塩化物)、ビニルスルホンおよびピリジルチオ)を含み得る。
【0109】
いくつかの実施形態において、薬物部分は、細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤、免疫抑制剤、放射性同位体、毒素などである。コンジュゲートは、腫瘍細胞またはがん細胞の分裂増殖(multiplication)を阻害するため、腫瘍またはがん細胞におけるアポトーシスを引き起こすため、または患者におけるがんを処置するために使用され得る。コンジュゲートは、動物のがんの処置のための種々の状況において、適切に使用され得る。コンジュゲートは、薬物を腫瘍細胞またはがん細胞に送達するために使用され得る。理論に拘束されるものではないが、いくつかの実施形態において、コンジュゲートは、クローディン18.2を発現するがん細胞と結合または会合し、また、コンジュゲートおよび/または薬物は、受容体介在性エンドサイトーシスによって腫瘍細胞またはがん細胞の内部に取り込まれ得る。
【0110】
ひとたび細胞内に入ると、コンジュゲートの中の(例えば、リンカー中の)1つまたはそれを超える特定のペプチド配列が、1つまたはそれを超える腫瘍細胞またはがん細胞関連プロテアーゼによって加水分解的に切断され、その結果、薬物が放出される。放出された薬物は、次いで、細胞内を自由に移動し、そして、細胞傷害活性もしくは細胞増殖抑制活性、またはその他の活性を誘導する。いくつかの実施形態において、薬物は、腫瘍細胞またはがん細胞の外部で抗体から切断され、その後、その薬物は、細胞内に侵入するか、または細胞表面で作用する。
【0111】
薬物部分またはペイロードの例は、DM1(マイタンシン、N2’-デアセチル-N2’-(3-メルカプト-1-オキソプロピル)-またはN2’-デアセチル-N2’-(3-メルカプト-1-オキソプロピル)-マイタンシン)、mc-MMAD(6-マレイミドカプロイル-モノメチルアウリスタチンDまたはN-メチル-L-バリル-N-[(1S,2R)-2-メトキシ-4-[(2S)-2-[(1R,2R)-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソ-3-[[(1S)-2-フェニル-1-(2-チアゾリル)エチル]アミノ]プロピル]-1-ピロリジニル]-1-[(1S)-1-メチルプロピル]-4-オキソブチル]-N-メチル-(9Cl)-L-バリンアミド)、mc-MMAF(マレイミドカプロイル-モノメチルアウリスタチンFまたはN-[6-(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル)-1-オキソヘキシル]-N-メチル-L-バリル-L-バリル-(3R,4S,5S)-3-メトキシ-5-メチル-4-(メチルアミノ)ヘプタノイル-(αR,βR,2S)-β-メトキシ-α-メチル-2-ピロリジンプロパノイル-L-フェニルアラニン)およびmc-Val-Cit-PABA-MMAE(6-マレイミドカプロイル-ValcCit-(p-アミノベンジルオキシカルボニル)-モノメチルアウリスタチンEまたはN-[[[4-[[N-[6-(2,5-ジヒドロ-2,5-ジオキソ-1H-ピロール-1-イル)-1-オキソヘキシル]-L-バリル-N5-(アミノカルボニル)-L-オルニチル]アミノ]フェニル]メトキシ]カルボニル]-N-メチル-L-バリル-N-[(1S,2R)-4-[(2S)-2-[(1R,2R)-3-[[(1R,2S)-2-ヒドロキシ-1-メチル-2-フェニルエチル]アミノ]-1-メトキシ-2-メチル-3-オキソプロピル]-1-ピロリジニル]-2-メトキシ-1-[(1S)-1-メチルプロピル]-4-オキソブチル]-N-メチル-L-バリンアミド)からなる群から選択される。DM1は、チューブリン阻害剤マイタンシンの誘導体であり、一方で、MMAD、MMAE、およびMMAFは、アウリスタチン誘導体である。いくつかの実施形態において、薬物部分は、mc-MMAFおよびmc-Val-Cit-PABA-MMAEからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、薬物部分は、マイタンシノイドまたはアウリスタチンである。
【0112】
抗体またはフラグメントは、治療剤(放射性標識のような検出可能な標識を含んでいてもよい)、免疫調節剤、ホルモン、酵素、オリゴヌクレオチド、光活性治療もしくは診断剤、細胞傷害性薬剤(薬物または毒素であり得る)、超音波増強剤、非放射性標識、それらの組み合わせ、および当該技術分野において知られている他のこのような作用物質にコンジュゲートまたは融合され得る。
【0113】
抗体は、化学発光化合物に対してそれをカップリングすることによって、検出可能に標識され得る。化学発光タグ付け抗原結合ポリペプチドの存在は、次いで、化学反応の過程の間に生じる発光の存在を検出することによって決定される。特に有用な化学発光標識化合物の例は、ルミノール、イソルミノール、セロマティックアクリジニウムエステル(theromatic acridinium ester)、イミダゾール、アクリジニウム塩、およびシュウ酸エステルである。
【0114】
抗体は、また、152Eu、またはランタン系列の他の金属のような蛍光放射金属を使用して検出可能に標識し得る。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(diethylenetriaminepentacetic acid)(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような金属キレート基を使用して抗体に結合させ得る。種々の部分を抗体にコンジュゲートするための技術はよく知られている(例えば、Arnonら、“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeldら(eds.)、pp.243-56(Alan R.Liss,Inc.(1985);Hellstromら、“Antibodies For Drug Delivery”,in Controlled Drug Delivery(2nd Ed.)、Robinsonら(eds.)、Marcel Dekker,Inc.,pp.623-53(1987);Thorpe、“Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review”,in Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications,Pincheraら(eds.)、pp.475-506(1985);“Analysis,Results,And Future Prospective Of The
Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”,in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy、Baldwinら(eds.)、Academic Press pp.303-16(1985)、およびThorpeら、“The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates”,Immunol.Rev.(52:119-58(1982))を参照のこと)。
抗体をコードするポリヌクレオチド、および抗体の調製方法
【0115】
本開示は、また、本開示の抗体、そのバリアントまたは誘導体をコードする、単離されたポリヌクレオチドまたは核酸分子も提供する。本開示のポリヌクレオチドは、同じポリヌクレオチド分子上または別々のポリヌクレオチド分子上に、抗原結合ポリペプチド、そのバリアントまたは誘導体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域全体をコードしていてもよい。さらに、本開示のポリヌクレオチドは、同じポリヌクレオチド分子上または別々のポリヌクレオチド分子上に抗原結合ポリペプチド、そのバリアントまたは誘導体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の部分をコードしていてもよい。
【0116】
抗体を作製する方法は、当該技術分野においてよく知られており、また、本明細書に記載されている。ある特定の実施形態において、本開示の抗原結合ポリペプチドの可変領域と定常領域は、両方とも、完全にヒトのものである。完全ヒト抗体は、当該技術分野において記載されている技術を使用して、および本明細書に記載されているようにして作製することができる。例えば、特定の抗原に対する完全ヒト抗体は、抗原曝露に応答してそのような抗体を産生するように改変されているが、その内在的遺伝子座が無効化されているトランスジェニック動物に、抗原を投与することによって調製することができる。このような抗体を作製するために使用することができる例示的な技術は、米国特許第6,150,584号;第6,458,592号;第6,420,140号(これらは、参照によりその全体が援用される)に記載されている。
処置方法
【0117】
本明細書に記載されているように、本開示の抗体、バリアント、または誘導体は、ある特定の処置および診断方法において使用され得る。
【0118】
本開示は、また、本明細書に記載されている障害または状態の1つまたはそれより多くを処置するための、動物、哺乳動物、およびヒトなどの患者に本開示の抗体を投与することを含む、抗体ベースの治療にも向けられている。本開示の治療用化合物としては、それらに限定されないが、本開示の抗体(本明細書に記載されているそれらのバリアントおよび誘導体を含む)、および本開示の抗体をコードする核酸またはポリヌクレオチド(本明細書に記載されているそれらのバリアントおよび誘導体を含む)があげられる。
【0119】
本開示の抗体は、また、がんを処置または阻害するために使用することもできる。いくつかの実施形態において、患者のがん細胞は、IL-13RA2を発現または過剰発現する。上記の通り、IL-13RA2は、腫瘍細胞、特に胃腫瘍、膵臓腫瘍、食道腫瘍、卵巣腫瘍、および肺腫瘍において過剰発現され得る。IL-13RA2の阻害は、前記腫瘍の処置に有用であることが示されている。
【0120】
したがって、いくつかの実施形態において、それを必要とする患者におけるがんを処置するための方法が提供される。この方法は、一つの実施形態において、有効量の本開示の抗体を患者に投与することを要する。いくつかの実施形態において、患者において、少なくとも1つのがん細胞(例えば、間質細胞)が、IL-13RA2を過剰発現する。
【0121】
細胞治療(例えば、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞治療)もまた、本開示において提供される。本開示の抗IL-13RA2抗体と接触させた(または、代わりに、本開示の抗IL-13RA2抗体を発現するように操作した)適切な細胞が使用され得る。いくつかの実施形態において、抗体は、キメラ抗原受容体(CAR)において提示される。そのような接触または操作をしたら、次いで、処置を必要とするがん患者に細胞が導入され得る。がん患者は、本明細書に開示されている任意の型のがんを有し得る。細胞(例えば、T細胞)は、限定されないが、例えば、腫瘍浸潤Tリンパ球、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0122】
いくつかの実施形態において、細胞は、そのがん患者自身から単離された。いくつかの実施形態において、細胞は、ドナーにより、または細胞バンクから提供された。細胞ががん患者から単離される場合、望まれない免疫反応が最小化され得る。
【0123】
がんの非限定的な例としては、膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、食道がん、頭頸部がん、腎臓がん(kidney cancer)、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、メラノーマ、膵臓がん、前立腺がん、および甲状腺がんがあげられる。いくつかの実施形態において、がんは、胃がん、膵臓がん、食道がん、卵巣がん、および肺がんの1つまたはそれを超えるものである。
【0124】
細胞の生存期間の増加に関連する、本開示の抗体もしくはそのバリアント、または誘導体によって処置、予防、診断、および/または予後判定され得る、さらなる障害または状態としては、それらに限定されないが、白血病(急性白血病(例えば、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、および赤白血病を含む)を含む)、および慢性白血病(例えば、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ球性白血病)を含む)、真性多血症、リンパ腫(例えば、ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、および固形腫瘍(それらに限定されないが、肉腫および癌(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、へパトーマ、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胚性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、グリオーム、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫(menangioma)、メラノーマ、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫など)を含む)などの、悪性腫瘍および関連する障害の進行、および/または転移があげられる。
【0125】
任意の特定の患者のための特定の投与および処置レジメンは、様々な因子(使用される特定の抗体、そのバリアントまたは誘導体、患者の年齢、体重、一般的健康、性別、および食事、ならびに投与の時間、排泄速度、薬物の組み合わせ、処置される特定の疾患の重症度を含む)に依存する。医療介護者によるこのような因子の判断は、当業者の範囲内である。量は、また、処置される個々の患者、投与経路、製剤の種類、使用される化合物の性質、疾患の重症度、および所望の効果にも依存する。使用される量は、当該技術分野においてよく知られている薬理学的および薬物動態学的原理によって決定され得る。
【0126】
いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、炎症または炎症性疾患を処置するために使用され得る。炎症は、いくつかの実施形態では、傷害、感染、または自己免疫疾患によって引き起こされ得る。いくつかの実施形態では、炎症は、鼻ポリープ(NP)などの皮膚炎症である。
【0127】
抗体、バリアントの投与方法としては、それらに限定されないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口経路があげられる。抗原結合ポリペプチドまたは組成物は、任意の慣習的な経路、例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮または粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を通した吸収によって投与され得、また、他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与され得る。よって、本開示の抗原結合ポリペプチドを含む医薬組成物は、経口で、直腸に、非経口で、大槽内に(intracistemally)、腟内に、腹腔内に、局所に(粉末、軟膏、ドロップ、または経皮吸収パッチによって)、頬側に(bucally)に、または口腔もしくは鼻スプレーとして投与され得る。
【0128】
用語「非経口」は、本明細書で使用される場合、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下、ならびに関節内注射および注入を含む、投与モードを指す。
【0129】
投与は、全身または局部であり得る。さらに、本開示の抗体を、任意の適切な経路(脳室内および髄腔内注射を含む)によって、中枢神経系内に導入することが望ましいことがあり得る;脳室内注射は、(例えば、レザバー(例えば、オマヤレザバー)に取り付けられた)脳室内カテーテルによって容易になり得る。肺投与もまた、(例えば、インへラーまたはネビュライザー、およびエアロゾル化剤を用いた製剤を使用することによって)採用することができる。
【0130】
本開示の抗原結合ポリペプチドまたは組成物を、処置を必要とする範囲に局部に投与することが望ましいことがあり得る;これは、例えば(そして限定としてではないが)、手術の間の局部注入によって、手術後の創傷被覆を用いた(例えば、組み合わせた)局所適用によって、注射によって、カテーテルによって、坐剤によって、またはインプラント(前記インプラントは、多孔性、非多孔性、またはゼラチン質材料(シラスティック膜(sialastic membrane)のような膜、または繊維を含む)である)によって、実現され得る。好ましくは、本開示のタンパク質(抗体を含む)を投与する場合、タンパク質が吸収されない材料の使用には注意しなければならない。
【0131】
炎症性、免疫性、または悪性の疾患、障害、または状態の処置、阻害、および予防において有効である本開示の抗体の量は、標準的な臨床技術によって決定することができる。さらに、in vitroアッセイが、最適な投与量範囲の確認を助けるために、必要に応じて採用され得る。製剤において採用されるべき正確な用量は、また、投与経路ならびに疾患、障害、または状態の重篤度に依存し、また、医師の判断および各患者の状況に従って決定すべきである。有効用量は、in vitroまたは動物モデル試験系から導かれる用量反応曲線から推定され得る。
【0132】
一般的な提案として、患者に投与される本開示の抗原結合ポリペプチドの投与量は、典型的には、0.1mg/kg~100mg/kg(患者の体重)、0.1mg/kg~20mg/kg(患者の体重)、または1mg/kg~10mg/kg(患者の体重)である。一般に、ヒト抗体は、外来性ポリペプチドに対する免疫応答のために、他の種に由来する抗体よりも、ヒトの体内で半減期が長い。よって、より低投与量のヒト抗体およびより低頻度の投与が可能になることが多い。さらに、修飾(例えば、脂質化など)による抗体の(例えば、脳の中への)取り込みおよび組織通過の増強によって、本開示の抗体の投与の投与量および頻度が低減され得る。
【0133】
追加の実施形態において、本開示の組成物は、サイトカインと組み合わせて投与される。本開示の組成物と共に投与され得るサイトカインとしては、それらに限定されないが、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、抗CD40、CD40L、およびTNF-αがあげられる。
【0134】
追加の実施形態において、本開示の組成物は、他の治療または予防レジメン(例えば、放射線治療など)と組み合わせて投与される。
診断方法
【0135】
IL-13RA2の過剰発現は、ある特定の腫瘍サンプルにおいて観察され、IL-13RA2過剰発現細胞を有する患者は、本開示の抗IL-13RA2抗体による処置に対して応答性である可能性がある。したがって、本開示の抗体は、また、診断および予後判定目的のために使用され得る。
【0136】
好ましくは細胞を含むサンプルは、患者(がん患者または診断を望む患者であり得る)から取得され得る。細胞は、患者からの腫瘍組織もしくは腫瘍塊、血液サンプル、尿サンプル、または任意のサンプルの細胞であり得る(be a cell)。必要に応じてサンプルの前処理をしたら、サンプルは、本開示の抗体と共に、サンプル中に潜在的に存在するIL-13RA2タンパク質と抗体の相互作用を可能にする条件下でインキュベートされ得る。サンプル中のIL-13RA2タンパク質の存在を検出するために、抗IL-13RA2抗体を利用して、ELISAなどの方法が使用され得る。
【0137】
サンプル中のIL-13RA2タンパク質の存在(必要に応じて、量または濃度と共に)は、患者が抗体による処置に適していることの指標として、または患者ががん処置に応答した(または応答しなかった)ことの指標として、がんの診断のために使用され得る。予後判定方法のために、検出は、がん処置を開始したら、処置の進展を示すために、ある特定のステージにおいて、1回、2回、またはそれを超える回数実施され得る。
組成物
【0138】
本開示は、また、医薬組成物も提供する。このような組成物は、有効量の抗体、および許容され得るキャリアを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、第2の抗がん剤(例えば、免疫チェックポイント阻害剤)をさらに含む。
【0139】
特定の実施形態において、用語「医薬的に許容され得る」は、連邦政府もしくは州政府の規制当局によって承認されていること、または米国薬局方もしくは動物、およびより具体的にはヒトにおいて使用するための一般的に認識されている薬局方に収載されていることを意味する。さらに、「医薬的に許容され得るキャリア」は、一般的には、非毒性の固体、半固体、もしくは液体フィラー、希釈剤、封入材料、または任意の種類の製剤化補助材料である。
【0140】
用語「キャリア」は、それと共に医薬品が投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。このような医薬品キャリアは、滅菌液体、例えば、水および油(石油、動物、植物、または合成起源のもの(例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油など)を含む)であり得る。水は、医薬組成物が静脈内投与される場合、好ましいキャリアである。食塩溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液もまた、特に注射用液剤のために、液体キャリアとして採用され得る。適切な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、ショ糖、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどがあげられる。組成物は、必要であれば、また、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、または酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩のようなpH緩衝剤も含み得る。ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムのような抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸のようなキレート剤;および塩化ナトリウムまたはデキストロースのような浸透圧調節のための剤もまた想定される。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉剤・散剤(powder)、徐放性製剤などの形態を取り得る。組成物は、慣用の結合剤およびトリグリセリドのようなキャリアを用いる、坐剤として製剤化され得る。経口製剤は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような標準的なキャリアを含み得る。適切な医薬品キャリアの例が、E.W.Martinによる、Remington’s Pharmaceutical Sciences(参照により本明細書に援用される)に記載されている。このような組成物は、患者に対する適切な投与のための形態を提供するために適切な量のキャリアと共に、治療有効量の抗原結合ポリペプチドを、好ましくは精製された形態で含む。製剤は、投与モードに適しているべきである。非経口製剤(parental preparation)は、ガラスまたはプラスチック製の、アンプル、ディスポーザブルシリンジ、または複数回投与バイアルに封入され得る。
【0141】
ある実施形態において、組成物は、ヒトに対する静脈内投与に適合した医薬組成物として通例の手順に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与用の組成物は、滅菌等張水性緩衝液中の液剤である。必要な場合、組成物は、また、可溶化剤、および注射部位の痛みを緩和するためにリグノカインのような局所麻酔薬も含み得る。一般に、成分は、個別に供給されてもよく、単位剤形で一緒に混合して(例えば、活性薬剤の量を表示したアンプルまたはサシェ(sachette)のような密封された容器に入った乾燥凍結乾燥粉末または無水濃縮物として)供給されてもよい。組成物が注入によって投与されるものである場合、滅菌医薬品グレードの水または生理食塩水を含むインフュージョンボトルで投薬され得る。組成物が注射によって投与されるものである場合、投与前に成分が混合され得るように、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルが提供され得る。
【0142】
本開示の化合物は、中性形態または塩形態で製剤化され得る。医薬的に許容され得る塩は、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するものなどのアニオンと形成される塩、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイなどに由来するものなどのカチオンと形成される塩を含む。
【実施例
【0143】
実施例
実施例1:ヒトIL-13RA2に対するマウスおよびラットのモノクローナル抗体の作製
ヒトIL-13RA2タンパク質を、異なる系統のマウスおよびラットを免役するために使用し、それによってハイブリドーマを生成させた。IL-13RA2陽性バインダーを選択し、サブクローニングした。その後、in vitro結合および機能的スクリーニングを行い、最も高い結合親和性および最も強い機能的能力を有するリード抗体を同定した。
【0144】
12個のリードマウス抗体のVH/VL配列が以下の表1に提供される。
【表1-1】

【表1-2】

実施例2.IL-13RA2タンパク質に対するマウス抗体の結合
【0145】
この実施例では、A375細胞上に発現されたヒトIL-13RA2タンパク質に結合する能力について、マウス抗体のうち28個を試験した。
【0146】
IL-13RA2を内因的に発現するA375細胞がフラスコから採取された。100μlの1×10細胞/mlの細胞を、一次抗体と共に、100 nM~0.006 nMの4倍連続希釈で氷上で30分間インキュベーションした。200μlのFACS緩衝液で二回洗浄した後、細胞を二次抗体と氷上で30分間インキュベーションした。細胞を200μlのFACS緩衝液で2回洗浄し、FACSによって分析した。
【0147】
研究の結果(図1A~Bおよび表2)は、精製マウス抗体が、高いEC50でA375細胞上の内因的に発現したIL-13RA2に結合し得ることを示す。
【表2】

実施例3.IL-13RA2タンパク質に対するラット抗体の結合
【0148】
この実施例では、A375細胞上に発現されたヒトIL-13RA2タンパク質に結合する能力について、ラット抗体のうち24個を試験した。
【0149】
IL-13RA2を内因的に発現するA375細胞がフラスコから採取された。100μlの1×10細胞/mlの細胞を、一次抗体と共に、100 nM~0.006 nMの4倍連続希釈で氷上で30分間インキュベーションした。200μlのFACS緩衝液で二回洗浄した後、細胞を二次抗体と氷上で30分間インキュベーションした。細胞を200μlのFACS緩衝液で2回洗浄し、FACSによって分析した。
【0150】
研究の結果(図2A~Bおよび表3)は、精製ラット抗体が、高いEC50でA375細胞上の内因的に発現したIL-13RA2に結合し得ることを示す。
【表3】

実施例4.IL-13RA2タンパク質に対するキメラ抗体の結合
【0151】
この実施例では、A375細胞上に発現したヒトIL-13RA2タンパク質に結合する能力について、マウス抗体から調製された(ヒトFcを有する)キメラ抗体を調製および試験した。
【0152】
マウスVHおよびVK遺伝子を合成的に産生し、次いで、それぞれヒトガンマ1およびヒトカッパ定常ドメインを含むベクターにクローニングした。精製されたキメラ抗体は、トランスフェクションされたCHO細胞から産生された。
【0153】
IL-13RA2を内因的に発現するA375細胞がフラスコから採取された。100μlの1×10細胞/mlの細胞を、一次キメラ抗体と共に、300 nM~0.002 nMの3倍連続希釈で氷上で30分間インキュベーションした。200μlのFACS緩衝液で二回洗浄した後、細胞を二次抗体と氷上で30分間インキュベーションした。細胞を200μlのFACS緩衝液で2回洗浄し、FACSによって分析した。
【0154】
図3および表4に示されるように、キメラ抗体は、異なるEC50でヒトIL-13RA2に結合した。
【表4】

実施例5.キメラ抗体の抗体依存性細胞傷害(ADCC)
【0155】
この実施例では、キメラ抗体の抗体依存性細胞傷害(ADCC)を測定した。
【0156】
ADCCレポーターバイオアッセイは、ADCC MOA経路活性化:エフェクター細胞におけるNFAT(活性化T細胞の核因子)経路を介した遺伝子転写の活性化におけるより早い時点での代替的な読み出しを使用する。さらに、ADCCレポーターバイオアッセイは、FcγRIIIa受容体、V158(高親和性)変異体、およびホタルルシフェラーゼの発現を駆動するNFAT応答エレメントを安定に発現する操作されたJurkat細胞をエフェクター細胞として使用する。ADCC MOAにおける抗体生物活性は、NFAT経路活性化の結果として産生されるルシフェラーゼによって定量され;エフェクター細胞のルシフェラーゼ活性は発光読み出しで定量される。シグナルは高く、アッセイのバックグラウンドは低い。
【0157】
IL-13RA2キメラモノクローナル抗体の段階希釈物を、操作されたJurkatエフェクター細胞(ADCC Bioassay Effector Cells)、ADCC Bioassay Target Cells(A375細胞株)と共に37°Cで6時間誘導インキュベーションした。Bio-Glo(商標)試薬を使用してルシフェラーゼ活性を定量した。
【0158】
結果は図4および表5に提示される。示されるように、これらのキメラ抗体はすべて、非常に強いADCC活性を示した。
【表5】

実施例6.キメラ抗体の細胞傷害活性
【0159】
この実施例では、キメラ抗体の殺細胞活性を測定した。
【0160】
IL-13RA2を内因的に発現させたA375細胞を96ウェルプレートに3000細胞/ウェルで播種した。一晩インキュベーションした後、MMAEとコンジュゲートした各希釈試料を添加した。5日間のインキュベーション後、細胞生存率をCellTiter-Glo試薬によって測定した。ルシフェラーゼ活性をEnvisonによって検出した。
【0161】
図5および表6に示されるように、これらのキメラ抗体はすべて、非常に強い細胞傷害活性を有する。
【表6】

実施例6.キメラ抗体のエンドサイトーシス
【0162】
この実施例では、キメラ抗体を、表面IL-13RA2に結合したときに内在化を誘導する能力について記載した。
【0163】
この方法は、中性pHでは蛍光性ではないが、内在化と共に酸性pHで高度に蛍光性になる新規の親水性で明るいpHセンサー色素(pHAb色素)を使用する。エンドサイトーシスの過程を検出するために使用され得る。CHO-K1/H_IL-13RA2、ヒトIL-13RA2を過剰発現するHEK-293/H_IL-13RA2細胞、および標的細胞としてヒトIL-13RA2を内因的に発現するA375、pHAb色素で標識した検出抗体を添加して、インビトロでIL-13RA2キメラモノクローナル抗体のエンドサイトーシスを評価した。
【0164】
IL-13RA2キメラモノクローナル抗体の段階希釈物を37℃で24時間インキュベーションした。ルシフェラーゼ活性が検出された。
【0165】
結果は図6A~Cおよび表7に示され、これらのキメラ抗体が非常に強いエンドサイトーシス活性を有することを実証する。
【表7】

実施例7.マウス抗体のヒト化
【0166】
マウス抗体のうちの4つ、61H8C1、57F8H3F1、72B4H4および73A11E2をヒト化のために選択した。
【0167】
各マウス抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列をヒトIg遺伝子配列の利用可能なデータベースと比較して、全体的に最も適合するヒト生殖細胞系Ig遺伝子配列を見出だした。次いで、マウス抗体のCDRを一致したヒト配列にグラフトした。cDNAを合成し、ヒト化抗体を作製するために使用した。次いで、マウス抗体からの特定の復帰突然変異をヒト化抗体に戻して導入した。翻訳後修飾の確率を減らすために、特定のアミノ酸を変異させた。
【0168】
ヒト化抗体のアミノ酸配列を以下の表8~11に提供する。
ヒト化配列
A.61H8C1
【表8A】

【表8B】

【表8C】

【表8D】

【表8E】

B.57F8H3F1
【表9A】

【表9B】

【表9C】

【表9D】

【表9E】

C.72B4H4
【表10A】

【表10B】

【表10C】

【表10D】

【表10E】

D.73A11E2
【表11A】

【表11B】

【表11C】

【表11D】

【表11E】

実施例8.ヒト化抗体の結合親和性
【0169】
この実施例では、ヒト化抗体の結合親和性を試験した。
【0170】
IL-13RA2を内因的に発現するA375細胞がフラスコから採取された。100μlの1×10細胞/mlの細胞を、一次ヒト化抗体と共に、200 nM~0.003 nMの4倍連続希釈で氷上で30分間インキュベーションした。200μlのFACS緩衝液で二回洗浄した後、細胞を二次抗体と氷上で30分間インキュベーションした。細胞を200μlのFACS緩衝液で2回洗浄し、FACSによって分析した。
【0171】
結果は図7Aおよび表12に提示される。示されるように、ヒト化抗体は、高いEC50でヒトIL-13RA2に結合し得る。
【表12A】

【表12B】

【表12C】

【表12D】

【表12E】

【表12F】

【表12G】

【表12H】

【表12I】

【表12J】

実施例9.ヒト化抗体のADCC
【0172】
この実施例では、ヒト化抗体の抗体依存性細胞傷害(ADCC)を測定した。
【0173】
ADCCレポーターバイオアッセイは、ADCC MOA経路活性化:エフェクター細胞におけるNFAT(活性化T細胞の核因子)経路を介した遺伝子転写の活性化におけるより早い時点での代替的な読み出しを使用する。さらに、ADCCレポーターバイオアッセイは、FcγRIIIa受容体、V158(高親和性)変異体、およびホタルルシフェラーゼの発現を駆動するNFAT応答エレメントを安定に発現する操作されたJurkat細胞をエフェクター細胞として使用する。ADCC MOAにおける抗体生物活性は、NFAT経路活性化の結果として産生されるルシフェラーゼによって定量され;エフェクター細胞のルシフェラーゼ活性は発光読み出しで定量される。シグナルは高く、アッセイのバックグラウンドは低い。
【0174】
IL-13RA2ヒト化モノクローナル抗体の段階希釈物を、操作されたJurkatエフェクター細胞(ADCC Bioassay Effector Cells)、ADCC Bioassay Target Cells(A375細胞株)と共に37°Cで6時間誘導インキュベーションした。Bio-Glo(商標)試薬を使用してルシフェラーゼ活性を定量した。
【0175】
結果は、これらのヒト化抗体が非常に強いADCC活性を有することを示す。
【0176】
結果を図8A(IL-13RA2過剰発現細胞株)および図8B(内因性神経膠腫細胞株)に示す。示されるように、これらのヒト化抗体はすべて、非常に強いADCC活性を示した。
実施例10.ヒト化抗体のエンドサイトーシス
【0177】
この実施例では、キメラ抗体を、表面IL-13RA2に結合したときに内在化を誘導する能力について記載した。
【0178】
この方法は、中性pHでは蛍光性ではないが、内在化と共に酸性pHで高度に蛍光性になる新規の親水性で明るいpHセンサー色素(pHAb色素)を使用する。エンドサイトーシスの過程を検出するために使用され得る。CHO-K1/H_IL-13RA2、ヒトIL-13RA2を過剰発現するHEK-293/H_IL-13RA2細胞、および標的細胞としてヒトIL-13RA2を内因的に発現するA375、pHAb色素で標識した検出抗体を添加して、インビトロでIL-13RA2キメラモノクローナル抗体のエンドサイトーシスを評価した。
【0179】
選択されたヒト化抗体の段階希釈物を37℃で24時間インキュベーションした。ルシフェラーゼ活性が検出された。
【0180】
結果を図9A(IL-13RA2過剰発現細胞株)および図9B~C(内因性細胞株)に示し、これらのヒト化抗体が非常に強いエンドサイトーシス活性を有することを実証する。
実施例11.抗体-薬物コンジュゲートのインビトロ細胞傷害
【0181】
この実施例では、異なる神経膠腫細胞に対する毒性薬物(ADC)にコンジュゲートされたヒト化抗体の細胞傷害を試験した。
【0182】
IL-13RA2を内因的に発現するA375細胞およびU251細胞、IL-13RA2を安定的に発現するHEK-293細胞を、96ウェルプレートに3000細胞/ウェルで播種した。一晩インキュベーションした後、MMAEとコンジュゲートした各希釈試料を添加した。5日間のインキュベーション後、細胞生存率をCellTiter-Glo試薬によって測定した。ルシフェラーゼ活性をEnvisonによって検出した。
【0183】
図10A~Cに示されるように、これらのADCは非常に強い細胞傷害活性を有する。
実施例12.抗体-薬物コンジュゲートのインビボ細胞傷害
【0184】
この実施例では、MMAE(ADC)にコンジュゲートされたヒト化抗体のインビボ細胞傷害を試験した。
【0185】
この試験では、6~8週齢の雌NCGマウス(Jiangsu Jicui Yaokang Biotechnology Co.,Ltd)を使用した。各マウスの右腋窩(外側)に、腫瘍発生のためにマトリゲル(V:V=1:1)とA375腫瘍細胞(5×106)を含む0.1 mlのPBSを皮下接種した。腫瘍体積が約70mmに達したとき、細胞接種後5日目に、動物をグループ分けし、次いで、有効性試験のために処置を開始した。
【0186】
3mg/kgの用量の試験品を、0日目、7日目および14日目に静脈内(i.v.)投与した。実験を23日目に終了した。腫瘍サイズは、毎週3回、ノギスを使用して2次元で測定し、体積は、式V=0.5a×b(式中、aおよびbは、それぞれ、腫瘍の長径および短径である)を使用して、立方ミリメートル(mm)で表した。次いで、この腫瘍サイズを、T/C(%)値を算出するために使用した。T/C(%)は、式T/C%=(T-T)/(V-V)×100(Tは、所与の日における処置群の平均腫瘍体積であり、Tは、処置の最初の日における処置群の平均腫瘍体積であり、Viは、Tと同じ日におけるビヒクル対照群の平均腫瘍体積であり、Vは、処置の最初の日におけるビヒクル群の平均腫瘍体積である)を使用して算出した。TGIは、各群について、式TGI(%)=[100-T/C]を使用して算出した。データ点は群(n=5)平均を表し、エラーバーは平均の標準誤差(SEM)を表す。p値を、PBS対照と比較したt検定による腫瘍サイズに基づいて計算した。
【0187】
図11Aは、異なる群における担癌マウスの体重変化を示す。データ点は群平均体重を表す。エラーバーは、平均の標準誤差(SEM)を表す。図11Bおよび表13は、試験ADCの投与後のA375担癌マウスの腫瘍成長曲線を示す。これらの図に示されるように、ADCは強いインビボ細胞傷害活性を示した。
【表13】

* * *
【0188】
本開示は、範囲において、記載されている特定の実施形態(それらは、本開示の個別の態様の1つの例証であることが意図されている)によって限定されるものではなく、機能的に同等の任意の組成物および方法は、本開示の範囲内である。本開示の趣旨および範囲を逸脱することなく、本開示の方法および組成物に種々の改変および変形を行い得ることは、当業者には明白である。よって、本開示の改変および変形が、添付の特許請求の範囲またはその均等物の範囲内であることを条件として、本開示は、そのような改変および変形を包含することが意図されている。
【0189】
本明細書において言及された全ての刊行物および特許出願は、個別の刊行物または特許出願が、それぞれ具体的かつ個別に参照により援用されるものと示されている場合と同程度に、参照により本明細書に援用される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図7I
図7J
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
【配列表】
2025505777000001.xml
【国際調査報告】