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特表2025-505780未熟児及び新生児における臍カテーテルの配置を補助するためのデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】未熟児及び新生児における臍カテーテルの配置を補助するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/02 20060101AFI20250220BHJP
【FI】
A61M25/02 504
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024548465
(86)(22)【出願日】2023-02-13
(85)【翻訳文提出日】2024-08-26
(86)【国際出願番号】 EP2023053481
(87)【国際公開番号】W WO2023156336
(87)【国際公開日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】102022000002873
(32)【優先日】2022-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513092051
【氏名又は名称】ペーエフエム メディカル ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】PFM MEDICAL GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルファース、ピア
(72)【発明者】
【氏名】ハーゼ、ビアンカ
(72)【発明者】
【氏名】コックス、ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ラウフ、ダニエル
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA04
4C267BB25
4C267CC30
(57)【要約】
本発明は、未熟児及び新生児(3)における、臍カテーテル(2)の配置を補助するためのデバイス(1)に関する。該デバイス(1)は、第1の脚(4)及び第2の脚(5)を備える。第1の脚(4)及び第2の脚(5)は、第1の端部(6)の領域に半円筒形凹部(7)をそれぞれ備え、かつ第2の端部(8)の領域においてスプリング要素(9)を介して互いに接続される。スプリング要素(9)は、第1の脚(4)及び第2の脚(5)のそれぞれの第1の端部(6)が互いから離間している第1の動作状態において、スプリング力によって第1の脚(4)及び第2の脚(5)を保持し、第1の脚(4)及び第2の脚(5)は、スプリング力に抗して、第1の脚(4)及び第2の脚(5)のそれぞれの第1の端部(6)が互いに直接隣接して配置されている第2の動作状態に移行可能である。第1の脚(4)及び第2の脚(5)のそれぞれの第1の端部(6)の領域における半円筒形凹部(7)は、第2の動作状態において、未熟児及び新生児(3)の臍帯(11)のための円筒形レセプタクル(10)を一緒に形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
未熟児及び新生児(3)における臍カテーテル(2)の配置を補助するためのデバイスで(1)あって、
第1の脚(4)及び第2の脚(5)を備え、
前記第1の脚(4)及び前記第2の脚(5)は、第1の端部(6)の領域に半円筒形凹部(7)をそれぞれ備え、かつ第2の端部(8)の領域においてスプリング要素(9)を介して互いに接続され、
前記スプリング要素(9)は、前記第1の脚(4)及び前記第2の脚(5)のそれぞれの前記第1の端部(6)が互いから離間している第1の動作状態において、スプリング力によって前記第1の脚(4)及び前記第2の脚(5)を保持し、前記第1の脚(4)及び前記第2の脚(5)は、前記スプリング力に抗して、前記第1の脚(4)及び前記第2の脚(5)のそれぞれの前記第1の端部(6)が互いに直接隣接して配置されている第2の動作状態に移行可能であり、
前記第1の脚(4)及び前記第2の脚(5)のそれぞれの前記第1の端部(6)の前記領域における前記半円筒形凹部(7)は、前記第2の動作状態において、前記未熟児及び新生児(3)の臍帯(11)のための円筒形レセプタクル(10)を一緒に形成する、デバイス(1)。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイス(1)はさらに、
前記デバイス(1)を前記第2の動作状態にロックするためのロッキングデバイス(12)を備える、デバイス(1)。
【請求項3】
請求項2に記載のデバイス(1)であって、
前記ロッキングデバイス(12)は、解放可能または解放不能に、特にスナップイン接続として設計されている、デバイス(1)。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のデバイス(1)であって、
前記ロッキングデバイス(12)は、前記第1の脚(4)及び前記第2の脚(5)の前記第1の端部(6)に形成され、特に、前記ロッキングデバイス(12)の第1の部分(13)が、前記第1の脚(4)の前記第1の端部(6)に形成され、前記ロッキングデバイス(12)の第2の部分(14)が、前記第2の脚(5)の前記第1の端部(6)に形成される、デバイス(1)。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のデバイス(1)はさらに、
前記第2の動作状態において前記円筒形レセプタクル(10)の前記領域において前記デバイス(1)の遠位側(16)に隆起(15)を備える、デバイス(1)。
【請求項6】
請求項5に記載のデバイス(1)であって、
前記隆起(15)は、2つの部分に分割され、前記隆起の一方の部分(18)は、前記第1の脚(4)及び前記第2の脚(5)のそれぞれに配置され、前記隆起の前記2つの部分(18)は、前記第2の動作状態において互いに直接隣接している、デバイス(1)。
【請求項7】
請求項6に記載のデバイス(1)であって、
半円形要素(20)が前記隆起(15)の各部分(18)の遠位端(19)に配置され、前記半円形要素(20)は、前記第1の脚(4)及び前記第2の脚(5)の各々の半円筒形凹部(7)と軸方向に整列されており、2つの前記半円形要素(20)は、前記未熟児及び新生児(3)の前記臍帯(11)を固定するために、前記第2の動作状態において円形レセプタクル(21)を形成し、前記円形レセプタクル(21)は、前記円筒形レセプタクル(10)と前記円形レセプタクル(21)との間に切断チャネルを残すように、前記第2の動作状態において前記円筒形レセプタクル(10)と軸方向に整列され、かつ前記円筒形レセプタクル(10)から離間している、デバイス(1)。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか一項に記載のデバイス(1)であって、
前記隆起(15)又は前記隆起の前記(18)は、所定の破断エッジ(22)を介して前記デバイス(1)の前記第1の脚(4)及び前記第2の脚(5)の少なくとも一方に接続される、デバイス(1)。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のデバイス(1)であって、
前記第1の動作状態における前記半円筒形凹部(7)は円錐形であり、前記第2の動作状態における前記円筒形レセプタクル(10)は円錐形であり、前記円錐形は、前記デバイス(1)の近位側(17)から遠位側(16)に向かって広がっている、デバイス(1)。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のデバイス(1)であって、
前記第1の動作状態における前記半円筒形凹部(7)及び前記第2の動作状態における前記円筒形レセプタクル(10)は、内側に溝が付けられており、特にラメラ(23)を形成するための開口部を有する、デバイス(1)。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のデバイス(1)であって、
前記第1の脚(4)及び前記第2の脚(5)の各々は、遠位側(16)に外向きに延びるウィング(24)をフィンガガードとして有する、デバイス(1)。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のデバイス(1)であって、
前記スプリング要素(9)は円形であって、前記第1の動作状態では開いており、前記第2の動作状態では閉じている、デバイス(1)。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載のデバイス(1)であって、
前記デバイス(1)はワンピースで形成されている、デバイス(1)。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載のデバイス(1)であって、
前記デバイス(1)は、プラスチック材料で製造されている、デバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未熟児及び新生児における、特に未熟児及び新生児の臍帯血管への臍カテーテルの配置を補助するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
未熟児又は新生児の初期治療中、薬剤又は流体をその未熟児又は新生児に投与するために血管アクセスが(直ちに)必要となる場合がある。特に重要なことは、蘇生の文脈における未熟児及び新生児の初期治療は、特に迅速かつ安全でなければならないことである。
【0003】
最新技術では、臍カテーテル、末梢静脈アクセス及び骨内アクセス((intraossaere Zugang)i.o.アクセス)の血管アクセスの3つの異なる方法が知られており、これらが定常的に使用されている。全てのアクセスは経験豊富な人員によって配置される。これは、医療関係者の一部に対して多くの実践及び経験を必要とする。特に、第1の代替例の場合、数人が同時に血管アクセスを配置していて慌ただしい。これはしばしば、未熟児及び新生児の周りの空間的問題につながる。
【0004】
末梢静脈カテーテル(peripheren Venenkatherters、PVK)の迅速な配置は、特別に訓練された経験豊富な人員によって行われる。しかしながら、この配置は常に成功するわけではなく、未熟児又は新生児がより未熟である又はより圧迫された状態であればあるほど、ますます困難になる。特に蘇生の間、カテーテルの挿入はしばしば特に困難である。可能な穿刺部位は、手の甲、足の甲、頭部の静脈及び肘静脈である。特に、非常に小さな未熟児、ならびに循環状態が不十分の未熟児及び新生児において、末梢静脈アクセスの配置は通常不可能である。
【0005】
代替的なアクセスとして、近位脛骨を介してi.o.手法を行うことができる。しかしながら、i.o.手法は、3000グラムの体重からのみ許容可能であり、下肢骨の骨損傷、炎症及び成長障害などの付加的なリスクをもたらす。しかしながら、現在では、i.o.アクセスを挿入する方が臍カテーテルよりも技術的に容易であるため、多くの場合はるかに速い。
【0006】
別の代替的なアクセスは、臍カテーテルである。この場合、臍帯の血管にカテーテルを設けるか、又はカニューレを挿入する。血管は、臍静脈又は臍動脈であり得る。重篤状態にある未熟児及び新生児における生後数分での静脈アクセス又は動脈アクセスは、ボリュームボーラス、グルコース、及びスプラレニン(Suprarenin)などの緊急薬剤を投与するのに不可欠である。そうすることができないと、低血圧、低血糖症、又は持続性徐脈の後遺症をもたらす可能性が高まる。
【0007】
臍静脈カテーテル(Nabelvenenkatheters、NVK)又は臍動脈カテーテル(Nabelarterienkatheters、NAK)を配置するときの主な問題は、血管を検出し、その血管を、血管内腔が見えるように準備することである。現在の最新技術では、これは、例えば、2つの外科用鉗子を使用して臍を手動で拡張することによって解決される。これは、少なくとも他の一人が、もう一人がカテーテルを配置することができるように臍を提示することを必要とする。
【0008】
したがって、臍カテーテルを配置することには2つの大きな欠点がある。第1に、カテーテルを配置するために協調する少なくとも2人の経験豊富な医師が必要である。これらの医師は2人とも、臍に対して積極的に作業し、それにより、未熟児及び新生児の周りで空間的問題が生じ得る。第2に、それら担当医の多くの経験が必要となる。カテーテルを配置することは、通常、職人的な観点では非常に困難なことが判明する、又はフラストレーションを生じる。
【0009】
これら2つの欠点を克服するために、特許文献1は、カテーテルを未熟児の臍帯血管内に配置するための医療デバイスであり、長手方向軸、近位端、及び遠位端を有する医療デバイスを開示している。提案されたデバイスは、臍帯の一部分を包囲するシースとして構成される。この医療デバイスは、臍帯をクランプするクランピングデバイスと、臍界面を形成するために臍帯を切断する切断デバイスと、臍界面を拡張するフッキングデバイスと、を含む。医療デバイスは、臍帯をクランプし、臍帯を分離し、臍カテーテルの配置のために臍帯を拡張する。しかしながら、この医療デバイスの欠点は、その複雑な構造及びそれに関連する製造コストである。医療デバイスは再使用可能であるが、各使用後に消毒しなければならず、これは特に多数の要素が移動するので費用がかかる。別の欠点は、臍血管の位置及び解剖学的形状が大きく変動するため、上記特許に記載されている解決策を実施することが困難となり得ることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2018/202844号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、カテーテルを臍帯血管内に配置するための新しい医療デバイスを開示することであり、その医療デバイスは、臍帯血管を介したカテーテルの困難な挿入を単純化し、先行技術において知られている医療デバイスの欠点を回避する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、この問題は、未熟児及び新生児における臍カテーテルの配置を補助するためのデバイスによって解決され、該デバイスが、
第1の脚及び第2の脚を備え、
第1の脚及び第2の脚は各々、第1の端部の領域に半円筒形凹部を備え、第2の端部の領域においてスプリング要素を介して互いに接続され、
スプリング要素は、第1の脚及び第2の脚のそれぞれの第1の端部が互いから離間している第1の動作状態において、スプリング力によって第1の脚及び第2の脚を保持し、第1の脚及び第2の脚は、スプリング力に抗して、第1の脚及び第2の脚のそれぞれの第1の端部が互いに直接隣接して配置されている第2の動作状態に移行可能であり、
第1の脚及び第2の脚の個別の第1の端部の領域における半円筒形凹部は、第2の動作状態において、未熟児及び新生児の臍帯のための円筒形レセプタクルを一緒に形成する。
【0013】
本発明によるデバイスは、2つの可動脚のみがスプリング要素を介して互いに接続されているので、特に単純な設計を有する。臍帯は、第2の動作状態において円筒形レセプタクル内に固定される。第2の動作状態において互いに隣接している第1の脚及び第2の脚の遠位縁部は、本発明によるデバイスの遠位縁部において臍帯を切断するために、メスのガイドとして機能する。このようにして、特に直線的な切刃が達成され、このような切刃を用いると、臍帯内の血管をはっきりと見ることができ、カテーテルを問題なく挿入することもできるので、先行技術において必要とされる臍帯を拡張することを回避することができることが見出された。
【0014】
本発明によるデバイスによって、臍カテーテルを、未熟児及び新生児の臍帯の血管に容易かつ迅速に挿入することができる。この目的のために、臍帯は、デバイスが圧縮されてそれによって第2の動作状態に移行したときに、第1の脚及び第2の脚の第1の端部においてレセプタクル内に配置されるように、第1の動作状態ではデバイスの第1の脚と第2の脚との間に配置されている。臍帯が第2の動作状態において形成された円筒形レセプタクル内に固定されると、その臍帯はメスを用いて切断することができ、そのメスは、本発明によるデバイスの遠位縁部に沿って案内されることによって、きれいな切断が得られる。続いて、カテーテルを未熟児及び新生児の臍帯の所望する血管に挿入することができる。ここでデバイスが解放されると、デバイスは自動的に、第1の脚及び第2の脚が広がって臍帯が解放される第1の動作状態となる。カテーテルが挿入されていない血管から血液が漏出するのを防ぐために、臍帯を縛ることができる。これは同時に、カテーテルがそれ以上変位できないように、クランプされた血管内にカテーテルを固定する。
【0015】
本発明によるデバイスは、特に単純な設計を有し、特に旋回するナイフ又はフックのような移動する部分を有しない。その結果、本発明によるデバイスは、非常に容易に滅菌することができる。しかしながら、代替的に、本発明によるデバイスは、その単純な構造が安価な製造を可能にするので、使い捨て製品として難なく製造され、使用後に廃棄することもできる。したがって、先行技術の欠点が回避される。
【0016】
本発明の有利な変形形態では、デバイスは、デバイスを第2の動作状態にロックするためのロッキングデバイスを備える。これは、デバイスのユーザがスプリング力に抗してデバイスを第2の動作状態に保持する必要がなく、デバイスがこの第2の動作状態にロックされることを意味する。したがって、ユーザは、臍帯の切断及び臍カテーテルの配置に完全に集中することができる。好ましくは、ロッキングデバイスは、ユーザがデバイスを第2の動作状態に移行させたときに自動的にロックする。
【0017】
本発明の好ましい変形形態によれば、ロッキングデバイスは、臍カテーテルが配置された後にデバイスを再び取り外すことを可能にするために、特にラッチ接続として、着脱可能に設計されている。この目的のために、例えば、ラッチ接続は、ラッチを移動させることによって解放される。
【0018】
本発明による変形形態によれば、ロッキングデバイスは、第1の脚及び第2の脚の第1の端部に形成され、特に、ロッキングデバイスの第1の部分が、第1の脚の第1の端部に形成され、ロッキングデバイスの第2の部分が、第2の脚の第1の端部に形成される。したがって、特に、第1の脚及び第2の脚の第1の端部は、正確には、第2の動作状態において臍帯用の円筒形レセプタクルが形成される領域において、ロッキングデバイスによって互いに対してしっかりと固定される。したがって、第1の脚及び第2の脚の第1の端部が、ロッキングデバイスに起因して移動することができないので、臍帯はレセプタクル内にしっかりと固定される。例えば、第1の脚の第1の端部はアイレットを有し、第2の脚の第1の端部は、第2の動作状態においてそのアイレットに係合するデテント(突起)を有する。
【0019】
本発明の特に好ましい変形形態では、デバイスは、第2の動作状態において、臍帯の円筒形レセプタクルの領域においてデバイスの遠位側に隆起を備える。この隆起は、臍帯を切断するときに切刃(カウンターベアリング)として機能する。臍帯は、デバイスの遠位縁部に沿って案内されるメスによって切断される。隆起は、切断方向において臍帯の後方に配置されているので、臍帯は切断中に隆起によって支持され、切断がより容易になる。
【0020】
本発明の好ましい変形形態によれば、隆起は2つの部分に分割され、隆起の一方の部分は、第1の脚及び第2の脚の各々に配置される。第2の動作状態において、隆起の2つの部分は、互いに直接隣接して配置されている。典型的には、安全性の理由から、切断は常にユーザの身体から離れる方向に向けられる。この場合、それは、臍帯を切り開くための切断が、デバイスの第1の端部に向かって行われることを意味する。したがって、隆起は、デバイスの第1の端部に、好ましくは切断方向において、臍帯用の円筒形レセプタクルの後ろに配置されなければならない。しかしながら、この領域では、第1の脚及び第2の脚は、臍帯をデバイス内に受容することができるように、第1の動作状態では互いから離れている。この理由により、各脚が隆起の一部分を有し、これらが一緒になって第2の動作状態において隆起を形成することが好都合である。
【0021】
本発明の有利な変形形態では、半円形要素が隆起の個別の部分の遠位端に配置され、半円形要素は、個別の第1の脚及び第2の脚の半円筒形凹部と軸方向に整列されており、2つの半円形要素は、未熟児及び新生児の臍帯を固定するために、第2の動作状態において円形レセプタクルを形成し、円形レセプタクルは、円筒形レセプタクルと円形レセプタクルとの間に切断チャネルを残すように、第2の動作状態において円筒形レセプタクルと軸方向に整列され、円筒形レセプタクルから離間している。その結果、未熟児の臍帯は、円筒形レセプタクルによって切断チャネルの下方及び円形レセプタクルによって切開チャネルの上方の両方に固定される。これにより、臍帯の切断が特に容易になる。
【0022】
本発明による一変形形態によれば、隆起又は隆起の部分は、所定の破断エッジを介してデバイスの第1の脚及び第2の脚の少なくとも一方に接続される。したがって、隆起は、臍帯が切断された後に、それを単にスナップ解除することによってデバイスから容易に分離することができる。これは、隆起又はそれに接続された半円形要素などの部分が、臍帯の血管へのカテーテルの挿入を妨げることを防ぐ。
【0023】
本発明のさらなる変形形態によれば、第1の動作状態における半円筒形凹部及び第2の動作状態における円筒形レセプタクルの形状は円錐形であり、この円錐は、デバイスの近位側から遠位側に向かって広がっている。その結果、臍帯は、円筒形レセプタクル内に特に良好に固定される。さらに、これは、例えば、臍帯内の血管が近位領域、すなわち円錐のより狭い領域で圧搾されることを可能にし、それにより、切断後に臍帯の血管から流出する血液は全くない、又はごくわずかである。円錐は、未熟児及び新生児の血管系へのアクセスを提供するために、カテーテルを臍帯の血管に十分に深く挿入することができるように設計されるべきである。
【0024】
本発明による変形形態によれば、第1の動作状態における半円筒形凹部及び第2の動作状態における円筒形レセプタクルは、内側に溝が付けられており、特に、ラメラを形成するための開口部を有する。これは、円筒形レセプタクルにおける臍帯の固定をさらに改善する。
【0025】
本発明による一変形形態では、第1の脚及び第2の脚は各々、遠位側に外向きに延在するウィングをフィンガガードとして有する。これらは、臍帯を切断するときにデバイスのユーザの指を切断から保護する。
【0026】
本発明の好都合な変形形態によれば、スプリング要素は円形であり、第1の動作状態では開いており、第2の動作状態では閉じている。このようにして、スプリング要素を容易に製造し、デバイスと一体にすることができる。円形スプリング要素の直径に起因して、スプリング力を予め調整することができる。
【0027】
有利な変形形態によれば、本発明によるデバイスはワンピースで形成される。ワンピースデバイスは、容易に消毒することができるという利点を有する。特に、そのような単純なワンピースデバイスは安価に製造することができ、それにより、好ましくは、そのようなデバイスは、製造がデバイスを消毒するよりも安価であるので、使い捨て製品として設計される。
【0028】
好ましくは、本発明によるデバイスはプラスチック製である。
より良好な取り扱いのために、第1の脚及び第2の脚は、例えば溝が付けられた把持面を有することができる。これにより、グリップが改善される。
【0029】
好ましくは、本発明によるデバイスは、緊急時に、現在の臍帯に適切な直径を有する1つのデバイスを迅速に選択することができるように、第2の動作状態において円筒形レセプタクルが異なる複数の直径を有するよう複数製造され保管される。例えば、円筒形レセプタクルは、第2の動作状態において、5mm~15mm、特に7mm、9mm又は11mmの直径を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1の動作状態における、未熟児及び新生児における臍カテーテルの配置を補助するための、本発明によるデバイスの一実施形態を示す斜視図。
図2図1のデバイスを示す上面図。
図3】切断前の臍帯が固定された状態の、第2の動作状態における本発明によるデバイスの一実施形態を示す斜視図。
図4】臍帯を切断して隆起を取り外した後の図3のデバイスを示す斜視図。
図5】本発明によるデバイスを取り外した後に配置された臍カテーテルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、以下の図面に示す実施形態の例を参照して以下により詳細に説明される。
図1は、未熟児及び新生児3における臍カテーテル2の配置を補助するための、本発明によるデバイス1の一実施形態の斜視図を示す。図2は、図1のデバイス1の上面図を示す。デバイス1は、第1の脚4及び第2の脚5を備える。第1の脚4及び第2の脚5は各々、第1の端部6の領域に半円筒形凹部7を有する。第2の端部8の領域において、第1の脚4及び第2の脚5は、スプリング要素9を介して互いに接続されている。
【0032】
スプリング要素9は、第1の脚4及び第2の脚5のそれぞれの第1の端部6が離間している第1の動作状態において、固有のスプリング力によって第1の脚4及び第2の脚5を保持する。図1は第1の動作状態におけるデバイス1を示す。
【0033】
第1の脚4及び第2の脚5は、スプリング力に抗して、第1の脚4及び第2の脚5のそれぞれの第1の端部6が互いに直接隣接して配置されている第2の動作状態に移行されることができる。図3及び図4は、例えば、第2の動作状態における本発明によるデバイス1を示す。
【0034】
図1の第1の実施形態によれば、デバイス1は、デバイス1を第2の動作状態にロックするためのロッキングデバイス12を備える。第1の実施形態において、ロッキングデバイス12は、解放可能なラッチ接続として設計される。スナップイン接続として設計されたロッキングデバイスは、第1の脚4及び第2の脚5の第1の端部6に配置され、ロッキングデバイス12の第1の部分13が、第1の脚4の第1の端部6に配置され、ロッキングデバイス12の第2の部分14が、第2の脚5の第1の端部6に配置される。図示された実施形態によれば、突出部(ラッチ)が、第1の脚4の第1の端部6における第1の部分13として形成され、この突出部は、第2の脚5の第1の端部6における開口部(アイレット)であって、ロッキングデバイス12の第2の部分14を形成する開口部に係合することができる。
【0035】
図1の本発明によるデバイス1は、第2の動作状態において円筒形レセプタクル10の領域においてデバイス1の遠位側16に隆起15をさらに備える。したがって、本発明の意味における遠位側は、未熟児及び新生児3から離れて面するデバイス1の側であり、近位側は、未熟児及び新生児3に面するデバイス1の側である。
【0036】
隆起15は、第2の動作状態において円筒形レセプタクル10の領域に、又は第1の動作状態において半円筒形凹部7の領域に配置される。図1に示す第1の実施形態によれば、隆起は2つの部分で形成され、隆起の一方の部分18は、第1の脚4及び第2の脚5の各々に配置される。デバイス1の第2の動作状態において、隆起15の2つの部分18は、互いに直接隣接して配置されている。
【0037】
半円形要素20は、隆起15の個別の部分18の遠位端19に配置される。半円形要素20は、個別の第1の脚4及び第2の脚5の半円筒形凹部7と軸方向に整列されている。第2の動作状態において、2つの半円形要素20は、未熟児及び新生児3の臍帯11を固定するための円形レセプタクル21を形成する。第2の動作状態では、円形レセプタクル21は、円筒形レセプタクル10と円形レセプタクル21との間に切断チャネルを残すように、円筒形レセプタクル10と軸方向に整列され、円筒形レセプタクル10から離間している。
【0038】
好ましくは、隆起15又は隆起の部分18は、所定の破断エッジ22を介してデバイス1の第1の脚4及び第2の脚5の少なくとも一方に接続される。これにより、隆起15は、臍帯11の血管への臍カテーテル2の挿入を妨げないように、座屈によってデバイス1から迅速かつ容易に取り外すことができる。
【0039】
有利には、第1の動作状態における半円筒形凹部7及び第2の動作状態における円筒形レセプタクル10の形状は円錐形であり、この円錐は、デバイス1の近位側17から遠位側16に向かって広がっている。その結果、臍帯11は、本発明によるデバイス1内に特に良好に固定される。特に、臍帯11の血管は、切断後に血液が流出しないように圧搾され得るが、同時に臍カテーテル2が臍帯11の血管に挿入され得る。
【0040】
第2の動作状態におけるデバイス1の円筒形レセプタクル10内での臍帯11の固定をさらに改善するために、半円筒形凹部7又は円筒形レセプタクル10は、ラメラ23を形成するための穿孔を有する。
【0041】
さらに、第1の脚4及び第2の脚5は各々、遠位側16に外向きに延在するウィング24をフィンガガードとして有する。
特に図2から分かるように、スプリング要素9は円形であり、第1の動作状態では開いている。図3から分かるように、円形スプリング要素9は、第2の動作状態では閉じている。
【0042】
デバイス1はワンピースで形成され、好ましくはプラスチック製であることが好ましい。これにより費用効果の高い製造が可能になり、それにより、デバイス1を特に使い捨て製品として提供することができる。
【0043】
図3図5は、未熟児及び新生児3に臍カテーテル2を配置するための本発明によるデバイス1の使用を示す。デバイス1の第1の動作状態において、未熟児及び新生児3の臍帯11は、2つの半円筒形凹部7の領域において第1の脚4と第2の脚5との間に配置される。その後、デバイス1は、ユーザがデバイス1の第1の脚4と第2の脚5とを互いに向かって移動させることによって、第2の動作状態に移行する。第1の脚4及び第2の脚5が互いに直接隣接すると、デバイス1は、ロッキングデバイス12によってこの第2の動作状態に固定される。図3は、この第2の動作状態を示す。
【0044】
ここで、ユーザは臍帯11を切断することができる。切断を行うために、メス25は、デバイス1の遠位側に沿って案内され、デバイス1の遠位縁部はガイドとして機能する。臍帯11は、円形レセプタクル21と円筒形レセプタクル10とによって定位置に固定される。臍帯11が隆起15に対して切断される。
【0045】
続いて、切断された臍帯11、特にその血管がはっきりと見え、アクセス可能であるように、隆起15が曲げられる。この状況を、図4に概略的に示す。臍カテーテル2は、ここで、臍帯11の所望する血管に迅速かつ容易に挿入され得る。
【0046】
図5に示すように、臍カテーテル2が配置された後、デバイス1が、ロッキングデバイス12を解放することによって取り外される。臍帯のカテーテルが挿入されていない血管からの血液の漏出を防ぐために、臍帯を縛る。配置された臍カテーテル2が開いたままであることを保証するように注意を払うべきである。
【符号の説明】
【0047】
1 デバイス
2 臍カテーテル
3 未熟児及び新生児
4 第1の脚
5 第2の脚
6 第1の端部
7 半円筒形凹部
8 第2の端部
9 スプリング要素
10 円筒形レセプタクル
11 臍帯
12 ロッキングデバイス
13 ロッキングデバイスの第1の部分
14 ロッキングデバイスの第2の部分
15 隆起
16 遠位側(デバイス)
17 近位側(デバイス)
18 隆起の部分
19 遠位端(隆起)
20 半円形要素
21 円形レセプタクル
22 所定の破断エッジ
23 ラメラ
24 ウィング(フィンガガード)
25 メス
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-11-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
未熟児及び新生児(3)における臍カテーテル(2)の配置を補助するためのデバイスで(1)あって、
第1の脚(4)及び第2の脚(5)を備え、
前記第1の脚(4)及び前記第2の脚(5)は、第1の端部(6)の領域に半円筒形凹部(7)をそれぞれ備え、かつ第2の端部(8)の領域においてスプリング要素(9)を介して互いに接続され、
前記スプリング要素(9)は、前記第1の脚(4)及び前記第2の脚(5)のそれぞれの前記第1の端部(6)が互いから離間している第1の動作状態において、スプリング力によって前記第1の脚(4)及び前記第2の脚(5)を保持し、前記第1の脚(4)及び前記第2の脚(5)は、前記スプリング力に抗して、前記第1の脚(4)及び前記第2の脚(5)のそれぞれの前記第1の端部(6)が互いに直接隣接して配置されている第2の動作状態に移行可能であり、
前記第1の脚(4)及び前記第2の脚(5)のそれぞれの前記第1の端部(6)の前記領域における前記半円筒形凹部(7)は、前記第2の動作状態において、前記未熟児及び新生児(3)の臍帯(11)のための円筒形レセプタクル(10)を一緒に形成する、デバイス(1)。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイス(1)はさらに、
前記デバイス(1)を前記第2の動作状態にロックするためのロッキングデバイス(12)を備える、デバイス(1)。
【請求項3】
請求項2に記載のデバイス(1)であって、
前記ロッキングデバイス(12)は、解放可能または解放不能に設計されている、デバイス(1)。
【請求項4】
請求項3に記載のデバイス(1)であって、
前記ロッキングデバイス(12)は、スナップイン接続として設計されている、デバイス(1)。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載のデバイス(1)であって、
前記ロッキングデバイス(12)は、前記第1の脚(4)及び前記第2の脚(5)の前記第1の端部(6)に形成される、デバイス(1)。
【請求項6】
請求項5に記載のデバイス(1)であって、
前記ロッキングデバイス(12)の第1の部分(13)が、前記第1の脚(4)の前記第1の端部(6)に形成され、前記ロッキングデバイス(12)の第2の部分(14)が、前記第2の脚(5)の前記第1の端部(6)に形成される、デバイス(1)。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のデバイス(1)はさらに、
前記第2の動作状態において前記円筒形レセプタクル(10)の前記領域において前記デバイス(1)の遠位側(16)に隆起(15)を備える、デバイス(1)。
【請求項8】
請求項に記載のデバイス(1)であって、
前記隆起(15)は、2つの部分に分割され、前記隆起の一方の部分(18)は、前記第1の脚(4)及び前記第2の脚(5)のそれぞれに配置され、前記隆起の前記2つの部分(18)は、前記第2の動作状態において互いに直接隣接している、デバイス(1)。
【請求項9】
請求項に記載のデバイス(1)であって、
半円形要素(20)が前記隆起(15)の各部分(18)の遠位端(19)に配置され、前記半円形要素(20)は、前記第1の脚(4)及び前記第2の脚(5)の各々の半円筒形凹部(7)と軸方向に整列されており、2つの前記半円形要素(20)は、前記未熟児及び新生児(3)の前記臍帯(11)を固定するために、前記第2の動作状態において円形レセプタクル(21)を形成し、前記円形レセプタクル(21)は、前記円筒形レセプタクル(10)と前記円形レセプタクル(21)との間に切断チャネルを残すように、前記第2の動作状態において前記円筒形レセプタクル(10)と軸方向に整列され、かつ前記円筒形レセプタクル(10)から離間している、デバイス(1)。
【請求項10】
請求項に記載のデバイス(1)であって、
前記隆起(15)又は前記隆起の前記(18)は、所定の破断エッジ(22)を介して前記デバイス(1)の前記第1の脚(4)及び前記第2の脚(5)の少なくとも一方に接続される、デバイス(1)。
【請求項11】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のデバイス(1)であって、
前記第1の動作状態における前記半円筒形凹部(7)は円錐形であり、前記第2の動作状態における前記円筒形レセプタクル(10)は円錐形であり、前記円錐形は、前記デバイス(1)の近位側(17)から遠位側(16)に向かって広がっている、デバイス(1)。
【請求項12】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のデバイス(1)であって、
前記第1の動作状態における前記半円筒形凹部(7)及び前記第2の動作状態における前記円筒形レセプタクル(10)は、内側に溝が付けられてる、デバイス(1)。
【請求項13】
請求項12に記載のデバイス(1)であって、
前記第1の動作状態における前記半円筒形凹部(7)及び前記第2の動作状態における前記円筒形レセプタクル(10)は、ラメラ(23)を形成するための開口部を有する、デバイス(1)。
【請求項14】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のデバイス(1)であって、
前記第1の脚(4)及び前記第2の脚(5)の各々は、遠位側(16)に外向きに延びるウィング(24)をフィンガガードとして有する、デバイス(1)。
【請求項15】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のデバイス(1)であって、
前記スプリング要素(9)は円形であって、前記第1の動作状態では開いており、前記第2の動作状態では閉じている、デバイス(1)。
【請求項16】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のデバイス(1)であって、
前記デバイス(1)はワンピースで形成されている、デバイス(1)。
【請求項17】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のデバイス(1)であって、
前記デバイス(1)は、プラスチック材料で製造されている、デバイス(1)。
【国際調査報告】