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特表2025-505805マルチモード音声知覚聴覚刺激システムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】マルチモード音声知覚聴覚刺激システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 11/00 20220101AFI20250220BHJP
   A61N 1/36 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
A61F11/00 310
A61N1/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024548659
(86)(22)【出願日】2023-02-17
(85)【翻訳文提出日】2024-10-15
(86)【国際出願番号】 US2023013286
(87)【国際公開番号】W WO2023158784
(87)【国際公開日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】63/311,310
(32)【優先日】2022-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501083115
【氏名又は名称】メイヨ・ファウンデーション・フォー・メディカル・エデュケーション・アンド・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】セベット、マイケル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】プラダン、ガウラフ エヌ.
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ01
4C053JJ21
4C053JJ31
(57)【要約】
対象者の聴覚知覚を刺激するためのマルチモード聴覚刺激方法。この方法は、マルチチャネル音声を表す音声信号に基づいて、マルチチャネル電気刺激信号、骨伝導刺激信号およびオーディオ刺激信号のうちの2つ以上を生成することを含む。電気刺激信号は、聴覚知覚の音像定位を含む、聴覚知覚の電気刺激をもたらすように構成されている。骨伝導刺激信号は、聴覚知覚の骨伝導刺激を引き起こす振動をもたらすように構成されている。オーディオ刺激信号は、空気伝導圧力波音を生成するように構成されている。いくつかの実施形態は、マルチモード聴覚刺激システムに関連して使用するための補償情報を取得することを含む。補償情報は、電気刺激、骨刺激または圧力波音を対象者に共に印加し、得られた音声知覚を対象者が知覚する方向を表す情報を受信して補償情報として記憶することによって、取得してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の聴覚知覚を刺激する方法であって、
マルチチャネル音声を表す音声信号を受信することと、
前記対象者の頭部に対して離間した位置に配置された少なくとも2つの電気刺激電極に結合されると、聴覚知覚の音像定位を含む、聴覚知覚の電気刺激を前記対象者において発生させる電気信号を生成するように構成されたマルチチャネル電気刺激信号を、前記音声信号に基づいて生成することと、
前記対象者の頭部に対して配置された少なくとも1つの骨伝導刺激トランスデューサに結合されると、聴覚知覚の骨伝導刺激を前記対象者において発生させる振動をもたらすように構成された骨伝導刺激信号を、前記音声信号に基づいて生成することと、からなる方法。
【請求項2】
マルチモード聴覚刺激システムに関連して使用するための補償情報を取得することをさらに含み、
前記対象者に前記電気刺激および前記骨伝導刺激を共に印加することと、
前記電気刺激および前記骨伝導刺激によってもたらされた音声知覚を前記対象者が知覚した方向を表す情報を受信して、補償情報として記憶することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象者の頭部の耳に対して配置されたオーディオトランスデューサに結合されると、空気伝導圧力波音を前記対象者において生成するように構成されたオーディオ刺激信号を、前記音声信号に基づいて生成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
マルチモード聴覚刺激システムに関連して使用するための補償情報を取得することをさらに含み、
前記対象者に前記電気刺激、前記骨伝導刺激および前記圧力波音を共に印加することと、
前記電気刺激、前記骨伝導刺激および前記圧力波音によってもたらされた音声知覚を前記対象者が知覚した方向を表す情報を受信して、補償情報として記憶することと、を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記オーディオ刺激信号を生成することは、前記対象者の頭部の耳に対して離間した位置に配置された2つ以上のオーディオトランスデューサに結合されると、音像定位を含む、空気伝導圧力波音を前記対象者において生成するように構成された、マルチチャネルオーディオ刺激信号を生成することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
マルチモード聴覚刺激システムに関連して使用するための補償情報を取得することをさらに含み、
前記対象者に前記電気刺激、前記骨伝導刺激および前記圧力波音を共に印加することと、
前記電気刺激、前記骨伝導刺激および前記圧力波音によってもたらされた音声知覚を前記対象者が知覚した方向を表す情報を受信して、補償情報として記憶することと、を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
対象者の聴覚知覚を刺激する方法であって、
マルチチャネル音声を表す音声信号を受信することと、
前記対象者の頭部に対して離間した位置に配置された少なくとも2つの電気刺激電極に結合されると、聴覚知覚の音像定位を含む、聴覚知覚の刺激を前記対象者において発生させる電気信号を生成するように構成されたマルチチャネル電気刺激信号を、前記音声信号に基づいて生成することと、
前記対象者の頭部の耳に対して配置されたオーディオトランスデューサに結合されると、空気伝導圧力波音を前記対象者において生成するように構成されたオーディオ刺激信号を、前記音声信号に基づいて生成することと、からなる方法。
【請求項8】
マルチモード聴覚刺激システムに関連して使用するための補償情報を取得することをさらに含み、
前記対象者に前記電気刺激および前記圧力波音を共に印加することと、
前記電気刺激および前記圧力波音によってもたらされた音声知覚を前記対象者が知覚した方向を表す情報を受信して、補償情報として記憶することと、を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記オーディオ刺激信号を生成することは、前記対象者の頭部の耳に対して離間した位置に配置された2つ以上のオーディオトランスデューサに結合されると、音像定位を含む、空気伝導圧力波音を前記対象者において生成するように構成された、マルチチャネルオーディオ刺激信号を生成することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
マルチモード聴覚刺激システムに関連して使用するための補償情報を取得することをさらに含み、
前記対象者に前記電気刺激および前記圧力波音を共に印加することと、
前記電気刺激および前記圧力波音によってもたらされた音声知覚を前記対象者が知覚した方向を表す情報を受信して、補償情報として記憶することと、を含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
対象者の聴覚知覚を刺激する方法であって、
マルチチャネル音声を表す音声信号を受信することと、
前記対象者の頭部に対して配置された少なくとも1つの骨伝導刺激トランスデューサに結合されると、聴覚知覚の刺激を前記対象者において発生させる振動をもたらすように構成された骨伝導刺激信号を、前記音声信号に基づいて生成することと、
前記対象者の頭部の耳に対して配置されたオーディオトランスデューサに結合されると、空気伝導圧力波音を前記対象者において生成するように構成されたオーディオ刺激信号を、前記音声信号に基づいて生成することと、からなる方法。
【請求項12】
マルチモード聴覚刺激システムに関連して使用するための補償情報を取得することをさらに含み、
前記対象者に前記骨伝導刺激および前記圧力波音を共に印加することと、
前記骨伝導刺激および前記圧力波音によってもたらされた音声知覚を前記対象者が知覚した方向を表す情報を受信して、補償情報として記憶することと、を含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記オーディオ刺激信号を生成することは、前記対象者の頭部の耳に対して離間した位置に配置された2つ以上のオーディオトランスデューサに結合されると、音像定位を含む、空気伝導圧力波音を前記対象者において生成するように構成された、マルチチャネルオーディオ刺激信号を生成することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
マルチモード聴覚刺激システムに関連して使用するための補償情報を取得することをさらに含み、
前記対象者に前記骨伝導刺激および前記圧力波音を共に印加することと、
前記骨伝導刺激および前記圧力波音によってもたらされた音声知覚を前記対象者が知覚した方向を表す情報を受信して、補償情報として記憶することと、を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記マルチチャネル電気刺激信号を生成することが、レベル差または位相差の一方または両方を含むマルチチャネル電気刺激信号を生成することを含む、請求項1、3または7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記対象者の右側および左側の乳様突起の近傍(例えば、前記対象者の頭部に対して3:00および9:00の位置)にそれぞれ配置された第1および第2の電極用に構成されたマルチチャネル電気刺激信号を生成することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記音声信号を受信することが、前記対象者の右側および左側の乳様突起の近傍(例えば、前記対象者の頭部に対して3:00および9:00の位置)にそれぞれ配置された第1および第2のマイクロフォンから、マルチチャネル音声を表す信号を受信することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記対象者の頭部に対して12:00および6:00の位置にそれぞれ配置された少なくとも2つの電気刺激電極用に構成された、マルチチャネル電気刺激信号を生成することを含む、請求項1、3または7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記音声信号を受信することが、前記対象者の頭部に対して12:00および6:00の位置にそれぞれ配置された2つのマイクロフォンから、マルチチャネル音声を表す信号を受信することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記対象者の頭部に対して1:30および7:30の位置にそれぞれ配置された少なくとも2つの電気刺激電極用に構成された、マルチチャネル電気刺激信号を生成することを含む、請求項1、3または7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記音声信号を受信することが、前記対象者の頭部に対して1:30および7:30の位置にそれぞれ配置された2つのマイクロフォンから、マルチチャネル音声を表す信号を受信することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記対象者の頭部に対して4:30および10:30の位置にそれぞれ配置された少なくとも2つの電気刺激電極用に構成された、マルチチャネル電気刺激信号を生成することを含む、請求項1、3または7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記音声信号を受信することが、前記対象者の頭部に対して4:30および10:30の位置にそれぞれ配置された2つのマイクロフォンから、マルチチャネル音声を表す信号を受信することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記骨伝導刺激信号を生成することが、前記対象者の頭部に対して正中線に沿って配置された骨伝導トランスデューサ用に構成された、骨伝導刺激信号を生成することを含む、請求項1、3または11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記骨伝導刺激信号を生成することが、前記音声信号に基づいて、前記骨伝導刺激トランスデューサによって、前記対象者における聴覚知覚の音像定位を含む聴覚知覚を刺激する振動を発生させるように構成された、マルチチャネル骨伝導刺激信号を生成することを含む、請求項1、3または11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記マルチチャネル骨伝導刺激信号を生成することが、前記対象者の頭部に対して正中線を挟んで互いに反対側に配置された第1および第2の骨伝導刺激トランスデューサによって振動をもたらすように構成された、マルチチャネル骨伝導刺激信号を生成することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記マルチチャネル骨伝導信号を生成することが、レベル差または位相差の一方または両方を含むマルチチャネル骨伝導信号を生成することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
(1)前記電気刺激信号を生成することが、8kHz以上の周波数で聴覚を刺激する電気信号を生成するためにマルチチャネル電気刺激信号を生成することを含み、(2)前記骨伝導刺激信号を生成することが、8kHz未満の周波数で聴覚を刺激する振動を生成するために骨伝導刺激信号を生成することを含む、請求項1、3または7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記骨伝導刺激信号がもたらす前記振動によって引き起こされる聴覚の周波数範囲よりも高い周波数を含む周波数範囲で聴覚を刺激する電気信号を生成するために、前記マルチチャネル電気刺激信号を生成することを含む、請求項1、3または7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
(1)前記マルチチャネル電気刺激信号を生成することが、前記音声信号および電気刺激音像定位補償情報に基づいて前記マルチチャネル電気刺激信号を生成することを含み、前記電気刺激音像定位補償情報は、(I)前記マルチチャネル電気刺激信号の特性、または(II)前記マルチチャネル電気刺激信号が前記少なくとも2つの電気刺激電極のうちのいずれに結合されているか、のうちの1つ以上に基づいた、前記対象者の音声知覚の位置またはレベルのうちの一方または両方を特徴付ける情報を含む、あるいは(2)前記骨伝導刺激信号を生成することが、前記音声信号および骨伝導音像定位補償情報に基づいて前記骨伝導刺激信号を生成することを含み、前記骨伝導音像定位補償情報は、(III)前記骨伝導刺激信号の特性または(IV)前記骨伝導刺激信号が前記少なくとも1つの骨伝導刺激トランスデューサのうちのいずれに結合されているか、のうちの1つ以上に基づいた、前記対象者の音声知覚の位置またはレベルのうちの一方または両方を特徴付ける情報を含む、の一方または両方である、請求項1、3、7または11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、対象者の聴覚または音声知覚を向上させるシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
聴覚音は、蝸牛の電気刺激(蝸牛刺激または電気前庭刺激(GVS)とも呼ばれる)や、骨伝導刺激(頭蓋骨の振動等による)によっても知覚させることが可能である。この種の聴覚知覚は、補聴器によって向上できる可能性のある、空気伝導刺激や耳を刺激する圧力波によって生じる聴覚とは区別される。対象者、例えば聴覚機能に障害や低下が生じている対象者等の聴覚知覚を向上させるためのシステムおよび方法は、継続的に必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に記載の実施形態に従って、電気刺激、骨伝導刺激または空気伝導刺激のうちの2つ以上を組み合わせることによって、対象者の聴覚知覚を高めることができる。適用例としては、ヒトの聴力検査や治療、軍事情報(空気伝導刺激による通信が利用できない、使用されていない、何らかの理由で障害が発生している、または制限されている場合等)、エンターテインメント等が挙げられる。機能には、会話、音楽、映画等のコンテンツに関し、100HZ~20,000Hzの聴覚の全範囲で電気的に送信された音声を頭部にリアルタイムで提供することが含まれる。特に、電気刺激を他の刺激モードのいずれかまたはすべてと組み合わせることで、0dBを超える音の音像定位(LATERALIZATION)を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1A】実施形態に係る、ユーザーの頭部に対して配置されたマルチモード刺激装置を含むヘッドセットの模式図。
図1B】実施形態に係る、ユーザーの頭部に対して配置されたマルチモード刺激装置を含むヘッドセットの模式図。
図2】実施形態に係る、マルチモード聴覚刺激システムの制御システムの機能コンポーネントの模式図。
図3】異なる対象者の頭部に対して同位置に配置された刺激装置に、同じ種類のモノチャネル骨伝導刺激およびマルチチャネル電気刺激の組み合わせを印加した場合における、11人の異なる対象者の音声知覚の位置および方向を示す試験結果の模式図。
図4】いくつかの実施形態に係る、図2に示す制御システムの実装に使用できるコンピュータシステムのコンポーネントを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書に記載のマルチモード聴覚刺激システム、方法およびコンポーネントは、蝸牛の電気刺激、骨伝導刺激または空気伝導刺激等の2つ以上の刺激方式を利用して、対象者または他のユーザーの音声知覚または聴覚知覚を向上させる。特に、マルチモード刺激システム、方法およびコンポーネントは、知覚した音声の音源(音が発生した場所や方向等)の音像定位を行い、位置を特定する対象者の能力を強化させる。これによって、音楽、会話、対象者の環境における音等の音声を理解および享受し、情報を得るための対象者の能力を向上させることが可能である。
【0006】
図1Aは、実施形態に係る、対象者の頭部12に対して配置されたマルチモード刺激装置およびマイクロフォンを含むヘッドセット10等の構造を示す模式図である。図示される実施形態は、複数(例示のため8つを示す)の電極141~148、1つの骨伝導トランスデューサ16、複数(例示のため2つを示す)の空気伝導、圧力波またはオーディオトランスデューサ181~182、および複数(例示のため8つを示す)のマイクロフォン201~208を備えている。これらはすべて対象者の頭部12に装着されるか、または頭部12に対して配置されるように構成されたバンド22に装着されている。電極141~148、骨伝導トランスデューサ16および/またはオーディオトランスデューサ181~182が生成する刺激によって知覚される音声の音像定位、または位置もしくは方向は、電極、骨伝導トランスデューサ、またはオーディオトランスデューサの数および/または位置等の要因に左右される可能性がある。このため、他の実施形態では、141~148等の電極、16等の骨伝導トランスデューサ、または181~182等のオーディオトランスデューサは、他の数および/または位置の組み合わせで設けられる。同様に、他の実施形態では、201~208等のマイクロフォンは、他の数および/または位置において設けられる。例えば、いくつかの実施形態においては、141~148等の電極のうち2つのみが設けられる。このような実施形態では、2つの電極は、対象者の頭部12の蝸牛の近く(例えば、乳様突起の付近)に配置される。
【0007】
図1Aに示す実施形態では、例えば、電極141~148は、対象者の頭部12に対して、12:00、1:30、3:00、4:30、6:00、7:30、9:00および10:30にそれぞれ対応する近傍位置に配置されるようにバンド22上に配置される。電極143および147は、対象者の頭部12の右側および左側の乳様突起の近傍の位置に配置され、これによって、電極がもたらす電気刺激が対象者の右側および左側の蝸牛をそれぞれ刺激する能力が最適化または強化される。電極141および145は、対象者の頭部12の前部および後部の近傍の位置(例えば、対象者の頭部を通る正中線24の端)に配置されている。詳細は後述するが、電極141~148は、対象者の蝸牛を刺激して聴覚知覚をもたらす電気信号(図1Aの26に模式的に示す)を生成する。電極141~148は、本明細書に記載された機能および用途に適した従来の装置または周知の装置であってもよい。非限定的な例としては、電気信号の刺激および記録に一般的に使用される表面電極が挙げられる。本開示では経皮電気刺激をもたらす装置として説明されているが、141~148等の電極は他の実施形態の装置においても利用可能である。
【0008】
骨伝導トランスデューサ16は、対象者の頭部12の前部の近傍の位置(例えば、対象者の額の正中線24)に配置されている。詳細は後述するが、骨伝導トランスデューサ16は、対象者の頭部12の頭蓋骨および/または他の解剖学的構造を振動させる物理的な動きまたはその他の振動動作(図1Aの28に模式的に示す)を生成し、これによって、聴覚知覚を生じさせる。骨伝導トランスデューサ16は、本明細書に記載の機能および用途に適した従来の装置または周知の装置であってもよい。非限定的な例としては、機械的な振動または発振を生成する装置が挙げられる。
【0009】
オーディオトランスデューサ181~182は、対象者の頭部12の耳または聴覚系の中耳、鼓膜および/または他の解剖学的構造を振動させる可聴の空気伝導圧力波(図1Aの30に模式的に示す)を生成することによって、聴覚または聴覚の知覚をもたらす。オーディオトランスデューサ181~182は、対象者の外耳道の近傍の位置に配置して、外耳道による聴覚を最適化させる。オーディオトランスデューサ181~182は、本明細書に記載の機能および用途に適した従来の装置または周知の装置であってもよい。非限定的な例としては、例えば補聴器に用いられる種類のオーディオスピーカー等が挙げられる。
【0010】
マイクロフォン201~208は、対象者の頭部12の12:00、1:30、3:00、4:30、6:00、7:30、9:00および10:30に対応する近傍位置に配置されるように、バンド22上に配置される。マイクロフォン201~208は、対象者の頭部12に対して定義された方向または位置からの音を受信するように配置、配向または構成されている(例えば、指向特性を持つように構造化されている)。マイクロフォン201~208は、本明細書に記載の機能および用途に適した従来の装置または周知の装置であってもよい。
【0011】
図1Bは、ヘッドセット10’の例示的な代替実施形態の模式図である。図に示すように、ヘッドセット10’は、複数の電極141’~148’、2つの骨伝導トランスデューサ161’および162’、複数のオーディオトランスデューサ181’~182’ならびに複数のマイクロフォン201’~208’を備えている。これらはすべて、対象者の頭部12に装着されるか、または頭部12に対して配置されるように構成されたバンド22’に装着されている。図1Bに示す実施形態では、2つの骨伝導トランスデューサ161’および162’が、対象者の頭部12のそれぞれ3:00および2:00に対応する近傍位置に配置されるように、バンド22’に配置されている。骨伝導トランスデューサ161’および162’の数および位置が異なること以外は、電極141’~148’、オーディオトランスデューサ181’~182’およびマイクロフォン201’~208’を含むヘッドセット10’は、図1Aを参照して説明した構成と同じまたは同様であり、同じ位置または近傍位置に配置されている。図1Aおよび1Bにおいては、類似する特徴には類似する符号が付されている。本開示において、「刺激装置」という用語は、例えば、刺激装置141~148、141’~148’、16、161’、162’、181~182および181’~182’のうちの1つ以上またはすべての刺激装置を指す。
【0012】
図2は、いくつかの実施形態に係る、制御システム40の機能コンポーネントを示す模式図である。制御システム40は、対象者にマルチモード聴覚知覚刺激を与えるために、図1Aおよび1Bを参照して説明した刺激装置等に関連して使用される。図に示す制御システム40の実施形態は、補償トレーニングコンポーネント42、補償データコンポーネント44、電気刺激生成コンポーネント46、骨伝導刺激生成コンポーネント48、空気伝導刺激生成コンポーネント50およびオペレータ制御装置52を備えている。本開示全体において、「刺激生成コンポーネント」という用語は、電気刺激生成コンポーネント46、骨伝導刺激生成コンポーネント48およびオーディオ刺激生成コンポーネント50等の刺激信号生成コンポーネントのうちの1つ以上またはすべてを指すために使用される。マイクロフォン201~208または201’~208’によって生成される音声等のマルチチャネル音声を表現または定義するマルチチャネル音声信号は、制御システム40の入力部および制御システムの様々なコンポーネントに結合(coupled)される。図2の実施形態では、例えば、音声の複数のチャネルの1つ以上を表す音声信号が、補償データコンポーネント44、電気刺激生成コンポーネント46、骨伝導刺激生成コンポーネント48およびオーディオ刺激生成コンポーネント50のそれぞれに結合される。本開示では、マルチチャネル音声信号は、マイクロフォン201~208または201’~208’から受信される(例えば、ヘッドセット10または10’を使用している対象者の周囲環境または局所環境の音声を表す)ものとして説明されているが、マルチチャネル音声信号は他の音源から受信してもよい。このような他の音源の非限定的な例としては、対象者から遠く離れているが、制御システム40が与える刺激によってリアルタイムで生成される音源(例えば、対象者がライブで、またはビデオスクリーン等のメディアを通じて遠くから見ているイベントからの音)および/または録音された音(例えば、ビデオまたは他のメディアに関連して提供される音)等が挙げられる。このような他の実施形態では、例えば、ヘッドセット10および10’が、マイクロフォン201~208または201’~208’を有していない場合もある。
【0013】
詳細は後述するが、制御システム40の特定の実施形態では、マルチモード刺激の生成に関連して補償データを使用することによって、システムが生成する音声または聴覚の知覚状態、例えば、音像定位の質および特性を向上させる。簡潔に説明すると、補償データは、マルチチャネル音声信号によって表される音声がマルチモード刺激装置に効果的にマッピングまたは分配される態様を制御または修正する。例としては、知覚される聴覚のレベルを制御するための補償(対象者の方向に関する聴覚レベル知覚特性が非対称である場合等)や、方向における音像定位を制御するための補償(対象者が、対応する音声チャネルの方向とは異なる方向から音声が来ていると知覚する場合等)が挙げられる。補償データコンポーネント44に格納される補償データは、電気刺激生成コンポーネント46、骨伝導刺激生成コンポーネント48およびオーディオ刺激生成コンポーネント50のうちの1つ以上に結合される。詳細は後述するが、補償トレーニングコンポーネント42は、補償トレーニングプロセスに関連して使用され、補償データコンポーネント44が格納する補償データを生成する。図2の実施形態では制御システム40の一部として示されているが、他の実施形態では、補償トレーニングコンポーネント42は制御システム40とは別個であってもよく、そのような実施形態では、別個の補償トレーニングコンポーネント44によって生成された補償データが補償データコンポーネントにインポートされてもよい。
【0014】
制御装置52は、オペレータが制御システム40を操作して本明細書に記載の機能を実行するために用いられる、従来または周知のインターフェースコンポーネントを備えている。非限定的な例としては、ノブ、ボタン、スイッチまたはディスプレイ等のグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)コンポーネントが挙げられ、これらは、機能や情報の選択、レベルの制御、臨床医や他のユーザーに情報(視覚的情報等)を提供するため等に使用される。
【0015】
電気刺激生成コンポーネント46は、マルチチャネル音声信号に基づいてマルチチャネル電気刺激信号を生成する。いくつかの実施形態では、電気刺激信号生成コンポーネント46は、マルチチャネル音声信号および補償データの両方に基づいて、マルチチャネル電気刺激信号を生成する。マルチチャネル電気刺激信号は、141~148または141’~148’等の2つ以上の電極に結合されるように構成されている。電気刺激生成コンポーネント46は、電極が対象者の頭部12の蝸牛を電気的に刺激することによって対象者に音声または聴覚を知覚させるように構成された形式および特性を有する、電気刺激信号を生成する。
【0016】
電気刺激生成コンポーネント46によって与えられるマルチチャネル刺激は、ユーザーに対し、音像定位聴覚知覚(例えば、方向感)をもたらすことができる。特に、マルチチャネル電気刺激信号は、特定の電極に印加されることによって、対象者の頭部12の周りの特定の位置または方向(例えば、対象者の頭部12を中心とする球面に対する12:00、3:00、6:00および/または9:00の位置、上方、下方またはその他の位置もしくは方向)を音源としているように聴覚知覚を生じさせる、形式および特性(レベルや位相等)を有する。例えば、電気生成コンポーネント46は、2つ以上のマイクロフォン201~208または2つ以上のマイクロフォン201’~208’から受信したマルチチャネル音声信号に基づいてマルチチャネル電気刺激信号を生成する。この信号は、電気刺激に基づいて対象者が知覚する音声が、マイクロフォンが受信した音声の位置および/またはレベルに対応する位置で発生していると知覚されるように141~148等の2つ以上の電極または2つ以上の電極141’~148’に印加される。
【0017】
電気刺激生成コンポーネント46は、従来の方法または周知の方法によって電気刺激信号を生成するように構成できる。このような電気刺激アプローチは、電気前庭刺激(GVS)または蝸牛刺激と称される場合もある。例えば、PUHARICHの米国特許第3267931号明細書、ZINKの米国特許第3766331号明細書、および1984年に発表されたTONNDORFらの論文「HIGH FREQUENCY AUDIOMETRY」では、搬送信号を変調して電気刺激信号を生成するアプローチについて記載されており、この電気刺激信号が電極を介して蝸牛に印加されると、聴覚知覚を刺激する電気信号が生成される。PUHARICHおよびZINKの特許とTONNDORFらの論文は、参照により本明細書に組み込まれる。このような電気刺激方法は、通常、100Hz~20,000Hz等、一般的な聴覚の全範囲の大部分またはすべてに対応する比較的広い範囲の周波数にわたる音が知覚されるように刺激を与えることができる。
【0018】
骨伝導刺激生成コンポーネント48の実施形態は、マルチチャネル音声信号によって定義されるマルチチャネル音声の1つ以上のチャネルに基づいて、モノチャネルまたはシングルチャネルの骨伝導刺激信号を生成する。いくつかの実施形態では、骨伝導刺激生成コンポーネント48は、音声信号および補償データの両方に基づいてモノチャネル骨伝導刺激信号を生成する。例えば、10のようなヘッドセットと組み合わせて使用される場合、モノチャネル骨伝導刺激信号は、骨伝導トランスデューサ16に結合されるように構成される。例えば、10’等のヘッドセットと組み合わせて使用する場合、モノチャネル骨伝導刺激信号は、骨伝導トランスデューサ161’および162’の一方または両方に結合されるように構成される。骨伝導刺激生成コンポーネント48は、骨伝導トランスデューサが対象者の頭部12の頭蓋骨を振動させ、これによって対象者に聴覚を知覚させるように構成された形式および特性を有する、骨伝導刺激信号を生成する。骨伝導刺激生成コンポーネント48が生成する骨伝導刺激信号によって対象者に与えられる骨伝導刺激は、電気刺激生成コンポーネント46が生成するマルチチャネル電気刺激、またはオーディオ刺激生成コンポーネント50が生成するオーディオ刺激の一方または両方と共に(例えば、同時にまたは組み合わせて)与えられた場合、知覚された音の音像定位を含む、対象者による全体的な音声知覚を向上させることができる。
【0019】
いくつかの実施形態においては、骨伝導刺激生成コンポーネント48は、マルチチャネル音声信号によって定義されるマルチチャネル音声の2つ以上のチャネルに基づいて、マルチチャネル骨伝導刺激信号を生成する。いくつかの実施形態においては、骨伝導刺激生成コンポーネント48は、マルチチャネル音声信号および補償データの両方に基づいて、マルチチャネル骨伝導刺激信号を生成する。例えば、10’等のヘッドセットと組み合わせて使用する場合、マルチチャネル骨伝導刺激信号は、骨伝導トランスデューサ161’および162’に結合されるように構成される。骨伝導刺激生成コンポーネント48は、骨伝導トランスデューサが対象者の頭部12の頭蓋骨を振動させることによって対象者に聴覚を知覚させるように構成された形式および特性を有する、骨伝導刺激信号を生成する。
【0020】
骨伝導刺激生成コンポーネント48によって与えられるマルチチャネル刺激は、対象者に音像定位聴覚知覚をもたらすことができる。特に、マルチチャネル骨伝導刺激信号は、特定のトランスデューサに印加されることによって、対象者の頭部12の周りの特定の位置または方向(例えば、対象者の頭部12を中心とする球面に対する12:00、3:00、6:00および/または9:00の位置、上方、下方またはその他の位置もしくは方向)を音源としているように聴覚知覚を生じさせる、形式および特性を有する。例えば、骨伝導生成コンポーネント48は、2つ以上のマイクロフォン201’~208’から受信したマルチチャネル音声信号に基づいてマルチチャネル骨伝導刺激信号を生成する。この信号は、骨刺激に基づいて対象者が知覚する音声が、マイクロフォンが受信した音声の位置、方向またはレベルに対応する位置、方向またはレベルで発生していると知覚されるように、161’および162’等のトランスデューサに印加される。少なくともいくつかの例では、マルチチャネル骨伝導刺激によってもたらされる音像定位(例えば、方向およびレベル)の能力は、電気刺激またはオーディオ刺激方式によってもたらされる能力よりも低い可能性があることが観察されている。しかしながら、骨伝導刺激生成コンポーネント48が生成する骨伝導刺激信号によって対象者に与えられるマルチチャネル骨伝導刺激は、電気刺激生成コンポーネント46が生成するマルチチャネル電気刺激またはオーディオ刺激生成コンポーネント50が生成するオーディオ刺激の一方または両方と共にまたは組み合わされて与えられることによって、知覚された音の音像定位を含む、対象者による全体的な音声知覚を向上させることができる。
【0021】
骨伝導刺激生成コンポーネント48は、従来の方法または周知の方法によって骨伝導刺激信号を生成するように構成できる。例えば、骨伝導刺激信号は、対象者に与えられる所望の音声知覚に対応するか、所望の音声知覚を表すように周波数を変化させてもよい。いくつかの実施形態では、骨伝導刺激信号は、振幅変調または周波数変調させてもよいし、同調させてもよい。例えば、以下の文献では、骨伝導刺激生成コンポーネント48に関連して使用可能な様々な骨伝導刺激アプローチについて記載されている。これらの文献は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。SHIRAISHI,K.による「SOUND LOCALIZATION AND LATERALIZATION BY BILATERAL BONE CONDUCTION DEVICES, MIDDLE EAR IMPLANTS AND CARTILAGE CONDUCTION HEARING AIDS」AUDIOLOGY RESEARCH 2021, 11, 508-523。STANLEY,R.らによる「LATERALIZATION OF SOUNDS USING BONE-CONDUCTED HEADSETS」PROCEEDINGS OF THE HUMAN FACTORS AND ERGONOMICS SOCIETY 50TH ANNUAL MEETING 2006。DAGA,K.らによる「BONE-CONDUCTED SOUND LATERALIZATION OF INTERAURAL TIME DIFFERENCE AND INTERAURAL INTENSITY DIFFERENCE IN CHILDREN AND A YOUNG ADULT WITH BILATERAL MICROTIA AND ATRESIA OF THE EARS」ACTA OTOLARYNGOL,2001,121,274~277。このような種類の骨伝導刺激方式は、通常、電気刺激方式によって発生する高い周波数範囲よりも低い周波数範囲において聴覚の知覚をもたらすことが可能である。例えば、特定の対象者において、骨伝導刺激の最も効果的な周波数範囲は、通常、約250Hzから約6,000Hzの範囲である。
【0022】
オーディオ刺激生成コンポーネント50のいくつかの実施形態は、マルチチャネル音声信号によって定義されるマルチチャネル音声の1つ以上のチャネルに基づいて、モノチャネル空気伝導刺激信号を生成する。いくつかの実施形態では、オーディオ刺激生成コンポーネント50は、音声信号および補償データの両方に基づいてモノチャネルオーディオ刺激信号を生成する。特定の実施形態では、オーディオ刺激生成コンポーネント50は、マルチチャネル音声信号によって定義される音声の複数のチャネルに基づいて、マルチチャネルオーディオ刺激信号を生成する。いくつかの実施形態では、オーディオ刺激生成コンポーネント50は、音声信号および補償データの両方に基づいて、マルチチャネルオーディオ刺激信号を生成する。例えば、10または10’等のヘッドセットと結合して使用される場合、モノチャネルまたはマルチチャネルのオーディオ刺激信号は、オーディオトランスデューサ181~182の一方もしくは両方、またはオーディオトランスデューサ181’~182’の一方もしくは両方に結合されるように構成される。オーディオ刺激生成コンポーネント50は、オーディオトランスデューサ181~182または181’~182’が空気伝導圧力波を介して可聴音を生成することによって対象者に聴覚を与えるように構成された形式および特性の、オーディオ刺激信号を生成する。オーディオ刺激生成コンポーネント50が生成するオーディオ刺激信号によって対象者に与えられるオーディオ刺激は、電気刺激生成コンポーネント46が生成するマルチチャネル電気刺激、および骨伝導刺激生成コンポーネント48が生成するモノチャネルもしくはマルチチャネル骨伝導刺激の、一方または両方と共にまたは同時に与えられた場合、対象者による全体的な音声知覚を向上させることができる。
【0023】
オーディオ刺激生成器50がもたらすマルチチャネル刺激は、ユーザーに対し、音像定位聴覚知覚をもたらすことが可能である。特に、マルチチャネルオーディオ刺激信号は、特定のオーディオトランスデューサに印加されることによって、対象者の頭部12の周りの特定の位置または方向(例えば、対象者の頭部12を中心とする球面に対する12:00、3:00、6:00および/または9:00の位置、上方、下方またはその他の位置もしくは方向)を音源としているように聴覚知覚を生じさせる、形式および特性を有する。例えば、オーディオ刺激生成コンポーネント50は、2つ以上のマイクロフォン201~208または201’~208’から受信したマルチチャネル音声信号に基づいてマルチチャネルオーディオ刺激信号を生成する。この信号は、オーディオ刺激に基づいて対象者が知覚する音声が、マイクロフォンが受信した音声の位置、方向および/またはレベルに対応する位置、方向および/またはレベルで発生していると知覚されるように、181および182または181’および182’等のトランスデューサに印加される。
【0024】
オーディオ刺激生成コンポーネント50は、従来または周知のアプローチによってオーディオ刺激信号を生成するように構成できる。例えば、オーディオ刺激信号は、対象者にもたらされる所望の音声知覚の周波数および/またはレベルに対応するように、周波数変調または振幅変調させてもよいし、同調させてもよい。非限定的な例としては、従来の補聴器または周知の補聴器で使用されるアプローチが挙げられる。このようなオーディオ刺激方式は、通常、100Hz~20,000Hz等、一般的な聴覚の全範囲の大部分またはすべてに対応する比較的広い範囲の周波数にわたる音が知覚されるように、刺激を与えることができる。
【0025】
図2に示す制御システム40の実施形態は、電気刺激生成コンポーネント46、骨伝導刺激生成コンポーネント48およびオーディオ刺激生成コンポーネント50を、電気刺激電極141~148もしくは141’~148’、骨伝導刺激トランスデューサ16、161’もしくは162’、またはオーディオ刺激トランスデューサ181~182もしくは181’~182’等の対応する刺激装置にそれぞれ結合する、ドライバ56、58および60を備えている。ドライバ56、58または60は、それぞれの信号生成コンポーネント46、48または50によって生成された信号を、対応する刺激装置への印加に適したレベルに変換する。例えば、いくつかの実施形態では、ドライバ56、58または60は、各刺激生成コンポーネント46、48または50によって生成された信号を、刺激装置への印加に適した電流レベルおよび/または電圧レベルおよび/またはインピーダンスレベルに変換するための、変圧器またはその他のコンポーネントを有している。
【0026】
信号生成コンポーネント46、48および/または50による補償によって、対象者が知覚する聴覚の特性のばらつきを(例えば、少なくとも部分的に)補正できる。例えば、一人の対象者において、その対象者の片側(例えば、右側)の1つ以上の刺激装置に所与のレベルの刺激が与えられた場合、対象者の反対側(例えば、左側)の1つ以上の刺激装置に与えられた同じレベルの刺激とは異なるレベル(例えば、音量)で聴覚が知覚される場合がある。同様に、このような非対称なレベル知覚は、対象者によってそれぞれ異なる。補償データコンポーネント44に格納されている補償データは、信号生成コンポーネント46、48または50によって上記の差異を考慮するために使用することができ、これによって、知覚される聴覚のレベルは「望ましい」レベル、例えば、制御システム40に入力される音声信号によって表されるレベルと相関する。他の例として、第1の対象者の1つ以上の特定の刺激装置に加えられる特定の1種類の刺激は、第1の位置または方向から発生したものとして知覚され、別の第2の対象者の同じまたは類似の1つ以上の特定の刺激装置に加えられる同じ1種類の刺激は、第1の対象者の第1の位置または方向とは異なる第2の位置または方向から発生したものとして知覚される可能性がある。補償データコンポーネント44が格納している補償データは、信号生成コンポーネント46、48または50によってこれらの差異を考慮するために使用することができ、知覚される聴覚の位置または方向は、「望ましい」位置または方向、例えば、制御システム40に入力される音声信号によって表される位置または方向と相関する。例えば、実施形態では、補償データコンポーネント44の補償データは、マルチチャネル音声信号が定義する音声情報(例えば、位置、方向またはレベル)を、信号生成コンポーネントが生成する刺激にマッピング、変換または相関させるために、信号生成コンポーネント46、48または50によって使用される。そして、生成された刺激によって、マルチチャネル音声信号が定義する音声情報に対応する音声または聴覚の知覚がもたらされる。
【0027】
例として、図3に、異なる対象者の頭部に対して同位置に配置された刺激装置に、同じ種類のモノチャネル骨伝導刺激およびマルチチャネル電気刺激の組み合わせを印加した場合における、11人の異なる対象者の音声知覚の位置および方向(角度等)のばらつきを模式的に示す。図3に示す結果は、対象者の額の近傍、正中線の前部に位置する骨伝導トランスデューサに印加されたモノチャネル骨伝導刺激と、対象者の左右の乳様突起の近傍の電極に印加された電気刺激とによって得られたものである。電気刺激に関しては、右側電極および左側電極に対して、右から左の電流方向(陽極から陰極)および左から右の電流方向の両方で信号が印加された。右から左の電流方向では、全対象者の左側で音声が知覚され、また、左から右の電流方向では、全対象者の右側で音声が知覚された。図3に示すように、同じ刺激に対して、正中線の右側と左側のそれぞれで異なる音源方向または位置が知覚されており、異なる方向の中には冠状面正中線の前側と後側の両方の方向も含まれていた。概して、骨伝導刺激を単独で印加した場合、得られた聴覚が位置していると対象者が知覚した場所は、頭部の前部、後部、右側部および左側部の間を略中心とした領域内の様々な場所に位置していた。電気刺激を右から左の方向に単独で印加した場合、対象者が聴覚を知覚した場所は、頭部の左側の様々な箇所に位置していた。電気刺激を左から右の方向に単独で印加した場合、対象者が聴覚を知覚した場所は、頭部の右側の様々な箇所に位置していた。
【0028】
図3に示す情報の生成に使用されたプロトコルには、3つの異なる周波数(2000Hz、4000Hz、8000Hz)で聴覚知覚をもたらすように構成された刺激が含まれていた。各周波数において、骨伝導刺激を単独で(例えば、電気刺激なしで)様々なレベルで加えることによって、対象者が刺激を知覚できる最低レベルまたは閾値レベルが決定された(例えば、聴覚知覚が可能となったタイミングを対象者が臨床医に伝えた)。これによって、各対象者の各周波数における骨伝導刺激閾値レベルが決定された。各周波数において、電気刺激を単独で(例えば、骨伝導刺激なしで)、右から左の電流方向で様々なレベルで加えることによって、対象者が刺激を知覚できる最低レベルまたは閾値レベルが決定された(例えば、聴覚知覚が可能となったタイミングを対象者が臨床医に伝えた)。同様に、各周波数において、電気刺激を単独で左から右の電流方向で様々なレベルで加えることによって、対象者が刺激を知覚できる最低レベルまたは閾値レベルが決定された。これによって、各対象者について、各周波数および両電流方向における電気刺激閾値レベルが決定された。次に、各対象者に対して、決定された閾値より所定量(例えば+10dB)高いレベルで、骨伝導および右から左への電流方向の電気刺激の同時印加、ならびに骨伝導および左から右への電流方向の電気刺激の同時印加を行って、各周波数における音像定位の判定を行った。判定において、対象者は聴覚を知覚した場所や方向を臨床医に伝えた。
【0029】
上記のような方法では、制御システム40の補償トレーニングコンポーネント42を使用することによって各対象者の補償データを取得できる。例えば、臨床医は、ディスプレイを含む制御装置52を使用して、複数の特性のそれぞれにおいて各刺激装置で対象者に刺激を与えることによって、複数の異なる周波数で聴覚を知覚させることができる。次いで、各周波数での各刺激装置の閾値レベルを決定する。臨床医は、制御装置52を使用して、複数の特性(例えば、電気刺激装置の場合は電流の方向)のそれぞれにおいて各刺激装置で対象者に刺激を与えることによって、複数の異なる周波数で聴覚を知覚させることができる。次いで、各周波数での各刺激装置の位置または方向を決定する。補償データは、各対象者に固有のものであってもよい。追加的または代替的に、補償データは、対象者のグループの特性の平均に対応したものであってもよい。
【0030】
刺激生成装置は、マルチチャネル音声信号および補償データに基づいて刺激信号を生成し、刺激信号が刺激装置に印加されると、位置、方向および/またはレベル等の所望の特性を持つ音声が知覚される。例えば、実施形態では、刺激生成装置は、マイクロフォン201~208または201’~208’によって受信されたマルチチャネル音声信号に基づいて、対象者によって知覚される音がマルチチャネル音声信号によって定義される位置、方向およびレベルに対応するように、刺激信号を生成することができる。例えば、実施形態では、マルチチャネル音声信号は、補償データを使用して効果的に計算かつ/または他の方法で処理され、所望の聴覚効果が知覚されるように刺激信号を生成することができる。
【0031】
図4は、いくつかの実施形態に係る、補償トレーニングコンポーネント42、補償データコンポーネント44、電気刺激生成コンポーネント46、骨伝導刺激生成コンポーネント48、オーディオ刺激生成コンポーネント50およびオペレータ制御装置52を含む制御システム40の機能コンポーネントを実装するために使用できる、例示的なコンピュータシステム138の模式図である。図示したコンピュータシステム138の実施形態は、システムネットワークまたはバス159によって結合された処理コンポーネント152、格納コンポーネント154、ネットワークインターフェースコンポーネント156およびユーザーインターフェースコンポーネント158で構成されている。処理コンポーネント152は、例えば、中央処理装置(CPU)160およびグラフィックス処理装置(GPU)162を備えており、刺激生成コンポーネントのための処理機能を提供している。格納コンポーネント154は、RAMメモリ164およびハードディスク/SSDメモリ166を備えており、補償データコンポーネント44の格納機能を提供している。例えば、本明細書に記載の方法を実装するために処理コンポーネント152によって使用されるオペレーティングシステムソフトウェアは、格納コンポーネント154に格納してもよい。いくつかの実施形態では、ネットワークインターフェースコンポーネントは、1つ以上のWEBサーバー170および1つ以上のアプリケーションプログラミングインターフェース(API)172を有している。ユーザーインターフェースコンポーネント158の例としては、ディスプレイ174、キーパッド176、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)178等が挙げられる。コンピュータシステム138の実施形態には、本明細書に記載の実施形態に従って方法を実装するための他の従来のコンポーネントまたは周知のコンポーネントが含まれる場合もある。
【0032】
第1の例は、ヘッドセットおよび制御システムを有するシステムを備えている。いくつかの実施形態は、マルチモード聴覚刺激システムを備えている。同システムは、マルチチャネル音声を表す音声信号を受信するように構成された音声信号入力部と、対象者の頭部に対して離間した位置に配置されるように構成された少なくとも2つの電気刺激電極(例えば、陽極および陰極の対を含む)と、対象者の頭部に対して配置されるように構成された少なくとも1つの骨伝導刺激トランスデューサと、音声信号入力部、少なくとも2つの電気刺激電極および少なくとも1つの骨伝導刺激トランスデューサに接続された少なくとも1つのプロセッサを有する制御システムとを備え、制御システムは、(1)少なくとも2つの電気刺激電極によって、音声信号に基づいて、聴覚知覚の音像定位を含む対象者の聴覚知覚を刺激する電気信号を発生させるように構成された、マルチチャネル電気刺激信号と、(2)少なくとも1つの骨伝導刺激トランスデューサによって、音声信号に基づいて、対象者の聴覚知覚を刺激する振動を発生させるように構成された、骨伝導刺激信号と、を生成する。
【0033】
第1の例のいくつかの実施形態では、制御システムは、レベル差または位相差の一方または両方を含むマルチチャネル電気刺激信号を生成する。上記実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、少なくとも2つの電気刺激電極には、対象者の右側および左側の乳様突起の近傍(例えば、対象者の頭部に対して3:00および9:00の位置)にそれぞれ配置されるように構成された、第1および第2の電極が含まれる。いくつかの実施形態は、さらに、音声信号入力部に接続された第1および第2のマイクロフォンを備え、第1および第2のマイクロフォンは、対象者の右側および左側の乳様突起の近傍(例えば、対象者の頭部に対して3:00および9:00の位置)にそれぞれ配置されるように構成される。
【0034】
第1の例の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、少なくとも2つの電気刺激電極には、対象者の頭部に対して12:00および6:00の位置にそれぞれ配置されるように構成された、2つの電極が含まれる。いくつかの実施形態は、さらに、音声信号入力部に接続され、対象者の頭部に対して12:00および6:00の位置にそれぞれ配置されるように構成された、2つのマイクロフォンを備えている。
【0035】
第1の例の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、少なくとも2つの電気刺激電極には、対象者の頭部に対して1:30および7:30の位置にそれぞれ配置されるように構成された2つの電極が含まれる。いくつかの実施形態は、さらに、音声信号入力部に接続され、対象者の頭部に対して1:30および7:30の位置にそれぞれ配置されるように構成された2つのマイクロフォンを備えている。
【0036】
第1の例の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、少なくとも2つの電気刺激電極には、対象者の頭部に対して4:30および10:30の位置にそれぞれ配置されるように構成された2つの電極が含まれる。いくつかの実施形態は、さらに、音声信号入力部に接続され、対象者の頭部に対して4:30および10:30の位置にそれぞれ配置されるように構成された、2つのマイクロフォンを備えている。
【0037】
第1の例の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、少なくとも1つの骨伝導トランスデューサは、対象者の頭部に対して正中線に沿って配置されるように構成される。
第1の例の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、少なくとも1つの骨伝導刺激トランスデューサは、対象者の頭部に対して離間した位置に配置されるように構成された第1および第2の骨伝導刺激トランスデューサを含み、制御システムは、第1および第2の骨伝導刺激トランスデューサによって、音声信号に基づいて、聴覚知覚の音像定位を含む、対象者の聴覚知覚を刺激する振動を発生させるように構成された、マルチチャネル骨伝導刺激信号を生成する。いくつかの実施形態では、第1および第2の骨伝導刺激トランスデューサは、対象者の頭部に対して正中線を挟んで互いに反対側に配置されるように構成される。
【0038】
第1の例の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、制御システムは、レベル差または位相差の一方または両方を含むマルチチャネル骨伝導信号を生成する。
第1の例の実施形態のいずれかまたはすべては、対象者の頭部に装着されるように構成された装着構造を、任意選択的にヘッドバンドをさらに備え、少なくとも2つの電気刺激電極および少なくとも1つの骨伝導刺激トランスデューサが装着構造に結合される。
【0039】
第1の例の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、制御システムは、(1)マルチチャネル電気刺激信号に、8kHz以上、任意選択的に15kHz以上の周波数で聴覚を刺激する電気信号を生成させ、(2)骨伝導刺激信号に、8kHz未満の周波数で聴覚を刺激する振動を生成させる。
【0040】
第1の例の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、制御システムは、骨伝導刺激信号がもたらす振動によって引き起こされる聴覚の周波数範囲よりも高い周波数を含む周波数範囲で聴覚を刺激する電気信号を、マルチチャネル電気刺激信号に生成させる。
【0041】
第1の例の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、制御システムは、さらに、(1)マルチチャネル電気刺激信号の特性、または(2)マルチチャネル電気刺激信号が少なくとも2つの電気刺激電極のうちのいずれに結合されているか、(3)骨伝導刺激信号の特性、または(4)骨伝導刺激信号が少なくとも1つの骨伝導刺激トランスデューサのうちのいずれに結合されているか、に基づいて、対象者の音声知覚の位置およびレベルの一方または両方を特徴付ける補償情報を格納するメモリを含み、制御システムは、(1)音声信号および補償情報に基づくマルチチャネル電気刺激信号、または(2)音声信号および補償情報に基づく骨伝導刺激信号の一方または両方を生成する。
【0042】
第1の例の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、システムはさらに、1つまたは2つのオーディオトランスデューサを備え、各オーディオトランスデューサは、ユーザーの頭部の耳に対して配置されるように構成され、制御システムは、1つまたは2つのオーディオトランスデューサに結合され、音声信号入力部で受信された音声信号に基づいて、可聴音の音像定位を含む、1つまたは2つのオーディオトランスデューサによる空気伝導圧力波音を生成するように構成された、マルチチャネルオーディオ刺激信号を生成する。
【0043】
第2の例は、ヘッドセットを備えていないプログラムされた制御システムである。第2の例のいくつかの実施形態は、第1の例の実施形態のいずれかまたはすべての制御システムの機能を提供するようにプログラムされた制御システム(例えば、1つ以上の電気刺激電極、少なくとも1つの骨伝導刺激トランスデューサ、マイクロフォン、1つまたは2つのオーディオトランスデューサおよび装着構造等の他のコンポーネントは除く)を備えている。
【0044】
第3の例は、制御システム用のソフトウェアである。第3の例のいくつかの実施形態は、制御システムに第1の例の制御システムの任意の実施形態の機能を実行させるためのプログラムされた命令を含む、非一時的な情報記憶媒体を備えている。
【0045】
第4の例は、聴覚知覚を刺激する方法である。第4の例のいくつかの実施形態は、対象者の聴覚知覚を刺激する方法を含む。同方法は、マルチチャネル音声を表す音声信号を受信することと、対象者の頭部に対して離間した位置に配置された少なくとも2つの電気刺激電極(例えば、陰極および陽極の対を含む)に結合されると、聴覚知覚の音像定位を含む、聴覚知覚の刺激を対象者において発生させる電気信号を生成するように構成されたマルチチャネル電気刺激信号を、音声信号に基づいて生成することと、対象者の頭部に対して配置された少なくとも1つの骨伝導刺激トランスデューサに結合されると、聴覚知覚の刺激を対象者において発生させる振動をもたらすように構成された骨伝導刺激信号を、音声信号に基づいて生成することと、からなる。
【0046】
第4の例のいくつかの実施形態では、マルチチャネル電気刺激信号を生成することは、レベル差または位相差の一方または両方を含むマルチチャネル電気刺激信号を生成することを含む。
【0047】
第4の例の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、マルチチャネル電気刺激信号を生成することは、対象者の右側および左側の乳様突起の近傍(例えば、対象者の頭部に対して3:00および9:00の位置)にそれぞれ配置された第1および第2の電極用に構成された信号を生成することを含む。いくつかの実施形態では、音声信号を受信することは、対象者の右側および左側の乳様突起の近傍(例えば、対象者の頭部に対して3:00および9:00の位置)にそれぞれ配置された第1および第2のマイクロフォンからマルチチャネル音声を表す信号を受信することを含む。
【0048】
第4の例の実施形態のいずれかまたはすべては、対象者の頭部に対して12:00および6:00の位置にそれぞれ配置された少なくとも2つの電気刺激電極用に構成された、マルチチャネル電気刺激信号を生成することをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、音声信号を受信することは、対象者の頭部に対して12:00および6:00の位置にそれぞれ配置された2つのマイクロフォンからマルチチャネル音声を表す信号を受信することを含む。
【0049】
第4の例の実施形態のいずれかまたはすべては、対象者の頭部に対して1:30および7:30の位置にそれぞれ配置された少なくとも2つの電気刺激電極用に構成された、マルチチャネル電気刺激信号を生成することをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、音声信号を受信することは、対象者の頭部に対して1:30および7:30の位置にそれぞれ配置された2つのマイクロフォンからマルチチャネル音声を表す信号を受信することを含む。
【0050】
第4の例の実施形態のいずれかまたはすべては、さらに、対象者の頭部に対して4:30および10:30の位置にそれぞれ配置された少なくとも2つの電気刺激電極用に構成された、マルチチャネル電気刺激信号を生成することをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、音声信号を受信することは、対象者の頭部に対して4:30および10:30の位置にそれぞれ配置された2つのマイクロフォンからマルチチャネル音声を表す信号を受信することを含む。
【0051】
第4の例の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、骨伝導刺激信号を生成することは、対象者の頭部に対して正中線に沿って配置された骨伝導トランスデューサ用に構成された、骨伝導刺激信号を生成することを含む。
【0052】
第4の例の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、骨伝導刺激信号を生成することは、骨伝導刺激トランスデューサによって、音声信号に基づいて、聴覚知覚の音像定位を含む、対象者の聴覚知覚を刺激する振動を発生させるように構成されたマルチチャネル骨伝導刺激信号を生成することを含む。いくつかの実施形態では、マルチチャネル骨伝導刺激信号を生成することは、対象者の頭部に対して正中線を挟んで互いに反対側に配置された第1および第2の骨伝導刺激トランスデューサによって振動をもたらすように構成された、マルチチャネル骨伝導刺激信号を生成することを含む。いくつかの実施形態では、マルチチャネル骨伝導信号を生成することは、レベル差または位相差の一方または両方を含むマルチチャネル骨伝導信号を生成することを含む。
【0053】
第4の例の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、(1)電気刺激信号を生成することは、8kHz以上の周波数で聴覚を刺激する電気信号を生成するために、マルチチャネル電気刺激信号を生成することが含まれ、(2)骨伝導刺激信号を生成することは、8kHz未満の周波数で聴覚を刺激する振動を生成するために、骨伝導刺激信号を生成することが含まれる。
【0054】
第4の例の実施形態のいずれかまたはすべては、骨伝導刺激信号がもたらす振動によって引き起こされる聴覚の周波数範囲よりも高い周波数を含む周波数範囲で聴覚を刺激する電気信号を生成するために、マルチチャネル電気刺激信号を生成することを含んでいてもよい。
【0055】
第4の例の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、(1)マルチチャネル電気刺激信号を生成することが、音声信号および電気刺激音像定位補償情報に基づいてマルチチャネル電気刺激信号を生成することを含み、電気刺激音像定位補償情報は、(I)マルチチャネル電気刺激信号の特性、または(II)マルチチャネル電気刺激信号が少なくとも2つの電気刺激電極のうちのいずれに結合されているか、のうちの1つ以上に基づいた、対象者の音声知覚の位置またはレベルのうちの一方または両方を特徴付ける情報を含む、あるいは(2)骨伝導刺激信号を生成することが、音声信号および骨伝導音像定位補償情報に基づいて骨伝導刺激信号を生成することを含み、骨伝導音像定位補償情報は、(III)骨伝導刺激信号の特性、または(IV)骨伝導刺激信号が少なくとも1つの骨伝導刺激トランスデューサのうちのいずれに結合されているか、のうちの1つ以上に基づいた、対象者の音声知覚の位置またはレベルのうちの一方または両方を特徴付ける情報を含む、の一方または両方である。
【0056】
第5の例は、プログラムされた制御システムである。第5の例の実施形態には、第4の例の実施形態のいずれかまたはすべての方法を実行するようにプログラムされた制御システムが含まれる。
【0057】
第6の例はソフトウェアである。第6の例の実施形態は、1つ以上のプロセッサに第4の例の実施形態のいずれかまたはすべての方法を実行させるためのプログラムされた命令を含む、非一時的な情報記憶媒体を備えている。
【0058】
第7の例は、補償トレーニング方法である。第7の例の実施形態は、対象者の頭部に対して配置された骨伝導刺激トランスデューサと、ユーザーの頭部に対して離間した位置に配置された少なくとも2つの電気刺激電極(例えば、陰極および陽極の対を含む)を備えたマルチモード聴覚刺激システムに関連して使用するための補償情報を生成する方法を含み、同方法は、対象者に骨伝導刺激および電気刺激を共に印加することと、骨伝導刺激および電気刺激によってもたらされた音声知覚を対象者が知覚した方向を表す情報を受信して、補償情報として記憶することと、を含む。
【0059】
第7の例の実施形態では、骨伝導刺激および電気刺激を共に印加することは、第1の周波数での音声知覚を表す骨伝導刺激および電気刺激を与えることを含む。いくつかの実施形態では、骨伝導刺激および電気刺激を共に印加することは、複数の周波数のそれぞれにおける音声知覚を表す骨伝導刺激および電気刺激を与えることを含み、受信して補償情報として記憶することは、複数の周波数のそれぞれにおいて、骨伝導刺激および電気刺激によってもたらされた音声知覚を対象者が知覚した方向を表す情報を受信して、補償情報として記憶することを含む。
【0060】
第7の例の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、電気刺激を印加することは、各周波数で少なくとも2つの電気刺激電極間において第1方向および第2方向の両方に電気刺激を印加することを含み、受信して補償情報として記憶することは、各周波数で第1方向および第2方向の両方において電気刺激によってもたらされた音声知覚を対象者が知覚する方向を表す情報を受信して、補償情報として記憶することを含む。
【0061】
第7の例の実施形態のいずれかまたはすべては、さらに、対象者に様々なレベルの骨伝導刺激を印加することと、対象者が骨伝導刺激によって音声を知覚する骨伝導刺激の閾値レベルを表す骨伝導閾値レベルを受信して、補償情報として記憶することと、対象者に様々なレベルで電気刺激を印加することと、対象者が電気刺激によって音声を知覚する電気刺激の閾値レベルを表す電気刺激閾値レベルを受信して、補償情報として記憶することと、を含んでいてもよい。
【0062】
第8の例は、対象者の頭部に対して配置された骨伝導刺激トランスデューサと、ユーザーの頭部に対して離間した位置に配置された少なくとも2つの電気刺激電極(例えば、陰極および陽極の対を含む)と、を備えたマルチモード聴覚刺激システムに関連して使用するための補償情報を生成する方法である。いくつかの実施形態は、対象者に骨伝導刺激および電気刺激を印加することと、骨伝導刺激および電気刺激によってもたらされた音声知覚を対象者が知覚した方向を表す情報を受信して、補償情報として記憶することと、を含む。
【0063】
第9の例は、対象者の聴覚知覚を刺激する方法である。いくつかの実施形態は、マルチチャネル音声を表す音声信号を受信することと、対象者の頭部に対して離間した位置に配置された少なくとも2つの電気刺激電極に結合されると、聴覚知覚の音像定位を含む、聴覚知覚の刺激を対象者において発生させる電気信号を生成するように構成されたマルチチャネル電気刺激信号を、音声信号に基づいて生成することと、対象者の頭部の耳に対して配置されたオーディオトランスデューサに結合されると、空気伝導圧力波音を対象者において生成するように構成されたオーディオ刺激信号を、音声信号に基づいて生成することと、からなる。
【0064】
第9の例のいくつかの実施形態は、マルチモード聴覚刺激システムに関連して使用するための補償情報を取得することをさらに含み、対象者に電気刺激および圧力波音を共に印加することと、電気刺激および圧力波音によってもたらされた音声知覚を対象者が知覚した方向を表す情報を受信して、補償情報として記憶することと、を含む。
【0065】
第9の例の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、オーディオ刺激信号を生成することは、対象者の頭部の耳に対して離間した位置に配置された2つ以上のオーディオトランスデューサに結合されると、音像定位を含む空気伝導圧力波音を対象者において生成するように構成された、マルチチャネルオーディオ刺激信号を生成することを含む。
【0066】
第9の例の実施形態のいずれかまたはすべては、マルチモード聴覚刺激システムに関連して使用するための補償情報を取得することをさらに含み、対象者に電気刺激および圧力波音を共に印加することと、電気刺激および圧力波音によってもたらされた音声知覚を対象者が知覚した方向を表す情報を受信して、補償情報として記憶することと、を含む。
【0067】
第10の例は、対象者の聴覚知覚を刺激する方法である。いくつかの実施形態は、マルチチャネル音声を表す音声信号を受信することと、対象者の頭部に対して配置された少なくとも1つの骨伝導刺激トランスデューサに結合されると、聴覚知覚の刺激を対象者において発生させる振動をもたらすように構成された骨伝導刺激信号を、音声信号に基づいて生成することと、対象者の頭部の耳に対して配置されたオーディオトランスデューサに結合されると、空気伝導圧力波音を対象者において生成するように構成されたオーディオ刺激信号を、音声信号に基づいて生成することと、を含む。
【0068】
第10の例のいくつかの実施形態は、マルチモード聴覚刺激システムに関連して使用するための補償情報を取得することをさらに含み、対象者に骨伝導刺激および圧力波音を共に印加することと、骨伝導刺激および圧力波音によってもたらされた音声知覚を対象者が知覚した方向を表す情報を受信して、補償情報として記憶することと、を含む。
【0069】
第10の例の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、オーディオ刺激信号を生成することが、対象者の頭部の耳に対して離間した位置に配置された2つ以上のオーディオトランスデューサに結合されると、音像定位を含む空気伝導圧力波音を対象者において生成するように構成された、マルチチャネルオーディオ刺激信号を生成することを含む。
【0070】
第10の例の実施形態のいずれかまたはすべては、マルチモード聴覚刺激システムに関連して使用するための補償情報を取得することをさらに含み、対象者に骨伝導刺激および圧力波音を共に印加することと、骨伝導刺激および圧力波音によってもたらされた音声知覚を対象者が知覚した方向を表す情報を受信して、補償情報として記憶することと、を含む。
【0071】
第11の例のいくつかの実施形態は、対象者の聴覚知覚を刺激する方法を含む。この方法は、マルチチャネル音声を表す音声信号を受信することと、対象者の頭部に対して離間した位置に配置された少なくとも2つの電気刺激電極に結合されると、聴覚知覚の音像定位を含む、聴覚知覚の電気刺激を対象者において発生させる電気信号を生成するように構成されたマルチチャネル電気刺激信号を、音声信号に基づいて生成することと、対象者の頭部に対して配置された少なくとも1つの骨伝導刺激トランスデューサに結合されると、聴覚知覚の骨伝導刺激を対象者において発生させる振動をもたらすように構成された骨伝導刺激信号を、音声信号に基づいて生成することと、からなる。
【0072】
第11の例のいくつかの実施形態は、マルチモード聴覚刺激システムに関連して使用するための補償情報を取得することをさらに含み、対象者に電気刺激および骨伝導刺激を共に印加することと、電気刺激および骨伝導刺激によってもたらされた音声知覚を対象者が知覚した方向を表す情報を受信して、補償情報として記憶することと、を含む。
【0073】
第11の例の実施形態のいずれかまたはすべては、さらに、対象者の頭部の耳に対して配置されたオーディオトランスデューサに結合されると、空気伝導圧力波音を対象者において生成するように構成されたオーディオ刺激信号を、音声信号に基づいて生成することを含む。いくつかの実施形態は、マルチモード聴覚刺激システムに関連して使用するための補償情報を取得することをさらに含み、対象者に電気刺激、骨伝導刺激および圧力波音を共に印加することと、電気刺激、骨伝導刺激および圧力波音によってもたらされた音声知覚を対象者が知覚した方向を表す情報を受信して、補償情報として記憶することと、を含む。
【0074】
第11の例の実施形態のいずれかまたはすべてにおいて、オーディオ刺激信号を生成することは、対象者の頭部の耳に対して離間した位置に配置された2つ以上のオーディオトランスデューサに結合されると、音像定位を含む空気伝導圧力波音を対象者において生成するように構成された、マルチチャネルオーディオ刺激信号を生成することを含む。いくつかの実施形態は、マルチモード聴覚刺激システムに関連して使用するための補償情報を取得することをさらに含み、対象者に電気刺激、骨伝導刺激および圧力波音を共に印加することと、電気刺激、骨伝導刺激および圧力波音によってもたらされた音声知覚を対象者が知覚した方向を表す情報を受信して、補償情報として記憶することと、を含む。
【0075】
上記の記載は例示であり、限定的ではない。他の実施形態は、上記記載から当業者には明らかである。1つの実施形態に関連して説明される特徴は、別の実施形態に記載されている特徴または別の実施形態に関連付けられている特徴に加えて、またはその代わりに、任意に使用されることが想定される。本発明の範囲は、特許請求の範囲および特許請求の範囲が権利化されるところの均等物の全範囲を参照して決定されるべきである。
図1A
図1B
図2
図3
図4
【国際調査報告】