(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】較正因子を補償する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1473 20060101AFI20250220BHJP
【FI】
A61B5/1473
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024548673
(86)(22)【出願日】2023-01-05
(85)【翻訳文提出日】2024-09-18
(86)【国際出願番号】 KR2023000253
(87)【国際公開番号】W WO2023158099
(87)【国際公開日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】10-2022-0021018
(32)【優先日】2022-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510115030
【氏名又は名称】アイセンス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】カン,ヨン・ジェ
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK10
4C038KL01
4C038KL09
4C038KX01
(57)【要約】
本発明は、連続生体情報の測定システムにおける較正因子を補償する方法に関し、より具体的には、センサが身体に挿入されてからセンサの使用時間の経過に応じて変化するセンサ特性を考慮してオフセットを計算することにより、リアルタイムで変化するセンサ特性を考慮して較正因子を正確に補償することができ、センサの挿入後、第1時点から第2時点までの生体信号から基準平均値を計算し、センサの使用時間の経過に応じて変化する比較平均値と基準平均値との差からオフセットを計算することにより、ノイズに強く且つ正確にオフセットを計算することができる較正因子の補償方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体に挿入され、ユーザの生体情報を測定し続けるセンサから生体信号を受信する段階と、
前記生体信号から基準平均値を計算する段階と、
前記生体信号を較正するための基準生体値が入力される場合、前記基準生体値が入力される時点までの比較平均値と前記基準平均値との差からオフセットを計算する段階と、
前記オフセットを用いて較正因子を決定し、前記生体信号を前記較正因子に適用して較正生体値を生成する段階と、を含むことを特徴とする、較正因子の補償方法。
【請求項2】
前記基準平均値を計算する段階は、
前記センサが身体に挿入された後、第1時点から第2時点まで受信された生体信号を抽出する段階と、
抽出した前記生体信号に基づいて、前記第1時点から第2時点までの基準平均値を計算する段階と、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の較正因子の補償方法。
【請求項3】
前記第2時点は、前記第1時点を基準としてセンサ安定化時間の経過後であることを特徴とする、請求項2に記載の較正因子の補償方法。
【請求項4】
前記センサ安定化時間は、既に設定されていることを特徴とする、請求項3に記載の生体信号の較正因子の補償方法。
【請求項5】
前記基準平均値を計算する段階は、
前記第2時点で前記生体信号に基づいて、センサが安定されたか否かを判断する段階をさらに含み、
前記センサが安定化したと判断される場合、前記生体信号に基づいて、前記第1時点から第2時点までの基準平均値を計算することを特徴とする、請求項4に記載の較正因子の補償方法。
【請求項6】
前記基準平均値を計算する段階は、
前記センサが安定化していないと判断される場合、前記第2時点以降に前記センサから受信した生体信号に基づいて、センサが安定されたか否かを判断する段階をさらに含み、
前記センサが安定化したと判断される場合、前記第1時点からセンサが安定化した時点までの生体情報に基づいて、基準平均値を計算することを特徴とする、請求項5に記載の較正因子の補償方法。
【請求項7】
前記センサ安定化時間は、前記センサが安定化したか否かに応じて可変することを特徴とする、請求項3に記載の較正因子の補償方法。
【請求項8】
前記比較平均値を計算する段階は、
前記センサが身体に挿入された後、第1時点から基準血糖値が入力される時点まで受信した生体信号を抽出する段階と、
抽出した前記生体信号から比較平均値を計算する段階と、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の較正因子の補償方法。
【請求項9】
前記センサが安定化したか否かは、
前記生体信号の変化率、基準生体値と生体信号との間の差、センサ敏感度の変化率、変動係数のうち少なくともいずれか一つに基づいて決定されることを特徴とする、請求項5から8のいずれか一項に記載の較正因子の補償方法。
【請求項10】
前記較正因子は、
前記基準生体値及び前記生体信号からセンサ敏感度を計算する段階と、
前記センサ敏感度に前記オフセットを適用する段階と、によって決定されることを特徴とする、請求項1に記載の較正因子の補償方法。
【請求項11】
前記生体信号は、ユーザの血糖信号であることを特徴とする、請求項1に記載の較正因子の補償方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続生体情報の測定システムにおける較正因子を補償する方法に関し、より具体的には、センサが身体に挿入されてからセンサの使用時間の経過に応じて変化するセンサ特性を考慮してオフセットを計算することにより、リアルタイムで変化するセンサ特性を考慮して較正因子を正確に補償することができ、センサの挿入後、第1時点から第2時点までセンサで測定した生体信号から基準平均値を計算し、センサの使用時間の経過に応じて変化する比較平均値と基準平均値との差からオフセットを計算することにより、ノイズに強く且つ正確にオフセットを計算することができる較正因子の補償方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、現代人に多く発生する慢性疾患であり、韓国内の場合、患者数が総人口の5%に相当する200万人以上に達している。
【0003】
糖尿病は、肥満、ストレス、誤った食習慣、先天的な遺伝など、様々な原因によって膵臓で生成されるインスリンが絶対的又は相対的に不足して、血液中の糖バランスをうまく保つことができず、血液中の糖成分が絶対的に多くなることで発症する。
【0004】
血液中には通常、一定濃度のブドウ糖が含有されており、これにより組織細胞はエネルギーを得ている。
【0005】
しかし、ブドウ糖が必要以上に増加すると、肝臓や筋肉または脂肪細胞などに適切に保存されず、血液中に蓄積され、これにより糖尿病患者は正常な人より遥かに高い血糖が維持され、過剰な血糖は組織をそのまま通過し、尿として排出されることから身体の各組織に絶対に必要な糖分が不足し、身体の各組織に異常を引き起こすことになる。
【0006】
糖尿病は、初期にはほとんど自覚症状がないことが特徴であるが、病気が進行すると、糖尿病特有の多飲、多食、多尿、体重減少、全身倦怠、皮膚のかゆみ、手や足の傷が治りにくいなどの特有の症状が現れ、病気がさらに進行すると、視力障害、高血圧、腎臓病、中風、歯周疾患、筋肉痙攣及び神経痛、壊疽などに進展する合併症が現れる。
【0007】
このような糖尿病を診断し、合併症に進展しないように管理するためには、体系的な血糖測定と治療を並行して行う必要がある。
【0008】
糖尿病は、管理のためにまめに血糖を測定する必要があり、血糖測定関連の装置はその需要が増加し続けている傾向にある。糖尿病患者が血糖調節を厳格に行う場合、糖尿病の合併症の発生が著しく減少することは様々な研究を通じて確認されている。したがって、糖尿病患者は、血糖調節のために規則的に血糖を測定することが非常に重要である。
【0009】
糖尿病患者の血糖管理のためには、一般的に採血式血糖測定器(finger prick method)が主に用いられるが、このような採血式血糖測定器は糖尿病患者の血糖管理には役立つものの、測定当時の結果のみを示すため、頻繁に変化する血糖数値を正確に把握することが難しいという問題がある。また、採血式血糖測定器は一日にも何度も血糖を測定するためにその都度採血を行う必要があり、糖尿病患者に採血に対する負担が大きいという問題がある。
【0010】
糖尿病患者は、一般に高血糖及び低血糖の状態を行き来するが、緊急事態は低血糖の状態で発生する。低血糖の状態は糖分が長く持続しない場合に発生し、意識を失ったり、最悪の場合は命を失う可能性もある。したがって、低血糖の状態を即時に発見することは、糖尿病患者にとって非常に重要である。しかし、間欠的に血糖を測定する採血式血糖測定器には明らかな限界がある。
【0011】
このような採血式血糖測定器の限界を克服するために、人体内に挿入して数分の間隔で血糖を測定する連続血糖測定システム(CGMS、Continuous Glucose Monitoring System)が開発されており、これを利用して糖尿病患者の管理及び緊急事態に容易に対処することができる。
【0012】
連続血糖測定システムは、ユーザの身体部位に取り付けて体液から血糖値を示す生体信号を測定して伝送するセンサトランスミッタと、センサトランスミッタから伝送された生体信号を血糖値に変換してユーザに出力する通信端末機等を含んで構成される。センサトランスミッタは、人体に一部が挿入される連続血糖測定用センサを備えるが、センサは一定の使用期間、例えば、約15日程度の間、人体に挿入されたまま生体信号を測定し続ける。センサトランスミッタは、体液から周期的に生体信号を測定し、通信端末機には血糖管理アプリケーションが設置されてセンサトランスミッタから生体信号を周期的に受信し、受信した生体信号から血糖値を計算してユーザに出力する。
【0013】
センサトランスミッタのセンサは、定められた使用期間中に皮膚に挿入され続けているが、センサが挿入される身体部位によって、又はセンサを着用したユーザごとにセンサ敏感度が異なる場合があり、身体部位のセンサの挿入位置が同一であっても、時間の経過に応じてセンサの敏感度が変化する。したがって、変化する敏感度に応じて測定された生体情報を較正するための較正因子を利用して、ユーザの血糖値を較正しなければならない。
【0014】
正確な血糖値をユーザに提供するためにセンサトランスミッタから受信した生体信号は初期較正されるべきであり、その後、センサトランスミッタの使用期間中に一定の較正周期ごとに継続的に較正されなければならない。より具体的に説明すると、センサトランスミッタの使用期間中に較正周期ごとに別途の測定器により測定された基準血糖値と、センサトランスミッタから受信した生体信号値、例えば、電流値から較正因子を計算し、その後、センサトランスミッタから受信した生体信号値に較正因子を適用して血糖値を計算する。
【0015】
較正因子Fは、基準血糖値BGとセンサトランスミッタから受信した電流値iの比率であって、以下の数学式1のように計算することができる。
【0016】
[数学式1]
較正因子=基準血糖値/電流値
【0017】
センサの定められた使用期間中にセンサの使用期間が経過するほど、センサ特性が変化することがある。例えば、身体に挿入されたセンサの周辺に生体分子(biomolecular)が密集してセンサを取り囲む(encapsulation)場合、センサは正常の状態よりも低い電流値を有する生体信号を生成することができる。
【0018】
このようにセンサ特性が変化する場合、
図1に示すように、同じ値の基準血糖値(VBG)に相応してセンサで測定した電流値はi
1からi
2に下がり、これにより計算される較正因子は相対的に高い値として計算される。このように較正因子の傾きが大きい場合、センサで測定した生体信号の値が微細に変わっても実際の較正された血糖値は大きな差を有することになり、較正された血糖値が不正確になる可能性があるという問題点があるが、このような問題点を解決するために、較正因子を計算する際にオフセットで較正因子を補償することができる。
【0019】
従来の較正因子を補償するために較正因子の大きさに基づいて既に設定されたオフセットを提供するが、例えば、較正因子の大きさが一定値以上の場合には、較正因子をオフセットO1の値で補償し、較正因子の大きさが一定値以下の場合には、較正因子をオフセットO2で補償した。しかし、このような従来の較正因子の補償方式は、センサ特性のリアルタイム変化を考慮せず、さらにセンサの種類ごとに、又はセンサが着用される部位ごとに、又はセンサを使用するユーザごとに、又はセンサの使用時間の経過に応じて異なって変化するセンサ特性を考慮しないため、正確に較正因子を補償することができないという問題点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、上述した従来のオフセットを用いた較正因子の補償方法が有する問題点を解決するためのものであって、本発明が達成しようとする目的は、センサが身体に挿入された後、センサの使用時間の経過に応じて変化するセンサ特性を考慮してオフセットを計算し、それを用いて較正因子を正確に補償することができる較正因子の補償方法を提供することである。
【0021】
本発明が達成しようとする他の目的は、センサの挿入後、第1時点から第2時点までセンサで測定した生体信号から基準平均値を計算し、センサの使用時間の経過に応じて変化する比較平均値と基準平均値との差からオフセットを計算して、ノイズに強く且つ正確にオフセットを計算することができる較正因子の補償方法を提供することである。
【0022】
本発明が達成しようとするさらに他の目的は、基準平均値を計算するためにセンサの挿入後、センサの生体情報を取得する期間をセンサ安定化の有無に応じて可変することで、正確なオフセット基準値を取得することができる較正因子の補償方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明により、連続生体情報の測定システムにおける較正因子を補償する方法は、身体に挿入され、ユーザの生体情報を測定し続けるセンサから生体信号を受信する段階と、生体信号から基準平均値を計算する段階と、生体信号を較正するための基準生体値が入力される場合、基準生体値が入力される時点までの比較平均値と上記基準平均値との差からオフセットを計算する段階と、オフセットを用いて較正因子を決定し、生体信号を較正因子に適用して較正生体値を生成する段階とを含むことを特徴とする。
【0024】
好ましくは、本発明の一実施形態に従って、基準平均値を計算する段階は、センサが身体に挿入された後、第1時点から第2時点まで受信した生体信号を抽出する段階と、抽出した生体信号に基づいて第1時点から第2時点までの基準平均値を計算する段階とを含むことを特徴とする。
【0025】
ここで、第2時点は、第1時点を基準として安定化判断時間の経過後であることを特徴とする。
【0026】
ここで、安定化判断時間は既に設定されているものであることを特徴とする。
【0027】
好ましくは、本発明により、基準平均値を計算する段階は、第2時点で生体信号に基づいてセンサが安定化したか否かを判断する段階をさらに含み、センサが安定化したと判断される場合、生体信号に基づいて第1時点から第2時点までの基準平均値を計算することを特徴とする。
【0028】
好ましくは、本発明により、基準平均値を計算する段階は、センサが安定化していないと判断される場合、第2時点以降にセンサから受信した生体信号に基づいてセンサが安定化したか否かを判断する段階をさらに含み、センサが安定化したと判断される場合、第1時点からセンサが安定化した時点までの生体情報に基づいて基準平均値を計算することを特徴とする。
【0029】
本発明の他の実施形態において、安定化判断時間は、上記センサが安定化したか否かに応じて可変することを特徴とする。
【0030】
好ましくは、本発明により、比較平均値を計算する段階は、センサが身体に挿入された後、第1時点から基準血糖値が入力される時点まで受信した生体信号を抽出する段階と、抽出した生体信号から比較平均値を計算する段階とを含むことを特徴とする。
【0031】
ここで、センサが安定化したか否かは、生体信号の変化率、基準生体値と生体信号との差、センサ敏感度の変化率、変動係数のうち少なくともいずれか一つに基づいて決定されることを特徴とする。
【0032】
好ましくは、本発明における較正因子は、基準生体値と上記生体信号からセンサ敏感度を計算する段階と、センサ敏感度に上記オフセットを適用する段階とによって決定されることを特徴とする。
【0033】
ここで、生体信号は、ユーザの血糖信号であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、連続生体情報の測定装置において較正因子を補償する方法は、次のような効果を有する。
【0035】
第一に、本発明に係る較正因子の補償方法は、センサが身体に挿入された後、センサの使用時間の経過に応じて変化するセンサ特性を考慮してオフセットを計算することにより、センサの種類別、ユーザ別、センサが挿入される身体部位別、及びセンサの実際の使用時間の経過に応じてリアルタイムで変化するセンサ特性を考慮して、較正因子を正確に補償することができる。
【0036】
第二に、本発明に係る較正因子の補償方法は、センサの挿入後、第1時点から第2時点までセンサで測定した生体信号から基準平均値を計算し、センサの使用時間の経過に応じて変化する比較平均値と基準平均値との差からオフセットを計算することにより、ノイズに強く且つ正確にオフセットを計算することができる。
【0037】
第三に、本発明に係る較正因子の補償方法は、基準平均値を計算するために、センサの挿入後、センサの生体情報を取得する期間をセンサ安定化の有無に応じて可変してオフセットを計算することにより、正確なオフセット基準値を取得して正確に較正因子を補償することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】基準血糖値及び血糖信号から計算される較正因子の一例を示している。
【
図2】本発明の一実施形態に係る連続生体情報の測定システムを示す概略図である。
【
図3】本発明に係る較正因子の補償装置を説明するための機能ブロック図である。
【
図4】本発明に係るオフセット生成部の一例を説明するための機能ブロック図である。
【
図5】本発明により、連続生体情報の測定システムにおける較正因子を補償する方法を説明するためのフローチャートである。
【
図6】本発明においてオフセットを計算する方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図7】本発明においてオフセットを計算する一例を説明するための図である。
【
図8】基準平均値を計算する一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明で使用される技術的用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではないことに留意すべきである。また、本発明で使用される技術的用語は、本発明において特に他の意味に定義されない限り、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者によって一般に理解される意味に解釈されるべきであり、過度に包括的な意味、又は過度に縮小された意味に解釈されてはならない。さらに、本発明で使用される技術的な用語が本発明の思想を正確に表すことができない誤った技術的用語である場合には、当業者が正しく理解することができる技術的用語で代替して理解すべきである。
【0040】
また、本発明で使用される単数の表現は、文脈上、明らかに異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。本発明において、「構成される」又は「含む」などの用語は、発明に記載されたいくつかの構成要素、又はいくつかの段階を必ずしも全て含むものと解釈されてはならず、そのうち一部の構成要素又は一部の段階が含まれなくてもよく、又は更なる構成要素又は段階をさらに含んでもよいことを解釈すべきである。
【0041】
なお、添付の図面は、本発明の思想を容易に理解するためのものであり、添付の図面によって本発明の思想が制限されるものと解釈されてはならないことに留意すべきである。
【0042】
以下、添付の図面を参照し、本発明により、連続生体情報の測定システムにおける較正因子を補償する方法についてより具体的に検討する。
【0043】
図2は、本発明の一実施形態に係る連続生体情報の測定システムを示す概略図である。
【0044】
以下では、生体情報の一例として血糖値を、そして、基準生体情報の一例として基準血糖値を挙げて説明するが、本発明が適用される分野によって血糖値以外に様々な生体情報を測定することができる。
【0045】
図2を参照すると、本発明の一実施形態に係る連続生体情報の測定システムは、センサトランスミッタ10及び通信端末機30を含む。
【0046】
センサトランスミッタ10は身体に取り付けられるが、センサトランスミッタ10が身体に取り付けられるとき、センサトランスミッタ10のセンサの一端は皮膚に挿入され、人体の体液から周期的に血糖値を示す生体信号、すなわち、血糖信号を測定する。
【0047】
通信端末機30は、センサトランスミッタ10から血糖信号を受信し、受信した血糖信号を較正因子で較正して較正血糖値に単位変換した後、ユーザに表示できる端末機として、スマートフォン、タブレットPC、又はノートパソコンなどのように、センサトランスミッタ10と通信可能な端末機が用いられることができる。もちろん、通信端末機30はこれに限定されるものではなく、通信機能を含み、プログラムやアプリケーションを設置することができる端末機であれば、如何なる種類の端末機であってもよい。
【0048】
すなわち、センサトランスミッタ10は、ユーザの血糖値を表す血糖信号、例えば、電流信号を生成して血糖信号を通信端末機30に送信するが、通信端末機30は、血糖信号を較正因子で較正して較正血糖値に単位変換する。本発明が適用される分野に応じて、センサトランスミッタ10で血糖信号から直接血糖値に単位変換し、通信端末機30では、センサトランスミッタ10から受信した血糖値を較正因子で較正することができる。本発明が適用される分野に応じて、センサトランスミッタ10で血糖信号を較正因子で較正して較正血糖値に単位変換し、通信端末機30は較正血糖値を受信してユーザに出力することができる。
【0049】
センサトランスミッタ10は、通信端末機30からの要請によって、又は設定された時刻ごとに周期的、又はリアルタイムで血糖信号を通信端末機30に伝送するが、センサトランスミッタ10と通信端末機30との間でデータ通信を行うために、センサトランスミッタ10と通信端末機30は互いにUSBケーブル等により有線で通信連結されるか、又は赤外線通信、NFC通信、ブルートゥース(登録商標)等の無線通信方式で通信連結されることができる。
【0050】
センサトランスミッタ10と通信端末機30との間で通信が連結される場合、センサトランスミッタ10の初期安定化後に別途の血糖測定器(図示せず)によって測定した基準血糖値を用いて初期較正因子を計算し、初期較正因子を用いて血糖信号の初期較正が行われる。その後、通信端末機30は、センサトランスミッタ10から受信した血糖信号を初期較正因子で較正し、較正血糖値をユーザに出力して提供する。
【0051】
ここで、初期安定化は、センサを身体に挿入してから一定期間、例えば、2時間が経過した後に初期安定化するものと判断されるか、又は血糖信号に基づいて初期安定化の有無を判断することができる。しかし、初期安定化は、センサを身体に挿入した後、ユーザにできるだけ早く較正血糖値を知らせるために必要な最小限の安定化時間や条件として、実際のセンサ安定化が完了するまでは追加の時間、例えば、3日~10日程度の時間が必要な場合がある。
【0052】
初期安定化の後に、センサトランスミッタ10で血糖信号を正確に較正するために、通信端末機30は、センサトランスミッタ10の使用期間中に較正周期ごとに別途の血糖測定器によって測定した基準血糖値を用いて、新規較正因子を計算し、新規較正因子を使用してセンサトランスミッタから受信した血糖信号を較正して較正血糖値を計算し、計算した較正血糖値をユーザに出力して提供する。
【0053】
ここで、初期較正因子または新規較正因子を計算する際、センサ特性に応じて変化するオフセットを計算し、計算したオフセットで較正因子を補償することができる。このように較正因子を補償するために使用されるオフセットを計算する際にリアルタイムで変化するセンサ特性を考慮することにより、既に設定されたオフセットを使用する従来の補償方法と比較してセンサの種類に応じて、センサを使用するユーザに応じて、センサが挿入される身体部位に応じて、及びセンサが身体に挿入されて使用された時間の経過に応じて変化するセンサ特性を考慮してオフセットを計算し、これによって較正因子をより正確に補償することができる。
【0054】
図3は、本発明に係る較正因子の補償装置を説明するための機能ブロック図である。
【0055】
本発明において、較正因子の計算及び補償が通信端末機で行われる場合、当該較正因子の補償装置は通信端末機で実現されることができるが、較正因子の計算及び補償がセンサトランスミッタで行われる場合、当該較正因子の補償装置はセンサトランスミッタで実現されることができる。
【0056】
図3を参照してより具体的に説明すると、送受信部110はセンサトランスミッタで測定した血糖信号を受信する。ここで、血糖信号は、身体に挿入されたセンサで体液から測定した電流値であり得る。
【0057】
オフセット生成部130は、センサの挿入後、第1時点から第2時点までの血糖信号から基準平均値を計算し、その後、較正周期が到来する場合、第1時点から較正周期までの比較平均値と基準平均値との差からオフセットを計算する。より具体的に説明すると、センサの挿入後、第1時点から第2時点までセンサで測定した血糖信号を取得し、第1時点から第2時点までの血糖信号から基準平均値を計算する。オフセット生成部130は、第1時点から較正時点までセンサで測定した血糖信号から計算した比較平均値と基準平均値との差から、変化したセンサ特性を考慮したオフセットを計算する。
【0058】
較正因子補償部150は、較正周期が到来する場合又は較正周期とは関係なく血糖信号を較正するための基準血糖値が入力される場合、送受信部110を介して受信した血糖信号と基準血糖値の比率から較正因子を計算し、較正時点で計算したオフセットを較正因子に適用して較正因子を補償する。
【0059】
較正部170は、較正時点以降にセンサで測定した血糖信号を受信する場合、補償された較正因子を用いて血糖信号を単位変換して較正血糖値を生成する。
【0060】
図4は、本発明に係るオフセット生成部の一例を説明するための機能ブロック図である。
【0061】
図4を参照してより具体的に説明すると、基準平均値計算部135は、センサで測定した第1時点から第2時点までの血糖信号から基準平均値を計算する。 基準平均値は、センサの使用期間中に較正因子を補償するためのオフセットを計算するのに使用される基準値であって、基準平均値としては、第1時点から第2時点まで取得した血糖信号、例えば、第1時点から第2時点までセンサで測定した電流値の平均値、中央値、算術平均値、幾何平均値などが用いられることができる。
【0062】
好ましくは、安定化判断部131は、センサの挿入後、既に設定された第2時点が経過する場合、センサが安定化したか否かを判断するが、安定化判断部131の判断結果に基づいて基準平均値計算部135は、第2時点でセンサが安定化した場合、第1時点から第2時点までセンサで測定した血糖信号から基準平均値を計算することができる。
【0063】
しかし、安定化判断部131の判断結果に基づいて第2時点でセンサが安定化していない場合、可変部133は安定化判断時間を第2時点から拡張して可変し、安定化判断部131は可変した安定化判断時間にセンサが安定されたか否かを判断する。本発明が適用される分野に応じて、可変部133は、安定化判断部131の判断結果に基づいて安定化判断時間を設定された期間まで継続して拡張し、センサが安定化したか否かを判断することができる。可変した安定化判断時間にセンサが安定化した場合、基準平均値計算部135は、第1時点から可変した安定化判断時間まで、センサで測定した血糖信号から基準平均値を計算することができる。
【0064】
比較平均値計算部136は、第1時点から較正周期の較正時点または較正周期とは関係なく、ユーザが較正しようとする較正時点まで、センサで測定した血糖信号から比較平均値を計算する。ここで、比較平均値としては、第1時点から較正時点までセンサで測定した電流値の平均値、中央値、算術平均値、幾何平均値などが用いられることができる。
【0065】
好ましくは、較正制御部137は、較正時点で測定したセンサの血糖信号または基準血糖値に基づいて較正時点が有効であるか否かを判断する。例えば、較正時点での血糖信号の変化率が臨界変化率以上である場合、又は較正時点で生成した較正血糖値が臨界範囲から外れた場合のように、一時的にセンサが不安定な場合又はユーザの血糖値が不安定な場合は、較正時点を遅延させることができる。比較平均値計算部136は、較正制御部の較正時点の有効の有無に対する判断結果に基づいて、較正時点が有効であると判断される較正時点での比較平均値を計算する。
【0066】
オフセット計算部139は、基準平均値と比較平均値との差から較正時点でのオフセットを計算する。
【0067】
図5は、本発明により、連続生体情報の測定システムにおける較正因子を補償する方法を説明するためのフローチャートである。
【0068】
図5を参照してより具体的に説明すると、センサで測定した血糖信号を受信する(S110)。
【0069】
センサの挿入後、第1時点からセンサ安定化の時点まで受信した血糖信号から基準平均値を計算し、その後、較正時点が到来する場合、第1時点から較正時点まで受信した血糖信号から比較平均値を計算して、基準平均値と比較平均値との差からオフセットを計算する(S130)。
【0070】
較正時点で別途の血糖測定器を用いて測定した基準血糖値と基準血糖値を測定した時刻に対応して、センサで測定した血糖信号から較正因子を計算し、計算した較正因子をオフセットで補償する(S150)。
【0071】
好ましくは、補償された較正因子Fcは、以下の数学式2のように計算することができる。
【0072】
Fc=基準血糖値/(血糖信号-オフセット)
【0073】
較正時点以降にセンサから血糖信号を受信する場合、補償した較正因子を用いて血糖信号を較正血糖値に単位変換して較正する(S170)。較正血糖値は、通信端末機を介してユーザに提供されることができる。
【0074】
図6は、本発明においてオフセットを計算する方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0075】
図6を参照してより具体的に説明すると、センサの挿入後、センサが安定されたか否かを判断する(S131)。ここで、センサの安定化の有無に対する判断は、既に設定された安定化判断時間が到来した場合に判断することができるが、本発明が適用される分野に応じて安定化判断時間は可変することができる。
【0076】
センサが安定化した場合、センサの挿入後、第1時点から安定化判断時点、すなわち、第2時点まで測定した血糖信号から基準平均値を計算する(S133)。ここで、第1時点は、センサの挿入時点と同じであってもよいが、第1時点は、センサを挿入してから一定時間が経過した時点に設定されてもよい。 例えば、第1時点と第2時点との間の期間は、センサの挿入時点から5日、センサを挿入してから1日が経過した時点を第1時点とし、センサを挿入してから5日が経過した時点を第2時点とし、センサを挿入してから3日が経過した時点を第1時点とし、センサを挿入してから5日が経過した時点を第2時点とするなど、様々に設定することができる。
【0077】
較正周期による較正時点または較正周期とは関係のない較正時点で基準血糖値を入力するためのユーザの命令が入力される場合(S135)、第1時点から較正時点まで測定した血糖信号から比較平均値を計算する(S137)。
【0078】
基準平均値と比較平均値との差からオフセットを計算する(S139)。
【0079】
図7は、本発明においてオフセットを計算する一例を説明するための図である。
【0080】
図7に示すように、第1時点t
0からセンサが安定化した時点t
sまでセンサで測定した血糖信号、すなわち、電流値の平均値を計算する。
【0081】
第1較正時点t1で較正因子を補償するために使用されるオフセットは、基準平均値sと第1較正時点での比較平均値、すなわち、第1較正時点までの電流値の平均値の間の差O1で計算される。例えば、基準平均値と比較平均値との間の差が-0.2である場合、-0.2を第1較正時点のオフセットとして使用して較正因子を補償する。
【0082】
これと同様に、第2較正時点t2、第3較正時点t3、第4較正時点t4、第5較正時点t5において、基準平均値と比較平均値との差からオフセットを計算して第2較正時点t2、第3較正時点t3、第4較正時点t4、第5較正時点t5での較正因子を補償する。
【0083】
図8は、基準平均値を計算する一例を説明するためのフローチャートである。
【0084】
図8を参照してより具体的に説明すると、センサが挿入された後、安定化判断時間が到来したか否かを判断する(S211)。ここで、安定化判断時点はセンサ特性に応じて様々に設定することができる。
【0085】
安定化判断時間が到来した場合、センサが安定化したか否かを判断する(S213)。ここで、センサの安定化の有無は、センサで測定した血糖信号の傾向(例えば、変化率、偏差など)、基準血糖値と血糖信号の偏差、敏感度の変化、変動係数等に基づいて判断することができる。
【0086】
センサが安定化したと判断される場合、センサの挿入後、第1時点から到来した安定化判断時間までセンサで測定した血糖信号から基準平均値を計算する(S215)。
【0087】
しかし、安定化判断時間までセンサが安定化していないと判断される場合、安定化判断時間を延長する(S217)。延長した安定化判断時間にセンサが安定化したか否かを再び判断し、延長した安定化判断時間にセンサが安定化したと判断される場合、センサの挿入後、第1時点から延長した安定化判断時間までセンサで測定した血糖信号から基準平均値を計算する(S215)。
【0088】
しかし、延長した安定化判断時間にセンサが安定化していないと判断される場合、安定化判断時間を再び延長してセンサが安定化したか否かを判断する。このようにセンサの安定化の有無に基づいて安定化判断時間を既に設定された時点まで継続して延長し、センサが安定化したか否かを判断するが、設定された時点を経過するまでセンサが安定化していない場合、較正時点で計算した較正因子を補償せずに較正血糖値を計算することができる。本発明の他の実施形態で設定された時点を経過するまでセンサが安定化していない場合、センサ交換をユーザにアラームすることができる。
【0089】
一方、上述した本発明の実施形態は、コンピュータで実行可能なプログラムで作成可能であり、コンピュータで読み込み可能な記録媒体を用いて上記プログラムを動作させる汎用デジタルコンピュータで実現されることができる。
【0090】
上記コンピュータで読み込み可能な記録媒体は、磁気記憶媒体(例えば、ROM、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光学読み取り媒体(例えば、CD-ROM、DVDなど)、及びキャリア波(例えば、インターネットによる伝送)のような記憶媒体を含む。
【0091】
本発明は、図面に示された実施形態を参照して説明されたが、これは、例示的なものに過ぎず、本技術分野における通常の知識を有する者であれば、これにより様々な変形及び均等な他の実施形態が可能であることを理解することができる。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、添付された登録請求の範囲の技術的思想によって定められるべきである。
【国際調査報告】