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特表2025-505813水性硫化水素を硫酸に変換するための方法
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  • 特表-水性硫化水素を硫酸に変換するための方法 図1
  • 特表-水性硫化水素を硫酸に変換するための方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】水性硫化水素を硫酸に変換するための方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 17/74 20060101AFI20250220BHJP
   C01B 17/16 20060101ALI20250220BHJP
   B01J 27/055 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
C01B17/74 G
C01B17/16 M
B01J27/055 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024548705
(86)(22)【出願日】2023-02-20
(85)【翻訳文提出日】2024-10-10
(86)【国際出願番号】 EP2023054230
(87)【国際公開番号】W WO2023161195
(87)【国際公開日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】PA202200144
(32)【優先日】2022-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】トプソー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン・セームエル・ヴィクト・シャマン
(72)【発明者】
【氏名】テレフスン・モーデン
(72)【発明者】
【氏名】スュルヴェスト-ヨハンスン・ミケール・トマス
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BB04A
4G169BB10A
4G169BC02A
4G169BC03A
4G169BC04A
4G169BC05A
4G169BC06A
4G169BC16A
4G169BC31A
4G169BC43A
4G169BC50A
4G169BC54A
4G169BC55A
4G169BC58A
4G169BC59A
4G169BC60A
4G169BC62A
4G169BD05A
4G169CB84
4G169DA05
4G169FC07
(57)【要約】
本開示は、以下のステップ
a. 硫化水素を含む水溶液と接触するようにある量のリサイクルガスを誘導し、水溶液から硫化水素を含むガスを分離するステップ、
b. 酸素源の添加後に、任意に硫化水素を含むガスを加熱し、プロセス供給ガスを提供するステップ、
c. 硫化水素酸化ステップにおいて、硫化水素の二酸化硫黄への酸化に誘導するステップ、
d. 二酸化硫黄酸化ステップにおいて、二酸化硫黄の三酸化硫黄への酸化において触媒的に活性な材料と接触するように、前記二酸化硫黄リッチガスを誘導して、三酸化硫黄リッチガスを提供するステップ、
e. 凝縮ステップにおいて、前記三酸化硫黄リッチガスを冷却して、三酸化硫黄の水和および硫酸の凝縮を可能にし、濃硫酸の流れおよび精製されたプロセスガスを提供するステップ、
を含む硫化水素を含む水溶液を精製するための方法に関連し、
リサイクルステップにおいて、精製されたプロセスガスの少なくとも一部をリサイクルガスとして誘導する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ
a. 硫化水素を含む水溶液(2)と接触するようにある量のリサイクルガス(42)を誘導し、硫化水素を含む水溶液(2)から硫化水素を含むガス(8)を分離するステップ、
b. 任意に酸素源(12)の添加後に、任意に硫化水素を含むガス(8)を加熱し、プロセス供給ガスを提供するステップ、
c. 硫化水素酸化ステップにおいて、酸素源を任意に添加した後、硫化水素の二酸化硫黄への酸化に有効な条件下で、前記プロセス供給ガスを誘導して、二酸化硫黄リッチガス(11、16)を提供するステップ、
d. 二酸化硫黄酸化ステップにおいて、任意に酸素源(12)を添加した後に、二酸化硫黄の三酸化硫黄への触媒的酸化に有効な条件下で、二酸化硫黄の三酸化硫黄への酸化において触媒的に活性な材料(20、24)と接触するように、前記二酸化硫黄リッチガス(11、16)を誘導して、三酸化硫黄リッチガス(28)を提供するステップ、
e. 凝縮ステップにおいて、凝縮器熱交換媒体、例えば、プロセスガスまたは空気、との熱交換によって前記三酸化硫黄リッチガス(28)を冷却して、三酸化硫黄の水和および硫酸の凝縮を可能にし、濃硫酸(36)の流れおよび精製されたプロセスガス(38)を提供するステップ、ならびに、
f. リサイクルステップにおいて、精製されたプロセスガス(38)の少なくとも一部をリサイクルガス(42)として誘導するステップ、
を含む、硫化水素を含む水溶液(2)を精製するための方法。
【請求項2】
硫化水素の二酸化硫黄への酸化に有効な前記条件が、例えば、場合によっては熱交換と組み合わせた燃焼によって得られる上昇した温度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
硫化水素の二酸化硫黄への酸化に有効な前記条件が、硫化水素の二酸化硫黄への酸化に触媒的に活性な材料(10)との接触を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
プロセス供給ガス中の硫化水素の量が、少なくとも0.1体積%または少なくとも0.5体積%であり、2体積%未満または3体積%未満である、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
精製されたプロセスガス(38)中の二酸素の量が、少なくとも0.1体積%または少なくとも0.5体積%であり、3体積%未満または5体積%未満である、請求項1、2、4または4に記載の方法。
【請求項6】
硫化水素の二酸化硫黄への酸化に触媒的に活性な材料が、アルミニウム、ケイ素およびチタンからなる群から選択される1種または2種以上の金属の酸化物を含む担体上に、バナジウム、クロム、タングステン、モリブデン、セリウム、ニオブ、マンガンおよび銅からなる群から選択される1種または2種以上の金属の酸化物を含み、温度が少なくとも200℃または少なくとも220℃であり、500℃未満または550℃未満である、請求項1、3、4または5に記載の方法。
【請求項7】
二酸化硫黄の三酸化硫黄への触媒的酸化に有効な条件が、多孔質担体上の五酸化バナジウム(V)、硫酸塩、ピロ硫酸塩、三硫酸塩または四硫酸塩の形態の硫黄、およびアルカリ金属、例えば、Li、Na、K、RbまたはCsを含む触媒的に活性な材料、および温度が少なくとも380℃または少なくとも400℃であり、700℃未満または650℃未満であることを含む、請求項1、3、4、5または6に記載の方法。
【請求項8】
硫化水素を含む前記プロセスガスの加熱が、(a)第1の高温プロセス流体との熱交換器における熱交換、および(b)第2の高温プロセスガスの添加の一方または両方を含む、請求項1、2、3、4、5、6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の高温プロセス流体および前記第2の高温プロセス流体は、同一であっても異なっていてもよく、前記凝縮器熱交換媒体を含む熱交換媒体、前記二酸化硫黄リッチガス、前記三酸化硫黄リッチガス、および前記精製されたプロセスガスの群から選択され得る、請求項1、2、3、4、5、6、7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記プロセス供給ガスは、二酸化硫黄リッチガスの温度が少なくとも370℃以上420℃未満であるような温度を有する、請求項1、3、4、5、6、7、8または9に記載の方法。
【請求項11】
硫化水素を含む前記水溶液が、硫酸塩の微生物学的還元によって提供される、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10に記載の方法。
【請求項12】
生成された硫酸の少なくとも一部が、硫酸塩を生成する上流プロセスで使用されるように誘導される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
生成された硫酸の少なくとも一部が、金属鉱石の溶出に使用されるように誘導され、金属硫酸塩を含む水溶液を提供する、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12に記載の方法。
【請求項14】
生成された硫酸の少なくとも一部が、リグニン化合物の加水分解に使用されるように誘導される、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12に記載の方法。
【請求項15】
液体流入口および出口ならびにガス流入口および出口を有する、液体流とガス流とを接触させるための容器(4)、
それぞれが入口および出口を有する、硫化水素酸化手段および二酸化硫黄酸化に触媒的に活性な材料を含む二酸化硫黄反応器、ならびに、
冷却媒体入口(32)および冷却媒体出口(34)、ガス入口(28)、液体出口(36)およびガス出口(38)を有する凝縮器(30)を備えるプロセスプラントであって、
液体流とガス流とを接触させるための容器のガス出口が、硫化水素酸化反応器の入口と流体連通しており、
硫化水素酸化反応器の出口が、二酸化硫黄酸化反応器の入口と流体連通しており、
二酸化硫黄酸化反応器の出口が、凝縮器のガス入口と流体連通しており、かつ、
凝縮器のガス出口が、液体流とガス流を接触させるための容器のガス流入口と流体連通している、
前記プロセスプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫化物を含有する廃水の精製の分野に関し、具体的には、硫化水素の汚染水溶液からの濃硫酸の生成に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱業・冶金産業は、金属の最大収量を目標としている。これには、金属を硫酸に溶解して金属硫酸塩の水溶液を提供することにより、鉱石から金属を溶出する方法などが含まれる。
【0003】
金属加工水と微生物システムからの金属硫化物の沈殿は、硫酸塩を還元して硫化物を形成させ、過剰な硫化物を硫黄に酸化するさらなる微生物学的ステップによって過剰な硫黄を回収することを組み合わせて実施される。これは水溶液から硫黄を取り出すという目的には適うが、回収された硫黄は金属不純物を多く含むため、すぐに使用するには適さない。
【0004】
純粋な元素硫黄から硫酸への変換は、硫黄を燃焼して二酸化硫黄にする方法、二酸化硫黄を触媒酸化して三酸化硫黄にする方法、三酸化硫黄の水和と硫酸の縮合または三酸化硫黄の濃硫酸への吸収によって濃硫酸を供給する方法によって行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
廃水生成プロセスから排出される汚染された硫黄では、硫黄の燃焼によって多量の粒子状物質が発生し、触媒プロセスでは触媒の閉塞や短寿命の原因となる。
【0006】
硫酸塩または硫化物を硫酸に変換する同様の関連技術は、製紙・パルプ工業のプロセス、製薬工業の廃水流、発酵可能な化合物を形成するためのリグノセルロースの硫酸加水分解にも見られ、本方法は、このようなプロセスからの排水の処理にも利用できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本開示により、硫化物を回収して硫酸を供給する、より効率的な方法が提案される。この硫酸は、溶出工程で使用されるか、商業的に取引される。また、硫化水素は、他の工程に由来する水溶液から回収することもできる。
【0008】
本方法においては、硫化水素を微生物学的に元素硫黄に変換する必要はない。硫化水素は代わりに触媒酸化されて二酸化硫黄となり、さらに湿式ガス硫酸(WSA)プラントで濃硫酸を供給するために処理されるからである。
【0009】
鉱石溶出のための硫酸の使用、および/または微生物反応から硫化物を追い出すためのストリッピング媒体としての精製されたプロセスガスの使用によって、さらなる相乗効果が得られることができるが、概説した方法は、広範囲の原料において水性硫化水素の硫酸への変換に適している。
【0010】
定義
本出願では、単位、質量%は質量/質量%を、単位、体積%(%vol)は体積/体積%を表すものとする。単位ppmvは、容積百万分の一を表すものとする。
【0011】
本出願の目的において、ガス相中の濃度が示されている場合、特に断りのない限り、それらは体積/体積(すなわちモル)濃度として与えられている。
【0012】
本出願の目的上、液相または固相における濃度が示されている場合、特に断りのない限り、それらは質量/質量濃度として与えられている。
【0013】
本開示の広い態様は、硫化水素を含む水溶液を精製するための方法に関する発明を開示し、当該方法は、以下のステップを含む、
硫化水素を含む水溶液と接触するようにある量のリサイクルガスを誘導し、硫化水素を含む水溶液から硫化水素を含むガスを分離するステップ、
任意に酸素源の添加後に、硫化水素を含むガスを加熱し、プロセス供給ガスを提供するステップ、
硫化水素酸化ステップにおいて、硫化水素の二酸化硫黄への酸化に有効な条件下で、酸素源を任意に添加した後、前記プロセス供給ガスを誘導して、二酸化硫黄リッチガスを提供するステップ、
二酸化硫黄酸化ステップにおいて、任意に酸素源を添加した後に、二酸化硫黄の三酸化硫黄への触媒的酸化に有効な条件下で、二酸化硫黄の三酸化硫黄への酸化において触媒的に活性な材料(触媒活性材料)と接触するように、前記二酸化硫黄リッチガスを誘導して、三酸化硫黄リッチガスを提供するステップ、
凝縮ステップにおいて、凝縮器熱交換媒体、例えば、プロセスガスまたは空気、との熱交換によって前記三酸化硫黄リッチガス(28)を冷却して、三酸化硫黄の水和および硫酸の凝縮を可能にし、濃硫酸の流れおよび精製プロセスガスを提供するステップ、ならびに、
リサイクルステップにおいて、精製されたプロセスガスの少なくとも一部をリサイクルガスとして導くステップ。
【0014】
これには、たとえ硫化水素が低濃度であっても、ある量の硫化水素をガス相に移動させ、それを二酸化硫黄、ひいては硫酸に変換するのに有効であるという関連する利点がある。
【0015】
第二の態様においては、硫化水素の二酸化硫黄への酸化に有効な前記条件は、例えば、場合によっては熱交換と組み合わせた燃焼によって得られる上昇した温度を含む。
【0016】
このような方法には、低温でエネルギー効率よく硫化水素を二酸化硫黄に変換できるという関連する利点がある。
【0017】
第3の態様においては、硫化水素の二酸化硫黄への酸化に有効な前記条件は、硫化水素の二酸化硫黄への酸化に触媒的に活性な材料との接触を含む。
【0018】
このような方法には、低温でエネルギー効率よく硫化水素を二酸化硫黄に変換できるという利点がある。
【0019】
第4の態様においては、プロセス供給ガス中の硫化水素の量は、少なくとも0.1体積%または少なくとも0.5体積%であり、2体積%未満または3体積%未満である。
【0020】
この方法においては、低濃度の硫化水素を受け取り、硫酸に変換できるという関連する利点もある。
【0021】
第5の態様においては、精製されたプロセスガス中の二酸素の量は、少なくとも0.1体積%または少なくとも0.5体積%であり、3体積%未満または5体積%未満である。
【0022】
これは、二酸化硫黄の酸化に触媒的に活性な前記材料と接触するプロセスガス中に少なくとも0.5体積%、1体積%、さらには3体積%の酸素を確保しながら、このような適切な濃度の酸素が硫酸塩還元微生物を著しく妨害しないという関連した利点を有する。
【0023】
第6の態様において、硫化水素の二酸化硫黄への酸化において触媒的に活性な前記材料は、アルミニウム、ケイ素およびチタンからなる群から選択される1種または2種以上の金属の酸化物を含む支持体上に、バナジウム、クロム、タングステン、モリブデン、セリウム、ニオブ、マンガンおよび銅からなる群から選択される1種または2種以上の金属の酸化物を含む触媒的に活性な前記材料が挙げられ、温度が少なくとも200℃または220℃であり、500℃未満または550℃未満である。
【0024】
これは、適切な温度で硫化水素の酸化を可能にする材料を、適切なコストで提供できるという利点もある。
【0025】
第七の態様においては、二酸化硫黄の三酸化硫黄への触媒的酸化に有効な条件として、多孔質担体上に、五酸化バナジウム(V)、硫酸塩、ピロ硫酸塩、三硫酸塩または四硫酸塩の形態の硫黄、およびアルカリ金属、例えば、Li、Na、K、RbまたはCsを含む触媒的に活性な材料であり、温度が少なくとも380℃または少なくとも400℃、700℃未満または650℃未満である。
【0026】
これは、適切な温度で二酸化硫黄の酸化を可能にする、好適なコストで安定した材料を提供するという利点がある。
【0027】
第8の態様においては、硫化水素を含む前記プロセスガスを加熱することは、(a)熱交換器における第1の高温プロセス流体との熱交換、および(b)第2の高温プロセスガスの添加の一方または両方を含む。
【0028】
これには、プロセスのエネルギーで、必要な触媒の着火温度以上の運転が可能になるという利点もある。
【0029】
第9の態様において、前記第1の高温プロセス流体および前記第2の高温プロセス流体が、同一であっても異なっていてもよく、凝縮器熱交換媒体を含む熱交換媒体、二酸化硫黄リッチガス、三酸化硫黄リッチガス、および精製されたプロセスガスの群から選択されことができる。
【0030】
これには、これらの流れが発熱プロセスから放出された熱を回収できるという関連する利点もある。
【0031】
第10の態様においては、前記プロセス供給ガスは、二酸化硫黄リッチガスの温度が少なくとも370℃以上420℃未満であるような温度を有する。
【0032】
これには、硫化水素酸化に触媒的に活性な材料と二酸化硫黄酸化に触媒的に活性な材料の間でプロセスガスを加熱することを避けることができるという関連する利点があり、プロセスレイアウトが簡素化され、プラント運転のエネルギー効率が向上し、硫化水素酸化に触媒的に活性な材料の適応範囲によって可能になる。
【0033】
第11の態様においては、硫化水素を含む前記水溶液は、硫酸塩の微生物学的還元によって提供される。
【0034】
これには、硫酸の供給源を提供すると同時に、硫酸に関連する環境問題の解決策を提供するという関連する利点もある。
【0035】
第12の態様においては、生成された硫酸の少なくとも一部は、金属鉱石の溶出に使用され、金属硫酸塩を含む水溶液を提供する。
【0036】
これには、冶金業界に解決策を提供すると同時に、業界のプロセスに硫酸の供給源を提供するという関連する利点もある。
【0037】
本開示のさらなる態様は、液体流入口および出口ならびにガス流入口および出口を有する、液体流とガス流とを接触させるための容器、
それぞれが入口および出口を有する、硫化水素酸化手段と、二酸化硫黄酸化に触媒的に活性な材料を含む二酸化硫黄反応器、ならびに、
冷却媒体入口および冷却媒体出口、ガス入口、液体出口およびガス出口を有する、凝縮器を含むプロセスプラントに関し、
ここで、液体流とガス流とを接触させるための容器のガス出口が、硫化水素酸化反応器の入口と流体連通し、硫化水素酸化反応器の出口が、二酸化硫黄酸化反応器の入口と流体連通し、二酸化硫黄酸化反応器の出口が、凝縮器のガス入口と流体連通し、かつ、凝縮器のガス出口が、液体流とガス流とを接触させるための容器のガス流入口と流体連通している。
【0038】
これは、水性硫化物流を硫酸に変換するための有効なプラントであるという関連した利点を有する。硫化水素酸化のための手段は、任意に燃料用のさらなる入口を有する焼却炉のような熱的手段、または硫化水素酸化に触媒的に活性な材料を含む反応器のいずれかである。
【0039】
技術的課題
硫酸塩(および硫化物)を含む水溶液は環境的に望ましくなく、規制されているため、硫酸塩/硫化物を回収し、硫酸のような魅力的な硫黄化合物に変換することが望まれている。
【0040】
これには、採掘を含む冶金処理からの水性廃棄物や中間流が含まれ、これには価値のある金属や、硫酸塩のような環境に望ましくない硫黄化合物が含まれている可能性がある。このような金属を除去するための方法として、コスト効率が高く、環境に優しいものが望まれている。
【0041】
採鉱プロセスからの金属抽出では、硫酸による鉱石の溶出が一般的な方法であり、これにより金属硫酸塩が水流中に放出される。この流れの金属を沈殿させ、還元することで、純粋な金属を得ることができる。このような方法は、幅広い金属、特にNi、Cu、U、希土類金属に使用されている。
【0042】
採鉱を含むこのような冶金処理から生じる水性廃棄物や中間流体中の硫黄は、環境にとって望ましくないものである。そのため、硫黄を除去するためのコスト効率が高く、環境に優しい方法が望まれている。
【0043】
硫酸塩または硫化物を硫酸に変換する類似の関連技術は、製紙・パルプ工業におけるプロセス、製薬工業の廃水流、発酵性化合物を形成するためのリグノセルロースの硫酸加水分解からの廃水流にも見られ、そして、本方法はこのようなプロセスからの廃水の処理に適用することができる。
【0044】
このような観点から一般的な技術は、微生物学的硫化物生成であり、この技術においては、硫酸還元微生物の培養によって硫酸塩を硫化物に還元し、過剰な硫化物を含む溶液から金属硫化物スラッジを沈殿させる。硫化物(HSを含む)は環境的に好ましくないため、一般的な方法においては、硫化物を含む廃水を硫化物酸化微生物によって元素硫黄に酸化するように誘導し、硫黄を回収する。この微生物学的に生成された硫黄には金属が含まれているため、精製しない限り、直接的にさらなる処理には適さない。
【0045】
本開示は、水性に形成された硫化水素がガス相に導かれるこの方法の代替案に関し、さらに、硫化水素を含むプロセスガスが触媒的に酸化されて二酸化硫黄を含むプロセスガスを形成する湿式ガス硫酸プロセスプラントに関する。次いで、二酸化硫黄を含むプロセスガスは、三酸化硫黄への二酸化硫黄酸化に触媒的に活性な材料と接触させるように誘導されることができ、三酸化硫黄は水和されて硫酸を形成し、空冷凝縮器で凝縮させることができ、そこから液体濃硫酸と精製されたプロセスガスが取り出される。
【0046】
Sをガス相に導くステップは、ストリッピング媒体の助けを借りて実施することができ、ガスと液体の間の良好な接触を保証するストリッパー塔(ストリッパーカラム)で実施するのが有益である。硫酸塩の硫化物への還元には還元条件が必要であるため、酸素の不存在または低量での存在が望まれる。
【0047】
統合プロセスを最適化するには、ストリッピング媒体(リサイクルガス)中の酸素量を制限することが含まれる。しかしながら、硫酸プロセスでは、触媒の酸化を維持するために、一定の余剰のOが必要となり、バクテリアの嫌気条件と硫酸プロセスの酸化条件の必要性の間の適切な妥協点は、硫酸プロセスからのオフガス中の1~5体積%Oの範囲である。
【0048】
硫酸塩還元微生物は、限られたpH範囲を含む、限られた至適作動条件範囲を有するため、pHを制御するために、基質にCOの量を添加することができる。この量のCOを酸素源とともに添加すれば、リサイクルされることができ、COの消費も制限される。
【0049】
リサイクルされた精製プロセスガスのCO濃度およびO濃度は、必要に応じて、より最適な値に変更することができる。これは、例えば、精製ガス流よりも高いCO濃度と低いO濃度を有することを特徴とする別のガス流を精製ガス流に添加することによって達成することができる。
【0050】
精製されたプロセスガス中のO濃度は、精製プロセスガスに還元剤を添加し、Oと還元剤を、任意に適切な触媒または微生物を用いて反応させることによっても低減できる。還元剤は、例えば、Oとの反応で水を生成するHや、COと水を生成するメタノールである。
【0051】
硫化水素を二酸化硫黄に触媒的に酸化するステップは、燃焼に必要な700℃以上の温度を確保するために、硫化水素を唯一の燃料として、またはサポート燃料を添加して、燃焼によって実施するのが一般的であった。しかしながら、例えば25体積%を超えるような高濃度の硫化水素が利用できない場合、このプロセスは、代わりに、アルミニウム、ケイ素およびチタンからなる群から選択される1種または2種以上の金属の酸化物を含む屈折性の担体上に、バナジウム、クロム、タングステン、モリブデン、セリウム、ニオブ、マンガンおよび銅からなる群から選択される1種または2種以上の活性金属の酸化物を含む触媒的に活性な材料にプロセス供給ガスを接触させるように誘導することが有益である。材料の例としては、1質量%から、2質量%から、または3質量%から、4質量%まで、5質量%まで、10質量%まで、25質量%まで、または50質量%までのV、安定化成分、好ましくは2質量%から、または3質量%から、5質量%まで、10質量%までまたは50質量%までのWO、および、Al、SiO、SiCおよびTiOからなる群から選択される1つまたは複数の担体を含み、そして、さらにクロム、モリブデン、セリウム、ニオブ、マンガンおよび銅からなる群から選択される金属を1質量%~5質量%含むことができる。任意に、多孔質担体がTiOを含む場合、これは好ましくはアナターゼの形態であり、TiOおよび特にアナターゼは非常に多孔質であるため、触媒担体として活性であるという関連する利点がある。
【0052】
硫化水素の酸化において触媒的に活性な材料は、反応床においてペレットまたは押出物の形態であってもよく、またはモノリス触媒の形態であってもよく、好ましくは、金属、高シリコンガラス繊維、ガラスペーパー、コージェライトおよび炭化ケイ素のうちの1つから作られた構造基材および触媒層を含み、安定かつ明確に定義された物理的形状を提供するという関連する利点を有する。モノリス触媒は、65体積%から、または70体積%から、70体積%までまたは85体積%までの空隙を有することができ、触媒材料の量と圧力損失の低い開放モノリスとのバランスが良いという関連する利点がある。前記モノリス触媒の触媒層は、10~150μmの厚さを有することができ、高い細孔容積を有する触媒的に活性な材料を提供するという関連した利点を有する。
【0053】
材料の種類にもよるが、酸化反応の着火温度は、硫化水素からなる供給ガスの温度よりも高い200℃からまたは220℃から、300℃まで、または320℃までであるため、硫化水素の酸化に触媒活性を有する材料を接触させる前に、このガスの加熱が必要となる場合がある。さらに、硫化物水溶液に導く酸素の量は少ないことが望まれるため、酸素源、例えば、大気または酸素リッチ空気を添加することが望ましい場合もある。酸素源が十分に高い温度で供給されるなら、加熱と酸素源の添加は単一の手段で行うことができる。HSの酸化反応は発熱反応であるため、一般的に行われているように断熱的に運転する場合、二酸化硫黄を多く含むプロセスガスは温度が上昇する。
【0054】
理想的には、HS酸化ステップからの出口温度は、SO酸化ステップへの最適な入口温度に対応し、そのため、2つの酸化ステップ間で温度を調整する必要がなく、プロセス設計が容易になる。
【0055】
S酸化ステップへの供給物の温度または発熱量が不十分である場合、SO酸化ステップへの最適な入口温度は、HS酸化ステップへの入口温度またはHS酸化ステップへの供給物の発熱量を増加させることによって確立することができ、例えば、HS酸化ステップにおける温度上昇が50℃である場合、HS酸化ステップへの入口温度は350℃となり、SO酸化ステップへの入口で400℃を提供することができる。
【0056】
より高い発熱量を有する供給ガスの場合、入口温度を調整することによって、HS酸化ステップからの出口温度を制限して、SO酸化ステップへの適切な入口温度を提供することができない場合がある。HS酸化ステップでの温度上昇が例えば250℃の場合、SO酸化ステップへの最低入口温度は450~470℃、すなわち最適入口温度より高くなる。この温度は、2つの酸化ステップの間に簡単な熱交換器を設置するか、よりエネルギー効率の高い、HS酸化ステップの周囲にリサイクルループを追加することで下げることができ、HS酸化ステップの入口温度と出口温度を容易に制御できる。
【0057】
Sの酸化およびそれに続くSOの酸化に必要な量のOをプロセスに添加しなければならない。利用可能性と温度によっては、これをHSの酸化に触媒的に活性な材料の上流または下流のいずれかに添加することが有益な場合がある。いわゆるSOコンバーターにおいて二酸化硫黄を三酸化硫黄に触媒的に酸化するステップにおいては、シリカやアルミナなどの多孔質担体上の、五酸化バナジウム(V)、硫酸塩、ピロ硫酸塩、三硫酸塩、四硫酸塩の形態の硫黄、およびLi、Na、K、Rb、Csなどのアルカリ金属からなる触媒活性のある硫酸バナジウム融液材料が有益なことに含まれる。二酸化硫黄の酸化に触媒的に活性な材料の多孔質担体は、シリカであり、例えば、2質量%未満、好ましくは1質量%未満のアルミナを含む珪藻土であってもよい。アルカリ金属含有量は、少なくとも2質量%、少なくとも4質量%または少なくとも8質量%であり、16質量%未満、20質量%未満または24質量%未満である。V含有量は少なくとも1質量%、少なくとも2質量%、または少なくとも4質量%であり、10質量%未満、12質量%未満、または15質量%未満である。硫黄含有量は、硫酸塩、ピロ硫酸塩、トリ硫酸塩または四硫酸塩の形態で、少なくとも1質量%、少なくとも2質量%、または少なくとも3質量%であり、10質量%未満、18質量%未満、または20質量%未満である。
【0058】
この発熱酸化プロセスの着火温度は、通常370℃~400℃程度であり、最高温度は通常650℃または700℃である。しかしながら、高温では平衡がSOの方にシフトするため、層間冷却を伴う多層床がしばしば実施されるが、本発明においてはSOの濃度が非常に低いため、一般に1層または2層床が最も効率的である。このステップでは酸素が消費され、触媒的に活性な材料上で反応が活性化する着火温度も、ここでは満たされない場合もある。典型的には、硫化水素の酸化において触媒活性のある材料の上流において十分な量の酸素を添加がなされるが、二酸化硫黄リッチな(二酸化硫黄に富む)ガスを加熱することが有益な場合もある。必要とされる370℃から400℃を超える温度になるため、熱源としては、プロセス床間またはSOコンバーターの出口で使用される熱交換媒体が有益であろう。
【0059】
本方法の最終変換段階は、水和したSOを硫酸として凝縮させることである。水溶液から除去された硫化水素の酸化であるため、プロセスガス流は多量の水を含み、したがってSOは水和されてHSOを形成し、湿式ガス硫酸プロセスで知られているように、適切な量の核生成種と冷却が提供されるのであれば、凝縮器で濃硫酸として凝縮することができる。冷却媒体は通常、大気空気であり、凝縮器内で周囲温度から約180~270℃に加熱され、プロセスガスは通常、290℃から100℃に冷却される。加熱された冷却媒体は、硫化水素の燃焼および酸化に必要な熱エネルギーおよび/または酸素を少なくとも一部供給するのに適している。
【0060】
凝縮器からのプロセスガス出口は、少量の未変換の二酸化硫黄と未使用の酸素、および窒素や他の不活性化合物を含む。この精製ガスのある量は、硫化水素を含む水溶液からガス状硫化水素を放出するためのストリッピング媒体として使用するためにリサイクル(再利用)することができる。ガスループに不活性ガスが過剰に蓄積するのを避けるため、プロセスからパージ流としてある量のガスを抜き出す必要がある。
【0061】
湿式ガス硫酸プロセスプラントで生産された濃硫酸は、上流の溶出工程で使用することができる。
【0062】
湿式ガス硫酸プロセスからの精製ガスは、O、HO、N、SO、SOを含み、COが添加されるか、サポート燃料が燃焼された場合には、COを含む。この精製ガスのリサイクルは、排ガスの不活性組成の量に大きく影響する可能性があり、また、硫酸として回収される硫黄に加えて、リサイクル時に回収される硫黄もあるため、環境に放出される硫黄などの量にも影響を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1は、硫化水素のストリッピングと湿式ガス硫酸プラントを統合したプロセスを示す。
図2は、硫化水素の熱焼却を伴う同様のプロセスプラントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1
図1は、硫化水素を含む水溶液(2)が、ストリッピング塔のようなガス/液体接触装置(4)内で、リサイクルガス(42)と接触させるように誘導されるプロセスプラントを示す。接触装置は、硫化物の量が減少した液体出口流(6)と、通常0.5~2%のHSを含むHS含有ガス流(8)を放出する。HS含有ガス流(8)は、任意に加熱され、プロセス供給ガスとして、HSの酸化に触媒的に活性な材料(10)に導かれ、SOリッチガス(11)を供給する。SOリッチガス(11)は、ある量の酸素リッチガス(12)、例えば、凝縮器(30)の加熱された冷却媒体(34)であることができる大気空気と組み合わされ、SOコンバーター(18)に誘導され、ここでは、それは熱を放出するSOのSOへの参加において触媒的に活性な材料(20)の第1の床に接触し、層間熱交換器(22)で回収され、その後、SOのSOへの酸化に触媒的に活性な材料(24)の第2の床に誘導されるが、これは酸化に触媒的に活性な材料(20)の第1の床っと同一でも異なっていてもよい。触媒的に活性な材料(24)の第二の床から出る酸化されたプロセスガスは、酸化されたプロセスガス(28)として凝縮器(30)に導かれる前に、さらなる熱交換器(26)に導かれる。2つの熱交換器(22および26)で復熱された熱は、HS含有ガス流(8)および/またはSOリッチ流(16)を加熱して、触媒上で反応を開始するのに十分な温度にするのに有益である。
【0065】
凝縮器(30)は、冷却媒体(32)、典型的には大気空気の流れを受け、これは凝縮器内で加熱され、加熱冷却媒体(34)を形成する。これが大気空気である場合、酸素リッチガス(12)として、SO酸化(16)において触媒的に活性な材料への入口ガスの温度を上昇させるために、適切に誘導することができる。凝縮器内においては、SOが水和され、硫酸として凝縮され(36)、脱硫プロセスガスが放出される(38)。脱硫プロセスガス(38)は、パージガス(40)とリサイクルガス(42)に分割される。
【0066】
具体的な実施形態においては、硫化物(2)を含む水溶液は、金属硫化物沈殿流からのプロセス流であってもよい。この場合、硫化物を含む水溶液のpHを制御し、硫酸塩還元バクテリアに最適な溶液を提供するために、リサイクルガス(42)とともにCOを添加することが有益とすることができる。
【0067】
図には示されていないが、多くの位置で熱の統合が有益である場合がある。2つの熱交換器(22および26)および凝縮器の加熱冷却媒体(34)において得られる熱エネルギーは、ストリッパー塔の出口からSOコンバーター(18)の入口までの間の任意の場所で、ストリッパー塔からのプロセスガスを加熱するために使用することができる。加熱は、HS酸化(10)およびSO酸化(20)で触媒的に活性な材料の前に、触媒発火点より高い温度にするために必要となる場合がある。硫化水素の酸化に触媒活性を有する典型的な材料は熱的に頑強であるため、硫化水素の酸化に触媒的に活性な材料(10)と二酸化硫黄の酸化に触媒活性を有する材料(18)との間の加熱を避けるために、プロセス供給ガス(8)を必要以上に高温に加熱することが有益である場合がある。このような熱統合は、詳細には示されていないが、熱交換または高温流の添加によって得ることができる。
【0068】
また特定の状況によっては、余分な熱源、例えば、電気ヒーターや加熱炉から熱エネルギーを加える方が、コストが安く済むか、それが必要な場合もある。
【0069】
図2
図2は、硫化水素の熱焼却を伴う同様のプロセスプラントを示している。
ここでは、硫化水素を含む水溶液(2)は、ストリッピング塔のようなガス/液体接触装置(4)で、リサイクルガス(42)と接触するように誘導される。接触装置は、硫化物の量が減少した液体出口流(6)と、典型的には0.5~2%のHSを含むHS含有ガス流(8)を放出する。HS含有ガス流(8)は、プロセス供給ガス(8)として焼却炉(13)に導かれ、ある量の酸素リッチガス(12)、例えば、凝縮器(30)の加熱された冷却媒体(34)となり得る大気空気と、燃料、例えば、天然ガス(14)を受け、SOリッチガス(16)を供給する。SOリッチガス(16)は、SOコンバータ(18)に誘導され、ここでは、SOのSOへの酸化に触媒的に活性な材料の第一の床(20)に接触し、熱を放出し、床間熱交換器(22)で復熱された後、SOのSOへの酸化に触媒的に活性な材料の第二の床(24)に誘導され、これは酸化に触媒的に活性な材料(20)の第1の床sと同一でも異なっていてもよい。触媒的に活性な材料の第二の床(24)から出る酸化されたプロセスガスは、酸化されたプロセスガス(28)として凝縮器(30)に導かれる前に、さらなる熱交換器(26)に導かれる。2つの冷却器(22と26)で復熱された熱は、HSを含むガス流(8)を加熱して必要なサポート燃料の量を減らすのに有益であるが、図1とは逆に、復熱された熱はプロセスの他の位置では価値がない。
【0070】
凝縮器(30)は、冷却媒体(32)、典型的には大気空気の流れを受け、これは凝縮器(30)内で加熱され、加熱された冷却媒体(34)を形成する。これが大気空気である場合、焼却炉(13)への入口ガスの温度を上昇させるために、酸素リッチガス(12)として好適に導入されることができる。凝縮器においては、SOが水和され、硫酸として凝縮し(36)、脱硫処理ガスが放出される(38)。脱硫プロセスガス(38)は、パージガス(40)とリサイクルガス(42)に分割される。
【実施例
【0071】

硫酸を製造する統合プロセスの利点を説明するために、図1に示す方法の例と、図2に示すサポート燃料の燃焼によるHSの熱酸化プロセスを示す。
【0072】
Sを選択的に微生物学的に酸化して元素硫黄にする現在の実施については、具体例を示していない。有益に見える一方で、利用可能な微生物学的な方法では、残念ながら、さらに精製しなければ、使用に十分な品質、例えば鉱石溶出に使用する硫酸を生成するには不十分な品質の硫黄しか製造できない。この硫黄はさらに精製され、肥料などに利用する目的で販売されることもあるが、現場ですぐに利用されることはない。
【0073】
2つの具体例では、プロセス供給ガスは、微生物学的に還元された硫酸塩のような水溶液からHSをストリッピングし、安定した操作のために最小限の実行可能量の酸素を添加することによって得られるガスに相当する。酸素は、硫酸凝縮器の冷却側から、大気空気としてHS酸化に触媒的に活性な材料の下流に添加され、HS酸化に触媒的に活性な材料の燃焼に十分な200~230℃の温度でプロセス供給ガスを生成した。
【0074】
触媒HS酸化の生成物は、SOコンバーターまたは凝縮器の熱交換媒体との熱交換し、SO酸化の熱をSOに戻すことでさらに加熱することができる。あるいは、HS酸化触媒からの出口温度がSO酸化触媒の入口温度に適合するように、HS酸化触媒への入口温度が選択することができ、これにより硫酸プラントの設計が簡略化される。このような最適な入口温度は、ストリッパー塔からの供給ガスを適切に加熱することによって得ることができ、任意に、HS酸化触媒の出口からHS酸化触媒の入口への変換プロセスガスのリサイクルと組み合わせることもできる。プロセス全体は発熱性であり、244℃で蒸気11トン/hが排出される。
【0075】
Sの排出において一般的に、サポート燃料を用いた焼却によって熱酸化される。本工程では、これを図2に示し、代替例を表2に示す。HS酸化で触媒活性を示す物質を焼却炉に置き換え
Sの熱酸化に必要な温度を達成するためのサポート燃料として3.9トン/hの天然ガスを加える必要がある。さらに、天然ガスを酸化するための燃焼用空気も加えなければならない。その結果、表2に示すプロセスにおいては、表1に比べてプロセスガスの総量(したがって装置)が58%多くなる。サポート燃料の追加により、蒸気の排出量が増加し、この例では249℃で86t/hとなる。
【0076】
この2つの例を比較すると、表1に示した方法の明らかな利点は、設備規模が有意に小さくなる点である。加えて、サポート燃料として3.9トン/hの天然ガスの消費が避けられる。このようなサポート燃料の使用削減は、もちろん、蒸気排出量を75トン/h削減するという結果をもたらす。この方法が冶金製造工程で実施される場合、製造された硫酸は、輸入の必要なく地元で生産されるという利点もある。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-11-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ
a. 硫化水素を含む水溶液(2)と接触するようにある量のリサイクルガス(42)を誘導し、硫化水素を含む水溶液(2)から硫化水素を含むガス(8)を分離するステップ、
b. 任意に酸素源(12)の添加後に、任意に硫化水素を含むガス(8)を加熱し、プロセス供給ガスを提供するステップ、
c. 硫化水素酸化ステップにおいて、酸素源を任意に添加した後、硫化水素の二酸化硫黄への酸化に有効な条件下で、前記プロセス供給ガスを誘導して、二酸化硫黄リッチガス(11、16)を提供するステップ、
d. 二酸化硫黄酸化ステップにおいて、任意に酸素源(12)を添加した後に、二酸化硫黄の三酸化硫黄への触媒的酸化に有効な条件下で、二酸化硫黄の三酸化硫黄への酸化において触媒的に活性な材料(20、24)と接触するように、前記二酸化硫黄リッチガス(11、16)を誘導して、三酸化硫黄リッチガス(28)を提供するステップ、
e. 凝縮ステップにおいて、凝縮器熱交換媒体、例えば、プロセスガスまたは空気、との熱交換によって前記三酸化硫黄リッチガス(28)を冷却して、三酸化硫黄の水和および硫酸の凝縮を可能にし、濃硫酸(36)の流れおよび精製されたプロセスガス(38)を提供するステップ、ならびに、
f. リサイクルステップにおいて、精製されたプロセスガス(38)の少なくとも一部をリサイクルガス(42)として誘導するステップ、
を含む、硫化水素を含む水溶液(2)を精製するための方法。
【請求項2】
硫化水素の二酸化硫黄への酸化に有効な前記条件が、例えば、場合によっては熱交換と組み合わせた燃焼によって得られる上昇した温度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
硫化水素の二酸化硫黄への酸化に有効な前記条件が、硫化水素の二酸化硫黄への酸化に触媒的に活性な材料(10)との接触を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
プロセス供給ガス中の硫化水素の量が、少なくとも0.1体積%または少なくとも0.5体積%であり、2体積%未満または3体積%未満である、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
精製されたプロセスガス(38)中の二酸素の量が、少なくとも0.1体積%または少なくとも0.5体積%であり、3体積%未満または5体積%未満である、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項6】
硫化水素の二酸化硫黄への酸化に触媒的に活性な材料が、アルミニウム、ケイ素およびチタンからなる群から選択される1種または2種以上の金属の酸化物を含む担体上に、バナジウム、クロム、タングステン、モリブデン、セリウム、ニオブ、マンガンおよび銅からなる群から選択される1種または2種以上の金属の酸化物を含み、温度が少なくとも200℃または少なくとも220℃であり、500℃未満または550℃未満である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
二酸化硫黄の三酸化硫黄への触媒的酸化に有効な条件が、多孔質担体上の五酸化バナジウム(V)、硫酸塩、ピロ硫酸塩、三硫酸塩または四硫酸塩の形態の硫黄、およびアルカリ金属、例えば、Li、Na、K、RbまたはCsを含む触媒的に活性な材料、および温度が少なくとも380℃または少なくとも400℃であり、700℃未満または650℃未満であることを含む、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項8】
硫化水素を含む前記プロセスガスの加熱が、(a)第1の高温プロセス流体との熱交換器における熱交換、および(b)第2の高温プロセスガスの添加の一方または両方を含む、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の高温プロセス流体および前記第2の高温プロセス流体は、同一であっても異なっていてもよく、前記凝縮器熱交換媒体を含む熱交換媒体、前記二酸化硫黄リッチガス、前記三酸化硫黄リッチガス、および前記精製されたプロセスガスの群から選択され得る、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項10】
前記プロセス供給ガスは、二酸化硫黄リッチガスの温度が少なくとも370℃以上420℃未満であるような温度を有する、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項11】
硫化水素を含む前記水溶液が、硫酸塩の微生物学的還元によって提供される、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項12】
生成された硫酸の少なくとも一部が、硫酸塩を生成する上流プロセスで使用されるように誘導される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
生成された硫酸の少なくとも一部が、金属鉱石の溶出に使用されるように誘導され、金属硫酸塩を含む水溶液を提供する、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項14】
生成された硫酸の少なくとも一部が、リグニン化合物の加水分解に使用されるように誘導される、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項15】
液体流入口および出口ならびにガス流入口および出口を有する、液体流とガス流とを接触させるための容器(4)、
それぞれが入口および出口を有する、硫化水素酸化手段および二酸化硫黄酸化に触媒的に活性な材料を含む二酸化硫黄反応器、ならびに、
冷却媒体入口(32)および冷却媒体出口(34)、ガス入口(28)、液体出口(36)およびガス出口(38)を有する凝縮器(30)を備えるプロセスプラントであって、液体流とガス流とを接触させるための容器のガス出口が、硫化水素酸化反応器の入口と流体連通しており、
硫化水素酸化反応器の出口が、二酸化硫黄酸化反応器の入口と流体連通しており、
二酸化硫黄酸化反応器の出口が、凝縮器のガス入口と流体連通しており、かつ、
凝縮器のガス出口が、液体流とガス流を接触させるための容器のガス流入口と流体連通している、
前記プロセスプラント。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
湿式ガス硫酸プロセスからの精製ガスは、O、HO、N、SO、SOを含み、COが添加されるか、サポート燃料が燃焼された場合には、COを含む。この精製ガスのリサイクルは、排ガスの不活性組成の量に大きく影響する可能性があり、また、硫酸として回収される硫黄に加えて、リサイクル時に回収される硫黄もあるため、環境に放出される硫黄などの量にも影響を与えることができる。
本発明は以下の項目を含む。
[項目1]
以下のステップ
a. 硫化水素を含む水溶液(2)と接触するようにある量のリサイクルガス(42)を誘導し、硫化水素を含む水溶液(2)から硫化水素を含むガス(8)を分離するステップ、
b. 任意に酸素源(12)の添加後に、任意に硫化水素を含むガス(8)を加熱し、プロセス供給ガスを提供するステップ、
c. 硫化水素酸化ステップにおいて、酸素源を任意に添加した後、硫化水素の二酸化硫黄への酸化に有効な条件下で、前記プロセス供給ガスを誘導して、二酸化硫黄リッチガス(11、16)を提供するステップ、
d. 二酸化硫黄酸化ステップにおいて、任意に酸素源(12)を添加した後に、二酸化硫黄の三酸化硫黄への触媒的酸化に有効な条件下で、二酸化硫黄の三酸化硫黄への酸化において触媒的に活性な材料(20、24)と接触するように、前記二酸化硫黄リッチガス(11、16)を誘導して、三酸化硫黄リッチガス(28)を提供するステップ、
e. 凝縮ステップにおいて、凝縮器熱交換媒体、例えば、プロセスガスまたは空気、との熱交換によって前記三酸化硫黄リッチガス(28)を冷却して、三酸化硫黄の水和および硫酸の凝縮を可能にし、濃硫酸(36)の流れおよび精製されたプロセスガス(38)を提供するステップ、ならびに、
f. リサイクルステップにおいて、精製されたプロセスガス(38)の少なくとも一部をリサイクルガス(42)として誘導するステップ、
を含む、硫化水素を含む水溶液(2)を精製するための方法。
[項目2]
硫化水素の二酸化硫黄への酸化に有効な前記条件が、例えば、場合によっては熱交換と組み合わせた燃焼によって得られる上昇した温度を含む、項目1に記載の方法。
[項目3]
硫化水素の二酸化硫黄への酸化に有効な前記条件が、硫化水素の二酸化硫黄への酸化に触媒的に活性な材料(10)との接触を含む、項目1に記載の方法。
[項目4]
プロセス供給ガス中の硫化水素の量が、少なくとも0.1体積%または少なくとも0.5体積%であり、2体積%未満または3体積%未満である、項目1、2または3に記載の方法。
[項目5]
精製されたプロセスガス(38)中の二酸素の量が、少なくとも0.1体積%または少なくとも0.5体積%であり、3体積%未満または5体積%未満である、項目1、2、3または4に記載の方法。
[項目6]
硫化水素の二酸化硫黄への酸化に触媒的に活性な材料が、アルミニウム、ケイ素およびチタンからなる群から選択される1種または2種以上の金属の酸化物を含む担体上に、バナジウム、クロム、タングステン、モリブデン、セリウム、ニオブ、マンガンおよび銅からなる群から選択される1種または2種以上の金属の酸化物を含み、温度が少なくとも200℃または少なくとも220℃であり、500℃未満または550℃未満である、項目1、3、4または5に記載の方法。
[項目7]
二酸化硫黄の三酸化硫黄への触媒的酸化に有効な条件が、多孔質担体上の五酸化バナジウム(V )、硫酸塩、ピロ硫酸塩、三硫酸塩または四硫酸塩の形態の硫黄、およびアルカリ金属、例えば、Li、Na、K、RbまたはCsを含む触媒的に活性な材料、および温度が少なくとも380℃または少なくとも400℃であり、700℃未満または650℃未満であることを含む、項目1、3、4、5または6に記載の方法。
[項目8]
硫化水素を含む前記プロセスガスの加熱が、(a)第1の高温プロセス流体との熱交換器における熱交換、および(b)第2の高温プロセスガスの添加の一方または両方を含む、項目1、2、3、4、5、6または7に記載の方法。
[項目9]
前記第1の高温プロセス流体および前記第2の高温プロセス流体は、同一であっても異なっていてもよく、前記凝縮器熱交換媒体を含む熱交換媒体、前記二酸化硫黄リッチガス、前記三酸化硫黄リッチガス、および前記精製されたプロセスガスの群から選択され得る、項目1、2、3、4、5、6、7または8に記載の方法。
[項目10]
前記プロセス供給ガスは、二酸化硫黄リッチガスの温度が少なくとも370℃以上420℃未満であるような温度を有する、項目1、3、4、5、6、7、8または9に記載の方法。
[項目11]
硫化水素を含む前記水溶液が、硫酸塩の微生物学的還元によって提供される、項目1、2、3、4、5、6、7、8、9または10に記載の方法。
[項目12]
生成された硫酸の少なくとも一部が、硫酸塩を生成する上流プロセスで使用されるように誘導される、項目11に記載の方法。
[項目13]
生成された硫酸の少なくとも一部が、金属鉱石の溶出に使用されるように誘導され、金属硫酸塩を含む水溶液を提供する、項目1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12に記載の方法。
[項目14]
生成された硫酸の少なくとも一部が、リグニン化合物の加水分解に使用されるように誘導される、項目1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12に記載の方法。
[項目15]
液体流入口および出口ならびにガス流入口および出口を有する、液体流とガス流とを接触させるための容器(4)、
それぞれが入口および出口を有する、硫化水素酸化手段および二酸化硫黄酸化に触媒的に活性な材料を含む二酸化硫黄反応器、ならびに、
冷却媒体入口(32)および冷却媒体出口(34)、ガス入口(28)、液体出口(36)およびガス出口(38)を有する凝縮器(30)を備えるプロセスプラントであって、液体流とガス流とを接触させるための容器のガス出口が、硫化水素酸化反応器の入口と流体連通しており、
硫化水素酸化反応器の出口が、二酸化硫黄酸化反応器の入口と流体連通しており、
二酸化硫黄酸化反応器の出口が、凝縮器のガス入口と流体連通しており、かつ、
凝縮器のガス出口が、液体流とガス流を接触させるための容器のガス流入口と流体連通している、
前記プロセスプラント。
【国際調査報告】