(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】プロバイオティックワクチンおよび関連する使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20250220BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20250220BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20250220BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20250220BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20250220BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250220BHJP
C12N 15/34 20060101ALI20250220BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20250220BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20250220BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61K48/00
A61P7/00
A61P31/12
A61P37/04
A61P35/00
C12N15/34 ZNA
C12N7/01
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024549118
(86)(22)【出願日】2023-02-21
(85)【翻訳文提出日】2024-10-16
(86)【国際出願番号】 US2023013542
(87)【国際公開番号】W WO2023158883
(87)【国際公開日】2023-08-24
(32)【優先日】2022-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524307944
【氏名又は名称】サルバイタス、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SALVITUS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ、ピチェニック
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4B065AA93Y
4B065AA95Y
4B065AA98X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA45
4C084AA13
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB331
4C084ZB332
4C085AA03
4C085BB01
4C085DD62
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG05
(57)【要約】
本明細書では、プロバイオティックがんワクチン、組換えファージ、およびそれらの使用方法、が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロバイオティックワクチンであって、
LPESFDGDPASNTAPLQPEQLQVF(配列番号1)、
PESFDGDPASNTAPLQPEQLQ(配列番号2)、
QPEKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)、
ISKRNIQFSCKNIYR(配列番号4)、
TFGSVEVHNL(配列番号5)、
QTLEA(配列番号6)、
IQFSC(配列番号7)、および
AFPEDRSQPG(配列番号8)から成る群から選択される、外来ペプチドエピトープ、またはその断片もしくは変異体を含む、ポリペプチドをコードする核酸を含む組換え繊維状ファージゲノムと、
前記組換えファージに感染した細菌と、
を含む、プロバイオティックワクチン。
【請求項2】
外来ペプチドエピトープが、pIII、pVI、pVII、pVIIIおよびpIXから成る群から選択されるコートタンパク質上に機能的に発現されている、請求項1に記載のプロバイオティックワクチン。
【請求項3】
コートタンパク質が、pIIIである、請求項1~2に記載のプロバイオティックワクチン。
【請求項4】
ファージが、M13、fd、IKe、CTX-φ、Pfl、Pf2、Pf3、f1、MKEを含む、繊維状ファージ;M13K3;マイオウイルス科(Myoviridae)(Pl様ウイルス;P2様ウイルス;Mu様ウイルス;SPOI様ウイルス;phiH様ウイルス);シフォウイルス科(Siphoviridae)(λ様ウイルス、γ様ウイルス、Tl様ウイルス;T5様ウイルス;c2様ウイルス;L5様ウイルス;psiMl様ウイルス;phiC31様ウイルス;N15様ウイルス);ポドウイルス科(Podoviridae)(phi29様ウイルス;P22様ウイルス;N4様ウイルス);テクティウイルス科(Tectiviridae)(テクティウイルス(Tectivirus));コルチコウイルス科(Corticoviridae)(コルチウイルス(Corticovirus));リポスリクスウイルス科(Lipothrixviridae)(アルファリポトリックスウイルス(Alphalipothrixvirus)、ベータリポトリックスウイルス(Betalipothrixvirus)、ガンマリポトリックスウイルス(Gammalipothrixvirus)、デルタリポトリックスウイルス(Deltalipothrixvirus));プラズマウイルス科(Plasmaviridae)(プラズマウイルス(Plasmavirus));ルディウイルス科(Rudiviridae)(ルディウイルス(Rudivirus));フセロウイルス科(Fuselloviridae)(フセロウイルス(Fusellovirus));イノウイルス科(Inoviridae)(イノウイルス(Inovirus)、プレクトロウイルス(Plectrovirus)、M13様ウイルス、fd様ウイルス);ミクロウイルス科(Microviridae)(ミクロウイルス(Microvirus)、スピロミクロウイルス(Spiromicrovirus)、ブデロマクロウイルス(Bdellomicrovirus)、クラミジアミクロウイルス(Chlamydiamicrovirus));レビウイルス科(Leviviridae)(レビウイルス(Levivirus)、アロレヴィウイルス(Allolevivirus))およびシストウイルス科(Cystoviridae)(シストウイルス(Cystovirus))のファージから成る群から選択される、請求項1~3に記載のプロバイオティックワクチン。
【請求項5】
ファージが、M13K3である、請求項1~4に記載のプロバイオティックワクチン。
【請求項6】
細菌が、大腸菌(E.coli)Nissle 1917、大腸菌ER2738、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens);バチルス・ポリフェルメンティクス(Bacillus polyfermenticus)、Bispan株;ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシス・ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp. Lactis)、BB-12株;ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシス・ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp. Lactis)、GPS1209株;ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシス・ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp. Lactis)、HN019(DR1064)株;ビフィドバクテリウム・ビフィダム((Bifidobacterium bifidum))、BB-12株;ビフィドバクテリウム・ビフィダム、Rosell-71株;ビフィドバクテリウム・ブレビ(Bifidobacterium breve)、M-16V株;ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum);ビフィドバクテリウム・サーモフィルム(Bifidobacterium thermophilum);ラクトバチルス・アシッドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、La-1株;ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、HA-112株;ラクトバチルス・フェルメントゥム(Lactobacillus fermentum)、HA-179株;ラクトバチルス・ヘルベティクス(Lactobacillus helveticus)、Lafti L10株;ラクトバチルス・ヘルベティクス、Rosell-52株;ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、Lafti L26株;ラクトバチルス・パラカゼイ・サブスピーシス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)、431株;ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、HN001(DR20)株;ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)、DSM 13084株;ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus);バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、GBI-30、6086、ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシス・ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp. lactis) BB-12、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシス・インファンティス(Bifidobacterium longum subsp. infantis)、大腸菌Nissle 1917、ラクトバチルス・アシッドフィルス(Lactobacillus acidophilus) NCFM、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei) Stl1(またはNCC2461)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii) Lai(ラクトバチルス LCI、ラクトバチルス・ジョンソニー NCC533とも称される。)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)299v、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri) ATCC 55730(ラクトバチルス・ロイテリ SD2112)、ラクトバチルス・ロイテリ・プロテクティス(Lactobacillus reuteri Protectis)(DSM 17938、ATCC 55730の娘株)、ラクトバチルス・ロイテリ・プロデンティス(Lactobacillus reuteri Prodentis)(DSM 17938/ATCC 55730およびATCC PTA 5289の併用)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus) GG、サッカロマイセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)、ラクトバチルス・ラムノサス GR-1とラクトバチルス・ロイテリ RC-14の混合物、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus) NCFMとビフィドバクテリウム・ビフィダム BB-12の混合物、ラクトバチルス・アシドフィルス CL1285とラクトバチルス・カゼイ LBC80Rの混合物、ラクトバチルス・プランタルム HEAL 9とラクトバチルス・パラカゼイ 8700:2の混合物、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトコッカス・サーモフィルスおよびラクトバチルス・ビフィダス(Lactobacillus bifidus)から選択される、請求項1~5に記載のプロバイオティックワクチン。
【請求項7】
細菌が、F因子陽性であり、且つ、大腸菌Nissle 1917または大腸菌ER2738から選択される、請求項1~6に記載のプロバイオティックワクチン。
【請求項8】
プロバイオティックワクチンが、外来ペプチドエピトープに結合するIgG抗体およびIgA抗体の両方を生成する、請求項1~7に記載のプロバイオティックワクチン。
【請求項9】
組換え繊維状ファージゲノムであって、
LPESFDGDPASNTAPLQPEQLQVF(配列番号1)、
PESFDGDPASNTAPLQPEQLQ(配列番号2)、
QPEKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)、
ISKRNIQFSCKNIYR(配列番号4)、
TFGSVEVHNL(配列番号5)、
QTLEA(配列番号6)、
IQFSC(配列番号7)、および
AFPEDRSQPG(配列番号8)
から成る群から選択される、外来ペプチドエピトープ、またはその断片もしくは変異体を含む、ポリペプチドをコードする核酸を含む組換え繊維状ファージゲノムを含む、組換え繊維状ファージゲノム。
【請求項10】
外来ペプチドエピトープが、pIII、pVI、pVII、pVIIIおよびpIXから成る群から選択されるコートタンパク質上に機能的に発現されている、請求項9に記載の組換えファージ。
【請求項11】
コートタンパク質が、pIIIである、請求項9~10に記載の組換えファージ。
【請求項12】
ファージが、M13、fd、IKe、CTX-φ、Pfl、Pf2、Pf3、f1、MKEを含む、繊維状ファージ;M13K3;マイオウイルス科(Myoviridae)(Pl様ウイルス;P2様ウイルス;Mu様ウイルス;SPOI様ウイルス;phiH様ウイルス);シフォウイルス科(Siphoviridae)(λ様ウイルス、γ様ウイルス、Tl様ウイルス;T5様ウイルス;c2様ウイルス;L5様ウイルス;psiMl様ウイルス;phiC31様ウイルス;N15様ウイルス);ポドウイルス科(Podoviridae)(phi29様ウイルス;P22様ウイルス;N4様ウイルス);テクティウイルス科(Tectiviridae)(テクティウイルス(Tectivirus));コルチコウイルス科(Corticoviridae)(コルチウイルス(Corticovirus));リポスリクスウイルス科(Lipothrixviridae)(アルファリポトリックスウイルス(Alphalipothrixvirus)、ベータリポトリックスウイルス(Betalipothrixvirus)、ガンマリポトリックスウイルス(Gammalipothrixvirus)、デルタリポトリックスウイルス(Deltalipothrixvirus));プラズマウイルス科(Plasmaviridae)(プラズマウイルス(Plasmavirus));ルディウイルス科(Rudiviridae)(ルディウイルス(Rudivirus));フセロウイルス科(Fuselloviridae)(フセロウイルス(Fusellovirus));イノウイルス科(Inoviridae)(イノウイルス(Inovirus)、プレクトロウイルス(Plectrovirus)、M13様ウイルス、fd様ウイルス);ミクロウイルス科(Microviridae)(ミクロウイルス(Microvirus)、スピロミクロウイルス(Spiromicrovirus)、ブデロマクロウイルス(Bdellomicrovirus)、クラミジアミクロウイルス(Chlamydiamicrovirus));レビウイルス科(Leviviridae)(レビウイルス(Levivirus)、アロレヴィウイルス(Allolevivirus))およびシストウイルス科(Cystoviridae)(シストウイルス(Cystovirus))のファージから成る群から選択される、請求項9~11に記載の組換えファージ。
【請求項13】
ファージが、M13、fd、IKe、CTX-φ、Pfl、Pf2、Pf3、f1、MKE、及びM13K3から成る群から選択される繊維状ファージである、請求項9~12に記載の組換えファージ。
【請求項14】
ファージが、M13K3である、請求項9~13に記載の組換えファージ。
【請求項15】
組換えファージが、外来ペプチドエピトープに結合するIgG抗体を生成する、請求項9~14に記載のプロバイオティックワクチン。
【請求項16】
がんを予防または処置する方法であって、それを必要とする患者に対して、請求項1~8に記載のプロバイオティックワクチンの1もしくは複数、または、請求項9~15に記載の組換えファージの1もしくは複数を投与することを含む、方法。
【請求項17】
がんが、多発性骨髄腫、上皮がん、上皮性卵巣がん、粘膜黒色腫、非小細胞肺がん、黒色腫、頭頸部がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、皮膚扁平上皮がん、膠芽腫、食道がん、胃がん、十二指腸がん、小腸がん、虫垂がん、大腸がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、肛門がん、膵臓がん、肝臓がん、胆嚢がん、脾臓がん、腎臓がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、子宮がん、子宮内膜がん、卵巣がん、膣がん、外陰がん、乳がん、肺がん、甲状腺がん、胸腺がん、脳腫瘍、神経系がん、神経膠腫、口腔がん、皮膚がん、血液がん、リンパ腫、眼がん、骨肉腫、骨髄腫、筋肉がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、尿路上皮がん、非筋層浸潤性膀胱がん[NMIBC]、結腸がんもしくは直腸がん、食道がんもしくは特定の胃食道接合部(GEJ)がん、子宮頸がん、腎細胞がん(RCC)、進行子宮内膜がん、皮膚扁平上皮がん(cSCC)、および/またはトリプルネガティブ乳がん(TNBC)、から成る群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
がんが、多発性骨髄腫である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
乳がん、膀胱がん、膵臓がん、卵巣がん、および/または胃がんを予防または処置する方法であって、それを必要とする患者に対して、LPESFDGDPASNTAPLQPEQLQVF(配列番号1)、またはPESFDGDPASNTAPLQPEQLQ(配列番号2)から選択される、少なくとも1つの外来ペプチドエピトープ、またはその断片もしくは変異体を含む、組換えファージまたはプロバイオティックワクチンを投与することを含む、方法。
【請求項20】
白血病、リンパ腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、および/または慢性リンパ性白血病(CLL)を含む、がんを予防または処置する方法であって、それを必要とする患者に対して、QPEKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)、ISKRNIQFSCKNIYR(配列番号4)、TFGSVEVHNL(配列番号5)、QTLEA(配列番号6)、およびIQFSC(配列番号7)から選択される、少なくとも1つの外来ペプチドエピトープ、またはその断片もしくは変異体含む、組換えファージまたはプロバイオティックワクチンを投与することを含む、方法。
【請求項21】
韓国熱ウイルス感染症を予防する方法であって、それを必要とする患者に対して、QPEKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)、ISKRNIQFSCKNIYR(配列番号4)、TFGSVEVHNL(配列番号5)、QTLEA(配列番号6)、およびIQFSC(配列番号7)から選択される、少なくとも1つの外来ペプチドエピトープ、またはその断片もしくは変異体を含む、組換えファージまたはプロバイオティックワクチンを投与することを含む、方法。
【請求項22】
がんを予防または処置する方法であって、それを必要とする患者に対して、AFPEDRSQPG(配列番号8)に相当する少なくとも1つの外来ペプチドエピトープ、またはその断片もしくは変異体を含む、組換えファージまたはプロバイオティックワクチンを投与することを含み、がんが、胃がん、黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、尿路上皮がん、非筋層浸潤性膀胱がん[NMIBC]、結腸もしくは直腸がん、食道もしくは特定の胃食道接合部(GEJ)がん、子宮頸がん、腎細胞がん(RCC)、進行子宮内膜がん、皮膚扁平上皮がん(cSCC)、および/またはトリプルネガティブ乳がん(TNBC)から成る群から選択される、方法。
【請求項23】
細菌が、溶原性ファージを継続的に生成する、請求項1~8に記載のプロバイオティックワクチン。
【請求項24】
‐TSGSGSGSGSGSGSG‐が、コートタンパク質と外来ペプチドエピトープとの間のリンカーとして使用される、請求項1~8に記載のプロバイオティックワクチン、または請求項9~15に記載のプロバイオティックワクチン。
【請求項25】
請求項1~8に記載のプロバイオティックワクチン、または請求項9~15に記載のプロバイオティックワクチンと、前記プロバイオティックワクチンまたは前記組換えファージの投与のための指示書と、を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[01]
本出願は、2022年2月19日に出願された米国仮特許出願第63,311,977号、2022年2月20日に出願された米国仮特許出願第2022年2月20日提出の米国仮特許出願第63/312,052号、および2022年3月18日提出の米国仮特許出願第63/321,638号に優先権を主張する。これらの出願は、参照することにより本明細書にその全体が援用される。
【背景技術】
【0002】
[02]
本発明の分野
【0003】
[03]
本発明は、組換えファージ、プロバイオティックワクチン、およびそれらを使用する方法に関する。
【0004】
[04]
関連技術
【0005】
[05]
がんは、遺伝子の異常の結果として、ならびに、細胞発生およびアポトーシス経路におけるエピジェネティックな変化の結果として、今日ではより一般的になっている。腫瘍の発生および成長は、がんにおける細胞成長および増殖に関連する遺伝子の過剰発現、ならびに、細胞死活動を制御する遺伝子の発現低下、によって引き起こされる。細胞経路の変化はしばしば、ランダムな突然変異や不健康な生活習慣によって生じる。免疫機能が正常な個人は、自然免疫の変化であって、コンピテントな腫瘍細胞を破壊するための多様な免疫反応の活性化を伴う自然免疫の変化に対して脆弱である。腫瘍を引き起こす細胞は、アポトーシスとネクローシスを起こし、周囲の組織は、ストレスを受け、腸内の微生物叢は、すべて抗がん免疫反応とシグナルを生成する。
【0006】
[06]
免疫療法は、免疫系を活性化してがん細胞を攻撃し、根絶するがんの処置の一形態である。細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、抗腫瘍免疫反応の成功に欠かせない。がん細胞を攻撃するT細胞は、活性化、クローン増殖を経て、最終的に細胞溶解性エフェクター機能を果たすナイーブT細胞への腫瘍抗原の提示を必要とする。効果的な抗原提示は、CTLエフェクター機能の成功に不可欠である。したがって、T細胞への腫瘍抗原提示を開始するための効果的な戦略の開発は、がんの処置のための免疫療法戦略にとって重要である。
【0007】
[07]
同様に、B細胞は、腫瘍反応性抗体の産生、NK細胞による腫瘍殺傷、マクロファージによる貪食、CD4+およびCD8+T細胞のプライミングを促進することにより、腫瘍の増殖を抑制することができる。B細胞は、自己抗体および腫瘍増殖因子の産生により、腫瘍の増殖を促進することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[08]
多くの種類のがんの臨床結果が、不十分なものから致死的なものまで多岐にわたっているため、新規の予防的および/または治療的な処置の開発についての必要性が存在している。
発明の概要
【課題を解決するための手段】
【0009】
[09]
本明細書では、プロバイオティックワクチンであって、
LPESFDGDPASNTAPLQPEQLQVF(配列番号1;HER2)、
PESFDGDPASNTAPLQPEQLQ(配列番号2;HER2)、
QPEKVQTLEAWVIHGG(配列番号3;CD38)、
ISKRNIQFSCKNIYR(配列番号4;CD38)、
TFGSVEVHNL(配列番号5;CD38)、
QTLEA(配列番号6;CD38)、
IQFSC(配列番号7;CD38)、および
AFPEDRSQPG(配列番号8;PD-1)から成る群から選択される、外来ペプチドエピトープ、またはその断片もしくは変異体を含む、ポリペプチドをコードする核酸を含む組換え繊維状ファージゲノムと、
前記組換えファージに感染した細菌と、
を含む、プロバイオティックワクチン、が提供される。
【0010】
[10]
本発明のワクチンの特定の実施形態において、外来ペプチドエピトープは、pIII、pVI、pVII、pVIIIおよびpIXから成る群から選択されるコートタンパク質上に機能的に発現されている。特定の実施形態において、コートタンパク質は、pIIIである。
【0011】
[11]
さらなる実施形態において、ファージは、繊維状ファージ、例えばM13、fd、IKe、CTX-φ、Pfl、Pf2、Pf3、f1、MKE;M13K3;マイオウイルス科(Myoviridae)(Pl様ウイルス;P2様ウイルス;Mu様ウイルス;SPOI様ウイルス;phiH様ウイルス);シフォウイルス科(Siphoviridae)(λ様ウイルス、γ様ウイルス、Tl様ウイルス;T5様ウイルス;c2様ウイルス;L5様ウイルス;psiMl様ウイルス;phiC31様ウイルス;N15様ウイルス);ポドウイルス科(Podoviridae)(phi29様ウイルス;P22様ウイルス;N4様ウイルス);テクティウイルス科(Tectiviridae)(テクティウイルス(Tectivirus));コルチコウイルス科(Corticoviridae)(コルチウイルス(Corticovirus));リポスリクスウイルス科(Lipothrixviridae)(アルファリポトリックスウイルス(Alphalipothrixvirus)、ベータリポトリックスウイルス(Betalipothrixvirus)、ガンマリポトリックスウイルス(Gammalipothrixvirus)、デルタリポトリックスウイルス(Deltalipothrixvirus));プラズマウイルス科(Plasmaviridae)(プラズマウイルス(Plasmavirus));ルディウイルス科(Rudiviridae)(ルディウイルス(Rudivirus));フセロウイルス科(Fuselloviridae)(フセロウイルス(Fusellovirus));イノウイルス科(Inoviridae)(イノウイルス(Inovirus)、プレクトロウイルス(Plectrovirus)、M13様ウイルス、fd様ウイルス);ミクロウイルス科(Microviridae)(ミクロウイルス(Microvirus)、スピロミクロウイルス(Spiromicrovirus)、ブデロマクロウイルス(Bdellomicrovirus)、クラミジアミクロウイルス(Chlamydiamicrovirus));レビウイルス科(Leviviridae)(レビウイルス(Levivirus)、アロレヴィウイルス(Allolevivirus))およびシストウイルス科(Cystoviridae)(シストウイルス(Cystovirus))のファージから成る群から選択される。特定の実施形態において、ファージは、M13K3である。
【0012】
[12]
さらに他の実施形態において、本明細書で提供される本発明に係る組換えファージに感染する細菌(例えば、プロバイオティック細菌)は、大腸菌(E.coli)Nissle 1917、大腸菌ER2738、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens);バチルス・ポリフェルメンティクス(Bacillus polyfermenticus)、Bispan株;ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシス・ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp. Lactis)、BB-12株;ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシス・ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp. Lactis)、GPS1209株;ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシス・ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp. Lactis)、HN019(DR1064)株;ビフィドバクテリウム・ビフィダム((Bifidobacterium bifidum))、BB-12株;ビフィドバクテリウム・ビフィダム、Rosell-71株;ビフィドバクテリウム・ブレビ(Bifidobacterium breve)、M-16V株;ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum);ビフィドバクテリウム・サーモフィルム(Bifidobacterium thermophilum);ラクトバチルス・アシッドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、La-1株;ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、HA-112株;ラクトバチルス・フェルメントゥム(Lactobacillus fermentum)、HA-179株;ラクトバチルス・ヘルベティクス(Lactobacillus helveticus)、Lafti L10株;ラクトバチルス・ヘルベティクス、Rosell-52株;ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、Lafti L26株;ラクトバチルス・パラカゼイ・サブスピーシス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)、431株;ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、HN001(DR20)株;ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)、DSM 13084株;ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus);バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、GBI-30、6086、ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシス・ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp. lactis) BB-12、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシス・インファンティス(Bifidobacterium longum subsp. infantis)、大腸菌 Nissle 1917、大腸菌ER2738、ラクトバチルス・アシッドフィルス(Lactobacillus acidophilus) NCFM、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei) Stl1(またはNCC2461)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii) Lai(ラクトバチルス LCI、ラクトバチルス・ジョンソニー NCC533とも称される。)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)299v、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri) ATCC 55730(ラクトバチルス・ロイテリ SD2112)、ラクトバチルス・ロイテリ・プロテクティス(Lactobacillus reuteri Protectis)(DSM 17938、ATCC 55730の娘株)、ラクトバチルス・ロイテリ・プロデンティス(Lactobacillus reuteri Prodentis)(DSM 17938/ATCC 55730およびATCC PTA 5289の併用)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus) GG、サッカロマイセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)、ラクトバチルス・ラムノサス GR-1とラクトバチルス・ロイテリ RC-14の混合物、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus) NCFMとビフィドバクテリウム・ビフィダム BB-12の混合物、ラクトバチルス・アシドフィルス CL1285とラクトバチルス・カゼイ LBC80Rの混合物、ラクトバチルス・プランタルム HEAL 9とラクトバチルス・パラカゼイ 8700:2の混合物、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトコッカス・サーモフィルスおよびラクトバチルス・ビフィダス(Lactobacillus bifidus)、から選択することができる。特定の実施形態において、本明細書で提供される本発明に係る組換えファージに感染する細菌は、F因子陽性である。別の実施形態において、細菌は、大腸菌Nissle1917または大腸菌ER2738から選択されるF因子陽性である。特定の実施形態において、細菌は、大腸菌Nissle 1917である。別の実施形態において、細菌は、大腸菌ER2738である。
【0013】
[13]
特定の実施形態において、プロバイオティックワクチンは、外来ペプチドエピトープに結合するIgG抗体およびIgA抗体の両方を生成する。他の実施形態において、細菌を含むプロバイオティックワクチンは、溶原性ファージを継続的に生成する。プロバイオティックワクチンのさらに他の実施形態において、ペプチド‐TSGSGSGSGSGSGSG‐が、コートタンパク質と外来ペプチドエピトープとの間のリンカーとして使用される。
【0014】
[14]
本明細書では、以下の:
LPESFDGDPASNTAPLQPEQLQVF(配列番号1)、
PESFDGDPASNTAPLQPEQLQ(配列番号2)、
QPEKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)、
ISKRNIQFSCKNIYR(配列番号4)、
TFGSVEVHNL(配列番号5)、
QTLEA(配列番号6)、
IQFSC(配列番号7)、および
AFPEDRSQPG(配列番号8)
から成る群から選択される、外来ペプチドエピトープ、またはその断片もしくは変異体を含む、ポリペプチドをコードする核酸を含む組換え繊維状ファージゲノム、も提供される。
【0015】
[15]
組換えファージの特定の実施形態において、外来ペプチドエピトープは、pIII、pVI、pVII、pVIIIおよびpIXから成る群から選択されるコートタンパク質上で機能的に発現されている。組換えファージの特定の実施形態において、コートタンパク質は、pIIIである。さらなる実施形態において、ファージは、繊維状ファージ、例えばM13、fd、IKe、CTX-φ、Pfl、Pf2、Pf3、f1、MKE;M13K3;マイオウイルス科(Myoviridae)(Pl様ウイルス;P2様ウイルス;Mu様ウイルス;SPOI様ウイルス;phiH様ウイルス);シフォウイルス科(Siphoviridae)(λ様ウイルス、γ様ウイルス、Tl様ウイルス;T5様ウイルス;c2様ウイルス;L5様ウイルス;psiMl様ウイルス;phiC31様ウイルス;N15様ウイルス);ポドウイルス科(Pooviridae)(phi29様ウイルス;P22様ウイルス;N4様ウイルス);テクティウイルス科(Tectiviridae)(テクティウイルス(Tectivirus));コルチコウイルス科(Corticoviridae)(コルチウイルス(Corticovirus));リポスリクスウイルス科(Lipothrixviridae)(アルファリポトリックスウイルス(Alphalipothrixvirus)、ベータリポトリックスウイルス(Betalipothrixvirus)、ガンマリポトリックスウイルス(Gammalipothrixvirus)、デルタリポトリックスウイルス(Deltalipothrixvirus));プラズマウイルス科(Plasmaviridae)(プラズマウイルス(Plasmavirus));ルディウイルス科(Rudiviridae)(ルディウイルス(Rudivirus));フセロウイルス科(Fuselloviridae)(フセロウイルス(Fusellovirus));イノウイルス科(Inoviridae)(イノウイルス(Inovirus)、プレクトロウイルス(Plectrovirus)、M13様ウイルス、fd様ウイルス);ミクロウイルス科(Microviridae)(ミクロウイルス(Microvirus)、スピロミクロウイルス(Spiromicrovirus)、ブデロマクロウイルス(Bdellomicrovirus)、クラミジアミクロウイルス(Chlamydiamicrovirus));レビウイルス科(Leviviridae)(レビウイルス(Levivirus)、アロレヴィウイルス(Allolevivirus))およびシストウイルス科(Cystoviridae)(シストウイルス(Cystovirus))のファージから成る群から選択される。さらに別の実施形態において、ファージは、M13、fd、IKe、CTX-φ、Pfl、Pf2、Pf3、f1、MKE、およびM13K3から成る群から選択される繊維状ファージである。特に好ましい実施形態において、ファージは、M13K3である。さらに別の実施形態において、組換えファージは、外来ペプチドエピトープに結合するIgG抗体を生成する。組換えファージのさらに別の実施形態において、ペプチドTSGSGSGSGSGSGSGは、外来ペプチドエピトープとコートタンパク質との間のリンカーとして使用される。
【0016】
[16]
本明細書では、がんを予防または処置する方法であって、それを必要とする患者に対し、本明細書で提供される1又は複数のプロバイオティックワクチン、または本明細書で提供される組換え1又は複数のファージを投与すること、を含む、方法、も提供される。特定の実施形態において、がんは、多発性骨髄腫、上皮がん、上皮性卵巣がん、粘膜黒色腫、非小細胞肺がん、黒色腫、頭頸部がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、皮膚扁平上皮がん、膠芽腫、食道がん、胃がん、十二指腸がん、小腸がん、虫垂がん、大腸がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、肛門がん、膵臓がん、肝臓がん、胆嚢がん、脾臓がん、腎臓がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、子宮がん、子宮内膜がん、卵巣がん、膣がん、外陰がん、乳がん、肺がん、甲状腺がん、胸腺がん、脳腫瘍、神経系がん、神経膠腫、口腔がん、皮膚がん、血液がん、リンパ腫、眼がん、骨肉腫、骨髄腫、筋肉がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、尿路上皮がん、非筋層浸潤性膀胱がん[NMIBC]、結腸がんもしくは直腸がん、食道がんもしくは特定の胃食道接合部(GEJ)がん、子宮頸がん、腎細胞がん(RCC)、進行子宮内膜がん、皮膚扁平上皮がん(cSCC)、および/またはトリプルネガティブ乳がん(TNBC)などから成る群から選択される。特定の実施形態において、がんは、多発性骨髄腫である。
【0017】
[17]
本明細書では、本発明のプロバイオティックワクチン、または本発明の組換えファージ、と、プロバイオティックワクチンまたは組換えファージの投与のための指示書と、を含むキット、も提供される。
【0018】
[18]
以下の詳細な説明および添付の図面を検討することにより、当業者であれば、本発明の他の特徴および利点がより容易に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
[19]
【
図1】
図1は、コンストラクトM13KE-AFP10 RF I DNAを形成するための、実施例3における配列番号8をコードする核酸の挿入部位の核酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
[20]
本明細書では、新規のプロバイオティックワクチンであって、
LPESFDGDPASNTAPLQPEQLQVF(配列番号1)、
PESFDGDPASNTAPLQPEQLQ(配列番号2)、
QPEKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)、
ISKRNIQFSCKNIYR(配列番号4)、
TFGSVEVHNL(配列番号5)、
QTLEA(配列番号6)、
IQFSC(配列番号7)、および
AFPEDRSQPG(配列番号8)から成る群から選択される、外来ペプチドエピトープ、またはその断片もしくは変異体を含む、ポリペプチドをコードする核酸を含む組換えファージ(例えば、繊維状ファージ)ゲノムと、
前記組換えファージに感染した細菌と、
を含む、プロバイオティックワクチン、が提供される。
【0021】
[21]
「プロバイオティックワクチン」という用語は、本明細書で使用される場合、組換えファージに感染したプロバイオティック細菌の組み合わせを指す。
【0022】
[22]
本明細書に記載のとおり、本発明のプロバイオティックワクチンは、がんまたは感染症を処置および/または予防する方法において特に有用である。プロバイオティックベースのワクチンは、従来のワクチンとは異なり、厳密な保存条件や輸送も必要としない。従来の生ワクチンは通常、投与前に低温での保存が必要である。さらに、従来のワクチン接種は、病原性細菌、例えばサルモネラ菌(Salmonella)、結核菌(Mycobacterium)、および枯草菌(Bacillus)の弱毒株を用いて開発されているが、これらの菌は、多くの欠点、例えば弱毒株が体内で再び病原性を持つようになる可能性などがある。また、弱毒株ワクチンは、個体において追加の免疫反応を引き起こし、そのため、ワクチンの効果が弱まる。人間の腸内の過酷な酸性条件下での生存率も、プロバイオティック経口ワクチンと比較して従来のワクチンが失敗する要因となる問題である。従来のワクチンは一般的に、過酷な酸性条件下では生存できず、その結果、粘膜層の内側まで到達することができない。一方、プロバイオティクスは、酸性環境にたけている。プロバイオティクスは、酸や胆汁に耐性があるため、ワクチン開発に適している。
【0023】
[23]
「ワクチン」という用語は、本明細書で使用される場合、有害な抗原に対する防御が、予防または治療のいずれかを通じて提供されるように、生物の免疫系を刺激することができる組成物を指す。好ましくは、ワクチンまたはワクチン組成物は、1又は複数の免疫アジュバント物質をさらに含む。
【0024】
[24]
「予防」(「preventing」、「prevention」、「prophylaxis」、「prevent」)という用語は、本明細書で使用される場合、一般的に、疾患または状態の発症前におけるその発症または進行を回避するか、または最小限にすること、を意味し、「処置」(「treating」、「treatment」又は「treat」)という用語は、疾患(例えば、がんなど)または状態(または、疾患もしくは状態の症状)の発症後のその軽減、改善または治癒を包含する。「予防」(「preventing」)という用語は、「発生の可能性の軽減」または「再発の可能性の軽減」を包含する。
【0025】
[25]
「有効量」または「有効用量」は、本明細書で使用される場合、所望の効果を提供する量である。治療(「therapeutic」)目的の場合、有効量とは、有益なまたは所望の臨床結果を提供するのに十分な量である。所定の応用にとって好ましい有効量は、例えば、対象のサイズ、年齢、体重、予防または処置される疾患/障害の種類、および疾患/障害が始まってからの期間を考慮することで、当業者であれば容易に決定できる。本発明において、予防または処置という観点では、組成物の有効量とは、疾患または障害に対して体液性および/または細胞媒介性免疫応答を誘導するのに十分な量である。
【0026】
[26]
本明細書に記載される本発明の異なる態様および実施形態によると、「対象」または「宿主」は好ましくは哺乳類を指し、最も好ましくはヒトを指す。前記対象は、がんおよび/または感染症(例えば、韓国熱ウイルス感染(Korean Fever Virus infection)などを経由するもの)を有するか、発症している可能性があり、発症するリスクがある、と疑われている者であってもよい。
外来ペプチドエピトープ
【0027】
[27]
「外来ペプチドエピトープ」という用語は、本明細書で使用される場合、本発明に係る組換えファージを製造するために使用される宿主ファージ株との比較で、固有ではないか、又は天然ではない、任意のペプチドまたは配列を指す。換言すると、外来ペプチドエピトープおよびそれをコードする核酸は、利用される特定のファージ株のペプチド配列に対して異種(すなわち、外来のもの)である。複数の特定の実施形態において、外来ペプチド(peptdide)エピトープの長さは、4~20アミノ酸、4~25アミノ酸(amino acidds)、5~20アミノ酸、5~25アミノ酸、5~30アミノ酸、5~35アミノ酸、5~40アミノ酸、5~45アミノ酸、および5~50アミノ酸から成る群から選択される範囲であり得る。特定の実施形態において、外来ペプチド(peptdide)エピトープの長さは、5~20アミノ酸の範囲である。
【0028】
[28]
本発明によれば、本明細書で提供される組換えファージおよび/またはプロバイオティックワクチンに使用するための外来(exogoneous)ペプチドエピトープ(例えば抗原性ペプチド)は、以下のような、配列番号1~8のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、またはその断片もしくは変異体、を含むか、それらから成る:
LPESFDGDPASNTAPLQPEQLQVF(配列番号1)、
PESFDGDPASNTAPLQPEQLQ(配列番号2)、
QPEKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)、
ISKRNIQFSCKNIYR(配列番号4)、
TFGSVEVHNL(配列番号5)、
QTLEA(配列番号6)、
IQFSC(配列番号7)、および
AFPEDRSQPG(配列番号8)。
【0029】
[29]
プロバイオティック細菌細胞で組換えファージを培養するために使用されるエピトープは、処置または予防されるがんの種類、または予防される感染症の種類に依存する。例えば、乳がん、膀胱がん、膵臓がん、卵巣がん、および/または胃がんなどを含む、がんの処置に、HER2外来ペプチドエピトープを使用する実施形態において、少なくとも1つの外来ペプチドエピトープ、またはその断片もしくは変異体が、LPESFDGDPASNTAPLQPEQLQVF(配列番号1)またはPESFDGDPASNTAPLQPEQLQ(配列番号2)から選択される。別の実施形態において、外来ペプチドエピトープは、配列番号1または2において、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、または1個のアミノ酸置換を有する、LPESFDGDPASNTAPLQPEQLQVF(配列番号1)またはPESFDGDPASNTAPLQPEQLQ(配列番号2)を含む。したがって、本明細書では、乳がん、膀胱がん、膵臓がん、卵巣がん、および/または胃がんを含む、がんを予防または処置する方法であって、それを必要とする患者に対して、LPESFDGDPASNTAPLQPEQLQVF(配列番号1)またはPESFDGDPASNTAPLQPEQLQ(配列番号2)から選択される少なくとも1つの外来ペプチドエピトープ、またはその断片もしくは変異体を含む、組換えファージまたはプロバイオティックワクチンを投与することを含む、方法、が提供される。
【0030】
[30]
白血病、リンパ腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、CLLなどを含む、がんの処置にCD38外来ペプチドエピトープを使用する別の実施形態において、少なくとも1つの外来ペプチドエピトープ、またはその断片もしくは変異体は、QPEKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)、ISKRNIQFSCKNIYR(配列番号4)、TFGSVEVHNL(配列番号5)、QTLEA(配列番号6)、およびIQFSC(配列番号7)から選択される。別の実施形態において、外来ペプチドエピトープは、配列番号3~7における5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、または1個のアミノ酸置換を有する、QPEKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)、ISKRNIQFSCKNIYR(配列番号4)、TFGSVEVHNL(配列番号5)、QTLEA(配列番号6)、およびIQFSC(配列番号7)を含む。したがって、本明細書では、白血病、リンパ腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、および/または慢性リンパ性白血病(CLL)を含む、がんを予防または処置する方法であって、それを必要とする患者に対し、QPEKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)、ISKRNIQFSCKNIYR(配列番号4)、TFGSVEVHNL(配列番号5)、QTLEA(配列番号6)、およびIQFSC(配列番号7)から選択される、少なくとも1つの外来ペプチドエピトープ、またはその断片もしくは変異体を含む、組換えファージまたはプロバイオティックワクチンを投与することを含む、方法、が提供される。
【0031】
[31]
別の実施形態において、QPEKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)、ISKRNIQFSCKNIYR(配列番号4)、TFGSVEVHNL(配列番号5)、QTLEA(配列番号6)、およびIQFSC(配列番号7)から選択される、外来ペプチドエピトープ、またはその断片もしくは変異体が、韓国熱ウイルスによる感染を予防することができることが本明細書では想定されている。したがって、本明細書では、韓国熱ウイルス感染症を予防する方法であって、それを必要とする患者に対し、QPEKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)、ISKRNIQFSCKNIYR(配列番号4)、TFGSVEVHNL(配列番号5)、QTLEA(配列番号6)、およびIQFSC(配列番号7)から選択される、少なくとも1つの外来ペプチドエピトープ、またはその断片もしくは変異体(veriant)を含む、組換えファージまたはプロバイオティックワクチンを投与することを含む、方法、が提供される。
【0032】
[32]
がんの処置にPD-1外来ペプチドエピトープを使用する別の実施形態において、AFPEDRSQPG(配列番号8)に相当する少なくとも1つの外来ペプチドエピトープ、またはその断片もしくは変異体は、PD-1介在型のがん、例えば、粘膜がん、胃がん、黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、尿路上皮がん、非筋層浸潤性膀胱がん[NMIBC]、結腸がんもしくは直腸がん、食道がんもしくは特定の胃食道接合部(GEJ)がん、子宮頸がん、腎細胞がん(RCC)、進行子宮内膜がん、皮膚扁平上皮がん(cSCC)、および/またはトリプルネガティブ乳がん(TNBC)などを処置又は予防することができる。別の実施形態において、外来ペプチドエピトープは、配列番号8における5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、または1個のアミノ酸置換(複数可)を有する、AFPEDRSQPG(配列番号8)を含む。したがって、本明細書では、がんを予防または処置する方法であって、それを必要とする患者に対して、AFPEDRSQPG(配列番号8)に相当する少なくとも1つの外来ペプチドエピトープ、またはその断片もしくは変異体、を含む組換えファージまたはプロバイオティックワクチンを投与することを含み、がんが、胃がん、黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、尿路上皮がん、非筋層浸潤性膀胱がん[NMIBC]、結腸もしくは直腸がん、食道もしくは特定の胃食道接合部(GEJ)がん、子宮頸がん、腎細胞がん(RCC)、進行子宮内膜がん、皮膚扁平上皮がん(cSCC)、および/またはトリプルネガティブ乳がん(TNBC)から成る群から選択される、方法、が提供される。
【0033】
[33]
「断片」という用語またはその文法上の変形は、本明細書で使用される場合、それが由来する完全な参照ペプチド配列と比較してより小さいペプチド(例えば、アミノ酸のサブセット)を指す。例えば、断片は、完全な参照ペプチドよりも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、またはそれ以上のアミノ酸が少ないものであってもよい。
【0034】
[34]
「その変異体」、「変異体」という用語またはそれらの文法上の変形は、本明細書で使用される場合、最大パーセントの配列同一性を達成するように、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入した後で、且つ、配列同一性の一部として保存的置換を考慮しない場合に、参照配列ポリペプチドと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する生物学的に活性なポリペプチドを指す。そのような変異体には、例えば、ポリペプチドのN末端またはC末端で1又は複数のアミノ酸残基が追加されたか、欠失されたポリペプチドが含まれる。実施形態によって、変異体は、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、および99%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態によって、変異体は、少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態によって、変異体は、少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を有する。実施形態によって、変異体は、天然の配列ポリペプチドと少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0035】
[35]
ペプチドまたはポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性のパーセント(%)(Percent (%) amino acid sequence identity)」および「相同性(homology)」は、本明細書で使用される場合、最大パーセント配列同一性を達成するように、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入した後で、且つ、配列同一性の一部として任意の保存的置換を考慮しない場合に、特定のペプチドまたはポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性のパーセントを決定するためのアラインメントは、一般に入手可能なコンピュータソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMEGALIGN(登録商標)(DNASTAR)ソフトウェアなどを使用するなど、当業界の技術の範囲内にある様々な方法で達成できる。当業者は、比較する配列の全長にわたって最大の整列を達成するために必要なアルゴリズムを含む、整列を測定するための適切なパラメータを決定できる。
【0036】
[36]
特定の実施形態において、アミノ酸置換は、ポリペプチド中のあるアミノ酸を別のアミノ酸に置き換えることを含んでよいが、これに限定されない。例示的な保存的置換を表1に示す。他の実施形態において、保存的アミノ酸置換は、注目のペプチドに導入されてもよく、生成物は、例えば、増加した免疫原性など、所望の活性についてスクリーニングされてもよい。
【0037】
[37]
実施形態によって、修飾は、ペプチドまたはタンパク質への少なくとも1つの保存的置換の導入を含むことができ、ここで、アミノ酸の少なくとも1つの特性、例えばアミノ酸のサイズ、形状、または電荷などが保存される。「保存的アミノ酸置換」は、タンパク質の機能を実質的に変化させずに実施され得る、構造上および/または機能的に類似のアミノ酸の置換を指す。保存的置換の例は、以下のグループのうちのあるアミノ酸を、同じグループの別のアミノ酸と交換することである(米国特許第5,767,063号;KyteおよびDoolittle、J. Mol. Biol.157:105-132(1982)):
・(1)疎水性:ノルロイシン、メチオニン、アラニン、バリン、ロイシン、リジン;
・(2)中性親水性:システイン、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン;
・(3)酸性:アスパラギン酸、グルタミン酸;
・(4)塩基性:ヒスチジン、リジン、アルギニン;
・(5)鎖の配向に影響を与える残基:グリシン、プロリン;
・(6)芳香族:トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン。
【0038】
【0039】
【0040】
[38]
例えば、置換は、ValをLeuに、SerをThrに、またはAspをGluに変更することによって行うことができる。他の置換も、特定のアミノ酸の環境およびタンパク質の三次元構造におけるその役割によっては保存的であると考えられる。例えば、側鎖のサイズおよび構造を維持しながらアミノ酸側鎖のpKaを変更することが望まれる場合、GluはGlnで置換され、AspはAsnで置換され得る。
【0041】
[39]
実施形態によって、修飾(例えば、別のアミノ酸残基との置換)のために選択されるアミノ酸残基は、His、Glu、Asp、Cys、Lys、およびTyrから成る群から選択される。実施形態によって、修飾のために選択されるアミノ酸残基は、ヒスチジンおよびグルタミン酸残基を含む。これらのアミノ酸残基は、通常、(全タンパク質の文脈においてさえも)約pH6から約pH8までのpKa値を有し、それ故に高い緩衝能を有する。実施形態によって、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換は、ヒスチジンからアルギニン、グルタミン酸からグルタミン、アスパラギン酸からアスパラギン、リジンからアルギニン、およびチロシンからフェニルアラニン、から成る群から選択される。
【0042】
[40]
実施形態によって、1又は複数のアミノ酸修飾のうちの少なくとも1つは、アミノ酸のアラニン残基への置換を含む。緩衝能の高いアミノ酸残基をアラニン残基に置換または置き換えることは、ペプチドまたはタンパク質の緩衝能を低下させることが望ましい用途において有利な場合がある。ノルロイシンは、コードされず、置換後に修飾されることに留意すべきである。
細菌
【0043】
[41]
上記の通り、本明細書で提供される発明は、組換えファージと、当該組換えファージに感染した細菌とを含む、プロバイオティックワクチンである。特定の実施形態においては、F因子(すなわち、性因子)を有する任意の細菌(F+細胞)であって、他の細菌と接合するために線毛および性線毛を生成する細菌が本明細書での使用に適している。F+細胞がF-細胞と接合/交配すると、結果として2つのF+細胞が生成され、共に、接合によって他のF-細胞にプラスミドを伝達することができるようになる。F+細胞の線毛が受容細胞と相互作用し、接合接点が形成されると、DNAは一方の鎖が切断され、巻き戻されて受容体に移される。例示的なF因子含有細菌には、大腸菌Nissle1917、大腸菌ER2738などがある。
【0044】
[42]
したがって、特定の実施形態において、本発明に従って使用するプロバイオティック細菌の例としては、大腸菌(Escherichia coli)Nissle 1917、大腸菌ER2738、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、GBI-30、6086、ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシス・ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp. lactis) BB-12、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシス・インファンティス(Bifidobacterium longum subsp. infantis)、ラクトバチルス・アシッドフィルス(Lactobacillus acidophilus) NCFM、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei) Stl1(またはNCC2461)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii) Lai(ラクトバチルス LCI、ラクトバチルス・ジョンソニー NCC533とも称される。)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum) 299v、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri) ATCC 55730(ラクトバチルス・ロイテリ SD2112)、ラクトバチルス・ロイテリ・プロテクティス(Lactobacillus reuteri Protectis)(DSM 17938、ATCC 55730の娘株)、ラクトバチルス・ロイテリ・プロデンティス(Lactobacillus reuteri Prodentis)(DSM 17938/ATCC 55730およびATCC PTA 5289の併用)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus) GG、サッカロマイセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)、ラクトバチルス・ラムノサス GR-1とラクトバチルス・ロイテリ RC-14の混合物、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus) NCFMとビフィドバクテリウム・ビフィダム BB-12の混合物、ラクトバチルス・アシドフィルス CL1285とラクトバチルス・カゼイ LBC80Rの混合物、ラクトバチルス・プランタルム HEAL 9とラクトバチルス・パラカゼイ 8700:2の混合物、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトコッカス・サーモフィルスおよび/またはラクトバチルス・ビフィダス(Lactobacillus bifidus)、から選択することができる。実施形態によっては、本開示に従って使用するためのプロバイオティック細菌は、本明細書に記載の上記菌株のうちの任意の2つ以上の混合物であってもよい。特定の実施形態において、プロバイオティック細菌は、大腸菌Nissle1917または大腸菌ER2738である。別の実施形態において、プロバイオティック細菌は、大腸菌Nissle1917である。さらに別の実施形態において、プロバイオティック細菌は、大腸菌ER2738である。
【0045】
[43]
他の実施形態において、本明細書での使用に適した細菌は、小さく(典型的な線形寸法が約1ミクロン)、区画化されていない(non- compartmentalized)生物であって、少なくとも1つの環状DNA染色体と70Sのリボソームを有する生物である。「細菌」という用語は、本明細書で使用される場合、細菌のすべての変種(例えば、内在細菌であって、閉鎖系で天然に存在するもの、環境細菌、またはバイオレメディエーションもしくはその他の取り組みのために放出された細菌)を包含する。
【0046】
[44]
本明細書で提供される本発明プロバイオティックワクチンにおける、本発明に係る組換えファージは、必要とする対象(例えば、ヒト患者)に送達するために、ドナー細菌(例えば、プロバイオティック細菌および/または常在細菌)に導入(load)(例えば、感染)される。プロバイオティック細菌は、例えば、宿主に健康上の利益をもたらすことができる生きた細菌であり、そして/あるいは、少なくとも宿主(例えば、ヒト患者)にとって有害ではない(例えば、病原性ではない)細菌である。したがって、本発明の態様では、非溶解性または誘導性バクテリオファージが導入されているか、それに感染しているドナー細菌(例えば、プロバイオティック細菌および/または常在細菌)であって、インサイチュでバクテリオファージベースのデリバリー粒子を発現および生成できる、細菌の使用が想定される。プロバイオティクスは、腸の内部粘膜層に浸透し、有害な細菌の侵入を助けるとともに、多数の腸内感染症から保護することも明らかとなっている。
【0047】
[45]
特定の実施形態において、本明細書で使用する、本発明による組換えファージによる感染のためのプロバイオティック細菌の例としては、「PROBIO」データベース(「//bidd.group/probio/homepage.htm」; Shamekhi et al.,Clin Transl Oncol(2020)22(8):1227-39.doi:10.1007/s12094-019-02270-0;こちらは、あらゆる目的について、参照することによりその全体が本明細書に援用される。)に記載されているものがあり、このデータベースには、現在市販されている329種類のプロバイオティクス、臨床試験中の115種類のプロバイオティック細菌が含まれている。特定の実施形態において、本発明に係る組換えファージは、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens);バチルス・ポリフェルメンティクス(Bacillus polyfermenticus)、Bispan株;ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシス・ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp. Lactis)、BB-12株;ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシス・ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp. Lactis)、GPS1209株;ビフィドバクテリウム・アニマリス・サブスピーシス・ラクティス(Bifidobacterium animalis subsp. Lactis)、HN019(DR1064)株;ビフィドバクテリウム・ビフィダム((Bifidobacterium bifidum))、BB-12株;ビフィドバクテリウム・ビフィダム、Rosell-71株;ビフィドバクテリウム・ブレビ(Bifidobacterium breve)、M-16V株;ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum);ビフィドバクテリウム・サーモフィルム(Bifidobacterium thermophilum);ラクトバチルス・アシッドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、La-1株;ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、HA-112株;ラクトバチルス・フェルメントゥム(Lactobacillus fermentum)、HA-179株;ラクトバチルス・ヘルベティクス(Lactobacillus helveticus)、Lafti L10株;ラクトバチルス・ヘルベティクス、Rosell-52株;ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、Lafti L26株;ラクトバチルス・パラカゼイ・サブスピーシス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)、431株;ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、HN001(DR20)株;ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)、DSM 13084株;ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)から成る群から選択される、免疫調節能力を有する特定のプロバイオティック細菌に感染しているか、それらが導入されている。例えば、Singhら、Front Immunol. 2022;13: 1002674;2022年10月3日オンライン公開。doi: 10.3389/fimmu.2022.1002674の表1を参照のこと。こちらは、あらゆる目的について、参照することによりその全体が本明細書に援用される。
【0048】
[46]
他の実施形態において、本開示の本発明に係る組換えバクテリオファージは、大腸菌以外の細菌、例えば、限定されないが、バクテロイデス・テタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotamicron)(例えば、Bl)、B.フラジリス(B.fragilis)(例えば、ATCC 51477-B1、B40-8、Bf-1)、B.カッカエ(B. caccae)(例えば、ph phiHSCOI)、B.オバツス(B.ovatus)(例えば、phiHSC02)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)(例えば、phiC2、phiC5、phiC6、phiCS、phiCD119、phiCD27)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)(例えば、KP01 K2、KI I、Kpn5、KP34、JDOOI)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(例えば、phiNMI、80α)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)(例えば、IME-EF1)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)(例えば、ENB6、C33)、およびシュードモナス エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)(例えば、phiKMV、PAK-P1、LKD16、LKA1、デルタ、シグマ-1、J-l)を標的とすることが本明細書において想定されている。
【0049】
[47]
したがって、本開示のバクテリオファージは、上記の細菌属および/または細菌種のいずれか1つ以上の細菌細胞を標的(例えば、特異的に標的)とすることができる。他の細菌細胞および微生物も標的とされ得る。
【0050】
[48]
「内在」細菌細胞は、本明細書で使用される場合、正常な内部生態系、例えば細菌叢の一部である非病原性細菌を指す場合がある。
【0051】
[49]
さらに別の実施形態において、本開示の細菌細胞は、嫌気性細菌細胞(例えば、増殖に酸素を必要としない細胞)である。嫌気性細菌細胞には、通性嫌気性細胞、例えば大腸菌(Escherichia coli)、シェワネラ・オネイデンシス(Shewanella oneidensis)、およびリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)が含まれる。嫌気性細菌細胞には、偏性嫌気性細胞、例えばバクテロイデス属(Bacteroide)およびクロストリジウム(Clostridium)属も含まれる。ヒトでは、例えば嫌気性細菌細胞は最も一般的に消化管に存在する。したがって、本開示のバクテリオファージは、嫌気性細菌細胞を標的(例えば、特異的に標的)とし得る。
組換えバクテリオファージ
【0052】
[50]
本明細書では、組換え繊維状ファージゲノムであって、
LPESFDGDPASNTAPLQPEQLQVF(配列番号1)、
PESFDGDPASNTAPLQPEQLQ(配列番号2)、
QPEKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)、
ISKRNIQFSCKNIYR(配列番号4)、
TFGSVEVHNL(配列番号5)、
QTLEA(配列番号6)、
IQFSC(配列番号7)、および
AFPEDRSQPG(配列番号8)
から成る群から選択される、外来ペプチドエピトープ、またはその断片もしくは変異体を含む、ポリペプチドをコードする核酸を含む組換え繊維状ファージゲノムを含む、組換え繊維状ファージゲノム、も提供される。
【0053】
[51]
組換えファージの特定の実施形態において、外来ペプチドエピトープは、pIII、pVI、pVII、pVIIIおよびpIXから成る群から選択されるコートタンパク質上に機能的に発現されている。組換えファージの特定の実施形態において、コートタンパク質はpIIIである。「機能的に発現されている」という表現は、本明細書で使用される場合、エピトープがファージの表面に表示され、免疫応答を誘発できるような、外来ペプチドエピトープの発現を指す。
【0054】
[52]
さらなる実施形態において、ファージは、繊維状ファージ、例えばM13、fd、IKe、CTX-φ、Pfl、Pf2、Pf3、f1、MKE;M13K3;マイオウイルス科(Myoviridae)(Pl様ウイルス;P2様ウイルス;Mu様ウイルス;SPOI様ウイルス;phiH様ウイルス);シフォウイルス科(Siphoviridae)(λ様ウイルス、γ様ウイルス、Tl様ウイルス;T5様ウイルス;c2様ウイルス;L5様ウイルス;psiMl様ウイルス;phiC31様ウイルス;N15様ウイルス);ポドウイルス科(Pooviridae)(phi29様ウイルス;P22様ウイルス;N4様ウイルス);テクティウイルス科(Tectiviridae)(テクティウイルス(Tectivirus));コルチコウイルス科(Corticoviridae)(コルチウイルス(Corticovirus));リポスリクスウイルス科(Lipothrixviridae)(アルファリポトリックスウイルス(Alphalipothrixvirus)、ベータリポトリックスウイルス(Betalipothrixvirus)、ガンマリポトリックスウイルス(Gammalipothrixvirus)、デルタリポトリックスウイルス(Deltalipothrixvirus));プラズマウイルス科(Plasmaviridae)(プラズマウイルス(Plasmavirus));ルディウイルス科(Rudiviridae)(ルディウイルス(Rudivirus));フセロウイルス科(Fuselloviridae)(フセロウイルス(Fusellovirus));イノウイルス科(Inoviridae)(イノウイルス(Inovirus)、プレクトロウイルス(Plectrovirus)、M13様ウイルス、fd様ウイルス);ミクロウイルス科(Microviridae)(ミクロウイルス(Microvirus)、スピロミクロウイルス(Spiromicrovirus)、ブデロマクロウイルス(Bdellomicrovirus)、クラミジアミクロウイルス(Chlamydiamicrovirus));レビウイルス科(Leviviridae)(レビウイルス(Levivirus)、アロレヴィウイルス(Allolevivirus))およびシストウイルス科(Cystoviridae)(シストウイルス(Cystovirus))のファージから成る群から選択される。さらに別の実施形態において、ファージは、M13、fd、IKe、CTX-φ、Pfl、Pf2、Pf3、f1、MKE、およびM13K3から成る群から選択される繊維状ファージである。特に好ましい実施形態において、ファージは、M13K3である。さらに別の実施形態において、組換えファージは、外来ペプチドエピトープに結合するIgG抗体を生成する。
【0055】
[53]
本開示の特定の実施形態において、外来ペプチドエピトープをコードする核酸は、微生物細胞集団、例えばプロバイオティック細菌細胞への送達のために、組換えにより、天然の、改変された(例えば、合理的に改変された)、または適応進化されたバクテリオファージに組み込まれる。バクテリオファージ、またはファージは、細菌に感染して増殖するウイルスである。バクテリオファージは、DNAまたはRNAゲノムをカプセル封入するタンパク質から構成され、比較的単純な構造または複雑な構造を持つ場合がある。それらのゲノムは、わずか4つの遺伝子または数百もの遺伝子をコードする場合がある。バクテリオファージは、細菌細胞の溶解をもたらす溶菌サイクル、または、細菌細胞をそのまま残す溶原サイクル(非溶菌サイクル)、のいずれかを用いて複製する。
【0056】
[54]
本開示のバクテリオファージは、実施形態によっては、非溶菌性ファージ(溶原性ファージまたはテンペレートファージとも称される)である。「細菌が、溶原性ファージを継続的に生成する」という表現は、本明細書で使用される場合、細菌、例えば本明細書で規定されるプロバイオティック細菌への非溶菌性ファージ感染であって、組換え溶原性ファージが、溶菌のない場合に、感染細胞から活発に分泌されるような感染を指す。例示的な溶原性(非溶菌性)ファージには、限定しないが、繊維状ファージ、例えば、f1、M13、fd、IKe、CTX-φ、Pfl、Pf2、およびPf3が含まれる。したがって、外来ペプチドエピトープをファージで細菌細胞に導入した後、細菌細胞は、生存可能なままで且つ、抗原エピトープの発現を安定的に維持できる場合がある。実施形態によって、溶原性バクテリオファージを送達媒体(delivery vehicles)として使用することができる。天然の溶原性ファージは、ファージミドシステムと併用する場合、カーゴシャトルとして機能し、本質的には標的細胞を溶菌しない。
【0057】
[55]
本開示に従って使用する非溶原性または非溶原性バクテリオファージの例には、限定しないが、マイオウイルス科(Myoviridae)(Pl様ウイルス;P2様ウイルス;Mu様ウイルス;SPOI様ウイルス;phiH様ウイルス);シフォウイルス科(Siphoviridae)(λ様ウイルス、γ様ウイルス、Tl様ウイルス;T5様ウイルス;c2様ウイルス;L5様ウイルス;psiMl様ウイルス;phiC31様ウイルス;N15様ウイルス);ポドウイルス科(Podoviridae)(phi29様ウイルス;P22様ウイルス;N4様ウイルス);テクティウイルス科(Tectiviridae)(テクティウイルス(Tectivirus));コルチコウイルス科(Corticoviridae)(コルチウイルス(Corticovirus));リポスリクスウイルス科(Lipothrixviridae)(アルファリポトリックスウイルス(Alphalipothrixvirus)、ベータリポトリックスウイルス(Betalipothrixvirus)、ガンマリポトリックスウイルス(Gammalipothrixvirus)、デルタリポトリックスウイルス(Deltalipothrixvirus));プラズマウイルス科(Plasmaviridae)(プラズマウイルス(Plasmavirus));ルディウイルス科(Rudiviridae)(ルディウイルス(Rudivirus));フセロウイルス科(Fuselloviridae)(フセロウイルス(Fusellovirus));イノウイルス科(Inoviridae)(イノウイルス(Inovirus)、プレクトロウイルス(Plectrovirus)、M13様ウイルス、f1様ウイルス(f1-like viruses));ミクロウイルス科(Microviridae)(ミクロウイルス(Microvirus)、スピロミクロウイルス(Spiromicrovirus)、ブデロマクロウイルス(Bdellomicrovirus)、クラミジアミクロウイルス(Chlamydiamicrovirus));レビウイルス科(Leviviridae)(レビウイルス(Levivirus)、アロレヴィウイルス(Allolevivirus))およびシストウイルス科(Cystoviridae)(シストウイルス(Cystovirus))のファージから成る群から選択されるものが含まれる。そのようなファージは、天然に存在するファージまたは改変されたファージであってもよい。実施形態によっては、バクテリオファージは、大腸菌ファージ(coliphage)(例えば、大腸菌に感染するファージ)である。当業者であれば、本開示に従って他のバクテリオファージを使用できることを容易に理解するであろう。
【0058】
[56]
特定の実施形態において、本明細書で使用されるバクテリオファージは、繊維状ファージである。繊維状ファージは、多くのグラム陰性菌に感染する細菌ウイルスの大きなファミリーを構成する。適当な周知の繊維状ファージには、例えば、大腸菌に感染するf1、M13、fd、Ikeなどが含まれる。ファージf1、M13、およびfdは、これまで繊維状ファージディスプレイに使用されてきたものである。それらのゲノムは、98%以上同一であり、それらの遺伝子産物は、互換性がある。
【0059】
[57]
繊維状ファージ集合の独特な態様は、多くの他のバクテリオファージの集合とは対照的に、それが分泌プロセスであることである。成長中のファージへのコートポリペプチドの組み込みは、細胞質膜で起こり、新生ファージは、集合と同時に細胞から押し出される。この過程で大腸菌細胞は溶解しない。5つのウイルスコートタンパク質(pIII、pVI、pVII、pVIII、pIX)が、ファージ粒子に組み込まれる前に細胞質膜に挿入されることは当業者に周知である。例えば、pIIIの大部分は、膜を横断してペリプラスムへと移動する一方で、そのC末端の疎水性尾部は、膜内でタンパク質を固定する。
【0060】
[58]
別の実施形態において、発明に係る組換えファージを調製するために使用されるバクテリオファージは、M13バクテリオファージである。M13は、イノウイルス科の繊維状バクテリオファージであり、環状の一本鎖DNAで構成される。M13ファージは、長さ約900nm、直径6~7nmであり、5つのタンパク質から構成されている。マイナーコートタンパク質であるP3は、大腸菌宿主細胞のFピルスの先端にある受容体に付着している。したがって、特定の実施形態において、本発明に係るプロバイオティックワクチンおよびがんを処置または予防する方法におけるその使用は、pIII、pVI、pVII、pVIII、およびpIXから成る群から選択されるそのコートタンパク質の1つにおいて、少なくとも1つの外来ペプチドエピトープを機能的に発現するように改変された、本発明に係る組換えM13バクテリオファージを細菌細胞に送達することを含む。特定の実施形態において、外来ペプチドエピトープは、M13バクテリオファージの遺伝子pIIIで機能的に発現されている。
【0061】
[59]
本明細書で使用するためのバクテリオファージは、細菌が存在するあらゆる環境から単離することができる。実施形態によって、本発明の組換えバクテリオファージは、糞便もしくは下水、陸上または海洋環境から単離される(例えば、採取される、得られる)。
治療方法
がん
【0062】
[60]
本明細書では、がんまたは感染症を予防または処置する方法であって、それを必要とする患者に対して、本明細書に記載の本発明に係るプロバイオティックワクチンまたは本明細書に記載の本発明に係る組換えファージを投与することを含む、方法、も提供される。
【0063】
[61]
「がん」という用語またはその文法上の変形は、本明細書で使用される場合、悪性新生物を指す。特に、「がん」という用語は、細胞の制御不能な分裂と、これらの細胞が浸潤によって隣接する組織に直接成長するか、または転移によって遠隔部位に植え付けられることによって、他の組織に侵入する能力によって特徴づけられる疾患または障害のクラスのいずれかのメンバーを指す。転移とは、がん細胞が血流またはリンパ系を通じて運ばれる段階として定義される。特定の実施形態において、がんは、多発性骨髄腫、上皮がん、上皮性卵巣がん、粘膜黒色腫、非小細胞肺がん、黒色腫、頭頸部がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、皮膚扁平上皮がん、膠芽腫、食道がん、胃がん、十二指腸がん、小腸がん、虫垂がん、大腸がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、肛門がん、膵臓がん、肝臓がん、胆嚢がん、脾臓がん、腎臓がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、子宮がん、子宮内膜がん、卵巣がん、膣がん、外陰がん、乳がん、肺がん、甲状腺がん、胸腺がん、脳腫瘍、神経系がん、神経膠腫、口腔がん、皮膚がん、血液がん、リンパ腫、眼がん、骨肉腫、骨髄腫、筋肉がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、尿路上皮がん、非筋層浸潤性膀胱がん[NMIBC]、結腸がんもしくは直腸がん、食道がんもしくは特定の胃食道接合部(GEJ)がん、子宮頸がん、腎細胞がん(RCC)、進行子宮内膜がん、皮膚扁平上皮がん(cSCC)、および/またはトリプルネガティブ乳がん(TNBC)など、から成る群から選択される。特定の実施形態において、がんは、多発性骨髄腫である。
【0064】
[62]
特定の実施形態において、上記の通り、本明細書では、乳がん、膀胱がん、膵臓がん、卵巣がん、および/または胃がんを予防または処置する方法であって、それを必要とする患者に対して、LPESFDGDPASNTAPLQPEQLQVF(配列番号1)またはPESFDGDPASNTAPLQPEQLQ(配列番号2)から選択される、少なくとも1つの外来ペプチドエピトープ、またはその断片もしくは変異体を含む、組換えファージまたはプロバイオティックワクチンを投与することを含む、方法、が提供される。
【0065】
[63]
別の実施形態において、上記の通り、多発性骨髄腫を予防または処置する方法であって、それを必要とする患者に対して、QPEKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)、ISKRNIQFSCKNIYR(配列番号4)、TFGSVEVHNL(配列番号5)、QTLEA(配列番号6)、およびIQFSC(配列番号7)から選択される、少なくとも1つの外来ペプチドエピトープ、またはその断片もしくは変異体を含む、組換えファージまたはプロバイオティックワクチンを投与することを含む、方法、が提供される。
【0066】
[64]
がんの処置にPD-1外来ペプチドエピトープを使用する別の実施形態において、AFPEDRSQPG(配列番号8)に相当する少なくとも1つの外来ペプチドエピトープ、またはその断片もしくは変異体は、PD-1介在型のがん、例えば、粘膜がん、胃がん、黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、尿路上皮がん、非筋層浸潤性膀胱がん[NMIBC]、結腸がんもしくは直腸がん、食道がんもしくは特定の胃食道接合部(GEJ)がん、子宮頸がん、腎細胞がん(RCC)、進行子宮内膜がん、皮膚扁平上皮がん(cSCC)、および/またはトリプルネガティブ乳がん(TNBC)などを処置又は予防することができる。別の実施形態において、外来ペプチドエピトープは、配列番号8における5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、または1個のアミノ酸置換(複数可)を有する、AFPEDRSQPG(配列番号8)を含む。したがって、本明細書では、がんを予防または処置する方法であって、それを必要とする患者に対して、AFPEDRSQPG(配列番号8)に相当する少なくとも1つの外来ペプチドエピトープ、またはその断片もしくは変異体を含む、組換えファージまたはプロバイオティックワクチンを投与することを含み、がんが、胃がん、黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、尿路上皮がん、非筋層浸潤性膀胱がん[NMIBC]、結腸もしくは直腸がん、食道もしくは特定の胃食道接合部(GEJ)がん、子宮頸がん、腎細胞がん(RCC)、進行子宮内膜がん、皮膚扁平上皮がん(cSCC)、および/またはトリプルネガティブ乳がん(TNBC)から成る群から選択される、方法、が提供される。
感染症(Infectious Diseaese)
【0067】
[65]
ウイルス性出血熱(VHF)は、アレナウイルス科(Arenaviridae)、フィロウイルス科(Filoviridae)、ハンタウイルス科(Hantaviridae)、およびフラビウイルス科(Flaviviridae)から主に選択される、エンベロープを持つRNAウイルスによって引き起こされ得る、臨床的に類似した疾患群である。臨床上、この疾患群には、共通点として、発熱、疲労、めまい、筋肉痛、そして、血管漏出、出血および多臓器不全へと進行し得るその他の関連症状がある。例えば、Perdomo-Celis et al.,Vaccines 2019,7(1),11; …doi.org/10.3390/vaccines7010011を参照のこと;こちらは、あらゆる目的について、参照することによりその全体が本明細書に援用される。
【0068】
[66]
VHFは、汚染された体液や組織との直接接触により、人から人へ感染する可能性がある。VHFの多くが、自然界で人獣共通感染症(zoonotic)でもあり、各ウイルスによって異なるメカニズムで感染が広がる。それらの一部は、感染した動物から摂取した生肉や体液、ネズミやコウモリとの直接接触、ネズミの排泄物で汚染された物質の吸入や接触、によって感染する。他のものとしては、感染した蚊やダニに刺されることで感染するベクター媒介性疾患(vector-borne diseases)がある。これらの疾患は、無症状から重症化、死亡に至るまで臨床的に多様であり、数時間から数日の間に急速に進行する。承認された特異的な治療法がないことが、疾患の負担と、好ましくない臨床結果の一因となっている。
【0069】
[67]
別の実施形態において、上記の通り、本明細書では、ウイルス性出血熱(VHF)などの、ハンタウイルス科またはハンタウイルスなどのコロナウイルス属に属する韓国熱ウイルス(例えば、ハンタウイルス科(Hantaviridae)またはハンタウイルス(Hantavirus))感染および/または症状発現を予防する方法であって、それを必要とする患者に対して、QPEKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)、ISKRNIQFSCKNIYR(配列番号4)、TFGSVEVHNL(配列番号5)、QTLEA(配列番号6)、およびIQFSC(配列番号7)から選択される、少なくとも1つの外来ペプチドエピトープ、またはその断片もしくは変異体を含む、組換えファージまたはプロバイオティックワクチンを投与することを含む、方法、が提供される。
プロバイオティックワクチンの投与
【0070】
[68]
本発明に係るプロバイオティックワクチンは、任意の適当な送達(delivery)経路により、患者(例えば、がんを有する患者)または実験動物に送達することができる。実施形態によって、生きたプロバイオティック細菌細胞は、発酵乳製品および/またはプロバイオティック強化食品を介して、インビボで送達することができる。例示的な送達される食品(delivery foods)は、プロバイオティック溶液、グミ、錠剤、ヨーグルト、漬けた野菜、発酵した豆のペースト(例えば、テンペ、味噌、テンジャン)、ケフィア、バターミルクもしくはカルネメルク、キムチ、パオツァイ、ザワークラウト、醤油、ザーツァイなどから選択することができる。他の実施形態において、プロバイオティック細菌は、凍結乾燥した細菌を含む錠剤、カプセル、粉末および/またはサシェとしてインビボで送達することができる。
【0071】
[69]
他の実施形態において、本発明に係るプロバイオティックワクチンは、注射、輸液、接種、直接的な外科的投与、またはそれらの任意の組み合わせによって患者に投与することができる。実施形態によって、プロバイオティックワクチンは、ヒトに対しては、三角筋領域または腋窩領域に投与される。例えば、ワクチンは、皮内注射として、腋窩領域に投与される。他の実施形態において、ワクチンは、静脈内投与される。
【0072】
[70]
細胞を投与するための適切な担体は、当業者であれば慣用の技術によって選択することができる。例えば、医薬担体は、緩衝化された生理食塩水、例えば細胞培養培地であってもよく、細胞の生存性を維持するためにDMSOを含むことができる。特定の実施形態において、細胞は、注入可能な凍結保存培地で投与される。細胞を含む組成物は、凍結保護剤としてDMSOおよびヘキサスターチ、ならびにタンパク質成分としてPlasmalyte Aおよび/またはデキストロース溶液、ならびにタンパク質成分としてヒト血清アルブミンを含むことができる。
【0073】
[71]
本明細書に記載の方法を実施するためにがんワクチンとして患者に投与するためのプロバイオティックワクチンの量、そして、そのような投与の最も都合のよい経路は、ワクチン自体の処方と同様に、さまざまな要因に基づく。これらの要因には、患者の物理的な特徴(例えば、年齢、体重、性別)、腫瘍の物理的な特徴(例えば、位置、大きさ、成長速度、接近性)、および他の治療方法(例えば、化学療法、放射線療法)が全体的な処置計画に関連してどの程度実施されているか、などが含まれる。がんまたは感染症を予防または治療的に処置するために本発明の方法を実施する際に考慮すべき要因は多岐にわたるが、哺乳動物、好ましくはヒトは、1回の投与で、約0.05mL~約2mLの溶液(例えば生理食塩水)に含まれる約5×106~約2×108個のプロバイオティックワクチン細胞が投与され得る。他の実施形態では、哺乳動物、好ましくはヒトは、約1×103~約1×1015、1×104~約1×1014、1×105~約1×1013、1×105~約1×1012、1×105~約1x1011、1x105~約1x1010、1x105~約1x109、1x105~約1x108、1x106~約1x1012、1x106~約1x1011、1x106~約1x1010、1x106~約1x109、1x106~約1x108、プロバイオティクスワクチン細胞が、1回の投与で、約0.05mL~約2mLの溶液(例えば、生理食塩水)が投与され得る。
【0074】
[72]
追加の投与は、上記の要因および腫瘍病理の重症度などの他の要因に応じて行うことができる。さらなる実施形態では、約1~約5回の投与について、約1x104/ml、約1x105/ml、約1x106/ml、約1x107/ml、約1x108/ml、約1x109/ml、約1x1010/ml、約1x1011/ml、約1x1012/ml、約1x1013/ml、約1x1014/ml、約1x1015/mlのプロバイオティクスワクチン細胞の約1~約5回の投与が2週間間隔で実施される。一実施形態では、約1x108/mlのプロバイオティクスワクチン細胞の約1回~約5回が2週間間隔で実施される。
併用の処置
【0075】
[73]
本明細書で提供されるプロバイオティックワクチン接種は、他の処置と組み合わせることができる。例えば、本発明に係るプロバイオティックワクチン接種を受ける患者は、直接および/またはプロバイオティックワクチン接種の前に、同時に、または後に、化学療法、免疫腫瘍療法、放射線療法、および/または外科療法を受けることもできる。化学療法は、がんの成長を縮小し、遅らせるために使用される。化学療法は、がんに対する最初の外科手術後に、多数のがんに対して推奨されるが、時には、手術前にがんを縮小するために化学療法が施されることもある。化学療法の処置のサイクル数は、病気の段階によって異なる。化学療法は、ワクチン療法によって生じた抗腫瘍免疫応答を中和する場合がある。さらに、化学療法は、組み合わせが合理的に設計されている限り、免疫療法と安全に組み合わせることができ、おそらくは相加的または相乗的な効果がある。がんを有する患者の処置に使用できる化学療法剤の例には、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、ゲムシタビン、オキサリプラチン、パクリタキセル、タキソール(TAXOL)(登録商標)、トポテカン、およびビノレルビンなどが含まれるが、これらに限定されない。実施形態によって、プロバイオティックワクチン接種を受ける患者は、婦人科のがんまたは腹膜がんに対してすでに化学療法、放射線療法、および/または外科的な処置を受けている。免疫療法(免疫腫瘍学療法)とは、選択された標的、例えばTNF、そして、そのような標的などに対する抗体の産生を誘導することによって免疫応答を生成し、促進し、そして/あるいは調節することを指す。本発明に係るプロバイオティックワクチン(または本発明に係る組換えファージ)と併用して使用する免疫療法には、キイトルーダ(登録商標)(ペンブロリズマブ)、オプジーボ(登録商標)(ニボルマブ)などによる処置が含まれる。
【0076】
[74]
化学療法的な処置に加えて、または、それとは別に、本発明に係るプロバイオティックワクチンを受ける患者は、特定のがんに有益な他の処置で処置することができる。例えば、卵巣がん、卵管がん、または腹膜がんの患者は、本発明に係るプロバイオティックワクチン接種の前に、同時に、または後に、COX-2阻害剤、例えばYuおよびAkasakiのWO2005/037995に記載のようなもので処置することができる。別の実施形態において、本発明に係るプロバイオティックワクチン接種を受ける患者は、プロバイオティックワクチン接種の前に、同時に、またはワクチン接種後に、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))による処置を受けることができる。
【0077】
[75]
本明細書では、本発明に係るプロバイオティックワクチンまたは組換えファージと、前記プロバイオティックワクチンまたは前記組換えファージの投与のための指示書と、を含むキット、も提供される。
【実施例】
【0078】
[76]
以下の実施例は、特許請求の範囲の開示をよりよく説明するために提供されるものであり、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。特定の材料が言及されている範囲において、それは単に説明を目的としたものであり、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。当業者であれば、発明の能力を発揮することなく、また本開示の範囲から逸脱することなく、同等の手段または反応物を開発することができる。
材料および方法
実施例1-HER2エピトープ含有プロバイオティックワクチン:
【0079】
[77]
ここでは、Nissle 1917大腸菌細胞に感染しているM13KEファージ上に機能的に発現されたHER2エピトープを含むバクテリオファージ経口ワクチンが提供される。具体的には、HER2エピトープは、MKE、flおよび/またはM13バクテリオファージのコートタンパク質遺伝子に組み込まれ、HER2に対する免疫学的耐性を克服するワクチン接種が行われる。担体は、アジュバントとして作用し、エピトープの安定性とB細胞提示を改善する。
【0080】
[78]
断片のN末端およびC末端の2つの別個の領域に対する抗体が、増殖阻害作用を示したことが明らかとなった。C末端抗体のエピトープマッピングにより、2つの異なるエピトープ(LPESFDGDPASNTAPLQPEQLQVF)を含む24アミノ酸領域が、効率的な増殖阻害を媒介することが明らかになった。これらの結果は、HER2のドメインIIIのこの領域を標的とする抗体が、周知のモノクローナル抗体であるトラスツズマブおよびペルツズマブとは異なり、生細胞上のHER2に結合し、増殖阻害を示すことを示している。
【0081】
[79]
本明細書で提供される発明の特定の実施形態において、HER2の細胞外ドメインからのP4378-394 B細胞エピトープ(PESFDGDPASNTAPLQPEQLQ)が、繊維状ファージの遺伝子III(すなわち、pIII)に挿入されることで提示された。以前より、前臨床研究において、P4378-394エピトープを単一エピトープまたは多エピトープ製剤として免疫すると、強い抗腫瘍活性を有するHER2特異的IgG抗体が誘導されることが明らかとなっている。さらに、P4378-394エピトープを含む多エピトープワクチンを用いた臨床第I相試験は、ワクチンが、安全で耐容性が高く、HER2に対する免疫学的耐性を克服する効果があることを示した。
【0082】
[80]
-ESFDGDPASNTAPLQPEQL-のアミノ酸配列をコードするmRNA配列は、下記の実施例3に記載するとおり、M13KE-RF I DNAを構築するために、M13KE RF I DNAのpIIIシグナルペプチドとpIIIタンパク質コード配列との間に挿入された。
M13KEベクターの調製
【0083】
[81]
大腸菌 ER2738を対数増殖期にM13KEファージに感染させた。培養後、細菌は、遠心分離により集められ、Axygen MidiPrepプラスミド抽出キットによるプラスミドの抽出のために使用された。M13KE RF I DNAは、さらに精製され、その後、QC用のアガロースゲルにロードされた。
【0084】
[82]
M13KE RF I DNA は、Kpn 1/Eag Iで消化され、その後、アガロースゲル電気泳動で分離された。
M13KE-HER2ファージの構築
【0085】
[83]
HER2エピトープをコードするDNAが合成され、Kpn 1/Eag Iで消化され、M13KE RF I DNAとライゲーションされた。HER2-M13KE RF I DNAのコンストラクトは、大腸菌ER2738のコンピテントセルに形質転換された。回復(resuscitation)後、それらは、対数増殖期の大腸菌ER2738に感染され、IPTG/X-galを含むTOPアガーLBプレート上で32℃で一晩培養された。その結果、M13KE-HER2を大腸菌ER2738に形質転換したプレートには青いスポットが多数見られたが、コントロール群では青いスポットは観察されなかった。いくつかの青いスポットが選択され、配列決定により検証された。その結果、すべてのクローンが、GAATCATTTGACGGAGATCCCGCTAGTAACACCGCGCCGCTGCAGCCGGAGCAGTTGのmRNA配列に対応する正しいコンストラクトを有していることが示された。
ファージの調製
【0086】
[84]
対数増殖期にある大腸菌ER2738は、正しいHER2エピトープ配列が挿入されたM13KEファージに感染された。一晩培養した後、培養上清が採取され、最終濃度10%となるようグリセロールが加えられ、-20℃で保存された。
【0087】
[85]
上記のM13K3-HER2ファージは、雄と確認され、プロバイオティックとして使用されているNissle1917大腸菌に感染するために使用される。このNissle菌に感染し、HER2エピトープを発現するバクテリオファージを有する細菌は、その後、患者が彼又は彼女のがん(例えば、乳がん、膀胱がん、膵臓がん、卵巣がん、および/または胃がん)に対する抗HER2抗体を生成するためのプロバイオティック経口ワクチンとして使用される。上記のエピトープを含むプロバイオティックファージ(例えば、ファージ+大腸菌)が生産される。本明細書では、患者のIgAおよびIgG抗体を生成するために、M113KE-HER2プロバイオティックの経口投与が想定されているが、ファージ単独(プロバイオティック細菌とは別)の注射は、患者のヒトがん細胞上のHER2に対する反応性を有する患者のIgGを生成することができる。
実施例2-CD38エピトープ含有プロバイオティックワクチンの構築:
【0088】
[86]
QPEKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)、ISKRNIQFSCKNIYR(配列番号4)、TFGSVEVHNL(配列番号5)、QTLEA(配列番号6)、および/またはIQFSC(配列番号7)のアミノ酸配列をコードするmRNA配列は、M13KE-RF I DNAを構築するために、M13KE-RF I DNAのpIIIシグナルペプチドとpIIIタンパク質コード配列の間に挿入される。
M13KEベクターの調製
【0089】
[87]
大腸菌 ER2738を対数増殖期にM13KEファージに感染させる。培養後、細菌は、遠心分離により集められ、Axygen MidiPrepプラスミド抽出キットによるプラスミドの抽出のために使用される。M13KE RF I DNAは、さらに精製され、その後、QC用のアガロースゲルにロードされる。
【0090】
[88]
M13KE RF I DNA は、Kpn 1/Eag Iで消化され、その後、アガロースゲル電気泳動で分離される。
M13KE-CD38ファージの構築
【0091】
[89]
CD38エピトープをコードするDNA(QPEKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)、ISKRNIQFSCKNIYR(配列番号4)、TFGSVEVHNL(配列番号5)、QTLEA(配列番号6)、および/またはIQFSC(配列番号7))が合成され、Kpn 1/Eag Iで消化され、M13KE RF I DNAとライゲーションされる。HER2-M13KE RF I DNAのコンストラクトは、大腸菌ER2738コンピテントセルに形質転換される。回復後、それらは、対数増殖期にある大腸菌ER2738に感染され、IPTG/X-galを含むTOPアガーLBプレート上で32℃で一晩培養される。その結果、M13KE-CD38を大腸菌ER2738に形質転換したプレート上に青いスポットが多数現れるが、コントロール群では青いスポットは観察されない。いくつかの青いスポットが選択され、配列決定により検証される。その結果、すべてのクローンが、QPEKVQTLEAWVIHGG(配列番号3)、
ISKRNIQFSCKNIYR(配列番号4)、TFGSVEVHNL(配列番号5)、QTLEA(配列番号6)、および/またはIQFSC(配列番号7)をコードするmRNA配列に対応する正しいコンストラクトを有することが示される。
ファージの調製
【0092】
[90]
対数増殖期にある大腸菌ER2738は、正しいCD38外来ペプチドエピトープが挿入されたM13KEファージに感染される。一晩培養した後、培養上清が採取され、グ最終濃度10%となるようグリセロールが加えられ、-20℃で保存される。
【0093】
[91]
上記のM13K3-CD38ファージは、プロバイオティックとして用いられるNissle 1917大腸菌に感染させるために使用される。このNissle菌に感染し、CD38エピトープを発現するバクテリオファージを有する細菌は、その後、患者が彼又は彼女のがん(例えば、多発性骨髄腫)に対する抗CD38抗体を生成するためのプロバイオティック経口ワクチンとして使用される。上記のエピトープを含むプロバイオティックファージ(例えば、ファージ+大腸菌)が生産される。本明細書では、患者のIgAおよびIgG抗CD38抗体の両方を生成するために、M113KE-CD38プロバイオティックの経口投与が想定されているが、ファージ単独(プロバイオティック細菌とは別)の注射は、患者のヒトがん細胞上のCD38に対する反応性を有するIgGを患者に生成することができる。
実施例3-PD-1/AFP10エピトープ含有プロバイオティックワクチンの構築:
【0094】
[92]
-AFPEDRSQPG-(配列番号8、本明細書では「AFP10」と称される。)のアミノ酸配列をコードするmRNA配列は、M13KE-AFP10 RF I DNAを構築するために、M13KE RF I DNAのpIIIシリンシグナルペプチドとpIIIタンパク質コード配列との間に挿入され、この配列情報を
図1に示す。
M13KEベクターの調製
【0095】
[93]
大腸菌 ER2738を対数増殖期にM13KEファージに感染させた。培養後、細菌は、遠心分離により集められ、Axygen MidiPrepプラスミド抽出キットによるプラスミドの抽出のために使用された。M13KE RF I DNAは、さらに精製され、その後、QC用のアガロースゲルにロードされた。
【0096】
[94]
M13KE RF I DNA は、Kpn 1/Eag Iで消化され、その後、アガロースゲル電気泳動で分離された。
M13KE-AFP10ファージの構築
【0097】
[95]
AFP10エピトープをコードするDNAが合成され、Kpn 1/Eag Iで消化され、M13KE RF I DNAとライゲーションされた。AFP10-M13KE RF I DNAのコンストラクトは、大腸菌ER2738のコンピテントセルに形質転換された。回復(resuscitation)後、それらは、対数増殖期の大腸菌ER2738に感染され、IPTG/X-galを含むTOPアガーLBプレート上で32℃で一晩培養された。その結果、M13KE-AFP10を大腸菌ER2738に形質転換したプレートには青いスポットが多数見られたが、コントロール群では青いスポットは観察されなかった。いくつかの青いスポットが選択され、配列決定により検証された。その結果、すべてのクローンが、正しいmRNA配列に対応する正しいコンストラクトを有していることが示された。
ファージの調製
【0098】
[96]
対数増殖期にある大腸菌ER2738は、正しいAFP10エピトープ配列が挿入されたM13KEファージに感染された。一晩培養した後、培養上清が採取され、グリセロールが最終濃度を10%にするよう加えられ、その後-20°Cで保存された。
【0099】
[97]
上記のM13K3-AFP10ファージは、Nissle 1917大腸菌に感染させるために使用され、そして、プロバイオティックとして使用される。このNissle菌に感染し、AFP10エピトープを発現するバクテリオファージを有する細菌は、
患者のプロバイオティクス経口ワクチンとして、彼又は彼女のがん、例えば胃がん、メラノーマ、非小細胞肺がん(NSCLC)、頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)、尿路上皮がん、非筋肉浸潤性膀胱がん[NMIBC])、結腸がんもしくは直腸がん、食道がんもしくは特定の胃食道接合部(GEJ)がん、子宮頸がん、腎細胞がん(RCC)、進行子宮内膜がん、皮膚扁平上皮がん(cSCC)、および/またはトリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対するPD-1抗体を生成させるために使用される。上記のエピトープを含むプロバイオティックファージ(すなわち、ファージ+大腸菌)が生産される。本明細書では、患者のIgAおよびIgG抗PD-1抗体を生成するために、M113KE-AFP10プロバイオティクスの経口投与が想定されているが、ファージ単独(プロバイオティック細菌とは別)の注射は、患者のヒトがん細胞上のPD-1に対する反応性を有する患者においてIgGを生成することができる。
【0100】
[98]
開示された実施形態に関する上記の説明は、当業者が本発明を作成または使用することを可能にするために提供される。これらの実施形態に対する様々な修正は当業者にとって容易に明らかであり、本明細書に記載された一般的な原則は、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、他の実施形態に適用することができる。したがって、本明細書に提示された説明および図面は、現時点において好ましいとされる発明の実施形態を表しており、したがって、本発明によって広く意図される主題を表していると理解される。さらに、当業者にとって自明となる可能性のある他の実施形態も、本発明の範囲に完全に含まれ、その結果、本発明の範囲は限定されないことが理解される。
【配列表】
【国際調査報告】