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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】ホットメルト接着組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/00 20060101AFI20250220BHJP
   C09J 191/06 20060101ALI20250220BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20250220BHJP
   C09J 153/00 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
C09J123/00
C09J191/06
C09J11/06
C09J153/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024549744
(86)(22)【出願日】2023-02-13
(85)【翻訳文提出日】2024-10-22
(86)【国際出願番号】 IB2023051268
(87)【国際公開番号】W WO2023161761
(87)【国際公開日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】2022/02256
(32)【優先日】2022-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ZA
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518462558
【氏名又は名称】サソル サウス アフリカ リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ピーテル ファン ヘルデン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンネス ペートルス フェルメーレン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン ヘリット-ヤン デ ヨンゲ
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040BA172
4J040DM001
4J040HB07
4J040HB22
4J040JB01
4J040KA26
4J040KA29
4J040LA06
4J040LA08
4J040NA02
4J040NA06
(57)【要約】
【課題】本発明は、ホットメルト接着組成物を製造する方法、ホットメルト接着組成物を含む積層体を製造する方法、ホットメルト接着組成物を使用して製造され、したがってホットメルト接着組成物を含む積層体、衛生用途における積層体の使用、および積層体のための接着剤としてのホットメルト接着組成物の使用に及ぶ。
【解決手段】本発明は、20~70重量%のポリマー、1~15重量%の、炭化水素ワックス、炭化水素ワックスに加えて、アルコール及び/又はカルボン酸、20~70重量%の樹脂、並びに場合により酸化防止剤及び/又は加工油を含む添加剤を含むホットメルト接着組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットメルト接着組成物であって、ホットメルト接着組成物の総質量に基づいて、
20~70重量%のポリマー、
1~15重量%の、炭化水素ワックス、並びに前記炭化水素ワックスに加えて、アルコール及び/又はカルボン酸を含む、添加剤、
20~70重量%の樹脂、並びに
任意に酸化防止剤および/または加工油、
を含む、ホットメルト接着組成物。
【請求項2】
前記ホットメルト接着組成物が、前記ホットメルト接着組成物の総重量に基づいて、30~60重量%の前記ポリマーを含む、請求項1に記載のホットメルト接着組成物。
【請求項3】
前記ホットメルト接着剤が、前記ホットメルト接着組成物の総重量に基づいて、3~15重量%の前記添加剤を含む、請求項1または2に記載のホットメルト接着組成物。
【請求項4】
前記ホットメルト接着組成物が、前記ホットメルト接着組成物の総重量に基づいて、25~67重量%の前記樹脂を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のホットメルト接着組成物。
【請求項5】
ホットメルト接着組成物が、ホットメルト接着組成物の総重量に基づいて、0~5重量%の前記酸化防止剤、好ましくは0.1~2重量%の前記酸化防止剤を含む、請求項1に記載のホットメルト接着組成物。
【請求項6】
加工油を含み、前記ホットメルト接着組成物が、ホットメルト接着組成物の総重量に基づいて、0~15重量%の加工油、好ましくは5~15重量%の加工油を含む、請求項1に記載のホットメルト接着組成物。
【請求項7】
前記ポリマーが、非晶質ポリ-α-オレフィン(APAO)コポリマー、オレフィンホモポリマー、およびオレフィンブロックコポリマーを含む群から選択されるポリオレフィンポリマーであり、好ましくはエチレン-プロピレンコポリマー、およびエチレン-ブテンコポリマーを含む群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載のホットメルト接着組成物。
【請求項8】
前記ポリオレフィンポリマーが、以下の特性:
ASTM D 3236に従って測定して、1500~20000 mPa・s、好ましくは1500~7570 mPa・sである、190℃でのブルックフィールド粘度;
ASTM E 28に準拠して測定して、90℃~130℃のリングアンドボール軟化点;及び
0.8~0.9g/cmの密度;
のうちの1又は複数を有する、請求項7に記載のホットメルト接着組成物。
【請求項9】
前記添加剤が、前記添加剤の重量に基づいて、99~30重量%の前記炭化水素ワックス、及び-
1~70重量%の前記アルコール、又は
1~70重量%の前記カルボン酸、又は
1~70重量%の前記アルコールとカルボン酸との組み合わせ、
を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のホットメルト接着組成物。
【請求項10】
前記炭化水素ワックスが、約65℃~約115℃の範囲、好ましくは約80℃~約108℃の範囲の凝固点を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のホットメルト接着組成物。
【請求項11】
前記炭化水素ワックスが、以下の特性:
ASTM D 3236に準拠して測定して、20mPa・s未満の、135℃におけるブルックフィールド粘度;
ASTM D 1321に準拠して測定して、10 1/10mm未満の、25℃における貫通度;及び
ASTM D 721に従って測定して、1wt%未満の、油含量、
の1つ以上を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のホットメルト接着組成物。
【請求項12】
前記炭化水素ワックスが、フィッシャー-トロプシュワックスである、請求項1~11のいずれか一項に記載のホットメルト接着組成物。
【請求項13】
前記アルコールが、C9~C32アルコール、好ましくはC16~C32アルコールであり、前記カルボン酸が、C11~C32カルボン酸、好ましくはC18~C22カルボン酸である、請求項1~12のいずれか一項に記載のホットメルト接着組成物。
【請求項14】
前記動的機械分析におけるせん断タンデルタ(G´´/G´)が、60℃~100℃の範囲、好ましくは65℃~85℃の範囲で1に等しい、請求項1~12のいずれか一項に記載のホットメルト接着組成物。
【請求項15】
前記ホットメルト接着組成物が、160℃以下の温度、好ましくは100℃~160℃の範囲の温度、より好ましくは125℃~145℃の範囲の温度で噴霧可能である、請求項1~14のいずれか一項に記載のホットメルト接着組成物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のホットメルト接着組成物の製造方法であって、
ポリマー、添加剤、樹脂、および場合により加工油および/または酸化防止剤を、溶融状態で、それらが均質になるまで加熱ミキサー中で互いに混合し、それによって溶融したホットメルト接着組成物を製造すること、並びに
溶融した前記ホットメルト接着組成物をペレット化し、それによってホットメルト接着剤ペレットを製造すること、
を含む、製造方法。
【請求項17】
積層体を製造する方法であって、
第1の層と第2の層を提供すること、
前記第1の層および/または前記第2の層を、請求項1~15のいずれか一項に記載のホットメルト接着組成物でコーティングすること、
前記第1の層および第2の層を、第1の層および/または第2の層上にコーティングされたホットメルト接着組成物が第1の層と第2の層との間に位置するように配置すること、
前記第1の層と第2の層とを一緒に押圧し、それによって積層体を製造すること、
を含む方法。
【請求項18】
前記第1の層が不織布層またはポリマー層であり、前記第2の層が不織布層またはポリマー層であり、前記第1の層および/または前記第2の層がポリマー層である場合には、前記ポリマー層が、ポリエチレンポリマー層、ポリプロピレンポリマー層、またはこれらの組み合わせである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記コーティングが、噴霧コーティングの手段によって行われ、より好ましくは、スパイラルコーティングの手段によって、前記第1の層および/または前記第2の層上の前記ホットメルト接着組成物のコーティングがスパイラル噴霧パターンであるように行われる、請求項17または請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記噴霧コーティングが、160℃以下の温度、好ましくは100℃~160℃の範囲の温度、より好ましくは125℃~145℃の範囲の温度で行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記噴霧コーティングが、1~4g/mのコーティング重量で、好ましくは2g/mのコーティング重量で、前記第1の層および/または前記第2の層に適用される、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記噴霧コーティングが、0.005~0.05MPaのノズル空気圧力で適用される、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の層と前記第2の層とを一緒に押圧することが、前記第1の層と前記第2の層とを2つのローラの間に送り込み、それによってこれらの層を一緒に押圧することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
請求項1~15のいずれか一項に記載のホットメルト接着組成物を用いて製造され、したがって当該ホットメルト接着組成物を含む、積層体。
【請求項25】
前記積層体が、少なくとも1つの不織布層、好ましくは少なくとも1つの不織布層および1つのポリマー層を含み、前記ポリマー層がポリエチレンポリマー層である、請求項24に記載の積層。
【請求項26】
衛生用途、包装用途、および/またはマットレス製造における、請求項24または請求項25に記載の積層体の使用。
【請求項27】
請求項1~15のいずれか一項に記載のホットメルト接着組成物の、積層体用接着剤としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、接着組成物に関する。特に、本発明は、ホットメルト接着剤(HMA)組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
ワックスは、ホットメルト接着配合物中の添加剤として使用されることが知られており、この場合、ワックスは、典型的には核形成剤、希釈剤、または粘度低下剤として機能する。ホットメルト接着配合物中にワックスを使用する目的は、とりわけ、硬化時間を改善すること(すなわち、速い硬化時間がホットメルト接着剤にとって典型的に好ましいため、硬化時間を短縮すること)および基材間の結合の強度を増加させることである。基材間の結合の強度は、「T-剥離」強度によって測定されることが多い。
【0003】
核形成剤として、ワックスは、HMA中のポリマー材料の破断点伸びを改善する。希釈剤として、ワックスは接着配合物の濡れ性を促進し、(溶融)粘度を低減し、これは、コストの低減および接着剤の適用速度の制御を可能にする。粘度の低下による柔軟性の向上と濡れ性の向上の観点から、HMAのワックス含有量は決定的である。
【0004】
ワックスは、一般に、40℃を超える降下融点を有し、わずかな圧力下で研磨可能であり、20℃で混練可能であるかまたは脆く、透明から不透明であり、分解せずに、40℃超で溶融し、典型的には、50~90℃の間で溶融し、例外的な場合では200℃までの温度で溶融し、ペーストまたはゲルを形成し、熱および電気の伝導性が乏しい化学組成物として定義される。
【0005】
ワックスは、例えば、それらの由来などの様々な基準に従って分類することができる。ここで、ワックスは、2つの主要な群、すなわち天然ワックスおよび合成ワックスに分けることができる。天然ワックスは化石ワックス(例えば、石油ワックス)および非化石ワックス(例えば、動物ワックスおよび植物ワックス)にさらに分けることができる。石油ワックスは、マクロ結晶性ワックス(パラフィンワックス)とマイクロ結晶性ワックス(マイクロワックス)とに分けられる。合成ワックスは部分合成ワックス(例えば、アミドワックス)および完全合成ワックス(例えば、ポリオレフィンワックスおよびフィッシャー-トロプシュワックス)に分けることができる。
【0006】
パラフィンワックスは、石油源に由来する。それらは、透明で、無臭であり、食品接触のために精製することができる。それらは、ある範囲の(主として)n-アルカンおよびイソ-アルカンならびにいくつかのシクロ-アルカンを含有する。原料または粗パラフィンワックス(スラックワックス)は、多数の短鎖アルカン(「油」)を有し、これらは精製されたときに除去される。異なる分布および品質のパラフィンワックスを得ることができる。精製は、脱油、蒸留、及び水素化を含むことができる。
【0007】
合成ガス(COおよびH)からアルカンへの触媒フィッシャー・トロプシュ合成から生じる合成フィッシャー・トロプシュワックスまたは炭化水素は主にn-アルカン、少数の分枝状アルカンを含有し、基本的にシクロアルカンまたは不純物、例えば硫黄または窒素を含有しない。代わりに、オレフィンおよび酸素化物(すなわち、アルコール、エステル、ケトンおよび/またはアルデヒドなどの酸化炭化水素)の数は、より多く、石油系ワックスとは異なり得る。
【0008】
フィッシャー・トロプシュワックスは、一般に低融点(凝固点20~45℃)、中融点(凝固点45~70℃)、及び高融点(凝固点70~110℃)に分類されうる。
【0009】
合成ワックスの別の供給源は、オレフィンモノマーのオリゴマー化または重合、場合によってはその後の水素添加から得られる生成物である。
【0010】
炭化水素ワックスは、主に炭化水素を含む天然または合成ワックスである。炭化水素は、炭素および水素原子からなる分子である。特に明記しない限り、「n-」または「直鎖状」は直鎖状および脂肪族を指し、「i-」、「イソ-」または「分枝状」は、分枝状および脂肪族を指す。
【0011】
国際公開第2017/0130094号は、長鎖分岐アルコールとポリプロピレンとの混合物を調製する工程と、前記混合物をポリプロピレンの融点に達するまで加熱し、完全に流動性にする工程と、得られた溶融混合物を押出しする工程と、押出しされた混合物を切断して均一なサイズの顆粒(ペレット)を得る工程とを含む、顆粒化(ペレット化)可塑剤配合物の調製方法に関する。このようにして得られた配合物、この配合物を用いてポリ(乳酸)を可塑化する方法、およびこのようにして得られた可塑化ポリ(乳酸)モノフィラメントまたはフィルムも開示される。
【0012】
国際公開第2020/049454号は、高いT-剥離強度を示し、したがって、コーティング重量の低減、したがって、使用されるホットメルト接着剤の量の低減を可能にする、炭化水素ワックスを含むホットメルト接着配合物に関する。
【0013】
CN104762032Aは、高温および低温に耐えることができ、脂肪または油に耐性があるホットメルト接着剤を開示している。脂肪族アルコールは、前記ホットメルト接着剤の製造における潤滑剤として開示されている。
【0014】
EP632077A2およびWO1996/015170A1は、ポリイソシアネート反応マレエート化ポリオレフィンを含む湿気硬化性ホットメルト接着組成物に関する。例として、50個の炭素原子を有する直鎖炭化水素アルコールとしてのNOVA Guerbetアルコール20i(商標)ヒドロキシル官能性ポリオレフィン(NOVA Molecular Technologies, Inc.)またはUnilin(商標)700(Petrolite Corp.)が、HMAの一部として開示されている。
【0015】
EP2640791B1は、(a)ポリマー成分と、(b)ワックスと、(c)鋳型剤とを含むホットメルト接着組成物に関する。鋳型剤は糖もしくは糖アルコール誘導体であるか、またはAr-Ll-X-L2-Rの構造を有し、式中、Xは糖もしくは糖アルコールであり;Arが置換もしくは非置換のアリール含有官能基であり;RがH、アルキル、アルケニル、ヒドロキシル、アルコキシおよびアルキル-ハロゲン化物、または置換もしくは非置換のアリール含有官能基であり;LIおよびL2は独立して、アセタールまたはエーテル官能基である。
【0016】
DE10048923A1は、ホットメルト接着剤ペレット上のワックスフィルムコーティングの形成における糖アルコールの使用を開示している。
【0017】
US10793754B2は衛生用品のための非晶質ワックスを含むスチレン-イソプレンブロックコポリマーHMAに関し、ここで、ワックスは、カルボン酸またはカルボン酸無水物によって変性され得る。
【0018】
ホットメルト接着剤を特徴付けるための適切な試験は、動的機械分析(DMAと略記される)である。これは、材料、特にポリマーの粘弾性挙動を試験および特徴付けるために使用される技術である。正弦波応力が印加され、材料中の歪みが測定され、貯蔵弾性率を決定することができる。試料の温度または応力の頻度はしばしば変化し、貯蔵弾性率の変化をもたらす;このアプローチは材料のガラス転移温度(Tg)を特定するために、ならびに他の分子運動に対応する転移を特定するために使用され得る。
【0019】
純粋な弾性材料では、応力および歪みは、一方の応答が他方の応答と同時に生じるように、同相で生じる。純粋な粘性材料では、応力と歪みとの間に位相差があり、歪みは90度(π/2ラジアン)の位相遅れで応力に遅れる。粘弾性材料は純粘性材料と純弾性材料との間のどこかの挙動を示し、歪みにおけるいくらかの位相遅れを示す。
【0020】
粘弾性材料における応力及び歪みは、以下の式を用いて表すことができる:
歪み:ε=εsin(ωt)、
応力:σ=σsin(ωt+δ)、
ここで、ω=2πfであり、fは歪み振動の周波数、tは時間、δは応力と歪みの位相遅れである。
【0021】
粘弾性材料における引張貯蔵弾性率および損失弾性率は、弾性部分を表す貯蔵エネルギー、および粘性部分を表す熱として消散されるエネルギーを測定する。
引張貯蔵弾性率及び損失弾性率は以下のように定義される:
貯蔵:E´=(σ/ε)cosδ
損失:E´´=(σ/ε)sinδ
【0022】
同様に、せん断貯蔵およびせん断損失係数G´およびG´´が定義される。G´は変形から回復するかまたはエネルギーを保持するための材料の安定性を反映し、したがって、それは、材料の剛性/弾性の指標である。「G´´」は、材料がエネルギーを放散する能力を反映する。
【0023】
粘弾性材料における損失弾性率と貯蔵弾性率との間の比は、材料における減衰の尺度を提供するtanδ(タンデルタ)として定義される。タンデルタはまた、貯蔵弾性率と損失弾性率との間の位相角の接線としてベクトル空間において可視化することができる。
引張:tanδ=E´´/E´
せん断:tanδ=G´´/G´
【0024】
例えば、1より大きいタンデルタを有する材料は1より小さいタンデルタを有する材料よりも多くの減衰を示す、すなわち、材料は弾性よりも粘性が高い。1より大きいタンデルタを有する材料がより多くの減衰を示す理由は材料のロス弾性率が貯蔵弾性率よりも大きいためであり、これは、複素弾性率の成分であるエネルギー消散粘性成分が材料の挙動を支配することを意味する。tanデルタが1に等しい交差点は、材料が加熱されるか冷却されるかに応じて、材料が流れ始める温度、または結晶化/ゲル化が起こり始める温度を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
従来のホットメルト接着剤は、少なくとも衛生用途において、噴霧温度、噴霧ウィンドウ、または柔軟性要件を同時に満たすことができない。
【0026】
したがって、改善された柔軟性(すなわち、低い脆性または硬度)、増加した噴霧ウィンドウ、および低下した噴霧温度を有するが、速い硬化時間および許容可能なT-剥離強度も有するホットメルト接着組成物を提供する必要性が残っている。そのようなホットメルト接着組成物は例えば、衛生用途のために、積層体(ラミネート)、例えば、限定されるものではないが、不織布層、ポリエチレン層、および/またはポリプロピレン層を含む層の様々な組み合わせを含む積層体を製造するのに特に有用であるが、包装用途、マットレス製造などでの使用にも適している。
【課題を解決するための手段】
【0027】
発明の概要
ホットメルト接着組成物
本発明によれば、ホットメルト接着組成物が提供され、ホットメルト接着組成物は、ホットメルト接着組成物の総重量に基づいて:
20~70重量%のポリマー;
1~15重量%の炭化水素ワックス、並びに炭化水素ワックスに加えて、アルコール及び/又はカルボン酸を含む添加剤;
20~70重量%の樹脂;
および場合により酸化防止剤および/または加工油(加工オイル)
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0028】
なお、本明細書において、「wt%」とは、「重量パーセンテージ」の短縮形である。
【0029】
したがって、添加剤は、炭化水素ワックスに加えて、
アルコール、または
カルボン酸、または
アルコールおよびカルボン酸
を含んでもよいことが理解されよう。
【0030】
好ましくは、ホットメルト接着組成物が、ホットメルト接着組成物の総重量に基づいて、すなわち、ポリマー、添加剤、樹脂、および含まれる場合に酸化防止剤および/または加工油の総重量に基づいて、30~60重量%のポリマーを含む。
【0031】
好ましくは、ホットメルト接着剤が、ホットメルト接着組成物の総重量に基づいて、3~15重量%の添加剤を含む。例えば、ホットメルト接着剤は、ホットメルト接着組成物の総重量に基づいて、10%の添加剤から15%の添加剤、例えば10%の添加剤または15%の添加剤を含むことができる。
【0032】
好ましくは、ホットメルト接着組成物が、ホットメルト接着組成物の総重量に基づいて、25~67重量%の樹脂を含む。
【0033】
ホットメルト接着組成物は、酸化防止剤を含んでもよい。そのような場合、ホットメルト接着組成物は、ホットメルト接着組成物の総重量に基づいて、0~5重量%の酸化防止剤、好ましくは0. 1~2重量%の酸化防止剤を含み得る。
【0034】
ホットメルト接着組成物は、加工油(加工オイル)を含んでもよい。そのような場合、ホットメルト接着組成物は、ホットメルト接着組成物の総重量に基づいて、0~15重量%の加工油、好ましくは5~15重量%の加工油を含み得る。
【0035】
ポリマーは、ポリオレフィンポリマーであってもよい。
【0036】
ポリオレフィンポリマーは、非晶質ポリ-α-オレフィン(APAO)コポリマー、オレフィンホモポリマー、およびオレフィンブロックコポリマーを含む群から選択され得る。好ましくは、ポリオレフィンポリマーがエチレン-プロピレンコポリマー、およびエチレン-ブテンコポリマーを含む群から選択される。
【0037】
ポリオレフィンポリマーは、単一のポリオレフィンポリマー、またはポリオレフィンポリマーの混合物であってもよい。
【0038】
ポリオレフィンポリマーは、1500~20000mPa・s、好ましくは1500~7570mPasの、ASTM D 3236に従って測定される190℃でのブルックフィールド粘度を有し得る。
【0039】
ポリオレフィンポリマーは、ASTM E 28に従って測定される90℃~130℃のリングアンドボール軟化点を有し得る。
【0040】
ポリオレフィンポリマーは、0.8~0.9g/cmの密度を有し得る。
【0041】
添加剤は、添加剤の重量に基づいて、
99~30重量%の炭化水素ワックス、および-
1~70重量%のアルコール、または
1~70重量%のカルボン酸;または
1~70重量%のアルコールとカルボン酸との組み合わせ
を含むことができる。
【0042】
好ましくは、添加剤が、添加剤の重量に基づいて、
99~40重量%の炭化水素ワックス、及び-
1~60重量%のアルコール、または
1~60重量%のカルボン酸、または
1~60重量%のアルコールとカルボン酸との組み合わせ
を含む。
【0043】
炭化水素ワックスは、約65℃~約115℃の範囲の凝固点を有し得る。
【0044】
好ましくは、炭化水素ワックスが約80℃~約108℃の範囲の凝固点を有する。
【0045】
炭化水素ワックスは、ASTM D 3236に従って測定される135℃におけるブルックフィールド粘度が20 mPa・s未満であってもよい。
【0046】
炭化水素ワックスは、ASTM D 1321に従って測定された25℃で10 1/10mm未満の浸透度を有し得る。
【0047】
炭化水素ワックスは、ASTM D 721に従って測定された油含量(オイル含量)が1重量%未満であってもよい。
【0048】
炭化水素ワックスは、水素化処理された炭化水素ワックスまたは水素化処理されていない炭化水素ワックスであってよい。
【0049】
炭化水素ワックスは、フィッシャー-トロプシュワックスであってもよい。
【0050】
したがって、炭化水素ワックスは、水素化処理されたフィッシャー-トロプシュワックスまたは水素化処理されていないフィッシャー-トロプシュワックスであってよい。
【0051】
本発明の好ましい実施形態では、炭化水素ワックスが、Sasol South Africa Limited(50 Katherine Street, Sandton, 南アフリカ)の部門であるSasol ChemicalsからSERATIONの商品名で市販されているフィッシャー・トロプシュワックスの1種以上である。
【0052】
フィッシャー-トロプシュワックスは、フィッシャー-トロプシュ合成によって得られる。本発明の文脈において、そのようなワックスは、合成ガス(主にCOおよびH)からアルカンへのコバルトまたは鉄触媒フィッシャー・トロプシュ合成に由来する炭化水素であってもよい。この合成の粗生成物(シンクルード)は、典型的には例えば蒸留によって、別々の液体画分および固体画分に分画される。フィッシャー・トロプシュ合成から得られる炭化水素は主に直鎖アルカン、少数の分枝状アルカンを含有し、基本的にシクロアルカンまたは不純物、例えば硫黄または窒素を含有しない。
【0053】
フィッシャー・トロプシュワックスはメチレン単位からなり、それらの炭素鎖長分布は、関与する特定の炭素原子鎖長に対する分子の数が均等に増減することを特徴とする一実施形態による。これは、例えば、フィッシャー-トロプシュワックスのガスクロマトグラフィー分析において見ることができる。
【0054】
フィッシャー・トロプシュワックスは、10~25重量%の分枝炭化水素の含有量を有し得る。フィッシャー・トロプシュワックスの分岐炭化水素は、メチル分岐を有する10重量%超、より好ましくは25重量%超の炭化水素を含有することができる。フィッシャー・トロプシュワックスの分岐炭化水素は、第四級炭素原子を含有しなくてもよい。第四級炭素原子の不在は例えば、フィッシャー・トロプシュワックスのNMR測定において見ることができる。
【0055】
アルコールは、C9~C32アルコールであってよい。好ましくは、アルコールはC16~C32アルコールである。
【0056】
アルコールは、直鎖アルコール、分岐アルコール、またはそれらの混合物であってもよい。
【0057】
直鎖アルコールは、直鎖第一級アルコールであってもよい。分岐アルコールは、分岐第一級アルコールであってもよい。
【0058】
分岐アルコールは、ゲルベアルコールであってよい。
【0059】
本発明の一実施形態では、アルコールが主にC16およびC18直鎖第一級アルコールの混合物である。
【0060】
カルボン酸は、C11~C32カルボン酸、好ましくはC18~C22カルボン酸であってよい。
【0061】
カルボン酸は、直鎖カルボン酸、分岐カルボン酸、またはそれらの混合物であってもよい。
【0062】
カルボン酸は、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、またはそれらの混合物であってもよい。
【0063】
好ましくは、カルボン酸がC18~C32直鎖飽和カルボン酸である。
【0064】
樹脂は粘着付与剤であってよい。
【0065】
粘着付与剤は、芳香族、脂肪族および脂環式炭化水素樹脂、混合芳香族および脂肪族変性炭化水素樹脂、芳香族変性脂肪族炭化水素樹脂、およびそれらの水素化バージョン;テルペン、変性テルペンおよびそれらの水素化バージョン;天然樹脂、変性樹脂、樹脂エステル、およびそれらの水素化バージョン;低分子量ポリ乳酸;ならびにそれらの組み合わせを含む群から選択され得る。
【0066】
加工油(加工オイル)は、ミネラル油、ナフテン油、パラフィン油、芳香族油、ヒマシ油、菜種油、トリグリセリド油、またはそれらの組み合わせを含む群から選択され得る。当業者が理解するように、加工油は、接着剤に一般的に使用されるエキステンダー油を含むこともできる。
【0067】
ホットメルト接着組成物が加工油を含む場合、加工油は典型的にはホットメルト接着剤のレオロジーを改変し、さらなる柔軟性を付与する。
【0068】
加工油は、加工油が表面に移動して油状残留物を残す傾向があるので、全てのホットメルト接着組成物に適しているわけではない。典型的には、本発明の接着組成物を使用して製造された積層体を含む物品または製品の適用がその上の油性残留物の存在によって悪影響を受け得る場合には適していない。これは、接着組成物が例えば、食品、医療機器、繊細な包装、または衛生製品と直接接触し得る用途に特に関連し得る。そのような物品または製品の表面への加工油の移動は、製品の品質および/または安全性に悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、衛生製品において、油性残留物は、望ましくない皮膚刺激を引き起こし得る。
【0069】
本明細書において、「衛生製品」および「衛生用途」という用語は例えば体液を収集または管理するための衛生目的のために、人体に適用され、使用され、または着用され、したがって人体と接触して使用される物品に関する製品または用途を意味する。例えば、そのような物品は制限されないが、おむつ、成人用失禁装置、女性用衛生物品、例えば、吸収性パッド、創傷被覆材、ベッドパッド、工業用パッド、および生理用ナプキンを含み得る。
【0070】
上述のホットメルト接着組成物は、積層体(ラミネート)の製造における使用に適していてもよい。積層体とは、例えば、単層および基材または2つ以上の層などの様々な組合せの材料を含む層状構造を意味しており、例えば、不織布層、ポリエチレンポリマー層、および/またはポリプロピレンポリマー層を含むシート材料が挙げられるが、これらに限定されず、これらの層の少なくともいくつかは接着組成物の手段によって互いに接着される。
【0071】
上述のホットメルト接着組成物は、衛生用途、包装用途、マットレス製造などのための積層体を製造する際に使用するのに好適であり得る。
【0072】
好ましくは、上記のホットメルト接着組成物が衛生用途のための積層体の製造における使用に適している。
【0073】
ホットメルト接着組成物は、動的機械分析において、60℃~100℃の範囲、好ましくは65℃~85℃の範囲で1に等しいせん断タンデルタ(G´´/G´)を有し得る。
【0074】
ホットメルト接着組成物は、160℃以下の温度、好ましくは100℃~160℃の範囲の温度、より好ましくは125℃~145℃の範囲の温度で噴霧可能であり得る。
【0075】
本発明に係る、炭化水素ワックス、ならびにアルコールおよび/またはカルボン酸を含むポリマー、樹脂、および添加剤の選択は、積層体を製造する際に使用するための優れたホットメルト接着剤を提供し、優れた低温噴霧性、高い剥離強度、速い硬化時間、および優れた柔軟性を有する。
【0076】
本発明の好ましい一実施形態では、ホットメルト接着組成物は:
30~60重量%のプロピレン-エチレン系非晶質ポリオレフィンポリマー;
5~10重量%の、炭化水素ワックスおよびアルコールを含む、より好ましくは本質的にそれらからなる添加剤;
30~60重量%の樹脂、および
0~2重量%の酸化防止剤;
ここで、添加剤は、20~60重量%のアルコールおよび80~40重量%の炭化水素ワックスを含む。
【0077】
プロピレン-エチレン系非晶質ポリオレフィンポリマーは例えば、商品名AERAFIN 35で市販されているポリマーであってよい。
【0078】
樹脂、酸化防止剤、および炭化水素ワックスは、上記のとおりであり得る。
【0079】
好ましくは、アルコールが主にC16およびC18第一級直鎖アルコールの混合物であるか、またはアルコールは分岐アルコールである。
【0080】
アルコールが分岐アルコールである場合、好ましくは、分岐アルコールは、ゲルベアルコール、より好ましくはC32ゲルベアルコールである。
【0081】
本発明の別の好ましい実施形態では、ホットメルト接着組成物は:
30~60重量%のプロピレン系オレフィンポリマー;
5~10重量%の、炭化水素ワックスおよびアルコールを含む、より好ましくは本質的にそれらからなる添加剤;
30~60重量%の樹脂、および
0~2重量%の酸化防止剤;
ここで、添加剤は、20~60重量%のアルコールおよび80~40重量%の炭化水素ワックスを含む。
【0082】
プロピレン系オレフィンポリマーは例えば、AERAFIN 17の商品名で市販されているポリマーであってよい。
【0083】
樹脂、酸化防止剤、および炭化水素ワックスは、上記のとおりであり得る。
【0084】
好ましくは、アルコールは分岐アルコールであるか、またはアルコールは主にC16およびC18第一級直鎖アルコールの混合物である。アルコールが分岐アルコールである場合、好ましくは、分岐アルコールはゲルベアルコール、より好ましくはC32ゲルベアルコールである。
【0085】
本発明の別の好ましい実施形態では、ホットメルト接着組成物は:
30~60重量%のアイソタクチックプロピレン系ポリマー;
5~10重量%の、炭化水素ワックスおよびカルボン酸を含む、より好ましくは本質的にそれらからなる添加剤;
30~60重量%の樹脂、および
0~2重量%の酸化防止剤;
ここで、添加剤は、30~60重量%のカルボン酸と70~40重量%の炭化水素ワックスとを含む。
【0086】
アイソタクチックプロピレン系ポリマーは例えば、商品名VISTAMAXXで市販されているポリマーであってよい。
【0087】
樹脂、酸化防止剤、および炭化水素ワックスは、上記のとおりであり得る。
【0088】
好ましくは、カルボン酸はC18カルボン酸である。
【0089】
本発明の別の好ましい実施形態では、添加剤が、添加剤の重量に基づいて、30~50重量%の直鎖アルコールおよび/または直鎖カルボン酸、および70~50重量%の炭化水素ワックス、より好ましくは40重量%の直鎖アルコールおよび/または直鎖カルボン酸、および60重量%の炭化水素ワックスを含む。
【0090】
ポリマー、樹脂、酸化防止剤、および炭化水素ワックスは、上記の通りであり得る。
【0091】
直鎖アルコールおよび/または直鎖カルボン酸は、さらに上記のとおりであり得る。
【0092】
本発明の別の好ましい実施形態では、添加剤が、添加剤の重量に基づいて、10~30重量%の分岐アルコールおよび/または分岐カルボン酸と、90~70重量%の炭化水素ワックスと、より好ましくは20重量%の分岐アルコールおよび/または分岐カルボン酸と、80重量%の炭化水素ワックスとを含む。
【0093】
ポリマー、樹脂、酸化防止剤、および炭化水素ワックスは、上記の通りであり得る。
【0094】
分岐アルコールおよび分岐カルボン酸は、さらに上記のとおりであり得る。
【0095】
本発明の別の態様によれば、ホットメルト接着組成物が提供され、ホットメルト接着組成物は:
20~70重量%のポリマー;
1~15重量%のアルコールから本質的になる添加剤;
20~70重量%の樹脂;および
場合により酸化防止剤および/または加工油
を含む。
【0096】
ポリマー、アルコール、樹脂、酸化防止剤、および加工油は、上記のとおりであり得る。
【0097】
ホットメルト接着組成物の製造方法
発明の別の態様によれば、上記のホットメルト接着組成物を製造する方法が提供され、この方法は:
溶融状態で、ポリマー、添加剤、樹脂、および場合により加工油および/または酸化防止剤を、加熱したミキサー中でそれらが均質になるまで互いに混合し、それによって溶融ホットメルト接着組成物を製造すること;並びに、
溶融ホットメルト接着組成物をペレット化し、それによってホットメルト接着剤ペレットを製造すること
を含む。
【0098】
ポリマー、添加剤、樹脂、加工油、および酸化防止剤は、上記の通りであり得る。
【0099】
溶融ホットメルト接着剤のペレット化は当該技術分野で公知の任意の好適な手段、例えば、ストランドペレット化、水中ペレット化、または噴霧ペレット化によって達成することができる。
【0100】
積層体の製造方法
発明の別の態様によれば、積層体を製造する方法が提供され、この方法は:
第1の層および第2の層を提供すること;
第1の層および/または第2の層を上述のホットメルト接着組成物でコーティングすること;第1の層および第2の層を、第1の層および/または第2の層上のホットメルト接着組成物のコーティングが第1の層と第2の層との間に配置されるように配置すること、並びに、
第1の層および第2の層を一緒に押圧し、それによって積層体を製造すること
を含む。
【0101】
本明細書では、「層」という用語は、厚みを有する材料、例えば材料のシート、を意味すると解釈され得る。
【0102】
第1の層は、不織布層またはポリマー層であってもよい。第2の層は、不織布層またはポリマー層であってもよい。
【0103】
ポリマー層は、ポリエチレンポリマー層、ポリプロピレンポリマー層、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0104】
第1の層および/または第2の層が不織布層である場合、積層体は、不織布積層体として知られ得る。
【0105】
コーティングは、噴霧コーティング(スプレーコーティング)、ダイスロットコーティング、または他の好適な塗布手段によって実施することができる。好ましくは、コーティングが、噴霧コーティングの手段によって、より好ましくはスパイラル噴霧コーティングの手段によって、第1の層および/または第2の層上のホットメルト接着組成物のコーティングがスパイラル噴霧パターンとなるように適用される。
【0106】
噴霧コーティングは、160℃以下の温度で、好ましくは100℃~160℃の範囲の温度で、より好ましくは125℃~145℃の範囲の温度で行うことができる。
【0107】
噴霧コーティングは、1~4g/mのコーティング重量で、好ましくは2g/mのコーティング重量で、第1の層および/または第2の層に適用され得る。
【0108】
噴霧コーティングは、0.005~0.05MPaのノズル空気圧力で適用することができる。
【0109】
第1の層および第2の層を一緒に押圧することは、第1の層および第2の層を2つのローラの間に供給すること、したがって、層を一緒に押圧すること、を含み得る。ローラは、空気圧ローラであってもよい。
【0110】
本方法は、冷却および貯蔵のために、積層体をロールに巻き取ることをさらに含むことができる。
【0111】
本方法の好ましい実施形態では、第1の層は不織布層であり、第2の層はポリマー層であり、その結果、不織布積層体が製造される。好ましくは、ポリマー層は、ポリエチレンポリマー層である。
【0112】
積層体及びその使用
本発明の別の態様によれば、上述のホットメルト接着組成物を使用して製造され、したがって上述のホットメルト接着組成物を含む積層体が提供され、この積層体は、随意に、積層体を製造するための本発明の方法に従って任意に製造された積層体である。
【0113】
積層体は、少なくとも1つの不織布層を含むことができる。好ましくは、積層体が少なくとも1つの不織布層および1つのポリマー層を含む。すなわち、積層体は、不織布積層体である。
【0114】
好ましくは、ポリマー層はポリエチレンポリマー層である。
【0115】
積層体は、以下に記載される柔軟性方法に従って測定される1400N/m以下の柔軟性を有してよい。
【0116】
積層体は、衛生用途、包装用途、および/またはマットレス製造に使用することができる。
【0117】
したがって、本発明の別の態様によれば、衛生用途、包装用途、および/またはマットレス製造における、2つ以上の層または材料を一緒に接着する際の、上記の積層体の使用が提供される。
【0118】
好ましくは、積層体は衛生用途に使用される。
【0119】
ホットメルト接着剤の使用
発明のさらなる態様によれば、積層のための接着剤としての、上記のホットメルト接着組成物の使用が提供される。
【0120】
測定方法
以下の方法を実施例に適用し、適用可能な場合、本発明の組成物の成分および本発明の組成物を特徴付けるのに適用した。
【0121】
全ての凝固点はASTM D 938に従って測定され、ポリマーの全てのリングアンドボール軟化点はASTM E 28に従って測定された。
【0122】
190℃でのポリマーのブルックフィールド粘度、140℃および160℃でのホットメルト接着組成物、ならびに135℃での炭化水素ワックスについて、ASTM D 3236に従って、#27紡錘を用いて、ブルックフィールドDV-II+ Pro Extra粘度計を用いて、Thermosel(商標)を用いて測定した。
【0123】
15mPa・s未満の炭化水素ワックスの粘度は、ASTM D 445に従って測定した。
【0124】
25℃での炭化水素ワックスの貫通度(針入度)は、ASTM D 1321に従って測定し、ポリマーの貫通度は、ASTM D5またはASTM D 2240(デュロメータ硬度)に従って測定した。
【0125】
ポリマーのガラス転移点(Tg)は、ASTM D 3418に従って測定した。
【0126】
炭化水素ワックスの油含量は、ASTM D 721に従って測定した。
【0127】
炭化水素ワックスのモル質量(数平均)およびイソアルカン含有量は、欧州ワックス連盟のEWF法001/03に従ってガスクロマトグラフィーによって測定した。
【0128】
ホットメルト接着組成物のT-剥離強度(「T-剥離」)は、ASTM D 1876に従って測定した。調製した試料を、1時間後に、Instron 3366-B16875を使用して、それらのT-剥離強度について試験した。各試料のT-剥離強度は、それぞれ25mm×250mmの5つのストリップを調製することによって決定した。試料ストリップを、100 Nロードセルを用いて300mm/分の速度で引き離して、g/インチでのT剥離結果を得た。
【0129】
柔軟性方法
試料の柔軟性を、Instron 3366-B16875を用いて、以下のように、柔軟性方法に従って試験した:各試料をシリコンモールド上にキャストして、厚さ3mmの10mm×50mmの試料を調製した。試料を圧縮し、10kNロードセルを用いて10mm/分の速度で4mm戻し、曲げ弾性率を決定した。接着剤サンプル上の小さな厚さの偏差は、3mm厚のステーブのそれに適合するように力値を補正することによって対処された。曲げ弾性率の力定数を用いて柔軟性を評価した。各接着組成物の4つの試験片を試験し、柔軟性の平均値(N/m)を、4つの試験片すべてにわたって決定した。
【0130】
損失面積は、負荷が加えられたときの曲げ弾性率曲線と、負荷が除去された後の曲げ弾性率曲線との間の面積である。この面積が小さいほど、試料は、変形後に元の位置に戻る傾向がある。この面積が大きいほど、試料は変形後に元の位置に戻る傾向が小さくなる。したがって、試料の弾性として知られるこの能力は、変形に抵抗する試料の能力の指標である。損失面積(%)は、大きい方の面積の割合として、2つの曲げ弾性率面積間の面積の差として計算される。
【0131】
四分位範囲(IQR)を使用して、ホットメルト接着組成物の噴霧性を評価した。噴霧性因子は、IQR/T-剥離によって決定した。実験を通して、0.45未満の噴霧性因子は、T-剥離が30を超える場合、一貫した噴霧パターンをもたらすことが見出された。
【0132】
噴霧ウィンドウは、接着剤の堅牢性の指標であり、これは、実質的に、接着剤が、最小限のT-剥離分布および最小限のIQR/T-剥離(噴霧可能性係数)で噴霧可能である温度範囲である。
【0133】
本明細書の目的のために、以下の定義が適用される:
(i)最低噴霧温度は、ホットメルト接着組成物が0.45以下の噴霧性因子で噴霧可能である最低温度である;
(ii)最大噴霧温度は、ホットメルト接着組成物が0.45以下の噴霧性因子で噴霧可能である最高温度である;
(iii)噴霧ウィンドウは、最大噴霧温度と最小噴霧温度との差である;
(iv)最適な噴霧温度は、ホットメルト接着組成物がその最低の噴霧性因子で噴霧可能である温度である。
【0134】
G´&G´´は、DMA平行プレート法に従って決定された。測定は、Paar MCR 502 レオメーター(H-PTD 200 hood、P-PTD 200 lower plate)を用いて行った。25mm平行平板測定系を用い、振幅ひずみ0.015%、周波数10Hz、冷却速度2℃/分で、120℃~-30℃で試料を測定した。試料厚さは2mmであった。G´&G´´クロスオーバーポイント(交差点)は、G´&G´´の値を同じ軸上にグラフでプロットし(G´&G´´トレンドを重ね合わせて)、G´&G´´のトレンドが互いに交差する点を測定することにより求めた。
【実施例
【0135】
実施例
ホットメルト接着組成物(HMA)に使用される各種市販のポリマーの公的に入手可能な物理的特性データを表1aおよび1bに示す。
【0136】
L-MODU S410は、ポリプロピレンホモポリマーであり、Vistamaxx 8380はランダムエチレン分布を有するアイソタクチックプロピレン反復単位から主に構成され、Koattro PB M 1500Mは高エチレン含有量を有する1-ブテンのランダムコポリマーであり、Solutack 6810はエチレン1-オクテンコポリマーであり、Aerafin 17およびAerafin 35はプロピレン系オレフィンポリマーであり、Rextac RT 2788はブテン-1およびプロピレンのコポリマーに基づく非晶質ポリαオレフィン系ポリマーであり、Infuse 9807はオレフィンブロックコポリマーである。
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】
【0139】
HMA組成物に使用される炭化水素ワックスは、SasolからSERATION 1820の商品名で市販されているフィッシャー・トロプシュワックスであった。SERATION 1820炭化水素ワックスの物理特性データを表2に示す。
【0140】
【表3】
【0141】
市販のポリマー(表1)を、以下を含む様々な本発明のHMA組成物に配合した:
(i)ポリマー
(ii)粘着付与剤としての粘着性付与樹脂
(iii)炭化水素ワックスおよびアルコールまたはカルボン酸のいずれかを含む添加剤
(iv)抗酸化剤
(v)任意で、加工油。
【0142】
同様に、市販のポリマー(表1)を、以下を含む各種比較HMA組成物に配合した:
(i)ポリマー
(ii)粘着付与剤としての粘着付与樹脂
(iii)炭化水素ワックス単独またはアルコール単独を含む添加剤;および
(iv)抗酸化剤
(v)任意で、加工油。
【0143】
HMA組成物は全て、150℃の温度で剪断混合容器を使用して調製した。
【0144】
HMA組成物に使用される粘着付与樹脂は、Eastmanから市販されているRegalite R1090であった。
【0145】
HMA組成物において使用される抗酸化剤は、BASFから市販されているIrganox 1010であった。酸化防止剤をホットメルト接着配合物に添加して、より高い処理温度でのそれらの安定性を改善した;なぜならば、より高い処理温度が配合物中のいくつかのポリマーおよび他の成分の分解を引き起こし、時間の経過に伴う接着剤性能の低下をもたらすからである。したがって、官能基ホットメルト接着剤を配合する際に酸化防止剤は必要ではないが、高温変性を軽減するために酸化防止剤を含めることが一般的に行われている。
【0146】
使用した加工油(加工オイル)は、Nynas ABから市販されている水素化処理された高精製の高粘度ナフテン油であるNYFLEX 3100であった。
【0147】
種々の直鎖および分枝鎖アルコールならびに直鎖および分枝鎖カルボン酸をHMA組成物に使用した。
【0148】
ISOCARB 12は、Sasolから市販されているC12ゲルベ酸(2-ブチル-オクタン酸)である。ISOCARB 12は、Sasolからも市販されている対応するC12 GuerbetアルコールISOFOL12(2-ブチル-1-オクタノール)に由来する。
【0149】
ステアリン酸は、IUPAC名オクタデカン酸を有するC18カルボン酸である。
【0150】
エルカ酸は、シス-13-ドコセン酸としても知られるC22モノ不飽和オメガ-9カルボン酸である。
【0151】
ISOCARB 24は、Sasolから市販されているC24ゲルベ酸(2-デシル-テトラデカン酸)である。ISOCARB 24は、対応するC24ゲルベトアルコールISOFOL24に由来する。
【0152】
NAFOL 1618Hは、Sasolから市販されているC16~C18直鎖第一級アルコールの混合物である。
【0153】
ALFOL20+は、Sasolから市販されている、偶数の炭素鎖長を有するC20+直鎖第一級アルコールのブレンドである。
【0154】
ISOFOL 32は、Sasolから市販されているC32 Guerbetアルコール(2-テトラデシル-1-オクタデカノール)である。
【0155】
各ポリマーのHMA組成物を表3a~3hに示す。
【0156】
【表4】
【0157】
【表5】
【0158】
【表6】
【0159】
【表7】
【0160】
【表8】
【0161】
【表9】
【0162】
【表10】
【0163】
【表11】
【0164】
結果
各HMA組成物について評価した:
(i)噴霧ウィンドウ、最小噴霧温度、および最適噴霧温度;
(ii)T剥離強度(1時間、24時間、2週間);
(iii)柔軟性(力定数)、及び
(iv)G´&G´´クロスオーバーポイント(交差点)。
【0165】
各ホットメルト接着組成物の評価の結果を表4に示す。
【0166】
【表12-1】
【表12-2】
【0167】
炭化水素ワックスは有効な核形成剤として作用し、したがって、ホットメルト接着組成物の結晶部分を増加させる。結晶化度の増大は急速に起こり、コーティング後の最初の1時間以内に得られる。炭化水素ワックスを含むホットメルト接着組成物で観察される強度の蓄積があるが、比較例によって示されるように、この増加した強度に関連する剛性は、特に衛生またはパーソナルケア用途では、望ましくない。
【0168】
本発明のホットメルト接着組成物中の炭化水素ワックス、ならびにアルコールおよび/またはカルボン酸を含む添加剤は、結晶化度破壊剤として作用し、本発明の実施例に示されるように、接着強度を犠牲にすることなく、同時に速い硬化時間を維持しながら、より剛性が低く、より柔軟性のホットメルト接着組成物をもたらす。
【0169】
全体として、結果は、本発明のホットメルト接着組成物がロバストな組成物であることを示す。特に、結果は、本発明のホットメルト接着組成物が比較組成物と比較して、噴霧ウィンドウの増大、最適噴霧温度の低下、速い硬化時間、および大幅に改善された柔軟性の1つ以上を示すことを実証する。T-剥離強度は、1時間以内に得られる最適な接着強度で、経時的に高く安定である。
【0170】
したがって、本発明によるホットメルト接着組成物は配合の自由度を高め、衛生およびパーソナルケアなどの用途での使用によく適しているが、包装およびマットレス製造などの用途にも適している。
【国際調査報告】