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特表2025-505858岩石及びコンクリート処理機器で使用する液圧衝撃機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】岩石及びコンクリート処理機器で使用する液圧衝撃機構
(51)【国際特許分類】
   B25D 9/12 20060101AFI20250220BHJP
   B25D 9/14 20060101ALI20250220BHJP
   E21B 1/38 20060101ALI20250220BHJP
【FI】
B25D9/12
B25D9/14
E21B1/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024550193
(86)(22)【出願日】2023-02-22
(85)【翻訳文提出日】2024-08-21
(86)【国際出願番号】 EP2023054470
(87)【国際公開番号】W WO2023161297
(87)【国際公開日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】22158567.2
(32)【優先日】2022-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524313406
【氏名又は名称】ティ-リグ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】カルボンネル アラン
【テーマコード(参考)】
2D058
2D129
【Fターム(参考)】
2D058AA12
2D058CA03
2D058CB03
2D058CC25
2D129AA04
2D129BA09
2D129DB01
(57)【要約】
本発明は、岩石又はコンクリート又はその両方を処理する工具に接続するための弁無し液圧衝撃機構を提供し、排出チャネルの開口部の位置は、往復動式打撃ピストンの一部分によって開閉されるようにシリンダボアに沿って配置され、第1駆動室に通じる接続チャネルの開口部の位置は、往復動式打撃ピストンの一部分によって開閉されるようにシリンダボアに沿って配置され、第2駆動室に通じる接続チャネルの開口部の位置は、往復動式アキュムレータピストンの一部分によって開閉されるように第1シリンダボア又は第2シリンダボアに配置され、結果として、第1シリンダボア内で運動中の打撃ピストンと、第1シリンダボア内、又は存在する場合に第2シリンダボア内にあるアキュムレータピストンとの助けを借りて、少なくとも第2駆動室は、往復ピストン運動を維持するために周期的な交番圧力を取得し、往復動式の打撃ピストン及びアキュムレータピストンは、打撃ピストンの第1折返し点に関連する排出チャネルの開口部と、打撃ピストンの第2折返し点に関連する接続チャネルの開口部との間の距離に沿って、第2駆動室に存在する駆動媒体の供給又は排出のために第2駆動室を閉じた状態に保持し、打撃ピストンの第1折返し点に関連する排出チャネルの開口部と打撃ピストンの第2折返し点に関連する接続チャネルの開口部との間の距離に沿った打撃ピストンの運動は、アキュムレータ区画の容積の圧縮中に行われ、アキュムレータ区画の容積の大きさは、チャネル開口部間の距離に沿って第2駆動室内の圧力の緩やかな変化を獲得するように適合され、打撃ピストン及びアキュムレータピストンは、機構の運転中に直接接触しないように流体連通しているだけである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩石又はコンクリート又はその両方を処理する工具に接続するための弁無し液圧衝撃機構であって、前記弁無し液圧衝撃機構は、
主シリンダボアと、前記機構の運転中に駆動媒体を収容するチャネルとを備える機械ハウジングと、
運転中に前記主シリンダボア内で変位し、前記機械ハウジングに対して往復運動を繰り返し実行して前記機構に接続可能な工具に衝撃を与えることができるように、前記主シリンダボア内に取り付けられた打撃ピストンと、
を備え、
前記打撃ピストンは、駆動部、第1駆動面、及び第2駆動面を備え、前記第2駆動面は前記第1駆動面よりも大きく、前記打撃ピストンの前記駆動部は、前記打撃ピストンと前記機械ハウジングとの間に形成された第2駆動室から第1駆動室を分離して、前記第1駆動面が前記第1室に隣接し、前記第2駆動面が前記第2駆動室に隣接するようにし、前記駆動室は、運転中に加圧駆動媒体を収容するように配置されており、
前記チャネルは、前記第1駆動室に圧力を供給する供給チャネルと、前記第1駆動室を前記第2駆動室に接続する接続チャネルと、前記第2駆動室を排出圧力に接続する排出チャネルとを備え、
前記機構はアキュムレータをさらに備え、前記機械ハウジングは、随意的に、前記主シリンダボアと流体連通する追加シリンダボアをさらに備え、前記アキュムレータは、内部に取り付けられたアキュムレータピストンを収容して、前記アキュムレータピストンが前記主シリンダボア内、又は存在する場合に前記追加シリンダボア内のいずれかで変位できるようにし、前記アキュムレータはさらに、加圧ガス又はばね又は金属蛇腹を収容するアキュムレータ区画を備え、
前記打撃ピストン及び前記アキュムレータピストンは、前記機構の運転中に直接接触しないように流体連通しているだけであり、
前記第2駆動室は、前記打撃ピストンと前記アキュムレータピストンとの間に形成され、
前記アキュムレータピストンは、前記機構の運転中、前記第2駆動室内の前記駆動媒体を前記アキュムレータ区画から分離するように構成され、前記アキュムレータ区画の容積は、前記アキュムレータピストンの前記往復運動の結果として、運転中の前記衝撃機構の振動数と共に変化し、
前記排出チャネルの開口部の位置は、前記往復動式打撃ピストンの一部分によって開閉されるよう前記主シリンダボアに沿って配置され、前記第1駆動室に通じる前記接続チャネルの開口部の位置は、前記往復動式打撃ピストンの一部分によって開閉されるように前記主シリンダボアに沿って配置され、前記第2駆動室に通じる前記接続チャネルの開口部の位置は、前記往復動式アキュムレータピストンの一部分によって開閉されるように前記主シリンダボア又は前記追加シリンダボアに配置され、結果として、前記主シリンダボア内で運動中の前記打撃ピストンと、前記主シリンダボア又は前記追加シリンダボア内にある前記アキュムレータピストンとの助けを借りて、少なくとも前記第2駆動室は、前記往復ピストン運動を維持するために周期的な交番圧力を取得するようになっており、
前記機構の運転中、前記往復動式の打撃ピストン及びアキュムレータピストンは、前記打撃ピストンの第1折返し点に関連する前記排水チャネルの前記開口部と、前記打撃ピストンの第2折返し点に関連する前記接続チャネルの前記開口部との間の距離に沿って、前記第2駆動室に存在する駆動媒体の供給又は排出のために前記第2駆動室を閉じた状態に保持し、
前記打撃ピストンの前記第1折返し点に関連する前記排出チャネルの前記開口部と前記打撃ピストンの前記第2折返し点に関連する前記接続チャネルの前記開口部との間の前記距離に沿った前記打撃ピストンの前記運動は、前記アキュムレータ区画の前記容積の圧縮中に行われ、前記アキュムレータ区画の前記容積の大きさは、前記チャネル開口部の間の前記距離に沿って前記第2駆動室内の圧力の緩やかな変化を獲得するように適合されている、弁無し液圧衝撃機構。
【請求項2】
前記アキュムレータピストンは、前記アキュムレータ区画に隣接する第1駆動面と、前記第2駆動室に隣接する第2駆動面とを有し、前記打撃ピストンは、前記第2駆動室から続く前記排出チャネルの前記打撃ピストンによる前記閉鎖と、前記第2駆動室内の前記接続チャネルの前記アキュムレータピストンによる前記開口部との間の距離d1を移動し、前記アキュムレータピストンは、前記第2駆動室内の前記排出チャネルの前記打撃ピストンによる前記閉鎖と、前記第2駆動室に通じる前記接続チャネルの前記アキュムレータピストンによる前記開口部との間の距離d2を移動し、d2は、d1と、ピストンの第2駆動面と前記アキュムレータピストンの第2駆動面との比との積に比例する、請求項1に記載の弁無し液圧衝撃機構。
【請求項3】
前記打撃ピストンには前記排出チャネルと連通する内部チャネルが設けられ、プロセス流体を用いてボーリング穴からプロセス削り屑を洗い流すことができる、請求項1又は2に記載の弁無し液圧衝撃機構。
【請求項4】
前記チャネルは全て、前記主シリンダボア内に開口し、前記アキュムレータは、前記主シリンダボア内で同心状に設置され、内部に取り付けられたアキュムレータピストンを収容し、前記アキュムレータピストンは、前記主シリンダボア内で変位できるようになっている、請求項1から3のいずれかに記載の弁無し液圧衝撃機構。
【請求項5】
前記接続チャネルの一端は、前記主シリンダボア内に開口し、他端は、前記追加シリンダボア内に開口しており、前記アキュムレータは、前記追加シリンダボア内で同心状に設置され、内部に取り付けられたアキュムレータピストンを収容して、前記アキュムレータピストンは、前記追加シリンダボア内で変位できるようになっている、請求項1から3のいずれかに記載の弁無し液圧衝撃機構。
【請求項6】
前記アキュムレータは、前記アキュムレータピストンの前記折返し点の前で前記アキュムレータピストンの制動を促進するための減衰室をさらに備え、好ましくは、前記アキュムレータピストンと前記減衰室は、前記アキュムレータピストンが前記減衰室に入った時に、それらの間に幅0.5mm未満の隙間が生じるように構成され、前記隙間が前記減衰室と前記第2駆動室又は前記アキュムレータ区画との隙間シールを構成する、請求項1から5のいずれかに記載の弁無し液圧衝撃機構。
【請求項7】
前記アキュムレータは、液圧側に少なくとも1つのシールと、ガス側又は蛇腹側に少なくとも1つのシールとを備える、請求項1から6のいずれかに記載の弁無し液圧衝撃機構。
【請求項8】
前記アキュムレータは、液圧側に少なくとも1つのシールと、ガス側又は蛇腹側に少なくとも1つのシールとを備えており、前記アキュムレータを収容する前記シリンダボアは、前記シール要素を取り付けるために少なくとも2つの溝を備え、特に好ましくは、前記アキュムレータが、駆動媒体を排出するために前記2つのシール要素間で前記シリンダボア内に開口するチャネルを備える、請求項1から6のいずれかに記載の弁無し液圧衝撃機構。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の弁無し液圧衝撃機構を備える削岩機。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の弁無し液圧衝撃機構を備える液圧ブレーカ。
【請求項11】
請求項1から8のいずれかに記載の弁無し液圧衝撃機構を備えるインホール削岩機。
【請求項12】
請求項9に記載の削岩機、請求項10に記載の液圧ブレーカ又は請求項11に記載のインホール掘削機を備えるキャリアであって、位置合わせ手段、位置決め手段、及び前記処理された岩石又はコンクリートの要素に対して前記削岩機又は前記液圧ブレーカを送り込む手段のうちの1又は2以上をさらに備えるキャリア。
【請求項13】
請求項9に記載の削岩機を備える削岩リグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に岩石及びコンクリートを処理するための機器で使用する弁無し液圧衝撃機構、並びにそのような液圧機構を備えた掘削及びハンマ打撃機器に関する。
【背景技術】
【0002】
岩石処理には、硬い岩石に入り込むための相当なエネルギと、作業現場において繰り返しハンマで打ちつけるための高頻度衝撃との両方を必要とする。
【0003】
通常、液圧衝撃機構が使用され、その場合、圧力が衝撃ピストンを前方に駆動し、ピストンはその運動エネルギを応力波としてドリルビット又は他の工具に伝達し、ドリルビット又は他の工具がこの衝撃エネルギを用いて岩石を粉砕する。機械ハウジング内のシリンダボア内のハンマピストンの往復運動は、ピストンを交番圧力に曝すことによって実現される。交番圧力は、ほとんどの場合、別個のゲート付き切換弁を介して得られ、シリンダボア内でのピストン位置によって制御され、そのピストンの位置は、ハンマピストンとシリンダボアとの間に形成された2つの駆動室の内の少なくとも一方と交互に結合し、機械ハウジング内の加圧駆動流体を伴うラインと結合し、続いて機械ハウジング内の駆動流体用排出ラインと結合する。
【0004】
また、弁無し機構としても知られるゲート弁無し衝撃機構の製造が40年以上前から公知である。弁無し衝撃機構のピストンは、別個の切換弁を備えるのではなく、シリンダボア内での運動中に加圧駆動流体の供給及び排出を開閉することによって切換弁の機能も果たし、これにより、ハンマピストンの駆動部で隔てられた2つの駆動室のうちの少なくとも一方に、上記のような交番圧力が提供される。
【0005】
これが機能するために必要とされる条件の1つは、室の加圧及び排出用に機械ハウジング内に配置されたチャネルが、ピストンの往復運動のどの位置でも供給チャネルと排出チャネルとの間に短絡接続が直接生じないような態様で開口部が分離されるように、シリンダボア内に開口することである。
【0006】
供給チャネルと排出チャネルの接続は、通常、駆動部とシリンダボアの間に形成される隙間シールを介してのみ存在する。そうでない場合、有用な機能を果たすことなく、駆動流体は高圧ポンプから排出口に直接進むことが許されるので、大きな損失が生じることになる。駆動室の排出用チャネルが閉じられた瞬間から、同じ駆動室の加圧用チャネルが開かれるまで、ピストンがその運動を持続できるようにするためには、ピストン運動の結果として駆動室内の圧力を徐々に変化させることが必要である。これは、国際公開第2012/138287号に開示される機構によって行うことができ、その場合、少なくとも1つの駆動室の容積は、ゲート弁型の従来の衝撃機構に関して標準的な容積と比べて増大する。通常使用される液圧流体は圧縮性が低いため、容積を大きくする必要がある。
【0007】
2つの駆動室を備えた弁無し衝撃機構は、米国特許第4282937号に記載されており、この場合、圧力が両方の室で交互に起こる。両方の駆動室は、シリンダボアに近接する容積と常時接続しているため、大きな有効容積を有する。
【0008】
ソ連特許第1068591(A)号には、別の原理による、つまり、上部駆動室内で圧力が交互に起こり、工具の接続部に最も接近する駆動室である下部駆動室内で圧力が一定となる弁無し液圧衝撃機構が教示されている。この場合、圧力が交互に起こる上部駆動室は、圧力が一定である下部駆動室よりもかなり大きい容積を有する。
【0009】
システム圧力と排出圧力(つまりほぼ大気圧)の間で圧力が連続的に交互に起こる大型駆動室に関する問題の1つは、金属疲労の結果として機械ハウジング自体に亀裂が生じやすいことである。これを回避するために、現在までは中間壁を備えた肉厚で複雑な鋳物の設計が必要とされ、その結果としてコストと重量が増大することになった。
【0010】
国際公開第2012/030272号に開示される弁無し衝撃機構は、第1シリンダボアが2つの駆動室及びピストンガスアキュムレータに加えてハンマピストンを備える構成を提案しており、ガスアキュムレータは第2シリンダボアを備える。この機構により、駆動室の容積を小さくすることができる。
【0011】
公知の弁無し衝撃機構の主な問題は、システム圧力が接続された時にピストンが自己振動を始めるのではなく平衡位置を取る傾向にあるため、その不安定性とピストンの自己振動を開始させる難しさである。このような問題を解決するには、国際公開第2012/138288号に記載される始動弁などの外部システムを追加する必要がある。
【0012】
ソ連特許第1068591(A)号、国際公開第2012/030272号、及び国際公開第2012/138287号の各々において、サイクルが開始できるようにするために、ピストンは特定の位置にある必要があり、さもなければピストンは平衡状態で動かなくなる。つまり、ピストンが最初にアキュムレータ側に向かって押し込まれた場合、相互接続チャネル開口のレベルではピストンが平衡状態に留まるので、サイクルは適切に始まることができない。これによりシステムに不安定性がもたらされ、システムは使用するには不適当となる。このようなシステムでは、工具に対するピストンの跳ね返りにより、システムが平衡位置で動かないままとなる可能性もある。
【0013】
もう1つの問題は、下向きピストン移動の大部分で駆動室に接続する圧力チャネルが閉じていることで、圧力が急速に失われる可能性があり、二次シリンダボア(複数可)内に配置されたガスアキュムレータの複雑な構成を用いてピストンのバランスを取る必要が生じてコストが高くなり、機構の重量及び信頼性に悪影響を与えることになる。これらの機構はピストンに十分な加速度を与えないため、十分な衝撃エネルギを生成せず、従ってピストン衝撃時の速度が不十分となる。
【0014】
公知の弁付き及び弁無しの衝撃機構に関するさらに別の問題は、これらが排出圧力に敏感なことである。つまり、排出圧力が大幅に変化した場合、アキュムレータ圧力を特定の排出圧力値に適合させる必要があるため、従来の衝撃機構は機能しなくなる。そのため、このような機構は、排出圧力が変わりやすい状況、例えば水柱に起因して排出圧力が深さと共に増加する深層掘削での運転には不適切なものとなる。
【0015】
特開昭57-8091号は、ピストンがシリンダ内で運動中に加圧駆動流体の供給及び排出を開閉することによって切換弁のように機能し、これにより、ピストンで隔てられた2つの室の一方に交番圧力を提供する液圧打撃デバイスに関する。2つの室を接続するポートは、ピストンで機械的に押し込まれる弁によって開かれる。この機構に関する問題の1つは、ピストンが弁に衝突する間の運動量及び運動エネルギの伝達に起因する不安定な動作である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2012/138287号
【特許文献2】米国特許第4282937号
【特許文献3】ソ連特許第1068591(A)号
【特許文献4】国際公開第2012/030272号
【特許文献5】国際公開第2012/138288号
【特許文献6】特開昭57-8091号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
それゆえ、本発明の目的は、上記の欠点を軽減する又は少なくとも適切な代替手段を提供する、弁無し液圧衝撃機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、岩石又はコンクリート又はその両方を処理するための機器で使用される弁無し液圧衝撃機構に関する。本発明による機構は、より安価で、より軽量で、より高性能であり、変わりやすい排出圧力で機能することができ、同時にピストンのどの位置からでもピストンの自己振動を開始させることができる。これは、独立請求項に記載された手段で達成される。さらなる有利な実施形態は、従属請求項に記載される。
【0019】
従って、本発明の第1態様では、岩石又はコンクリート又はその両方を処理する工具に接続するための弁無し液圧衝撃機構を提供し、この弁無し液圧衝撃機構は、
第1シリンダボアと、機構の運転中に駆動媒体を収容するチャネルとを備える機械ハウジングと、
運転中に第1シリンダボア内で変位し、機械ハウジングに対して往復運動を繰り返し実行して機構に接続可能な工具に衝撃を与えることができるように、第1シリンダボア内に取り付けられた打撃ピストンと、を備え、
打撃ピストンは、駆動部、第1駆動面、及び第2駆動面を備え、第2駆動面は第1駆動面よりも大きく、打撃ピストンの駆動部は、打撃ピストンと機械ハウジングとの間に形成された第2駆動室から第1駆動室を分離して、第1駆動面が第1室に隣接し、第2駆動面が第2駆動室に隣接するようにし、駆動室は、運転中に加圧駆動媒体を収容するように配置されており、
チャネルは、第1駆動室に圧力を供給する供給チャネルと、第1駆動室を第2駆動室に接続する接続チャネルと、第2駆動室を排出圧力に接続する排出チャネルとを備え、
機構はアキュムレータをさらに備え、機械ハウジングは、随意的に、第1シリンダボアと流体連通する第2シリンダボアとをさらに備え、アキュムレータは、内部に取り付けられたアキュムレータピストンを収容して、アキュムレータピストンが第1のシリンダボア内、又は存在する場合に第2シリンダボア内のいずれかで変位できるようにし、アキュムレータはさらに、加圧ガス又はばね又は金属蛇腹を収容するアキュムレータ区画を備え、
打撃ピストン及びアキュムレータピストンは、機構の運転中に直接接触しないように流体連通しているだけであり、
第2駆動室は、打撃ピストンとアキュムレータピストンとの間に形成され、
アキュムレータピストンは、機構の運転中、第2駆動室内の駆動媒体をアキュムレータ区画から分離するように構成され、アキュムレータ区画の容積は、アキュムレータピストンの往復運動の結果として、運転中の衝撃機構の振動数と共に変化し、
排出チャネルの開口部の位置は、往復動式打撃ピストンの一部分によって開閉されるように第1シリンダボアに沿って配置され、第1駆動室に通じる接続チャネルの開口部の位置は、往復動式打撃ピストンの一部分によって開閉されるように第1シリンダボアに沿って配置され、第2駆動室に通じる接続チャネルの開口部の位置は、往復動式アキュムレータピストンの一部分によって開閉されるように第1シリンダボア又は第2シリンダボアに配置され、結果として、第1シリンダボア内で運動中の打撃ピストンと、第1シリンダボア内、又は存在する場合に第2シリンダボア内にあるアキュムレータピストンとの助けを借りて、少なくとも第2駆動室は、往復ピストン運動を維持するために周期的な交番圧力を取得するようになっており、
機構の運転中、往復動式の打撃ピストン及びアキュムレータピストンは、打撃ピストンの第1折返し点に関連する排出チャネルの開口部と、打撃ピストンの第2折返し点に関連する接続チャネルの開口部との間の距離に沿って、第2駆動室に存在する駆動媒体の供給又は排出のために第2駆動室を閉じた状態に保持し、
打撃ピストンの第1折返し点に関連する排出チャネルの開口部と打撃ピストンの第2折返し点に関連する接続チャネルの開口部との間の距離に沿った打撃ピストンの運動は、アキュムレータ区画の容積の圧縮中に行われ、アキュムレータ区画の容積の大きさは、チャネル開口部の間の距離に沿って第2駆動室内の圧力の緩やかな変化を獲得するように適合されている。
【0020】
衝撃機構の使用中、打撃ピストンは工具に直接的に又は間接的に衝撃を与える。しかしながら、打撃ピストンはどの段階でもアキュムレータピストンに衝突しない。代わりに、打撃ピストンとアキュムレータピストンは、流体連通しているだけである。打撃ピストンが第2折返し点に向かって移動する間、第1及び第2の駆動室内の流体が圧縮可能ではないため、第2駆動室に通じる両チャネルが閉じている場合に、アキュムレータピストンは打撃ピストンの動きに追従する。
【0021】
打撃ピストンが第2折返しに向かって移動すると、打撃ピストンは第2駆動室から続く排出チャネルを閉じる。アキュムレータピストンは、打撃ピストンが排出チャネルを閉じる前に元の位置に戻る。
【0022】
排出チャネルを閉じた後、打撃ピストンは第2折返し点に向かってその移動を継続し、第1駆動室に通じる接続チャネルを開く。このように、接続チャネルは第1駆動室内の打撃ピストンによって一端が開かれ、続いて第2駆動室内のアキュムレータピストンによって他端が開かれる。
【0023】
アキュムレータピストンは、打撃ピストンが第1折返し点へ戻る間、接続チャネルを開いた状態に保つ、つまり、第2駆動室への駆動媒体の供給が持続し、打撃ピストンは第1折返し点まで加速して戻ることができる。
【0024】
打撃ピストンが第1折返し点から第2折返し点に移動する時、アキュムレータピストンは第2駆動室の容積を一定に保つ。
【0025】
打撃ピストンは、第2駆動室から続く排出チャネルの打撃ピストンによる閉鎖と、第2駆動室内の接続チャネルのアキュムレータピストンによる開口部との間の距離d1を移動する。
【0026】
アキュムレータピストンは、第2駆動室内の排出チャネルの打撃ピストンによる閉鎖と、第2駆動室に通じる接続チャネルのアキュムレータピストンによる開口部との間の距離d2を移動する。
【0027】
距離d1は、d2以上であることが好ましい。
【0028】
好ましくは、アキュムレータピストンは、アキュムレータ区画に隣接する第1駆動面と、第2駆動室に隣接する第2駆動面とを有する。この実施形態では、距離d2は、d1と、打撃ピストンの第1駆動面とアキュムレータピストンの第2駆動面との比との積に比例する。
【0029】
サイクルが開始できるようにし、ピストンが平衡状態で動かなくなるのを回避するためにピストンが特定の位置にあることを必要とする先行技術の機構とは対照的に、本発明の衝撃機構のサイクルは、打撃ピストンがどのような初期位置にあっても常に開始する。
【0030】
存在する場合、第2シリンダボアは第1シリンダボアと流体連通している。第1シリンダボアは主シリンダボアとも呼ばれ、第2シリンダボアは追加シリンダボアと呼ばれる。ボア間の流体連通により、第1シリンダボアに対する第2シリンダボアの位置には制約がない。例えば、第2シリンダボアは、第1シリンダボアと同心である必要はなく、それに対してどのような角度を成してもよい。
【0031】
チャネルの配置によりサイクルの順序が条件付けられ、供給チャネルと排出チャネルの直接的な短絡が回避される。好ましい実施形態では、全てのチャネルが第1シリンダボア内に開口する。代わりに、第2シリンダボアを有する実施形態では、接続チャネルの一端が第1シリンダボア内に開口し、他端は第2シリンダボア内に開口する。
【0032】
供給/排出間の短絡は、打撃ピストンとシリンダボアとの小さな隙間を介して発生するに過ぎない。良好な効率を達成するためには、この隙間のサイズは0.5mm未満であることが好ましい。しかしながら、これは限定とは見なされず、他のサイズの隙間も本発明の範囲内である。
【0033】
駆動室の排出用チャネルが閉じられた瞬間から、同じ駆動室の加圧用チャネルが開かれるまで、打撃ピストンがその運動を持続できるようにするため、ピストン運動の結果として駆動室内の圧力は徐々に変化する。
【0034】
打撃ピストンに作用する力は、打撃ピストンの第1駆動面に加わる第1室内の圧力から、打撃ピストンの第2駆動面に加わる第2駆動室内の圧力を引いたものに等しい。機構が機能するためには、第2駆動面S2は第1駆動面S1よりも大きい必要がある。
【0035】
打撃ピストンに作用する力は駆動室内の圧力に応じて正又は負になり、打撃ピストンはそれに応じて第1又は第2の折返し点に移動する。打撃ピストンの運動方向の変化は、合力がゼロの時、すなわち、第1駆動室内の圧力が、第2室内の圧力に第2駆動面対第1駆動面の表面比を掛けた値に等しい時に達成される。合力が方向を変える時に打撃ピストンの加速度は正又は負になって、速度には徐々に影響を与えるという事実により、打撃ピストンの運動方向の変化は即時には生じない。
【0036】
第2駆動室内の急速な圧力変化により、接続チャネルが開かれる前に運動方向が逆転し、平衡状態のシステム、つまり不安定なサイクル又はサイクルの欠如に至ることになる。
【0037】
第2駆動室が加圧されると、すなわち接続チャネルが完全に開かれると、アキュムレータピストンは、第2駆動室とアキュムレータとの圧力差の影響を受けて押し込まれる。アキュムレータピストンはその位置を維持し、打撃ピストンが第1折返し点に戻る間、接続チャネルは開いたままである。打撃ピストンが第1駆動室に通じる接続チャネル開口部に到達し、これにより第2駆動室への圧力供給が閉じられるまで、第2駆動面には圧力が持続的に加わる。この時点で、打撃ピストンはすでに一貫した運動エネルギを獲得している。
【0038】
打撃ピストンが第1駆動室内の接続チャネル開口部を閉じると、アキュムレータピストンは、第2駆動室の圧力が低下するまでその位置に留まる。その後、アキュムレータピストンは加速して初期位置に戻り、第2駆動室内の接続チャネル開口部を閉じる。つまり、打撃ピストンが第1折返し点に到達するまで、元のアキュムレータピストン位置には到達しない。
【0039】
短絡及び効率の低下を回避するために、排出チャネルの開放は、第1駆動室に通じる接続チャネル開口部が閉じた後に生じる。排出チャネルが開いている状態で、打撃ピストンは、機構に接続された工具に衝突する前に所定の距離に沿って移動し、この所定距離は機械要件によって設定される。これら2つのステップの間に、第1駆動室内の圧力が低下し、アキュムレータは蓄積されたエネルギを解放してこの圧力低下を制限するが、これは、第1駆動室の圧力がアキュムレータの圧力よりも低くなるとすぐに、アキュムレータピストンが移動するからである。その結果として、打撃ピストンが工具に当たる時に、一貫した運動エネルギが維持される。
【0040】
本発明による弁無し液圧衝撃機構は、非常に高いシステム効率と衝撃振動数を提供し、その結果として、掘削速度を劇的に向上させることができる。
【0041】
機構の運転中、接続チャネルはピストン自体によって切り換えられるため、供給圧力を常に提供する訳ではない。その結果として、本発明による機構では、アキュムレータピストンで切り換えられる一定の供給チャネルが存在せず、これが機構を「弁無し」と表現する理由であり、排出圧力にある室の近くに一定の供給チャネルを備えたシステムから生じる漏れが低減され、これにより、システムの全体的な効率が向上する。
【0042】
本発明による弁無し液圧衝撃機構は、排出圧力の変動に敏感でない。従って、本発明による機構は、深度と共に圧力が増大する流体柱を用いた深層掘削など、排出圧力が変わりやすい用途に適している。これは、本発明による機構において水又は未濾過の流体をプロセス流体として使用できることにより、さらに可能となる。
【0043】
機構の液圧効率が高いことで、構成要素の摩耗による効率低下が生じるまでの運転時間及び/又は深度が増加することになる。
【0044】
本発明による弁無し液圧衝撃機構により、150Hzを超える衝撃振動数に達することができ、ドリルストリングの少なくとも一部分に共振を入力して非常に高い掘進率を達成することができる。
【0045】
本発明による弁無し液圧衝撃機構はコンパクトであり、この機構を管内に入れて穴に沿って挿入することができ、穴の底部の近くでの打撃が可能となる。
【0046】
本発明による液圧衝撃機構は、1つの室内の一定圧力で機能する。これは、全ストロークサイクル中、この室を一定圧力源に接続することで達成されることが好ましい。本システムの最適な効率を保証するには、供給ラインに液圧アキュムレータを組み込むことが有利である。
【0047】
本発明による液圧衝撃機構は、打撃ピストンの位置とは無関係に打撃ピストンの自己振動を開始し、中断することなく安定したサイクルに沿って動作する。これは、打撃ピストンが第2折返し点と排出チャネルの開口部との間を移動する間、供給チャネルが開いたままになる機能を有するという事実に起因する。
【0048】
ピストンが第2折返し点と排出チャネルの開口部との間を移動する間、供給チャネルが開いたままであるため、本発明による液圧衝撃機構は、一貫した衝撃エネルギを生成し、従って、この距離の間、第2駆動室内の圧力を低下させることなく、打撃ピストンを供給圧力で加速することが可能となる。
【0049】
本発明による液圧衝撃機構は、先行技術の機構よりも製造が容易かつ安価であり、よりコンパクトでもある。例えば、アキュムレータピストンと打撃ピストンは、それらの間で同心度又は同軸を制限することなく構成することができ、これによりシリンダ製造は簡略化され、幾何学的に高精度の製造を必要とせず、組立体として行うことができる。
【0050】
先行技術の機構と比べてポート及び接続チャネルの数が削減され、製造が簡略化され、コストが削減される。
【0051】
アキュムレータピストンの形状を自由に構成することができ、複雑な製造プロセスを必要とせずに低質量を容易に実現することができる。さらに、アキュムレータピストンは衝撃を受けず、簡単でより安価な構造と、構成材料の幅広い選択肢とが可能となる。
【0052】
アキュムレータ室は、主シリンダボア内に統合すること又は主シリンダボアと流体連通する別のシリンダボア内に統合することができるので、機構全体の寸法上の制約に応じて空間的配置の可能性が広がる。
【0053】
第2駆動室の形状、位置及びサイズ、並びに接続チャネルは、より自由に構成することができて、製造コスト削減が可能となり、機構サイズを制限できるので、例えば、深穴掘削用管状装置などの限られたスペースへの配置が可能となる、
【0054】
好ましい実施形態では、打撃ピストンには排出チャネルと連通する内部チャネルが設けられ、プロセス流体を用いてボーリング穴からプロセス削り屑を洗い流すことができる。この実施形態では、機械ハウジング内に位置する排出チャネルは、第2駆動室を排出圧力に直接接続するのではなく、打撃ピストン内のチャネルに接続する。換言すれば、第2駆動室から排出圧力への接続は、排出チャネルとピストン排出チャネルの両方に関係するので間接的である。
【0055】
アキュムレータピストンは、1つのチャネルだけがそれと連通して機能するので、2つのポートの連通を切り換える必要がなく、この機能によりその長さ、ひいては質量も制限される。
【0056】
アキュムレータピストンは、第2駆動室とアキュムレータを互いに分離した状態に保ち、第2駆動室に通じる接続チャネルの開放を可能にする限り、どのような形状でもよい。アキュムレータピストンの好ましい形状は、H形又はU形の断面を備えたものであり、これにより重量が低減され、加速度が高まる。この実施形態により、アキュムレータピストンは劇的に短い時間でその位置に戻れるようになり、液圧サイクルは安定して持続することができ、さらにまたアキュムレータピストンを適正なコストで容易に製造することが可能となる。
【0057】
アキュムレータピストンがピストンに決して衝突しないという事実に照らして、アキュムレータピストンの動作は大きな機械的応力なしに行われ、従って、アキュムレータピストンの製造により軽量の材料を使用することができ、その質量をさらに低減することができる。
【0058】
アキュムレータは、排出チャネルの有無に関わらず、少なくとも1つのシーリング材、すなわち、液圧側に少なくとも1つのシールと、ガス側又は蛇腹側に少なくとも1つのシールとを備えることが好ましい。
【0059】
代わりに、アキュムレータは二重シールと排出チャネルとを備える。この実施形態では、アキュムレータが位置するシリンダボアは、シール要素を取り付けるために少なくとも2つの溝を備えることが好ましく、特に好ましくは、アキュムレータは、駆動媒体を排出するために2つのシール要素の間でシリンダボア内に開口するチャネルを備える。
【0060】
好ましい実施形態では、アキュムレータは、アキュムレータピストンの折返し点の前でアキュムレータピストンの制動を促進するための減衰室をさらに備え、好ましくは、アキュムレータピストンと減衰室は、アキュムレータピストンが減衰室に入った時に、それらの間に幅0.5mm未満の隙間が生じるように構成され、この隙間が減衰室と第2駆動室又はアキュムレータ室との隙間シールを構成する。
【0061】
好ましい実施形態では、アキュムレータは、第1シリンダボア内で同心状に設置され、アキュムレータピストンが第1シリンダボア内で変位できるようにその内部に取り付けられたアキュムレータピストンを収容する。
【0062】
アキュムレータは、ガス式、ばね式又は蛇腹式のアキュムレータであることが好ましい。しかしながら、これは限定とは見なされず、本発明による機構では、磁気ピストンアキュムレータを含むがこれに限定されない、他の型式のピストンアキュムレータを使用することもできる。
【0063】
アキュムレータがばね式又は蛇腹式のアキュムレータである実施形態では、シールは随意的であり、アキュムレータピストンとそれが内部で変位するボアとの間にある0.5mm未満の隙間に置き換えられることが好ましい。
【0064】
アキュムレータがばね式アキュムレータである実施形態では、アキュムレータは、排出圧力と接続して必要な容積変化を可能にするためにアキュムレータ内に開口する排出チャネルをさらに備えることが好ましい。これにより、どのような排出圧力条件の下でも適切な動作が可能になる。
【0065】
上述の液圧衝撃機構は、削岩機及び液圧ブレーカなど、岩石及びコンクリートを処理する機器の一体化部品とすることができる。これらの機械及びブレーカは、位置合わせ手段、位置決め手段、及び処理された岩石又はコンクリートの要素に対してドリル又はブレーカを送り込む手段、及びプロセスを誘導し監視する手段のうちの1又は2以上を備えたキャリアの稼働時に取り付けられることが好ましい。さらに、キャリア自体の推進及び誘導のための手段も含まれることが好ましい。このようなキャリアは削岩リグとすることができる。
【0066】
従って、別の態様では、本発明は削岩機、液圧ブレーカ、及びインホール削岩機を提供し、各々が独立して上述の液圧衝撃機構を備える。
【0067】
別の態様では、本発明は、削岩機、液圧ブレーカ又はインホール掘削機を備えたキャリアを提供し、これは、位置合わせ手段、位置決め手段、及び処理された岩石又はコンクリートの要素に対してドリル又は液圧ブレーカを送り込む手段のうちの1又は2以上をさらに備える。
別の態様では、本発明は、上述の削岩機を備えた削岩リグを提供する。
【0068】
ここで、添付図面を参照しながら、単に例示的に本発明の特定の好ましい実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1a】本発明による好ましい弁無し液圧衝撃機構の断面図である。
図1b】本発明による好ましい弁無し液圧衝撃機構の断面図である。
図1c】本発明による好ましい弁無し液圧衝撃機構の断面図である。
図1d】本発明による好ましい弁無し液圧衝撃機構の断面図である。
図2】本発明による代替的な好ましい液圧衝撃機構の断面図である。
図3】本発明による代替的な好ましい液圧衝撃機構の断面図であり、アキュムレータが主シリンダボアの外側に配置され、アキュムレータボアはピストン型の金属蛇腹式又はばね式のアキュムレータを含んでいる。
図4】アキュムレータピストンの2つの折返し点に減衰室を備えたピストン型ガス式アキュムレータを含むシリンダボアの断面図である。
図5】アキュムレータピストンの2つの折返し点に減衰室を備えたピストン型の金属蛇腹式又はばね式のアキュムレータを含むシリンダボアの断面図である。
図6】ピストンがプロセス流体用の排出チャネルを備えた液圧開回路に適合した好ましい機構の断面図である。
図7A】本発明による代替的な好ましい弁無し液圧衝撃機構を組み込んだインホール削岩機の断面図であり、機械の後部を示し、機械の中間部分は図示されていない。
図7B】本発明による代替的な好ましい弁無し液圧衝撃機構を組み込んだインホール削岩機の断面図であり、機械の前部を示し、機械の中間部分は図示されていない。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図面を参照しながら、本発明の様々な実施形態を詳細に説明するが、図面では、複数の図を通して同様の参照番号は同様の部品及び組立体を表す。本発明の保護範囲は、これらの実施形態に限定されるものと見なすべきではなく、特許請求の範囲によって規定される。
【0071】
図面を参照すると、図1a~1dは、岩石又はコンクリート又はその両方を処理するために工具Tに接続する、本発明による好ましい液圧衝撃機構100を概略的に示している。図示のように、液圧衝撃機構100は、シリンダボア130を備えた機械ハウジング、打撃ピストン140、第1駆動室110、第2駆動室120、アキュムレータ室150、及びアキュムレータピストン160を備え、アキュムレータピストン160はU形断面である。この機構の動作中に加圧駆動媒体を収容するための圧力チャネル170、排出チャネル180、及び接続チャネル190が、シリンダボア130内に開口する。
【0072】
打撃ピストン140はピストンロッド144と駆動部141とを備え、第1駆動面142はピストンロッド144に最も近い駆動部の端にあり、第2駆動面143は駆動部141の他端にある。打撃ピストン140の駆動部141は、第1駆動室110を第2駆動室120から分離する。第1駆動室110は接続チャネル190によって第2駆動室120に接続され、第2駆動室120は打撃ピストン140とアキュムレータピストン160との間に形成される。
【0073】
打撃ピストン140は、機械ハウジングのシリンダボア130内で変位させることができるように取り付けられるので、動作中に機械ハウジングに対して往復運動を繰り返し実行し、このようにして機構100に接続された工具Tに対して直接的又は間接的に衝撃を与える。図1a~1dに示すように、打撃ピストン140は下側折返し点と上側折返し点の間を移動する。
【0074】
打撃ピストン140の上側、すなわち駆動室120には交番圧力が掛かり、打撃ピストン140の下側、すなわち接続された工具Tの方を向く側には一定の圧力が掛かる。
【0075】
チャネル170、180、190は、シリンダボア130内での打撃ピストン140の運動中にその助けを借りて、少なくとも第2駆動室120内に開閉し、少なくとも第2駆動室120は、往復ピストン運動を維持するために周期的な交番圧力を獲得するようになっている。
【0076】
図1aは、第1折返し点における打撃ピストン140を示す。図示のように、この折返し点は、下側折返し点と呼ぶこともできる。第1駆動室110は圧力チャネル170を介してシステム圧力SPに接続される。図1aに示す実施形態では、第2駆動室120は排出チャネル180を介して排出圧力EPに接続される。このようにして、打撃ピストン140の第1駆動面142に作用する力によってピストン140が上方に駆動され、排出チャネル180が閉じられて、駆動室120内の圧力が高まることになる。図1bから分かるように、打撃ピストン140が上方に移動すると、アキュムレータピストン160も上方に移動するが、これは、アキュムレータピストン160の表面162に作用する力が、アキュムレータピストン160の第1駆動面161に対してアキュムレータ区画150によって生成される力を上回り、駆動室120の容積が一定に保たれるからである。
【0077】
図1cは、第2折返し点における打撃ピストン140を示す。図示のように、この折返し点は上側折返し点と呼ぶこともできる。駆動室120内の圧力は徐々に高まり、システム圧力と、打撃ピストン140の第2駆動面143と第1駆動面142との面積比とによって与えられる平衡圧力よりも低いままであるため、打撃ピストン140とアキュムレータピストン160は、接続チャネル190が駆動室110と120間の接続を開くのに十分な距離まで到達することになり、システム圧力が第2駆動室120に行き渡る。打撃ピストン140の駆動面143が駆動面142よりも大きいため、打撃ピストン140は、今度は図1dに示すように下方に駆動される。
【0078】
表面162に作用する力がアキュムレータ150によって生成される力よりも大きいため、アキュムレータピストン160は、打撃ピストン140の下方移動中、チャネル190を開いたまま最大行路まで駆動される。このようにして、接続チャネル190が最初に閉じられ、その後、排出チャネル180が開かれ、第2駆動室120内の圧力が下がる。次に、表面161に加わる力が表面162に加わる力よりも大きいため、アキュムレータピストン160は駆動されてその下側位置に戻る。こうして、駆動面142に作用するシステム圧力によってピストン140が再び上方へ駆動され、新たなサイクルが始まる。
【0079】
圧縮性はアキュムレータ150から生じるので、駆動室110、120を大きくする必要はない。駆動室120の寸法は、チャネル180及び190のスペース要件に基づいて設定される。
【0080】
図2は、岩石又はコンクリート又はその両方を処理するために工具に接続する、本発明による代替的な好ましい液圧衝撃機構200を概略的に示している。図示のように、機構200では、ピストンの上側に交番圧力が掛かり、ピストンの下側、すなわち接続された工具(図示せず)の方を向く側には一定の圧力が掛かる。この実施形態は、よりコンパクトな環状のアキュムレータピストン260とアキュムレータばね264を示す。アキュムレータピストン260の動きは、図1a~1dのアキュムレータピストン160とは逆になる。しかしながら、アキュムレータピストン260が接続チャネル290を開く機能は、アキュムレータピストン160が接続チャネル190を開く機能と依然として同じである。換言すれば、アキュムレータピストンが移動する方向は、本発明を制限するものではない。
【0081】
機構200では、機構100と同様に、第1駆動室210は圧力チャネル270を介してシステム圧力に接続される。図2に示すように、第2室220はチャネル280を介して排出圧力に接続される。ばね力が駆動面262に作用する力を上回るため、アキュムレータピストン260は右側の最大位置に到達するまで右方に移動する。駆動面242に作用する力は、ハンマピストン240を右方に駆動する。これにより、排出チャネル280が閉じられ、室220内で圧力が高まる。ハンマピストン240が右方に移動するにつれて、表面262に作用する力が、表面261に対してアキュムレータ室250によって生成される力を上回るため、アキュムレータピストン260は左方に移動し、室220の容積は一定に保たれる。室220内の圧力は徐々に高まり、システム圧力と、駆動面243と駆動面242との面積比とによって与えられる平衡圧力よりも低いままであるため、ピストン240とアキュムレータピストン260は、接続チャネル290が駆動室210と220の間の接続を開くのに十分な距離まで到達し、次いでシステム圧力が第2駆動室220に行き渡る。駆動面243が駆動面242より大きいため、ハンマピストン240は左方に駆動される。
【0082】
表面262に作用する力がアキュムレータ250によって生成される力よりも大きいため、アキュムレータピストン260は、打撃ピストン240の左方移動中、チャネル290を開いたまま最大行程まで左方に駆動される。このようにして、接続チャネル290が最初に閉じられ、その後、排出チャネル280が開かれ、第2室220内の圧力が下がる。表面261に加わる力が表面262に加わる力よりも大きいため、アキュムレータピストン260は右側の初期位置に戻る。こうして、駆動面242に作用するシステム圧力によってハンマピストン240が再び右方へ駆動され、新たなサイクルが始まる。
【0083】
圧縮性はアキュムレータ250から生じるので、駆動室210、220を大きくする必要はない。室220の寸法は、チャネルのスペース要件に基づいて設定される。
【0084】
好ましい作業機械は、以下の例示的な寸法を有することができる。
第1駆動部の好ましい打撃ピストンの直径:45mm
ピストンロッドの直径:38mm
第1駆動部の長さ:100mm
ピストンの重量:5.26kg

好ましいアキュムレータピストンの直径:60mm
アキュムレータピストンの重量:0.18kg
入口圧力:250bar
プロセス流体流量:140l/min
排出圧力:1bar

アキュムレータの下方折返し点と接続チャネル開口部との間の距離:6mm
打撃ピストンの下方折返し点(衝撃点)と、排出チャネル閉鎖及び接続チャネル開口部との間の距離:3.5mm

ガス充填式アキュムレータ550:
容積:85cm3
予充填圧力:30×105Pa
【0085】
上記を備える機械は、以下の出力を供給する。
サイクル周波数:160Hz
衝撃時の打撃ピストン速度:11.2m/s
衝撃エネルギ:330J
システム効率:>90%
【0086】
上記の機械について、ピストンとシリンダボアとの隙間が0.05mm、流体の動粘度が40℃で0.02816kg/msの場合、漏れは約0.78l/minとなる。このような寸法で流量が1401/minのシステムの場合、効率への影響は0.78/140、つまり0.56%である。
【0087】
システム効率がゼロより大きい場合、水又は泥を用いた深層掘削などの他の構成では0.05mmより大きい隙間でも許容される。例えば、ピストン駆動部の直径=200mm、駆動部の長さ=500mm、デルタ圧力=250bar、ピストン/シリンダ隙間=0.25mm、ベントナイト掘削泥の動粘度が0.012kg/msという機械の場合、漏れは204l/minとなる。このような寸法で流量が600l/minのシステムの場合、効率への影響は204/600=34%となり、許容できると見なされる。
【0088】
上記の機械に関する、キュムレータピストン及び打撃ピストンの移動距離は、
d2=d1×打撃ピストン(140)の表面(143)/アキュムレータピストン(150)の表面(162)
=d1×(打撃ピストン直径)2/(アキュムレータピストン直径)2
=d1×452/602=0.5625d1
である。
【0089】
異なる直径を選択できるため、アキュムレータピストンのストローク長は、劇的に短縮することができる。
【0090】
本発明による装置により、アキュムレータピストンのストローク長を適宜選択することができ、好ましくはピストンの加速運動よりも短くすることができる。この特徴によって、アキュムレータピストンは劇的に短い時間で元の位置に戻ることができ、液圧サイクルは安定して持続することができる。
【0091】
図3は、本発明による好ましい液圧衝撃機構300の断面図を示しており、ここではアキュムレータ350が主シリンダボア330の外側に配置され、アキュムレータボア363はピストン型のばね式アキュムレータを含んでいる。機構300では、機構100及び200と同様に、第1駆動室310は圧力チャネル370を介してシステム圧力に接続される。図3に示すように、第2室320はチャネル380を介して排出圧力に接続される。図3に示すように、ピストン340は、第1駆動室310を第2駆動室320から分離する。室320は、主シリンダボア330とアキュムレータボア363の両方の中に延びており、接続チャネル390は、アキュムレータボア363を介して第2駆動室320内に開口する。図示の実施形態では、アキュムレータピストン360の駆動面361、362は、打撃ピストン340の駆動面342、343と垂直である。しかしながら、これは限定とは見なされず、アキュムレータボア363は主シリンダボア330と垂直である必要はない。
【0092】
図4及び5は、第2シリンダボア463、563内のアキュムレータ150、250、350の好ましい実施形態の詳細を示す。アキュムレータ150、250、350は、図4に示すようなガスアキュムレータ450、或いは図5に示すようなばね式又蛇腹式のアキュムレータ550とすることができる。さらなる代替的なアキュムレータも可能であり、本発明はアキュムレータ450又は550に限定されるとは見なされない。
【0093】
アキュムレータ450のガス圧の予充填は、接続部465(図4ではアキュムレータガスプラグとして示してある)を介して行われることが好ましい。これは限定とは見なされず、ガスアキュムレータの充填方法の一例を表しているに過ぎない。
【0094】
図4に示すように、アキュムレータピストン460は、第2駆動室420及びアキュムレータ室に隣接するアキュムレータボア463内の減衰室451に受け入れられ、アキュムレータピストン460の最大行程に到達する前に速度が低下して、アキュムレータピストン460の跳ね返りが回避されるようになっている。この減衰システムにより、アキュムレータピストン460の寿命が大幅に延びる。
【0095】
アキュムレータボア463にはシール453を収容するためのシール溝454が形成される。排出チャネル452は、ガスとプロセス流体の混合を避けるために、シール454同士の間に位置する。
【0096】
図5では、排出チャネル566は、アキュムレータ室550を排出口に接続し、サイクル全体に亘ってアキュムレータ室550を排出圧力に保ち、これにより、排出圧力条件に関わらず、つまりどのような排出圧力条件下でも、体積の変化とシステムの適切な動作とが可能になる。
【0097】
図5に示すように、アキュムレータ560は蛇腹式であり、室550内に蛇腹564を備える。アキュムレータピストン560は、第2駆動室520及びアキュムレータ室550に隣接するアキュムレータボア563内の減衰室551に受け入れられ、どの方向でもアキュムレータピストン460の最大行程に到達する前に速度が低下して、アキュムレータピストン560の跳ね返りが回避されるようになっている。この減衰システムにより、アキュムレータピストン560の寿命が大幅に延びる。
【0098】
図6は、液圧開回路に適合した好ましい構成600を示しており、この場合、プロセス流体は水又は掘削泥である。図示の実施形態では、第2駆動室620は右側にあり、第1駆動室610は左側にある。接続チャネル690はシリンダボア630内に位置する。排出チャネル680は、打撃ピストン640内のチャネル645に接続される。チャネル645により、通常はドリルビット601を介して、プロセス流体681をボーリング穴602の底に向かって送ることができる。このようにして、プロセス流体が放出され、ボーリング穴602からの削り屑603、つまり掘削プロセスから生じる岩石及び土質材料の砕片を洗い流す。
【0099】
排出チャネル680は、打撃ピストン640の移動によって開閉される。
【0100】
図6では、打撃ピストン640は、下側折返し点、すなわち第1折返し点で示されている。排出チャネル680は開いており、ピストンチャネル645を介して第2駆動室620を排出圧力に接続する。打撃ピストン640が上方へ、すなわち第2折返し点に向かって移動すると、排出チャネル680が閉じられ、これにより第2駆動室620の排出圧力との連通が閉じられる。
【0101】
図7A及び7Bに示すインホール削岩機700はハウジングを有し、その主要部は、各端部に内部ショルダ732と内部ねじ山とを有する円筒管731である。ドリルビット701は、管731にねじ込まれたスリーブ704によってハウジング731内に保持される。スリーブ704はドリルビット701とスプライン接続されている。ドリルビット701は、スリーブ704及びガイドブッシュ705によってハウジング内を案内される。ストップリング707は、ドリルビット701が抜け落ちるのを防ぐ。従って、ドリルビット701は、管731内の限られた距離範囲内を軸方向に移動可能であり、ハウジングに対して回転することはできない。ドリルビット701は軸方向のフラッシング流体通路(図示せず)を有し、この通路は前面のフラッシング流体放出用の穴で終わる。
【0102】
シリンダブッシュ730cはショルダ732に当接し、シリンダスリーブ730bはシリンダブッシュ730cに当接する。シリンダヘッド730aはシリンダスリーブ730bに当接し、フィルタ734を閉じ込める管状フィルタ支持体733はシリンダヘッド730aに当接する。
【0103】
機械ハウジングのバックヘッド706は管731の後端にねじ込まれ、ショルダ732に対して要素733、730a、730b、730cを軸方向に締め付けるように配置される。
【0104】
要素733、730a、730b、730cは、一緒になってばねとして機能し、それらの累積長は、バックヘッド706が所定の位置にねじ込まれた時に圧縮されるようになっている。一例として、全体的な軸方向圧縮は、約0.4mmと約2mmの間であることが好ましい。シリンダスリーブ730bは、その支配的な長さと、相対的に小さい鋼断面積とにより、この圧縮に最も大きく寄与する。シリンダスリーブ730bは、その長さについて少なくとも0.3パーミル(per mill)だけ、好ましくはその長さについて少なくとも約0.8と約3.0パーミルの間だけ圧縮されるようになっている。
【0105】
フィルタ支持体733は、シリンダスリーブ730bとほぼ同じ鋼断面積を有することができるが、長さが短いため、ばね作用に対する寄与は小さい。バックヘッド706は、従来型ドリル管にねじ込まれるように配置されており、このドリル管は、回転を掘削機700に伝達し、加圧水又は掘削流体の形態の液圧駆動流体も掘削機700に送る。
【0106】
従って、運転中、シリンダヘッド730aの後ろにある環状空間771は、濾過された加圧流体で持続的に充填される。機械700を組み立てる際、全ての要素733、730a、730b、730cが互いの上部に緩く配置されるため、組み立てが簡単になり、軸方向の寸法公差に対する要求が軽減される。付加された寸法公差は、軸方向の弾性圧縮によって吸収される。全ての要素は、機械ハウジング内を容易に摺動するため、機械700を分解する必要がある場合に取り外しが容易である。
【0107】
本発明による弁無し衝撃機構は、要素730a、730b、及び730cによって形成されたシリンダ内に含まれている。貫通チャネル745を備えたピストン740は、その前部がシリンダブッシュ730c内に案内される。ピストン740の上端部746は、シリンダヘッド730aの駆動室内に延びる。従って、ピストン740の上端部746は、シリンダヘッド730aの壁によって案内される。ピストン740の上端部746には、第1駆動面742を備えた溝747が設けられる。ピストン740は、その上端部746ではシリンダヘッド730aによって、そのロッド744ではシリンダブッシュ730cによって案内される。案内面の実際の長さは、シリンダブッシュ730c及びシリンダヘッド730aの案内面で規定され、ピストン740の長さの小部分を占めるに過ぎない。案内部の実際の長さはピストン740の長さの20%未満である。ピストン740の中央部はこれらの案内面の間に位置し、管731のシリンダスリーブ730bに対して幅広のクリアランスを有する。
【0108】
好ましくは、ピストンが可能な限り重くなるようにするために、ピストン740の中央部は、案内される端部に対して半径方向に拡張される。シリンダブッシュ730cに対して摺動するピストン740の案内面は、シリンダヘッド730aに対する案内面よりも直径が小さいので、ピストン740は、シリンダブッシュ730cとシリンダヘッド730aとの間に軸方向に形成される差分面積をシリンダヘッド730aに有する。溝747と底部案内面が同じ直径を有する場合、この差分面積は溝747の駆動面742の面積で表される。この差分面積は、ヘッドシリンダ室720内の駆動面743よりも小さい。
【0109】
シリンダヘッド730aは、アキュムレータ室750とアキュムレータピストン760とを備える。
【0110】
図7Aに示すアキュムレータ750は金属蛇腹式であるが、これは限定とは見なされず、例えばガス式又はばね式などの他の型式のアキュムレータも好適である。
【0111】
アキュムレータの予荷重力は、システム圧力と、面積742と743の差とに応じて適合される。
【0112】
排出チャネル766及び780は、容積の変化を可能にするようにアキュムレータ室750を排出口に接続し、これにより、衝撃機構700は、排出圧力と関係なく機能することもできる。
【0113】
シリンダ730aは、室710をシステム圧力室771に常に接続する接続チャネル770を備える。接続チャネル790の開放は、ピストン740及びアキュムレータピストン760によって制御される。接続チャネル790は、室720を室710に接続する。
【0114】
排出チャネル780の開放はピストン740によって制御され、排出チャネル780は室720を排出口に接続する。チャネル780及び790の開口部の相対的な軸方向位置は変えることができる。
【0115】
第1駆動室710は、圧力チャネル770によって供給される。
【0116】
ここで機械700の運転サイクルを説明する。
【0117】
第1駆動室710は、常にシステム圧力に接続されている。図7A及び7Bの好ましい実施形態に示すように、第2室720は、チャネル780及びピストンチャネル745を介して排出圧力に接続されている。このようにして、駆動面742に作用する力は、ピストン740を上方に駆動することになる。これにより、排出チャネル780が閉じられ、室720内で圧力が高まる。
【0118】
ピストン740が上方に移動するにつれて、アキュムレータピストン760の下面761に作用する力が、上面に対してアキュムレータ750によって生成される力を上回るため、アキュムレータピストン760も移動し、室720の容積は一定に保たれる。
【0119】
室720内の圧力は徐々に高まり、システム圧力と、面積743と742の比とによって与えられる平衡圧力よりも低いままであるため、ピストン740とアキュムレータピストン760は、接続チャネル790が駆動室710と720の間の接続を開くのに十分な距離まで到達し、システム圧力が第2室720に行き渡る。
【0120】
表面751に作用する力がアキュムレータ750によって生成される力よりも大きいため、アキュムレータピストン760は、ピストンの下方移動中、チャネル790を開いたまま最大行程まで上方に駆動されることになり、これにより、ピストン740は加速し衝撃を与えることができる。
【0121】
アキュムレータピストン760は、減衰室を遮る壁によって減衰するので、その上側位置に到着する前にブレーキが掛かり、結果として跳ね返りにくくなる。下方移動の終わりに達すると、ピストン740は最初に接続チャネル790を閉じ、続いて排出チャネル780が開かれ、第2室720内の圧力が低下して、プロセス流体がピストンチャネル745及びドリルビット701を介して送られる。プロセス流体は高エネルギで駆動室720から流出するので、ボーリング穴から砕片を洗い流すためのフラッシング流体として利用される。
【0122】
アキュムレータピストン760は下降してその下側位置に戻り、減衰室を遮る壁によって減衰するので、アキュムレータピストンは、折返し位置に到着する前にブレーキが掛かり、結果として跳ね返りにくくなる。従って、駆動面742に作用するシステム圧力によってピストンが再び上方へ駆動され、新たなサイクルが始まる。
【0123】
圧縮性はアキュムレータ750から生じるので、駆動室を大きくする必要はない。室720の寸法は、チャネルのスペース要件に基づいて設定される。
【0124】
本発明は、本明細書に記載した特定の詳細に限定されず、それらは単なる例示として与えられていること、及び添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び改変が可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0125】
100 液圧衝撃機構
110 第1駆動室
120 第2駆動室
130 シリンダボア
140 打撃ピストン
144 ピストンロッド
150 アキュムレータ室
160 アキュムレータピストン
EP 排出圧力
SP システム圧力
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
【国際調査報告】