(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-02-28
(54)【発明の名称】ARによって支援される手術において使用するためのマーカーユニット
(51)【国際特許分類】
A61B 34/10 20160101AFI20250220BHJP
【FI】
A61B34/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024550877
(86)(22)【出願日】2023-02-22
(85)【翻訳文提出日】2024-09-02
(86)【国際出願番号】 EP2023054443
(87)【国際公開番号】W WO2023161286
(87)【国際公開日】2023-08-31
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524317828
【氏名又は名称】ナバリ、サージカル、アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】Navari Surgical AB
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100217940
【氏名又は名称】三並 大悟
(72)【発明者】
【氏名】アクセル、ブローメ
(72)【発明者】
【氏名】カール、ボディン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン、アル-マレ
(72)【発明者】
【氏名】クラス、モディン
(72)【発明者】
【氏名】リーサ、モンソン
(72)【発明者】
【氏名】マデレイネ、グスタフソン
(72)【発明者】
【氏名】モルテン、ファルケンバリ
(72)【発明者】
【氏名】ニクラス、クバーンストレーム
(72)【発明者】
【氏名】トールビョルン、ルンド
(57)【要約】
拡張現実によって支援される手術、特に腹腔鏡肝臓手術において使用するためのマーカーユニットであって、2つの主面を有する扁平体を備え、主面の一方は、光学検出可能マーカーのセットを設けられており、反対側の主面は、身体器官に結合されるように構成されており、好ましくは粘着剤を設けられている、マーカーユニットが、開示される。マーカーユニットは、医用撮像システムによって可視である放射線不透過性マーカーのセットをさらに含む。光学検出可能マーカーと放射線不透過性マーカーの両方は、回転対称性を有しない幾何学的パターンに設けられており、それによって、マーカーユニットの回転位置が決定可能であることを可能とし、光学検出可能マーカーおよび放射線不透過性マーカーの幾何学的パターンは、固定され、予め決定された相関を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張現実によって支援される手術において使用するためのマーカーユニットであって、
前記マーカーユニットは、2つの主面を有する扁平体を備え、前記主面の一方は、光学検出可能マーカーのセットを設けられており、反対側の主面は、身体器官に結合されるように構成されており、好ましくは粘着剤を設けられており、前記マーカーユニットは、医用撮像システムによって可視である放射線不透過性マーカーのセットをさらに備え、前記光学検出可能マーカーと前記放射線不透過性マーカーの両方が、回転対称性を有しない幾何学的パターンに設けられており、それによって、前記マーカーユニットの回転位置が決定可能であることを可能とし、前記光学検出可能マーカーおよび前記放射線不透過性マーカーの前記幾何学的パターンが、固定され、予め決定された相関を有する、マーカーユニット。
【請求項2】
前記扁平体が、剛性材料から作成される、請求項1に記載のマーカーユニット。
【請求項3】
前記扁平体が、互いに固定的に結合された2つの層を含み、前記放射線不透過性マーカーのセットが、前記2つの層の間に挟まれて配置される、請求項1または2に記載のマーカーユニット。
【請求項4】
前記扁平体が、多角形形状を有し、好ましくは概ね矩形状を有し、より好ましくは正方形状を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のマーカーユニット。
【請求項5】
前記主面が、2つの直交方向において、5~20mmの範囲、好ましくは5~15mmの範囲、最も好ましくは7~12mmの範囲の寸法を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のマーカーユニット。
【請求項6】
前記光学検出可能マーカーのセットが、前記主面を通じて分布された複数の幾何学的図形を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のマーカーユニット。
【請求項7】
前記複数の幾何学的図形が、複数のQRコードを含む、請求項6に記載のマーカーユニット。
【請求項8】
前記光学検出可能マーカーのセットを含む前記主面が、疎水性および非反射性である、請求項1から7のいずれか一項に記載のマーカーユニット。
【請求項9】
前記マーカーユニットの任意の方向における最大延在長が、12mmより短く、好ましくは10mmより短い、請求項1から8のいずれか一項に記載のマーカーユニット。
【請求項10】
前記マーカーユニットが、拡張現実によって支援される腹腔鏡手術において使用するために適合される、請求項1から9のいずれか一項に記載のマーカーユニット。
【請求項11】
前記マーカーユニットが、剛性である、請求項1から10のいずれか一項に記載のマーカーユニット。
【請求項12】
腹腔鏡器具のためのハンドルをさらに備える、請求項1から11のいずれか一項に記載のマーカーユニット。
【請求項13】
前記ハンドルが、前記扁平体の、前記粘着剤および/または前記光学検出可能マーカーがない部分に配置される、請求項12に記載のマーカーユニット。
【請求項14】
前記ハンドルが、前記扁平体の前記主面に関して横方向および/または交軸方向に突出する突出部を含む、請求項12に記載のマーカーユニット。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載のマーカーユニットを備え、ディスプレイおよびコントローラーをさらに備える、拡張現実によって支援される手術のためのシステムであって、前記コントローラーが、
手術のために意図される位置における前記マーカーユニットを示す医用撮像データを受信することと、
前記手術のために意図される前記位置における前記マーカーを示す受光画像データを受信することと、
前記医用撮像データにおける前記放射線不透過性マーカーのセットおよび前記受光画像データにおける前記光学検出可能マーカーのセットの前記位置に基づいて、前記医用撮像データと前記受光画像データを相関させることと、
前記ディスプレイ上で拡張現実画像を提供することであり、前記拡張現実画像が、少なくとも部分的に、前記医用撮像データからの画像データおよび前記受光画像データを含む、提供することと
を行うように構成される、システム。
【請求項16】
前記医用撮像データが、コンピューター断層撮影スキャン、コーン・ビーム・コンピューター断層撮影、磁気共鳴撮像、および超音波撮像の内の少なくとも1つから受信される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記受光画像データが、カメラから、好ましくは腹腔鏡カメラから受信される、請求項15または16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡張現実(AR)によって支援される手術において使用するためのマーカーユニットに関する。本発明はまた、そのようなマーカーユニットを含む、拡張現実(AR)によって支援される手術のためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
肝臓のがん腫瘍の外科的除去は、伝統的に開腹手術によって行われた。今日では、腹腔鏡による最小侵襲手術への大きな変化がある。しかし、腹腔鏡手術は、比較的複雑な処置であり、優れた技能と多くの訓練を必要とする。特に、腹腔鏡カメラから得られる制限された視覚的入力に基づいて道筋や方向を見つけることは、外科医にとってしばしば困難である。肝臓手術は、肝臓の形状および表面の均一性のために、特に困難である。さらに、肝臓の腫瘍は、大抵肝臓深くに位置し、細い腹腔鏡光カメラによって可視ではない。
【0003】
腹腔鏡手術では、用具、カメラなどによる施術部位へのアクセスのために、いくつかのポートが、設けられる。外科医は、外部から方向付けを行い、カメラからの2D画像と、加えて、マップとしての術前3D画像を通じて、内部の知覚をなす。
【0004】
腹腔鏡手術は多くの利点を有するが、習得が困難な技術であり、多くの練習を必要とする。肝臓は滑らかな表面を有する非常に均質な器官であり、2Dカメラ視野において方向付けを行うことを外科医にとって非常に難しくするため、たとえば肝臓腫瘍に関しては、特に複雑である。
【0005】
近年、これらの問題を克服するために、多くの試みが、なされてきた。「Radiopaque fiducials guiding laparoscopic resection of liver tumours」、M.Falkenbergら、Surg.Laparosc.Endosc.Percutan Tech、2021年9月28日は、どのように放射線不透過性起点および透視が、肝臓の腫瘍切除中に超音波を補完し、カメラ視野からの情報と組み合わされた肝臓の拡張された3D情報を提供することができるかについて調査している。研究の全体的な狙いは、処置中に超音波の使用に対する補完として腫瘍の位置が追跡され得る、ワークフローを開発することであった。
【0006】
「The effect of intraoperative imaging on surgical navigation for laparoscopic liver resection surgery」、A.Teatiniら、Scientific Reports、(2019)9:18687は、いわゆるCAScination ARソリューションに関する。それは、体外の、マーカーを検出するカメラに基づく。これが働くためには、身体と肝臓が、不動でなければならない。これを使用して、先に撮られたCTスキャンからの情報は、(理論上では)隠された部分を表示する機会を与える。しかし、実際には、手術中に全ての部分の間の完全な安定性を保つことは、困難である。
【0007】
さらに、米国特許出願公開第20200005473号は、肝臓手術のための整列システムを開示し、WO2016/170372は、術前画像データを術中腹腔鏡超音波画像と位置合わせするための装置および方法を開示し、WO2016/012556は、機能撮像と超音波画像の組合せを用いた画像生成装置および方法を開示する。
【0008】
これらの取り組みにもかかわらず、特に肝臓手術のために、腹腔鏡手術中に外科医を案内するためのより効率的なシステムに対する需要が、今でも存在する。特に、比較的高速でコスト効率の高い手法で実施および使用され得る、体内の施術部位における方向付けを容易にするシステムに対する需要が、存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、現在知られているシステムの短所の全てまたは少なくともいくつかを緩和する、拡張現実によって支援される手術において使用するためのマーカーユニットを提供することが、本発明の目的である。本発明の別の目的は、そのようなマーカーユニットを含む、ARによって支援される手術のためのシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、添付の特許請求の範囲において定義される、ARによって支援される手術のためのマーカーユニットおよびシステムによって達成される。
【0011】
本発明の第1の態様によって、拡張現実によって支援される手術において使用するためのマーカーユニットが提供され、マーカーユニットは、2つの主面を有する扁平体を備え、主面の一方は、光学検出可能マーカーのセットを設けられており、反対側の主面は、身体器官に結合されるように構成されており、好ましくは粘着剤を設けられており、マーカーユニットは、医用撮像システムによって可視である放射線不透過性マーカーのセットをさらに備え、光学検出可能マーカーと放射線不透過性マーカーの両方は、回転対称性を有しない幾何学的パターンに設けられており、それによって、マーカーユニットの回転位置が決定可能であることを可能とし、光学検出可能マーカーおよび放射線不透過性マーカーの幾何学的パターンは、固定され、予め決定された幾何学的相関を有する。
【0012】
ここでは、医用撮像システムによって、身体の内部を撮像するためのシステムが意味される。医用撮像データは、好ましくは3Dデータであり、好ましくは非侵襲処置を通じて得られる。特に、医用撮像システムは、医用X線または超音波システムであってもよい。
【0013】
光学検出可能マーカーは、カメラによるなどして、可視スペクトルからの光の検出によって検出可能であり、好ましくは2Dデータとして与えられる。
【0014】
本発明は、特定のやり方で設計および構造化された単一のマーカーユニットが、医用画像データと腹腔鏡カメラからなどの受光データとの間の相関を可能とするということの、実現に基づく。この相関は、リアル・タイムになされ得、両方の画像を組み合わせて示す拡張現実視野として、ユーザに提示されることを可能とする。
【0015】
本マーカーユニットは、簡単かつ確実に置かれ得、迅速でコスト効率の高い処置をもたらす。さらに、マーカーのセットは、医用撮像システムおよびカメラなどの光学検出システムから受信された画像から、直接相関させられ得るため、医用撮像デバイスもしくはカメラまたは任意の他の外部デバイスの正確な位置を知る必要がない。
【0016】
2つ以上のマーカーユニットが使用されてもよいが、画像間の必要とされる相関を与えるために、単一のマーカーユニットで、通常十分である。したがって、単一のマーカーユニットを、肝臓の表面など、手術が実施されることになる解剖学的部分および表面に置くことで十分である。マーカーユニットは、たとえば光学カメラを用いて検出可能である、光学検出可能マーカーのセットを含む。さらにマーカーユニットは、コンピューター断層撮影(CT)、コーン・ビーム・コンピューター断層撮影(CBCT)、磁気共鳴撮像(MRI)、および超音波(US)撮像などの医用撮像システムによって可視である、放射線不透過性マーカーのセットを含む。しかし、また、それ自体当該技術分野において知られるように、他の医用撮像システムおよび技術が使用されてもよい。
【0017】
マーカーユニットの片側は、粘着剤を設けられてもよく、肝臓の表面など、それが位置すべき解剖学的構造に固定することを、非常に簡単にする。そのような固定は、非侵襲であり、固定は、腹腔鏡ポートを通じて迅速かつ効率的になされ得る。
【0018】
光学検出可能マーカーと放射線不透過性マーカーの両方は、回転対称性を有しない幾何学的パターンに設けられ、それによって、マーカーユニットの回転位置が決定可能であることを可能とし、さらに、光学検出可能マーカーおよび放射線不透過性マーカーの幾何学的パターンは、固定され、予め決定された相関を有する。これは、医用撮像データと受光データの両方から、全ての方向においてマーカーユニットの正確な位置を一意に特定することを可能とする。マーカー・セット間の既知の相関により、これは、画像が相関させられることを可能とし、拡張現実画像として組み合わされたやり方でそれらが提示されることを可能とする。
【0019】
したがって、本発明は、器官の術前三次元(3D)画像データのためと、たとえばカメラのための光学的基準点のためとの両方のための基準点として使用可能な、マーカーユニットを提供する。
【0020】
マーカーユニットの扁平体は、好ましくは剛性材料から作成される。結果的に、マーカーユニットは、好ましくは剛性である。ここでは、剛性によって、扁平体およびマーカーユニットが通常の使用および取り扱いにおいて変形せず、通常の指の圧力によって曲がりにくいということが意味される。扁平体およびマーカーユニットの剛性が、マーカーユニットが、使用中に、特に身体器官に貼付される時に変形しないということを保証し、それによって、マーカーのセットの読み取りおよび相関が影響を受けないままであるということを保証する。
【0021】
実施形態では、扁平体は、互いに固定的に結合された2つの層を含み、放射線不透過性マーカーのセットは、前記2つの層の間に挟まれて配置される。しかし、扁平体は、代替的に、単一の層のみ、または3つ以上の層を含んでもよい。さらに、放射線不透過性マーカーは、代替的に、扁平体の外面に配置されてもよい。
【0022】
実施形態では、扁平体は、矩形状を、好ましくは正方形状を有する。しかし、ほぼ矩形状であるが丸められたまたは面取りされた角を有するものなどの、他の形状も、可能である。他の実施形態では、また、扁平体は、円形、楕円形、六角形、八角形などであってもよい。
【0023】
1つの実施形態では、扁平体は、放射線不透過性プラスチック材料、いわゆるX線プラスチックなどの、放射線不透過性材料から作成された、少なくとも1つの層を含んでもよい。たとえば、扁平体は、そのような放射線不透過性材料から作成された単一の層を含んでもよい。そのような実施形態では、たとえば縁における、認識可能特徴が、放射線不透過性マーカーのセットを形成してもよい。たとえば、角が、そのような認識可能特徴として働いてもよく、それによって、放射線不透過性マーカーのセットを形成してもよい。その場合、少なくとも1つの角が、パターンを非回転対称にするために、他とは異なるように成形されてもよい。たとえば、異なるように成形された角は、切断された角、切り欠かれた凹みを有する角、丸められた角などであってもよい。
【0024】
主面は、2つの直交方向において、5~20mmの範囲、好ましくは5~15mmの範囲、最も好ましくは7~12mmの範囲の寸法を有してもよい。矩形状の場合、寸法は、直交する辺に沿うように見られ得る。
【0025】
実施形態では、マーカーユニットは、12mmより短く、好ましくは10mmより短い、任意の方向における最大延在長を有してもよい。最大延在長は、マーカーユニットの任意の2つの位置の間の最長距離に関する。扁平円形構成では、最大延在長は、直径に実質的に対応することとなり、正方形または矩形設定では、最大延在長は、2つの対向配置された角の間の対角線の延在長に実質的に対応することとなる。12mmより短い最大延在長を有するマーカーユニットは、腹腔鏡ポートがしばしば12mmの内径を有するため、マーカーユニットを多くの腹腔鏡外科的処置において使用するのに大いに有利にする。10mmより短い最大延在長を有するマーカーユニットは、その場合、12mmの内径を有する腹腔鏡ポートと、やはり一般的に使用されるような10mmの内径を有する腹腔鏡ポートの両方のために使用され得るため、マーカーユニットを腹腔鏡外科的処置にさらに適したものとする。
【0026】
光学検出可能マーカーのセットは、好ましくは、主面を通じて分布された複数の幾何学的図形を含む。幾何学的図形は、たとえば矩形であってもよい。実施形態では、複数の幾何学的図形は、複数のQRコード(登録商標)を含んでもよい。QRコードは、白い背景上の正方形グリッドにおいて配置された、黒い正方形を含んでもよい。配色は、また、逆転されてもよく、黒い背景上の白い正方形でもよい。しかし、赤い背景上の黒い正方形など、他の色の組合せも、可能である。正方形は、4つの内3つの角にある相対的に大きい位置用正方形と、任意で、4番目の角にある相対的に小さい整列用正方形を含んでもよい。また、辺において角にある正方形の間に、および/または中心になど、追加の整列用正方形が設けられてもよい。また、角にある正方形の間に、タイミング・ラインが設けられてもよい。また、QRコードは、データ搬送パターンを含んでもよいが、この文脈ではこれは任意であり、省略されてもよい。
【0027】
しかし、また、たとえば三角形、五角形、および六角形などの多角形や、楕円、円形、半円、および他の形態の扇型など、他のタイプの幾何学的図形が使用されてもよい。
【0028】
放射線不透過性マーカーは、それ自体当該技術分野において知られるように、金属などから形成されてもよい。放射線不透過性マーカーのセットは、たとえば、楕円形または矩形のドットからなるグリッドとして、1つ又は複数の位置が空であり、それによってパターンを非回転対称にするように、配置されてもよい。
【0029】
しかし、また、放射線不透過性マーカーは、放射線不透過性プラスチック材料などの放射線不透過性材料によって形成された、層または扁平体上の検出可能特徴によって形成されてもよい。そのような検出可能特徴は、たとえば、概ね矩形の層/本体の検出可能および識別可能な角の形態で設けられてもよい。
【0030】
光学検出可能マーカーのセットを含む主面は、好ましくは疎水性である。これによって、水や体液などが表面に集積されることが、回避される。これは、使用中に光学検出可能マーカーが遮られないということを保証する。光学検出可能マーカーのセットを含む主面はさらに、好ましくは、非反射性であり、また光学検出をより簡単にする。
【0031】
疎水性表面は、マーカーユニットの主面に配置された、疎水性材料からなる被膜または層の使用によって得られ得る。しかし、代替的に、マーカーユニットは、それ自体疎水性材料によって作成されてもよい。疎水性材料は、好ましくは、主に無極性分子を含む。疎水性材料は、好ましくは、疎水性材料群と接触する水性液体が密集してミセルを形成し、疎水性材料の表面に関して、好ましくは90度を超える、より好ましくは100度を超える、最も好ましくは110度を超える、大きな接触角を有するようなものである。接触角は、また、145度を超えてもよく、この場合、疎水性材料は、超疎水性と呼ばれ得る。
【0032】
マーカーユニットは、特に腹腔鏡手術に適し、特に腹腔鏡肝臓手術に適する。ここでは、腹腔鏡手術は、従来の手動で実施される腹腔鏡手術またはロボットによって補助される腹腔鏡手術であってもよい。しかし、また、マーカーユニットは、他のタイプの腹腔鏡手術および内視鏡手術のために、また直接的な光学的可視性が制限される他のタイプの手術のために使用されてもよい。
【0033】
マーカーユニットは、ハンドルを含んでもよい。そのようなハンドルは、マーカーユニットに形成された把持または操縦領域の形態で設けられてもよい。把持または操縦領域は、好ましくは、マーカーユニットの、粘着剤を設けられていない部分である。把持または操縦領域は、好ましくは、光学検出可能マーカーの境界外に配置されてもよい。これによって、マーカーユニットは、マーカーユニットを損傷する、または他の形でその特性、機能性および性能に悪影響を与えるおそれがなく、腹腔鏡把持具、グラスパーなどの従来の腹腔鏡器具および用具によって、把持および操縦され得る。
【0034】
追加的または代替的に、ハンドルは、マーカーユニットの主面に関して横方向または交軸方向に突出するように構成された、突出部として構成されてもよい。1つの実施形態では、突出部は、横方向に、好ましくはマーカーユニットの主面の面内において、延在してもよい。別の実施形態では、突出部は、主面に関して直交方向など、主面に関して交軸方向に突出してもよい。たとえば、突出部は、マーカーユニットの幅および長さより短い幅を有してもよい。
【0035】
ハンドルは、摩擦を増加させるために摩擦増加構成を設けられてもよく、それによって、たとえば腹腔鏡器具を用いて、マーカーユニットを把持および保持することを簡単にする。たとえば、摩擦増加構成は、たとえば波形の形態の、ハンドルの表面上の表面テクスチャを含んでもよい。追加的または代替的に、摩擦増加構成は、高摩擦材料などの被膜を含んでもよい。
【0036】
本発明の別の態様によると、上で議論されたようなマーカーユニットを備え、ディスプレイおよびコントローラーをさらに備える、拡張現実によって支援される手術のためのシステムが提供され、コントローラーは、
手術のために意図される位置におけるマーカーユニットを示す医用撮像データを受信することと、
手術のために意図される位置におけるマーカーを示す受光画像データを受信することと、
医用撮像データにおける放射線不透過性マーカーのセットおよび受光画像データにおける光学検出可能マーカーのセットの位置に基づいて、医用撮像データと受光画像データを相関させることと、
ディスプレイ上で拡張現実画像を提供することであり、拡張現実画像が、少なくとも部分的に、医用撮像データからの画像データおよび受光画像データを含む、提供することと
を行うように構成される。
【0037】
医用撮像データは、コンピューター断層撮影スキャン(CT)、コーン・ビーム・コンピューター断層撮影(CBCT)、磁気共鳴撮像(MRI)、および超音波撮像(US)の内の少なくとも1つから受信されてもよい。
【0038】
受光画像データは、好ましくは、カメラから、好ましくは腹腔鏡カメラから受信される。
【0039】
本発明のこの態様では、先に議論された本発明の第1の態様におけるものと同様の利点および好ましい特徴が存在し、逆も同様である。
【0040】
本発明のこれらおよび他の特徴および利点が、以下に記載される実施形態を参照して、以下でさらに明らかにされる。
【0041】
例示する目的のために、本発明は、添付の図面において図示されるその実施形態を参照して、以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明の実施形態に係る、光学検出可能マーカーのセットを有するマーカーユニットの主面の、上平面図における概要図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る、上層が除去された、または不可視にされた、放射線不透過性マーカーのセットを有する
図1のマーカーユニットの下層の、上平面図における概要図である。
【
図3】本発明に係るマーカーユニットの概略斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る、拡張現実によって支援される手術のためのシステムの概要図である。
【
図5】本発明の別の実施形態に係る、光学検出可能マーカーおよび放射線不透過性マーカーのセットを有するマーカーユニットの主面の、上平面図における概要図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る、放射線不透過性マーカーのセットを有するマーカーユニットの主面の、上平面図における概要図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る、放射線不透過性マーカーのセットを有するマーカーユニットの主面の、上平面図における概要図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る、ハンドルを有するマーカーユニットの概略斜視図である。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る、横方向に突出するハンドルを有するマーカーユニットの、上平面図における概要図である。
【
図10】本発明の他の実施形態に係る、横方向に突出するハンドルを有するマーカーユニットの、上平面図における概要図である。
【
図11】本発明のさらに他の実施形態に係る、交軸方向に突出するハンドルを有するマーカーユニットの概略斜視図である。
【
図12】本発明のさらに他の実施形態に係る、交軸方向に突出するハンドルを有するマーカーユニットの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下の詳細説明において、本発明の好ましい実施形態が、説明される。しかし、それ以外に明示されない限り、異なる実施形態の特徴が実施形態間で交換可能であり、異なるやり方で組み合わされてもよいということを理解されたい。以下の説明において、本発明のより綿密な理解を与えるために、多くの具体的詳細が述べられるが、当業者には、本発明がこれらの具体的詳細なしに実践され得るということが明白であろう。他の事例では、よく知られた構造または機能は、本発明を不明確にしないように詳細に説明されない。以下の例では、腹腔鏡肝臓手術に関する実施形態が、開示される。しかし、当業者によって、方法およびシステムは多くの他のタイプの外科的処置に相応して使用可能であるということが、認められるべきである。
【0044】
最初に、
図1~
図3を参照して、マーカーユニット1が、議論される。マーカーユニットは、好ましくは比較的剛性のあるプラスチック材料から形成された、扁平体11を含む。材料は、好ましくは、生体適合性であり、少なくとも100℃まで耐熱である。扁平体は、たとえば粘着剤によって、互いに固定的に結合された、2つの層11a、11bを含んでもよい。
【0045】
扁平体は、両側にある2つの主面12、13と、周囲の側壁とを有する。ここでは、扁平体、ひいては主面は、矩形状を、特に概ね正方形状を有する。しかし、ほぼ矩形状であるが丸められたまたは面取りされた角を有するものなどの、他の形状も可能である。他の実施形態では、扁平体は、また、円形、楕円形、六角形、八角形、または他の多角形の形態などであってもよい。1つの実施形態では、扁平体は、多角形形状を有する。
【0046】
主面は、2つの直交方向において、5~20mmの範囲、好ましくは5~15mmの範囲、最も好ましくは7~12mmの範囲の寸法を有してもよい。矩形状の場合、寸法は、直交する辺に沿うように見られ得る。たとえば、主面は、各辺が約10mmであり、約1cm2の面積を形成する正方形を形成してもよい。マーカーユニットの高さは、辺の寸法より十分に小さい。高さは、たとえば、1~5mmの範囲、好ましくは1~3mmの範囲であってもよい。制限されたサイズにより、マーカーユニットは、挿入のためにマーカーユニットを折り畳むまたは圧縮する必要なく、以下でさらに議論される腹腔鏡ポートを通じて、体内に、そして手術箇所まで簡単に導入され得る。したがって言い換えると、マーカーユニットは、好ましくは、標準的な腹腔鏡ポートへと導入され得るように寸法決定される。
【0047】
主面の一方12において、以下でより詳細に議論されるような光学検出可能マーカーのセットが存在する。
【0048】
他方の、反対側の主面13において、粘着剤が、設けられてもよい。粘着剤は、それ自体当該技術分野において知られるような、解剖学的身体部分への結合に適した任意のタイプのものであってもよい。たとえば、粘着剤は、フィブリン粘着剤などの、生分解性粘着剤であってもよい。粘着剤は、最初はカバー・ライナーによって被覆されてもよく、カバー・ライナーは、使用前に除去され得、粘着剤を露出させる。しかし、粘着剤は、また、最初はマーカーユニットとは別々に設けられて、マーカーユニットの身体器官への挿入および固定前にマーカーユニットの主面に配置されるなど、他のやり方で設けられてもよい。
【0049】
以下でもより詳細に議論されるように、マーカーユニットに統合されて構成されて、たとえば層11aおよび11bの間に配置されて、放射線不透過性マーカーのセットが、設けられる。
【0050】
光学検出可能マーカーと放射線不透過性マーカーの両方は、回転対称性を有しない幾何学的パターンに設けられ、それによって、マーカーユニットの回転位置が決定可能であることを可能とし、さらに、光学検出可能マーカーおよび放射線不透過性マーカーの幾何学的パターンは、固定され、予め決定された相関を有する。これは、医用撮像データと受光データの両方から、全ての方向においてマーカーユニットの正確な位置を一意に特定することを可能とする。マーカー・セット間の既知の相関により、これは、画像が相関させられることを可能とし、拡張現実画像として組み合わされたやり方でそれらが提示されることを可能とする。
【0051】
光学検出可能マーカーのセットは、好ましくは、主面を通じて分布された複数の幾何学的図形を含む。幾何学的図形は、たとえば、矩形であってもよい。
【0052】
本実施形態では、複数の幾何学的図形は、複数のQRコード2を含む。QRコードは、白い背景上の正方形グリッドにおいて配置された、黒い正方形を含んでもよい。正方形は、4つの内3つの角にある相対的に大きい位置用正方形21a~cと、任意で、4番目の角にある相対的に小さい整列用正方形22aを含んでもよい。また、追加の整列用正方形22bが、中心に設けられてもよい。さらに、追加の整列用正方形22cが、辺において角にある正方形の間に設けられてもよい。また、いわゆるタイミング・ライン23a、23bが、角にある正方形の間に、特に位置用正方形21a~cの間に設けられてもよい。また、QRコードは、データ搬送パターンを含んでもよいが、この文脈ではこれは任意であり、省略されてもよい。
【0053】
しかし、位置用正方形21a~cのみ、または整列用正方形22aのみと組み合わせて、または追加的もしくは代替的に、1つ又は複数の他の整列用正方形22b~cと組み合わせて使用することも可能である。
【0054】
マーカーユニットの面12は、複数のそのようなQRコードを含んでもよい。例示された例では、主面の4つの象限に配置された4つのQRコード2が、設けられている。各マーカーユニットが少なくとも3~4つのQRコードを含むため、また、各QRコードが、たとえば各QRコードの各角に1つずつなど、典型的には4つの検出可能な正方形を含むため、マーカーユニットの主面上で、合計で少なくとも12~16個の検出可能なマーカーを提供する。追加的または代替的に、QRコードの角それ自体が、光学検出可能マーカーとして働いてもよい。また、主面の他の幾何学的に明瞭なパターンまたは特徴が、光学検出可能マーカーとして働いてもよい。
【0055】
放射線不透過性マーカーは、それ自体当該技術分野において知られるように、金属などから形成されてもよい。放射線不透過性マーカーのセットは、たとえば円形または矩形のドット3のグリッドとして、1つ又は複数の位置が空であり、それによってパターンを非回転対称にするように、配置されてもよい。例示された例では、マーカー3は、右下角のマーカー省略された状態で、3×3のグリッドにおいて設けられる。しかし、他の非回転対称性パターンも、可能である。
【0056】
マーカーの2つのセット、すなわち光学検出可能マーカー2および放射線不透過性マーカー3は、固定され、予め決定された幾何学的相関を有する。たとえば、両方のパターンの外側の角の要素が、互いに重なってもよい。たとえば、左上のQRコード2内の位置用正方形21aが、左上のマーカー3と重なってもよく、右上のQRコード内の位置用正方形21bが、右上のマーカー3と重なってもよく、左下のQRコード内の位置用正方形21cが、左下のマーカー3と重なってもよい。しかし、マーカーのセットを互いに相関させる他のやり方も、可能である。
【0057】
光学検出可能マーカーのセットを含む主面は、好ましくは、疎水性および非反射性である。
【0058】
光学検出可能マーカーおよび/または放射線不透過性マーカーの他の具現化も、可能である。
【0059】
図5に示される1つの実施形態では、扁平体は、放射線不透過性プラスチック材料、いわゆるX線プラスチックなどの放射線不透過性材料から作成された、少なくとも1つの層を含んでもよい。たとえば、扁平体は、そのような放射線不透過性材料から作成された単一の層を含んでもよい。そのような実施形態では、たとえば縁にある認識可能特徴は、放射線不透過性マーカーのセットを形成してもよい。たとえば、角は、そのような認識可能特徴として働いてもよく、それによって、放射線不透過性マーカー3a~bのセットを形成する。その場合、少なくとも1つの角3bが、パターンを非回転対称にするために、他とは異なるように成形されてもよい。たとえば、異なるように成形された角3bは、切断された角であってもよい。
【0060】
ここでは、光学検出可能マーカー2は、先に議論された実施形態と同様にQRコードとして設けられてもよい。代替的に、また、光学検出可能マーカー2は、矩形などの他のタイプの幾何学的に明瞭な形状であってもよい。1つの実施形態では、光学検出可能マーカー2は、角または形状の他の明瞭な幾何学的特徴などの、扁平体の1つ又は複数の層の形状によって設けられてもよい。
【0061】
図5の例示された実施形態では、角の内の1つが、切断され、面取りされた鈍角を形成し、それによって明瞭なマーカー3bを形成する。しかし、明瞭な角マーカーを形成する他のやり方も、可能である。たとえば、
図6に示されるように、明瞭なマーカー3b’は、角から矩形片を切り出すことによって形成されてもよく、それによって、他の角位置の外向きの角とは対照的な内向きの角を形成する。
図7の例示された例のように、斜辺を有する切り欠きを設けることも可能であり、それによって、鈍角または鋭角を有する内向きの角を有する、明瞭なマーカー3b’’を形成する。
【0062】
しかし、丸められた切り欠きなどの他の明瞭なマーカーも、可能である。また、切り欠きなどは、1つ又は複数の辺に沿って、または本体/層の内部になど、角以外の他の位置に設けられてもよい。
【0063】
図5~
図7の例示された例では、マーカー3b、2b’、3b’’の内の1つのみが、残りのマーカー3aとは区別されて形成される。しかし、たとえば異なるように成形された切り欠きを有して設けられた、2つ以上の明瞭なマーカーを使用することも、可能である。したがって、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の明瞭な放射線不透過性マーカーが、設けられてもよい。
【0064】
次に、
図4を参照して、上で議論されたマーカーユニットを含む、拡張現実によって支援される手術のためのシステムが、議論される。
【0065】
システムは、ここでは肝臓3に置かれた、少なくとも1つのマーカーユニット1を含む。マーカーユニット1の設置は、手術のために膨張された時の、患者の皮膚4を通じて配置された腹腔鏡ポート5を通じて、行われ得る。
【0066】
システムは、光学ディスプレイ7に接続されたコントローラー6をさらに含む。コントローラーは、医用撮像データを受信するために、医用撮像デバイス/システム9にさらに接続される。医用撮像デバイスは、たとえば、コンピューター断層撮影(CT)、コーン・ビーム・コンピューター断層撮影(CBCT)、磁気共鳴撮像(MRI)、または超音波(US)撮像のためのデバイス/システムであってもよい。しかし、また、それ自体当該技術分野において知られるように、他の医用撮像システムおよび技術が、使用されてもよい。コントローラー6は、腹腔鏡カメラ8などの光学的撮像デバイス/システムにさらに接続される。
【0067】
コントローラー6は、
手術のために意図される位置におけるマーカーユニットを示す医用撮像データを受信することと、
手術のために意図される位置におけるマーカーを示す受光画像データを受信することと、
医用撮像データにおける放射線不透過性マーカーのセットおよび受光画像データにおける光学検出可能マーカーのセットの位置に基づいて、医用撮像データと受光画像データを相関させることと、
ディスプレイ上で拡張現実画像を提供することであり、拡張現実画像が、少なくとも部分的に、医用撮像データからの画像データおよび受光画像データを含む、提供することと
を行うように構成される。
【0068】
コントローラーは、パーソナル・コンピューターまたは他のタイプのコンピューター上で実現されてもよいが、タブレットなどにおいて実現されてもよい。
【0069】
ディスプレイは、光学カメラ8のための従来のディスプレイ画面であってもよい。しかし、2つ以上のディスプレイが、設けられてもよい。追加的または代替的に、ディスプレイは、眼鏡に統合されたものなどの、着用型ディスプレイの形態で設けられてもよい。
【0070】
システムを使用する方法が、ここで議論される。
【0071】
最初に、患者が、手術のために準備される。これは、典型的には、外科医が、小さな切開を作り、腹腔鏡ポートを取り付け、腹腔が、外科医に作業するためのより多くの余地を与えるために、二酸化炭素を用いて膨張されるということを意味する。
【0072】
第2に、マーカーユニットが、腹腔鏡ポートを通じて挿入され、肝臓表面に置かれる。マーカーユニットを導入する前に、任意のライナーなどを除去することによって、粘着剤が、露出させられる。たとえば腹腔鏡鉗子を用いての挿入時に、固定を得るには、マーカーユニットの粘着剤側を肝臓表面に向けて優しく押すことで、十分である。マーカーユニットは、好ましくは、肝臓の一部が外科的に除去される位置に重ねて、またはその位置の付近に配置される。しかし、また、マーカーユニットは、外から与えられる粘着剤によって、または他のそれ自体知られる固定部材によってなど、他のやり方で身体器官に固定されてもよい。
【0073】
マーカーユニットの身体器官への固定は、光学検出可能マーカーを有する主面が身体器官とは反対側を向くようなやり方でなされ、それによって、光学検出可能マーカーを露出させる。
【0074】
その後、マーカーユニットは、患者の解剖学的ジオメトリに関して検出される。これは、CT、CBCT、MRI、USなどの医用撮像によってなされる。
【0075】
その後、腹腔鏡カメラおよび用具が、腹腔鏡ポートを通じて挿入される。
【0076】
肝臓およびマーカーユニットがカメラの視野内に位置する時、マーカーユニットは、ソフトウェアのための基準点を与え、拡張現実投影が、外科医のディスプレイ上に示される。表示された拡張現実画像は、たとえば、カメラから受信された2Dのライブの画像データを含んでもよく、医用画像データに基づく、たとえば肝臓の内部および特に腫瘍を示す、追加の画像情報を伴い、それは、3Dであるが、2D画像に投影されてもよい。
【0077】
特に、拡張現実視野は、たとえば、腫瘍、重要な血管または神経などのリスクのある構造、具体的な認識可能特徴、器官内であり組織によって被覆されることにより可視ではない構造などの、医用撮像データから得られた対象構造などの特徴によって、光学2D画像を補完してもよい。
【0078】
ここで外科医は、腫瘍の切除を行い、マーカーユニットと一緒に腫瘍を除去する。マーカーユニットが実質的に腫瘍の上に置かれている場合、マーカーユニットは、除去される組織/腫瘍片に貼付されたままであってもよい。
【0079】
たとえば腹腔鏡把持具およびグラスパーなどの腹腔鏡器具による、マーカーユニットの把持および取り扱いを容易にするために、マーカーユニットは、ハンドルを設けられてもよい。そのようなハンドルは、様々なやり方で実現されてもよい。そのようなハンドルを有するマーカーユニットのいくつかの例示的実施形態が、
図8~
図12を参照して以下で議論される。
【0080】
図8に示されるマーカーユニットは、ハンドル14を含む。ここでは、ハンドル14は、マーカーユニットに形成された把持または操縦領域の形態で設けられる。ここでは、把持または操縦領域は、マーカーユニットの、粘着剤13’を設けられていない部分である。把持または操縦領域は、好ましくは、光学検出可能マーカーの境界外に配置されてもよい。これによって、マーカーユニットは、マーカーユニットを損傷する、または他の形でその特性、機能性および性能に悪影響を与えるおそれがなく、腹腔鏡把持具、グラスパーなどの従来の腹腔鏡器具によって、把持および操縦され得る。
【0081】
図9および
図10の実施形態では、ハンドル14’は、代わりに、概ねマーカーユニットの主面内で、扁平体11から横方向に突出するように構成された、突出部として構成される。突出部は、タブまたは舌として形成されてもよく、扁平体11の幅および長さより十分に短い幅および長さを有してもよい。ハンドルは、
図9に概略的に示されるように概ね中実であってもよく、または、
図10に概略的に示されるように開口部14aを設けられてもよい。そのような開口部14aは、ハンドルの把持を容易にすることができる。
【0082】
例示された実施形態では、ハンドルは、扁平体の辺に、好ましくはこの辺の実質的に中央に、配置される。しかし、他の配置も、可能である。たとえば、ハンドルは、代わりに、扁平体11の角に、または角付近に配置されてもよい。
【0083】
ハンドルは、代替的に、横方向、主面の面内以外の方向に向けられてもよい。そのような実施形態が、
図11および
図12に概略的に示される。ここでは、ハンドル14’’は、扁平体11および主面に関して交軸方向に突出する、突出部として形成される。例示された例では、ハンドルは、扁平体11および主面に関して実質的に垂直に突出する。しかし、ハンドルは、代替的に、様々な傾斜方向など、他の方向に突出してもよい。
【0084】
例示された実施形態では、ハンドルは、扁平体11の辺に沿って延在する、交軸方向に突出する扁平タブとして構成される。しかし、また、ハンドルは、非扁平である、非直線的に延在する、辺に沿う以外の方向において延在するなど、他のやり方で設けられてもよい。
【0085】
突出部は、たとえば、マーカーユニットの幅および長さより短い幅および長さを有してもよい。
【0086】
ハンドルは、摩擦を増加させるために摩擦増加構成をさらに設けられてもよく、それによって、たとえば腹腔鏡器具を用いて、マーカーユニットを把持および保持することを簡単にする。そのようなハンドル14’’が、
図12に概略的に示される。たとえば、摩擦増加構成は、たとえば波形、ディンプルなどの形態の、ハンドルの表面上の表面テクスチャを含んでもよい。追加的または代替的に、摩擦増加構成は、高摩擦材料などの被膜を含んでもよい。
【0087】
上で議論された実施形態では、マーカーユニットは、単一のハンドルを設けられる。しかし、2つ、3つ、またはそれ以上のハンドルなどの、2つ以上のハンドルを使用することも可能である。たとえば、2つのハンドルは、2つの対向する辺に、または代替的に2つの隣接する辺に配置されてもよい。
【0088】
ここでは、本発明は、特定の実施形態を参照して説明された。しかし、マーカーユニットおよび手術システムのいくつかの変形が、可能である。たとえば、放射線不透過性マーカーおよび光学検出可能マーカーのセットの一方または両方は、他の形態の非回転対称性パターンを形成する他のやり方で実現されてもよい。さらに、マーカー・セット間の相関は、互いに重なるように角マーカーを配置することによるものであってもよいが、セットを幾何学的に相関させる他のやり方も、可能である。システムは、他のタイプの医用撮像、他のタイプのディスプレイなどを使用してもよい。そのような、および他の明白な変更は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあるものとみなされなければならない。上記の実施形態は本発明を限定するのではなく例示するということ、および、当業者は添付の特許請求の範囲の範囲を逸脱することなく多くの代替的実施形態を設計することができるであろうことに留意されたい。特許請求の範囲において、括弧内に置かれた任意の参照符号は、請求項を限定するものとして解釈されるべきではない。「含む」という単語は、請求項に列挙されたもの以外の他の要素またはステップの存在を除外しない。要素の前に付く「1つの」という単語は、複数のそのような要素の存在を除外しない。
【国際調査報告】